説明

システムキッチン

【課題】 水栓周りからの万が一の漏水すら防止し、シンクの清掃性や利便性、美観の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】
本発明のシステムキッチン100は、上方に向かって開口が広くなる傾斜面212を一部に設けたシンク140と、傾斜面212に設けられた水栓142と、シンク140の底部214に設けられた排水口216と、水栓142と傾斜面212との連結位置218より下方に設けられたオーバーフロー孔234と、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクが設けられたシステムキッチンに関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンは、キッチンキャビネットにシンクが一体に組み込まれ、キッチンキャビネットの上面に載置されたワークトップのシンク後方にあたる位置に水栓が取り付けられていた。
【0003】
また、天板のシンク後部で壁面をなす垂直面に水栓を取り付け(例えば、特許文献1)、水栓の付け根部分に水を溜まり難くし、衛生的な技術も知られている。
【0004】
このような水栓は、その吐水口をシンクの上方に配する必要上、水栓本体がワークトップやベースから垂直に起立するとともに、スパウト(シャワー水栓の場合には、ヘッドホルダーおよびシャワーヘッド)がその水栓本体から斜め上方に向かって延設される構造となっている。そして、水栓本体の上部や側部に、吐水を制御するためのレバー又はハンドルが設けられている。
【特許文献1】特開2003−119850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者らは、システムキッチンにおけるシンクの内周面の一部に傾斜面を設け清掃性を向上させる技術を検討している。また、このように形成された傾斜面から水栓(カラン)を突設させ、水栓周りの清掃性および利便性を高める技術も併せて検討されている。このように水栓を設置することで、対面式のオープンキッチンの場合に、ダイニング側から水栓の根元を見えなくすることができ、美観が非常に向上する。
【0006】
通常、シンクは、全体がステンレスや樹脂等で一体的に形成されているので漏水の心配はないが、水栓を取り付けるための取り付け孔を傾斜面に切削することで、たとえ水栓と取り付け孔との間をパッキンで埋め、防水加工を施したとしても、漏水の可能性は残ってしまう。
【0007】
本発明は、従来のシンクの漏水の可能性に関する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、水栓周りからの万が一の漏水すら防止し、シンクの清掃性や利便性、美観の向上を図ることが可能な、新規かつ改良されたシステムキッチンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、上方に向かって開口が広くなる傾斜面を一部に設けたシンクと、傾斜面の、シンク上端より低い位置に設けられた水栓と、シンクの底部に設けられた排水口と、水栓と傾斜面との連結位置より下方に設けられたオーバーフロー孔と、を備えることを特徴とする、システムキッチンが提供される。
【0009】
本発明では、水栓がシンクの傾斜面に設けられるため、水栓の連結位置(設置位置)がシンクの縁より低くなる。従って、シンクに貯水すると連結位置が水没する虞がある。かかる水栓では、放水の有無を、機械的開閉動作を通じてユーザが直接操作するので、その動作に伴う外力を受けてしまう。従って、水栓と取り付け孔との間をパッキンで埋め、防水加工を施したとしても、漏水の可能性は残る。かかる水栓の連結位置より下方にオーバーフロー孔を設ける構成により、湯水の水位が水栓の連結位置までのぼる前に、湯水がオーバーフロー孔から排水され、水栓の水没を回避できる。こうして、水栓周りからの万が一の漏水すら防止し、清掃性や利便性、美観の向上を図ることが可能となる。ここで、湯水とは、湯を含む水等の液体をいう。
【0010】
また、オーバーフロー孔により、水栓における放水量が想定される通常の範囲内であれば、水位を一定に保つことができるので、調理器具等の洗浄で湯水を少しずつ排水したい場合や、熱を帯びた容器を水冷する場合等に上記設けられるオーバーフロー孔が有効に機能する。
【0011】
さらに、シンク内の貯水水位は、オーバーフロー孔によって制限されるので、シンクの縁を部分的に浅く設定することができ、例えば、洗面台のようにシンク前面を低く設定することも可能となる。
【0012】
オーバーフロー孔は、水栓と傾斜面との連結位置の直下に設けられるとしてもよい。
【0013】
かかる構成により、オーバーフロー孔が水栓に隠れ、シンクを見下ろす通常の視点では、そのオーバーフロー孔の存在を視認し難く、オーバーフロー孔によって美観を損なう虞もなくなり、シンク全体の美観および高級感の向上を図ることができる。
【0014】
水栓の連結部下方には、オーバーフロー孔を連結部前面で覆う凹部が形成されてもよい。
【0015】
オーバーフロー孔を傾斜面上の水栓の直下に設ける場合、水栓の連結部下方を、オーバーフロー孔を隠蔽するように予め凹形状に形成することが可能となる。かかる凹部を通じて、オーバーフロー孔をより視認し難くさせることで、シンク全体の美観および高級感をより向上させることができる。
【0016】
オーバーフロー孔に接続されたオーバーフロー管は、シンクの排水口または排水トラップに連通されるとしてもよい。
【0017】
かかる構成により、排水管を1つに纏めることができ、コスト低減およびメンテナンスの労力軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明のシステムキッチンによれば、水栓周りからの万が一の漏水すら防止し、シンクの清掃性や利便性、美観の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
(システムキッチン)
本発明の実施形態によるシステムキッチンとして、ここでは、特別な敷居を設けることなく、リビングとダイニングが1つの部屋で共存する対面式のオープンキッチンを挙げる。かかるオープンキッチンでは、対面式カウンタータイプのキッチンにより、家族や友人とのコミュニケーションがとりやすく、また、キッチン周辺でくつろいだ時間を過ごすことができる。ここで、システムキッチンは、シンク等のキッチン設備を機能的に一体化したものを指す。
【0021】
図1は、本実施形態によるシステムキッチン100の概略的な構成を説明するための外観斜視図である。かかるシステムキッチン100は、対面式カウンタ110と壁側戸棚120とに大別できる。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0022】
対面式カウンタ110には、シンク140と、シンク140に対して湯水を供給する水栓142と、加熱調理器144と、加熱調理器144からの湯気および熱を屋外に放出するレンジフード146と、煙および熱をレンジフード146に案内する半透明の案内板148と、ワークトップ150と、が設けられ、さらに、軽食やおやつ等を楽しめるカフェテーブル160と、複数の椅子162と、本を収納可能なマガジン収納部164と、を備えることができる。そして、カフェテーブル160はキッチン本体側からの照明に照らされる。
【0023】
ここで、水回りを形成するシンク140は、樹脂や、ステンレス鋼板等の金属を材料として用い、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等により水切り凹部や排水口と一体的に形成される。また、加熱調理器144は、ガスコンロや石油コンロを利用することができるが、図示したように上面に耐熱ガラス版やセラミック板を設けたIHヒータであってもよい。
【0024】
また、壁側戸棚120には、戸棚170と、大容量の壁側収納部172とが設けられ、壁側収納部172の上面は、戸棚170底面で発光する照明に照らされる。また、戸棚170の内部にも照明が設けられ、戸棚170の上面および前面に設けられた透明または半透明の板材を介して間接的に発光する。かかる光は、戸棚170が設置された壁面上方を柔らかく照らし、その壁面に広がる間接照明によって、高級感および美観を向上する。
【0025】
図2は、本実施形態のシステムキッチンの調理側面を説明するための外観斜視図である。ここで、システムキッチン100は、加熱調理器144のグリル部180と、複数のカウンタ収納部182と、複数の足下収納庫184と、シンク140における水切りメッシュプレート186と、引出190と、引出190に一体形成されたタオル掛け保護部材192と、タオル掛け194と、を含んでいる。
【0026】
また、水栓142のさらに奥には、当該システムキッチン100の長手方向に、例えば、40mm程度の段差からなるバックガード196が設けられる。かかるバックガード196により、システムキッチン100の対面から適度に手元を隠し、また、対面側への水じまいが良好となる。さらに、かかるバックガード196によって、キッチンのワークトップ150をドライゾーンとウェットゾーンに分離することができる。
【0027】
以下の実施形態では、かかる要素のうち、特にシンク140を挙げて説明する。当該シンク140は、例えば、アクリル系人工大理石で形成される。
【0028】
図3は、シンク140の外観を示した外観斜視図である。当該シンク140の奥には、上方に向かって開口が広くなる傾斜面212が設けられ、この傾斜面212の中央から水栓142が突設される。従って、水栓142はシンク140上端より低い位置に形成される。また、シンク140の底部214には排水口216が設けられ、さらに、水栓142と傾斜面212との連結位置218より下方にはオーバーフロー孔が設けられている。オーバーフロー孔は、後述する理由により、図示されない。
【0029】
図3に示したように、本実施形態では、清掃性や美観を向上する目的で、水栓142がシンク140の傾斜面212に設けられるため、水栓142の連結位置218がシンクの縁より低くなる。従って、シンクに貯水すると連結位置218が水没する虞がある。かかる水栓では、放水の有無を、機械的開閉動作を通じてユーザが直接操作するので、その動作に伴う外力を受けてしまう。従って、水栓142と取り付け孔との間をパッキンで埋め、防水加工を施したとしても、漏水の可能性は残る。
【0030】
そこで、本実施形態では、水栓142の連結位置218より下方にオーバーフロー孔を設ける。かかる構成により、湯水の水位が水栓の連結位置までのぼる前に、湯水がオーバーフロー孔から排水され、水栓142が水没するのを回避できる。こうして、水栓142周りからの万が一の漏水すら防止し、清掃性や利便性、美観の向上を図ることが可能となる。
【0031】
従来から、シンクの湯水の氾濫を防止するオーバーフローは存在したが、水栓との関係において位置を規定したものではなく、そもそも本実施形態のような水栓周りの漏水を防止するといった概念すら従来では存在しなかった。
【0032】
また、オーバーフロー孔により、水栓142からの放水量が想定される通常の範囲内であれば、水位を一定に保つことができるので、調理器具等の洗浄で湯水を少しずつ排水したい場合や、熱を帯びた容器を水冷する場合等に上記オーバーフロー孔が有効に機能する。
【0033】
さらに、シンク140内の貯水水位は、オーバーフロー孔によって制限されるので、シンク140の縁を部分的に浅く設定することができ、例えば、洗面台のようにシンク140前面を低く設定することも可能となる。
【0034】
このような、オーバーフロー孔は、連結位置218の下方であれば内周のいずれの面で行うこともできるが、本実施形態では、水栓142と傾斜面212との連結位置218の直下に設けることとする。
【0035】
かかる構成により、オーバーフロー孔が水栓142に隠れ、シンク140を見下ろす通常の視点では、そのオーバーフロー孔の存在を視認し難く、オーバーフロー孔によって美観を損なう虞もなくなり、シンク全体の美観および高級感の向上を図ることができる。
【0036】
図4は、図3のAA縦断面を示した縦断面図である。ここでは、水栓142の連結部230下方は、オーバーフロー孔234を連結部230前面で覆う凹部232が形成されている。
【0037】
オーバーフロー孔234を傾斜面212上の水栓142の直下に設ける場合、水栓142の連結部230下方を、オーバーフロー孔234を隠蔽するように予め凹形状に形成することが可能となる。かかる凹部232を通じて、オーバーフロー孔234をより視認し難くさせることで、シンク140全体の美観および高級感をより向上させることができる。
【0038】
ここで、凹部232は、シンク140長手方向にも開口するように形成される。凹部232がオーバーフロー孔234の周囲を完全に覆ってしまうと、オーバーフロー孔232内の空気の逃げ場がなくなり、シンク140側の水位が上がって圧力が高まったとしても凹部232に湯水が浸水してこない現象が生じる。本実施形態では、凹部232の形状をシンク140長手方向に連続して形成し、その開口によって空気の逃げ場を提供する。
【0039】
図4の構成において、シンク140の排水口216に蓋240をし、水栓142から所定量放水し続けるとシンク140内に湯水242が溜まる。しかし、その水位がオーバーフロー孔234に達すると、追加された湯水分の排水がオーバーフロー孔234を介して排出される。こうして、水栓142の取り付け孔244を水没させることなく、安心して湯水を利用することができる。
【0040】
次に、オーバーフロー孔234の排水システムについて説明する。
【0041】
図5は、シンク140の排水管の構成を示した外観斜視図である。かかる外観斜視図は、シンク140の裏側外観を示している。かかる図5の実施形態では、オーバーフロー孔234に接続されたオーバーフロー管250は、シンクの排水トラップ220に連通され、オーバーフロー孔234から排出した湯水は、排水口216の排水共々、フィルタリングされて排水管252に排出される。
【0042】
かかる構成により、排水管を1つに纏めることができ、コスト低減およびメンテナンスの労力軽減を図ることができる。
【0043】
上述した実施形態において説明したシステムキッチンによれば、水栓周りからの万が一の漏水すら防止し、シンクの清掃性や利便性の向上を図ることが可能となる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、シンクが設けられたシステムキッチンに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態によるシステムキッチンの概略的な構成を説明するための外観斜視図である。
【図2】本実施形態のシステムキッチンの調理側面を説明するための外観斜視図である。
【図3】シンクの外観を示した外観斜視図である。
【図4】図3のAA縦断面を示した縦断面図である。
【図5】シンクの排水管の構成を示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
100 システムキッチン
140 シンク
142 水栓
212 傾斜面
214 底部
216 排水口
218 連結位置
220 排水トラップ
230 連結部
232 凹部
234 オーバーフロー孔
250 オーバーフロー管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向かって開口が広くなる傾斜面を一部に設けたシンクと、
前記傾斜面の、前記シンク上端より低い位置に設けられた水栓と、
前記シンクの底部に設けられた排水口と、
前記水栓と前記傾斜面との連結位置より下方に設けられたオーバーフロー孔と、
を備えることを特徴とする、システムキッチン。
【請求項2】
前記オーバーフロー孔は、前記水栓と前記傾斜面との連結位置の直下に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のシステムキッチン。
【請求項3】
前記水栓の連結部下方には、前記オーバーフロー孔を該連結部前面で覆う凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のシステムキッチン。
【請求項4】
前記オーバーフロー孔に接続されたオーバーフロー管は、前記シンクの排水口または排水トラップに連通されていることを特徴とする、請求項1〜3に記載のシステムキッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−255574(P2008−255574A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95890(P2007−95890)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】