説明

サージ保護回路および電子機器

【課題】直流電圧が重畳された信号を伝送でき、かつ回路内でのサージ対策を少なくすることが可能なサージ保護回路、およびそのサージ保護回路を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器100は、端子1と、インダクタ2と、信号ライン3と、サージ保護回路5と、回路部50とを備える。サージ保護回路5は、バリスタ10と、フィルター11と、ツェナーダイオード12とを含む。フィルター11は、並列LCフィルターを構成する。フィルター11のインピーダンスは、サージによる信号ライン3の電圧の上昇時間に対応するように予め定められた周波数範囲において高い。その一方で、フィルター11のインピーダンスは、周波数が0の場合および信号Sの下限周波数の場合の両方において、上記予め定められた周波数範囲におけるインピーダンスよりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージ保護回路およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器をサージから保護するための様々な構成が提案されている。たとえば特開2004−312473号公報(特許文献1)は、電子機器に内蔵された特定の回路を用いたサージ吸収用フィルターを開示する。
【0003】
上記文献に開示されたフィルターは、信号入力端子と信号出力端子との間の信号通路に設けたハイパスフィルター回路、および当該ハイパスフィルター回路に連結された上り信号通過回路によって構成される。これらの回路全体を1つのハイパスフィルターとみて各素子の値を決定することによって、ハイパスフィルターに用いられるコイルのインダクタンス値を小さくすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−312473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献に開示された構成によれば、ハイパスフィルター回路に含まれるコイルは、信号入力端子とアース(接地ノード)との間に設けられる。したがって、直流電圧が重畳された信号を伝達するための信号ラインに上記フィルターを挿入できない。その理由は、信号に重畳された直流成分がコイルを経由してアースへと伝達されるためである。
【0006】
また多くの場合には、電子回路のサージ保護については、バリスタ等の部品を電子回路に取り付けることで対応している。しかし配線パターン、部品配置等が異なると、サージに対して弱い部分も異なりうる。
【0007】
このため、たとえば製品開発の際に、従来製品と配線パターンあるいは部品配置等が変更されたことによって、従来と同じサージ対策(たとえば回路パターンのある個所にバリスタを配置する)を行なっていてもサージに弱い個所が新たに発生する可能性がある。回路の中にサージに弱い部分がある場合には、その部分に対するサージ対策を追加する必要がある。
【0008】
一般的に、回路の中にサージに弱い部分があるかどうかは、サージ試験によって検証される。したがってその回路にサージ対策を施すためには、回路の配線パターンあるいは部品配置をサージを考慮して検討し、その検討結果をサージ試験によって検証することが必要となる。このため、サージ対策が完了するまでに時間、設計工数がかかるといった課題がある。
【0009】
本発明の目的は、直流電圧が重畳された信号を伝送でき、かつ、回路内でのサージ対策を少なくすることが可能なサージ保護回路、およびそのサージ保護回路を備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面に係るサージ保護回路は、直流電圧が重畳された信号を入力または出力するための端子に接続された信号ラインに設けられたサージ保護回路である。サージ保護回路は、バイパス素子と、第1のフィルターとを備える。バイパス素子は、信号ラインと接地ノードとの間に接続されて、端子にサージが入力されたときに信号ラインと接地ノードとの間にサージ電流のバイパスを形成する。第1のフィルターは、信号ラインに配置される。第1のフィルターは、信号ラインに並列接続された第1のインダクタおよび第1のコンデンサーを含む。サージによって信号ラインの電圧が上昇する時間に対応した所定の周波数範囲における第1のフィルターのインピーダンスが、周波数が0の場合および信号の下限周波数である場合の両方における第1のフィルターのインピーダンスよりも高くなるように、第1のインダクタのインダクタンス値および第1のコンデンサーの容量値が設定される。
【0011】
好ましくは、サージ保護回路は、信号ラインに配置された第2のフィルターをさらに備える。第2のフィルターは、信号ラインと接地ノードとの間に直列接続された第2のインダクタおよび第2のコンデンサーを含む。所定の周波数範囲における第2のフィルターのインピーダンスが、周波数が0の場合および信号の下限周波数である場合の両方における第2のフィルターのインピーダンスよりも低くなるように、第2のインダクタのインダクタンス値および第2のコンデンサーの容量値が設定される。
【0012】
好ましくは、信号の下限周波数は、10MHzである。所定の周波数範囲は、20kHz〜1000kHzの範囲に含まれる。
【0013】
本発明の他の局面に係る電子機器は、上記のサージ保護回路と、サージ保護回路を通じて入力された信号に対して所定の処理を行なう処理回路とを備える。
【0014】
好ましくは、信号は、衛星放送受信アンテナからの信号である。電子機器は、端子を介して、衛星放送受信アンテナの電源電圧として直流電圧を供給する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、直流電圧が重畳された信号を伝送でき、かつ、回路内でのサージ対策を少なくすることが可能なサージ保護回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るサージ保護回路を含む電子機器の構成図である。
【図2】バリスタの一般的な動作特性を説明するための図である。
【図3】サージに関する国際規格を説明するための波形図である。
【図4】図1に示したフィルター11の特性の具体例を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るサージ保護回路を含む電子機器の構成図である。
【図6】図5に示したフィルター11およびフィルター13の特性の具体例を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るサージ保護回路を備えた電子機器の第1の具体例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るサージ保護回路を備えた電子機器の第2の具体例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るサージ保護回路を含む電子機器の構成図である。図1を参照して、電子機器100は、端子1と、インダクタ2と、信号ライン3と、サージ保護回路5と、回路部50とを備える。
【0019】
端子1は、信号Sが入力される端子である。信号Sは、直流電圧が重畳された信号である。端子1に入力された信号Sは信号ライン3を伝達して回路部50に入力される。信号Sに重畳される直流電圧は回路部50から供給されてもよいし、電子機器の外部の装置から供給されてもよい。また、この実施の形態では端子1は入力端子であるが、出力端子でもよい。
【0020】
インダクタ2およびサージ保護回路5は、信号ライン3に挿入される。インダクタ2の一方端は信号ライン3を介して端子1に接続されて信号Sを受ける。インダクタ2の他方端は信号ライン3(サージ保護回路5)に接続される。
【0021】
サージ保護回路5は、バリスタ10と、フィルター11と、ツェナーダイオード12とを含む。バリスタ10は、信号ライン3(インダクタ2の他方端)と接地ノードNとの間に接続される。フィルター11は、信号ライン3においてバリスタ10の後段に配置される。ツェナーダイオード12は、フィルター11の後段に設けられる。ツェナーダイオード12のカソードは信号ライン3に接続され、ツェナーダイオード12のアノードは接地される。
【0022】
バリスタ10は、その端子間電圧がある電圧(バリスタ電圧)以上に高くなると電気抵抗が低くなるという性質を持つ。バリスタ10は、高電圧のサージが印加されたときに信号ライン3と接地ノードNとの間にサージ電流のバイパスを形成するバイパス素子である。端子1にサージが入力された際に、バリスタ10によってサージ電流のバイパスが形成されることで、回路部50に印加される電圧を抑制することができる。したがって回路部50を保護できる。
【0023】
なお、信号ライン3と接地ノードNとの間にサージ電流のバイパスを形成する素子であれば、バリスタに限定されず、たとえばアレスタ、放電管等を用いてもよい。
【0024】
フィルター11は、信号ライン3に並列接続されたインダクタ21およびコンデンサー22を含む。すなわちフィルター11は、並列LCフィルターを構成する。
【0025】
フィルター11は、インダクタ21のインダクタンス値Lおよびコンデンサー22の容量値Cによって定まる共振周波数f(=1/{2π(L×C)1/2})の付近の周波数帯域において、高インピーダンスとなり、それ以外の周波数帯域において低インピーダンスとなる。フィルター11のインピーダンスは、インダクタ21のインピーダンスとコンデンサー22のインピーダンスとの合成インピーダンスであり、Z×Z/(Z+Z)と表わされる。Zはインダクタ21のインピーダンスであり、2πfLと表わされる。Zcはコンデンサー22のインピーダンスであり、1/2πfCと表わされる。Lはインダクタ21のインダクタンスであり、Cはコンデンサー22の容量値であり、fはフィルター11の共振周波数である。
【0026】
この実施の形態では、フィルター11のインピーダンスは、サージによる信号ライン3の電圧の上昇時間に対応するように予め定められた周波数範囲において高い。その一方で、フィルター11のインピーダンスは、周波数が0の場合および信号Sの下限周波数の場合の両方において、上記予め定められた周波数範囲におけるインピーダンスよりも低い。フィルター11のインピーダンスが上記条件を満たすようにフィルター11の共振周波数が設定され、その共振周波数に基づいて、インダクタ21のインダクタンス値およびコンデンサー22の容量値が設定される。
【0027】
直流電圧の周波数は0である。周波数が0の場合におけるフィルター11のインピーダンスが低いため、フィルター11は信号Sの直流成分を伝達できる。同様に、信号Sの下限周波数においてフィルター11のインピーダンスが小さいので、信号Sの信号成分(高周波成分)もフィルター11を通過できる。
【0028】
一方、端子1にサージが入力された場合、信号ライン3の電圧が瞬時的に変化(上昇)する。信号ライン3の電圧がサージによって変化する時間の間、フィルター11のインピーダンスが高いので、信号ライン3の電圧の上昇を抑制することができる。
【0029】
なお、バリスタ10によっても、信号ライン3の電圧の上昇を抑制することができる。この実施の形態において、フィルター11は、バリスタ10の動作の遅れによる信号ライン3の電圧上昇を防止することができる。この点について以下に説明する。
【0030】
図2は、バリスタの一般的な動作特性を説明するための図である。図2に示されるように、サージの発生によって電圧が瞬間的に上昇する。バリスタは、所定の電圧(バリスタ電圧)以上に電圧が高くなるのを抑制する。したがってバリスタが理想的に動作するのであれば、バリスタの端子間電圧がバリスタ電圧に達した時点から電圧上昇が抑制されて、バリスタの端子間電圧は所定のバリスタ電圧にクランプされる。
【0031】
しかしながら実際には、バリスタが動作を開始するまでの遅れ時間が存在する。このため、バリスタの端子間電圧がバリスタ電圧を一旦上回る。したがって図1に示した電子機器100のサージ保護回路がバリスタのみの場合、サージが端子に入力されたときに、回路部50を構成する各種部品に、その耐圧を超える電圧が一時的に印加される可能性がある。これによって回路部50の構成部品の特性の劣化、あるいは構成部品の破損が考えられる。
【0032】
これに対して第1の実施の形態によれば、サージ入力時における初期段階、すなわち信号ライン3の電圧が瞬時的に立ち上がる段階では、バリスタ10が動作できなくても、フィルター11によって信号ラインの電圧上昇を抑制できる。フィルター11によって信号ラインの電圧上昇が抑制されている間にバリスタ10が動作することで、信号ライン3の電圧がバリスタ電圧を上回ることを防止できる。したがって第1の実施の形態によれば、回路部50をサージから確実に保護することが可能となる。
【0033】
さらに信号ライン3と接地ノードとの間にツェナーダイオード12が設けられる。バリスタ10およびフィルター11によっても信号ライン3の電圧上昇を抑制できない場合には、ツェナーダイオード12によって信号ライン3の電圧を抑制する(信号ライン3の電圧をツェナー電圧に制限する)ことができる。したがって第1の実施の形態によれば、回路部50をサージからより確実に保護することが可能となる。
【0034】
上記のように、フィルター11が高インピーダンスとなる時間(フィルター11の共振周波数の逆数)は、端子1へのサージ入力にともなう電圧の変化時間に基づいて予め定められる。ただし、サージによる実際の電圧変化を予測することは容易ではない。このため第1の実施の形態では、サージに関する国際規格に基づいてサージ入力にともなう電圧の変化時間を規定するとともに、その変化時間にしたがってフィルター11が高インピーダンスとなる時間を予め規定する。これにより、フィルター11の共振周波数を設定できるので、インダクタ21およびコンデンサー22の選定が可能となる。
【0035】
図3は、サージに関する国際規格を説明するための波形図である。図3(a)は、IEC(International Electrotechnical Commission)61000−4−5の定義による電圧サージ波形を示した図である。図3(b)は、IEC61000−4−5の定義による電流サージ波形を示した図である。図3(c)は、CCITT(Comite Consultatif International Telegraphique et Telephonique)の定義による電圧サージ波形を示した図である。なお、以下の説明における「フロント時間」が、サージによる電圧上昇の期間に相当する。
【0036】
図3(a)に示すように、IEC61000−4−5の定義による電圧サージ波形においては、フロント時間(T)が1.2μs±30%、半値までの時間Tが50μs±20%と定義される。
【0037】
図3(b)に示すように、IEC61000−4−5の定義による電流サージ波形においては、フロント時間(T)が8μs±20%、半値までの時間Tが20μs±20%と定義される。
【0038】
図3(c)に示すように、IEC61000−4−5の定義による電圧サージ波形においては、フロント時間(T)が10μs±30%、半値までの時間Tが700μs±20%と定義される。
【0039】
図3からは、サージ入力時における電圧の変化時間(電圧の立ち上がり時間)は、1.2μs〜10μsとなる。したがって第1の実施の形態では、1.2μs〜10μsの期間においてフィルター11が高インピーダンスとなるように、フィルター11が構成される。1.2μs〜10μsの時間幅を周波数帯に変換すると、100kHz〜833kHzの周波数帯となる。したがって、第1の実施の形態では、100kHz〜833kHzを含む所定の周波数帯におけるフィルター11のインピーダンスが、周波数=0および10MHz(信号Sの下限周波数)のときのフィルター11のインピーダンスよりも高い。この所定の範囲は、インダクタ21のインダクタ値およびコンデンサー22の容量値のばらつきを考慮して定められることが好ましい。1つの実施形態において、上記所定の範囲は、20kHz〜1000kHzの範囲に定められる。これにより、上記100kHz〜833kHzの周波数帯を包含できる。
【0040】
インダクタンス値Lおよびコンデンサー22の容量値Cの選定には各種の方法を採用できる。ただし、一般にはインダクタンス値Lが大きなインダクタほど、そのサイズも大きい。したがって、たとえばインダクタの実装サイズに基づいてインダクタンス値を決定し、所望の共振周波数が得られるように容量値を選定する方法を用いることができる。第1の実施の形態では、上記の共振周波数を実現するためのフィルター定数として、インダクタ21のインダクタンス値Lが22μH、コンデンサー22の容量値Cが47000pFに設定される。
【0041】
図4は、図1に示したフィルター11の特性の具体例を示した図である。上記のように、インダクタ21のインダクタンス値L=22μH、コンデンサー22の容量値C=47000pFと設定した。
【0042】
図4を参照して、フィルター11のインピーダンスは、100kHz〜833kHzの周波数帯において9Ω〜4Ω程度であり、20kHz〜1000kHzの範囲において、約3Ω以上である。その一方、フィルター11のインピーダンスは10MHz以上の周波数では、0.34Ω以下となり、100Hz以下では0.012Ω以下となる。したがって、フィルター11は、信号Sを伝送可能である一方で、回路部50へのサージの侵入を防止できる。
【0043】
第1の実施の形態によれば、サージ保護回路5が回路部50の前段に設けられる。第1の実施の形態に係るサージ保護回路5は、端子1に入力された信号Sを、信号ライン3を通じて回路部50に伝送することができる。さらに端子1にサージが入力された場合には、サージ保護回路5は、回路部50へのサージの侵入を防ぐことができる。
【0044】
サージ保護回路5によって回路部50へのサージ侵入の可能性を小さくできるので、回路部50におけるサージ保護対策のための構成を簡素化あるいは不要とすることができる。これによりサージ対策に要する時間(設計時間、試験時間)あるいは工数を縮小することができる。
【0045】
また、サージ対策として、電解コンデンサーによるノイズ吸収が多く用いられる。しかし電解コンデンサーの寿命(劣化)が電子機器の寿命に影響を与えることが起こりうる。第1の実施の形態によれば、電解コンデンサーによるサージ対策を不要にすることができるので電子機器の寿命の向上を図ることもできる。
【0046】
[実施の形態2]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るサージ保護回路を含む電子機器の構成図である。図5および図1を参照して、電子機器101は、サージ保護回路5に代えてサージ保護回路5Aを備える点において電子機器100と異なる。サージ保護回路5Aは、信号ライン3に接続されたフィルター13をさらに備える点においてサージ保護回路5と異なる。なお、図5にはツェナーダイオードが示されていないが、サージ保護回路5Aはツェナーダイオードをさらに備えていてもよい。ツェナーダイオードのカソードは信号ライン3に接続され、ツェナーダイオードのアノードは接地される。
【0047】
フィルター13はフィルター11の後段に設けられる。フィルター13は、信号ライン3と接地ノードとの間に直列接続されたインダクタ23およびコンデンサー24を含む。
【0048】
フィルター13は直列LCフィルターを構成する。並列LCフィルターとは逆に、直列LCフィルターは、その共振周波数の付近の周波数帯域において、低インピーダンス(理想的には0)となり、それ以外の周波数帯域において高インピーダンスとなる性質を有する。なおフィルター13の共振周波数fは、インダクタ23のインダクタンス値Lおよびコンデンサー24の容量値Cを用いて1/{2π(L×C)1/2}と表わされる。
【0049】
フィルター13のインピーダンスは、インダクタ23のインピーダンスとコンデンサー24のインピーダンスとの合成インピーダンスであり、Z+Zと表わされる。Zはインダクタ23のインピーダンスであり、2πfLと表わされる。Zcはコンデンサー24のインピーダンスであり、1/2πfCと表わされる。Lはインダクタ23のインダクタンス値であり、Cはコンデンサー24の容量値である。
【0050】
フィルター11が高インピーダンスとなる周波数帯においてフィルター13が低インピーダンスとなるように、インダクタ23のインダクタンス値およびコンデンサー24の容量値が予め設定される。すなわち、フィルター13が低インピーダンスとなる周波数帯は、100kHz〜833kHzの周波数帯を含む範囲であり、好ましくは20kHz〜1000kHzの範囲である。1つの実施形態では、インダクタ23のインダクタンス値Lが3.3μHに設定され、コンデンサー22の容量値Cが1μFに設定される。
【0051】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、サージ入力の初期段階(すなわち信号ライン3の電圧が瞬間的に立ち上がる状態)には、フィルター11によって回路部50の電圧の上昇が抑制される。したがって回路部50をサージから保護できる。しかしながら上記の初期段階にはバリスタ10が動作を開始していないため、フィルター11だけでは回路部50をサージから十分に保護できない可能性が考えられる。
【0052】
上記の初期段階において、信号ライン3と接地ノードとの間には、フィルター13によって、低インピーダンスの経路が形成される。したがってフィルター13を通じてサージをアースに逃がすことが可能となる。さらに上記の周波数帯以外の周波数においてフィルター13のインピーダンスが高いため、信号Sがフィルター13を介してアースに伝達されることを防止できる。
【0053】
図6は、図5に示したフィルター11およびフィルター13の特性の具体例を示した図である。なお、上記のように、インダクタ21のインダクタンス値L=22μH、コンデンサー22の容量値C=47000pF、インダクタ23のインダクタンス値L=3.3μH、コンデンサー24の容量値C=1μFである。
【0054】
フィルター11のインピーダンスについては、既に説明したのでここでは説明を繰り返さない。フィルター13のインピーダンスは、100kHz〜833kHzの周波数帯において3.6Ω〜16Ω程度であり、20kHz〜1000kHzの範囲において30Ω以下である。一方、フィルター13のインピーダンスは、10MHz以上の周波数では、約200Ω以上となり、1kHz以下では約160Ω以上となる。
【0055】
以上のように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、サージから回路を保護することができる。
【0056】
なお、パターン間の誘導を避けるために、第1の実施の形態に係るサージ保護回路5および第2の実施の形態に係るサージ保護回路5Aは、端子1に近接した位置に設けることが好ましい。また、並列LCフィルター、直列LCフィルターの個数は特に限定されるものではなく、適切な数の並列LCフィルターおよび直列LCフィルターを組み合わせてサージ保護回路を構成してもよい。
【0057】
[電子機器の第1の具体例]
図7は、本発明の実施の形態に係るサージ保護回路を備えた電子機器の第1の具体例を示した図である。図7を参照して、本発明の実施の形態に係るサージ保護回路5(サージ保護回路5Aでもよい)は、ブースター110に搭載される。ブースター110は、端子1、31、32と、電源部33と、サージ保護回路5(またはサージ保護回路5A)とを備える。
【0058】
端子1には、BS/CS混合入力(またはBS/CS−IF入力)が入力される。一方で、端子1からはBSアンテナのコンバータおよび/またはCSアンテナのコンバータ(いずれも図示せず)に直流電力(たとえば直流15V)が供給される。このため端子1には、直流電圧が重畳される。
【0059】
端子31には、UHF放送信号が図示しないUHFアンテナから入力される。なお、UHF放送信号に限らず、VHF放送信号あるいはFM放送信号が端子31に入力されてもよい。
【0060】
回路部50には電源部33より電源電圧が供給される。電源部33はブースター110に内蔵されているが、ブースター本体の外側に設けた構成も可能である。回路部50は、端子31から入力されたUHF放送信号、端子1からサージ保護回路5(または5A)を通して入力されたBS/CS混合入力(またはBS/CS−IF入力)に対して増幅等の所定の信号処理を実行して、端子32からTV信号を出力する。端子32から出力されたTV信号は、図示しない受信装置、たとえばチューナー、テレビジョン受像機等に送られる。
【0061】
[電子機器の第2の具体例]
図8は、本発明の実施の形態に係るサージ保護回路を備えた電子機器の第2の具体例を示した図である。図8を参照して、PoE(Power over Ethernet(登録商標);IEEE802.3af準拠)方式のスイッチングハブ111に、サージ保護回路5(サージ保護回路5Aでもよい)が搭載される。スイッチングハブ111では、端子1は、LANケーブルに接続されるコネクタとして実現される。
【0062】
スイッチングハブ111はLANケーブル112を介して電子機器120に接続される。電子機器120の種類は特に限定されるものではない。スイッチングハブ111の本体部である回路部50は、サージ保護回路5(または5A)およびLANケーブル112を介して電子機器120と信号を授受するとともに図示しない他の機器と信号を授受する。さらに回路部50は、サージ保護回路5(または5A)およびLANケーブル112を介して電子機器120に電源電圧(直流電圧)を供給する。したがって、PoE方式のスイッチングハブにも本発明の実施の形態に係るサージ保護回路5または5Aを適用することができる。
【0063】
なお、上記の2つの例に限定されず、本発明のサージ保護回路は、直流電圧が重畳された信号を入力または出力するための端子に接続された信号ラインに設けることができるので、各種の電子機器に適用することができる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1,31,32 端子、2,21,23 インダクタ、3 信号ライン、5,5A サージ保護回路、10 バリスタ、11,13 フィルター、12 ツェナーダイオード、22,24 コンデンサー、33 電源部、50 回路部、100,101,120 電子機器、110 ブースター、111 スイッチングハブ、112 LANケーブル、N 接地ノード、S 信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が重畳された信号を入力または出力するための端子に接続された信号ラインに設けられたサージ保護回路であって、
前記信号ラインと接地ノードとの間に接続されて、前記端子にサージが入力されたときに前記信号ラインと前記接地ノードとの間にサージ電流のバイパスを形成するためのバイパス素子と、
前記信号ラインに配置された第1のフィルターとを備え、
前記第1のフィルターは、前記信号ラインに並列接続された第1のインダクタおよび第1のコンデンサーを含み、
前記サージによって前記信号ラインの電圧が上昇する時間に対応した所定の周波数範囲における前記第1のフィルターのインピーダンスが、周波数が0の場合および前記信号の下限周波数である場合の両方における前記第1のフィルターのインピーダンスよりも高くなるように、前記第1のインダクタのインダクタンス値および前記第1のコンデンサーの容量値が設定される、サージ保護回路。
【請求項2】
前記サージ保護回路は、
前記信号ラインに配置された第2のフィルターをさらに備え、
前記第2のフィルターは、
前記信号ラインと前記接地ノードとの間に直列接続された第2のインダクタおよび第2のコンデンサーを含み、
前記所定の周波数範囲における前記第2のフィルターのインピーダンスが、周波数が0の場合および前記信号の前記下限周波数である場合の両方における前記第2のフィルターのインピーダンスよりも低くなるように、前記第2のインダクタのインダクタンス値および前記第2のコンデンサーの容量値が設定される、請求項1に記載のサージ保護回路。
【請求項3】
前記信号の前記下限周波数は、10MHzであり、
前記所定の周波数範囲は、20kHz〜1000kHzの範囲に含まれる、請求項1または2に記載のサージ保護回路。
【請求項4】
請求項1に記載のサージ保護回路と、
前記サージ保護回路を通じて入力された信号に対して所定の処理を行なう処理回路とを備える、電子機器。
【請求項5】
前記信号は、衛星放送受信アンテナからの信号であって、
前記電子機器は、前記端子を介して、前記衛星放送受信アンテナの電源電圧として前記直流電圧を供給する、請求項4に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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