説明

サポート設置金物

【課題】サポートをトンボ端太の底面と床面との間に介在させる際に作業者が傾倒を防止しつつ高さ調整を行う必要があり、非常に手間がかかる点を解消する。
【解決手段】サポート設置金物1は、サポート11をトンボ端太Pの底面と床面との間に介在させて、サポート11を伸張して梁型枠21の荷重を支持するまでの間、該サポート11が傾倒しないように支える手間を省くべく、引掛部1Eを設けてサポート11を引っ掛けられる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば梁型枠を床面から支持するための支柱を、該梁型枠の端太材の下面に設置する作業を簡便かつ確実に行うことのできるサポート設置金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば梁をコンクリートにより構築するには、底板とこの側板とを桟木を介して釘により密着固定して梁型枠を組み、底板の下面において側板間に亘って端太材を配置し、さらに端太材の下面に該端太材と直交するように別の端太材(以下、これをトンボ端太という)を配置し、このトンボ端太の下面と床面との間に支柱(以下、これをサポートという)を介在させて該梁型枠を例えば水平に安定支持したうえ、梁枠内にコンクリートを打設する。
【0003】
上記端太材は釘などによって梁型枠の側板などに固定され、また、トンボ端太はサポートに釘などにより固定している。サポートは例えば二重円筒の支柱と、この支柱の軸方向途中部位に内外筒の嵌合量を調節して長さ(高さ)調節を行う操作部と、該支柱の両端部に例えば正方形の平坦部とを有している。平坦部は、四隅にトンボ端太に対して釘を打ち込むための孔と、中央に支柱から連通した孔と、が各々形成されている。
【0004】
サポートの高さ調整を行うことで、上下部の平坦面が該サポートを配置した床面とトンボ端太の下面とに接触して介在することとなる。サポートを介在させることにより、型枠を例えば水平に安定支持でき、また、打設後で硬化前のコンクリートと共に梁型枠が撓んだり自重で落下することがないようにしている。
【0005】
サポートを設置するには、トンボ端太周辺の所定位置における底面に該サポートを配置し、この配置位置から水平方向、例えば傾倒したり移動しないように作業者が一方の手で支えて、他方の手で支柱を上方に向けて伸張するといったサポートの高さ調節を行う。こうした、サポート設置工程に用いられる金物として、下記の特許文献1,2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】意匠登録第1101557号公報
【特許文献2】特開2007−255031号公報
【0007】
特許文献1には、逆凸字状の金物が示されており、この金物は、逆凸字状の水平短辺部に相当する部位に形成されたサポートの上記支柱から連通した孔へ挿入される挿入部と、水平長辺部に対する直交辺部の両端に形成された桟木に釘で固定するための孔と、これら直交辺部間に形成されたトンボ端太を支持する支持部と、を有した構成である。
【0008】
一方、特許文献2には、トンボ端太をサポートに支持する第1金物と、トンボ端太を介してサポートを桟木に固定する第2金物とが示されている。第1金物は、逆凸字状の水平短辺部に相当する部位に形成されたサポートの支柱から連通した孔へ挿入される挿入部と、水平長辺部に対する直交辺部間に形成されたトンボ端太を支持する支持部と、を有した構成とされている。
【0009】
特許文献2における第2金物は、正面視の例えば上端部が手前側に、下端部が奥側に、各々折り曲げられた側面視Z字状とされ、この下端部の幅中央部位にトンボ端太が差し込まれる差込部が形成された構成とされている。
【0010】
しかしながら、特許文献1と特許文献2の第1金物は、サポートを短尺化した状態でトンボ端太の下面に配置すると、該金物の支持部における直交辺部がトンボ端太(梁型枠)に到達していない。
【0011】
したがって、特許文献1及び2の金物を用いても、依然として、トンボ端太の下面と底面とに達する長さ(高さ)に調節されるまで、サポートの傾倒、すなわち水平方向の移動に注意しなければならず、また、サポートの支柱を上方に伸張しなければならない点で、非常に手間であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、従来の特許文献1及び2の金物を用いたとしても、サポートをトンボ端太の底面と床面との間に介在させる際に作業者が傾倒を防止しつつ高さ調整を行う必要、及びサポートの高さ調整を底面から支柱を上方に伸張しなければならず、非常に手間がかかる点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のサポート設置金物は、板状の基板と、この基板に形成され、端太材を挿入するための挿入孔と、この挿入孔と連続し、前記基板の外形の一部を切り欠くようにして形成された挿入口と、この挿入口の外側に形成された引掛部と、この引掛部の基端部から前記挿入口を介して前記挿入孔の形状の一部として登り勾配で形成された案内部と、この案内部の前記引掛部と反対側の端部に前記挿入孔と連続して形成された固定部と、を有する点を最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、例えサポートが短尺化されていてもサポートの孔を引掛部に引っ掛けておけるから、サポートが水平方向に傾倒することがない。また、サポートは引掛部に引っ掛けた後に、該引掛部を中心に回転させると、案内部により挿入口から挿入孔に案内され、このときトンボ端太(端太材)を挿入孔における所定位置にまで押し上げると共に、この後、サポートも固定部により固定される。
【0015】
したがって、本発明は、サポートをトンボ端太の底面と床面との間に介在させる際に作業者が該サポートの傾倒を確実に防止するから、上記の安定した安全かつ容易な作業の後、サポートの高さ調整だけを行えばよくなり、よって、手間が大幅に軽減される。また、サポートは本発明のサポート設置金物を介して梁型枠側に引っ掛かった状態(宙づり)状態となるため、高さ調整を床面に向けて伸張すればよい点で容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明のサポート設置金物を用いた梁型枠(a)、及びサポート(b)を示す図である。
【図2】図2は本発明のサポート設置金物の使用状況においてトンボ端太を挿入する状態を示す図である。
【図3】図3は本発明のサポート設置金物の使用状況においてサポートを引っ掛けた状態を示す図である。
【図4】図4は本発明のサポート設置金物の使用状況においてサポートを回転している状態を示す図である。
【図5】図5は本発明のサポート設置金物の使用状況においてサポート及びトンボ端太が収まった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、サポートをトンボ端太の底面と床面との間に介在させて、サポートを伸張して梁型枠の荷重を支持するまでの間、該サポートの傾倒しないように支える手間を省くという目的を、梁型枠側に取り付けたサポート設置金物における引掛部にサポートを引っ掛けるという構成で実現した。
【実施例1】
【0018】
本発明のサポート設置金物(以下、「設置金物」という)について、図1〜図5を参照した実施例1により説明する。本発明の設置金物を説明する前に、まず、梁型枠21とサポート11の構成について説明する。
【0019】
梁型枠21について説明する。梁型枠21は、底板22と、この底板22の両端に該底板22の裏面を越えて密接させた側板23とから構築される。そして、本例においては側板23の内側、すなわち底板22と側板23とでなす隅部分に桟木24を配置して、底板22が例えば水平にかつ側板23との隙間が生じないように釘(不図示)により密着固定している。
【0020】
梁型枠21における底板22の前記桟木24を設けていない下面途中箇所には、角柱状の端太材25が配置される。この端太材25の下面に該端太材25と直交するようにトンボ端太Pが配置され、このトンボ端太Pの下面と床面との間にサポート11を設け、これら端太材25、トンボ端太P及びサポート11により、底板22の自重やコンクリート打設によって該底板22が撓まないように梁型枠21全体が支持される。
【0021】
サポート11について説明する。本例におけるサポート11は、内筒12Aが外筒12Bに嵌合して伸縮可能とされた支柱12とでなる。内筒12Aは、外筒12Bへの嵌合端部から反対側の端部に向けて所定間隔を存して複数形成された調節孔12Aaが直径方向に対をなして形成されている。外筒12Bは、内筒12Aを嵌合する端部にピン挿入孔12Baが直径方向に対をなして形成されている。
【0022】
また、外筒12Bの内筒12Aを嵌合する端部には、連通するように互いに位置決めされた、該外筒12Bのピン挿入孔12Baと、該内筒12Aの調節孔12Aaと、を貫通する固定用のピン13aが設けられている。なお、これら、内筒12Aの調節孔12Aa、外筒12Bのピン挿入孔12Ba、及びピン13aにより、操作部13が構成されている。
【0023】
さらに、支柱12の両端部、すなわち内筒12A及び外筒12Bの互いに嵌合する端部とは反対の端部には、平坦部14とを有している。平坦部14は、四隅に孔14aと、中央に支柱12から連通した中央孔14bと、が各々形成されている。
【0024】
次に、上記コンクリート打設用の梁型枠21を端太材25及び本例では特にトンボ端太Pを介して支持するためのサポート11を設置金物1について説明する。設置金物1は、一枚の金属製で本例では例えば略正方形の板状の基板1Aに、次の構成が一体的に形成されている。
【0025】
基板1Aは、該基板1Aの外形の所定一辺に寄った部位にトンボ端太Pを挿入するための挿入孔1Bが形成されている。この挿入孔1Bは、その上辺寸法がトンボ端太Pの断面外形の上辺寸法とほぼ同一形状とされる。
【0026】
基板1Aの挿入孔1Bが形成された部位の上部には、後述のとおり側板23に釘などを打ち込むための孔1aが水平同高さに2箇所設けられている。また、この基板1Aの挿入孔1B以外の箇所には、適宜の形状の補強用のリブ1bが設けられている。このリブ1bは本例では例えば基板1Aの表裏一方面に凸状とされている。
【0027】
また、挿入孔1Bは、両側辺のうち一方辺が切り欠かれて開放状態とされ、この開放部位にサポート11の平坦部14が後述の回転時に挿入される挿入口1Cが該挿入孔1Bと連続的に形成されている。さらに、挿入孔1Bは、下辺に前記挿入口1C側からしだいに登り勾配とされた案内部1Dが形成されている。
【0028】
挿入口1Cは、挿入孔1Bにおける、両側辺のうちの開放した側辺(以下、開放辺という)の下端と、案内部1Bを構成する下辺と、で構成されており、案内部1Dの勾配にもよるが、少なくともサポート11の平坦部14の厚みの2〜3倍の寸法とされている。
【0029】
また、案内部1Dを構成する挿入孔1Bの下辺は、開放辺より外側に突出しており、この突出部位すなわち挿入口1Cの外側に、サポート11の平坦部14における孔14aを引っ掛けるための引掛部1Eが、案内部1Dと連続して上方に延びるように形成されている。
【0030】
この引掛部1Eの高さは、後述、サポート11を回転させ、平坦部14が案内部1Dによって最終まで案内されても該平坦部14が該引掛部1Eから抜けない程度の高さとされている。
【0031】
案内部1Dは、前記引掛部1Eの基端部から、開放辺とは反対の側辺(以下、反開放辺という)を越えて、挿入孔1Bの下辺及び後述の固定部1Fの一部(下辺)を構成するように、該基端部から反開放辺へ向けて登り勾配で形成される。
【0032】
さらに、案内部1Dには、本例では、登り勾配の傾斜途中部位、すなわち開放辺付近の部位と、反開放辺付近の部位と、に段部1Da及び段部1Dbが形成されている。
【0033】
また、案内部1Dの、挿入孔1Bにおける反開放辺を越えた部位には、この部位を下辺とする、サポート11の平坦部14を垂直方向に固定する固定部1Fが、該挿入孔1Bと連続して形成されている。
【0034】
次に、本発明の設置金物1を用いたサポート11による梁型枠21の支持手順について説明する。なお、この説明では、既に、梁型枠21に端太材25を配置した状態から説明する。設置金物1は、図1に示す側板23の外側、すなわち桟木24の存在しない側から、側板23(を介して桟木24)に対して孔1aから釘などを打ち込んで取り付ける。
【0035】
このとき、設置金物1は、挿入孔1Bの上辺が例えば底板22と平行となると共に、該挿入孔1Bの上辺が、側板23の下辺縁部(及び桟木24と端太材25)と同高さとなるように側板23に取り付ける。
【0036】
そして、図2に示すように、トンボ端太Pを挿入孔1Bに挿入する。このとき、トンボ端太Pの下辺部が、案内部1Dの段部1Daと当接する。また、トンボ端太Pの上辺部は、この段階では、未だ挿入孔1Bの上辺部に接していない。
【0037】
トンボ端太Pを挿入孔1Bに挿入した後、図3に示すように、サポート11の平坦部14における孔14aを設置金物1の引掛部1Eに引っ掛ける。このとき、平坦部14の下面が、案内部1Dの段部1Daと当接して、一旦、引っ掛けた状態を安定的に支持する。
【0038】
こうしてサポート11を引掛部1Eに引っ掛けておけば、以降の作業では、サポート11が傾倒することがないので、従来のようにサポート11を伸張するまで手で支えるといった手間を省くことができる。
【0039】
次に、図4に示すように、引掛部1Eに引っ掛けた状態の、平坦部14における孔14aを中心に、サポート11を回転させる。このとき、サポート11は、平坦部14の下面が(段部1Daと段部1Dbとの間の)案内部1Dの勾配に案内されて、該平坦部14の上面でトンボ端太Pを挿入部1B内において上方に押し上げることとなる。
【0040】
そして、上記サポート11の回転によって案内部1Dの勾配に案内され、平坦部14の下面が、段部1Dbに到達したとき、ここで再度安定した状態となる。すなわち、段部1Da及び段部1Dbは、サポート11を引掛部1Eに引っ掛けた作業における要所において該サポート11を安定させる機能を有している。
【0041】
段部1Daは、サポート11を引掛部1Eに引っ掛けた直後で回転前に該サポート11を安定させている。また、段部1Dbは、サポート11を固定部1Fに挿入させると共にトンボ端太Pを挿入孔1Bの上辺に当接するように押し上げる直前において該サポート11を安定させている。これら段部1Da及び段部1Dbを設けることで、例えばサポート11が逆回転したりせず、作業を要所で区切りつつ行うことができる。
【0042】
図5に示すように、サポート11を図4の状態からさらに回転させると、平坦部14における、引掛部1Eに引っ掛けた孔14aが形成された側の辺と対向する側の辺が、固定部1Fに達する。固定部1Fに平坦部14が達することで、平坦部14は固定部1Fの上辺に当接してそれ以上の傾動が許容されないから、水平状態に配置されることとなる。
【0043】
このとき、トンボ端太Pの上辺が、挿入孔1Bの上辺と当接することとなる。この状態で、トンボ端太Pを、梁型枠21の桟木24及び端太材25を介した底板22を所定の配置状態(例えば本例では水平)となるように配置したことになる。なお、サポート11は引掛部1Eに引っ掛けた段階(図3)において、すでに、水平方向に傾倒しないように設置されている。
【0044】
上記作業の後、作業者はサポート11のトンボ端太P周辺から完全に手を離して、今度は操作部13による伸張作業に移る。従来では、この操作部13による伸張作業を行う際にも、サポート11が水平に傾倒する可能性があるため、一方の手でトンボ端太P周辺から支えておき、他方の手で操作部13を操作しなければならなかった。
【0045】
従来に対して、本発明の設置金物1を用いた場合は、上記のとおり、作業者はサポート11のトンボ端太P周辺から完全に手を離して、操作部13による、仮高さの位置に挿入されたピン13aを調整孔12Aa及びピン挿入孔12Baから抜き、梁型枠21の荷重を受ける高さにまで、内筒12及び外筒12Bを伸張して、ピン13aを調整孔12Aa及びピン挿入孔12Baを挿入するといった伸張作業が行えるので手間が大幅に省ける。
【0046】
また、従来はサポート11は底面に設置されて、高さ調節のために上方に支柱12を伸張させる必要があった。こうした従来に対して、本発明の設置金物1を用いた場合は、梁型枠21側に設置され、高さ調節のために下方に支柱12を伸張させればよい。つまり、操作部13のピン13aを抜けば、外筒12Bの自重で自ずと底面まで伸張が行えることとなり作業は簡便となる。
【符号の説明】
【0047】
1 (サポート)設置金物
2 基板
1B 挿入孔
1C 挿入口
1D 案内部
1Da,1Db 段部
1E 引掛部
1F 固定部
11 サポート
13 操作部
14 平坦部
14a 孔
21 梁型枠
22 底板
23 側板
P トンボ端太

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設用の型枠を端太材を介して支持するためのサポートを設置する金物であって、板状の基板と、この基板に形成され、端太材を挿入するための挿入孔と、この挿入孔と連続し、前記基板の外形の一部を切り欠くようにして形成された挿入口と、この挿入口の外側に形成された引掛部と、この引掛部の基端部から前記挿入口を介して前記挿入孔の形状の一部として登り勾配で形成された案内部と、この案内部の前記引掛部と反対側の端部に前記挿入孔と連続して形成された固定部と、を有することを特徴とするサポート設置金物。
【請求項2】
案内部に段部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のサポート設置金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168859(P2010−168859A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14385(P2009−14385)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(308003460)株式会社フォービル (2)
【Fターム(参考)】