説明

シクロウンデカデプシペプチド化合物および医薬としてのその化合物の使用

本発明は、新しいシクロウンデカデプシペプチド化合物、および医薬としての、特に抗ウイルス薬としての、より具体的にはC型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための当該化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシクロウンデカデプシペプチド(シクロウンデカデプシペプチド)化合物に関する。また本発明は、医薬としての、特に抗ウイルス薬としての、より具体的にはC型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための、これらの化合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
HCVは、約15年前にChooおよび共同研究者によってクローン化され、特性解析された(非特許文献1を参照)。HCVはフラビウイルス科に属し、エンベロープ型のヌクレオカプシドおよび+の極性の一本鎖RNAゲノムを含む(非特許文献2を参照)。HCVは、主に血液、血液製剤および妊娠中の母子感染によってうつされる。血液製剤をスクリーニングするための診断検査の導入は、新しい感染の割合を著しく低下させた。
【0003】
依然として、HCVは深刻な医学上の問題であり続けている。現在約1億7000万人の人々がHCVに感染している。感染の初期の過程は、典型的には軽度である。しかしながら、多くの場合、免疫系は、このウイルスを一掃することができず、持続的な感染を有する人々は、肝硬変および肝細胞癌の高いリスクにある(非特許文献3を参照)。
【0004】
利用できるワクチンはなく、治療法の選択肢は非常に限られている(非特許文献4;非特許文献5を参照)。
【0005】
サイクロフィリンに強く結合する化合物が同定されたが、それらの化合物は免疫抑制性であった(非特許文献6)。
【0006】
それゆえ、最近20年間の間、NIM 811、またはHIV−1複製を阻害する高い効力をも提示しかつ本質的に免疫抑制活性を欠く他の化合物などの非免疫抑制性化合物を同定することを目的として、いくつかの医薬品化学の研究が行われてきた。特許文献1(Wengerら;DEBIOPHARM SA)および非特許文献7を参照。
【0007】
サイクロフィリンに結合する非免疫抑制性化合物が、C型肝炎ウイルス(HCV)に対して阻害効果を有するということが見出された。非A型肝炎、非B型肝炎の主要な原因因子(causative agent)として同定されたHCVによる持続的な感染は、慢性肝炎、肝硬変または肝細胞癌などの肝疾患に密接に関連すると考えられてきた。これらの肝疾患の発症は、主要な公衆衛生の問題である。有効な抗HCV治療は、インターフェロン、またはインターフェロンおよびリバビリンの組み合わせを用いた治療に限定されている。しかしながら、このウイルスはこれらの公知の薬剤で処置されたHCV患者の約半分から取り除かれないため、依然として代替の抗HCV剤に対する強いニーズがある。
【0008】
C型肝炎ウイルス(HCV)複製の阻害に対して作用する特性を有するシクロウンデカペプチドは、すでに特許文献2(Novartis Pharma GMBH)および特許文献3(DEBIOPHARM SA)から公知である。非特許文献8は、特許文献3に記載された化合物によるmPT阻害のより良好な効力を報告する。しかしながら、これらのペプチドのうちのいくつかは現在臨床試験にかけられているが、改善された薬物動態プロファイル(例えば肝トランスポーター阻害プロファイルおよびその結果生じる薬物−薬物相互作用)ならびに改善された毒性学プロファイル(例えば非免疫抑制活性、およびその結果生じる有害事象)とともに、特にHCVの複製を阻害するための満足できる特性を有する新しい抗ウイルス薬を開発するというニーズが依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/01715号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/021028号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/038088号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Science、1989年、第244巻、359−362頁
【非特許文献2】Bartenschlagerら、Antiviral Res.、2003年、第60巻、91−102頁
【非特許文献3】Poynardら、Lancet、1997年、第349巻、825−832頁
【非特許文献4】Mannsら、Indian J.Gastroenterol.、2001年、第20巻(補遺1)、C47−51頁
【非特許文献5】Tanら、Nat.Rev.Drug Discov.、2002年、第1巻、867−881頁
【非特許文献6】Nakagawa Mら、Biochmical and biophysical research communications、Academic Press Inc.、米国、フロリダ州、オーランド、2004年1月2日、第313巻、第1号、42−47頁、XP004479114
【非特許文献7】Tetrahedron Lett.、2000年、第41巻、7193−6頁
【非特許文献8】Hanssons M Jら、Journal of Bioenergetics and biomembranes、plenum publishing、米国、ニューヨーク州、ニューヨーク、2004年8月1日、第36巻、第4号、407−413頁(XP002330699)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、C型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害の予防または処置において使用するべきさらなる非免疫抑制性化合物を提供することを目的とする。これらの化合物は、肝トランスポーターの阻害に関連する潜在的な副作用、もしくは肝トランスポーターの阻害に関連する潜在的な薬物−薬物相互作用のいずれかを低減する、またはその両方でさえも低減するという予想外の長所を有する。加えて、特に工業規模でより容易に合成される化合物を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それゆえ、本発明の目的は、上記の改善された特性を有する新しい抗ウイルス薬を提供することであったが、驚くべきことに、これらの要件は式(I)に定義されるシクロウンデカデプシペプチド化合物
【化1】

(式中、
AXXはMeBmt、4−フルオロ−MeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmt;O−アセチル−MeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)、Nva、5−ヒドロキシ−Nvaであり;
AXXはD−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeSer(O−CHCHOH)、D−MeSer(OCHCHNEt)、D−MeAsp(OMe)であり;
AXXはMeIle、MeMet、MeMet(Ox)(ここで、Oxはメチオニンの硫黄原子はスルホキシドまたはスルホンであることを意味する)、MeVal、MeThr、MeThr(OAc)、MeThr(OtBu)、MeThr(OMe)、MeAla、MeIle、MeThr、EtVal、EtIle、EtPhe、EtTyr、EtThr(OAc)、MeThr(OAc)、MeTyr、MeTyr(OAc)、MeTyr(OMe)、MePheであり;
AXXはLeu、Val、Ile、Alaであり;
AXXはMeAla、Sar、MeLeuであり;かつ
AXXはGly、Alaである)
によって満たされるということが見出された。
【0013】
本発明の別の対象は、C型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための医薬組成物であって、1以上の薬学的に許容できる希釈剤または担体と一緒に式Iの化合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる対象は、少なくともa)式Iの化合物または上記医薬組成物からなる第1の薬剤と、b)HCV複製に対して作用する特性を有する第2の薬剤とを含む医薬的組み合わせを提供することである。
【0015】
式Iに係る化合物は、C型肝炎感染またはHCVに誘導される障害の処置または予防における医薬の製造において使用されてもよい。
【0016】
本発明のなおさらなる対象は、必要とする対象においてC型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための方法であって、当該対象に、治療上有効量の式Iの化合物または本発明に係る医薬組成物を投与することを含む方法を提供することである。
【0017】
あるいは、必要とする患者においてHCV複製を阻害するための方法であって、当該対象に、治療上有効量の式Iの化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含む方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のよりよい理解のために、そして本発明がどのように実施されうるかを示すために、これより、例としてのみであるが、本発明に係る特定の実施形態、方法およびプロセスが添付の図面を参照して示される。
【図1】国際公開第2006/038088号パンフレットに係る化合物、すなわち[D−MeAla]−[EtVal]−CsA(Debio 025)と比較して、本発明に係る化合物の化学合成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特に定義しない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本願明細書に記載されるものと類似または等価な方法および物質を本発明の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および物質が以下で示される。本願明細書中で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体を援用したものとする。矛盾する場合には、定義を含めて本願明細書が優先するものとする。加えて、物質、方法、および実施例は説明するためのものに過ぎず、限定を意図するものではない。
【0020】
本願明細書で使用する場合、本発明の理解を容易にするために、以下の定義が与えられる。
【0021】
用語「含む」は、一般に「包含する」の意味で使用され、つまり1以上の特徴または構成要素の存在を許容する。
【0022】
式(I)のシクロウンデカデプシペプチド化合物を影響することが本発明の対象である。
【化2】

式中、
AXXはMeBmt、4−フルオロ−MeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmt、O−アセチル−MeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)、Nva、5−ヒドロキシ−Nvaであり;
AXXはD−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeSer(O−CHCHOH)、D−MeSer(O−CHCHNEt)、D−MeAsp(OMe)であり;
AXXはMeIle、MeMet、MeVal、MeThr、MeThr(OAc)、MeAla、EtVal、EtIle、EtPhe、EtTyr、EtThr(OAc)、MeThr(OAc)、MeTyr、MeTyr(OAc)、MeTyr(OMe)、MePhe、MeMet(Ox)であり、式中、メチオニンの硫黄原子はスルホキシドまたはスルホンであり;
AXXはLeu、Val、Ileであり;
AXXはMeAla、Sar、MeLeuであり;かつ
AXXはGly、Alaである。
【0023】
IUPACが認める定義によれば、シクロデプシペプチドは、アミノおよびヒドロキシルカルボン酸残基(通常はα−アミノおよびα−ヒドロキシ酸)の配列を有する天然または合成の化合物であり、これらの残基は環として連結されている(IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版(1997)を参照)。このようなシクロデプシペプチドは、少なくとも1つのアミド結合がエステル結合で置き換えられているヘテロデチック(heterodetic)ペプチドとして記述される(J.Peptide Sci. 10:115−8(2004)を参照)。
【0024】
本発明の化合物は11残基を含み、10個はα−アミノ酸であり、1個はα−ヒドロキシ酸である。このα−ヒドロキシ酸はD−α−ヒドロキシイソ吉草酸としても知られH−D−Hiv−OHと略号で記される(2R)−2−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸である。式(I)では、このヒドロキシル酸は、8位にある。それは、カルボン酸末端で、9位のα−アミノ酸、つまりN−メチル−ロイシンのアミノ基とアミド結合を形成し、ヒドロキシル末端で7位のα−アミノ酸、つまりアラニンまたはグリシンのカルボン酸基とエステル結合を形成する。
【0025】
式(I)のα−アミノ酸は、アミノ酸を命名するために通常使用される3文字コードの略号を使用して呼ばれ、それらの配置は、特段の記載がない限りL配置である。残基のナンバリング(番号付け)は、上で定義されたとおりのN−メチル−(4R)−4−[(E)−2−ブテニル]−4−メチル−L−トレオニンまたはMeBmtおよびその構造的誘導体を表すAXXから始まる。メチル基Meまたはエチル基Etなどのアルキル基がアミノ酸の略号の前に現れる場合は、これは、このようなアルキル基がそのアミノ酸残基のアミノ基に固定されているということを意味する。
【0026】
本発明に係る化合物の利点は、先行技術に記載されている対応するシクロウンデカペプチド化合物の通常の環状アミド骨格と比べた、大環状骨格の内部のエステル結合の影響にある可能性がある。理論に拘束されるわけではないが、7位のアミノ酸AXXと8位のD−HIVとの間のアミドをエステル結合で置き換えると、コンホメーション上の柔軟性の増加(P.J.Flory、Statistical Mechanics of Chain Molecules、Hanser Publishers、NY、1988にある)および親油性の増加ならびに水素供与体結合の不存在などのコンホメーション上の特性および物理化学的特性に対して強い効果をもたらすと考えられている。
【0027】
これらの構造的特徴は、CsAから誘導される類似体の種類と比べて、本発明の化合物の物理化学的特性、薬物動態特性および生物学的特性の顕著な差異に姿を変えて現れると考えられる。系統的なSAR研究において観察されたアミノ酸置換に対するより高い許容度についての可能な理論的解釈は、生理活性のコンホメーションに対するコンホメーション空間の増加にある可能性がある(V.Mikolら、J.Mol.Biol.(1998)283、451−461)。
【0028】
先行技術のシクロウンデカペプチド類似体とは対照的に、米国特許第5,116,816号明細書、実施例2、または国際公開第02/092033号パンフレット、実施例4、工程4−1のいずれかから得られるような、天然のシクロウンデカデプシペプチドの2位のアミノ酸と7位のアミノ酸との間の断片の中の位置での1つまたは複数の置き換えは、本発明の基準を満たす化合物の一覧によって明らかにされるように、サイクロフィリンへの高い結合能力の保持をもたらす。最も注目すべきことには、国際公開第2006/038088号パンフレットに係る化合物、すなわち[D−MeAla]−[EtVal]−CsA(Debio 025)と比べて2〜4倍までの、本発明の化合物についてのCyp Aへの結合親和性の増加が観察された。
【0029】
改善された活性なプロファイル(実施例5および実施例6を参照)とは別に、当該新しい種類の化合物は、とりわけ工業規模での改善された調製プロセスをももたらす。
【0030】
本発明は、式Iの化合物の循環寿命(circulating lifetime)を延ばすための式Iの化合物の化学修飾をも包含する。この特性を有する適切なポリ(エチレングリコール)誘導体の例は、例えば米国特許出願公開第2005171328号明細書(NEKTAR THERAPEUTICS AL CORP)または米国特許第6,713,454号明細書(NOBEX CORP)に記載されている。
【0031】
より好ましくは、本発明の化合物は、
AXXはMeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)、5−ヒドロキシ−Nvaであり;
AXXはD−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeAsp(OMe)であり;
AXXはMeIle、MeMet、MeMet(Ox)(ここで、Oxはメチオニンの硫黄原子はスルホキシドまたはスルホンであることを意味する)、MeVal、EtVal、EtIle、MeTyr、MeTyr(OAc)、MeTyr(OMe)、MeThr、MeThr(OtBu)、MeThr(OAc)、MeThr(OMe)、MePheであり;
AXXはLeu、Val、Ile、Alaであり;
AXXはMeAla、Sar、MeLeuであり;かつ
AXXはGly、Alaである、
式(I)によって定義される。
【0032】
さらにより好ましくは、式(I)の化合物は、
AXXはMeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)、5−ヒドロキシ−Nvaであり;
AXXはD−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeAsp(OMe)であり;
AXXはMeIle、MeMet、MeMet(Ox)(ここで、Oxは−SOMe、−SOMeである)、MeVal、EtVal、EtIle、MeTyrであり;かつ
AXXはLeu、Val、Ileであり;
AXXはMeAla、Sar、MeLeuであり;かつ
AXXはGly、Alaである、
と定義される。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、式(I)の化合物は、
AXXはMeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thrであり;
AXXはD−MeAlaであり;
AXXはMeIle、MeVal、EtValであり;
AXXはLeu、Val、Ileであり;
AXXはMeAla、MeLeu、Sarであり;かつ
AXXはGly、Alaである、
と定義される。
【0034】
本発明の最良の態様のうちの1つによれば、式(I)の化合物は以下の式:
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ia)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ib)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Ile−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ic)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Id)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Val−MeAla−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ie)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (If)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Ile−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ig)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ih)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeIle−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ii)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Val−Sar−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ik)
を与える。
【0035】
上に列挙された化合物は、本発明の最も重要な基準、つまり化学合成、薬理学的な特性、薬物動態プロファイルおよび毒物学的プロファイルの改善、の全体的な最適化に対応する。
【0036】
注目すべきことには、これらの化合物は、Debio 025と比べてはるかに低い、MRP2またはOATP1B1などの肝トランスポーターを阻害する効力を示す。それゆえ、これらの化合物は、潜在的な副作用(例えば高ビリルビン血症)、もしくは肝トランスポーターの阻害に関連する潜在的な薬物−薬物相互作用(例えばアトルバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤との)のいずれかを低減する、またはその両方でさえも低減することが予想される。
【0037】
本発明のさらなる化合物は以下のとおりである:
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Val−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeThr(OtBu)−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−Sar−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Thr−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Ile−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeIle−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeIle−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Val−MeAla−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Leu−MeAla−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeThr−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Thr(OMe)−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeTyr−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Leu−Sar−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Thr−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Val−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Ala−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Ile−MeAla−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Val−Sar−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)。
【0038】
注目する他の化合物は、以下の式:
シクロ−(MeBmt−Thr(OMe)−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−((8−ヒドロキシ)MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−(5−OH)Nva−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Thr(OR)(R=−COCH、−COCHCHCH−OH)−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Val−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeSer−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeSer−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeSer(OAc)−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAsp(OMe)−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Val−D−(3−フルオロ)MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−(3−フルオロ)MeAla−MeIle−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeMet−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeMet(Ox)(Ox=−SOMe、−SOMe)−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MePhe−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeTyr(OR)(R=Ac、Me)−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeThr(OR)(R=Me、Ac)−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−(3−フルオロ)MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtIle−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−(ジヒドロ)MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−((8−ヒドロキシ)MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
シクロ−((8−ヒドロキシ)MeBmt−Val−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)
によって同定される。
【0039】
本発明の化合物は、古典的なペプチド(溶液相または固相ペプチド合成;Houben−Weyl、Methods of Organic Chemistry、第E 22d巻、編集長:M.Goodman、Thieme Verlag、シュトゥットガルト、2003年にある)および有機化学またはバイオテクノロジーを応用することにより、例えばWengerによってHelv.Chim.Acta、67、502−25、1984またはHelv.Chim.Acta、66、2672−702(1983)に記載されているような化学ツールを応用することにより、ならびにRich,D.H.ら、Comparative studies of the coupling of N−methylated,sterically hindered amino acids during SPPS、Tetr. Letters、35、5981−5984(1994)に記載されているように、HATUをカップリング試薬として用いることにより、得られうる。
【0040】
例えば、可能性のある一般的スキームのうちの1つは、必要に応じて適切な保護基および活性化基を有する適切な残基を含有する2つの断片、つまり断片Aおよび断片Bを調製し、調製の最後の工程でそれらを一緒に連結して、ウンデカペプチドを得て、次いでこれをシクロウンデカデプシペプチドへと環化するということにある。
【0041】
例えば、断片(Ax)は、以下のとおり:
H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−AXX−OH (Ax)
であってもよく、断片(Bx)は以下のとおり:
H−AXX−AXX−AXX−AXX−AXX−AXX−OR、(Rはアルキル基である) (Bx)
であってもよく、次いでAxおよびBxはウンデカデプシペプチドAx−Bx、H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−AXX−AXX−AXX−AXX−AXX−AXX−AXX−OR(R=アルキル、H)へとカップリングされ、
最終工程はマクロラクトン化である。
【0042】
α−ヒドロキシ酸残基D−Hivを含有する断片Aは、天然のシクロウンデカデプシペプチド(つまり、シクロ−(MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)の分解によって得てもよく、このシクロウンデカデプシペプチドの調製は、米国特許第5,116,816号明細書、実施例2、または国際公開第02/092033号パンフレット、実施例4、工程4−1のいずれかに記載されている。
【0043】
先行技術に対する本発明に係る化合物の優位点は、その活性なプロファイル(実施例5および6を参照)にだけでなく、とりわけ工業規模でのその改善された調製プロセスにもある。
【0044】
1. 天然の化合物(CsAおよびシクロ−(MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)(図1を参照)から出発して、シクロウンデカデプシペプチド類似体の合成の全収率は、DEBIO 025(国際公開第2006/038088号パンフレットに記載されている[D−MeAla]−[EtVal]−CsA、DEBIOPHARM SA)についての20%と比較して、>50%である。
【0045】
2. 高価なジペプチド誘導体Boc−D−MeAla−EtVal−OHの合成(4つの化学工程を含む)は必要とされない。加えて、当該化合物のうちのいくつかはC末端グリシンを含有し(Ia、Ic、If、Ig、Ii、Ik)、これは、合成の最後の工程(マクロラクトン化、エピマー化なし)を容易にする。
【0046】
3. 試薬および出発化合物についてのコストは、本発明に係る化合物の場合はかなり低い。注目すべきことに、CsAの開環反応のために使用される「Meerweinの試薬」は必要とされない。
【0047】
4. 断片B(ヘキサペプチドAXX−AXX)は、市販の出発化合物を使用して標準的な固相ペプチド合成によって効率的に得ることができる(図1を参照)。
【0048】
5.天然の出発化合物からの断片Aの調製、ならびに縮合(断片Aと断片B)、大環状化および最終の精製の工程の最適化において、薬理学的に興味深い化合物を得るための全収率は、80%にまで達することができる。
【0049】
6. 全体としては、示された態様は、良好な有効性、およびその結果として、特に工業規模での本発明の化合物の合成に関して良好な商品原価をもたらす。
【0050】
HCVの複製を阻害する本発明の化合物の能力はレプリコンアッセイにおいて示され、基本的に免疫抑制活性が存在しないことがT細胞増殖アッセイにおいて評価された(実施例5および6を参照)。
【0051】
本発明に係る「非免疫抑制性」化合物は、シクロスポリンA(CsA)よりも少なくとも30倍少なく、好ましくは150倍未満、200倍未満でさえ、好ましくは300倍未満でさえも免疫抑制性(シクロスポリンAのIC50(50%阻害濃度)に対する当該化合物のIC50の比(IC50化合物/IC50 CsA)として決定される)である化合物と理解されたい。理想的には、本発明の化合物は、コンカナバリン−Aによって誘導されるT細胞増殖アッセイにおいてCsAと少なくとも2logの差のインビトロでの非免疫抑制活性を有する。
【0052】
従って、本発明の化合物は、特に抗ウイルス薬として、より具体的にはC型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための医薬としての使用について考慮される。C型肝炎感染またはHCVに誘導される障害は、例えば慢性肝炎、肝硬変または肝癌、例えば肝細胞癌である。本発明の化合物は、例えばHCV感染した母から生まれる新生児、またはそのウイルスに曝露される医療従事者、または移植後の再発する可能性があるHCV感染を排除するために、移植レシピエント、例えば器官もしくは組織移植レシピエント、例えば肝臓移植、の予防的処置として使用されてもよい。
【0053】
「処置」は、治療的処置および予防的または防止的措置の両方を指す。処置を必要とするものには、すでに上記障害を有しているものおよびその障害が防止されるべきであるものが含まれる。従って、本発明で処置されるべき哺乳動物は、その障害を有するとすでに診断されていてもよいし、またはその障害に対する素因があるかもしくはその障害に対して感受性を有していてもよい。
【0054】
処置の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜および農場動物またはペット動物(イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、サルなど)を含めた哺乳動物として分類されるいずれかの動物を指す。好ましくは、この哺乳動物はヒトである。
【0055】
用語「治療上有効量」は、哺乳動物において疾患または障害を処置するのに有効な薬物の量を指す。
【0056】
本発明の化合物は、例えば予め濃縮されたマイクロエマルションに組み込まれて、必要とする患者に、例えば経口投与されてもよい。
【0057】
本発明の化合物、使用できる場合にはそれらの薬学的に許容できる塩、およびそれらのプロドラッグは、C型肝炎感染またはHCVに誘導される障害を予防または処置するためにそれらが薬学的に許容できる補助剤、希釈剤または担体と合わせられた医薬組成物の形態で投与されてもよい。
【0058】
本発明はまた、本願明細書中上記で定義された本発明の化合物、またはその薬学的に許容できる塩を、薬学的に許容できる補助剤、希釈剤または担体と合わせて含む医薬組成物を提供する。適切な賦形剤、希釈剤および補助剤に関しては、これらを記載する標準的な文献を、例えば「Comprehensive Medicinal Chemistry」、Pergamon Press 1990の第5巻の第25.2章を、およびH.P.Fiedlerによる「Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie,Kosmetik und angrenzende Gebiete」、Editio Cantor、2002を参照してもよい。
【0059】
本発明の化合物はまた、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルの中に、コロイド状の薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)の中に、またはマクロエマルションの中に、閉じ込められていてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Science、第16版、Osol,A.編(1980)に開示されている。
【0060】
持続放出調剤が調製されてもよい。持続放出調剤の適切な例としては、本発明の化合物を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは成形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態にある。持続放出マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド類(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸および[γ]エチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、医薬LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸リュープロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)を調製するために使用されるものなどの分解性乳酸−グリコール酸共重合体、ならびにポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0061】
本発明の1日用量は、処置される宿主、特定の投与経路、および処置しようとする疾病の重症度および種類に応じて必然的に変えられるであろう。従って、最適の投薬量は、いずれかの特定の患者を処置しようとする医師によって決定されてもよい。
【0062】
局所投与;例えばエアロゾルもしくは乾燥粉末としての吸入による投与;例えば錠剤、カプセル、ゲル、シロップ、懸濁剤、液剤、散剤もしくは顆粒の形態での経口投与;例えば座薬としての直腸もしくは膣内投与;または滅菌された液剤、懸濁剤もしくは乳剤としての非経口注射(静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、脈管内注射、もしくは点滴を含む)が意図される場合、本発明の医薬組成物は、クリーム、ゲル、液剤、軟膏剤、懸濁剤または硬膏剤などとして調合されてもよい。
【0063】
本発明の活性化合物は、いずれかの従来の経路によって投与されてもよい。本発明の活性化合物は、例えば、注射可能な液剤または懸濁剤の形態で、または注射可能な蓄積製剤(deposit formulation)の形態で非経口投与されてもよい。好ましくは、本発明の活性化合物は、飲用のための液剤もしくは懸濁剤、錠剤またはカプセルの形態で経口投与されるであろう。本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物を含む経口投与用の医薬組成物は、実施例に記載される。その実施例によって実証されるように、そのような医薬組成物は、典型的には、本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物と、1以上の薬学的に許容できる担体物質とを含む。典型的には、これらの組成物は、濃縮されており、投与に先立って適切な希釈剤、例えば、水と組み合わせられる必要がある。非経口投与用の医薬組成物もまた、典型的には1以上の賦形剤を含む。任意の賦形剤としては、等張剤、緩衝液または他のpH調整剤、および防腐剤が挙げられる。これらの賦形剤は、当該組成物の維持のため、およびpH(約6.5〜7.5)および浸透圧モル濃度(約300mosm/L)の好ましい範囲を達成するために添加されてもよい。経口投与用の製剤のさらなる例は、米国特許第5,525,590号明細書および米国特許第5,639,724号明細書、および米国特許出願公開第2003/0104992号明細書に見出すことができる。経口経路によると、毎日〜週に3回(trice)の投与のための本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物の示される投薬量は、約1mg/kg〜約100mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約20mg/kgであってもよい。静脈内経路によると、示される対応する投薬量は、約1mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kgであってもよい。本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物の有効量は、治療計画の過程においてHCV感染の処置を必要とする患者に対して反復的に投与されたときに、その患者における血清HCV力価の統計的に有意な低下または血清ALT活性の有意な低下などの客観的な臨床反応をもたらす量であると理解される。
【0064】
HCV感染に対する本発明の化合物を含む医薬組成物の有効性を試験するための試験的な用量を決定するときに、臨床医によって多くの要因が考慮されることになろう。これらの中でも主なものは、選択された本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物の毒性および半減期である。さらなる要因としては、患者の体重、患者の年齢、患者の全般的な状態(非代償性肝疾患、重篤な先在する骨髄の機能低下および他のウイルス感染症を含めた重大な全身性疾患または重病を含む)、例えば血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルによって示されるようなHCV感染の病期(急性 対 慢性)、HCVの特定の遺伝子型、HCV感染の以前の治療、患者の中の他の薬物の存在などが挙げられる。治療過程は、本発明の医薬組成物の反復的な投与を必要とするであろう。典型的には、十分な薬物用量が週に3〜7回投与されることになり、処置の継続期間は、約4週間〜6ヶ月、好ましくは約4週間〜約12ヶ月であってもよい。処置のあとに、血清中のHCVの判定および血清ALTレベル測定が続いてもよい。処置の終点は、ウイルス学的反応、すなわち、処置の過程の最後に、処置の開始の数ヶ月後に、または処置の完結の数ヶ月後にHCVが存在しないことである。血清中のHCVは、定量的RT−PCRまたはノーザンブロットなどの方法によってRNAレベルで、またはウイルスタンパク質の酵素イムノアッセイまたは増感化学発光イムノアッセイによってタンパク質レベルで測定されてもよい。この終点はまた、正常範囲での血清ALTレベルの判定を含んでもよい。
【0065】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、例えば、別の抗ウイルス性薬物物質、例えば、リバビリン、またはインターフェロンαなどのHCV感染に対して活性な1以上の他の成分を含んでもよい。本発明の化合物およびこのような他の活性成分は、同じ医薬組成物の部分として一緒に投与することができるし、または併用療法の恩恵を得るように設計された適切な用法の部分として別々に投与することができる。適切な用法、投与された各用量の量、および各活性薬剤の用量間の具体的な間隔は、用いられる活性薬剤の特定の組み合わせ、治療されようとする患者の状態、および上記のセクションで論じられた他の要因に応じて変わるであろう。このようなさらなる活性成分は、それらが単独の治療薬として有効である量以下の量で一般に投与されるであろう。ヒトへの投与についてFDAの承認を受けたこのような活性薬剤についてのFDAが承認する投薬量は、公的に利用できる。
【0066】
本発明の化合物は、単独の成分として、あるいは他の薬物、例えば抗HCV活性を有する薬物、例えばインターフェロン、例えばインターフェロン−α−2aもしくはインターフェロン−α−2b、例えばIntron A(登録商標)、Roferon(登録商標)、Avonex(登録商標)、Rebif(登録商標)またはBetaferon(登録商標)、または水溶性のポリマーもしくはヒトアルブミンに接合されたインターフェロン、例えばAlbuferon(登録商標)(Human Genome Science)、抗ウイルス薬、例えばリバビリン、ラミブジン、NV08もしくはNM283、HCVコード化因子(HCV encoded factor)(NS3−4Aセリンプロテアーゼ、ヘリカーゼもしくはRNAポリメラーゼなど)の阻害剤またはこのような阻害剤のプロドラッグ、抗線維化剤、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブ、免疫調節剤、例えばミコフェノール酸、その塩もしくはプロドラッグ、例えばミコフェノール酸ナトリウムもしくはミコフェノール酸モフェチル、またはS1P受容体作動薬、例えばFTY720もしくは任意にリン酸化されているその類似体、例えば欧州特許第627406(A1)号明細書、欧州特許第778263(A1)号明細書、欧州特許第1002792(A1)号明細書、国際公開第02/18395号パンフレット、国際公開第02/76995号パンフレット、国際公開第02/06268号パンフレット、特開2002−316985号公報、国際公開第03/29184号パンフレット、国際公開第03/29205号パンフレット、国際公開第03/62252号パンフレットおよび国際公開第03/62248号パンフレット(これらは、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする)に開示されているものと一緒に投与されてもよい。
【0067】
特定の実施形態では、本発明で使用される例示的なインターフェロンは、Intron−A(登録商標);PEG−Intron(登録商標);Roferon(登録商標);Pegasys(登録商標);Berefor(登録商標);Sumiferon(登録商標);Wellferon(登録商標);Infergen(登録商標);Alferon(登録商標);Viraferon(登録商標);Albuferon(登録商標)(Human Genome Science);Rebif;Omniferon;Omegaおよびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0068】
水溶性のポリマーへのインターフェロンの接合体は、とりわけ、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらの共重合体およびそれらのブロック共重合体への接合体を含むことを意味する。ポリアルキレンオキシドベースのポリマーの代替物として、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、炭水化物ベースのポリマーなどの有効な非抗原性物質を使用することができる。このようなインターフェロン−ポリマー接合体は、米国特許第4,766,106号明細書;米国特許第4,917,888号明細書、欧州特許出願公開第0 236 987号明細書、欧州特許出願公開第0 510 356号明細書および国際公開第95/13090号パンフレットに記載されている。ポリマーによる修飾によって十分に抗原反応が低減するため、外来性のインターフェロンは、完全に自系のもの(autologous)である必要はない。ポリマー接合体を調製するために使用されるインターフェロンは、哺乳類の抽出物、例えばヒト、反芻動物またはウシのインターフェロンから調製されてもよいし、または組み換えにより産生されてもよい。インターフェロンの他の形態としては、インターフェロンβ、γ、τおよびω、例えばSeronoによるRebif(インターフェロンβ 1a)、ViragenによるOmniferon(天然のインターフェロン)、またはBoehringer IngelheimによるOmega Interferonが挙げられる。Amarillo Biosciencesによる経口用インターフェロンαなどの経口用インターフェロン。ペグ化されたインターフェロンとしても公知の、ポリエチレングリコールへのインターフェロンの接合体も好ましい。
【0069】
インターフェロンのとりわけ好ましい接合体は、ペグ化されたα−インターフェロン、例えばペグ化されたインターフェロン−α−2a、ペグ化されたインターフェロン−α−2b;ペグ化されたコンセンサスインターフェロンまたはペグ化された精製されたインターフェロン−a生成物である。ペグ化されたインターフェロン−α−2aは、例えば欧州特許第593,868号明細書に記載されており、例えば商標名PEGASYS(登録商標) (Hoffmann−La Roche)で市販されている。ペグ化されたインターフェロン−α−2bは、例えば欧州特許第975,369号明細書に記載されており、例えば商標名PEG−INTRON A(登録商標) (Schering Plough)で市販されている。ペグ化されたコンセンサスインターフェロンは国際公開第96/11953号パンフレット(参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする)に記載されている。好ましいペグ化されたα−インターフェロンはペグ化されたインターフェロン−α−2aおよびペグ化されたインターフェロン−α−2bである。ペグ化されたコンセンサスインターフェロンも好ましい。
【0070】
使用される助剤(co−agent)に関する1日の投薬量は、例えば、用いられる化合物、宿主、投与方法および治療されるべき状態の重症度に応じて変わるであろう。例えば、ラミブジンは、100mgの1日投薬量で投与されてもよい。
【0071】
ペグ化されたインターフェロンは、週に1〜3回、好ましくは週に1回、2×10〜10×10IU、より好ましくは5×10〜10×10IU、最も好ましくは8×10〜10×10IUの範囲の合計の一週用量で非経口投与されてもよい。これは、週に1回、週に3回、一日おきにまたは毎日ベースで、週に0.5〜2.0マイクログラム/キログラムに相当する。
【0072】
他の実施形態では、インターフェロンαはペグ化されたインターフェロンα−2aであり、投与されるペグ化されたインターフェロンα−2aの量は、週に1回、週に3回、一日おきにまたは毎日ベースで、週に20〜250マイクログラム/キログラムである。好ましくは、インターフェロンペグ−IFNa2aは、週に1回、180μgの量で投与される。
【0073】
HCVの処置のために典型的に使用される抗ウイルス薬も、本発明に係る組み合わせの中に包含される。このような薬剤としては、哺乳動物の中でのウイルスの形成および/または複製を阻害するのに有効である化合物または生物学的製剤が挙げられる。これには、Valeant Pharmaceuticals,Inc.、カリフォルニア州、コスタメサ(Costa Mesa)製のリバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシアミド);Schering−Plough Corporation、ニュージャージー州、ケニルワース(Kenilworth)製のRebetol(登録商標)、およびHoffmann−La Roche、ニュージャージー州、ナットリー(Nutley)製のCopegus(登録商標)、開発中のリバビリン類似体(ValeantによるLevovirinおよびビラミジン(Viramidine)、およびミゾリビン一リン酸など)などの薬剤が含まれる。
【0074】
加えて、本発明の組み合わせは、HCV NS3−4Aセリンプロテアーゼの基質ベースのプロテアーゼ阻害剤、基質ベースでないNS3プロテアーゼ阻害剤;HCV感染に対して活性を有することが示されているフェナントレンキノン、チアゾリジン類およびベンズアニリド類などの投与をさらに含んでもよい。
【0075】
HCVの処置のためのプロテアーゼ阻害剤は、例えば米国特許第6,004,933号明細書(Spruceら);米国特許第5,990,276号明細書(Zhangら);米国特許第5,538,865(Reyesら);国際公開第02/008251号パンフレット(Corvas International,Inc.)、国際公開第02/08187号パンフレットおよび国際公開第02/008256号パンフレット(Schering Corporation);米国特許第6,534,523号明細書、6,410,531号明細書および米国特許第6,420,380号明細書(Boehringer Ingelheim)および国際公開第02/060926号パンフレット(Bristol Myers Squibb);国際公開第02/48172号パンフレットおよび国際公開第02/18198号パンフレット(Schering Corporation);国際公開第02/48157号パンフレットおよび国際公開第02/48116号パンフレット(Bristol Myers Squibb);国際公開第98/17679号パンフレット(Vertex Pharmaceuticals)(これらはすべて参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする)に開示されている。
【0076】
RD3−4082およびRD3−4078を含めた2,4,6−トリヒドロキシ−3−ニトロ−ベンズアミド誘導体(Sudo K.ら、Biochemiscal and Biophysical Research Communications、1997、238 643−647;Sudo K.ら Antiviral Chemistry and Chemotherapy、1998、9、186)などの例示となる基質ベースでないNS3プロテアーゼ阻害剤が使用されてもよい。
【0077】
HCV治療において有効であると示されているさらなる実験的薬剤としては、Boehringer IngelheimによるHCV NS3−4Aセリンプロテアーゼ阻害剤BILN 2061、VertexによるVX−950、Schering−PloughによるSCH−6、SCH−7、およびSCH−351633、ならびにGlaxoSmithKline、Bristol Myers Squibb、Abbot、Roche、Merck、Pfizer、およびGileadによる前臨床開発および臨床開発中の他のHCVプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。本願明細書に記載される本発明の組み合わせにおいて有用である可能性がある、HCVの処置のために現在臨床開発中のさらなる薬剤としては、TMC 435350(Tibotec)およびITM−191(Intermune)が挙げられる。
【0078】
ヌクレオシド類似体も使用してよい。1つのこのような類似体の一例は、Idenixによるテルビブジン(米国特許第6444652号明細書、米国特許第6596700号明細書、および国際公開第0196353号パンフレット)である。HCV NS5B RNA依存的RNAポリメラーゼのヌクレオシド阻害剤または非ヌクレオシド阻害剤、例えば国際公開第2004/002422号パンフレットに開示される2’−C−メチル−3’−O−L−バリンエステルリボフラノシルシチジン(NM283、Idenix)も使用されてもよい。国際公開第01/90121号パンフレットおよび国際公開第01/92282号パンフレット(Idenix Pharmaceuticals)に開示される分岐したヌクレオシドも使用してもよい。これらの国際特許出願の内容は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0079】
さらなる治療用化合物として、HCVゲノムに対するアンチセンス分子、または治療の有効性を高める、HCVゲノムのいずれかの部分に相補的なアンチセンス配列を挙げてもよい。
【0080】
Migenixによる糖タンパク質プロセシング阻害剤であるセルゴシビル(Celgosivir)(MBI 3253)、Trimerisによる融合阻害剤、AchillionによるACH−0137171などのHCV生活環の中の他の標的の阻害剤も企図される。Toll様受容体(「TLR」)作動薬などの受容体作動薬としては、AnadysによるANA245、ANA971、ANA975(米国特許第5041426号明細書、米国特許第4880784号明細書);CpG−10101、TLR−9作動薬(Coley Pharmaceuticals);IMPDH阻害剤、ミコフェノール酸、その塩もしくはプロドラッグ、ミコフェノール酸ナトリウムまたはミコフェノール酸モフェチル、またはメリメボジブ(Merimebodib)(VX−497、Vertexによる);チモシンα−1(Zadaxinまたはその合剤(combination)、SciCloneによる);SCV−07(SciClone)、Belerofon(Nautilusによる改良されたIFN−α);NABIによるCIVACIR(C型肝炎免疫グロブリン)、またはS1P受容体作動薬、例えばFTY720または任意にリン酸化されているその類似体、例えば欧州特許第627406(A1)号明細書、欧州特許第778263(A1)号明細書、欧州特許第1002792(A1)号明細書、国際公開第02/18395号パンフレット、国際公開第02/76995号パンフレット、国際公開第02/06268号パンフレット、特開2002−316985号公報、国際公開第03/29184号パンフレット、国際公開第03/29205号パンフレット、国際公開第03/62252号パンフレットおよび国際公開第03/62248号パンフレットに開示されているもの(これらの特許文献の開示は参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする);3M Pharmaceuticalsによるレシキモド(Resiquimod)[VML 600]、インターフェロン−αおよび他のサイトカインの強力な誘導因子であるイミキモド類似体、が挙げられる。加えて、本発明の化合物は、インターロイキン−10(Schering−Plough)、Endo Labs SolvayによるAMANTADINE(Symmetrel)、Idun Pharmaによるカスパーゼ阻害剤IDN−6556、ChironによるHCV/MF59、MaximによるCEPLENE(ヒスタミン二塩酸塩)、Idun PHARMによるIDN−6556、T67、Tularikによるβチューブリン阻害剤、Fujisawa HealthcareによるFK788、IdBI 016(Siliphos、経口用シリビン−ホスファチジルコリンフィトサム(phytosome))、ImmtechによるDication、Aethlon Medicalによるhemopurifier、United TherapeuticsによるUT 231 B;HepeX−C SM1、BayerによるPPVO−Bay55−8800(Parapoxvirus ovis);AngionによるRefanalin(HGF模倣薬)、R803(Rigel)、JTK−003、JTK−002、およびJTK−109(すべて日本たばこ産業製)、HCV−086(ViroPharma/Wyeth)、ISIS−14803(ISIS Pharmaceuticals)、GS−9132(Achillion Pharmaceuticalsによるポリメラーゼ阻害剤)、HCV−793(PharmassetおよびRoche)、R1626(Roche)と組み合わせて使用してもよい。
【0081】
注目する他の化合物としては、ウルソジオール(Ursodiol)(欧州特許第00269516号明細書、Axcan Pharma)、HE−2000(DHEA類似体、Colthurst Ltd)、EHC−18(免疫調節剤、Enzo biochem)、ヒスタミン二塩酸塩(H2作動薬、国際公開第09104037号パンフレット、Estero−Anstalt)、ニタゾキサニド(Romark)、1−アミノ−アルキルシクロヘキサン(米国特許第6,034,134号明細書)、アルキル脂質(米国特許第5,922,757号明細書)、ビタミンEおよび他の抗酸化物質(米国特許第5,922,757号明細書)、胆汁酸(米国特許第5,846,964号明細書)、N−(ホスホノアセチル)−L−アスパラギン酸(米国特許第5,830,905号明細書)、ベンゼンジカルボキシアミド類(米国特許第5,633,388号明細書)、ポリアデニル酸誘導体(米国特許第5,496,546号明細書)、2’3’−ジデオキシイノシン(米国特許第5,026,687号明細書)、ベンゾイミダゾール類(米国特許第5,891,874号明細書)、植物エキス(米国特許第5,837,257号明細書;米国特許第5,725,859号明細書および米国特許第6,056,961号明細書)およびピペリジン類(米国特許第5,830,905号明細書);N−(ホスホノアセチル)−L−アスパラギン酸、ベンゼンジカルボキシアミド類、ポリアデニル酸誘導体、グリコシル化阻害剤、およびウイルス感染によって引き起こされる細胞傷害をブロックする非特異的細胞保護剤が挙げられる。
【0082】
また本発明に係る化合物は、HCV処置に向けたワクチンまたは抗体に基づくアプローチと組み合わせて用いられてもよい。治療ワクチンとしては、Intercellによるワクチン(Therapeutic peptide vaccine IC41 HCV)、Epimmune/Genecor、Merix、Tripep(Chiron−VacC)、Avantによる免疫療法(Therapore)、CellExSysによるT細胞療法、STLによるモノクローナル抗体XTL−002、AnadysによるANA 246およびANA 246、InnogeneticsによるE2に向けた治療ワクチン、XTL BioによるE2外被タンパク質に対するmAb(モノクローナル抗体)、GI−5005(GlobeImmune Inc)、InnoVac−C(国際公開第9967285号パンフレット、Innogenetics)、IC−41(Intercell)、インターフェロンα−n3(Interferon Sciences)が挙げられる。
【0083】
上記の内容に従って、本発明は、なおさらなる態様では、少なくともa)本発明の化合物または本発明に係る医薬組成物からなる第1の薬剤と、b)HCV複製に対して作用するという特性を有する第2の薬剤とを含む医薬的組み合わせを提供する。
【0084】
特に、この医薬的組み合わせは、C型肝炎感染またはHCVに誘導される障害の予防または処置において使用するためのものである。
【0085】
また、必要とする対象においてC型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための方法であって、当該対象に、治療上有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含む方法も包含される。
【0086】
加えて、必要とする患者においてHCV複製を阻害する方法であって、当該対象に、治療上有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0087】
本発明の別の対象は、治療上有効量の本発明に係る化合物または本発明の医薬組成物および抗HCV特性を有する薬剤から選択される助剤の、相伴うかまたは逐次的な同時投与を含む方法である。
【0088】
本願明細書で用いられる場合の用語「同時投与」または「併用投与」などは、単一の患者への選択された治療薬の投与を包含することを意図し、その薬剤が必ずしも同じ投与経路によってまたは同じ時に投与されるわけではない処置計画を含むことが意図されている。
【0089】
本発明の医薬的組み合わせの投与は、有益な効果、例えばその医薬活性成分のうちの1つのみを施用する単独療法と比べた相乗的な治療効果をもたらす。好ましい相乗的な組み合わせは、本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物と、任意にポリマーに接合されているインターフェロンとの組み合わせである。
【0090】
さらなる好ましい組み合わせは、本発明に係る式Iの化合物とミコフェノール酸、その塩もしくはプロドラッグとの、またはS1P受容体作動薬、例えばFTY720との組み合わせである。
【0091】
本願明細書において引用されたすべての特許、特許出願および刊行物は、参照によりその全体を援用したものと見なされるものとする。
【0092】
当業者なら、本願明細書に記載される発明は、具体的に記載されたもの以外の変更および改変を受ける余地があるということはわかるであろう。本発明は、本発明の技術思想または本質的な特徴から逸脱しないすべてのそのような変更および改変を包含するということを理解されたい。また、本発明は、本願明細書の中で言及されまたは示された工程、特徴、組成物および化合物のすべてを、個々にまたはまとめて、そしてその工程または特徴のいずれかのおよびすべての組み合わせまたはいずれか2以上を包含する。それゆえ、本開示は、すべての態様において、例証されたものであって限定するものではないと考えられるべきであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示され、均等の意味および範囲に含まれるすべての変更は本発明の中に包含されるということが意図されている。
【0093】
種々の参考文献が本願明細書全体にわたって引用され、それらの各々は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0094】
上記の説明は、以下の実施例を参照してより十分に理解されるであろう。しかしながら、そのような実施例は、本発明を実施する方法を例示するものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0095】
実施例1a:
シクロウンデカデプシペプチド(Ia):シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ia)の調製
1. 天然のシクロウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)から出発する断片(Aa)の調製(米国特許第5,116,816号明細書、実施例2、または国際公開第02/092033号パンフレット)、実施例4、工程4−1を参照):
H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OH(Aa)
【0096】
1.1 変異体A
シクロ−(MeBmt−Thr(O−(N−イミダゾリル)カルボニル)−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)(1A)の調製
15mLの無水CHCl中のシクロ−(MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)(米国特許第5,116,816号明細書、実施例2、または国際公開第02/092033号パンフレット、実施例4、工程4−1)(3.00g、2.40mmol、1.0当量)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(1.17g、7.21mmol、3.0当量)の溶液を室温で2.5時間撹拌した。反応の進行を分析用UPLCによってモニターした。81.1%反応率を得た。さらなる量の1,1’−カルボニルジイミダゾール(0.39g、2.40mmol、1.0当量)を、この反応混合物に加えた。さらに16時間撹拌した後、98.8%反応率を得た。この溶液を減圧下でエバポレーションした。残渣をAcOEt(45mL)に溶解し、10% クエン酸(45mL)およびブライン(45mL)で連続的に洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションし、2つの化合物(1A)および(2A)の混合物を白色粉末として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z):(1A):1342.75[M+H]([C681171215;計算値1342.73)、(2A):1274.77[M+H]([C651131015;計算値1274.65)。
【0097】
シクロ−(MeBmt−Thr(O,N−カルボニル)−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)(2A)の調製
乾燥DMSO(15mL)中の、上記の反応で得た化合物(1A)(3.41g、2.40mmol)の溶液を撹拌し、アルゴン雰囲気下、100℃で2時間加熱した。反応の進行を分析用UPLCによってモニターした。完全反応率を得た.その後、この溶液をAcOEt(45mL)に溶解し、HCl 1M(30mL)および23.2% NaCl水溶液(15mL)、次いで11.6% NaCl水溶液(45mL)で連続的に洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションし、シクロウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Thr(O,N−カルボニル)−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)(2A)を白色粉末として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z):1274.65[M+H]([C651131015;計算値1274.65。
【0098】
H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OMe(断片(Aa)メチルエステル(3A)の調製
0℃に冷却した30mLのMeOH(乾燥)中の、上記の反応で得たシクロデプシペプチド(1.00g、0.78mmol)の溶液に、Ca(OMe)(0.24g、2.35mmol)をアルゴン下で一度に加えた。0℃で5時間、次いで室温で1時間後、UPLCによる反応の進行のコントロールから、98.6%反応率が示された。この溶液を0℃で冷却し、次いで10%クエン酸の水溶液で中和した。メタノールをエバポレーションした。この水性混合物をAcOEt/NaCl 23.2%(1:1 v/v)の混合物100mLの中へと注ぎ込んだ。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物をカラムクロマトグラフィーによって分離し、ペンタペプチド−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OMe(3Aを得た。
UPLC−ESI−MS(m/z):669.16[M+H]([C3565;計算値669.48)。
【0099】
断片(Aa)H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OH(4)の調製
THF(8.6mL)および水(1.1mL)中の、上記の反応で得たペンタペプチド(3A)(1.15g、1.72mmol、1.0当量)の溶液を氷水浴の中で0℃に冷却し、次いで20秒以内に2M LiOH(1.72mL、3.44mmol、2.0当量)を加えた。次いで冷却浴を取り除き、この混合物(pH=12〜13)を室温で約3時間撹拌した。UPLCによる反応の進行のコントロールから、完全反応率が示される。その後、この溶液を0℃に冷却し、10% クエン酸で中和した。テトラヒドロフランを減圧下でエバポレーションした。残渣をAcOEt(50mL)に溶解し、10% クエン酸(3mL)および23.2% NaCl水溶液(50mL)(pH 3)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションし、断片(Aa)H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OH(4)を白色粉末として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)655.21[M+H]([C3463;計算値655.46)。
【0100】
1.2 変異体B
H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥MeOH(90mL)中の天然のシクロ−(MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)(米国特許第5,116,816号明細書、実施例2、または国際公開第02/092033号パンフレット、実施例4、工程4−1のいずれかから得られる)(3.0g、2.40mmol)の溶液に、アルゴン下でMeONa(0.519g、9.6mmol、4.0当量)を加えた。0℃で1時間、次いで室温で2時間後、HPLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この溶液を0℃で冷却し、次いで10% クエン酸の水溶液で中和した(pH 5〜6)。メタノールをエバポレーションした。この水性混合物を150mLの酢酸エチルの中へと注ぎ込んだ。有機層をHO(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過した。真空中での溶媒のエバポレーションおよびシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、純粋なH−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−OMeを得た。
【0101】
H−D−Hiv(O−(N−イミダゾリル)カルボニル)−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Thr(O−(N−イミダゾリル)カルボニル)−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−OMe(1B)の調製
53mLの無水CHCl中の、上記の反応で得たウンデカペプチド(2.96g、2.31mmol、1.0当量)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(1.50g、9.25mmol、4.0当量)の溶液を室温で22時間撹拌した。反応の進行を分析用HPLCおよびTLCによってモニターした。この溶液を減圧下でエバポレーションした。残渣を150mLの酢酸エチルに溶解し、10% クエン酸(30mL)、HO(30mL)およびブライン(30mL)で連続的に洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、H−D−Hiv(O−(N−イミダゾリル)カルボニル)−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Thr(O−(N−イミダゾリル)カルボニル)−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−OMe(1B)を白色粉末として得た。
【0102】
H−D−Hiv(O−(N−イミダゾリル)カルボニル)−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Thr(O,N−カルボニル)−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−OMe(2B)の調製
乾燥DMSO(40mL)中の、上記の反応で得たウンデカペプチド(3.26g、2.22mmol)の溶液を撹拌し、アルゴン雰囲気下、100℃で3.5時間加熱した。反応の進行をTLCおよび分析用HPLCによってモニターした。その後、この溶液を、AcOEt(200mL)に溶解し、10% クエン酸水溶液(2回、30mL)、HO(1×30mL)および飽和NaCl水溶液(1×30mL)で連続的に洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。溶媒のエバポレーション後の残渣を高真空の中で乾燥し、ウンデカペプチドH−D−Hiv(O−(N−イミダゾリル)カルボニル)−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Thr(O,N−カルボニル)−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−OMe(2B)を白色粉末として得た。
【0103】
H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OMe(3B)の調製
0℃に冷却した100mLのMeOH(乾燥)中の、上記の反応で得たウンデカペプチド(2B)(3.05g、2.17mmol)の溶液に、MeOK(0.456g、6.53mmol)をアルゴン下で一度に加えた。0℃で1時間、次いで室温で1時間後、HPLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この溶液を0℃で冷却し、次いで10% クエン酸の水溶液で中和した。メタノールをエバポレーションした。この水性混合物をAcOEt/HO(1:1 v/v)の混合物100mLの中へと注ぎ込んだ。有機層をHO(1×10mL)およびブライン(1×10mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物を分取HPLCによって分離し、ペンタペプチドH−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OMe(3B)を得た。
【0104】
H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OH(4、断片Aa)の調製
THF(18.8mL)中の、上記の反応で得たペンタペプチド(1.265g、1.88mmol、1.0当量)の溶液を氷水浴の中で0℃に冷却し、次いで0.2M LiOH(18.8mL、3.66mmol、2.0当量)を20分間にわたって滴下した。次いで冷却浴を取り除き、この混合物(pH=12〜13)を室温で約2.5時間撹拌した(TLCコントロール)。その後、この溶液を0℃に冷却し、0.1M HCl(pH 2〜3)で中和した。テトラヒドロフランを減圧下でエバポレーションした。残渣をAcOEt(100mL)に溶解し、10% クエン酸(1×20mL)、HO(1×20mL)およびブライン(1×20mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物をCCによって分離し、ペンタペプチド(ナトリウム塩)H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−ONaを白色粉末として得た。
HR−MALDI−MS:677.46[M+Na]([C3462NaO;計算値677.4465)。
【0105】
2. 断片(Ba)の調製:
H−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMe(Ba)
2.1. Boc−MeLeu−Gly−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(240mL)中の市販のH−Gly−OMe・HCl(4.0g、31.8mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(32.88mL、189.0mmol、6.0当量)を加えた。その後、15分後に、HATU(15.72g、41.34mmol、1.3当量)およびBoc−MeLeu−OH(7.8g、31.8mmol、1.0当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で22.45時間後、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(40mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(400mL)で希釈し、10% クエン酸(1×80mL)、HO(1×80mL)およびブライン(1×80mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗製混合物を分離し、エステルBoc−MeLeu−Gly−OMeを白色の油状フォーム状物として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)339.0234[M+Na]([C1528NaO;計算値339.1896)。
【0106】
2.2. H−MeLeu−Gly−OMeの調製
TFA/DCM(30mL、2:3 v/v)中の、上記の反応で得たジペプチド(9.9g、31.29mmol、1.0当量)の溶液を0℃に45分間、室温で2時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。この粗生成物を高真空下で乾燥した(20分間)。その後、DCM(60mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEA(2.0mL)を用いてpH 7〜8まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、ジペプチドH−MeLeu−Gly−OMeの粗製アミン塩を、さらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。
UPLC−ESI−MS(m/z)217.0546[M+H]([C1021;計算値217.1552)。
【0107】
2.3. Boc−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(160mL)中の、上記の反応で得たジペプチド(3.38g、15.63mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(8.08mL、46.89mmol、3.0当量)を加えた。その後、10分後、HATU(7.72g、20.14mmol、1.3当量)およびBoc−Leu−OH(3.98g、17.19mmol、1.1当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で15.45時間後、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(36mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(240mL)で希釈し、10% クエン酸(1×60mL)、HO(1×60mL)およびブライン(1×60mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物をCCによって分離し、エステルBoc−Leu−MeLeu−Gly−OMeを黄色油状物として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)430.0120[M+H]([C2140;計算値430.2917)。
【0108】
2.4. H−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
TFA/DCM(12mL、1:1 v/v)中の、上記の反応で得たトリペプチド(3.0g、6.98mmol、1.0当量)の溶液を0℃で1時間および室温で2時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。この粗生成物を高真空下で乾燥した(15分間)。その後、DCM(20mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、H−Leu−MeLeu−Gly−OMeの粗製アミン塩をさらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。
UPLC−ESI−MS(m/z)330.0227[M+H]([C1632;計算値330.2393);352.0016[M+Na]([C1631NaO;計算値352.4248);659.1626[2M+H]([C3263;計算値659.1626)。
【0109】
2.5. Boc−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(105mL)中の、上記の反応で得たトリペプチド(2.3g、6.98mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(3.61mL、20.34mmol、3.0当量)を加えた。その後、10分後、HATU(3.45g、9.07mmol、1.3当量)およびBoc−MeVal−OH(1.78g、7.68mmol、1.1当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で15.45時間後、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(25mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(150mL)で希釈し、10% クエン酸(1×50mL)、HO(1×50mL)およびブライン(1×50mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗製混合物を分離し、エステルBoc−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeを黄色油状物として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)543.0484[M+H]([C2751;計算値543.3758);565.0467[M+Na]([C2750NaO;計算値565.3577)。
【0110】
2.6. H−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
TFA/DCM(12mL、1:1 v/v)中の、上記の反応で得たテトラペプチド(3.56g、6.56mmol、1.0当量)の溶液を0℃で1時間および室温で2時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を高真空下で乾燥した(約15分間)。その後、DCM(45mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、テトラペプチドH−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの粗製アミン塩を、さらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。
UPLC−ESI−MS(m/z)443.0694[M+H]([C2243;計算値443.3233);465.0063[M+Na]([C2242NaO;計算値465.3053)。
【0111】
2.7. Boc−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(110mL)中の、上記の反応で得たテトラペプチド(2.90g、6.56mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(3.39mL、19.68mmol、3.0当量)を加えた。その後、10分後、HATU(3.24g、8.53mmol、1.3当量)およびBoc−D−MeAla−OH(1.46g、7.21mmol、1.1当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で17.45時間後、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(25mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(150mL)で希釈し、10% クエン酸(1×50mL)、HO(1×50mL)およびブライン(1×50mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗製混合物をCCによって分離し、エステルBoc−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeを黄色がかったフォーム状物として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)628.56[M+H]([C3158;計算値628.4285);650.53[M+Na]([C3157NaO;計算値650.4105)。
【0112】
2.8. H−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
TFA/DCM(6mL、1:1 v/v)中の、上記の反応で得たペンタペプチド(1.6g、2.55mmol、1.0当量)の溶液を0℃で1時間および室温で2時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。この粗生成物を高真空下で乾燥した(約15分間)。その後、DCM(20mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、ペンタペプチドH−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの粗製アミン塩を、さらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。
UPLC−ESI−MS(m/z)528.49[M+H]([C2650;計算値528.3761)。
【0113】
2.9. Boc−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(60mL)中の、上記の反応で得たペンタペプチド(1.33g、2.52mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(1.30mL、7.56mmol、3.0当量)を加えた。その後、10分後、HATU(1.25g、3.28mmol、1.3当量)およびBoc−Abu−OH(0.56g、2.77mmol、1.1当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で一晩の後、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(15mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(100mL)で希釈し、10% クエン酸(1×40mL)、HO(1×40mL)およびブライン(1×40mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗製混合物をCCによって分離し、エステルBoc−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeを黄色がかったフォーム状物として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)713.1513[M+H]([C3565;計算値713.4813);735.1010[M+Na]([C3564NaO;計算値735.4632)。
【0114】
2.10. H−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMe (Ba)の調製
TFA/DCM(6mL、1:1 v/v)中の、上記の反応で得たヘキサペプチド(0.82g、1.15mmol、1.0当量)の溶液を0℃で1時間および室温で1時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。この粗生成物を高真空下で乾燥した(約15分間)。その後、DCM(25mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、ヘキサペプチドH−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの粗製アミン塩を、さらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。
UPLC−ESI−MS(m/z)613.1925[M+H]([C3057;計算値613.4289)。
【0115】
3. 断片(Aa)および断片(Ba)のカップリング
3.1. D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(33mL)中の、上記の反応で得たヘキサペプチドH−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMe(0.7g、1.14mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(0.59mL、3.42mmol、3.0当量)を加えた。その後、10分後、HATU(0.56g、1.48mmol、1.3当量)およびペンタペプチドD−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OH(0.75g、1.14mmol、1.0当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で16.45時間後、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(10mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(130mL)で希釈し、10% クエン酸(1×35mL)、HO(1×35mL)およびブライン(1×35mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗生成物をCCによって精製し、ウンデカペプチドD−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OMeを白色フォーム状物として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)625.6903[M/2+H]([C3259;計算値625.4415);1249.7793[M+H]([C641171014;計算値1249.8751)。
【0116】
3.2. D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OHの調製
THF(10.4mL)中の、上記の反応で得たウンデカデプシペプチド(1.30g、1.04mmol、1.0当量)の溶液を氷水浴の中で0℃に冷却し、次いで0.2M LiOH(10.4mL、2.08mmol、2.0当量)を10分間にわたって滴下した。冷却浴を使用したままにし、この混合物(pH=12〜13)を0℃で約20分間および室温で30分間撹拌した(TLCコントロール)。その後、この溶液を0℃に冷却し、10% クエン酸水溶液(pH 3〜4)で中和した。この溶液を減圧下でエバポレーションした。残渣をAcOEt(140mL)に溶解し、HO(1×30mL)およびブライン(1×30mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗生成物をCCによって精製し、ウンデカペプチドD−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−OHを白色粉末として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)1235.7690[M+H]([C631151014;計算値1235.8594)。
【0117】
4. マクロラクトン化:シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ia)の調製
DCM(128mL)中のDMAP(0.507g、4.144mmol、4.0当量)およびベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)(1.078g、2.071mmol、2.0当量)の溶液に、DCM(20mL)中の、上記の反応で得たウンデカデプシペプチド酸(1.28g、1.036mmol、1.0当量)の溶液を2時間にわたって滴下した。酸の添加が完結した後、この混合物を一晩(22時間)撹拌し、次いでこの混合物を分液漏斗に移した。全反応時間=24時間。この溶液を0.1M HCl(20mL)で洗浄し、有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗生成物をCCによって精製し、これによりシクロウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ia)を白色固体として得た。その後、得た化合物を分取HPLCによって再精製し、シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)を白色粉末として得た。純度99.38%(80℃、30分)。
【0118】
(C631121013、MW=1217.6226g/mol)。
UPLC(40℃、ACQUITY UPLC(登録商標) BEH C18 1.7μm、214nm、50→95%、7分)t=2.923分。
UPLC
【0119】
天然のウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Thr−Sar−MeLeu−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)から出発してウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal)を得るための全体の収率は、50%を超える。
【0120】
実施例1b:
化合物(Ic)、(If)、(Ig)、(Ii)および(Ik)は、実施例1aと同様の反応経路に従って調製することができる。
【0121】
実施例2
シクロウンデカデプシペプチド(Ib)の調製:
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ib)
2. 断片(Bb)の調製:
H−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMe (Bb)
2.1. Boc−MeLeu−Ala−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(130mL)中の市販のH−Ala−OMe・HCl(2.00g、14.32mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(14.68mL、86.0mmol、6.0当量)を加えた。その後、15分後、HATU(6.52g、17.18mmol、1.2当量)およびBoc−MeLeu−OH(3.512g、14.32mmol、1.0当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で48時間後(RT=2日と15分間)、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(20mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(200mL)で希釈し、10% クエン酸(1×40mL)、HO(1×40mL)およびブライン(1×40mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物をCCによって分離し、エステルBoc−MeLeu−Ala−OMeを淡黄色がかった油状物として得た。試料(30mg)を半分取RP−HPLCによって再精製し、このペプチドを凍結乾燥し、エステルBoc−MeLeu−Ala−OMeを白色粉末として得た。
【0122】
2.2. H−MeLeu−Ala−OMeの調製
TFA/DCM(10mL、2:3 v/v)中の、上記の反応で得たジペプチド(1.70g、5.14mmol、1.0当量)の溶液を0℃で1.5時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。この粗生成物を高真空下で乾燥した(20分間)。その後、DCM(10mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8まで粉砕した。その後、反応混合物をDCM(60mL)で希釈し、HO(1×10mL)およびブライン(1×10mL)で洗浄した。有機相を濾過し、乾燥し(NaSO)、エバポレーションし、高真空下で乾燥した。H−MeLeu−Ala−OMeの粗製アミン塩を、さらに精製することなく次のカップリング工程のために使用した。
【0123】
2.3 Boc−Leu−MeLeu−Ala−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(108mL)中の、上記の反応で得たジペプチド(7)(2.17g、9.42mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(6.45mL、37.68mmol、4.0当量)を加えた。その後、10分後、HATU(4.65g、12.25mmol、1.3当量)およびBoc−Leu−OH(2.39g、10.36mmol、1.1当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で15時間後(15時間と15分間)、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(10mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(50mL)で希釈し、10% クエン酸(1×20mL)、HO(1×20mL)およびブライン(1×20mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物をCCによって分離し、トリペプチドBoc−Leu−MeLeu−Ala−OMeを黄色油状物として得た。この試料を半分取RP−HPLCによって再精製し、このペプチドを凍結乾燥し、トリペプチドBoc−Leu−MeLeu−Ala−OMeを白色粉末として得た。
【0124】
2.4. H−Leu−MeLeu−Ala−OMeの調製
TFA/DCM(10mL、2:3 v/v)中の、上記の反応で得たトリペプチド(2.00g、4.50mmol、1.0当量)の溶液を0℃で2時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。生成物を高真空下で乾燥し(20分間)、粗製物質を得た。その後、DCM(20mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8(リトマス紙)まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、粗製アミンH−Leu−MeLeu−Ala−OMeをさらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。この試料(25mg)を半分取RP−HPLCによって再精製し、生成物を凍結乾燥し、トリペプチドH−Leu−MeLeu−Ala−OMeを固体として得た。
【0125】
2.5. Boc−D−MeAla−EtVal−OHの調製
Boc−D−MeAla−Val−OMeから出発し、BuLiおよびフルオロホウ酸トリエチルオキソニウムを使用して、次いで文献[Jean Francois. Guichou、PhD学位論文、題名「De nouveaux analogues de Cyclosporine A comme agent anti−VIH−1」、Faculte des Sciences、Universite de Lausanne(ローザンヌ大学、理学部)、2001年、121−122頁]に従ったメチルエステルの加水分解によってBoc−D−MeAla−EtVal−OHを得た。
【0126】
2.6. Boc−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeの調製
−8℃に冷却した乾燥DCM(8mL)中のトリペプチドH−Leu−MeLeu−Ala−OMe(0.096g、0.291mmol、1.0当量)の溶液にアルゴン下でDIPEA(0.15mL、0.87mmol、3.0当量)を加えた。その後、10分後、HATU(0.13g、0.35mmol、1.2当量)およびジペプチドBoc−D−MeAla−EtVal−OH(0.1g、0.29mmol、1.0当量)を一度に加えた。−8℃で10分間、次いで室温で40分後、HPLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(1mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(20mL)で希釈し、10% クエン酸(1×5mL)、HO(1×5mL)およびブライン(1×5mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗製混合物をCCによって分離し、ペンタペプチドBoc−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeを油状物として得た。この試料を半分取RP−HPLCによって再精製し、生成物を凍結乾燥し、ペンタペプチドBoc−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeを白色粉末として得た。
【0127】
2.7. H−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeの調製
TFA/DCM(4.0mL、2:3 v/v)中の、上記の反応で得たペンタペプチド(0.45g、0.69mmol、1.0当量)の溶液を0℃で1.5時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。残渣を高真空下で乾燥した(0.5時間)。その後、DCM(10mL)を加え、過剰のTFAを中和するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8(リトマス紙)まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、ペンタペプチドH−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeの粗製アミン塩を、さらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。試料(30mg)を半分取RP−HPLCによって精製し、このペプチドを凍結乾燥し、ペンタペプチドH−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeの遊離アミンを白色粉末として得た。
【0128】
2.8. Boc−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(10mL)中の、上記の反応で得た粗製ペンタペプチド(0.2g、0.36mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(0.18mL、1.08mmol、3.0当量)を加えた。その後、5分後、HATU(0.19g、0.5mmol、1.4当量)およびBoc−Abu−OH(0.088g、0.42mmol、1.1当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で1.15時間後(RT=1.5時間)、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(2mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(50mL)で希釈し、10% クエン酸(1×10mL)、HO(1×10mL)およびブライン(1×10mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物をCCによって分離し、ヘキサペプチドBoc−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeを黄色油状物として得た。試料(30mg)を半分取RP−HPLCによって再精製し、生成物を凍結乾燥し、ヘキサペプチドBoc−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeを白色粉末として得た。
【0129】
2.9. H−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMe断片(Bb)の調製
TFA/DCM(3.0mL、2:3 v/v)中の、上記の反応で得たヘキサペプチド(0.187g、0.25mmol、1.0当量)の溶液を0℃で1.5時間保ち、溶媒を減圧下で除去した。この粗生成物を高真空下で乾燥した(0.5時間)。その後、DCM(3mL)を加え、TFAを除去するために、この混合物を0℃でDIPEAを用いてpH 7〜8(リトマス紙)まで粉砕した。エバポレーションおよび乾燥後、粗製アミンH−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeをさらに精製することなく次のカップリング工程に使用した。粗生成物の試料(23mg)を半分取RP−HPLCによって再精製し、このペプチドを凍結乾燥し、断片(Ba)H−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeを白色粉末として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)641.259[M+H]([C3261;計算値641.4602)。
【0130】
3. 断片(Aa)および断片(Bb)のカップリング
3.1. H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeの調製
0℃に冷却した乾燥DCM(10mL)中の、上記の反応で得たヘキサペプチドH−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMe(0.16g、0.25mmol、1.0当量)の溶液に、アルゴン下でDIPEA(0.214mL、1.26mmol、5.0当量)を加えた。その後、5分後、HATU(0.12g、0.31mmol、1.25当量)および上記で得たペンタデプシペプチドH−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−OH(4)(0.16g、0.25mmol、1.0当量)を一度に加えた。0℃で15分間、次いで室温で1.15時間後(RT=1.5時間)、TLCによる反応の進行のコントロールから、完結が示される。この反応液を10% NaHCO(3mL)の添加によってクエンチし、15分間撹拌した。反応混合物をDCM(40mL)で希釈し、10% クエン酸(1×8mL)、HO(1×8mL)およびブライン(1×8mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。粗製混合物をCCによって分離し、ウンデカペプチドH−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeを白色フォーム状物として得た。分析用試料(18mg)を半分取RP−HPLCによって再精製し、生成物を凍結乾燥し、ウンデカペプチドH−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OMeを白色粉末として得た。
【0131】
3.2. H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OHの調製
THF(2.5mL)中の、上記の反応で得たウンデカペプチドメチルエステル(0.27g、0.21mmol、1.0当量)の溶液を氷水浴の中で0℃に冷却し、次いで0.2M LiOH(2.11mL、0.42mmol、2.0当量)を10分間にわたって滴下した。次いで冷却浴を取り除き、この混合物(pH=12〜13;リトマス紙)を室温で1時間20分の間撹拌した(TLCコントロール)。その後、この溶液を0℃に冷却し、1.0M HClを用いてpH 3〜4まで酸性にした。この溶液を減圧下でエバポレーションした。残渣をAcOEt(40mL)に溶解し、10% クエン酸(1×8mL)、HO(1×8mL)およびブライン(1×8mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下でエバポレーションした。この粗製混合物をCCによって分離し、酸H−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OHを白色粉末として得た。この試料(40mg)を半分取RP−HPLCによって再精製し、生成物を凍結乾燥し、ウンデカペプチドH−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal−MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−OHを白色粉末として得た。
【0132】
4. マクロラクトン化:シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ib)の調製
DCM(12mL)中のDMAP(0.048g、0.39mmol、4.0当量)およびベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)(0.102g、0.196mmol、2.0当量)の溶液に、DCM(4mL)中の、上記の反応で得たウンデカペプチド(0.124g、0.098mmol、1.0当量)の溶液を1.5時間にわたって滴下した。酸の添加が完結した後にこの混合物を撹拌し(RT=24時間)、次いで分液漏斗に移した。この溶液を1M HCl(2mL)で洗浄し、有機層を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製し、これによりシクロウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ia)を白色固体として得た。試料(77mg)を半分取RP−HPLCによって精製し、生成物を凍結乾燥し、シクロウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ib)を白色粉末として得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)1245.787[M+H]([C651171013;計算値1245.8802)、623.465[M/2+H](計算値623.444)。
【0133】
実施例3:
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ih)の調製
(Ih)の調製は、実施例2に記載した化合物の調製と同様にして行った。
【0134】
断片(Bb)の調製について実施例2に記載した反応条件と同様の反応条件を適用することにより、断片(Bh)を調製した。次いで、実施例2に記載した反応条件と同様の反応条件を適用することにより、断片(Bh)を断片(Aa)にカップリングした。
【0135】
次いで、実施例2に記載した条件と同様の条件を適用することにより、マクロラクトン化を行い、シクロウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal (Ih)を得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)1259.888[M+H]([C661191013;計算値1259.8958);1260.788[M+2H]2+([C6612010132+;計算値1260.9037)。
【0136】
実施例4:
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Id)の調製
断片(Ba)の調製について実施例1に記載した反応条件と同様の反応条件を適用することにより、断片H−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−OMe(Bd)を調製した。次いで、実施例1に記載した反応条件と同様の反応条件を適用することにより、断片(Aa)へのカップリングおよびマクロラクトン化を行い、シクロウンデカデプシペプチド、シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Id)を得た。
UPLC−ESI−MS(m/z)1261.888[M+H]([C661171014;計算値1261.8751)。
【0137】
実施例5:
HCVレプリコン系における阻害効果
本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物が抗HCV活性を有するかどうかを判定するために、HCVレプリコン系におけるこれらの化合物の阻害効果を比較する実験を行った。
【0138】
アッセイは、C型肝炎ウイルス遺伝子型1b Con1レプリコン(Lohmannら 2001. J.Virol. 75:1437−1449;およびLohmannら 1999. Science. 285:110−113)を含有するHuh 9−13を使用した。細胞を、細胞増殖培地、1:4〜1:5の比で10% FCS、1% 非必須アミノ酸、1% ペニシリン/ストレプトマイシンおよび2% ジェネティシン(Invitrogen)を補ったDMEMの中で継代培養し、75cmの組織培養フラスコ(Techno Plastic Products)の中で3〜4日間増殖させ、回収し、細胞増殖抑制効果/細胞毒性効果および抗ウイルス効果の評価のために、96穴の組織培養マイクロタイタープレート(Falcon、Beckton Dickinson)の中で、5000細胞/ウェル(100μl/ウェル)の密度でアッセイ培地(DMEM、10% FCS、1% 非必須アミノ酸、1% ペニシリン/ストレプトマイシン)に播種した。このマイクロタイタープレートを一晩(37℃、5% CO、95〜99%相対湿度)インキュベーションし、コンフルエントでない細胞単層を得た。
【0139】
標準的な96穴プレート(Beckton−Dickinson)の中で、MTTアッセイ(CellTiter 96 AQueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay、Promega)を使用して、並列の培養物において細胞密度および細胞増殖抑制効果を見積もった。このアッセイでは、3−(4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシ−フェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)をホルマザンへと生物還元し、このホルマザンをプレートリーダーで、498nmで定量する。ホルマザンの産生は生細胞の数と直接相関する。吸光度は498nmの波長で測定し(Safire、Tecan)、光学密度(OD値)は、未処置の対照に対する百分率へと変換した。
【0140】
当該化合物を4mmol/Lの濃度でDMSOに溶解した。原液を直ちに使用して実験を始めた。当該化合物を0.0001μmol/L〜100μmol/Lの範囲の24の異なる濃度で試験した。このアッセイでのDMSOの最高濃度を、2.5%(100μMの当該化合物の最終濃度において)であると定めた。このアッセイの設定の中では、DMSO百分率は、当該化合物の濃度の減少に伴って減少した。
【0141】
抗ウイルス効果の評価のために、アッセイ培地を吸引し、乾燥した単層を伴うプレートを抽出まで−80℃で保存した。このプレートを室温で解凍した後、細胞単層を100μlのcell−to−cDNA lysis buffer(Invitrogen)を用いて溶解した。この細胞の溶解を室温で10分間進行させ、その後、すべての液体をPCRプレート(Axygen)に移した。このPCRプレートを75℃で15分間インキュベーションした(T3、Biometra)。溶解液をRNase/DNase不含水で1:2に希釈し、その後、5μlをリアルタイムPCRプレート(AppIled Biosystems)に移した。
【0142】
レプリコンRNA含有量を、リアルタイムの定量的なワンステップRT−PCR法(RT−qPCR):Low Rox One−Step RT−qPCR master mix、Abgene)を使用して定量した。使用した順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、それぞれ5’−CCA GAT CAT CCT GAT CGA CCA G−3’および5’−CCG GCT ACC TGC CCA TTC−3’であった。蛍光発生プローブは5’−ACATCGCATCGAGCGAGCACGTAC−3’であった。試料の分析は、SDS7500F(AppIled Biosystems、標準的な熱サイクリングプロファイル:48℃で30分、95℃で10分、95℃で15秒および60℃で1分の40サイクル)を使用して実施し、その後、レプリコンRNA量を未処置の対照に対する百分率へと変換した。
【0143】
EC50(用量反応曲線から導かれる値)は、ウイルス複製の50%阻害が観察される濃度を表す。CC50(用量反応曲線から導かれる値)は、当該細胞の代謝活性が未処置の細胞の代謝活性50%にまで減少する濃度を表す。
【0144】
これらの実験からの結果から、EC50±SD(標準偏差またはStd.Dev.)(これは、HCVレプリコン複製を50%阻害するために必要とされる有効濃度である)、およびCC50±SD(可能である場合はいつでも)(これは、指数関数的に増殖する細胞の増殖を50%阻害するのに必要とされる濃度である)の算出が可能となった。EC50およびCC50±SDの値は、それぞれ、3つの個々の用量反応曲線から導かれるすべてのEC50、またはCC50値の中央値として算出した。当該化合物の治療濃度域を示す選択性指数(SI)をCC50とEC50との間の比として算出した。
【0145】
表1は、Huh 9−13細胞における、選択した化合物のEC50、CC50(μmol/L)およびSI値の比較の結果を示す。
【0146】
【表1】

【0147】
化合物の濃度は、その特定の濃度で抗レプリコン効果が70%閾値よりも十分に高くかつ30%以下の代謝活性の減少が観察される場合には、HCVレプリコン系における真の抗ウイルス効果を引き出すと考えられる。
【0148】
表1に示すように、Huh 9−13細胞で得たこれらの結果は、これらの化合物が、細胞培養液の中でのC型肝炎ウイルスレプリコンの複製を選択的に阻害することを示し、2桁のナノモル濃度範囲のEC50値を有するDebio 025と同様またはこれより高い効力および同様またはこれより高い選択性指数を実証する。
【0149】
実施例6
非免疫抑制活性
本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物が非免疫抑制活性を有するかを判定するために、コンカナバリン−Aによって誘導されるT細胞増殖の用量依存的阻害を比較する実験を行った(表2を参照)。
【0150】
このアッセイの方法は、Daytonら(1992. Mol. Pharmacol. 41.671−676)およびMishellら(1980. Cell proliferation in selected methods in cellular immunology、V、XXIX、W.H.Freeman Co.、カリフォルニア州、サンフランシスコ、153−160)によって記載されているようにして、実施した。当該化合物のIC50(50%阻害濃度)を用量反応曲線から導き、CsAのIC50と比較した(IC50比)。
【0151】
【表2】

【0152】
この研究では、化合物(Ia)、(Ib)および(Id)は、(IC50比という点では)シクロスポリンA(CsA)よりも少なくとも約300倍小さく免疫抑制性である。
【0153】
実施例7:
肝トランスポーター相互作用
本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物が肝トランスポーターと相互作用するかどうかを判定するために、多剤耐性関連タンパク質2(MRP2)、有機アニオン輸送ポリペプチド1B1(OATP1B1)、胆汁酸排泄ポンプ(BSEP)およびナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP)に対する濃度依存的阻害を比較する実験を行った。これらのトランスポーターは、胆汁酸塩またはビリルビンなどの内因性化合物の肝胆循環(hepatobiliary circulation)に関与する(総説として、C.Pauli−Magnusら、J.Hepatology、2005、43:342−357を参照)。それらのうちのいくつかは、生体異物の排泄にも寄与する。
【0154】
MRP2およびBSEPは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)卵巣細胞を組み換えバキュロウイルスに感染させることにより、SOLVO Biotechnologyによってこの昆虫細胞の中で、発現された。当該トランスポーターを含有する反転膜小胞(inside−out membrane vesicles)への放射活性プローブ基質(MRP2およびBSEPについて、それぞれエストラジオール−17−β−グルクロニドおよびタウロコール酸塩)の輸送の阻害をシンチレーション計数によって測定した。これらのヒト取り込みトランスポーターを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いてOATP1B1およびNTCPアッセイを行った。輸送されたプローブ基質(OATP1B1およびNTCPについて、それぞれエストロン−3−硫酸およびタウロコール酸塩)の量を細胞溶解後の液体シンチレーションまたは蛍光測光によって測定した。当該化合物のIC50(プローブ基質の輸送を50%阻害するために必要とされる濃度と定義される。50%阻害濃度)を濃度−応答曲線から導き、そしてDebio 025のIC50と比較した(表中で「Debio 025に対する倍数」として表されるIC50比)。
【0155】
MRP2は胆汁酸塩非依存的な胆汁流の主要な駆動力であり、幅広いスペクトルの有機アニオン(ビリルビン−ジグルクロニド、胆汁酸塩接合体ならびにいくつかの薬物が含まれる)を輸送する。表3は、選択した化合物とこのトランスポーターとの相互作用の結果を示す。
【0156】
【表3】

【0157】
OATP1B1はナトリウム非依存的に胆汁酸塩を輸送する。さらには、多くの薬物がOATPの基質である。表4は、選択した化合物とOATP1B1との相互作用の結果を示す。
【0158】
【表4】

【0159】
BSEPは、肝細胞から毛細胆細管の中への親胆汁性(cholephilic)化合物の分泌に関与する主要な胆汁酸塩排出系である。表5は、選択した化合物とBSEPとの相互作用の結果を示す。
【0160】
【表5】

【0161】
NTCPは、胆汁形成にとって必須である、門脈循環からの胆汁酸塩のナトリウム依存的な取り込みを媒介する。表6は、選択した化合物とNTCPとの相互作用の結果を示す。
【0162】
【表6】

【0163】
肝トランスポーターに関するこれらのインビトロでの検討のほかに、本発明のシクロウンデカデプシペプチド化合物を、インビトロでの代謝酵素の阻害、および動物の中でのインビボでの薬物動態特性に関しても評価した。
【0164】
表3〜表6に示すように、インビトロでの輸送実験からの結果は、これらの化合物が、Debio 025と比べてはるかに低い、いくつかの肝トランスポーターを阻害する効力を実証するということを示す。特に、いくつかの化合物は、MRP2に対する阻害の不存在および/またはOATP1B1に対する最高で50倍低い効力を示す。それゆえ、これらの化合物は、肝トランスポーターの阻害に関連する潜在的な副作用(例えば高ビリルビン血症)、もしくは肝トランスポーターの阻害に関連する潜在的な薬物−薬物相互作用(例えばアトルバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤との)のいずれかを低減する、またはその両方でさえも低減することが予想される。
【0165】
(略語の一覧)
Abu L−α−アミノ−n−酪酸
Ac アセチル
AcOEt 酢酸エチル
AcOH 酢酸
Ala L−アラニン
Boc tert−ブチルオキシカルボニル
BSEP 胆汁酸排泄ポンプ
t−Bu tert−ブチル
Ca(MeO) カルシウムメトキシド
CC カラムクロマトグラフィー
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン
DMSO ジメチルスルホキシド
Eq 当量
ESI−MS エレクトロスプレーイオン化質量分析
EtVal N−エチル−L−バリン
Fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HATU N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロリン酸塩 N−オキシド
D−Hiv D−ヒドロキシイソ吉草酸
g グラム
HCOOH ギ酸
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
HR−MALDI−MS 高分解能MALDI−TOF質量分析
HR−Q−TOF−MS 高分解能Q−TOF質量分析
ImCO N,N−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)
Kg キログラム
KOMe カリウムメトキシド
L リットル
MALDI マトリクス支援レーザー脱離/イオン化
MALDI−TOF 飛行時間型質量分析
Me メチル
D−MeAla N−メチル−D−アラニン
MeBmt N−メチル−(4R)−4−[(E)−2−ブテニル]−4,4−ジメチル−L−トレオニン
MeLeu N−メチル−L−ロイシン
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MeVal N−メチル−L−バリン
mg ミリグラム
mL ミリリットル
MRP2 多剤耐性関連タンパク質2
MS 質量分析
MtBE メチル−tert−ブチル−エーテル
NMR 核磁気共鳴
NTCP ナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド
OATP1B1 有機アニオン輸送ポリペプチド1B1
PyBOP (ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロリン酸塩
RP 逆相
RP−HPLC 逆相HPLC
RT 反応時間
Thr L−トレオニン
TFA トリフルオロ酢酸
保持時間
THF テトラヒドロフラン
Tj ジャケットの温度
TLC 薄層クロマトグラフィー
Tr 反応器の中の温度
UPLC 超高性能液体クロマトグラフィー
Vol. ボリューム(1gの主原料が1ボリュームを意味する)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のシクロウンデカデプシペプチド化合物
【化1】

(式中、
AXXはMeBmt、4−フルオロ−MeBmt、ジヒドロ−MeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmt;O−アセチル−MeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)、Nva、5−ヒドロキシ−Nvaであり;
AXXはD−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeSer(OCHCHOH)、D−MeSer(OCHCHNEt)、D−MeAsp(OMe)であり;
AXXはMeIle、MeMet、MeVal、MeThr、MeThr(OAc)、MeAla、EtVal、EtIle、EtPhe、EtTyr、EtThr(OAc)、MeThr(OAc)、MeTyr、MeTyr(OAc)、MeTyr(OMe)、MePhe、MeMet(Ox)(この場合、メチオニンの硫黄原子はスルホキシドまたはスルホンである)であり;
AXXはLeu、Val、Ileであり;
AXXはMeAla、Sar、MeLeuであり;かつ
AXXはGly、Alaである)。
【請求項2】
式(I)において、
AXXはMeBmt、8−ヒドロキシ−MeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thr、Thr(OMe)、Thr(OAc)、Thr(OCOCHCHCHOH)、5−ヒドロキシ−Nvaであり;
AXXはD−MeAla、D−3−フルオロ−MeAla、D−MeSer、D−MeSer(OAc)、D−MeAsp(OMe)であり;
AXXはMeIle、MeMet、MeMet(Ox)(ここで、Oxは−SOMe、−SOMeである)、MeVal、EtVal、EtIle、MeTyrであり;
AXXはLeu、Val、Ileであり;
AXXはMeAla、Sar、MeLeuであり;かつ
AXXはGly、Alaである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
AXXはMeBmtであり;
AXXはAbu、Val、Thrであり;
AXXはD−MeAlaであり;
AXXはMeIle、MeVal、EtValであり;
AXXはLeu、Val、Ileであり;
AXXはMeAla、MeLeu、Sarであり;かつ
AXXはGly、Alaである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
以下の式:
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ia)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ib)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Ile−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ic)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Id)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Val−MeAla−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ie)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (If)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeVal−Ile−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ig)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−EtVal−Leu−MeLeu−Ala−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ih)
シクロ−(MeBmt−Abu−D−MeAla−MeIle−Leu−MeLeu−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ii)
シクロ−(MeBmt−Val−D−MeAla−MeVal−Val−Sar−Gly−D−Hiv−MeLeu−Leu−MeVal) (Ik)
を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
C型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための医薬組成物であって、1以上の薬学的に許容できる希釈剤または担体と一緒に、請求項1から請求項4のずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項6】
少なくともa)請求項1から請求項4のずれか1項に記載の化合物および請求項5に記載の医薬組成物からなる第1の薬剤と、b)HCV複製に対して作用する特性を有する第2の薬剤とを含む、医薬的組み合わせ。
【請求項7】
C型肝炎感染またはHCVに誘導される障害の予防または処置において使用するための、請求項6に記載の医薬的組み合わせ。
【請求項8】
医薬としての、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
抗ウイルス薬としての、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
C型肝炎感染またはHCVに誘導される障害の処置または予防における医薬の製造における、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
必要とする対象においてC型肝炎感染もしくはHCVに誘導される障害を予防または処置するための方法であって、前記対象に、治療上有効量の請求項1から請求項4のずれか1項に記載の化合物または請求項5に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項12】
必要とする患者においてHCV複製を阻害する方法であって、前記対象に、治療上有効量の請求項1から請求項4のずれか1項に記載の化合物または請求項5に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
治療上有効量の請求項1から請求項4のずれか1項に記載の化合物または請求項5に記載の医薬組成物、および少なくともHCV複製に対して作用する特性を有する薬剤から選択される第2の薬剤の、相伴うかまたは逐次的な同時投与を含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗HCV特性を有する前記薬剤は、インターフェロン、例えばインターフェロン−α−2aもしくはインターフェロン−α−2b;または水溶性のポリマーもしくはヒトアルブミンに接合されたインターフェロン;抗ウイルス薬、例えばリバビリン、ラミブジン、NV08もしくはNM283;NS3−4Aセリンプロテアーゼ、ヘリカーゼもしくはRNAポリメラーゼなどのHCVコード化因子の阻害剤;抗線維化剤、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体;免疫調節剤、例えばミコフェノール酸;または、S1P受容体作動薬、例えばFTY720もしくは任意にリン酸化されているその類似体からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−507576(P2012−507576A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535177(P2011−535177)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007361
【国際公開番号】WO2010/052559
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(591253308)デビオ ルシェルシュ ファルマスーティク ソシエテ アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】DEBIO RECHERCHE PHARMACEUTIQUE SOCIETE ANONYME
【Fターム(参考)】