サドル付分水栓
【課題】ガスケットが内周側に張り出すことなくこのガスケットによるシール性を飛躍的に向上させることができ、また、塗装の膜厚に影響を受けることがなく、ガスケットの押圧量を一定に確保できるサドル付分水栓を提供する。
【解決手段】配水管20固定用のサドル21と分水栓本体22より成るサドル付分水栓である。このサドル付分水栓は、分水栓本体22の下面に設けたガスケット室23内に環状ガスケット24を装着すると共に、このガスケット24の上面31と接触する分水栓本体22の下面29外周側に押圧突部30を設け、この押圧突部30でガスケット24外周側の圧縮率を上げるようにしている。
【解決手段】配水管20固定用のサドル21と分水栓本体22より成るサドル付分水栓である。このサドル付分水栓は、分水栓本体22の下面に設けたガスケット室23内に環状ガスケット24を装着すると共に、このガスケット24の上面31と接触する分水栓本体22の下面29外周側に押圧突部30を設け、この押圧突部30でガスケット24外周側の圧縮率を上げるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管から給水管を分岐する際に用いるサドル付分水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に埋設されている水道管から給水支管を分岐させる場合にはサドル付分水栓が用いられる。そして、このサドル付分水栓の固定用サドルと分水栓本体との取付構造には、ねじ式とフランジ式とがある。
ねじ式サドル付分水栓1は、図6に示すように、止水部2に施されたオネジ3とサドル部4に施されたメネジ5とを螺合することにより、サドル部4と止水部2との接合が行なわれる。また、ガスケット部材6は、サドル部4に設けられたガスケット室7内に収納される。同図のねじ式サドル分水栓1においては、ガスケット部材6は、ガスケット室7の上面7aにより水道管8側に押圧される。
【0003】
一方、フランジ式サドル付分水栓は、サドル部に止水部のフランジ部が複数のボルトでボルト止めされてサドル部とフランジ部との接合が行なわれる。ガスケット部材は、サドル部に設けられたガスケット室内に収納され、止水部2の下面により水道管側に押圧される。
【0004】
フランジ式サドル付分水栓の具体例として、特許文献1のサドル付き分水栓がある。図7に示すように、同文献1のサドル付き分水栓11は、サドル部12と分水栓本体13との間に環状保持体14を有し、この環状保持体14の下方側に設けられるガスケット室18内にガスケット部材15が収納されている。そして、ガスケット部材15は、環状保持体14の下面14aに押圧される。
このサドル付き分水栓11は、同じフランジ式である前記サドル付分水栓に比較して全体の高さを低くでき、また、金属製の水道管16とサドル部12との電気的接触を防止でき、腐食を防止する等のメリットがある。
【0005】
また、特許文献2のサドル分水栓は、栓筐の内部に環状締付部材を有し、この環状締付部材下端の鍔部が栓筐の開口の下端縁とは当接せず、その内側に嵌入する構造になっている。ガスケットであるサドルパッキンは、サドルに設けられた収容孔に収容され、上端面が、環状締付部材の下面と栓筐の下面とにより押圧されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−306895号公報
【特許文献2】特開2001−289385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の各サドル付分水栓においては、ガスケットは、水道管との当接面が水道管の外形に沿って外周側に広がってしまうと、シール面圧が低下してしまう現象が生じることがあった。この現象は、水道管が小口径の場合、例えば、呼び径40A、50A、75A等の水道管のときに顕著となる。
【0008】
この場合、例えば、図7のサドル付分水栓11において、ガスケット部材15の外側面15aを、ガスケット室18の内壁、すなわち、サドル部12の筒部12bの内壁12cによって支持することにより、ガスケット部材15が広がることを防止する構造も考えられる。しかし、サドル部12は鋳鉄等の鋳物で形成されており、内壁12cは鋳抜勾配であるテーパ面状となっており、寸法公差が大きいことから、サドル部12の形状に依存することなくガスケット部材15によるシール面圧を確保できる構造が求められていた。
【0009】
また、特許文献1や図7のサドル付分水栓11のようなフランジ式サドル付分水栓は、環状保持体14の鍔部14bを厚くし、環状保持体14の下面14aによりガスケット部材15を押圧する量を全面的に増加させることも考えられる。しかし、この場合、ガスケット部材15が内径側に張り出すように変形する可能性があるため、これが原因となって水道管16に穿孔穴を設けるための図示しない穿孔機や、穿孔穴に装着される図示しない防食スリーブが、ガスケット部材15と干渉するおそれがある。
【0010】
また、同文献2のサドル分水栓は、サドルパッキンの上端面が環状締付部材の下面と栓筐の下面とに当接する構造であるため、ガスケットの押圧量を増やすことは難しくなっている。更に、このサドル分水栓は、環状締付部材と栓筐とによりサドルパッキンを押さえる構造であるためシール性が悪くなるという問題もある。
【0011】
ところで、上述したサドル付分水栓のうち、特に、フランジ式サドル付分水栓、例えば、図7のサドル付分水栓11は、サドル部12の上面12aに分水栓11に形成したフランジ部17が載置する構造であるため、サドルに防食用の粉体塗装等の塗装を施した場合に、分水栓本体13との当接面であるサドル部上面12aに図示しない塗装の厚みが加わって、分水栓本体13がサドル部12に対して上方に離れるようになっている。更に、このときサドル部下面側にも塗装の厚みが加わって、分水栓全体は水道管16に対しても上方に離れることになる。
【0012】
このため、例えば、サドル部12の表面に施される塗装の膜厚が、一般に規定されている膜厚である300μmよりも厚い場合などには、分水栓本体13が水道管16から離れた位置に配置されるためガスケット部材15の押圧量が低下し、分水栓本体13と水道管16とのシール性が悪化するという問題があった。しかも、塗装の厚みは、気温、湿度、塗装される物品の形状、塗装時間、作業者の技量などに影響を受けるため、全ての製品を同じ塗装厚さに揃えることが困難になっており、ガスケット部材15によるシール性を一定に保つことが難しくなっている。
【0013】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、ガスケットが内周側に張り出すことなくこのガスケットによるシール性を飛躍的に向上させることができ、また、塗装の膜厚に影響を受けることがなく、ガスケットの押圧量を一定に確保できるサドル付分水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、配水管固定用のサドルと分水栓本体より成るサドル付分水栓において、分水栓本体の下面に設けたガスケット室内に環状ガスケットを装着すると共に、このガスケットの上面と接触する分水栓本体の下面外周側に押圧突部を設け、この押圧突部でガスケット外周側の圧縮率を上げるようにしたサドル付分水栓である。
【0015】
請求項2に係る発明は、押圧突部の段差部位をテーパとしたサドル付分水栓である。
【0016】
請求項3に係る発明は、分水栓本体は、サドルに設けた支受部と当該分水栓本体に設けたフランジ部とを結合したフランジ式であるサドル付分水栓である。
【0017】
請求項4に係る発明は、押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面外周側に環状に突設したサドル付分水栓である。
【0018】
請求項5に係る発明は、押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、分水栓本体のガスケット室の上面に露出したボデーの露出部、又は、この露出部と分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面とより成るサドル付分水栓である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、ガスケットが内周側に張り出すことなくこのガスケットによるシール性を向上させることができるサドル付分水栓である。このため、例えば、異なる呼び径の水道管に対しても、ガスケットを適正な押圧状態に押圧した状態で水道管に装着することができ、延いては、異なる呼び径の水道管に対して1つのガスケットを共用することも可能である。また、塗装の膜厚に影響を受けることがなく、ガスケットの押圧力を一定に確保して漏れを防ぎながら分岐配管可能なサドル付分水栓である。
【0020】
請求項2に係る発明によると、押圧突部がガスケット上面外周側に強固に当接し、この押圧突部とガスケットとのシール性を一層向上させることができるサドル付分水栓である。
【0021】
請求項3に係る発明によると、分水栓本体とサドルとの電気的な導通を防いで異種金属腐食の発生を防止できるサドル付分水栓である。また、地震などの外力に対する強度が高く、サドルに対する分水栓本体の取付方向を変換することも可能な機能的に優れたサドル付分水栓である。
【0022】
請求項4に係る発明によると、環状突部により均一な押圧力を発揮してシール性を向上させながら、ブッシュ単体によりガスケット上面外周側を押圧することでより高いシール性を確保できるサドル付分水栓である。
【0023】
請求項5に係る発明によると、環状突部により均一な押圧力を発揮してシール性を向上させながら、ボデーの露出部で直接ガスケットを押圧したりブッシュを薄型に設けることができる構造により、分水栓本体の高さを低く抑えて全体のコンパクト化を図ることができるサドル付分水栓である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明におけるサドル付分水栓の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1、2に示すように、本発明のサドル付分水栓は、配水管20を分岐するために用いられ、この配水管20固定用のサドル21と分水栓本体22とより成っている。また、分水栓本体22の下面側にはガスケット室23が設けられ、このガスケット室23内に環状ガスケット24が装着されている。ガスケット室23は、サドル21の筒部21bと、分水栓本体22の下面と、配水管20とにより囲まれた領域に形成される。ガスケット24は、少なくとも分水栓本体22の下面と、配水管20との間において押圧されるようになっている。
【0025】
分水栓本体22は、ボデー25を有しており、このボデー25内には止水機構26が内蔵されている。この止水機構26の下方にはブッシュ27が設けられ、このブッシュ27により止水機構26がボデー内に保持される構造になっている。
【0026】
ブッシュ27は、略円筒状に形成され、その下方側には環状鍔部28が形成されている。この環状鍔部28の下面29の外周側には、環状突部である押圧突部30が環状に突設形成され、この押圧突部30がガスケット24の上面31に接触してこのガスケット24外周側の圧縮率を上げるようになっている。ここで、ガスケット24の外周側とは、少なくとも、配水管20とのシール部位となる、ガスケット24の底部内周縁24aよりも外周側の領域、より好ましくは、ガスケット24の内周に形成された凹部24bよりも外周側の領域をいう。なお、凹部24bは、押圧されたガスケット24が内側に押し出されることを防止している。
【0027】
更に、押圧突部30の段差部位は、略45°のテーパ32が設けられており、押圧突部30は、このテーパ32を介して押圧突部30以外の下面29と繋がっている。テーパ32と環状突部28との間には縁部32aが形成されている。
【0028】
押圧突部30は、例えば、約1mm程度の厚さでブッシュ27に環状に形成されているが、この押圧突部30は、配水管20の管軸20aに直交する位置付近の一部であれば環状以外であってもよい。また、押圧突部30は、ブッシュ27の下面29外周側に形成されればよく、下面29の最外周側以外であってもよい。
【0029】
また、ブッシュ27の環状鍔部28の外周側には、図示しない平行二面部が形成されており、この平行二面部を図示しないチャック等の締付け工具で把持して締付けることにより、ボデー25に対してブッシュ27を着脱できるようになっている。
【0030】
ブッシュ27の下面29内周側には鍔状部33が突出形成され、この鍔状部33の外側には凹部34が設けられている。この凹部34には、ガスケット24の一部を挟み込むことが可能になっている。更に、ブッシュ27の内周側には筒状絶縁体35が装着され、この筒状絶縁体35の下部側には包囲部36が形成されている。この包囲部36は、鍔状部33を包囲することが可能になっている。この包囲により、金属材料からなるブッシュ27を筒状絶縁体35により水道水から絶縁でき、また、鍔状部33から放電することが防がれている。
また、ブッシュ27の上方内周面側には凹状の環状装着部37、上方外周側にはおねじ38、このおねじの下方部に装着凹部39が形成されている。
【0031】
ガスケット24は、ブッシュ27の鍔状部33への取付け側に内周鍔部40が形成されている。また、ガスケット24の上面31は、略平面状に設けられ、前述したように、この上面31の外周側を押圧突部30が押圧できるようになっている。
【0032】
ボデー25は、下方側にフランジ部41を有しており、分水栓本体22は、このフランジ41とサドル21に設けた支受部21aとを結合するフランジ式の分水栓となっている。また、フランジ部41の下方には装着筒部43が形成されており、この装着筒部43の内側には、鉛直開口部44が形成されている。更に、鉛直開口部44の上方には、図示しない穿孔機や防食スリーブ挿入機を着脱するための開口部45が形成され、この開口部45を介して配水管20を穿孔できるようになっている。また、開口部45の外周側には雄ネジ部46が設けられ、この雄ネジ部46に対して、キャップ50の雌ネジ部51が螺着可能になっている。
【0033】
また、鉛直開口部44の上方側にはめねじ52が形成されている。更に、鉛直開口部44の直交方向には分岐流路53が設けられ、配水管20の分岐後には、この分岐流路53により流路が分岐可能になっている。分岐流路53の対向位置には、この分岐流路53と同軸にステム挿着穴54が形成されている。開口部45の下方位置には、凹状の環状装着部55が形成されている。
【0034】
ボデー25の止水機構26は、ボール60と、ステム61と、上ボールシート62と、下ボールシート63とを有している。
ボール60は、内部に三方口64を有しており、ステム61を介してボデー25内に装着される。このボール60は、ステム61により回転させることにより三方口64の流路を切換え可能に設けられている。ステム61は、ステム挿着穴54に挿着された状態で、先端側にボール60が取付けられている。
【0035】
分水栓本体22を組立てる際には、環状装着部55に上ボールシート62を装着した状態で、ボール60を鉛直開口部44と分岐流路53との交差位置に収納し、このボール60にステム61を取付ける。続いて、ブッシュ27の環状装着部37に下ボールシート63、装着凹部39にOリング65を装着し、おねじ38をめねじ52に螺合することによりブッシュ27をボデー25に取付ける。これにより、ボデー25内部には止水機構26が構成される。
【0036】
また、ブッシュ27の取付け後には、環状鍔部28の上面側に装着筒部43の端面側が当接した状態となる。この取付構造により、ブッシュ27は、ボデー25とガスケット24との間に装着される。なお、開口部45には、キャップ50が雄ネジ部46と雌ネジ部51との螺合により取付けられる。
【0037】
ガスケット24は、内周鍔部40を筒状絶縁体35の上から凹部34に挟み込むようにして装着されて鍔状部33に仮着される。これにより、ガスケット24は、ブッシュ27に対して脱落防止が図られる。
【0038】
組立後の分水栓本体22は、サドル21と、配水管20の下部側への固定用のバンド70と、このサドル21とバンド70とを固定するボルト・ナット71とを介して配水管20に装着される。この場合、分水栓本体22は、フランジ部41を介してサドル21の支受部21aに載置され、この状態で図示しないボルトにより締付け固定されてサドル21に固定される。次いで、サドル21とバンド70とにより配水管20を挟んだ状態で、このサドル21とバンド70がボルト・ナット71の締付けにより固定される。
【0039】
続いて、本発明のサドル付分水栓の上記実施形態における作用を説明する。
図1に示すように、分水栓本体22を、サドル21と、バンド70と、ボルト・ナット71とを用いて配水管20に取付けると、ガスケット室23内に装着されたガスケット24が配水管20とブッシュ27との間に挟まれた状態になる。このとき、ブッシュ27の下面29外周側にガスケット24の上面31を押圧する押圧突部30を設けているので、図2に示すように、ボルト・ナット71を締込んだときに押圧突部30が上面31の外周側を押圧する。
【0040】
このときの力の作用を図2、3において説明すると、押圧突部30が上面31の外周側を押圧したときに力Aが力点A1の領域に働き、この力Aは、ガスケット24と配水管20の管頂20cとの接点であり、ガスケット24を最も強く押圧する部位である支点Bを中心として働こうとする。その結果、図3の矢印に示した管軸20aの管軸方向Xと直交する矢印の直交方向Yにおいて、ガスケット24底部と配水管20との当接位置である作用点C1に力Cが働く。図2においては、変形前のガスケット24における支点Bを示しており、実際にはガスケット24の二点鎖線に示した部分は、配水管20に当接して変形するようになっている。
【0041】
この場合、押圧突部30を設けていることにより、この押圧突部30からガスケット24に力Aによる押圧力が集中して加わり、上面31外周側の圧縮率が向上する。また、押圧突部30が上面31外周側に形成されていることから、てこの作用における力点A1と支点Bとの距離を長く確保することで、作用点C1に及ぼす力Cのモーメントを大きくすることができる。これにより、力Aが支点Bを中心にガスケット24を外周側から内周側に傾倒させようとする方向に力Cが加わり、ガスケット24は、外周側への広がりが抑えられつつ配水管20の外周面20bに沿うように密着する。これらの動作により、ガスケット24が配水管20に対して密着してシール性が向上する。
【0042】
更に、押圧突部30の段差部位をテーパ32とし、このテーパ32と環状突部との間には縁部32aを形成しているので、この縁部32aがガスケット24に線接触することで強固に当接してシール性をより向上させることができる。しかも、段差部位を、縁部32aに向けてテーパ状に形成したテーパ32としているので、ガスケット24の圧縮率を徐々に増すことができ、ガスケット24への当接部位に亀裂が生じることを防ぐことができる。
【0043】
上記のことから、分水栓本体22を本来とは異なる呼び径の配水管20に装着した場合であっても、ガスケット24がこの配水管20の外周面20bの形状に沿って変形して優れたシール性を発揮することができる。従って、同一のガスケット24を異なる呼び径の配水管20用として利用することもでき、ガスケット24を共用化することができる。このとき、特に、配水管20が小口径の場合において、ガスケット24が内圧により外周側に広がろうとする動きがより効果的に抑えられる。
しかも、ガスケット24は、圧縮率の増加に伴って内周側に押し出されることがなく、このガスケット24に対して穿孔機や防食スリーブが干渉するおそれも無い。
【0044】
更に、本実施形態のフランジ式の分水栓本体22は、フランジ式の欠点であるサドルの塗装の厚みによるガスケットの押圧量の低下を解消している。すなわち、図2において、サドル21に塗装を施した場合、分水栓本体22は、配水管20から上方に離れた位置に配置されるものの、前述した場合と同様に、ブッシュ27の押圧突部30がガスケット24の上面31外周側を押圧することにより、ガスケット24の押圧量が確保され高いシール性が発揮される。
【0045】
なお、ガスケット24の内周側においては、内周鍔部40が筒状絶縁体35の上から凹部34に挟み込まれるように取付けられているので、ブッシュ27の先端側が配水管20の管頂部位に接触したり、筒状絶縁体35の上部側に隙間が発生してジャンピング電流が発生したりすることが防がれる。
【0046】
また、押圧突部30を設けていることにより、ブッシュ27の環状鍔部28の外周側に設けた平行二面部の肉厚もアップするため、締付け工具により締付け易くなり、例えば、製造ラインにおける組立工程において、チャック等による締付け時に二面巾が摩耗しにくくなり、組立性が向上する。
【0047】
上記においては、押圧突部30をブッシュ27の環状鍔部28の下面29外周側に設けているが、この環状鍔部28を省略するようにしてもよい。このときには、図2において、装着筒部43が破線に示した位置まで延設される。これにより、分水栓本体22のガスケット室23の上面に装着筒部43の端面側であるボデー25の露出部72が露出するため、この露出部72か、又は、この露出部72と分水栓本体22に内蔵した止水機構26を保持するブッシュ27の下面29とより押圧突部(環状突部)が構成され、この押圧突部によりガスケット外周側の圧縮率を向上させることができる。
【0048】
更に、図4においては、ブッシュの他例を示している。上述したブッシュ27において、最外周側に押圧突部30を設けていたが、同図のブッシュ75は、最外周側に突部を形成することなく、外周側の一部の肉厚をアップさせて押圧突部を形成したものである。この場合、図4(a)に示すように、押圧突部76を断面円弧状に突設形成したり、或は、図4(b)に示すように、押圧突部77を断面略台形状に形成したりすることが望ましい。特に、図4(b)の状態に押圧突部77を形成した場合には、前記と同様にテーパ78が形成され、このテーパ78により一層シール性が向上する。
【0049】
更に、図5においては、ブッシュの更に他例を示している。図に示すように、このブッシュ80の押圧突部81は、ガスケット24との当接側の一部に形成され、更に、この押圧突部81は、ブッシュ27の半径方向において、ガスケット24による配水管20への押圧力を高める位置付近のみに形成されている。この場合、ガスケット24をより配水管20の外周面20bに沿うように変形させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のサドル付き分水栓の一実施形態を示した縦断面図である。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】ガスケットの装着状態を示した模式図である。
【図4】ブッシュの他例を示す縦断面図である。
【図5】ブッシュの更に他例を示す一部省略底面図である。
【図6】従来のねじ式サドル付き分水栓を示した縦断面図である。
【図7】従来のフランジ式サドル付き分水栓を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
20 配水管
21 サドル
21a 支受部
22 分水栓本体
23 ガスケット室
24 ガスケット
26 止水機構
27 ブッシュ
29 下面
30 環状突部(押圧突部)
31 上面
32 テーパ
41 フランジ部
72 露出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管から給水管を分岐する際に用いるサドル付分水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に埋設されている水道管から給水支管を分岐させる場合にはサドル付分水栓が用いられる。そして、このサドル付分水栓の固定用サドルと分水栓本体との取付構造には、ねじ式とフランジ式とがある。
ねじ式サドル付分水栓1は、図6に示すように、止水部2に施されたオネジ3とサドル部4に施されたメネジ5とを螺合することにより、サドル部4と止水部2との接合が行なわれる。また、ガスケット部材6は、サドル部4に設けられたガスケット室7内に収納される。同図のねじ式サドル分水栓1においては、ガスケット部材6は、ガスケット室7の上面7aにより水道管8側に押圧される。
【0003】
一方、フランジ式サドル付分水栓は、サドル部に止水部のフランジ部が複数のボルトでボルト止めされてサドル部とフランジ部との接合が行なわれる。ガスケット部材は、サドル部に設けられたガスケット室内に収納され、止水部2の下面により水道管側に押圧される。
【0004】
フランジ式サドル付分水栓の具体例として、特許文献1のサドル付き分水栓がある。図7に示すように、同文献1のサドル付き分水栓11は、サドル部12と分水栓本体13との間に環状保持体14を有し、この環状保持体14の下方側に設けられるガスケット室18内にガスケット部材15が収納されている。そして、ガスケット部材15は、環状保持体14の下面14aに押圧される。
このサドル付き分水栓11は、同じフランジ式である前記サドル付分水栓に比較して全体の高さを低くでき、また、金属製の水道管16とサドル部12との電気的接触を防止でき、腐食を防止する等のメリットがある。
【0005】
また、特許文献2のサドル分水栓は、栓筐の内部に環状締付部材を有し、この環状締付部材下端の鍔部が栓筐の開口の下端縁とは当接せず、その内側に嵌入する構造になっている。ガスケットであるサドルパッキンは、サドルに設けられた収容孔に収容され、上端面が、環状締付部材の下面と栓筐の下面とにより押圧されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−306895号公報
【特許文献2】特開2001−289385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の各サドル付分水栓においては、ガスケットは、水道管との当接面が水道管の外形に沿って外周側に広がってしまうと、シール面圧が低下してしまう現象が生じることがあった。この現象は、水道管が小口径の場合、例えば、呼び径40A、50A、75A等の水道管のときに顕著となる。
【0008】
この場合、例えば、図7のサドル付分水栓11において、ガスケット部材15の外側面15aを、ガスケット室18の内壁、すなわち、サドル部12の筒部12bの内壁12cによって支持することにより、ガスケット部材15が広がることを防止する構造も考えられる。しかし、サドル部12は鋳鉄等の鋳物で形成されており、内壁12cは鋳抜勾配であるテーパ面状となっており、寸法公差が大きいことから、サドル部12の形状に依存することなくガスケット部材15によるシール面圧を確保できる構造が求められていた。
【0009】
また、特許文献1や図7のサドル付分水栓11のようなフランジ式サドル付分水栓は、環状保持体14の鍔部14bを厚くし、環状保持体14の下面14aによりガスケット部材15を押圧する量を全面的に増加させることも考えられる。しかし、この場合、ガスケット部材15が内径側に張り出すように変形する可能性があるため、これが原因となって水道管16に穿孔穴を設けるための図示しない穿孔機や、穿孔穴に装着される図示しない防食スリーブが、ガスケット部材15と干渉するおそれがある。
【0010】
また、同文献2のサドル分水栓は、サドルパッキンの上端面が環状締付部材の下面と栓筐の下面とに当接する構造であるため、ガスケットの押圧量を増やすことは難しくなっている。更に、このサドル分水栓は、環状締付部材と栓筐とによりサドルパッキンを押さえる構造であるためシール性が悪くなるという問題もある。
【0011】
ところで、上述したサドル付分水栓のうち、特に、フランジ式サドル付分水栓、例えば、図7のサドル付分水栓11は、サドル部12の上面12aに分水栓11に形成したフランジ部17が載置する構造であるため、サドルに防食用の粉体塗装等の塗装を施した場合に、分水栓本体13との当接面であるサドル部上面12aに図示しない塗装の厚みが加わって、分水栓本体13がサドル部12に対して上方に離れるようになっている。更に、このときサドル部下面側にも塗装の厚みが加わって、分水栓全体は水道管16に対しても上方に離れることになる。
【0012】
このため、例えば、サドル部12の表面に施される塗装の膜厚が、一般に規定されている膜厚である300μmよりも厚い場合などには、分水栓本体13が水道管16から離れた位置に配置されるためガスケット部材15の押圧量が低下し、分水栓本体13と水道管16とのシール性が悪化するという問題があった。しかも、塗装の厚みは、気温、湿度、塗装される物品の形状、塗装時間、作業者の技量などに影響を受けるため、全ての製品を同じ塗装厚さに揃えることが困難になっており、ガスケット部材15によるシール性を一定に保つことが難しくなっている。
【0013】
本発明は、従来の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、ガスケットが内周側に張り出すことなくこのガスケットによるシール性を飛躍的に向上させることができ、また、塗装の膜厚に影響を受けることがなく、ガスケットの押圧量を一定に確保できるサドル付分水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、配水管固定用のサドルと分水栓本体より成るサドル付分水栓において、分水栓本体の下面に設けたガスケット室内に環状ガスケットを装着すると共に、このガスケットの上面と接触する分水栓本体の下面外周側に押圧突部を設け、この押圧突部でガスケット外周側の圧縮率を上げるようにしたサドル付分水栓である。
【0015】
請求項2に係る発明は、押圧突部の段差部位をテーパとしたサドル付分水栓である。
【0016】
請求項3に係る発明は、分水栓本体は、サドルに設けた支受部と当該分水栓本体に設けたフランジ部とを結合したフランジ式であるサドル付分水栓である。
【0017】
請求項4に係る発明は、押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面外周側に環状に突設したサドル付分水栓である。
【0018】
請求項5に係る発明は、押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、分水栓本体のガスケット室の上面に露出したボデーの露出部、又は、この露出部と分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面とより成るサドル付分水栓である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、ガスケットが内周側に張り出すことなくこのガスケットによるシール性を向上させることができるサドル付分水栓である。このため、例えば、異なる呼び径の水道管に対しても、ガスケットを適正な押圧状態に押圧した状態で水道管に装着することができ、延いては、異なる呼び径の水道管に対して1つのガスケットを共用することも可能である。また、塗装の膜厚に影響を受けることがなく、ガスケットの押圧力を一定に確保して漏れを防ぎながら分岐配管可能なサドル付分水栓である。
【0020】
請求項2に係る発明によると、押圧突部がガスケット上面外周側に強固に当接し、この押圧突部とガスケットとのシール性を一層向上させることができるサドル付分水栓である。
【0021】
請求項3に係る発明によると、分水栓本体とサドルとの電気的な導通を防いで異種金属腐食の発生を防止できるサドル付分水栓である。また、地震などの外力に対する強度が高く、サドルに対する分水栓本体の取付方向を変換することも可能な機能的に優れたサドル付分水栓である。
【0022】
請求項4に係る発明によると、環状突部により均一な押圧力を発揮してシール性を向上させながら、ブッシュ単体によりガスケット上面外周側を押圧することでより高いシール性を確保できるサドル付分水栓である。
【0023】
請求項5に係る発明によると、環状突部により均一な押圧力を発揮してシール性を向上させながら、ボデーの露出部で直接ガスケットを押圧したりブッシュを薄型に設けることができる構造により、分水栓本体の高さを低く抑えて全体のコンパクト化を図ることができるサドル付分水栓である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明におけるサドル付分水栓の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1、2に示すように、本発明のサドル付分水栓は、配水管20を分岐するために用いられ、この配水管20固定用のサドル21と分水栓本体22とより成っている。また、分水栓本体22の下面側にはガスケット室23が設けられ、このガスケット室23内に環状ガスケット24が装着されている。ガスケット室23は、サドル21の筒部21bと、分水栓本体22の下面と、配水管20とにより囲まれた領域に形成される。ガスケット24は、少なくとも分水栓本体22の下面と、配水管20との間において押圧されるようになっている。
【0025】
分水栓本体22は、ボデー25を有しており、このボデー25内には止水機構26が内蔵されている。この止水機構26の下方にはブッシュ27が設けられ、このブッシュ27により止水機構26がボデー内に保持される構造になっている。
【0026】
ブッシュ27は、略円筒状に形成され、その下方側には環状鍔部28が形成されている。この環状鍔部28の下面29の外周側には、環状突部である押圧突部30が環状に突設形成され、この押圧突部30がガスケット24の上面31に接触してこのガスケット24外周側の圧縮率を上げるようになっている。ここで、ガスケット24の外周側とは、少なくとも、配水管20とのシール部位となる、ガスケット24の底部内周縁24aよりも外周側の領域、より好ましくは、ガスケット24の内周に形成された凹部24bよりも外周側の領域をいう。なお、凹部24bは、押圧されたガスケット24が内側に押し出されることを防止している。
【0027】
更に、押圧突部30の段差部位は、略45°のテーパ32が設けられており、押圧突部30は、このテーパ32を介して押圧突部30以外の下面29と繋がっている。テーパ32と環状突部28との間には縁部32aが形成されている。
【0028】
押圧突部30は、例えば、約1mm程度の厚さでブッシュ27に環状に形成されているが、この押圧突部30は、配水管20の管軸20aに直交する位置付近の一部であれば環状以外であってもよい。また、押圧突部30は、ブッシュ27の下面29外周側に形成されればよく、下面29の最外周側以外であってもよい。
【0029】
また、ブッシュ27の環状鍔部28の外周側には、図示しない平行二面部が形成されており、この平行二面部を図示しないチャック等の締付け工具で把持して締付けることにより、ボデー25に対してブッシュ27を着脱できるようになっている。
【0030】
ブッシュ27の下面29内周側には鍔状部33が突出形成され、この鍔状部33の外側には凹部34が設けられている。この凹部34には、ガスケット24の一部を挟み込むことが可能になっている。更に、ブッシュ27の内周側には筒状絶縁体35が装着され、この筒状絶縁体35の下部側には包囲部36が形成されている。この包囲部36は、鍔状部33を包囲することが可能になっている。この包囲により、金属材料からなるブッシュ27を筒状絶縁体35により水道水から絶縁でき、また、鍔状部33から放電することが防がれている。
また、ブッシュ27の上方内周面側には凹状の環状装着部37、上方外周側にはおねじ38、このおねじの下方部に装着凹部39が形成されている。
【0031】
ガスケット24は、ブッシュ27の鍔状部33への取付け側に内周鍔部40が形成されている。また、ガスケット24の上面31は、略平面状に設けられ、前述したように、この上面31の外周側を押圧突部30が押圧できるようになっている。
【0032】
ボデー25は、下方側にフランジ部41を有しており、分水栓本体22は、このフランジ41とサドル21に設けた支受部21aとを結合するフランジ式の分水栓となっている。また、フランジ部41の下方には装着筒部43が形成されており、この装着筒部43の内側には、鉛直開口部44が形成されている。更に、鉛直開口部44の上方には、図示しない穿孔機や防食スリーブ挿入機を着脱するための開口部45が形成され、この開口部45を介して配水管20を穿孔できるようになっている。また、開口部45の外周側には雄ネジ部46が設けられ、この雄ネジ部46に対して、キャップ50の雌ネジ部51が螺着可能になっている。
【0033】
また、鉛直開口部44の上方側にはめねじ52が形成されている。更に、鉛直開口部44の直交方向には分岐流路53が設けられ、配水管20の分岐後には、この分岐流路53により流路が分岐可能になっている。分岐流路53の対向位置には、この分岐流路53と同軸にステム挿着穴54が形成されている。開口部45の下方位置には、凹状の環状装着部55が形成されている。
【0034】
ボデー25の止水機構26は、ボール60と、ステム61と、上ボールシート62と、下ボールシート63とを有している。
ボール60は、内部に三方口64を有しており、ステム61を介してボデー25内に装着される。このボール60は、ステム61により回転させることにより三方口64の流路を切換え可能に設けられている。ステム61は、ステム挿着穴54に挿着された状態で、先端側にボール60が取付けられている。
【0035】
分水栓本体22を組立てる際には、環状装着部55に上ボールシート62を装着した状態で、ボール60を鉛直開口部44と分岐流路53との交差位置に収納し、このボール60にステム61を取付ける。続いて、ブッシュ27の環状装着部37に下ボールシート63、装着凹部39にOリング65を装着し、おねじ38をめねじ52に螺合することによりブッシュ27をボデー25に取付ける。これにより、ボデー25内部には止水機構26が構成される。
【0036】
また、ブッシュ27の取付け後には、環状鍔部28の上面側に装着筒部43の端面側が当接した状態となる。この取付構造により、ブッシュ27は、ボデー25とガスケット24との間に装着される。なお、開口部45には、キャップ50が雄ネジ部46と雌ネジ部51との螺合により取付けられる。
【0037】
ガスケット24は、内周鍔部40を筒状絶縁体35の上から凹部34に挟み込むようにして装着されて鍔状部33に仮着される。これにより、ガスケット24は、ブッシュ27に対して脱落防止が図られる。
【0038】
組立後の分水栓本体22は、サドル21と、配水管20の下部側への固定用のバンド70と、このサドル21とバンド70とを固定するボルト・ナット71とを介して配水管20に装着される。この場合、分水栓本体22は、フランジ部41を介してサドル21の支受部21aに載置され、この状態で図示しないボルトにより締付け固定されてサドル21に固定される。次いで、サドル21とバンド70とにより配水管20を挟んだ状態で、このサドル21とバンド70がボルト・ナット71の締付けにより固定される。
【0039】
続いて、本発明のサドル付分水栓の上記実施形態における作用を説明する。
図1に示すように、分水栓本体22を、サドル21と、バンド70と、ボルト・ナット71とを用いて配水管20に取付けると、ガスケット室23内に装着されたガスケット24が配水管20とブッシュ27との間に挟まれた状態になる。このとき、ブッシュ27の下面29外周側にガスケット24の上面31を押圧する押圧突部30を設けているので、図2に示すように、ボルト・ナット71を締込んだときに押圧突部30が上面31の外周側を押圧する。
【0040】
このときの力の作用を図2、3において説明すると、押圧突部30が上面31の外周側を押圧したときに力Aが力点A1の領域に働き、この力Aは、ガスケット24と配水管20の管頂20cとの接点であり、ガスケット24を最も強く押圧する部位である支点Bを中心として働こうとする。その結果、図3の矢印に示した管軸20aの管軸方向Xと直交する矢印の直交方向Yにおいて、ガスケット24底部と配水管20との当接位置である作用点C1に力Cが働く。図2においては、変形前のガスケット24における支点Bを示しており、実際にはガスケット24の二点鎖線に示した部分は、配水管20に当接して変形するようになっている。
【0041】
この場合、押圧突部30を設けていることにより、この押圧突部30からガスケット24に力Aによる押圧力が集中して加わり、上面31外周側の圧縮率が向上する。また、押圧突部30が上面31外周側に形成されていることから、てこの作用における力点A1と支点Bとの距離を長く確保することで、作用点C1に及ぼす力Cのモーメントを大きくすることができる。これにより、力Aが支点Bを中心にガスケット24を外周側から内周側に傾倒させようとする方向に力Cが加わり、ガスケット24は、外周側への広がりが抑えられつつ配水管20の外周面20bに沿うように密着する。これらの動作により、ガスケット24が配水管20に対して密着してシール性が向上する。
【0042】
更に、押圧突部30の段差部位をテーパ32とし、このテーパ32と環状突部との間には縁部32aを形成しているので、この縁部32aがガスケット24に線接触することで強固に当接してシール性をより向上させることができる。しかも、段差部位を、縁部32aに向けてテーパ状に形成したテーパ32としているので、ガスケット24の圧縮率を徐々に増すことができ、ガスケット24への当接部位に亀裂が生じることを防ぐことができる。
【0043】
上記のことから、分水栓本体22を本来とは異なる呼び径の配水管20に装着した場合であっても、ガスケット24がこの配水管20の外周面20bの形状に沿って変形して優れたシール性を発揮することができる。従って、同一のガスケット24を異なる呼び径の配水管20用として利用することもでき、ガスケット24を共用化することができる。このとき、特に、配水管20が小口径の場合において、ガスケット24が内圧により外周側に広がろうとする動きがより効果的に抑えられる。
しかも、ガスケット24は、圧縮率の増加に伴って内周側に押し出されることがなく、このガスケット24に対して穿孔機や防食スリーブが干渉するおそれも無い。
【0044】
更に、本実施形態のフランジ式の分水栓本体22は、フランジ式の欠点であるサドルの塗装の厚みによるガスケットの押圧量の低下を解消している。すなわち、図2において、サドル21に塗装を施した場合、分水栓本体22は、配水管20から上方に離れた位置に配置されるものの、前述した場合と同様に、ブッシュ27の押圧突部30がガスケット24の上面31外周側を押圧することにより、ガスケット24の押圧量が確保され高いシール性が発揮される。
【0045】
なお、ガスケット24の内周側においては、内周鍔部40が筒状絶縁体35の上から凹部34に挟み込まれるように取付けられているので、ブッシュ27の先端側が配水管20の管頂部位に接触したり、筒状絶縁体35の上部側に隙間が発生してジャンピング電流が発生したりすることが防がれる。
【0046】
また、押圧突部30を設けていることにより、ブッシュ27の環状鍔部28の外周側に設けた平行二面部の肉厚もアップするため、締付け工具により締付け易くなり、例えば、製造ラインにおける組立工程において、チャック等による締付け時に二面巾が摩耗しにくくなり、組立性が向上する。
【0047】
上記においては、押圧突部30をブッシュ27の環状鍔部28の下面29外周側に設けているが、この環状鍔部28を省略するようにしてもよい。このときには、図2において、装着筒部43が破線に示した位置まで延設される。これにより、分水栓本体22のガスケット室23の上面に装着筒部43の端面側であるボデー25の露出部72が露出するため、この露出部72か、又は、この露出部72と分水栓本体22に内蔵した止水機構26を保持するブッシュ27の下面29とより押圧突部(環状突部)が構成され、この押圧突部によりガスケット外周側の圧縮率を向上させることができる。
【0048】
更に、図4においては、ブッシュの他例を示している。上述したブッシュ27において、最外周側に押圧突部30を設けていたが、同図のブッシュ75は、最外周側に突部を形成することなく、外周側の一部の肉厚をアップさせて押圧突部を形成したものである。この場合、図4(a)に示すように、押圧突部76を断面円弧状に突設形成したり、或は、図4(b)に示すように、押圧突部77を断面略台形状に形成したりすることが望ましい。特に、図4(b)の状態に押圧突部77を形成した場合には、前記と同様にテーパ78が形成され、このテーパ78により一層シール性が向上する。
【0049】
更に、図5においては、ブッシュの更に他例を示している。図に示すように、このブッシュ80の押圧突部81は、ガスケット24との当接側の一部に形成され、更に、この押圧突部81は、ブッシュ27の半径方向において、ガスケット24による配水管20への押圧力を高める位置付近のみに形成されている。この場合、ガスケット24をより配水管20の外周面20bに沿うように変形させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のサドル付き分水栓の一実施形態を示した縦断面図である。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】ガスケットの装着状態を示した模式図である。
【図4】ブッシュの他例を示す縦断面図である。
【図5】ブッシュの更に他例を示す一部省略底面図である。
【図6】従来のねじ式サドル付き分水栓を示した縦断面図である。
【図7】従来のフランジ式サドル付き分水栓を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
20 配水管
21 サドル
21a 支受部
22 分水栓本体
23 ガスケット室
24 ガスケット
26 止水機構
27 ブッシュ
29 下面
30 環状突部(押圧突部)
31 上面
32 テーパ
41 フランジ部
72 露出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配水管固定用のサドルと分水栓本体より成るサドル付分水栓において、前記分水栓本体の下面に設けたガスケット室内に環状ガスケットを装着すると共に、このガスケットの上面と接触する分水栓本体の下面外周側に押圧突部を設け、この押圧突部で前記ガスケット外周側の圧縮率を上げるようにしたことを特徴とするサドル付分水栓。
【請求項2】
前記押圧突部の段差部位をテーパとした請求項1に記載のサドル付分水栓。
【請求項3】
前記分水栓本体は、サドルに設けた支受部と当該分水栓本体に設けたフランジ部とを結合したフランジ式である請求項1に記載のサドル付分水栓。
【請求項4】
前記押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、前記分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面外周側に環状に突設した請求項1乃至3の何れか1項に記載のサドル付分水栓。
【請求項5】
前記押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、前記分水栓本体のガスケット室の上面に露出したボデーの露出部、又は、この露出部と前記分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面とより成る請求項1乃至3の何れか1項に記載のサドル付分水栓。
【請求項1】
配水管固定用のサドルと分水栓本体より成るサドル付分水栓において、前記分水栓本体の下面に設けたガスケット室内に環状ガスケットを装着すると共に、このガスケットの上面と接触する分水栓本体の下面外周側に押圧突部を設け、この押圧突部で前記ガスケット外周側の圧縮率を上げるようにしたことを特徴とするサドル付分水栓。
【請求項2】
前記押圧突部の段差部位をテーパとした請求項1に記載のサドル付分水栓。
【請求項3】
前記分水栓本体は、サドルに設けた支受部と当該分水栓本体に設けたフランジ部とを結合したフランジ式である請求項1に記載のサドル付分水栓。
【請求項4】
前記押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、前記分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面外周側に環状に突設した請求項1乃至3の何れか1項に記載のサドル付分水栓。
【請求項5】
前記押圧突部は環状突部であり、この環状突部は、前記分水栓本体のガスケット室の上面に露出したボデーの露出部、又は、この露出部と前記分水栓本体に内蔵した止水機構を保持するブッシュの下面とより成る請求項1乃至3の何れか1項に記載のサドル付分水栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−53985(P2010−53985A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220517(P2008−220517)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
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