説明

シフトレバーのレンジ位置表示装置

【課題】M/Tモードのレンジの位置が表示されないようにする。
【解決手段】シフトレバー1と、指針窓3cと、前後へスライド自在で収納棚4bを有し長孔4aが形成されたスライドプレート4と、収納棚4bの上にガイド突起5aを介して前後へスライド自在に配置され第1逃げ孔5bが略横T字形に形成されいずれかの指針窓3cを占める指針部5dを有する指針プレート5と、指針プレート5の上にガイド突起5eを介して左右へスライド自在に設けられ長孔の第2逃げ孔6bを有し右側へ押圧されて指針プレート5の前後移動を拘束する拘束手段8を有するロックプレート6と、ロックプレート6に対して相対的に前後へ移動可能にする規制ガイド部7aが左右へスライド自在に収納棚4bに収容され左側にはロックプレート6の上面の一対の係合突起6eの間に挿入される挿入部7cを有し挿通孔7bが形成されたカバープレート7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーのレンジ位置表示装置に関し、シフトレバーをA/TモードのDレンジからM/Tモードのレンジに操作した場合でも、指針部がA/TモードのDレンジを表示したままで保持されるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、オートマチックトランスミッションモード(以下、単にA/Tモードという)と、マニュアルトランスミッションモード(以下、単にM/Tモードという)との2つのモードを備えたシフトレバー装置があり、シフトレバーをA/TモードのDレンジからM/Tモードのレンジへ移動させることができ、該M/Tモードにおいてシフトレバーを前方向あるいは後方向へ移動させるとM/Tモード内でレンジの切り替えを行なうことができる。そして、シフトレバーがどのレンジに設定されているかを表示するため、シフトレバーのレンジ位置表示装置が設けられている。
【0003】
従来のシフトレバーのレンジ位置表示装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このシフトレバーのレンジ位置表示装置は、シフトレバー1がA/Tモードのレンジを移動する際の車体前後方向の長孔と、M/Tモードのレンジを移動する際の車体前後方向の長孔とが平行に配置され、シフトレバー1をA/TモードのDレンジから左右方向へ倒すことによりM/Tモードに切り替える構成のシフトレバー装置に設けたものである。そして、前後方向へスライド可能であって左右方向に長い長孔3aと左右方向に長い一対のガイドレール3bとを有する前後スライドプレート3と、シフトレバー1が左へ倒されることにより一対のガイドレール3b間に入り込む幅拡大部4aとシフトレバー1が右へ倒されることにより位置決め凹部2e,位置決め溝2fに入り込込んで前後移動を拘束する位置決め凸部4e,ピン部4fと前後方向の長孔4bと現在位置表示部4cとを有する左右スライドプレート4と、孔5aを有するカバープレート5とを備えている。
【0004】
シフトレバー1がA/Tモードのレンジを移動する際には左右スライドプレート4が左へ移動して幅拡大部4aが前後スライドプレート3の一対のガイドレール3b間に入り込んで左右スライドプレート4が前後スライドプレート3と一体に移動するので、左右スライドプレート4に形成した現在位置表示部4cは前後スライドプレート3と一体になって車体前後方向へ移動し、現在位置表示部4cはA/Tモードの各レンジの位置を占める。一方、シフトレバー1をA/TモードのDレンジから右に倒してM/Tモードにすると、左右スライドプレート4が右へ移動してMレンジの位置を占める。そして、幅拡大部4aが前後スライドプレート3の一対のガイドレール3b間から外れて位置決め凸部4eが位置決め凹部2eに入り込み位置決めピン部4fが位置決め溝2fに入り込んで左右スライドプレート4が前後方向へ移動しないように拘束されかつ長孔4bは前後方向へ長いので、シフトレバー1を前後へ倒しても前後スライドプレート3のみが前後方向へスライドするだけで左右スライドプレート4は動かず、現在位置表示部4cはMレンジの位置を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−90978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、左右スライドプレート4の幅拡大部4aを前後スライドプレート3の一対のガイドレール3b間から外すために左右スライドプレート4を右方向へ移動させるためのスペースが必要であり、更に位置決め凸部4eと位置決め凹部2eとを設けることから、シフトレバーのレンジ位置表示装置が左右方向へ大形化する。また、シフトレバーをM/Tレンジへ操作したときに、現在位置表示部4cをM/Tレンジの位置へ向かって右方向移動させることなく、Dレンジの位置に保持しておきたいという要望があり、このような場合に特許文献1に記載の発明の構成を利用すると、現在位置表示部4cを左方へ延長して左右方向へ長くすればよいが、左右スライドプレート4の左右方向の全幅寸法が大きくなり、シフトレバーのレンジ位置表示装置が左右方向へ大形化する。
【0007】
そこで本発明は、上記の課題を解決したシフトレバーのレンジ位置表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向へ移動させてA/Tモードの複数のレンジのいずれかを選択できるA/Tストロークと、該A/TモードのDレンジから車体左右方向へ移動させる切替ストロークを介して前記A/Tモードのレンジと隣接する位置で車体前後方向へ移動させてM/Tモードのレンジを切り替えるM/Tストロークとが確保できるシフトレバーと、該シフトレバーが挿通される第1シフト孔を備えており車体に設置されたインナブラケットと、該インナブラケットを覆い該シフトレバーが挿通される第2シフト孔を備えたアウタブラケットと、該アウタブラケットにおけるA/Tモードの夫々のレンジと対応する位置に形成された指針窓と、
前記インナブラケットと前記アウタブラケットとの間にガイド手段を介して前後方向へスライド自在に配置され、下方には収納棚が一体に結合して形成され、シフトレバーが挿通される長孔が前記収納棚を貫通させて左右方向に沿って形成され、前記シフトレバーの前後移動により前後方向へ移動するスライドプレートと、
前記収納棚に、第1ガイド部を介して前後方向へスライド自在に設けられ、前記シフトレバーが挿通される第1逃げ孔が形成され、該第1逃げ孔は前記シフトレバーの前記各ストロークのうちの、切替ストローク内での左右移動とM/Tストローク内での前後移動とにおいて、前記シフトレバーが第1逃げ孔の内周面に接触しないように逃がした形状に形成され、前記指針窓のいずれかの位置を占める指針部が形成された指針プレートと、
該指針プレートに第2ガイド部を介して左右方向へスライド自在に設けられ、前記シフトレバーが挿通される第2逃げ孔が形成され、該第2逃げ孔は前記シフトレバーのM/Tストローク内での前後移動では移動しないように前後方向の長孔に形成されており、前記シフトレバーの切替ストローク内での左右移動によって左右方向へ移動し、前記シフトレバーがM/Tストローク側へ移動した時には前記指針プレートの前後移動を拘束する拘束手段が設けられたロックプレートと、
前記ロックプレートの上側に配置され、前記収納棚に沿って左右方向へスライド自在に案内する規制ガイド部を備え、前記シフトレバーが挿通される挿通孔が形成され、前記シフトレバーが切替ストローク内でA/Tストローク側へ移動することにより前記ロックプレートの上面に突出形成された一対の係合突起の間に挿入される挿入部が形成されたカバープレートと、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、シフトレバーがA/Tストローク内にあるときは、シフトレバーはスライドプレートの左右方向の長孔のA/Tストローク側を占めており、シフトレバーがロックプレートをA/Tストローク側へ押して拘束手段による拘束が解除されていると共に、カバープレートの挿入部が一対の係合突起の間に挿入された状態にあるので、シフトレバーをA/Tストローク内で前後方向へ移動させると、スライドプレートとカバープレートとロックプレートと指針プレートとの4者が一体となって前後移動し、指針プレートの指針部がシフトレバーの占めるレンジの近傍に位置する指針窓に表示される。次に、A/TモードのDレンジからシフトレバーを切替ストローク内でM/Tモード側へ向って左右方向へ移動させると、シフトレバーはスライドプレートの左右方向の長孔に沿って移動する。このとき、カバープレートの挿入部がロックプレートの一対の係合突起の間から離脱してカバープレートとロックプレートとの合体が解除されると共に、シフトレバーがロックプレートをM/Tストローク側へ移動させて拘束手段が作用し、指針プレートが前後移動しないように拘束される。この切替ストローク内でのM/Tストローク側へのシフトレバーの操作の際に、シフトレバーが指針プレートの第1逃げ孔の内周面に接触することがないように逃がした形状に第1逃げ孔が形成されているので、指針プレートが左右方向へ移動することはなく、指針プレートの指針部はDレンジの指針窓に表示されたままで保持される。次に、シフトレバーをM/Tストローク内で前後移動させると、ロックプレートにより指針プレートが前後移動しないように拘束された状態で、スライドプレートとカバープレートの2者のみが前後移動する。このM/Tストローク内でのシフトレバーの前後移動の操作の際に、シフトレバーは指針プレートの第1逃げ孔の内部を移動し、ロックプレート6の第2逃げ孔の内部を中央部から前方または後方へ移動するので、指針プレートおよびロックプレートが移動することはなく、該指針プレートに形成された指針部が移動することもない。従って、M/Tストローク内でのシフトレバーの操作の際に、指針プレートの指針部はDレンジの指針窓に表示されたままで保持される。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシフトレバーのレンジ位置表示装置において、
前記拘束手段は、前記ロックプレートのM/Tストローク側に水平突出部を形成すると共に下面に下方突出部を形成する一方、前記インナブラケットと第1シフト孔の位置には前記水平突出部が入り込む水平方向凹部と前記下方突出部が入り込む係合凹部とを形成したことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、シフトレバーをA/Tストローク内のDレンジから切替ストロークを介してM/Tストローク側へ左右移動させると、ロックプレートの第2逃げ孔の内周面をシフトレバーがM/Tストローク側へ押圧するので、ロックプレートはM/Tストローク側へ移動し、これによりロックプレートの水平突出部がインナブラケットの水平方向凹部入り込み、下方突出部が第1シフト孔から係合凹部へ入り込み、指針プレートが前後移動できないように拘束される。このため、シフトレバーをM/Tストローク内で前後移動させる際にカバープレートやスライドプレートとの摩擦抵抗によりロックプレートおよび指針プレートに前後方向の力が作用しても、指針プレートの前後移動が防止され、該指針プレートに形成された指針部はDレンジの指針窓に表示されたままで保持される。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のシフトレバーのレンジ位置表示装置において、
前記ロックプレートの前記第2逃げ孔の左右方向の幅寸法を、前記シフトレバーの切替ストローク内での可動寸法よりも小さくして、前記ロックプレートの左右方向の可動寸法が前記シフトレバーの可動寸法よりも小さくなるように設定したことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、シフトレバーの切替ストローク内での可動寸法に対しロックプレートの第2逃げ孔の左右方向の幅寸法を小さく設定したので、シフトレバーを切替ストローク内で移動させる際に、ロックプレートの左右方向の可動寸法が前記シフトレバーの可動寸法よりも小さくなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るシフトレバーのレンジ位置表示装置によれば、指針部がA/Tモードの各レンジを表示するだけでM/Tモードの各レンジを表示しない構成としたので、指針部と該指針部を有する指針プレートが左右方向へ移動することはなく、移動により指針プレートが左右方向へ突出するスペースを確保する必要がないことから、左右方向の寸法が小さくなり、シフトレバーのレンジ位置表示装置が小形化される。
【0015】
請求項2に係るシフトレバーのレンジ位置表示装置によれば、拘束手段として、ロックプレートにインナブラケットと係合する水平突出部と第1シフト孔の係合凹部に係合する下方突出部との2つの係合部を設けたので、離間した2箇所でロックプレートが拘束され、これにより指針プレートの前後移動が確実に拘束される。また、下方突出部がインナブラケットの第1シフト孔内に配置されており、該第1シフト孔に形成した係合凹部に下方突出部が係合するので、ロックプレートの左右方向の寸法の縮小化に寄与する。
【0016】
請求項3に係るシフトレバーのレンジ位置表示装置によれば、ロックプレートの第2逃げ孔の内部でのシフトレバーの左右方向の可動寸法よりも、ロックプレートの左右方向の可動寸法を小さくすることができるので、ロックプレートの左右方向の移動量を、拘束手段の作動に必要な移動量に合わせて設定することができ、ロックプレートの移動により突出する水平突出部の占有スペースも最小限の値になることから、ロックプレートの左右方向の寸法が小さくなり、シフトレバーのレンジ位置表示装置が小形化される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シフトレバーのレンジ位置表示装置の分解斜視図(実施の形態)。
【図2】シフトレバーのレンジ位置表示装置の斜視図(実施の形態)。
【図3】スライドプレートに係り、(a)は左側面図、(b)は正面図(実施の形態)。
【図4】カバープレートに係り、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A矢視図(実施の形態)。
【図5】ロックプレートに係り、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA矢視拡大図(実施の形態)。
【図6】指針プレートに係り、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のA矢視拡大図(実施の形態)。
【図7】シフトレバーがA/TモードのDレンジ位置を占めるときの位置表示装置の斜視図(実施の形態)。
【図8】シフトレバーがA/TモードのDレンジ位置から切替ストロークへ移動するときの位置表示装置の斜視図(実施の形態)。
【図9】シフトレバーがM/Tモードへ移動したときの位置表示装置の斜視図(実施の形態)。
【図10】シフトレバーがM/Tモードからその前後方向へ移動したときの位置表示装置の斜視図(実施の形態)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるシフトレバーのレンジ位置表示装置の実施の形態を説明する。
(構成)
図1,図2に示すように車体の床面にはシフトレバー1が揺動自在に設けられている。該シフトレバー1は、車体前後方向へ移動させてA/Tモードの複数のレンジP(パーキング)・R(後退)・N(ニュートラル)・D(ドライブ)のいずれかを選択できるA/Tストローク(X)と、該A/TモードのDレンジから車体右方向へ移動させる切替ストローク(Y)と、該切替ストロークを介して前記A/Tモードのレンジと隣接する右位置で車体前後方向へ移動させてM/Tモードのレンジを切り替えるM/Tストローク(Z)が確保できるように構成されている。
【0019】
このシフトレバー1の位置には、車体に固定してインナブラケット2が設けられている。該インナブラケット2には、シフトレバー1が挿通される第1シフト孔2aが形成されている。該インナブラケット2には、該インナブラケット2を覆うアウタブラケット3が設けられている。該アウタブラケット3には前記シフトレバー1が挿通される第2シフト孔3aが形成されている。これらの第1シフト孔2a,第2シフト孔3aは、シフトレバー1によりA/Tストローク,切替ストローク,M/Tストロークの操作をする際に、インナブラケット2,アウタブラケット3にシフトレバー1が直接に干渉しない形状に形成されている。A/TストロークにおけるA/TモードのレンジP,R,N,Dの夫々と対応する位置にはP,R,N,Dの文字を表示したレンジ表示部3bが設けられ、該レンジ表示部3bの隣には指針窓3cが夫々形成されている。一方、M/TストロークにおけるM/Tモードのレンジを増速方向あるいは減速方向へ操作する前後位置には「+」の表示と「−」の表示がされている。
【0020】
インナブラケット2とアウタブラケット3との間には、図示しないガイド手段を介してスライドプレート4が第2シフト孔3aを塞ぐように前後方向へスライド自在に設けられている。該スライドプレート4を支持するため、インナブラケット2の上面には一対のレール2dが突出形成されている。図3に示すように、該スライドプレート4の下方には収納棚4bが、左右の側面が開口した箱形状にして一体に結合して形成され、該収納棚4bを上下方向に貫通する長孔4aが左右方向に沿って長く設けられ、該長孔4aに前記シフトレバー1が挿通されている。このシフトレバー1を前後方向へ操作することにより、インナブラケット2上のスライドプレート4を前後方向へスライドさせることができる。なお、4dはスライドプレート4の変形を防止するための補強部である。前記収納棚4bの内部には指針プレート5とロックプレート6とカバープレート7との3枚のプレートが収納されている。これらの3枚のプレートとスライドプレート4とインナブラケット2とアウタブラケット3とはいずれも樹脂によって形成されている。
【0021】
収納棚4bには前記指針プレート5が配置されている。図6に示すように、該指針プレート5の下面の左右の前後位置には、収納棚4bの両側面を挟んで前後方向へスライド可能にするためのガイド突起(第1ガイド部)5aが突出形成されている。そして、前記シフトレバー1が挿通される第1逃げ孔5bが形成されている。該第1逃げ孔5bの形状は、図6(a)に示すように略横T字形に形成されている。これは、前記シフトレバー1がA/Tストローク(X)内で前後移動する際には指針プレート5が1対1の比で移動するようにA/Tストローク(X)の方向へは長孔にされない一方、前記シフトレバー1が前記シフトレバー1の切替ストローク(Y)内で左右移動する際と、M/Tストローク(Z)内で前後移動する際との2つの場合にはシフトレバー1が第1逃げ孔5bの内周面に接触しないように逃がし、指針プレート5が移動しないように長孔にしたものである。指針プレート5の右側には、切り起こしたようにして支持部5cを介して指針プレート5自体よりも高い位置に指針部5dが設けられている。該指針部5dは、前記指針窓3cから容易に認識できるようにオレンジ色や赤色が塗布されており、前記シフトレバー1の移動により、指針部5dはA/Tモードの前記4つのレンジP,R,N,Dと対応する指針窓3cのいずれかの位置と対向する位置を占める。
【0022】
前記指針プレート5の上には、前記ロックプレート6が配置されている。図6に示すように、指針プレート5の上面には前後端部に左右方向に沿ってガイドする一対のガイド突起(第2ガイド部)5eが上方へ突出形成され、該ガイド突起5eを介してロックプレート6が左右方向へスライド自在に設けられている。図5に示すように、ロックプレート6が指針プレート5の上面で左右方向へスライドする範囲を設定するため、ストッパ部6aが前後方向へ突出して設けられている。夫々のストッパ部6aは指針プレート5の左右のガイド突起5e間の空間の範囲内で移動することが可能である。図5に示すように、ロックプレート6には、前記シフトレバー1が挿通される第2逃げ孔6bが形成されている。該第2逃げ孔6bは、前記シフトレバー1のM/Tストローク内での前後移動では、ロックプレート6が移動しないように、前後方向が長孔に形成されている。そして、前記シフトレバー1が切替ストローク内でM/Tストローク側へ移動することにより、ロックプレート6がM/Tストローク側へ押圧されて前記指針プレート5の前後移動を拘束する拘束手段8を備えている。拘束手段8により指針プレート5の前後移動が拘束されることから、シフトレバー1がM/Tストローク内で前後移動されても、指針プレート5が前後移動することはなく、指針部5dもレンジDの位置に保持される。
【0023】
該拘束手段8は、図5に示すように、前記ロックプレート6のM/Tストローク側の後部に水平突出部6cを形成し、前記ロックプレート6の下面であって後方側の左右方向の中間位置に下方突出部6dを形成する一方、図1に示すように、前記インナブラケット2には前記水平突出部6cが入り込む水平方向凹部2bを形成し、前記下方突出部6dが入り込む係合凹部2cを前記第1シフト孔2aの位置に形成して構成したものである。ロックプレート6は指針プレート5に対して相対的に左右方向へ移動するので、前記下方突出部6dが干渉しないように、指針プレート5には図6(a)の下部に示すように逃げ切欠5fが形成されている。また、ロックプレート6はスライドプレート4に対して相対的に右方向へ移動し、右方向へ移動した後に指針プレート5と共に前後方向への移動が拘束された状態で、スライドプレート4とカバープレート7とが一体となって相対的に前後方向へ移動するので、指針プレート5,ロックプレート6に対するスライドプレート4,カバープレート7の相対的な前後移動を可能にするため、図3(b)に破線で示すように収納棚4bには、前記下方突出部6dが挿通される横T字形の逃げ孔4cが形成されている。
【0024】
また、前記シフトレバー1をスライドプレート4の長孔4aに沿って大きく右方へ移動させても、ロックプレート6は水平突出部6cを突出させる寸法分だけしか右方へ移動しないように構成されている。即ち、ロックプレート6の第2逃げ孔6bの左右方向の幅寸法を、シフトレバー1の切替ストローク(Y)内での可動寸法よりも小さくして、ロックプレート6の左右方向の可動寸法がシフトレバー1の可動寸法よりも小さくなるように設定されている。図5(a)におけるロックプレート6の前記第2逃げ孔6bの内部での左右方向の前記シフトレバー1の可動寸法aが、図3(b)におけるスライドプレート4の左右方向の長孔4aの内部での前記シフトレバー1の可動寸法bから、図5(a)における前記水平突出部6cの突出寸法cを減算した値に設定されている。ここで、可動寸法とは、孔の内部でシフトレバー1が移動し得る寸法をいう。
【0025】
ロックプレート6の上には前記カバープレート7が配置されている。図4に示すように、該カバープレート7の前後位置には、該カバープレート7が前記指針プレート5に対してM/Tストローク分だけ前後方向へ相対移動できるように規制しかつ収納棚4bに沿って左右方向へスライド自在に案内する規制ガイド部7aが下方へ向って突出形成されている。中央部には前記シフトレバー1が挿通される挿通孔7bが形成されている。そして、前記規制ガイド部7aの部分が左右方向へスライド自在に前記収納棚4bの内部に収容されている。そして、A/Tストローク側には、前記規制ガイド部7a間の幅寸法よりも小さな幅寸法を有する挿入部7cが左方へ突出形成されている。一方、前記ロックプレート6の上面の左側の前後位置には一対の係合突起6eが突出形成されており、前記シフトレバー1がA/Tストローク側へ移動することにより、カバープレート7の挿入部7cが一対の係合突起6eの間に挿入され、A/Tストローク内では前記指針プレート5および前記ロックプレート6は、カバープレート7,前記スライドプレート4と一体に前後移動する。このほか、前記挿通孔7bの外縁部には、前記スライドプレート4の長孔4aに入り込む筒状突起部7dが形成されている。
(作用)
次に、シフトレバーのレンジ位置表示装置の作用を説明する。
【0026】
この発明によれば、図7に示すように、シフトレバー1がA/Tストローク内にあるときは、シフトレバー1はスライドプレート4の左右方向の長孔4aのA/Tストローク側を占めており、シフトレバー1が、カバープレート7の挿通孔7bと、指針プレート5の第1逃げ孔5bの内部であって図6(a)のP位置を占めており、かつシフトレバー1がロックプレート6の第2逃げ孔6bの内部からロックプレート6をA/Tストローク側へ押して拘束手段8による拘束が解除され、カバープレート7の挿入部7cがロックプレート6の一対の係合突起6eの間に挿入されて合体状態にあるので、シフトレバーをA/Tストローク内で前後方向へ移動させると、スライドプレート4とカバープレート7とロックプレート6と指針プレート5との4者が一体となって前後移動し、指針プレート5の指針部5dがシフトレバー1の占めるレンジP,R,N,Dの近傍に位置する指針窓3cに表示される。
【0027】
次に、図8に示すように、A/TモードのDレンジからシフトレバー1を切替ストローク内でM/Tモード側へ向って右方向へ移動させると、シフトレバー1はスライドプレート4の左右方向の長孔4aに沿って移動し、指針プレート5の第1逃げ孔5bの内部であって図6(a)のP位置からQ位置へと移動する。このとき、カバープレート7の挿入部7cがロックプレート6の一対の係合突起6eの間から離脱してスライドプレート4と指針プレート5との合体が解除され、その後に図9に示すように、ロックプレート6の第2逃げ孔6bの内面をシフトレバー1がM/Tストローク側へ押圧するので、ロックプレート6はM/Tストローク側へ移動して拘束手段8が作用する。即ち、ロックプレート6の水平突出部6cがインナブラケット2の水平方向凹部2bに入り込み、ロックプレート6の下方突出部6dがインナブラケット2の第1シフト孔2aから係合凹部2cへ入り込み、指針プレート5が前後方向へ移動しないように拘束される。この切替ストローク内でのシフトレバー1のM/Tストローク側への操作の際に、シフトレバー1が指針プレート5の第1逃げ孔5bの内周面に接触することがないように第1逃げ孔5bが逃がした形状に形成されているので、シフトレバー1は、第1逃げ孔5bの内部であって図6(a)のP位置からQ位置へと移動し、指針プレート5が左右方向へ移動することはなく、指針プレート5の指針部5dはDレンジの指針窓3cに表示されたままで保持される。
【0028】
次に、図10に示すように、シフトレバー1をM/Tストローク内で前後移動させると、ロックプレート6により指針プレート5が前後移動しないように拘束された状態で、スライドプレート4とカバープレート7との2者のみが前後移動する。このM/Tストローク内でのシフトレバー1の前後移動の操作の際に、シフトレバー1は指針プレート5の第1逃げ孔5bの内部であって図6(a)のQ位置から前方または後方へと移動し、図5(a)におけるロックプレート6の第2逃げ孔6bの中央部から前方または後方へ移動するので、指針プレート5およびロックプレート6が移動することはなく、該指針プレート5に形成された指針部5dが移動することもない。従って、M/Tストローク内でのシフトレバー1の操作の際に、指針プレート5の指針部5dはDレンジの指針窓3cに表示されたままで保持される。
【0029】
この発明に係るシフトレバー1のレンジ位置表示装置によれば、指針部5dがA/Tモードの各レンジを表示するだけでM/Tモードの各レンジを表示しない構成としたので、指針部5dと該指針部5dを有する指針プレート5が左右方向へ移動することはなく、移動により指針プレート5が左右方向へ突出する部分のスペースを確保する必要がないことから、左右方向の寸法が小さくなり、シフトレバー1のレンジ位置表示装置が小形化される。
【0030】
この発明によれば、シフトレバー1をA/Tストローク内のDレンジから切替ストロークを介してM/Tストローク側へ右移動させると、ロックプレート6の第2逃げ孔6bの内周面をシフトレバー1がM/Tストローク側へ押圧するので、ロックプレート6はM/Tストローク側へ移動し、これによりロックプレート6の水平突出部6cがインナブラケット2の水平方向凹部2bに入り込み、下方突出部6dが第1シフト孔2aから係合凹部2cへ入り込み、指針プレート5が前後移動できないように拘束される。このため、シフトレバー1をM/Tストローク内で前後移動させる際にカバープレート7やスライドプレート4との摩擦抵抗によりロックプレート6および指針プレート5に前後方向の力が作用しても、指針プレート5の前後移動が防止され、該指針プレート5に形成された指針部5dはDレンジの指針窓3cに表示されたままで保持される。
【0031】
この発明に係るシフトレバー1のレンジ位置表示装置によれば、拘束手段8として、ロックプレート6にインナブラケットと係合する水平突出部6cと第1シフト孔2aの係合凹部2cに係合する下方突出部6dとの2つの係合部を設けたので、離間した2箇所でロックプレート6が拘束され、これにより指針プレート5の前後移動が確実に拘束される。また、下方突出部6dがインナブラケット2の第1シフト孔2aの内部に配置されており、該第1シフト孔2aに形成した係合凹部2cに下方突出部6dが係合するので、ロックプレート6の左右方向の寸法の縮小化に寄与する。
【0032】
この発明によれば、シフトレバー1を切替ストローク内で移動させる際に、スライドプレート4の左右方向の長孔4aの内部でシフトレバー1を移動させ得る距離である可動寸法分bだけ移動させると、ロックプレート6の第2逃げ孔6bの内部でシフトレバー1を左右方向へ移動させ得る距離である可動寸法分aを減算した値だけロックプレート6がM/Tストローク側へ移動して指針プレート5を拘束する。このときロックプレート6が移動した距離は水平突出部6cの突出寸法cと同じとなり、ロックプレート6の左右方向の可動寸法がシフトレバー1の可動寸法よりも小さくなる。
【0033】
この発明に係るシフトレバー1のレンジ位置表示装置によれば、ロックプレート6の第2逃げ孔6bの内部でのシフトレバー1の右方向の可動寸法aよりも、ロックプレート6の左右方向の可動寸法(実出寸法c)を小さくできるので、ロックプレート6の右方向の移動量を、拘束手段8の作動に必要な移動量に合わせて設定することができ、ロックプレート6の移動により突出する水平突出部の占有スペースも最小限の値になることから、ロックプレート6の左右方向の寸法が小さくなり、シフトレバーのレンジ位置表示装置が小形化される。
【0034】
なお、本実施の形態ではA/Tモードのレンジの右位置にM/Tモードのレンジを配置した右ハンドル車の場合の構成について説明したが、A/Tモードのレンジの左位置にM/Tモードのレンジを配置した左ハンドル車の場合の構成にすることもできる。また、第2ガイド部としてのガイド突起5eは指針プレート5に形成したが、ロックプレート6に形成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…シフトレバー
2…インナブラケット
2a…第1シフト孔
2b…水平方向凹部
2c…係合凹部
3…アウタブラケット
3a…第2シフト孔
3c…指針窓
4…スライドプレート
4a…長孔
4b…収納棚
5…指針プレート
5a…ガイド突起(第1ガイド部)
5b…第1逃げ孔
5d…指針部
5e…ガイド突起(第2ガイド部)
6…ロックプレート
6b…第2逃げ孔
6c…水平突出部
6d…下方突出部
6e…係合突起
7…カバープレート
7a…規制ガイド部
7b…挿通孔
7c…挿入部
8…拘束手段
X…A/Tストローク
Y…切替ストローク
Z…M/Tストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向へ移動させてA/Tモードの複数のレンジのいずれかを選択できるA/Tストロークと、該A/TモードのDレンジから車体左右方向へ移動させる切替ストロークを介して前記A/Tモードのレンジと隣接する位置で車体前後方向へ移動させてM/Tモードのレンジを切り替えるM/Tストロークとが確保できるシフトレバーと、該シフトレバーが挿通される第1シフト孔を備えており車体に設置されたインナブラケットと、該インナブラケットを覆い該シフトレバーが挿通される第2シフト孔を備えたアウタブラケットと、該アウタブラケットにおけるA/Tモードの夫々のレンジと対応する位置に形成された指針窓と、
前記インナブラケットと前記アウタブラケットとの間にガイド手段を介して前後方向へスライド自在に配置され、下方には収納棚が一体に結合して形成され、シフトレバーが挿通される長孔が前記収納棚を貫通させて左右方向に沿って形成され、前記シフトレバーの前後移動により前後方向へ移動するスライドプレートと、
前記収納棚に、第1ガイド部を介して前後方向へスライド自在に設けられ、前記シフトレバーが挿通される第1逃げ孔が形成され、該第1逃げ孔は前記シフトレバーの前記各ストロークのうちの、切替ストローク内での左右移動とM/Tストローク内での前後移動とにおいて、前記シフトレバーが第1逃げ孔の内周面に接触しないように逃がした形状に形成され、前記指針窓のいずれかの位置を占める指針部が形成された指針プレートと、
該指針プレートに第2ガイド部を介して左右方向へスライド自在に設けられ、前記シフトレバーが挿通される第2逃げ孔が形成され、該第2逃げ孔は前記シフトレバーのM/Tストローク内での前後移動では移動しないように前後方向の長孔に形成されており、前記シフトレバーの切替ストローク内での左右移動によって左右方向へ移動し、前記シフトレバーがM/Tストローク側へ移動した時には前記指針プレートの前後移動を拘束する拘束手段が設けられたロックプレートと、
前記ロックプレートの上側に配置され、前記収納棚に沿って左右方向へスライド自在に案内する規制ガイド部を備え、前記シフトレバーが挿通される挿通孔が形成され、前記シフトレバーが切替ストローク内でA/Tストローク側へ移動することにより前記ロックプレートの上面に突出形成された一対の係合突起の間に挿入される挿入部が形成されたカバープレートと、
を備えていることを特徴とするシフトレバーのレンジ位置表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフトレバーのレンジ位置表示装置において、
前記拘束手段は、前記ロックプレートのM/Tストローク側に水平突出部を形成すると共に下面に下方突出部を形成する一方、前記インナブラケットと第1シフト孔の位置には前記水平突出部が入り込む水平方向凹部と前記下方突出部が入り込む係合凹部とを形成したことを特徴とするシフトレバーのレンジ位置表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシフトレバーのレンジ位置表示装置において、
前記ロックプレートの前記第2逃げ孔の左右方向の幅寸法を、前記シフトレバーの切替ストローク内での可動寸法よりも小さくして、前記ロックプレートの左右方向の可動寸法が前記シフトレバーの可動寸法よりも小さくなるように設定したことを特徴とするシフトレバーのレンジ位置表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−20631(P2012−20631A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159241(P2010−159241)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】