説明

サスペンションサポート

【課題】発泡ウレタンなどの発泡樹脂成形体からなる弾性部材を用いたサスペンションサポートにおいて、生産性と耐久性を向上する。
【解決手段】ショックアブソーバ側の内側部材12と、車体側の外側部材14と、両者の間に介在する環状の弾性部材16とを備えたサスペンションサポート10において、弾性部材16の上側弾性部42と下側弾性部44のうち少なくとも一方を、発泡ウレタン成形体からなる第1弾性部46と、これにより低発泡率の発泡ウレタン成形体又は未発泡のソリッドウレタン成形体からなる第2弾性部48との上下2層構造とし、第1弾性部46と第2弾性部48の厚み比率を弾性部材16の周方向Cで変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドを、車体に対して弾性的に結合するためのサスペンションサポートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のサスペンション機構においては、車輪側から車体側への振動の伝達を抑制するために、ショックアブソーバのピストンロッドの上端部が挿通固定される内側部材と、該内側部材の外周を取り囲み車体側に取り付けられる外側部材と、これら内側部材と外側部材との間に介在する環状の弾性部材とを備えてなるサスペンションサポートが用いられている。
【0003】
上記弾性部材としては、一般にゴム材料が用いられているが、近年、発泡ウレタンなどの連続気泡構造を持つ弾性発泡材料の採用が試みられている(下記特許文献1参照)。発泡ウレタンは、その材料特性上、ゴム材料に比べて、動倍率を抑えながら減衰性能を大きくすることができ、乗り心地性を向上することができる。
【0004】
このような発泡ウレタン成形体を弾性部材に持つサスペンションサポートとして、特許文献2には、図9に示すように、弾性部材100を、ゴム材料からなるゴム弾性部102と、発泡ウレタン成形体からなる発泡樹脂弾性部104とを組み合わせて構成することにより、静的バネ定数を維持しつつ、発泡ウレタン成形体の予備圧縮率を下げることができ、これにより静的バネ定数と高減衰特性とを両立させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−184937号公報
【特許文献2】特開2009−264553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示された構成では、内側部材106のフランジ部108と、外側部材110の上下の壁部112,114との間に、素材の異なる弾性部材100(即ち、ゴム材料からなるゴム弾性部102と発泡ウレタンからなる発泡樹脂弾性部104)が挟み込まれているため、製造工数が多くなってしまう。また、内側部材106に加硫接着されているゴム弾性部102に薄肉部102Aができてしまうため、剥がれ等の耐久上の問題も懸念される。
【0007】
本発明は、発泡ウレタンなどの発泡樹脂成形体からなる弾性部材を用いたサスペンションサポートにおいて、上記問題を解消して、生産性と耐久性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサスペンションサポートは、ショックアブソーバのピストンロッドの上端部が挿通固定される内側部材であって、前記ピストンロッドの軸直角方向外方側に張り出すフランジ部を備えた内側部材と、前記内側部材の外周を取り囲み車体側に取り付けられる外側部材であって、前記フランジ部の上下に間隔をおいて対向配置される上側壁部及び下側壁部を備えた外側部材と、前記内側部材と前記外側部材との間に介在する環状の弾性部材であって、前記フランジ部と前記上側壁部の間で挟圧される上側弾性部と前記フランジ部と前記下側壁部の間で挟圧される下側弾性部を備えた弾性部材と、を備えてなる。そして、前記上側弾性部と前記下側弾性部の少なくとも一方の弾性部が、発泡樹脂成形体からなる第1弾性部と、前記第1弾性部と同一素材からなりかつ第1弾性部よりも低発泡率の発泡樹脂成形体又は未発泡の樹脂成形体からなる第2弾性部との上下少なくとも2層構造を有し、前記第1弾性部と前記第2弾性部の厚み比率を前記弾性部材の周方向で変化させたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、発泡率の高い第1弾性部が主として減衰特性を確保させる部分となり、低発泡率又は未発泡の第2弾性部が主として静的バネ定数を維持させる部分となる。そのため、これらの第1弾性部と第2弾性部の厚み比率を周方向で変化させることにより、第1弾性部の厚みを大きくした部位で主として減衰特性を、第2弾性部の厚みを大きくした部位で主として静的バネ定数を確保することができ、静的バネ定数と高減衰特性を両立しやすい。また、上記厚み比率を周方向で変化させることで、こじり性能などの特性に方向性を持たせることができる。
【0010】
更に、これら第1弾性部と第2弾性部が同一素材により形成されているため、両者を一体に作製することができ、組み立て工程を含めた製造が容易になるとともに、同一素材であるため、第1弾性部と第2弾性部を接着剤を用いなくても接着させることが可能となり、両者間での摩擦による削れがなく、耐久性を向上することができる。よって、上記の優れた防振性能を追求しながら、生産性と耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係るサスペンションサポートの縦断面図(図4のI−I線に相当する断面図)
【図2】該サスペンションサポートの分解縦断面図
【図3】該サスペンションサポートの上側弾性部の側面図
【図4】該上側弾性部の平面図
【図5】第2実施形態における上側弾性部の側面図
【図6】第3実施形態における上側弾性部の側面図
【図7】第3実施形態における上側弾性部の平面図
【図8】第4実施形態に係るサスペンションサポートの縦断面図
【図9】従来のサスペンションサポートの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜4を参照して第1実施形態に係るサスペンションサポート10について説明する。このサスペンションサポート10は、自動車のストラットマウントであり、ショックアブソーバのピストンロッド1の上端部1Aが挿通固定される金属製の内側部材12と、その外周を取り囲み車体パネル2に取り付けられる金属製の外側部材14と、これら内側部材12と外側部材14との間に介在して内側部材12を外側部材14に対して防振的に支持する環状の弾性部材16とを備えてなる。サスペンションサポート10は、ピストンロッド1の軸方向Xを上下方向として設けられている。
【0013】
内側部材12は、ピストンロッド1の上端部1Aが下方から差し入れられる円筒状の内筒部18と、内筒部18の上端部においてピストンロッド1の軸直角方向外方側Yoに張り出すリング板状のフランジ部20とからなる。
【0014】
外側部材14は、弾性部材16を内包するとともに内側部材12を同芯状に取り囲む円筒状の周壁部22と、該周壁部22の軸方向Xの両端部において軸直角方向Yで内向きYiに形成されて弾性部材16を軸方向Xにて挟圧する上側壁部24及び下側壁部26とを備えてなり、弾性部材16を内部に収容する容器状に形成されている。周壁部22は、フランジ部20の外周を間隔をおいて取り囲む。上側壁部24と下側壁部26は、フランジ部20の上面20Aと下面20Bに対してそれぞれ間隔をおいて対向配置されており、ともにリング板状をなして、中央部に円形の開口部28,30を備える。
【0015】
外側部材14は、この例では、下方に開口する伏せ椀状の第1外側部材32と、その下面開口を覆う平板状の第2外側部材34とからなり、第1外側部材32で上記周壁部22と上側壁部24が形成され、第2外側部材34で上記下側壁部26が形成されている。
【0016】
第1外側部材32は、図2に示すように、軸方向Xに外径が略一定(詳細には、上方ほどわずかに先細のテーパ筒状)の周壁部22と、その上端において内向きYiにフランジ状に延設された上側壁部24と、周壁部22の下端において外方側Yoに延設された上側取付フランジ36とからなる。第2外側部材34は、開口部30周りの中央部が上記下側壁部26とされ、その外周に下側取付フランジ38が設けられている。そして、車体パネル2の下面に対して、上側取付フランジ36と下側取付フランジ38とを重ね合わせてボルト3及びナット4で締結することにより、外側部材14は車体パネル2に固定されるように構成されている。また、下側壁部26の開口部30には、不図示のバウンドストッパを保持するための保持金具40がかしめ固定されている。
【0017】
弾性部材16は、その全体形状が、内側部材12のフランジ部20を外側から包むように、即ち、フランジ部20の上面20A、下面20B及び外周面20Cを覆うように、内向きYiに開かれた断面コの字状に形成されている。
【0018】
この例では、弾性部材16は、フランジ部20の上下両側で2つに分割して設けられた2ピースタイプである。詳細には、弾性部材16は、フランジ部20と上側壁部24との間で軸方向Xに挟圧保持される環状の上側弾性部42と、フランジ部20と下側壁部26との間で軸方向Xに挟圧保持される環状の下側弾性部44とからなり、これらがモールド成形により別々に成形されて、内側部材12と外側部材14との間で一体に組み立てられてなる。
【0019】
上側弾性部42は、連続気泡構造を持つ発泡ウレタン成形体(ポリウレタンフォーム)からなる第1弾性部46と、これよりも発泡率の低い連続気泡構造を持つ発泡ウレタン成形体又は未発泡のソリッドウレタン成形体からなる第2弾性部48との上下2層構造に形成されている。より詳細には、フランジ部20と上側壁部24との間において、第2弾性部48をフランジ部20側(即ち、下側)とし、第1弾性部46を上側壁部24側(即ち、上側)とする上下2層構造とされている。
【0020】
下側弾性部44についても、同様に、連続気泡構造を持つ発泡ウレタン成形体(ポリウレタンフォーム)からなる第1弾性部46と、これよりも発泡率の低い連続気泡構造を持つ発泡ウレタン成形体又は未発泡のソリッドウレタン成形体からなる第2弾性部48との上下2層構造に形成されている。より詳細には、フランジ部20と下側壁部26との間において、第2弾性部48をフランジ部20側(即ち、上側)とし、第1弾性部46を下側壁部26側(即ち、下側)とする上下2層構造とされている。
【0021】
第2弾性部48の発泡率は、第1弾性部46の発泡率よりも小さければ特に限定されないが、好ましくはこれらの密度(かさ密度)が次のように設定されることである。すなわち、予備圧縮されていない状態で、第1弾性部46の密度は0.4〜0.7g/cmであることが好ましく、第2弾性部48の密度は0.8〜1.2g/cmであることが好ましく、両者の差は0.3g/cm以上であることが好ましい。両者の密度差を大きくする上では、第2弾性部48が未発泡のソリッドウレタン成形体であることがより好ましい。
【0022】
上側弾性部42の第1弾性部46は、第2弾性部48の上面と上側壁部24の下面との間で軸方向Xに挟圧保持される環状部材であり、第2弾性部48の上側に一体に設けられ、第2弾性部48を介してフランジ部20と上側壁部24との間に挟持されている。下側弾性部44の第1弾性部46は、第2弾性部48の下面と下側壁部26の上面との間で軸方向Xに挟圧保持される環状部材であり、第2弾性部48の下側に一体に設けられ、第2弾性部48を介してフランジ部20と下側壁部26との間に挟持されている。
【0023】
上側弾性部42の第2弾性部48は、フランジ部20の上面20Aと第1弾性部46の下面との間で軸方向Xに挟圧保持される環状部材であり、その下面にはフランジ部20が嵌り込む平面視円形の嵌合凹所50が設けられている。下側弾性部44の第2弾性部48は、フランジ部20の下面20Bと第1弾性部46の上面との間で軸方向Xに挟圧保持される環状部材であり、その上面にはフランジ部20が嵌り込む平面視円形の嵌合凹所50が設けられている。これにより、図1に示すように、上側弾性部42と下側弾性部44とを組み合わせた状態において、上下の第2弾性部48,48は一体となってフランジ部20を包むように、フランジ部20の上面20A、下面20B及び外周面20Cに接触した状態に設けられている。
【0024】
第2弾性部48は、その外周面48Aが、第1弾性部46を介在させることなく、外側部材14の周壁部22により取り囲まれており、この例では、第2弾性部48の外周面48Aは周壁部22の内周面に当接している。また、第2弾性部48は、外側部材14の上下の壁部24,26までは達しておらず、周方向の全周にわたって、第1弾性部46との間で界面52が設けられている。すなわち、上側弾性部42と下側弾性部44はそれぞれ、その全周にわたって上下2層構造に形成されている。
【0025】
そして、本実施形態では、上側弾性部42と下側弾性部44のそれぞれにおいて、第1弾性部46と第2弾性部48の厚み比率(即ち、軸方向Xにおける高さの比率)が周方向で変化させられている。詳細には、図3,4に示すように、第1弾性部46の厚み比率を高く設定した部位54と、第2弾性部48の厚み比率を高く設定した部位56とが、周方向Cにおいて交互に設けられており、この例では、上記部位54が周上6箇所に所定間隔で設けられ、その間に上記部位56が介設されている。第1弾性部46と第2弾性部48の界面52は、周方向Cにおいて凹凸状(段状)に形成されている。
【0026】
上側弾性部42は、モールド成形により第1弾性部46と第2弾性部48が接着一体化されている。詳細には、例えば、予めモールド成形された第2弾性部48の上面に第1弾性部46を一体に発泡成形することで、第2弾性部48と第1弾性部46との界面52が接着一体化される。下側弾性部44についても、同様に、モールド成形により第1弾性部46と第2弾性部48が接着一体化されており、詳細には、例えば、予めモールド成形された第2弾性部48の下面に第1弾性部46を一体に発泡成形することで、第2弾性部48と第1弾性部46との界面52が接着一体化されている。このように成形することにより、上記界面52では、接着剤を用いなくても、ある程度の接着力で一体化される。なお、第1弾性部46を先に成形し、その後、第2弾性部48を一体に成形することもできるが、その場合、第2弾性部48の成形時にその成形材料の注入圧により発泡率の高い第1弾性部46が変形するおそれがあるので、第2弾性部48を先に成形することが好ましい。また、上側弾性部42と下側弾性部44は、同一形状に形成されており、部品の共通化が図られている。
【0027】
このようにして形成された上側弾性部42と下側弾性部44は、内側部材12に対し、その上下からそれぞれ装着されて、これを外側部材14の第1外側部材32と第2外側部材34で上下から挟み込み、両部材の取付フランジ36,38を車体パネル2の下面に重ねてボルト3及びナット4を用いて締結固定するとともに、ピストンロッド1の上端部1Aをナット5を用いて内側部材12に挿通固定することにより、図1に示すようにサスペンションサポート10が組み立てられる。
【0028】
これにより、弾性部材16は、外側部材14により軸方向Xにおいて圧縮された状態(予備圧縮状態)に保持される。その際、発泡率の高い第1弾性部46は、発泡率の低い第2弾性部48よりも高い圧縮率で予備圧縮される。但し、予備圧縮された状態でも、第2弾性部48の方が発泡率が小さく、即ち高密度である。
【0029】
以上よりなるサスペンションサポート10では、発泡率の高い第1弾性部46が主として減衰特性を確保させる部分となり、低発泡率又は未発泡の第2弾性部48が主として静的バネ定数を維持させる部分となる。そのため、第1弾性部46と第2弾性部48の厚み比率を周方向Cで変化させることにより、第1弾性部46の厚みを大きくした部位54で主として減衰特性を、第2弾性部48の厚みを大きくした部位56で主として静的バネ定数を確保することができる。詳細には、発泡率の高い第1弾性部46の厚みを増加させることで、減衰特性を向上し、動的バネ定数を低減することができ、このことは車両乗り心地性の向上につながる。また、発泡率の低い第2弾性部48の厚みを増加させることで、静的バネ定数を向上することができ、このことは車両操縦安定性の向上につながる。そのため、第1弾性部46と第2弾性部48の厚み比率を周方向Cで変更させることにより、低動倍率と高減衰特性を両立することができる。
【0030】
また、これら第1弾性部46と第2弾性部48がポリウレタンという同一素材により形成されているため、上記のように両者を一体にモールド成形することができ、よって、組み立て工程を含めた製造が容易となる。また、同一素材であるため、第1弾性部46と第2弾性部48を接着剤を用いなくても接着させることが可能となり、製造コストが抑えられるとともに、接着剤を使用しないことでも製造が容易になる。
【0031】
また、このような同一素材からなる第1弾性部46と第2弾性部48を接着一体化させることで、両者間での摩擦による削れがなく耐久性を向上することができる。また、上記従来のような内側部材に対する加硫接着も不要となるので、内側部材12に対する剥がれの懸念もなくなり、更に耐久性が向上する。
【0032】
また、これら第1弾性部46と第2弾性部48の厚み比率を周方向Cで変化させたことにより、両者の界面52が凹凸状となって、接着面積が大きくなっているので、第1弾性部46と第2弾性部48との間での接着力をより向上することができる。
【0033】
図5は、第2実施形態に係るサスペンションサポートに関するものである。第2実施形態は、弾性部材16の構成が第1実施形態とは異なる。
【0034】
この例では、弾性部材16の上側弾性部42と下側弾性部44において、発泡率の高い第1弾性部46が周方向Cの複数箇所で軸方向X外方に凸状に張り出し形成されており、このことによっても第1弾性部46の厚み比率が周方向で変化させられている。より詳細には、第1弾性部46の厚み比率を高く設定した部位54に、更に軸方向X外方に張り出す張り出し部60が第1弾性部46に形成されている。
【0035】
この張り出し部60は、サスペンションサポートとして内側部材12と外側部材14との間に組み付けられた状態では、外側部材14の上側壁部24又は下側壁部26により圧縮されることでフラットになる。しかしながら、軸方向Xでの大振幅の振動入力により、圧縮方向とは反対側の弾性部42又は44で第1弾性部46の本体部が上下の壁部24又は26から離間するような状態となったときでも、張り出し部60で更なる拡縮変形を行うことが可能であるため、その分、減衰特性を高めることができる。その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0036】
図6,7は、第3実施形態に係るサスペンションサポートに関するものである。第3実施形態も弾性部材16の構成が第1実施形態とは異なる。
【0037】
この例では、上側弾性部42と下側弾性部44は、第1の軸直角方向Y1において内側部材12を挟んで相対する2箇所では、第1弾性部46の厚み比率が高く設定されるとともに、第1の軸直角方向Y1に垂直な第2の軸直角方向Y2において内側部材12を挟んで対向する2箇所では、第2弾性部48の厚み比率が高く設定されている。すなわち、この例では、上下の弾性部42,44はそれぞれ周上4つの領域からなり、第1弾性部46の厚みを高く設定した部位54が、第1の軸直角方向Y1において相対する2箇所の領域に設定されるとともに、第2弾性部48の厚みを高く設定した部位56が、第2の軸直角方向Y2において相対する2箇所に領域に設定されている。
【0038】
これにより、例えば、第1の軸直角方向Y1を車両前後方向となるように設定し、第2の軸直角方向Y2を車両左右方向となるように設定することで、車両前後方向Y1におけるこじり入力に対しては剛性を低くして、乗り心地性を向上することができるとともに、車両左右方向Y2におけるこじり入力に対しては剛性を高くして、操縦安定性を向上することができる。このように、第1弾性部46と第2弾性部48の厚み比率を周方向Cで変更することで、こじり特性に方向性を持たせることができる。その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0039】
図8は、第4実施形態に係るサスペンションサポートを示したものである。第4実施形態は、下側弾性部44の構成が第1実施形態とは異なる。
【0040】
この例では、下側弾性部44では、第1弾性部46と第2弾性部48の厚み比率を周方向Cで変化させずに一定としている。より詳細には、下側弾性部44では、全周にわたって、低発泡又は未発泡の第2弾性部48の厚み比率を大きく設定しており、これにより、リバウンド側(即ち、内側部材12の下方)への変位時の静的バネ定数がより大きく設定されている。そのため、乗り心地性を損なうことなく、更に操縦安定性を向上することができる。その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0041】
以上の実施形態では、上側弾性部42と下側弾性部44について、ともに2層構造としたが、いずれか一方を1層構造としてもよい。例えば、上記第4実施形態において、下側弾性部44を、厚み比率一定の2層構造とする代わりに、全てソリッドウレタン成形体で形成してもよく、これにより、リバウンド側の剛性を更に高めることもできる。また、上側弾性部42と下側弾性部44は、第1弾性部46と第2弾性部48との2層に加えて、追加の層を設けることにより、3層以上の構成としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、2ピースタイプの弾性部材について説明したが、本発明は、例えば、内側部材のフランジ部を包み込むようにウレタン材料からなる弾性部材を一体にモールド成形する1ピースタイプについても同様に適用することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、第1弾性部46の厚み比率を高く設定した部位54では、第2弾性部48よりも第1弾性部46の方が厚みを大きく設定しているが、本発明において厚み比率を高く設定することは、このような態様に限定されず、他の周方向部位よりも第1弾性部46の厚み比率を高く設定する場合も含まれる。第2弾性部48の厚み比率を高く設定した部位56についても同様である。
【0044】
また、本発明において、第1弾性部と第2弾性部について同一素材とは、例えば第1弾性部と第2弾性部ともにポリマーとしてポリウレタンを用いるというように、基本となるポリマーの種類が同一であることを意図しており、ポリウレタンの具体的構成まで同一であることを意図するものではない。好ましくは、第1弾性部と第2弾性部との界面での接着効果を高め、また材料の共通化によるコスト低減を図るため、第1弾性部と第2弾性部は、発泡率のみが異なる材料(即ち、発泡剤の量又は有無のみが異なる同一配合の材料)を用いることである。
【0045】
その他、一々説明しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…ヒストンロッド、 1A…上端部、 2…車体パネル、
10…サスペンションサポート、
12…内側部材、 14…外側部材、 16…弾性部材、
20…フランジ部、 24…上側壁部、 26…下側壁部、
42…上側弾性部、 44…下側弾性部、
46…第1弾性部、 48…第2弾性部、
54…第1弾性部の厚み比率を高く設定した部位
56…第2弾性部の厚み比率を高く設定した部位
X…軸方向、 Y…軸直角方向、 Yo…軸直角方向外方
Y1…第1の軸直角方向、 Y2…第2の軸直角方向
C…周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバのピストンロッドの上端部が挿通固定される内側部材であって、前記ピストンロッドの軸直角方向外方側に張り出すフランジ部を備えた内側部材と、
前記内側部材の外周を取り囲み車体側に取り付けられる外側部材であって、前記フランジ部の上下に間隔をおいて対向配置される上側壁部及び下側壁部を備えた外側部材と、
前記内側部材と前記外側部材との間に介在する環状の弾性部材であって、前記フランジ部と前記上側壁部の間で挟圧される上側弾性部と前記フランジ部と前記下側壁部の間で挟圧される下側弾性部を備えた弾性部材と、
を備えてなり、
前記上側弾性部と前記下側弾性部の少なくとも一方の弾性部は、発泡樹脂成形体からなる第1弾性部と、前記第1弾性部と同一素材からなりかつ第1弾性部よりも低発泡率の発泡樹脂成形体又は未発泡の樹脂成形体からなる第2弾性部との上下少なくとも2層構造を有し、前記第1弾性部と前記第2弾性部の厚み比率を前記弾性部材の周方向で変化させた
ことを特徴とするサスペンションサポート。
【請求項2】
前記上側弾性部と前記下側弾性部の少なくとも一方の弾性部は、前記フランジ部と前記上側壁部又は前記下側壁部との間において、前記第2弾性部を前記フランジ部側とし、前記第1弾性部を前記上側壁部側又は前記下側壁部側とする上下少なくとも2層構造とされたことを特徴とする請求項1記載のサスペンションサポート。
【請求項3】
前記上側弾性部と前記下側弾性部の少なくとも一方の弾性部は、第1の軸直角方向において前記内側部材を挟んで相対する2箇所では前記第1弾性部の厚み比率が高く設定されるとともに、前記第1の軸直角方向に垂直な第2の軸直角方向において前記内側部材を挟んで対向する2箇所では前記第2弾性部の厚み比率が高く設定されたことを特徴とする請求項1又は2記載のサスペンションサポート。
【請求項4】
前記第1弾性部が発泡ウレタン成形体からなり、前記第2弾性部が前記第1弾性部よりも低発泡の発泡ウレタン成形体又はソリッドウレタン成形体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のサスペンションサポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−174563(P2011−174563A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39760(P2010−39760)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】