説明

サーボシステム

【課題】アナログセンサを容易に扱うことのできる、省配線が可能で使い勝手のよいサーボシステムを提供する。
【解決手段】上位マスタ1と複数のサーボアンプ2,3,4間をネットワークで接続してモータ制御するサーボシステムにおいて、サーボアンプ2は、外部センサ8のアナログ信号を入力するアナログ入力回路2aと、アナログ入力回路2aの出力をサーボアンプ2側に接続するか上位マスタ1側に接続するかを切り換える切換手段2cを備え、切換手段2cによってアナログ入力回路2aの出力をサーボアンプ2側に接続したとき、モータ制御に用い、上位マスタ1側に接続したとき、アナログ信号をシステム全体の制御に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器などに用いられるネットワーク接続されたサーボシステムの、特にアナログ出力の外部センサの接続に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用システムにおいて、モータ制御装置やI/Oユニットなどの各種スレーブと上位マスタとなるコントローラ間の接続方法が、パルス列指令やパラレル信号から、通信指令(ネットワーク)に変化しつつある。
【0003】
ネットワークの採用によって複数のスレーブとの配線が省配線となり、また、単なる信号だけではなく、さまざまな情報のやり取りにも、この通信が利用されている。
【0004】
通信の採用により、複数のスレーブを接続した場合でも省配線化が実現可能となり、スレーブ自体の小型化が進んでいる。また、産業用システムの機能向上のためには、各種センサが必要であり、上位マスタとなるコントローラには、さまざまなセンサが接続されている。
【0005】
フルクローズ用のエンコーダと速度制御に使用するエンコーダを、1つの通信を介したネットワークで組み1つに入力して、トルクより位置を補正して正確な位置を得るため、フルクローズ用のエンコーダと速度制御に使用するエンコーダを、1つのネットワークで組みフルクローズ用の位置とモータの位置を同期してモニタして、トルクより速度、位置を推定して位置を補正するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−318491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、上位マスタにスレーブとして接続されたサーボアンプとは別に、アナログ出力の外部センサがサーボシステムに必要な場合に、省配線が困難な点である。
【0007】
特許文献1の技術を用いると、1つのネットワークにデジタル化された信号である、フルクローズ用のエンコーダと速度制御に使用するエンコーダを省配線化することができるが、アナログ出力のセンサは信号がデジタル化されていないため、このネットワークに接続することができず、問題があった。
【0008】
サーボモータとサーボアンプ間の配線は、シリアル通信によって省配線を実現しているものの、それ以外のアナログ信号を接続するためには、上位マスタのアナログ入力回路に別途アナログセンサを接続する必要がある。その場合、アナログ信号の配線が、センサ位置から上位マスタまで長距離になり、ノイズなどの影響を受け易く、信頼性の低い情報となるという問題があった。
【0009】
一方、ネットワークに接続されたサーボアンプにアナログセンサを用いてモータ制御する場合、サーボアンプに専用のアナログ入力回路を用意し、そのアナログ入力回路を用いてサーボモータの制御を行っているが、そのアナログ入力回路はモータ制御専用に用いられているものであり、そのほかの機能としては使用することができなかった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ネットワーク化されたサーボシステムにお
いて、アナログ入力信号を多様な用途に扱うことのできる、使い勝手のよいサーボシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため請求項1に記載のサーボシステムは、上位マスタと複数のサーボアンプ間をネットワークで接続してモータ制御するサーボシステムにおいて、前記サーボアンプは、外部センサのアナログ信号を入力するアナログ入力回路と、前記アナログ入力回路の出力をサーボアンプ側に接続するか上位マスタ側に接続するかを切り換える切換手段を備え、前記切換手段によってアナログ入力回路の出力をサーボアンプ側に接続したとき、モータ制御に用い、上位マスタ側に接続したとき、アナログ信号をシステム全体の制御に用いる。
【0012】
また、請求項2に記載のサーボシステムは、前記アナログ入力回路の出力をサーボアンプのパラメータによって切り換える。
【0013】
また、請求項3に記載のサーボシステムは、前記サーボアンプは、前記アナログ入力回路の出力をデジタル信号に変換する変換回路を介して上位マスタに返信する。
【0014】
さらに、請求項4に記載のサーボシステムは、前記外部センサで圧力を検知し、前記切換手段によってアナログ入力回路の出力をサーボアンプ側に接続して圧力制御を実行する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のサーボシステムによれば、上位マスタに必要な専用のアナログ入力回路をサーボアンプに搭載することにより、サーボシステムの省配線が可能となる。また、ネットワーク化されたサーボアンプにアナログ信号を接続するため、実際の稼動部の近くに設置することができ、アナログ信号の安定化につながり、信頼性の高いサーボシステムとなる。
【0016】
また、請求項2に記載のサーボシステムによれば、モータ制御またはシステム全体の制御に必要なアナログ信号をアナログ入力回路に入力し、入力されたアナログ信号の使途をサーボアンプに搭載されたパラメータで設定することができるため、使いやすいサーボシステムとなる。
【0017】
また、請求項3に記載のサーボシステムによれば、サーボアンプに接続されたアナログ信号をデジタル化する変換回路を有しているため、取り込んだデータを容易にネットワークで上位マスタに返信することのできる、使いやすいサーボシステムとなる。
【0018】
さらに、請求項4に記載のサーボシステムによれば、サーボアンプに接続された圧力センサ信号を用いて、モータに接続された負荷の圧力制御を実行することができる、使い勝手のよいサーボシステムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上位マスタとサーボアンプ間をネットワークで接続してモータ制御するサーボシステムにおいて、前記サーボアンプは、外部センサのアナログ信号を入力するアナログ入力回路と、前記アナログ入力回路の出力をサーボアンプ側に接続するか上位マスタ側に接続するかを切り換える切換手段を備え、前記アナログ入力回路の出力をサーボアンプのパラメータによってサーボアンプ側に接続したとき、モータ制御に用い、上位マスタ側に接続したとき、アナログ信号をシステム全体の制御に用いることで、システムの省配線化、高信頼性化を実現することができる。以下、具体的な実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1において、上位マスタ1には、スレーブとなるサーボアンプ2,3,4が通信によるリング接続され、前段の通信出力が後段の通信入力に順次接続され、通信の終端は、上位マスタ1の通信入力部に接続されている。
【0020】
サーボアンプ2,3,4には、それぞれ駆動するサーボモータ5,6,7が接続され、サーボモータ5,6,7には、それぞれモータ位置を検出するためのロータリーエンコーダが搭載されている。ロータリーエンコーダの位置情報は、マイクロプロセッサ2e,3e,4eにて読み取られ、通信によって、上位マスタ1に返信されている。
【0021】
なお、図1において、テーブル(図示せず)上のワーク10をサーボモータ7のみでX軸方向に駆動するように図示しているが、サーボモータ5はワーク10をY軸方向に、サーボモータ6は他の負荷をZ軸方向に、それぞれ駆動するように連結されている。
【0022】
そして、アナログ出力の外部センサとして、温度センサ8がサーボアンプ2に接続され、圧力センサとしてのロードセル9がサーボアンプ3に接続されている。
【0023】
サーボアンプ2,3,4の内部構成は同じであり、サーボアンプ2について説明する。サーボアンプ2の内部には、アナログセンサの出力信号を入力するアナログ入力回路2aと、アナログ信号をデジタル信号へ変換する変換回路2bと、アナログ信号の使途を設定する切換手段2cと、デジタル信号をネットワーク化するシリアル通信回路2dと、ソフトウェアを処理するマイクロプロセッサ2eが搭載されている。
【0024】
ここで、実施の形態1のサーボシステムについて説明する。サーボアンプ2には、サーボシステム全体の温度管理をするため、温度センサ8が接続されており、周囲の温度情報をサーボアンプ2に読み込んでいる。サーボアンプ3には、圧力センサであるロードセル9が接続され、圧力情報を用いてサーボモータ6を駆動して圧力制御を実行する。サーボアンプ4には、外部センサは接続されていないが、ワーク10をX軸方向に駆動する。
【0025】
サーボアンプ2とサーボアンプ3では、入力されたアナログ信号の使途が異なる。このため、アナログ入力回路2aに入力されたアナログ信号をサーボアンプ2側に接続するか、上位マスタ1側に接続するかをサーボアンプ2の切換手段2cである切換信号で設定する。同様に、サーボアンプ3も切換手段3cである切換信号で設定する。
【0026】
サーボアンプ2は、アナログ入力回路2aに入力された温度情報をシステム全体の温度管理に用いる。このため、切換信号であるパラメータによって上位マスタ1に出力できるように変換回路2bに接続する。変換回路2bでは、アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル化された信号をマイクロプロセッサ2eが取り込んで、シリアル通信回路2dから通信を介して上位マスタ1に応答する。
【0027】
上位マスタ1は、デジタル化された温度情報を用いて温度が一定以上になると、サーボアンプ2でサーボモータ5を駆動してワーク10を移動させる。
【0028】
サーボアンプ3は、ロードセル9のアナログ信号をモータ制御に使用するため、パラメータを用いてサーボアンプ3側に出力する。このため、変換回路3bは使用しない。ロードセル9のアナログ信号を用いることで、サーボモータ6による圧力制御が実現できる。
【0029】
なお、実施の形態1では、リング形式による接続例を示したが、バス形式の接続であっても、通信を用いて上位マスタとサーボアンプを接続すれば、同様の効果を得ることができる。また、切換手段としてパラメータの例を示したが、ネットワークによる通信命令に
よる切換信号や、サーボアンプの接続されたデジタル入力信号による切換信号に置き換えてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0030】
さらに、温度センサによる温度管理とロードセルによる圧力制御の一例を示したが、アナログ出力のギャップセンサを用いてモータと対象物間の隙間を制御するようにしてもよく、実施の形態1で説明した構成に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のサーボシステムは、アナログ出力の外部センサを用いるシステムの省配線に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1におけるサーボシステムの要部ブロック構成図
【符号の説明】
【0033】
1 上位マスタ
2,3,4 サーボアンプ
2a,3a,4a アナログ入力回路
2b,3b,4b 変換回路
2c,3c,4c 切換手段(切換信号)
2d,3d,4d シリアル通信回路
2e,3e,4e マイクロプロセッサ
5,6,7 サーボモータ
8 温度センサ
9 ロードセル
10 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位マスタと複数のサーボアンプ間をネットワークで接続してモータ制御するサーボシステムにおいて、
前記サーボアンプは、外部センサのアナログ信号を入力するアナログ入力回路と、前記アナログ入力回路の出力をサーボアンプ側に接続するか上位マスタ側に接続するかを切り換える切換手段を備え、
前記切換手段によってアナログ入力回路の出力をサーボアンプ側に接続したとき、モータ制御に用い、上位マスタ側に接続したとき、アナログ信号をシステム全体の制御に用いることを特徴とするサーボシステム。
【請求項2】
前記アナログ入力回路の出力をサーボアンプのパラメータによって切り換える請求項1に記載のサーボシステム。
【請求項3】
前記サーボアンプは、前記アナログ入力回路の出力をデジタル信号に変換する変換回路を介して上位マスタに返信する請求項1に記載のサーボシステム。
【請求項4】
前記外部センサで圧力を検知し、前記切換手段によってアナログ入力回路の出力をサーボアンプ側に接続して圧力制御を実行する請求項1に記載のサーボシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−67036(P2010−67036A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233206(P2008−233206)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】