説明

シクロヘキサン酸化工程副生成物流れの誘導体およびそれの使用方法

エステル組成物、溶媒、洗浄剤、硬化剤、反応性希釈用溶媒、制御酸機能放出剤、ポリオール単量体、掘削泥水、前記各々の製造方法、前記各々の使用方法を開示する。1つの態様では、本エステル組成物をある工程をある出発材料に適用することで得るが、その出発材料は、シクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部であり、かつその出発材料には遊離酸官能基を有する生成物が含まれ、かつその出発材料を水抽出液(水洗浄液)、濃水抽出液(COP酸)、非揮発性残留物(NVR)およびこれらの組み合わせから成る群より選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2008年12月18日付けで出願した米国仮出願番号61/138,697、2009年1月30日付けで出願した米国仮出願番号61/148,433および2009年6月2日付けで出願した米国仮出願番号61/183,131(これらの内容は全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)の出願日の利点を請求するものである。本出願はまた2009年12月11日付けで出願したPCT出願PCT/US2009/067634(整理番号PI2305 PCT1)の関連主題事項の開示にも関係している。
【背景技術】
【0002】
石油が基になった物質の価格および環境上の圧力が高まるにつれて、石油工程からもたらされるあらゆる生成物(所望の主生成物ばかりでなく副生成物も包含)を可能な最大度合にまで妥当に利用する必要性が増している。副生成物はしばしば価値のない“廃棄”物質として処理される。
【0003】
アジピン酸またはカプロラクタムをシクロヘキサンから製造する時に結果として副生成物の流れが生じることが知られている、と言うのは、その化学的変換は100%の収率として完全には進行しないからである。そのような副生成物流れには官能基を有する多様な分子が入っており、そのような官能基には、とりわけ、アルコール、アルケン、カルボン酸、ラクトン、エステルおよびケトン基が含まれる。ある種の副生成物流れは燃料として価値があることが理由で使用されることが知られている。そのような使用では、その副生成物流れに存在する官能基の価値の認識も回収も全く行われていない。その結果として、アジピン酸の製造に由来する副生成物流れの大部分は利用されないままである。
【0004】
アジピン酸をシクロヘキサンから生じさせる製造は一般に下記の2段階を伴う。1番目として、シクロヘキサンに空気を用いた酸化を受けさせることでシクロヘキサノール(A)とシクロヘキサノン(K)の混合物を生じさせるが、その混合物をKAと呼ぶ。2番目として、KAに硝酸を用いた酸化を受けさせることでアジピン酸を生じさせる。本開示は前記2段階の中の最初の段階、即ちシクロヘキサンからKAを生じさせる酸化によってもたらされる副生成物流れの利用に焦点を当てたものである。この“シクロヘキサン酸化”段階はまたカプロラクタムをシクロヘキサンから製造する時にも行われる。
【0005】
公知のシクロヘキサン酸化工程では一般にシクロヘキサンに酸化を酸素または酸素含有ガスを用いて受けさせているが、変換率は低く、シクロヘキサン中にシクロヘキサノール(A)、シクロヘキサノン(K)およびシクロヘキシルヒドロパーオキサイド(CHHP)が入っている中間体流れがもたらされる。CHHPはシクロヘキサンからKAを生じさせる酸化において重要な中間体であることから、KAの収率を最大限にする目的でCHHPからKAを生じさせる変換を最適にしようとする様々な方法が当該技術分野で公知である。シクロヘキサンの酸化ではK、AおよびCHHPに加えて副生成物も生じる。ある場合には、そのような副生成物がCHHPをKAに変化させる次の工程を妨害することが確認されている。K、AおよびCHHPを含有する中間体流れを水または苛性に接触させることでその妨害する副生成物の少なくともいくらかを除去することができることは知られている[例えば特許文献1(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているように]。そのような接触、即ち抽出の結果として2相混合物が生じ、相分離後に精製されたシクロヘキサン流れ(K、AおよびCHHPを含有)[これに公知の高収率工程を受けさせることでCHHPをKAに変化させることができる]および副生成
物である水の流れがもたらされる。その副生成物である水の流れ(“水洗浄液”)には様々な一酸および二酸、ヒドロキシ酸および初期のシクロヘキサン酸化中に生じた他の酸化副生成物が入っている。
【0006】
水洗浄を中間段階として実施するか否かに拘わらず、そのK、AおよびCHHPを含有する流れに当該技術分野で良く知られた方法を用いたさらなる処理を受けさせることでCHHPからKおよびAへの変換を完了させる。次に、その結果としてもたらされた混合物に精製を再び当該技術分野で良く知られた方法を用いて受けさせることで未変換のシクロヘキサンを再利用の目的で回収しかつ精製されたKおよびAを得て、次に、それらに酸化を受けさせることでアジピン酸を生じさせるか或は変換を受けさせることでカプロラクタムを生じさせる。その精製操作の結果としてもたらされる高沸点の蒸留残油は非揮発性残留物、即ち“NVR”として知られる。
【0007】
要約すると、シクロヘキサン酸化工程で得ることができる副生成物流れ(本明細書では時には“副生成物”流れと呼ぶ)には、“水洗浄液”(シクロヘキサン酸化堆積物の水抽出でもたらされる水性流れ)および“NVR”(KA精製でもたらされる高沸点の蒸留残油)が含まれる。その水の少なくともいくらかを除去することで水洗浄液を濃縮すると“COP酸”として認識する流れがもたらされる。
【0008】
“水洗浄液”、“COP酸”および“NVR”は一官能および多官能物質の両方を含有することが知られており、そのような官能基には主に酸、パーオキサイド、ケトン、アルコールおよびエステルが含まれる。また、他の官能基、例えばアルデヒド、ラクトンおよびアルケンなどが存在することも知られている。多数の官能基が単一の分子内で組み合わされている可能性もある(例えばヒドロキシ酸、例えばヒドロキシカプロン酸またはヒドロキシ吉草酸などの場合のように)。一般に、酸官能基は線状ヒドロカルビル鎖の一方の末端に存在しそしてヒドロキシ基は鎖に沿った様々な位置に存在し得る。ヒドロキシ酸の公知例には、6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸および3−ヒドロキシプロピオン酸が含まれる。同様に、単純な一酸の公知例には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸およびカプロン酸が含まれる。二酸の公知例には、こはく酸、グルタル酸およびアジピン酸が含まれる。ケト酸の公知例には、4−オキソ吉草酸(またレブリン酸としても知られる)および5−オキソカプロン酸が含まれる。アルコールの公知例には、シクロヘキサノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールおよび様々なジオール、例えば1,2− 1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、様々なブタンジオール異性体および様々なペンタンジオール異性体などが含まれる。
【0009】
“水洗浄液”、“COP酸”および“NVR”は化学的に複雑であることから、そのような流れから商業的に有用な高純度の化学品を得るのは困難である。そのような流れから有用な物質を得るための方法を開発しようとする努力は公知でありかつ多様である。
【0010】
前記開示を鑑み、経済的に健全でありかつ実用的に回収率が高い手段を用いて“水洗浄液”、“COP酸”および/または“NVR”からエステルが基になった溶媒を回収するに適した簡潔な方法を提供することができれば、これは好ましいことである。また、有効な溶媒または新規な化学的中間体を提供することができれば、これも好ましいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,365,490号
【発明の概要】
【0012】
要約
本開示の態様では、エステル組成物、溶媒、洗浄剤、硬化剤、反応性希釈用溶媒、制御酸機能放出剤、ポリオール単量体、掘削泥水、前記各々の製造方法、前記各々の使用方法、脆い基質を硬化させる方法などを提供する。
【0013】
本組成物の態様は、とりわけ、ある工程をある出発材料に適用することである組成物を得ることを包含するが、その出発材料は、シクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部であり、かつその生成物の一部は遊離酸官能基を有し、かつその出発材料を水抽出液(水洗浄液)、濃水抽出液(COP酸)、非揮発性残留物(NVR)およびこれらの組み合わせから成る群より選択し、かつこの方法は少なくとも下記の段階を包含する:前記生成物が有する遊離酸官能基を単量体エステルおよびオリゴマー状エステルに変化させそしてオリゴマー状エステルを単量体エステルに変化させる。
【0014】
本組成物の態様は、とりわけ、あるシステムをある出発材料に適用することである組成物を得ることを包含するが、その出発材料は、シクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部であり、かつその生成物の一部は遊離酸官能基を有し、かつその出発材料を水抽出液(水洗浄液)、濃水抽出液(COP酸)、非揮発性残留物(NVR)およびこれらの組み合わせから成る群より選択し、かつこのシステムは少なくとも下記の段階を包含する:前記生成物が有する遊離酸官能基を単量体エステルおよびオリゴマー状エステルに変化させそしてオリゴマー状エステルを単量体エステルに変化させる。
【0015】
本明細書に記述する組成物の態様は、溶媒、洗浄剤、硬化剤、反応性希釈用溶媒、制御酸機能放出剤、ポリオール単量体、掘削泥水などで使用可能である。本開示の態様は、下記の各々の使用方法を包含する:エステル組成物、溶媒、洗浄剤、硬化剤、反応性希釈用溶媒、制御酸機能放出剤、ポリオール単量体、掘削泥水など。
【0016】
態様
本組成物の態様はエステルを含有し、本組成物は、ある工程をある出発材料に適用することで得たものであり、かつその出発材料は、少なくともシクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部であり、かつその出発材料には、遊離酸官能基を有する生成物が含まれ、かつその出発材料を下記:
水抽出液(水洗浄液)、
濃水抽出液(COP酸)、
非揮発性残留物(NVR)、および
これらの組み合わせ、
から成る群より選択し、かつ前記工程は、下記:
i)前記生成物が有する遊離酸官能基を単量体エステルおよびオリゴマー状エステルに変化させ、そして
ii)オリゴマー状エステルを単量体エステルに変化させる、
段階を包含する。
【0017】
前記エステルはヒドロカルビルエステル、例えばメチルエステルなどであってもよい。
【0018】
本組成物を製造する方法に、シクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部に脱水を受けさせる段階を含めてもよい。本方法に更に触媒の中和を行いそして組成物を蒸留で単離する段階も含めてもよい。
【0019】
態様は、開示する組成物を含有して成る溶媒を包含する。その開示する組成物はまた硬化剤、掘削泥水、ペンキ除去剤、電子機器の製造で用いるに適したフォトレジストストリ
ッパー、落書き除去剤および洗浄剤の有用な成分でもあり得る。本組成物を含有させることが可能な洗浄剤の例には、消費者用途、企業用途および産業的洗浄用途用の洗浄剤が含まれる。
【0020】
態様は樹脂を溶解させる方法を包含し、この方法は、開示する組成物の中の1種以上を含有して成る溶媒と前記樹脂を接触させることを含んで成る。そのような樹脂の例は、塗料、インク、接着剤、シーラント、複合材料および結合剤系から成る群より選択した少なくとも1種の成分であり得る。前記樹脂はフェノール樹脂、例えば耐火性結合剤系または鋳物結合剤系で用いるに適したフェノール樹脂などであってもよい。前記樹脂をまたフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン樹脂、スチレン樹脂と無水マレイン酸、アクリロニトリルまたは各々の組み合わせの共重合体、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フッ化ビニリデンを包含するハロゲン化ビニリデン樹脂、および塩化ビニル、酢酸ビニルを包含するビニル樹脂およびこれらの組み合わせから成る群より選択することも可能である。適切な樹脂にはまたウレタン、ウレタン重合体およびウレタン共重合体も含まれる。
【0021】
態様は脆い基質を硬化させる方法を包含し、この方法は、
ケイ酸ナトリウムが入っている水溶液を前記脆い基質に加え、そして
態様1から5の組成物の中の1種以上を前記ケイ酸ナトリウムが入っている水溶液と一緒にか、個別にか或は順に個別に加えることで前記ケイ酸ナトリウムの硬化をそれが前記脆い基質と接触した状態で起こさせる、
段階を含んで成る。
【0022】
前記脆い基質は鋳物用結合剤の成分であってもよい。前記脆い基質をまた土壌、グラウト、掘削流体およびブリケットから成る群より選択することも可能である。
【0023】
態様はまた下記:
a)シクロヘキサン酸化工程から回収した出発材料(この出発材料には遊離酸官能基を有する生成物が含まれ、かつこの出発材料を下記:
水抽出液(水洗浄液)、
濃水抽出液(COP酸)、
非揮発性残留物(NVR)、および
これらの組み合わせ、
から成る群より選択する)を準備する段階を含んで成る方法も包含し、かつ
b)前記方法は下記:
i)前記生成物が有する遊離酸官能基を単量体エステルおよびオリゴマー状エステルに変化させ、そして
ii)オリゴマー状エステルを単量体エステルに変化させる、
段階、および
c)前記段階(b)(i)および(b)(ii)の中の少なくとも一方の段階からヒドロキシカプロン酸メチルおよびアジピン酸ジメチルを含有して成る組成物を回収する、
段階を包含する。
【0024】
組成物には、開示する前駆体から生じさせたポリエステルばかりでなくポリエステルポリオールも含まれ得る。例には、共溶媒である3−エトキシプロピオン酸エステルおよび共溶媒である3−エトキシプロピオン酸エチルを伴うポリエステルポリオールが含まれる。
【0025】
定義
用語“ヒドロキシル価”は、当該物質に存在する残存ヒドロキシル基の総量を表す。そ
のヒドロキシル価(本明細書ではまたヒドロキシル値とも呼ぶ)をmgのKOH/gとして報告し、それの測定を良く知られた方法、例えば標準ASTM D1957またはASTM E1899などに従って実施する。
【0026】
相当して、用語“酸価”は当該物質に存在しているカルボン酸基の濃度を表し、それをmgのKOH/gに換算して報告し、かつそれの測定を良く知られた方法、例えば標準ASTM D4662またはASTM D1613に従って実施する。
【0027】
水洗浄液、COP酸、NVRまたはこれらの組み合わせのいずれか1つを指す場合の用語“出発材料”は、液相を含有しかつ固相(沈降または懸濁)を含有または含有していなくてもよい混合物である。固相がいくらか存在する場合、その量は、組成(特に水濃度)および温度に依存する。例えば、水含有量が40重量%のCOP酸は60℃の時に本質的に液体であるが、20℃では固体を含有する可能性がある、と言うのは、COP酸に存在する有機酸はそのような水濃度の時に20℃では完全には溶解しないからである。1つの態様における出発材料は、水洗浄液、COP酸、NVR供給材料またはそのような供給材料の組み合わせ(水洗浄液、COP酸またはNVRの中の2種または3種)であり得る。そのような出発材料には、シクロヘキサン酸化でもたらされた生成物の一部が含まれ得、その生成物はシクロヘキサン酸化工程またはシステムの副生成物、副産物、反応体、これらの組み合わせなどであり得る。
【0028】
用語“脂肪基”は飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素基を指し、それにはアルキル、アルケニルおよびアルキニル基などが含まれる。
【0029】
用語“alk”または“アルキル”は炭素原子数が1から12、例えば炭素原子数が1から8の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、ドデシル、アミル、2−エチルヘキシルなどを指す。アルキル基は、場合により、特に明記しない限り、アリール(場合により置換されていてもよい)、ヘテロシクロ(場合により置換されていてもよい)、カルボシクロ(場合により置換されていてもよい)、ハロ、ヒドロキシ、保護されているヒドロキシ、アルコキシ(例えばCからC)(場合により置換されていてもよい)、ポリ(オキシアルキレン)(例えばエトキシル化またはプロポキシル化された基)、アシル(例えばCからC)、アリールオキシ(場合により置換されていてもよい)、アルキルエステル(場合により置換されていてもよい)、アリールエステル(場合により置換されていてもよい)、アルカノイル(場合により置換されていてもよい)、アロイル(場合により置換されていてもよい)、カルボキシ、保護されているカルボキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、保護されているアミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニルなどから選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
【0030】
用語“アルケニル”は炭素と炭素の二重結合(シスまたはトランスのいずれか)を少なくとも1個有する炭素原子数が2から12、例えば炭素原子数が2から8の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素基、例えばエテニルなどを指す。アルケニル基は、場合により、特に明記しない限り、アリール(置換アリールを包含)、ヘテロシクロ(置換ヘテロシクロを包含)、カルボシクロ(置換カルボシクロを包含)、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(場合により置換されていてもよい)、ポリ(オキシアルキレン)(例えばエトキシル化またはプロポキシル化基)、アリールオキシ(場合により置換されていてもよい)、アルキルエステル(場合により置換されていてもよい)、アリールエステル(場合により置換されていてもよい)、アルカノイル(場合により置換されていてもよい)、アロイル(場合により置換されていてもよい)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニルなどから選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
【0031】
用語“アルキニル”は炭素と炭素の三重結合を少なくとも1個有する炭素原子数が2から12、例えば炭素原子数が2から8の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素基、例えばエチニルなどを指す。アルキニル基は、場合により、特に明記しない限り、アリール(置換アリールを包含)、ヘテロシクロ(置換ヘテロシクロを包含)、カルボシクロ(置換カルボシクロを包含)、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(場合により置換されていてもよい)、ポリ(オキシアルキレン)(例えばエトキシル化またはプロポキシル化基)、アリールオキシ(場合により置換されていてもよい)、アルキルエステル(場合により置換されていてもよい)、アリールエステル(場合により置換されていてもよい)、アルカノイル(場合により置換されていてもよい)、アロイル(場合により置換されていてもよい)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニルなどから選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
【0032】
用語“脂環式”は完全飽和または部分不飽和の一、二もしくは三環式環を指す。そのような基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、シクロオクチル、シス−またはトランスデカリン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、シクロヘキソ−1−エニル、シクロペント−1−エニル、1,4−シクロオクタジエニルなどが含まれる。シクロアルキル基は、場合により、特に明記しない限り、アリール(置換アリールを包含)、ヘテロシクロ(置換ヘテロシクロを包含)、カルボシクロ(置換カルボシクロを包含)、ハロ、ヒドロキシ、保護されているヒドロキシ、アルコキシ(例えばCからC)(場合により置換されていてもよい)、ポリ(オキシアルキレン)(例えばエトキシル化またはプロポキシル化基)、アシル(例えばCからC)、アリールオキシ(場合により置換されていてもよい)、アルキルエステル(場合により置換されていてもよい)、アリールエステル(場合により置換されていてもよい)、アルカノイル(場合により置換されていてもよい)、アロイル(場合により置換されていてもよい)、カルボキシ、保護されているカルボキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、(一置換)アミノ、(二置換)アミノ、保護されているアミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニルなどから選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
【0033】
用語“芳香”、“ar”または“アリール”は、員数が例えば6から12の芳香同素環式(即ち炭化水素)一、二または三環式環含有基、例えばフェニル、ナフチルおよびビフェニルなどを指す。アリール基は、場合により、特に明記しない限り、アルキル(場合により置換されていてもよいアルキル)、アルケニル(場合により置換されていてもよい)、アリール(場合により置換されていてもよい)、ヘテロシクロ(場合により置換されていてもよい)、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(場合により置換されていてもよい)、ポリ(オキシアルキレン)(例えばエトキシル化またはプロポキシル化基)、アリールオキシ(場合により置換されていてもよい)、アルカノイル(場合により置換されていてもよい)、アロイル(場合により置換されていてもよい)、アルキルエステル(場合により置換されていてもよい)、アリールエステル(場合により置換されていてもよい)、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニルなどから選択される1個以上の基で置換されていてもよい。場合により、隣接して位置する置換基がこれらが結合している原子と一緒になって3から7員の環を形成していてもよい。
【0034】
詳細な説明
本開示の態様では、エステル組成物、溶媒、洗浄剤、硬化剤、反応性希釈用溶媒、制御酸機能放出剤、ポリオール単量体、掘削泥水、前記各々の製造方法、前記各々の使用方法、脆い基質を硬化させる方法などを提供する。
【0035】
本開示の態様は、エステルおよびアルコール(例えばヒドロカルビルエステル、メチル
エステル、エチルエステルなど)を実質的(例えば約50重量%以上)に含有して成る組成物を製造する方法を包含する。1つの態様では、シクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部にある方法(またはシステム)を適用することでそのようなエステル組成物を得ることができる。1つの態様におけるそのようなエステルまたはアルコールには、脂肪エステル、脂環式エステル、芳香エステル、脂肪アルコール、脂環式アルコールおよび/または芳香アルコールが含まれ得る。
【0036】
本開示の態様は、容易に入手可能な装置を用いた比較的簡単な方法を包含し、これは高い回収率で実施可能であることで、エステル組成物ばかりでなく溶媒、洗浄剤、硬化剤、反応性希釈用溶媒、制御酸機能放出剤などを経済的に製造するに実用的である。
【0037】
本方法(またはシステム)の1つの態様の出発材料として、シクロヘキサン酸化工程(またはシステム)に由来する水抽出で得た生成物の一部(本明細書では以降“水洗浄液”と呼ぶ)、シクロヘキサン酸化工程に由来する濃水抽出液(本明細書では以降“COP酸”と呼ぶ)、KA精製に由来する蒸留残油(本明細書では非揮発性残留物または“NVR”と呼ぶ)またはこれらの組み合わせを用いることができる。“これらの組み合わせ”に関して、いずれか1種類または2種類の組み合わせ(水洗浄液とCOP酸、水洗浄液とNVR、またはCOPとNVR)または3種類全部の組み合わせ(水洗浄液とCOP酸とNVR)がこれらの組み合わせであると見なすことができる。
【0038】
1つの態様では、シクロヘキサンの空気酸化生成物と水を抽出段階で接触させた後に水相(この抽出液を本明細書では以降“水洗浄液”と呼ぶ)を分離することで“COP酸”を得ることができる。1つの態様では、その“水洗浄液”に熱処理を受けさせることで、貯蔵および輸送中に問題を引き起こす可能性のある過酸化物を分解させる。貯蔵体積および輸送コストを低くする目的で水をある程度除去することでその水洗浄液に濃縮を受けさせてもよい。
【0039】
1つの態様として、COP酸は一般に水を約10から70重量%含有し得る。1つの態様として、COP酸は水を約10から50重量%含有し得る。1つの態様として、NVRは水を約10から50重量%含有し得る。1つの態様として、洗浄水は水を約70から90重量%含有し得る。1つの態様として、洗浄水は水を約85重量%含有し得る。
【0040】
1つの態様として、本組成物はエステルおよびアルコール(例えばヒドロカルビルエステル、メチルエステル、n−プロピルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を実質的(約70重量%以上)含有するが、これはある工程(またはシステム)をシクロヘキサン酸化の生成物の一部(例えば出発材料)に適用することで得たものである。1つの態様における出発材料は、シクロヘキサン酸化生成物から得た生成物の一部であり、これは示すように少なくとも遊離酸官能基の一部を有し、1つの態様では、それの酸価は約250mgのKOH/g以上(無水ベースで)である。1つの態様における出発材料は、水抽出液(水洗浄液)、濃水抽出液(“COP酸”)、非揮発性残留物(NVR)またはこれらの組み合わせである。
【0041】
1つの態様において、そのような“水洗浄液”、“COP酸”、“NVR”またはこれらの組み合わせには、シクロヘキサン酸化の単官能、多官能および多官能性生成物が含まれ得る。1つの態様として、そのような生成物に存在する官能基1種または2種以上には、酸(例えば一塩基性カルボン酸および二塩基性カルボン酸)、過酸化物(例えばヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド)、ケトン(例えば脂肪または脂環式ケトン)、アルコール(例えば脂肪アルコール、脂環式アルコール)、エステル(例えば脂肪エステル、脂環式エステル)、アルデヒド(例えば脂肪アルデヒド、アルデヒド酸)、ラクトン(例えば脂肪ラクトン)およびアルケン(例えばケト−アルケン、アルケン酸、アル
ケンアルコール)が含まれ得る。1つの態様として、そのような生成物が有する官能基には、酸、過酸化物、ケトン、アルコール、エステル、ラクトン、アルデヒドおよび同じまたは異なる官能基の組み合わせ(例えばヒドロキシ酸、二酸、ケト酸、アルデヒド酸、ジオールまたは酸−ヒドロパーオキサイド)が含まれ得る。
【0042】
1つの態様として、一酸には蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸などが含まれ得る。
【0043】
1つの態様として、二酸にはマロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、しゅう酸、ヘキソ−2−エン二酸などが含まれ得る。
【0044】
1つの態様として、過酸化物にはシクロヘキシルヒドロパーオキサイド、ヒドロキシカプロン酸ヒドロパーオキサイドなどが含まれ得る。
【0045】
1つの態様として、ケトンにはシクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが含まれ得る。
【0046】
1つの態様として、ケト酸にはアルファ−ケト酸(例えば2−オキソ酸、例えばピルビン酸)、ベータ−ケト酸(例えば3−オキソ酸、例えばアセト酢酸)、ガンマ−ケト酸(例えば4−オキソ酸、例えばレブリン酸)、5−オキソカプロン酸などが含まれ得る。
【0047】
1つの態様として、アルコールにはシクロヘキサノール、プロパノール(例えば1−プロパノールおよび2−プロパノール)、ブタノール(例えば1−ブタノール、2−ブタノールなど)、ペンタノール(例えば1−ペンタノール、2−ペンタノールなど)、ヘキサノール(例えば1−ヘキサノール、2−ヘキサノールなど)およびジオール(例えば1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール)、ブタンジオール異性体、ペンタンジオール異性体などが含まれ得る。
【0048】
1つの態様として、アルコール官能基1種または2種以上は水洗浄液、COP酸、NVRまたはこれらの組み合わせの中に存在する酸官能基と一緒にエステルおよび/またはポリエステル結合を形成し得る。1つの態様として、ヒドロキシ酸はこれら自身またはそのような混合物に存在する他の多官能物質と一緒にエステルまたはポリエステル結合を形成し得る。1つの態様として、アジピン酸は、ヒドロキシカプロン酸が有するアルコール官能と一緒にエステル結合を形成し得る(例えば縮合反応生成物)。1つの態様として、ヒドロキシカプロン酸は、別のヒドロキシカプロン酸が有するアルコール官能と一緒にエステル結合を形成し得る(例えば縮合反応生成物)。1つの態様として、そのようにして生じるエステルには、蟻酸シクロヘキシル、吉草酸シクロヘキシルなどが含まれ得る。
【0049】
1つの態様として、アルデヒド酸には5−ホルミル吉草酸、4−ホルミル酪酸などが含まれ得る。
【0050】
1つの態様として、ラクトンにはガンマ−ブチロラクトン、デルタ−バレロラクトン、ガンマ−バレロラクトン、イプシロン−カプロラクトンなどが含まれ得る。
【0051】
1つの態様として、アルケンにはシクロヘキセン−1−オン、ペンテン酸、シクロヘキセン−オールなどが含まれ得る。
【0052】
1つの態様として、ヒドロキシ酸にはヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシプロピオン酸またはヒドロキシ酢酸が含まれ得る。1つの態様として、そのような酸官能基は直鎖(例えばヒドロカルビル鎖)の一方の末端に存在しそし
てヒドロキシ基は鎖に沿った様々な位置に存在し得る。
【0053】
1つの態様として、ヒドロキシカプロン酸には2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸および6−ヒドロキシカプロン酸が含まれ得る。1つの態様として、ヒドロキシカプロン酸には6−ヒドロキシカプロン酸が含まれ得る。1つの態様として、ヒドロキシ吉草酸には2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸および5−ヒドロキシ吉草酸が含まれ得る。1つの態様として、ヒドロキシ吉草酸には5−ヒドロキシ吉草酸が含まれ得る。1つの態様として、ヒドロキシ酪酸には2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸および4−ヒドロキシ酪酸が含まれ得る。1つの態様として、ヒドロキシ酪酸には4−ヒドロキシ酪酸が含まれ得る。1つの態様として、ヒドロキシプロピオン酸には2−ヒドロキシプロピオン酸および3−ヒドロキシプロピオン酸が含まれ得る。1つの態様として、ヒドロキシプロピオン酸には3−ヒドロキシプロピオン酸が含まれ得る。
【0054】
1つの態様として、エステル(例えばヒドロキシルエステル、メチルエステルなど)を実質的(50重量%以上または60重量%以上またはそれ以上)に含有する組成物を得る方法(またはシステム)は下記の段階を包含する:1番目の任意段階として、生成物の一部に脱水を受けさせ、2番目の段階として、その生成物が有する遊離酸官能基をエステル基(例えば単量体エステルおよびオリゴマー状エステル)に変化させ、そして3番目の段階として、オリゴマー状エステルを単量体エステルに変化させる(例えばエステル交換などで)。1つの態様として、単量体エステルを前記2番目および3番目の段階の各々で生じさせることができる。1つの態様では、その2番目および3番目の段階を単一の段階として組み合わせる。例えば、アルコールを充分な量で添加しそして温度をエステル化とエステル交換が単一の段階で起こるように維持する。本明細書で用いる如き語句“オリゴマー状エステル”は、ヒドロキシおよび/または酸および/またはエステル官能基を含有する2種以上の多官能分子を組み合わせると生じると考えることができるエステル縮合生成物を指す。例えば、多官能分子であるアジピン酸(またはこれのエステル)は多官能分子である6−ヒドロキシカプロン酸(またはこれのエステル)と縮合してオリゴマー状エステルをもたらす(メタノールをエステル化で用いた時)、例えば以下に示すようにアジピン酸部分を1個とオキシカプロイル部分を1個含有するオリゴマー状エステルなどをもたらすと考えることができる。
【0055】
【化1】

【0056】
この上に示したオリゴマー状エステルは末端エステル官能基を含有することから、それが1種以上の追加的多官能分子(例えば別の6−ヒドロキシカプロン酸またはエステル)と反応するとアジピン酸部分を1個とオキシカプロイル部分を2個含有する長鎖オリゴマーが生じ得る、等々。このようにして、出発材料に存在する多官能酸、エステルおよびアルコールに由来する部分を2、3またはそれ以上の数で含有するオリゴマー状エステルを思い描くことができる。カルボン酸またはエステル(例えばアジピン酸またはこれのエステル、6−ヒドロキシカプロン酸またはこれのエステルなど)とジオール(例えばペンタンジオール、シクロヘキサンジオールなど)が反応することで他のオリゴマー状エステルが
生じることもあり得る。オリゴマー状エステルの分子量は単量体エステル生成物のそれよりも高いことから、それらを蒸留で回収するのは困難である。本開示のエステル溶媒には時として2個の多官能分子から生じたオリゴマー状エステル(“二量体”)がいくらか少量存在している可能性はあるが、大部分のオリゴマー状エステルが示す揮発性は非常に低いことから蒸留残留物の中に入った状態で失われてしまう。オリゴマー状エステルはアジピン酸およびオキシカプロイル部分(ばかりでなく出発材料に由来する他の多官能部分)を含有する可能性があることから、蒸留残留物に伴って失われる量は本開示のエステルの収率損失に相当する。エステル交換段階の目的はオリゴマー状エステルを少なくともある程度分解させて単量体エステルを生じさせることにあり、その単量体エステルを本開示のエステル溶媒として回収することができる。
【0057】
1つの態様として、本方法(またはシステム)の実施ではエステル化段階およびエステル交換段階でメタノールを用い、そのようにして生じさせたメチルエステルの組成物は実質的にアジピン酸ジメチルおよびヒドロキシカプロン酸メチルを含有する。
【0058】
1つの態様では、触媒を2番目の段階で用いる。1つの態様では、触媒を3番目の段階で用いる。1つの態様では、同じ触媒を2番目および3番目の段階で用いる。1つの態様における触媒はエステル化用触媒である。1つの態様における触媒は強ルイスもしくはブレンステッド酸(例えば硫酸、スルホン酸)である。1つの態様における触媒はメタンスルホン酸、キシレンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸である。1つの態様における触媒は遷移金属触媒(例えばチタンが基になったか或は錫が基になった)である。
【0059】
1つの態様として、本方法(またはシステム)は、単量体エステル組成物を蒸留などで単離することを包含する。1つの態様における単離は、蒸気−液体分離(例えば単一段階のフラッシュ分離、蒸発(短路、ワイプト(wiped)、落下式膜、大気圧、大気圧以下)、多段階蒸留、それらの複数実施またはそれらの組み合わせ)、溶解度差による液体−液体分離、固体−液体分離(例えば分別結晶化)、分子量の大きさおよび形状による分離(例えば膜分離)、後処理(例えば炭素による脱色、粘土による処理など)およびこれらの各々の組み合わせ(例えば抽出蒸留、蒸留後の後処理など)を用いて実施可能である。
【0060】
1つの態様におけるエステル組成物は、ヒドロキシカプロン酸メチルを約40重量%およびアジピン酸ジメチルを約27重量%含有する。加うるに、このエステル組成物は、グルタル酸ジメチルを約3重量%、こはく酸ジメチルを約0.5重量%、シクロヘキサンジオールを約4重量%、5−ヒドロキシ吉草酸メチルを約4重量%、吉草酸メチルを約2重量%、バレロラクトンを約2重量%およびレブリン酸メチルを約0.7重量%含有している可能性がある。他の化合物も存在している可能性がありかつそれらが存在していても同定も量化も行わなかったことを注目すべきである。1つの態様におけるエステル組成物が示す酸価は約0.07mgのKOH/gであり得、水含有量は約0.04重量%であり得、かつヒドロキシル値は約257mgのKOH/gであり得る。このように、1つの態様として、約380gのNVR(無水ベース)から前記分析特徴を有するメチルエステル生成物が約220g得られた。
【0061】
以下の表1に、本開示の範囲内のエステル組成物が示す濃度範囲を重量パーセントで示す。一般に、エステル(例えばメチルエステル)の回収率を最大限にするのが好ましい時に表1に示す範囲のエステル組成物を得ることができる。本明細書の以下に更に記述するように、生成物単離段階5で選択的生成物単離を行うことで、特定の成分(例えばアジピン酸ジメチル、ヒドロキシカプロン酸メチルなど)をより高いか或はより低い濃度で得ることができる。濃度範囲Dは、COP酸供給材料から得られるエステル組成物の一例である。濃度範囲Eは、NVR供給材料から得られるエステル組成物の一例である。1つの態
様として、表1に示す濃度範囲A−Eの各々に関して、場合により、ヒドロキシカプロン酸メチルおよびアジピン酸ジメチル以外の成分も存在する可能性がある。例えば、1つの態様のエステル組成物は、ヒドロキシカプロン酸メチルを約10から60重量%およびアジピン酸ジメチルを約20から80重量%含有する。別の例として、1つの態様のエステル組成物は、ヒドロキシカプロン酸メチルを約15から50重量%およびアジピン酸ジメチルを約30から70重量%含有する。本明細書に開示する態様または表1に示す態様のいずれにおいても、当該組成物が含有するオリゴマー状エステルの量は約20重量%未満であり得る。例えば、そのような組成物が含有するオリゴマー状エステルの量は約0.001から20重量%、約0.001から14重量%または約0.001から10重量%であり得る。表1の縦列のいずれかの1つの濃度を表1の他のいずれかの縦列の濃度と組み合わせて選択することはそれらの濃度の合計が100重量%に等しいか或はそれ以下であることを条件として本発明の範囲内であると理解されるべきである。そのような組成物のいずれも吉草酸メチルの含有量は約5重量%未満(例えば約0.01から約5重量%、約0.01から3重量%、0.01から1.5重量%、約0.01から0.1重量%)であり得そして/またはバレロラクトンの含有量は約10重量%未満(例えば約0.01から10重量%、約0.01から7重量%、0.01から4重量%、0.01から2重量%)であり得る。
【0062】
【表1】

【0063】
以下のパラグラフに本方法(またはシステム)の1つの態様を記述する。段階1として、当該出発材料(例えばシクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部)に入っている水および他の低沸点化合物(例えば蟻酸、酢酸など)を所望のエステル化温度および圧力に到達するに充分な量で除去する。エステル化用またはエステル交換用触媒を含める場合、ヒドロキシル官能化合物が当該混合物に存在する酸と反応してエステル結合が形成される時に生じる反応水もその除去する水に含まれている可能性がある。この段階でオリゴマー状エステルがいくらか生成しても収率全体にとってあまり有害でない可能性がある。その理由は、それらが後の段階3で開裂を起こすからである。1つの態様として、段階1は任意であり、そして最初の段階が段階2である。1つの態様として、段階1に先行する段階を実施することで水および/または他の低沸点化合物を除去してもよく、その場合、この段階と段階1は異なる。
【0064】
段階2として、メタノール(または他の態様では他のアルコール、例えばプロパノール、エタノール、イソプロパノールなど(実施例を参照))を添加して当該混合物に存在するカルボン酸と反応させる。そのような出発材料は、カルボン酸の混合物を含有し得る生成物の一部であり、それは一酸(例えば蟻酸、酢酸、吉草酸など)、二酸(例えば主にC6アジピン酸であるが、またC5グルタル酸など)、ヒドロキシ酸(例えば6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸など)、水および他の有機化合物を含有している可
能性がある。1つの態様におけるエステル化工程条件には、温度を約50℃から250℃、例えば約80℃から160℃にし、圧力を反応体および生成物が反応条件下で液相に維持されるに充分な圧力、例えば約15kPaから1500kPaまたは約50kPaから500kPaにすることが含まれ得る。そのエステル化反応は適切な反応装置のいずれか、例えば連続撹拌型タンク反応槽、バッチ反応槽、管状フロー反応槽または反応性蒸留装置などを用いて実施可能である。縮合エステル化反応は平衡反応であることが知られており、反応水を除去するとエステル化の度合が向上し得る。1つの態様では、反応水をエステル化反応中に連続的に除去する。1つの態様では、水を断続的様式、例えば反応段階と水除去段階を交互に行う段階的工程などで除去する。1つの態様では、水を共沸で除去し、この場合、水と一緒に共沸物を形成し得る適切な共沸剤を用いる。アルコール(例えばメタノール)の添加、滞留時間および水の除去を所望のエステル化度に応じて調節することで、例えばカルボン酸から相当するエステルへの変換率が約85%から99.9%になるようにするか、或は反応混合物を平衡状態になるまで実質的(例えば中間以上)に反応させる。適切な滞留時間は、反応条件に応じて、約1時間未満から24時間、例えば約1から12時間であり得る。
【0065】
1つの態様では、エステル化化学技術の技術者に公知のように、水を蒸気として除去するが、その場合には、メタノールをストリッピング剤として用いることで水の除去を助長しかつエステル化反応を完結の方向に推進させる。塩素置換物質も他の共沸剤も使用せずかつ必要としない。段階1で水を除去することは、段階2で得られる水で湿ったメタノール(価値のあるメタノールを回収する目的で後で蒸留を行う)の量が少なくなる点で有利である。エステル化を酸価が所望の低い値、例えば約30mgのKOH/グラム未満などに到達するまで継続して行う。1つの態様では、エステル化を酸価が約10mgのKOH/グラム未満になるまで継続して行う。1つの態様として、添加したメタノールは当該混合物に存在するカルボン酸とエステル化中に反応することでメチルエステルが生じ、また、その混合物に存在する他のヒドロキシル官能化合物もその混合物に存在するカルボン酸と反応してエステルを形成する。1つの態様におけるそのようなエステルには、オリゴマー状のポリエステルが含まれ得る。そのようなオリゴマー状ポリエステルを後の段階3で開裂させることから、それらが生成しても工程全体にとって有害ではない。
【0066】
段階3として、単量体エステル(例えばメチルエステル)およびオリゴマー状エステルを含有して成る段階2の生成物をメタノール(例えば無水ベースで約0.2から3.0gのメタノール/1gの供給材料または含水ベースで約0.4から1.5gのメタノール/1gの供給材料)で処理することで前記オリゴマー状エステルを開裂させて単量体エステル(例えばメチルエステル)を生じさせる。その追加的メタノールの添加を材料が反応混合物から決して有意な量で留出しないように行う。段階3と段階2を区別する鍵となる要素は、メタノールを反応混合物にオリゴマー状エステルが分解して単量体エステルが生じるに充分な量で添加して存在させることにある。1つの態様では、追加的メタノールを特定の出発材料(当該生成物の一部)に関して理論的に得ることができるアジピン酸ジメチルおよびヒドロキシカプロン酸メチルの量の70%以上の回収率が達成されるに充分な量で添加する。例えば、ヒドロキシカプロン酸とアジピン酸の縮合で生じたエステルを開裂させてヒドロキシカプロン酸メチルとアジピン酸ジメチルを生じさせる。
【0067】
段階3は、段階2で用いた反応槽と同じ反応槽内でか或は異なる反応槽、例えば当該技術分野で公知の管状反応槽などを用いて実施可能である。段階3をまた高温、即ち反応速度を速めることが知られている条件下で実施することも可能である。反応温度を当該反応混合物の大気圧下沸点より高くすると反応圧力が大気圧より高くなると理解されるべきである。
【0068】
1つの態様では、段階3を約50℃から250℃の温度で実施する。1つの態様では、
段階3を約80℃から150℃の温度で実施する。1つの態様では、段階3を約65℃から75℃の温度で実施する。1つの態様では、段階2と3を組み合わせて、メタノールをその組み合わせた段階に段階2と3の目標を達成するに充分な量で加える。
【0069】
段階4では、段階3の生成物に中和を適切な塩基(例えば金属のアルコキサイド、金属アルキルまたは金属の水酸化物)を計算した量で添加することで受けさせる。1つの態様における塩基はナトリウムメチラートであり、これを固体またはメタノール溶液として加えてもよい。1つの態様における塩基は水酸化ナトリウムであり、これを固体または50重量%の水酸化ナトリウム水溶液として添加してもよい。そのような適切な塩基の計算量の決定では、最初に段階3の生成物を酸価に関して分析した後にその酸価と当該材料の総重量を基にして前記酸を中和するための塩基の化学量論的量を計算することで決定する。エステルが起こす鹸化の度合が最小限になるように水を回避するが、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液と一緒に水が少量添加されても許容される。中和を実施する理由は、一般に、触媒がいくらかでも残存するとメタノールを除去している時にオリゴマー状ポリエステルが再び生じる可能性がある点にある。1つの態様として、中和後の酸価が0から1mgのKOH/gの範囲内になるようにする。1つの態様として、中和後の酸価が0から0.25mgのKOH/gの範囲内になるようにする。1つの態様では、段階4を含めるか或は含めなくてもよい。
【0070】
段階5では、段階4の中和生成物を単離した後に蒸留で精製する。蒸留はバッチ式または連続的に公知様式で実施可能である。1つの態様では、蒸留によって下記の4画分もしくは溜分を得る:(1)主にメタノールである軽画分(これの水含有量は低くかつエステル化に直接再循環可能である)、(2)中間的または過渡的溜分、(3)エステル生成物画分、および(4)残油、即ち高沸点蒸留残留物。画分(2)、(3)および(4)に関して選択する相対的大きさはエステル生成物画分(3)に望まれる特性(例えば水含有量、ヒドロキシル値、酸価、メタノール含有量、引火点および/または蒸気圧)に依存する。このように、本開示の範囲内のエステル組成物には表1に開示した範囲外のエステル組成物も含まれ得る。例えば、低沸点範囲の蒸留溜分を生成物として単離することでジエステルの濃度がより高くかつヒドロキシエステルの濃度がより低いエステル生成物画分を得ることができる。
【0071】
実施例2の表3に示すように、溜分3から6を単離することでアジピン酸ジメチル含有量が約90重量%以上でヒドロキシカプロン酸メチル含有量が約2重量%未満の生成物組成物(エステル組成物)を得ることができる。1つの態様における生成物組成物はジエステルを約50から100重量%およびヒドロキシエステルを約0.05から2.0重量%含有する。1つの態様における生成物組成物はアジピン酸ジメチルを約50から100重量%およびヒドロキシカプロン酸メチルを約0.05から2.0重量%含有する。沸騰範囲がより高い溜分を生成物として単離することでジエステルの濃度がより低くかつヒドロキシエステルの濃度がより高いエステル生成物画分を得ることができる。実施例2の表3に示すように、溜分8から10を単離することでアジピン酸ジメチル含有量が約2重量%未満でヒドロキシカプロン酸メチル含有量が約95重量%以上の生成物を得ることができる。1つの態様における生成物組成物はジエステルを約0から2重量%およびヒドロキシエステルを約50から100重量%含有する。1つの態様における生成物組成物はアジピン酸ジメチルを約0から2重量%およびヒドロキシカプロン酸メチルを約50から100重量%含有する。
【0072】
その得た単離生成物は、モノエステル、ジエステル、ヒドロキシ−エステルおよび他の成分を含有する無色の高沸点液状混合物であり、その生成物が示すヒドロキシル値は約100から400mgのKOH/グラムである。1つの態様における生成物が示すヒドロキシル値は約100から350mgのKOH/グラムである。1つの態様における生成物が
示すヒドロキシル値は約100から250mgのKOH/グラムである。
【0073】
本方法をメタノールをエステル化およびエステル交換用アルコールとして用いて実施した時の主成分は一般にアジピン酸ジメチルおよびヒドロキシカプロン酸メチルであるが、また、他の成分、例えばモノエステル(例えば吉草酸メチル、レブリン酸メチル)、ジエステル(例えばグルタル酸ジメチル、こはく酸ジメチル)、ヒドロキシエステル(例えば5−ヒドロキシ吉草酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル)、アルコール(メタノール、シクロヘキサノール、ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール)、ラクトン(例えばバレロラクトン、ガンマブチロラクトン)なども存在する可能性がある。一般に、そのように多数の成分が存在していてもそのような組成物を溶媒として意図する数多くの用途にとって有害ではない。他のエステル化およびエステル交換用アルコール(例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノールなど)も使用可能であることを注目すべきである。
【0074】
溶解性および物性がより重要である1つの態様では、一般に、正確な化学的組成は要求されない。そのような混合物の態様は非常に好ましい特性、例えば高い引火点(例えば約60℃以上または約93℃以上)およびいろいろな樹脂(例えばフェノール、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、エポキシ、フェノキシ、スチレン、スチレン樹脂と無水マレイン酸および/またはアクリロニトリルの共重合体、アクリル、メタアクリル、ポリビニルブチラール、フッ化ビニリデンを包含するハロゲン化ビニリデン、塩化ビニルおよび酢酸ビニルを包含するビニル樹脂)、例えば塗料、接着剤、シーラント、弾性重合体、複合材料、鋳物、成形品などで用いられる樹脂を溶解または可塑化する能力などを有する。
【0075】
1つの態様として、そのようなヒドロキシル含有量によって、商業的に入手可能なジカルボン酸のメチルエステル、例えばこはく酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびアジピン酸ジメチル(例えば二塩基性エステル、DBETM 二塩基性エステル(INVISTA S.a r.l.から入手可能))などにとって有用な補足がもたらされ得る。1つの態様では、単離段階5の生成物に蒸留によるさらなる精製を受けさせることでヒドロキシル値が様々な溜分(例えば0から50mgのKOH/gまたは350から400mgのKOH/g)を得ることができるか或はそれを他の溶媒(例えばプロピレンカーボネート、脂肪酸メチルエステル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、イソホロン、ジプロピレングリコール、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、こはく酸ジメチル、DBETM 二塩基性エステル)と混合することで所望用途に応じた特性(例えば粘度、溶解度パラメーター)を達成することも可能である。
【0076】
本開示のエステル組成物(例えばメチルエステル組成物)の態様は、様々な家庭用および産業用途に見られる樹脂および接着剤用のエステル溶媒として用いるに有用であり得る。例えば、溶媒を用いて余分な接着剤を表面または皮膚から除去することができる。産業的には、溶媒を用いて塗料、接着剤、樹脂および他の同様な材料の製造、取り扱いまたは塗布で用いられる装置を洗浄またはフラッシュ洗浄することができる。溶媒は可塑剤もしくは樹脂加工用助剤として使用可能である。溶媒は産業用接着剤または結合剤系、例えば米国特許第4,273,179号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如き鋳型および中心部の製造で用いられるそれらに入れる材料であり得る。本開示の溶媒は様々な接着剤および樹脂にとって優れた溶媒である。それらは樹脂をゲル化させることなく溶かす能力を有することから、結果としてもたらされる溶媒と樹脂の混合物の取り扱いが容易であるばかりでなく溶媒の再使用、回収および再利用が容易である。例えば、溶媒を樹脂加工装置に入れるラインフラッシュとして用いるとその使用した溶媒はそれでもより多くの樹脂を溶かす能力を有することから、後で別のフラッシュ操作で再使用する目的で取っておくことができるが、もしその使用した溶媒がゲル化すると再使用が不可能になり得る。
【0077】
人々および環境が危険にさらされる度合が最小限になるように、しばしば、揮発性が低くて引火点が高い方が環境、健康および安全の観点で好ましい。本開示のエステルが示す揮発性はアセトンまたは塩化メチレンの如き通常の溶媒が示すそれよりも非常に低くかつ引火点もしばしば93℃以上であることから、それらは米国において非燃焼性であると分類分け可能である。
【0078】
低揮発性とヒドロキシル含有量の組み合わせによって本開示のエステル溶媒は特定の用途、例えば鋳造などにおいて反応性希釈剤として用いるに特に有用であり、そのような特性によって揮発性有機化合物(VOC)が製造工程中に排出される度合が低くなり得る。例えば、本エステル溶媒は2点セットのポリウレタン系結合剤系で用いられるフェノール樹脂用の希釈剤および粘度制御用溶媒として使用可能である。フェノール樹脂溶液を後でフェノール結合剤系のイソシアネート部分と一緒にして硬化させると、本エステル溶媒に存在するヒドロキシル含有成分が反応を起こして硬化したポリウレタン系結合剤の中に取り込まれることで、そのような成分がVOCから放出されなくなる。
【0079】
本開示のエステル組成物は、また、ケイ酸ナトリウム系結合剤系、例えば土壌の安定化、化学的注入などで用いられる系用の硬化剤としてか或は様々な骨材用の結合剤として用いるにも有用である。そのような用途では、本エステル溶媒のエステル成分がケイ酸ナトリウム溶液と反応することでケイ酸ナトリウムが中和されかつ結合剤として働くケイ酸塩およびシリカの沈澱がもたらされる。
【0080】
1つの態様として、本開示のエステル組成物(または溶媒)を直接用いてもよいか或は共溶媒または界面活性剤と混合することで溶媒の特性(例えば粘度)または性能を変えることも可能である。例えば、共溶媒を本開示のエステル溶媒と混合することで溶解したフェノール樹脂の粘度を変えることができる。本開示のエステル溶媒と化学的に相溶し得る如何なる溶媒も可能な共溶媒であると見なすことができる。以下の表2に、共溶媒およびエステル組成物の選択によって粘度を幅広い範囲、即ち比較として共溶媒を用いない場合のそれの約0.5から1.6倍に渡って変えることができることを示す。
【0081】
【表2】

【0082】
溶媒の選択に応じて、粘度を高くするか或は低くすることができるが、ある場合には粘度を低くする方が好ましい。1つの態様では、3−エトキシプロピオン酸エチルと本開示のエステル溶媒の混合物を2点セットのポリウレタン系結合剤系で用いられるフェノール樹脂用の希釈剤および粘度制御用溶媒として用いることができる。1つの態様では、約25から75重量%の量の3−エトキシプロピオン酸エチルを約75から25重量%の量の本開示のエステル溶媒と組み合わせて2点セットのポリウレタン系結合剤系で用いられるフェノール樹脂用の希釈剤および粘度制御用溶媒として用いる。1つの態様では、3−エトキシプロピオン酸エチルと本開示のエステル溶媒の50/50重量%混合物を2点セットのポリウレタン系結合剤系で用いられるフェノール樹脂用の希釈剤および粘度制御用溶媒として用いることができる。
【0083】
本開示のエステル組成物(例えばメチルエステル組成物)の態様は、ヒドロキシル末端ポリエステルポリオールを製造する時の出発材料として用いるに有用であり得、その後、それはポリウレタンを製造する時の有用な中間体である。分子量が500−3000のポリエステルポリオールが特に重要である、と言うのは、それらを用いて幅広い範囲の高性能ポリウレタン製品を製造することができるからである。そのような製品には発泡体および微小気泡弾性重合体、塗料、接着剤、合成革、スパンデックスフィラメントおよび弾性重合体が含まれ、それらの成形を鋳造、射出成形、トランスファー成形および押出し加工で行う。
【0084】
そのようなポリエステルポリオールの製造は、エステル結合成形に関して当該技術分野で公知の様々な方法を用いて実施可能である。そのような方法には、(1)二酸とジオールの縮合反応を反応水の分離を伴わせて起こさせる方法、(2)ジエステルとジオールの
縮合反応を反応アルコールの分離を伴わせて起こさせる方法、(3)ジオールを開始剤として用いたラクトン、例えばカプロラクトンの開環オリゴマー化反応、(4)ヒドロキシ酸、例えば6−ヒドロキシカプロン酸などとジオールの縮合反応を反応水の分離を伴わせて起こさせる方法、および(5)ヒドロキシエステル、例えば6−ヒドロキシカプロン酸メチルなどとジオールの縮合反応を反応アルコールの分離を伴わせて起こさせる方法が含まれる。他の変法、例えば酸の代わりに酸クロライドを用いる方法なども可能である。必要ならば、官能性がより高いある種の反応体、例えばトリオール(例えばグリセロール、トリメチロールプロパンなど)を含めることを利用してポリオールに分枝を導入することも可能である。縮合反応で生じた水またはアルコールを除去するとポリオール生成反応が完了にまで推進される。水またはアルコールの除去を達成する様々な方法が当該技術分野で公知であり、そのような方法には、高い反応温度(例えば180−250℃)、窒素スパージまたは真空(例えば50mm Hg絶対以下)の使用が含まれる。
【0085】
反応速度を速める目的で触媒を用いることも可能である。通常用いる触媒には、チタン化合物、例えばテトラ−アルキルチタネート(例えばテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなど)、錫化合物、例えばジアルキル錫ジカルボキシレート(ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレートなど)、ジブチル錫オキサイドまたはハロゲン化第一錫(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ホウ酸亜鉛、可溶マンガン化合物、例えば酢酸マンガンなどが含まれる。
【0086】
通常用いるジオールには、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレンおよび高級ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれの高級同族体、1,3−プロパンジオール、テトラ−、ペンタ−およびヘキサ−メチレングリコール、1,2−、2,3−および1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどが含まれる。
【0087】
通常用いる二酸には、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸などが含まれる。前記酸の低級アルキルジエステルを用いることも可能であり、そのような低級アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどである。例えば、アジピン酸ジメチルを1,4−ブタンジオールと反応させてメタノールを放出させるとポリエステルポリオールポリ(ブタンジオールアジペート)が生じる。1,4−ブタンジオールを若干モル過剰量で用いることでポリオールがヒドロキシル末端を有することを確保する。1,4−ブタンジオールとアジピン酸エステルの相対的量に加えて加工条件によってポリエステルポリオールの平均分子量が決まる。米国特許第4,525,574号に、DBA(アジピン酸、グルタル酸およびこはく酸を包含する二塩基酸の混合物)またはDBE(アジピン酸ジメチル、グルタル酸エステルおよびこはく酸エステルの混合物)から生じさせたポリオールおよびそのポリオールをポリウレタン(弾性重合体および発泡体)の製造で用いることが開示されている。本開示のジエステル成分(例えばアジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル)を(2)に従って反応させながら反応アルコール(例えばメタノール)を分離して取り出すことでエステル結合を生じさせる。
【0088】
本開示のエステルの中の6−ヒドロキシカプロン酸エステルを(5)に従って反応させながら反応アルコールを分離して取り出すことでエステル結合を生じさせる。
【0089】
そのようなポリエステルポリオールの特性がポリウレタンを生じさせる処理およびポリウレタンの最終的特性に大きな影響を与える。液状の低粘度ポリオールの方が加熱して溶融させる必要のある固体よりも処理が容易である。このことは“ワンショット”ポリウレタン弾性重合体の製造にとって特に重要であり、例えば、ポリウレタン反応体を室温で混
合するには反応性を制御する必要がある点でその方が非常に好ましい。典型的にはアジピン酸をエチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールと一緒に縮合重合させることで生じさせた分子量が約2000のアジピン酸エステルポリオールは一般に室温で固体である。エチレングリコール−アジピン酸エステルポリオールは、優れた弾性回復を示すが加水分解安定性が比較的劣るポリウレタンをもたらす。ブタンジオール−アジピン酸エステルポリオールは、加水分解安定性がいくらか向上したポリウレタンをもたらすが、弾性回復率は劣る。エーテル−グリコール(例えばジエチレングリコール)を用いて生じさせたアジピン酸エステルポリオールは室温で液状であるが、それらから生じさせたポリウレタンは比較的低い引張り強度と劣った加水分解安定性を示す。カプロラクトンが基になった分子量が約2000のポリオールは強度が高くて優れた加水分解抵抗性を示すポリウレタンをもたらすことが知られているが、そのようなポリオールは一般に室温で固体でありかつそれが示す分子量分布が狭いことで結晶性ソフトセグメントの量がより多くなる傾向にあることで、回復、弾性回復、曲げ疲労性能および透明性が低下する可能性がある。カプロラクトンが基になったポリオールはまたアジピン酸エステルポリオールよりも高価である傾向もある。従って、液状ポリオールから作られたポリウレタンに優れた弾性回復および加水分解安定性を与える安価な液状ポリオールが必要とされているままである。
【0090】
低コストで高性能のポリオールが継続して求められている。特に、そのようなポリオールは材料を室温で前以て混合しておく使用が容易であるように周囲温度で液状であるのが好ましい。更に、そのようなポリオールが再利用内容物をいくらか含有するのも資源の妥当な使用の観点から好ましいことである。驚くべきことに、本開示のエステル溶媒はシクロヘキサン酸化工程から得られた生成物の一部から新規な液状ポリオールをもたらすことを見いだした。その結果としてもたらされたポリオールは色が薄くかつ典型的に20℃で液状である。本開示のエステル溶媒から生じさせたポリオールが示す粘度はしばしばアジピン酸またはDBETM 二塩基性エステルを用いて生じさせた匹敵するポリオールが示す粘度よりも低い。
【実施例】
【0091】
試験および分析方法
当業者に公知のように、反応中に採取したサンプルか或は最終的な反応の場合には生成物をクロマトグラフィー方法、例えばGC、GC−MS、HPLC、分光光度法、例えば色解析などおよび物理的および化学的試験、例えばヒドロキシル値、酸価、水含有量、引火点および他の試験などで特徴付けるのが便利である。
【0092】
全てのガスクロ(GC)分析はAGILENT DB−5、HP−FFAPまたはDB−1701 カラム、He担体ガスおよび炎イオン化検出器が備わっているAGILENT TECHNOLOGIES 6890を用いて実施可能である。
【0093】
ガスクロ質量(GC−MS)分析はAgilent DB−5またはHP−FFAPカラムが備わっているModel 5973−MSD(質量選択検出器)を伴うAGILENT TECHNOLOGIES 6890でHe担体ガスを用いることで実施可能である。
【0094】
HPLC分析はZorbax SB−Aq C18カラムが備わっているAGILENT 1100シリーズのHPLC装置(溶媒脱気装置、四式ポンプ、オートサンプラー、加熱カラム区分室およびダイオードアレイUV−VIS検出器)を用いて実施可能である。
【0095】
色、ヒドロキシル値、酸価、水含有量および引火点の測定をそれぞれASTM方法 D1209、D1957、D4662、D1364およびD3278を用いてか或は当該技
術分野で公知の他の適切な方法を用いて実施する。
【0096】
ポリオールが示す分子量の推定はヒドロキシル値を測定することで実施可能である。ヒドロキシル値をmgのKOH/gの単位で表す。ジオール(ポリオール当たり2個のヒドロキシル基)の場合の平均分子量=112200/測定ヒドロキシル値。例えば、測定ヒドロキシル値が56.1であることは平均分子量が2000であることに相当する。
【0097】
以下の内部標準ガスクロ方法を用いることで、出発材料(例えばシクロヘキサン酸化工程の生成物の一部)から回収可能なアジピン酸ジメチルおよびヒドロキシカプロン酸メチルの量の推定値(本明細書ではまたアジピン酸ジメチルおよびヒドロキシカプロン酸メチルの“理論的に得ることができる”量とも呼ぶ)を得る。この方法では最初に信ぴょう性のあるカプロラクトン(これは分析方法の条件下でヒドロキシカプロン酸メチルを生じる)および信ぴょう性のあるアジピン酸(これは分析方法の条件下でアジピン酸ジメチルを生じる)を用いて較正を行う。如何なる場合でも、スベリン酸を内部標準として添加する。小型の丸底フラスコに磁気撹拌子、加熱用マントルおよび効率の良い冷却器を装備する。そのフラスコにa)カプロラクトンとアジピン酸を全体で約0.3−0.5g含有する一定分量の出発材料(典型的には約1g)、b)内部標準として0.125gのスベリン酸およびc)メタノール中10%の硫酸を10mL仕込む。その混合物を還流にまでもっていって30分間還流させる。その混合物を冷却した後、脱イオン水を50mL入れておいた分液漏斗に移す。前記反応フラスコを20mLのジクロロメタンで濯いで、それを前記分液漏斗と水に加える。前記分液漏斗を激しく振とうした後、放置することで相分離を起こさせることができる。下相を排出させて受け槽に入れる。前記分液漏斗に残存する水相に20mLずつのジクロロメタンを用いた抽出を更に2回受けさせる。各場合とも、その下相を排出させて受け槽に入れそして他のジクロロメタン抽出液と一緒にする。その一緒にしたジクロロメタン抽出液をDB−5または他の適切なGCカラムを用いたガスクロで分析する。GC面積の結果を通常の内部標準計算で重量分率に変換する。
【0098】
本明細書に報告する圧力は1平方インチゲージ当たりのポンド(psig)を指し、それには1気圧(1平方インチ当たり14.7ポンド)が含まれる。1気圧は1平方インチ絶対当たり14.7ポンドまたは1平方インチゲージ当たり0ポンドに相当する。真空(大気圧以下の圧力)をmm Hg絶対圧力で表し、これを本明細書では時にはmm Hgと省略する。
【0099】
合成および分析実施例
キシレンスルホン酸はAlfa Aesarから入手したものである。INVISTA
DBETM 二塩基性エステルはこはく酸ジメチルとグルタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルの混合物であり、これはINVISTA S.a r.l.から商業的に入手可能である。以下の実施例に示すDMAはアジピン酸ジメチルを表しそしてMHCは6−ヒドロキシカプロン酸メチルを表す。以下の実施例では重量%を組成物の重量パーセントの省略形として用いる。
【実施例1】
【0100】
COP酸に由来するエステル溶媒
2Lの丸底フラスコに715gのCOP酸(42重量%が水であり、6−ヒドロキシカプロン酸を約19.9重量%およびアジピン酸を約18.5重量%含有している可能性がある)および2.0gのキシレンスルホン酸触媒を仕込む。そのフラスコに磁気撹拌子、電気加熱用マントルおよび8インチのVigreuxカラムを装備した。前記Vigreuxカラムの上部に冷却器および留出液受け槽を取り付けた。
【0101】
段階1:脱水
当該混合物に脱水を減圧をかけながら加熱を行うことで受けさせ、水および低沸点物を塔頂から釜が120℃に到達しかつ塔頂圧力が65mm Hg絶対になるまで取り出すことで、320gの塔頂留出物を得る。
【0102】
段階2:エステル化
反応条件を135−137℃および大気圧下に維持しながらメタノールを反応混合物表面下の浸漬管に通して7−8cc/分の速度で送り込む。メタノールの添加を反応混合物の酸価が2.6mgのKOH/gに低下するまで継続する。全体で611gのメタノールを送り込みそして湿ったメタノールを塔頂から572g集めた。
【0103】
段階3:エステル交換
段階2で得た生成物を元々の2Lの丸底フラスコに入れながら、これに追加的2gのキシレンスルホン酸および990gのメタノールを加える。釜温度を約64−65℃にして前記混合物を大気圧下で全体的還流(即ち塔頂凝縮物を全く取り出すことなく)下にLC分析で当該混合物の組成が安定したことが示されるまで保持する。特に、ヒドロキシカプロン酸メチルの量が約3.5重量%から12重量%にまで高くなりかつアジピン酸ジメチルの量が約5%から12重量%にまで高くなる。そのようにMHCおよびDMAの濃度が劇的に高くなったのはオリゴマー状ポリエステルがメタノールによるエステル交換を受けた結果であり得、それによって、このエステル交換段階中に単量体であるDMAおよびMHCが生じる。
【0104】
段階4:中和
段階3が終了した時点の反応混合物の重量は1393gでありかつ酸価は1.13mgのKOH/gである。その反応混合物を元々の反応装置に入れながらそれに中和を測定酸性度をちょうど中和するに充分な量のナトリウムメチラート(メタノール中25重量%のナトリウムメチラートを6.05g)を添加することで受けさせる。ナトリウムメチラートを添加した後の酸価を再び測定した結果、0.05mgのKOH/gである。
【0105】
段階5:生成物の蒸留
段階4で中和させた生成物を元々の反応装置に入れながら、それに蒸留を大気圧下で迅速に受けさせることでメタノールおよびいくらか存在する低沸点物を除去する。釜温度を最初は約65℃にしたが、メタノールが除去されるにつれて温度が徐々に高くなる。そのメタノール除去段階を釜温度が123℃に到達した時点で止め、その時点で塔頂留出物として集められたメタノールと低沸点物は全体で921gである。1Lの丸底フラスコにメタノール除去で残存した残油を472g仕込んだ後、蒸留を前記と同じ8インチのVigreuxカラム、冷却器および留出液受け槽を用いて継続する。圧力を低くしかつ釜温度を高くしながら過渡的溜分である塔頂留出物を集める。釜温度が116℃に到達しかつ上部圧力が70mm Hg絶対になるまで全体で13gの過渡的溜分を集め、その時点で生成物の留出が始まった。釜温度が140℃に到達しかつ塔頂圧力が0.3mm Hg絶対にまで低下するまで全体で333gの生成物を塔頂で集める。蒸留後部の重量は117gでありそして真空装置冷トラップから低沸点物を約7g回収する。
【0106】
過渡的溜分のGC分析はそれのメタノール含有量が約98重量%であることを示している。
【0107】
生成物溜分のGC分析は、ヒドロキシカプロン酸メチルが約40重量%でアジピン酸ジメチルが約36重量%でグルタル酸ジメチルが約4.5重量%でこはく酸ジメチルが約1重量%で5−オキソカプロン酸メチルが約3.5重量%でバレロラクトンが約2重量%でレブリン酸メチルが約0.7重量%でガンマ−ブチロラクトンが約0.5重量%であることを示している。また、他の様々な化合物も存在する可能性はあるが、それらの完全な同
定も量化も行わない。生成物が示した酸価は約0.1mgのKOH/gであり、水含有量は約0.02重量%でありそしてヒドロキシ値は約211mgのKOH/gである。このように、約415gのCOP酸(無水ベース)からこの上に示した分析特徴を有する約333gのメチルエステル生成物がもたらされる。その回収したメチルエステル生成物の重量は使用したCOP酸の無水重量を基準にして約80重量%である。
【実施例2】
【0108】
実施例1で得たメチルエステル生成物の分溜
実施例1を同じ規模で繰り返すことで追加的に337gのメチルエステル生成物を得る。その2繰り返し調製で得たメチルエステル生成物を一緒にすることで複合メチルエステル生成物を生じさせる。その複合メチルエステル生成物はヒドロキシカプロン酸メチルを約35重量%、アジピン酸ジメチルを約40重量%、グルタル酸ジメチルを約4.4重量%、こはく酸ジメチルを約1.1重量%およびバレロラクトンを約2重量%含有することに加えて完全には同定も量化も行わない他の様々な成分も含有する。
【0109】
1リットルの丸底蒸留フラスコに609gの複合メチルエステル生成物を仕込んだ後、その底に、プレートが30枚備わっている1インチのOldershawカラムを取り付ける。そのカラムの上部に冷却器および還流分配器を取り付けることで還流比を調節する。その複合メチルエステル仕込み物の蒸留を139℃の釜温度/8mm Hg絶対の上部圧力で開始して169℃の釜温度/5mm Hg絶対の上部圧力で終了する。10塔頂画分を1取り出し当たり約2還流の還流比で取り出す。各塔頂画分の重量は約50gである。分析データを以下の表3に要約する。可能ならばGC方法に較正を信ぴょう性のある物質を用いて受けさせた。信ぴょう性のある物質を入手することができない場合にはGC面積%を用いて組成を報告した。
【0110】
【表3】

【実施例3】
【0111】
NVRに由来するエステル溶媒
2Lの丸底フラスコに500gのNVR(水が24重量%で酸価が248mgのKOH/gで6−ヒドロキシカプロン酸を約19.2重量%およびアジピン酸を約10.7重量%含有している可能性がある)および2.0gの98重量%硫酸を仕込む。そのフラスコに磁気撹拌子、電気加熱用マントルおよび8インチのVigreuxカラムを装備する。
前記Vigreuxカラムの上部に冷却器および留出液受け槽を取り付ける。
【0112】
段階1:脱水
前記混合物に加熱による脱水を大気圧下で受けさせ、水および低沸点物である塔頂留出物を釜が120℃に到達するまで取り出すことで塔頂留出物を127.4g得る。
【0113】
段階2:エステル化
反応条件を130−134℃および大気圧下に維持しながらメタノールを反応混合物表面下の浸漬管に通して7cc/分の速度で送り込む。メタノールの添加を反応混合物の酸価が3.1mgのKOH/gに低下するまで継続する。全体で465gのメタノールを送り込みそして湿ったメタノールを塔頂から500.2g集める。
【0114】
段階3:エステル交換
段階2で得た生成物を元々の2Lの丸底フラスコに入れながら、これに追加的2gの98重量%硫酸および1132gのメタノールを加える。釜温度を約64℃にして前記混合物を大気圧下で全体的還流(即ち塔頂凝縮物を全く取り出すことなく)下にLC分析で当該混合物の組成が安定したことが示されるまで保持する。特に、ヒドロキシカプロン酸メチルの量が約5.7重量%から9重量%にまで高くなりかつアジピン酸ジメチルの量が約1.5重量%から4.5重量%にまで高くなる。そのようにMHCおよびDMAの濃度が劇的に高くなったのはオリゴマー状ポリエステルがメタノールによるエステル交換を受けた結果であり得、それによって、このエステル交換段階中に単量体であるDMAおよびMHCがもたらされる。
【0115】
段階4:中和
段階3が終了した時点の反応混合物の重量は1454gでありかつ酸価は1.79mgのKOH/gである。その反応混合物を元々の反応装置に入れながらそれに中和を測定酸性度をちょうど中和するに充分な量のナトリウムメチラート(メタノール中25重量%のナトリウムメチラートを10.04g)を添加することで受けさせる。ナトリウムメチラートを添加した後の酸価を再び測定した結果、本質的にゼロであることが分かる。
【0116】
段階5:生成物の蒸留
段階4で中和させた生成物を元々の反応装置に入れながら、それに蒸留を大気圧下で迅速に受けさせることでメタノールおよびいくらか存在する低沸点物を除去する。メタノール除去段階の大部分の釜温度を約65−70℃のままにするが、メタノールの大部分が除去された時点で高くする。そのメタノール除去段階を釜温度が120℃に到達した時点で止め、その時点で塔頂留出物として集められたメタノールと低沸点物は全体で1102gである。1Lの丸底フラスコにメタノール除去で残存した残油を356g仕込んだ後、蒸留を前記と同じ8インチのVigreuxカラム、冷却器および留出液受け槽を用いて継続する。圧力を低くしかつ釜温度を高くしながら過渡的溜分である塔頂留出物を集める。釜温度が126℃に到達しかつ上部圧力が90mm Hg絶対になるまで全体で12gの過渡的溜分を集め、その時点で生成物の留出が始まる。釜温度が141℃に到達しかつ塔頂圧力が0.7mm Hg絶対にまで低下するまで全体で220gの生成物を塔頂で集める。蒸留後部の重量は117gでありそして真空装置冷トラップから低沸点物を約7g回収する。
【0117】
過渡的溜分のGC分析はそれのメタノール含有量が>80重量%であることを示している。
【0118】
生成物溜分のGC分析は、ヒドロキシカプロン酸メチルが約40重量%でアジピン酸ジメチルが約27重量%でグルタル酸ジメチルが約3重量%でこはく酸ジメチルが約0.5
重量%でシクロヘキサンジオールが約4重量%で5−ヒドロキシ吉草酸メチルが約4重量%で吉草酸メチルが約2重量%でバレロラクトンが約2重量%でレブリン酸メチルが約0.7重量%であることを示している。また、他の様々な化合物も存在しているが、それらの同定も量化も行わない。酸価は約0.07mgのKOH/gであり、水含有量は約0.04重量%でありそしてヒドロキシ値は約257mgのKOH/gである。このように、約380gのNVR酸(無水ベース)からこの上に示した分析特徴を有する約220gのメチルエステル生成物が得られる。
【0119】
(比較実施例1)
エステル交換および中和段階を省いてNVRからエステル溶媒を生じさせる試み
243.5gのNVRと60gのメタノールと1.22gのキシレンスルホン酸の混合物を500mLの丸底フラスコ(磁気撹拌子、Vigreuxカラム、冷却器および留出液受け槽を装備しておいた)に仕込む。その混合物の加熱を105℃に到達するまで行い、その間に110.2gのメタノールと水が塔頂で凝縮する。その時点で表面下のメタノール添加を1/8インチ(3mm)のテフロン管に通して開始したが、この場合、ISCOポンプを用いて添加速度を3.1mL/分に調節する。メタノールの添加を水とメタノールを塔頂で取り出しながら継続しつつ反応温度を約80−108℃に維持する。その反応混合物のサンプリングを定期的に行って分析を行うことで酸価を測定する。約3時間の時間枠に渡って酸価が7.1mgのKOH/gにまで降下しそして約412gが塔頂で凝縮する。本方法のエステル交換段階を省きかつ触媒の中和も行わない。圧力を50mm Hg絶対にまで低くしかつ釜温度を148℃にまで高くし、その間に少量の過渡的溜分(15.7g)を塔頂で集める。温度を更に高くして192℃にすると同時に圧力を18mm Hg絶対にまで低くしたが、追加的物質が塔頂留出することはない。この実施例ではエステル生成物が全く回収されない。
【0120】
(比較実施例2)
エステル交換および中和段階を省いてCOP酸からエステル溶媒を生じさせる試み
250gのCOP酸(水が約40重量%)と1.25gのキシレンスルホン酸の混合物を500mLの丸底フラスコ(磁気撹拌子、Vigreuxカラム、塔頂冷却器および留出液受け槽を装備しておいた)に仕込む。その混合物の加熱を釜温度が111℃に到達するまで行い、その間に81.3gの物質を塔頂で集める。メタノールを1/8インチ(3mm)のテフロン管に通して反応混合物の表面下に送り込んだが、この場合、ISCOポンプを用いて添加速度を3.0mL/分に調節する。その反応混合物のサンプリングを定期的に行いかつ分析を行うことで酸価を測定する。2.2時間後に酸価が3mgのKOH/gにまで降下する。この間に反応温度を111℃から131℃にまで上昇させ、そして追加的に326.3gの物質を塔頂で集める。本方法のエステル交換段階を省きかつ触媒の中和を行わない。前記Vigreuxカラムをプレートが10枚のOldershawカラムに置き換える。圧力を18mm Hg絶対にまで低くすると同時に温度を173℃にまで高くすることで少量(1.4g)の過渡的溜分を塔頂で得る。圧力を更に低くして<1mm Hg絶対にすると同時に温度を213℃にまで高くしたが、その間に塔頂で集めた物質は約20gのみである。その塔頂物質はアジピン酸ジメチルを約45重量%、グルタル酸ジメチルを約12重量%、こはく酸ジメチルを約11重量%、カプロラクトンを約7重量%、5−オキソカプロン酸メチルを約7重量%、レブリン酸メチルを約3.3重量%および他の成分を含有していた。この比較実施例で回収した生成物は仕込んだCOP酸の無水重量の約13%のみに相当し、その回収率は、実施例1における約80重量%の回収率に比べて非常に劣る。
【0121】
(比較実施例3)
追加的メタノールの連続的供給(本開示のエステル交換段階を省いて)を伴わせてCOP酸からエステル溶媒を生じさせる試み
400gのCOP酸(水が約40重量%)と1.10gのキシレンスルホン酸の混合物を1000mLの丸底フラスコ(磁気撹拌子、理論的に約8段の充填蒸留カラム、塔頂冷却器および留出液受け槽を装備しておいた)に仕込む。その混合物を加熱しながら圧力を釜条件が130℃で60mm Hg絶対に到達するまで低下させ、その間に156.3gの物質を塔頂で集める。その反応混合物を大気圧に戻した後、メタノールを1/8インチ(3mm)のテフロン管に通して反応混合物の表面下に送り込んだが、この場合、ISCOポンプを用いて添加速度を2.0mL/分に調節する。その反応混合物のサンプリングを定期的に行いかつ分析を行うことで酸価を測定する。5時間後に酸価が8.3mgのKOH/gにまで降下する。この間、反応温度を120℃から133℃の範囲内に維持しながら追加的に444.4gの物質を塔頂で集める。この比較実施例では追加的にメタノールを送り込み、その量は本開示のエステル交換段階で用いるであろう量に相当するが、但し、メタノールを一度に全部添加して本開示に従うエステル交換段階を実施するのではなく、メタノールを連続的に供給しながら物質を留出させて塔頂で集める。この比較実施例は、エステル化が完了した後に追加的メタノールを使用することのみを示すのではなく、むしろ追加的メタノールを用いて生成物の収率を有意に改善する方法を示そうとするものである。メタノールの供給速度を0.87mL/分にまで低くすると同時に反応温度を126−132℃の範囲内に維持して、最終的にメタノールを追加的に472mL(373g、無水COP酸供給材料の1.55 x重量)加えた。この添加期間中に物質を追加的に371g塔頂で集める。その反応混合物を冷却した後、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を9.95g添加することで触媒を中和する。中和後の酸価は0.39mgのKOH/gである。圧力を35mm Hg絶対にまで下げると同時に温度を167℃にまで高くすることで少量(9.9g)の過渡的溜分を塔頂で集める。圧力を35−37mm Hg絶対に維持しながら温度を228℃にまで上昇させたが、その間に塔頂で集めた物質は約47gのみである。その塔頂物質は単に6−ヒドロキシカプロン酸メチルを約6重量%含有することに加えてアジピン酸ジメチルを67重量%、グルタル酸ジメチルを約7重量%、こはく酸ジメチルを約2重量%、5−オキソカプロン酸メチルを約4重量%、レブリン酸メチルを約5重量%および他の成分を含有していた。この比較実施例で回収した生成物は仕込んだCOP酸の無水重量の約20%のみに相当し、その回収率は実施例1における約80重量%に比べて非常に劣りかつ比較実施例2の回収率である13%より高い度合は僅かのみである。その上、6−ヒドロキシカプロン酸メチルの濃度は、実施例1における40重量%に比べて、6重量%のみである。
【実施例4】
【0122】
COP酸から得たメチルエステル溶媒を樹脂用および接着剤用の溶媒として使用
実施例1に記述したようにして調製したメチルエステル溶媒に試験を数種の市販接着剤用の洗浄用溶媒として受けさせた。試験で用いた接着剤は全部小売で購入したものであり、それらはGorilla Glue(1点式ポリウレタン系接着剤)、GE Silicone II Household AdhesiveおよびLoctite(登録商標) Professional Extra Time Epoxy(“ポット寿命”が約60分の2点セットエポキシ)である。Gorilla GlueおよびGE Silicone II Household Adhesiveを受け取ったまま用いる。Loctite(登録商標) Professional Extra Time Epoxyをパッケージの指示に従って混合して30分間“硬化”させた後、洗浄試験を実施する。各試験毎に0.5gの接着剤と4.5gの溶媒を20mLのガラス瓶の中で混合した後、溶解度性質を記録する。接着剤が容易に溶解する場合、その試験品を後の観察の目的で取っておき、接着剤が容易には溶解しない場合、その試験品を穏やかな回転(〜5rpm)で16時間撹拌した後、溶解度を記録する。あらゆる試験をそのまま放置して行うことでゲル化を起こすか或は溶解が遅いかを検査する。1週間後に最終的な溶解度の観察を行って、以下の表に示す。接着剤を溶かす能力は家庭用および産業用の両方にとって有用である。ゲル化が起こると溶媒の再利用が妨害される可能性があることから、ゲル化を
起こすことなく接着剤を溶かす能力は産業的に重要であり、例えば接着剤または複合構造物の加工で用いられる同様な材料の製造または塗布で用いられる装置をフラッシュ洗浄する目的で溶媒を用いる時などに重要である。結果を以下の表4に示す。
【0123】
【表4】

【実施例5】
【0124】
COP酸から得たメチルエステル溶媒をケイ酸ナトリウム系結合剤系用硬化剤として使用
ケイ酸ナトリウム予混合物(パートA)の調製を1部のケイ酸ナトリウム(JT Baker、41°Baume)を1部の脱イオン水で希釈することで行う。各試験毎に、9.3gのパートAと0.7gの硬化剤(パートB)を20−mLのガラス瓶の中で混合する。各試験混合物の混合を前記ガラス瓶を約8rpmで転倒回転させることで行う。その混合物が初めて曇りを示す時、混合物全体が乳白色になる時および最後に混合物がガラス瓶の中でもはや動かなくなる点にまで内容物がゲル化する時までに経過した時間(分)を記録する。COP酸から得たメチルエステルをパートBとして用い、そしてパートBとして用いるDBETM 二塩基性エステルと比較する。DBETM 二塩基性エステルはこはく酸ジメチルとグルタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルの混合物であり、INVISTAから入手可能でありかつ様々なシリケート系結合剤系として商業的に有用である。以下に示す表5の結果は、COP酸から得たメチルエステルはケイ酸ナトリウム溶液の硬化に関してDBETM 二塩基性エステルと同様に機能することを示している。
【0125】
【表5】

【実施例6】
【0126】
COP酸に由来するn−プロピルエステル
n−プロピルエステルの調製をn−プロパノールをメタノールの代わりに用いる以外は実施例1に記述した一般的方法で実施する。
【0127】
従って、415gのCOP酸(水を32重量%、アジピン酸相当物を約16重量%および6−ヒドロキシカプロン酸相当物を約21重量%含有)と1.33gのキシレンスルホン酸(Nease CorporationのXSA−90)の混合物に脱水を62mm
Hg絶対圧力下133℃で受けさせることで144gの塔頂留出物を得る。
【0128】
n−プロパノールを浸漬管に通して前記反応混合物の表面下に3mL/分の速度で送り込みながら反応条件を125−140℃および大気圧に維持する。n−プロパノールの添加を酸価が2.8mgのKOH/gにまで低くなるまで継続する。湿った状態のn−プロパノールが凝縮し、それを塔頂で集める。全体で275gのn−プロパノールを送り込みそして湿った状態のn−プロパノールを塔頂で180g集める。
【0129】
その反応混合物を全体還流下に置きながら322gのn−プロパノールおよび1.33gの硫酸を加える。反応を大気圧下102−103℃の温度で全体還流下に9.2時間維持し、その間にオリゴマー状エステルが所望の単量体n−プロピルエステルに変化する。
【0130】
前記シーケンスの結果として得た反応混合物の重量は643gでありかつ酸価は3mgのKOH/gである。この混合物に中和をメタノール中25重量%のナトリウムメチラート溶液を8.5g添加することで受けさせる。中和後の酸価は0.12mgのKOH/gである。その中和させた反応混合物に蒸留を8インチのVigreuxカラムを用いて160−175mm Hg絶対圧力下で受けさせることでn−プロパノールおよび低沸点物を除去する。釜温度を最初は約61℃にしたが、n−プロパノールおよび低沸点物が塔頂留出するにつれて徐々に高くする。そのプロパノール回収段階を釜温度が160mm Hg絶対の圧力下で153℃に到達した時点で止める。圧力を下げて蒸留を継続する。11gの初留の取り出しを9mm Hgの絶対圧力下で釜温度が128℃になった時点で終了する。次に、生成物の塔頂留出が6mm Hg絶対圧力下123℃の釜温度で始まって1mm Hg絶対圧力下169℃釜温度で終了する。生成物の重量は194gでありそして蒸留後部の重量は116gである。
【0131】
生成物の分析は酸価が0.59mgのKOH/gで水含有量が0.03重量%であることを示している。主有機成分をGC−MSで同定しかつ量化をGCで面積パーセント分析を用いることで行う。5面積%以上の濃度で存在する成分は下記である:グルタル酸ジ−n−プロピル(6.22面積%)、アジピン酸ジ−n−プロピル(40.96面積%)および6−ヒドロキシカプロン酸n−プロピル(33.52面積%)。
【実施例7】
【0132】
COP酸に由来するエチルエステル
エチルエステルの調製をエタノールをメタノールの代わりに用いる以外は実施例1に記述した一般的方法で実施する。
【0133】
従って、415gのCOP酸(水を32重量%、アジピン酸相当物を約16重量%および6−ヒドロキシカプロン酸相当物を約21重量%含有)と1.33gのキシレンスルホン酸(Nease CorporationのXSA−90)の混合物に脱水を61mm
Hg絶対圧力下130℃で受けさせることで182gの塔頂留出物を得る。
【0134】
エタノールを浸漬管に通して前記反応混合物の表面下に2mL/分の速度で送り込みながら反応条件を113−130℃および大気圧に維持する。エタノールの添加を酸価が12.4mgのKOH/gにまで低くなるまで継続する。湿った状態のエタノールが凝縮し、それを塔頂で集める。全体で706gのエタノールを送り込みそして湿った状態のエタノールを塔頂で657g集める。
【0135】
その反応混合物を全体還流下に置きながら547gのエタノールおよび1.33gの硫酸を加える。反応を大気圧下79−80℃の温度で全体還流下に10.5時間維持し、その間にオリゴマー状エステルが所望の単量体エチルエステルに変化する。
【0136】
前記シーケンスの結果として得た反応混合物の重量は839gでありかつ酸価は13.01mgのKOH/gである。この混合物に中和をメタノール中25重量%のナトリウムメチラート溶液を44.1g添加することで受けさせる。中和後の酸価は0.05mgのKOH/gである。その中和させた反応混合物に蒸留を8インチのVigreuxカラムを用いて477−481mm Hg絶対圧力下で受けさせることでエタノールおよび低沸点物を除去する。釜温度を最初は約66℃にしたが、エタノールおよび低沸点物が塔頂留出するにつれて徐々に高くする。そのエタノール回収段階を釜温度が477mm Hg絶対の圧力下で118℃に到達した時点で止める。圧力を下げて蒸留を継続する。11.9gの初留の取り出しを23.4mm Hgの絶対圧力下で釜温度が133℃になった時点で終了する。次に、生成物の塔頂留出が約1mm絶対圧力下133℃の釜温度で終了する。生成物の重量は134gでありそして蒸留後部の重量は126gである。
【0137】
生成物の分析は酸価が0.27mgのKOH/gで水含有量が0.03重量%であることを示している。主有機成分をGC−MSで同定しかつ量化をGCで面積パーセント分析を用いることで行う。5面積%以上の濃度で存在する成分は下記である:グルタル酸ジエチル(5.18面積%)、アジピン酸ジエチル(41.97面積%)および6−ヒドロキシカプロン酸エチル(34.86面積%)。
【実施例8】
【0138】
COP酸に由来するイソプロピルエステル
イソプロピルエステルの調製をイソプロパノールをメタノールの代わりに用いる以外は実施例1に記述した一般的方法で実施する。
【0139】
従って、415gのCOP酸(水を32重量%、アジピン酸相当物を約16重量%および6−ヒドロキシカプロン酸相当物を約21重量%含有)と1.33gのキシレンスルホン酸(Nease CorporationのXSA−90)の混合物に脱水を56mm
Hg絶対圧力下147℃で受けさせることで183gの塔頂留出物を得る。
【0140】
イソプロパノールを浸漬管に通して前記反応混合物の表面下に2mL/分の速度で送り込みながら反応条件を125−131℃および大気圧に維持する。イソプロパノールの添加を酸価が5.24mgのKOH/gにまで低くなるまで継続する。湿った状態のイソプロパノールが凝縮し、それを塔頂で集める。全体で785gのイソプロパノールを送り込みそして湿った状態のイソプロパノールを塔頂で696g集める。
【0141】
その反応混合物を全体還流下に置きながら554gのイソプロパノールおよび1.33gの硫酸を加える。反応を大気圧下83℃の温度で全体還流下に9.7時間維持し、その間にオリゴマー状エステルが所望の単量体イソプロピルエステルに変化する。
【0142】
前記シーケンスの結果として得た反応混合物の重量は845gでありかつ酸価は2.7mgのKOH/gである。この混合物に中和をメタノール中25重量%のナトリウムメチラート溶液を8.82g添加することで受けさせ、それによって酸価が0.78mgのKOH/gにまで低下する。ナトリウムメチラート溶液を追加的に2.54g添加すると酸価が更に低くなって0.43mgのKOH/gになる。最後に、1.42gのナトリウムメチラート溶液を添加した後、蒸留を開始する。その中和させた反応混合物に蒸留を8インチのVigreuxカラムを用いて215−230mm Hg絶対圧力下で受けさせることでイソプロパノールおよび低沸点物を除去する。釜温度を最初は約53℃にしたが、
イソプロパノールおよび低沸点物が塔頂留出するにつれて徐々に高くする。そのイソプロパノール回収段階を釜温度が215mm Hg絶対の圧力下で130℃に到達した時点で止める。圧力を低くして蒸留を継続して行う。6.5gの初留の取り出しを約1mm Hgの絶対圧力下で釜温度が111℃になった時点で終了する。次に、生成物の塔頂留出が1mm Hg絶対圧力下で釜温度が146℃に到達するまで起こる。生成物の重量は61gでありそして蒸留後部の重量は216gである。
【0143】
生成物の分析は酸価が0.70mgのKOH/gで水含有量が0.02重量%であることを示している。主有機成分をGC−MSで同定しかつ量化をGCで面積パーセント分析を用いることで行う。5面積%以上の濃度で存在する成分は下記である:グルタル酸ジイソプロピル(7.47面積%)、アジピン酸ジイソプロピル(49.63面積%)および6−ヒドロキシカプロン酸イソプロピル(21.77面積%)。
【0144】
最終用途実施例
(最終用途実施例1)−溶媒
本開示の組成物は溶媒として用いるに有用である。例えば、本開示の組成物は塗料、インク、接着剤、シーラント、複合材料および結合剤系などに入れる溶媒として使用可能である。結合剤系の例には、耐火物製造で用いられる結合剤(例えばVesuviusブランドの結合剤系)が含まれる。
【0145】
また、本開示の組成物は鋳物結合剤系で用いられる樹脂系、例えばエポキシ、フェノキシ、スチレン(共重合体、例えば無水マレイン酸またはアクリロニトリルとの共重合体などを包含)、アクリルまたはメタアクリル、ポリビニルブチラール、フッ化ビニリデン、ビニル樹脂(例えば塩化ビニル、酢酸ビニルなど)、ポリウレタンおよびポリウレタン系およびフェノール樹脂など用の有用な溶媒でもあり得る。
【0146】
本開示の組成物はポリウレタン塗料用の溶媒、特にポリウレタン加工および塗布装置(例えばPU塗料、発泡体など)洗浄用の溶媒として有用であり得る。
【0147】
塗料、インク、接着剤、シーラント、複合材料および結合剤系で使用可能な様々な樹脂から混合物を生じさせる。各混合物の調製を0.5gの樹脂と4.5gの本開示のエステル溶媒を20mLのガラス瓶の中で一緒にすることで実施する。各混合物の穏やかな撹拌を低速(5−10rpm)の転倒回転で37時間実施する。次に、各混合物を目で評価することで当該樹脂が溶解している度合を決定して等級を付けるが、ここで、1は、重合体が完全に溶解していることを示し、2は、ほぼ完全に溶解していることを示し、3は、ある程度溶解していることを示し、そして4は、ほとんどまたは全く溶解していないことを示す。結果を表6に要約したが、本開示のエステル溶媒は幅広く多様な樹脂用の溶媒として幅広く利用可能であることが分かる。
【0148】
【表6】

【0149】
(最終用途実施例2)−反応性希釈剤
本開示の組成物は、ポリウレタン系(塗料および鋳造)用の反応性希釈用溶媒として用いるに有用であり得る。
【0150】
2点セットの鋳物用ポリウレタン系結合剤系で用いられるフェノール樹脂を本開示のエステル溶媒に溶解させた後、イソシアネートと通常様式で反応させることで硬化した結合剤を生じさせる。比較の目的で、同じフェノール樹脂を同じ量の通常の非反応性溶媒、例えば二塩基性エステル(DBETM 二塩基性エステル、INVISTAから入手可能)に溶解させた後、イソシアネートと同じ通常様式で反応させることで硬化した結合剤を生じさせる。前記結合剤を完全に硬化させる。硬化した結合剤の各々にメタノールを用いた抽出を受けさせた後、その抽出液を分析することで、その硬化した結合剤に残存する遊離溶媒(本開示のエステル溶媒またはDBETM 二塩基性エステル)の量を決定する。遊離溶媒の量は本開示のエステル溶媒の場合の方がDBETM 二塩基性エステルの場合よりも少ないことが分かる。
【0151】
ポリウレタン塗料の構築を本開示のエステル溶媒を用いて行う。比較塗料の構築を同じ
量のDBETM 二塩基性エステルを用いて行う。各塗料配合物をVOC含有量に関してEPA方法24で評価する。本開示のエステル溶媒を用いて作成した配合物のVOC含有量の方がDBETM 二塩基性エステルを用いて作成した配合物のそれよりも低いことが分かる。
【0152】
如何なる理論でも範囲を限定するものでないが、本開示の溶媒に存在するヒドロキシル基はポリウレタン系結合剤系もしくは塗料の成分と反応し、それによって結合剤または塗料の中に固定されるが、そのようなことは通常(非反応性)の溶媒、例えばDBETM 二塩基性エステルを用いた時には起こらないと考えている。
【0153】
(最終用途実施例3)−洗浄用溶媒
本開示の組成物は洗浄用溶媒として用いるに有用であり得る。例えば、本開示の組成物を用いてこの上に挙げた樹脂または樹脂含有製品の製造、加工、混合または塗布で用いられる装置を洗浄することができる。
【0154】
金属製ナイフを用いてポリウレタン系接着剤を広げた後、本開示のエステル溶媒に浸漬して穏やかに撹拌する。ポリウレタン系接着剤が本エステル溶媒に溶解することで、前記ナイフから除去される。本エステル溶媒は液状のままであることで再使用可能である。
【0155】
(最終用途実施例4)−重合体の分離および再利用用の溶媒
本開示の組成物は、重合体の分離および再利用用の溶媒として用いるに有用であり得る。
【0156】
Ultem 1000ポリエーテルイミドとPhenoxy PKHH樹脂の混合物を本開示のエステル溶媒で処理する。前記Phenoxy PKHH樹脂は完全に溶解するが、Ultemは溶解しないままであることが分かる。そのUltemを簡単な濾過で回収する。溶解性が異なる重合体の他の組み合わせを本開示のエステルに入れることで分離を同様な様式で実施することができる。
【0157】
(最終用途実施例5)−制御酸機能放出剤
本開示の組成物は制御酸機能放出剤、例えば下記用の硬化剤などとして用いるに有用であり得る:
a)ケイ酸ナトリウム系結合剤系および鋳造で用いられるケイ酸ナトリウム系結合剤、
b)土壌安定化および化学的注入で用いられるケイ酸ナトリウム系結合剤、
c)掘削流体(例えば米国特許第7226895号(引用することによって本明細書に組み入れられる))で用いられるケイ酸ナトリウム物質、および
d)金属廃棄物含有物質を結合させてブリケットにする時に用いられるケイ酸ナトリウム系結合剤(WO200216659(引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている如き)。
【0158】
(最終用途実施例5A)−砂
4.65gのケイ酸ナトリウム溶液と4.65gの水と0.7gの本開示のエステル溶媒の混合物で45.5gの“標準的”Ottawa砂を均一に覆った後、それを硬化させると、結果として、形状を保持しているがまだ脆い状態の結合した砂の塊がもたらされる。水の使用量を少なくする(または水を使用しない)と脆い度合が低い強力な結合物がもたらされる。
【0159】
(最終用途実施例5B)−金属のブリケット
ケイ酸ナトリウムと本開示のエステル溶媒の混合物を金属スクラップ(研磨屑、旋盤削り屑およびやすり屑を含有)の混合物と一緒にした後、鋳型に入れて密に圧縮することで
硬化させる。その結果としてもたらされたブリケットは取り扱いが容易でありかつ価値有る金属を回収する目的で再利用/再溶融可能である。
【0160】
(最終用途実施例5C)−土壌の安定化
ケイ酸ナトリウムと水と本開示のエステル溶媒の混合物を多孔質もしくは顆粒状の土壌の中に加圧下で注入した後、硬化させる。その結果としてケイ酸塩で強化された土壌部分は向上した強度および剛性を有することに加えて透過性が低下したことで、水および他の液体の流れを邪魔する地下遮蔽物として有用でありかつ掘削部が崩壊しないようにそれを安定化させる手段として有用である。
【0161】
(最終用途実施例5D)−土壌の安定化
ケイ酸ナトリウムと水と本開示のエステル溶媒の混合物を掘削もしくは穴開けすべき土の多孔質部分の中に注入する。そのケイ酸ナトリウムが硬化した後、掘削または穴開けを継続した時に前記土の多孔質部分が崩壊に対してより高い抵抗を示すようになる。
【0162】
(最終用途実施例5E)−掘削流体
掘削流体系の調製を本開示のエステル溶媒を米国特許第7,226,895号(引用することによって本明細書に組み入れられる)の“エチルエステル”の代わりに用いる以外は米国特許第7,226,895号の実施例1に従って実施する。米国特許第7,226,895号の実施例1に記述されている如き試験を行うことで、本開示のエステルを用いた配合物は米国特許第7,226,895号の実施例1に示されている候補配合物と同様な性能を示すことが分かる。
【0163】
(比較最終用途実施例5F)−安定化性能
ケイ酸ナトリウムと水と本開示の組成物Cの混合物を多孔質もしくは顆粒状の土壌の中に加圧下で注入した後、硬化させる。この手順をケイ酸ナトリウムと水の混合物を用いるが、DBETM 二塩基性エステルの代わりにグルタル酸ジメチル、グリセロールジアセテート、エチレングリコールジアセテートおよびグリセロールトリアセテート系硬化剤を用いて繰り返す。6試験の結果は全部が結果としてもたらされたケイ酸塩強化土壌部分が向上した強度および剛性を有しかつ透過性が低下したことで水および他の液体の流れを邪魔する地下遮蔽物として有用でありかつ掘削部が崩壊しないようにそれを安定化させる手段として有用であることを示している。
【0164】
(最終用途実施例6A)−単量体
1部(モル)のジメチルテレフタレートと2部のジエチレングリコールと0.25部の本開示のエステル溶媒と0.5重量%のジブチル錫ジラウレート(エステル化用触媒)の混合物を190℃に加熱する。圧力を段階的に下げて100mm Hg絶対にする。エステル化反応によって放出されたメタノールを蒸気として取り出して凝縮させる。その結果として得た反応生成物はポリウレタンで用いるに有用な混合芳香−脂肪ポリエステルポリオールである。
【0165】
(最終用途実施例6B)−単量体
1重量部の1,4−ブタンジオールと3.39重量部の本開示のエステル溶媒と130ppm(重量)(反応体の重量を基準)のテトライソプロピルチタネート(エステル化用触媒)の混合物を182℃に加熱する。エステル化反応によって放出されたメタノールを蒸気として取り出して凝縮させる。反応温度を約180℃に約6時間維持しながら圧力を段階的に下げて6mm Hg絶対にし、その間に追加的反応メタノールを取り出して凝縮させる。その結果として得た反応生成物はポリウレタンで用いるに有用な脂肪ポリエステルポリオールである。その生成物は20℃で液状でありそしてヒドロキシル値は60mgのKOH/gでありかつ60℃における粘度は602cStである。
【0166】
(最終用途実施例6C)−単量体
1重量部のネオペンチルグリコールと3.10重量部の本開示のエステル溶媒と0.0002重量部のジブチル錫ジラウレート(エステル化用触媒)の混合物を大気圧下で191℃に加熱する。エステル化反応によって放出されたメタノールを蒸気として取り出して凝縮させる。反応温度を約185から190℃に約6時間維持しながら圧力を段階的に下げて約30mm Hg絶対にし、その間に追加的反応メタノールを取り出して凝縮させる。その結果として得た反応生成物はポリウレタンで用いるに有用な脂肪ポリエステルポリオールである。ヒドロキシル値は44mgのKOH/gでありかつ60℃における粘度は441cStである。色はPt/Coスケールで120であり、この値は、同様な反応条件下で生じさせたブタンジオール−カプロラクトンポリオール(以下の比較実施例6D)が示したそれと同じである。しかしながら、この反応生成物は20℃で液状であったが、比較カプロラクトン生成物は固体である。
【0167】
(最終用途比較実施例6D)
1重量部の1,4−ブタンジオールと21.20重量部のカプロラクトン(Aldrichのカタログ番号704067)と0.25重量%の量のジブチル錫ジラウレート(エステル化用触媒)の混合物を大気圧下193℃に加熱する。反応温度を約190℃に約2時間維持しながら圧力を段階的に下げて49mm Hg絶対にする。その結果として得た反応生成物は脂肪ポリエステルポリオールである。この生成物は20℃で固体であり、ヒドロキシル値は57mgのKOH/gでありかつ60℃における粘度は553cStである。色はPt/Coスケールで117である。
【0168】
(最終用途実施例6E−6Q)
最終用途実施例6Bから6Dに記述した一般的手順に従ってポリオールの調製を1,4−ブタンジオールと本開示のエステル溶媒を用いるが1,4−ブタンジオールとエステルの相対的量を変えて実施することでヒドロキシル値が異なる(分子量が異なることの指標である)ポリオールを得る。実施例6E−6J、6Pおよび6Qは、本開示のエステル溶媒を用いて生じさせたポリオールに相当する。同じ手順を用いて1,4−ブタンジオールと様々な比較出発材料から様々な比較ポリオールを調製したが、その様々な出発材料に、カプロラクトン、アジピン酸ジメチル(INVISTAのDBETM−6 二塩基性エステル)およびこはく酸ジメチルとグルタル酸ジメチルとアジピン酸ジメチルの混合物(INVISTAのDBETM 二塩基性エステル)を含める。そのような比較実施例を表7に要約する。比較実施例C6KおよびC6Lではブタンジオールアジペートポリオールがもたらされる。比較実施例C6M−C6Oでは混合ブタンジオールスクシネート−グルタレート−アジペートポリオールがもたらされる。比較実施例C6Rではブタンジオールカプロラクトンポリオールがもたらされる。
【0169】
【表7】

【0170】
前記結果により、ヒドロキシル値が一定の場合、本開示のエステルから生じさせたポリオールが示す粘度の方がアジピン酸エステルから生じさせたポリオール(DBETM−6
二塩基性エステルから生じさせた)が示す粘度よりもかつ混合アジピン酸エステル/グルタル酸エステル/こはく酸エステル(混合アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルおよびこはく酸ジメチル、即ちDBETM 二塩基性エステル)から生じさせたポリオールが示す粘度よりも低いことは明らかである。また、60℃における粘度もカプロラクトンが基になったポリオールのそれに匹敵するが、本開示のエステルから生じさせたポリオールは室温で液状である一方、カプロラクトンが基になったポリオールは室温で固体である。
【0171】
(最終用途実施例7A)−ペンキ除去剤
本開示の組成物はペンキ除去剤の成分として用いるに有用であり得る。それらはペンキおよび塗料を様々な表面から除去するための配合物で使用可能である。
【0172】
松板をラテックス(水が基になった)エナメルで被覆する。別の松板をアルキド(油が基になった)エナメルで被覆する。各被覆物を完全に硬化させた後、本開示のエステル溶媒で処理する。その被覆物が柔らかくなることで、それを木からこすり落として除去することが可能になる。
【0173】
(最終用途実施例7B)−フォトレジストストリッパーおよび落書き除去剤
本開示の組成物は電子機器製造におけるフォトレジストストリッパーとして用いるに有用でありかつまた落書きを除去する目的でも使用可能である。
【0174】
黒色マジックインキ(Marks−A−Lot(登録商標)ブランドのマジックインキ)でプラスチック片に書き込みを行うことで公共表面上の落書きを模擬する。本開示のエステル溶媒をその落書き表面に噴霧する。黒色インキが溶解して浮き上がることで、タオルでこすってそれを除去することが可能になる。
【0175】
(最終用途実施例8)−洗浄剤
本開示の組成物は消費者、企業および産業用洗浄剤、脱脂洗浄剤および硬質表面洗浄剤として用いるに有用であり得る。
【0176】
9部(重量)の本開示のエステル溶媒と9部のエトキシル化C9−C11アルコール(Tomadol 91−8)と9部のトリプロピレングリコールモノメチルエーテルと2部のアジピン酸と71部の水が入っている溶液を生じさせる。この混合物を用いて家庭の汚れを硬質表面から除去するが、そのような汚れには、浴槽およびシャワーに通常見られる硬水/石鹸カス沈着物が含まれる。
【0177】
(最終用途実施例9)−軟質表面洗浄剤
本開示の組成物は軟質表面洗浄剤(カーペット染み抜き剤、洗濯染み前処理剤)として用いるに有用であり得る。
【0178】
塗装時に偶然に起こり得るようにカーペットの一部を壁用ラテックスペンキで汚す。そのペンキを乾燥させると通常のカーペット洗浄剤を用いたのでは除去が困難になる。そのペンキ染みに本開示のエステル溶媒を付けることで前処理を行う。そのペンキが軟化することで、それを通常のカーペット洗浄剤で容易に除去することが可能になる。
【0179】
(最終用途実施例10)−インク洗浄剤/除去剤
本開示の組成物はインク洗浄剤またはインク除去剤として用いるに有用であり得る。
【0180】
アマニ油が基になった石版インク(Branden Sutphin K0650VF
Hi Gloss Dense Black)をセラミック製タイルに付けて60℃で16時間硬化させる。
【0181】
少量の本開示のエステル溶媒をその硬化したインク被覆物に付ける。インクが溶解する。
【0182】
少量の本開示のエステル溶媒を不織タオルに均一に付けることで湿った雑巾を生じさせる。その湿った雑巾でその硬化したインクを穏やかにこする。インクが溶解して除去される。
【0183】
(最終用途実施例11)−混ぜ物無しエステル溶媒を用いた比較
表1の組成物範囲Eに本開示の溶媒の組成を示す。実施例3で得たメチルエステル生成物は組成物範囲Eの範囲内の溶媒組成物の例である。最終用途実施例11では、メチルエステル溶媒(実施例3)が示す性能を下記の市販溶媒のそれと比較する:(a)ISOPARTM Mブランドの高沸点脂肪溶媒(ExxonMobil Chemical Company(Baytown、テキサス、米国)が製造)、(b)混ぜ物無しヒドロキシカプロン酸メチル、および(c)混ぜ物無しアジピン酸ジメチル。
【0184】
アマニ油が基になった石版インク(Branden Sutphin K0650VF
Hi Gloss Dense Black)をセラミック製タイルに付けて60℃で16時間硬化させる。
【0185】
その硬化させたインク被覆物に各溶媒を少量加える。メチルエステル溶媒(実施例3)ばかりでなく混ぜ物無しのヒドロキシカプロン酸メチルおよび混ぜ物無しのアジピン酸ジメチルもその硬化したインク被覆物を有効に溶かす。高沸点の脂肪溶媒(a)は前記インクを有効には溶かさない。
【0186】
少量の各溶媒を不織タオルに均一に付けることで湿った雑巾を生じさせる。その湿った雑巾でその硬化したインクを穏やかにこする。再び、メチルエステル溶媒(実施例3)ばかりでなく混ぜ物無しのヒドロキシカプロン酸メチルおよび混ぜ物無しのアジピン酸ジメチルもその硬化したインク被覆物を有効に溶かす。高沸点の脂肪溶媒(a)は前記インクを有効には溶かさない。
【0187】
メチルエステル溶媒(実施例3)の性能が高度に精製された混ぜ物無しヒドロキシカプロン酸メチルおよび混ぜ物無しアジピン酸ジメチルが示す性能と同等であることは驚くべきことである、と言うのは、メチルエステル溶媒(実施例3)に必要な精製度合は比較的低くかつアルコールを含有するからである。
【0188】
本明細書では比率、濃度、量および他の数値データを範囲形式で表すことがあり得ることを注目すべきである。そのような範囲形式は便利さおよび簡潔さの目的で用いると理解されるべきであり、従って、当該範囲の限界として明らかに示す数値が含まれるばかりでなくまたあたかも各数値および部分的範囲に“約‘x’から約‘y’”が含まれるようにその範囲内に包含される個々の数値または部分的範囲の全部が含まれると柔軟な様式で解釈されるべきである。
【0189】
この上で行った開示は、本開示の態様をどのようにして使用しかつ適用することができるかを例示する具体的態様の説明を構成するものである。そのような態様は単に例示である。本開示の態様をこれの最も幅広い面として以下の請求項で更に定義する。本請求項および本明細書で用いる条件は本明細書に記述する本開示の変法として解釈されるべきである。本請求項をそのような変法に限定するものでなく、本明細書に示す開示の範囲内に暗黙に入る本開示の全ての範囲が含まれるとして読まれるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステルを含有して成る組成物であって、シクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部である下記:
水抽出液(水洗浄液)、
濃水抽出液(COP酸)、
非揮発性残留物(NVR)、および
これらの組み合わせ、
から成る群より選択した遊離酸官能基を有する生成物を含む出発材料に、
i)前記生成物が有する遊離酸官能基を単量体エステルおよびオリゴマー状エステルに変化させ、そして
ii)オリゴマー状エステルを単量体エステルに変化させる、
段階を包含する工程を適用することで得た組成物。
【請求項2】
前記エステルがヒドロカルビルエステルである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記エステルがメチルエステルである請求項1記載の組成物。
【請求項4】
更に下記:
iii)シクロヘキサン酸化工程からもたらされた生成物の一部に脱水を受けさせる、
段階も含んで成る請求項1から3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
更に下記:
iv)触媒の中和を行い、そして
v)組成物を蒸留で単離する、
段階も含んで成る請求項1から4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成る溶媒。
【請求項7】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成る硬化剤。
【請求項8】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成る掘削泥水。
【請求項9】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成るペンキ除去剤。
【請求項10】
電子機器の製造で用いるに適したフォトレジストストリッパーであって、請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成るフォトレジストストリッパー。
【請求項11】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成る落書き除去剤。
【請求項12】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成る洗浄剤。
【請求項13】
消費者用途、企業用途および産業的洗浄用途から成る群より選択される少なくとも1種の最終用途で用いるに適するように構築された請求項12記載の洗浄剤。
【請求項14】
樹脂を溶解させる方法であって、前記樹脂を請求項1から5記載の組成物の中の1種以上を含有して成る溶媒と接触させることを含んで成る方法。
【請求項15】
前記樹脂が塗料、インク、接着剤、シーラント、複合材料および結合剤系から成る群より選択される少なくとも1種の成分である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂がフェノール樹脂を含んで成る請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記フェノール樹脂が耐火性結合剤系または鋳物結合剤系で用いるに適する請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記樹脂をフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン樹脂、スチレン樹脂と無水マレイン酸、アクリロニトリルまたは各々の組み合わせの共重合体、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フッ化ビニリデンを包含するハロゲン化ビニリデン樹脂、および塩化ビニル、酢酸ビニルを包含するビニル樹脂およびこれらの組み合わせから成る群より選択する請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記樹脂をウレタン、ウレタン重合体およびウレタン共重合体から成る群より選択する請求項14記載の方法。
【請求項20】
脆い基質を硬化させる方法であって、
a)ケイ酸ナトリウムが入っている水溶液を前記脆い基質に加え、
b)請求項1から5記載の組成物の中の1種以上を前記ケイ酸ナトリウムが入っている水溶液と一緒にか、個別にか或は順に個別に加えることで前記ケイ酸ナトリウムの硬化をそれが前記脆い基質と接触した状態で起こさせる、
段階を含んで成る方法。
【請求項21】
前記脆い基質が鋳物用結合剤の成分である請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記脆い基質を土壌、グラウト、掘削流体およびブリケットから成る群より選択する請求項20記載の方法。
【請求項23】
下記:
a)シクロヘキサン酸化工程から回収した下記:
水抽出液(水洗浄液)、
濃水抽出液(COP酸)、
非揮発性残留物(NVR)、および
これらの組み合わせ、
から成る群より選択した遊離酸官能基を有する生成物を包含する出発材料を準備する、
段階を含んで成り、かつ
b)下記:
i)前記生成物が有する遊離酸官能基を単量体エステルおよびオリゴマー状エステルに変化させ、そして
ii)オリゴマー状エステルを単量体エステルに変化させる、
段階、および
c)前記段階(b)(i)および(b)(ii)の中の少なくとも一方の段階からヒドロキシカプロン酸メチルおよびアジピン酸ジメチルを含有して成る組成物を回収する、
段階を包含する方法。
【請求項24】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成る前駆体から生じさせたポリエステル。
【請求項25】
請求項1から5の少なくとも1項記載の組成物を含有して成る前駆体から生じさせたポリエステルポリオール。
【請求項26】
前記脆い基質が金属廃棄物を含有して成る請求項20記載の方法。
【請求項27】
前記硬化方法が金属廃棄物含有ブリケットをもたらす請求項20記載の方法。
【請求項28】
更に共溶媒も含有して成る請求項6記載の溶媒。
【請求項29】
前記共溶媒が3−エトキシプロピオン酸エチルである請求項28記載の溶媒。
【請求項30】
前記溶媒に共溶媒を含有させる請求項14記載の方法。
【請求項31】
前記共溶媒が3−エトキシプロピオン酸エチルである請求項30記載の方法。

【公表番号】特表2012−512876(P2012−512876A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542282(P2011−542282)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/067644
【国際公開番号】WO2010/071761
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】