説明

サポータ

【課題】膝や肘等の関節を適切なパワーで安定的に被覆して着用者の負担を軽減し、表にひびかず、しわの生じにくい、優れた着用感を有するサポータを提供する。
【解決手段】サポータ1は、屈伸運動を行う肘または膝の関節を被覆する伸縮性生地2と、関節の屈曲動作に伴う伸縮性生地2の伸びを拘束するために該伸縮性生地に付与された拘束部材3とからなる。拘束部材3は、伸縮性生地2の表面2aの所定領域4に熱転写された熱転写フィルム3からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポータ、特に、屈伸運動を行う膝や肘等の関節を安定的に被覆して保護するサポータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツや日常の運動時に膝や肘等の関節を安定させるために、例えば、伸縮性生地からなる筒状の締め付けタイプのサポータや、伸縮性に富む生地と伸縮性を拘束する生地とを縫製したものからなる被服が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、締め付けタイプのサポータでは、関節の締め付けによって血流が悪くなる等、血行障害が生じ易くなるという問題があった。また、このサポータでは、関節の屈曲動作時に、伸ばされた伸縮性生地が部分的に折れ曲がることにより、しわが生じ易いという問題もあった。そして、たとえ締め付け力(以下、「パワー」と称する)の弱いサポータを着用したとしても、逆に関節に対する密着力が弱くなってずれ易くなり、着用時に違和感が生じるという問題もあった。
【0004】
一方、特許文献1記載の被服では、伸縮性を拘束する生地がウエストラインから踝上方に至るまでの幅広い領域にわたっているため、パワーが大変強く、特に力の弱い子供や高齢者等の着用者にとっては該被服の着脱が困難であり、長時間着用することができないという問題があった。また、この被服では、伸度の異なる生地同士が縫製されているため、縫製部分が着用者の皮膚に触れることにより、着用時に違和感が生じる上、特に皮膚の弱い着用者にとっては皮膚障害が生じ易くなるという問題があった。また、縫製部分は相当な厚みがあるため、この被覆の着用時に縫製部分が表側に突出し、それが外衣にも反映されてしまい(以下、この現象を「表にひびく」と称する)、外観上の見栄えが悪くなるという問題もあった。さらに、この被服では、スポーツや日常の運動を行う時に、膝等の関節を安定的に被覆して保護することはできるが、該膝関節に外部から加わる局所的な衝撃(例えば、膝を地面や壁につけた時の該膝に加わる衝撃等)を吸収できないという問題もあった。
【0005】
さらに、屈伸運動を行う関節を被覆する伸縮性生地からなり、該伸縮性生地の伸びを拘束するための拘束部材が該伸縮性生地に付与された被服や生地も知られている(例えば、特許文献2、3を参照)。
【0006】
特許文献2記載の被服によれば、着用者の身体の膨出を抑制したい贅肉部分(例えば、胸部、脇部、下腹部、臀部等)を被覆する伸縮性生地に、ポリウレタン樹脂等の拘束部材が所定のパターンで付与され、該贅肉部分の整形機能を実現している。
しかしながら、特許文献2記載の被服は、あくまで贅肉部分の整形機能を実現するために、拘束部材が所定パターンで伸縮性生地に付与されているだけであって、スポーツや日常の運動時に、膝や肘等の関節部分を安定的に保護するサポータに応用されるものではない。
【0007】
一方、特許文献3記載の生地によれば、緊締力をもたせるための拘束部材として、弾性樹脂が捺染等によって所定のパターンで伸縮性生地に付与されている。そして、弾性樹脂の一部が伸縮性生地の内部に浸透するように構成されている。
しかしながら、特許文献3記載の生地では、弾性樹脂の伸縮性生地内部への浸透度を制御するのは極めて困難であるため、弾性部材の厚みおよび緊締力を正確に制御することは困難である。また、特許文献3記載の生地は、特許文献2と同様、あくまで整形機能を実現するために、拘束部材が所定のパターンで伸縮性生地に付与されているだけであって、スポーツや日常の運動時に、膝や肘等の関節部分を安定的に保護するサポータに応用されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−57904号
【特許文献2】実公平7−48644号
【特許文献3】特許第4058458号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、膝や肘等の関節を適切なパワーで安定的に被覆して着用者の負担を軽減し、表にひびかず、しわの生じにくい、優れた着用感を有するサポータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、屈伸運動を行う肘または膝の関節を被覆する伸縮性生地からなり、前記関節の屈曲動作に伴う前記伸縮性生地の伸びを拘束するための拘束部材が前記伸縮性生地に付与されたサポータであって、前記拘束部材が、前記伸縮性生地の表面の所定領域に熱転写された熱転写フィルムからなることを特徴とするサポータとしたものである。
この構成によれば、拘束部材が熱転写フィルムから構成されている。したがって、本発明に係るサポータによれば、熱転写フィルムが伸縮性生地の内部に浸透することなく該生地の表面に熱転写されているだけなので、その厚みおよびパワーを正確に制御でき、結果として、関節を適切なパワーで安定的に被覆して着用者の負担を軽減させることができる。また、非常に薄い熱転写フィルムを熱転写することもできるため、表にひびかないサポータを実現することができる。
【0011】
上記構成において、前記所定領域は、前記関節の蓋骨の周囲を環状に被覆する蓋骨周囲被覆領域を含み、前記熱転写フィルムが、複数、前記蓋骨周囲被覆領域に離散的な所定パターンで熱転写されていることが好ましい。
この構成によれば、複数の熱転写フィルムが、蓋骨周囲被覆領域に離散的な所定パターンで熱転写されている。したがって、本発明に係るサポータによれば、関節の屈曲動作時に、蓋骨周囲被覆領域において、熱転写フィルムの熱転写されていない間隙部分の伸縮性生地の伸びが、離散的に熱転写された熱転写フィルムによって適切な伸びに拘束されるため、伸ばされた伸縮性生地が部分的に折れ曲がりにくくなって、しわが生じにくくなる。このため、優れた着用感を有するサポータを実現することができる。
【0012】
上記構成において、前記所定パターンは、同一または異なる形状の図形から構成された、ドット状パターン、ライン状パターンおよび面状パターンのうちの1つまたはそれら2以上の組合せからなることが好ましい。
この構成によれば、所定パターンとして、様々な形状の図形からなるドット状パターン、ライン状パターンおよび面状パターンを組み合わせた様々なパターンが構成される。したがって、本発明に係るサポータによれば、熱転写フィルムの熱転写パターンの異なる様々なサポータを実現することができる。これにより、個々の着用者に対応させた、関節を適切なパワーで安定的に被覆できるサポータを実現することができる。
【0013】
上記構成において、前記蓋骨周囲被覆領域は複数の領域に分割され、前記蓋骨周囲被覆領域における前記熱転写フィルムの厚み、大きさまたは種類が、前記分割された領域毎に異なっていることが好ましい。
この構成によれば、蓋骨周囲被覆領域の分割された各領域において、熱転写フィルムの厚み、大きさまたは種類が異なるように構成されている。これは、拘束部材として熱転写フィルムを使用したことに起因して実現できたものであり、よって、本発明に係るサポータによれば、熱転写フィルムの構造の異なる様々なサポータを実現することができる。これにより、個々の着用者に対応させた、関節を適切なパワーで安定的に被覆できるサポータを実現することができる。
【0014】
上記構成において、前記所定領域は、さらに、前記蓋骨周囲被覆領域の内側にある、前記蓋骨の中心近傍部を被覆する蓋骨中心近傍部被覆領域を含み、前記蓋骨中心近傍部被覆領域に、熱転写されたベース用熱転写フィルムと、前記ベース用熱転写フィルム上に配置された衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材を被覆するように前記ベース熱転写フィルムに着接された被覆用熱転写フィルムとを有することが好ましい。
あるいは、上記構成において、前記所定領域は、さらに、前記蓋骨周囲被覆領域の内側にある、前記蓋骨の中心近傍部を被覆する蓋骨中心近傍部被覆領域を含み、前記蓋骨中心近傍部被覆領域に、配置された衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材を被覆するように熱転写された被覆用熱転写フィルムとを有することが好ましい。
これらの構成によれば、蓋骨中心近傍部被覆領域において、衝撃吸収部材がベース用熱転写フィルムと被覆用熱転写フィルムとの間に挟まれて配置され、または、衝撃吸収部材が伸縮性生地と被覆用熱転写フィルムとの間に挟まれて配置されるように構成されている。したがって、本発明に係るサポータによれば、スポーツや日常の運動において、膝や肘等の関節を地面や壁につけた時に、該関節に外部から加わる局所的な衝撃が衝撃吸収部材によって吸収され、該関節の痛みが緩和される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、膝や肘等の関節を適切なパワーで安定的に被覆して着用者の負担を軽減し、表にひびかず、しわの生じにくい、優れた着用感を有するサポータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の第1実施例による膝用のサポータの正面図であり、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のA−A’線に沿った断面図である。
【図2】図1のサポータの着用状態を示す斜視図であり、(a)は直立時の状態を示す斜視図、(b)は屈曲時の状態を示す斜視図である。
【図3】図1のサポータの着用状態を示す側面図であり、(a)は直立時の状態を示す側面図、(b)は屈曲時の状態を示す側面図である。
【図4】(a)〜(g)は、それぞれ図1のサポータの第1〜7変形例を示す正面図である。
【図5】(a)は本発明の第2実施例によるサポータの正面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図6】(a)は本発明の第3実施例およびその変形例によるサポータの正面図であり、(b)は(a)のA−A’線に沿った断面図である、(c)は(a)のA−A’線に沿った断面図である。
【図7】熱転写フィルムの他の構造例を示す図であり、(a)は熱転写フィルムの正面図、(b)は(a)のA−A’線に沿った断面図、(c)は熱転写フィルムの正面図、(d)は(c)のA−A’線に沿った断面図、(e)は熱転写フィルムの正面図、(f)は(e)のA−A’線に沿った断面図である。
【図8】第1実施例のサポータの伸長実験を説明する図であり、(a)は図1のサポータを縦方向に伸長させる前の正面図、(b)は(a)のサポータを縦方向に伸長させた後の正面図、(c)は図1のサポータを横方向に伸長させる前の正面図、(d)は(c)のサポータを横方向に伸長させた後の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施例として、膝用のサポータを具体化した実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(第1実施例)
図1(a)は本発明の第1実施例による膝用のサポータの正面図であり、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のA−A’線に沿った断面図である。
図1(a)〜(c)に示すように、本発明に係るサポータ1は、屈伸運動を行う膝関節を被覆する伸縮性生地2と、該伸縮性生地2に付与された拘束部材3とからなる。
伸縮性生地2は、例えばポリウレタンを含む公知の伸縮性を有する生地からなる。
拘束部材3は、膝関節の屈曲動作に伴う伸縮性生地2の伸びを拘束するものであり、熱転写フィルム3からなる。熱転写フィルム3は、伸縮性生地2の表面2aの所定領域4に熱転写されている。
所定領域4は、膝関節の蓋骨(膝蓋骨)5の周囲を環状に被覆する蓋骨周囲被覆領域4からなる。蓋骨周囲被覆領域4には、熱転写フィルム3が、複数、離散的な所定パターンで熱転写されている。
熱転写フィルム3は、本実施例では、大きさの異なる楕円から構成されたドット状パターンで、蓋骨5から遠ざかるに従って該熱転写フィルム3の大きさ(面積)が小さくなるように、同じ厚みで伸縮性生地2に熱転写されている。すなわち、蓋骨周囲被覆領域4において、蓋骨5に近い領域では膝関節の屈曲動作に伴う伸縮性生地2の伸びを拘束するパワーが強められ、蓋骨5から遠い領域では該パワーが弱められる。これにより、膝関節が適切なパワーで安定的に被覆される。
【0019】
図2は、図1のサポータの着用状態を示す斜視図であり、(a)は直立時の状態を示す斜視図、(b)は屈曲時の状態を示す斜視図である。図3は、図1のサポータの着用状態を示す側面図であり、(a)は直立時の状態を示す側面図、(b)は屈曲時の状態を示す側面図である。
膝関節の負担が小さな直立時においては、図2(a)および図3(a)に示すように、伸縮性生地2および熱転写フィルム3による膝関節へのパワーはさほど強くない。一方、膝関節の負担が大きくなる屈曲時においては、図2(b)および図3(b)に示すように、熱転写フィルム3を含む蓋骨周囲被覆領域4が、膝の左右方向に縮むとともに膝の上下方向に伸びる。すなわち、屈曲時における蓋骨周囲被覆領域4の左右方向の幅L2は、直立時における蓋骨周囲被覆領域4の左右方向の幅L1よりも短くなるとともに、屈曲時における蓋骨周囲被覆領域4の上下方向の高さT2は、直立時における蓋骨周囲被覆領域4の上下方向の高さT1よりも長くなる。これによって、膝関節が左右両側から適切なパワーで被覆されるとともに、膝の屈曲動作に伴う伸縮性生地2の上下方向の伸びが熱転写フィルム3で拘束されて、該膝関節を上下両側からも適切なパワーで被覆される。
【0020】
このサポータ1によれば、熱転写フィルム3は伸縮性生地2の内部に浸透することなく該生地2の表面2aに熱転写されているだけなので、その厚みおよびパワーを正確に制御できる。したがって、膝関節を適切なパワーで安定的に被覆して着用者の負担を軽減させることができる。また、非常に薄い熱転写フィルム3を熱転写することもできるため、表にひびかないサポータを実現することができる。
また、このサポータ1によれば、膝関節の屈曲動作時に、蓋骨周囲被覆領域4において、熱転写フィルム3の熱転写されていない間隙部分の伸縮性生地2の伸びが、離散的に熱転写された熱転写フィルム3によって適切な伸びに拘束されるため、伸ばされた伸縮性生地が部分的に折れ曲がりにくくなって、しわが生じにくくなる。このため、優れた着用感を有するサポータを実現することができる。
【0021】
(第1実施例の第1〜7変形例)
図4(a)〜(g)は、それぞれ図1のサポータの第1〜7変形例を示す図である。第1〜7変形例に係る各サポータは、熱転写フィルム3の所定パターンの形状が第1実施例に係るサポータと異なるだけであり、この点に関してのみ説明する。なお、図4(a)〜(g)の矢印線は、いずれも膝関節の屈曲時に該関節に働く力(パワー)の向きを示したものである。
図4(a)に示すように、熱転写フィルム3は、大きさの異なる楕円から構成されたドット状パターンで伸縮性生地2に熱転写されている。図4(a)に示すサポータ1によれば、膝関節のひねりにも対応できる。
図4(b)〜(d)に示すように、熱転写フィルム3は、大きさの異なる楕円から構成されたドット状パターンで伸縮性生地2に熱転写されている。図4(b)〜(d)に示すサポータ1によれば、膝関節を全方向から安定的に保護することができる。
図4(e)に示すように、熱転写フィルム3は、ドット状パターンおよびライン状パターンを組み合わせたパターンで伸縮性生地2に熱転写されている。また、図4(f)に示すように、熱転写フィルム3は、ドット状パターンおよび面状パターンを組み合わせたパターンで伸縮性生地2に熱転写されている。図4(e)および(f)に示すサポータ1によれば、膝関節の屈伸運動の多い場合に、該膝関節を左右両側からしっかりと挟み込むことができる。
図4(g)に示すように、熱転写フィルム3は、左右の膝関節において異なるドット状パターンで伸縮性生地2に熱転写されている。図4(g)に示すサポータ1によれば、左右の膝関節の屈曲動作に対応した適切なパワーで、左右の各膝関節を安定的に被覆することができる。
【0022】
(第2実施例)
図5(a)は本発明の第2実施例によるサポータの正面図であり、(b)は(a)の側面図である。第2実施例に係るサポータ1は、蓋骨周囲被覆領域4が複数の領域に分割されている点、および、蓋骨周囲被覆領域4における熱転写フィルム3の厚みが分割された領域毎に異なっている点のみが、第1実施例に係るサポータと異なっているだけである。よって、これらの点に関してのみ説明する。
【0023】
図5(a)に示すように、蓋骨周囲被覆領域4は3個の領域1〜3に分割されている。蓋骨周囲被覆領域4における熱転写フィルム3の厚みは、分割された領域1〜3の順に、厚くなるようになっている(t1<t2<t3)。
このサポータ1は、拘束部材として熱転写フィルム3を使用しているので、その個々の厚みを簡単に変えることができる。したがって、個々の着用者に対応させて、関節を適切なパワーで安定的に被覆できるサポータを提供することができる。
【0024】
(第3実施例)
図6(a)は、本発明の第3実施例によるサポータの正面図であり、(b)は(a)のA−A’線に沿った断面図である。第3実施例に係るサポータ1は、所定領域がさらに蓋骨中心近傍部被覆領域を含んでいる点、衝撃吸収部材によって膝関節の外部からの衝撃吸収機能を備えている点のみが、第1、2実施例に係るサポータと異なっているだけである。よって、これらの点に関してのみ説明する。
所定領域4は、さらに、蓋骨周囲被覆領域4の内側にある、蓋骨の中心近傍部(蓋骨の中心およびその周辺を含む)を被覆する蓋骨中心近傍部被覆領域4’を含む。蓋骨中心近傍部被覆領域4’にはベース用熱転写フィルム3aが熱転写されている。ベース用熱転写フィルム3a上には衝撃吸収部材6が配置されている。衝撃吸収部材6は、例えばウレタン材、EVA、発泡体等からなる。被覆用熱転写フィルム3bが衝撃吸収部材6を被覆するようにベース熱転写フィルム3aに着接されている。
【0025】
この構成によれば、蓋骨中心近傍部被覆領域4’において、衝撃吸収部材6がベース用熱転写フィルム3aと被覆用熱転写フィルム3bとの間に挟まれて配置されるように構成されている。したがって、このサポータによれば、スポーツや日常の運動において、膝や肘などの関節を地面につけた時に、該関節に外部から加わる局所的な衝撃が衝撃吸収部材6によって吸収され、該関節の痛みが緩和される。
【0026】
(第3実施例の変形例)
図6(c)は、(a)のA−A’線に沿った断面図であり、それぞれ本発明の第3実施例の変形例によるサポータを示すものである。本変形例に係るサポータ1は、衝撃吸収部材6がベース用熱転写フィルム3aを介さず伸縮性生地2に直接配置されている点のみが、第3実施例に係るサポータと異なっているだけである。
【0027】
この構成によれば、蓋骨中心近傍部被覆領域4’において、衝撃吸収部材6が伸縮性生地2と被覆用熱転写フィルム3bとの間に挟まれて配置されるように構成されている。したがって、このサポータ1も、第3実施例に係るサポータと同様の効果を有するのは言うまでもない。
【0028】
(実験例)
第1実施例のサポータの熱転写フィルムによる伸縮性生地に対する拘束力を確かめるため、当該サポータの伸長実験を以下のように行った。
まず、縦方向(膝の上下方向)の長さYの伸縮性生地2および該伸縮性生地2に付与された長さL=25mmの熱転写フィルム3からなるサポータ(図8(a)参照)、ならびに、横方向(膝の左右方向)の幅Xの伸縮性生地2と該伸縮性生地2に付与された幅W=25mmの熱転写フィルム3からなるサポータ(図8(c)参照)を、それぞれ準備した。そして、これらのサポータの各伸縮性生地2を、それぞれ、縦方向および横方向に200%伸張させ、熱転写フィルム2の伸長度を調べた。
【0029】
(実験結果)
図8(b)は(a)のサポータを縦方向に伸長させた後の正面図、(d)は(c)のサポータを横方向に伸長させた後の正面図である。
図8(b)および(d)に示すように、熱転写フィルム2の縦方向および横方向の伸長度はそれぞれ172%、140%となった。
したがって、図8(a)〜(d)より明らかなように、本発明のサポータ1において、熱転写フィルムによる伸縮性生地に対する拘束力が得られていることが判る。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0031】
熱転写フィルムの材質は、伸縮性生地に熱転写できるものであれば、何ら限定されるものではない。
【0032】
所定パターンは、上記実施例のパターンに限定されるものではなく、様々な形状の図形からなるドット状パターン、ライン状パターンおよび面状パターンを組み合わせた様々なパターンとすることができる。
【0033】
第2実施例において、蓋骨周囲被覆領域の各領域において熱転写フィルムの厚みが異なるように構成したが、これに限定されるものではなく、蓋骨周囲被覆領域の各領域において熱転写フィルムの大きさまたは種類が異なるように構成してもよい。
【0034】
個々の熱転写フィルムの構造は、上記実施例のものに限定されるものではなく、例えば図7(a)および(b)に示すようなリング構造、同図(c)および(d)に示すような2層構造(多層構造)、同図(e)および(f)に示すような、凹溝構造(凹溝部分が特殊形状(Y型形状))であってもよい。
【0035】
上記実施例においては、膝用のサポータを具体化した実施例について説明したが、これに限定されるものではなく、肘用のサポータにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 サポータ
2 伸縮性生地
2a 表面
3 熱転写フィルム
3a ベース用熱転写フィルム
3b 被覆用熱転写フィルム
3c〜3e 熱転写フィルム
4 所定領域(蓋骨周囲被覆領域)
4’ 所定領域(蓋骨中心近傍部被覆領域)
5 蓋骨(膝蓋骨)
6 衝撃吸収部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈伸運動を行う肘または膝の関節を被覆する伸縮性生地からなり、前記関節の屈曲動作に伴う前記伸縮性生地の伸びを拘束するための拘束部材が前記伸縮性生地に付与されたサポータであって、
前記拘束部材が、前記伸縮性生地の表面の所定領域に熱転写された熱転写フィルムからなることを特徴とするサポータ。
【請求項2】
前記所定領域は、前記関節の蓋骨の周囲を環状に被覆する蓋骨周囲被覆領域を含み、
前記熱転写フィルムが、複数、前記蓋骨周囲被覆領域に離散的な所定パターンで熱転写されていることを特徴とする請求項1に記載のサポータ。
【請求項3】
前記所定パターンは、同一または異なる形状の図形から構成された、ドット状パターン、ライン状パターンおよび面状パターンのうちの1つまたはそれら2以上の組合せからなることを特徴とする請求項2に記載のサポータ。
【請求項4】
前記蓋骨周囲被覆領域は複数の領域に分割され、
前記蓋骨周囲被覆領域における前記熱転写フィルムの厚み、大きさまたは種類が、前記分割された領域毎に異なっていることを特徴とする請求項2または3に記載のサポータ。
【請求項5】
前記所定領域は、さらに、前記蓋骨周囲被覆領域の内側にある、前記蓋骨の中心近傍部を被覆する蓋骨中心近傍部被覆領域を含み、
前記蓋骨中心近傍部被覆領域に、熱転写されたベース用熱転写フィルムと、前記ベース用熱転写フィルム上に配置された衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材を被覆するように前記ベース熱転写フィルムに着接された被覆用熱転写フィルムとを有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のサポータ。
【請求項6】
前記所定領域は、さらに、前記蓋骨周囲被覆領域の内側にある、前記蓋骨の中心近傍部を被覆する蓋骨中心近傍部被覆領域を含み、
前記蓋骨中心近傍部被覆領域に、配置された衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材を被覆するように熱転写された被覆用熱転写フィルムとを有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のサポータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−75739(P2012−75739A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224845(P2010−224845)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(391015627)日本ダム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】