説明

サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法

【課題】本発明は、配線層からビアが突出することによる弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができるサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、ステンレス鋼である金属支持基板、絶縁層、配線層がこの順に積層され、上記絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および上記配線層がこの順で形成され、上記密着層は、上記金属支持基板の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記絶縁層から突出しないように形成され、上記配線層は、上記ビア層を覆うように形成され、上記ビア層は、上記配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線層からビアが突出することによる弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができるサスペンション用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及等によりパーソナルコンピュータの情報処理量の増大や情報処理速度の高速化が要求されてきており、それに伴って、パーソナルコンピュータに組み込まれているハードディスクドライブ(HDD)も大容量化や情報伝達速度の高速化が必要となってきている。HDDに用いられるサスペンション用基板(フレキシャ)は、通常、金属支持基板(例えばステンレス鋼)、絶縁層(例えばポリイミド樹脂)、配線層(例えば銅)がこの順に積層された基本構造を有する。
【0003】
金属支持基板は、通常、サスペンション用基板にばね性を付与するものであるが、ばねとしての機能以外に、配線層のグランドとしての機能を付与することが知られている。例えば、特許文献1においては、金属パッド(配線層)および金属薄板(金属支持基板)を、絶縁層を貫通し、金属めっきから構成される導通部分(ビア)により、電気的に接続した磁気ヘッドサスペンションが開示されている。また、特許文献2においては、貫通孔内で導電性基板(金属支持基板)に接触するように延びる導体パターン(配線層)を有する配線回路基板が開示されている。さらに、特許文献3においては、グランド配線および金属支持基板が導通するように、ベース開口部内に金属充填層(ビア)を形成する工程を有する回路付サスペンション用基板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−202359号公報
【特許文献2】特開2007−115864号公報
【特許文献3】特開2007−58967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1の図2のように、導通部分9(ビア)を金属層7(配線層)から突出するように形成すると、以下のような弊害がある。例えば、ビアの位置が、平面視上、磁気ヘッドスライダ等の素子を実装する領域と重複すると、突出したビアが素子の平坦性を阻害する可能性がある。また、ビアが配線層から突出すると、突出により平面上に広がった部分の形状制御が困難な場合があり、その部分が近傍に存在する配線層等に悪影響を与える可能性もある。なお、これらの弊害は、特許文献3の図3のように、金属充填層7(ビア)がグランド配線14から突出する場合にも同様に生じ得る。そのため、ビアの突出による弊害を防止する必要がある。一方、HDDの高機能化に伴い、サスペンション用基板に必要とされる配線層の数は増加傾向にあり、ビアの小径化を図る必要がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、配線層からビアが突出することによる弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができるサスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および上記配線層がこの順で形成され、上記密着層は、上記金属支持基板の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記絶縁層から突出しないように形成され、上記配線層は、上記ビア層を覆うように形成され、上記ビア層は、上記配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0008】
本発明によれば、ビア層が配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。このように、本発明のサスペンション用基板は、ビア層の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れる。
【0009】
上記発明においては、上記第一密着層が、ストライクめっき層であることが好ましい。ストライクめっき層は、例えばめっき形成用の前処理をした金属支持基板の表面の不動態膜を除去して第一密着層を形成することができ、金属支持基板(ステンレス鋼)との密着性が良好になるからである。
【0010】
上記発明においては、上記第二密着層が、NiまたはCuを含有することが好ましい。第一密着層との密着性が良好な第二密着層とすることができるからである。
【0011】
上記発明においては、上記ビア層が、めっき層または金属微粒子含有層であることが好ましい。電気特性の良いビア層とすることができ、且つ生産性が高い方法で作製することができるからである。
【0012】
上記発明においては、上記第二密着層および上記ビア層が同一の層であることが好ましい。製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0013】
上記発明においては、上記ビア層および上記配線層が同一の層であることが好ましい。製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0014】
また、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、第一密着層および上記配線層がこの順で形成され、上記第一密着層は、NiまたはCuを含有するストライクめっき層であり、上記開口部における上記配線層は、上記開口部の周囲における上記配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0015】
本発明によれば、開口部における配線層が周囲の配線層よりも突出しないことから、ビア部分(絶縁層の開口部に形成された配線層)の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、配線層および金属支持基板の間に特定の密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。
【0016】
また、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第一絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および上記第二配線層がこの順で形成され、上記密着層は、上記金属支持基板の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記第二絶縁層から突出しないように形成され、上記第二配線層は、上記ビア層を覆うように形成され、上記ビア層は、上記第二配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0017】
本発明によれば、ビア層が第二配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。
【0018】
また、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第一絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、第一密着層および上記第二配線層がこの順で形成され、上記第一密着層は、NiまたはCuを含有するストライクめっき層であり、上記開口部における上記第二配線層は、上記開口部の周囲における上記第二配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0019】
本発明によれば、開口部における第二配線層が周囲の第二配線層よりも突出しないことから、ビア部分(第一絶縁層および第二絶縁層の開口部に形成された第二配線層)の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、第二配線層および金属支持基板の間に特定の密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。
【0020】
また、本発明においては、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするサスペンションを提供する。
【0021】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、ビアの突出による弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができるサスペンションとすることができる。
【0022】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上記サスペンションに配置された記録再生用素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0023】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、ビアの突出による弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができる素子付サスペンションとすることができる。
【0024】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0025】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0026】
また、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、開口部を有する上記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、上記絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記絶縁層から突出しない密着層を形成する密着層形成工程と、上記密着層上に、ビア層を形成するビア層形成工程と、上記ビア層を覆う配線層を形成する配線層形成工程と、を有し、上記ビア層を上記配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0027】
本発明によれば、ビア層が配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。このように、ビア層の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れるサスペンション用基板を得ることができる。
【0028】
上記発明においては、上記第一密着層を、ストライクめっき法により形成することが好ましい。ストライクめっき法を用いることにより、金属支持基板との密着性が良好な第一密着層を得ることができるからである。
【0029】
上記発明においては、上記第二密着層を、めっき法により形成することが好ましい。第一密着層との密着性が良好な第二密着層を得ることができるからである。
【0030】
上記発明においては、上記ビア層を、めっき法または印刷法により形成することが好ましい。電気特性の良いビア層を、生産性が高い方法で作製することができるからである。
【0031】
また、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、開口部を有する上記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、上記絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である第一密着層を形成する密着層形成工程と、上記第一密着層上に、上記配線層を形成する配線層形成工程と、を有し、上記開口部における上記配線層を、上記開口部の周囲における上記配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0032】
本発明によれば、開口部における配線層が周囲の配線層よりも突出しないことから、ビア部分(絶縁層の開口部に形成された配線層)の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、配線層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。
【0033】
また、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、開口部を有する上記第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、上記第一絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記第二絶縁層から突出しない密着層を形成する密着層形成工程と、上記密着層上に、ビア層を形成するビア層形成工程と、上記ビア層を覆う第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、を有し、上記ビア層を上記第二配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0034】
本発明によれば、ビア層が第二配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。
【0035】
また、本発明においては、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、開口部を有する上記第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、上記第一絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である第一密着層を形成する密着層形成工程と、上記第一密着層上に、上記第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、を有し、上記開口部における上記第二配線層を、上記開口部の周囲における上記第二配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0036】
本発明によれば、開口部における第二配線層が周囲の第二配線層よりも突出しないことから、ビア部分(第一絶縁層および第二絶縁層の開口部に形成された第二配線層)の突出による弊害を防止できる。さらに、本発明によれば、第二配線層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明のサスペンション用基板は、ビアの突出による弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。
【図2】図1(a)における記録再生用素子実装領域を拡大した拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】従来のビアを説明する概略断面図である。
【図5】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図6】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図7】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図8】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図9】インターリーブ構造の配線層を説明する模式図である。
【図10】本発明のサスペンション用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明のサスペンション用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図12】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図13】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図14】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図15】本発明におけるビア層等を説明する概略断面図である。
【図16】本発明のサスペンション用基板の他の例を示す概略断面図である。
【図17】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図18】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図19】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図20】本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図21】本発明のサスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【図22】本発明のサスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【図23】本発明のサスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0040】
A.サスペンション用基板
本発明のサスペンション用基板は、4つの実施態様に大別することができる。本発明のサスペンション用基板について、第一実施態様〜第四実施態様に分けて説明する。
【0041】
1.第一実施態様
第一実施態様のサスペンション用基板は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および上記配線層がこの順で形成され、上記密着層は、上記金属支持基板の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記絶縁層から突出しないように形成され、上記配線層は、上記ビア層を覆うように形成され、上記ビア層は、上記配線層から突出しないことを特徴とするものである。
【0042】
図1は、第一実施態様のサスペンション用基板の一例を示す模式図である。図1(a)はサスペンション用基板の概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。なお、図1(a)では、便宜上、カバー層および絶縁層の記載は省略している。図1(a)に示されるサスペンション用基板100は、一方の先端部分に形成された記録再生用素子実装領域101と、他方の先端部分に形成された外部回路基板接続領域102と、記録再生用素子実装領域101および外部回路基板接続領域102を電気的に接続する複数の配線層103a〜103dとを有するものである。配線層103aおよび配線層103bは一対の配線層であり、同様に、配線層103cおよび配線層103dも一対の配線層である。これらの2つの配線層は、一方がライト用(記録用、書込み用)配線層であり、他方がリード用(再生用、読取り用)配線層である。一方、図1(b)に示すように、サスペンション用基板100は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成された配線層3と、配線層3上に形成されたカバー層4とを有する。
【0043】
図2は、図1(a)における記録再生用素子実装領域を拡大した拡大図である。図2において、4本の配線層103a〜103dは、記録再生用素子実装領域101の近傍まで配置され、記録再生用素子(図示せず)と電気的に接続される。また、図2においては、記録再生用素子の接地(グランド)を目的としたグランド用配線層103eが設けられている。図3は、図2のA−A断面図である。図3に示すように、第一実施態様においては、絶縁層2の開口部における金属支持基板1の表面上に、密着層5、ビア層6および配線層3がこの順で形成されている。密着層5は、金属支持基板1の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層5aと、第一密着層5aの表面上に形成され、金属を含有する第二密着層5bとから構成され、かつ、絶縁層2から突出しないように形成されている。さらに、配線層3は、ビア層6を覆うように形成されている。また、第一実施態様においては、ビア層6が配線層3から突出しないこと、すなわち、ビア層6の頂部Tが、配線層3の頂部Tよりも突出しないこと(厚さ方向においてカバー層4側に張り出さないこと)を一つの特徴とする。
【0044】
第一実施態様によれば、ビア層が配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。そのため、例えば、実装される素子(磁気ヘッドスライダ等の記録再生用素子)の平坦性を阻害しないという利点がある。また、例えばビア層が絶縁層から突出しない場合、ビア層の形状制御が容易になり、ビア層の近傍に存在する配線層等に悪影響を与えないという利点がある。なお、従来は、図4に示すように、ビア11が配線層3およびカバー層4から突出しており、これらの利点を有していなかった。また、図4に示すように、従来は、配線層に開口を有するランド部を設ける必要があるが、第一実施態様によれば、ビア層を覆うように配線層を設けるため、ランド部のサイズを小さくすることができるという利点がある。また、第一実施態様のサスペンション用基板は、通常、開口部における配線層が開口部の周囲における配線層から突出しない形状を有する。
【0045】
さらに、第一実施態様によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。密着性が向上する理由は、金属支持基板(ステンレス鋼)と、第一密着層(NiまたはCuを含有する層)との間に不動態膜等の密着性を阻害するものがないからであると考えられる。このように、第一実施態様のサスペンション用基板は、ビア層の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れる。また、第一実施態様におけるビア層は、後述するように、平面視上、配線層に覆われて完全に隠れた状態(ブラインドビア層)であることが好ましい。
以下、第一実施態様のサスペンション用基板について、サスペンション用基板の部材と、サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0046】
(1)サスペンション用基板の部材
まず、第一実施態様のサスペンション用基板の部材について説明する。第一実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板、絶縁層および配線層を少なくとも有するものである。なお、第一実施態様における密着層およびビア層については、「(2)サスペンション用基板の構成」で説明する。
【0047】
第一実施態様における金属支持基板は、サスペンション用基板の支持体として機能するものである。また、第一実施態様における金属支持基板はステンレス鋼である。金属支持基板の厚さは、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内である。
【0048】
第一実施態様における絶縁層は、金属支持基板上に形成されるものである。絶縁層の材料は、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば樹脂を挙げることができる。上記樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。絶縁性、耐熱性および耐薬品性に優れているからである。また、絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。絶縁層の厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0049】
第一実施態様における配線層は、絶縁層上に形成されるものである。配線層の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。また、配線層の材料は、圧延銅であっても良く、電解銅であっても良い。配線層の厚さは、例えば5μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、9μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。また、配線層の一部の表面には、保護めっき部が形成されていることが好ましい。保護めっき部を設けることにより、配線層の劣化(腐食等)を防止できるからである。中でも、第一実施態様においては、素子や外部回路基板との接続を行う端子部に保護めっき部が形成されていることが好ましい。保護めっき部の種類は特に限定されるものではないが、例えば、Auめっき、Niめっき、Agめっき等を挙げることができる。中でも、第一実施態様においては、配線層側から、NiめっきおよびAuめっきが形成されていることが好ましい。保護めっき部の厚さは、例えば0.1μm〜4μmの範囲内である。
【0050】
第一実施態様における配線層としては、例えば、ライト用配線層、リード用配線層、熱アシスト用配線層、アクチュエータ用配線層、グランド用配線層、ノイズシールド用配線層、電源用配線層、フライトハイトコントロール用配線層、センサー用配線層等を挙げることができる。
【0051】
第一実施態様においては、カバー層が、配線層を覆うように形成されていることが好ましい。カバー層を設けることにより、配線層の劣化(腐食等)を防止できるからである。カバー層の材料としては、例えば、上述した絶縁層の材料として記載したものを挙げることができ、中でもポリイミド樹脂が好ましい。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。
【0052】
(2)サスペンション用基板の構成
次に、第一実施態様のサスペンション用基板の構成について説明する。第一実施態様のサスペンション用基板は、絶縁層の開口部における金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および配線層をこの順で有することを一つの特徴とする。絶縁層の開口部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円状、任意の多角形、櫛状、十字状、棒状等を挙げることができる。
【0053】
第一実施態様における密着層は、第一密着層および第二密着層から構成されるものである。第一密着層は、金属支持基板の表面上に形成され、少なくともNiまたはCuを含有する層である。第一密着層の材料としては、Ni、Cu、Ni合金、Cu合金等を挙げることができる。なお、第一密着層がCuを含有する場合、密着性が高いという利点に加えて、電気抵抗が低いという利点がある。特に、第一実施態様における第一密着層は、ストライクめっき層であることが好ましい。ストライクめっき層は、例えばめっき形成用の前処理をした金属支持基板の表面の不動態膜を除去して第一密着層を直接形成することができ、金属支持基板(ステンレス鋼)との密着性が良好になるからである。また、ストライクめっき層は、凹凸を有する形状であるため、アンカー効果により密着性が向上しやすいという利点を有する。また、第一実施態様における第一密着層および金属支持基板の間には、ステンレス鋼の不動態膜を有しないことが好ましい。第一密着層の厚さは、例えば50nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜400nmの範囲内であることがより好ましい。
【0054】
第一実施態様における第二密着層は、第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する層である。第二密着層は、上述したストライクめっき層ではなく、連続膜となる程度の厚さを有することが好ましい。第二密着層の材料としては、金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Ni、Cu、および、これらの元素の少なくとも一つを含む合金等を挙げることができる。第二密着層の厚さは、例えば絶縁層の厚さの1/2以下であることが好ましく、絶縁層の厚さの1/3以下であることがより好ましい。第二密着層の厚さは、例えば100nm〜5μmの範囲内であることが好ましく、500nm〜3μmの範囲内であることがより好ましい。
【0055】
第一実施態様におけるビア層は、密着層上に形成されるものである。ビア層の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、Cu、Ni、Ag、Sn、および、これらの元素の少なくとも一つを含む合金等を挙げることができる。また、第一実施態様におけるビア層は、めっき層または金属微粒子含有層であることが好ましい。めっき層は、例えばめっき法(好ましくは電解めっき法)により形成することができ、金属微粒子含有層は、例えば金属微粒子を含有するペーストを用いた印刷法により形成することができる。ペーストに用いられる金属微粒子の平均粒径は、例えば10nm〜5μmの範囲内である。ビア層の厚さは、例えば絶縁層の厚さ以下であることが好ましく、絶縁層の厚さの2/3以下であることがより好ましい。また、ビア層の厚さは、例えば0.5μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。
【0056】
第一実施態様における配線層は、通常、ビア層を覆うように形成されるものである。また、第一実施態様においては、ビア層が配線層から突出しないことを一つの特徴とする。従来の配線層は、例えば図4に示したように、ビア11を形成するための開口を有している。これに対して、第一実施態様における配線層は、ビア層を覆うように形成されるため、通常、開口を有していない。また、第一実施態様における配線層は、平面視上、ビア層の少なくとも一部を覆っていれば良いが、より多くの部分を覆っていることが好ましく、完全にビア層を覆うことが好ましい。すなわち、ビア層は、平面視上、配線層に覆われて完全に隠れた状態(ブラインドビア層)であることが好ましい。ビア層の突出を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れるからである。
【0057】
また、第一実施態様における配線層は、絶縁層との接触面に、シード層を有していることが好ましい。なお、製造プロセスによっては、絶縁層との接触面のみならず、絶縁層の開口部におけるビア層等との接触面にもシード層が形成される場合がある。シード層がスパッタリング膜である場合、シード層の材料としては、例えば、Cr、Cr−Ni合金、Cu等を挙げることができる。一方、シード層が無電解めっき膜である場合、シード層の材料としては、Ni等を挙げることができる。この場合、まず湿式プロセスで触媒をシード層形成面に吸着させ、無電解めっきを行うことが好ましい。
【0058】
図5に示すように、ビア層6のサイズ(絶縁層2の開口部のサイズ)をLとし、ビア層6を覆う配線層3のサイズをLとする。Lは、特に限定されるものではないが、例えば5μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、15μm〜80μmの範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であれば、金属支持基板との密着性が十分に確保され、且つ径の小さいビア層とすることができるからである。Lは、特に限定されるものではないが、例えば15μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、20μm〜150μmの範囲内であることがより好ましい。
【0059】
また、図6に示すように、絶縁層2の頂部の位置Tと密着層5の頂部の位置Tとの差をtとし、絶縁層2の頂部の位置Tとビア層6の頂部の位置Tとの差をtとする。第一実施態様においては、通常、密着層5が絶縁層2から突出しないように形成されるため、tは通常、0以上となる。中でも、図6に示すように、通常は密着層5の上にはビア層6が形成される。そのため、tは、例えば2μm以上であり、4μm〜12μmの範囲内であることが好ましい。また、第一実施態様において、ビア層および絶縁層は、厚さ方向での頂部の位置が等しいこと(面一であること)が好ましい。配線層の平坦性が確保されるからである。「厚さ方向での頂部の位置が等しい」とは、tが±2μm以内になることをいう。なお、図6のように、絶縁層2がビア層6よりも突出している場合のtを正とし、逆にビア層6が絶縁層2よりも突出している場合のtを負とする。また、ビア層は絶縁層よりも突出しないことが好ましい。「ビア層が絶縁層よりも突出しない」とは、tが面一である場合の値よりも大きい状態をいう。
【0060】
また、第一実施態様においては、図7(a)に示すように、第二密着層5bおよびビア層6が同一の層であっても良い。両層が同一の層であることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。ここで、「第二密着層およびビア層が同一の層である」とは、両層が材料的な連続性を有することをいう。例えば、第二密着層およびビア層を、電解めっき法で連続的に形成する場合、第二密着層およびビア層の材料および結晶サイズ等は同一になり、両者は材料的に連続した状態となる。一方、第一実施態様における第二密着層およびビア層は、異なる層であっても良い。例えば、第二密着層およびビア層の材料が異なる場合、または、両者の材料が同一(例えば銅)であっても、第二密着層を形成した後に別工程としてビア層を形成する場合には、両者の界面に材料的特性(材料の種類、結晶サイズ等)の違いに起因する不連続性が生じる。この状態は、両層が材料的な連続性を有しない状態であるといえる。
【0061】
また、第一実施態様においては、図7(b)に示すように、ビア層6および配線層3が同一の層であっても良い。両層が同一の層であることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。「同一の層である」ことの定義は、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、第一実施態様におけるビア層および配線層は、異なる層であっても良い。
【0062】
また、第一実施態様におけるビア層の用途は、配線層および金属支持基板を電気的に接続するものであれば特に限定されるものではない。第一実施態様におけるビア層は、例えばグランド用途に用いられることが好ましい。ここで、図8(a)はグランド用配線層の一例を示しており、グランド用配線層の端子部3aは、保護めっき部7で被覆されており、ビア層6等を介してグランドである金属支持基板1と接続されている。また、他のグランド用途としては、配線層間のノイズを抑制するノイズシールド用配線層のグランド等を挙げることができる。
【0063】
また、第一実施態様におけるビア層は、配線層と、端子部である金属支持基板とを接続するために用いられても良い。金属支持基板の端子部は、配線層の端子部に比べて機械的強度が高く、変形を抑制できる。ここで、図8(b)は端子部である金属支持基板の一例を示しており、配線層3はビア層6等を介して、端子部1aと電気的に接続されている。この端子部1aは、例えば、熱アシスト用素子およびアクチュエータ素子等の素子との接続に用いることができる。
【0064】
また、第一実施態様におけるビア層は、インターリーブ構造の配線層と、ジャンパー部である金属支持基板とを接続するために用いられても良い。インターリーブ構造の配線層を採用することで、低インピーダンス化を図ることができる。ここで、インターリーブ構造の配線層について図9を用いて説明する。図9(a)はインターリーブ構造の配線層の一例を示す概略平面図であり、図9(b)は図9(a)を金属支持基板側から観察した概略平面図であり、図9(c)は図9(a)のA−A断面図である。図9(a)〜(c)に示すように、ライト用配線層W1aは分岐配線層W1bを有し、W1aおよびW1bはそれぞれ絶縁層2を貫通するビア層6を有する。その2つのビア層6は、金属支持基板1の一部であるジャンパー部1bにより電気的に接続されている。同様に、ライト用配線層W2aも分岐配線層W2bを有し、W2aおよびW2bはそれぞれ絶縁層2を貫通するビア層6を有し、その2つのビア層6は、金属支持基板1の一部であるジャンパー部1bにより電気的に接続されている。なお、図9(a)に示すように、ライト用配線層Wに属する配線層(W1a、W1b)と、ライト用配線層Wに属する配線層(W2a、W2b)とは、交互に配置されている。
【0065】
また、第一実施態様のサスペンション用基板は、配線層が絶縁層を介して積層されていても良い。配線層の増加に対応したサスペンション用基板とすることができるからである。このようなサスペンション用基板としては、例えば図10(a)に示すように、金属支持基板1、第一絶縁層2x、第一配線層3x、第二絶縁層2y、第二配線層3yおよびカバー層4が、この順に積層されたものを挙げることができる。第一配線層3xおよび第二配線層3yは、第二絶縁層2yを介して積層されている。また、図10(a)では、ビア層6上に第一配線層3xが形成されており、ビア層6が第一配線層3xから突出していないため、第一配線層3x上に、平坦な第二絶縁層2yを形成しやすい。そのため、第二絶縁層2y上に形成される第二配線層3yを安定した形状で形成することができ、したがって第二配線層3yをビア層6上に形成することができるため、サスペンション用基板の設計自由度を高いものとすることができる。また、図10(b)に示すように、グランド用配線層である第一配線層3x上に、第二配線層3yが形成されていても良い。
【0066】
2.第二実施態様
次に、本発明のサスペンション用基板の第二実施態様について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、第一密着層および上記配線層がこの順で形成され、上記第一密着層は、NiまたはCuを含有するストライクめっき層であり、上記開口部における上記配線層は、上記開口部の周囲における上記配線層から突出しないことを特徴とするものである。
【0067】
図11は、第二実施態様のサスペンション用基板の一例を示す概略断面図であり、図2のA−A断面図である。図11に示すように、第二実施態様においては、絶縁層2の開口部における金属支持基板1の表面上に、第一密着層5aおよび配線層3がこの順で形成されている。第一密着層5aは、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である。さらに、配線層3は、絶縁層2の開口部を覆うように形成されている。また、第二実施態様においては、開口部における配線層3が開口部の周囲における配線層3から突出しないこと、すなわち、開口部における配線層3の頂部T3Aが開口部の周囲における配線層3の頂部T3Bよりも突出しないこと(厚さ方向においてカバー層4側に張り出さないこと)を一つの特徴とする。なお、開口部における配線層3の頂部T3Aとは、絶縁層2の開口部において、最もカバー層4側に突出した配線層3の部分をいう。同様に、開口部の周囲における配線層3の頂部T3Bとは、絶縁層2の開口部の周囲において、最もカバー層4側に突出した配線層3の部分をいう。絶縁層2の開口部の周囲とは、絶縁層2の開口部の端部から、絶縁層2の開口部サイズを2倍にした場合の端部までの領域をいう。
【0068】
第二実施態様によれば、開口部における配線層が周囲の配線層よりも突出しないことから、ビア部分(絶縁層の開口部に形成された配線層)の突出による弊害を防止できる。そのため、例えば、実装される素子(磁気ヘッドスライダ等の記録再生用素子)の平坦性を阻害しないという利点がある。また、図4に示すように、従来は、配線層に開口を有するランド部を設ける必要があるが、第二実施態様によれば、絶縁層の開口部を覆うように配線層を設けるため、ランド部のサイズを小さくすることができるという利点がある。
【0069】
さらに、第二実施態様によれば、配線層および金属支持基板の間に特定の第一密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。密着性が向上する理由は、金属支持基板(ステンレス鋼)と、第一密着層(NiまたはCuを含有する層)との間に不動態膜等の密着性を阻害するものがないからであると考えられる。このように、第二実施態様のサスペンション用基板は、ビア部分の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア部分の小径化が図れる。
【0070】
なお、第二実施態様のサスペンション用基板の部材および構成は、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、第一密着層および配線層の間には、第二密着層およびビア層の少なくとも一方が形成されていても良い。
【0071】
3.第三実施態様
次に、本発明のサスペンション用基板の第三実施態様について説明する。第三実施態様のサスペンション用基板は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第一絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および上記第二配線層がこの順で形成され、上記密着層は、上記金属支持基板の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記第二絶縁層から突出しないように形成され、上記第二配線層は、上記ビア層を覆うように形成され、上記ビア層は、上記第二配線層から突出しないことを特徴とするものである。
【0072】
図12は、第三実施態様のサスペンション用基板の一例を示す概略断面図である。図12(a)に示すように、第三実施態様においては、第一絶縁層2xの開口部における金属支持基板1の表面上に、密着層5、ビア層6および第二配線層3yがこの順で形成されている。密着層5は、金属支持基板1の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層5aと、第一密着層5aの表面上に形成され、金属を含有する第二密着層5bとから構成され、かつ、第二絶縁層2yから突出しないように形成されている。さらに、第二配線層3yは、ビア層6を覆うように形成されている。また、第三実施態様においては、ビア層6が第二配線層3yから突出しないこと、すなわち、ビア層6の頂部Tが、第二配線層3yの頂部T3yよりも突出しないこと(厚さ方向においてカバー層4側に張り出さないこと)を一つの特徴とする。なお、図12(a)では、第二配線層3yが金属支持基板1と電気的に接続されているが、図12(b)に示すように、第二配線層3yが第一配線層3xおよび金属支持基板1と電気的に接続されていても良い。
【0073】
第三実施態様によれば、ビア層が第二配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。そのため、例えば、実装される素子(磁気ヘッドスライダ等の記録再生用素子)の平坦性を阻害しないという利点がある。また、例えばビア層が第二絶縁層から突出しない場合、ビア層の形状制御が容易になり、ビア層の近傍に存在する第二配線層等に悪影響を与えないという利点がある。また、第三実施態様のサスペンション用基板は、通常、開口部における第二配線層が開口部の周囲における第二配線層から突出しない形状を有する。
【0074】
さらに、第三実施態様によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。密着性が向上する理由は、金属支持基板(ステンレス鋼)と、第一密着層(NiまたはCuを含有する層)との間に不動態膜等の密着性を阻害するものがないからであると考えられる。このように、第三実施態様のサスペンション用基板は、ビア層の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れる。また、第三実施態様におけるビア層は、後述するように、平面視上、第二配線層に覆われて完全に隠れた状態(ブラインドビア層)であることが好ましい。
以下、第三実施態様のサスペンション用基板について、サスペンション用基板の部材と、サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0075】
(1)サスペンション用基板の部材
まず、第三実施態様のサスペンション用基板の部材について説明する。第三実施態様のサスペンション用基板は、金属支持基板、第一絶縁層、第一配線層、第二絶縁層、第二配線層を少なくとも有するものである。第一絶縁層および第二絶縁層は、上述した第一実施態様における絶縁層と同様であり、第一配線層および第二配線層は、上述した第一実施態様における配線層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
(2)サスペンション用基板の構成
次に、第三実施態様のサスペンション用基板の構成について説明する。第三実施態様のサスペンション用基板は、第一絶縁層の開口部における金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および第二配線層をこの順で有することを一つの特徴とする。第一絶縁層の開口部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円状、任意の多角形、櫛状、十字状、棒状等を挙げることができる。
【0077】
第三実施態様における密着層およびビア層については、上述した第一実施態様における密着層およびビア層と同様である。
【0078】
第三実施態様における第二配線層は、通常、ビア層を覆うように形成されるものである。また、第三実施態様においては、ビア層が第二配線層から突出しないことを一つの特徴とする。第三実施態様における第二配線層は、ビア層を覆うように形成されるため、通常、開口を有していない。また、第三実施態様における第二配線層は、平面視上、ビア層の少なくとも一部を覆っていれば良いが、より多くの部分を覆っていることが好ましく、完全にビア層を覆うことが好ましい。すなわち、ビア層は、平面視上、第二配線層に覆われて完全に隠れた状態(ブラインドビア層)であることが好ましい。ビア層の突出を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れるからである。
【0079】
また、第三実施態様における第二配線層は、第二絶縁層との接触面に、シード層を有していること好ましい。なお、製造プロセスによっては、第二絶縁層との接触面のみならず、第一絶縁層の開口部におけるビア層等との接触面にもシード層が形成される場合がある。シード層については、上述した第一実施態様に記載した内容と同様である。
【0080】
また、図13に示すように、第二絶縁層2yの頂部の位置T2yと密着層5の頂部の位置Tとの差をtとし、第二絶縁層2yの頂部の位置T2yとビア層6の頂部の位置Tとの差をtとする。第三実施態様においては、通常、密着層5が第二絶縁層2yから突出しないように形成されるため、tは通常、0以上となる。中でも、図13に示すように、通常は密着層5の上にはビア層6が形成される。そのため、tは、例えば2μm以上であり、4μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。また、第三実施態様において、ビア層および第二絶縁層は、厚さ方向での頂部の位置が等しいこと(面一であること)が好ましい。第二配線層の平坦性が確保されるからである。「厚さ方向での頂部の位置が等しい」とは、tが±2μm以内になることをいう。なお、図13のように、第二絶縁層2yがビア層6よりも突出している場合のtを正とし、逆にビア層6が第二絶縁層2yよりも突出している場合のtを負とする。また、ビア層は第二絶縁層よりも突出しないことが好ましい。「ビア層が第二絶縁層よりも突出しない」とは、tが面一である場合の値よりも大きい状態をいう。
【0081】
また、第三実施態様においては、図14(a)に示すように、第二密着層5bおよびビア層6が同一の層であっても良い。両層が同一の層であることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。ここで、「第二密着層およびビア層が同一の層である」ことについては、上述した第一実施態様に記載した内容と同様である。
【0082】
また、第三実施態様においては、図14(b)に示すように、ビア層6および第二配線層3yが同一の層であっても良い。両層が同一の層であることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。「同一の層である」ことの定義は、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、第三実施態様におけるビア層および第二配線層は、異なる層であっても良い。
【0083】
また、第三実施態様においては、図15に示すように、第一配線層3xおよび金属支持基板1を接続するビア層6が、第二配線層と同じ材料から構成されていても良い。第二配線層の形成と同時にビア層6を形成でき、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0084】
また、第三実施態様においては、図12(a)に示すように、第一絶縁層2xの開口端部が、水平方向(厚さ方向とは直交する方向)において、第二絶縁層2yの開口端部よりも突出していることが好ましい。すなわち、平面視上、第二絶縁層2yの開口部が、第一絶縁層2xの開口部を包含するように形成されていることが好ましい。段差構造とすることで、応力集中を緩和でき、長期使用時の劣化を抑制できるからである。ここで、第一絶縁層2xの開口端部と、第二絶縁層2yの開口端部との差をWとする。Wは例えば5μm以上であることが好ましく、8μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0085】
また、第三実施態様においては、図12(b)に示すように、第一絶縁層2xの開口端部が、水平方向(厚さ方向とは直交する方向)において、第一配線層3xの開口端部よりも突出していることが好ましい。同様に、第一配線層3xの開口端部は、水平方向において、第二絶縁層2yの開口端部よりも突出していることが好ましい。すなわち、平面視上、第一配線層3xの開口部が、第一絶縁層2xの開口部を包含するように形成されていることが好ましい。同様に、第二絶縁層2yの開口部が、第一配線層3xの開口部を包含するように突出していることが好ましい。段差構造とすることで、応力集中を緩和でき、長期使用時の劣化を抑制できるからである。ここで、第一絶縁層2xの開口端部と、第一配線層3xの開口端部との差をWとし、第一配線層3xの開口端部と第二絶縁層2yの開口端部との差をWとする。Wは、例えば2μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。Wは、例えば5μm以上であることが好ましく、8μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。また、図12(c)に示すように、第一絶縁層2xの開口端部は、水平方向において、第一配線層3xの開口端部と同一であっても良い。「同一」とは、水平方向における両開口端部の差が2μm未満であることをいう。さらに、図12(d)に示すように、第一配線層3xの開口端部は、水平方向において、第一絶縁層2xの開口端部よりも突出していても良い。ここで、第一配線層3xの開口端部と、第一絶縁層2xの開口端部との差をWとする。Wは、例えば2μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
【0086】
なお、第三実施態様におけるビア層の用途およびその他の事項については、上述した第一実施態様および第二実施態様に記載した事項と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0087】
4.第四実施態様
次に、本発明のサスペンション用基板の第四実施態様について説明する。第四実施態様のサスペンション用基板は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、上記第一絶縁層の開口部における上記金属支持基板の表面上に、第一密着層および上記第二配線層がこの順で形成され、上記第一密着層は、NiまたはCuを含有するストライクめっき層であり、上記開口部における上記第二配線層は、上記開口部の周囲における上記第二配線層から突出しないことを特徴とするものである。
【0088】
図16は、第四実施態様のサスペンション用基板を例示する概略断面図である。図16(a)に示すように、第四実施態様においては、第一絶縁層2xの開口部における金属支持基板1の表面上に、第一密着層5aおよび第二配線層3yがこの順で形成されている。第一密着層5aは、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である。さらに、第二配線層3yは、第一絶縁層2xの開口部を覆うように形成されている。また、第四実施態様においては、開口部における第二配線層3yが開口部の周囲における第二配線層3yから突出しないこと、すなわち、開口部における第二配線層3yの頂部T3Cが開口部の周囲における第二配線層3yの頂部T3Dよりも突出しないこと(厚さ方向においてカバー層4側に張り出さないこと)を一つの特徴とする。なお、図16(a)では、第二配線層3yが金属支持基板1と電気的に接続されているが、図16(b)に示すように、第二配線層3yが第一配線層3xおよび金属支持基板1と電気的に接続されていても良い。また、開口部における第二配線層3yの頂部T3Cとは、第一絶縁層2xの開口部において、最もカバー層4側に突出した第二配線層3yの部分をいう。同様に、開口部の周囲における第二配線層3yの頂部T3Dとは、第一絶縁層2xの開口部の周囲において、最もカバー層4側に突出した第二配線層3yの部分をいう。第一絶縁層2xの開口部の周囲とは、第一絶縁層2xの開口部の端部から、第一絶縁層2xの開口部サイズを2倍にした場合の端部までの領域をいう。
【0089】
第四実施態様によれば、開口部における第二配線層が周囲の第二配線層よりも突出しないことから、ビア部分(第一絶縁層および第二絶縁層の開口部に形成された第二配線層)の突出による弊害を防止できる。そのため、例えば、実装される素子(磁気ヘッドスライダ等の記録再生用素子)の平坦性を阻害しないという利点がある。また、図4に示すように、従来は、配線層に開口を有するランド部を設ける必要があるが、第四実施態様によれば、第一絶縁層の開口部を覆うように第二配線層を設けるため、ランド部のサイズを小さくすることができるという利点がある。
【0090】
さらに、第四実施態様によれば、第二配線層および金属支持基板の間に特定の第一密着層を設けることから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。密着性が向上する理由は、金属支持基板(ステンレス鋼)と、第一密着層(NiまたはCuを含有する層)との間に不動態膜等の密着性を阻害するものがないからであると考えられる。このように、第四実施態様のサスペンション用基板は、ビア部分の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア部分の小径化が図れる。
【0091】
なお、第四実施態様のサスペンション用基板の部材および構成は、上述した第三実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、第一密着層および第二配線層の間には、第二密着層およびビア層の少なくとも一方が形成されていても良い。
【0092】
B.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板と、上記サスペンション用基板の上記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするものである。
【0093】
図17は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図17に示されるサスペンション300は、上述したサスペンション用基板100と、サスペンション用基板100の金属支持基板側の表面に設けられたロードビーム200とを有するものである。
【0094】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、ビアの突出による弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができるサスペンションとすることができる。
【0095】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用基板およびロードビームを有する。本発明におけるサスペンション用基板については、上記「A.サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。一方、本発明におけるロードビームは、サスペンション用基板の金属支持基板側の表面に設けられるものである。ロードビームの材料は、特に限定されるものではないが、例えば金属を挙げることができ、ステンレス鋼であることが好ましい。
【0096】
C.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上記サスペンションに配置された記録再生用素子と、を有することを特徴とするものである。
【0097】
図18は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図18に示される素子付サスペンション400は、上述したサスペンション300と、サスペンション300(サスペンション用基板100の記録再生用素子実装領域101)に実装された記録再生用素子301とを有するものである。
【0098】
本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、ビアの突出による弊害を防止でき、かつ、ビアの小径化を図ることができる素子付サスペンションとすることができる。
【0099】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび記録再生用素子を有する。本発明におけるサスペンションについては、上記「B.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、記録再生用素子は、特に限定されるものではないが、磁気発生素子を有するものが好ましい。具体的には、磁気ヘッドスライダを挙げることができる。さらに、本発明の素子付サスペンションは、熱アシスト用素子およびアクチュエータ素子の少なくとも一方をさらに有することが好ましい。
【0100】
熱アシスト用素子は、記録再生用素子の記録を熱によりアシストできるものであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明における熱アシスト用素子は、光を利用した素子であることが好ましい。光ドミナント記録方式による熱アシスト記録を行うことができるからである。光を利用した熱アシスト用素子としては、例えば半導体レーザーダイオード素子を挙げることができる。半導体レーザーダイオード素子は、pn型の素子であっても良く、pnp型またはnpn型の素子であっても良い。
【0101】
アクチュエータ素子は、通常、マイクロアクチュエータ、ミリアクチュエータが該当する。アクチュエータ素子としては、例えばピエゾ素子を挙げることができる。ピエゾ素子としては、例えばPZTからなるものを挙げることができる。ピエゾ素子の伸縮応答を利用することで、サブミクロン単位での位置決めを行うことができる。また、ピエゾ素子には、エネルギー効率が高い、耐荷重が大きい、応答性が速い、摩耗劣化がない、磁場が発生しないという利点がある。また、本発明においては、2極のピエゾ素子を1個用いても良い。1極のピエゾ素子を2個用いても良い。
【0102】
D.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするものである。
【0103】
図19は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図19に示されるハードディスクドライブ500は、上述した素子付サスペンション400と、素子付サスペンション400がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク401と、ディスク401を回転させるスピンドルモータ402と、素子付サスペンション400の素子を移動させるアーム403およびボイスコイルモータ404と、上記の部材を密閉するケース405とを有するものである。
【0104】
本発明によれば、上述した素子付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0105】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「C.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0106】
E.サスペンション用基板の製造方法
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法について説明する。本発明のサスペンション用基板の製造方法は、4つの実施態様に大別することができる。本発明のサスペンション用基板の製造方法について、第一実施態様〜第四実施態様に分けて説明する。
【0107】
1.第一実施態様
第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、開口部を有する上記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、上記絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記絶縁層から突出しない密着層を形成する密着層形成工程と、上記密着層上に、ビア層を形成するビア層形成工程と、上記ビア層を覆う配線層を形成する配線層形成工程と、を有し、上記ビア層を上記配線層から突出させないことを特徴とするものである。
【0108】
図20は、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。図20においては、まず、金属支持部材1Aと、その金属支持部材1A上に形成された絶縁層2と、を有する部材を準備する(図20(a))。次に、絶縁層2の開口部において露出する、金属支持部材1Aの表面に対して、前処理を行い、ストライクめっき法により第一密着層5aを形成する。その後、第一密着層5aの表面上に、電解めっき法により第二密着層5bを形成する(図20(b))。次に、第二密着層5b上に、めっき法または印刷法により、ビア層6を形成する(図20(c))。
【0109】
次に、図示しないが、ビア層6および絶縁層2の表面上に、スパッタリング法によりシード層を形成し、シード層の表面上に、DFR(ドライフィルムレジスト)を用いて所定のレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンから露出するシード層上に、電解めっき法により、配線層3を形成する(図20(d))。次に、不要なレジストパターンおよびシード層を除去し、配線層3を覆うカバー層4を形成する(図20(e))。次に、金属支持部材1Aに対してウェットエッチングを行うことにより、金属支持部材1Aの外形加工を行い、金属支持基板1を形成する(図20(f))。これにより、サスペンション用基板を得る。
【0110】
第一実施態様によれば、ビア層が配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。さらに、第一実施態様によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。このように、ビア層の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れるサスペンション用基板を得ることができる。
以下、第一実施態様のサスペンション用基板の製造方法について、工程ごとに説明する。
【0111】
(1)絶縁層形成工程
第一実施態様における絶縁層形成工程は、開口部を有する上記絶縁層を形成する工程である。
【0112】
絶縁層の形成方法は、金属支持基板(金属支持部材)上に、パターン状の絶縁層を形成できる方法であれば特に限定されるものではない。絶縁層の形成方法の一例としては、金属支持部材および絶縁部材から構成される2層材を用意し、その絶縁部材に対してドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する絶縁部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、絶縁部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば絶縁部材の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。また、絶縁層の形成方法の他の例としては、金属支持部材上に、感光性材料の絶縁膜を形成し、露光現像する方法を挙げることができる。
【0113】
(2)密着層形成工程
第一実施態様における密着層形成工程は、上記絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記絶縁層から突出しない密着層を形成する工程である。
【0114】
第一密着層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ストライクめっき法を挙げることができる。ストライクめっき法を用いることにより、金属支持基板との密着性が良好な第一密着層を得ることができる。ストライクめっき法は、通常、低イオン濃度の電解浴を用い、高い電流密度で薄いめっきを短期間に形成する方法である。また、第一実施態様においては、第一密着層を形成する前に、金属支持部材の表面を活性化する前処理を行うことが好ましい。このような前処理としては、プラズマ処理、酸洗浄処理、電解洗浄処理等を挙げることができる。
【0115】
第二密着層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、めっき法を挙げることができ、中でも電解めっき法が好ましい。例えば、Cuめっきから構成される第二密着層を形成する場合、用いられる電解Cuめっき浴としては、硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴、青化銅浴等を挙げることができる。また、Niめっきから構成される第二密着層を形成する場合、用いられる電解Niめっき浴としては、ワット浴およびスルファミン酸浴等を挙げることができる。また、電解めっきの条件は、特に限定されるものではなく、所望の条件(めっき時間、印加電圧等)を選択すれば良い。
【0116】
(3)ビア層形成工程
第一実施態様におけるビア層形成工程は、上記密着層上に、ビア層を形成する工程である。
【0117】
ビア層の形成方法は、密着層および配線層を電気的に接続可能なビア層を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、めっき法および印刷法を挙げることができる。また、上記めっき法は、電解めっき法であることが好ましい。電解めっき法に用いられるめっき浴は、特に限定されるものではなく、電解めっきの種類に応じて適宜選択すれば良い。また、上記印刷法としては、例えばスクリーン印刷法を挙げることができる。第一実施態様においては、金属微粒子を含有するペーストを、印刷法により密着層上に充填することで、ビア層を形成することが好ましい。
【0118】
なお、上述した図7(a)に示すように、第二密着層5bおよびビア層6が同一の層である場合、密着層形成工程における第二密着層形成処理と、ビア層形成工程とは同一の工程になる。
【0119】
(4)配線層形成工程
第一実施態様における配線層形成工程は、上記ビア層を覆う配線層を形成する工程である。
【0120】
配線層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば電解めっき法等を挙げることができる。例えば、Cuめっきから構成される配線層を形成する場合、用いられる電解Cuめっき浴としては、例えば、硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴等を挙げることができる。また、電解めっき法を用いる場合、配線層の形成前に、スパッタリング法等によりビア層および絶縁層の表面にシード層を形成することが好ましい。
【0121】
なお、上述した図7(b)に示すように、ビア層6および配線層3が同一の層である場合、ビア層形成工程および配線層形成工程は同一の工程になる。必要に応じて、シード層を形成することが好ましい。
【0122】
(5)カバー層形成工程
第一実施態様においては、上記配線層上にカバー層を形成するカバー層形成工程を行うことが好ましい。カバー層の形成方法は、特に限定されるものではなく、カバー層の材料に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、カバー層の材料が感光性材料である場合には、全面形成したカバー層に露光現像を行うことによりパターン状のカバー層を得ることができる。また、カバー層の材料が非感光性材料である場合は、全面形成したカバー層の表面に所定のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出した部分を、ウェットエッチングにより除去することによりパターン状のカバー層を得ることができる。
【0123】
(6)その他の工程
第一実施態様においては、金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持基板形成工程を行うことが好ましい。本工程において、通常は、金属支持基板の外形加工を行う。金属支持部材のエッチング方法は、特に限定されるものでないが、例えばウェットエッチングを挙げることができる。具体的には、金属支持部材に対してドライフィルムレジスト(DFR)等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する金属支持部材をウェットエッチングする方法を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、金属支持部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば金属支持部材の材料がステンレス鋼である場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。
【0124】
2.第二実施態様
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法の第二実施態様について説明する。第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、開口部を有する上記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、上記絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である第一密着層を形成する密着層形成工程と、上記第一密着層上に、上記配線層を形成する配線層形成工程と、を有し、上記開口部における上記配線層を、上記開口部の周囲における上記配線層から突出させないことを特徴とするものである。
【0125】
図21は、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。図21においては、まず、金属支持部材1Aと、その金属支持部材1A上に形成された絶縁層2と、を有する部材を準備する(図21(a))。次に、絶縁層2の開口部において露出する、金属支持部材1Aの表面に対して、前処理を行い、ストライクめっき法により第一密着層5aを形成する(図21(b))。
【0126】
次に、図示しないが、第一密着層5aおよび絶縁層2の表面上に、スパッタリング法によりシード層を形成し、シード層の表面上に、DFR(ドライフィルムレジスト)を用いて所定のレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンから露出するシード層上に、電解めっき法により、配線層3を形成する(図21(c))。次に、不要なレジストパターンおよびシード層を除去し、配線層3を覆うカバー層4を形成する(図21(d))。次に、金属支持部材1Aの外形加工を行い、金属支持基板1を形成する(図21(e))。これにより、サスペンション用基板を得る。
【0127】
第二実施態様によれば、開口部における配線層が周囲の配線層よりも突出しないことから、ビア部分(絶縁層の開口部に形成された配線層)の突出による弊害を防止できる。さらに、第二実施態様によれば、配線層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。このように、ビア部分の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア部分の小径化が図れるサスペンション用基板を得ることができる。
【0128】
第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、通常、絶縁層形成工程、密着層形成工程および配線層形成工程を有する。これらの工程およびその他の工程については、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0129】
3.第三実施態様
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法の第三実施態様について説明する。第三実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、開口部を有する上記第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、上記第一絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有する第一密着層と、上記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、上記第二絶縁層から突出しない密着層を形成する密着層形成工程と、上記密着層上に、ビア層を形成するビア層形成工程と、上記ビア層を覆う第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、を有し、上記ビア層を上記第二配線層から突出させないことを特徴とするものである。
【0130】
図22は、第二実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。図22においては、まず、金属支持部材1A、絶縁部材2Aおよび導体部材3Aがこの順に積層された積層部材を準備する(図22(a))。次に、導体部材3Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、第一配線層3xを形成する(図22(b))。次に、第一配線層3x上に第二絶縁層2yを形成し(図22(c))、絶縁部材2Aをウェットエッチングすることにより、開口部を有する第一絶縁層2xを形成する(図22(d))。次に、第一絶縁層2xの開口部において露出する、金属支持部材1Aの表面に対して、前処理を行い、ストライクめっき法により第一密着層5aを形成する。その後、第一密着層5aの表面上に、電解めっき法により第二密着層5bを形成する(図22(e))。次に、第二密着層5b上に、めっき法または印刷法により、ビア層6を形成する(図22(f))。
【0131】
次に、図示しないが、ビア層6および第二絶縁層2yの表面上に、スパッタリング法によりシード層を形成し、シード層の表面上に、DFR(ドライフィルムレジスト)を用いて所定のレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンから露出するシード層上に、電解めっき法により、第二配線層3yを形成する(図22(g))。次に、不要なレジストパターンおよびシード層を除去し、第二配線層3yを覆うカバー層4を形成する(図22(h))。次に、第一絶縁層2xのパターニングを行う(図22(i))。次に、金属支持部材1Aの外形加工を行い、金属支持基板1を形成する(図22(j))。これにより、サスペンション用基板を得る。
【0132】
第三実施態様によれば、ビア層が第二配線層から突出しないことから、ビア層の突出による弊害を防止できる。さらに、第三実施態様によれば、ビア層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア層の小径化を図ることができる。このように、ビア層の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア層の小径化が図れるサスペンション用基板を得ることができる。
【0133】
第三実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、通常、第一絶縁層形成工程、密着層形成工程、ビア層形成工程および第二配線層形成工程を有する。第一絶縁層形成工程および第二配線層形成工程については、それぞれ、上述した第一実施態様における絶縁層形成工程および配線層形成工程に記載した内容と同様である。また、その他の工程についても、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0134】
4.第四実施態様
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法の第四実施態様について説明する。第四実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、ステンレス鋼である金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、上記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、上記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、上記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、開口部を有する上記第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、上記第一絶縁層の上記開口部に、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である第一密着層を形成する密着層形成工程と、上記第一密着層上に、上記第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、を有し、上記開口部における上記第二配線層を、上記開口部の周囲における上記第二配線層から突出させないことを特徴とするものである。
【0135】
図23は、第四実施態様のサスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。図23においては、まず、金属支持部材1A、絶縁部材2Aおよび導体部材3Aがこの順に積層された積層部材を準備する(図23(a))。次に、導体部材3Aに対して、ウェットエッチングによるパターニングを行い、第一配線層3xを形成する(図23(b))。次に、第一配線層3x上に第二絶縁層2yを形成し(図23(c))、絶縁部材2Aをウェットエッチングすることにより、開口部を有する第一絶縁層2xを形成する(図23(d))。次に、第一絶縁層2xの開口部において露出する、金属支持部材1Aの表面に対して、前処理を行い、ストライクめっき法により第一密着層5aを形成する(図23(e))。
【0136】
次に、図示しないが、第一密着層5aおよび第二絶縁層2yの表面上に、スパッタリング法によりシード層を形成し、シード層の表面上に、DFR(ドライフィルムレジスト)を用いて所定のレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンから露出するシード層上に、電解めっき法により、第二配線層3yを形成する(図23(f))。次に、不要なレジストパターンおよびシード層を除去し、第二配線層3yを覆うカバー層4を形成する(図23(g))。次に、第一絶縁層2xのパターニングを行う(図23(h))。次に、金属支持部材1Aの外形加工を行い、金属支持基板1を形成する(図23(i))。これにより、サスペンション用基板を得る。
【0137】
第四実施態様によれば、開口部における第二配線層が周囲の第二配線層よりも突出しないことから、ビア部分(第一絶縁層および第二絶縁層の開口部に形成された第二配線層)の突出による弊害を防止できる。さらに、第四実施態様によれば、第二配線層および金属支持基板の間に特定の密着層を形成することから、密着性が向上し、ビア部分の小径化を図ることができる。このように、ビア部分の突出による弊害を防止でき、かつ、ビア部分の小径化が図れるサスペンション用基板を得ることができる。
【0138】
第四実施態様のサスペンション用基板の製造方法は、通常、第一絶縁層形成工程、密着層形成工程、および第二配線層形成工程を有する。これらの工程およびその他の工程については、上述した第三実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0139】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0140】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0141】
[実施例1]
厚さ18μmのステンレス鋼(SUS304)である金属支持部材上に、絶縁部材形成材料として非感光性ポリイミドを用い、塗工方法にて厚さ10μmの絶縁部材を形成した。これにより、二層材を得た。次に、この二層材の絶縁部材上に、ドライフィルムレジスト(DFR)を用いてレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンから露出する絶縁部材を、有機アルカリエッチング液を用いてエッチングし、開口部を有する絶縁層を得た(図20(a))。
【0142】
その後、絶縁層の開口部から露出する金属支持部材の表面を活性化するために、プラズマ処理、酸洗浄および電解洗浄を行った。次に、Niストライクめっき法により第一密着層を形成し、電解Niめっき法により第二密着層を形成した(図20(b))。次に、電解Cuめっき法によりビア層を形成した(図20(c))。なお、ビア層の厚さは、ビア層が絶縁層から突出しないように調整した。次に、ビア層および絶縁層の表面上に、スパッタリング法によりシード層を形成し、そのシード層上にレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出するシード層上に、電解Cuめっき法により配線層を形成した(図20(d))。
【0143】
その後、非感光性ポリイミドの液状カバー層形成材料をダイコーターでコーティングし、乾燥後、レジスト製版し、現像と同時にエッチングし、次いで硬化させることにより、パターン状のカバー層を形成した(図20(e))。その後、レジスト製版し、接続用端子部にNiめっきおよびAuめっきを行った。最後に、塩化鉄系エッチング液を用いて、金属支持部材をウェットエッチングし、外形加工を行った。これにより、サスペンション用基板を得た(図20(f))。
【0144】
[実施例2]
電解Cuめっき法により第二密着層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてサスペンション用基板を得た。
【0145】
[実施例3]
銅微粒子を含有する銅ペーストを用いたスクリーン印刷法により、ビア層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてサスペンション用基板を得た。
【0146】
[実施例4]
銀微粒子を含有する銀ペーストを用いたスクリーン印刷法により、ビア層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてサスペンション用基板を得た。
【符号の説明】
【0147】
1…金属支持基板、 1a…端子部、 1b…ジャンパー部、 2…絶縁層、 2x…第一絶縁層、 2y…第二絶縁層、 3…配線層、 3x…第一配線層、 3y…第二配線層、 3a…端子部、 4…カバー層、 5…密着層、 5a…第一密着層、 5b…第二密着層、 6…ビア層、7…保護めっき部、 11…ビア、 101…記録再生用素子実装領域、 102…外部回路基板接続領域、 103…配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記絶縁層の開口部における前記金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および前記配線層がこの順で形成され、
前記密着層は、前記金属支持基板の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層と、前記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、前記絶縁層から突出しないように形成され、
前記配線層は、前記ビア層を覆うように形成され、
前記ビア層は、前記配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記第一密着層が、ストライクめっき層であることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記第二密着層が、NiまたはCuを含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記ビア層が、めっき層または金属微粒子含有層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
前記第二密着層および前記ビア層が同一の層であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項6】
前記ビア層および前記配線層が同一の層であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項7】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記絶縁層の開口部における前記金属支持基板の表面上に、第一密着層および前記配線層がこの順で形成され、
前記第一密着層は、NiまたはCuを含有するストライクめっき層であり、
前記開口部における前記配線層は、前記開口部の周囲における前記配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項8】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、前記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記第一絶縁層の開口部における前記金属支持基板の表面上に、密着層、ビア層および前記第二配線層がこの順で形成され、
前記密着層は、前記金属支持基板の表面上に形成され、NiまたはCuを含有する第一密着層と、前記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、前記第二絶縁層から突出しないように形成され、
前記第二配線層は、前記ビア層を覆うように形成され、
前記ビア層は、前記第二配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項9】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、前記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記第一絶縁層の開口部における前記金属支持基板の表面上に、第一密着層および前記第二配線層がこの順で形成され、
前記第一密着層は、NiまたはCuを含有するストライクめっき層であり、
前記開口部における前記第二配線層は、前記開口部の周囲における前記第二配線層から突出しないことを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板と、前記サスペンション用基板の前記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、を有することを特徴とするサスペンション。
【請求項11】
請求項10に記載のサスペンションと、前記サスペンションに配置された記録再生用素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項12】
請求項11に記載の素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項13】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、
開口部を有する前記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の前記開口部に、NiまたはCuを含有する第一密着層と、前記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、前記絶縁層から突出しない密着層を形成する密着層形成工程と、
前記密着層上に、ビア層を形成するビア層形成工程と、
前記ビア層を覆う前記配線層を形成する配線層形成工程と、を有し、
前記ビア層を前記配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項14】
前記第一密着層を、ストライクめっき法により形成することを特徴とする請求項13に記載のサスペンション用基板の製造方法。
【請求項15】
前記第二密着層を、めっき法により形成することを特徴とする請求項13または請求項14に記載のサスペンション用基板の製造方法。
【請求項16】
前記ビア層を、めっき法または印刷法により形成することを特徴とする請求項13から請求項15までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板の製造方法。
【請求項17】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、
開口部を有する前記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の前記開口部に、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である第一密着層を形成する密着層形成工程と、
前記第一密着層上に、前記配線層を形成する配線層形成工程と、を有し、
前記開口部における前記配線層を、前記開口部の周囲における前記配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項18】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、前記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板の製造方法であって、
開口部を有する前記第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、
前記第一絶縁層の前記開口部に、NiまたはCuを含有する第一密着層と、前記第一密着層の表面上に形成され、金属を含有する第二密着層とから構成され、かつ、前記第二絶縁層から突出しない密着層を形成する密着層形成工程と、
前記密着層上に、ビア層を形成するビア層形成工程と、
前記ビア層を覆う第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、を有し、
前記ビア層を前記第二配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項19】
ステンレス鋼である金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層上に形成された第一配線層と、前記第一配線層上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層上に形成された第二配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
開口部を有する前記第一絶縁層を形成する第一絶縁層形成工程と、
前記第一絶縁層の前記開口部に、NiまたはCuを含有するストライクめっき層である第一密着層を形成する密着層形成工程と、
前記第一密着層上に、前記第二配線層を形成する第二配線層形成工程と、を有し、
前記開口部における前記第二配線層を、前記開口部の周囲における前記第二配線層から突出させないことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−84332(P2013−84332A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149503(P2012−149503)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】