説明

サーフェスメッシュモデルを作成する方法

【課題】サーフェスメッシュモデルを作成する時間を短縮化することができるモデル作成方法を提供する。
【解決手段】射出成形品のソリッドCADモデルから意匠面または中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する方法であり、ソリッドCADモデルが記述する射出成形品の意匠面を見渡すことが可能な方向に座標軸を設定する工程と、設定した座標面に意匠面を投影した一つの平面を抽出する工程と、平面を隙間なく分割する微小平面群に分割する工程と、各微小平面について、その微小平面に対応するソリッドCADモデルの表面を記述するデータから、その微小平面に対応する微小表面を記述するデータに整理する工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形品のソリッドCADモデルからCAE解析に用いるサーフェスメッシュモデルを作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形品のCAE解析を行うには、ソリッドCADモデルが記述している射出成形品の表面を微小表面群に分割したサーフェスメッシュモデルを作成する必要がある。
特許文献1のサーフェスメッシュモデル作成方法では、射出成形品の表面を微小表面群に分割し、三次元測定手段を用いて各微小表面の形状と位置と裏面までの板厚を実測し、各微小表面を記述するデータに対応する板厚データを対応付けて、CAE解析用のサーフェスメッシュモデルを作成している。
【特許文献1】特開2005−196245号公報
【0003】
一般的なCEA解析用のソフトウエアを用いて、複数の面を備えている射出成形品のサーフェスメッシュモデルを作成する場合、作業者は、サーフェスメッシュモデルを作成する面を順次指定する。CEA解析用のソフトウエアは、指定された面毎に個別にサーフェスメッシュモデルを作成する。各面について個別に作成されたサーフェスメッシュモデルの間は、不連続になっている場合が多い。そこで、作業者は、これらを接続して射出成形品全体のサーフェスメッシュモデルを作成する。この作業には相応の時間を要し、特に、射出成形品が備えている面数が多いほど時間を要していた。
本発明は、上記の問題点を解決するために創案された。
本発明では、サーフェスメッシュモデルを作成する時間を短縮化することができるモデル作成方法を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(請求項1に記載の発明)
本発明は、射出成形品を記述するソリッドCADモデルから意匠面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する方法に関する。この方法は、ソリッドCADモデルが記述する射出成形品の意匠面を見渡すことが可能な方向に座標軸を設定する工程と、設定した座標軸の座標面に意匠面を投影した一つの平面を抽出する工程と、その平面を隙間なく分割する微小平面群に分割する工程と、各微小平面について、その微小平面に対応するソリッドCADモデルの表面を記述するデータから、その微小平面に対応する微小表面を記述するデータに整理する工程を備えている。
「射出成形品の意匠面を見渡すことが可能な方向」とは、それが可能な場合には射出成形品の意匠面の全部を一度に見ることができる方向を示す。全部を一度に見ることができる方向がない場合には、意匠面の大部分あるいは主要部を見ることができる方向をいう。
「座標面」とは、見る方向に直交する面をいう。例えば観測方向をz軸に設定したときには、x−y平面が座標面に相当する。
ソリッドCADモデルの表面を記述するデータから、微小平面に対応する微小表面を記述するデータに整理する態様には、例えば、x−y平面上の位置が決まっている微小平面について、その微小平面に対応するソリッドCADモデルの表面を記述するデータから、z方向の位置を抽出することによって、その微小平面に対応する微小表面を記述するデータに整理する(z方向の位置を付与する)態様を含む。
本発明のモデル作成方法によれば、設定した座標面にソリッドCADモデルを投影することによって意匠面の全体を一つの平面に投影し、その一つの連続平面から意匠面の全体を記述するサーフェスメッシュモデルを一度に作成することができる。これにより、意匠面が複数の面で構成されている場合には面毎にサーフェスメッシュモデルを作成し、不連続となっているサーフェスメッシュモデル同士を連続することによって全体のサーフェスメッシュモデルを作成していた従来の方法と比較すると、モデル作成に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0005】
(請求項2に記載の発明)
本発明は、射出成形品を記述するソリッドCADモデルから中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する方法をも提供する。この方法は、ソリッドCADモデルが記述する射出成形品の意匠面を見渡すことが可能な方向に座標軸を設定する工程と、設定した座標軸の座標面に意匠面を投影した一つの平面を抽出する工程と、その平面を隙間なく分割する微小平面群に分割する工程と、各微小平面について、その微小平面に対応するソリッドCADモデルの表面を記述するデータから、その微小平面に対応する微小表面を記述するデータに整理するとともに、その微小表面の法線方向を算出する工程と、各微小表面ついて、ソリッドCADモデルのデータから、法線方向に測定した射出成形品の厚みを計算する工程と、各微小表面について、法線方向に厚みの半分の距離だけオフセットしたオフセット微小面を計算する工程を備えている。
「中立面」とは、ソリッドCADモデルが記述する射出成形品を厚み方向で二分する面をいう。
「各微小表面ついて法線方向に測定した射出成形品の厚み」とは、法線方向の厚みを各微小表面について平均化した値であって、各微小表面内の厚みが均一でなくてもよい。
一般的に、射出成形品が比較的大型の場合には、CAE解析用に意匠面を記述するサーフェスメッシュモデルを利用する。しかしながら、射出成形品が比較的小さい場合には、中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを利用した方が、解析結果に誤差が少ないことが知られている。このために、CAE解析用のソフトウエアの中には、ソリッドCADモデルから、中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する機能を有しているものがある。
本発明のモデル作成方法によれば、設定した座標面にソリッドCADモデルを投影することによって意匠面の全体を一つの平面に投影し、その一つの連続平面から中立面の全体を記述するサーフェスメッシュモデルを一度に作成することができる。形状が比較的小さい射出成形品のCAE解析に適した中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを短時間で作成することができる。
【0006】
(請求項3に記載の発明)
座標軸の設定工程では、射出成形品の型抜き方向に座標軸を設定するのが好ましい。
射出成形品の型抜き方向は、アンダーカットが生じない方向に設定されていることが多く、射出成形品の意匠面を全部を一度に見渡せる方向に設定されている場合が多い。したがって、この方向に座標軸を設定すれば、全ての意匠面を投影した一つの平面を簡単に抽出することができる。
【0007】
(請求項4に記載の発明)
サーフェスメッシュモデルを作成するにあたって、非意匠面に存在するリブを除去したソリッドCADモデルを作成する工程を備えており、まず、リブを除去したソリッドCADモデルから厚みを計算するのが好ましい。
この「リブ」とは、非意匠面に局所的に設けられた突出部を示す。
リブを含めて厚みを計算すると、厚みの計算が難しくなり、中立面が不自然なものとなりやすい。リブを除去したモデルで厚みを計算する方が簡単であり、かつ自然な中立面を計算することができる。
【0008】
(請求項5に記載の発明)
除去しておいたリブの中立面を計算する工程と、リブを除去して計算しておいた中立面にリブの中立面を付加する工程を備えていることが好ましい。
リブの中立面を計算するのは容易であるので、リブを除去していないソリッドCADモデルから中立面を計算するよりも、リブを除去して計算した中立面にリブの中立面を付加した方が簡単に計算できる。また自然な中立面を計算することができる。
【0009】
(請求項6に記載の発明)
法線方向に厚みの半分の距離だけオフセットしたオフセット微小面を計算した後に、高さ方向に(観測している方向に)不連続な微小面群については、異なる高さを有する頂点(微小面を形成する頂点)に隣接する頂点群同士を接続した微小面に置き換える工程を備えていてもよい。
これによれば、連続する中立面を記述するサーフェスメッシュモデルに簡単に置き換えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、意匠面あるいは中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成するのに要する時間を短縮化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。
(第1形態)射出成形品の意匠面の全部を見渡すことが可能な方向に座標軸を設定する。
(第2形態)モデル作成方法は、非意匠面に設けられているリブを検出して自動的に除去する工程を備えている。
(第3形態)モデル作成方法は、非意匠面に設けられているリブの中立面を自動的に計算し、中立面を除去して計算した中立面にリブの中立面を自動的に付加する工程を備えている。
【実施例】
【0012】
本発明のCAE解析方法に係る一実施例を図1〜図8を参照しながら説明する。本実施例は、自動車の樹脂製インストルメンタルパネル(インパネ)を射出成形する射出成形型のソリッドCADモデルから、樹脂流動解析や剛性解析を行う数値計算(CAE解析)方法に関する。本実施例では、特に、CAE解析装置(特に図示していない。)のCAE解析用プログラムを用いてサーフェスメッシュモデルを作成する方法について説明する。
図1は、射出成形品(インパネ)10の断面図を示す。図2は、射出成形品10を図1に示すII方向から見た矢視図である。図3は、射出成形品10を図1に示すIII方向から見た矢視図である。図4は、CAE解析用プログラムの一部を示すフローチャート図である。図5は、簡易モデルの射出成形品20を説明する図である。図6は、射出成形品20を厚み方向にオフセットした面が不連続になっている部分を説明する図である。図7は、図6で不連続になっている面を連続面とする方法を説明する図である。図8は、射出成形品20の中立面を説明する図である。
【0013】
射出成形品10は、図1に示すように、意匠面(表面)11と、非意匠面(裏面)12を持っている。意匠面11は、意図した表面形状に仕上げる必要がある面である。非意匠面12は、表面形状が重視されない面である。
射出成形品10は、断面が略フの字型に構成されている。意匠面11には、車両にインパネとして取り付けた際の上面(図1に示す上面)と、前面(ドライバー側に向く面であって、図1に示す右側の面)が設けられている。上面の表面側には滑り止めの凸部11aが3列平行に設けられている。また、前面には、蓋等の部材や計器類を取り付けるための孔11bが2箇所に設けられている。このような形状の射出成形品10について、ソリッドCADモデルからサーフェスメッシュモデル作成する方法について、CAE解析装置が実行する処理を、図4に示すフローチャート図に基づいて説明する。
【0014】
図4に示す処理を実行するプログラムは、CAE解析装置のROM等の記憶手段(特に図示していない。)に記憶されている。CAE解析装置のCPU(特に図示していない。)は、必要に応じて記憶手段からプログラムを読み出して実行する。
ステップS10では、射出成形品10のソリッドCADモデルを投影する座標軸が設定される。射出成形品10は、図1に示すII方向から見ると、図2に示すように見える。この方向から見ると、射出成形品10の前面は見えるが上面は見えない。また、図1に示すIII方向から見ると、図3に示すように見える。この方向から見ると、射出成形品10の前面及び上面の両方を見ることができる。上面に設けられている凸部11aと前面に設けられている孔11bの両方を見ることができる。作業者は、CAE解析装置に、射出成形品10の意匠面11の全体を一度に見渡すことが可能な方向を選択し、CAE解析装置に設定する。図1に示す場合には、III方向にZ座標軸を設定する。CAE解析装置は、ステップS11の処理に進む。
ステップS11では、非意匠面12にリブがあるか否かを判別する。リブがある場合には(ステップS11のYES)、ステップS12の処理に進む。リブがない場合には(ステップS11のNO)、ステップS13の処理に進む。例えば、CAE解析装置の表示手段にリブがあるか(「Yes」の表示)否か(「No」の表示)を選択する画面が表示される。リブある場合には、作業者は「Yes」の表示を選択する。これによって、射出成形品の非意匠面にリブがあることが設定される。リブがない場合には、作業者は「No」の表示を選択する。この場合には、射出成形品の非意匠面にリブがあることは設定されない。非意匠面にリブが設けられている射出成形品の場合には、ステップS12で、作業者によりリブの位置が設定される。そして、ステップS13の処理に進む。なお、射出成形品10には非意匠面12にリブが設けられていないので、ステップS13の処理に進む。
なお、ステップS11のリブの有無の判定、及びステップS12リブの位置の設定は、CEA解析装置によって自動的に行うこともできる。
ステップS13では、ステップS10で設定した座標軸の座標面に、ソリッドCADモデルを投影した面を抽出する。射出成形品10の場合には、これによって、意匠面11を投影した平面が抽出される。図3がそれを例示している。この段階では、実際には立体的である意匠面11が平面に投影されている。
【0015】
以降では説明を分かり易くするために、射出成形品10の代わりに、図5に例示する射出成型品20について説明する。
射出成型品20は、上面が略長方形の形状を有するとともに、意匠面21及び非意匠面22を有している。図示の簡単化のために、意匠面21が平面で図示されているが、実際には立体的であり、3次元曲面を含んでいる。また非意匠面22側には、段差23が設けられている。図5に示すように、段差23の左側の部分と段差23の右側の部分では厚み(図5に示す上下方向の寸法)が相違する。また非意匠面22側には、リブ24が設けられている。図5の場合、Z軸方向から見ると、実際には立体的である意匠面21の全体が一度に見渡せる。
【0016】
射出成形品20のソリッドCADモデルからサーフェスメッシュモデル作成するには、ステップS10で、意匠面21の全部を一度に見渡せる方向にZ軸を設定する。CAE解析装置は、ステップS11の処理に進む。
ステップS11では、非意匠面22にリブがあるか否かを判別する。リブがある場合には(ステップS11のYES)、ステップS12の処理に進む。リブがない場合には(ステップS11のNO)、ステップS13の処理に進む。射出成形品20の場合には、非意匠面22にリブ24が設けられているので、ステップS12の処理に進む。
ステップS12では、作業者によりリブ24の位置が設定される。そして、ステップS13の処理に進む。
ステップS13では、ステップS10で設定したZ方向の座標軸から、ソリッドCADモデルをX−Y平面に投影した面を抽出する。これによって、略長方形の意匠面21を投影した1つの平面が抽出される。CAE解析装置は、ステップS14の処理に進む。
【0017】
ステップS14では、ステップS13で抽出した平面を、図5の上面にその一部を記載してあるように、各々が三角形である微小平面群に分割する。この時点では、各微小平面は、X−Y平面内の位置データは有しているが、Z方向の位置データは有していない。
次に、CAE解析装置は、ステップS15の処理に進む。ステップS15では、各微小平面に対応する微小表面(これもまた三角形であるが、一般的にはX−Y平面内になく、X−Y平面に対して傾斜している)を構成する頂点のZ方向の位置データを計算する。この段階では、ソリッドCADモデルのデータが利用され、X−Y座標で特定される表面上の位置のZ座標が計算される。この結果、Z軸に沿って投影すると微小平面となる微小表面(微小平面に対応する微小表面)の各頂点のX―Y―Z座標が求められる。
この段階で、意匠面を記述するサーフェスメッシュモデルが完成する。この処理方法によると、一つの連続平面(意匠面21をX−Y平面に投影した平面)から、意匠面21の全体を記述するサーフェスメッシュモデルを一度に作成する。従来は、意匠面が数学的には複数の面で構成されている場合には、面毎にサーフェスメッシュモデルを作成し、面毎に作成したサーフェスメッシュモデルをつなげることによって全体のサーフェスメッシュモデルを作成していた。従来の方法と比較すると、意匠面を記述するサーフェスメッシュモデルの作成に要する時間を大幅に短縮化することができる。
【0018】
中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する場合には、CAE解析装置は、ステップS16以降の処理に進む。
ステップS16では、各微小表面について、法線方向に測定した射出成形品の厚みの平均を算出する。ステップS12でリブの位置が設定されている場合には、リブに係る厚み(例えば、図5に示すリブ24の上下方向の寸法)はないものとして厚みを計算する(すなわち、リブ24は除去される)。したがって、図5の射出成形品の場合、段差23の左側の微小表面について、意匠面21と非意匠面22の間の厚みをhaとすると、微小表面の厚みの平均はhaとなる。また、凹部22d1と凸部22d2が設けられている部分でも、凹部22d1と凸部22d2の幅(X方向の寸法)と非意匠面22からの高さ(Z方向の寸法)が同じであれば、厚みの平均はhaとなる。また、段差23の右側の微小表面について、意匠面21と非意匠面22の間の厚みをhbとすると、微小表面の厚みの平均はhbとなる。そして、CAE解析装置は、ステップS18の処理に進む。
【0019】
ステップS18では、各微小表面について、図5の一点鎖線で示すように、法線方向に厚みの半分の距離だけオフセットしたオフセット微小面を抽出する。ステップS16で算出したように、段差23の左側と右側では微小表面の法線方向の厚みが相違するために、この位置では、各微小表面を厚み方向にオフセットしたオフセット微小面群が不連続となる。
ステップS20では、ステップS18で算出したオフセット微小面群に、不連続となっている部分があるか否かを判別する。不連続となっている微小面群がない場合には、ステップS24に進む。不連続となっている微小面群がある場合には、ステップS22の処理に進む。
図5の射出成形品の場合、図6に示すように、段差部23において、オフセット微小面(例えば三角形L11,L12,L2)とオフセット微小面(三角形U11,U12,U2)は不連続になっている。以後では、例えばオフセット微小面(L11,L12,L2)という場合は、点L11と点L12と点L2を頂点とする三角形の面を示す。オフセット微小面(L12,L13,L3)とオフセット微小面(U12,U13,U3)もまた不連続になっており、オフセット微小面(L13,L14,L4)とオフセット微小面(U13,U14,U4)もまた不連続になっており、オフセット微小面(L14,L15,L5)とオフセット微小面(U14,U15,U5)もまた不連続になっている。段差23よりも左側のオフセット面25aと右側のオフセット面25bは、不連続となっている。図中の白丸は連続している微小表面の頂点(節点)を示し、黒丸は不連続な微小表面の節点を示す。不連続となっている微小面群がある場合には、ステップS22の処理に進む。
【0020】
ステップS22では、不連続となっているオフセット微小面を連続化する。ここでは、高さ方向に不連続なオフセット微小面群について、異なる高さを有する頂点に隣接する頂点群同士を直接接続した微小面を作成する。図7に示すように、例えば、高さ方向に不連続なオフセット微小面(L11,L12,L2)とオフセット微小面(U11,U12,U2)について、異なる高さを有する頂点U11と頂点L11(併せて図6参照)に隣接する頂点U1と頂点L1を直接接続する。また、頂点U2と頂点L1を直接接続する。また、頂点U2と頂点L2を直接接続する。同様にして、異なる高さを有する頂点U12と頂点L12に隣接する頂点、異なる高さを有する頂点U13と頂点L13に隣接する頂点、異なる高さを有する頂点U14と頂点L14に隣接する頂点、異なる高さを有する頂点U15と頂点L15に隣接する頂点を直接接続することによって、図7に一点鎖線で示したように、微小面群が置き換えられる。これによって、不連続であったオフセット微小面群は、連続した微小面群(U1,L1,U2)、(L1,U2,L2)、(U2,L2,U3)、(L2,U3,L3)、(U3,L3,U4)、(L3,U4,L4)、(U4,L4,U5)、(L4,U5,L5)、(U5,L5,U6)、(L5,U6,L6)に置き換えられる。
CAE解析装置は、不連続部分がなくなるまで、ステップS20の処理に戻る。
【0021】
ステップS24では、ステップS22で連続化したオフセット面を、中立面を記述するサーフェスメッシュモデルとする。図8に示すように、この段階では、リブ24を除去した射出成形品20の中立面26を記述するサーフェスメッシュモデルが計算される。そして、ステップS26の処理に進む。
ステップS26では、ステップS12でリブが設定されているか否かを判別する。リブが設定されていなければ終了する。リブが設定されている場合には、ステップS28の処理に進む。
ステップS28ではリブの表面と裏面を設定する。図5に示すリブ24の場合、作業者は、リブの表面24aと裏面24bを設定する。そして、ステップS30の処理に進む。
ステップS30では、図8に示すように、リブ24の中立面24cを抽出する。この時点では、意匠面21側から見た中立面26と、リブ24の中立面24cは、不連続となっている。そして、ステップS32に進む。
ステップS32で、作業者は、CAE解析ソフトウエアを用いて、中立面26に、リブ24の中立面24cを付加する。そして、ステップS26に戻る。
このようにして、射出成形品20の中立面が抽出される。
【0022】
なお、射出成型品10についても、上記した射出成型品20と同様の処理によって、中立面を記述するサーフェスメッシュモデルが作成される。
図1から3に示した射出成型品10の場合、前面と上面の両方が一つのX―Y平面内に投影されるので、この平面を隙間なく微小平面群に分割し、これに基づいて意匠面ないし中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを一度に作成することができる。意匠面を形成する複数の面について個別に微小表面群に分割し、これに基づいて中立面を作成する場合と比較して、モデル作成に要する時間を短縮化することができる。
また、本実施例のモデル作成方法によれば、非意匠面にリブが設けられている場合には、リブを除去した中立面を抽出し、後でリブの中立面を付加すればよい。したがって、非意匠面にリブが設けられているソリッドCADモデルの中立面を容易に計算することができる。
【0023】
本実施例では、射出成形品10の座標軸を、射出成形品10の意匠面11の全部を見渡せるIII方向に設定した。また、射出成形品20の座標軸は、射出成形品20の意匠面21の全部を見渡せるZ方向に設定した。全部を見渡せる座標軸を設定することができない射出成形品の場合には、意匠面の大部分あるいは主要部を見ることができる方向に座標軸を設定する。
本実施例では、CAE解析用に用いるために、射出成形品の中立面を記述するサーフェスメッシュモデルとする場合について説明したが、意匠面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する場合には、図4のステップS14までを実行すればよい。
本実施例では、法線方向に厚みの半分の距離だけオフセットしたオフセット微小面群が高さ方向に不連続となる場合には、図7に示したように、異なる高さを有する頂点に隣接する頂点群同士を直接に接続した微小面に置き換えることで、高さ方向に不連続な微小面群を連続した微小面群に変換した。高さ方向に不連続な微小面群を連続する微小面群に変換する方法は、この例に限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、図6に示す点U11と点L11の中点、点U12と点L12の中点、点U13と点L13の中点、点U14と点L14の中点、点U15と点L15の中点をそれぞれ算出して、中点を通るとともに、異なる高さを有する頂点に隣接する頂点群を通る微小面を求めてもよい。
【0024】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】射出成形品(インパネ)10の断面図を示す。
【図2】射出成形品10を図1に示すII方向から見た矢視図である。
【図3】射出成形品10を図1に示すIII方向から見た矢視図である。
【図4】CAE解析用プログラムで、CAE解析用の中立面を作成する際に実行する処理のフローチャート図である。
【図5】厚みが相違する部分とリブ24が設けられている射出成形品20のソリッドCADモデルを示す。
【図6】射出成形品20を座標軸Z方向に投影して厚み方向にオフセットした場合、オフセットした面が不連続になっている部分を説明する図である。
【図7】図6で不連続になっている面を接続する方法を説明する図である。
【図8】射出成形品20の中立面を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
10,20 射出成形品
11,21 意匠面
11a 凸部
11b 孔
12,22 非意匠面
23 段差
24 リブ
24a リブ24の表面
24b リブ24の裏面
24c リブ24の中立面
25a,25b オフセット面
26 リブを除去した射出成形品20の中立面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形品のソリッドCADモデルから意匠面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する方法であり、
ソリッドCADモデルが記述する射出成形品の意匠面を見渡すことが可能な方向に座標軸を設定する工程と、
設定した座標軸の座標面に前記意匠面を投影した一つの平面を抽出する工程と、
前記平面を隙間なく分割する微小平面群に分割する工程と、
各微小平面について、その微小平面に対応するソリッドCADモデルの表面を記述するデータから、その微小平面に対応する微小表面を記述するデータに整理する工程と、
を備えている意匠面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する方法。
【請求項2】
射出成形品のソリッドCADモデルから中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する方法であり、
ソリッドCADモデルが記述する射出成形品の意匠面を見渡すことが可能な方向に座標軸を設定する工程と、
設定した座標軸の座標面に前記意匠面を投影した一つの平面を抽出する工程と、
前記平面を隙間なく分割する微小平面群に分割する工程と、
各微小平面について、その微小平面に対応するソリッドCADモデルの表面を記述するデータから、その微小平面に対応する微小表面を記述するデータに整理するとともに、その微小表面の法線方向を算出する工程と、
各微小表面ついて、ソリッドCADモデルのデータから、前記法線方向に測定した射出成形品の厚みを計算する工程と、
各微小表面について、前記法線方向に前記厚みの半分の距離だけオフセットしたオフセット微小面を計算する工程と、
を備えている中立面を記述するサーフェスメッシュモデルを作成する方法。
【請求項3】
前記座標軸の設定工程では、射出成形品の型抜き方向に座標軸を設定することを特徴とする請求項1又は2のモデル作成方法。
【請求項4】
ソリッドCADモデルから非意匠面に存在するリブを除去する工程を備えており、
リブを除去したソリッドCADモデルから前記厚みを計算することを特徴とする請求項2又は3のモデル作成方法。
【請求項5】
前記除去工程で除去したリブの中立面を計算する工程と、
リブを除去して計算した中立面にリブの中立面を付加する工程を備えている請求項4のモデル作成方法。
【請求項6】
前記法線方向に前記厚みの半分の距離だけオフセットしたオフセット微小面を計算した後に、高さ方向に不連続な微小面群については、異なる高さを有する頂点(微小面を形成する頂点)に隣接する頂点群同士を接続した微小面に置き換える工程を備えていることを特徴とする請求項2から5のいずれかのモデル作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−193443(P2007−193443A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9052(P2006−9052)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】