説明

サージ防護装置の交換時期判定方法及び交換時期判定装置、並びにサージ防護装置

【課題】簡易な構成で確実にサージ防護装置の交換時期を判定すること。
【解決手段】サージを抑制するサージ防護装置の交換時期を判定するにあたり、サージ防護装置にサージ電流が流れたことを、サージ判定パラメータPsとサージ判定パラメータ閾値Pscとを用いて判定する(ステップS102)。そして、サージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数する(ステップS103)。次に、サージ電流が流れた回数、すなわちサージ発生回数Nと、交換時期判定閾値Ncとを比較する(ステップS104)。その結果、N>Ncであれば(ステップS104:Yes)、サージ防護装置は交換時期であると判定する(ステップS105)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷によるサージから設備機器等を保護するために用いるサージ防護装置の交換時期を判定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路や電気回路等を備える設備機器に、例えば雷サージによる異常電圧が印加された場合、サージによる電流をアース側に放電させ、設備機器の電子回路や電気回路等に印加される電圧を保護電圧以下に効果させて、設備機器の電子回路や電気回路等を保護するサージ防護装置が知られている。例えば、特許文献1には、避雷器、すなわちサージ防護装置を流れる雷サージ電流を電流検出器で検出し、この検出結果をA/Dコンバータでサンプリングして、中央処理装置により電流時間積値、すなわち避雷器に流れる電気エネルギの累積値を算出し、この算出値を所定の閾値と比較して、避雷器の劣化程度を判定する動作監視装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−37169号公報 図8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術は、中央処理装置(いわゆるマイクロコンピュータ)やA/Dコンバータを用いるため、構成が複雑になりコストが高くなるという問題がある。また、サージ波形は急峻なインパルス波形であるため、このサージの波形を正確に求めることは困難であり、その結果として、避雷器すなわちサージ防護装置に流れる電気エネルギの累積値を正確に求めることは困難である。したがって、特許文献1に開示された技術は、避雷器すなわちサージ防護装置の劣化程度を正確に把握することは困難である。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で確実にサージ防護装置の交換時期を判定できるサージ防護装置の交換時期判定方法及びサージ防護装置の交換時期判定装置、並びにサージ防護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るサージ防護装置の交換時期判定方法は、サージを抑制するサージ防護装置の交換時期を判定するにあたり、前記サージの発生により前記サージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数する手順と、前記サージ電流が流れた回数と、予め定めた所定の交換時期判定閾値とを比較する手順と、前記サージ電流が流れた回数が、前記交換時期判定閾値を超えている場合には、前記サージ防護装置の交換時期であると判定する手順と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このサージ防護装置の交換時期判定方法は、サージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数し、サージ電流が流れた回数が、予め定めた所定の交換時期判定閾値を超えている場合には、サージ防護装置の交換時期であると判定する。これによって、サージ防護装置に流れる電気エネルギの累積値を求めることは不要になるので、簡易な構成で、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記サージ防護装置の交換時期判定方法において、前記サージ防護装置によって抑制されたサージ電圧に基づいて、前記サージ電流が流れたか否かを判定することが好ましい。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記サージ防護装置の交換時期判定方法において、前記サージ防護装置を流れた電流に基づいて、前記サージ電流が流れたか否かを判定することが好ましい。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るサージ防護装置の交換時期判定装置は、サージを抑制するサージ防護装置の交換時期を判定するものであり、サージの発生により前記サージ防護装置にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、前記サージ電流が流れた回数が、前記サージ防護装置の交換時期を示す交換時期判定閾値を超えていることを告知する交換時期告知手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
このサージ防護装置の交換時期判定装置は、サージ判定手段によりサージ防護装置にサージ電流が流れたか否かを判定し、サージ計数手段によってサージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数し、サージ電流が流れた回数が、サージ防護装置の交換時期を示す交換時期判定閾値を超えている場合には、その旨を交換時期告知手段により告知する。これによって、サージ防護装置の保守、点検時に、サージ防護装置の交換時期を知ることができる。このように、このサージ防護装置の交換時期判定装置によれば、簡易な構成で、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。また、サージ防護装置に流れる電気エネルギの累積値を求めることは不要になるので、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るサージ防護装置の交換時期判定装置は、サージを抑制するサージ防護装置の交換時期を判定するものであり、サージの発生により前記サージ防護装置にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、前記サージ電流が流れた回数を表示するサージ回数表示手段と、を含むことを特徴とする。
【0013】
このサージ防護装置の交換時期判定装置は、サージ判定手段によりサージ防護装置にサージ電流が流れたか否かを判定し、サージ計数手段によってサージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数し、サージ電流が流れた回数をサージ回数表示手段により表示する。これによって、サージ防護装置にサージ電流が流れた回数を知ることができるので、サージ防護装置の保守、点検時に、サージ防護装置の交換時期を知ることができる。このように、このサージ防護装置の交換時期判定装置によれば、簡易な構成で、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。また、サージ防護装置に流れる電気エネルギの累積値を求めることは不要になるので、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記サージ防護装置の交換時期判定装置において、前記サージ判定手段は、前記サージ防護装置によって抑制されたサージ電圧に基づいて、前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れたか否かを判定することが好ましい。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記サージ防護装置の交換時期判定装置において、前記サージ判定手段は、前記サージ防護装置を流れた電流に基づいて、前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れたか否かを判定することが好ましい。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るサージ防護装置は、電源からの配線に設けられるサージ防護手段と、サージの発生により前記サージ防護手段にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、前記サージ防護手段に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、前記サージ電流が流れた回数が、前記サージ防護装置の交換時期を示す交換時期判定閾値を超えていることを告知する交換時期告知手段と、を含むことを特徴とする。
【0017】
このサージ防護装置は、サージ判定手段によりサージ防護手段にサージ電流が流れたか否かを判定し、サージ計数手段によってサージ防護手段にサージ電流が流れた回数を計数し、サージ電流が流れた回数が、サージ防護装置の交換時期を示す交換時期判定閾値を超えている場合には、その旨を交換時期告知手段により告知する。これによって、サージ防護装置の保守、点検時に、サージ防護装置が備えるサージ防護手段の交換時期を知ることができる。このように、このサージ防護装置によれば、簡易な構成で、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。また、サージ防護装置に流れる電気エネルギの累積値を求めることは不要になるので、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るサージ防護装置は、電源からの配線に設けられるサージ防護手段と、サージの発生により前記サージ防護手段にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、前記サージ防護手段に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、前記サージ電流が流れた回数を表示するサージ回数表示手段と、を含むことを特徴とする。
【0019】
このサージ防護装置は、サージ判定手段によりサージ防護手段にサージ電流が流れたか否かを判定し、サージ計数手段によってサージ防護手段にサージ電流が流れた回数を計数し、サージ電流が流れた回数をサージ回数表示手段により表示する。これによって、サージ防護装置が備えるサージ防護手段にサージ電流が流れた回数を知ることができるので、サージ防護装置の保守、点検時に、サージ防護装置の交換時期を知ることができる。このように、このサージ防護装置によれば、簡易な構成で、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。また、サージ防護装置に流れる電気エネルギの累積値を求めることは不要になるので、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るサージ防護装置の交換時期判定方法及びサージ防護装置の交換時期判定装置、並びにサージ防護装置は、簡易な構成で確実にサージ防護装置の交換時期を判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。なお、以下においては、設備機器の内部にサージ防護装置を備える例を説明するが、サージ防護装置の配置場所はこれに限られるものではない。
【0022】
本実施形態は、例えば、雷や交流電源の開閉器の動作等によってサージが発生することによってサージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数し、サージ電流が流れた回数が、予め定めた所定の交換時期判定閾値を超えている場合には、サージ防護装置の交換時期であると判定する点に特徴がある。
【0023】
図1、図2は、本実施形態に係るサージ防護装置の交換時期判定装置を含む設備機器の構成を示す説明図である。設備機器20は、例えば、高速道路の出入口に配置される自動料金徴収装置やデータを蓄積するサーバー等であり、DC電源回路23や電子回路24を含んでいる。電子回路24は、DC電源回路23から電力が供給されて動作する。DC電源回路23は、例えば、交流電源30(例えば単相100V)からの配線31に接続されるコンセントプラグ21から、入力配線22を介して100Vの交流が供給される。そして、DC電源回路23は、設備機器20が備える電子回路24やその他の装置(例えば、表示装置や読み取り装置等)の駆動に必要な直流電源を生成する。
【0024】
交流電源30と設備機器20とを接続する配線31には、サージが侵入することがある。ここで、サージとは、過渡的な過電圧や過電流全般を意味するものであり、例えば、雷、配電系統の切り替え、容量性や誘導性や負荷の開閉(突入電流やフライバック)、静電気放電等によって生じる。配線31に侵入したサージは、コンセントプラグ21及び入力配線22を通って設備機器20が備えるDC電源回路23や電子回路24へ侵入して、これらの動作に影響を与えることがある。
【0025】
したがって、設備機器20が備えるDC電源回路23や電子回路24をサージから保護するため、交流電源30からの配線31とDC電源回路23や電子回路24との間には、サージ防護手段であるサージ防護装置10が接続される。本実施形態では、交流電源30に接続される入力配線22と、アース(GND)に接続される共通線25との間には、サージ防護手段であるサージ防護装置10が接続される。
【0026】
ここで、サージ防護装置10は、雷、静電気放電、スイッチングなどによって発生するサージ、すなわち過渡的な過大電圧からの機器や設備の保護のために用いられる。サージ防護装置10は、電圧依存性を持つ素子であり、通常の状態では高い抵抗を持っているが、印加電圧がある電圧を超えた時に抵抗を急激に低下させることによって電圧の制限を行なう。
【0027】
サージ防護装置10としては、例えば、バリスタ、ツェナー・ダイオード、シリコン・サージ防護素子のような半導体素子で構成されるものや、ガス避雷管のような放電式のもの等がある。本実施形態においては、サージ防護装置10は半導体素子11A、11Bで構成され、交流電源30からの配線31とアースに接続される共通線25との間に半導体素子11A、11Bが接続される。なお、電源が三相交流である場合、U相、V相、W相の各線とアースとの間に半導体素子が配置される。
【0028】
サージが発生して交流電源30からの配線31に侵入すると、サージ防護装置10に印加される電圧が、設定した電圧を超える。すると、サージ防護装置10を構成する半導体素子11A、11Bの抵抗が急激に低下して、配線31からアースに接続される共通線25へ電流が流れる。これによって、サージによって上昇した配線31の電圧が低下する。その結果、設備機器20のコンセントプラグ21に印加される電圧は、サージによって上昇した電圧(サージ電圧)よりも低下するので、設備機器20が備えるDC電源回路23や電子回路24はサージから保護される。
【0029】
サージ防護装置10にサージによる電流(サージ電流)が流れると、サージ防護装置10の特性が変化する。このため、サージ防護装置10の特性の変化が許容範囲を超えた場合には、サージ防護装置10を交換する。サージ防護装置10の交換時期を判定するため、本実施形態に係る設備機器20は、サージ防護装置10の交換時期を判定するためのサージ防護装置の交換時期判定装置(以下交換時期判定装置という)1を備える。次に、交換時期判定装置1の構成を説明する。
【0030】
交換時期判定装置1は、サージ判定手段である比較器2と、サージ計数手段である計数器3と、交換時期告知手段であるLED4と、電圧分圧素子である抵抗5、6とを含んで構成される。比較器2、計数器3及びLED4には、これらが動作するための電力がDC電源回路23から供給される。サージ防護装置10は、サージ電圧を許容の値以下に抑制することはできるが、サージ電圧を0にすることはできない。したがって、サージ防護装置10によってサージ電圧が抑制された場合には、抑制されたピーク値が配線31に残り、コンセントプラグ21を介して設備機器20の入力配線22に侵入する。
【0031】
この交換時期判定装置1は、サージ防護装置10により抑制されたサージ電圧のピーク値(ピークサージ電圧)を、入力配線22から取得し、取得したピークサージ電圧を、抵抗5、6によって電圧降下させる。そして、電圧降下させたピークサージ電圧Vと、予め定めた閾値電圧Vcとを比較器2が比較し、電圧降下させたピークサージ電圧Vが閾値電圧Vcを超えた場合に、サージ防護装置10へ1回サージ電流が流れたと判定する。
【0032】
計数器3は、比較器2によって、サージ防護装置10へ1回サージ電流が流れたと判定された回数を計数し、累積する。そして、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数(サージ発生回数)Nが、予め定めた交換時期判定閾値Ncを超えた場合には、計数器3は、LED4を点灯あるいは点滅させる。これによって、サージ防護装置10の点検時には、サージ防護装置10の交換時期を簡易かつ確実に知ることができる。また、交換時期判定装置1は、抵抗5、6を用いるので安価に構成でき、また、信頼性を向上させることができる。さらに、サージ防護装置10に流れる電気エネルギの累積値を求める必要はなく、サージ発生回数Nに基づいてサージ防護装置10の交換時期を判定するので、確実にサージ防護装置10の交換時期を判定することができる。
【0033】
ここで、交換時期判定閾値Ncは、サージ防護装置10の仕様によって決定される交換時期よりも小さく設定することが好ましい。例えば、交換時期判定閾値Ncは、サージ防護装置10の仕様によって決定される交換時期の80%〜90%の値とする。このようにすれば、サージ防護装置10の特性変化が小さいうちにサージ防護装置10を交換することができるので、サージ防護装置10の特性変化による影響を確実に回避することができる。
【0034】
図2に示す設備機器20aは、電流検出手段であるCT電流計7によって、サージ防護装置10を流れたサージ電流を検出する。CT電流計7によって検出されたサージ電流は、抵抗5、6を通ってアースに接続される共通線25へ流れる。そして、抵抗5により電圧降下した電圧値を比較器2に入力する。すなわち、CT電流計7によって検出されたサージ電流は、抵抗5によって電圧に変換される。
【0035】
比較器2では、サージ電流(CT電流計7によって検出されたもの)に対応する電圧と、予め定めた電流対応閾値電圧Vc_iとが比較される。電流対応閾値電圧Vc_iは、サージ防護装置10をサージ電流が流れたか否かを判定するための閾値であり、電流対応閾値電圧Vc_iよりも大きい電圧が検出された場合には、サージ防護装置10へ1回サージ電流が流れたと判定する。
【0036】
CT電流計7は、CT、すなわちカレントトランス法による電流計であり、非接触で電流を測定することができる。これによって、サージ電流を検出するCT電流計7は、交流電源30に接続される入力配線22と絶縁されるので、交流電源30に接続される入力配線22の電圧変化の影響等から交換時期判定装置1を保護することができる。
【0037】
図3、図4は、本実施形態の変形例に係るサージ防護装置の交換時期判定装置を含む設備機器の構成を示す説明図である。本変形例に係る交換時期判定装置1aは、上記交換時期判定装置1(図1、図2参照)とほぼ同様の構成であるが、サージ回数表示手段によって、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数を表示する点が異なる。他の構成は、上記交換時期判定装置1と同様である。
【0038】
図3に示す設備機器20b及び図4に示す設備機器20cが備える交換時期判定装置1aは、サージ回数表示手段であるカウント数表示装置4aを備える。ここで、図3に示す設備機器20bは、サージ電圧を検出するものであり、図4に示す設備機器20cは、CT電流計7によってサージ電流を検出するものである。カウント数表示装置4aは、計数器3によって計数された、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数を表示するものであり、例えば、液晶表示パネルやLED表示パネル等を用いることができる。
【0039】
上記交換時期判定装置1(図1、図2参照)は、サージ防護装置10の交換時期を告知するのみなので、点検した直後にサージ防護装置10の交換時期が告知された場合、サージ防護装置10の交換が遅れる場合がある。本変形例に係る交換時期判定装置1aは、カウント数表示装置4aによって、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数を表示する。これによって、サージ防護装置10の点検時においては、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数を知ることができるので、サージ防護装置10の交換時期を、より正確に判定することができる。
【0040】
図5は、本実施形態に係るサージ防護装置の交換時期判定方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係るサージ防護装置の交換時期判定方法を実行するにあたり、ステップS101において、図1等に示す設備機器20等が備える交換時期判定装置1の計数器3をリセットして、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数(サージ発生回数)Nを0に設定する。
【0041】
ステップS102において、交換時期判定装置1の比較器2は、サージ判定パラメータPsとサージ判定パラメータ閾値Pscとを比較する。これによって、サージ防護装置10へサージ電流が流れたか否かを判定する。ここで、サージ判定パラメータPsとは、サージ防護装置10へサージ電流が流れたか否かを判定するためのパラメータであり、抵抗5、6により電圧降下させた、サージ防護装置10により抑制されたサージ電圧のピーク値や、サージ電流に対応する電圧がサージ判定パラメータPsに相当する。また、サージ判定パラメータ閾値Pscは、サージ防護装置10へサージ電流が流れたか否かを判定する際の閾値であり、上述した閾値電圧Vcや電流対応閾値電圧Vc_iがサージ判定パラメータPsに相当する。
【0042】
ステップS102でNoと判定された場合、すなわち、比較器2がPs≦Pscであると判定した場合には、サージ防護装置10へサージ電流は流れていない。この場合、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数は計数されないので、サージ発生回数Nは増加しない。この場合、交換時期判定装置1は、サージ防護装置10へサージ電流が流れたか否かの監視を継続する。
【0043】
ステップS102でYesと判定された場合、すなわち、比較器2がPs>Pscであると判定した場合には、サージ防護装置10へサージ電流が流れている。この場合、計数器3が、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数を計数する。そして、ステップS103において、計数器3は、サージ発生回数Nに1を加算した値を新たなサージ発生回数Nとする。これによって、サージ発生回数Nが1増加する。
【0044】
次に、ステップS104において、計数器3は、現時点におけるサージ発生回数Nを、予め定めた交換時期判定閾値Ncと比較する。ステップS104においてNoと判定された場合、すなわち、計数器3がN≦Ncであると判定した場合、サージ防護装置10の交換時期には至っていない。この場合、交換時期判定装置1は、サージ防護装置10へサージ電流が流れたか否かの監視を継続する。
【0045】
ステップS104においてYesと判定された場合、すなわち、計数器3がN>Ncであると判定した場合、ステップS105において、サージ防護装置10の交換時期であると判定する。この場合、図1や図2に示す交換時期判定装置1では、交換時期告知手段であるLED4を点灯あるいは点滅させる。図3や図4に示す交換時期判定装置1aでは、サージ防護装置10へサージ電流が流れた回数がカウント数表示装置4aへ表示されるので、サージ防護装置10を点検した者がステップS104及びステップS105における判定をすることになる。
【0046】
図6、図7は、本実施形態に係る交換時期判定装置を備えたサージ防護装置を示す構成図である。図6、図7に示すサージ防護装置100、100aは、上述した交換時期判定装置1とサージ防護手段10とを備えている。ここで、図6に示すサージ防護装置100は、サージ電圧を検出するものであり、図7に示すサージ防護装置100は、CT電流計7によってサージ電流を検出するものである。
【0047】
図6、図7に示すサージ防護装置100、100aが備える交換時期判定装置1bは、上述した交換時期判定装置1、1aとほぼ同様の構成であるが、表示器4bによって、LED4やカウント数表示装置4aの機能を実現する点が異なる。他の構成は、上述した交換時期判定装置1、1aと同様である。表示器4bは、サージ発生回数Nを表示したり、サージ発生回数Nが交換時期判定閾値Ncを超えたことを告知したりする機能を有する。
【0048】
サージ防護手段10は半導体素子11A、11Bで構成され、交流電源からの配線とアースとの間に半導体素子11A、11Bが接続される構成になっている。サージ防護手段10には、交流電源からの配線に半導体素子11A、11Bを接続するための入力端子101が取り付けられるとともに、アースに接続するためのアース端子103が接続される。サージ防護装置100、100aは、交換時期判定装置1bが備える比較器2、計数器3及び表示器4bを動作させるための電源を接続するための電源端子102を備える。これによって、交換時期判定装置1bが動作する。このサージ防護装置100、100aは、交換時期判定装置1bを備えるので、交換時期を自己診断できる。これによって、サージ防護装置100、100aの商品価値を向上させることができる。
【0049】
図8は、本実施形態に係る交換時期判定装置を用いてサージ防護装置の交換時期を遠隔監視する例を示す模式図である。設備機器20_1、20_2、・・・20_nが備える交換時期判定装置1_1、1_2、・・・1_nは、通信回線51に接続されている。また、通信回線51には、交換時期監視装置52が接続されており、それぞれの交換時期判定装置1_1、1_2、・・・1_nからそれぞれの設備機器20_1、20_2、・・・20_nにおけるサージ防護装置10_1、10_2、・・・10_nのサージ発生回数Nを取得する。そして、交換時期監視装置52は、取得したサージ発生回数Nと交換時期判定閾値Ncとを比較して、どの設備機器が備えるサージ防護装置が交換時期に至ったかを判定し、モニタ53に表示する。このように、本実施形態では、サージ防護装置の交換時期を遠隔監視することもできる。
【0050】
なお、交換時期判定装置1_1、1_2、・・・1_nは、それぞれ固有のIDを有しており、交換時期監視装置52は、前記IDによってそれぞれの交換時期判定装置1_1、1_2、・・・1_nを区別することができる。また、この例において、交換時期判定装置1_1、1_2、・・・1_nは、少なくともサージ判定手段とサージ計数手段とを備えていればよく、交換時期告知手段やサージ回数表示手段も備える必要はない。
【0051】
以上、本実施形態では、サージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数し、サージ電流が流れた回数が、予め定めた所定の交換時期判定閾値を超えている場合には、サージ防護装置の交換時期であると判定する。これによって、簡易な構成で、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができる。また、サージ防護装置の交換時期判定装置を安価に構成することができる。さらに、サージ防護装置の交換時期判定装置を構成する機器のキャリブレーション等も不要になる。
【0052】
特に、サージ防護装置の特性が変わった後も使用を続けると、電源とアースとが短絡することがある。高速道路の出入口に配置される自動料金徴収装置において、電源とアースとが短絡すると、復旧するまで自動料金徴収装置を使用できないことになる。本実施形態では、サージ防護装置の交換時期を確実に判定することができるので、電源とアースとの短絡といったような事態を未然に防止できるという利点もある。
【0053】
また、サージ防護装置の使用時間によりサージ防護装置を交換する方法もあるが、この方法では、すべてのサージ防護装置の交換時期が同時に訪れるため、サージの発生の回数が異なる場合であっても、すべてのサージ防護装置を同時に交換することになる。すると、すべての設備機器を停止する必要があり、好ましくない。本実施形態では、サージ防護装置にサージ電流が流れた回数に基づいてサージ防護装置の交換時期を判定するので、交換が必要になったサージ防護機器のみを交換すればよい。したがって、停止する設備機器を最小限にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明に係るサージ防護装置の交換時期判定方法及びサージ防護装置の交換時期判定装置、並びにサージ防護装置は、サージ防護装置の交換時期を判定することに有用であり、特に、簡易な構成で確実にサージ防護装置の交換時期を判定することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係るサージ防護装置の交換時期判定装置を含む設備機器の構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態に係るサージ防護装置の交換時期判定装置を含む設備機器の構成を示す説明図である。
【図3】本実施形態の変形例に係るサージ防護装置の交換時期判定装置を含む設備機器の構成を示す説明図である。
【図4】本実施形態の変形例に係るサージ防護装置の交換時期判定装置を含む設備機器の構成を示す説明図である。
【図5】本実施形態に係るサージ防護装置の交換時期判定方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る交換時期判定装置を備えたサージ防護装置を示す構成図である。
【図7】本実施形態に係る交換時期判定装置を備えたサージ防護装置を示す構成図である。
【図8】本実施形態に係る交換時期判定装置を用いてサージ防護装置の交換時期を遠隔監視する例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1、1a、1b サージ防護装置の交換時期判定装置
2 比較器
3 計数器
4a カウント数表示装置
4b 表示器
5、6 抵抗
7 CT電流計
10 サージ防護装置(サージ防護手段)
11A 半導体素子
20、20a、20b、20c 設備機器
21 コンセントプラグ
22 入力配線
23 電源回路
24 電子回路
25 共通線
30 交流電源
31 配線
51 通信回線
52 交換時期監視装置
53 モニタ
100 サージ防護装置
101 入力端子
102 電源端子
103 アース端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サージを抑制するサージ防護装置の交換時期を判定するにあたり、
前記サージの発生により前記サージ防護装置にサージ電流が流れた回数を計数する手順と、
前記サージ電流が流れた回数と、予め定めた所定の交換時期判定閾値とを比較する手順と、
前記サージ電流が流れた回数が、前記交換時期判定閾値を超えている場合には、前記サージ防護装置の交換時期であると判定する手順と、
を含むことを特徴とするサージ防護装置の交換時期判定方法。
【請求項2】
前記サージ防護装置によって抑制されたサージ電圧に基づいて、前記サージ電流が流れたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のサージ防護装置の交換時期判定方法。
【請求項3】
前記サージ防護装置を流れた電流に基づいて、前記サージ電流が流れたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のサージ防護装置の交換時期判定方法。
【請求項4】
サージを抑制するサージ防護装置の交換時期を判定するものであり、
サージの発生により前記サージ防護装置にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、
前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、
前記サージ電流が流れた回数が、前記サージ防護装置の交換時期を示す交換時期判定閾値を超えていることを告知する交換時期告知手段と、
を含むことを特徴とするサージ防護装置の交換時期判定装置。
【請求項5】
サージを抑制するサージ防護装置の交換時期を判定するものであり、
サージの発生により前記サージ防護装置にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、
前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、
前記サージ電流が流れた回数を表示するサージ回数表示手段と、
を含むことを特徴とするサージ防護装置の交換時期判定装置。
【請求項6】
前記サージ判定手段は、
前記サージ防護装置によって抑制されたサージ電圧に基づいて、前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れたか否かを判定することを特徴とする請求項4又は5に記載のサージ防護装置の交換時期判定装置。
【請求項7】
前記サージ判定手段は、
前記サージ防護装置を流れた電流に基づいて、前記サージ防護装置に前記サージ電流が流れたか否かを判定することを特徴とする請求項4又は5に記載のサージ防護装置の交換時期判定装置。
【請求項8】
電源からの配線に設けられるサージ防護手段と、
サージの発生により前記サージ防護手段にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、
前記サージ防護手段に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、
前記サージ電流が流れた回数が、前記サージ防護装置の交換時期を示す交換時期判定閾値を超えていることを告知する交換時期告知手段と、
を含むことを特徴とするサージ防護装置。
【請求項9】
電源からの配線に設けられるサージ防護手段と、
サージの発生により前記サージ防護手段にサージ電流が流れたか否かを判定するサージ判定手段と、
前記サージ防護手段に前記サージ電流が流れた回数を計数するサージ計数手段と、
前記サージ電流が流れた回数を表示するサージ回数表示手段と、
を含むことを特徴とするサージ防護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−269932(P2008−269932A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110685(P2007−110685)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】