説明

サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法

【課題】本発明は、接続信頼性の高い端子部を有するサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属支持基板、第一絶縁層、第一配線層、第二絶縁層、第二配線層をこの順で有するサスペンション用基板であって、平面視上、上記第二配線層の端子部の近傍に、第三配線層の端子部が形成され、上記第三配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有しない上記第二絶縁層上、または、上記第一絶縁層上に形成され、両端子部には、それぞれ、同じ材料から構成されるめっき部が形成され、両めっき部の頂部が一致していることを特徴とするサスペンション用基板を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続信頼性の高い端子部を有するサスペンション用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。
【0003】
HDDに用いられるサスペンション用基板(フレキシャ)は、通常、一方の先端部分に形成され、磁気ヘッドスライダ等の記録再生用素子を実装する記録再生用素子実装領域と、他方の先端部分に形成され、外部回路基板との接続を行う外部回路基板接続領域と、記録再生用素子実装領域および外部回路基板接続領域を接続する配線層とを有する。
【0004】
また、サスペンション用基板は、通常、金属支持基板(例えばステンレス鋼)、絶縁層(例えばポリイミド樹脂)、配線層(例えば銅)がこの順に積層された基本構造を有する。サスペンション用基板における配線層は、例えば特許文献1に示すように、絶縁層の同一表面上に一対で形成される(平面配列の配線層)。これに対して、特許文献2、3に示すように、配線層を、絶縁層を介して積層したもの(積層配列の配線層)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−11387号公報
【特許文献2】特開平9−022570号公報
【特許文献3】特開平10−003632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HDDの高機能化に伴い、サスペンション用基板に必要とされる配線層の数は増加傾向にある。積層配列の配線層は、平面配列の配線層に比べて、構造上、配線層の数の増加に対応しやすいという利点がある。すなわち、積層配列の配線層は、介在する絶縁層の上下に配線層を配置できるため、平面配列の配線層に比べて、単純計算で2倍の配線層を配置できるという利点がある。
【0007】
一方、積層配列の配線層は、配線層が立体的に配置されるため、配線層の端子部の高さが揃いにくいという問題がある。そのため、高さが不揃いの2以上の端子部と、例えば記録再生用素子の端子部とを半田等で接続する場合に、良好な接続ができない場合が想定される。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、接続信頼性の高い端子部を有するサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、平面視上、上記第二配線層の端子部の近傍に、第三配線層の端子部が形成され、上記第二配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有する上記第二絶縁層上に形成され、上記第三配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有しない上記第二絶縁層上、または、上記第一絶縁層上に形成され、上記第二配線層の端子部および上記第三配線層の端子部には、それぞれ、同じ材料から構成されるめっき部が形成され、上記第二配線層の端子部に形成された上記めっき部の頂部、および、上記第三配線層の端子部に形成された上記めっき部の頂部が、一致していることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0010】
本発明によれば、第二配線層の端子部に形成されためっき部の頂部、および、第三配線層の端子部に形成されためっき部の頂部が一致していることから、接続信頼性の高い端子部を有するサスペンション用基板とすることができる。
【0011】
上記発明においては、上記第二配線層および上記第三配線層が、記録再生用素子と接続される配線層であることが好ましい。
【0012】
上記発明においては、平面視上、上記第二配線層の端子部と重複する上記第一配線層が、熱アシスト用配線層であることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするサスペンションを提供する。
【0014】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、接続信頼性の高い端子部を有するサスペンションとすることができる。
【0015】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションに配置された記録再生用素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0016】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、例えば記録再生用素子との接続信頼性の高い素子付サスペンションとすることができる。
【0017】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0018】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0019】
また、本発明においては、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層とを有し、平面視上、上記第二配線層の端子部の近傍に、第三配線層の端子部が形成され、上記第二配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有する上記第二絶縁層上に形成され、上記第三配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有しない上記第二絶縁層上、または、上記第一絶縁層上に形成されたサスペンション用基板の製造方法であって、上記第二配線層の端子部および上記第三配線層の端子部に、同時にめっき部を形成するめっき部形成工程を有し、上記めっき部形成工程において、上記第二配線層の端子部には第一給電端子から給電し、上記第三配線層の端子部には第二給電端子から給電し、上記第二給電端子により給電するめっき面積を、上記第一給電端子により給電するめっき面積よりも小さくすることで、上記第二配線層の端子部に形成される上記めっき部の頂部、および、上記第三配線層の端子部に形成された上記めっき部の頂部を、一致させることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、第二配線層の端子部および第三配線層の端子部に対して、めっき面積が異なる給電端子を用いて給電することで、第二配線層の端子部に形成されためっき部の頂部、および、第三配線層の端子部に形成されためっき部の頂部が一致したサスペンション用基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のサスペンション用基板は、接続信頼性の高い端子部を有するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】積層配列の配線層を有するサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図2】本発明における記録再生用素子実装領域の一例を示す概略平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明におけるめっき部を説明する概略断面図である。
【図5】めっき部を説明する概略断面図である。
【図6】本発明における記録再生用素子実装領域の他の例を示す概略平面図である。
【図7】図6の断面図である。
【図8】本発明におけるめっき部を説明する概略断面図である。
【図9】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図10】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図11】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図12】本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図13】本発明における給電方法を示す模式図である。
【図14】製造途中のサスペンション用基板を示す概略断面図である。
【図15】本発明のサスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0024】
A.サスペンション用基板
本発明のサスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、平面視上、上記第二配線層の端子部の近傍に、第三配線層の端子部が形成され、上記第二配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有する上記第二絶縁層上に形成され、上記第三配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有しない上記第二絶縁層上、または、上記第一絶縁層上に形成され、上記第二配線層の端子部および上記第三配線層の端子部には、それぞれ、同じ材料から構成されるめっき部が形成され、上記第二配線層の端子部に形成された上記めっき部の頂部、および、上記第三配線層の端子部に形成された上記めっき部の頂部が、一致していることを特徴とするものである。
【0025】
図1(a)は、積層配列の配線層を有するサスペンション用基板の一例を示す概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。なお、図1(a)では、便宜上、絶縁層およびカバー層の記載は省略している。図1(a)に示されるサスペンション用基板100は、一方の先端部分に形成された記録再生用素子実装領域101と、他方の先端部分に形成された外部回路基板接続領域102と、記録再生用素子実装領域101および外部回路基板接続領域102を電気的に接続する配線層103とを有するものである。また、図1(a)における配線層103は、一方が書込(ライト)用配線層であり、他方が読取(リード)用配線層である。
【0026】
また、図1(b)に示すように、サスペンション用基板100は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された第一絶縁層2xと、第一絶縁層2x上に形成された第一配線層3xと、第一配線層3x上に形成された第二絶縁層2yと、第二絶縁層2y上に形成された第二配線層3yと、第二配線層3yを覆うように形成されたカバー層4とを有するものである。なお、図1(b)では、第二絶縁層2yを介して、第一配線層3xおよび第二配線層3yが、平面視上重複するように積層されているが、本発明における第一配線層および第二配線層には、それぞれ任意のパターンを採用でき、平面視上重複していなくても良い。
【0027】
図2は、本発明における記録再生用素子実装領域の一例を示す概略平面図であり、図3は図2のA−A断面図である。なお、図2では、便宜上、絶縁層およびカバー層の記載は省略している。図2に示すように、平面視上、第二配線層3yの端子部3yaの近傍に第三配線層3zの端子部3zaが形成されている。上記「近傍」とは、100μm以内の領域をいい、50μm以内の領域であることが好ましい。また、図3に示すように、第二配線層の端子部3yaは、金属支持基板1側の表面に第一配線層3xを有する第二絶縁層2y上に形成され、第三配線層の端子部3zaは、金属支持基板1側の表面に第一配線層3xを有しない第二絶縁層2y上に形成されている。端子部3yaおよび端子部3zaは、ともに第二絶縁層2yに形成されているものの、第二絶縁層2yの下に第一配線層3xが存在するか否かによって、厚さ方向における位置が互いに異なる。
【0028】
また、図3に示すように、第二配線層の端子部3yaおよび第三配線層の端子部3zaには、それぞれ、同じ材料から構成されるめっき部5が形成されている。このめっき部5は、第一めっき部5aおよび第二めっき部5bから構成されている。本発明のサスペンション用基板は、第二配線層の端子部3yaに形成されためっき部5の頂部T、および、第三配線層の端子部3zaに形成されためっき部5の頂部Tが、一致していることを大きな特徴とする。
【0029】
ここで、「めっき部の頂部」とは、金属支持基板側とは反対側における端子部の表面に形成されためっき部において、最も厚い部分をいう。また、「頂部Tおよび頂部Tが一致している」とは、図4(a)、(b)に示すように、頂部Tおよび頂部Tの厚さ方向の差Dが、5μm以下であることをいう。なお、図4(a)は頂部Tが頂部Tよりも若干高い状態を示し、図4(b)は頂部Tが頂部Tよりも若干高い状態を示している。Dの値は、より小さいことが好ましく、具体的には3μm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明によれば、第二配線層の端子部に形成されためっき部の頂部、および、第三配線層の端子部に形成されためっき部の頂部が一致していることから、接続信頼性の高い端子部を有するサスペンション用基板とすることができる。図2に示したように、端子部3yaおよび端子部3zaは、ともに第二絶縁層2yに形成されているものの、第二絶縁層2yの下に第一配線層3xが存在するか否かによって、厚さ方向における位置が互いに異なる。このように、積層配列の配線層は、配線層が立体的に配置されるため、配線層の端子部の高さが揃いにくいという問題がある。これに対して、本発明のサスペンション用基板は、めっき部の厚さを調整することで、めっき部の高さを揃えることができるため、半田やACF(異方性導電膜)等との接触不良を抑制できるという利点がある。
【0031】
一方、配線層の端子部の高さを揃えるために、例えば図5に示すように、端子部3zaの下に、ダミー配線層3αを設けることが考えられる。ダミー配線層3αを設けることで、配線層の端子部の高さを揃えることは可能になる。しかしながら、ダミー配線層3αを設けることで以下のような問題が生じる。第一の問題として、ダミー配線層3αと、端子部3zaとの位置精度の問題が生じる。この位置精度の問題は、第一配線層3xと、端子部3yaとの間にも生じ得るが、位置合わせが必要な対象が増加するほど不良発生率は増加する。なお、ダミー配線層3αと、端子部3zaとの間に位置ズレが生じると、通常、端子部3zaの一部または全部が第二絶縁層2yの形状に沿って金属支持基板側に落ち込んだ形状となる。また、位置ズレを回避するために、ダミー配線層3αの幅を太くすると、配線層の高密度化を図ることが困難になる。第二の問題として、ダミー配線層3α、第二絶縁層2yおよび端子部3zaの密着性の問題が生じる。この密着性の問題も、第一配線層3x、第二絶縁層2yおよび端子部3yaの間にも生じ得るが、異相の接触面積が増加するほど不良発生率は増加する。これに対して、本発明のサスペンション用基板は、めっき部の厚さを調整することで、配線層の端子部の高さを揃えるため、これらの問題が生じないという利点がある。
以下、本発明のサスペンション用基板について、サスペンション用基板の部材と、サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0032】
1.サスペンション用基板の部材
まず、本発明のサスペンション用基板の部材について説明する。本発明のサスペンション用基板は、金属支持基板、第一絶縁層、第一配線層、第二絶縁層、第二配線層、第三配線層を少なくとも有するものである。なお、第三配線層については、後述する「2.サスペンション用基板の構成」で説明する。
【0033】
本発明における金属支持基板は、サスペンション用基板の支持体として機能するものである。金属支持基板の材料は、ばね性を有する金属であることが好ましく、具体的にはステンレス鋼等を挙げることができる。また、金属支持基板の厚さは、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内である。
【0034】
本発明における第一絶縁層は、金属支持基板上に形成されるものである。第一絶縁層の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば樹脂を挙げることができる。上記樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。絶縁性、耐熱性および耐薬品性に優れているからである。また、第一絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。第一絶縁層の厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明における第一配線層は、第一絶縁層上に形成されるものである。第一配線層の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。また、第一配線層の材料は、圧延銅であっても良く、電解銅であっても良い。第一配線層の厚さは、例えば5μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。
【0036】
本発明における第二絶縁層は、第一配線層上に形成されるものである。第二絶縁層の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記の第一絶縁層の材料として記載したものを用いることができる。中でも、第二絶縁層の材料は、ポリイミド樹脂であることが好ましい。また、第二絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。第一配線層および第二配線層の間の第二絶縁層の厚さ(配線間厚さ)は、特に限定されるものではないが、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明における第二配線層は、第二絶縁層上に形成されるものである。第二配線層の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記の第一配線層の材料として記載したものを用いることができる。中でも、第二配線層の材料は、銅(Cu)であることが好ましい。また、第二配線層の寸法の好ましい範囲は、上述した第一配線層の寸法の好ましい範囲と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0038】
本発明におけるカバー層は、第二配線層を覆うように形成されるものである。カバー層を設けることにより、第二配線層の劣化(腐食等)を防止できる。カバー層の材料としては、例えば、上述した第一絶縁層の材料として記載したものを挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。カバー層の厚さは、例えば2μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、2μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0039】
2.サスペンション用基板の構成
次に、本発明のサスペンション用基板の構成について説明する。本発明のサスペンション用基板は第三配線層を有し、その端子部は、平面視上、第二配線層の端子部の近傍に形成される。また、本発明において、第三配線層の端子部、および、第二配線層の端子部は、同一の対象(例えば記録再生用素子)に接続されるものであることが好ましい。第三配線層の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。また、第三配線層の材料は、圧延銅であっても良く、電解銅であっても良い。また、第三配線層の厚さは、例えば5μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、9μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。
【0040】
本発明における第三配線層は、第二配線層と同じ材料であっても良く、第一配線層と同じ材料であっても良く、第二配線層および第一配線層と異なる材料であっても良い。また、第三配線層は、第二配線層または第一配線層と同一の層であることが好ましい。ここで、「同一の層」とは、製造工程において同時に形成された層をいう。第三配線層は、第二配線層または第一配線層と同一の層であれば、製造工程の簡略化を図ることができる。なお、上述した図2では、第三配線層3zが第二配線層3yと同一の層であり、後述する図6では、第三配線層3zが第一配線層3xと同一の層である。
【0041】
また、第三配線層の端子部は、(i)金属支持基板側の表面に第一配線層を有しない第二絶縁層上、または、(ii)第一絶縁層上に形成される。(i)の具体例としては、上述した図3に示すように、第三配線層の端子部3zaが、金属支持基板1側の表面に第一配線層3xを有しない第二絶縁層2y上に形成されている態様を挙げることができる。一方、(ii)の具体例については、図6および図7を用いて説明する。図6は、本発明における記録再生用素子実装領域の他の例を示す概略平面図であり、図7(a)は図6のA−A断面図であり、図7(b)は図6のB−B断面図である。なお、図6では、便宜上、絶縁層およびカバー層の記載は省略している。図7(a)に示すように、第三配線層の端子部3zaが、第一絶縁層2x上に形成されている態様を挙げることができる。
【0042】
一方、第二配線層の端子部は、金属支持基板側の表面に第一配線層を有する第二絶縁層上に形成される。具体的には、上述した図3に示すように、第二配線層の端子部3yaが、金属支持基板1側の表面に第一配線層3xを有する第二絶縁層2y上に形成されている態様を挙げることができる。なお、端子部3yaの下に存在する第一配線層3xは、端子部であっても良く、配線部(引き回し部)であっても良い。
【0043】
また、第二配線層の端子部および第三配線層の端子部には、それぞれ、同じ材料から構成されるめっき部が形成される。めっき部を設けることにより、端子部の劣化(腐食等)を防止できる。めっき部の種類は、限定されるものではないが、例えば、Auめっき、Niめっき、Agめっき等を挙げることができる。めっき部の厚さは、例えば0.1μm以上であることが好ましい。また、めっき部は、単層構造であっても良く、複層構造であっても良い。中でも、本発明においては、上述した図3に示すように、めっき部5が、端子部上に形成された第一めっき部5aと、第一めっき部5a上に形成された第二めっき部5bとから構成されていることが好ましい。例えば密着性が良好なめっき部とすることができるからである。特に、本発明においては、第一めっき部がNiめっきであり、第二めっき部がAuめっき部であることが好ましい。密着性および化学的安定性の高いめっき部とすることができるからである。
【0044】
ここで、図8に示すように、第二配線層の端子部3ya上に形成された第一めっき部5aの厚さをTy1とし、その第一めっき部5a上に形成された第二めっき部5bの厚さをTy2とする。Ty1の値は特に限定されるものではないが、例えば0.1μm〜1.5μmの範囲内であることが好ましく、0.3μm〜1.2μmの範囲内であることがより好ましい。Ty1の値が小さすぎると、端子部の劣化を十分に保護できない可能性があり、Ty1の値が大きすぎると、端子部のサイズが大きくなり、端子部の高密度化が図れない可能性があるからである。Ty2の値は、特に限定されるものではないが、例えば0.1μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜2.5μmの範囲内であることがより好ましい。Ty2の値が小さすぎると、例えば化学的安定性を十分に維持できない可能性があり、Ty2の値が大きすぎると、例えばコストが増加する可能性があるからである。また、Ty2/Ty1の値は、例えば1.0〜2.0の範囲内であることが好ましく、1.6〜2.0の範囲内であることがより好ましい。
【0045】
また、図8に示すように、第三配線層の端子部3za上に形成された第一めっき部5aの厚さをTz1とし、その第一めっき部5a上に形成された第二めっき部5bの厚さをTz2とする。Tz1の値は特に限定されるものではないが、例えば0.1μm〜2.0μmの範囲内であることが好ましく、0.3μm〜1.5μmの範囲内であることがより好ましい。Tz2の値は、特に限定されるものではないが、例えば0.1μm〜5.0μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜4.0μmの範囲内であることがより好ましい。また、Tz2/Tz1の値は、例えば1.0〜2.7の範囲内であることが好ましく、1.7〜2.5の範囲内であることがより好ましい。また、本発明においては、Ty2/Ty1の値と、Tz2/Tz1の値とが一致していることが好ましい。なお、「一致している」とは、両者の平均に対して、両者が平均の±10%の範囲内にあることをいう。
【0046】
また、本発明においては、第一配線層、第二配線層および第三配線層として、任意の機能を有する配線層を用いることができる。これらの配線層の具体例としては、ライト用配線層、リード用配線層、熱アシスト用配線層、アクチュエータ用配線層、グランド用配線層、電源用配線層、フライトハイトコントロール用配線層、センサー用配線層等を挙げることができる。
【0047】
中でも、本発明においては、第二配線層および第三配線層が、記録再生用素子に接続される配線層であることが好ましい。具体的には、第二配線層および第三配線層が、ライト用配線層、リード用配線層、グランド用配線層のいずれかであることが好ましい。ここで、上述した図2における第二配線層3yおよび第三配線層3zは、ライト用配線層またはリード用配線層であり、一対の差動配線を構成している。また、上述した図6、図7(b)における第二配線層3yおよび第三配線層3zも、ライト用配線層またはリード用配線層であり、一対の差動配線を構成している。また、本発明における記録再生用素子は、特に限定されるものではないが、磁気発生素子を有するものが好ましい。具体的には、磁気ヘッドスライダを挙げることができる。
【0048】
一方、平面視上、第二配線層の端子部と重複する第一配線層は、特に限定されるものではないが、熱アシスト用配線層またはアクチュエータ用配線層であることが好ましい。熱アシスト用素子およびアクチュエータ素子は、サスペンション用基板の金属支持基板側に実装される場合があるからである。また、第一配線層は、熱アシスト用素子またはアクチュエータ素子のグランド用配線層として用いても良い。
【0049】
熱アシスト用素子は、記録再生用素子の記録を熱によりアシストできるものであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明における熱アシスト用素子は、光を利用した素子であることが好ましい。光ドミナント記録方式による熱アシスト記録を行うことができるからである。光を利用した熱アシスト用素子としては、例えば半導体レーザーダイオード素子を挙げることができる。半導体レーザーダイオード素子は、pn型の素子であっても良く、pnp型またはnpn型の素子であっても良い。
【0050】
アクチュエータ素子は、通常、マイクロアクチュエータ、ミリアクチュエータが該当する。アクチュエータ素子としては、例えばピエゾ素子を挙げることができる。ピエゾ素子としては、例えばPZTからなるものを挙げることができる。ピエゾ素子の伸縮応答を利用することで、サブミクロン単位での位置決めを行うことができる。また、ピエゾ素子には、エネルギー効率が高い、耐荷重が大きい、応答性が速い、摩耗劣化がない、磁場が発生しないという利点がある。また、本発明においては、2極のピエゾ素子を1個用いても良い。1極のピエゾ素子を2個用いても良い。
【0051】
B.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするものである。
【0052】
図9は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図9に示されるサスペンション300は、上述したサスペンション用基板100と、サスペンション用基板100の金属支持基板側の表面に設けられたロードビーム200とを有するものである。
【0053】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、接続信頼性の高い端子部を有するサスペンションとすることができる。
【0054】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板およびロードビームを有する。本発明におけるサスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。一方、本発明におけるロードビームは、サスペンション用基板の金属支持基板側の表面に設けられるものである。ロードビームの材料は、特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、ステンレス鋼であることが好ましい。
【0055】
C.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションに配置された記録再生用素子と、を有することを特徴とするものである。
【0056】
図10は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図10に示される素子付サスペンション400は、上述したサスペンション300と、サスペンション300(サスペンション用基板100の記録再生用素子実装領域101)に実装された記録再生用素子301とを有するものである。
【0057】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、例えば記録再生用素子との接続信頼性の高い素子付サスペンションとすることができる。
【0058】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび記録再生用素子を有する。本発明におけるサスペンションについては、上記「B.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、本発明における記録再生用素子については、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、本発明の素子付サスペンションは、上述した熱アシスト用素子およびアクチュエータ素子の少なくとも一方を有していても良い。
【0059】
D.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするものである。
【0060】
図11は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図11に示されるハードディスクドライブ500は、上述した素子付サスペンション400と、素子付サスペンション400がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク401と、ディスク401を回転させるスピンドルモータ402と、素子付サスペンション400の素子を移動させるアーム403およびボイスコイルモータ404と、上記の部材を密閉するケース405とを有するものである。
【0061】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0062】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「C.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0063】
E.サスペンション用基板の製造方法
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法について説明する。本発明のサスペンション用基板の製造方法は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層とを有し、平面視上、上記第二配線層の端子部の近傍に、第三配線層の端子部が形成され、上記第二配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有する上記第二絶縁層上に形成され、上記第三配線層の端子部は、上記金属支持基板側の表面に上記第一配線層を有しない上記第二絶縁層上、または、上記第一絶縁層上に形成されたサスペンション用基板の製造方法であって、上記第二配線層の端子部および上記第三配線層の端子部に、同時にめっき部を形成するめっき部形成工程を有し、上記めっき部形成工程において、上記第二配線層の端子部には第一給電端子から給電し、上記第三配線層の端子部には第二給電端子から給電し、上記第二給電端子により給電するめっき面積を、上記第一給電端子により給電するめっき面積よりも小さくすることで、上記第二配線層の端子部に形成される上記めっき部の頂部、および、上記第三配線層の端子部に形成された上記めっき部の頂部を、一致させることを特徴とするものである。
【0064】
図12は、本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。図12においては、まず、金属支持部材1A、絶縁部材2Aおよび導体部材3Aがこの順に積層された積層部材を準備する(図12(a))。次に、導体部材3Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、第一配線層3xを形成する(図12(b))。次に、第一配線層3x上および絶縁部材2A上に、第二絶縁層2yを形成する(図12(c))。
【0065】
その後、第二絶縁層2yの表面に、スパッタリングによりシード層(図示せず)を形成し、そのシード層の上に、ドライフィルムレジストから構成されるレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出するシード層の表面に、端子部3yaを有する第二配線層および端子部3zaを有する第三配線層を形成する(図12(d))。次に、図示しないが、第二配線層および第三配線層を覆うようにカバー層を形成し、絶縁部材2Aに対してウェットエッチングを行い第一絶縁層2xを形成する。
【0066】
その後、第二配線層の端子部3yaおよび第三配線層の端子部3zaに、同時にめっき部5を形成する(図12(e))。この際、第二配線層の端子部3yaには第一給電端子から給電し、第三配線層の端子部3zaには第二給電端子から給電し、第二給電端子により給電するめっき面積を、第一給電端子により給電するめっき面積よりも小さくする。これにより、端子部3za上のめっき部5の厚さを、端子部3ya上のめっき部5の厚さよりも厚くできる。次に、図示しないが、金属支持部材1Aに対して、ウェットエッチングを行い、金属支持基板1を形成する。これにより、サスペンション用基板が得られる。
【0067】
本発明によれば、第二配線層の端子部および第三配線層の端子部に対して、めっき面積が異なる給電端子を用いて給電することで、第二配線層の端子部に形成されためっき部の頂部、および、第三配線層の端子部に形成されためっき部の頂部が一致したサスペンション用基板を得ることができる。例えば図13に示すように、第二配線層の端子部およびその他の部位には、第一給電端子11から給電し、第三配線層の端子部には、第二給電端子12から給電する。この際、第二給電端子12により給電するめっき面積Sを、第一給電端子11により給電するめっき面積Sよりも小さくすると、第二給電端子12からの給電における電流密度は、第一給電端子11からの給電における電流密度よりも大きくなる。その結果、第三配線層の端子部に形成されるめっき部は、第二配線層の端子部に形成されるめっき部よりも厚く形成される。
【0068】
また、図14は、製造途中のサスペンション用基板を示す概略断面図である。製造途中の複数のサスペンション用基板100は、支持枠110と一体化し、シートを構成している。例えば、第一給電端子11を支持枠110の導体部材に形成し、第二給電端子12を支持枠110の金属支持部材に形成することで、二系統の給電が可能となる。なお、金属支持部材(例えばステンレス鋼)を給電端子とする場合には、絶縁部材を貫通するビアを介して、配線層に給電を行うことが好ましい。また、本発明のサスペンション用基板の製造方法は、サブトラクティブ法による製造方法と、アディティブ法による製造方法とに大別することができる。
【0069】
1.サブトラクティブ法
まず、サブトラクティブ法による製造方法について説明する。サブトラクティブ法による製造方法の一例としては、金属支持部材、絶縁部材および導体部材がこの順に積層された積層部材を準備する積層部材準備工程と、上記導体部材をエッチングし、第一配線層を形成する第一配線層形成工程と、上記第一配線層上に第二絶縁層を形成する第二絶縁層形成工程と、上記第二絶縁層上に第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、上記第二配線層を覆うようにカバー層を形成するカバー層形成工程と、上記絶縁部材をエッチングし、第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、上記第二配線層の端子部および上記第三配線層の端子部に、同時にめっき部を形成するめっき部形成工程と、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持基板形成工程と、を有する製造方法を挙げることができる。
【0070】
なお、上述した図12は、サブトラクティブ法によるサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
以下、サブトラクティブ法によるサスペンション用基板の製造方法について、工程ごとに説明する。
【0071】
(1)積層部材準備工程
積層部材準備工程は、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する工程である。
【0072】
サブトラクティブ法においては、積層部材の金属支持部材をエッチングすることにより金属支持基板が得られ、積層部材の絶縁部材をエッチングすることにより第一絶縁層が得られ、積層体の導体部材をエッチングすることにより第一配線層が得られる。積層部材は、市販の三層材であっても良く、金属支持部材に対して絶縁部材および導体部材を順次形成して得られたものであっても良い。
【0073】
(2)第一配線層形成工程
第一配線層形成工程は、上記導体部材をエッチングし、第一配線層を形成する工程である。
【0074】
第一配線層の形成方法としては、例えば、積層部材の導体部材上に、ドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する導体部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液の種類は、導体部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば導体部材の材料がCuである場合には、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。
【0075】
また、サブトラクティブ法においては、導体部材のエッチングと同時に、金属支持部材のエッチングを行っても良い。金属支持部材のエッチングは、例えば、開口部や治具孔の形成のためのエッチングを挙げることができる。また、必要であれば、後述する金属支持基板形成工程で行う加工の少なくとも一部を、導体部材のエッチングと同時に行っても良い。
【0076】
(3)第二絶縁層形成工程
第二絶縁層形成工程は、上記第一配線層上に第二絶縁層を形成する工程である。
【0077】
第二絶縁層の形成方法は、特に限定されるものではなく、第二絶縁層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、第二絶縁層の材料が感光性材料である場合には、全面形成した第二絶縁層に露光現像を行うことによりパターン状の第二絶縁層を得ることができる。また、第二絶縁層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成した第二絶縁層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状の第二絶縁層を得ることができる。
【0078】
(4)第二配線層形成工程
第二配線層形成工程は、上記第二絶縁層上に第二配線層を形成する工程である。
【0079】
第二配線層の形成方法としては、例えば電解めっき法等を挙げることができる。電解めっき法を用いる場合、第二配線層の形成前に、スパッタリング法等により第二絶縁層の表面にシード層を形成することが好ましい。
【0080】
(5)カバー層形成工程
カバー層形成工程は、上記第二配線層を覆うようにカバー層を形成する工程である。
【0081】
カバー層の形成方法は、特に限定されるものではなく、カバー層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、カバー層の材料が感光性材料である場合には、全面形成したカバー層に露光現像を行うことによりパターン状のカバー層を得ることができる。また、カバー層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成したカバー層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状のカバー層を得ることができる。
【0082】
(6)第一絶縁層形成工程
第一絶縁層形成工程は、上記絶縁部材をエッチングし、第一絶縁層を形成する工程である。
【0083】
第一絶縁層の形成方法としては、例えば、絶縁部材に対して、ドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する絶縁部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、絶縁部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば絶縁部材の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。
【0084】
(7)めっき部形成工程
めっき部形成工程は、上記第二配線層の端子部および上記第三配線層の端子部に、同時にめっき部を形成する工程である。さらに、本発明においては、上記第二配線層の端子部には第一給電端子から給電し、上記第三配線層の端子部には第二給電端子から給電し、上記第二給電端子により給電するめっき面積を、上記第一給電端子により給電するめっき面積よりも小さくすることで、上記第二配線層の端子部に形成される上記めっき部の頂部、および、上記第三配線層の端子部に形成された上記めっき部の頂部を、一致させることを大きな特徴とする。
【0085】
上述した図13に示すように、第一給電端子11により給電するめっき面積をSとし、第二給電端子12により給電するめっき面積をSとした場合、S/Sの値は、所望のめっき部を形成できる値であれば特に限定されるものではないが、例えば50〜300の範囲内であることが好ましく、50〜200の範囲内であることがより好ましく、100〜150の範囲内であることがさらに好ましい。
【0086】
(8)金属支持基板形成工程
金属支持基板形成工程は、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する工程である。本工程において、通常は、金属支持基板の外形加工を行う。
【0087】
金属支持部材をエッチングする方法は特に限定されるものでないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、金属支持部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば金属支持部材の材料がステンレス鋼である場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。
【0088】
2.アディティブ法
次に、アディティブ法による製造方法について説明する。アディティブ法による製造方法の一例としては、金属支持部材を準備する金属支持部材準備工程と、上記金属支持部材上に第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、上記第一絶縁層上に第一配線層を形成する第一配線層形成工程と、上記第一配線層上に第二絶縁層を形成する第二絶縁層形成工程と、上記第二絶縁層上に第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、上記第二配線層を覆うようにカバー層を形成するカバー層形成工程と、上記第二配線層の端子部および上記第三配線層の端子部に、同時にめっき部を形成するめっき部形成工程と、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持基板形成工程と、を有する製造方法を挙げることができる。
【0089】
図15は、アディティブ法によるサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。図15においては、まず、金属支持部材1Aを準備する(図15(a))。次に、金属支持部材1Aの表面上に、パターン状の第一絶縁層2xを形成する(図15(b))。次に、第一絶縁層2xの表面に、スパッタリングによりシード層(図示せず)を形成し、そのシード層の上に、ドライフィルムレジストから構成されるレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出するシード層の表面に、第一配線層3xを形成する(図15(c))。その後の工程である図15(d)〜(f)については、上述した図12(c)〜(e)に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
以下、サブトラクティブ法によるサスペンション用基板の製造方法について、工程ごとに説明する。
【0090】
(1)金属支持部材準備工程
金属支持部材準備工程は、金属支持部材を準備する工程である。金属支持部材には、例えば市販の金属支持部材を用いることができる。
【0091】
(2)第一絶縁層形成工程
第一絶縁層形成工程は、上記金属支持部材上に、第一絶縁層を形成する工程である。
【0092】
第一絶縁層の形成方法は、特に限定されるものではなく、第一絶縁層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、第一絶縁層の材料が感光性材料である場合には、全面形成した第一絶縁層に露光現像を行うことによりパターン状の第一絶縁層を得ることができる。また、第一絶縁層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成した第一絶縁層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状の第一絶縁層を得ることができる。
【0093】
(3)第一配線層形成工程
第一配線層形成工程は、上記第一絶縁層上に第一配線層を形成する工程である。
【0094】
第一配線層の形成方法としては、例えば電解めっき法等を挙げることができる。電解めっき法を用いる場合、第一配線層の形成前に、スパッタリング法等により第一絶縁層の表面にシード層を形成することが好ましい。
【0095】
(4)その他の工程
その他の工程については、上述したサブトラクティブ法による製造方法で記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0098】
[実施例1]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持部材)、厚さ10μmのポリイミド樹脂層(絶縁部材)、厚さ9μmの電解銅層(導体部材)を有する積層部材を準備した(図12(a))。次に、ドライフィルムレジストを積層部材の両面にラミネートし、レジストパターンを形成した。次に、塩化第二鉄液を用いてエッチングし、エッチング後レジスト剥膜を行った。これにより、導体部材から第一配線層を形成し(図12(b)、金属支持部材に治具孔を形成した。
【0099】
その後、パターニングされた第一配線層上に、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングし、所定のパターニングにより第二絶縁層を形成した(図12(c))。次に、第二絶縁層側の表面に、スパッタリング法によりCrからなるシード層を形成した。次に、シード層上に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する部分に、電解銅めっき法により、第二配線層および第三配線層を形成した(図12(d))。
【0100】
シード層の除去後、パターニングされた第二配線層上および第三配線層上に、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングし、所定のパターニングによりカバー層を形成した。次に、絶縁部材をパターニングするために、レジスト製版し、露出する部位のポリイミド樹脂をウェットエッチングで除去し、第一絶縁層を形成した。
【0101】
その後、第二配線層の端子部および第三配線層の端子部に、電解Auめっきによりめっき部を形成した(図12(e))。第二配線層の端子部には第一給電端子から給電し、第三配線層の端子部には第二給電端子から給電し、第一給電端子により給電するめっき面積Sおよび第二給電端子により給電するめっき面積Sの割合を、S:S=150:1とした。また、めっき条件は、電流0.8A、電圧1.8V、温度65℃、時間180秒とした。最後に、金属支持基板の外形加工を行った。これにより、サスペンション用基板を得た。
【0102】
得られたサスペンション用基板に対して、めっき部の厚さを測定した。その結果、図4(a)に示すDは2.8μmであった。また、第二配線層の端子部3ya上に形成されためっき部5の厚さは2.8μmであり、第三配線層の端子部3za上に形成されためっき部5の厚さは3.9μmであった。
【0103】
[実施例2]
まず、厚さ18μmのSUS304(金属支持部材)を用意した(図15(a))。次に、金属支持部材上に、感光性ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングし、所定のパターニングにより第一絶縁層を形成した(図15(b))。次に、第一絶縁層側の表面に、スパッタリング法によりCrからなるシード層を形成した。次に、シード層上に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する部分に、電解銅めっき法により、第一配線層を形成した(図15(c))。
【0104】
シード層の除去後、パターニングされた第一配線層上に、感光性ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングし、所定のパターニングにより第二絶縁層を形成した(図15(d))。次に、第二絶縁層側の表面に、スパッタリング法によりCrからなるシード層を形成した。次に、シード層上に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する部分に、電解銅めっき法により、および第三配線層を形成した(図15(e))。
【0105】
シード層の除去後、パターニングされた第二配線層上および第三配線層上に、ポリイミド前駆体溶液をダイコーターでコーティングし、所定のパターニングによりカバー層を形成した。次に、絶縁部材をパターニングするために、レジスト製版し、露出する部位のポリイミド樹脂をウェットエッチングで除去し、第一絶縁層を形成した。
【0106】
その後、第二配線層の端子部および第三配線層の端子部に、電解Auめっきによりめっき部を形成した(図12(f))。第二配線層の端子部には第一給電端子から給電し、第三配線層の端子部には第二給電端子から給電し、第一給電端子により給電するめっき面積Sおよび第二給電端子により給電するめっき面積Sの割合を、S:S=150:1とした。また、めっき条件は、電流0.8A、電圧1.8V、温度65℃、時間180秒とした。最後に、金属支持基板の外形加工を行った。これにより、サスペンション用基板を得た。
【符号の説明】
【0107】
1…金属支持基板、 2x…第一絶縁層、 2y…第二絶縁層、 3x…第一配線層、 3y…第二配線層、 3z…第三配線層、 3ya…第二配線層の端子部、 3za…第三配線層の端子部、 4…カバー層、 5…めっき部、 5a…第一めっき部、 5b…第二めっき部、 11…第一給電部、 12…第二給電部、 100…サスペンション用基板、 101…記録再生用素子実装領域、 102…外部回路基板接続領域、 103…配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、前記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
平面視上、前記第二配線層の端子部の近傍に、第三配線層の端子部が形成され、
前記第二配線層の端子部は、前記金属支持基板側の表面に前記第一配線層を有する前記第二絶縁層上に形成され、
前記第三配線層の端子部は、前記金属支持基板側の表面に前記第一配線層を有しない前記第二絶縁層上、または、前記第一絶縁層上に形成され、
前記第二配線層の端子部および前記第三配線層の端子部には、それぞれ、同じ材料から構成されるめっき部が形成され、
前記第二配線層の端子部に形成された前記めっき部の頂部、および、前記第三配線層の端子部に形成された前記めっき部の頂部が、一致していることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記第二配線層および前記第三配線層が、記録再生用素子と接続される配線層であることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
平面視上、前記第二配線層の端子部と重複する前記第一配線層が、熱アシスト用配線層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板と、前記サスペンション用基板の前記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするサスペンション。
【請求項5】
請求項4に記載のサスペンションと、前記サスペンションに配置された記録再生用素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項6】
請求項5に記載の素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項7】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、前記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二配線層とを有し、平面視上、前記第二配線層の端子部の近傍に、第三配線層の端子部が形成され、前記第二配線層の端子部は、前記金属支持基板側の表面に前記第一配線層を有する前記第二絶縁層上に形成され、前記第三配線層の端子部は、前記金属支持基板側の表面に前記第一配線層を有しない前記第二絶縁層上、または、前記第一絶縁層上に形成されたサスペンション用基板の製造方法であって、
前記第二配線層の端子部および前記第三配線層の端子部に、同時にめっき部を形成するめっき部形成工程を有し、
前記めっき部形成工程において、前記第二配線層の端子部には第一給電端子から給電し、前記第三配線層の端子部には第二給電端子から給電し、前記第二給電端子により給電するめっき面積を、前記第一給電端子により給電するめっき面積よりも小さくすることで、前記第二配線層の端子部に形成される前記めっき部の頂部、および、前記第三配線層の端子部に形成された前記めっき部の頂部を、一致させることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−65364(P2013−65364A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201904(P2011−201904)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】