説明

サスタワーバー

【課題】改良されたサスタワーバーを提供すること。
【解決手段】本発明に係るサスタワーバー1では、サスタワーに取り付けられるバー本体部2は、上面板4と、底面板5とを有しており、バー本体部2の正面および背面には、上面板4および底面板5の前部および後部をそれぞれ連結する正面補強材6aおよび背面補強材7aが長手方向に離間して並設されているため、サスタワーバー1の上下方向の圧縮強度は低下する。このため、たとえば上下方向の荷重が作用した場合、中空状のバー本体部2が上下方向に圧縮変形する。このバー本体部の圧縮変形により、上下方向の荷重による衝撃は吸収され、緩和される。したがって、サスタワーバー1では、上下方向の荷重に対する衝撃吸収力の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンションタワーに取り付けられるサスタワーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のサスペンションタワー(本明細書においては「サスタワー」ともいう)に取り付けられるサスタワーバーが種々検討されている。サスタワーバーは、サスペンション上部の支持部材であるサスタワーに取り付けられ、車両の走行中にタイヤおよびサスペンションを介してサスタワーから受ける引張り力や捩り力に対して変形を抑制し、車体剛性を向上させるものである。
【0003】
このようなサスタワーバーとして、特開平10−147256号公報に記載されたサスタワーバーがある。このサスタワーバーは、サスタワーに取り付けられるブラケットとそのブラケットに取り付けられる中空形状のバーとから構成されており、そのブラケットには、バーが取り付けられる部分に、バーの端面を遮蔽する壁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−147256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のサスタワーバーにおいては、バーが取り付けられるブラケットの部分の構造について主に検討されており、バーの構造については、中空形状とすること以外には特に検討されていない。このため、サスタワーバーの本体とも言えるバーの構造などについて、さらなる改良の余地が残されていた。
【0006】
そこで、本発明の課題は、改良されたサスタワーバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係るサスタワーバーは、車両のサスペンションタワーに取り付けられる中空状のバー本体部を備え、バー本体部は、バー本体部の上面を構成する上面板と、バー本体部の底面を構成する底面板と、を有し、バー本体部の正面には、上面板および底面板のそれぞれの前部を連結する正面補強材が長手方向に離間して並設され、バー本体部の背面には、上面板および底面板のそれぞれの後部を連結する背面補強材が長手方向に離間して並設されたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るサスタワーバーでは、サスペンションタワーに取り付けられるバー本体部は、上面板と、底面板とを有している。また、このバー本体部の正面および背面には、上面板および底面板の前部および後部をそれぞれ連結する正面補強材および背面補強材が並設されている。これらの補強部材が並設されていることにより、車両の走行中に、タイヤおよびサスペンションを介してサスタワーから入力される引張り力や捩り力に対する強度が確保されるため、変形を抑制することができ、車体剛性を向上することができる。
【0009】
また、本発明に係るサスタワーバーでは、バー本体部は中空状とされている。よって、サスタワーバーの上下方向の圧縮強度は、正面および背面の強度に依存する。ここで、正面補強材および背面補強材はバー本体部の長手方向に離間して並設されているため、バー本体部の正面および背面には補強材が設けられない部分が形成される。このような部分が形成されることにより、サスタワーバーの上下方向の圧縮強度は低下する。
【0010】
このように上下方向の圧縮強度は低下させられる構成のため、本発明に係るサスタワーバーでは、たとえば上下方向の荷重が作用した場合、中空状のバー本体部が上下方向に圧縮変形する。このバー本体部の圧縮変形により、上下方向の荷重による衝撃は吸収され、緩和される。したがって、本発明に係るサスタワーバーでは、上下方向の荷重に対する衝撃吸収力の向上を図ることができる。このように、本発明によれば、改良されたサスタワーバーを提供することができる。
【0011】
また、バー本体部は金属によって形成されている態様とすることができる。この態様によれば、バー本体部の引張り方向および捩り方向の強度が十分に確保される。よって、サスタワーから入力される引張り力または捩り力に対し、車体の変形を抑制することができ、車体剛性をより一層向上できる。
【0012】
また、上記課題を解決した本発明に係るサスタワーバーは、車両のサスペンションタワーに取り付けられる中空状のバー本体部を備え、バー本体部は、バー本体部の上面を構成する上面板と、バー本体部の底面を構成する底面板と、上面板および底面板のそれぞれの前部を連結する正面板と、上面板および底面板のそれぞれの後部を連結する背面板と、を有し、正面板および背面板は、上面板および底面板よりも、上下方向の荷重が作用したときに圧縮しやすくされていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るサスタワーバーでは、サスペンションタワーに取り付けられるバー本体部は、上面板と、底面板と、上面板および底面板の前部および後部をそれぞれ連結する正面板と背面板とを有している。これらの部材を有する構造により、車両の走行中に、タイヤおよびサスペンションを介してサスタワーから入力される引張り力や捩り力に対する強度が確保される。したがって、車体の変形を抑制することができ、車体剛性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係るサスタワーバーでは、バー本体部は中空状とされている。よって、サスタワーバーの上下方向の圧縮強度は、正面板および背面板の強度に依存する。ここで、正面板および背面板は、上面板および底面板よりも上下方向の荷重が作用したときに圧縮しやすくされている。このように、正面板および背面板が圧縮しやすくされていることにより、サスタワーバーの上下方向の圧縮強度は低下する。
【0015】
このように上下方向の圧縮強度は低下させられる構成のため、本発明に係るサスタワーバーでは、たとえば上下方向の荷重が作用した場合、中空状のバー本体部が上下方向に圧縮変形する。このバー本体部の圧縮変形により、上下方向の荷重による衝撃は吸収され、緩和される。したがって、本発明に係るサスタワーバーでは、上下方向の荷重に対する衝撃吸収力の向上を図ることができる。このように、本発明によれば、改良されたサスタワーバーを提供することができる。
【0016】
また、正面板および背面板は、複数の繊維を含む繊維含有板材からなり、繊維含有板材は、複数の繊維のうち、長手方向に沿って配置された繊維が主とされている態様とすることができる。この態様によれば、正面板および背面板において、上下方向に沿って配置された繊維は相対的に少なくなる。よって、正面板および背面板の上下方向の圧縮強度は低下する。したがって、正面板および背面板は、上下方向の荷重が作用したときに圧縮しやすくなる。
【0017】
また、正面板および背面板は繊維強化樹脂によって形成されている態様とすることができる。この態様によれば、中空状のバー本体部における引張り方向および捩り方向の強度が十分に確保される。よって、サスタワーから入力される引張り力または捩り力に対し、車体の変形を抑制することができ、車体剛性をより一層向上できる。さらには、サスタワーバーの軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、改良されたサスタワーバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係るサスタワーバーの斜視図である。
【図2】サスタワーバーが取り付けられた車体の前部構造を示す斜視図である。
【図3】上下方向の荷重が作用した場合の、図1に示すサスタワーバーの圧縮変形を示す模式図である。
【図4】第2の実施形態に係るサスタワーバーの斜視図である。
【図5】図4に示すサスタワーバーの上面板の分解斜視図である。
【図6】図4に示すサスタワーバーの正面板の分解斜視図である。
【図7】上下方向の荷重が作用した場合の、図4に示すサスタワーバーの圧縮変形を示す模式図である。
【図8】車体の前部構造の第1変形例を示す斜視図である。
【図9】車体の前部構造の第2変形例を示す斜視図である。
【図10】車体の前部構造の第3変形例を示す斜視図である。
【図11】車体の前部構造の第4変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態に係るサスタワーバーについて詳細に説明する。各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るサスタワーバーの斜視図である。また、図2は、このサスタワーバーが取り付けられた車体の前部構造を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係るサスタワーバー1は、バー本体部2と、バー本体部2の両端に設けられた取付部3とを備えている。バー本体部2および取付部3は、鋼材によって形成されている。
【0022】
バー本体部2は、上面を構成する上面板4と、底面を構成する底面板5とを有している。また、バー本体部2は、正面を構成する正面板6と、背面を構成する背面板7とを有している。正面板6は、上面板4および底面板5のそれぞれの前部を連結している。また、背面板7は、上面板4および底面板5のそれぞれの後部を連結している。
【0023】
上面板4、底面板5、正面板6および背面板7は、いずれもバー本体部2の長手方向に延びる形状をなしており、同一の長さとされている。これらの部材によって構成されたバー本体部2は、中空状をなしている。言い換えれば、バー本体部2は、中空の角断面構造をなしている。また、バー本体部2の両端面は、開放されている。
【0024】
このようなバー本体部2の両端には、円盤状の平板部材である取付部3が設けられている。取付部3は、その表面の一部が底面板5の端部に溶接されることにより、バー本体部2の左右の端部に接合されている。取付部3は、アーク溶接またはスポット溶接によってバー本体部2に接合されるが、接合方法は溶接に限られず、たとえばボルト止めであってもよい。また、取付部3には、バー本体部2を車両のサスタワーに取り付けるためのボルト穴が形成されている。
【0025】
ここで、本実施形態に係るサスタワーバー1においては、図1に示すように、正面板6および背面板7のそれぞれは、正面補強材6aおよび背面補強材7aを有している。
【0026】
正面補強材6aは、バー本体部2の正面において、上面板4および底面板5のそれぞれの前部を連結するように、複数設けられている。この正面補強材6aは、バー本体部2の長手方向に離間して並設されている。言い換えれば、バー本体部2の正面には、上下方向に立設する複数の正面補強材6aが設けられている。また、正面補強材6aとその隣りの正面補強材6aとの間には、四角形の開口部が形成されている。よって、バー本体部2の正面には、複数の開口部がその長手方向に沿って並んで形成されている。
【0027】
また、背面補強材7aは、正面補強材6aと同様にして、バー本体部2の背面において、上面板4および底面板5のそれぞれの後部を連結するように、複数設けられている。この背面補強材7aは、バー本体部2の長手方向に離間して並設されている。言い換えれば、バー本体部2の背面には、上下方向に立設する複数の背面補強材7aが設けられている。また、背面補強材7aとその隣りの背面補強材7aとの間には、四角形の開口部が形成されている。よって、バー本体部2の背面には、複数の開口部がその長手方向に沿って並んで形成されている。
【0028】
バー本体部2は、押出成形などにより中空部が形成され、断面が四角形状の棒材として製作される。また、バー本体部2の正面および背面に並ぶ開口部は、たとえばバー本体部2の正面や背面を構成する鋼板に対してパンチング加工を施すことによって形成される。
【0029】
図2に示すように、サスタワーバー1は、車体の前部構造8において車両の前部に設けられた左右のサスタワー9に取り付けられる。こうして、サスタワーバー1は左右のサスタワー9を連結する。より具体的には、サスタワーバー1は、その両端に設けられた取付部3がサスタワー9上部のアッパーマウント9aに締結されることにより、エンジン10の上部にバー本体部2が掛け渡されるようにして取り付けられる。また、図2では図示を省略しているが、エンジン10の上方には、エンジンルームを覆うフードが設けられる。サスタワーバー1は、エンジン10とフードとの間に配置される。
【0030】
以上の構成を有するサスタワーバー1では、サスタワー9に取り付けられるバー本体部2は、上面板4と、底面板5とを有している。また、このバー本体部2の正面および背面には、上面板4および底面板5の前部および後部をそれぞれ連結する正面補強材6aおよび背面補強材7aが並設されている。これらの補強部材が並設されていることにより、車両の走行中に、タイヤおよびサスペンションを介してサスタワーから入力される引張り力や捩り力に対する強度が確保されるため、変形を抑制することができ、車体剛性を向上することができる。
【0031】
また、バー本体部2は鋼材によって形成されているため、バー本体部2の引張り方向および捩り方向の強度がさらに強化される。よって、サスタワー9から入力される引張り力または捩り力に対し、車体の変形を抑制することができ、車体剛性をより一層向上できる。
【0032】
また、バー本体部2は中空状とされている。よって、サスタワーバー1の上下方向の圧縮強度は、正面板6および背面板7の強度に依存する。ここで、正面補強材6aおよび背面補強材7aはサスタワーバー1の長手方向に離間して並設されているため、バー本体部2の正面および背面には補強材が設けられない部分である開口部が形成される。このような開口部が形成されることにより、サスタワーバー1の上下方向の圧縮強度は低下する。
【0033】
このように上下方向の圧縮強度は低下させられる構成のため、サスタワーバー1では、図3に示すように、たとえば上下方向の荷重Fが作用した場合、中空状のバー本体部2が上下方向に圧縮変形する。この圧縮変形は、正面補強材6aおよび背面補強材7aが上下方向に潰れることによって生じる。なお、背面補強材7aについては、図3における図示を省略している。このバー本体部2の圧縮変形により、荷重Fによる衝撃は吸収され、緩和される。したがって、サスタワーバー1では、上下方向の荷重Fに対する衝撃吸収力の向上を図ることができる。このように、サスタワーバー1によれば、改良されたサスタワーバーを提供することができる。
【0034】
ところで、サスタワーバーにおいては、フードに対する上下方向の衝突荷重が作用したときにサスタワーバーから受ける反力を軽減することが求められる。そのため、従来のサスタワーバーでは、上下方向の荷重に対する衝撃緩和のためには、サスタワーバーとフードとの間の空間を確保する必要があった。さらに、エンジンとフードとの間が狭い場合には、サスタワーバーの設置が困難な場合もあった。
【0035】
本実施形態に係るサスタワーバー1では、たとえばフードに対して上下方向の荷重が作用し、フードがサスタワーバー1に接してその荷重がサスタワーバー1に伝わった場合であっても、中空状のバー本体部2が上下方向に圧縮変形する。このバー本体部2の圧縮変形により、上下方向の荷重による衝撃は吸収され、緩和される。よって、エンジン10とフードとの間が狭い場合でも、サスタワーバー1を設置して車体剛性を向上できる。このように、エンジン10とフードとの間の空間の大小にかかわらずサスタワーバー1を設置できるため、フードの形状に自由度を持たせることができる。
【0036】
(第2実施形態)
図4は、第2の実施形態に係るサスタワーバーの斜視図である。図4に示すように、本実施形態に係るサスタワーバー11は、バー本体部12と、バー本体部12の両端に設けられた取付部3とを備えている。
【0037】
このサスタワーバー11は、図1に示した先の実施形態に係るサスタワーバー1と比較して、バー本体部12が有する上面板14、底面板15、正面板16および背面板17が複数の繊維を含む繊維含有板材である繊維強化樹脂(Fiber Reinforced Plastics;以下の説明においては「FRP」という)板によって形成されている点で異なっている。また、正面板16および背面板17は、正面補強材や背面補強材を有していない。このため、正面板16および背面板17には、開口部は形成されていない。さらに、取付部3は、接着剤を用いて接着されることにより、バー本体部12の左右の端部に接合されている。その他の点は、サスタワーバー1と同様の構成とされている。
【0038】
図5は、サスタワーバー11の上面板14を示す分解斜視図である。図5に示すように、上面板14は、第1上面FRPシート14aおよび第2上面FRPシート14bが交互に積層されることにより形成されている。第1上面板FRPシート14aに含まれる繊維は、0°/90°の配向角度とされている。また、第2上面FRPシート14bに含まれる繊維は、45°/−45°の配向角度とされている。さらに、積層されたFRPシートのうち、最上面および最下面に配置されたFRPシートは、0°/90°の配向角度である第1上面FRPシート14aとされている。また、底面板15についても、上面板14と同様の構成とされている。
【0039】
また、図6は、サスタワーバー11の正面板16を示す分解斜視図である。図6に示すように、正面板16は、主として上面板FRPシート16aが積層されることにより形成されている。正面FRPシート16aに含まれる繊維は、サスタワーバー11の長手方向に沿って配置された繊維である。言い換えれば、正面FRPシート16aは、一方向(unidirectional;UD)材である。よって、正面板16は、正面板16に含まれる複数の繊維のうち、サスタワーバー11の長手方向に沿って配置された繊維が主とされている。また、背面板17についても、正面板16と同様の構成とされている。
【0040】
このサスタワーバー11は、正面板16および背面板17において、上下方向に沿って配置された繊維が相対的に少なくなる。よって、正面板16および背面板17の上下方向の圧縮強度は低下する。このように、正面板16および背面板17は、上面板14および底面板15よりも上下方向の荷重が作用したときに圧縮しやすくされている。
【0041】
このサスタワーバー11は、図2に示した車体の前部構造8と同様に、車両の前部において左右のサスタワー9に取り付けられることにより、左右のサスタワー9を連結する。
【0042】
以上の構成を有するサスタワーバー11では、サスタワー9に取り付けられるバー本体部12は、上面板14と、底面板15と、上面板14および底面板15の前部および後部をそれぞれ連結する正面板16と背面板17とを有している。これらの部材を有する構造により、車両の走行中に、タイヤおよびサスペンションを介してサスタワー9から入力される引張り力や捩り力に対する強度が確保される。したがって、車体の変形を抑制することができ、車体剛性を向上させることができる。
【0043】
また、正面板16および背面板17はFRP板によって形成されているため、中空状のバー本体部12における引張り方向および捩り方向の強度がさらに強化される。よって、サスタワー9から入力される引張り力または捩り力に対し、車体の変形を抑制することができ、車体剛性をより一層向上できる。さらには、サスタワーバー11の軽量化を図ることができる。
【0044】
また、サスタワーバー11では、バー本体部12は中空状とされている。よって、サスタワーバー11の上下方向の圧縮強度は、正面板16および背面板17の強度に依存する。ここで、正面板16および背面板17は、上面板14および底面板15よりも上下方向の荷重が作用したときに圧縮しやすくされている。このように、正面板16および背面板17が圧縮しやすくされていることにより、サスタワーバー11の上下方向の圧縮強度は低下する。
【0045】
このように上下方向の圧縮強度は低下させられる構成のため、サスタワーバー11では、図7に示すように、たとえば上下方向の荷重Fが作用した場合、中空状のバー本体部12が上下方向に圧縮変形する。この圧縮変形は、正面板16および背面板17が上下方向に潰れることによって生じる。なお、背面板17については、図7における図示を省略している。このバー本体部12の圧縮変形によって、荷重Fによる衝撃は吸収され、緩和される。したがって、サスタワーバー11では、上下方向の荷重Fに対する衝撃吸収力の向上を図ることができる。このように、サスタワーバー11によれば、改良されたサスタワーバーを提供することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るサスタワーバー11でも、たとえばフードに対して上下方向の荷重が作用し、フードがサスタワーバー11に接してその荷重がサスタワーバー11に伝わった場合であっても、中空状のバー本体部12が上下方向に圧縮変形する。このバー本体部12の圧縮変形により、上下方向の荷重による衝撃は吸収され、緩和される。よって、エンジン10とフードとの間が狭い場合でも、サスタワーバー11を設置して車体剛性を向上できる。このように、エンジン10とフードとの間の空間の大小にかかわらずサスタワーバー11を設置できるため、フードの形状に自由度を持たせることができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0048】
上記実施形態では、サスタワーバー1,11は、エンジン10の上部にバー本体部12が一直線状に掛け渡されるようにして取り付けられるここととしたが、たとえば図8の前部構造21に示すように、車体後方に向けてくの字状に屈曲したバー本体部を有するサスタワーバー22としてもよい。また、図9の前部構造23に示すように、一直線状のバー本体部とくの字状のバー本体部とが組み合わされた三角形状のサスタワーバー24としてもよい。また、図10の前部構造25に示すように、左右のサスタワー9のそれぞれから車体の一部に向けて掛け渡される2本のバー本体部を有するサスタワーバー26としてもよい。さらにまた、図11の前部構造27に示すように、一直線状のバー本体部と、左右のサスタワー9のそれぞれから車体の一部に向けて掛け渡される2本のバー本体部とが組み合わされたサスタワーバー28としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、サスタワーバー1,11は車体の前部のサスタワー9に取り付けられる例を示したが、車体の後部のサスタワーに取り付けられることとしてもよい。また、サスタワーバーが取り付けられる箇所は、エンジン10が設けられたエンジンルームに限られるものではなく、たとえばトランクルームであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、サスタワーバー1,11は、取付部3がボルトナットにより締結されて取り付けられることとしたが、サスタワーバー1,11の取付方法はこれに限られず、たとえばサスタワーバー1,11に取付部3を設けずに、バー本体部2,12がサスタワー9に溶接により取り付けられてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、バー本体部2,12は、中空の角断面構造をなしている場合について説明したが、だ円形または円形の中空断面をなしていてもよい。この場合、上面板、底面板、正面板6または正面補強材6a、背面板7または背面補強材7aのそれぞれは、曲面状に形成される。
【0052】
また、上記第1実施形態では、バー本体部2は、正面を構成する正面板6と、背面を構成する背面板7とを有し、正面板6および背面板7のそれぞれは、正面補強材6aおよび背面補強材7aを有していることとしたが、正面板6や背面板7は有さずに、正面補強材や背面補強材のみが設けられて上面板4と底面板5とを連結していてもよい。
【0053】
また、上記第1実施形態では、バー本体部2は、鋼材によって形成されていることとしたが、鋼材に限らず、アルミなどの他の金属であってもよく、樹脂であってもよい。さらに、金属と樹脂との組み合わせによって形成されていてもよい。
【0054】
また、上記第2実施形態においては、上面板14および底面板15は、繊維の配向角度が0°/90°のFRPシートと、45°/−45°のFRPシートとが交互に積層されることとしたが、交互でなく不規則に積層されていてもよく、他の配向角度であってもよい。
【0055】
また、上記第2実施形態では、バー本体部12は、FRPによって形成されていることとしたが、FRPに限らず、他の樹脂などであってもよく、金属であってもよい。さらに、樹脂と金属との組み合わせによって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,11…サスタワーバー、2,12…バー本体部、4,14…上面板、5,15…底面板、6a…正面補強材、7a…背面補強材、9…サスタワー(サスペンションタワー)、16…正面板、17…背面板、F…上下方向の荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサスペンションタワーに取り付けられる中空状のバー本体部を備え、
前記バー本体部は、前記バー本体部の上面を構成する上面板と、前記バー本体部の底面を構成する底面板と、を有し、
前記バー本体部の正面には、前記上面板および前記底面板のそれぞれの前部を連結する正面補強材が長手方向に離間して並設され、
前記バー本体部の背面には、前記上面板および前記底面板のそれぞれの後部を連結する背面補強材が長手方向に離間して並設されたことを特徴とする、サスタワーバー。
【請求項2】
前記バー本体部は金属によって形成されている、請求項1記載のサスタワーバー。
【請求項3】
車両のサスペンションタワーに取り付けられる中空状のバー本体部を備え、
前記バー本体部は、前記バー本体部の上面を構成する上面板と、前記バー本体部の底面を構成する底面板と、前記上面板および前記底面板のそれぞれの前部を連結する正面板と、前記上面板および前記底面板のそれぞれの後部を連結する背面板と、を有し、
前記正面板および前記背面板は、前記上面板および前記底面板よりも、上下方向の荷重が作用したときに圧縮しやすくされていることを特徴とする、サスタワーバー。
【請求項4】
前記正面板および前記背面板は、複数の繊維を含む繊維含有板材からなり、前記繊維含有板材は、前記複数の繊維のうち、長手方向に沿って配置された繊維が主とされている、請求項3記載のサスタワーバー。
【請求項5】
前記正面板および前記背面板は繊維強化樹脂によって形成されている、請求項4記載のサスタワーバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−173546(P2010−173546A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20143(P2009−20143)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】