説明

サンプル情報取得装置

【課題】複数のサンプルを載置する構成とした場合であっても、装置の大型化、複雑化、および高コスト化を最小限に抑える。
【解決手段】サンプル情報取得装置1は、筐体45と、筐体45内に設けられた、複数の基板31を載置するキャリア30と、基板31の情報を光学的に読み取る光学系60とを有する。キャリア30は、ボールネジ33に沿って移動される。キャリア30の、基板31を搬入するための移動方向、基板31を排出するための移動方向、基板31の情報の読み取り時の走査方向、および情報を読み取る基板31を切り替えるための移動方向は共通である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の細胞、微生物、染色体、核酸等のサンプルを抗原抗体反応や核酸ハイブリダイゼーション反応等の生化学反応を利用して分析するためのサンプル情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を分析する分析装置の多くは、抗原坑体反応を利用した免疫学的な方法、または核酸ハイブリダイゼーションを利用した方法を用いて分析を行っている。例えば、被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原等のタンパク質または一本鎖の核酸をプローブに使い、微粒子、ビーズ、ガラス板等の固相表面に固定し、被検出物質と抗原抗体反応または核酸ハイブリダイゼーションを行う。そして、酵素、蛍光性物質、発光性物質等、検知感度の高い標識物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質を用いて、抗原抗体化合物や二本鎖の核酸を検出して、被検物質の有無の検出、または被検物質の定量を行っている。標識化物質としては、例えば、標識化抗体や標識化抗原または標識化核酸等が挙げられる。
【0003】
これらの技術を発展させたものとして、例えば特許文献1には、互いに異なる塩基配列を有する多数のDNA(デオキシリボ核酸)プローブを基板上にアレイ状に並べた、いわゆるDNAアレイが開示されている。また、非特許文献1には、多種類のタンパク質をメンブレンフィルタ上に並べ、DNAアレイのような構成のタンパク質アレイを作製する方法が開示されている。このように、DNAアレイやタンパク質アレイ等によって、極めて多数の項目の検査を一度に行うことが可能になってきている。
【0004】
このような形態の基板をセットして、プローブ検出を行う典型的なサンプル情報取得装置としては、特許文献2に開示されたものがある。特許文献2に開示されたサンプル情報取得装置は、アクソンインストルメンツ社(AXON INSTRUMENTS)から実際に市販されている。
【0005】
図8に、特許文献2に開示された従来のサンプル情報取得装置の主な構成を概念的に示す。このサンプル情報取得装置101は、筐体145と、筐体145の中に収容されたキャリア130と、光学系160とを有する。キャリア130は、1枚の基板131を搭載し、筐体145内で矢印A方向および矢印A’に往復移動するように設けられている。サンプルである基板131には、プローブがアレイ状に配列されている。光学系160は、対物レンズ139を介してレーザ光を基板131上のプローブに照射し、レーザ光によって励起された蛍光の輝度を読み取ることで、サンプルの検出を行う。
【0006】
キャリア130の移動方向の一端側(矢印A方向の端部側)において、筐体145には開口部が設けられており、この開口部はシャッター144によって開閉可能とされている。操作者は、キャリア130を筐体145の開口部の近くへ移動させた状態で、シャッター144を開けて基板131をキャリア130にセットする。基板131のセット後、シャッター144を閉じ、基板131が対物レンズ139と対向する位置までキャリア130を移動させる。その後、キャリア130の移動方向と直交する方向への、レーザ光を照射しながらの対物レンズ139の往復移動と、キャリア130の間欠移動とを繰り返し、基板131からの蛍光画像をスキャンする。スキャンの終了後、キャリア130を筐体145の開口部の近くまで移動させ、操作者はシャッター144を開いてキャリア130から基板131を取り出す。次の基板131がある場合は、上述した一連の操作を次の基板131に対しても同様に行う。
【0007】
ところで、特許文献3には、複数の画像が顕象化された1枚のフィルムを移動テーブル上に支持し、支持したフィルム中の複数の画像を連続して読み取るフィルムスキャナが開示されている。一方、DNA検査においては、1枚の基板上のプローブアレイに対して、1つの検体から抽出・増幅したDNAをハイブリダイゼーションさせ、その結果をスキャンするという工程を経ている。複数の検体を処理する場合は、検体間のコンタミネーションを回避するために、複数の検体に対してその数と等しい数の基板を用意するというのが大原則である。フィルムスキャナにおいては、DNA検査における検体間に相当する画像間あるいはフィルム間のコンタミネーションを考慮しなくてもよい。そのため、フィルムスキャナには、複数枚のフィルムを連続処理するというニーズはあまり存在しない。実際、特許文献3においても、複数枚のフィルムを処理するということには言及されていない。
【特許文献1】米国特許第5445934号明細書
【特許文献2】米国特許第6628385号明細書
【特許文献3】特開2001-051360号公報
【非特許文献1】ルーキン・A(Lueking A)他、「プロテイン・マイクロアレイズ・フォー・ジーン・エクスプレッション・アンド・アンチボディ・スクリーニング(Protein microarrays for gene expression and antibody screening)」、アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、1999年、270(1)、p103-111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年のDNA検査においては、多数の検体を短時間で処理することが望まれている。よって、サンプル情報取得装置の処理効率を向上させることが重要である。DNA検査におけるサンプル情報取得装置においては、より高い処理能力が望まれており、従来のように1つのサンプルのみを処理する構成では効率的に課題があった。
【0009】
特に、複数のサンプルを連続的に処理したい場合、従来のように、サンプルを搬送口から検出器へ搬送して検出を行い、検出が終了したサンプルがもとの位置に戻り、搬送口で次のサンプルと交換する方法では、各工程が1つのサンプルの移動のために使用されるため、効率的に連続処理が行われているとはいい難かった。
【0010】
さらに、そのためには、サンプルごとに切り替えながら処理を行必要があり、それに付随してサンプルの切り替え機構等も必要になってくる。したがって、複数のサンプルを連続的に処理するような構成とした場合は、装置の大型化、複雑化、高コスト化が懸念される。
【0011】
本発明の目的は、すなわち装置の大型化、複雑化、および高コスト化を最小限に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明のサンプル情報取得装置は、生化学反応を利用した分析に用いる、サンプルの情報を取得するためのサンプル情報取得装置であって、
前記サンプルの搬入口および排出口が設けられた筐体と、
前記サンプルを載置するための、前記筐体内において移動可能に設けられたキャリアと、
前記キャリアに載置された前記サンプルから情報を、前記サンプルと検出器との相対的な移動によって読み出すための検出手段と、を有し、
前記キャリアの、前記搬入口から前記検出手段の検出位置まで移動するときの移動方向と、前記検出手段によって前記サンプルの情報を読み出すために前記サンプルを移動させるときの移動方向と、前記検出が終了した前記サンプルが前記排出口へ向かうときの移動方向と、が互いに平行であるように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬入口と排出口が設けられ、かつ装置内での移動方向が平行なため、キャリアが元の位置に戻る必要がないので、連続処理において効率的に検出処理が可能となる。特に、複数のサンプルを一度に連続して読み取ることができるように構成した場合においても、サンプルの切り替えのための機構は特に不要であるので、サンプル情報取得装置の大型化、複雑化、および高コスト化を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1Aは、本発明の一実施形態によるサンプル情報取得装置の、正面から見た概略構成を示す図である。図1Bは、図1Aに示す光学系を図1Aの矢印B1方向から見た図である。
【0016】
本実施形態のサンプル情報取得装置1は、サンプルからの情報を光学的に読み取るものであり、筐体45と、筐体45の内部に設けられたキャリア30および光学系60とを主な構成要素とする。
【0017】
キャリア30は、箱状に構成されており、その内部に、複数の基板31が載置される。基板31の表面には、図2に示すように、マトリクス状に配列された複数のプローブ32がプローブアレイとして固定されている。プローブは、標的物質と特異的に結合可能な物質であり、例えばサンプル中に含まれ得る標的核酸に相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0018】
各基板31は、プローブアレイが固定された面(プローブ固定面)を、光学系60の後述する対物レンズ39側に向けて載置される。キャリア30には、載置された各基板31をチャックするための基板チャック47が設けられている。
【0019】
ここで、キャリア30を上方から見た状態を示す図3を参照して、キャリア30内への複数の基板31の載置について説明する。図3に示すように、本実施形態では6枚の基板31(31a〜31f)は、キャリア30の移動方向(矢印A方向)に並列に並べられる。キャリア30の底面の、各基板31a〜31fが載置される各領域の周囲には、基板31a〜31fの位置決めのためにボス状のガイド48が設けられている。また、キャリア30の底面には、各基板31a〜31fのプローブ32が固定された領域と対向する領域に、検出窓49が設けられている。本実施形態では6枚の基板31a〜31fが載置されるので、検出窓49も6つある。この検出窓49を通して、光学系60からレーザ光が照射される。ここでは、キャリア30に6枚の基板31a〜31fが載置されるものとして説明したが、キャリア30に載置される基板31の数は、複数であれば6枚に限定されない。
【0020】
再び図1Aを参照すると、キャリア30は、副走査レール35に沿って、矢印A方向および矢印A’方向に往復移動可能に支持されている。つまり、キャリア30は、直線上を往復移動可能に設けられている。図1Aでは1本の副走査レール35が示されているが、キャリア30の姿勢を安定させるために、通常は、キャリア30は互いに平行な2本の副走査レール35に支持されている。また、キャリア30には副走査レール35と平行に支持されたボールネジ33が噛み合っており、副走査モータ34によってボールネジ33を回転させることで、キャリア30は矢印A方向および矢印A’方向に往復移動する。
【0021】
キャリア30には、基板31を出し入れするために2つの開口部51,52が設けられている。一方の開口部51は、キャリア30内への基板31の搬入用の開口部51である。他方の開口部52は、キャリア30内からの基板31の排出用の開口部52である。これら2つの開口部51,52は、キャリア30の互いに異なる面に設けられている。
【0022】
これに伴い、筐体45にも、キャリア30の各開口部51,52に対応する2つの開口部(搬入口および排出口)が設けられ、これらの開口部はシャッター43,44で開閉される。搬入口および排出口(シャッター43,44)も、筐体45の互いに異なる面に設けられている。特に本実施形態では、基板31を図1Aにおいて手前側から搬入し、左側から排出する。すなわち基板31の搬入方向と排出方向とが互いに直交するように構成されている。さらに本実施形態では、基板31の搬入のためのキャリア30の位置と、基板31の排出のためのキャリア30の位置との間に、基板31の情報を光学系60によって読み出すためのスキャン位置がある。
シャッター43,44の開閉は、手動によってもよいし、任意の駆動機構によるものであってもよい。
【0023】
図1Bを参照すると、光学系60は、プローブ中の蛍光物質を励起するためのレーザ光を出射するレーザ光源36と、レーザ光源36からのレーザ光をプローブに照射するための対物レンズ39とを有する。光学系60はさらに、レーザ光が照射されることで励起された蛍光物質から発せられる蛍光を検出するための光電子倍増管42を有する。
【0024】
レーザ光源36から出射したレーザ光は、ハーフミラー37を透過した後、反射鏡38で反射して、対物レンズ39に入射する。対物レンズ39に入射したレーザ光は、対物レンズ39で合焦させた状態で、基板31上のプローブに照射される。プローブにレーザ光が照射されることで、プローブ中の蛍光物質が励起され、蛍光を発する。
【0025】
なお、レーザ光源36とハーフミラー37との間には、レーザ光源36から出射したレーザ光を遮断するためのレーザ用シャッター46が設けられている。筐体45にはシャッター43,44が開いたことを検知する不図示のセンサーが設けられており、何れかのシャッター43,44が開いたことが検知されるのと連動してレーザ用シャッター46が閉じられる。
【0026】
プローブから発せられた蛍光は、対物レンズ39に入射し、そこで平行光とされた後、反射鏡38およびハーフミラー37で順次反射され、フィルター40に入射する。フィルター40は、蛍光のうち特定の周波数帯のみを透過する。フィルター40を透過した蛍光は、レンズ41で集光されて光電子倍増管42に入射する。
【0027】
前述したように、プローブ32は基板31上にマトリクス状に配列されているので、基板31を載置したキャリア30を矢印A方向またはA’方向に移動させただけでは全てのプローブ32をスキャンすることはできない。そこで、反射鏡38および対物レンズ39は、キャリア30に載置された基板のプローブ固定面と平行で、かつキャリア30の移動方向と直交する方向(図1Bの矢印C方向およびC’方向)に往復移動される。この反射鏡38および対物レンズ39の往復移動と、キャリア30の移動とを組み合わせることによって、基板31上にマトリクス状に配列された全てのプローブ32をレーザ光でスキャンすることができる。
【0028】
反射鏡38および対物レンズ39の移動は、不図示の駆動機構によって行われる。駆動機構としては、ボイスコイルモータや、通常のモータを用いたベルト伝動機構を利用することができる。さらに、位置制御を正確に行うために、必要に応じてエンコーダを搭載してもよい。
【0029】
次に、上述したサンプル情報取得装置1の動作を、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0030】
まず、操作者は、サンプル情報取得装置1の電源をオンにする(S1)。電源のオンによって、レーザ光源36が起動し、レーザ光が出射する。レーザ光源36は、サンプル情報取得装置1の電源がオンである限りレーザ光を出射している。次に、光電子倍増管42による検出を正確に行うため、レーザ光源36からのレーザ光の強度が安定するまで、レーザ光源36を起動した状態で所定の時間だけ待機する。その間に、キャリア30は矢印A’方向へ移動し、その搬入用の開口部51が筐体45の対応するシャッター43と対向する位置である基板搬入位置に位置する(S2)。
【0031】
次に、操作者は、入力部(このサンプル情報取得装置1に接続されたコンピュータの入力デバイス、あるいはこのサンプル装置自身の操作パネル)から、シャッター43を開かせるための指令を送り、これによってシャッター43が開く(S3)。
【0032】
ここで、この種のサンプル情報取得装置に用いられるレーザ光の強度は、クラス3B程度である。そのため、シャッター43を開くことによってレーザ光が筐体45の外部へ漏れないようにするために、シャッター43が開く前に、レーザ用シャッター46を閉じる。レーザ光の漏洩防止を、レーザ光源36自体をオフにすることによって対応しないのは、レーザ光源36を一旦オフにすると、再起動したときにレーザ強度が安定するまである程度の時間を要し、結果的に待機時間が増えるからである。レーザ光用シャッター46を閉じるだけであれば、レーザ強度は安定した状態であるので、直ちに次のステップへ移ることができる。
【0033】
次に、操作者は、図3に示したように、6枚の基板31a〜31fをキャリア30の中に載置する(S4)。基板31a〜31fの載置後、入力部からの操作により、スキャン動作を開始する。
【0034】
スキャン動作では、まず、準備段階として、基板チャック47により各基板31a〜31fを押さえ、固定する(S5)。次に、シャッター43を閉じ(S6)、その後、レーザ用シャッター46を開く(S7)。レーザ用シャッター46が開いたら、キャリア30は、各基板31a〜31fのうち矢印A方向側の端部に位置する基板31aのプローブアレイの領域が対物レンズ39と対向する位置である基板31aのスキャン開始位置まで、矢印A方向に移動する(S8)。スキャン開始位置までのキャリア30の移動の際は、副走査モータ34はプローブアレイのスキャン時(次動作)における走査分解能よりも粗い分解能で駆動されても構わない。
【0035】
基板31aがスキャン開始位置に到達したら、基板31a上のプローブアレイに対するレーザ光の照射による実質的なスキャンを行う(S9)。実質的なスキャンは、対物レンズ39の主走査とキャリア30の副走査とを交互に繰り返し、基板31aのプローブアレイ全域にわたってレーザ光を照射することによって行う。対物レンズ39の主走査とは、対物レンズ39の、キャリア30の移動方向と直交する方向である主走査方向(図1Bの矢印C方向またはC’方向)への移動である。キャリアの副走査とは、キャリア30の、主走査をすでに行った対物レンズ39上を、矢印A方向でのプローブ32の配列ピッチ分だけA方向に間欠駆動することである。基板31a上のプローブアレイに対するスキャンを行うことで、プローブアレイの蛍光輝度が読み取られる。
【0036】
基板31aのスキャンの終了後、図4に示すように、キャリア30は次の基板31bのスキャン開始位置まで矢印A方向に移動し(S10、S11)、この基板31bについて、先の基板31aと同様にスキャンする(S9)。基板31bのスキャン開始位置までのキャリア30の移動は、プローブアレイのスキャン時における走査分解能よりも粗い分解能で移動されてもよい。以下、同様の手順を最後の基板31fまで繰り返す(S9〜S11)。
【0037】
最後の基板31fのスキャンが終了したら、キャリア30を矢印A方向に移動させ、図5に示すように、キャリア30を、基板31を筐体45の外へ排出するための排出位置に位置させる(S12)。このときのキャリア30の移動は、プローブアレイのスキャン時における走査分解能よりも粗い分解能での移動であってもよい。
【0038】
その後、レーザ用シャッター46が閉じられ、それと同時に、排出用のシャッター44が開かれる(S13)。その後、基板チャック47による基板31のチャックが解除され(S14)、操作者はキャリア30から基板31を取り出す(S15)。
【0039】
以上説明したように、複数の基板31a〜31fを搭載するサンプル情報取得装置1においては、キャリア30の移動は以下の4種に大別される。
(1)任意の位置から基板31の搬入位置までの移動。
(2)基板31のスキャン時の移動。
(3)光学系60に対する、スキャンが終了した基板31から次にスキャンする基板31への入れ替えのための移動。
(4)任意の位置から基板31の排出位置までの移動。
【0040】
本実施形態では、これら(1)〜(4)の移動方向は全て平行である。したがって、複数の基板31を順次切り替えるための機構は不要であり、キャリア30の移動を単純化することができるようになるので、キャリア30を移動させるための機構も単純化できる。特に本実施形態では、複数の基板31がキャリア30の副走査方向に並んで配列されているため、キャリア30の各移動は共通の軸線に沿った移動である。したがって、キャリア30の各移動には1つの共通の駆動源を用いることができる。これにより、サンプル情報取得装置の処理能力向上のために複数の基板31に対して連続的に処理するように構成した場合でも、サンプル情報取得装置の大型化および複雑化、さらにはそれに起因する装置の高コスト化を最小限に抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、基板31の搬入位置、スキャン開始位置、および排出位置が、この順で並んでいる。これら各位置の順番は、このサンプル情報取得装置1での基板31の、搬入、スキャン、および排出といった動作順序に従うものである。これにより、キャリア30の、基板31の搬入位置からスキャン開始位置までの移動、スキャンが終了した基板31を次の基板31と切り替えるための移動、およびスキャ終了後の基板31の排出位置までの移動の各移動方向を同一とすることができる。したがって、サンプル情報取得装置1による一連の動作における、キャリア30の移動に無駄がなく、複数の基板31の情報を効率よく読み出すことができる。
【0042】
サンプル情報取得装置がDNA検査装置システムの一部をユニットとして構成している場合には、図7に示すような搬送アーム53によって、基板31をキャリア30内に搬入してもよい。搬送アーム53を用いることにより、前工程で処理された基板31を引き続いて自動的にサンプル情報取得装置に供給することができる。特に、基板31の搬入位置と排出位置が異なっているので、キャリア30への基板31の搬入がスムーズになる。
【0043】
搬送アーム53は、不図示の吸引機構により、基板31を図7に示す白抜き矢印方向へ吸着することができる。この吸着と解除とを組み合わせて行うことで、基板31のキャリア30内への搬入が可能である。もちろん、基板31の保持方法としては、吸引に限らず、基板31を挟み込んで掴む方法や、磁力で吸着する方法等を用いても良い。
【0044】
また本実施形態では、複数の基板31はキャリア30内への搬入方向と直交する方向に並べられることになるので、搬送アーム53が基板31の配列方向に移動軸を持たない場合は、搬送アーム53の動作だけでは複数の基板31を搬入することができない。そこで、本実施形態のような構成の場合は、1つの基板31を搬入するごとに、キャリア30を副走査方向に移動させることにより、搬送アーム53によって搬入可能な位置を確保することができる。また、搬入に用いたのとは別の搬送アーム53をさらに基板31の排出側に設け、キャリア30外への基板31の排出も搬送アーム53によって行うようにしてもよい。さらには、搬入と排出を共通の搬送アーム53で行ってもよい。
【0045】
なお、上述した実施形態では、複数のプローブをマトリクス状に配列した基板を用いた例を説明したが、内部で液体を移動させて必要な反応を行うように構成した生化学反応カートリッジを用いても本発明の効果に何ら変わりはない。また、キャリアに対するのサンプルの搬入位置および排出位置は、キャリアの移動範囲内で行えれば、特に限定されない。たとえば、搬入位置と排出位置を筐体の互いに対向する側面に設けてもよいし。搬入位置と排出位置を共通としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】本発明の一実施形態によるサンプル情報取得装置の、正面から見た概略構成を示す図である。
【図1B】図1Aに示す光学系を図1Aの矢印B1方向から見た図である。
【図2】本発明で用いられる基板の一例の平面図である。
【図3】複数の基板を載置した状態での、図1Aに示すキャリアの平面図である。
【図4】図1Aに示すサンプル情報取得装置の、キャリアが2枚目の基板のスキャン位置にある状態を示す、図1Aと同様の図である。
【図5】図1Aに示すサンプル情報取得装置の、キャリアが排出位置にある状態を示す、図1Aと同様の図である。
【図6】図1Aに示すサンプル情報取得装置の動作のフローチャートである。
【図7】本発明に用いることのできる搬送アームを基板とともに示す図である。
【図8】従来のサンプル情報取得装置の、正面から見た概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 サンプル情報取得装置
30 キャリア
31 基板
43,44 シャッター
45 筐体
51,52 開口部
60 光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生化学反応を利用した分析に用いる、サンプルの情報を取得するためのサンプル情報取得装置であって、
前記サンプルの搬入口および排出口が設けられた筐体と、
前記サンプルを載置するための、前記筐体内において移動可能に設けられたキャリアと、
前記キャリアに載置された前記サンプルから情報を、前記サンプルと検出器との相対的な移動によって読み出すための検出手段と、を有し、
前記キャリアの、前記搬入口から前記検出手段の検出位置まで移動するときの移動方向と、前記検出手段によって前記サンプルの情報を読み出すために前記サンプルを移動させるときの移動方向と、前記情報の読み出しが終了した前記サンプルが前記排出口へ向かうときの移動方向と、が互いに平行であるように構成されているサンプル情報取得装置。
【請求項2】
前記キャリアの前記各移動方向は共通であり、前記キャリアを前記各移動方向へ移動させるための1つの駆動手段を有する、請求項1に記載のサンプル情報取得装置。
【請求項3】
前記キャリアは、複数の前記サンプルを載置可能に構成されている、請求項1に記載のサンプル情報取得装置。
【請求項4】
前記検出手段によって第1のサンプルの情報を読み出すために前記サンプルを移動させるときの移動方向と、第2のサンプルが前記検出手段の検出位置に向かって移動する方向が同一方向である、請求項3に記載のサンプル情報取得装置。
【請求項5】
前記サンプルと前記検出器との相対的な移動によって、前記検出器が前記サンプルを走査することにより検出が行われる、請求項1に記載のサンプル情報取得装置。
【請求項6】
生化学反応を利用した分析に用いる、サンプルの情報を取得するためのサンプル情報取得装置であって、
筐体と、
複数の前記サンプルを載置するための、前記筐体内において直線上を往復移動可能に設けられたキャリアと、
前記キャリアに載置された複数の前記サンプルからそれぞれ情報を、前記サンプルと検出器との相対的な移動によって読み出すための検出手段と、を有し、
前記筐体内への前記サンプルの搬入、前記筐体外への前記サンプルの排出、および前記情報の読み出しのための前記キャリアの移動は、前記直線上での前記キャリアの移動によって行われ、かつ、
前記キャリアには、複数の前記サンプルが、前記キャリアの移動方向に沿って並んで載置されるサンプル情報取得装置。
【請求項7】
前記キャリアの、前記筐体内への前記サンプルの搬入のための移動、前記筐体外への前記サンプルの排出のための移動、前記情報の読み出しのための移動、および前記サンプルの切り替えのための移動を行う1つの駆動手段を有する、請求項6に記載のサンプル情報取得装置。
【請求項8】
前記サンプルと前記検出器との相対的な移動によって、前記検出器が前記サンプルを走査することにより検出が行われる、請求項6に記載のサンプル情報取得装置。
【請求項9】
前記サンプルの搬入位置、前記情報の読み出しのための移動開始位置、および前記サンプルの排出位置が、この順番で並んでいる、請求項3,4,6,7または8に記載のサンプル情報取得装置。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−101355(P2007−101355A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291435(P2005−291435)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】