説明

シフトアクチュエータ、それを備えた車両、およびシフトアクチュエータの組立方法

【課題】パワーユニットの外部に配置されるシフトアクチュエータおよびそれを備えた車両において、組立時にシフトアクチュエータの中立位置を容易に確保することを可能にする。
【解決手段】シフトアクチュエータ75が搭載された自動二輪車は、変速機と、変速機の変速を行うシフト軸と、シフト軸と変速機とを覆うクランクケースと、を有している。シフトアクチュエータ75は、モータ77と、連結体を介してシフト軸に連結された出力軸81と、モータ77と出力軸81との間に介在するウォームギヤ80Aと、モータ77と出力軸81とウォームギヤ80Aとを支持するケース76と、ケース76に支持され、出力軸81の位置を検出するポテンショメータとを備えている。ウォームギヤ80Aは、モータ77から出力軸81への駆動力は伝達する一方、出力軸81からモータ77への駆動力は伝達しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の変速を行うシフトアクチュエータ、それを備えた車両、およびシフトアクチュエータの組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、変速機と、変速機の変速を行うシフトアクチュエータとを備え、変速機の変速を自動的に行うようにした車両が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された車両では、変速機はエンジンとともにエンジンユニット(パワーユニット)内に配置されている。一方、シフトアクチュエータは、エンジンユニットの外部に配置されており、ロッドおよびレバーからなるリンク機構を介して、変速機に連結されている。
【0004】
このように、シフトアクチュエータをエンジンユニットの外部に配置すると、シフトアクチュエータの設置自由度が大きくなり、車両のレイアウトの制約が少なくなる。また、シフトアクチュエータを車体の空いている部分に配置することにより、車両のコンパクトを図ることも可能となる。
【特許文献1】特開2003−320861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記車両では、シフトアクチュエータとエンジンユニット内の変速機のシフト軸とをリンク機構で連結しなければならないため、シフトアクチュエータの組立精度を十分高くしなければならないという課題があった。
【0006】
また、シフト軸は、一方向のみに回転するのではなく、シフトアップ方向およびシフトダウン方向の両方向に動くという特性を有している。そのため、正確な変速動作を行うために、シフトアクチュエータは、動作前に正確な中立位置に保持されていなければならない。ところが、特許文献1では、シフトアクチュエータの中立位置を確保することに関して、具体的な提案は何らされていない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パワーユニットの外部に配置されるシフトアクチュエータおよびそれを備えた車両において、組立時にシフトアクチュエータの中立位置を容易に確保することを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシフトアクチュエータは、複数のギヤを有する変速機と、前記変速機の変速を行うシフト軸と、前記シフト軸の一部が外部に露出するように前記シフト軸と前記変速機とを覆うケーシングと、を有するパワーユニットを備えた車両に搭載されるシフトアクチュエータであって、駆動源と、前記シフト軸の露出部に直接または間接的に連結された出力軸と、前記駆動源と前記出力軸との間に介在し、前記駆動源から前記出力軸への駆動力を伝達する一方、前記出力軸から前記駆動源への駆動力を伝達しない動力伝達機構と、前記駆動源と前記出力軸と前記動力伝達機構とを支持するハウジングと、前記ハウジングに支持され、前記出力軸の位置を検出する位置センサと、を備えたものである。
【0009】
なお、ここで「シフト軸」は、単一の部材に限らず、複数の部材が組み合わされたものであってもよい。そのため「シフト軸の露出部」には、様々な態様が考えられる。例えば、単一のシフト軸の一部がケーシングから突出し、その突出部がシフト軸の露出部となっていてもよい。また、シフト軸が、ケーシングの内部に配置されたシフト軸本体と、シフト軸本体と連結されかつケーシングの外部に突出した突出部とを含み、その突出部がシフト軸の露出部となっていてもよい。このように、ケーシングの外側から連結できる部分はすべて、ここで言う「シフト軸の露出部」に含まれる。
【0010】
また、本発明に係るシフトアクチュエータの組立方法は、前記シフトアクチュエータを車両に組み立てる組立方法であって、前記出力軸を所定の中立位置に位置づけた状態で、前記駆動源と前記出力軸と前記動力伝達機構と前記位置センサとを前記ハウジングに支持させるステップと、前記出力軸の中立位置と前記位置センサの基準位置とが合うように前記位置センサの調整を行うステップと、前記アクチュエータの前記ハウジングを前記車両の一部に固定するステップと、前記パワーユニットの前記シフト軸の露出部と前記アクチュエータの前記出力軸とを、連結体によって連結するステップと、を含む方法である。
【0011】
上記シフトアクチュエータによれば、駆動源と出力軸との間に、いわゆる反転防止機能(外部から力が加えられても回転しない機能。言い換えると、セルフロック機能)を有する動力伝達機構、すなわち、駆動源から出力軸への駆動力を伝達する一方、出力軸から駆動源への駆動力を伝達しない動力伝達機構が設けられている。そのため、ハウジングの取付に際して、外部から出力軸に力が加えられたとしても、いったん中立位置に位置づけられた出力軸が、上記外力によって位置ずれを起こすおそれはない。したがって、シフトアクチュエータの中立位置を容易に確保することが可能となり、シフトアクチュエータの組立精度を向上させることができる。また、上記シフトアクチュエータによれば、ハウジングを車両の一部に取り付ける前に、位置センサの調整を行うことができる。したがって、位置センサの検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、パワーユニットの外部に配置されるシフトアクチュエータおよびそれを備えた車両において、組立時にシフトアクチュエータの中立位置を容易に確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施形態に係る車両は自動二輪車10である。自動二輪車10は、骨格をなす車体フレーム11と、乗員が着座するシート16とを備えている。この自動二輪車10は、いわゆるモペット型の自動二輪車である。ただし、ここでいう「モペット型」は、単に車両の形状上の種類を表しているに過ぎず、車両の最高速度や排気量等を限定するものではなく、車両の大小等も何ら限定するものではない。また、本発明に係る車両は、モペット型の自動二輪車に限らず、シートの前方に燃料タンクが配置されるいわゆるモーターサイクル型等の他の形式の自動二輪車等であってもよく、自動三輪車、ATV等の他の鞍乗型車両等であってもよい。
【0015】
以下の説明では、前後左右の方向は、シート16に着座した乗員から見た方向を言うものとする。車体フレーム11は、ステアリングヘッドパイプ12と、ステアリングヘッドパイプ12から後方斜め下向きに延びる一本のメインフレーム13と、メインフレーム13の中途部から後方斜め上向きに延びる左右一対のシートレール14と、シートレール14よりも後方においてメインフレーム13から後方斜め上向きに延びる左右一対のバックステー15とを備えている。バックステー15は、メインフレーム13の後端部とシートレール14の中途部とに接続されている。ステアリングヘッドパイプ12には、フロントフォーク18を介して前輪19が支持されている。
【0016】
車体フレーム11の上方及び左右の側方は、主にメインカバー21aおよびサイドカバー21bによって覆われている。以下では、メインカバー21aおよびサイドカバー21bを併せて車体カバー21という。
【0017】
メインフレーム13の中途部には、下向きに突出した左右一対の第1エンジンブラケット22が設けられている。図示は省略するが、メインフレーム13の後端部には、それぞれ左右一対の第2エンジンブラケット及びリヤアームブラケットが設けられている。なお、以下の説明では、メインフレーム13等に設けられたブラケットは、車体フレーム11の一部をなすものとする。
【0018】
上記リヤアームブラケットは、メインフレーム13の後端部から下向きに突出している。リヤアームブラケットにはピボット軸86が設けられ、ピボット軸86にリヤアーム25の前端部が揺動自在に支持されている。リヤアーム25の後端部には、後輪26が支持されている。リヤアーム25の後半部は、クッションユニット27を介して車体フレーム11に懸架されている。
【0019】
自動二輪車10は、前輪19の上方及び後方を覆うフロントフェンダー31と、後輪26の後方斜め上側を覆うリヤフェンダー32とを備えている。また、自動二輪車10は、前述の車体カバー21に加えて、フロントカウル33と、左右のレッグシールド34とを備えている。
【0020】
車体フレーム11には、後輪26を駆動するパワーユニット28が支持されている。パワーユニット28は、クランクケース35と、クランクケース35から前向きまたは前方斜め上向きに延びるシリンダ43とを備えている。
【0021】
パワーユニット28の左側および右側には、フットレスト85が配置されている。左右のフットレスト85は、連結棒87と、この連結棒87に固定された取付板88とを介して、クランクケース35に支持されている。
【0022】
次に、図2および図3等を参照しながら、パワーユニット28の構成を説明する。パワーユニット28は、クランク軸30を有するエンジン29と、遠心クラッチ36と、変速動作の際に断続される変速クラッチ37と、変速機38とを備えている。なお、エンジン29の形式は何ら限定されないが、本実施形態では、エンジン29は4サイクル単気筒エンジンである。
【0023】
図3に示すように、遠心クラッチ36は、クランク軸30の右端部に取り付けられている。図示は省略するが、遠心クラッチ36は、クランク軸30に固定されたクラッチボスと、クラッチハウジングとを備えている。遠心クラッチ36は、アイドリング時には遮断され、走行時には接続される。すなわち、遠心クラッチ36は、クランク軸30の回転数(エンジン回転数)が所定回転数よりも小さいと遮断され、所定回転数以上になると接続される。
【0024】
変速クラッチ37は湿式多板式のクラッチであり、クラッチボス37aとクラッチハウジング37bとを備えている。ただし、変速クラッチ37の種類は特に限定される訳ではない。遠心クラッチ36にはギヤ41が設けられ、変速クラッチ37のクラッチハウジング37bにはギヤ42が設けられ、これらギヤ41とギヤ42とは噛み合っている。したがって、変速クラッチ37のクラッチハウジング37bは、遠心クラッチ36(厳密には、遠心クラッチ36のクラッチハウジング)と共に回転する。
【0025】
クラッチボス37aは、メイン軸44に取り付けられており、メイン軸44と共に回転する。クラッチハウジング37bは、メイン軸44に対して回転自在に取り付けられている。クラッチボス37aには、複数のフリクションプレート39aが設けられ、クラッチハウジング37bには、複数のクラッチプレート39bが設けられている。各フリクションプレート39aは、隣り合うクラッチプレート39b,39bの間に配置されている。
【0026】
クラッチボス37aの右側には、プレッシャプレート37cが配置されている。プレッシャプレート37cは、軸方向にスライド自在に構成されており、圧縮ばね60によって左方向に付勢されている。すなわち、プレッシャプレート37cは、フリクションプレート39aとクラッチプレート39bとを圧接する方向に付勢されている。プレッシャプレート37cが圧縮ばね60の付勢力に抗して右方向に移動すると、フリクションプレート39aとクラッチプレート39bとが離反し、変速クラッチ37は遮断されることになる。
【0027】
図2に示すように、メイン軸44の外周側には、複数の変速ギヤ46が設けられている。メイン軸44と平行に配置されたドライブ軸45には、複数の変速ギヤ47が装着されている。メイン軸44側の変速ギヤ46とドライブ軸45側の変速ギヤ47とは、適宜に噛み合っている。
【0028】
変速ギヤ46および変速ギヤ47は、選択されたギヤ以外は、いずれか一方または両方がメイン軸44またはドライブ軸45に対して空転状態で装着されている。したがって、メイン軸44からドライブ軸45への駆動力の伝達は、選択されたいずれか一対の変速ギヤを介して行われる。
【0029】
変速ギヤの選択は、シフトカム113(図4参照)を介して行われる。図4に示すように、変速機38は、変速ギヤ46をメイン軸44の軸方向に摺動させるシフトフォーク111aと、シフトフォーク111aをスライド自在に支持するスライドロッド112aとを備えている。また、変速機38は、変速ギヤ47をドライブ軸45の軸方向に摺動させるシフトフォーク111bと、シフトフォーク111bをスライド自在に支持するスライドロッド112bとを備えている。シフトカム113の周囲にはカム溝113aが形成されており、シフトフォーク111a,111bは、このカム溝113aに沿ってスライドする。
【0030】
シフトカム113は、シフト軸70が回転することにより、ラチェット機構115を介して回転するように構成されている。このラチェット機構115は、シフトカム113を一定間隔(角度)毎に回転させ、シフトフォーク111a,111bを規則的に動かすものであり、1段ずつ変速するための正逆両方向のラチェット機能を有している。このラチェット機構115のシフトアーム116は、シフト軸70の回転を伝えると同時に、シフト軸70のストロークを規制し、シフトカム113のオーバーランを防止する。また、ラチェット機構115のストッパプレート117は、シフトカム113を決められた位置に固定するものである。
【0031】
図3に示すように、中空のメイン軸44は、軸受540によって回転自在に支持されている。メイン軸44内には、第1プッシュロッド527、ボール528、および第2プッシュロッド529が軸方向に移動自在に挿入され、それらが移動することによってプレッシャプレート37cが左右方向に移動する。
【0032】
この第2プッシュロッド529には、鍔部529bが形成され、この鍔部529bとプレッシャプレート37cとの間にベアリング533が介在している。これにより、第2プッシュロッド529が回転不能状態となっているのに対し、プレッシャプレート37cは回転するように構成されている。
【0033】
シフト軸70の雄ねじ部535aには、レバー部材536の一端部のナット部536aが螺合され、このレバー部材536の他端部536bは、第1プッシュロッド527の小径部527bに当接している。このレバー部材536は、中央に位置する支点部536cが支持軸537に連結され、この支点部536cを中心に揺動するように構成されている。なお、外部からシフト軸70に駆動力が伝わっていない状態では、シフト軸70は、パワーユニット28に内蔵されたばね90によって所定の中立位置に保持される。
【0034】
外部からの駆動力を受けてシフト軸70が回転すると、このシフト軸70の雄ねじ部535aに螺合されたレバー部材536のナット部536aが、左方向に移動する。このナット部536aの移動によりレバー部材536が揺動し、レバー部材536の他端部536bが第1プッシュロッド527を右向きに押し、第1プッシュロッド527は右方向にスライドする。そして、第2プッシュロッド529は、ボール528を介して第1プッシュロッド527によって右向きに押され、右方向にスライドする。
【0035】
この第2プッシュロッド529のスライドにより、プレッシャプレート37cが圧縮ばね60の付勢力に抗して、右方向に移動する。その結果、フリクションプレート39aとクラッチプレート39bとの圧接状態が解除されて、変速クラッチ37が遮断される。
【0036】
このように、シフト軸70とプレッシャプレート37cとは、レバー部材536、第1プッシュロッド527、ボール528、および第2プッシュロッド529を介して連結されており、プレッシャプレート37cはシフト軸70の回転に従って移動する。すなわち、シフト軸70が回転を始め、シフト軸70の回転角度が所定の角度(クラッチ遮断開始角度)に達すると、プレッシャプレート37cは右方向に移動し、変速クラッチ37は遮断される。そして、シフト軸70が更に回転して所定の角度(変速開始角度)に達すると、シフトカム113が回転し、変速動作が行われる。
【0037】
クランク軸30の左端部には、クランク軸30と共に回転する回転体として、フライホイールマグネト50が取り付けられている。フライホイールマグネト50は、発電機51のロータを構成している。
【0038】
図2に示すように、クランクケース35は、第1ケーシング52と第2ケーシング53とを備えている。図示は省略するが、第1ケーシング52は複数のケーシング部材によって形成されており、主にクランク軸30の一部、遠心クラッチ36、変速クラッチ37、メイン軸44、ドライブ軸45の一部、およびシフトカム113等を覆っている。第2ケーシング53は、フライホイールマグネト50を覆っている。第2ケーシング53は、第1ケーシング52よりも車両の前後方向の前側に位置している。また、第2ケーシング53は、第1ケーシング52よりも車両の幅方向の外側(図2の左側)に突出している。なお、本実施形態では、第1ケーシング52と第2ケーシング53とは別体に形成されているが、第1ケーシング52と第2ケーシング53とは一体化されていてもよい。
【0039】
図3に示すように、シフト軸70の一部はクランクケース35の外部に突出しており、突出部70aを構成している。図2に示すように、ドライブ軸45の一部もクランクケース35から突出しており、ドライブ軸45の突出部45aにはスプロケット54が固定されている。このスプロケット54と後輪26のスプロケット(図示せず)とには、チェーン55が巻き掛けられている。なお、ドライブ軸45の駆動力を後輪26に伝達する伝動部材は、チェーン55に限定される訳ではない。伝動ベルトやドライブシャフト等の他の伝動部材を用いることも勿論可能である。
【0040】
図5に示すように、チェーン55の側方(図5の紙面表側方向)には、チェーンカバー56が配置されている。チェーンカバー56は、チェーン55の上方、下方および車幅方向の外側を覆っている。なお、図5では、パワーユニット28のシリンダ43(図1参照)の図示は省略している。
【0041】
図5に示すように、自動二輪車10は、シフト軸70を回動させるアクチュエータ75を備えている。アクチュエータ75は、連結体61を介してシフト軸70と連結されている。次に、アクチュエータ75の構成について説明する。
【0042】
図6はアクチュエータ75の内部構成図、図7は図6のVII−VII線断面図、図8はアクチュエータ75の右側面図、図9はアクチュエータ75の正面図である。
【0043】
図6に示すように、アクチュエータ75は、モータ本体77aおよびモータ軸77bからなるモータ77と、モータ軸77bに固定されたウォーム79と、ウォーム79と噛み合うウォームホイール80と、ウォームホイール80の回転軸となる出力軸81とを備えている。ウォーム79の一端側および他端側は、軸受101によって支持されている。ウォームホイール80は、薄板状に形成されており、出力軸81の軸方向から見て扇形に形成されている。
【0044】
ここで、ウォーム79およびウォームホイール80からなるウォームギヤ80Aは、いわゆる平歯車を複数組み合わせてなるギヤに比べて、減速比が大きい。本実施形態では、ウォームギヤ80Aの減速比は100以上に設定されている。また、ウォームギヤ80Aは、モータ77から出力軸81への駆動力は伝達する一方、出力軸81からモータ77への駆動力は伝達しない性質を有している。すなわち、ウォームギヤ80Aは、いわゆる反転防止機能を有しており、いわゆるセルフロック機構を構成する。
【0045】
アクチュエータ75は、モータ77とウォーム79とウォームホイール80とを収容するケース76を備えている。このケース76は、出力軸81の軸方向の幅が薄く、いわゆる薄型のケースである(図9および図13参照)。ケース76は、分割自在な半割状の第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76b(図13参照)によって構成されている。
【0046】
車幅方向の外側に位置する第2ケース部材76bには、出力軸81を挿通させる穴が形成されており、出力軸81はこの穴を通じてケース76の外部に突出している。図9に示すように、車幅方向の内側に位置する第1ケース部材76aには、出力軸81の回転位置を検出するポテンショメータS1が取り付けられている。なお、図示は省略するが、ポテンショメータS1には信号線が接続されており、当該信号線は図示しないECUに接続されている。
【0047】
図7および図9に示すように、第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76bのモータ77を覆う部分の合面96(図6も参照)は、モータ軸77bの軸線77cを含む平面である。また、第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76bのウォーム79を覆う部分の合面97(図6参照)も、モータ軸77bの軸線77cを含む平面である。
【0048】
図6に示すように、第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76bの周辺部には、複数のボルト穴73,74が形成されている。第1ケース部材76aと第2ケース部材76bとは、これらのボルト穴73,74に挿通されたボルト99(図5参照)によって締結されている。また、図5に示すように、メインフレーム13およびシートレール14にはブラケット24が設けられており、第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76bは、ボルト穴74に挿通されたボルト99によって、これらブラケット24に取り付けられている。アクチュエータ75は、側面視において、メインフレーム13とシートレール14とバックステー15とによって区画された領域A1に配置されている。
【0049】
図5および図6に示すように、モータ77は、車幅方向と直交する方向に延びている。なお、ここでいう「直交する方向」には、厳密な意味で直交する方向だけでなく、実質的に直交すると見なすことのできる方向(ほぼ直交する方向)も含まれる。すなわち、本実施形態では、モータ77の軸線77cは、車幅方向とほぼ直交している。なお、軸線77cはウォーム79の軸線でもある。出力軸81は、軸線77cと直交する方向に延びている。そのため、出力軸81は、ほぼ車幅方向に沿った方向に延びている。
【0050】
次に、アクチュエータ75とシフト軸70とを連結している連結体61について説明する。
【0051】
図5に示すように、連結体61は、パワーユニット28のクランクケース35の外側において、アクチュエータ75の出力軸81とシフト軸70の突出部70aとを連結している。なお、シフト軸70の突出部70aは、側面視においてフライホイールマグネト50の後方斜め下側に配置されている。連結体61は、出力軸81に連結された回動レバー71と、シフト軸70の突出部70aに連結された回動アーム72と、回動レバー71と回動アーム72とを連結するロッド63とを備えている。ロッド63は、回動レバー71および回動アーム72のそれぞれに対して、車幅方向に傾倒自在に連結されている。
【0052】
本実施形態では、ロッド63と回動レバー71、およびロッド63と回動アーム72は、ロッド63を回動レバー71および回動アーム72に対して車幅方向に傾倒自在に連結する連結具によって連結されている。図10および図11に示すように、本実施形態ではそのような連結具として、ボールジョイント64を用いている。すなわち、ロッド63の一端は、ボールジョイント64を介して回動レバー71に連結され、ロッド63の他端は、ボールジョイント64を介して回動アーム72に連結されている。
【0053】
ボールジョイント64は、ロッド63の先端部が挿入される筒部64aと、筒部64aを360°回転自在に支持するボール部64bとを備えている。筒部64aの先端側には、挿入されたロッド63を締め付けるナット69が嵌め込まれている。ロッド63は、ボールジョイント64に対して取り外し自在に連結される。
【0054】
図10に示すように、回動レバー71の根元側(図10(a)の右側)には、側面視略C字型の第1連結部71bが形成されている。第1連結部71bの中央には、アクチュエータ75の出力軸81が嵌め込まれる固定穴71aが形成されている。また、第1連結部71bの固定穴71aの右側には、ボルト66を挿通させるボルト穴71cが形成されている。このボルト66は、第1連結部71bと出力軸81とを固定するものである。すなわち、回動レバー71と出力軸81とは、ボルト66を介して取り外し自在に連結される。
【0055】
図11に示すように、回動アーム72の根元側(図11(a)の左側)にも、側面視略C字型の第2連結部72bが形成されており、第2連結部72bの中央には、シフト軸70の突出部70aが嵌め込まれる固定穴72aが形成されている。第2連結部72bの固定穴72aの下側には、ボルト66を挿通させるボルト穴72cが形成されている。このボルト66は、第2連結部72bとシフト軸70の突出部70aとを固定するものである。回動アーム72とシフト軸70の突出部70aとは、ボルト66を介して取り外し自在に連結される。
【0056】
図10に示すように、回動レバー71は、ほぼ前後方向に延びる平板状に形成されている。図11に示すように、回動アーム72も、ほぼ前後方向に延びる平板状に形成されている。しかしながら、回動アーム72は、一方向に一直線状に延びるのではなく、根元側から先端側に行くにしたがって車幅方向内側に折れ曲がった形状を有している。ただし、回動レバー71および回動アーム72の具体的構成は、何ら限定される訳ではない。
【0057】
図12に示すように、本実施形態では、ロッド63は一体物で形成されている。図5に示すように、ロッド63は、側面視において、鉛直方向(なお、ここでいう鉛直方向には、厳密な意味での鉛直方向だけでなく、ほぼ鉛直な方向も含まれる)に沿って配置されている。ロッド63は、側面視において、フライホイールマグネト50の後方を通って上下に延びている。すなわち、ロッド63は、第1ケーシング52の側方かつ第2ケーシング53の後方を通っている。また、ロッド63は、側面視において、ドライブ軸45に連結されたスプロケット54と重なっている。さらに、ロッド63は、側面視において、チェーン55と重なっている。
【0058】
図13に示すように、ロッド63は、車幅方向に傾斜している。具体的には、回動レバー71は回動アーム72よりも車幅方向の内側に配置されており、ロッド63は、上端の方が下端よりも車幅方向の内側に位置するように傾いている。なお、ロッド63は、第2ケーシング53の車幅方向の外側端よりも内側に配置されている。
【0059】
図5に示すように、ロッド63とチェーン55との間には、内側カバー82が設けられている。内側カバー82は、鉛直方向に細長い屈曲板からなり、ロッド63とチェーン55とを仕切っている。内側カバー82の内側面は、チェーン55に近接している。内側カバー82の固定位置および固定方法は何ら限定されない。例えば、内側カバー82は、図示しないボルト等によって、クランクケース35または図示しないブラケット等に固定されていてもよい。
【0060】
図1および図13に示すように、ロッド63の大部分は外側カバー83によって覆われている。本実施形態では、外側カバー83は、回動アーム72の大部分も覆っている。また、外側カバー83は、チェーンカバー56とともにチェーン55の側方を覆っている。図13に示すように、外側カバー83の上面には、ロッド63を上下方向に貫通させる凹み83aが形成されている。
【0061】
外側カバー83の固定位置および固定方法は何ら限定されない。例えば、外側カバー83は、ボルト84(図1参照)によって、クランクケース35、図示しないブラケット、またはチェーンカバー56等に固定されていてもよい。外側カバー83は、サイドカバー21bやアクチュエータ75を固定した状態のまま取り外すことができるようになっている。つまり、本実施形態では、サイドカバー21bやアクチュエータ75を取り外さなくても、外側カバー83のみを取り外すことができるようになっている。なお、外側カバー83は一体物であってもよく、複数のカバー部材を組み合わせることによって形成されていてもよい。
【0062】
図1に示すように、アクチュエータ75および回動レバー71(ともに図1では図示せず)は、サイドカバー21bによって覆われている。これら外側カバー83およびサイドカバー21bにより、連結体61のほぼ全体が覆われている。
【0063】
図14に示すように、操向ハンドルの左側のグリップの横には、シフトスイッチ95を有するスイッチボックス94が設けられている。このシフトスイッチ95は、例えばシフトアップスイッチ95aとシフトダウンスイッチ95bとから構成され、運転者の手動操作により、変速機38のシフト位置を1速と最速(例えば6速)との間で適宜に増加または減少させるものである。シフトアップスイッチ95aまたはシフトダウンスイッチ95bが押されると、アクチュエータ75が作動し、連結体61を介してシフト軸70が回転駆動される。そして、シフト軸70の回転に伴って変速クラッチ37が遮断され、変速機38のギヤ46,47の組み合わせ(互いに噛み合うギヤの組み合わせ)が変更され、変速動作が行われる。
【0064】
次に、アクチュエータ75の組立方法について説明する。
【0065】
まず、ウォームホイール80を、所定の中立位置(ウォームホイール80が前後対称となる位置であって、図6に示す位置)に位置づけ、ケース76に対して回転不能となるように仮固定する。次に、ウォームホイール80を仮固定した状態のまま、ウォーム79とモータ77とをケース76内に配置する。また、ウォームホイール80を仮固定した状態のまま、第1ケース部材76aにポテンショメータS1を取り付ける。そして、出力軸81の中立位置(=ウォームホイール80の中立位置)とポテンショメータS1の基準位置(例えば零点)とが合うように、ポテンショメータS1の調整を行う。その後、第1ケース部材76aと第2ケース部材76bとを重ね合わせる。
【0066】
次に、アクチュエータ75を車体フレーム11のブラケット24に対し、ボルト99で固定する。これにより、アクチュエータ75は、モータ軸77bおよびウォーム79が車幅方向と直交するような姿勢で設置される。
【0067】
次に、回動レバー71をアクチュエータ75の出力軸81に取り付ける。また、回動アーム72をシフト軸70の突出部70aに取り付ける。なお、本実施形態では、アクチュエータ75のモータ77と出力軸81との間には、ウォームギヤ80Aが設けられているので、出力軸81に外部から力が加えられたとしても、出力軸81が回転してしまうことは防止される。したがって、回動レバー71の取付作業中に誤って出力軸81に力を加えてしまったとしても、ウォームホイール80の位置が中立位置からずれてしまうことを防止することができる。同様に、シフト軸70は、パワーユニット28に内蔵されたばね90によって中立位置に保持されるので、回動アーム72の取付作業中にシフト軸70の位置が中立位置からずれてしまうおそれもない。
【0068】
最後に、ロッド63を回動レバー71および回動アーム72に取り付ける。具体的には、ロッド63の一端を、回動レバー71側のボールジョイント64の筒部64aに挿入するとともに、ロッド63の他端を、回動アーム72側のボールジョイント64の筒部64aに挿入する。そして、ロッド63の長さを調整し(なお、ロッド63の長さは、ロッド63の挿入量を調整することによって調整することができる)、両ボールジョイント64のナット69を締め付ける。なお、この際も、アクチュエータ75の出力軸81に外部から力が加えられたとしても、ウォームホイール80の位置が中立位置からずれることはない。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、変速機38の変速を行うアクチュエータ75は、パワーユニット28の外部に配置されている。そのため、アクチュエータ75の設置自由度を大きくすることができ、車両のレイアウトの自由度を拡大することができる。また、アクチュエータ75を車体の空いている部分に配置することにより、車両のコンパクト化を図ることができる。そして、本実施形態では、アクチュエータ75のモータ77と出力軸81との間に、モータ77から出力軸81への駆動力は伝達するが出力軸81からモータ77への駆動力は伝達しない動力伝達機構(ウォームギヤ80A)が設けられている。そのため、アクチュエータ75を車両の一部に組み付ける際に、外部からの力によって出力軸81が所定の中立位置からずれてしまうことを防止することができる。したがって、出力軸81の中立位置を容易に確保することができ、アクチュエータ75の組立精度を高めることができる。すなわち、本実施形態によれば、アクチュエータ75がパワーユニット28の外部に配置されているにも拘わらず、アクチュエータ75の組立精度を十分に確保することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態によれば、アクチュエータ75のケース76を車体フレーム11に取り付ける前に、ポテンショメータS1の調整を行うことができる。そのため、ポテンショメータS1の基準位置(零点)を正確に設定することができる。したがって、ポテンショメータS1の検出精度を向上させることができる。
【0071】
本実施形態によれば、上述の特性を有する動力伝達機構、すなわち、アクチュエータ75の駆動源(モータ77)から出力軸81への駆動力は伝達するが、その逆の駆動力は伝達しない動力伝達機構として、ウォーム79とウォームホイール80とを有するウォームギヤ80Aを用いている。したがって、上記特性を有する動力伝達機構を小型化することができ、アクチュエータ75のコンパクト化、ひいては車両のコンパクト化を図ることができる。また、ウォームギヤ80Aは減速比が大きいという特性を有している。この点においても、アクチュエータ75のコンパクト化を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、ウォーム79をモータ軸77bに連結し、ウォームホイール80を出力軸81に連結している。すなわち、ウォーム79とモータ軸77bとを直接固定し、ウォームホイール80と出力軸81とを直接固定し、それらの間に他の部材を介在させていない。したがって、部品点数の削減を図ることができ、また、アクチュエータ75のコンパクト化を促進させることができる。
【0073】
本実施形態では、ウォーム79は略扇形に形成されている。そのため、ウォーム79を円盤形に形成する場合に比べて、ウォーム79を小さく抑えることができる。したがって、この点においても、アクチュエータ75のコンパクト化を図ることができる。
【0074】
本実施形態では、シフト軸70の回転によって、変速クラッチ37の断続と変速機38の変速とが行われる。したがって、変速クラッチ37の断続と変速機38の変速とが、単一のアクチュエータ75によって実行される。そのため、変速クラッチ37を断続させる専用のアクチュエータを別途設け、アクチュエータ75が変速機38の変速のみを行う場合と比較して、アクチュエータ75の出力軸81の作動範囲(回転角度)は大きくなる。しかし、本実施形態では、アクチュエータ75は減速比の大きなウォームギヤ80Aを備えているので、出力軸81の作動範囲が大きいにも拘わらず、モータ77を小型化することができる。その結果、アクチュエータ75を小型化することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、アクチュエータ75は、モータ軸77bおよびウォーム79が車幅方向と交差する方向に沿うような姿勢で配置されている。そのため、アクチュエータ75がパワーユニット28の外部に配置されているにも拘わらず、アクチュエータ75が車幅方向に出っ張ることを防止することができ、車両のスリム化を図ることができる。
【0076】
特に、本実施形態では、アクチュエータ75のモータ77の軸線77cは、車幅方向と直交する方向に延びている。なお、ここでいう直交する方向には、厳密な意味で直交する方向だけでなく、実質的に直交する方向も含まれる。このようにモータ77の軸線77cが車幅方向と直交する方向に延びていることにより、出力軸81は車幅方向に沿った方向に延びている。そのため、連結体61は、車幅方向と直交する面内(例えば、車両の前後方向に沿った面内)を移動することになる。したがって、移動に伴って連結体61が車幅方向に出っ張るようなことがないので、自動二輪車10のスリム化を促進することができる。
【0077】
本実施形態によれば、アクチュエータ75の出力軸81、ウォームギヤ80A、およびモータ77は、ケース76によって覆われている。そのため、モータ77等に対して埃や水が侵入しにくく、アクチュエータ75の信頼性を高めることができる。
【0078】
アクチュエータ75のケース76は、底の浅い略皿状の第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76bからなり、第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76bのモータ77を覆う部分の合面96は、モータ軸77bの軸心77cを含む平面となっている。これにより、アクチュエータ75のケース76のスリム化を図ることができる。
【0079】
また、第1ケース部材76aおよび第2ケース部材76bのウォーム79を覆う部分の合面97は、モータ軸77bの軸心77cを含む平面となっている。これにより、アクチュエータ75のケース76のスリム化を図ることができる。
【0080】
本実施形態では、ロッド63は鉛直方向に延びるように配置されている。したがって、ロッド63の前後方向の長さが短くなる。また、ロッド63の必要長さを短縮することができる。
【0081】
本実施形態では、アクチュエータ75はパワーユニット28から分離されている。そのため、パワーユニット28からの熱や振動の影響を直接受けることがないので、アクチュエータ75の信頼性を向上させることができる。また、アクチュエータ75の長寿命化を図ることができる。
【0082】
本実施形態によれば、アクチュエータ75は、側面視において、メインフレーム13とシートレール14とバックステー15とによって区画される領域A1に配置されている。したがって、当該領域A1をアクチュエータ75の設置スペースとして有効活用することができる。
【0083】
本実施形態によれば、ロッド63の車幅方向の外側は、外側カバー83によって覆われている。そのため、ロッド63を保護することができる。なお、外側カバー83は、回動レバー71や回動アーム72の一部も覆っているので、これら回動レバー71や回動アーム72も保護することができる。また、回動レバー71およびアクチュエータ75は、サイドフレーム21bによって覆われている。したがって、アクチュエータ75等も保護される。
【0084】
連結体61は、アクチュエータ75の出力軸81に連結された第1連結部71bと、シフト軸70の突出部70aに連結された第2連結部72bとを備え、第1連結部71bは第2連結部72bよりも車幅方向の内側に位置している。そのため、アクチュエータ75をより内側に配置することができ、自動二輪車10のスリム化を促進することができる。
【0085】
本実施形態によれば、ロッド63は回動レバー71および回動アーム72のそれぞれに対し、車幅方向に傾倒自在に連結されており、ロッド63は車幅方向の傾斜している。これにより、直線状に延びるロッド63を用いて、アクチュエータ75を内側に配置することが可能となる。すなわち、簡単な構成に基づいて、アクチュエータ75を内側に配置することができる。
【0086】
(実施の形態2)
図15および図16に示すように、実施形態2は、実施形態1における連結体61のロッド63に変更を加えたものである。
【0087】
実施形態2では、ロッド63は、互いに取り外し自在に連結された複数のロッド部材によって構成されており、長さ調整が自在になっている。ここでは、ロッド63は、第1ロッド部材91および第2ロッド部材92によって構成されている。
【0088】
図17(a)および(b)に示すように、第2ロッド部材92の上側には、上方に開いた略U字型の把持部92aが形成されている。把持部92aには、上下に並んだ2つの円孔92bと、これら円孔92bに対応して上下に並んだ2つのナット部92cとが設けられている。第1ロッド部材91の下側には、把持部92aに挿入される挿入部91aが形成されている。挿入部91aには、上下に細長い2つの長孔91bが形成されている。
【0089】
図16に示すように、第1ロッド部材91と第2ロッド部材92とは、円孔92cと長孔91bとナット部92cとを挿通するボルト93によって締結される。挿入部91aには長孔91bが形成されているので、ボルト93は長孔91b内で上下に摺動自在である。そのため、第1ロッド部材91と第2ロッド部材92とを軸方向に相対移動させることができ、ロッド63の長さを調整することが可能になっている。
【0090】
第1ロッド部材91と第2ロッド部材92とは、以下のようにして連結される。なお、第1ロッド部材91と第2ロッド部材92との連結は、第1ロッド部材91を回動レバー71側のボールジョイント64に接続し、第2ロッド部材92を回動アーム72側のボールジョイント64に接続した後に行われる。
【0091】
まず、第1ロッド部材91の挿入部91aを第2ロッド部材92の把持部92aに挿入する。次に、ボルト93を、把持部92aの円孔92bと挿入部91aの長孔91bと把持部92aのナット部92cとに挿入し、仮止めする。そして、ロッド63の全体長さが所望の長さになるように、第1ロッド部材91と第2ロッド部材92とを軸方向に相対移動させる。すなわち、ロッド63の長さを調整する。ロッド63の長さが所望の長さになった後は、ボルト93をナット部92cにねじ込み、しっかりと固定する。
【0092】
その他の構成は実施形態1と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0093】
本実施形態においても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0094】
さらに、本実施形態によれば、シフト軸70の突出部70aと出力軸81とを連結する連結体61は、長さ調整が自在である。そのため、アクチュエータ75の組立作業が容易となる。また、組立作業が容易であるので、アクチュエータ75の組立精度を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態では、長さ調整自在なロッド63は、互いにスライド自在に係合した第1ロッド部材91と第2ロッド部材92とからなっている。第1ロッド部材91および第2ロッド部材92はいずれも棒状部材であり、第1ロッド部材91の挿入部91aには長手方向に延びる長孔91bが形成され、第2ロッド部材92の把持部92aには円孔92bが形成されている。連結体61は、さらに、それら第1ロッド部材91と第2ロッド部材92とを固定する固定部材として、長孔91bと円孔92bとを貫通するボルト93と、ボルト93を固定するナット部92cとを備えている。これにより、比較的簡単な構成によって、連結体61の長さを調整することが可能となる。また、連結体61の長さ調整の作業を簡単かつ確実に行うことが可能となる。
【0096】
(その他の実施形態)
本発明は、前記各実施形態に限らず、他にも様々な形態で実施することが可能である。
【0097】
前記実施形態では、いわゆるセルフロック機能を有する動力伝達機構、すなわち、駆動源から出力軸への駆動力を伝達するが出力軸から駆動源への駆動力は伝達しない動力伝達機構は、ウォームギヤ80Aによって構成されていた。しかし、本発明に係る動力伝達機構は、ウォームギヤ80Aに限定される訳ではなく、いわゆるセルフロック機能を有する任意の動力伝達機構を好適に用いることができる。例えば、特開2002−27147号公報、特開2002−174320号公報、特開2003−074645号公報等に開示された公知の機構を利用することができる。なお、上記各公報に開示された内容は、本発明の実施形態の一つに含まれる。
【0098】
前記各実施形態では、シフト軸70は1本の軸で構成されていた。しかしながら、シフト軸70は、回転することによって前記クラッチの断続および前記変速機の変速を行うものであればよく、2本以上の軸で構成されていてもよい。例えば、シフト軸70は、クランクケース35の内部で歯車等を介して2本の軸に分岐し、一方の軸がクラッチの断続を行い、他方の軸が同期をとりつつ変速機の変速を行うように構成されていてもよい。
【0099】
前記各実施形態では、シフト軸70の突出部(露出部)70aとアクチュエータ75の出力軸81とは、連結体61を介して間接的に連結されていた。しかし、図18に概念的に示すように、シフト軸70と出力軸81とは、直接連結されていてもよい。なお、図18に示す実施形態では、クランクケース35の外側にケース部材35a(なお、ケース部材35aは、図18に示すようにクランクケース35と一体化されていてもよく、別体でもよい)とケース部材35bとが設けられ、これらケース部材35a,35bは、ボルト201とナット202とによって結合されている。アクチュエータ75のケース76および出力軸81は、ケース部材35a,35bの内部に収容されている。ケース76は、ボルト203によってケース部材35bに固定されている。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明は、変速機の変速動作を行うシフトアクチュエータ、それを備えた車両、並びに、シフトアクチュエータの組立方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】パワーユニットの一部切り欠き断面図である。
【図3】パワーユニットの部分断面図である。
【図4】変速機の一部の分解斜視図である。
【図5】自動二輪車の部分左側面図である。
【図6】アクチュエータの内部構成図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】アクチュエータの右側面図である。
【図9】アクチュエータの正面図である。
【図10】(a)は回動レバーの側面図、(b)は(a)のXb方向矢視図である。
【図11】(a)は回動アームの側面図、(b)は(a)のXIb方向矢視図である。
【図12】ロッドの側面図である。
【図13】自動二輪車の部分平面図である。
【図14】スイッチボックスの斜視図である。
【図15】実施形態2に係る自動二輪車の部分左側面図である。
【図16】実施形態2に係るロッドの正面図である。
【図17】(a)はロッド部材の正面図であり、(b)はロッド部材の側面図である。
【図18】アクチュエータの出力軸とシフト軸とが直接連結された他の実施形態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0102】
10 自動二輪車(車両)
28 パワーユニット
30 クランク軸
35 クランクケース(ケーシング)
36 変速クラッチ(クラッチ)
38 変速機
61 連結体
63 ロッド
70 シフト軸
70a シフト軸の突出部(露出部)
71 回動レバー
72 回動アーム
75 アクチュエータ
76 ケース(ハウジング)
77 モータ(駆動源)
79 ウォーム
80 ウォームホイール
80A ウォームギヤ(動力伝達機構)
81 出力軸
S1 ポテンショメータ(位置センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギヤを有する変速機と、前記変速機の変速を行うシフト軸と、前記シフト軸の一部が外部に露出するように前記シフト軸と前記変速機とを覆うケーシングと、を有するパワーユニットを備えた車両に搭載されるシフトアクチュエータであって、
駆動源と、
前記シフト軸の露出部に直接または間接的に連結された出力軸と、
前記駆動源と前記出力軸との間に介在し、前記駆動源から前記出力軸への駆動力を伝達する一方、前記出力軸から前記駆動源への駆動力を伝達しない動力伝達機構と、
前記駆動源と前記出力軸と前記動力伝達機構とを支持するハウジングと、
前記ハウジングに支持され、前記出力軸の位置を検出する位置センサと、
を備えたシフトアクチュエータ。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、ウォームと、前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、を有している、請求項1に記載のシフトアクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動源は、回転軸を有するモータを有し、
前記ウォームは前記回転軸に連結され、
前記ウォームホイールは前記出力軸に連結されている、請求項2に記載のシフトアクチュエータ。
【請求項4】
前記ウォームホイールは略扇形である、請求項3に記載のシフトアクチュエータ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記出力軸の一部が外部に露出するように前記出力軸と前記モータと前記ウォームと前記ウォームホイールとを覆う半割状の第1および第2のハウジング部材を備え、
前記第1および第2のハウジング部材の前記モータを覆う部分の合面は、前記モータの回転軸の軸心を含む平面である、請求項3に記載のシフトアクチュエータ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記出力軸の一部が外部に露出するように前記出力軸と前記モータと前記ウォームと前記ウォームホイールとを覆う半割状の第1および第2のハウジング部材を備え、
前記第1および第2のハウジング部材の前記ウォームを覆う部分の合面は、前記ウォームの軸心を含む平面である、請求項3に記載のシフトアクチュエータ。
【請求項7】
複数のギヤを有する変速機と、
前記変速機の変速を行うシフト軸と、
前記シフト軸の一部が外部に露出するように前記シフト軸と前記変速機とを覆うケーシングと、
を有するパワーユニットと、
駆動源と、
前記シフト軸の露出部に直接または間接的に連結された出力軸と、
前記駆動源と前記出力軸との間に介在し、前記駆動源から前記出力軸への駆動力を伝達する一方、前記出力軸から前記駆動源への駆動力を伝達しない動力伝達機構と、
前記駆動源と前記出力軸と前記動力伝達機構とを支持するハウジングと、
前記ハウジングに支持され、前記出力軸の位置を検出する位置センサと、
を有するシフトアクチュエータと、
を備えた車両。
【請求項8】
前記動力伝達機構は、ウォームと、前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、を有している、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記駆動源は、回転軸を有するモータを有し、
前記ウォームは前記回転軸に連結され、
前記ウォームホイールは前記出力軸に連結されている、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記ウォームホイールは略扇形である、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記パワーユニットは、前記変速動作の際に断続されるクラッチを有し、
前記シフト軸は、前記変速機の変速とともに前記クラッチの断続を行う、請求項7に記載の車両。
【請求項12】
前記駆動源は、回転軸を有するモータを有し、
前記モータの回転軸が、車両の幅方向と交差する方向に沿うように配置された、請求項7に記載の車両。
【請求項13】
前記ハウジングは、前記出力軸の一部が外部に露出するように前記出力軸と前記動力伝達機構と前記駆動源とを覆っている、請求項7に記載の車両。
【請求項14】
前記ハウジングは、前記出力軸の一部が外部に露出するように前記出力軸と前記モータと前記ウォームと前記ウォームホイールとを覆う半割状の第1および第2のハウジング部材を備え、
前記第1および第2のハウジング部材の前記モータを覆う部分の合面は、前記モータの回転軸の軸心を含む平面である、請求項9に記載の車両。
【請求項15】
前記ハウジングは、前記出力軸の一部が外部に露出するように前記出力軸と前記モータと前記ウォームと前記ウォームホイールとを覆う半割状の第1および第2のハウジング部材を備え、
前記第1および第2のハウジング部材の前記ウォームを覆う部分の合面は、前記ウォームの軸心を含む平面である、請求項9に記載の車両。
【請求項16】
前記シフト軸の露出部と前記出力軸とを連結し、長さ調整が自在な連結体を備えた、請求項7に記載の車両。
【請求項17】
前記連結体は、第1連結部材と、第2連結部材と、前記第1連結部材と前記第2連結部材とを互いの相対位置を変更自在に連結する固定部材と、を備えている、請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記第1連結部材と前記第2連結部材とは、スライド自在に係合している、請求項17に記載の車両。
【請求項19】
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、いずれも棒状部材からなり、
前記第1連結部材には第1の孔が形成され、前記第2連結部材には第2の孔が形成され、
前記第1の孔および前記第2の孔の少なくとも一方は、前記第1連結部材または前記第2連結部材の長手方向に延びる長孔であり、
前記固定部材は、前記第1の孔および前記第2の孔を貫通するボルトと、当該ボルトを固定するナットとを有している、請求項18に記載の車両。
【請求項20】
請求項1に記載のシフトアクチュエータを車両に組み立てる組立方法であって、
前記出力軸を所定の中立位置に位置づけた状態で、前記駆動源と前記出力軸と前記動力伝達機構と前記位置センサとを前記ハウジングに支持させるステップと、
前記出力軸の中立位置と前記位置センサの基準位置とが合うように前記位置センサの調整を行うステップと、
前記アクチュエータの前記ハウジングを前記車両の一部に固定するステップと、
前記パワーユニットの前記シフト軸の露出部と前記アクチュエータの前記出力軸とを、連結体によって連結する連結ステップと、
を備えたシフトアクチュエータの組立方法。
【請求項21】
前記連結体は長さ調整が自在であり、
前記連結ステップは、前記連結体を前記アクチュエータの前記出力軸に連結した後、前記連結体の長さを調整するステップである、請求項20に記載のシフトアクチュエータの組付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−198587(P2007−198587A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208046(P2006−208046)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】