説明

サブマージドポンプのモータ支持構造

【課題】極低温下においても亀裂や剥離を生じることなく軸電流に対する絶縁を確保するとともに回転軸の軸ブレによる振動の発生を防止する。
【解決手段】サブマージドポンプは、回転軸3の上部にモータ部分を設け、下部にポンプ部分を設け、ポンプ部分で加圧した液体の一部をモータ部分内に流通させ、かつバランス装置を通して回転軸3を浮き上がらせて回転軸3に作用するスラスト荷重を調整する。回転軸3を支持する軸受側支持部材12とケーシング側支持部材13との間には、軸電流絶縁用のリング状絶縁物18が設けられる。このリング状絶縁物18は、その外周面とケーシング側支持部材13の内周面との対向面が、回転軸3が上方に浮き上がった際に密着するように、回転軸3の軸心に対して傾斜させて構成されており、材料が収縮しても径方向のギャップがなくなるので、回転軸3の軸ブレが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、エチレン、プロピレン等の極低温の液体を取り出す際に使用するに適したサブマージドポンプのモータ支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的なクリーンエネルギーの需要に伴い、従来の石油や石炭などの化石燃料に代わるエネルギー源として天然ガスが脚光を浴びており、わが国でも年々輸入量が増大している。天然ガスを利用するためには、生産基地から遠方の受け入れ基地まで天然ガスを効率的に輸送する必要がある。その輸送手段の一つとして、天然ガスを−162℃以下の極低温に冷却して液化天然ガス(以下、LNGと称する)とし、LNGタンカーによって大量輸送する方法がある。
【0003】
LNGタンカーからLNGを積み下ろす際には、液化ガス用ポンプが使用される。液化ガス用ポンプは、ポンプ本体が液化ガスの液体中に浸漬された状態で使用されるため、駆動用モータが一体化されたサブマージドポンプが使用されている。
【0004】
サブマージドポンプは、例えば特許文献1の図1に記載されているように、ポンプユニット内に、上下部の軸受部により回転自在に支持される回転軸を設け、この回転軸の上部側にモータ部分を設け、また下部側にポンプ部分を設けて液化ガスの液体中に浸漬する構造となっている。
【0005】
そしてポンプ部分で加圧された液体は、配管を介してケーシングの吐出口から圧力容器の外部に送り出される一方、その加圧された液体の一部がモータ部分の下部側の軸受部を通り、モータ部分の内部を通り、上部側の軸受部を通ってケーシング外に排出されて再度ポンプ部分に流入する循環が行なわれ、上下部の軸受部に対する潤滑やモータ部分の固定子および回転子に対する冷却などに利用されている。
【0006】
ところで、この種のサブマージドポンプにおいては、液化ガスの積み下ろし作業の効率化を図るために、大型のポンプを使用することが考えられており、それに伴い、モータを大型化したり、その制御手段にインバータ制御を採用したりすることが行なわれるようになってきている。
【0007】
しかしながらモータを大型化したり、インバータ制御を採用したりすると、磁束分布のアンバランスや偏心量が相対的に大きくなって軸電圧および軸電流の値も大きくなり、軸電流による電食の問題が生じてくる。
【0008】
軸電流による電食の問題は、例えば特許文献2および3に記載されているように、モータがインバータ制御されることにより、モータによる軸電圧が増加し、回転軸とケーシングとの間、ひいては軸受の内輪と外輪との間に電位差が生じて軸受内に転動体を経由して電流が流れ、その結果、内外輪の軌道面または転動体の転動面に電食が生じて軸受に損傷を発生させる問題であり、その対策が必要となってくる。
【0009】
電食防止対策としては、上記特許文献2および3に記載されているように、軸受の外輪の外周面に絶縁被膜を設けたり、軸受の外輪とケーシング側の支持部材との間にリング状絶縁物を設けたりして軸電流の流れを遮断することが考えられている。
【0010】
そこで、特許文献2および3に記載されているような電食防止対策を、サブマージドポンプのモータ部分の軸受支持構造に適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−102544号公報
【特許文献2】特表2005−510189号公報
【特許文献3】特開平10−184699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、サブマージドポンプは、極低温に冷却されている液化ガスの液体中で使用されることから、軸受支持構造を構成する金属や絶縁被膜またはリング状絶縁物も熱収縮するので、この熱収縮による新たな問題が発生する。
【0013】
すなわち軸受支持構造を構成する金属と絶縁被膜またはリング状絶縁物は、材料の種類にもよるが、材料固有の熱収縮率に大きな差があるので、極低温に冷却されて収縮すると、絶縁被膜においては、亀裂が発生したり、剥離が生じたりして絶縁面での欠陥を生じるおそれがあり、またリング状絶縁物においては、リング状絶縁物と軸受側支持部材との間またはリング状絶縁物とケーシング側支持部材との間にギャップが生じて回転軸に軸ブレを生じさせ、モータを大きく振動させる原因になるおそれがあった。
【0014】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、極低温下においても亀裂や剥離を生じることなく軸電流に対する絶縁を確保することができるとともに回転軸の軸ブレによる振動の発生を防止することのできるサブマージドポンプのモータ支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明によるサブマージドポンプのモータ支持構造は、回転軸の上部にモータ部分を設け、下部にポンプ部分を設け、ポンプ部分で加圧した液体の一部をモータ部分内に流通させ、かつバランス装置を通して回転軸を浮き上がらせて回転軸に作用するスラスト荷重を調整するようにしたサブマージドポンプのモータ支持構造において、回転軸を支持する軸受側支持部材とケーシング側支持部材との間にリング状絶縁物を設け、このリング状絶縁物の内周面と軸受側支持部材の外周面との対向面またはリング状絶縁物の外周面とケーシング側支持部材の内周面との対向面を、回転軸が上方に浮き上がった際に密着するように、回転軸の軸心に対して傾斜させて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるサブマージドポンプのモータ支持構造によれば、軸受を支持する金属製の支持部材とリング状絶縁物は、極低温の液体により冷却されることによって、材料固有の熱収縮率の差により、リング状絶縁物の内周面と軸受側支持部材の外周面との間の傾斜した対向面またはリング状絶縁物の外周面とケーシング側支持部材の内周面との間の傾斜した対向面に径方向にギャップが生じることになるが、加圧された液体の流動により回転軸が上方に浮き上がる作用によって、軸受および軸受側支持部材も上方に浮き上がり、傾斜した対向面に形成されたギャップをなくすようにリング状絶縁物が支持部材と密着する。
【0017】
これにより極低温下においても、絶縁的に損傷することの少ないリング状絶縁物により軸電流に対する絶縁を確保でき、しかも回転軸は、軸受を介して径方向が位置決めされるので、回転軸に軸ブレを生じることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるモータ支持構造を備えたサブマージドポンプの主要部を示す断面図である。
【図2】(a)ないし(c)は、本発明の第1実施の形態に係り、図1のサブマージドポンプの上部軸受部におけるモータ支持構造の右半分の主要部を示す図で、(a)は常温時の状態を示す断面図、(b)は極低温に冷却されたときの状態を示す断面図、(c)は回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係り、図1のサブマージドポンプの下部軸受部におけるモータ支持構造の主要部の右半分を示す図で、回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。
【図4】(a)ないし(c)は、本発明の第2実施の形態に係り、サブマージドポンプの上部軸受部におけるモータ支持構造の主要部の右半分を示す図で、(a)は常温時の状態を示す断面図、(b)は極低温に冷却されたときの状態を示す断面図、(c)は回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施の形態に係り、サブマージドポンプの下部軸受部におけるモータ支持構造の主要部の右半分を示す図で、回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明によるモータ支持構造を備えたサブマージドポンプの主要部を示す断面図である。図2(a)ないし(c)は、本発明の第1実施の形態に係り、図1のサブマージドポンプのモータ支持構造の主要部の右半分を示す図で、(a)ないし(c)はそれぞれ常温時の状態、極低温に冷却されたときの状態、回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。図3は本発明の第1実施の形態に係り、下部側の軸受部におけるモータ支持構造の主要部の右半分を示す図で、回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。
【0020】
図1ないし図3において、サブマージドポンプは、図示しないユニットケース内にモータ部分1とポンプ部分2を有していて、LNGなどの液化ガスを貯留した圧力容器内に設置され、モータ部分1およびポンプ部分2を駆動することにより、液化ガスの液体を加圧して圧力容器外部に送り出すように構成されている。
【0021】
モータ部分1は、ユニットケース内の上部に設けられ、ポンプ部分2はユニットケース内の下部に設けられている。ポンプ部分2は、ポンプ側ケーシング2a内に、回転軸3とこの回転軸3に固定された多段のインペラ4が設けられている。本実施の形態では6段のインペラ4が設けられている。
【0022】
ポンプ部分2内の軸方向中央部には、仕切り壁2bが設けられており、この仕切り壁2bを挟んで、下3段のインペラ4は、液体を加圧して上方に向けて送り出し、上3段のインペラ4は、液体を加圧して下方に向けて送り出すようになっている。
【0023】
ポンプ側ケーシング2aの下端部には、ユニットケース内の液体を吸い込む吸込口2cが設けられ、また下3段のインペラ4の上部空間と上3段のインペラ4の上部空間とは管路5により連通され、さらに上3段のインペラ4の下部空間は、管路6を介して図示しない吐出口に接続されている。
【0024】
これにより、ポンプ部分2は、吸込口2cから吸い込んだ液体を下3段のインペラ4により設定圧力の半分の圧力まで加圧し、さらに上3段のインペラ4により設定圧力まで加圧して配管6を介して吐出口に送り出すようになっている。
【0025】
上3段のインペラ4の上部空間には、上述のように設定圧力の半分の圧力の液体が充満しているが、この液体は、ポンプ側ケーシング2a内に設けたバランス装置7および下部側の軸受部8aを通してモータ部分1内に流入するようになっている。
【0026】
モータ部分1は、モータ側ケーシング1a内に、ポンプ部分2と共通の回転軸3が上下部の軸受部8b,8aにより回転自在に支持されて配設されている。この回転軸3には、回転子9が取り付けられており、また回転子9に相対する位置のモータ側ケーシング1aの内周面に固定子10が取り付けられている。
【0027】
バランス装置7を通り、下部側の軸受部8aを通ってモータ部分1内に流入した設定圧力の半分の圧力の液体は、回転子9および固定子10を通り、上部側の軸受部8bを通ってモータ側ケーシング1a外に排出され、再度ポンプ側ケーシング2a下方の吸込口2cに吸い込まれる循環を行なうようになっている。これにより、軸受部8a,8bの潤滑や回転子9および固定子10の冷却が行なわれるようになっている。
【0028】
またバランス装置7は、バランスディスクに液体流通用の間隙(図示せず)が形成されており、この間隙を半分に加圧された液体が流通することにより、回転軸3を上方に持ち上げ、回転軸3に作用するスラスト荷重を軽減するようになっている。
【0029】
すなわち上下部の軸受部8b,8aには、回転軸3を介して回転子9の重量などによるスラスト荷重が作用している。このスラスト荷重を軽減するために、軸受部8a,8bは、回転軸3を上下動可能に保持し、バランス装置7に加圧された液体を作用させて、回転軸3に取り付けられた回転子9を浮き上がらせるようにしている。
【0030】
このバランス装置7における隙間の大きさは、ケーシング2a内の圧力によりバランス装置7を有効に動作させるように設定されている。なお、バランス装置7は、上部側の軸受部8bの上方に位置する回転軸3に構成することもできる。
【0031】
上部側の軸受部8bにおけるモータ支持構造は、図2(a)ないし(c)に示すように、回転軸3を、軸受11、軸受側支持部材12およびケーシング側支持部材13を介してモータ側ケーシング1aに支持する構成になっている。
【0032】
軸受11は、内輪11aおよび外輪11bの間に転動体11cを介在させた構成を有し、内輪11aが回転軸3に固定されている。軸受11の外輪11bの外周面には軸受側支持部材12が固定されている。この支持部材12は、筒状をなし、上端部に径方向外側に延びるフランジ部を有する、断面逆L字状に形成されており、そのフランジ部がケーシング側支持部材13上に載置されている。
【0033】
支持部材12のフランジ部は、周方向に所定の間隔を置いて設けられた複数本のボルト14により支持されている。これら複数本のボルト14は、フランジ部を貫通したのち、その先端部が支持部材13に螺合されて固定されているが、支持部材12を介して回転軸3を上下動可能に支持し、かつ常時フランジ部を介して下方に押し付けてモータ始動時などで発生する回転軸3の小刻みな振動を抑制するために、その頭部と支持部材12のフランジ部上面との間には、バネ15を介在させた状態で、所定の間隔が確保されている。
【0034】
またボルト14と支持部材12を電気的に絶縁するために、ボルト14の頭部とバネ15との間および支持部材12のフランジ部と支持部材13との間に絶縁ワッシャ16,17が設けられ、さらにボルト14の軸部には図示しない筒状の絶縁カラーが挿入されている。なお、ボルト14に絶縁ボルトを使用してボルト14と支持部材12の絶縁を構成することもできる。
【0035】
そして軸受側支持部材12とケーシング側支持部材13との間には、軸電流を絶縁するために、リング状絶縁物18が設けられている。このリング状絶縁物18は、本実施の形態では、熱収縮率の大きい3フッ化エチレン{LNG(−163℃)状況下での材質の線膨張率6.62E−05(/℃)}を使用した場合であり、支持部材12,13を構成する金属のSUS304{LNG(−163℃)状況下での材質の線膨張率1.40E−05(/℃)}よりも熱収縮率が大きい場合である。
【0036】
このリング状絶縁物18は、その外周面とケーシング側支持部材13の内周面との対向面を、回転軸3が上方に浮き上がった際に密着するように、回転軸3の軸心に対して傾斜させて構成されている。
【0037】
すなわちリング状絶縁物18は、断面が上方に向かって先細りとなるような楔状に構成されており、常温時の状態では、図2(a)に示すように、その内周面と軸受側支持部材12の外周面との対向面との間に所定寸法のギャップG1が形成されるような径寸法で構成され、外周面とケーシング側支持部材13との対向面は当接するような径寸法で構成されている。なお、19はリング状絶縁物18の脱落防止具で、支持部材13または12下面の周方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている。
【0038】
このような構成を有し、サブマージドポンプが極低温の液体中におかれて冷却されると、支持部材12,13よりもリング状絶縁物18の方が大きく収縮するので、図2(b)に示すように、その内周面と軸受側支持部材12の外周面との対向面が密着し、外周面とケーシング側支持部材13との対向面にギャップG2が形成されることになる。ギャップG1は、リング状絶縁物18が収縮することにより支持部材12との密着強度が大きくなりすぎて破損することのない寸法を確保しておく。
【0039】
次いで、液化ガスの液体が加圧され、バランス装置7が動作して回転軸3が浮き上がると、軸受11および支持部材12を介してリング状絶縁物18も浮き上がり、図2(c)に示すように、リング状絶縁物18の外周面がケーシング側支持部材13の内周面に当接する。
【0040】
図3に示す下部側の軸受部におけるモータ支持構造も、図2に示すモータ支持構造とほぼ同じ構造であり、異なるところは、脱落防止具19に代えて円盤状の支持部材20を、絶縁板21を介して支持部材13に固定して設けた点である。この円盤状の支持部材20は、リング状絶縁物18の脱落防止機能に加えて回転軸3のスラスト荷重を支持するように設けたものである。
【0041】
下部側の軸受部におけるモータ支持構造も、図3に示すように、回転軸3が浮き上がると、軸受11および支持部材12を介してリング状絶縁物18も浮き上がり、リング状絶縁物18の外周面がケーシング側支持部材13の内周面に当接する。
【0042】
このようにしてモータの回転軸3は、極低温下においても、上下部の軸受部8b,8aに径方向のギャップが存在しなくなり、径方向が位置決めされるので、軸ブレによる振動の発生を防止することができる。
【0043】
図4(a)ないし(c)は、本発明の第2実施の形態に係り、サブマージドポンプのモータ支持構造の主要部の右半分を示す図で、(a)ないし(c)はそれぞれ常温時の状態、極低温に冷却されたときの状態、回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。図5は本発明の第2実施の形態に係り、下部側の軸受部におけるモータ支持構造の主要部の右半分を示す図で、回転軸が上方に浮き上がったときの状態を示す断面図である。
【0044】
本実施の形態では、軸電流を絶縁するために、軸受側支持部材22とケーシング側支持部材23との間に設けるリング状絶縁物28は、熱収縮率の小さいエポキシガラス積層体{LNG(−163℃)状況下での材質の線膨張率7.90E−06(/℃)}を使用した場合であり、支持部材22,23を構成する金属のSUS304{LNG(−163℃)状況下での材質の線膨張率1.40E−05(/℃)}よりも熱収縮率が小さい場合である。
【0045】
このリング状絶縁物28は、軸受側支持部材22の外周面とリング状絶縁物28の内周面との対向面を、回転軸3が上方に浮き上がった際に密着するように、回転軸3の軸心に対して傾斜させて構成したものである。
【0046】
リング状絶縁物28は、断面が上方に向かって幅広となるような逆楔状に構成されており、常温時の状態では、図4(a)に示すように、その内周面と軸受側支持部材22の外周面との傾斜面は当接し、外周面とケーシング側支持部材23との内周面との対向面には、所定寸法のギャップG3が形成されるような径寸法で構成されている。
【0047】
そしてサブマージドポンプが極低温の液体中におかれて冷却されると、支持部材22,23の方がリング状絶縁物28よりも収縮が大きいので、図4(b)に示すように、リング状絶縁物28の内周面と軸受側支持部材12の外周面との対向面にはギャップG4が形成され、リング状絶縁物28の外周面とケーシング側支持部材23との対向面は密着するようになる。
【0048】
次いで、液体が加圧され、バランス装置7が動作して回転軸3が浮き上がると、軸受11および支持部材22が浮き上がり、図4(c)に示すように、軸受側支持部材22の外周面がリング状絶縁物28の内周面に当接する。
【0049】
図5に示す下部側の軸受部におけるモータ支持構造も図4に示すモータ支持構造とほぼ同じ構造であり、回転軸3が浮き上がると、軸受11および支持部材22が浮き上がり、リング状絶縁物18の外周面がケーシング側支持部材13の内周面に当接する。
【0050】
したがって本実施の形態においても、モータの回転軸3は、極低温下においても、上下部の軸受部8b,8aに径方向のギャップが存在しなくなり、径方向が位置決めされるので、軸ブレによる振動の発生を防止することができる。
【0051】
このように本発明は、極低温下においても絶縁欠陥が生じにくいリング状絶縁物12,22を使用して軸電流に対する絶縁を確保し、しかも熱収縮率が異なるために金属製の支持部材22,23とリング状絶縁物18,28との間にギャップが生じても、回転軸3の浮き上がりを利用して、そのギャップをなくすことにより、回転軸3の径方向の位置決めが行なわれて軸ブレによる振動の発生を防止することができる。
【0052】
上記実施の形態においては、極低温の液体としてLNGを例にとり説明したが、液化石油ガス、ジメチルエーテル、エチレン、プロピレン等の他の極低温の液体にも同様に適用できるものである。
【0053】
またリング状絶縁物も、3フッ化エチレンやエポキシガラス積層体に限らず、他の絶縁物も適用できるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…モータ部分、1a…モータ側ケーシング、2…ポンプ部分、2a…ポンプ側ケーシング、2b…仕切り壁、2c…吸込口、3…回転軸、4…インペラ、5,6…管路、7…バランス装置、8a…下部側の軸受部、8b…上部側の軸受部、9…回転子、10…固定子、11…軸受、11a…内輪、11b…外輪、11c…転動体、12,22…軸受側支持部材、13、23…ケーシング側支持部材、14…ボルト、15…バネ、16,17…絶縁ワッシャ、18,28…リング状絶縁物、19…脱落防止具、20…円盤状の支持部材、21…絶縁板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の上部にモータ部分を設け、下部にポンプ部分を設け、ポンプ部分で加圧した液体の一部をモータ部分内に流通させ、かつバランス装置を通して回転軸を浮き上がらせて回転軸に作用するスラスト荷重を調整するようにしたサブマージドポンプのモータ支持構造において、前記回転軸を支持する軸受側支持部材とケーシング側支持部材との間にリング状絶縁物を設け、このリング状絶縁物の内周面と前記軸受側支持部材の外周面との対向面または前記リング状絶縁物の外周面と前記ケーシング側支持部材の内周面との対向面を、前記回転軸が上方に浮き上がった際に密着するように、前記回転軸の軸心に対して傾斜させて構成したことを特徴とするサブマージドポンプのモータ支持構造。
【請求項2】
前記リング状絶縁物の熱収縮率が前記支持部材の熱収縮率よりも大きい場合に、前記リング状絶縁物の外周面と前記ケーシング側支持部材の内周面との対向面を、前記回転軸が上方に浮き上がった際に密着するように、前記回転軸の軸心に対して傾斜させて構成したことを特徴とする請求項1に記載のサブマージドポンプのモータ支持構造。
【請求項3】
前記リング状絶縁物の熱収縮率が前記支持部材の熱収縮率よりも小さい場合に、前記リング状絶縁物の内周面と前記軸受側支持部材の外周面との対向面を、前記回転軸が上方に浮き上がった際に密着するように、前記回転軸の軸心に対して傾斜させて構成したことを特徴とする請求項1に記載のサブマージドポンプのモータ支持構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate