シフトレバーユニット
【課題】シフトロック機構からの異音を抑制した優れた特性のシフトレバーユニットを提供すること。
【解決手段】シフトボタンの操作に応じたロックピンの変位を規制するシフトロックリンク15を備えたシフトレバーユニットでは、シフトロックリンク15を回動可能に軸支する支持軸が未挿入の自由状態において軸孔150の内周側に張り出すように位置すると共に、支持軸の挿入状態において弾性変形に応じて外周側に回動して支持軸に外接する弾性部材16がシフトロックリンク15に取り付けられている。
【解決手段】シフトボタンの操作に応じたロックピンの変位を規制するシフトロックリンク15を備えたシフトレバーユニットでは、シフトロックリンク15を回動可能に軸支する支持軸が未挿入の自由状態において軸孔150の内周側に張り出すように位置すると共に、支持軸の挿入状態において弾性変形に応じて外周側に回動して支持軸に外接する弾性部材16がシフトロックリンク15に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動系を構成する自動変速機をコントロールするために運転者が操作するシフトレバーを備えるシフトレバーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の駆動系を構成する自動変速機をコントロールするために運転者が操作するシフトレバーを含むシフトレバーユニットが知られている。シフトレバーユニットでは、複数のシフト位置のうちの何れかを、運転者がシフトレバーを利用して選択可能である。シフトレバーユニットで選択可能な各シフト位置は、Pレンジ、Dレンジ等、自動変速機で設定されるシフトレンジに個別に対応している。
【0003】
シフトレバーユニットと自動変速機との間には、例えば、シフトケーブル等を利用した機械的な伝達手段や、センサ等を利用した電気的な伝達手段等が介設されている。シフトレバーユニットで選択されたシフト位置は、上記のような伝達手段を介して自動変速機側に伝達され、そのシフト位置に対応するシフトレンジが自動変速機側で設定される。
【0004】
シフトレバーユニットでは、運転者の肘がシフトレバーに当たったり、同乗者がシフトレバーに触れたりしたこと等に起因する意図しない操作を未然に回避するための安全機構が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。このような安全機構としては、例えば、シフトレバーの外周側に突出するロックピンと、シフトレバーの回動に伴うロックピンの変位を規制する規制面と、を組み合わせた機構が知られている。
【0005】
このような安全機構では、運転者の持ち手をなすシフトノブに設けられたシフトボタンの押込み操作に応じて、前記規制面を乗り越えられる位置までロックピンが変位できるようになっている。シフトボタンを操作しない状態では、意図しないシフトレバーの操作が禁止され得る一方、シフトボタンを押し込めば、運転者の意図に沿ってシフトレバーを操作可能である。
【0006】
さらに、近年では、PレンジからDレンジにシフト操作されたときの車両の急発進等を確実性高く回避するためのシフトロック機構が実現されている。シフトロック機構は、ブレーキペダルが踏み込まれていないときにロックピンの変位を不可能にする機構である。このシフトロック機構としては、例えば、ロックピンの変位を規制するロック位置と、変位を許容するアンロック位置と、の間を回動変位するシフトロックリンクを採用した機構が知られている。ブレーキペダルの踏み込み状態では、ソレノイドへの通電に応じてシフトロックリンクがアンロック位置に変位し、これにより、シフトボタンの押し込み操作を前提としたシフトレバーの操作が可能になる。
【0007】
しかしながら、前記従来のシフトレバーユニットでは、次のような問題がある。すなわち、シフトロックリンクを回動可能に軸支するためには、軸孔に対して支持軸を若干小径に形成し、いわゆる隙間嵌めの軸支構造を採用する必要がある。隙間嵌めの軸支構造など、前記支持軸の外周面と前記軸孔の内周面との間にある程度の隙間を持たせた軸支構造は、前記シフトロックリンクを回動可能に軸支するのに適している。一方、このような軸支構造では、前記支持軸の周囲のどの部分に隙間が生じ、どの部分が前記軸孔の内周面に当接するかが不定となる軸支状態が不可避である。このような軸支状態のシフトロックリンクをソレノイド等によって駆動すると、前記軸支状態が変動し、前記支持軸の外周面と前記軸孔の内周面との間で接触音等の異音が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−30680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、シフトロック機構を採用したシフトレバーユニットであって、シフトロック機構からの異音の発生を抑制した優れた特性のシフトレバーユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、初期シフト位置を含む複数のシフト位置のうちの何れかを選択するために所定のシフト方向にシフトレバーを操作可能なシフトレバーユニットであって、
運転者の持ち手をなすシフトノブが先端に取り付けられるレバー本体と、
前記シフトレバーを構成する前記レバー本体を回動可能に軸支するベースブラケットと、
前記初期シフト位置から他のシフト位置に向けて前記シフトレバーが回動しようとする際に前記ベースブラケット側に設けられた規制面と当接して当該回動動作を規制すると共に、前記シフトノブに設けられた操作部の操作に応じて前記規制面に当接しない位置に変位可能なように前記シフトレバーに組み付けられるロックピンと、
前記ベースブラケット側に設けられた支持軸を内挿する軸孔を有し、該支持軸により回動可能に軸支され、前記操作部の操作に応じた前記ロックピンの変位を規制可能なロック位置と、前記ロックピンの変位を許容するアンロック位置と、に変位可能なシフトロックリンクと、
前記シフトロックリンクに設けられた被駆動部に係止される係止部を有し、該係止部を進退させることで前記支持軸の回りに前記シフトロックリンクを回動させるアクチュエータと、
前記軸孔の外周側に当たる位置で前記シフトロックリンクに固定される基部と、弾性変形に応じて該基部の回りを回動するように延設された延設部と、を含む弾性部材と、を備え、
該弾性部材は、前記軸孔に前記支持軸が未挿入時の自由状態においては、前記延設部の一部をなす押圧部が前記軸孔の内周側に張り出すように位置している一方、
前記支持軸の挿入状態では、弾性変形に応じて前記延設部が外周側に回動して前記支持軸に外接するシフトレバーユニットにある(請求項1)。
【0011】
本発明のシフトレバーユニットでは、前記シフトロックリンクの軸支構造に前記弾性部材が介在している。この弾性部材は、前記軸孔に前記支持軸を未挿入のとき、前記軸孔の内周側に前記押圧部が張り出す状態にある。一方、前記支持軸が挿入されたときには、前記延設部が外周側に回動し、前記押圧部が前記支持軸に外接する弾性変形状態となる。この状態の弾性部材は、前記軸孔の軸方向に直交する方向に前記支持軸を付勢する弾性力を発生させる。
【0012】
前記支持軸を上記のように軸方向に直交する方向に付勢すれば、前記軸孔の内周面のうち、前記押圧部とは反対側に位置する箇所に前記支持軸が押し当たる軸支状態を実現できる。このように前記支持軸を前記軸孔の内周面に押し当てておけば、前記アクチュエータの駆動に応じた前記シフトロックリンクの軸支状態の変動を抑制でき、異音の発生を抑えることができる。
【0013】
以上のように、本発明のシフトレバーユニットは、前記ロックピンの変位を規制する前記シフトロックリンクを採用したシフトレバーユニットであって、前記アクチュエータを動作させて前記シフトロックリンクを回動変位させるときに発生するおそれがある異音を抑制した優れた特性のシフトレバーユニットである。
【0014】
本発明におけるアクチュエータとしては、例えば、可動鉄心等のプランジャを磁気的に変位させるソレノイド等を採用できる。ソレノイドの場合には、通電に応じてプランジャが急激に変位するため異音が発生し易く、本発明の作用効果が一層有効になる。
本発明の好適な一態様における弾性部材は、前記アクチュエータによる前記シフトロックリンクの駆動方向とは反対側に向けて前記支持軸を付勢するように構成されている。前記アクチュエータで前記シフトロックリンクを駆動したときの瞬間的な動きを想定してみる。この動きでは、まず、前記シフトロックリンク全体がその駆動方向に引き込まれる。次に、前記軸孔の内周面のうち、前記アクチュエータによる駆動方向とは反対側に位置する箇所に前記支持軸が押し当たり、その後、この当接箇所が支点となって前記シフトロックリンクの回動が開始される。そこで、上記のように駆動方向とは反対側に向けて前記支持軸を付勢しておき、前記駆動方向とは反対側に位置する前記軸孔の内周面に予め前記支持軸を押し当てておけば、前記支持軸が押し当たる箇所の変動を抑制でき、これにより異音の発生を効果的に抑制できる。
【0015】
本発明の一態様のシフトレバーユニットにおいては、前記押圧部は、前記軸孔の軸方向に対して斜行するように配設されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、前記支持軸を軸孔に挿入していく際、前記押圧部の端に位置する1カ所を起点として前記支持軸の先端を徐々に押し当てていくことができる。前記押圧部の端から徐々に前記支持軸の先端を押し当てていけば、該押圧部を前記軸孔の外周側に徐々に後退させていくことができる。このように前記支持軸の挿入に応じて前記押圧部を徐々に後退させれば、比較的小さな力を挿入方向に作用するのみで前記支持軸を前記軸孔に挿入できる。前記支持軸を挿入する際、前記押圧部に対して挿入方向に過大な荷重が作用するおそれを抑制でき、前記弾性部材が押し曲げられてしまう等の組付時のトラブルを未然に回避できる。
【0016】
本発明の好適な一態様のシフトレバーユニットにおいては、前記支持軸の先端には、前記軸孔に挿入される際の挿入方向の荷重の少なくとも一部を、前記軸孔の外周側に向かう荷重に変換して前記押圧部に作用するガイド面が設けられていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、前記支持軸の挿入に応じて前記押圧部を外周側に押し戻すことができ、これにより、前記支持部に前記押圧部が外接する状態への移行を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、シフトレバーユニットの組付構造を示す組付図。
【図2】実施例1における、シフトレバーユニットをベースブラケット側から見込む側面図。
【図3】実施例1における、シフトレバーユニットをシフトレバー側から見込む側面図。
【図4】実施例1における、シフトレバーの断面構造を示す断面図。
【図5】実施例1における、ディテントスプリングの取付構造を示す斜視図。
【図6】実施例1における、レバー本体を示す正面図。
【図7】実施例1における、ベースブラケットを示す正面図。
【図8】実施例1における、シフト軸の軸支構造を示す断面図(A−A線矢視断面。)。
【図9】実施例1における、ソレノイドを示す正面図。
【図10】実施例1における、シフトロックリンクを示す斜視図。
【図11】実施例1における、シフトロックリンクを示す側面図。
【図12】実施例1における、シフトロックリンクを示す正面図。
【図13】実施例1における、第1の組付手順を示す説明図。
【図14】実施例1における、第2の組付手順を示す説明図。
【図15】実施例1における、シフトレバーがNレンジにあるときのシフトレバーユニットを示す説明図。
【図16】実施例1における、シフトロックリンクがアンロック位置に回動した状態を示す説明図。
【図17】実施例1における、シフトロックリンクの軸支状態を示す説明図。
【図18】実施例1における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図。
【図19】実施例1における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図(B−B線矢視断面図。)。
【図20】実施例1における、その他の弾性部材を示す説明する。
【図21】実施例2における、シフトロックリンクを示す斜視図。
【図22】実施例2における、シフトロックリンクを示す側面図。
【図23】実施例2における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図。
【図24】実施例2における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図(C−C線矢視断面図。)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、所定のシフト方向にシフトレバー10を操作可能なシフトレバーユニット1に関する例である。この内容について、図1〜図20を用いて説明する。
【0019】
本例のシフトレバーユニット1は、図1〜図3のごとく、図示しない車両の前後方向に当たるシフト方向にシフトレバー10を操作可能なストレート式のシフトレバーユニットである。このシフトレバーユニット1は、運転者がシフトレバー10を操作しやすいように運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される。なお、以下の説明における「シフト方向」は、シフトレバー10の操作方向のみならず、この操作方向に当たる車両の前後方向を意味している。
【0020】
このシフトレバーユニット1によれば、車両の前側からシフト方向に沿って配列されたパーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)、セカンドレンジ(2レンジ)、ローレンジ(Lレンジ)のうちの何れかをシフト位置として選択できる。シフトレバーユニット1では、Pレンジが初期シフト位置となっている。本例のシフトレバーユニット1は、シフト位置をPレンジにロックするシフトロック機能を備えている。
【0021】
シフトレバーユニット1では、レバー本体2を含むシフトレバー10がベースブラケット3に回動可能な状態で軸支されている。このシフトレバーユニット1は、シフトパネル18を介してシフトレバー10の先端が車室側に突出するように車両に取り付けられる。シフトパネル18には、シフトロック機能を解除するための操作ボタンであるロック解除ボタン181(図2参照。)が配設されている。ここで、ロック解除ボタン181の操作によるシフトロック機能の解除は、車両のイグニッションがオフの状態でシフト操作したいとき等のイレギュラーな操作である。通常操作では、図示しないブレーキペダルの踏み込み操作によってシフトロック機能が解除されるようになっている。なお、図1では、シフトパネル18及び符合17のソレノイドの図示を省略してある。
【0022】
シフトレバー10は、レバー本体2のほか、その先端に取り付けられるシフトノブ4、シフトノブ4に配設されるシフトボタン5、レバー本体2に内挿配置されるディテントロッド61、シフト操作に適度な操作感を与えるディテントスプリング62等を備えている。
【0023】
シフトノブ4は、図1〜図4のごとく、シフト操作に際して運転者が把持する持ち手をなす部分である。シフトノブ4は、略円柱形状を横に向けたような中空構造の把持部41と、シフト本体2に固定するための取付部42と、により構成されている。運転者側に面する把持部41の側面には、中空の内部と連通するボタン取付孔40が開口している。このボタン取付孔40には、押し込み方向に進退可能な状態でシフトボタン5が配置される。運転者側の側面に配置されるシフトボタン5は、シフトノブ4を左手で把持した運転者が親指で操作可能である。
【0024】
シフトボタン5は、図1及び図4に示すごとく、シフト操作を可能とするための操作ボタンである。シフトボタン5は、運転者が親指で押し込むボタン頭部51のほか、ボタン頭部51の裏面に立設されたカム部52及びガイド部53を備えている。カム部52は、シフトボタン5の押し込み操作に応じてディテントロッド61を軸方向に引き上げるために作用する部分である。ガイド部53は、シフトボタン5の押し込み方向の進退動作をガイドするためのレールのように作用する部分である。なお、ガイド部53に対応するシフトノブ4側の収容構造については、図示を省略してある。
【0025】
カム部52は、図1及び図4のごとく、略一定厚さの片状をなし、高さ方向上方に面するカム面521、522を有している。カム部52の先端側に位置する第1のカム面521は、高さ方向の幅が先端から次第に大きくなるように形成され、高さ方向の幅が急激に小さくなる垂直面525に連なっている。垂直面525は、カム部52の高さ方向の幅を一定にする平坦部527を介して第2のカム面522に連なっている。第2のカム面522は、第1のカム面521と同様、高さ方向の幅を次第に大きくするように形成され、そのまま、ボタン頭部51の裏面に達している。第1のカム面521は、組立時にディテントロッド61にカム部52を係合させるためのカム面である。第2のカム面522は、組立後の完成状態において、シフトボタン5の押し込み操作に応じてディテントロッド61を軸方向に引き上げるためのカム面である。
【0026】
ディテントロッド61は、図1及び図4のごとく、中空構造のレバー本体2に内挿配置される略棒状の部材である。このディテントロッド61では、シフトノブ4側から順番に、カム受け部611、断面円形状の軸部612、軸部612よりも大径の大径部613が配置されている。カム受け部611は、断面円形状の両側を削り取ったような断面略矩形状を呈している。このカム受け部611には、シフトボタン5のカム部52を貫通配置させる貫通スリット孔610が穿孔されている。貫通スリット孔610の内周側面、特に、上部の内周側面は前記カム面521、522に対応するカムフォロアをなしている。
【0027】
ディテントロッド61の軸部612と大径部613との間に形成される棚面613Sは、ディテントロッド61を大径部613側に付勢するために軸部612に外挿配置される円筒状の付勢バネ65の座面をなしている。大径部613の外周側面には、径方向にカギ状に突出するロックピン615が立設されている。
【0028】
ディテントスプリング62は、図1、図3及び図5のごとく、バネ鋼よりなる略短冊状の板バネである。このディテントスプリング62は、2箇所の係止部621、622を介してレバー本体2に取り付けられる。第1の係止部621は、レバー本体2に固定される側の端部に形成されている。この第1の係止部621には、後述するレバー本体2の支持ピン253を貫通させるための貫通孔623が穿孔されている。第2の係止部622は、略短冊状の外形状の両側から外側に突出する一対の突出片626よりなる。自由端をなす端部には、ベースブラケット3側に押し当たる当接部625が形成されている。当接部625は、バネ鋼を屈曲させて形成された部分であり、幅方向において略一定の断面凸形状を呈している。
【0029】
レバー本体2は、図1〜図6のごとく、略矩形の断面外形状を呈する中空棒状の筒部21と、筒部21の側面に当たる立設面201に立設されたシフト軸20と、シフト軸20を介して対向する位置に立設された一対の係合部22と、図示しないシフトケーブルを係止するコントロールレバー28と、を有している。本例のシフトレバーユニット1では、コントロールピン281に係止されたシフトケーブル(図示略)を介してシフトレバー10の回動動作が自動変速機(図示略)側に伝達される。
【0030】
筒部21は、図4のごとく、シフトノブ4側の断面円形状の第1の中空部211と、第2の中空部212と、よりなる2段の中空構造を呈している。第1の中空部211よりも第2の中空部212の方が内径が大きく、両者の境界には棚面213が形成されている。この棚面213は、ディテントロッド61に外挿配置される付勢バネ65の座面をなしている。筒部21の中空部211側の端部には、シフトノブ4の取付部215が形成されている。シフト軸20の立設位置を超えて延設された第2の中空部212側の端部には、軸方向に長い溝状のスリット孔210が設けられている。
【0031】
シフト軸20の立設面201には、図1、図2、図4及び図8のごとく、シフト軸20を介して対向する一対の係合部22が設けられている。略カギ状の係合部22は、立設面201から突出する支柱部221と、支柱部221の先端側からシフト軸20の軸芯に向かって内周側に突出するように延設されたカギ状部222と、よりなる。カギ状部222には、レバー本体2の立設面201側に面する係合面220が形成されている。
【0032】
スリット孔210は、図1、図2及び図4のごとく、ディテントロッド61のロックピン615を突出させると共に、軸方向の進退を可能とするための貫通溝である。本例では、筒部21の先端に開口するスリット孔210を採用している。このようなスリット孔210を設けた筒部21に対しては、ロックピン615を一体形成したディテントロッド61の挿入が可能である。本例のレバー本体2では、幅方向両側の側壁に同様のスリット孔210が設けられ、これにより先割れ状に分割された一対の先割れ端25及び27が形成されている。
【0033】
一方の先割れ端25には、図5及び図6のごとく、ディテントスプリング62の第1の係止部621が係止される第1の支持部251が形成されている。第1の支持部251には、ディテントスプリング62の端部を貫通配置させる貫通窓250、及び支持面254が形成されている。支持面254には、ディテントスプリング62の貫通孔623に嵌る支持ピン253、及びディテントスプリング62の端部を押さえ込むカギ状のクリップ部255が設けられている。
【0034】
他方の先割れ端27には、ディテントスプリング62の突出片626を支持する第2の支持部272が形成されている。略くさび形状に切り欠かれた支持部272によれば、ディテントスプリング62の突出片626を脱落させることなく確実性高く支持できる。本例のシフトレバーユニット1では、一対の先割れ端25及び27を離隔させるような弾性変形がディテントスプリング62の取付構造によって確実性高く抑えられている。
【0035】
次に、ベースブラケット3は、図1〜図3及び図7のごとく、図示しない車両側に取り付けられた状態でシフトレバー10を軸支する部材である。このベースブラケット3には、シフトレバー10のほか、シフトロックリンク15、ソレノイド(アクチュエータ)17が取り付けられる。ベースブラケット3は、シフト軸20を挿入する軸孔30を設けた略円柱状の軸支部31と、軸支部31を剛性高く支持すると共に車両に対する取付ステーとしての機能を備えたブラケット部35と、を備えている。
【0036】
略円柱状を呈する軸支部31の外周面には、径方向外周側につば状に突出する支持部32が形成されている。支持部32は、軸孔30を介して対向する2箇所に配設されている。支持部32の表面は、レバー本体2の係合面220と僅かな隙間を介して対面する受け面320をなしている(図8参照。)。
【0037】
支持部32は、シフトレバー10の操作範囲に対応できるように周方向における所定の角度範囲に渡って形成されている。それ故、支持部32は、シフトレバーユニット1におけるシフトレバー10の操作位置に関わらず、レバー本体2の係合面220に必ず対面する。各支持部32の時計方向の端部は、軸孔30の貫通方向に貫通する空間に面する開放端328となっている。一方、反時計方向の端部は壁面に接している。
【0038】
ブラケット部35は、車体側に螺入される固定ボルトを貫通配置させる取付孔350、支持部32の外周部分を避けて軸支部31を支持する支持腕部351、組み付けられたシフトレバー10のロックピン615(図1、図2及び図4参照。)を収容するディテント部7、及びシフトロックリンク15等を収容するシフトロック収容部33を有している。
【0039】
ディテント部7は、円弧状の内周壁面70と、軸孔30の中心からの距離が異なる外周側の階段状の底面71と、階段状に隣り合う底面71間の規制面710と、により形成された空間である。底面71は、シフトレバー10のシフト位置に対応しており、図7中、時計回り上流側から順番に、Pレンジの底面71P、Rレンジの底面71R、Nレンジ及びDレンジに共通する底面71ND、2レンジの底面712、Lレンジの底面71Lが形成されている。また、Rレンジの底面71RとPレンジの底面71Pとの間には、非常に浅い底面の境界部71Vが設けられている。なお、本例のディテント部7では、Lレンジの底面71Lに対面する部分のみ、内周壁面70が形成されておらず、ディテント部7を内周側の空間730に連通させる抜き孔73が形成されている。
【0040】
シフトレバー10を組み付ける側のベースブラケット3の側面には、軸孔30と同心、かつ、大径円弧状をなす摺動面77が設けられている(図3参照。)。この摺動面77は、シフトレバー10を操作したときに、ディテントスプリング62の当接部625が押し当たりながら摺動する面である。この摺動面77は、シフトレバー10の操作範囲に対応して設けられている。さらに、Dレンジ、Pレンジ等の各シフト位置に対応して、それぞれ、凹状の窪み部770が形成されている。この窪み部770と当接部625との組合せによれば、シフトレバー10を操作する際、シフト位置毎に適度な操作感を与えることができる。
【0041】
シフトロック収容部33には、シフトロックリンク15を回動可能な状態で保持するリンク保持部332と、シフトロックリンク15を回動変位させるソレノイド17を保持するソレノイド保持部335と、が設けられている。
リンク保持部332の底面には、図7のごとく、シフトロックリンク15を回動支持する支持軸331が立設されている。この支持軸331の先端の角部には、外周全周に渡ってテーパー状のガイド面331T(図18及び図19参照。)が形成されている。さらに、リンク保持部332のディテント部7側の外周には、シフトロックリンク15の回動範囲を規制する壁面334が形成されている。
【0042】
ソレノイド保持部335は、ソレノイド17を保持する壁部により形成されている。ソレノイド保持部335では、周方向の1カ所において壁部が未形成となっている。この1カ所には、ソレノイド17の動作をシフトロックリンク15に伝達する部材が貫通配置される。
【0043】
ソレノイド17は、図9のごとく、図示しない円筒状のコイルの中心にプランジャ(可動鉄心)が内挿配置されたアクチュエータである。本例のソレノイド17は、コイルへの通電に応じてプランジャが引き込まれるプル型のソレノイドである。プランジャの先端には、シフトロックリンク15に係止される係止部171が取り付けられている。この係止部171は、中間軸173に外挿されたスプリング175により突出方向に付勢されている。
【0044】
シフトロックリンク15は、図10〜図12のごとく、略中央の屈曲部に軸孔150が穿孔された略ブーメラン形状の部材である。シフトロックリンク15は、軸孔150に挿入された支持軸331(図7参照。)により回動可能に軸支される。略ブーメラン形状の一方の端部側には、ロックピン615の変位を規制する規制部151が設けられ、他方の端部側には、ロック解除ボタン181の押込み操作を伝達するリンク部材183(図2参照。)が作用するレバー部153が設けられている。
【0045】
規制部151側には、ソレノイド17の係止部171が係止される駆動ピン155(被駆動部)と、幅方向外側に張り出すように取り付けられたゴムリング158と、が配設されている。シフトロックリンク15は、駆動ピン155に係止された係止部171(図9参照。)の進退に応じて回動する。ゴムリング158は、シフトロックリンク15がロック位置にあるとき(図2参照。)、ベースブラケット3の壁面334に当接するように取り付けられた緩衝部材である。シフトリンク15の規制部151側の側面には、弾性部材16を取りつけるための取付孔152が貫通している。また、軸孔150の外周に当たる側面には、弾性部材16の他端を回動可能に収容し、軸孔150の内周側に張り出させるための溝157が穿設されている。
【0046】
本例のシフトロックリンク15には、図10〜図12のごとく、軸支構造のがたを解消するための弾性部材16が装着されている。弾性部材16は、ばね鋼よりなる線材を折り曲げて形成された部材である。弾性部材16は、シフトロックリンク15に固定される基部161と、基部161から延設された延設部162と、よりなる。基部161は、シフトロックリンク15を幅方向に貫通する取付孔152に貫通配置され、略コの字状に折り曲げられている。基部161は、シフトロックリンク15を幅方向に挟み込むように固定される。延設部162は、シフトロックリンク15の側面に沿うように配設されるアーム部163と、この側面に穿設された溝157を介して軸孔150の内周側に張り出す押圧部165と、よりなる。延設部162は、軸孔150に支持軸331が挿入された状態では、支持軸331に押圧部165が外接するように外周側に回動する。
【0047】
次に、上記の各部品の組み立て手順を説明することにより、本例のシフトレバーユニット1の組付構造を説明する。なお、説明において参照する図13及び図14では、シフトノブ4を省略してある。
ベースブラケット3に対してレバー本体2を組み付けるに当たっては、図4のごとく、予めシフトレバー10を組み立てておくのが良い。シフトレバー10を組み立てるに当たっては、まず、レバー本体2の取付部215にシフトノブ4を取り付ける。次に、軸部612に付勢バネ65を外挿したディテントロッド61を、シフトノブ4の反対側から筒部21に挿入する。付勢バネ65は、筒部21内部の棚面213、及びディテントロッド61の棚面613Sを座面として圧縮されることになり、ディテントロッド61をロックピン615側に付勢する付勢力を発生する。
【0048】
付勢バネ65の付勢力に対抗してディテントロッド61をシフトノブ4側に押し込んでいき、ロックピン615をレバー本体2のスリット孔210に収容させると共に、シフトノブ4のボタン取付孔40の開口位置にカム受け部611の貫通スリット孔610を位置させる。この状態で、ボタン取付孔40に向けてシフトボタン5を押し込むように挿入していけば、貫通スリット孔610にカム部52の先端を押し込んでいくことができる。
【0049】
このとき、カムフォロアをなす貫通スリット孔610の内周側面に第1のカム面521が接触し、ディテントロッド61が軸方向に引き上げられる。カム部52の垂直面525がカム受け部611を超えるまでシフトボタン5を押し込むと、付勢バネ65の付勢力により貫通スリット孔610の内周側面が平坦部527に当設する位置までディテントロッド61が押し下げられる。この状態への移行後は、カム部52の垂直面525がカム受け部611に係合するので、シフトボタン5を引き抜き不可能になる。シフトボタン5を取り外すためには、ロックピン615を手で押し上げてディテントロッド61を引き上げながらカム部52を引き抜く必要がある。
【0050】
次に、ソレノイド17及びシフトロックリンク15を組み付けたベースブラケット3に対してシフトレバー10を組み付ける。シフトレバー10の組み付けでは、まず、ベースブラケット3の軸孔30と、シフトレバー10のシフト軸20と、が同軸となるようにシフトレバー10及びベースブラケット3を相対させる。さらに、このとき、シフト軸20を中心としてシフトレバー10の相対回動角度を調整することにより、シフトレバー10の係合部22がベースブラケット3の支持部32の開放端328を超えて位置する所定の組付角度を設定する(図13参照。)。
【0051】
シフトレバー10の相対回動角度を調整できたら、シフト軸20の軸方向に沿ってシフトレバー10を並進させてベースブラケット3の軸孔30にシフト軸20を挿入していく。このとき、ディテント部7の内周側の空間730にロックピン615が位置するよう、ディテントロッド61を引き上げておく(図13参照。)。
【0052】
このようにベースブラケット3に対してシフトレバー10を組み合わせた後、Lレンジのシフト位置までシフトレバー10を反時計方向に回動させる(図14参照。)。ベースブラケット3のディテント部7には、Lレンジのシフト位置に対応して抜き孔73が設けられている。したがって、Lレンジのシフト位置までシフトレバー10を回動させると、付勢バネ65に付勢されてロックピン615が抜き孔73を介してディテント部7側に突出し、底面71Lに押し付けられる。
【0053】
なお、本例のシフトレバーユニット1では、シフトボタン5の押込み操作によっては、抜き孔73を超えてロックピン615が内周側に変位しないように設定されている。それ故、シフトレバー10を操作できる範囲は、専らディテント部7においてロックピン615が回動できる範囲に制限されることになり、図13のごとくシフトレバー10を回動させることが不可能な状態となる。
【0054】
以上のように組み付けたシフトレバーユニット1の動作について説明する。例えば、上記のようにLレンジが選択された状態で組み付けられたシフトレバーユニット1では、シフトボタン5を押込み操作することなく、Lレンジ→2レンジ→Dレンジ→Nレンジ(図15に示すシフト位置)に操作可能である。LレンジからNレンジに向かっては、対応する底面71が次第に深くなっていくので、ロックピン615が変位する側に規制面710が現れないからである。
【0055】
一方、例えば、Nレンジ(図15参照。)からRレンジにシフト操作するに当たっては、Rレンジの底面71Rの方がNレンジの底面71NDよりも浅いので、ロックピン615の変位を規制する規制面710が現れる。そのため、Rレンジにシフト操作するに当たっては、底面71Rと底面71NDとの間の規制面710を乗り越えられるよう、シフトボタン5を押し込んでロックピン615を内周側に位置させた上でシフトレバー10を操作する必要がある。
【0056】
さらに、RレンジからPレンジにシフト操作するに当たっては、境界部71Vを乗り越えられるようにシフトボタン5を押し込んでロックピン615を内周側に位置させた上でシフトレバー10を操作する必要がある。このとき、シフトロックリンク15は、図15における時計回転方向に付勢され、ゴムリング158が壁面334に当接するロック位置に位置している。ロック位置のシフトロックリンク15は、Pレンジにシフト操作されたときのロックピン615が収容される空間を規制部151により閉塞する状態にある。
【0057】
一方、非通電状態のソレノイド17では、そのプランジャに対してスプリング175の付勢力が作用しているのみである。したがって、シフトロックリンク15をアンロック位置に向けて回動させようとする外力が作用すれば、プランジャは比較的容易に変位し得る。Pレンジへのシフト操作に伴ってロックピン615が左側から規制部151に押し当たると、その当接荷重に応じてプランジャが押し込み方向に変位し、シフトロックリンク15がアンロック位置に回動変位する。それ故、図15のごとくシフトロックリンク15がロック位置にあっても、他のシフト位置からPレンジへのシフト操作が可能である。
【0058】
初期シフト位置であるPレンジに操作されると、ソレノイド17のスプリング175に付勢されて係止部171が突出方向に変位し、これに応じてシフトロックリンク15がロック位置に復帰する(図2に示す状態)。ゴムリング158が壁面334に当接するシフトロックリンク15の回動位置がロック位置となっているので、ロック位置への復帰時に異音が発生することがない。
【0059】
シフトロックリンク15がロック位置に復帰した状態では、図2のごとく、Pレンジのシフトレバー10のロックピン615が変位する経路を閉塞するように規制部151が位置している。この状態では、ロックピン615の変位が規制され、シフトボタン5を操作しても境界部71Vを乗り越えられる位置までロックピン615を変位させることが不可能になる。図示しないブレーキペダルが踏み込み操作されれば、ソレノイド17への通電に応じてプランジャが引き込まれ、係止部171と駆動ピン155との係合構造に応じてシフトロックリンク15がアンロック位置に回動変位し、シフトロック機能が解除される。シフトロック機能が解除された状態では、シフトボタン5の操作に応じてロックピン615を変位でき、Pレンジから他のシフト位置への操作が可能になる(図16参照。)。
【0060】
ソレノイド17への通電に応じてシフトロックリンク15がアンロック位置に回動変位する際、シフトロックリンク15に取り付けられた弾性部材16が有効に作用する。この作用効果について、図17を参照して説明する。弾性部材16は、シフトロックリンク15に挿入された支持軸331に外接する。このとき、弾性部材16は、弾性変形に応じて延設部162が外周側に回動した状態にあり、支持軸331の外周面を軸方向に直交する方向に付勢する状態にある。このように付勢された支持軸331は、ソレノイド17による駆動方向(図中、矢印で図示する方向。)とは反対側の軸孔150の内周面に押し当たった状態となる。
【0061】
ソレノイド17が動作してシフトロックリンク15を手前側に引き込むように駆動した際、シフトロックリンク15全体がソレノイド17側に並進しようとする。一方、本例のシフトレバーユニット1では、シフトロックリンクの軸孔150の内周面のうち、ソレノイド17による駆動方向とは反対側の内周面に支持軸331が押し当たる状態となっている。それ故、上記のようにソレノイド17の動作に応じてシフトロックリンク15全体がソレノイド17側に並進しようとしても、軸孔150の内周面に対する支持軸331の当接箇所が変動するおそれが少ない。したがって、本例のシフトレバーユニット1では、ソレノイド17によってシフトロックリンク15を回動変位させる際、軸孔150の内周面に対する支持軸331の当接箇所が変動して異音が発生するおそれが非常に少なくなっている。
【0062】
このように、本例のシフトレバーユニット1では、シフトロックリンク15の軸支構造に弾性部材16が介在しており、この弾性部材16の作用によりシフトロック機能が解除されるときの機械的な動作音が抑制されている。
【0063】
また、シフトロックリンク15をベースブラケット3に組み付ける際には、図18及び図19のごとく、支持軸331の先端に設けたガイド面331Tが有効に作用する。このガイド面331Tによれば、軸孔150の内周側に張り出した押圧部165に支持軸331が押し当たる当接荷重を外周側に向かう荷重に変換できる。この外周側の荷重によれば、押圧部165を外周側に回動させることができる。このようなガイド面331Tを設けた支持軸331によれば、軸孔150への挿入に応じて押圧部165を外周側に押し込みでき、上記のごとく押圧部165が支持軸331に外接する組み付け状態を容易に実現できる。なお、本例に代えて、ガイド面331Tを省略することも可能である。この場合には、支持軸331を軸孔150に挿入する際、その内周側に張り出した押圧部165を外周側に押し戻しておく必要がある。
【0064】
なお、本例は、バネ鋼よりなる線材を折り曲げて形成された弾性部材を採用した例である。本例に代えて、バネ鋼よりなる板材を折り曲げて形成された弾性部材を採用することも良い。
なお、図20のごとく、押圧部165を上下2段に配設することも良い。上下2段の押圧部165によれば、支持軸331を一層バランス良く付勢できる。一方、1段目の押圧部165の回動に2段目の押圧部165が連動するように弾性部材165を構成すると共に、支持軸331の挿入方向手前側の1段目の張り出し量を2段目よりも小さくしておくことも良い。支持軸331の先端が1段目の押圧部165を通過したときに、2段目の押圧部165を外周側に後退させておくことができ、これにより張り出し量の大きな2段目の押圧部165に対する支持軸331の挿入が容易になる。
【0065】
(実施例2)
本例は、実施例1のシフトレバーユニットを基にして、シフトロックリンク15における弾性部材の配設形状を変更した例である。この内容について、図21〜図24を参照して説明する。
本例のシフトロックリンク15では、軸孔150の軸方向に対して押圧部165が斜行するように弾性部材16が取り付けられている。シフトロックリンク15側に穿設される溝157も軸方向に対して斜行するように穿設されている。
【0066】
支持軸331に対してシフトロックリンク15を組み付ける際、図23及び図24のごとく、軸孔150の軸方向、すなわち支持軸331の挿入方向に対して斜行する押圧部165が有効に作用する。軸孔150へ支持軸331が挿入される際には、まず、押圧部165のうち基部161側に最も近い箇所が支持軸331の先端面に当接する。上記のごとく、押圧部165は、軸方向に対して斜行するように配置され、その先端に近づくほど挿入方向奥側に位置しているからである。また、押圧部165のうちの基部161側に最も近い箇所は、軸孔150の内周面からの張り出し量が最も小さくなっている。この箇所は、支持軸331の挿入に応じて比較的容易に外周側に押し込まれ、これにより、押圧部165全体が外周側に若干、後退するように変位する。
【0067】
さらに、支持軸331を挿入していけば、支持軸331の外周面に当接する押圧部165の範囲が次第に拡がっていき、押圧部165の外周側への後退量、すなわち延設部162の回動変位量が次第に大きくなっていく。押圧部165のうち、自由状態において内周面からの張り出し量が最大となる箇所に支持軸331が到達したときには、それまでに生じた延設部162の外周側への回動に応じてその箇所の張り出し量がごく僅かになっている。それ故、さらに支持軸331を挿入すれば、極めて容易に、無理なく押圧部165を支持軸331に外接させることができる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0068】
以上のごとく本発明の実施例を詳細に説明したが、これらの実施例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、実施例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して実施例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0069】
1 シフトレバーユニット
10 シフトレバー
15 シフトロックリンク
150 軸孔
151 規制部
152 取付孔
153 レバー部
155 駆動ピン(被駆動部)
157 溝
16 弾性部材
161 基部
162 延設部
163 アーム部
165 押圧部
17 ソレノイド
171 係止部
2 レバー本体
20 シフト軸
210 スリット孔
22 係合部
3 ベースブラケット
30 軸孔
32 支持部
33 シフトロック収容部
331 支持軸
331T ガイド面
335 ソレノイド保持部
4 シフトノブ
5 シフトボタン(操作部)
52 カム部
61 ディテントロッド
615 ロックピン
62 ディテントスプリング
7 ディテント部
710 規制面
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動系を構成する自動変速機をコントロールするために運転者が操作するシフトレバーを備えるシフトレバーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の駆動系を構成する自動変速機をコントロールするために運転者が操作するシフトレバーを含むシフトレバーユニットが知られている。シフトレバーユニットでは、複数のシフト位置のうちの何れかを、運転者がシフトレバーを利用して選択可能である。シフトレバーユニットで選択可能な各シフト位置は、Pレンジ、Dレンジ等、自動変速機で設定されるシフトレンジに個別に対応している。
【0003】
シフトレバーユニットと自動変速機との間には、例えば、シフトケーブル等を利用した機械的な伝達手段や、センサ等を利用した電気的な伝達手段等が介設されている。シフトレバーユニットで選択されたシフト位置は、上記のような伝達手段を介して自動変速機側に伝達され、そのシフト位置に対応するシフトレンジが自動変速機側で設定される。
【0004】
シフトレバーユニットでは、運転者の肘がシフトレバーに当たったり、同乗者がシフトレバーに触れたりしたこと等に起因する意図しない操作を未然に回避するための安全機構が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。このような安全機構としては、例えば、シフトレバーの外周側に突出するロックピンと、シフトレバーの回動に伴うロックピンの変位を規制する規制面と、を組み合わせた機構が知られている。
【0005】
このような安全機構では、運転者の持ち手をなすシフトノブに設けられたシフトボタンの押込み操作に応じて、前記規制面を乗り越えられる位置までロックピンが変位できるようになっている。シフトボタンを操作しない状態では、意図しないシフトレバーの操作が禁止され得る一方、シフトボタンを押し込めば、運転者の意図に沿ってシフトレバーを操作可能である。
【0006】
さらに、近年では、PレンジからDレンジにシフト操作されたときの車両の急発進等を確実性高く回避するためのシフトロック機構が実現されている。シフトロック機構は、ブレーキペダルが踏み込まれていないときにロックピンの変位を不可能にする機構である。このシフトロック機構としては、例えば、ロックピンの変位を規制するロック位置と、変位を許容するアンロック位置と、の間を回動変位するシフトロックリンクを採用した機構が知られている。ブレーキペダルの踏み込み状態では、ソレノイドへの通電に応じてシフトロックリンクがアンロック位置に変位し、これにより、シフトボタンの押し込み操作を前提としたシフトレバーの操作が可能になる。
【0007】
しかしながら、前記従来のシフトレバーユニットでは、次のような問題がある。すなわち、シフトロックリンクを回動可能に軸支するためには、軸孔に対して支持軸を若干小径に形成し、いわゆる隙間嵌めの軸支構造を採用する必要がある。隙間嵌めの軸支構造など、前記支持軸の外周面と前記軸孔の内周面との間にある程度の隙間を持たせた軸支構造は、前記シフトロックリンクを回動可能に軸支するのに適している。一方、このような軸支構造では、前記支持軸の周囲のどの部分に隙間が生じ、どの部分が前記軸孔の内周面に当接するかが不定となる軸支状態が不可避である。このような軸支状態のシフトロックリンクをソレノイド等によって駆動すると、前記軸支状態が変動し、前記支持軸の外周面と前記軸孔の内周面との間で接触音等の異音が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−30680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、シフトロック機構を採用したシフトレバーユニットであって、シフトロック機構からの異音の発生を抑制した優れた特性のシフトレバーユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、初期シフト位置を含む複数のシフト位置のうちの何れかを選択するために所定のシフト方向にシフトレバーを操作可能なシフトレバーユニットであって、
運転者の持ち手をなすシフトノブが先端に取り付けられるレバー本体と、
前記シフトレバーを構成する前記レバー本体を回動可能に軸支するベースブラケットと、
前記初期シフト位置から他のシフト位置に向けて前記シフトレバーが回動しようとする際に前記ベースブラケット側に設けられた規制面と当接して当該回動動作を規制すると共に、前記シフトノブに設けられた操作部の操作に応じて前記規制面に当接しない位置に変位可能なように前記シフトレバーに組み付けられるロックピンと、
前記ベースブラケット側に設けられた支持軸を内挿する軸孔を有し、該支持軸により回動可能に軸支され、前記操作部の操作に応じた前記ロックピンの変位を規制可能なロック位置と、前記ロックピンの変位を許容するアンロック位置と、に変位可能なシフトロックリンクと、
前記シフトロックリンクに設けられた被駆動部に係止される係止部を有し、該係止部を進退させることで前記支持軸の回りに前記シフトロックリンクを回動させるアクチュエータと、
前記軸孔の外周側に当たる位置で前記シフトロックリンクに固定される基部と、弾性変形に応じて該基部の回りを回動するように延設された延設部と、を含む弾性部材と、を備え、
該弾性部材は、前記軸孔に前記支持軸が未挿入時の自由状態においては、前記延設部の一部をなす押圧部が前記軸孔の内周側に張り出すように位置している一方、
前記支持軸の挿入状態では、弾性変形に応じて前記延設部が外周側に回動して前記支持軸に外接するシフトレバーユニットにある(請求項1)。
【0011】
本発明のシフトレバーユニットでは、前記シフトロックリンクの軸支構造に前記弾性部材が介在している。この弾性部材は、前記軸孔に前記支持軸を未挿入のとき、前記軸孔の内周側に前記押圧部が張り出す状態にある。一方、前記支持軸が挿入されたときには、前記延設部が外周側に回動し、前記押圧部が前記支持軸に外接する弾性変形状態となる。この状態の弾性部材は、前記軸孔の軸方向に直交する方向に前記支持軸を付勢する弾性力を発生させる。
【0012】
前記支持軸を上記のように軸方向に直交する方向に付勢すれば、前記軸孔の内周面のうち、前記押圧部とは反対側に位置する箇所に前記支持軸が押し当たる軸支状態を実現できる。このように前記支持軸を前記軸孔の内周面に押し当てておけば、前記アクチュエータの駆動に応じた前記シフトロックリンクの軸支状態の変動を抑制でき、異音の発生を抑えることができる。
【0013】
以上のように、本発明のシフトレバーユニットは、前記ロックピンの変位を規制する前記シフトロックリンクを採用したシフトレバーユニットであって、前記アクチュエータを動作させて前記シフトロックリンクを回動変位させるときに発生するおそれがある異音を抑制した優れた特性のシフトレバーユニットである。
【0014】
本発明におけるアクチュエータとしては、例えば、可動鉄心等のプランジャを磁気的に変位させるソレノイド等を採用できる。ソレノイドの場合には、通電に応じてプランジャが急激に変位するため異音が発生し易く、本発明の作用効果が一層有効になる。
本発明の好適な一態様における弾性部材は、前記アクチュエータによる前記シフトロックリンクの駆動方向とは反対側に向けて前記支持軸を付勢するように構成されている。前記アクチュエータで前記シフトロックリンクを駆動したときの瞬間的な動きを想定してみる。この動きでは、まず、前記シフトロックリンク全体がその駆動方向に引き込まれる。次に、前記軸孔の内周面のうち、前記アクチュエータによる駆動方向とは反対側に位置する箇所に前記支持軸が押し当たり、その後、この当接箇所が支点となって前記シフトロックリンクの回動が開始される。そこで、上記のように駆動方向とは反対側に向けて前記支持軸を付勢しておき、前記駆動方向とは反対側に位置する前記軸孔の内周面に予め前記支持軸を押し当てておけば、前記支持軸が押し当たる箇所の変動を抑制でき、これにより異音の発生を効果的に抑制できる。
【0015】
本発明の一態様のシフトレバーユニットにおいては、前記押圧部は、前記軸孔の軸方向に対して斜行するように配設されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、前記支持軸を軸孔に挿入していく際、前記押圧部の端に位置する1カ所を起点として前記支持軸の先端を徐々に押し当てていくことができる。前記押圧部の端から徐々に前記支持軸の先端を押し当てていけば、該押圧部を前記軸孔の外周側に徐々に後退させていくことができる。このように前記支持軸の挿入に応じて前記押圧部を徐々に後退させれば、比較的小さな力を挿入方向に作用するのみで前記支持軸を前記軸孔に挿入できる。前記支持軸を挿入する際、前記押圧部に対して挿入方向に過大な荷重が作用するおそれを抑制でき、前記弾性部材が押し曲げられてしまう等の組付時のトラブルを未然に回避できる。
【0016】
本発明の好適な一態様のシフトレバーユニットにおいては、前記支持軸の先端には、前記軸孔に挿入される際の挿入方向の荷重の少なくとも一部を、前記軸孔の外周側に向かう荷重に変換して前記押圧部に作用するガイド面が設けられていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、前記支持軸の挿入に応じて前記押圧部を外周側に押し戻すことができ、これにより、前記支持部に前記押圧部が外接する状態への移行を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、シフトレバーユニットの組付構造を示す組付図。
【図2】実施例1における、シフトレバーユニットをベースブラケット側から見込む側面図。
【図3】実施例1における、シフトレバーユニットをシフトレバー側から見込む側面図。
【図4】実施例1における、シフトレバーの断面構造を示す断面図。
【図5】実施例1における、ディテントスプリングの取付構造を示す斜視図。
【図6】実施例1における、レバー本体を示す正面図。
【図7】実施例1における、ベースブラケットを示す正面図。
【図8】実施例1における、シフト軸の軸支構造を示す断面図(A−A線矢視断面。)。
【図9】実施例1における、ソレノイドを示す正面図。
【図10】実施例1における、シフトロックリンクを示す斜視図。
【図11】実施例1における、シフトロックリンクを示す側面図。
【図12】実施例1における、シフトロックリンクを示す正面図。
【図13】実施例1における、第1の組付手順を示す説明図。
【図14】実施例1における、第2の組付手順を示す説明図。
【図15】実施例1における、シフトレバーがNレンジにあるときのシフトレバーユニットを示す説明図。
【図16】実施例1における、シフトロックリンクがアンロック位置に回動した状態を示す説明図。
【図17】実施例1における、シフトロックリンクの軸支状態を示す説明図。
【図18】実施例1における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図。
【図19】実施例1における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図(B−B線矢視断面図。)。
【図20】実施例1における、その他の弾性部材を示す説明する。
【図21】実施例2における、シフトロックリンクを示す斜視図。
【図22】実施例2における、シフトロックリンクを示す側面図。
【図23】実施例2における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図。
【図24】実施例2における、シフトロックリンクを組み付ける様子を示す説明図(C−C線矢視断面図。)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、所定のシフト方向にシフトレバー10を操作可能なシフトレバーユニット1に関する例である。この内容について、図1〜図20を用いて説明する。
【0019】
本例のシフトレバーユニット1は、図1〜図3のごとく、図示しない車両の前後方向に当たるシフト方向にシフトレバー10を操作可能なストレート式のシフトレバーユニットである。このシフトレバーユニット1は、運転者がシフトレバー10を操作しやすいように運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される。なお、以下の説明における「シフト方向」は、シフトレバー10の操作方向のみならず、この操作方向に当たる車両の前後方向を意味している。
【0020】
このシフトレバーユニット1によれば、車両の前側からシフト方向に沿って配列されたパーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)、セカンドレンジ(2レンジ)、ローレンジ(Lレンジ)のうちの何れかをシフト位置として選択できる。シフトレバーユニット1では、Pレンジが初期シフト位置となっている。本例のシフトレバーユニット1は、シフト位置をPレンジにロックするシフトロック機能を備えている。
【0021】
シフトレバーユニット1では、レバー本体2を含むシフトレバー10がベースブラケット3に回動可能な状態で軸支されている。このシフトレバーユニット1は、シフトパネル18を介してシフトレバー10の先端が車室側に突出するように車両に取り付けられる。シフトパネル18には、シフトロック機能を解除するための操作ボタンであるロック解除ボタン181(図2参照。)が配設されている。ここで、ロック解除ボタン181の操作によるシフトロック機能の解除は、車両のイグニッションがオフの状態でシフト操作したいとき等のイレギュラーな操作である。通常操作では、図示しないブレーキペダルの踏み込み操作によってシフトロック機能が解除されるようになっている。なお、図1では、シフトパネル18及び符合17のソレノイドの図示を省略してある。
【0022】
シフトレバー10は、レバー本体2のほか、その先端に取り付けられるシフトノブ4、シフトノブ4に配設されるシフトボタン5、レバー本体2に内挿配置されるディテントロッド61、シフト操作に適度な操作感を与えるディテントスプリング62等を備えている。
【0023】
シフトノブ4は、図1〜図4のごとく、シフト操作に際して運転者が把持する持ち手をなす部分である。シフトノブ4は、略円柱形状を横に向けたような中空構造の把持部41と、シフト本体2に固定するための取付部42と、により構成されている。運転者側に面する把持部41の側面には、中空の内部と連通するボタン取付孔40が開口している。このボタン取付孔40には、押し込み方向に進退可能な状態でシフトボタン5が配置される。運転者側の側面に配置されるシフトボタン5は、シフトノブ4を左手で把持した運転者が親指で操作可能である。
【0024】
シフトボタン5は、図1及び図4に示すごとく、シフト操作を可能とするための操作ボタンである。シフトボタン5は、運転者が親指で押し込むボタン頭部51のほか、ボタン頭部51の裏面に立設されたカム部52及びガイド部53を備えている。カム部52は、シフトボタン5の押し込み操作に応じてディテントロッド61を軸方向に引き上げるために作用する部分である。ガイド部53は、シフトボタン5の押し込み方向の進退動作をガイドするためのレールのように作用する部分である。なお、ガイド部53に対応するシフトノブ4側の収容構造については、図示を省略してある。
【0025】
カム部52は、図1及び図4のごとく、略一定厚さの片状をなし、高さ方向上方に面するカム面521、522を有している。カム部52の先端側に位置する第1のカム面521は、高さ方向の幅が先端から次第に大きくなるように形成され、高さ方向の幅が急激に小さくなる垂直面525に連なっている。垂直面525は、カム部52の高さ方向の幅を一定にする平坦部527を介して第2のカム面522に連なっている。第2のカム面522は、第1のカム面521と同様、高さ方向の幅を次第に大きくするように形成され、そのまま、ボタン頭部51の裏面に達している。第1のカム面521は、組立時にディテントロッド61にカム部52を係合させるためのカム面である。第2のカム面522は、組立後の完成状態において、シフトボタン5の押し込み操作に応じてディテントロッド61を軸方向に引き上げるためのカム面である。
【0026】
ディテントロッド61は、図1及び図4のごとく、中空構造のレバー本体2に内挿配置される略棒状の部材である。このディテントロッド61では、シフトノブ4側から順番に、カム受け部611、断面円形状の軸部612、軸部612よりも大径の大径部613が配置されている。カム受け部611は、断面円形状の両側を削り取ったような断面略矩形状を呈している。このカム受け部611には、シフトボタン5のカム部52を貫通配置させる貫通スリット孔610が穿孔されている。貫通スリット孔610の内周側面、特に、上部の内周側面は前記カム面521、522に対応するカムフォロアをなしている。
【0027】
ディテントロッド61の軸部612と大径部613との間に形成される棚面613Sは、ディテントロッド61を大径部613側に付勢するために軸部612に外挿配置される円筒状の付勢バネ65の座面をなしている。大径部613の外周側面には、径方向にカギ状に突出するロックピン615が立設されている。
【0028】
ディテントスプリング62は、図1、図3及び図5のごとく、バネ鋼よりなる略短冊状の板バネである。このディテントスプリング62は、2箇所の係止部621、622を介してレバー本体2に取り付けられる。第1の係止部621は、レバー本体2に固定される側の端部に形成されている。この第1の係止部621には、後述するレバー本体2の支持ピン253を貫通させるための貫通孔623が穿孔されている。第2の係止部622は、略短冊状の外形状の両側から外側に突出する一対の突出片626よりなる。自由端をなす端部には、ベースブラケット3側に押し当たる当接部625が形成されている。当接部625は、バネ鋼を屈曲させて形成された部分であり、幅方向において略一定の断面凸形状を呈している。
【0029】
レバー本体2は、図1〜図6のごとく、略矩形の断面外形状を呈する中空棒状の筒部21と、筒部21の側面に当たる立設面201に立設されたシフト軸20と、シフト軸20を介して対向する位置に立設された一対の係合部22と、図示しないシフトケーブルを係止するコントロールレバー28と、を有している。本例のシフトレバーユニット1では、コントロールピン281に係止されたシフトケーブル(図示略)を介してシフトレバー10の回動動作が自動変速機(図示略)側に伝達される。
【0030】
筒部21は、図4のごとく、シフトノブ4側の断面円形状の第1の中空部211と、第2の中空部212と、よりなる2段の中空構造を呈している。第1の中空部211よりも第2の中空部212の方が内径が大きく、両者の境界には棚面213が形成されている。この棚面213は、ディテントロッド61に外挿配置される付勢バネ65の座面をなしている。筒部21の中空部211側の端部には、シフトノブ4の取付部215が形成されている。シフト軸20の立設位置を超えて延設された第2の中空部212側の端部には、軸方向に長い溝状のスリット孔210が設けられている。
【0031】
シフト軸20の立設面201には、図1、図2、図4及び図8のごとく、シフト軸20を介して対向する一対の係合部22が設けられている。略カギ状の係合部22は、立設面201から突出する支柱部221と、支柱部221の先端側からシフト軸20の軸芯に向かって内周側に突出するように延設されたカギ状部222と、よりなる。カギ状部222には、レバー本体2の立設面201側に面する係合面220が形成されている。
【0032】
スリット孔210は、図1、図2及び図4のごとく、ディテントロッド61のロックピン615を突出させると共に、軸方向の進退を可能とするための貫通溝である。本例では、筒部21の先端に開口するスリット孔210を採用している。このようなスリット孔210を設けた筒部21に対しては、ロックピン615を一体形成したディテントロッド61の挿入が可能である。本例のレバー本体2では、幅方向両側の側壁に同様のスリット孔210が設けられ、これにより先割れ状に分割された一対の先割れ端25及び27が形成されている。
【0033】
一方の先割れ端25には、図5及び図6のごとく、ディテントスプリング62の第1の係止部621が係止される第1の支持部251が形成されている。第1の支持部251には、ディテントスプリング62の端部を貫通配置させる貫通窓250、及び支持面254が形成されている。支持面254には、ディテントスプリング62の貫通孔623に嵌る支持ピン253、及びディテントスプリング62の端部を押さえ込むカギ状のクリップ部255が設けられている。
【0034】
他方の先割れ端27には、ディテントスプリング62の突出片626を支持する第2の支持部272が形成されている。略くさび形状に切り欠かれた支持部272によれば、ディテントスプリング62の突出片626を脱落させることなく確実性高く支持できる。本例のシフトレバーユニット1では、一対の先割れ端25及び27を離隔させるような弾性変形がディテントスプリング62の取付構造によって確実性高く抑えられている。
【0035】
次に、ベースブラケット3は、図1〜図3及び図7のごとく、図示しない車両側に取り付けられた状態でシフトレバー10を軸支する部材である。このベースブラケット3には、シフトレバー10のほか、シフトロックリンク15、ソレノイド(アクチュエータ)17が取り付けられる。ベースブラケット3は、シフト軸20を挿入する軸孔30を設けた略円柱状の軸支部31と、軸支部31を剛性高く支持すると共に車両に対する取付ステーとしての機能を備えたブラケット部35と、を備えている。
【0036】
略円柱状を呈する軸支部31の外周面には、径方向外周側につば状に突出する支持部32が形成されている。支持部32は、軸孔30を介して対向する2箇所に配設されている。支持部32の表面は、レバー本体2の係合面220と僅かな隙間を介して対面する受け面320をなしている(図8参照。)。
【0037】
支持部32は、シフトレバー10の操作範囲に対応できるように周方向における所定の角度範囲に渡って形成されている。それ故、支持部32は、シフトレバーユニット1におけるシフトレバー10の操作位置に関わらず、レバー本体2の係合面220に必ず対面する。各支持部32の時計方向の端部は、軸孔30の貫通方向に貫通する空間に面する開放端328となっている。一方、反時計方向の端部は壁面に接している。
【0038】
ブラケット部35は、車体側に螺入される固定ボルトを貫通配置させる取付孔350、支持部32の外周部分を避けて軸支部31を支持する支持腕部351、組み付けられたシフトレバー10のロックピン615(図1、図2及び図4参照。)を収容するディテント部7、及びシフトロックリンク15等を収容するシフトロック収容部33を有している。
【0039】
ディテント部7は、円弧状の内周壁面70と、軸孔30の中心からの距離が異なる外周側の階段状の底面71と、階段状に隣り合う底面71間の規制面710と、により形成された空間である。底面71は、シフトレバー10のシフト位置に対応しており、図7中、時計回り上流側から順番に、Pレンジの底面71P、Rレンジの底面71R、Nレンジ及びDレンジに共通する底面71ND、2レンジの底面712、Lレンジの底面71Lが形成されている。また、Rレンジの底面71RとPレンジの底面71Pとの間には、非常に浅い底面の境界部71Vが設けられている。なお、本例のディテント部7では、Lレンジの底面71Lに対面する部分のみ、内周壁面70が形成されておらず、ディテント部7を内周側の空間730に連通させる抜き孔73が形成されている。
【0040】
シフトレバー10を組み付ける側のベースブラケット3の側面には、軸孔30と同心、かつ、大径円弧状をなす摺動面77が設けられている(図3参照。)。この摺動面77は、シフトレバー10を操作したときに、ディテントスプリング62の当接部625が押し当たりながら摺動する面である。この摺動面77は、シフトレバー10の操作範囲に対応して設けられている。さらに、Dレンジ、Pレンジ等の各シフト位置に対応して、それぞれ、凹状の窪み部770が形成されている。この窪み部770と当接部625との組合せによれば、シフトレバー10を操作する際、シフト位置毎に適度な操作感を与えることができる。
【0041】
シフトロック収容部33には、シフトロックリンク15を回動可能な状態で保持するリンク保持部332と、シフトロックリンク15を回動変位させるソレノイド17を保持するソレノイド保持部335と、が設けられている。
リンク保持部332の底面には、図7のごとく、シフトロックリンク15を回動支持する支持軸331が立設されている。この支持軸331の先端の角部には、外周全周に渡ってテーパー状のガイド面331T(図18及び図19参照。)が形成されている。さらに、リンク保持部332のディテント部7側の外周には、シフトロックリンク15の回動範囲を規制する壁面334が形成されている。
【0042】
ソレノイド保持部335は、ソレノイド17を保持する壁部により形成されている。ソレノイド保持部335では、周方向の1カ所において壁部が未形成となっている。この1カ所には、ソレノイド17の動作をシフトロックリンク15に伝達する部材が貫通配置される。
【0043】
ソレノイド17は、図9のごとく、図示しない円筒状のコイルの中心にプランジャ(可動鉄心)が内挿配置されたアクチュエータである。本例のソレノイド17は、コイルへの通電に応じてプランジャが引き込まれるプル型のソレノイドである。プランジャの先端には、シフトロックリンク15に係止される係止部171が取り付けられている。この係止部171は、中間軸173に外挿されたスプリング175により突出方向に付勢されている。
【0044】
シフトロックリンク15は、図10〜図12のごとく、略中央の屈曲部に軸孔150が穿孔された略ブーメラン形状の部材である。シフトロックリンク15は、軸孔150に挿入された支持軸331(図7参照。)により回動可能に軸支される。略ブーメラン形状の一方の端部側には、ロックピン615の変位を規制する規制部151が設けられ、他方の端部側には、ロック解除ボタン181の押込み操作を伝達するリンク部材183(図2参照。)が作用するレバー部153が設けられている。
【0045】
規制部151側には、ソレノイド17の係止部171が係止される駆動ピン155(被駆動部)と、幅方向外側に張り出すように取り付けられたゴムリング158と、が配設されている。シフトロックリンク15は、駆動ピン155に係止された係止部171(図9参照。)の進退に応じて回動する。ゴムリング158は、シフトロックリンク15がロック位置にあるとき(図2参照。)、ベースブラケット3の壁面334に当接するように取り付けられた緩衝部材である。シフトリンク15の規制部151側の側面には、弾性部材16を取りつけるための取付孔152が貫通している。また、軸孔150の外周に当たる側面には、弾性部材16の他端を回動可能に収容し、軸孔150の内周側に張り出させるための溝157が穿設されている。
【0046】
本例のシフトロックリンク15には、図10〜図12のごとく、軸支構造のがたを解消するための弾性部材16が装着されている。弾性部材16は、ばね鋼よりなる線材を折り曲げて形成された部材である。弾性部材16は、シフトロックリンク15に固定される基部161と、基部161から延設された延設部162と、よりなる。基部161は、シフトロックリンク15を幅方向に貫通する取付孔152に貫通配置され、略コの字状に折り曲げられている。基部161は、シフトロックリンク15を幅方向に挟み込むように固定される。延設部162は、シフトロックリンク15の側面に沿うように配設されるアーム部163と、この側面に穿設された溝157を介して軸孔150の内周側に張り出す押圧部165と、よりなる。延設部162は、軸孔150に支持軸331が挿入された状態では、支持軸331に押圧部165が外接するように外周側に回動する。
【0047】
次に、上記の各部品の組み立て手順を説明することにより、本例のシフトレバーユニット1の組付構造を説明する。なお、説明において参照する図13及び図14では、シフトノブ4を省略してある。
ベースブラケット3に対してレバー本体2を組み付けるに当たっては、図4のごとく、予めシフトレバー10を組み立てておくのが良い。シフトレバー10を組み立てるに当たっては、まず、レバー本体2の取付部215にシフトノブ4を取り付ける。次に、軸部612に付勢バネ65を外挿したディテントロッド61を、シフトノブ4の反対側から筒部21に挿入する。付勢バネ65は、筒部21内部の棚面213、及びディテントロッド61の棚面613Sを座面として圧縮されることになり、ディテントロッド61をロックピン615側に付勢する付勢力を発生する。
【0048】
付勢バネ65の付勢力に対抗してディテントロッド61をシフトノブ4側に押し込んでいき、ロックピン615をレバー本体2のスリット孔210に収容させると共に、シフトノブ4のボタン取付孔40の開口位置にカム受け部611の貫通スリット孔610を位置させる。この状態で、ボタン取付孔40に向けてシフトボタン5を押し込むように挿入していけば、貫通スリット孔610にカム部52の先端を押し込んでいくことができる。
【0049】
このとき、カムフォロアをなす貫通スリット孔610の内周側面に第1のカム面521が接触し、ディテントロッド61が軸方向に引き上げられる。カム部52の垂直面525がカム受け部611を超えるまでシフトボタン5を押し込むと、付勢バネ65の付勢力により貫通スリット孔610の内周側面が平坦部527に当設する位置までディテントロッド61が押し下げられる。この状態への移行後は、カム部52の垂直面525がカム受け部611に係合するので、シフトボタン5を引き抜き不可能になる。シフトボタン5を取り外すためには、ロックピン615を手で押し上げてディテントロッド61を引き上げながらカム部52を引き抜く必要がある。
【0050】
次に、ソレノイド17及びシフトロックリンク15を組み付けたベースブラケット3に対してシフトレバー10を組み付ける。シフトレバー10の組み付けでは、まず、ベースブラケット3の軸孔30と、シフトレバー10のシフト軸20と、が同軸となるようにシフトレバー10及びベースブラケット3を相対させる。さらに、このとき、シフト軸20を中心としてシフトレバー10の相対回動角度を調整することにより、シフトレバー10の係合部22がベースブラケット3の支持部32の開放端328を超えて位置する所定の組付角度を設定する(図13参照。)。
【0051】
シフトレバー10の相対回動角度を調整できたら、シフト軸20の軸方向に沿ってシフトレバー10を並進させてベースブラケット3の軸孔30にシフト軸20を挿入していく。このとき、ディテント部7の内周側の空間730にロックピン615が位置するよう、ディテントロッド61を引き上げておく(図13参照。)。
【0052】
このようにベースブラケット3に対してシフトレバー10を組み合わせた後、Lレンジのシフト位置までシフトレバー10を反時計方向に回動させる(図14参照。)。ベースブラケット3のディテント部7には、Lレンジのシフト位置に対応して抜き孔73が設けられている。したがって、Lレンジのシフト位置までシフトレバー10を回動させると、付勢バネ65に付勢されてロックピン615が抜き孔73を介してディテント部7側に突出し、底面71Lに押し付けられる。
【0053】
なお、本例のシフトレバーユニット1では、シフトボタン5の押込み操作によっては、抜き孔73を超えてロックピン615が内周側に変位しないように設定されている。それ故、シフトレバー10を操作できる範囲は、専らディテント部7においてロックピン615が回動できる範囲に制限されることになり、図13のごとくシフトレバー10を回動させることが不可能な状態となる。
【0054】
以上のように組み付けたシフトレバーユニット1の動作について説明する。例えば、上記のようにLレンジが選択された状態で組み付けられたシフトレバーユニット1では、シフトボタン5を押込み操作することなく、Lレンジ→2レンジ→Dレンジ→Nレンジ(図15に示すシフト位置)に操作可能である。LレンジからNレンジに向かっては、対応する底面71が次第に深くなっていくので、ロックピン615が変位する側に規制面710が現れないからである。
【0055】
一方、例えば、Nレンジ(図15参照。)からRレンジにシフト操作するに当たっては、Rレンジの底面71Rの方がNレンジの底面71NDよりも浅いので、ロックピン615の変位を規制する規制面710が現れる。そのため、Rレンジにシフト操作するに当たっては、底面71Rと底面71NDとの間の規制面710を乗り越えられるよう、シフトボタン5を押し込んでロックピン615を内周側に位置させた上でシフトレバー10を操作する必要がある。
【0056】
さらに、RレンジからPレンジにシフト操作するに当たっては、境界部71Vを乗り越えられるようにシフトボタン5を押し込んでロックピン615を内周側に位置させた上でシフトレバー10を操作する必要がある。このとき、シフトロックリンク15は、図15における時計回転方向に付勢され、ゴムリング158が壁面334に当接するロック位置に位置している。ロック位置のシフトロックリンク15は、Pレンジにシフト操作されたときのロックピン615が収容される空間を規制部151により閉塞する状態にある。
【0057】
一方、非通電状態のソレノイド17では、そのプランジャに対してスプリング175の付勢力が作用しているのみである。したがって、シフトロックリンク15をアンロック位置に向けて回動させようとする外力が作用すれば、プランジャは比較的容易に変位し得る。Pレンジへのシフト操作に伴ってロックピン615が左側から規制部151に押し当たると、その当接荷重に応じてプランジャが押し込み方向に変位し、シフトロックリンク15がアンロック位置に回動変位する。それ故、図15のごとくシフトロックリンク15がロック位置にあっても、他のシフト位置からPレンジへのシフト操作が可能である。
【0058】
初期シフト位置であるPレンジに操作されると、ソレノイド17のスプリング175に付勢されて係止部171が突出方向に変位し、これに応じてシフトロックリンク15がロック位置に復帰する(図2に示す状態)。ゴムリング158が壁面334に当接するシフトロックリンク15の回動位置がロック位置となっているので、ロック位置への復帰時に異音が発生することがない。
【0059】
シフトロックリンク15がロック位置に復帰した状態では、図2のごとく、Pレンジのシフトレバー10のロックピン615が変位する経路を閉塞するように規制部151が位置している。この状態では、ロックピン615の変位が規制され、シフトボタン5を操作しても境界部71Vを乗り越えられる位置までロックピン615を変位させることが不可能になる。図示しないブレーキペダルが踏み込み操作されれば、ソレノイド17への通電に応じてプランジャが引き込まれ、係止部171と駆動ピン155との係合構造に応じてシフトロックリンク15がアンロック位置に回動変位し、シフトロック機能が解除される。シフトロック機能が解除された状態では、シフトボタン5の操作に応じてロックピン615を変位でき、Pレンジから他のシフト位置への操作が可能になる(図16参照。)。
【0060】
ソレノイド17への通電に応じてシフトロックリンク15がアンロック位置に回動変位する際、シフトロックリンク15に取り付けられた弾性部材16が有効に作用する。この作用効果について、図17を参照して説明する。弾性部材16は、シフトロックリンク15に挿入された支持軸331に外接する。このとき、弾性部材16は、弾性変形に応じて延設部162が外周側に回動した状態にあり、支持軸331の外周面を軸方向に直交する方向に付勢する状態にある。このように付勢された支持軸331は、ソレノイド17による駆動方向(図中、矢印で図示する方向。)とは反対側の軸孔150の内周面に押し当たった状態となる。
【0061】
ソレノイド17が動作してシフトロックリンク15を手前側に引き込むように駆動した際、シフトロックリンク15全体がソレノイド17側に並進しようとする。一方、本例のシフトレバーユニット1では、シフトロックリンクの軸孔150の内周面のうち、ソレノイド17による駆動方向とは反対側の内周面に支持軸331が押し当たる状態となっている。それ故、上記のようにソレノイド17の動作に応じてシフトロックリンク15全体がソレノイド17側に並進しようとしても、軸孔150の内周面に対する支持軸331の当接箇所が変動するおそれが少ない。したがって、本例のシフトレバーユニット1では、ソレノイド17によってシフトロックリンク15を回動変位させる際、軸孔150の内周面に対する支持軸331の当接箇所が変動して異音が発生するおそれが非常に少なくなっている。
【0062】
このように、本例のシフトレバーユニット1では、シフトロックリンク15の軸支構造に弾性部材16が介在しており、この弾性部材16の作用によりシフトロック機能が解除されるときの機械的な動作音が抑制されている。
【0063】
また、シフトロックリンク15をベースブラケット3に組み付ける際には、図18及び図19のごとく、支持軸331の先端に設けたガイド面331Tが有効に作用する。このガイド面331Tによれば、軸孔150の内周側に張り出した押圧部165に支持軸331が押し当たる当接荷重を外周側に向かう荷重に変換できる。この外周側の荷重によれば、押圧部165を外周側に回動させることができる。このようなガイド面331Tを設けた支持軸331によれば、軸孔150への挿入に応じて押圧部165を外周側に押し込みでき、上記のごとく押圧部165が支持軸331に外接する組み付け状態を容易に実現できる。なお、本例に代えて、ガイド面331Tを省略することも可能である。この場合には、支持軸331を軸孔150に挿入する際、その内周側に張り出した押圧部165を外周側に押し戻しておく必要がある。
【0064】
なお、本例は、バネ鋼よりなる線材を折り曲げて形成された弾性部材を採用した例である。本例に代えて、バネ鋼よりなる板材を折り曲げて形成された弾性部材を採用することも良い。
なお、図20のごとく、押圧部165を上下2段に配設することも良い。上下2段の押圧部165によれば、支持軸331を一層バランス良く付勢できる。一方、1段目の押圧部165の回動に2段目の押圧部165が連動するように弾性部材165を構成すると共に、支持軸331の挿入方向手前側の1段目の張り出し量を2段目よりも小さくしておくことも良い。支持軸331の先端が1段目の押圧部165を通過したときに、2段目の押圧部165を外周側に後退させておくことができ、これにより張り出し量の大きな2段目の押圧部165に対する支持軸331の挿入が容易になる。
【0065】
(実施例2)
本例は、実施例1のシフトレバーユニットを基にして、シフトロックリンク15における弾性部材の配設形状を変更した例である。この内容について、図21〜図24を参照して説明する。
本例のシフトロックリンク15では、軸孔150の軸方向に対して押圧部165が斜行するように弾性部材16が取り付けられている。シフトロックリンク15側に穿設される溝157も軸方向に対して斜行するように穿設されている。
【0066】
支持軸331に対してシフトロックリンク15を組み付ける際、図23及び図24のごとく、軸孔150の軸方向、すなわち支持軸331の挿入方向に対して斜行する押圧部165が有効に作用する。軸孔150へ支持軸331が挿入される際には、まず、押圧部165のうち基部161側に最も近い箇所が支持軸331の先端面に当接する。上記のごとく、押圧部165は、軸方向に対して斜行するように配置され、その先端に近づくほど挿入方向奥側に位置しているからである。また、押圧部165のうちの基部161側に最も近い箇所は、軸孔150の内周面からの張り出し量が最も小さくなっている。この箇所は、支持軸331の挿入に応じて比較的容易に外周側に押し込まれ、これにより、押圧部165全体が外周側に若干、後退するように変位する。
【0067】
さらに、支持軸331を挿入していけば、支持軸331の外周面に当接する押圧部165の範囲が次第に拡がっていき、押圧部165の外周側への後退量、すなわち延設部162の回動変位量が次第に大きくなっていく。押圧部165のうち、自由状態において内周面からの張り出し量が最大となる箇所に支持軸331が到達したときには、それまでに生じた延設部162の外周側への回動に応じてその箇所の張り出し量がごく僅かになっている。それ故、さらに支持軸331を挿入すれば、極めて容易に、無理なく押圧部165を支持軸331に外接させることができる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0068】
以上のごとく本発明の実施例を詳細に説明したが、これらの実施例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、実施例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して実施例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0069】
1 シフトレバーユニット
10 シフトレバー
15 シフトロックリンク
150 軸孔
151 規制部
152 取付孔
153 レバー部
155 駆動ピン(被駆動部)
157 溝
16 弾性部材
161 基部
162 延設部
163 アーム部
165 押圧部
17 ソレノイド
171 係止部
2 レバー本体
20 シフト軸
210 スリット孔
22 係合部
3 ベースブラケット
30 軸孔
32 支持部
33 シフトロック収容部
331 支持軸
331T ガイド面
335 ソレノイド保持部
4 シフトノブ
5 シフトボタン(操作部)
52 カム部
61 ディテントロッド
615 ロックピン
62 ディテントスプリング
7 ディテント部
710 規制面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期シフト位置を含む複数のシフト位置のうちの何れかを選択するために所定のシフト方向にシフトレバーを操作可能なシフトレバーユニットであって、
運転者の持ち手をなすシフトノブが先端に取り付けられるレバー本体と、
前記シフトレバーを構成する前記レバー本体を回動可能に軸支するベースブラケットと、
前記初期シフト位置から他のシフト位置に向けて前記シフトレバーが回動しようとする際に前記ベースブラケット側に設けられた規制面と当接して当該回動動作を規制すると共に、前記シフトノブに設けられた操作部の操作に応じて前記規制面に当接しない位置に変位可能なように前記シフトレバーに組み付けられるロックピンと、
前記ベースブラケット側に設けられた支持軸を内挿する軸孔を有し、該支持軸により回動可能に軸支され、前記操作部の操作に応じた前記ロックピンの変位を規制可能なロック位置と、前記ロックピンの変位を許容するアンロック位置と、に変位可能なシフトロックリンクと、
前記シフトロックリンクに設けられた被駆動部に係止される係止部を有し、該係止部を進退させることで前記支持軸の回りに前記シフトロックリンクを回動させるアクチュエータと、
前記軸孔の外周側に当たる位置で前記シフトロックリンクに固定される基部と、弾性変形に応じて該基部の回りを回動するように延設された延設部と、を含む弾性部材と、を備え、
該弾性部材は、前記軸孔に前記支持軸が未挿入時の自由状態においては、前記延設部の一部をなす押圧部が前記軸孔の内周側に張り出すように位置している一方、
前記支持軸の挿入状態では、弾性変形に応じて前記延設部が外周側に回動して前記支持軸に外接するシフトレバーユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記押圧部は、前記軸孔の軸方向に対して斜行するように配設されているシフトレバーユニット。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記支持軸の先端には、前記軸孔に挿入される際の挿入方向の荷重の少なくとも一部を、前記軸孔の外周側に向かう荷重に変換して前記押圧部に作用するガイド面が設けられているシフトレバーユニット。
【請求項1】
初期シフト位置を含む複数のシフト位置のうちの何れかを選択するために所定のシフト方向にシフトレバーを操作可能なシフトレバーユニットであって、
運転者の持ち手をなすシフトノブが先端に取り付けられるレバー本体と、
前記シフトレバーを構成する前記レバー本体を回動可能に軸支するベースブラケットと、
前記初期シフト位置から他のシフト位置に向けて前記シフトレバーが回動しようとする際に前記ベースブラケット側に設けられた規制面と当接して当該回動動作を規制すると共に、前記シフトノブに設けられた操作部の操作に応じて前記規制面に当接しない位置に変位可能なように前記シフトレバーに組み付けられるロックピンと、
前記ベースブラケット側に設けられた支持軸を内挿する軸孔を有し、該支持軸により回動可能に軸支され、前記操作部の操作に応じた前記ロックピンの変位を規制可能なロック位置と、前記ロックピンの変位を許容するアンロック位置と、に変位可能なシフトロックリンクと、
前記シフトロックリンクに設けられた被駆動部に係止される係止部を有し、該係止部を進退させることで前記支持軸の回りに前記シフトロックリンクを回動させるアクチュエータと、
前記軸孔の外周側に当たる位置で前記シフトロックリンクに固定される基部と、弾性変形に応じて該基部の回りを回動するように延設された延設部と、を含む弾性部材と、を備え、
該弾性部材は、前記軸孔に前記支持軸が未挿入時の自由状態においては、前記延設部の一部をなす押圧部が前記軸孔の内周側に張り出すように位置している一方、
前記支持軸の挿入状態では、弾性変形に応じて前記延設部が外周側に回動して前記支持軸に外接するシフトレバーユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記押圧部は、前記軸孔の軸方向に対して斜行するように配設されているシフトレバーユニット。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記支持軸の先端には、前記軸孔に挿入される際の挿入方向の荷重の少なくとも一部を、前記軸孔の外周側に向かう荷重に変換して前記押圧部に作用するガイド面が設けられているシフトレバーユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−1346(P2013−1346A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137370(P2011−137370)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
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