説明

サンプル中の核酸を検出する方法

【課題】試験装置上に核酸単位複製配列を固定するための系および方法を提供する。
【解決手段】合成結合単位および検出可能な標識を含む単位複製配列を作製し、試験装置上の既定の位置に、合成結合単位と既定の位置に位置する合成捕捉単位との間の特異的結合相互作用によって、その単位複製配列を固定化する。合成結合単位は、増幅過程において、合成結合単位の領域がポリメラーゼ鎖伸長を受けず、これによりその単位複製配列は一本鎖のままであり捕捉過程における合成捕捉単位との結合に利用可能であるような特有のデザインを含み得る。特定の実施態様において、合成結合単位および合成捕捉単位は、ネイティブの核酸またはそこで働く酵素と相互作用しない合成核酸類似体を含む。一実施態様において、合成結合単位および合成捕捉単位はピラノシルRNA(pRNA)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2008年9月23日に出願した米国仮出願第61/099,515号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、分析物を同定するための方法および装置に関する。特に、本発明は、非ネイティブの核酸プローブを用いて核酸および/またはタンパク質を迅速に検出するための方法、装置および系に関する。さらに具体的には、本発明は、側方流動フォーマット(lateral flow format)を用いる核酸検出系に関する。
【背景技術】
【0003】
特に例えば生物兵器および振興疾患の診断の領域において、生物学的物質および/またはマーカー、例えば病原体を同定するためのバイオセンサー技術の開発にますます関心が高まり、努力がなされている。生物学的物質の迅速な、正確な、および高感度の検出には、典型的には、近縁のマーカー、例えば近縁の微生物またはウイルスの病原体の間で識別能力のある広範なスペクトルアッセイが用いられる。伝統的に、核酸配列は最も堅固で系統学的に情報価値のある特徴を提供する。
【0004】
最近、最も広く用いられている核酸配列検出法は、増幅核酸産物を産生するPCRの使用を含み、その産物はその後以下に記載する1以上の様々なアッセイを用いて検出され得る。はじめに、サンプル、例えば生物学的液体、例えば血液を得る。次いでサンプル中の細胞を単離し、その中のDNAを収集する。サンプルからDNAが単離され、精製されれば、次いでPCRプロトコールを用いて増幅することができる。次いで増幅されたDNAは、例えばハイブリダイゼーションアッセイを用いて検出することができる。ハイブリダイゼーションアッセイは、容易に自動化可能であるので、PCR後の増幅産物、例えば核酸を検出するために提案された(Bortolin S. Anal. Chem. 1994;66:4302-4307)。
【0005】
しかしながら、ハイブリダイゼーションアッセイには、特殊化された器具類および複数のピペッティング、インキュベーション、および洗浄工程が必要である。これらの工程は、増幅された標的核酸配列を捕捉し、増幅された標的核酸配列を認識する特異的プローブを含有する基質とその増幅された配列を接触させ、増幅された配列を特異的プローブとハイブリダイズさせ、いずれかの過剰なプローブを除去し、生じたシグナルを読み取って標的核酸配列の存在を検出するために行われる。
【0006】
核酸のハイスループットな検出のための典型的な自動化されたハイブリダイゼーション方法には、DNAマイクロアレイ、リアルタイムPCR、キャピラリー電気泳動およびフローサイトメトリーアッセイなどがある。最近のハイスループットな核酸の化学および分析技術は、巨視的規模において核酸を操作する能力、例えばアレイ、例えば核酸検出アッセイに用いるためのDNAマイクロアレイにおける基質上の既知の位置に特定の核酸種(または種の群)を局在化する能力、に依拠している。
【0007】
DNAマイクロアレイ核酸検出アッセイは、基質の表面上にスポットされた数百から数千の相補的DNA捕捉オリゴヌクレオチドのアレイに標的DNAを並行してハイブリダイゼーションさせることを含む。一実施態様は米国特許第5,605,662号明細書に一般的に記載されているNanogen NC400(登録商標)マイクロアレイ系である。DNAマイクロアレイ技術は核酸診断の情報量を増大させ、異なる核酸配列の大きなパネルの並行したハイスループット検出を可能にする(「DNA Microarrays: A Practical Approach(DNAマイクロアレイ:実践的アプローチ)」、Mark Schena編、Oxford: Oxford University Press、1999;「Microarray Biochip Technology(マイクロアレイバイオチップ技術)」、Mark Schena編、Natick、MA: Eaton Publishing、2000;「DNA Arrays: Methods and Protocols(DNAアレイ:方法とプロトコール)」、Jang B. Rampal編、Totowa, NJ: Humana Press、2001;Heller MJ. Ann. Rev. Biomed. Eng. (2002) 4:129-153)。
【0008】
しかしながら、典型的なDNAマイクロアレイ技術にはいくつかの欠点が伴う。マイクロアレイアッセイにはハイブリダイゼーションのために長いインキュベーションが必要であり、これにより、サンプルから結果を得るまでの時間が、迅速なスクリーニングアッセイのために容認できる時間を超えて増大する。さらに、マイクロアレイ方法は蛍光検出およびサポートする器具類に依然として依拠する設計を用いており、研究室のインフラがなくとも用いることができる、低コストで、容易に製造できる装置の必要性に取り組んでいない。
【0009】
一方、リアルタイムPCRは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)過程において蛍光性色素を用いることにより標的DNA分子の増幅と定量を同時に行う均一性の(homogeneous)蛍光ハイブリダイゼーションアッセイによってPCR過程において増幅されたフラグメントの連続的なモニタリングを可能とする。しかしながら、リアルタイムPCRは、高度に特殊化された高価な機器とともに費用のかかる試薬を必要とする。キャピラリー電気泳動も、マイクロキャピラリー型のスラブゲル電気泳動を用いてDNAを分離し、検出するのに用い得る。その過程にも高価な装置および機器が含まれる。あるいは、フローサイトメトリーは、PCR後の、蛍光標識された、またはオリゴヌクレオチドライゲーション反応に供されポリスチレンビーズ上に捕捉された増幅産物の検出に用いることができる(Chen IM, et al. Am. J. Clin. Pathol. 2004;122:783-793)。しかしながら、フローサイトメトリーは、多重アッセイの開発に適するが、これも高価な器具類を必要とする。
【0010】
さらに、これらの全ての領域における核酸の使用に必要とされる鍵となるものは、既知の位置に、例えば基質上のアレイに特定の核酸種を局在化させることにより巨視的規模にて核酸を操作する能力である。典型的には、これらの系において、互いを特異的に認識する結合系の2つのパートナー間の複合体形成反応を用いる。これらの反応は通常可逆的であり、核酸の相補鎖間の水素結合依存性の結合による。
【0011】
これらの方法の不利な点は、固定化に用いる配列が、固定化すべき配列とハイブリダイズして分子内二次構造を形成する可能性があること、または固定化すべき別の配列とハイブリダイズして分子間二次構造を形成し得ること、またはサンプルからの核酸とハイブリダイズし得ることである。このような望まないまたは妨害的な相互作用の危険性は、固定化すべき核酸の長さ、ならびにサンプルの複雑性(例えば、潜在的な混入核酸)によって増大する。
【0012】
例えば、天然核酸を固定化物質として用いることの顕著な経済的および時間的不利益は、固定化の安定性および選択性が実際的なレベルに到達するためには確かな最小配列長が必要であることである。典型的には、十分な結合特異性を達成するために、20mer以上のオリゴヌクレオチドを用いる。これにより、完全な核酸鎖(サンプルおよび固定化のための配列を認識するための配列からなる)が比較的長くなる。上記のように、非常に長い配列の使用は、長い核酸配列の使用は、分子内での二次構造形成の可能性を増大させ、溶液中において複数の鎖の間で一過性の安定なハイブリダイゼーションが起こる可能性も増大させるため、不利になり得る。
【0013】
天然核酸を固定化のために使用することの別の不利益は、天然核酸の二本鎖の安定性が広範囲にわたって長さ(配列中のヌクレオチド数)に比例して直線的に増加することはなく、むしろCGとAT塩基対の相対的割合(「CG含量」)のみに依拠して極限に近づくことである。天然の極限を上回る二本鎖の安定性を有する結合系は、天然核酸を用いて調製することはできない。この極限も、固定化された位置の核酸に様々なストリンジェントな条件を適用する際に問題となる:核酸タグの固定化も同じストリンジェントな条件(すなわち、カオトロピック剤、熱条件、または静電力)に曝され、解離する可能性がある。G. Michael BlackburnおよびMichael J. Gait編、「Nucleic Acids in Chemistry and Biology(化学と生物学における核酸)」、第2版、1996、Oxford University Press、New Yorkを参照のこと。
【0014】
核酸の固定化のために天然系を用いることのさらなる不利益は、かかる系が、それらを用いている間に、例えば、サンプル中に存在する様々な酵素学的成分との接触による分解によって、容易に分解または破壊され得ることである。例えば、サンプル核酸の調製または増幅のための技術には、典型的には、増幅すべき核酸を修飾し得る多様な酵素が用いられる。
【0015】
それ故に、近年利用可能な典型的なハイスループットのハイブリダイゼーションアッセイに伴う多くの不利益を被ることがなく、比較的に費用効率がよく、高感度で、効率的な、サンプル中の分析物を同定するための方法が必要とされている。本発明は、これらの必要性および他のこのような必要性を満たす方法、装置および/または系を提供する。
【発明の概要】
【0016】
発明の概要
本発明の一側面は、分析物、例えば対象から得られた生物学的サンプルに存在する分析物を同定するための方法に関する。一例において、本方法は1以上の核酸の迅速な検出を対象とする。本方法は、検出すべき1以上の核酸の単位複製配列の提供を含み得る。単位複製配列は、合成結合単位(synthetic binding unit)にコンジュゲートした第1のプライマー、例えばフォワードプライマー、および検出可能部位にコンジュゲートした第2のプライマー、リバースプライマーを用いて作製された単位複製配列であり得る。本方法は、基質の提供をさらに含み得、ここでその表面はその表面の既定の位置に固定化された合成捕捉単位(synthetic capture unit)を含む。合成捕捉単位は合成結合単位に選択的および可逆的に結合するようなものであり得る。さらに、本方法は、単位複製配列が合成捕捉単位と合成結合単位との結合によって既定の位置に固定化されるのに十分な条件下において、基質の表面が単位複製配列と接触することを含み得る。合成捕捉単位と合成結合単位との結合により、合成指定可能(addressable)複合体が生じる。ひとたび合成捕捉単位が合成結合単位と結合すると、次いで単位複製配列に付随する検出可能部位を検出することができ、これによりサンプル中に核酸が存在することが示される。
【0017】
別の態様において、本発明は、分析物、例えば、対象から得られた生物学的サンプルに存在する分析物の同定に使用するための装置に関する。一例において、本装置は、本体;基質および/または表に示す窓(indication window)を含む試験装置である。例えば、一実施態様において、基質は1以上の合成捕捉単位、例えば、標的分析物の単位複製配列にコンジュゲートした合成結合単位に特異的に結合可能な合成捕捉単位を含有する表面を含み得る。例えば、基質は、1以上の指定可能なラインを形成するように基質上に位置する複数の固定化された合成捕捉単位を含み得る。
【0018】
一例において、基質は膜、例えば側方流動膜であり得る。膜は1以上のサンプルパッドおよび/または吸収パッドを伴ってもよく、また、試験装置の本体の1以上の窓を通して膜が曝されるように位置し得る。例えば、サンプルパッドは吸収材を含み得、1以上の窓の下流に位置し得、吸収パッドはウィッキング材(wicking material)を含み得、1以上の窓の上流に位置し得る。特に、一例において、試験装置は、基質、例えば、試験パッドに隣接するサンプルパッド、ならびに試験パッドに隣接する吸収パッドを有する試験表面を含む側方流動膜を含み、ここでこれらの隣接するパッドは流動可能なように(fluidably)連結している。従って、このような例において、試験表面のサンプルパッドは、単位複製配列を含む液体が接触するように形成され得、本明細書に開示するように、吸収パッドは液体を、例えば毛細管作用によって、吸収パッドに向かって、試験パッドを横切って引き出すように形成され得る。さらに、いくつかの例において、以下により詳細に記載するように、試験パッドはニトロセルロースであり得、連結剤、例えばタンパク質(例えばイムノグロブリン)を含み得、連結剤は、試験パッドの表面への合成捕捉物質の固定化のために、合成捕捉物質、例えばp-RNA配列とコンジュゲートする。特定の例において、合成捕捉単位は、試験パッド表面上の既定の試験ラインまたは試験スポットに沿って固定化される。
【0019】
従って、一例において、本発明は、即時(point of care)(POC)の用途に適した側方流動試験装置に関し、その試験装置は核酸を検出する方法に用いることができる。本発明の方法および装置は他の核酸検出系を超える多くの利点、例えば以下の利点を有する:(a)本発明の方法および装置は、非ネイティブの捕捉単位、例えば、pRNAに基づく捕捉単位、および試験ストリップ上に検出すべき核酸配列を固定化するための結合試薬を用いる;(b)PCR増幅後の手続きが必要ないのでワークフローが単純である;(c)本発明の装置を用いて、本方法は迅速に(例えば、およそ15分のインキュベーション時間)完遂できる;および(d)本方法および装置は高感度にて、例えばマイクロアレイよりも50倍感度が高い、約0.005 ng/μL以下の感度にて機能する。
【0020】
本発明の方法および装置には、1以上の特異的相補的結合単位を利用する方法および/または装置が考慮される。特異的相補的結合単位は、合成捕捉単位および合成結合単位の両方を含む指定可能な複合体であり得、ここで、例えば、合成捕捉単位は合成結合単位と特異的に結合することが可能である。いずれかの特異的相補的指定可能単位を用いることができ、例えば、ピラノシルRNA(pRNA)、5'-5'逆位DNAおよび2'-O'メチル化オリゴヌクレオチドに基づく合成指定可能結合系などがある。指定可能複合体の成分、例えば1以上の合成捕捉単位および/または結合単位の統一的特徴は、増幅過程において、SBU領域がポリメラーゼによる鎖の延長を受けず、よって一本鎖のままであり、捕捉過程においてSCUとの結合に利用できることである。
【0021】
例えば、一実施態様において、その系は非ネイティブの、合成pRNA結合対を用い、ここで結合対系の各メンバー、すなわち合成捕捉単位および合成結合単位は、ネイティブのフラノシルに基づく核酸に結合しない。この様式において、結合対単位はネイティブの核酸に結合不能であるので、高感度の核酸検出系が提供される。本発明によると、用語「ネイティブの核酸」はフラノシルに基づく核酸を表すのに用いる。
【0022】
さらに、別の実施態様において、その系は天然のまたはネイティブの核酸配列部分を含む結合対物質を含み得るが、増幅反応において用いられるプライマーの性質のために、目的の核酸配列の単位複製配列のみが増幅される。この例において、増幅産物が産生される限りは、増幅産物は検出される目的の核酸配列を表すので、診断アッセイの実行における非特異的結合の問題は減少する。
【0023】
例えば、一実施態様において、5'-5'逆位DNA系を用い得る。かかる系において、新規なキメラオリゴヌクレオチドプライマーが、新規な合成結合物質を産生するために増幅反応において用いられ得る。特に、かかる系において、5'-5'接合部を含むプライマーが設計され用いられ得る。従って、特定の例において、プライマーは、3'-5'核酸配列を含み得、5'-3'核酸配列と結合して5'-5'接合部セグメントを含むキメラオリゴヌクレオチドとなっている。
【0024】
3'-5'核酸配列部分は、増幅すべき標的核酸配列における対応するセグメントは認識しないが、合成捕捉単位中の対応する、例えば相補的な配列を認識する核酸配列を含み、よって3'-5'核酸配列部分は本発明の文脈において合成結合単位として働く。5'-3'核酸配列は、増幅すべき標的核酸配列中の配列を認識する核酸配列部分を含み、よって5'-3'核酸配列部分は本発明の文脈において、転写の開始が可能な、およびそれ故に標的核酸配列の増幅が可能なプライマー、例えばフォワードプライマーとして機能する。さらに、本発明の増幅系のこの構造には、検出可能な標識部分に結合するリバースプライマーが含まれる。この系の独特の特徴は、増幅された鎖は3'-5'核酸配列部分を含むため、増幅が不可能であり、それ故に目的標的鎖のみが増幅され、その系の方法および装置による検出に利用できることである。この様式において、高感度の核酸検出系が提供される。
【0025】
さらに、別の実施態様において、その系は2'-O'メチル化オリゴヌクレオチドに基づく合成指定可能結合系を含み得る。この系において、用いた結合対物質は天然のまたはネイティブの核酸配列部分に結合し得るが、単位複製配列の産生に用いるプライマーの基礎をなす核酸構造が化学的に修飾されているために、検出すべき目的核酸配列の単位複製配列のみが増幅される。この例において、増幅産物が増幅される限りは、増幅産物は検出される核酸配列を表すので、診断アッセイの実行における非特異的結合の問題は減少する。
【0026】
例えば、この系はプライマー、例えばフォワードプライマーとして用いられ得るキメラ2'-O-メチル化RNA-DNAオリゴヌクレオチドを含み得る。特に、リボース部分の2'位の内在性の水素の換わりにメチル基を含有する非天然のRNA配列、例えば合成RNA配列がプライマーに組み込まれ得る。かかる例において、核酸配列はキメラプライマーのDNA配列が標的核酸中の対応する、例えば相補的な配列を認識するように構成され得、よって、その合成オリゴヌクレオチドは標的核酸配列とハイブリダイズ可能であり、それ故にDNAポリメラーゼの存在下において標的核酸配列の重合を、そして増幅を開始させることができる。しかしながら、メチルによる置換のために、その増幅産物はポリメラーゼにより認識されず、よって効率的に増幅されることができない。その増幅産物は一本鎖のままであり、合成捕捉単位に結合可能である。さらに、本発明の増幅系のこの構造には、検出可能な標識部分に結合するリバースプライマーが含まれる。この系の別の特徴は、メチルによる置換はオリゴヌクレオチド配列を安定化する作用も持つという事実である。この様式にて、高感度の核酸検出系が提供される。
【0027】
従って、上記のことを考慮すると、いくつかの実施態様において、特異的相補的指定可能複合体は合成捕捉単位および合成結合単位を含み、ここで合成捕捉単位および合成結合単位は、相補的ピラノシルRNA(pRNA)配列、内部5'-5'ヌクレオチド間結合を有する相補的オリゴヌクレオチド類似体配列、または相補的2'-O-メチルオリゴヌクレオチド配列を含み得る。上記のように、これらの系の特徴は、増幅過程において、伸長する単位複製配列の一部(例えばSBU)はポリメラーゼによる鎖の伸長を受けない領域を含み、よって一本鎖のままであり、捕捉過程においてSCUへの結合に利用可能であることである。
【0028】
いくつかの実施態様において、本方法は検出工程を行う前に検出すべき標的核酸配列を増幅する工程を含む。特定の例において、増幅過程には、第1のプライマー、例えば、第1のピラノシル-RNA(p-RNA)配列とコンジュゲートしたプライマー、および第2のプライマー、例えば検出可能部分にコンジュゲートしたプライマーが用いられ得る。第1および第2のプライマーはフォワードおよびリバースプライマーを含み得る。さらに、1以上の結合剤を含んでもよく、例えば、互いに結合可能な相補的結合剤、または検出可能部分にコンジュゲートする結合剤などがある。例えば、特定の例において、少なくとも2つの相補的結合剤が提供され得、ここで1以上の第1および第2のプライマーは第1の結合物質にコンジュゲートし得、第2の結合物質は検出可能部分にコンジュゲートし得る。例えば、一例において、第1の結合物質はストレプトアビジンであり得、第2の結合物質はビオチンであり得、ここでストレプトアビジンまたはビオチンのいずれかが、検出可能部分、例えば、フルオロフォア、発色団、金属、量子ドット、またはそれらの組合せにコンジュゲートし得る。特定の例において、検出可能部分は標識、例えばユーロピウムビーズであり得る。一例において、第2のプライマーは検出可能部分、例えば、ユーロピウムビーズに直接コンジュゲートし得る。核酸を増幅する工程は熱サイクル増幅反応、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含み得る。
【0029】
特定の実施態様において、本方法はまた、既定の位置における検出可能部分の存在を検出することにより核酸の存在を検出するための検出装置によって、試験装置、例えば試験装置内の側方流動試験ストリップをスキャニングすることを含む。
【0030】
従って、特定の例において、本発明は、1以上の核酸を迅速に検出する方法を対象とする。典型的な方法は、試験パッドに隣接するサンプルパッドを含む試験装置を提供することを含み得、ここでサンプルパッドと接触したサンプルは試験パッドへと流れることが可能である。試験パッドは、試験パッド上の既定の位置に固定化されたSCU p-RNA配列を含む。検出すべき標的核酸を含有する液体サンプルを提供する。必要に応じて、標的核酸を増幅して単位複製配列を産生し(単位複製配列はSBU p-RNA 配列を含み、検出可能部分を含み得る)、SBU p-RNA配列およびSCU p-RNA配列間のハイブリダイゼーションによって標的核酸配列が試験パッド上の既定の位置に固定化されるように、流動性のサンプルの試験表面への側方流動を可能にする条件下において、単位複製配列を含むサンプルをサンプルパッドに適用する。本方法は、既定の位置における検出可能部分の存在を検出することにより、標的核酸の存在を検出することをさらに含み得、例えば、検出は試験パッドをスキャニングするためのUV光を用いることを含み得る。いくつかの実施態様において、吸収パッドは試験表面に隣接し、ここで吸収パッドはサンプルパッドに対して遠位にある。サンプルパッド、試験パッドおよび必要に応じて吸収パッドが、側方流動試験ストリップを構成し得る。
【0031】
例えば、上記のように、特定の実施態様において、本発明は側方流動ストリップを含む試験装置を提供する。側方流動ストリップは試験装置の本体内に位置する側方流動膜を含み得、そのストリップの一部は本体の単一のまたは複数の窓を通して曝され得る。側方流動ストリップはウィッキング材を含有する吸収パッドをさらに含み得、吸収パッドは複数の窓の上流に位置し得る。側方流動ストリップは吸収剤を含有するサンプルパッドをさらに含み得、サンプルパッドは複数の窓の下流に位置する。側方流動膜は複数の指定可能なラインをさらに含み得、ここでそれぞれのラインには、合成単位、例えば合成結合単位、例えば標的分析物とコンジュゲートする合成結合単位と特異的に結合する合成捕捉単位が固定化され得る。合成捕捉単位および合成結合単位は、pRNA配列、2'-O-メチルオリゴヌクレオチド配列および5'-5' 逆位DNA 配列からなる群から選択される相補的配列を含む。側方流動ストリップは検出装置によりスキャニング可能なように構成される。
【0032】
いくつかの実施態様において、標的分析物は感染性媒介物である。例えば、感染性媒介物はウイルス、細菌、寄生生物などに由来し得る。例えば、感染性媒介物は、ウイルス、例えば、インフルエンザウイルス、HIV、肝炎ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、パラインフルエンザウイルスなどであり得る。例えば、感染性媒介物は細菌、例えば肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)などであり得る。例えば感染性媒介物は真菌、例えば、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)などであり得る。
【0033】
いくつかの実施態様において、試験装置は同定マーカー、例えばバーコードを含み得る。いくつかの実施態様において、試験装置は標準化のための対照試薬に結合する対照スポットまたは対照ラインを有する。
【0034】
一側面において、本発明はサンプル中の核酸およびタンパク質、例えば抗原を同時に検出する方法に関する。特定の例において、本方法は、少なくとも1の標的物質、例えば抗原の存在について試験するサンプルを、複数の試薬を含有する溶液と混合することによって混合物を形成することを含む。例えば、その溶液は抗体-合成結合単位コンジュゲートを含み得る。例えば、抗体-合成結合単位コンジュゲートは標的抗原と特異的に結合する抗体ならびに合成捕捉単位と特異的に結合する合成結合単位を含み得る。その溶液はまた、標識化抗体、例えば同じ標的抗原に特異的に結合する抗体を含み得る。本方法は、サンプルからの標的核酸の単位複製配列の溶液を提供する工程をさらに含み得る。例えば、単位複製配列溶液は、合成結合単位にコンジュゲートした第1のプライマーおよび検出可能部分にコンジュゲートした第2のプライマーを用いて作製された単位複製配列を含み得る。本方法は、上記に記載のように、基質、例えば、側方流動膜試験表面を提供することをさらに含み得、ここでその試験表面は、1以上の、例えば試験表面上の既定の位置に固定化された複数の合成捕捉単位、例えば検出すべきタンパク質を認識し固定化するために構成され用いられる合成捕捉単位ならびに検出すべき核酸単位複製配列を認識し固定化するために構成され用いられる合成捕捉単位を含む。合成捕捉単位は、選択的にかつ可逆的に合成結合単位に結合するようなものであり得るが、いくつかの例において、例えば、核酸の検出に関して、合成捕捉単位または合成結合単位はネイティブの核酸配列に結合しない。さらに、本方法は混合物および単位複製配列溶液を複数の検出領域を含有する基質、例えば側方流動膜に適用することをさらに含み得、ここでそれぞれの検出領域は基質に固定化された合成捕捉単位を含む。本方法は、次いで混合物および単位複製配列溶液を膜を横切って流動させること(これにより合成捕捉単位は合成結合単位を有する複合体(合成捕捉単位はこの複合体に方向付けられている)を捕捉する);および、少なくとも1の検出領域において1以上の標識を検出すること(これにより標識の検出はサンプル中の標的物質、例えば抗原、または標的核酸の存在を示す)を含み得る。
【0035】
上記のように、この実施態様によると、合成捕捉単位および合成結合単位は相補的pRNA配列であり得る。さらに、検出可能な標識はユーロピウム、例えばストレプトアビジンと単位複製配列などの結合パートナーとコンジュゲートしたユーロピウムビーズを含み得、または抗原-抗体はビオチンとコンジュゲートし得る。
【0036】
一側面において、本発明は系に関する。その系は、上記のような試験装置、およびリーダー、例えば試験装置のいずれかの指定可能なラインにおいて生じたシグナル、例えば検出可能な試薬から放出されたシグナルを読み取るリーダーを含み得る。その系はまた、1つまたは複数のシグナルを検出するようにリーダーを指揮することができる、機械可読にコードされた指示を含み得る。検出試薬は、フルオロフォア、発色団、金属、量子ドットまたはそれらの組合せ、例えば、ランタニドまたはユーロピウムにより標識することができる。
【0037】
従って、一例において、本発明は、合成結合単位とコンジュゲートした1以上の標識された単位複製配列を検出する系を対象とする。その系は、合成結合単位にコンジュゲートした1以上の単位複製配列に結合することができる特異的合成捕捉単位を含有する1以上の別々のバンドを含む側方流動試験ストリップを含み得る。その系はまた、試験ストリップ上の1以上のそれぞれのバンドからの蛍光シグナルを識別することができる蛍光リーダーを含み得、ここでそのリーダーは、光源、例えば発光ダイオード(例えばスペクトルのUV領域において光を放出する発光ダイオード)、および放出された蛍光シグナルを検出することができる光ダイオードを含む。特定の例において、蛍光シグナルはユーロピウムによって発生する。
【0038】
一側面において、本発明はキットに関する。例えば、1以上の試験装置、リーダー、標識、例えばストレプトアビジン被覆ユーロピウムビーズ、および/または本発明の系の方法を実施するための上記のような試薬を含み得るキット。
【0039】
本発明の側面および他の目的、特徴および利点は、発明の詳細な説明および付随する図面および実施態様によってさらに明らかになるであろう。
【0040】
発明の詳細な説明
本発明は、分析物、例えば液体サンプル、例えば生物学的液体サンプルから単離された分析物を検出するための新規な方法、装置および系を提供する。別の側面において、本発明は装置、例えば側方流動膜を含む試験装置、および核酸を検出するためにその装置を用いる方法、例えば側方流動フォーマットを用いる方法を記載する。従って、一側面において、本発明は、分析物特異的コンジュゲートを用いてサンプル中の分析物を検出する方法に関する。よって、本発明は新たなコンジュゲートおよびそのコンジュゲートに用いるための試薬キットをさらに提供する。
【0041】
特定の実施態様において、本発明の方法および装置は、特有の合成ヌクレオチドポリマー対(pRNA結合対であり得る)の使用を対象とする独自の(proprietary)技術を利用し得、それらは一緒になって指定可能な結合複合体を形成し、そのうち1以上がユーロピウムビーズなどの検出可能部分を含み得、それは例えば側方流動フォーマットにおいて標的核酸を検出するのに用いられ得る。pRNA指定可能結合複合体はpRNA捕捉単位およびpRNA結合単位を含み得、ここでその2つのpRNA単位は互いに結合可能であるが、この例において、天然の、例えばネイティブの核酸配列に結合することはできない。
【0042】
それ故に、典型的な一実施態様において、本発明の方法および装置は、サンプルパッド、ニトロセルロース(NC)膜および吸収パッドを含む1以上または3つの異なる物質を含み得る側方流動試験ストリップを用い得る。様々な例において、捕捉単位、例えばpRNA捕捉単位は、タンパク質とカップリングし、NC膜上にスポットされ、特異的試験ラインを形成し得る。単位複製配列、例えばPCR単位複製配列は、修飾されたプライマー対を用いて作製され得、そのうち一方のプライマーは結合単位、例えばpRNA結合単位(例えばNC膜上のpRNA捕捉単位に相補的なpRNA単位)とコンジュゲートし得、他方のプライマーには結合要素、例えば、タンパク質結合対の一部分、例えばビオチンが付随し得る(例えば、プライマーがビオチン化され得る)。側方流動試験ストリップを含む本明細書に記載のような試験装置は、1以上の単位複製配列、および標識化結合要素、例えば適切な標識、例えば被覆ユーロピウムビーズを伴ったタンパク質結合対の他のメンバー、例えばストレプトアビジンを含有するサンプルと、例えばサンプルに浸けることにより接触させ得る。試験装置は、サンプル中において、例えば室温にて約15分間以上インキュベートし得る。次いで、サンプル中の標的核酸配列の存在を表す、側方流動試験ストリップの膜上の単位複製配列の存在は、例えばUV光の下において、例えば指定可能な結合対、例えばpRNA結合対と、存在するユーロピウムビーズとの間の架橋によって(これにより特異的試験ラインへの蛍光性ユーロピウムビーズの蓄積が導かれる)検出され得る。モデル標的としてインフルエンザA型を用いると、本発明の方法の検出限界は、高感度、例えば約0.005ng/μL(=30 amol/μL)であり、これはインフルエンザA型についてのNC400より50倍高い感度である。
【0043】
従って、サンプル中の分析物の存在を検出する方法をまず提供し、その後、本方法に用いるための装置を記載する。本発明の方法および装置の実施に用いるための系およびキットを記載する。
【0044】
サンプル中の分析物の存在を検出する方法
上記のように、一側面において、本発明はサンプル中の分析物の検出に関する。分析物はいずれかの目的の分析物であり得るが、いくつかの例において、分析物は1以上の核酸、ペプチド、タンパク質などである。特定の実施態様において、分析物は、感染性および/または病原性媒介物、例えば、藻類、真菌、酵母、細菌、寄生生物、ウイルスなどに由来し得る。例えば、分析物は、ウイルス、例えばインフルエンザウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、パラインフルエンザウイルスなどに由来し得る。
【0045】
特定の実施態様において、分析物は、生物学的サンプル中に存在するマーカー、例えば対象の生物学的液体(これからサンプルを得る)中に存在するマーカーを表し得る。マーカーが核酸である場合、そのマーカーは一本鎖または二本鎖核酸、例えば、ssRNA、dsRNA、DNA、アプタマーなどのいずれかの適切な形態であり得る。マーカーがタンパク質である場合、そのマーカーは、タンパク質、例えば抗原、抗体またはそれらのフラグメント、構造タンパク質、エピトープなどのいずれかの適切な形態であり得る。
【0046】
本発明の方法および装置の特徴は、目的の分析物の検出において、合成指定可能結合対系を作製し使用することの採用である。合成指定可能結合対系には特異的相補的結合対単位が含まれる。合成指定可能結合対系のパートナーまたは単位は、本明細書において用いる場合、合成結合単位(SBU)および合成捕捉単位(SCU)として示す。特異的相補的結合対の単位は指定可能複合体を形成し、その指定可能複合体は合成捕捉単位(SCU)および合成結合単位(SBU)の両方を含み、ここで、例えば合成捕捉単位は合成結合単位と特異的に結合することができる。
【0047】
特定の例において、本明細書に記載の合成指定可能結合対系は、標的分析物の固定化および検出のために対になった結合剤として機能する修飾RNAおよび/またはDNAを用いる。例えば、特定の実施態様において、合成結合対系は、相補的ピラノシル-RNA(pRNA)またはピラノシル-DNA(pDNA)鎖を含む結合パートナーを用い得る。pRNAおよび/またはpDNA 結合パートナーは、ネイティブの、例えば天然の核酸と対形成することが立体的に不可能であるように形成され、さらに標準的核酸酵素の基質として反応性でないので、有用である。他の非天然のオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの例は、RNAおよびDNAの化学的に修飾された誘導体、例えばそれらのホスホロチオエート類、ホスホロジチオエート類、メチルホスホネート類、2'-O-メチルRNA、2'-フルオロRNAなどである。
【0048】
従って、いずれかの適切な、特異的相補的結合対の単位を用いることができ、例えば、上記のような、pRNA、5'-5'逆位DNA、および2'-O-メチルオリゴヌクレオチドに基づく合成指定可能結合系が含まれる。いくつかの実施態様において、特異的相補的指定可能複合体は、相補的ピラノシルRNA(pRNA)配列を含み得る合成捕捉単位および合成結合単位を含み、または指定可能複合体は、5'-5'結合部領域を含む核酸配列を含む合成結合単位を含み得、または指定可能複合体は相補的2'-O-メチルオリゴヌクレオチド配列を含み得る。合成結合対系を設計する、作製するおよび使用する方法は、本明細書において用いられるものに加えて、米国特許出願公開第2005/0208576号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されており、そこには、出来上がっている、予め合成された核酸と合成結合系とをコンジュゲートさせる方法が記載されている。例えば、Sanghvi, Y. S.、Cook, P. D.の、「Carbohydrate Modification in Antisense Research(アンチセンス研究における炭水化物の修飾)」、American Chemical Society、Washington 1994;Uhlmann; Peyman; Chemical Abstracts 90(4), 543-584 (1990)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のロックド核酸(LNA)またはペプチド核酸(PNA)を含むRNAおよびDNAと対形成することができる、さらなる構造的に異なる分子を参照のこと。
【0049】
上記のように、特定の例において、例えば、結合対系が相補的pRNAを用いる場合、本明細書に用いられるような結合対系の特徴は、系が非天然起源である修飾核酸配列を含み、それ故にネイティブの、例えば天然の核酸ハイブリダイジング構造の空間的関係を模倣しないことである。よって、本発明において用いられるSCU/SBUの組合せは合成的に調製され得、結果として天然の核酸と相互作用しないという利点を有し得る。別の利点は、SCU/SBUがそれらの天然起源の核酸カウンターパートよりも安定な複合体を形成するように構成され得ることである。例えば、本明細書において用いられる結合対の単位は、サンプル中に存在し得る様々な酵素との接触から生じ得る酵素学的分解を起こす傾向がより低い。本発明の合成結合系は天然核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと対形成しない、またはハイブリダイズしない、または結合しないので、これらの系を核酸の識別および固定化に使用しても、固定化成分、例えばSBCによる、検出すべき核酸(NA)、他の生体分子またはサンプルの他の成分との望まない相互作用または干渉を引き起こさない。
【0050】
本明細書において用いる場合、本明細書において用いられる場合の「核酸」を言及するのに用いられる「天然」または「ネイティブ」なる用語は、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびそれらの成分(または部分的成分)と特異的にハイブリダイズすることができる他の分子を含み、それらは天然のまたは修飾されたヌクレオチドから構成される。核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとみなされる分子は、天然に生じ、あるいは合成的に調製でき、天然核酸のオリゴマーにハイブリダイズする能力を有する、あらゆるオリゴマーおよびポリマーである。本明細書に規定する場合、あらゆる核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの鍵となるな特徴は、天然核酸と対形成するまたは結合するそれらの能力である。
【0051】
典型的には、核酸は、天然核酸においては、基本骨格(通常フラノシル糖)を介してホスホジエステルの橋と連結している単量体の認識性の窒素複素環塩基単位から構成される、いくらか化学的に反復した構造を有する。核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは通常、直線のポリマー構造を有するが、分枝した核酸構造が化学合成過程における化学的修飾および様々な分枝部分を用いて考案されている。天然核酸の例はDNAおよびRNAであり、そこでヌクレオシドモノマーは2-デオキシ-D-リボースおよびD-リボースをそれぞれ含む。DNAおよびRNAにおいて、糖は両方ともフラノース型であり、ホスホジエステル結合を介して連結しポリマーの基本骨格を形成する。N-グリコシド結合した窒素複素環塩基は特異的認識構造を形成し、これによりDNAおよびRNAが塩基配列に基づいて特異的に対形成することが可能になる。対照的に、「核酸」を言及するのに用いる場合の「修飾」なる語は、相補的な修飾された例えば合成された核酸配列と結合することができるが、「天然の」または「ネイティブの」核酸配列とあまり結合できない、またはハイブリダイズできない、修飾された核酸配列、例えば合成核酸配列を意味する。
【0052】
さらに、5'-5'接合の核酸配列を含む合成結合単位(プライマーとして機能するセグメントに相対する核酸配列セグメントに逆位の修飾を含む核酸結合単位である)を用いる結合対系、および2'-O-Me結合対系に関して、これらの系はネイティブの核酸配列を認識し得るおよび/または結合し得る核酸配列を含み得るが、これらの系は両方とも、増幅反応過程において増幅されない修飾領域を含む核酸配列をプライマーとして用い、これにより検出過程では、増幅された目的の標的配列のみが合成捕捉単位による固定化および検出に供されるであろうという利点を有する。
【0053】
上記のように、修飾核酸配列の例には、ピラノシル-RNA(pRNA)、ピラノシル-DNA(pDNA)、5'-5'逆位DNA、および2'-O'メチル化オリゴヌクレオチドなどが含まれる。さらに、上記のように、本明細書に記載の「修飾核酸」および合成結合対系の利点は、それらのすべてが、それらを用いる診断系および/または装置の感度が増大するように、診断系および装置に用い得ることである。pRNA結合対系の別の特徴は、合成捕捉単位および合成結合単位の両方が、ネイティブの、例えば天然の核酸と対形成することが立体的に不可能であることである。さらに、pRNA結合対ならびに2'O-Me系の別の特徴は、標準的な核酸酵素の基質としてあまり反応性でない可能性があることである。本明細書に記載のような合成結合対系の他の特徴は、結合対系の成分の結合が通常可逆的であり、結合系の遊離の成分と複合体化した成分との間の平衡の位置が、温度、pH、濃度および他の溶液条件により制御され得、結合事象が制御される、例えば促進される、または対応するSCUから結合していたSBUが取り除かれることである。
【0054】
特定の例において、本発明の方法は、表面、例えば基質表面の提供を含み、目的の分析物をその表面上において検出するために、合成指定可能単位がその上に結合し得る。合成指定可能複合体が結合し得る表面を含むいずれかの適切な基質が用いられ得る。例えば、基質は、ガラス、例えばシリコンジオキシド;プラスチック;メッシュネットワーク膜、例えばニトロセルロースなどから形成され得る。基質はいずれかの適切な形、例えば、環状、三角形、四角形、矩形、円形(例えば、ビーズの形)などであり得る。例えば、特定の実施態様において、基質はガラススライド、プラスチックマイクロウェルプレート、ニトロセルロースストリップなどであり得る。特定の実施態様において、基質は側方流動フォーマットにおいて用いられるように形成された膜である。特に、特定の実施態様において、基質は試験ストリップとして形成されるニトロセルロース膜であり得る、および/または1以上の吸収パッド、例えばウィッキング材を含有する吸収パッドおよび/またはサンプルパッド、例えば吸収材を含有するサンプルパッドを含み得る。
【0055】
表面、例えば基質表面は、基質表面と結合した合成指定可能結合対系のメンバーを含み得る。例えば、基質の表面はその上の既定の位置に固定化された合成捕捉単位(SCU)を含み得る。合成指定可能結合対のメンバーは、いずれかの適切な方法、例えば当分野においてよく知られている方法によって(例えば付着化学を利用して)、その表面と結合し得るおよび/または付着し得る。特定の実施態様において、例えば、基質がニトロセルロースを含む場合に、SCUはタンパク質にコンジュゲートし得、次いでそのタンパク質は例えば既定の位置においてニトロセルロース基質と結合し得る。上記のように、SCUは合成指定可能結合対の一メンバーであり、かかるものとして合成指定可能結合対の別のメンバーと可逆的にカップリングするように形成されており、他のメンバーには合成結合単位(SBU)が含まれる。
【0056】
特定の例において、本発明の方法は、結合したSCUを含有する基質の表面をサンプル、例えば対象から得られた液体サンプルと接触させることを含む。サンプルはいずれかの適切な手段によって得られたいずれかの適切なサンプルであり得る。特定の例において、サンプルは、生物学的サンプル、例えば生物学的液体に存在するサンプルである。かかる例において、生物学的液体は、血液サンプル、リンパ液サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、排泄サンプル、組織サンプル、細胞サンプルなどであり得る。特定の例において、サンプルは、抽出方法、例えば当分野においてよく知られている方法によって対象から得られうる。サンプルが得られれば、サンプルは、それらの方法によっておよび/または本明細書に記載の装置を用いて、検出の準備の処理を行うことができる。
【0057】
例えば、基質と接触させるべきサンプルの特徴は、サンプルが合成結合単位(SBU)を含むようにサンプルが前処理されていることである。例えば、対象の生物学的液体などからひとたびサンプルが得られれば、サンプルは、当分野においてよく知られている方法によって、分析物-SBU複合体を形成するのに十分な様式にて検出すべき目的の分析物がSBUと接触するように処理し得る。
【0058】
特定の典型的な実施態様において、例えば、検出すべき分析物が核酸である場合、その核酸は、分析物-SBU複合体が産生されるような様式にて増幅し得、その複合体はさらに標識化してもよい。従って、特定の例において、検出すべき核酸は、単位複製配列を産生するために検出前に増幅し得る。検出すべき標的核酸の単位複製配列はSBUと結合した増幅産物を生じるのに十分ないずれかの適切な手段によって作製され得る。例えば、特定の実施態様において、検出すべき核酸単位複製配列は、当分野においてよく知られている一般的なプロトコール、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いる熱サイクルを用いて作製され得る。例えば、様々な増幅技術が識別可能な増幅産物を生じさせるための反応に用いることができる。これらの技術のいくつかは本明細書に記載のようにPCRを用いる。他の適切な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barringer et al, Gene. 1990, 89(1):117-122)、転写増幅(Kwoh et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1989 Feb;86(4):1173-1177;国際公開第88/10315号パンフレット)、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅(米国特許第6,410,276号明細書)、コンセンサス配列プライムド(primed)ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,437,975号明細書)、任意プライムド(arbitrarily primed)ポリメラーゼ連鎖反応(国際公開第90/06995号パンフレット)、核酸に基づく配列増幅(NASBA)(米国特許第5,409,818;5,554,517;6,063,603号明細書)、ニック置換(nick displacement)増幅(国際公開第2004/067726号パンフレット)が含まれる。
【0059】
従って、検出すべき分析物が核酸である場合、その核酸は修飾された検出可能な単位複製配列を作製するのに十分な様式にて増幅し得、その単位複製配列は標的分析物が存在することを示している。よって、特定の例において、本発明の増幅過程は、SCUにより認識可能であり、検出可能な新規な増幅産物が生じるように設計される。これらの目的物を得るために、特定の例において、増幅過程は、修飾されたプライマー、例えば修飾されたフォワードおよびリバースプライマーの対を用い得る。例えば、第1のプライマー、例えばフォワードプライマーを用いることができ、ここでそのプライマーは合成結合単位(SBU)とコンジュゲートし、第2のプライマー、例えばリバースプライマーを用いることができ、ここでそのプライマーは、検出可能要素(それ自体が標識化できる)により標識化される、または検出可能要素と結合する、例えばコンジュゲートする。合成結合単位とコンジュゲートしたフォワード核酸プライマーを作製する方法は米国特許出願公開第2005/0208576号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0060】
本発明の第1の例えばフォワードプライマー-SBUコンジュゲートは、検出すべき標的核酸(サンプル中にあり得るまたはそこから単離されていてもよい)の酵素学的増幅のための増幅反応、例えばポリメラーゼ反応において用い得る。少なくとも1の合成結合単位(SBU)および少なくとも1の核酸切片(NA)を含むコンジュゲートは、基質として検出すべき核酸を用いる酵素反応のための基質として働き、よって一般に用いられる生物工学的産生方法の酵素学的処理と適合する。
【0061】
よって、本発明の基本的な酵素学的方法は、コンジュゲートと、基質として天然核酸を用いる少なくとも1の酵素とを単純に接触させること、およびその混合物と、酵素の作用に必要な他の試薬とをさらに接触させることである。次いで、適切な条件下において、酵素がコンジュゲートの酵素学的修飾を達成するのに十分な時間、混合物をインキュベートする。熱安定性の酵素、例えばサーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)および類似の種に由来する酵素、大腸菌(Escherichia coli)などに由来する熱不安定性の酵素(ポリメラーゼ、リガーゼ、ターミナルトランスフェラーゼなど)、および複数酵素の組み合わせを、協奏的な酵素活性を用いる典型的な増幅過程、例えばTMA(RNAポリメラーゼ、RNAse Hおよび逆転写酵素)およびSDA(制限エンドヌクレアーゼおよびポリメラーゼ)において用い得る。
【0062】
第2の例えばリバースプライマーも、増幅反応において用いられ得る。例えば、検出可能部分とコンジュゲートしたリバースプライマーが用いられ得る。検出可能部分はそれ自体が標識を含み得、または結合対(例えばビオチン)のメンバーを含み得、そのメンバーはそのパートナー(アビジン、ストレプトアビジンなど)と結合でき、次に検出可能な標識とカップリングする。この関連における適切な結合対の例には、抗原と抗体、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、相補的ペプチド配列、エフェクターと受容体分子、酵素補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素、ペプチド配列または化学的部分とその配列、化学的部分または完全タンパク質に特異的な抗体(例えばジゴキシンと抗ジゴキシン)、ポリマー酸と塩基、色素とタンパク質結合剤、ペプチドと特異的タンパク質結合剤(例えばリボヌクレアーゼ、S-ペプチドおよびリボヌクレアーゼS-タンパク質)、金属とそれらのキレーターなどが含まれる。
【0063】
適切な検出可能な標識は、SBUおよび/または上記のような特異的結合メンバーと、共有または非共有結合によって結合し得る。結合の方法は本発明にとって決定的に重要ではないことに注意されたい。本明細書において用いる場合の「標識」は、視覚的または機器的手段により検出可能なシグナルを生じることができるいずれかの物質を意味する。本発明における使用に適切な様々な標識には、化学的または物理学的手段によってシグナルを生じる標識が含まれる。かかる標識には、酵素と基質、色素原、触媒、蛍光性化合物または蛍光様化合物および/または粒子、磁性化合物および/または粒子、化学発光化合物および/または粒子、および放射性標識などがあり得る。
【0064】
他の適切な標識には、粒子性の標識、例えば、コロイド金属粒子、例えば金、コロイド非金属粒子、例えばセレニウムまたはテルル、染色したまたは着色した粒子、例えば染色したプラスチックまたは染色した微生物、有機ポリマーラテックス粒子およびリポソーム、着色したビーズ、ポリマーマイクロカプセル、嚢(sac)、赤血球、赤血球ゴースト、または直接目に見える物質を含有する他の小胞などが含まれる。典型的には、視覚的に検出可能な標識を標識化試薬の標識成分として用い、それにより、検出部位にさらなるシグナル発生成分を加える必要なく、試験サンプル中の分析物の存在または量の直接的な視覚的または機器的読み取りがなされる。
【0065】
本方法の実施に利用できる他の適切な標識には、発色団、電気化学的部分、酵素、放射性部分、リン光発光基、蛍光性部分、化学発光部分または量子ドット、またはより具体的には、放射標識、フルオロフォア標識、量子ドット標識、発色団標識、酵素標識、親和性リガンド標識、電磁スピン標識、重原子標識、ナノ粒子光散乱標識または他のナノ粒子により標識されたプローブ、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、TRITC、ローダミン、テトラメチルローダミン、R-フィコエリトリン、Cy-3、Cy-5、Cy-7、分子ビーコンおよびその蛍光性誘導体、テキサスレッド(Texas Red)、ファーレッド(Phar-Red)、アロフィコシアニン(APC)、エピトープタグ、例えばFLAGまたはHAエピトープ、および酵素タグ、例えばアルカリフォスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、I2-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファタ−ゼ、β-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼおよびハプテンコンジュゲート、例えばジゴキシゲニンまたはジニトロフェニル、または複合体を形成することができる結合対のメンバー、例えば、ストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチンまたは抗原抗体複合体、例えばウサギIgGおよび抗ウサギIgGなど;フルオロフォア、例えばウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、緑色蛍光タンパク質、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(Cascade Blue)、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、フィコエリトリン、蛍光性のランタニド複合体、例えばユーロピウムおよびテルビウムなどの複合体;他の希土類元素も含むことができ、例えば、イッテルビウムおよびエルビウム(例えば、Corstjens, P. et al. Clin Chem 2001を参照のこと);発光材、例えばルミノール;光散乱またはプラズモン共鳴物質、例えば金または銀粒子または量子ドット;または放射性物質(14C、123I、124I、125I、131I、Tc99m、35Sまたは3Hまたは球面シェルなど)、および当業者に知られる他のいずれかのシグナル発生標識により標識されたプローブなどが含まれる。例えば、検出可能な分子には、フルオロフォアならびに例えば「Principles of Fluorescence Spectroscopy(蛍光分光法の原理)」、Joseph R. Lakowicz(編)、Plenum Pub Corp、第2版(1999年7月)およびRichard P. Hoaglandの「Molecular Probes Handbook(分子プローブハンドブック)」第6版に記載の当分野において知られる他のものが含まれるがこれらに限定されない。
【0066】
上記のように、特定の例において、標識は半導体ナノ結晶、例えば米国特許第6,207,392号明細書(参照によりその全体が組み込まれる)に記載のような量子ドット(Qdot)を含み得る。QdotはQuantum Dot Corporationから市販購入し得る。本発明の実施に有用な半導体ナノ結晶は、II-VI族半導体のナノ結晶、例えばMgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSeおよびHgTeならびにそれらの混合組成物、ならびにIII-V族半導体のナノ結晶、例えばGaAs、InGaAs、InPおよびInAsおよびそれらの混合組成物などである。IV族半導体、例えばゲルマニウムまたはケイ素の使用、または有機半導体の使用も、特定の条件下において実行可能であり得る。半導体ナノ結晶はまた、上記のIII-V族化合物、II-VI族化合物、IV族元素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される2以上の半導体を含む合金を含み得る。
【0067】
いくつかの実施態様において、蛍光エネルギーアクセプターを標識として検出プローブ(例えばディテクター分子とコンジュゲートした結合部分)に連結させてもよい。一実施態様において、蛍光エネルギーアクセプターは、一重項酸素と反応して蛍光性化合物を形成する化合物、または補助的化合物と反応してその後すぐにその補助的化合物が蛍光性化合物に変換される化合物として、形成され得る。他の実施態様において、蛍光エネルギーアクセプターは、化学発光体(chemiluminescer)も含む化合物の一部として組み込まれ得る。例えば、蛍光性エネルギーアクセプターは希土類金属、例えばユーロピウム、サマリウム、テルルなどの金属キレートを含み得る。これらの物質は発光のバンドがシャープであるので特に魅力的である。さらに、ランタニド標識、例えばユーロピウム(III)は、効果的な延長されたシグナル放出を生じ、光退色に耐性である。
【0068】
寿命の長い蛍光性のユーロピウム(III)キレートナノ粒子はまた、様々な不均一の(heterogeneous)および均一のイムノアッセイにおいて標識として適用可能であることが示されている。例えば、Huhtinen et al., Clin. Chem. 2004 October, 50(10): 1935-6を参照のこと。アッセイの性能はこれらの内因的に標識化されたナノ粒子を時間分解蛍光検出と組合せて用いると改善され得る。不均一のアッセイにおいて、低濃度におけるアッセイの測定範囲(ダイナミックレンジ)を拡張することができる。さらに、アッセイの速度論的な特徴は、従来の標識化検出抗体の代わりに検出抗体により被覆された高度に特異的な活性ナノ粒子標識を用いることにより改善することができる。均一なアッセイにおいて、ユーロピウム(III)ナノ粒子は、蛍光共鳴エネルギー移動における効果的なドナーであり、簡単で迅速なハイスループットスクリーニングを可能とすることが示されている。
【0069】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の標識(例えば蛍光標識)は、生体分子とコンジュゲートしたナノ粒子標識として形成し得る。言い換えると、ナノ粒子は検出プローブまたは捕捉プローブとともに用いることができる。例えば、サンプル中の特定の分析物を検出するための、タンパク質、例えばモノクローナル抗体またはストレプトアビジン(SA)と連結したユーロピウム(III)標識化ナノ粒子。従って、特定の例において、ユーロピウム(III)標識化ナノ粒子は本方法の実施において用いることができる(例えばナノ粒子に基づくイムノアッセイ)。例えば、本発明の様々な実施態様において、用いる標識はランタニド金属であり得る。ランタニドには、ユーロピウム、サマリウム、テルビウムまたはジスプロシウムが含まれるがこれらに限定されない。非特異的なバックグラウンドの蛍光はわずか約10 nsの減衰時間を有し、その結果、かかるバックグラウンドはサンプルの蛍光を測定する前に次第に消える。さらに、ランタニド-キレートは大きなストークスシフトを有する。例えば、ユーロピウムのストークスシフトほぼ300 nmである。励起と発光ピーク間のこの大きな差異は、蛍光測定がバックグラウンドの影響が最小である波長においてなされることを意味する。さらに、発光ピークは非常にシャープであり、これは検出器を非常に微細な限界に設定できること、および異なるランタニドキレートからの発光シグナルが互いに容易に区別できることを意味している。それ故に、一実施態様において、1以上の異なるランタニドを同じアッセイにおいて用いることができる。
【0070】
従って、本発明の方法は、合成結合単位(SBU)と結合し得る単位複製配列、例えば標識化単位複製配列を産生すること、および、単位複製配列のSBU部分が認識され、基質の表面上に固定化された合成捕捉単位(SCU)と結合するのに十分な条件において、標識化されたコンジュゲートした単位複製配列を基質の表面と接触させることを含み得、こうして、単位複製配列はSCUにより捕捉され、よって既知の位置に、すなわち、合成捕捉単位が合成結合単位と結合することにより固定化される。
【0071】
よって、検出すべき核酸の単位複製配列は、支持体物質の表面に固定化された相補的合成捕捉単位により特異的に認識される合成結合単位に連結している。上記のように、本明細書に記載の方法および装置に有用な合成結合単位(SBU)および合成捕捉単位(SCU)は、特異的分子の対形成が可能な分子単位であり得る。本明細書に記載の方法において用いられ得るSBU/SCUは、pRNA、pDNA、5'-5'逆位オリゴヌクレオチド、または2'-O-メチルオリゴヌクレオチドなど、例えば米国特許第5,750,669号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示のもののような分子種を含み得る。
【0072】
従って、本明細書に記載の方法は、単位複製配列を合成捕捉単位と合成結合単位との結合によって既定の位置に固定化するのに十分な条件下において、基質の表面を単位複製配列と接触させることを含み得る。合成捕捉単位と合成結合単位との結合は、上記のように標識化され得る合成指定可能複合体を生じ、それ故に検出可能である。ひとたび合成捕捉単位が合成結合単位に結合すると、次いで、結合した標識を検出するための当分野において知られるいずれかの適切な手段によって、単位複製配列と結合した検出可能部分が検出され得、これによりサンプル中の核酸の存在が示される。
【0073】
サンプル中の分析物の存在を検出する装置
上記のように、一側面において、本発明はサンプル中の分析物を検出する装置に関する。例えば、特定の実施態様において、本発明は、サンプル中の分析物、例えば単位複製配列の存在の有無を検出し、その結果、測定するのに用いるための試験装置を提供する。一般に、その試験装置は外側のケーシングおよび腔(cavity)またはルーメンおよび基質、例えば以下に記載するものを含み得る。
【0074】
外側のケーシングまたはハウジングは装置の本体を形成し、内部の基質も含み得、ここでその基質は下記のような試験ストリップを形成し得、それはハウジングの腔の中に存在し得る。本体はいずれかの適切な物質から作製され得、サンプルが接触する部分および読み取り結果の部分を含み得る。特定の実施態様において、試験ストリップと連結した本体はマトリックスを形成するように構成される。マトリックスは軸流の流路を規定し得る。マトリックスはサンプルを受けるゾーン、1以上の試験ゾーン、および必要に応じて1以上の対照ゾーンをさらに含み得る。特定の実施態様において、試験領域が含まれ、ここでその試験領域は試験および対照ゾーンを含み得、それは以下により詳細に記載するように指定可能なラインの形態であり得る。
【0075】
本明細書において試験装置の文脈において用いる場合に、「軸流膜」、「側方流動膜」または「マトリックス」なる用語は、文脈に応じて互換的に用いることができ、毛細管作用を利用してサンプル、例えば試験液体を移動または輸送することができ、または毛細管作用とは別の液体の移動(液体が気体の圧力、水圧の蓄積によってポンプのように送られるような)(ピストンまたはロータリー、蛇腹または他のタイプのポンプを用いるアッセイ流体に対する直接的なポンピング、電場、重力などによる静電気的な移動など)を用いる。
【0076】
いくつかの実施態様において、試験ストリップは試験膜基質を含み得る。試験膜基質の上流はウィッキング基質であり得る。試験膜基質の下流は、配置された別の基質、例えば吸収性の基質であり得る。吸収性の基質を製造するための適切な物質は、親水性ポリエチレン物質またはパッド、アクリル繊維、ガラス繊維、濾紙または濾過パッド、乾燥した紙、製紙パルプ、織物などを含むがこれらに限定されない。例えば、側方流動膜の吸収性ゾーンは、例えばスパンレースした不織のアクリル繊維、すなわち、New Merge(DuPontから入手可能)またはHDK材(HDK Industries, Inc.から入手可能)、不織ポリエチレンの疎水性を改善するように処理された不織ポリエチレンなどの材料から構成され得る。試験膜基質はウィッキング基質および吸収性基質の一方または両方のそれぞれとオーバーラップしてもよい、または隣接してもよい。
【0077】
例えば、マトリックスは試験膜基質の下流に配置された吸収性ゾーンを含んでもよく、ウィッキングパッドは試験膜基質の上流に配置できる。別の実施態様において、ウィッキングパッドは、以下に記載するように、サンプルを入れる開口部のすぐ下に配置してもよい。さらに、特定の実施態様において、試験膜は試験領域を含み得、それは試験および/または対照ゾーンを含み、窓のすぐ下に配置され、よって観察可能である。
【0078】
それ故に、本明細書に記載の方法に従って、試験装置を提供することができ、ここでその試験装置は、サンプルの受け入れ、およびサンプル中に存在する分析物(例えば1以上の単位複製配列)の検出に用いられるように構成される。特定の実施態様において、試験装置は試験ストリップを含み、試験ストリップは、装置の本体内に収容された側方流動膜をなどであり得る。試験装置はまた、試験ストリップ例えば側方流動膜の上流に位置するチャンバーを含み得、そのチャンバーは液体または溶液を含み得る。ギャップも存在し得、ここでギャップはチャンバーと試験ストリップ例えば側方流動膜の間に配置される。
【0079】
ギャップは試験ストリップとチャンバーの間で液体が連絡するのを防止するように形成され得る。特に、特定の実施態様において、本体のハウジングは押圧できるように構成され、これにより装置のチャンバー内の圧力を発揮させることができる。例えば、一実施態様において、この装置を用いて、チャンバーに隣接する外側のハウジング上に圧力をかけることができ、その圧力はギャップを隙間なく押し、こうしてチャンバーと試験ストリップ、例えば側方流動膜の間の液体の連絡が生じ、これによりチャンバー内の液体が試験ストリップと(例えば試験ストリップ上の試験領域に)接触することが可能となる。
【0080】
特定の実施態様において、ハウジングはまた、開口部を含み得る。例えば、ハウジングは近位末端および遠位末端を含み得、ここで開口部は装置の近位末端に存在し得る。開口部はサンプルを受け入れるように形成され得る。よって、装置の近位部分はサンプル受け入れ部と名付けてもよい。特定の実施態様において、開口部はサンプル収集装置(SCD)の部分と接触するように形成され得、その装置は取り外し可能なように試験装置と連結され、この連結により、サンプル収集装置内に含まれるサンプルの、SCDから試験装置への移動が可能となる。
【0081】
例えば、本発明の任意に選択できる側面において、サンプル収集装置(SCD)はサンプルを収集する、および/または試薬によって加工するのに用いることができ、例えば、特定の実施態様において、試薬はサンプルに捕捉部分および検出部分を組み込む。よって、本発明の様々な核酸検出系において、SCDが提供され得、ここでそのSCDは増幅のための試薬を含む1以上のチャンバーを含み、その試薬は合成結合単位、例えば(pRNA)とコンジュゲートした第1のプライマー、結合部分を含む第2のプライマー、およびサンプルがSCDに流し込まれれば増幅反応が起きるのに必要なDNAポリメラーゼおよびヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様において、SCDはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)熱サイクル増幅装置を行うためのサーマルサイクラーと連結するように設計し得る。次いでSCDからの加工されたサンプルは試験装置のサンプル受け入れゾーンに直接流し込むことができる。
【0082】
試験装置がディップスティック(dipstick)構造を含む実施態様において、ディップスティックの一部、例えば試験ゾーン上にサンプルを流し込むために、そのディップスティックをSCDの液体サンプル中に下げ入れることができる。さらに、試験装置は複数の分析物の検出が可能なように構成することができる。例えば、かかる分析物は種々の株および/またはそのサブタイプを含む1以上の感染性媒介物から得られうる。検出は1以上の分析物の定質的および/または定量的な測定を含み得る。分析物は複数のタイプの分析物、例えば以下に記載するようなタンパク質および核酸を含んでもよい。タンパク質の検出を望む場合、SCDは、サンプル中に存在することが疑われるタンパク質の検出手段および捕捉手段を提供する免疫反応性の試薬を含む1以上のチャンバーを含み得る。タンパク質検出のために設計されたSCDの例は、米国特許出願公開第2008/0199851号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0083】
従って、特定の実施態様において、開口部は試験ストリップの上に位置し、SCDと連結するとサンプルがSCDから試験装置に移動し、試験ストリップと接触するように構成する。例えば、特定の実施態様において、開口部はSCDの遠位末端を受けるように構成し、遠位末端は開口部にフィットする。特定の実施態様において、試験ストリップはウィッキング材を含み、ウィッキング材は開口部の下に位置し、サンプルが移動した際にサンプルを受けるように構成される。開口部はウィッキングパッドのすぐ上に配置し得、ウィッキングパッドはギャップの下流であるが、側方流動膜の上流に配置する。
【0084】
いくつかの実施態様において、試験装置は複数の窓を含む。例えば、本体は試験ストリップ、例えば側方流動膜を収容することができ、ここで本体は1つまたは複数の窓をさらに含み、窓を通して試験ストリップ、例えば側方流動膜が見える。本明細書に記載の特定の実施態様において、試験装置は、側方流動膜上に配置された試験ゾーンの上流または下流にウィッキング基質および吸収性の基質を含む側方流動膜を含む。いくつかの実施態様において、例えば、検出すべき分析物の数を増加させることが望まれる場合に、試験装置は複数の試験ストリップ、例えば複数の平行の試験ストリップを含んでもよく、ここで試験ストリップは、サンプルと接触する際に、サンプルがすべての試験ストリップ全体に流れるように装置内に配置する。
【0085】
いくつかの実施態様において、少量のサンプルを収集する例えばアーカイブに保存するための基質をSCDまたは試験装置内に提供する。一実施態様において、かかるアーカイブに保存する手段を提供する基質の参考例は、ある体積のサンプルを収集するフィルター、膜または紙である。サンプルを収集した後、収集用の基質は装置から取り除くことができる。
【0086】
さらに、いくつかの実施態様において、本明細書に記載のSCDおよび/または試験装置は1以上の同定可能なタグを含み得る。特定の例において、同定可能なタグは取り外すことができ、一方の装置から取り外し、別の装置に置くことができる。例えば、試験装置は同定ラベル、例えばバーコードを含んでもよく、その同定ラベルはSCD上の同一の同定ラベルとの同一性を確認し、それに対応するものであり、またその同定ラベルにより試験装置のロット番号を確認することもできる(例えば品質保証および追跡目的のために)。
【0087】
上記のように、本発明の一側面は装置、例えば試験装置であり、その装置は基質、例えば側方流動試験ストリップを含み、その基質は、必ずしも必要ではないが、ハウジングの中に入れてもよい。基質、例えば試験ストリップおよび/またはハウジングは、サンプルと接触し、サンプル中の分析物を検出するためのリーダーにより読み取られるように設計し得る。
【0088】
本明細書において用いる場合、基質は、試験ストリップとして形成することができ、捕捉部分(例えば上記のSCU)が例えば当分野における従来法を用いてそれと連結し、少なくともサンプルの一部がそれと接触する物体を意味する。様々な物質を基質として用いることができ、これには目的分子の付着のための支持体として働くことができるいずれかの物質が含まれる。かかる物質は当業者に知られており、以下を含むがこれらに限定されない:有機または無機ポリマー、天然および合成ポリマー(アガロース、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、他のセルロース誘導体、デキストラン、デキストラン誘導体およびデキストランコポリマー、他のポリサッカライド、ガラス、シリカゲル、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、レーヨン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリスチレンおよびポリスチレンコポリマー、ジビニルベンゼンなどと架橋結合したポリスチレン、アクリル樹脂、アクリレートおよびアクリル酸、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドブレンド、ビニルおよびアクリルアミドのコポリマー、メタクリレート、メタクリレート誘導体およびコポリマー、様々な官能基を有する他のポリマーおよびコポリマーを含むがこれらに限定されない)、ラテックス、ブチルゴムおよび他の合成ゴム、ケイ素、ガラス、紙、天然の海綿体、不溶性タンパク質、界面活性物質、赤血球、金属、メタロイド、磁性材料、またはストリップ基質の親水性を改善する材料により被覆された固体または半固体基質から構成される他の市販購入し得る媒体または複合材、例えば、ポリスチレン、マイラー(Mylar)、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリブチレン;デキストラン、界面活性剤、塩、PVPにより被覆し、および/または静電気またはプラズマ放電により処理して電荷を表面に加え、表面に親水性を与えた金属、例えば、アルミニウム、銅、スズ、または金属の混合物。
【0089】
一実施態様において、基質は上記のようなマトリックスを形成し、ここでマトリックスは多孔性の材料、例えば、Porex Technologies Corp.(Fairburn, Ga., USA)により製造されている高密度のポリエチレンシート材から作製される。そのシート材はオープンポア構造を有し、40%空隙容量において0.57 gm/ccの典型的な密度で、平均孔径は1〜250マイクロメーターである(平均は一般に3〜100マイクロメーターである)。別の実施態様において、基質は、多孔性物質、例えば、スパンレースした不織のアクリル繊維(サンプル受け入れゾーンと同様)、例えば、New MergeまたはHDK材から作製される。特定の例において、多孔性物質は、一般に水を通さない層、例えばマイラーによって裏打ちされ得る、またはそれらの上にラミネート加工され得る。裏打ちを用いる際、その裏打ちは一般に接着剤(例えば3M 444両面テープ)によってマトリックスにしっかり留められる。典型的には、水を通さない裏打ちは低い厚さの膜に用いられる。広範なポリマーを用いることができるが、アッセイ成分に非特異的に結合せず、液体サンプルの流れを妨げないことを条件とする。ポリマーの例にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが含まれる。
【0090】
特定の実施態様において、基質は上記のようなマトリックスを形成し、ここでマトリックスは自己支持型であってもよい。吸湿性でない(non-bibulous)流れを素直に受け入れる他の膜、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートのコポリマーおよび塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレンなども用いることができる。さらに別の実施態様において、マトリックスは、例えば、未処理の紙、セルロースブレンド、ニトロセルロース、ポリエステル、アクリロニトリルコポリマーなどの材料から作製される側方流動膜を形成する。
【0091】
上記のように、マトリックスはサンプル受け入れゾーンおよび試験ゾーンを含み得、ここで試験ゾーンは吸湿性のまたは非吸湿性の流れを提供するように構築され得、しばしば流れのタイプはサンプル受け入れゾーンの少なくとも一部において提供されるものに類似するまたは同一である。いくつかの実施態様において、試験ゾーンは不織布、例えば、レーヨンまたはガラス繊維から構成される。本発明の方法および装置に用いるのに適切な他の試験ゾーン材料には、米国特許第5,075,078号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のクロマトグラフィー材料が含まれる。
【0092】
一実施態様において、試験ストリップ基質は、物質遮断(material-blocking)剤および標識安定化剤を含む溶液により処理する。遮断剤には、牛血清アルブミン(BSA)、メチル化BSA、カゼイン、酸または塩基加水分解カゼイン、脱脂粉乳、魚のゼラチンなどが含まれる。安定化剤は容易に入手でき、当分野においてよく知られており、例えば標識化された試薬を安定化するのに用いられ得る。
【0093】
上記のように、基質は複数のゾーンを含み得、そのうちの1つは試験ゾーンであり得る。試験ゾーンは1以上のラインを含み得、そのラインは予め選択された捕捉部分(SCU)を含み、ここで予め選択された領域が、標識化された単位複製配列にコンジュゲートしたSBUのパートナーである捕捉部分を含む。いくつかの実施態様において、それぞれの単位複製配列は異なる波長を放出する蛍光性の標識にコンジュゲートする。ある試験ラインのSCUは、下記のように、異なる試験ラインのSBUと同じSBUを認識し得る、または異なるSBUを認識し得る。この様式において、試験装置はサンプル中の1つまたは複数の分析物について試験するおよび/または検出するのに用いられ得る。
【0094】
試験領域は1以上のゾーン、例えば試験ゾーンおよびサンプルの流れが期待通りであることを確認するのに有用な対照ゾーンを含み得る。それぞれの対照ゾーンは空間的に別々の領域を含み得、その領域は標識化された対照試薬と反応する特異的結合対の固定化されたメンバーを含み得る。一実施態様において、対照ゾーンは目的の単位複製配列またはそのフラグメントの標準品を含み得る。別の実施態様において、対照ゾーンはラインを含み得、そのラインは標識化された試薬に特異的な、あるいは標識化された試薬の固定化を行う抗体を含む。工程中に、標識化された試薬は1以上の対照ゾーンのそれぞれに拘束され得る。
【0095】
試験領域は単一のまたは複数の分析物を検出するために構成され得る。従って、特定の実施態様において、本発明の特定の技術的実施態様は不均一の検出装置および方法であり、ここでは複数の分析物が検出され得る。従って、試験装置の基質の試験領域は、サンプル中の1以上のタイプの分析物を定量的または質的に検出するための、1以上の規定の分析物検出ゾーンを含み得る。
【0096】
例えば、いくつかの実施態様において、合成結合単位は単位複製配列に結合し得、相補的な合成捕捉単位は、基質上の既定の位置のラインまたはスポット上に固定し得る。上記のように、合成結合単位はパートナーまたは相補的合成捕捉単位に特異的である(例えば相補的pRNAに特異的なpRNA)。一実施態様において、試験装置は、サンプル中の複数の種々のタイプの分析物を検出するための種々の合成捕捉単位の組合せを含む。それ故に、2つの合成指定可能単位が基質上、例えば試験ストリップ上に配置される様々な実施態様において、それぞれは異なる相補的合成結合単位に特異的であろう。
【0097】
例えば、2つのpRNAの指定可能なラインに関して、それぞれのラインは、異なる分析物(例えば、インフルエンザB型に由来する分析物とインフルエンザA型に由来する分析物)に結合した相補的配列のpRNAに特異的に結合するであろう異なる配列を有するpRNAを含み得る。よって、一実施態様において、試験装置の基質は1、2、3、4、5、6、7または8の指定可能な試験ラインを含む試験ストリップであり得る。
【0098】
上記のように、一側面において、本発明はサンプル中の分析物を検出するための系に関する。例えば、特定の実施態様において、本発明は、サンプル中の分析物を検出するための、必要に応じてサンプル収集装置と連結した試験装置に関する。本発明の系および方法は、リーダーと組み合わせた上記のような試験装置の使用をさらに含み、そのリーダーは試験装置からシグナルの有無を検出することによってシグナルを読み取るように構成され得、そのシグナルは試験されるサンプル中に1以上の分析物が存在することを示し、これにより試験されるサンプル中の1以上の分析物の有無が示される。
【0099】
リーダーは、試験装置上の部位の検出可能部分により生じるシグナルを検出するように構成され得、ここで目的の分析物は合成指定可能複合体により捕捉される。単位複製配列が合成の指定可能な複合体により試験ストリップ上に固定化され、単位複製配列がビオチン-ストレプトアビジンコンジュゲートユーロピウム標識を含む実施態様において、リーダーは試験装置上の単位複製配列の存在と位置を、ユーロピウム標識により生じたシグナルを読み取ることにより測定するように構成される。いくつかの実施態様において、リーダーは固定化された単位複製配列により生じたシグナルの定量的な量を検出するようにさらに構成される。
【0100】
特定の実施態様において、リーダーは反射率および/または蛍光性に基づくリーダーであり得、コンピュータ、例えばビルトインコンピュータを含み得る。コンピュータはデータ処理ソフトウェアを含み得、そのソフトウェアはデータ整理削減および曲線適合アルゴリズムを利用し得、必要に応じて生物学的サンプル中の分析物の存在および/または濃度を正確に測定するために訓練されたニューラルネットワークと組み合わせる。本明細書において用いる場合、リーダーは例えば試験装置内に含まれる試験ストリップ上のデータを検出するおよび/または定量化する装置を意味する。データは肉眼で見えるものであってもよいが、見ることができる必要はない。
【0101】
従って、本明細書に記載の系を用いる方法は、患者サンプル上においてイムノアッセイを行う工程、例えば、本明細書に記載のような試験装置を用いて、反射率および/または蛍光性に基づくリーダーを用いてデータを読み取り、得られたデータをデータ整理削減を採用するデータ処理ソフトウェアを用いて処理する工程を含み得る。典型的なソフトウェアは、必要に応じて訓練されたニューラルネットワークと組み合わせて、曲線適合アルゴリズムを含み、与えられたサンプル中の分析物、例えば増幅産物の存在または量を測定する。次いで、リーダーから得られたデータは、出力データを読み取ることができる医学診断系プログラムまたは人によってさらに処理し得、出力として病状のリスクアセスメントまたは診断を提供し得る。別の実施態様において、出力は、その後の判定支持系、例えばかかるデータを評価するように訓練されたニューラルネットワークへの入力として用いることができる。
【0102】
上記のように、リーダーは本発明の合成指定可能反応産物を含有する基質と相互作用するように構成され、その基質は本明細書に記載のような試験装置の一部を形成し得る。例えば、一実施態様において、リーダーは基質および/または基質を含む試験装置を受け入れるように設計された受け入れポートを含み得る。特定の実施態様において、受け入れポートは、サンプルを入れる開口部の上流の押圧が可能な(例えば押しボタン)手段が押され、それにより試験装置が受け入れポート内に適切にフィットするようになる時にのみ、試験装置の受け入れポートへの挿入が起こり得るようなものである。試験装置の試験ゾーンにおいて生じたシグナルを読み取るように構成されたリーダーも提供され得る。
【0103】
様々な実施態様において、リーダーは、例えば試験装置の基質から検出されるべきシグナルに依拠して、反射率、透過率、蛍光、化学-生物発光、磁力または電流測定リーダー(または2以上の組み合わせ)であり得る。(例えばLRE Medical, USA)。一実施態様において、リーダーは蛍光シグナルを検出するUV LEDリーダーである。蛍光シグナルは、光学スペクトルのUV領域内かつ蛍光シグナル(例えばランタニド標識)の吸光ピーク内の光を放出する発光ダイオードにより励起し得る。
【0104】
放出された蛍光シグナルは光ダイオードにより検出され得、検出されたシグナルの波長は、迷光(stray emitted light)を遮断し蛍光放出標識のピーク放出波長とその周辺の波長を有する光を受け入れるロングパスフィルターを用いて限定され得る。他の実施態様において、ロングパスフィルターはバンドパスフィルターと置き換えてもよい。さらに、励起光はバンドパスフィルターにより限定され得る。別の実施態様において、ダイオードはUVレーザーダイオードである。いずれかの従来のUV、LEDまたは光ダイオードを用いることができる。一実施態様において、リーダーは受け入れポートによって試験装置と適合する。
【0105】
一実施態様において、本発明の系は、サンプル中のタンパク質と核酸の両方を検出する。タンパク質の検出は米国特許出願公開第2008/0199851号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。合成結合単位、例えば抗原に特異的な抗体にコンジュゲートしたpRNAを用いる抗体媒介性の系によるタンパク質の検出;およびSBUとコンジュゲートした本明細書に記載の単位複製配列を調製することによる特異的核酸の検出、の両方のためにサンプルを調製することができる。両工程は単一工程で実行することができる。両工程は本発明によるサンプル収集装置において実行し得る。次いで調製されたサンプルは試験ストリップに適用でき、サンプル中の特異的核酸と特異的タンパク質の両方の存在はSBU-SCU媒介性の結合によって検出される。
【0106】
特定の実施態様において、検出すべき核酸は増幅されずに、むしろ直接検出される。例えば、特定の実施態様において、ひとたびサンプル、例えば血液または組織サンプルが得られれば、そのサンプルを、サンプル内、例えば検出すべき目的の核酸内から核酸を解放することができる物質により処理してもよい。例えば、サンプルは細胞サンプルであり得、細胞サンプルは、核酸、例えばDNAまたはRNAを溶液中の細胞内から解放するために、非イオン性界面活性剤などの物質と接触させてもよい。
【0107】
次いで、1以上の、例えば対のオリゴヌクレオチドをその溶液に加えてもよく、ここでそのオリゴヌクレオチド対は、解放された検出すべき核酸の少なくとも一部に相補的な結合領域を含む、例えばオリゴヌクレオチド対のそれぞれのメンバーが検出すべき核酸内の核酸配列に相補的な互いに異なる結合領域を含む(例えば、2つの結合領域は検出すべき標的核酸の2つの異なる領域に相補的である)。この例において、一方のオリゴヌクレオチド核酸配列は結合単位として機能し、他方は標識化単位として機能する。
【0108】
例えば、一方のオリゴヌクレオチドは配列、例えば、上記のように基質に固定化された捕捉単位の配列に相補的な結合領域(例えば相補的核酸)をさらに含み得る。さらに、他方のオリゴヌクレオチドは検出部分を含み得る。この様式において、検出すべき核酸は、例えば溶液中において、結合単位核酸と標識化単位核酸の両方と接触し得、目的の核酸配列の固定化および検出のために基質上に固定化された捕捉単位核酸とさらに接触し得る。従って、目的の核酸がひとたび固定化されると、次いでその核酸は上記に記載のように、例えば検出部分の検出によって検出され得る。
【0109】
さらに、上記のように、本発明の試験装置はサンプル中の核酸とタンパク質の両方を検出するために形成し得、これに関連して、核酸とタンパク質は同じサンプルから得られうる。従って、サンプルが組織サンプルであり、ウイルス感染した細胞を含む場合、例えば、用いられるアッセイおよび試験装置は2つの異なる分類の分析物、例えば核酸およびタンパク質の検出を含み得る。例えば、核酸、例えばウイルスのRNAなど、ならびにタンパク質、例えばサンプルを得た対象に由来する抗体を検出し得る。
【0110】
様々な分析物が本発明の方法、装置および系を用いてアッセイされ得る。サンプル中の目的の1以上の分析物をアッセイするのに有用な特定の装置において、目的の分析物の収集物はパネルと称され得る。例えば、パネルはいずれかの組合せの分析物、例えば核酸および/またはタンパク質、例えば、インフルエンザA型、インフルエンザB型、インフルエンザA型の亜型、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、アデノウイルス、種々の型のパラインフルエンザウイルス(例えば1型、2型、3型など)、HIV変異体、A型、B型およびC型肝炎および他のウイルス物質(またはその全て)に特異的な抗原および核酸を含み得る。別のパネルは、例えば肺炎連鎖球菌、肺炎マイコプラズマおよび/またはクラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)などの1以上の上気道感染症を選択するための試験を含み得る。さらに別のパネルを、例えば、クラミジア属(Chlamydia)感染症、トリコモナス属(Trichomonas)感染症および/または淋病(Gonorrhea)などの性感染症を診断するために考案することができる。
【0111】
それぞれの場合において、特別の一連の分析物について、試験装置上にシグナルを提供するように考案する特定のパネルは、本明細書に記載のSCDおよび/または試験装置に種々の組の検出プローブおよび捕捉プローブを組み込むことによって容易に得ることができる。それ故に、特定のSCD/試験装置は、目的の分析物に特異的な検出試薬を有する基質例えば試験ストリップを採用する試験装置を用いる場合に検出することができる、1つのまたは特定のパネルの核酸および/またはタンパク質を検出するのに必要な全ての試薬を提供するであろう。
【0112】
よって、単一の試験装置を、異なるパネルの分析物のための試薬を含有するSCDと連結して用いることができ、これにより効率および対費用効果が向上する。例えば、パネルは、様々な他の目的分析物を必要に応じて含み得、例えば以下のパネルなどがある:呼吸器媒介物、例えばインフルエンザA型、インフルエンザB型、呼吸器多核体ウイルス、SARS関連コロナウイルスなどの選択を含む呼吸器パネル;B型肝炎表面抗原または抗体、B型肝炎コア抗体、A型肝炎ウイルス抗体、およびC型肝炎ウイルスの選択を含む肝炎パネル;抗カルジオリピン抗体(IgG、IgAおよびIgMアイソタイプ)の選択を含むリン脂質パネル;リウマチ因子、抗細胞核抗体、および尿酸の選択を含む関節炎パネル;エプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr)核抗原、エプスタイン・バーウイルスのカプシド抗原、およびエプスタイン・バーウイルス早期抗原の選択を含むエプスタイン・バーパネル;他のパネルにはHIVパネル、ループスパネル、ピロリ菌(H. Pylori)パネル、トキソプラズマパネル、ヘルペスパネル、ボレリアパネル、風疹(rubella)パネル、サイトメガロウイルスパネルなどがある。
【0113】
本発明は、本明細書に記載の方法および系とともに用いるキットを提供する。キットは基質、例えば側方流動ストリップを含む試験装置を含み得る。試験装置は試験装置本体および本体内に配置され、本体の単一のまたは複数の窓を介して曝され得る基質、例えば側方流動膜を含み得る。基質は、側方流動膜によって連絡している吸収パッド(吸収パッドはウィッキング材を含み、上記の複数の窓の上流に位置する);側方流動膜によって連絡しているサンプルパッド(サンプルパッドは吸収材を含み、上記の複数の窓の下流に位置する);および複数の指定可能なライン(それぞれのラインはそのラインに固定化された合成指定可能単位を有し、それぞれの合成指定可能単位は標的分析物にコンジュゲートした合成結合単位と特異的に結合することができる)を含み得る。
【0114】
いくつかのキットにおいて、必要に応じて合成結合単位と検出可能部分をコンジュゲートするための試薬および酵素を含むサンプル収集装置を提供する。いくつかのキットのSCDは、反応混合物の試験装置への移行を促進するために、試験装置に連結するように構成し得る。キットは検出可能な標識、例えば、ストレプトアビジンがコンジュゲートしたユーロピウムなどをさらに含み得る。キットは本発明によるキットの構成要素の操作のための取扱説明書を含み得る。さらに、キットは試験装置において生じたシグナルを検出するためのリーダーを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は本発明によるアッセイフォーマットを示す。
【図2】図2は本発明による典型的なワークフローを示す。
【図3】図3Aは対照オリゴヌクレオチド対との反応からの結果を示し、その結果を図3Bにまとめている。
【図4】図4Aは、逆転写酵素PCRにより作製されたFA単位複製配列を用いる検出方法の結果を示す。その結果を図4Bにまとめる。
【図5】図5Aは、同じまたは異なる条件下における単位複製配列とSA-Euビーズとの反応からの結果を示す。その結果を図5Bにまとめる。
【図6A】図6A-6Cは、FluストリップとBSAストリップの両方について、1xPCR中の単位複製配列およびLF2中のSA-Euビーズの条件下における、FA単位複製配列に対する検出感受性を示す。その結果を図6Aに示す。その結果を図6Bにまとめ、図6Cにグラフとして示す。
【図6B】図6A-6Cは、FluストリップとBSAストリップの両方について、1xPCR中の単位複製配列およびLF2中のSA-Euビーズの条件下における、FA単位複製配列に対する検出感受性を示す。その結果を図6Aに示す。その結果を図6Bにまとめ、図6Cにグラフとして示す。
【図6C】図6A-6Cは、FluストリップとBSAストリップの両方について、1xPCR中の単位複製配列およびLF2中のSA-Euビーズの条件下における、FA単位複製配列に対する検出感受性を示す。その結果を図6Aに示す。その結果を図6Bにまとめ、図6Cにグラフとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0116】
実施例
さらに詳細に記載せずとも、当業者は上述の記載を用いて、本発明を最大限に利用することができると考える。以下の実施例は単なる例証であり、どのような場合も決して本開示の他の部分を限定するものではない。
【実施例1】
【0117】
pRNAに基づく合成結合系およびユーロピウム標識を用いる検出
典型的な実施態様において、本方法はpRNA技術およびユーロピウムビーズを用いて側方流動ストリップ上の核酸を検出する。そのストリップはサンプルパッド、ニトロセルロース(NC)膜および吸収パッドを含む3つの異なる材料からなる。1以上の特有の合成ヌクレオチドpRNAポリマー(SCU)をタンパク質(例えばイムノグロブリン)と連結させ、次いで特異的試験ラインを形成するNC膜上にスポットする。PCR単位複製配列を修飾されたプライマーの対を用いて作製する(そのうち一方のプライマーはNC膜(SCU)上のpRNAに相補的であるpRNA(SBU)の1タイプとコンジュゲートし、他方のプライマーはビオチン化されている)。ストリップをPCR単位複製配列およびストレプトアビジンにより被覆されたユーロピウムビーズを含有するサンプル中に浸け、室温にて15分間インキュベートする。次いでストリップの膜上において、特異的試験ラインに蛍光性のユーロピウムビーズの蓄積を導くpRNAとユーロピウムビーズとの間の架橋を介して、UV光下にて単位複製配列の存在を検出する。モデル標的としてインフルエンザA型を用いると、本方法の検出限界は0.005ng/μL(=30 amol/μL)である。この感度はインフルエンザA型のNC400マイクロアレイに基づく試験よりも50倍高い。
【0118】
本発明によるアッセイフォーマットを図1に示す。試験装置はディップスティックの形態の試験ストリップを含む。試験ストリップはサンプルパッドを含み、ここに本発明の方法により作製された単位複製配列のサンプル溶液を適用する。試験パッドに隣接し、サンプルパッドの遠位に位置する吸収パッドによって、サンプルパッドに適用されたサンプルが試験ストリップの試験パッド部分を通って横切ることとなる。あるいは、ディップスティックを単位複製配列を含有する溶液中に浸けてもよい。ニトロセルロース(NC)試験パッドはFAと名付けられた特定のラインに沿って固定化された非特異的IgG-pRNAコンジュゲート(4b8-In)のラインを含む。FAはインフルエンザA型DNAのためのプライマー(4a9-In pRNA-FAリバースプライマー)にコンジュゲートしたpRNA SBU配列に相補的なpRNA SCU配列に相当する。FB、H1/H3、H5および膜対照に対応する他のラインもNC試験パッド上に配置する。
【0119】
インフルエンザA型配列を含有する単位複製配列がビオチン化フォワードプライマー(ビオチン-FA)および4a9-In pRNA-FAリバースプライマーを用いて作製されると、単位複製配列はFAラインに付着し、ユーロピウムにコンジュゲートしたストレプトアビジンのビーズ(SA-ユーロピウムビーズ)によって可視化される。対照は、図1に示すように、FA IgG-pRNAラインに付着するFAリバースプライマーに相補的なビオチン化されたオリゴヌクレオチドを、リバースプライマーとの直接の結合およびビオチンとの結合を介したSA-ユーロピウムビーズとの結合によって利用する。
【0120】
本発明によるワークフローを図2に示す。典型的なサンプル調製反応は、40 μlの緩衝された反応体積を含み、ここで増幅反応はサンプル(インフルエンザA型)DNA、4a9-In pRNA-FAリバースプライマーおよびビオチン化されたフォワードプライマー(ビオチン-FA)および適切な酵素、および試薬(NTP)を用いて行う。さらにビオチン化フォワードプライマーとの結合のために10μLのSA-Euビーズを加える。いくつかの実施態様において、熱サイクルを増幅のために用いる場合にSA-Euビーズを増幅反応の後に加えてもよい。増幅およびSA-Euビーズの結合の後に、図1に関連して記載したような試験ストリップのサンプルパッド部分をサンプル溶液に浸ける。
【0121】
指定可能なSCUラインへの結合は15分のインキュベーション期間内に完了し、結合したEu標識はUV光への曝露により可視化される。挿入された試験ストリップにフィットするように設計したリーダーにより試験ストリップをスキャンし、図6に示すように標識の位置を測定する。
【0122】
以下のオリゴヌクレオチドおよびプライマーミックスを典型的な実施態様に用いた:
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
以下の緩衝液を典型的な実施態様において用いた:
【表3】

【0125】
以下のビーズを典型的な実施態様において用いた:
【表4】

【0126】
以下の試験ストリップを典型的な実施態様において用いた:
【表5】

【実施例2】
【0127】
対照反応イオン対についての検出結果
ビオチン化された相補的オリゴヌクレオチドおよびIgG-pRNAに結合する4a9-In pRNA-FAリバースプライマーを含む対照オリゴヌクレオチド対(インフルエンザA型DNAの単位複製配列はない)を以下のように加工した。
【0128】
25μMの対照オリゴヌクレオチド対を1xPCR緩衝液II中、室温にて約45分間インキュベートした。反応物をLF緩衝液1中に10、1、0.5、0.25、0.125および0.1 pmol/試験(pmol/40 μL)に希釈した。SA-EuビーズをLF緩衝液1中に2 μg/試験(2 μg/10μL)に希釈し、4パルスについて1秒間超音波処理した。40μLのサンプルおよび10μLのSA-Euビーズ懸濁物をサンプルチューブに移した。試験ストリップのディップスティックを各チューブに挿入し、15分間室温にてインキュベートした。各ディップスティックをUV光下においてEu結合の存在についてチェックした。各ディップスティックをfluID(商標)リーダーによる読み取りに適するカセットに挿入し、スキャンデータを分析した。
【0129】
スキャンからのデータを図3Aに示し、その結果を図3Bにまとめる。
【実施例3】
【0130】
FA単位複製配列についての検出結果
FA単位複製配列を10、100および1000コピーの転写物を含む逆転写酵素PCR(RT-PCR)反応によって作製した。単位複製配列濃度をキャピラリー電気泳動系を用いて測定し、以下の表に記載した。
【0131】
【表6】

【0132】
FA単位複製配列をLF緩衝液1中に1/10、1/100および1/1000倍に希釈した。SA-EuビーズをLF緩衝液1中に2 μg/試験(2 μg/10μL)に希釈し、4パルスについて1秒間超音波処理した。40 μLのサンプルおよび10μLのSA-Euビーズ懸濁物をサンプルチューブに移した。試験ストリップのディップスティックを各チューブに挿入し、室温にて15分間インキュベートした。各ディップスティックをUV光下においてEu 結合の存在についてチェックした。各ディップスティックを液体リーダーによる読み取りに適するカセット内に挿入し、スキャンデータを分析した。
【0133】
結果を図4A-4Bに示す。スキャンデータを図4Aに示す。シグナルは4b8-In pRNAをスポットした特異的試験ライン上にのみ検出された。4b8-In pRNAは4a9-In pRNAに相補的である。シグナルは、図4Bに示すように、ビオチン化InfAf02および4a9-In pRNA-DNAを含有するプライマーミックス2から作製された単位複製配列についてのみ検出できた。予期した通り、プライマーミックス1、ミックス3およびミックス4から作製された単位複製配列についてはシグナルは検出されなかった。
【実施例4】
【0134】
種々の緩衝条件を用いたFA単位複製配列の検出結果
単位複製配列およびビーズのための種々の緩衝条件を用いてFA単位複製配列を以下の表に従って試験した。
【表7】

【0135】
リーダーからのスキャン結果を図5Aに示し、図5Bにまとめる。
【実施例5】
【0136】
条件5下におけるFA単位複製配列についての検出感度
条件5(1xPCR中の単位複製配列およびLF2中のSA-Euビーズ)下におけるFA単位複製配列についての検出感度をIgGベースのストリップおよびBSAベースのストリップの両方について測定した。結果を図6Aに示す。結果を図6Bにまとめ、図6Cにグラフとして示す。
【0137】
条件5下における、IgGストリップおよびBSAストリップの両方が、NC400(0.25 ng/μL)マイクロアレイに対して50倍感度が高い0.005 ng/μLにてFA単位複製配列を検出できた。各ストリップについて40 μLの単位複製配列を用いると、感度は0.2 ng/ストリップまたは1.2 fmol/試験である。この感度は文献、例えば、側方流動クロマトグラフ系(Carter, D.J. and R. B. Cary. Nucleic Acids Research, 2007. 35: e74)に報告されているものと匹敵する、または乾燥試薬ディップスティック系(dry reagent dipstick system)(Kalogianni, D.P., et al. Nucleic Acids Research, 2007. 35: e23)よりも高い。
【実施例6】
【0138】
代表的な合成結合単位
合成結合単位として機能できる3タイプの配列は、pRNA、5'-5'逆位DNA配列および2'-O-メチルオリゴヌクレオチドである。それぞれの典型的な例を以下の表8に示す。
【0139】
【表8】

【実施例7】
【0140】
オリゴヌクレオチド-ユーロピウム錯体の合成
アミン修飾オリゴヌクレオチドとイソチオシアネート誘導体化ユーロピウム錯体を塩基性条件下において室温にて混合することによりオリゴヌクレオチド-ユーロピウムコンジュゲートを合成する。大環状分子からユーロピウムが解離する(錯体化が解除する)のを防ぐために、重炭酸ナトリウム緩衝液の代わりにヒンダードアミン塩基であるトリエチルアミンを用いる。反応の完了後に過剰な金属錯体およびトリエチルアミンを分子ふるいクロマトグラフィーによって除去した。錯体化していないものからオリゴヌクレオチド-ユーロピウムコンジュゲートをPAGEにより分離した。錯体化していないコンジュゲートはメタレート化(metallated)コンジュゲートよりも速いゲル移動度であった。分布位置をMALDI-TOF質量分析により確認した。BF Baker, et al. Nucleic Acids Research, Vol. 27, Issue 6 1547-1551, (1999)。
【実施例8】
【0141】
ユーロピウムがコンジュゲートしたストレプトアビジン
タンパク質および核酸単位複製配列の両方の結合検出は、ユーロピウムがコンジュゲートしたストレプトアビジン(Perkin-Elmer, Boston, MA)によって検出されるビオチン化プローブに基づく。ウェルの蛍光を340/612 nm(励起/放出)の時間分解蛍光の設定を用いてリーダーによって読み取る。Knopf HP, J Immunol Methods. 1991 Apr 25;138(2):233-236を参照のこと。
【0142】
本明細書に引用される全ての刊行物および特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれるために具体的におよび個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
上述の発明を理解を明確にするために図解および実施例によりいくらか詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく本発明の教示に特定の改変および修飾を成し得ることは、本発明の教示を踏まえた当業者にとって容易に明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の迅速な検出法であって、以下の工程を含む方法:
(a)第1の合成結合単位(SBU)にコンジュゲートした第1のプライマーおよび第1の検出可能部分に直接的にまたは間接的にコンジュゲートした第2のプライマーを用いて作製した1以上の核酸単位複製配列を含むサンプルを提供する工程;
(b)基質上の表面であって、その表面上の既定の位置に固定された第1の合成捕捉単位(SCU)を含む表面を提供する工程、ここで第1の合成捕捉単位(SCU)は選択的かつ可逆的に第1の合成結合単位(SBU)と結合するが、第1の合成捕捉単位または第1の合成結合単位は単位複製配列を作製するのに用いられる増幅反応に関与しない;
(c)単位複製配列が第1の合成捕捉単位および第1の合成結合単位の間の結合によって既定の位置に固定される条件下において、該表面と単位複製配列とを接触させる工程;および
(d)既定の位置の第1の検出可能部分の存在を検出することによって核酸の存在を検出する工程。
【請求項2】
前記表面が試験パッドに隣接してサンプルパッドを含む側方流動膜であり、該表面がサンプルパッドにおいて単位複製配列と接触し、ここで試験パッドとサンプルパッドは流動可能なように連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程をさらに含む、請求項1に記載の方法:
前記表面に隣接するサンプルパッドを提供する工程、ここでサンプルパッドと接触したサンプルは該表面に流れることができる;
必要に応じて、試験パッドに隣接する吸収パッドを提供する工程、ここで吸収パッドはサンプルパッドに対して遠位である;
該表面に側方流動が起こるようにする条件下において、単位複製配列を含むサンプルをサンプルパッドに適用する工程;
SBU配列と該表面上に固定化されたSCU配列との間のハイブリダイゼーションによって該表面上の既定の位置に核酸が固定化される工程;および
既定の位置における検出可能部分の存在を検出することによって核酸の存在を検出する工程。
【請求項4】
サンプル中の核酸およびタンパク質抗原を同時に検出するための、以下の工程をさらに含む請求項1に記載の方法:
(e)少なくとも1つの標的抗原の存在について試験するサンプルを、以下を含む複数の試薬を含む溶液と混合して混合物を形成する工程:
(i)標的抗原に特異的に結合する第1の抗体および第2の合成捕捉単位(SCU)に特異的に結合する第2の合成結合単位(SBU)を含む抗体-合成結合単位コンジュゲート、および、
(ii)標識化された第2の抗体、ここで該第2の抗体は、標的抗原が第1の抗体と結合している場合を含め、同じ標的抗原に特異的に結合し、該第2の抗体は第2の検出可能部分によって標識化される;
(f)該混合物および単位複製配列溶液を複数の検出領域を含む側方流動膜に適用する工程、ここで該検出領域のそれぞれには第1のまたは第2の合成捕捉単位が固定化されている;
(g)該混合物および単位複製配列溶液を膜を横切って流す工程、これにより第1のまたは第2の合成捕捉単位は、該合成捕捉単位が方向付けられている第1のまたは第2の合成結合単位を有する複合体を捕捉する;および
(h)少なくとも1の該検出領域における第1のおよび第2の検出可能部分の存在について膜をスキャニングする工程、ここで第1のまたは第2の検出可能部分が検出されることは該サンプル中に標的核酸または標的タンパク質が存在することを示す。
【請求項5】
単位複製配列がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
以下の工程をさらに含む請求項1に記載の方法:第1のSBUにコンジュゲートした第1のプライマーを用いて核酸を増幅する工程、ここで第1のSBUはネイティブの核酸に結合しない。
【請求項7】
合成捕捉単位および合成結合単位が相補的なpRNA配列である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
検出可能部分が以下からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法:フルオロフォア、発色団、金属、量子ドット、酵素、電気化学的部分、放射性部分、リン光発光基、化学発光部分、親和性リガンド、重原子、ナノ粒子光散乱標識、ストレプトアビジン/ビオチン、またはアビジン/ビオチン、または抗原/抗体を含む複合体を形成することができる結合対のメンバー、ランタニド、ユーロピウムビーズおよびそれらの組み合わせ。
【請求項9】
検出可能部分がストレプトアビジンとコンジュゲートしたユーロピウムビーズを含み、単位複製配列または抗原-抗体がビオチンとコンジュゲートしている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面が試験パッドに隣接するサンプルパッドを含む側方流動膜であり、該表面がサンプルパッドにおいて単位複製配列と接触し、試験パッドおよびサンプルパッドが流動可能なように連結されている、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
以下の工程をさらに含む、請求項10に記載の方法:試験パッドに隣接する吸収パッドを提供する工程、ここで吸収パッドはサンプルパッドに遠位である。
【請求項12】
サンプルパッド、表面および必要に応じて吸収パッドが側方流動試験ストリップを構成し、前記方法が、既定の位置において検出可能部分の存在を検出することにより核酸の存在を検出するために検出装置によって側方流動試験ストリップをスキャニングする工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面がニトロセルロースを含み、第1のまたは第2の合成捕捉単位がタンパク質とコンジュゲートしている、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質がイムノグロブリンおよびBSAからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
合成捕捉単位が表面上の既定の試験ラインに沿って固定化される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
合成捕捉単位が前記表面上の既定の試験スポットに沿って固定化される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1の合成捕捉単位および合成結合単位が、ピラノシルRNA(pRNA)配列、2'-O-メチルオリゴヌクレオチド配列および5'-5'逆位核酸配列からなる群から選択される相補的配列を含む、請求項1〜4のいずれかに記載されている合成捕捉単位および合成結合単位。
【請求項18】
前記サンプルがウイルス、細菌、真菌類および寄生生物から選択される感染性媒介物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
感染性媒介物が、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、HIVの一種、肝炎ウイルスの一種、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、百日咳菌、肺炎マイコプラズマおよびコクシジオイデス・イミチスの株からなる群から選択される、請求項18に記載されているサンプル。
【請求項20】
以下を含む試験装置:
(a)試験装置本体;
(b)本体中にあり、本体の単一のまたは複数の窓を介して曝されている側方流動膜;
(c)側方流動膜と流動可能に連絡しており、ウィッキング材を含み、該複数の窓の上流に位置する吸収パッド;
(d)側方流動膜と流動可能に連絡しており、吸収材を含み、該複数の窓の下流に位置するサンプルパッド;および
(e)複数の指定可能なライン、ここでそれぞれのラインには合成捕捉単位が固定化されており、それぞれの合成捕捉単位はサンプルからの標的分析物にコンジュゲートした合成結合単位と特異的に結合することができる。
【請求項21】
側方流動ストリップが検出装置によるスキャニングに適している、請求項20に記載の試験装置。
【請求項22】
少なくとも1の合成捕捉単位および合成結合単位がピラノシルRNA(pRNA)配列、2'-O-メチルオリゴヌクレオチド配列および5'-5'逆位核酸配列からなる群から選択される相補的配列を含む、請求項20に記載の試験装置。
【請求項23】
前記サンプルがウイルス、細菌、真菌類および寄生生物から選択される感染性媒介物を含む、請求項20に記載の試験装置。
【請求項24】
感染性媒介物が、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、HIVの一種、肝炎ウイルスの一種、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、百日咳菌、肺炎マイコプラズマおよびコクシジオイデス・イミチスの株からなる群から選択される、請求項20に記載の試験装置。
【請求項25】
標準化のための対照試薬と結合する対照スポットまたは対照ラインをさらに含む、請求項20に記載のの試験装置。
【請求項26】
複数の指定可能なラインが複数の異なる捕捉物質を含む、請求項20に記載の試験装置。
【請求項27】
前記複数の異なる捕捉物質が、異なる合成結合単位を認識し結合する、請求項26に記載の試験装置。
【請求項28】
それぞれの異なる合成結合物質が異なる検出部分にコンジュゲートする、請求項27に記載の試験装置。
【請求項29】
それぞれの異なる検出部分が、励起すると検出装置により検出可能な異なる波長の光を放出する異なる蛍光性標識を含む、請求項28に記載の試験装置。
【請求項30】
請求項24に記載の側方流動試験装置およびストレプトアビジンがコンジュゲートした検出可能な標識を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2010−148494(P2010−148494A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−219279(P2009−219279)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(509264936)ネクサス・ディーエックス・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Nexus Dx, Inc.
【Fターム(参考)】