説明

シクレソニドの改良された製造法

シクレソニドの22R/22Sエピマー比を上昇させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国仮特許出願第60/733,007号(2005年11月2日出願)、第60/757,789号(2006年1月9日出願)、及び第60/799,751号(2006年3月6日出願)の利益を請求する。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、シクレソニド(CICLESONIDE)のエピマー混合物中における、シクレソニドの22−Rエピマーの比率を上昇させる方法を包含する。
【背景技術】
【0003】
吸入型合成グルココルチコイドは、気管支喘息に利用できる最も有効な薬剤であり、その治療に広く使用されている。吸入グルココルチコイドによる適正な治療は、喘息の制御と肺機能を改善し、喘息発作を低減させる。かかる喘息制御の改善は、誘発刺激に対する気道応答、喀痰好酸球、及び呼気酸化窒素濃度等、マーカーや気道炎症の減衰と関連している。
【0004】
シクレソニド(プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン、16,17−[[(R)−シクロヘキシルメチレン]ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)−(11β,16α)−(9CI))は、化学式C32447、分子量540.69、化学構造:
【化1】

を有する。シクレソニドは22R配置を有する。
【0005】
シクレソニドは、喘息の治療で吸入される局所的抗炎症性を有する非ハロゲン化グルココルチコイドである。シクレソニドはエステルプロドラッグであり、本来は経口バイオアベイラビリティが欠如しているが、内因性エステラーゼにより切断されると活性化される(Current Opinion in Investigational Drugs 2002,3(1)78-83)。
【0006】
米国特許第5,482,934号は、HCl/ジオキサン及び更なる酸触媒(トルエンスルホン酸又は過塩素酸)を用い、適切なドナー(即ちシクロヘキサンカルボアルデヒド)の存在下、対応する16α,17−エステルから、シングルポットでの一連の脱アセチル化/アセトン化により、16,17−アセタール(例えばシクレソニド及びその21ヒドロキシ類似体)を調製する方法を開示する。
【0007】
米国特許第2,990,401号及び第3,929,768号は、アルデヒドとの酸触媒反応による、対応する16α,17−ジオールからの16,17−アセタール(例えばシクレソニド)の一般的な調製法を開示する。
【0008】
米国特許第4,695,625号及び第4,925,933号は、対応する16,17−アセトニドのトランスアセタール化による、16,17−アセタールの調製法を開示する。
【0009】
PCT公報WO02/38584は、シクレソニド中間体を得るトランスアセタール化法を開示する。得られるシクレソニド中間体は、続く21アルコールエステル化により容易にシクレソニドに変換される。
【0010】
上記の特許に開示された方法によれば、シクレソニドはR及びSエピマーの混合物として得られる。これらの公知の方法は何れも、生成物に含有される(22S)エピマーのレベルが、APIとしては許容できないほど高い。
【0011】
【化2】

【0012】
欧州特許第929566号には、水と適切な水混和性有機溶媒との混合物中にR/Sエピマー混合物を含有する溶液から、分別結晶によってシクレソニドの22Rエピマーを濃縮する方法が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本技術分野では、シクレソニドを濃縮するための更なる方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ある実施態様によれば、本発明は、シクレソニドの22R/22Sエピマー比を上昇させる方法であって、少なくとも1種の水非混和性有機溶媒中のシクレソニドの溶液から、シクレソニドを結晶化させる工程を含んでなる方法を提供する。
【0015】
また、別の実施態様によれば、本発明は、水非混和性有機溶媒からシクレソニドを結晶化し、結晶化の母液から22Rエピマーを再生利用することにより、シクレソニドの22R/22Sエピマー比を上昇させる方法も提供する。
【0016】
更に別の実施態様によれば、本発明は、シクレソニドの22Rエピマーを濃縮する方法であって:
a)無水非ヒドロキシル性の第1の有機溶媒、又は、第1の有機溶媒と第1の有機溶媒より沸点が低い第2の有機溶媒との混合物中、22Sエピマー含量が最大約15%であるシクレソニドの溶液を、周囲温度と溶媒又は溶媒混合物の還流温度との間の温度で調製する工程;及び
b)22Rエピマーが濃縮されたシクレソニドを結晶化させる工程を含んでなる方法を提供する。
【0017】
任意により、シクレソニドの22Rエピマー含量を更に濃縮するために、結晶化工程(b)を繰り返してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、結晶化中に水非混和性有機溶媒の無水溶媒系を使用して、シクレソニドの22R/22Sエピマーを上昇させる方法を提供する。理論に拘束されるものではないが、無水条件によって、結晶化及び/又は再結晶化時における、水非混和性有機溶媒の有効な使用が可能になると考えられる。一般的に、無水条件とは、水分含量が2重量%未満、好ましくは1重量%未満、更に好ましくは0.5重量%未満を意味する。この考えが確認されたのは、水非混和性有機溶媒の中に、シクレソニドの22Sエピマーに対して高い溶解度を示し、22Sエピマーから22Rエピマーを分離する上で優れた選択性を有するものがあることが判明したことによる。更に、無水条件は、結晶化時のシクレソニドの分解を低減させ、特にシクレソニドのエステル基がエタノール/水混合物中で加水分解される傾向を低減させる。
【0019】
本明細書において特に明記しない場合、「周囲温度」という語は、約20〜約25℃の温度を意味する。
【0020】
本発明は、水非混和性有機溶媒からシクレソニドを結晶化させることにより、シクレソニドの22R/22Sエピマー比を上昇させる方法を包含する。この方法は、シクレソニドを少なくとも1種の水非混和性有機溶媒に溶解させて溶液を作製すること、溶液からシクレソニドを結晶化させること、及び、結晶化したシクレソニドを回収することを含んでなる。最初の結晶化後に得られた固体を再度結晶化させることにより、エピマーの純度を更に上昇させることができる。水非混和性有機溶媒としては、非ヒドロキシル性有機溶媒が好ましい。
【0021】
出発シクレソニドは当該分野で公知の方法、例えば米国特許第2,990,401号;3,929,768号;4,695,625号;4,925,933号;5,482,934号;及び5,728,826号、及びPCT公報WO98/09982(参照することにより本明細書に組み込まれる)に開示された方法を使用して、作製することができる。出発シクレソニドは、約15%以下の22Sエピマーを含有することが好ましい。更に好ましくは、出発シクレソニドは、約12%以下の22Sエピマーを含有する。
【0022】
水非混和性有機溶媒には、非ヒドロキシル性有機溶媒が含まれる。非ヒドロキシル性有機溶媒は、化合物中にヒドロキシル基が欠如した有機溶媒である。一般的に、非ヒドロキシル性有機溶媒としては、C1〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状アルカン、C2〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルが挙げられる。C1〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状アルカンとしては、C6〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状アルカンが好ましく、更に好ましくはC6〜C8直鎖、分岐鎖、又は環状アルカンである。C1〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルとしては、C5〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルが好ましく、更に好ましくはC5〜C6直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルである。C1〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状アルカンの具体例としては、ヘプタン、ヘキサン、及びイソオクタンが挙げられる。C2〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルの具体例としては、tert−ブチルメチルエーテル、及びジイソプロピルエーテルが挙げられる。中でも非ヒドロキシル性有機溶媒としてはイソオクタンが好ましい。
【0023】
結晶化工程では、更に第2の有機溶媒を使用してもよい。第2の有機溶媒という語は、非ヒドロキシル性有機溶媒より低い沸点を有する有機溶媒を意味する。低沸点有機溶媒は、シクレソニド22R/22Sエピマーの出発混合物を溶解させることができれば、いかなる溶媒であってもよい。好ましい低沸点有機溶媒としては、C1〜C8アルコール、C2〜C8ケトン、C1-6脂肪族ハロゲン化炭素が挙げられる。中でもC1〜C8アルコールとしてはC1〜C5アルコールが好ましく、更に好ましくはC1〜C4アルコールである。C2〜C8ケトンとしてはC2〜C5ケトンが好ましく、更に好ましくはC2〜C3ケトンである。C1-6脂肪族ハロゲン化炭素としてはC1-4脂肪族ハロゲン化炭素が好ましく、更に好ましくはC1-2脂肪族ハロゲン化炭素である。C1〜C8アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、tert−ブタノールが挙げられる。C2〜C8ケトンの具体例としてはアセトンがある。C1-6脂肪族ハロゲン化炭素の具体例としてはジクロロメタンが挙げられる。低沸点有機溶媒としてはアセトン又はジクロロメタンが更に好ましく、最も好ましくはジクロロメタンである。共溶媒としては工業用グレードのものが好ましい。即ち、水分含量が2重量%未満、好ましくは1重量%未満、更に好ましくは0.5重量%未満のものが好ましい。
【0024】
一般的に、水非混和性有機溶媒と低沸点有機溶媒との混合物を使用する場合、溶媒の重量比は20:1である。この比率は10:1が好ましく、更に好ましくは重量比5:1である。任意により、結晶性シクレソニドの沈殿を誘導する前に、低沸点有機溶媒を蒸散により除去してもよい。
【0025】
結晶化は、出発シクレソニドを水非混和性有機溶媒に対して、周囲温度から水非混和性有機溶媒の沸点付近までの範囲の温度において溶解させて溶液を作製し、溶液を濃縮して懸濁物を得、懸濁物を冷却して固体シクレソニドを沈殿させることにより行なわれる。第2の低沸点有機溶媒が使用される実施態様によれば、本方法は、出発シクレソニドを第2低沸点有機溶媒に対して、周囲温度〜第2低沸点有機溶媒の沸点の温度において溶解させてから、水非混和性有機溶媒を加えることを含んでなることが好ましい。続いて混合物を濃縮し、第2低沸点有機溶媒の殆ど又は全てを除去してもよい。この除去により通常、懸濁物が得られる。
【0026】
一般的に、第2の溶媒の存在下又は不在下で得られた懸濁物を、約80℃〜約10℃の温度まで冷却する。この濃縮工程は、水非混和性有機溶媒を蒸留して除去することにより行なうことが好ましい。
【0027】
沈殿物の分離及び回収は、当業者に公知の方法を用いて行なえばよい。例えば結晶性シクレソニドは、濾過により回収することができる。任意により、回収された結晶性シクレソニドを洗浄し、乾燥させてもよい。
【0028】
本発明は更に、シクレソニドの22Rエピマーを濃縮する方法であって:
a)第1の無水非ヒドロキシル性有機溶媒中、或いは第1の有機溶媒と第1の有機溶媒より低い沸点を有する第2の有機溶媒との混合物中、周囲温度と溶媒又は溶媒混合物の還流温度との間の温度において、22Sエピマー含量が最大約15%であるシクレソニドの溶液を調製すること;及び
b)22Rエピマーが濃縮されたシクレソニドを結晶化させることを含んでなる方法を提供する。
【0029】
結晶化の前に、工程a)で得られる溶液を濃縮して、低沸点有機溶媒の全て又は殆どを除去してもよい。R/Sエピマー比を更に上昇させるために、工程a)及びb)を繰り返してもよい。かかる繰り返しを2、3回行なうことにより、R/Sエピマー比を少なくとも約99.9/0.1%まで上昇させてもよい。
【0030】
任意により、R/Sエピマー比を所望のレベルまで上昇させるために、結晶化工程を繰り返してもよい。仲でも、結晶化工程を繰り返すことにより、少なくとも約99.5:0.5、更に好ましくは少なくとも99.75:0.25、最も好ましくは少なくとも99.9:0.1の22R/22Sエピマー比を得ることが好ましい。一般的に、2回の繰り返し後の22R/22Sエピマー比は、HPLC測定によれば、少なくとも約99.0/1.0の面積比まで上昇し得る。結晶化工程を繰り返すことにより、4回の繰り返し後に少なくとも約99.9/0.1の22R/22Sエピマー比が得られることが好ましい。
【0031】
本発明の方法の回収工程で濾過を実施することにより、22R及び22Sエピマーのシクレソニド混合物を含む濾液が得られる。一般的にこのシクレソニド混合物は、少なくとも15%のシクレソニドの22Sエピマーを含有する。濾液からこれを再生利用することにより、該シクレソニド混合物から追加量の22Rエピマーが得られる。再生利用工程は、濾液からシクレソニドのエピマーの混合物を回収すること、22Sエピマーを22Rエピマーに変換し、22Rエピマーが濃縮されたシクレソニドの混合物を得ること、及び、濃縮されたシクレソニドを回収することを含んでなる。エピマーのシクレソニド混合物の該混合物は、結晶化工程から得られる少なくとも1の濾液を濃縮し、濃縮物を冷却してエピマーの該シクレソニド混合物を沈殿させることにより、回収することができる。沈殿したシクレソニド混合物は、任意により濾過、洗浄、及び乾燥してもよい。
【0032】
一般的に、22Sエピマーから22Rエピマーへの変換は、濾液から得られた沈殿シクレソニド混合物をフッ化水素酸で処理して、濃縮シクレソニド混合物を得ることにより行なわれる。この処理時に、22Rエピマーが濃縮される。次に、濃縮したシクレソニド混合物を単離することができる。濃縮したシクレソニドは、最大約90〜92%の量の22Rエピマーを有していてもよい。固体シクレソニドをフッ化水素酸で処理する工程は、微量のシクロヘキサンカルボキサルデヒドの添加を含んでいてもよい。
【0033】
濃縮されたシクレソニド混合物を、更に上記した結晶化工程に供してもよい。
【0034】
本発明はまた、水非混和性溶媒から結晶化によりシクレソニドの22R/22Sエピマー比を上昇させ、結晶化工程の母液から22Rエピマーを再生利用する方法を提供する。
【0035】
幾つかの好適な実施態様に関連して本発明を説明したが、当業者には明細書から他の実施態様が明らかであろう。本発明の方法を詳細に説明する以下の実施例を参照することにより、本発明を更に規定する。本発明の範囲を逸脱することなく、材料と方法の両面において多くの変更態様が可能であることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0036】
HPLC分析は以下の装置と方法を使用して行った。カラムはProdgy ODS、220×4.6mm、5μmである。溶出液は、流速が2mL/分のエタノール/水50/50である。検出器は242nmのUV−DADである。
【0037】
実施例1a:シクレソニドの調製(22R/22Sエピマー比90:10を有する)
約−20℃の温度でデソニド21−イソブチレート(70g,144ミリモル)を少しずつフッ化水素酸(73%,350g)に加え、得られた溶液にシクロヘキサンカルボキサルデヒド(18.4g,164ミリモル)約5分かけて加えた。反応混合物を−10℃〜−15℃に1時間維持し、次に約−30℃で2時間維持し、次に水酸化アンモニウム溶液(26%,87.5g)と水(2625g)の氷冷混合物中に注いだ。懸濁物を1時間攪拌後、出現した沈殿物を採取し、水で洗浄した。酸性ではないことを確認するために、湿潤沈殿物をジクロロメタン(1000g)と水(1000g,水酸化アンモニウム溶液でpH8に調整)との間で分配した。大気圧下で有機相を濃縮して、HPLCにより測定すると22R/22Sエピマー比が約90/10の油状残渣(粗生成物)を得た。
【0038】
実施例1b:濃縮工程−1回目の結晶化
実施例1aの油状残渣(理論収率:77.8g)を、加熱還流したアセトン(280g)に溶解し、イソオクタン(1400g)で還流を維持し、懸濁物の温度が90℃に達するまで大気圧下で濃縮した。約70℃で30分攪拌して懸濁物を冷却し、濾過して結晶性沈殿物を集め、イソオクタンで洗浄した。結晶を80℃で真空下で乾燥して、HPLCにより測定するとR/Sエピマー比が96.5/3.5の64グラムのシクレソニドを得た。
【0039】
実施例1c:濃縮工程−2回目の結晶化
実施例1bの生成物を、アセトン(96g)とイソオクタン(1400g)とを使用して実施例1bに開示したものと同じ方法で再結晶化して、HPLCにより測定するとR/Sエピマー比が98.3/1.7の56.8グラムのシクレソニドを得た。
【0040】
実施例1d:濃縮工程−3回目の結晶化
実施例1cの生成物を、アセトン(85g)とイソオクタン(1400g)とを使用して実施例1bに開示したものと同じ方法で再結晶化して、HPLCにより測定するとR/Sエピマー比が99.3/0.7の50.5グラムのシクレソニドを得た。
【0041】
実施例1e:濃縮工程−4回目の結晶化
実施例1dの生成物を、アセトン(76g)とイソオクタン(1400g)とを使用して実施例1bに開示したものと同じ方法で再結晶化して、HPLCにより測定するとR/Sエピマー比が99.75/0.25の45.9グラムのシクレソニドを得た。
【0042】
実施例2:エピマーの変換−2回目生成物の再生利用
実施例1b〜1eの結晶化工程の一緒にした母液を約400mLの容量に濃縮して、約10℃に冷却した。沈殿物を濾過して集め、イソオクチル(40g)で洗浄し、80℃で真空下で乾燥して、R/Sエピマー比が80/20の20グラムのシクレソニドを得た。この2回目の生成物を、実施例1に従って73%フッ化水素酸で処理して平衡R/Sエピマー比が92/8のシクレソニドになるまで再平衡化させた。
【0043】
実施例3:濃縮工程−99.9/0.1の比を有するシクレソニド
シクレソニド(27.8g,エピマー比99.76/0.24)をジクロロメタン(220g)に還流下で溶解し、溶液をイソオクタン(880g)で希釈し、生じる懸濁物の温度が90℃(ジクロロメタンの完全な除去)に達するまで、大気圧下で濃縮した。懸濁物を攪拌しながら冷却させて30分で約70℃にし、沈殿物を濾過して集め、イソオクタンで洗浄した。結晶を80℃で真空下で乾燥して、R/Sエピマー比が99.9/0.1のシクレソニド24.8gを得た。
【0044】
実施例4:シクレソニドの調製(22R/22Sエピマー比90:10を有する)
デソニド(65.4g)、アセトン(524g)、無水イソ酪酸(37.3g)、及び無水炭酸カリウム(41.8g)の混合物を90分間加熱還流し、次に約40℃に冷却し、水(131g)で希釈した。260グラムの溶媒が蒸発するまで溶液を濃縮し、冷却し、約5℃で攪拌下で水(1635g)に注いで沈殿物を得た。沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、80℃で真空下で乾燥して、76.2グラム(理論値の99.7%)のデソニド21−イソブチレートを得た。
【0045】
デソニド21−イソブチレート(70g,144ミリモル)約−20℃で73%のフッ化水素酸(350グラム)に少しずつ加えた。生じた溶液にシクロヘキサンカルボキサルデヒド(18.2g)を約5分かけて加え、混合物を約−10℃で2時間攪拌し、次に26%の水酸化アンモニウム溶液(875g)と水(2625g)の氷冷混合物中に注いだ。懸濁物を1時間攪拌し、沈殿物を濾過して集め、水で洗浄した。
【0046】
酸性ではないことを確認するために、湿潤沈殿物をジクロロメタン(350g)と水(1000g,水酸化アンモニウム溶液でpH8に調整)との間で分配した。大気圧下で有機相を濃縮して油状残渣にした。残渣をアセトン(210g)に溶解し、溶液を攪拌下で水(2100g)に注いだ。沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、80℃で真空下で乾燥して、R/Sエピマー比が約90/10の77.5グラム(理論値の99.6%)のシクレソニドを得た。
【0047】
実施例5a:濃縮工程−1回目の結晶化
出発物質はヨーロッパ特許第929566号(4頁11〜22行)の実施例1又は実施例4に従って調製した粗シクレソニドである。粗シクレソニド(60g,エピマー比90/10)をジクロロメタン(300g)に溶解し、イソオクタン(1200g)で希釈し、次に温度が90℃(ジクロロメタンの完全な除去)に達するまで、溶液を大気圧下で濃縮した。懸濁物を攪拌下で冷却して30分で約70℃にし、沈殿物を濾過して集め、イソオクタンで洗浄した。結晶を80℃で真空下で乾燥して、R/Sエピマー比が94.4/5.6のシクレソニド51.5gを得た。母液はR/S比が約56/44であり、これは好ましくないエピマーの除去についてこの工程の優れた選択性を示している。
【0048】
実施例5b:濃縮工程−2回目の結晶化
実施例5aの生成物を、同量のジクロロメタンとイソオクタンを使用して実施例5aに記載したものと同じ方法で再結晶化して、R/Sエピマー比が97.5/2.5の44グラムのシクレソニドを得た。
注:実施例5b〜5dはその前の実施例で得られた量で出発する。
【0049】
実施例5c:濃縮工程−3回目の結晶化
実施例5bの生成物を、同量のジクロロメタンとイソオクタンを使用して実施例5aに記載したものと同じ方法で再結晶化して、R/Sエピマー比が98.7/1.3の40グラムのシクレソニドを得た。
【0050】
実施例5d:濃縮工程−4回目の結晶化
実施例5cの生成物を、同量のジクロロメタンとイソオクタンを使用して実施例5aに記載したものと同じ方法で再結晶化して、R/Sエピマー比が99.5/0.5の37グラムのシクレソニドを得た。これは、濾液又は両方の母液からのエピマーの抽出無しで、約62%の収率である。
【0051】
実施例6a:2回目の生成物の再生利用
実施例5a〜5dの結晶化工程え一緒にした母液を大気圧下で濃縮して懸濁物を得て、これを周囲温度まで冷却した。沈殿物を濾過して集め、イソオクタンで洗浄した。結晶を80℃で真空下で乾燥して、R/Sエピマー比が73/27の20gのシクレソニドを得た。
【0052】
実施例6b:2回目の生成物の再平衡化による再生利用
実施例6aで得られた2回目の生成物(20グラム)を73%フッ化水素酸(100g)に溶解し、溶液を−30℃で2時間攪拌し、次に実施例4に記載のように単離した。R/S比が約90/10である19.5グラムのシクレソニドが得られた(収率:89%w/w)。
【0053】
実施例7a:濃縮工程−1回目の結晶化
粗シクレソニド(2g、エピマー比90/10、実施例4のように調製した)をイソオクタン(1000g)に溶解し、攪拌下で周囲温度まで冷却した。沈殿物を濾過して集め、イソオクタンで洗浄し、80℃で真空下で乾燥て、R/Sエピマー比が98.5/1.5の1.4グラムのシクレソニドを得た。
【0054】
実施例7b:濃縮工程−2回目の結晶化
実施例7aの生成物をイソオクタン(700g)を使用して実施例7aに記載したものと同じ方法で再結晶化して、R/Sエピマー比が99.6/0.4の1.1グラムのシクレソニドを得た。
【0055】
実施例8:シクレソニドの調製(22R/22Sエピマー比92:8を有する)
16α−ヒドロキシプレドニソロン21イソブチレート(25g)を、約−20℃のフッ化水素酸(125g,73%)に少しずつ加えた。生じた溶液に、約5分でシクロヘキサンカルボキサルデヒド(6.6g)を加え、混合物を約−10℃で1時間攪拌し、次に−20℃〜−30℃で1.5時間攪拌し、26%水酸化アンモニウム溶液(312g)と水(940g)の氷冷混合物中に注いだ。懸濁物を1時間攪拌し、沈殿物を濾過して集め、水で洗浄した。酸性ではないことを確認するために、湿潤沈殿物をジクロロメタン(250g)と水(125g,水酸化アンモニウム溶液でpH8に調整)との間で分配した。大気圧下で有機相を濃縮して油状残渣を得た。残渣をアセトン(75g)に溶解し、溶液を攪拌下で水(750g、約0℃で)に注いだ。沈殿物を濾過して集め、水で洗浄し、80℃で真空下で乾燥して、R/Sエピマー比が約92:8の29グラムのシクレソニドを得た。
【0056】
実施例9:エタノール−水混合物中の分解
20mgのシクレソニドを6mLのエタノールと4mLの精製水に溶解し、溶液を80℃で64時間維持した。この期間中に初期の純度99.74%が低下して95.34%になり、3.99%の対応する21ヒドロキシ類似体が生成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクレソニドの22R/22Sエピマー比を上昇させる方法であって、
少なくとも1種の水非混和性有機溶媒中のシクレソニドの溶液から、シクレソニドを結晶化させる工程を含んでなる方法。
【請求項2】
a)少なくとも1種の水非混和性有機溶媒にシクレソニドを溶解させて溶液を作製する工程;
b)溶液からシクレソニドを結晶化させる工程;及び
c)結晶化したシクレソニドを単離する工程を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
出発シクレソニドは約15%以下のシクレソニドの22Sエピマーを有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
出発シクレソニドは約12%以下のシクレソニドの22Sエピマーを有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
水非混和性有機溶媒は非ヒドロキシル性有機溶媒である、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
水非混和性有機溶媒は、C1〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状アルカン、及びC2〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
溶媒はC6〜C8直鎖、分岐鎖、又は環状アルカンである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
溶媒はC5〜C12直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
溶媒はC5〜C6直鎖、分岐鎖、又は環状エーテルである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
水非混和性有機溶媒は、ヘプタン、ヘキサン、イソオクタン、tert−ブチルメチルエーテル、又はジイソプロピルエーテルである、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
水非混和性有機溶媒はイソオクタンである、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶液は、該水非混和性有機溶媒より低い沸点を有する少なくとも1つの有機溶媒を含む、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
低沸点溶媒は、C1〜C8アルコール、C2〜C8ケトン、及びC1〜C6脂肪族ハロゲン化炭素よりなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
溶媒はC1〜C5アルコールである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
溶媒はC1〜C4アルコールである、請求項12記載の方法。
【請求項16】
溶媒はC2〜C5ケトンである、請求項12記載の方法。
【請求項17】
溶媒はC2〜C3ケトンである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
ハロゲン化炭素はC1-4脂肪族ハロゲン化炭素である、請求項12記載の方法。
【請求項19】
ハロゲン化炭素はC1-2脂肪族ハロゲン化炭素である、請求項12記載の方法。
【請求項20】
低沸点有機溶媒は、ジクロロメタン、アセトン、メタノール、エタノール、又はtert−ブタノールである、請求項12記載の方法。
【請求項21】
低沸点有機溶媒はアセトン又はジクロロメタンである、請求項12記載の方法。
【請求項22】
低沸点有機溶媒はジクロロメタンである、請求項12記載の方法。
【請求項23】
水非混和性有機溶媒と低沸点有機溶媒との比は20:1重量比である、請求項12〜22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
水非混和性有機溶媒と低沸点有機溶媒との重量比は約10:1である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
水非混和性有機溶媒と低沸点有機溶媒との重量比は約5:1である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
シクレソニドを結晶化させる前に低沸点有機溶媒を除去する工程を含んでなる、請求項12〜25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
シクレソニドの結晶化は、溶液を濃縮して懸濁物を得、懸濁物を冷却して結晶性シクレソニドの沈殿を誘導することを含んでなる、請求項1〜26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
懸濁物を約80℃〜約10℃の温度まで冷却する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該方法を繰り返し、結晶化したシクレソニドを出発シクレソニドとして使用する、請求項1〜28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
該方法を2回繰り返した後に、22R/22Sエピマー比は少なくとも約99.0/1.0まで上昇する、請求項1〜29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
該方法を4回繰り返した後に、22R/22Sエピマー比は少なくとも約99.9/0.1である、請求項1〜30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
工程cで得られた濾液から22Rエピマーを再生利用する工程を更に含んでなる、請求項1〜31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
再生利用は、22Sと22Rのシクレソニドのエピマー混合物を有する少なくとも1つの濾液を濃縮すること、22Sエピマーを22Rエピマーに変換すること、及び、濾液のシクレソニドと比べて22R/22Sエピマー比が上昇したシクレソニドを単離することを含んでなる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
シクレソニドの22Rエピマーを濃縮する方法であって:
a)無水非ヒドロキシル性の第1の有機溶媒、又は、第1の有機溶媒と第1の有機溶媒より沸点が低い第2の有機溶媒との混合物中、22Sエピマー含量が最大約15%であるシクレソニドの溶液を、周囲温度と溶媒又は溶媒混合物の還流温度との間の温度で調製する工程;及び
b)22Rエピマーが濃縮されたシクレソニドを結晶化させる工程を含んでなる方法。
【請求項35】
結晶化工程(b)を繰り返してシクレソニドの22Rエピマー含量を更に上昇させる、請求項34記載の方法。

【公表番号】特表2009−512733(P2009−512733A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538123(P2008−538123)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/043025
【国際公開番号】WO2007/056181
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(505216117)シコール インコーポレイティド (35)
【Fターム(参考)】