説明

サーモウェルの振動数診断装置

プロセス流体の流路に配置されたサーモウェルの振動数を検出し、検出された振動数に基づいて診断出力を提供することによって、産業プロセスシステムでの温度測定器の状態を監視する装置及び方法である。当該装置は、サーモウェルと、振動センサと、温度センサと、送信器とを有する温度測定器を含む。振動センサはサーモウェルに固定して取り付けられ、温度センサはサーモウェルのボアキャビティ内に配置される。送信器は、温度センサ及び振動センサの両方に電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモウェルに関し、特にサーモウェルの振動に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス制御産業では温度センサを収容するのにサーモウェルが用いられている。サーモウェルは、一端を密閉して他端を開口する長い円筒状の管であるのが一般的である。温度センサはサーモウェルの開口端から挿入され、サーモウェルはプロセス流体中に差し込まれる。このような構成により、プロセス流体に直接温度センサを曝すことなく、プロセス流体の温度を測定することが可能となる。これはプロセス流体が温度センサにとって有害である場合に、温度センサを保護する上で有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの用途において、プロセス流体がサーモウェルを覆ってその周囲を流動するように、プロセス流体中にサーモウェルが挿入される。これにより、乱流、逆流、渦が発生し、サーモウェルを振動させる可能性がある。ある状況において、このような振動はサーモウェルにその固有振動数での振動を生じさせることがある。サーモウェルの固有振動数での振動はサーモウェルを疲労させて破損させ、ついにはひび割れや、さらには破断することがある。このような破損は温度センサを故障させ、プロセス全体の運転停止を余儀なくさせる。いくつかのプロセスでは、サーモウェルの破損といったプロセス流体用防壁でのどのような割れ目であっても、火事、環境被害、または他の危険な状態を引き起こすことがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は方法と装置とを含む。本発明の1つの形態は、産業プロセスシステムにおける温度測定器の状態を監視する方法であり、プロセス流体の流路に配置されたサーモウェルの振動数が検出され、当該振動数に基づいて診断出力が提供される。
【0005】
本発明のもう1つの形態は、サーモウェルと、振動センサと、温度センサと、送信器とを含む温度測定器である。振動センサはサーモウェルに固定して取り付けられ、温度センサはサーモウェルのボアキャビティ内に配置される。送信器は温度センサと振動センサとの両方に電気的に接続される。
【0006】
さらに、本発明のもう1つの形態は、第1端子と、第2端子と、マイクロプロセッサと、通信回路とを含む送信器である。第1端子は温度センサに電気的に接続され、第2端子は振動センサに電気的に接続されて構成される。マイクロプロセッサは第1端子及び第2端子にそれぞれ電気的に接続される。マイクロプロセッサは、第1端子から受信したデータに基づいて温度を演算し、第2端子から受信したデータに基づいて振動数を演算し、演算した前記振動数と目標振動数とを比較し、演算した前記振動数と目標振動数との比較に基づいてサーモウェルの診断出力を生成するようにプログラムされている。通信回路はマイクロプロセッサに電気的に接続され、前記マイクロプロセッサにより演算された温度と診断出力とをユーザーインタフェースを介して送信するようにプログラムされている。
【0007】
本発明のさらに別の形態は、サーモウェルと振動センサとを含む組立体である。サーモウェルは、サーモウェルをプロセス流体用防壁に結合するように構成された結合部を含む。サーモウェルは、結合部のプロセス流路側に第1サーモウェル面を有し、結合部の非プロセス流路側に第2サーモウェル面を有する。振動センサは第2サーモウェル面に固定して取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】温度測定器の上下方向断面図である。
【図1B】図1Aの温度測定器の代替実施形態における部分断面を示す正面図である。
【図1C】図1Bの温度測定器の代替実施形態の正面図である。
【図2】図1Aの2−2線に沿う断面図である。
【図3】図1Bの温度測定器のサーモウェルの部分断面を示す正面図である。
【図4】図1Aの温度測定器のブロック図である。
【図5】図1Aの温度測定器の状態を監視する方法のフローチャートである。
【図6】図1Aの温度測定器の状態を監視するもう1つの方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は全般的に、サーモウェルの振動数のインプロセス測定や、その振動数とサーモウェルの固有振動数とを比較するための方法及び装置を含むものである。これは、サーモウェルに固定して結合されている加速時計に電気的に接続される送信器によって行うことができる。サーモウェルがその固有振動数の近くで振動しているのがわかると警告を発することができ、サーモウェルの破損が差し迫っているかもしれないことをユーザに通知する。
【0010】
図1Aは、温度測定器10の断面図である。一実施形態によれば、温度測定器10は、送信器12(ハウジング14、ハウジング孔18、送信回路20、温度センサ端子22、及び振動センサ端子24を含む)と、温度センサ26(保護管27、温度センサ端部28、及び温度センサ用リード線30を含む)と、振動センサ32(振動センサ用リード線34を含む)と、サーモウェル取付部36(取付外壁38及び取付通路40を含む)と、サーモウェル42(中央側端部44、末端部46、サーモウェル外表面48、サーモウェルのボアキャビティ50、及び接続部52)と、プロセス流路54(プロセス孔56を含む)とを有する。
【0011】
ハウジング14は、送信回路20を含む送信器12の内部部品を収容する。また、送信器12は、温度センサ用リード線30を介して温度センサ26に電気的に接続される温度センサ端子22を有する。温度センサ26は、熱電対や抵抗温度検知器(RTD)等のあらゆる温度検出デバイスである。温度センサ26は、長い筒状の保護管27に収容可能となっている。また、送信器12は、振動センサ用リード線34を介して振動センサ32に電気的に接続される振動センサ端子24も有する。振動センサ32は、加速度計またはストロボ装置等、実質的にどのような振動検出デバイスであってもよい。温度センサ用リード線30は温度センサ端子22を、また振動センサ用リード線34は振動センサ端子24を、それぞれ複数のノードと電気接続するための複数のワイヤをそれぞれ有していてもよい。
【0012】
サーモウェル取付部36は取付外壁38を有し、取付外壁38の上部がハウジング孔18に連結され、取付外壁38の下部にはサーモウェル42が連結される。また、サーモウェル取付部36は、温度センサ26及び振動センサ用リード線34が通り抜けられるような大きさの取付通路40も有する。
【0013】
サーモウェル42は、長く、一般的に円筒状の縦穴または管であり、中央側端部44で開口し、末端部46で閉じたボアキャビティ50を有する。図示する実施形態において、サーモウェル42は中央側端部44近傍で比較的大径に形成され、末端部46近傍で比較的小径に形成されている。サーモウェル42は、産業プロセスとの接続を行うためのプロセス接続部52をサーモウェル外面48に有する。図示する実施形態において、プロセス接続部52は、サーモウェル外面48に形成されてプロセス流路54のプロセス孔56内に螺合するねじ山部である。サーモウェル42のプロセス流路側からサーモウェル42の非プロセス流路側にプロセス流体が流れないように、プロセス接続部52は産業プロセスに対する密閉状態を形成する。サーモウェル42のプロセス流路側には、プロセス流体に曝される部分が含まれる。サーモウェル42の非プロセス流路側には、サーモウェル外面48やボアキャビティ50等、プロセス流体から隔離されるサーモウェル42の全ての部分が含まれる。ボアキャビティ50は、温度センサ端部28が末端部46近傍に位置するように温度センサ26を挿入することができる大きさである。図示した実施形態において、振動センサ32は、ボアキャビティ50内の中央側端部44近傍でサーモウェル42に固定して取り付けられている。別の実施形態において、振動センサ32は、ボアキャビティ50内部の末端部46近傍等、有害なプロセス流体から隔離された場所であれば実質的にどの位置においてもサーモウェル42に固定して取り付けることが可能である。振動センサ32及び温度センサ26双方のための空間を備えるように、従来のサーモウェルのボアキャビティを変更可能である。
【0014】
末端部46がプロセス流体の流路内に位置するように、サーモウェル42はプロセス孔56を介してプロセス流路54内に挿入される。図示した実施形態において、プロセス流路54は導管である。代替実施形態において、プロセス流路54は、流体が混合される槽等、サーモウェルを覆ってプロセス流体が流れる構造であれば、実質的にどのようなものであってもよい。
【0015】
図1Bは、図1Aの温度測定器10の代替の実施形態における部分断面を示す正面図である。図1Bの温度測定器10’は、送信器12’、サーモウェル取付部36’、及びサーモウェル42’が、送信器12、サーモウェル取付部36、及びサーモウェル42と異なる構造を有する以外、図1Aの温度測定器10と同じである。送信器12’は図1Aのハウジング14と比較して、ハウジング14’に代替構造を有している。サーモウェル取付部36’は、図1Aの一体成形のサーモウェル取付部36とは異なり、3つの部品からなる。
【0016】
また、サーモウェル42’も、図1Aのサーモウェル42に対して代替構造を有する。サーモウェル42’は、中央側端部44’と末端部46’との間の外表面48’に溶着されたフランジを備えるプロセス接続部52’を有する。外表面48’にねじ山部はない。その代わりに、サーモウェル42’はプロセス接続部52’をプロセス流路54(図1Bに図示せず)にねじ止めまたは溶着することによって結合される。振動センサ32は、前述の実施形態と同様に、ボアキャビティ50’内にてサーモウェル42’に固定して接着される。構成が異なっているものの、温度測定器10’は図1Aの温度測定器10と同じように機能する。別の実施形態として、振動センサ32を適切に配置することができる限り、サーモウェル42’は他の形状及び他の構造とすることが可能である。
【0017】
図1Cは図1Bの温度測定器10’の代替実施形態の正面図である。図1Cの温度測定器10”は、振動センサ32がボアキャビティ50’内ではなく外表面48’に結合されることを除いて、図1Bの温度測定器10’と同じである。図示した実施形態において、振動センサ32は中央側端部44’とプロセス接続部52’との間の外表面48’に接続される。別の実施形態として、例えばプロセス接続部52’に接続される有害なプロセス流体から隔離される位置であれば、実質的にサーモウェル42’のいずれの位置においても、振動センサ32を固定して取り付けることが可能である。また、図示した実施形態において、振動センサ用リード線34は、図1Bに示すようなサーモウェル取付部36’内ではなく、サーモウェル取付部36’の外側に配置される。構成が異なっているものの、温度測定器10”は図1Aの温度測定器10及び図1Bの温度測定器10’と同様に機能する。
【0018】
図1A、1B、及び1Cの各実施形態において、サーモウェル42またはサーモウェル42’の振動数を正確に検出するのに十分な強度で振動センサ32を固定するものであれば、溶着、ねじ止め、またはほとんどあらゆる方法によって、振動センサ32をサーモウェル42またはサーモウェル42’に固定することが可能である。もう1つの実施形態として、振動センサ32がサーモウェル42またはサーモウェル42’の振動数を正確に検出するように配置される限り、振動センサ32はサーモウェル42またはサーモウェル42’に直接固定される必要はない。
【0019】
図2は、図1Aの2−2線に沿うサーモウェル42の断面図である。図示した実施形態において、サーモウェル42は左から右へ流れるプロセス流体に浸される。サーモウェル42に向かって流れるプロセス流体は、サーモウェル42の周囲において、サーモウェルの外表面48により方向を変えられる。この状態によりサーモウェル42の下流に、逆流、渦、及び乱流58が生じることがあり、ある種の乱流58によって、サーモウェル42に振動が生じることがある。
【0020】
図3はプロセス流路54内のサーモウェル42’の正面図である。プロセス流体の流れによって、サーモウェル42’をその固有振動数または固有振動数に近い振動数で振動させる乱流が生じる場合、サーモウェル42’は比較的大きい振幅で往復振動をする。振動を表す矢印59は、サーモウェル42’の振動方向を示している。判り易くするため、振動の大きさは図3において誇張されている。それにもかかわらず、サーモウェルの固有振動数またはそれに近い振動数でのサーモウェルの振動によって、サーモウェルの致命的な破損が生じる可能性がある。乱流により生じるサーモウェル42の振動は、一般的に中央側端部44より末端部46近傍の方がより大きな振幅になる。但し、このような振動の振動数は中央側端部及び末端部でほぼ一致する。従って、中央側端部44の近傍に取り付けられた振動センサ32によって測定された振動数は、末端部46での振動数を表している。その後、振動センサ32は振動数の信号を送信器12(図3に図示せず)に送信する。
【0021】
図4は、送信器12の構成部品を含む温度測定器10のブロック図である。送信器12は、第1チャンネル60、第2チャンネル62、マルチプレクサ64、アナログ−デジタル(A/D)変換器66、マイクロプロセッサ68、ローカルオペレータインタフェース(LOI)70、及び通信回路72を備えている。温度センサ端子22は、温度センサ26と第1チャンネル60とを接続している。また、振動センサ端子24は、振動センサ32と第2チャンネル62とを接続している。マルチプレクサ64は第1チャンネル60及び第2チャンネル62のそれぞれからアナログ信号を受信し、信号線を介して当該信号をA/D変換器66に出力する。
【0022】
A/D変換器66はマルチプレクサ64から受信したアナログ信号をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号をマイクロプロセッサ68に送信する。マイクロプロセッサ68には、送信器12を作動させるためのファームウェアまたはソフトウェアが組み込まれている。このファームウェアには、A/D変換器66から受信したデジタル信号に基づく温度の演算及び振動数の演算のための測定プログラムを含めることが可能である。マイクロプロセッサ68はLOI70と電気的に接続可能であり、オペレータ(またはユーザ)と通信するための装置記述ソフトウェアを有している。LOI70により、オペレータは温度測定器10の作動を監視したり制御したりすることが可能となる。一実施形態において、LOI70は、マイクロプロセッサ68からの情報を表示する液晶ディスプレー(LCD)画面や、マイクロプロセッサ68に情報を入力する一式の押しボタンを有する。LOI70は送信器12に直接配置される。マイクロプロセッサ68は通信回路72を介して、リモートユーザーインタフェース74に接続することもできる。送信器12は、無線または有線の接続を介して、リモートユーザーインタフェース74に接続し、HART(登録商標)またはFoundation Fieldbus(商標)等の標準通信プロトコルで通信することができる。リモートユーザーインタフェース74によっても、ユーザは温度測定器10の作動を監視及び制御可能であるのが好ましい。一実施形態において、リモートユーザーインタフェース74はハンドヘルドの装置である。もう1つの実施形態において、リモートユーザーインタフェース74は遠隔地に配置された制御室であり、送信器12から振動や温度の情報を受信する。これにより、制御室のユーザは、温度測定器10だけでなく、他の温度測定器についても温度データ及び振動データを監視することが可能となる。送信器12に情報を送信することや、送信器12から情報を受信するための多くの機能は、LOI70及びリモートユーザーインタフェース74の少なくともいずれか一方によって実行可能である。ここで、LOI70及びリモートユーザーインタフェース74は簡略化のためユーザーインタフェースと総称することにする。別の実施形態として、温度測定器10は、図示した実施形態よりも多くのセンサ、端子、及びチャンネルを備えていてもよい。
【0023】
図5は産業プロセスシステムにおいて温度測定器10の状態を監視する方法のフローチャートである。始めに、固有振動数を試験するのに適合した試験装置にサーモウェル42を取り付ける(ステップ100)。適切な試験装置は、末端部46を固定しないままの状態にさせておきながら、プロセス接続部52にサーモウェル42をしっかりと保持する。次に、サーモウェル42の固有振動数を測定する(ステップ102)。固有振動数は、例えばハンマーでサーモウェル42の末端部46付近を打ち、サーモウェル42に固定して取り付けられた振動センサ32で振動を計測する等、様々な演算方法または実験的手段によって測定可能である。一旦サーモウェル42の固有振動数が測定されると、LOI70またはリモートユーザーインタフェース74等のユーザーインタフェースを介して、当該固有振動数の値を送信器12に入力することができる(ステップ104)。取り付けた人やユーザによる今後の参考のために、この固有振動数の値はサーモウェル42に銘記されるようにしてもよい。
【0024】
次に、プロセス流体が供給され、サーモウェル42を覆ってプロセス流体が流れる(ステップ106)。通常、ステップ106は試験装置からサーモウェル42を取り外し、プロセス中の別の位置に取り付けることを含む。プロセス流体がサーモウェル42を覆うように流れると、サーモウェル42は流体の乱流によって振動することがある。このとき、振動センサ32がサーモウェル42の振動数を検出する(ステップ108)。送信器12は振動センサ32から振動情報を受信した後、振動情報の処理を行う(ステップ110)。振動情報の処理は種々の方法で行うことができる。一実施形態として、送信器12は振動情報に基づき、検出振動数を演算してもよい。もう1つの実施形態として、送信器12は検出振動数を演算し、検出振動数と目標振動数とを比較してもよい。目標振動数は、ステップ104で入力されたサーモウェル42の固有振動数、または所定の振動数限界値等、種々の振動数のうちの1つとすることができる。所定の振動数限界値はサーモウェル42の固有振動数の関数とすることが可能であり、例えば固有振動数の0.8倍である。加えて、例えば固有振動数の0.8倍や固有振動数の1.2倍等、2つ以上の所定の振動数限界値があってもよい。所定の振動数限界値は、製造中に送信器12に予め格納しておき、ユーザーインタフェースを用いて調整可能としてもよい。さらにもう1つの実施形態として、送信器12は、長期間の振動傾向の監視を実施して、サーモウェル42の状態の変化、またはプロセスの変化を検出するようにしてもよい。
【0025】
振動情報が処理された後、ユーザーインタフェースを介して振動診断出力が提供される(ステップ112)。この振動診断出力は種々の形態を取りうる。一実施形態として、振動診断出力は、検出振動数の表示を含むようにしてもよい。もう1つの実施形態として、振動診断出力は、検出振動数と固有振動数との比較表示を含むようにしてもよい。この比較は、検出振動数及び固有振動数の実際の数値の表示、固有振動数の割合による検出振動数の表示、またはこれら表示の両方を含んでいてもよい。さらにもう1つの実施形態として、送信器12は、検出振動数が所定振動数の限界値を超えることをトリガとして、警報または表示を行うようにしてもよい。さらなる別の実施形態において、送信器12は、長期間の振動傾向の監視に基づく差し迫ったサーモウェルの破損に対する警報または表示を行うようにしてもよい。
【0026】
これらの様々なタイプの振動診断出力のそれぞれは、振動情報が処理される方法やユーザの好み次第で有効となる。検出振動数の連続的な表示を行うことによって、ユーザが所望するときにはいつでも振動数をモニタすることができる。最近のASME規格では、サーモウェルの実際の振動数は、サーモウェルの固有振動数の80%以下とすることを推奨している。検出振動数と固有振動数とを比較することによって、ユーザは、プロセスがASME規格内またはユーザが所望する別の範囲内で作動しているかどうかを確認することができる。実際の振動データをユーザに提示することによって、ユーザはその振動データの情報や自身の経験に基づいて判断を下すことが可能となる。代わりに、検出振動数が所定の限界値を超える場合のみユーザに警報または表示を行うことで、決断を下すことからユーザを開放しつつ、破損が差し迫っているかもしれないことをユーザに警告してもよい。このようなシステムは、プロセスが多くのサーモウェルを使用しており、サーモウェルのそれぞれが異なる振動数を検出したり、異なる固有振動数を有したりする場合に有用である。加えて、長期の振動傾向の監視に基づく、差し迫ったサーモウェルの破損の表示は、振動レベルが致命的な状態には見えないが、振動が徐々にサーモウェルに被害を及ぼすような場合に有効となりうる。
【0027】
図6は、産業プロセスシステムにおいて温度測定器10の状態を監視するもう1つの方法のフローチャートである。この方法を開始する上で、温度測定器10は既にプロセス中に設置されているものとする。まず、プロセス流体を供給し、サーモウェル42を覆ってプロセス流体が流れる(ステップ120)。プロセス流体がサーモウェル42を覆って流れるときに、サーモウェル42は流体の乱流によって振動する可能性がある。このとき、振動センサ32がサーモウェル42の振動数を検出する(ステップ122)。送信器12は振動センサ32から振動情報を受信した後、振動情報を処理する(ステップ124)。図5に示した方法に関して上述したそれぞれの方法で、送信器12は振動情報を処理することができる。振動情報が処理された後、ユーザーインタフェースを介して振動診断出力を提供する(ステップ126)。図5に示した方法に関して上述したそれぞれの方法で、送信器12は振動診断出力を提供することができる。
【0028】
ステップ122、124、126の処理を実行している間に、ステップ128、130、132の処理を平行して実行することができる。温度センサ26がサーモウェル42周辺のプロセス流体の温度を検出する(ステップ128)。送信器12は、温度センサ26から温度情報を受信した後、温度情報を処理する(ステップ130)。送信器12は温度情報に基づいてプロセス流体の検出温度を演算する。プロセス流体の検出温度を演算する方法は、温度センサ26が抵抗温度検知器(RTD)、熱電対、または別の温度センサのいずれであるかによる。しかしながら、このような演算はこの分野でよく知られており、ここでは説明を省略する。プロセス流体の検出温度が演算された後、ユーザーインタフェースを介して温度出力が提供される(ステップ132)。温度出力は、プロセス流体の検出温度を可視的に表示するものとすることができる。
【0029】
図6に示した方法において、送信器12は、サーモウェルの振動情報を処理してユーザに提供する間に温度情報を同時に処理し、ユーザに提供することができる。単一の送信器を用いて温度と振動とを監視することにより、振動を監視するのに特化した付加的な送信器を追加する必要を避けることができる。
【0030】
代替の実施形態として、サーモウェルの振動数の監視は、温度測定電子機器から完全に切り離された電子機器を使用してもよい。これによりユーザは、既存の温度測定送信器を取り替えることなく、振動監視装置をプロセス流体中に設置することができる。
【0031】
代表的な実施形態に基づき本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸れることなく、種々の変更をしたり、各要素の同等物を代用してもよいと理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸れることなく、特定の状況や構成要素を本発明の教示に適合させるべく、種々の変更を行うことが可能である。従って、本発明は開示された特定の実施形態に限られるものではなく、添付された特許請求の範囲内に属する全ての形態を含むものである。例えば、送信器12内の回路は、図4に具体的に図示した回路とは異なっていてもよい。さらに、上述した第1及び第2の方法は、選択された方法に適合する限り、温度測定器10以外の部材で行ってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業プロセスシステムにおける温度測定器の状態を監視する方法であって、
プロセス流体の流路に配置されたサーモウェルの振動数を検出する工程と、
検出した振動数に基づいて、前記サーモウェルの状態を判定する工程と、
前記検出した振動数に基づいて、診断出力を提供する工程と、
を有することを特徴とする温度測定器の状態を監視する方法。
【請求項2】
前記振動数は、前記サーモウェルに固定して取り付けられた振動センサで検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記振動センサは、加速時計であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記振動センサは、プロセス流体から実質的に隔離されていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記診断出力は、前記サーモウェルの破損が差し迫っていることを表示するものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サーモウェルの破損が差し迫っていることの表示は、検出された振動数と前記サーモウェルの固有振動数との比較を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サーモウェルの破損が差し迫っていることの表示は、検出された振動数が所定の振動数の限界値を超えると供給されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
産業プロセスシステムにおける温度測定器の状態を監視する方法であって、
プロセス流体の流路に配置されたサーモウェルの振動数を検出する工程と、
前記サーモウェル周囲のプロセス流体の温度を検出する工程と、
検出された温度に基づいて温度出力を提供する工程と、
検出された前記振動数に基づいて診断出力を提供する工程と、
を有することを特徴とする温度測定器の状態を監視する方法。
【請求項9】
前記診断出力は、
前記検出された振動数と、前記サーモウェルの固有振動数との比較と、
前記検出された振動数が所定の振動数限界値を超えたことの表示と、
前記サーモウェルの破損が差し迫っていることの表示と、
のいずれか1つを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記振動数は、前記サーモウェルに取り付けられた振動センサを介して検出されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記温度出力と前記診断出力とを、送信器を介して制御室に送信する工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記サーモウェルを調整して前記サーモウェルの固有振動値を測定する工程と、
前記診断出力を出力する前に、前記送信器に前記固有振動値を入力する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ボアキャビティを備えるサーモウェルと、
前記サーモウェルに固定して取り付けられた振動センサと、
前記ボアキャビティ内に配置された温度センサと、
前記温度センサと前記振動センサとに電気的に接続された送信器と、
を備えることを特徴とする温度測定器。
【請求項14】
前記振動センサは、加速時計を備えることを特徴とする請求項13に記載の温度測定器。
【請求項15】
前記送信器は、
前記温度センサから受信したデータに基づいて温度を算出し、
前記振動センサから受信したデータに基づいて振動数を算出し、
前記振動数を前記サーモウェルの固有振動数と比較し、
前記振動数と前記固有振動数との比較に基づいて、前記サーモウェルの診断出力を生成する
ようにプログラムされていることを特徴とする請求項13に記載の温度測定器。
【請求項16】
前記送信器と通信するユーザーインタフェースをさらに備え、
前記ユーザーインタフェースは、前記送信器からの信号に基づいてサーモウェルの破損が差し迫っていることを表示することを特徴とする請求項15に記載の温度測定器。
【請求項17】
温度センサに電気的に接続する第1端子と、
振動センサに電気的に接続する第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子に接続され、前記第1端子から受信したデータに基づいて温度を演算し、前記第2端子から受信したデータに基づいて振動数を演算し、演算した前記振動数と目標振動数とを比較し、演算した前記振動数と前記目標振動数との比較に基づいてサーモウェルの診断出力を生成するようにプログラムされたマイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに電気的に接続され、前記マイクロプロセッサにより演算された温度と前記診断出力とをユーザーインタフェースに送信するようにプログラムされた通信回路と、
を備える送信器。
【請求項18】
前記目標振動数は、前記サーモウェルの固有振動数の関数である所定の振動数限界値であることを特徴とする請求項17に記載の送信器。
【請求項19】
サーモウェルと振動センサとを備えた組立体であって、
前記サーモウェルは、
前記サーモウェルをプロセス流体用防壁に結合する接続部と、
前記接続部のプロセス流体側にあって前記サーモウェルの一部をなす第1サーモウェル面と、
前記接続部のプロセス流体とは反対側にあって前記サーモウェルの一部をなす第2サーモウェル面とを有し、
前記振動センサは、前記第2サーモウェル面に固定して取り付けられる
ことを特徴とする組立体。
【請求項20】
前記サーモウェルはボアキャビティをさらに備え、
前記振動センサは、前記ボアキャビティ内に配置されることを特徴とする請求項19に記載の組立体。
【請求項21】
前記サーモウェルはボアキャビティをさらに備え、
前記振動センサは前記ボアキャビティの外側に配置されることを特徴とする請求項19に記載の組立体。
【請求項22】
前記サーモウェルは、前記第1サーモウェル面がプロセス流体に曝され、前記第2サーモウェル面が前記プロセス流体から隔離されるように、前記プロセス流体用防壁に結合されることを特徴とする請求項19に記載の組立体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−504062(P2013−504062A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527857(P2012−527857)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/001667
【国際公開番号】WO2011/028220
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】