説明

サージ電流発生装置

【課題】帰還回路を用いて負荷回路に供給する電流を制御して、負荷変動による誤差を生じない定電流回路並びにその定電流回路を備えた試験装置を提供する。
【解決手段】
サージ電流発生装置100は、被検査対象90に電流を出力する。電流制御回路10−1〜10−nは、電源部30が出力する電流を制御して単位電流源として動作する。選択制御回路20−1〜20−nは、電流制御回路10−1〜10−nが出力する電流の供給を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力する電流を制御するサージ電流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サージ電流発生装置は、急峻に変化する電流を発生させ、被試験素子に対しての電流サージ試験を行う際に使用される装置である。このような電流サージ試験は、半導体装置の製造工程における信頼性確認試験などで行われる。例えば、サージ電流保護用2端子サイリスタにおける信頼性確認試験では、サージ防護動作時の電流サージ耐量の特性を保証するために、大きなピーク値を有するサージ電流をミリ秒単位で印加する電流サージ試験が製品全数を対象として行われる。(例えば、特許文献1または2を参照)。
図2に示される従来のサージ電流発生装置1では、スイッチ2(SW1)をオン状態にすることで高電圧源Vh3から電荷充電用のコンデンサC4を充電し、被試験素子90(DUT)に対して制限抵抗Rs5を通じて電流サージを印加する。その電流サージの印加は、極性切換部60に設けられるスイッチング素子61〜64(SW2a−SW2b及びSW3a−SW3b)を切り換えて、電流の方向を反転させてそれぞれ行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−131672号公報
【特許文献2】実開平03−039183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この図に示す構成のサージ電流発生装置1では、印加時間を長くする場合には実現が困難となる問題がある。例えば、必要なサージ電流ITSMの値を確保しながら、サージ電流ITSMを制限する制限抵抗Rs5の値を大きくすると、印加する電源電圧を高くする必要がある。そのような条件に対応するには、高い電圧を発生する電源設備が必要となり、また、その高い電圧の扱いにも制限が生じて実現が困難になる。そのため、放電時間を長くする手段として、制限抵抗Rs5の値を大きくすることが困難であることから、電荷充電用のコンデンサC4の静電容量を大容量化する必要があった。コンデンサC4の大容量化を行うと、充電時間の増加や、高い電圧で充電するために電源における損失による自己発熱の増加を招くことになる。そのような状況に対応するために、繰り返し行われる試験の周期を伸ばしたり、サージ電流発生装置を冷却する冷却装置を導入することにより十分な放熱量を確保したりする必要がある。これらの要因によって、試験効率が低下し、試験装置が大型化することなどが問題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、サージ電流試験の試験効率を確保し、構成を簡素化させたサージ電流発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、被検査対象に電流を出力するサージ電流発生装置であって、前記電流を出力する電源部と、前記電流を制御して単位電流源として動作する電流制御回路と、前記電流制御回路から出力する前記電流の供給を制御する選択制御回路と、前記電流の極性を切り換える極性切換部とを備えることを特徴とするサージ電流発生装置である。
【0007】
また、本発明は、被検査対象に電流を出力するサージ電流発生装置であって、前記電流を出力する電源部と、分流された前記電流を制御して単位電流源として動作する複数の電流制御回路と、前記電流制御回路に対応して設けられ、選択された該電流制御回路を同期させて前記電流の供給と遮断とを制御する複数の選択制御回路と、前記電流制御回路が出力する電流をそれぞれ加算する電流加算部と、を備えることを特徴とするサージ電流発生装置である。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記電流制御回路は、前記分流された電流を制御する能動素子と、入力される電圧を分圧する第1の抵抗及び該第1の抵抗に直列に接続される第2の抵抗、並びに、前記第2の抵抗に並列接続される放電制御容量素子を含んで構成される制御信号生成部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記被検査対象に供給する電流の極性を切り換える極性切換部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この本発明によれば、サージ電流発生装置は、被検査対象に電流を出力するサージ電流発生装置である。このサージ電流発生装置では、電流制御回路は、電源部から出力される電流を制御して単位電流源として動作する。選択制御回路は、その電流の供給を制御する。
これにより、電流制御回路は、出力する電流を制御することができる電流源として扱うことができる。それにより、被検査対象に供給する電流の制御を容易に行えるようになる。
【0011】
また、本発明によれば、サージ電流発生装置は、被検査対象に電流を出力するサージ電流発生装置である。このサージ電流発生装置では、複数設けられる電流制御回路は、電源部が主力し、分流された電流をそれぞれ制御して単位電流源として動作する。選択制御回路は、電流制御回路に対応して設けられ、選択された該電流制御回路を同期させて電流の供給と遮断とを制御する。電流加算部は、電流制御回路が出力する電流をそれぞれ加算する。
これにより、電流制御回路は、出力する電流を制御することができる電流源として扱うことができる。その電流制御回路を複数組み合わせ、電流加算部により、それぞれ出力する電流を加算して出力することができる。また、電流制御回路は、出力する電流の発生タイミングについて同期させることができるので、加算された電流を特定の時間に集中させることができるようになる。これにより、個々の電流制御回路によって出力される電流容量を合わせた大電流を発生することができる。
【0012】
また、本発明によれば、上記発明において、電流制御回路は、分流された電流を制御する能動素子と制御信号生成部とから形成される。制御信号生成部は、入力される電圧を分圧する第1の抵抗及び該第1の抵抗に直列に接続される第2の抵抗、並びに、第2の抵抗に並列接続される放電制御容量素子を含んで構成される。
これにより、個々の電流制御回路が発生する電流は、回路を分散させたことによる電流値を抑えることができる。そのため印加時間が長くなる電流サージ波形に対応させるために充電する放電制御容量素子の容量を小さくすることができ、容易に構成することができる。
【0013】
また、本発明によれば、上記発明において、極性切換部は、被検査対象に供給する電流の極性を切り換える。
これにより、電流制御回路を単極性の構成にしても、極性切換部を備えることにより、出力する電流の方向を反転することが容易に行える。このため、被検査対象の接続を変更することなく両極性の試験が行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態によるサージ電流発生装置を示すブロック図である。
【図2】従来の実施形態におけるサージ電流発生装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態によるサージ電流発生装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるサージ電流発生装置100を示す概略ブロック図である。
この図に示されるサージ電流発生装置100は、被検査対象(DUT)90にサージ電流を印加する試験装置である。被検査対象(DUT)90に適用される半導体装置の例としては、サージ電流保護回路に用いられる2端子型のサイリスタなどが適用できる。サージ電流発生装置100は、スイッチング動作をする被検査対象(DUT)90であっても出力する電流の電流値を制御することができる。
【0016】
サージ電流発生装置100は、電流制御回路10−1〜10−n、選択制御回路20−1〜20−n、電源部30、制御電源部40、電流加算部50及び極性切換部60を備える。
サージ電流発生装置100において電流制御回路10−1〜10−n(以下、まとめて示すときには「電流制御回路10」という。)は、被検査対象90に印加するサージ電流を分流して、それぞれが独立した単位電流源として動作する。電流制御回路10は、それぞれが独立して制御され、出力するサージ電流の供給と遮断を切り換えることができる。また、出力するサージ電流は、内部回路によって生成される制御電圧に応じた電流値によって定められる電流が出力される。
個々の電流制御回路10は、能動素子11−1〜11−n(以下、まとめて示すときには「能動素子11」という。)、制御信号生成部12−1〜12−n(以下、まとめて示すときには「制御信号生成部12」という。)及び電流制限抵抗16−1〜16−n(以下、まとめて示すときには「電流制限抵抗16」という。)を備える。
【0017】
能動素子11は、電流制御回路10ごとに分流される電流の通電を制御する。能動素子11が電流制御回路10によって通電電流を制御されると電源30から供給される電流を被検査対象90に供給する。能動素子11は、例えば、トランジスタ(Bipolar transistor)、FET(Field effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、などの電流制御素子を適用することができる。能動素子11がFETの場合、能動素子11のP端子がドレインに、O端子がソースに、C端子がゲートに相当する。以下、能動素子11をFETとする場合を代表して説明する。
【0018】
制御信号生成部12は、入力される電圧を分圧する抵抗13(第1の抵抗)及び抵抗13に直列に接続される抵抗14(第2の抵抗)、並びに、抵抗14(第2の抵抗)に並列接続されるコンデンサ15(放電制御容量素子)を含んで構成される。制御信号生成部12は、抵抗13に制御電圧が印加されると、抵抗13と抵抗14による分圧比によって能動素子11の通電ピーク電流制御電圧を生成する。さらに、抵抗14とコンデンサ15で決まる放電時定数によって放電電流制御電圧を生成する。生成された通電ピーク電流制御電圧と放電電流波形制御電圧を能動素子11に印加して、能動素子11の通電電流波形を制御する。
電流制限抵抗16は、能動素子11に対応して設けられ、それぞれの能動素子11に流される電流によって生じる電圧降下に応じて、出力される電流が制御される。
【0019】
電流制御回路10の電源端子Tb10p−1〜Tb10p−n(以下、まとめて示すときには「電源端子Tb10p」という。)は、能動素子11のP端子(ドレイン)が接続され、出力端子Tb10o−1〜Tb10o−n(以下、まとめて示すときには「出力端子Tb10o」という。)は、能動素子11のO端子(ソース)が直列に接続される電流制限抵抗16を介して接続され、制御端子Tb10c−1〜Tb10c−n(以下、まとめて示すときには「制御端子Tb10c」という。)は、制御信号生成部12を介して能動素子11のC端子(ゲート)が接続される。
【0020】
選択制御回路20−1〜20−n(以下、まとめて示すときには「選択制御回路20」という。)は、電流制御回路10ごとに対応して設けられ、それぞれが選択信号を出力するスイッチSW1−1〜SW1−n(以下、まとめて示すときには「スイッチSW1」という。)を備える。スイッチSW1は、入力される制御電源端子Tb20i−1〜Tb20i−n(以下、まとめて示すときには「制御電源端子Tb20i」という。)と、制御信号出力端子Tb20o−1〜Tb20o−n(以下、まとめて示すときには「制御信号出力端子Tb20o」という。)に接続され、制御電源端子Tb20iと制御信号出力端子Tb20o間の接続を制御する。
選択制御回路20は、選択された電流制御回路10が出力するサージ電流の供給と遮断を制御することができる。選択制御回路20は、電流制御回路10を制御するタイミングを同期して制御することができる。同じタイミングで供給するように出力される電流を加算して印加させ、急峻に立ち上がる電流サージを生成させる制御を行うことができる。選択制御回路20は、スイッチSW1を操作して制御することができ、また、図示されない制御部からの制御信号によってスイッチSW1が制御されても良い。
【0021】
電源部30は、被検査対象90に印加するサージ電流を供給する電流源である。電源部30は、電圧源31(Vp)と、電圧源31に並列接続されたコンデンサ32(Cp)を備える。電圧源31の負極とコンデンサ32の一端は、基準電位接続端子に接続され、電圧源31の正極とコンデンサ32の他端が出力端子に接続される。コンデンサ32は、急峻に変化する出力電流に対応するため、常に電源31によって充電され、電流出力時の電流を補填する。このようにコンデンサ32は、電源部30の出力インピーダンスを下げる効果がある。
制御電源部40は、電流制御回路10及び選択制御回路20の動作に必要な制御用電力を供給する。制御電源部40から供給された電圧に応じて、電流制御回路10によって電圧波形が変換され、変換された電圧波形に応じた電流が電流制御回路10から出力される。制御電源部40は、出力端子Tb40pが正極を示し、出力端子Tb40cが負極を示し、電圧Vrefを出力する。
【0022】
電流加算部50は、電流制御回路10が出力する電流をそれぞれ加え合わせ、合成した電流を出力する。電流加算部50は、電流制御回路10に対応して設けられた入力端子Tb50i−1〜Tb50i−n(以下、まとめて示すときには「入力端子Tb50i」という。)と、出力端子Tb50oを備える。入力端子Tb50i−2〜Tb50i−nと出力端子Tb50oの間には、ダイオード51−2〜51−n((以下、まとめて示すときには「ダイオード51」という。)がそれぞれ設けられ、カソードを共通接続にして出力端子Tb50oに接続される。また、入力端子Tb50i−1だけは、出力端子Tb50oに直接接続される。
電流加算部50は、極性切換部60と組み合わせることにより、電流の方向を単方向とすることができる。電流加算部50は、電流制御回路10との接続にダイオードなどのスイッチング素子を設けることにより逆流を防止することができる。電流加算部50は、1つの電流制御回路10と接続する系統には、ダイオードを介さずに加算する系統を備える。この接続により、電流制御回路10などを作動させる制御電源部40を共通にすることが可能となる。
【0023】
極性切換部60は、被検査対象90に供給する電流の極性を切り換える。極性切換部60は、4つのスイッチ61〜64によってブリッジ回路を構成する。極性切換部60は、対向するスイッチ61(SW2a)とスイッチ63(SW2b)、並びに、スイッチ62(SW3a)とスイッチ64(SW3b)を組にして、それぞれの組の一方を導通させ他方を遮断させてブリッジ回路の導通を切り換える。極性切換部60は、入力端子Tb60iにスイッチ61(SW2a)とスイッチ62(SW3a)の一端が接続され、接地端子Tb60gにスイッチ63(SW2b)とスイッチ64(SW3b)の一端が接続される。
また、出力端子Tb60o−1にスイッチ61(SW2a)とスイッチ64(SW3b)の他端が接続され、出力端子Tb60o−2にスイッチ62(SW3a)スイッチ63(SW2b)の一端が接続される。
極性切換部60は、このスイッチ61〜64の切り替えにより、電流の方向を切り換えることができる。
【0024】
次に、上記に示した構成を備えるサージ電流発生装置100の接続例について示す。
基準電位接続端子が基準電位に接続された電源部30の出力端子には、電流制御回路10のTb10pが接続される。制御電源部40の出力端子Tb40Pは、選択制御回路20の制御電源端子Tb20iにそれぞれ接続され、出力端子Tb40cは、電流制御回路10の出力端子Tb10o−1に接続される。選択制御回路20の制御信号出力端子Tb20oは、対応する電流制御回路10の制御端子Tb10cにそれぞれ接続される。電流制御回路10の出力端子Tb10oは、電流加算部50の入力端子Tb50iにそれぞれ接続される。電流加算部50の出力端子Tb50oは、極性切換部60の入力端子Tb60iに接続され、接地端子Tb60gは基準電位端子に接続される。極性切換部60の出力端子Tb60o−1とTb60o−2の間に被検査対象(DUT)90が接続される。
【0025】
続いて、サージ電流発生装置100の動作について説明する。
まず、サージ電流発生装置100における電流制御の仕組みを、1組の電流制御回路10−1と選択制御回路20−1によって制御する場合を例にして説明する。この説明において特に説明する場合を除き、制御電源部40の負極の電位を基準として説明する。
選択制御回路20−1のスイッチSW1−1をオン(導通)状態にすることにより、電流制御回路10−1の制御入力端子Tb10c−1にステップ状に変化する電圧Vrefが印加される。電流制御回路10−1では、電圧Vrefを入力とし、出力される電流I1が制御される。電流I1は、電圧Vrefのステップ入力による過度応答としてとらえることができる。
入力される電圧Vrefは、抵抗13と抵抗14により電圧Vcに分圧されるが、コンデンサC15があることにより一次遅れの応答特性で電圧Vcが遷移する。すなわち、電圧Vcは、上記の通電ピーク電流制御電圧と放電電流波形制御電圧になる。制御電圧として電圧Vcが印加された能動素子11は、所定の閾値以上の電圧がC端子に印加されることにより導通状態となり、電流I1を制限抵抗16−1に流入させる。制限抵抗16−1では、電流I1によって(Rs×I1)の電圧降下が発生し、その電圧降下に応じて能動素子のO端子の電位が上昇する。この能動素子11−1のO端子の電圧の上昇によって能動素子11−1のC端子とO端子間に掛かる制御電圧が低下する。すなわち、能動素子11−1にFETが適用される場合には、ソースフォロアの回路構成として機能することになる。以上の関係により、能動素子11−1が出力する電流を設定できることを示される。
【0026】
能動素子11−1が出力する電流は、選択制御回路20−1を介して循環する回路では、能動素子11−1のC端子のインピーダンスが高いことから、電流制御に必要とされる微弱な電流が帰還することになる。残りの電流は、電流加算部50、極性切換器60、被検査対象(DUT)90及び電源部30を介して電流制御回路10に接続される閉回路に流れる電流となる。これにより、サージ電流発生装置100は、能動素子11−1の出力電流として設定した電流を、被検査対象(DUT)90に印加できる。
被検査対象(DUT)90が、サイリスタのようなスイッチング動作をする半導体素子であっても能動素子11−1を制御する電圧Vcに応じて出力する電流値を追従させることが可能である。例えば、立ち上がり時間10マイクロ秒、半値幅1000マイクロ秒(10×1000マイクロ秒)などの電流サージを被検査対象(DUT)90を印加するには、電圧Vcに上記の時間条件を満足する制御電圧により制御することにより所定の電流サージを発生させることができる。
【0027】
サージ電流発生装置100における電流加算の仕組みを示す。
各電流制御回路10及び選択制御回路20が供給できる電流値は、同じ値(例えば、10A(アンペア))に設定されたとする。被検査対象(DUT)90に印加できる電流は、並列に接続された電流制御回路10及び選択制御回路20がそれぞれ供給する電流の加算値になる。すなわち、同じ電流値Iに設定されている電流制御回路10及び選択制御回路20では、サージ電流発生装置100が出力する電流は、作動させる組の数nに応じて変化させることができ、その値は(I×n)になる。
【0028】
上記に示した1組の電流制御回路10−1及び選択制御回路20−1と、他の1組とされる電流制御回路10−2及び選択制御回路20−2とを組み合わせた形態を例にしてより詳細に説明する。
電源部30が出力し、それぞれの組に分流されて電流値が制御された電流は、電流加算部50によって加算され、極性切換部60を介して被検査対象(DUT)90に印加され、電源部30に戻る。
【0029】
電流制御回路10−2及び選択制御回路20−2における電流制御は、上記の電流制御回路10−1及び選択制御回路20−1における電流制御と同様に制御される。相違点は、電流制御回路10−2及び選択制御回路20−2による回路では、電流制御回路10−2の出力端子Tb10o−2は、電流加算部50におけるダイオード51−2を介して、制御電源部40の負極に接続される。
能動素子11−2が出力する電流は、選択制御回路20−2を介して循環する回路では、能動素子11−2のC端子のインピーダンスが高いことから、電流制御に必要とされる微弱な電流が帰還することになる。残りの電流は、電流加算部50、極性切換器60、被検査対象(DUT)90及び電源部30を介して電流制御回路10に接続される閉回路に流れる電流となる。これにより、サージ電流発生装置100、能動素子11−2の出力電流として設定した電流を、被検査対象(DUT)90に印加できる。
【0030】
上記では2組を組み合わせた形態の例を示したが、同様に複数の電流制御回路10及び選択制御回路20を用いれば、それぞれが出力する電流は、電流加算部50に設けられたダイオード51によって加算することができる。このダイオード51は、電流制御回路10及び選択制御回路20から電流が出力される場合には出力される電流の加算を行い、電流制御回路10及び選択制御回路20を作動させず電流を出力しない場合には、電流を出力しない電流制御回路10に流入する電流を遮断する。これにより、ダイオード51は、電流制御回路10への大電流の流入を防止して回路を保護することができる。
【0031】
以上に示したように、複数の選択制御回路20は、同じ位相で複数の電流制御回路10を制御することにより、個々の電流制御回路10が出力する電流値を加算した電流値を有するサージ電流を発生させることが可能となる。
【0032】
なお、本発明のサージ電流発生装置は、サージ電流発生装置100に相当する。また、本発明の電源部は、電源部30に相当する。また、本発明の電流制御回路は、電流制御回路10(10−1、10−2〜10−n)に相当する。また、本発明の選択制御回路は、選択制御回路20(20−1、20−2〜20−n)に相当する。また、本発明の電流加算部は、電流加算部50に相当する。また、本発明の能動素子は、能動素子11(11−1、11−2〜11−n)に相当する。また、本発明の制御信号生成部は、制御信号生成部12(12−1、12−2〜12−n)に相当する。また、本発明の極性切換部は、極性切換部60に相当する。
【0033】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。本発明のサージ電流発生装置100における電流制御回路10は、能動素子11の周辺回路は、適用される半導体装置に応じて変更し、構成数や電流容量ついても特定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
100 サージ電流発生装置
10−1、10−2、10−n 電流制御回路
11−1、11−2、11−n 能動素子
12−1、12−2、12−n
13、14 抵抗
15 コンデンサ
16−1、16−2、16−n 電流制限抵抗
1−1、1−2、1−n
20−1、20−2、20−n 選択制御回路
SW1−1、SW1−2、SW1−n スイッチ
30 電源部
31 電源
32 コンデンサ
40 制御電源部
50 電流加算部
51−2、51−n ダイオード
60 極性切換部
61、62、63、64 スイッチSW2a、SW2b、SW3a、SW3b
90被検査対象(DUT)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象に電流を出力するサージ電流発生装置であって、
前記電流を出力する電源部と、
前記電流を制御して単位電流源として動作する電流制御回路と、
前記電流制御回路から出力する前記電流の供給を制御する選択制御回路と、
前記電流の極性を切り換える極性切換部と
を備えることを特徴とするサージ電流発生装置。
【請求項2】
被検査対象に電流を出力するサージ電流発生装置であって、
前記電流を出力する電源部と、
分流された前記電流を制御して単位電流源として動作する複数の電流制御回路と、
前記電流制御回路に対応して設けられ、選択された該電流制御回路を同期させて前記電流の供給と遮断とを制御する複数の選択制御回路と、
前記電流制御回路が出力する電流をそれぞれ加算する電流加算部と、
を備えることを特徴とするサージ電流発生装置。
【請求項3】
前記電流制御回路は、
前記分流された電流を制御する能動素子と、
入力される電圧を分圧する第1の抵抗及び該第1の抵抗に直列に接続される第2の抵抗、並びに、前記第2の抵抗に並列接続される放電制御容量素子を含んで構成される制御信号生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサージ電流発生装置。
【請求項4】
前記被検査対象に供給する電流の極性を切り換える極性切換部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載のサージ電流発生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−169632(P2010−169632A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14473(P2009−14473)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(591132955)株式会社秋田新電元 (29)
【Fターム(参考)】