シフト切替装置
【課題】車室内への操作部の突出寸法を小さくし、構造の簡略化を図り、誤操作のおそれをなくす。
【解決手段】軸線まわりに回転可能且つ軸線方向にスライド可能なロッド10と、ロッドの回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力する検出器20と、ロッドを回転方向の基準位置およびスライド方向の基準位置に付勢する2つの付勢手段と、ロッドが回転方向の基準位置または該基準位置から回転方向に離間した走行レンジ切替可能位置に位置した状態のときだけ、スライド方向の基準位置からのロッドのスライドを可能にするとともに、ロッドが回転方向の基準位置または走行レンジ切替可能位置に位置した状態で、ロッドをスライド方向の基準位置からスライドさせたとき、ロッドの回転を禁止するロッド規制手段と、を具備する。
【解決手段】軸線まわりに回転可能且つ軸線方向にスライド可能なロッド10と、ロッドの回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力する検出器20と、ロッドを回転方向の基準位置およびスライド方向の基準位置に付勢する2つの付勢手段と、ロッドが回転方向の基準位置または該基準位置から回転方向に離間した走行レンジ切替可能位置に位置した状態のときだけ、スライド方向の基準位置からのロッドのスライドを可能にするとともに、ロッドが回転方向の基準位置または走行レンジ切替可能位置に位置した状態で、ロッドをスライド方向の基準位置からスライドさせたとき、ロッドの回転を禁止するロッド規制手段と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される自動変速機のシフトレンジ(シフトポジション)を切り替えるシフト切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシフト切替装置として、シフトポジションを検出器で電気的に検出し、検出器から出力される電気信号に応じて自動変速機のシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤ式のものがあり、その従来例として、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のシフト切替装置は、車室内に突出する操作レバーを持ち、その操作レバーを突出方向と交差する方向に移動させることにより、シフトポジションを切り替える構造のものである。
【0004】
また、特許文献2に記載のシフト切替装置は、回転スイッチを回すことにより、シフトポジションを切り替える構造のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−213505号公報
【特許文献2】特表2008−518845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のシフト切替装置のように、車室内に操作レバーが突出する構造を有していると、操作レバーに乗員がぶつかるおそれがあるため、衝撃吸収構造を別途設ける必要があり、構造が複雑になるとともに、装置が大きくなる。また、シフトパターンを1つの平面上に広げるので、構造が複雑になりやすく、コスト高になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載のシフト切替装置のように回転スイッチ式とした場合、操作部の車室内への突出寸法を少なくできると共に、構造を単純化できるものの、1つの回転スイッチを同一平面状で操作するため、例えば、DポジションからNポジションにシフトさせる際に、Nポジションを通り越してRポジションへシフトしてしまうという飛ばし設定の誤操作を起こすおそれがあり、操作性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、車室内への操作部の突出寸法をできるだけ少なくすることができると共に、構造が簡単でコストの低減を図ることができ、しかも誤操作のおそれを低減した操作性に優れたシフト切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明のシフト切替装置は、略筒形状を有するハウジングと、該ハウジング内に支持され、軸線まわりに回転可能とされると共に軸線方向にスライド可能とされた軸形状を有するロッドと、該ロッドを回転させる第1操作手段と、該ロッドをスライドさせる第2操作手段と、該ハウジングに固定され、該ロッドの回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力するシフトポジション検出手段と、該ロッドを回転方向の基準位置に付勢する第1付勢手段と、該ロッドをスライド方向の基準位置に付勢する第2付勢手段と、該ロッドが回転方向の基準位置と該基準位置から回転方向に離間した位置に設定された走行レンジ切替可能位置との間に位置した状態で、該ロッドのスライドを規制するとともに、該ロッドが前記ロッドを前記スライド方向の基準位置からスライドした状態で、該ロッドの回転を禁止するロッド規制手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシフト切替装置であって、前記第1操作手段が、前記ロッドと一体に回転する円筒部材の端部に結合された円筒体を有する回転ノブによって構成され、前記第2操作手段が、該ロッドの端部に結合され且つ該円筒体の内部に少なくとも一部が収容された押ボタンによって構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のシフト切替装置であって、前記ロッドの回転動作とともに回転する前記円筒部材の端面に設けた突起部と、前記ハウジングに回り止めされたストッパリングに突設されるストッパ突起とからなり、該ロッドが回転した際に、該突起部と該ストッパ突起とが係合することで、該ロッドの回転範囲を規制する回転範囲規制手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、前記第1付勢手段は、前記ハウジング内に収容され、前記ロッドの外周に位置して該ロッドと一体に回転すると共に該ロッドに対して軸線方向スライド自在とされた回転リングと、該回転リングと軸線方向に対向するように該ハウジングに固定された固定リングと、該回転リングと該固定リングの軸線方向の対向面の一方に略V溝状に形成されたカム斜面と、該対向面の他方に形成されて該カム斜面上を摺動するピンと、からなるカム機構と、該回転リングと該固定リングとが近接する方向に付勢する第1スプリングと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、前記ロッド規制手段は、前記ハウジングに設けられた円筒状の嵌合部材の内周面に、前記ロッドの軸線方向に沿って形成された複数のスライド溝と、該ロッドと一体に回転およびスライド可能に設けられたロック板の外周面に形成された外周突起部とを備え、該外周突起部は、該ロッドが回転方向の基準位置、または走行レンジ切替位置に位置する状態で、該スライド溝と対向して該ロッドがスライド方向の基準位置からスライドするのを許容するとともに、該ロッドが基準位置からスライドした状態では、該スライド溝に係合してロッドの回転を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明のシフト切替装置において、ロッドは、スライド方向の基準位置にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、自由に回転できる状態に保たれる。また、ロッドは、回転方向の基準位置にあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、スライド方向の基準位置からスライドできる状態に保たれる。それ以外の回転位置にロッドがあるとき、ロッドは、ロッド規制手段の働きにより、スライド動作を規制される。また、ロッドは、回転方向の基準位置または走行レンジ切替可能位置に位置した状態で、スライド方向の基準位置からスライドさせられたとき、ロッド規制手段の働きにより、回転を規制される。従って次のことが言える。
【0015】
ここでは、ロッドの回転方向およびスライド方向の基準位置をホームポジション(H)とし、ホームポジション(H)を挟んだ両側に、前進走行レンジ(Dレンジ)と後進走行レンジ(Rレンジ)を選択するための2つの走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1および第2ニュートラルポジションN2と呼ぶ)が設定されている場合を例にとって述べる。
【0016】
まず、第1操作手段および第2操作手段によりロッドに操作力を加えていない状態では、ロッドは、付勢手段の働きにより、ホームポジション(H)に保持される。
【0017】
この状態では、第2操作手段により、そのままロッドをホームポジション(H)からスライドさせることができる。従って、ロッドをスライドさせた位置をパーキングポジション(P)として設定しておくことにより、パーキングレンジ(Pレンジ)を選択することができる。また、パーキングレンジの選択後、ロッドをスライドさせている操作力を解除すると、ロッドは、第2付勢手段の働きにより、再びホームポジション(H)に復帰する。
【0018】
また、第1操作手段により、ロッドを、ホームポジション(H)から一方の走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1)に回転させると、その回転した位置(N1)で、ロッドをスライドさせることができるようになる。従って、ロッドをスライドさせた位置を前進走行レンジ位置として設定しておくことにより、第2操作手段によってロッドをスライドさせることで、前進走行レンジ(Dレンジ)を選択することができる。
【0019】
また、第1操作手段により、ロッドを、ホームポジション(H)から他方の走行レンジ切替可能位置(第2ニュートラルポジションN2)に回転させると、その回転した位置(N2)で、ロッドをスライドさせることができるようになる。従って、ロッドをスライドさせた位置を後進走行レンジ位置として設定しておくことにより、第2操作手段によってロッドをスライドさせることで、後進走行レンジ(Rレンジ)を選択することができる。
【0020】
これらの走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択した場合にも、ロッドをスライドさせる操作力と、ロッドを回転させる操作力を解除すると、ロッドは、2つの付勢手段の働きにより、再びホームポジション(H)に復帰する。
【0021】
このように、ホームポジション(H)から走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択する際には、ロッドを、ホームポジションから一方あるいは他方へ回転させた上で、さらにスライドさせる必要があり、2つの異なる操作を連続して行う必要がある。つまり、異なる2つの動作(回転とスライド)を行って初めて、走行レンジ(DレンジまたはRレンジ)への切り替えができるようにしている。また、走行レンジを切り替える際には必ず、ニュートラルポジション(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)を経由するようにしている。従って、万一、誤って一方の操作手段が操作されてしまった場合でも、走行レンジに切替えられてしまうことがない。これにより、誤操作を起こしにくくすることができ、安全性を高めることができる。
【0022】
また、ロッドをスライドさせて走行レンジを選択しているときには、ロッド規制手段によりロッドを回転できない状態に保つとともに、第1操作手段によりロッドを回転させる際に、ロッドがホームポジションにあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置にあるときでないと、ロッドをスライドさせることができないので、間違ったシフト切替が行われる心配がない。
【0023】
また、このシフト切替装置では、ロッドに回転を与える第1操作手段を回転スイッチ形状にすることができるので、従来のシフトレバーのように車室内に大きく突出する部分を減らすことができ、突出部分を減らせることにより、事故時などの際の危険性を少なくして、安全性の向上を図ることができるし、車室内におけるレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0024】
また、このシフト切替装置は、ロッドの回転とスライドを組み合わせてシフトポジションを選択するようにしているので、1つの平面上にシフトパターンを展開するのと違って、シフトパターンが複雑なものになっても、構造の単純化と省スペース化を図ることができる。しかも、構成部品を同軸上に配置しているので、組立の簡便化を図ることができる。従ってコストの低減が可能である。
【0025】
請求項2の発明によれば、ロッドを回転させる第1操作手段を、ロッドと一体に回転する円筒部材の端部に結合された円筒体を有する回転ノブで構成し、ロッドをスライドさせる第2操作手段を、ロッドの端部に結合され且つ前記円筒体の内部に少なくとも一部が収容された押ボタンで構成したので、操作部を極力コンパクトな構造にすることができるとともに、操作性を向上しつつ、押ボタンの誤操作を防止することができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、ロッドの必要以上の回転操作を規制する回転範囲規制手段を円筒部材の端面に設けた突起部と、ストッパリングに設けたストッパ突起で行なうため、この回転範囲規制手段を軸方向にコンパクトに配置することができる。
【0027】
請求項4の発明によれば、ロッドの回転動作に節度感を持たせることができるとともに、ロッドを基準位置へと移動させる第1付勢手段を軸方向に配置した回転リングと固定リングの間のカム機構と第1スプリングとにより構成しているので、第1付勢手段を軸方向にコンパクトに配置することができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、内周面にスライド溝を有する円筒状の嵌合部材とロッドと一体で移動する外周突起部を有するロック板とでロッド規制手段を構成しているので、このロッド規制手段を軸方向にコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態のシフト切替装置の分解斜視図である。
【図2】同装置のホームポジション(H)時の外観斜視図である。
【図3】同装置のホームポジション(H)時の詳細図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図4】同置のホームポジション(H)時の一部要素を取り出して示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のC矢視図である。
【図5】同装置のホームポジション(H)時の他の一部要素を取り出して示す斜視図である。
【図6】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の外観斜視図である。
【図7】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の詳細を示す縦断面図である。
【図8】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の一部要素を取り出して示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のD矢視図である。
【図9】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の他の一部要素を取り出して示す斜視図である。
【図10】同装置のRレンジ時の外観斜視図である。
【図11】同装置のRレンジ時の詳細図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE−E矢視断面図である。
【図12】同装置のRレンジ時の一部要素を取り出して示す斜視図である。
【図13】同装置におけるシフトポジション検出器のホームポジション(H)時の詳細構成を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のF−F矢視断面図である。
【図14】同装置におけるシフトポジション検出器のRレンジ時の詳細構成を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のGで示す検出範囲の横断面図である。
【図15】同装置のシフトポジション検出器の信号の組み合わせとシフトレンジの対応関係を示す図である。
【図16】同装置のシフトポジション検出器の出力するアナログ信号とロッドの回転量およびレンジとの関係を示す特性図である。
【図17】(a)は本発明の実施形態の装置をコンビスイッチと同様のスイッチ形状に構成した応用例を示す斜視図、(b)は反対方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1〜図12に示すように、このシフト切替装置は、車体(図示せず)に固定される円筒形状のハウジング4と、ハウジング4の内部に配置され、軸線Lの周りに矢印Tのように回転可能とされると共に軸線Lの方向に矢印Sのようにスライド可能とされたロッド10と、ハウジング4の先端部に配置され、ロッド10を回転させる回転ノブ(第1操作手段)1およびロッド10をスライドさせる押ボタン(第2操作手段)2と、ハウジング4の基部に固定され、ロッド10の回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力する検出器(シフトポジション検出手段)20と、ハウジング4の内部に回転可能に収容されるとともに、ロッド10が貫通する円筒部材3と、この円筒部材3の外周に配置される回転リング6と、回転リング6と軸方向に対向して配置される固定リング5と、固定リング5をハウジング4に対して回転方向で保持するストッパリング8と、ロッド10の基部に嵌合されるロック板11と、ロック板11に対応してハウジング4の基端に固定される嵌合部材9と、ロッド10を回転方向および軸線方向に付勢するためのコイル式の第1および第2スプリング13,15と、を備えている。
【0032】
以下に、各部品の具体的な構成と部品を組み合わせた構造について述べる。
【0033】
<回転ノブ1>
回転ノブ1は、ロッド10を回動させるための第1操作部材であり、ロッド10と一体で回転する円筒部材3の先端に固定され、内空間1bに押ボタン2の少なくとも一部が収容される円筒体1aと、円筒体1aの外周面に突設されたレバー部1cと、円筒体1aの基端に形成された環状嵌合壁部1dと、環状嵌合壁部1bの内周縁に120°間隔で設けられた3つの係合凹部1d1と、を有している。
【0034】
図3に詳細を示すように、円筒体1aの内空間1bは、押ボタン2を収容すると共に押ボタン2の押し込み動作を許容する円筒状の空間であり、さらに、押ボタン2とロッド10の連結部分を収容する空間でもある。環状嵌合壁部1dは、ハウジング4の先端嵌合壁部4b(後述)に回転自在に嵌合すると共に、円筒部材3の先端嵌合部3e(後述)が嵌合固定される部分である。また、環状嵌合壁部1dの内周縁に形成された3つの係合凹部1d1は、円筒部材3の先端の係合爪3f(後述)が嵌まることで、回転ノブ1と円筒部材3を一体回転するように結合する部分である。
【0035】
<押ボタン2>
押ボタン2は、ロッド10を軸線Lの方向に押し込みスライドさせる操作部材であり、回転ノブ1の円筒体1aの内空間1bに収容される大きさの円板状の押圧操作部2aと、この押圧操作部2aにロッド10に向かって突設された120°間隔の3つの係合アーム2bと、係合アーム2bの各先端に設けられた外向きの係合突起2cと、ロッド10の端面に当接する係合アーム2b間に位置する円弧状の突当壁2dと、を有している。
【0036】
係合アーム2bは、ロッド10の先端の円筒壁10aの内周面10bに形成された縦溝10c(後述)に係合することで、ロッド10と押ボタン2を一体回転するように結合する部分である。また、各係合アーム2bの先端の係合突起2cは、ロッド10の先端の円筒壁10aの外周面から縦溝10c内まで貫通するように形成された係止孔10d(後述)に係合する。また、突当壁2dは、先端面が対向するロッド10の先端の円筒壁10aの先端に突き当たることで、ロッド10と押ボタン2を、スライド方向にガタつきなく一体に結合する部分である。
【0037】
<円筒部材3>
円筒部材3は、ハウジング4内に支持されて回転ノブ1と共に回転する部材であり、円筒壁3aと、この円筒壁3aの内周面に120°間隔で形成された軸線方向に延びる3つの縦溝3bと、円筒壁3aの先端付近に形成された内周鍔部3cと、円筒壁3aの先端付近に形成された外周鍔部3dと、円筒壁3aの先端に形成された先端嵌合部3eと、先端嵌合部3eに120°間隔で形成された3つの係合爪3fと、円筒壁3aの外周面に120°間隔で形成された軸線方向に延びる3つの縦溝3gと、円筒壁3aの基端に120°間隔で軸線方向に突設された3つの突起部3hと、外周鍔部3dに隣接してハウジング4の先端嵌合壁部4bの内周面に回転可能に摺接する摺動外周面3kとを有している。
【0038】
円筒壁3aの内周の3本の縦溝3bは、ロッド10の胴部10eの外周の3本の軸線方向に延びる凸条10e1(後述)がそれぞれ嵌まることで、ロッド10と円筒部材3を一体回転するように嵌合する部分である。また、ロッド10は、3本の凸条10e1がそれぞれ円筒部材3の縦溝3bに嵌まることで、円筒部材3によって軸線Lの方向にスライド自在にガイドされる。
【0039】
また、内周鍔部3cは、ロッド10の胴部10eの先端段部が係合することで、ロッド10の押ボタン2側軸線方向への移動を規制して、ロッド10と円筒部材3を軸線Lの方向に位置決めする部分である。また、外周鍔部3dは、ハウジング4の先端嵌合壁部4bに内側から係合することで、円筒部材3の押ボタン2側軸線方向への移動を規制して、ハウジング4に対する円筒部材3の軸線Lの方向の位置決めを行う部分であると共に、第1スプリング13の先端部受座として機能する部分である。また、嵌合壁部3eは、回転ノブ1の環状嵌合壁部1dに嵌合固定される部分である。
【0040】
また、係合爪3fは、回転ノブ1の環状嵌合壁部1dの係合凹部1d1に係合することで、回転ノブ1と円筒部材3を一体回転できるように結合する部分である。また、円筒壁3aの外周面の縦溝3gは、回転リング6の内周面の内周突起部6b(後述)が嵌まることで、回転リング6と円筒部材3を一体回転できるように、且つ、軸線Lの方向にスライドできるように結合する部分である。また、円筒壁3aの基端の3つの突起部3hは、ストッパリング8の上面の内周側の3つのストッパ突起8c(後述)に当たることで、円筒部材3の回転範囲を規制する部分である。
【0041】
<ハウジング>
ハウジング4は、円筒壁4aと、円筒壁4aの先端側端面に設けられた先端嵌合壁部4bと、円筒壁4aの内周面に120°間隔で他端側端面から軸線方向に形成された3つの切欠状の係合凹部4cと、係合凹部4cの内底壁に貫通形成された係合孔4dと、を有している。
【0042】
先端嵌合壁部4bは、軸線方向で回転ノブ1の環状嵌合壁部1dおよび円筒部材3の外周鍔部3dに挟まれており、軸方向への移動を規制した状態で回転自在に支持される。また、係合凹部4cは、ストッパリング8の外周突起部8bが嵌まることで、ストッパリング8を回り止めすると共に位置決めする部分である。また、係合孔4dは、嵌合部材9の先端に突設されたロック爪9b(後述)が嵌まることで、ハウジング4に嵌合部材9を固定すると共に、固定した状態でロック爪9bによるストッパリング8の抜け止めを補助する部分である。
【0043】
<固定リング5>
固定リング5は、ハウジング4内でストッパリング8と円筒部材3の外周鍔部3dとの間に配置されてストッパリング8に対して回転方向で固定される環状の部材であり、軸方向で円筒部材3側の面に、周方向に120°間隔で形成された円筒カムとしての3つのカム斜面5aを有する。カム斜面5aは、最も低い位置(軸線方向に対向する回転リング6側から見て一番低い部分)の両側に設けられた対称形状の傾斜面として構成され、最も低い位置から周方向に離れるに従い徐々に高さ(軸線方向に対向する回転リング6側から見た高さ)が高くなるように形成されている。そして、このカム斜面5aの最も低い位置に、回転リング6のピン6cの嵌まる凹部5bが設けられている。
【0044】
また、固定リング5の外周下縁には、120°間隔で3つの切欠部5cが設けられている。これらの切欠部5cは、ストッパリング8の外周突起部8bの内周側の角部に嵌まることで、固定リング5を回転止めする部分である。
【0045】
<回転リング6>
回転リング6は、円筒部材3の外周側に位置して固定リング5と軸線方向に対向するように配置され、円筒部材3と一体に回転すると共に円筒部材3に対して軸線Lの方向にスライド自在とされる環状の部材であり、内周に120°間隔で突設された3つの内周突起部6bと、固定リング5側の端面に120°間隔で突設された3つのピン6cと、を有している。
【0046】
内周突起部6bは、円筒部材3の円筒壁3aの外周の縦溝3gにスライド自在に嵌まることで、円筒部材3と回転リング6を一体回転するように結合する部分である。ピン6cは、カム斜面5aに摺動するカムフォロアに相当する部分である。
【0047】
<第1スプリング13>
第1スプリング13は、円筒部材3の円筒壁3aの外周に配置され、回転リング6と円筒部材3の外周鍔部3dとの間に圧縮状態で介装されており、この第1スプリング13の付勢力により、回転リング6のピン6cが固定リング5のカム斜面5aに押し付けられている。
【0048】
本実施形態では、回転リング6にピン(カムフォロア)6cが形成され、固定リング5にカム面5aが形成されているが、逆に、回転リング6にカム面が形成され、固定リング5にピンが形成されていてもよい。
【0049】
<カム機構7>
そして、図4に示すように、回転リング6と固定リング5の軸線方向の対向面の一方に形成されたカム斜面5aおよび他方に形成されて前記カム斜面5aを摺動するカムフォロアとしてのピン6cの組み合わせによりカム機構7が構成され、回転リング5が基準位置(ピン6cが凹部5bに嵌まる位置)から一方あるいは他方に回転するに従い、回転リング6を固定リング5から離れる方向(軸線方向)に変位させるようになっている。従って、回転リング6の軸線方向の変位が増すほど、第1スプリング13は付勢力を高めるようになる。
【0050】
また、カム斜面5aは、第1スプリング13の付勢力によって、ピン6を基準位置である最低部(凹部5bのある位置)に向かって回転付勢する作用を果たすことになる。従って、カム機構7と第1スプリング13により、回転リング6と一体回転する円筒部材3およびロッド10を回転方向の基準位置に付勢する第1付勢手段が構成されている。
【0051】
また、カム斜面5aの最も低い位置に設けられた凹部5bは、その凹部5bにピン6cが嵌まることで、一定以上の回転力が回転リング6に作用するまで当該ピン6cを保持しておく部分であり、回転リング6の回転動作に節度感を持たせる役目を果たす。
【0052】
<ストッパリング8>
ストッパリング8は、円板部8aと、円板部8aの外周部に設けられた外周突起部8bと、円板部8aの内周側の側面に120°間隔で円筒部材3側に向かって突設されたストッパ突起8cと、を有している。
【0053】
外周突起部8bは、ハウジング4の係合凹部4cに嵌まることで、ストッパリング8の回り止めと位置決めをする部分である。また、ストッパ突起8cは、円筒部材3の基端の突起部3hが当たることで、円筒部材3およびそれと一体に回転するロッド10の回転範囲を規制する役目を果たす。
【0054】
従って、ストッパリング8のストッパ突起8cと円筒部材3の基端の突起部3hとにより、円筒部材3およびロッド10の回転範囲を規制する回転範囲規制手段が構成されている。
【0055】
<嵌合部材9>
嵌合部材9は、基準位置から軸線方向にスライドしてきたロック板11を受け入れて嵌合することで、ロッド10の回転を禁止する部材であり、短円筒壁9aと、短円筒壁9aの一方の端面に120°間隔で軸線方向に突設された3つの先端係合爪9bと、短円筒壁9aの他方の端面に120°間隔で軸線方向に突設された3つの基端係合爪9cと、短円筒壁9aの内周面に120°間隔で軸線方向に沿って形成された3本1組の3組のスライド溝9dと、短円筒壁9aの他方の端面を塞ぐように設けられた底壁9eと、底壁9eの中心部に形成された貫通孔9fと、を有している。
【0056】
各組のスライド溝9dとして、周方向の中央にはPレンジ用のスライド溝9d1が設けられ、その両側に角度θ(約20°)間隔でDレンジ用のスライド溝9d2およびRレンジ用のスライド溝9d3とが設けられている。これらスライド溝9dには、後述するロック板11の外周突起部11aがスライドして選択的に嵌合する部分である。
【0057】
また、先端係合爪9bは、ハウジング4の係合凹部4cと係合孔4dに係合することで、ハウジング4と嵌合部材9を回転方向および軸線方向で一体に結合する部分であり、この先端係合爪9bをハウジング4の係合孔4dに係合することにより、ストッパスプリング8を介して固定リング5の軸線方向への移動を阻止するとともに、抜け止めすることができるようになっている。また、基端係合爪9cは、検出器20と結合する部分である。
【0058】
<ロッド10>
ロッド10は、回転ノブ1を回動操作することにより、軸線Lの周りに回転ノブ1と一体に回転し、しかも、押ボタン2を押し込むことにより、軸線Lの方向にスライドする棒状の部材であり、一端側の部分である先端円筒壁10aと、中央の胴部10eと、他端側のスプライン軸部10fと、を有している。
【0059】
先端円筒壁10aは、その先端に押ボタン2の突当壁2dの基端が突き当たる部分であり、この先端円筒壁10aの内周面10bには、120°間隔で軸線方向に延びる縦溝10cが形成され、その縦溝10cの内底壁に外周面から貫通する係止孔10dが設けられている。
【0060】
そして、押ボタン2の係合アーム2bを、ロッド10の先端円筒壁10aの内周面10bの縦溝10cに係合することにより、ロッド10と押ボタン2が一体回転するように結合されている。また、押ボタン2の突当壁2dの基端を、ロッド10の先端円筒壁10aの先端に突き当て、且つ、押ボタン2の各係合アーム2bの先端の係合突起2cを、ロッド10の先端円筒壁10aの係止孔10dに係合することで、ロッド10と押ボタン2がスライド方向にガタつきなく一体に結合されている。
【0061】
また、ロッド10の胴部10eの外周には、120°間隔で3本の軸方向に延びる凸条10e1が設けられている。これら凸条10e1は、それぞれ円筒部材3の内周面の縦溝3bに軸線方向スライド自在に嵌まっており、それにより、ロッド10と円筒部材3が一体回転するように結合されている。
【0062】
<ロック板11>
ロック板11は、ロッド10の回転方向の所定の位置以外での押ボタン2の押し込みを規制するとともに、押ボタン2の押し込みによりロッド10が基準位置からスライドしたとき、ロッド10の回転を規制する円板状の部材であり、外周に120°間隔で半径方向外側に突出した3つの外周突起部11aを有すると共に、中心部に、ロッド10のスプライン軸部10fが嵌まることで、ロッド10と一体回転するように結合される貫通したスプライン孔11bを有している。
【0063】
そして、ロック板11は、ロッド10のスプライン軸部10fがスプライン孔11bに嵌まることで、ロッド10と一体回転するように結合され、ロッド10の胴部10eの基端段部にロック板11が突き当たることで、ロッド10と一体に下方へスライドするように結合されている。
【0064】
また、図5に示すように、外周突起部11aは、嵌合部材9のスライド溝9d(9d1、9d2、9d3)の1つに選択的に嵌まる部分であり、スライド溝9dと位置が合わないときは、嵌合部材9の端面に突き当たることで、ロック板11が軸線方向の基準位置から移動しないように保つ。また、外周突起部11aは、嵌合部材9のスライド溝9d(9d1、9d2、9d3)の1つにスライドして嵌まったとき、ロック板11の回転、つまりはロッド10や回転ノブ1の回転を禁止する役目を果たす。
【0065】
<第2スプリング15>
第2スプリング15は、ロック板11の側面と嵌合部材9の底壁9eの内面との間に圧縮状態で介装されており、ロック板11を押ボタン2側に付勢し、それにより、ロッド10を基準位置である外側位置に付勢している。従って、この第2スプリング15が、ロッド10を基準位置に付勢する第2付勢手段に相当する。
【0066】
<組立構造について>
このシフト切替装置は、次のように組み立てられている。
【0067】
まず、ハウジング4の内部に円筒部材3が開口側(反先端嵌合壁部4b側)から挿入されており、円筒部材3の摺動外周面3kが、ハウジング4の先端嵌合壁部4bの内周に回転自在に嵌合されている。円筒部材3は、外周鍔部3dがハウジング4の先端嵌合壁部4bに突き当たることで、外側に抜けないように規制され、軸線方向に位置決めされている。
【0068】
次に、回転ノブ1の環状嵌合壁部1dが、ハウジング4の先端嵌合壁部4bの内周に回転自在に嵌合されると共に、円筒部材3の先端嵌合部3eに嵌合固定されている。この場合、回転ノブ1と円筒部材3は、円筒部材3の係合爪3fが回転ノブ1の係合凹部1d1に係合されることで、一体回転するよう結合されている。
【0069】
また、円筒部材3の内部には、ロッド10が挿入されており、ロッド10の胴部先端の段部が円筒部材3の内周鍔部3cに突き当たることで、外側に抜けないように規制され、軸線方向に位置決めされている。また、ロッド10の先端円筒壁10aは、円筒部材3の外側に突き出しており、その先端円筒壁10aの内部に押ボタン2の係合アーム2bが嵌まっている。
【0070】
この場合、ロッド10と押ボタン2は、ロッド10の先端円筒壁10aの内周面10bの縦溝10cに、押ボタンの3つの係合爪2bが係合することで、一体に回転するように結合されている。また、ロッド10の先端円筒壁10aの先端縁に押ボタン2の突当壁1dの基端が突き当たり、その状態で、係合アーム2bの先端の係合突起2cがロッド10の縦溝10cの内底部の係止孔dに係合することで、ロッド10と押ボタン2は、一体にスライドするように結合されている。
【0071】
また、円筒部材3とロッド10は、図3(b)に示すように、円筒部材3の内周面の3つの縦溝3bにそれぞれロッド10の胴部10eの外周の3つの凸条10e1が嵌まることで、一体回転するよう係合され、且つ、軸線方向にスライド可能に案内されている。
【0072】
次に、ハウジング4の内部には、円筒部材3の外周側に位置させて、第1スプリング13と回転リング6と固定リング5とストッパリング8とが順番にハウジング4の開口側から挿入されている。円筒部材3と回転リング6は、円筒部材3の外周の3つの縦溝3gに、回転リング6の3つの内周突起部6bが嵌まることで、一体回転するように結合され、且つ、軸線方向にスライド可能に結合されている。
【0073】
また、固定リング5は、固定リング5の外周の切欠部5cを、ハウジング4内の係合凹部4cにその外周角部が挿入されたストッパリング8の外周突起部8bの内周角部に嵌めることで、ハウジング4に対して回転しないように固定されている。また、回転リング6と円筒部材3の外周鍔部3dとの間に第1スプリング13が介装されている。そして、回転リング6の下面のピン6cが、第1スプリング13の付勢力によって、それぞれ固定リング5のカム斜面5aに摺動可能に押し当てられている。これにより、カム機構7と、ロッド10を回転方向の基準位置(ピン6cが凹部5bに嵌まる位置)に付勢する手段が構成されている。
【0074】
なお、ストッパリング8は、嵌合部材9の先端係合爪9bをハウジング4の係合孔4dに係合させることにより、ハウジング4に対して軸線方向に移動しないように固定されており、嵌合部材9は、先端係合爪9bによりハウジング4に固定される。
【0075】
また、嵌合部材9とストッパリング8との間にはロック板11と第2スプリング15が挿入されている。このロック板11は、ストッパリング8側に位置しており、ロッド10の基端のスプライン軸部10fをロック板111の中心のスプライン孔11bに嵌めることで、ロッド10と一体に回転するように結合されている。ロック板11は、ロック板11の側面と嵌合部材9の底壁9eとの間に介装された第2スプリング15により、ストッパリング8側に向けて軸線方向に付勢されており、押ボタン2を押し込まない状態のときの、押ボタン2とロッド10とロック板11の位置が、スライド方向の基準位置として規定されている。
【0076】
このシフト切替装置では、回転方向の3つのシフトポジションに対応して、嵌合部材9に3本のスライド溝9d1、9d2、9d3が形成されており、ロッド10のスライド方向の2つの位置(押ボタン2を押し込む前の位置と押し込んだ位置)に対応して、軸線方向の2つのシフトポジションが規定されている。
【0077】
即ち、中央のスライド溝9d1にロック板11の外周突起部11aが対向する位置で、且つロッド10のスライド前の位置(この位置がスライド方向の基準位置)がホームポジション(H)に設定され、スライド後の位置がパーキングポジション(P)に設定されている。また、隣りのスライド溝9d2にロック板11の外周突起部11aが対向する位置で、且つロッド10のスライド前の位置(この位置がスライド方向の基準位置)が第1ニュートラルポジション(N1)に設定され、スライド後の位置がドライブポジション(D)に設定されている。また、反対側のスライド溝9d3にロック板11の外周突起部11aが対向する位置で、且つロッド10のスライド前の位置(この位置がスライド方向の基準位置)が第1ニュートラルポジション(N2)に設定され、スライド後の位置がリバースポジション(R)に設定されている。
【0078】
この場合の第1ニュートラルポジション(N1)と第2ニュートラルポジション(N2)は、走行レンジ(DレンジやRレンジ)に切り替えることの可能な位置(走行レンジ切替可能位置)であり、ロック板11と嵌合部材9の組み合わせは、ロッド10が回転方向の基準位置(ホームポジションH)または該基準位置から回転方向に離間した走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)に位置した状態のときだけ、スライド方向の基準位置からのロッド10のスライド(押ボタン2の押し込み)を可能にするスライド方向でのロッド規制手段を構成している。また、同時に、ロック板11と嵌合部材9の組み合わせは、ロッド10が回転方向の基準位置(ホームポジションH)または走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)に位置した状態で、ロッド10をスライド方向の基準位置から、スライド溝9d(9d1、9d2、9d3)内にスライドさせたとき、ロッド10の回転を禁止する回転方向でのロッド規制手段を構成している。
【0079】
<検出器20>
検出器20は、ロッド10の回転位置およびスライド位置を検出して設定されたポジション信号を出力するものであり、本実施形態では、非接触式のものが使用されているが、接触式のもので置き換えることもできる。
【0080】
この検出器20は、3つのケーシング部品21a,21b,21cを組み合わせて構成されるケーシング21と、そのケーシング21の内部に収容され、軸線Lの周りに回動可能且つ軸線Lの方向に変位可能とされた検知体23と、検知体23の中に保持された永久磁石24と、検知体23を軸線方向に付勢する復帰スプリング28と、ケーシング21の内部に固定された回路基板25と、回路基板25に搭載された検知素子18A〜18Dと、回路基板からの出力を取り出すコネクタ26と、を有している。
【0081】
ケーシング21の軸方向の一方の壁には貫通孔22が設けられており、ロッド10のスプライン軸部10fの基端は、この貫通孔22を通して、ケーシング21内部の検知体23の軸穴23aに嵌合している。また、ケーシング21の内部と検知体23の外周部には、検知体23の回転範囲を規制する回転範囲規制突起21s,23sが設けられている。
【0082】
ここで、検知素子18A,18Bとしては、アナログ出力センサが設けられている。また、検知素子18C,18Dとしては、ON/OFF出力センサが設けられている。これら検知素子18A〜18Dは、永久磁石24を保持する検知体23の軸方向の位置および回転方向の位置の違いにより、異なる信号の組み合わせを出力する。
【0083】
出力内容とシフトポジションの対応関係は、図15に示すようになっている。
【0084】
検知素子18A、18Bは、図16に示すように、検知体23の回転量に応じたアナログ値(電圧値)を出力する。
【0085】
検知素子18A,18Bは、検知体23の軸方向変位に関係なく、常に永久磁石24と対向しており、検知体23の回転を永久磁石24の磁束の変化として検出している。
【0086】
ここでは、ロッド10が、第1ニュートラルポジションN1あるいはDレンジ(ドライブポジション)にあるときは、Lowの信号を出力するように設定され、ロッド10が、ホームポジションHあるいはPレンジ(パーキングポジション)にあるときは、Midの信号を出力するように設定され、ロッド10が、第2ニュートラルポジションN2あるいはRレンジ(リバースポジション)にあるときは、Highの信号を出力するように設定されている。
【0087】
また、検知素子18C,18Dは、検知体23の軸線方向のスライド位置に応じたON/OFFを出力する。ここでは、スライドする前の位置では、図13(a)に示すように、検知素子18C,18Dが永久磁石24と対向しておらず、両方ともOFFの信号を出力し、スライドした後の位置では、図14(a)に示すように、検知素子18C,18Dが永久磁石24と対向することで、両方ともONの信号を出力するように設定されている。
【0088】
そして、これらLow、Mid、High、ON、OFFの信号の組み合わせにより、N1、H、N2、D、P、Rのポジションを判定するようになっている。
【0089】
次に作用を説明する。
【0090】
このシフト切替装置において、ロッド10は、スライド方向の基準位置(押ボタン2を押さない位置)にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、つまり、ロック板11の外周突起部11aが嵌合部材9のスライド溝9dに嵌まっていないことにより、自由に回転できる状態に保たれる。また、ロッド10は、回転方向の基準位置(ホームポジションH)にあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、つまり、ロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9dの位置が合うことにより、スライド方向の基準位置からスライドできる状態に保たれる。
【0091】
それ以外の回転位置にロッド10があるとき、ロッド10は、ロッド規制手段の働きにより、つまり、嵌合部材9の先端面にロック板11の外周突起11aが干渉することにより、スライド動作を規制される。また、ロッド10は、回転方向の基準位置(ホームポジションH)または走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)に位置した状態で、スライド方向の基準位置からスライドさせられたとき、ロッド規制手段の働きにより、つまり、ロック板11の外周突起部11aが嵌合部材9のスライド溝9dに嵌まることにより、回転を規制される。
【0092】
従って、次のことが言える。
【0093】
まず、図1〜図5に示すように、回転ノブ1および押ボタン2によりロッド10に操作力を加えていない状態では、ロッド10は、回転方向の第1付勢手段(第1スプリング13および回転リング6、固定リング5)およびスライド方向の第2付勢手段(第2スプリング15)の働きにより、ホームポジション(H)に保持される。
【0094】
このホームポジションHにロッド10が位置している状態では、ロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d1の位置が合っており、押ボタン2の押し込み操作により、矢印Sのように、そのままロッド10をホームポジション(H)からスライドさせることができる。従って、ロッド10をスライドさせることにより、パーキングレンジ(Pレンジ)を選択することができる。また、パーキングレンジPの選択後、ロッド10をスライドさせている操作力を解除すると(押ボタン2から手を離すと)、ロッド10は、第2付勢手段の働きにより、再びホームポジション(H)に自動的に復帰する。
【0095】
また、図6〜図9に示すように、回転ノブ1により、ロッド10を、ホームポジション(H)から一方の走行レンジ切替可能位置(第2ニュートラルポジションN2)に回転させると、その回転した位置(N2)でロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d3の位置が合うことにより、ロッド10をスライドさせることができるようになる。従って、図10〜図12に示すように、押ボタン2を押し込んでロッド10をスライドさせることにより、Rレンジを選択することができる。
【0096】
この場合、図6に示すように、第2ニュートラルポジションN2の位置には、その範囲にロッド10の回転位置があるときにロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d1の位置が合う許容角度範囲αが設けられており、ロッド10を回転させた際に正確な第2ニュートラルポジションN2の位置を超えても、ロッド10をスライドさせることができるようになっている。
【0097】
また、図示しないが、回転ノブ1により、ロッド10を、ホームポジション(H)から他方の走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1)に回転させると、その回転した位置(N1)でロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d2の位置が合うことにより、ロッド10をスライドさせることができるようになる。従って、押ボタン2を押し込んでロッド10をスライドさせることにより、Dレンジを選択することができる。この場合も前記と同様の許容角度範囲が設定されている。
【0098】
これらの走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択した場合にも、ロッド10をスライドさせる押ボタン2に対する操作力と、ロッド10を回転させる回転ノブ1に対する操作力を解除すると、ロッド10は、2つの付勢手段の働きにより、再びホームポジションHに復帰する。
【0099】
このように、ホームポジションHから走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択する際には、ロッド10を、ホームポジションHから一方あるいは他方へ回転させた上で、さらにスライドさせる必要があり、2つの異なる操作を連続して行う必要がある。つまり、異なる2つの動作(回転とスライド)を行って初めて、走行レンジ(DレンジまたはRレンジ)への切り替えができるようになっている。また、走行レンジを切り替える際には必ず、ニュートラルポジション(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)を経由するようになっている。なお、ロッド10を回転してニュートラルポジション(N1、またはN2)を選択後、押ボタン2を操作しないでロッド10をホームポジションHに戻した場合には、ニュートラルレンジ(Nレンジ)に切替えられる。従って、万一、誤って一方の操作手段が操作されてしまった場合でも、走行レンジに切換えられてしまうことがない。これにより、誤操作を起こしにくくすることができ、安全性を高めることができる。
【0100】
また、ロッド10をスライドさせて走行レンジを選択しているときには、ロッド規制手段によりロッド10を回転できない状態に保つことができるとともに、回転ノブ1によりロッド10を回転させる際に、ロッド10がホームポジションにあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1あるいは第2ニュートラルポジションN2)にあるときでないと、ロッド10をスライドさせることができないので、間違ったシフト切替が行われる心配がない。
【0101】
また、このロッド手段は、内周面に回転方向の各ポジションの数に対応した数のスライド溝9dを円周方向に複数有する円筒状の嵌合部材9と、ロッド10と一体で回転またはスライドするロック板11に設けた複数の外周突起部とで構成しているので、シフトパターンに沿って移動するための案内構造を別に設ける必要がなく、このロッド規制手段を軸方向に対してコンパクトに配置できる。
【0102】
また、このシフト切替装置では、ロッド10に回転を与える第1操作手段を回転スイッチ形状の回転ノブ1とすることができるので、従来のシフトレバーのように車室内に大きく突出する部分を減らすことができ、突出部分を減らせることにより、事故時などの際の危険性を少なくして、安全性の向上を図ることができるし、車室内におけるレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0103】
また、このシフト切替装置は、ロッド10の回転とスライドを組み合わせてシフトポジションを選択するようにしているので、1つの平面上にシフトパターンを展開するのと違って、シフトパターンが複雑なものになっても、構造の単純化と省スペース化を図ることができる。しかも、構成部品を同軸上に配置することで組立できるので、組立の簡便化を図ることができる。従ってコストの低減が可能である。
【0104】
また、ロッドを回転させる第1操作手段として、円筒体1aを有する回転ノブ1を使用し、ロッド10をスライドさせる第2操作手段としての押ボタン2の少なくとも一部を前記円筒体1aの内部に収容するようにしたので、操作部を極力コンパクトな構造にすることができるとともに、操作性を向上しつつ、押ボタン2の誤操作を防止できる。
【0105】
また、ロッド10の回転範囲を規制する回転範囲規制手段を円筒部材3の端面に設けた突起部3hとストッパリング8に設けたストッパ突起8cで行なうため、軸方向にコンパクトな構造にすることができる。
【0106】
また、第1付勢手段により、回転ノブ1の回転動作に節度感を持たせることができるので、操作性が向上する。
【0107】
また、第1付勢手段を軸方向に配置した2つのリング5,6と、第1スプリング13とで構成しているので、軸方向にコンパクトな構造にすることができる。
【0108】
なお、上記実施形態では、押ボタン2の動作をロッド10を介して機械的にロック板11に伝える場合について述べたが、押ボタンを電気スイッチ(ON/OFF)に変更し、ロック板11の動作をソレノイドアクチュエータ等で行うようにすることも可能である。
【0109】
また、上記実施形態では、シフト切替装置を装備する場所については述べなかったが、本シフト切替装置は、図17に示すように、例えば、ステアリングホイール付近のコンビスイッチと同様の装備として車両に搭載することも可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 回転ノブ(第1操作手段)
1a 円筒体
2 押ボタン(第2操作手段)
3h 突起部(回転範囲規制手段)
4 ハウジング
10 ロッド
5 固定リング(回転方向の第1付勢手段)
5a カム斜面
5b 凹部
6 回転リング(回転方向の第1付勢手段)
6c ピン
7 カム機構
8c ストッパ突起(回転範囲規制手段)
9 嵌合部材(ロッド規制手段)
9d、9d1〜9d3 スライド溝(ロッド規制手段)
11 ロック板
11a 外周突起部(ロッド規制手段)
13 第1スプリング(回転方向の第1付勢手段)
15 第2スプリング(スライド方向の第2付勢手段)
20 検出器(シフトポジション検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される自動変速機のシフトレンジ(シフトポジション)を切り替えるシフト切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシフト切替装置として、シフトポジションを検出器で電気的に検出し、検出器から出力される電気信号に応じて自動変速機のシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤ式のものがあり、その従来例として、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のシフト切替装置は、車室内に突出する操作レバーを持ち、その操作レバーを突出方向と交差する方向に移動させることにより、シフトポジションを切り替える構造のものである。
【0004】
また、特許文献2に記載のシフト切替装置は、回転スイッチを回すことにより、シフトポジションを切り替える構造のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−213505号公報
【特許文献2】特表2008−518845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のシフト切替装置のように、車室内に操作レバーが突出する構造を有していると、操作レバーに乗員がぶつかるおそれがあるため、衝撃吸収構造を別途設ける必要があり、構造が複雑になるとともに、装置が大きくなる。また、シフトパターンを1つの平面上に広げるので、構造が複雑になりやすく、コスト高になるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載のシフト切替装置のように回転スイッチ式とした場合、操作部の車室内への突出寸法を少なくできると共に、構造を単純化できるものの、1つの回転スイッチを同一平面状で操作するため、例えば、DポジションからNポジションにシフトさせる際に、Nポジションを通り越してRポジションへシフトしてしまうという飛ばし設定の誤操作を起こすおそれがあり、操作性が悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、車室内への操作部の突出寸法をできるだけ少なくすることができると共に、構造が簡単でコストの低減を図ることができ、しかも誤操作のおそれを低減した操作性に優れたシフト切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明のシフト切替装置は、略筒形状を有するハウジングと、該ハウジング内に支持され、軸線まわりに回転可能とされると共に軸線方向にスライド可能とされた軸形状を有するロッドと、該ロッドを回転させる第1操作手段と、該ロッドをスライドさせる第2操作手段と、該ハウジングに固定され、該ロッドの回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力するシフトポジション検出手段と、該ロッドを回転方向の基準位置に付勢する第1付勢手段と、該ロッドをスライド方向の基準位置に付勢する第2付勢手段と、該ロッドが回転方向の基準位置と該基準位置から回転方向に離間した位置に設定された走行レンジ切替可能位置との間に位置した状態で、該ロッドのスライドを規制するとともに、該ロッドが前記ロッドを前記スライド方向の基準位置からスライドした状態で、該ロッドの回転を禁止するロッド規制手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシフト切替装置であって、前記第1操作手段が、前記ロッドと一体に回転する円筒部材の端部に結合された円筒体を有する回転ノブによって構成され、前記第2操作手段が、該ロッドの端部に結合され且つ該円筒体の内部に少なくとも一部が収容された押ボタンによって構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のシフト切替装置であって、前記ロッドの回転動作とともに回転する前記円筒部材の端面に設けた突起部と、前記ハウジングに回り止めされたストッパリングに突設されるストッパ突起とからなり、該ロッドが回転した際に、該突起部と該ストッパ突起とが係合することで、該ロッドの回転範囲を規制する回転範囲規制手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、前記第1付勢手段は、前記ハウジング内に収容され、前記ロッドの外周に位置して該ロッドと一体に回転すると共に該ロッドに対して軸線方向スライド自在とされた回転リングと、該回転リングと軸線方向に対向するように該ハウジングに固定された固定リングと、該回転リングと該固定リングの軸線方向の対向面の一方に略V溝状に形成されたカム斜面と、該対向面の他方に形成されて該カム斜面上を摺動するピンと、からなるカム機構と、該回転リングと該固定リングとが近接する方向に付勢する第1スプリングと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、前記ロッド規制手段は、前記ハウジングに設けられた円筒状の嵌合部材の内周面に、前記ロッドの軸線方向に沿って形成された複数のスライド溝と、該ロッドと一体に回転およびスライド可能に設けられたロック板の外周面に形成された外周突起部とを備え、該外周突起部は、該ロッドが回転方向の基準位置、または走行レンジ切替位置に位置する状態で、該スライド溝と対向して該ロッドがスライド方向の基準位置からスライドするのを許容するとともに、該ロッドが基準位置からスライドした状態では、該スライド溝に係合してロッドの回転を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明のシフト切替装置において、ロッドは、スライド方向の基準位置にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、自由に回転できる状態に保たれる。また、ロッドは、回転方向の基準位置にあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、スライド方向の基準位置からスライドできる状態に保たれる。それ以外の回転位置にロッドがあるとき、ロッドは、ロッド規制手段の働きにより、スライド動作を規制される。また、ロッドは、回転方向の基準位置または走行レンジ切替可能位置に位置した状態で、スライド方向の基準位置からスライドさせられたとき、ロッド規制手段の働きにより、回転を規制される。従って次のことが言える。
【0015】
ここでは、ロッドの回転方向およびスライド方向の基準位置をホームポジション(H)とし、ホームポジション(H)を挟んだ両側に、前進走行レンジ(Dレンジ)と後進走行レンジ(Rレンジ)を選択するための2つの走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1および第2ニュートラルポジションN2と呼ぶ)が設定されている場合を例にとって述べる。
【0016】
まず、第1操作手段および第2操作手段によりロッドに操作力を加えていない状態では、ロッドは、付勢手段の働きにより、ホームポジション(H)に保持される。
【0017】
この状態では、第2操作手段により、そのままロッドをホームポジション(H)からスライドさせることができる。従って、ロッドをスライドさせた位置をパーキングポジション(P)として設定しておくことにより、パーキングレンジ(Pレンジ)を選択することができる。また、パーキングレンジの選択後、ロッドをスライドさせている操作力を解除すると、ロッドは、第2付勢手段の働きにより、再びホームポジション(H)に復帰する。
【0018】
また、第1操作手段により、ロッドを、ホームポジション(H)から一方の走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1)に回転させると、その回転した位置(N1)で、ロッドをスライドさせることができるようになる。従って、ロッドをスライドさせた位置を前進走行レンジ位置として設定しておくことにより、第2操作手段によってロッドをスライドさせることで、前進走行レンジ(Dレンジ)を選択することができる。
【0019】
また、第1操作手段により、ロッドを、ホームポジション(H)から他方の走行レンジ切替可能位置(第2ニュートラルポジションN2)に回転させると、その回転した位置(N2)で、ロッドをスライドさせることができるようになる。従って、ロッドをスライドさせた位置を後進走行レンジ位置として設定しておくことにより、第2操作手段によってロッドをスライドさせることで、後進走行レンジ(Rレンジ)を選択することができる。
【0020】
これらの走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択した場合にも、ロッドをスライドさせる操作力と、ロッドを回転させる操作力を解除すると、ロッドは、2つの付勢手段の働きにより、再びホームポジション(H)に復帰する。
【0021】
このように、ホームポジション(H)から走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択する際には、ロッドを、ホームポジションから一方あるいは他方へ回転させた上で、さらにスライドさせる必要があり、2つの異なる操作を連続して行う必要がある。つまり、異なる2つの動作(回転とスライド)を行って初めて、走行レンジ(DレンジまたはRレンジ)への切り替えができるようにしている。また、走行レンジを切り替える際には必ず、ニュートラルポジション(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)を経由するようにしている。従って、万一、誤って一方の操作手段が操作されてしまった場合でも、走行レンジに切替えられてしまうことがない。これにより、誤操作を起こしにくくすることができ、安全性を高めることができる。
【0022】
また、ロッドをスライドさせて走行レンジを選択しているときには、ロッド規制手段によりロッドを回転できない状態に保つとともに、第1操作手段によりロッドを回転させる際に、ロッドがホームポジションにあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置にあるときでないと、ロッドをスライドさせることができないので、間違ったシフト切替が行われる心配がない。
【0023】
また、このシフト切替装置では、ロッドに回転を与える第1操作手段を回転スイッチ形状にすることができるので、従来のシフトレバーのように車室内に大きく突出する部分を減らすことができ、突出部分を減らせることにより、事故時などの際の危険性を少なくして、安全性の向上を図ることができるし、車室内におけるレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0024】
また、このシフト切替装置は、ロッドの回転とスライドを組み合わせてシフトポジションを選択するようにしているので、1つの平面上にシフトパターンを展開するのと違って、シフトパターンが複雑なものになっても、構造の単純化と省スペース化を図ることができる。しかも、構成部品を同軸上に配置しているので、組立の簡便化を図ることができる。従ってコストの低減が可能である。
【0025】
請求項2の発明によれば、ロッドを回転させる第1操作手段を、ロッドと一体に回転する円筒部材の端部に結合された円筒体を有する回転ノブで構成し、ロッドをスライドさせる第2操作手段を、ロッドの端部に結合され且つ前記円筒体の内部に少なくとも一部が収容された押ボタンで構成したので、操作部を極力コンパクトな構造にすることができるとともに、操作性を向上しつつ、押ボタンの誤操作を防止することができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、ロッドの必要以上の回転操作を規制する回転範囲規制手段を円筒部材の端面に設けた突起部と、ストッパリングに設けたストッパ突起で行なうため、この回転範囲規制手段を軸方向にコンパクトに配置することができる。
【0027】
請求項4の発明によれば、ロッドの回転動作に節度感を持たせることができるとともに、ロッドを基準位置へと移動させる第1付勢手段を軸方向に配置した回転リングと固定リングの間のカム機構と第1スプリングとにより構成しているので、第1付勢手段を軸方向にコンパクトに配置することができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、内周面にスライド溝を有する円筒状の嵌合部材とロッドと一体で移動する外周突起部を有するロック板とでロッド規制手段を構成しているので、このロッド規制手段を軸方向にコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態のシフト切替装置の分解斜視図である。
【図2】同装置のホームポジション(H)時の外観斜視図である。
【図3】同装置のホームポジション(H)時の詳細図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図4】同置のホームポジション(H)時の一部要素を取り出して示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のC矢視図である。
【図5】同装置のホームポジション(H)時の他の一部要素を取り出して示す斜視図である。
【図6】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の外観斜視図である。
【図7】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の詳細を示す縦断面図である。
【図8】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の一部要素を取り出して示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のD矢視図である。
【図9】同装置の第2ニュートラルポジション(N2)時の他の一部要素を取り出して示す斜視図である。
【図10】同装置のRレンジ時の外観斜視図である。
【図11】同装置のRレンジ時の詳細図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)のE−E矢視断面図である。
【図12】同装置のRレンジ時の一部要素を取り出して示す斜視図である。
【図13】同装置におけるシフトポジション検出器のホームポジション(H)時の詳細構成を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のF−F矢視断面図である。
【図14】同装置におけるシフトポジション検出器のRレンジ時の詳細構成を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のGで示す検出範囲の横断面図である。
【図15】同装置のシフトポジション検出器の信号の組み合わせとシフトレンジの対応関係を示す図である。
【図16】同装置のシフトポジション検出器の出力するアナログ信号とロッドの回転量およびレンジとの関係を示す特性図である。
【図17】(a)は本発明の実施形態の装置をコンビスイッチと同様のスイッチ形状に構成した応用例を示す斜視図、(b)は反対方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1〜図12に示すように、このシフト切替装置は、車体(図示せず)に固定される円筒形状のハウジング4と、ハウジング4の内部に配置され、軸線Lの周りに矢印Tのように回転可能とされると共に軸線Lの方向に矢印Sのようにスライド可能とされたロッド10と、ハウジング4の先端部に配置され、ロッド10を回転させる回転ノブ(第1操作手段)1およびロッド10をスライドさせる押ボタン(第2操作手段)2と、ハウジング4の基部に固定され、ロッド10の回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力する検出器(シフトポジション検出手段)20と、ハウジング4の内部に回転可能に収容されるとともに、ロッド10が貫通する円筒部材3と、この円筒部材3の外周に配置される回転リング6と、回転リング6と軸方向に対向して配置される固定リング5と、固定リング5をハウジング4に対して回転方向で保持するストッパリング8と、ロッド10の基部に嵌合されるロック板11と、ロック板11に対応してハウジング4の基端に固定される嵌合部材9と、ロッド10を回転方向および軸線方向に付勢するためのコイル式の第1および第2スプリング13,15と、を備えている。
【0032】
以下に、各部品の具体的な構成と部品を組み合わせた構造について述べる。
【0033】
<回転ノブ1>
回転ノブ1は、ロッド10を回動させるための第1操作部材であり、ロッド10と一体で回転する円筒部材3の先端に固定され、内空間1bに押ボタン2の少なくとも一部が収容される円筒体1aと、円筒体1aの外周面に突設されたレバー部1cと、円筒体1aの基端に形成された環状嵌合壁部1dと、環状嵌合壁部1bの内周縁に120°間隔で設けられた3つの係合凹部1d1と、を有している。
【0034】
図3に詳細を示すように、円筒体1aの内空間1bは、押ボタン2を収容すると共に押ボタン2の押し込み動作を許容する円筒状の空間であり、さらに、押ボタン2とロッド10の連結部分を収容する空間でもある。環状嵌合壁部1dは、ハウジング4の先端嵌合壁部4b(後述)に回転自在に嵌合すると共に、円筒部材3の先端嵌合部3e(後述)が嵌合固定される部分である。また、環状嵌合壁部1dの内周縁に形成された3つの係合凹部1d1は、円筒部材3の先端の係合爪3f(後述)が嵌まることで、回転ノブ1と円筒部材3を一体回転するように結合する部分である。
【0035】
<押ボタン2>
押ボタン2は、ロッド10を軸線Lの方向に押し込みスライドさせる操作部材であり、回転ノブ1の円筒体1aの内空間1bに収容される大きさの円板状の押圧操作部2aと、この押圧操作部2aにロッド10に向かって突設された120°間隔の3つの係合アーム2bと、係合アーム2bの各先端に設けられた外向きの係合突起2cと、ロッド10の端面に当接する係合アーム2b間に位置する円弧状の突当壁2dと、を有している。
【0036】
係合アーム2bは、ロッド10の先端の円筒壁10aの内周面10bに形成された縦溝10c(後述)に係合することで、ロッド10と押ボタン2を一体回転するように結合する部分である。また、各係合アーム2bの先端の係合突起2cは、ロッド10の先端の円筒壁10aの外周面から縦溝10c内まで貫通するように形成された係止孔10d(後述)に係合する。また、突当壁2dは、先端面が対向するロッド10の先端の円筒壁10aの先端に突き当たることで、ロッド10と押ボタン2を、スライド方向にガタつきなく一体に結合する部分である。
【0037】
<円筒部材3>
円筒部材3は、ハウジング4内に支持されて回転ノブ1と共に回転する部材であり、円筒壁3aと、この円筒壁3aの内周面に120°間隔で形成された軸線方向に延びる3つの縦溝3bと、円筒壁3aの先端付近に形成された内周鍔部3cと、円筒壁3aの先端付近に形成された外周鍔部3dと、円筒壁3aの先端に形成された先端嵌合部3eと、先端嵌合部3eに120°間隔で形成された3つの係合爪3fと、円筒壁3aの外周面に120°間隔で形成された軸線方向に延びる3つの縦溝3gと、円筒壁3aの基端に120°間隔で軸線方向に突設された3つの突起部3hと、外周鍔部3dに隣接してハウジング4の先端嵌合壁部4bの内周面に回転可能に摺接する摺動外周面3kとを有している。
【0038】
円筒壁3aの内周の3本の縦溝3bは、ロッド10の胴部10eの外周の3本の軸線方向に延びる凸条10e1(後述)がそれぞれ嵌まることで、ロッド10と円筒部材3を一体回転するように嵌合する部分である。また、ロッド10は、3本の凸条10e1がそれぞれ円筒部材3の縦溝3bに嵌まることで、円筒部材3によって軸線Lの方向にスライド自在にガイドされる。
【0039】
また、内周鍔部3cは、ロッド10の胴部10eの先端段部が係合することで、ロッド10の押ボタン2側軸線方向への移動を規制して、ロッド10と円筒部材3を軸線Lの方向に位置決めする部分である。また、外周鍔部3dは、ハウジング4の先端嵌合壁部4bに内側から係合することで、円筒部材3の押ボタン2側軸線方向への移動を規制して、ハウジング4に対する円筒部材3の軸線Lの方向の位置決めを行う部分であると共に、第1スプリング13の先端部受座として機能する部分である。また、嵌合壁部3eは、回転ノブ1の環状嵌合壁部1dに嵌合固定される部分である。
【0040】
また、係合爪3fは、回転ノブ1の環状嵌合壁部1dの係合凹部1d1に係合することで、回転ノブ1と円筒部材3を一体回転できるように結合する部分である。また、円筒壁3aの外周面の縦溝3gは、回転リング6の内周面の内周突起部6b(後述)が嵌まることで、回転リング6と円筒部材3を一体回転できるように、且つ、軸線Lの方向にスライドできるように結合する部分である。また、円筒壁3aの基端の3つの突起部3hは、ストッパリング8の上面の内周側の3つのストッパ突起8c(後述)に当たることで、円筒部材3の回転範囲を規制する部分である。
【0041】
<ハウジング>
ハウジング4は、円筒壁4aと、円筒壁4aの先端側端面に設けられた先端嵌合壁部4bと、円筒壁4aの内周面に120°間隔で他端側端面から軸線方向に形成された3つの切欠状の係合凹部4cと、係合凹部4cの内底壁に貫通形成された係合孔4dと、を有している。
【0042】
先端嵌合壁部4bは、軸線方向で回転ノブ1の環状嵌合壁部1dおよび円筒部材3の外周鍔部3dに挟まれており、軸方向への移動を規制した状態で回転自在に支持される。また、係合凹部4cは、ストッパリング8の外周突起部8bが嵌まることで、ストッパリング8を回り止めすると共に位置決めする部分である。また、係合孔4dは、嵌合部材9の先端に突設されたロック爪9b(後述)が嵌まることで、ハウジング4に嵌合部材9を固定すると共に、固定した状態でロック爪9bによるストッパリング8の抜け止めを補助する部分である。
【0043】
<固定リング5>
固定リング5は、ハウジング4内でストッパリング8と円筒部材3の外周鍔部3dとの間に配置されてストッパリング8に対して回転方向で固定される環状の部材であり、軸方向で円筒部材3側の面に、周方向に120°間隔で形成された円筒カムとしての3つのカム斜面5aを有する。カム斜面5aは、最も低い位置(軸線方向に対向する回転リング6側から見て一番低い部分)の両側に設けられた対称形状の傾斜面として構成され、最も低い位置から周方向に離れるに従い徐々に高さ(軸線方向に対向する回転リング6側から見た高さ)が高くなるように形成されている。そして、このカム斜面5aの最も低い位置に、回転リング6のピン6cの嵌まる凹部5bが設けられている。
【0044】
また、固定リング5の外周下縁には、120°間隔で3つの切欠部5cが設けられている。これらの切欠部5cは、ストッパリング8の外周突起部8bの内周側の角部に嵌まることで、固定リング5を回転止めする部分である。
【0045】
<回転リング6>
回転リング6は、円筒部材3の外周側に位置して固定リング5と軸線方向に対向するように配置され、円筒部材3と一体に回転すると共に円筒部材3に対して軸線Lの方向にスライド自在とされる環状の部材であり、内周に120°間隔で突設された3つの内周突起部6bと、固定リング5側の端面に120°間隔で突設された3つのピン6cと、を有している。
【0046】
内周突起部6bは、円筒部材3の円筒壁3aの外周の縦溝3gにスライド自在に嵌まることで、円筒部材3と回転リング6を一体回転するように結合する部分である。ピン6cは、カム斜面5aに摺動するカムフォロアに相当する部分である。
【0047】
<第1スプリング13>
第1スプリング13は、円筒部材3の円筒壁3aの外周に配置され、回転リング6と円筒部材3の外周鍔部3dとの間に圧縮状態で介装されており、この第1スプリング13の付勢力により、回転リング6のピン6cが固定リング5のカム斜面5aに押し付けられている。
【0048】
本実施形態では、回転リング6にピン(カムフォロア)6cが形成され、固定リング5にカム面5aが形成されているが、逆に、回転リング6にカム面が形成され、固定リング5にピンが形成されていてもよい。
【0049】
<カム機構7>
そして、図4に示すように、回転リング6と固定リング5の軸線方向の対向面の一方に形成されたカム斜面5aおよび他方に形成されて前記カム斜面5aを摺動するカムフォロアとしてのピン6cの組み合わせによりカム機構7が構成され、回転リング5が基準位置(ピン6cが凹部5bに嵌まる位置)から一方あるいは他方に回転するに従い、回転リング6を固定リング5から離れる方向(軸線方向)に変位させるようになっている。従って、回転リング6の軸線方向の変位が増すほど、第1スプリング13は付勢力を高めるようになる。
【0050】
また、カム斜面5aは、第1スプリング13の付勢力によって、ピン6を基準位置である最低部(凹部5bのある位置)に向かって回転付勢する作用を果たすことになる。従って、カム機構7と第1スプリング13により、回転リング6と一体回転する円筒部材3およびロッド10を回転方向の基準位置に付勢する第1付勢手段が構成されている。
【0051】
また、カム斜面5aの最も低い位置に設けられた凹部5bは、その凹部5bにピン6cが嵌まることで、一定以上の回転力が回転リング6に作用するまで当該ピン6cを保持しておく部分であり、回転リング6の回転動作に節度感を持たせる役目を果たす。
【0052】
<ストッパリング8>
ストッパリング8は、円板部8aと、円板部8aの外周部に設けられた外周突起部8bと、円板部8aの内周側の側面に120°間隔で円筒部材3側に向かって突設されたストッパ突起8cと、を有している。
【0053】
外周突起部8bは、ハウジング4の係合凹部4cに嵌まることで、ストッパリング8の回り止めと位置決めをする部分である。また、ストッパ突起8cは、円筒部材3の基端の突起部3hが当たることで、円筒部材3およびそれと一体に回転するロッド10の回転範囲を規制する役目を果たす。
【0054】
従って、ストッパリング8のストッパ突起8cと円筒部材3の基端の突起部3hとにより、円筒部材3およびロッド10の回転範囲を規制する回転範囲規制手段が構成されている。
【0055】
<嵌合部材9>
嵌合部材9は、基準位置から軸線方向にスライドしてきたロック板11を受け入れて嵌合することで、ロッド10の回転を禁止する部材であり、短円筒壁9aと、短円筒壁9aの一方の端面に120°間隔で軸線方向に突設された3つの先端係合爪9bと、短円筒壁9aの他方の端面に120°間隔で軸線方向に突設された3つの基端係合爪9cと、短円筒壁9aの内周面に120°間隔で軸線方向に沿って形成された3本1組の3組のスライド溝9dと、短円筒壁9aの他方の端面を塞ぐように設けられた底壁9eと、底壁9eの中心部に形成された貫通孔9fと、を有している。
【0056】
各組のスライド溝9dとして、周方向の中央にはPレンジ用のスライド溝9d1が設けられ、その両側に角度θ(約20°)間隔でDレンジ用のスライド溝9d2およびRレンジ用のスライド溝9d3とが設けられている。これらスライド溝9dには、後述するロック板11の外周突起部11aがスライドして選択的に嵌合する部分である。
【0057】
また、先端係合爪9bは、ハウジング4の係合凹部4cと係合孔4dに係合することで、ハウジング4と嵌合部材9を回転方向および軸線方向で一体に結合する部分であり、この先端係合爪9bをハウジング4の係合孔4dに係合することにより、ストッパスプリング8を介して固定リング5の軸線方向への移動を阻止するとともに、抜け止めすることができるようになっている。また、基端係合爪9cは、検出器20と結合する部分である。
【0058】
<ロッド10>
ロッド10は、回転ノブ1を回動操作することにより、軸線Lの周りに回転ノブ1と一体に回転し、しかも、押ボタン2を押し込むことにより、軸線Lの方向にスライドする棒状の部材であり、一端側の部分である先端円筒壁10aと、中央の胴部10eと、他端側のスプライン軸部10fと、を有している。
【0059】
先端円筒壁10aは、その先端に押ボタン2の突当壁2dの基端が突き当たる部分であり、この先端円筒壁10aの内周面10bには、120°間隔で軸線方向に延びる縦溝10cが形成され、その縦溝10cの内底壁に外周面から貫通する係止孔10dが設けられている。
【0060】
そして、押ボタン2の係合アーム2bを、ロッド10の先端円筒壁10aの内周面10bの縦溝10cに係合することにより、ロッド10と押ボタン2が一体回転するように結合されている。また、押ボタン2の突当壁2dの基端を、ロッド10の先端円筒壁10aの先端に突き当て、且つ、押ボタン2の各係合アーム2bの先端の係合突起2cを、ロッド10の先端円筒壁10aの係止孔10dに係合することで、ロッド10と押ボタン2がスライド方向にガタつきなく一体に結合されている。
【0061】
また、ロッド10の胴部10eの外周には、120°間隔で3本の軸方向に延びる凸条10e1が設けられている。これら凸条10e1は、それぞれ円筒部材3の内周面の縦溝3bに軸線方向スライド自在に嵌まっており、それにより、ロッド10と円筒部材3が一体回転するように結合されている。
【0062】
<ロック板11>
ロック板11は、ロッド10の回転方向の所定の位置以外での押ボタン2の押し込みを規制するとともに、押ボタン2の押し込みによりロッド10が基準位置からスライドしたとき、ロッド10の回転を規制する円板状の部材であり、外周に120°間隔で半径方向外側に突出した3つの外周突起部11aを有すると共に、中心部に、ロッド10のスプライン軸部10fが嵌まることで、ロッド10と一体回転するように結合される貫通したスプライン孔11bを有している。
【0063】
そして、ロック板11は、ロッド10のスプライン軸部10fがスプライン孔11bに嵌まることで、ロッド10と一体回転するように結合され、ロッド10の胴部10eの基端段部にロック板11が突き当たることで、ロッド10と一体に下方へスライドするように結合されている。
【0064】
また、図5に示すように、外周突起部11aは、嵌合部材9のスライド溝9d(9d1、9d2、9d3)の1つに選択的に嵌まる部分であり、スライド溝9dと位置が合わないときは、嵌合部材9の端面に突き当たることで、ロック板11が軸線方向の基準位置から移動しないように保つ。また、外周突起部11aは、嵌合部材9のスライド溝9d(9d1、9d2、9d3)の1つにスライドして嵌まったとき、ロック板11の回転、つまりはロッド10や回転ノブ1の回転を禁止する役目を果たす。
【0065】
<第2スプリング15>
第2スプリング15は、ロック板11の側面と嵌合部材9の底壁9eの内面との間に圧縮状態で介装されており、ロック板11を押ボタン2側に付勢し、それにより、ロッド10を基準位置である外側位置に付勢している。従って、この第2スプリング15が、ロッド10を基準位置に付勢する第2付勢手段に相当する。
【0066】
<組立構造について>
このシフト切替装置は、次のように組み立てられている。
【0067】
まず、ハウジング4の内部に円筒部材3が開口側(反先端嵌合壁部4b側)から挿入されており、円筒部材3の摺動外周面3kが、ハウジング4の先端嵌合壁部4bの内周に回転自在に嵌合されている。円筒部材3は、外周鍔部3dがハウジング4の先端嵌合壁部4bに突き当たることで、外側に抜けないように規制され、軸線方向に位置決めされている。
【0068】
次に、回転ノブ1の環状嵌合壁部1dが、ハウジング4の先端嵌合壁部4bの内周に回転自在に嵌合されると共に、円筒部材3の先端嵌合部3eに嵌合固定されている。この場合、回転ノブ1と円筒部材3は、円筒部材3の係合爪3fが回転ノブ1の係合凹部1d1に係合されることで、一体回転するよう結合されている。
【0069】
また、円筒部材3の内部には、ロッド10が挿入されており、ロッド10の胴部先端の段部が円筒部材3の内周鍔部3cに突き当たることで、外側に抜けないように規制され、軸線方向に位置決めされている。また、ロッド10の先端円筒壁10aは、円筒部材3の外側に突き出しており、その先端円筒壁10aの内部に押ボタン2の係合アーム2bが嵌まっている。
【0070】
この場合、ロッド10と押ボタン2は、ロッド10の先端円筒壁10aの内周面10bの縦溝10cに、押ボタンの3つの係合爪2bが係合することで、一体に回転するように結合されている。また、ロッド10の先端円筒壁10aの先端縁に押ボタン2の突当壁1dの基端が突き当たり、その状態で、係合アーム2bの先端の係合突起2cがロッド10の縦溝10cの内底部の係止孔dに係合することで、ロッド10と押ボタン2は、一体にスライドするように結合されている。
【0071】
また、円筒部材3とロッド10は、図3(b)に示すように、円筒部材3の内周面の3つの縦溝3bにそれぞれロッド10の胴部10eの外周の3つの凸条10e1が嵌まることで、一体回転するよう係合され、且つ、軸線方向にスライド可能に案内されている。
【0072】
次に、ハウジング4の内部には、円筒部材3の外周側に位置させて、第1スプリング13と回転リング6と固定リング5とストッパリング8とが順番にハウジング4の開口側から挿入されている。円筒部材3と回転リング6は、円筒部材3の外周の3つの縦溝3gに、回転リング6の3つの内周突起部6bが嵌まることで、一体回転するように結合され、且つ、軸線方向にスライド可能に結合されている。
【0073】
また、固定リング5は、固定リング5の外周の切欠部5cを、ハウジング4内の係合凹部4cにその外周角部が挿入されたストッパリング8の外周突起部8bの内周角部に嵌めることで、ハウジング4に対して回転しないように固定されている。また、回転リング6と円筒部材3の外周鍔部3dとの間に第1スプリング13が介装されている。そして、回転リング6の下面のピン6cが、第1スプリング13の付勢力によって、それぞれ固定リング5のカム斜面5aに摺動可能に押し当てられている。これにより、カム機構7と、ロッド10を回転方向の基準位置(ピン6cが凹部5bに嵌まる位置)に付勢する手段が構成されている。
【0074】
なお、ストッパリング8は、嵌合部材9の先端係合爪9bをハウジング4の係合孔4dに係合させることにより、ハウジング4に対して軸線方向に移動しないように固定されており、嵌合部材9は、先端係合爪9bによりハウジング4に固定される。
【0075】
また、嵌合部材9とストッパリング8との間にはロック板11と第2スプリング15が挿入されている。このロック板11は、ストッパリング8側に位置しており、ロッド10の基端のスプライン軸部10fをロック板111の中心のスプライン孔11bに嵌めることで、ロッド10と一体に回転するように結合されている。ロック板11は、ロック板11の側面と嵌合部材9の底壁9eとの間に介装された第2スプリング15により、ストッパリング8側に向けて軸線方向に付勢されており、押ボタン2を押し込まない状態のときの、押ボタン2とロッド10とロック板11の位置が、スライド方向の基準位置として規定されている。
【0076】
このシフト切替装置では、回転方向の3つのシフトポジションに対応して、嵌合部材9に3本のスライド溝9d1、9d2、9d3が形成されており、ロッド10のスライド方向の2つの位置(押ボタン2を押し込む前の位置と押し込んだ位置)に対応して、軸線方向の2つのシフトポジションが規定されている。
【0077】
即ち、中央のスライド溝9d1にロック板11の外周突起部11aが対向する位置で、且つロッド10のスライド前の位置(この位置がスライド方向の基準位置)がホームポジション(H)に設定され、スライド後の位置がパーキングポジション(P)に設定されている。また、隣りのスライド溝9d2にロック板11の外周突起部11aが対向する位置で、且つロッド10のスライド前の位置(この位置がスライド方向の基準位置)が第1ニュートラルポジション(N1)に設定され、スライド後の位置がドライブポジション(D)に設定されている。また、反対側のスライド溝9d3にロック板11の外周突起部11aが対向する位置で、且つロッド10のスライド前の位置(この位置がスライド方向の基準位置)が第1ニュートラルポジション(N2)に設定され、スライド後の位置がリバースポジション(R)に設定されている。
【0078】
この場合の第1ニュートラルポジション(N1)と第2ニュートラルポジション(N2)は、走行レンジ(DレンジやRレンジ)に切り替えることの可能な位置(走行レンジ切替可能位置)であり、ロック板11と嵌合部材9の組み合わせは、ロッド10が回転方向の基準位置(ホームポジションH)または該基準位置から回転方向に離間した走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)に位置した状態のときだけ、スライド方向の基準位置からのロッド10のスライド(押ボタン2の押し込み)を可能にするスライド方向でのロッド規制手段を構成している。また、同時に、ロック板11と嵌合部材9の組み合わせは、ロッド10が回転方向の基準位置(ホームポジションH)または走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)に位置した状態で、ロッド10をスライド方向の基準位置から、スライド溝9d(9d1、9d2、9d3)内にスライドさせたとき、ロッド10の回転を禁止する回転方向でのロッド規制手段を構成している。
【0079】
<検出器20>
検出器20は、ロッド10の回転位置およびスライド位置を検出して設定されたポジション信号を出力するものであり、本実施形態では、非接触式のものが使用されているが、接触式のもので置き換えることもできる。
【0080】
この検出器20は、3つのケーシング部品21a,21b,21cを組み合わせて構成されるケーシング21と、そのケーシング21の内部に収容され、軸線Lの周りに回動可能且つ軸線Lの方向に変位可能とされた検知体23と、検知体23の中に保持された永久磁石24と、検知体23を軸線方向に付勢する復帰スプリング28と、ケーシング21の内部に固定された回路基板25と、回路基板25に搭載された検知素子18A〜18Dと、回路基板からの出力を取り出すコネクタ26と、を有している。
【0081】
ケーシング21の軸方向の一方の壁には貫通孔22が設けられており、ロッド10のスプライン軸部10fの基端は、この貫通孔22を通して、ケーシング21内部の検知体23の軸穴23aに嵌合している。また、ケーシング21の内部と検知体23の外周部には、検知体23の回転範囲を規制する回転範囲規制突起21s,23sが設けられている。
【0082】
ここで、検知素子18A,18Bとしては、アナログ出力センサが設けられている。また、検知素子18C,18Dとしては、ON/OFF出力センサが設けられている。これら検知素子18A〜18Dは、永久磁石24を保持する検知体23の軸方向の位置および回転方向の位置の違いにより、異なる信号の組み合わせを出力する。
【0083】
出力内容とシフトポジションの対応関係は、図15に示すようになっている。
【0084】
検知素子18A、18Bは、図16に示すように、検知体23の回転量に応じたアナログ値(電圧値)を出力する。
【0085】
検知素子18A,18Bは、検知体23の軸方向変位に関係なく、常に永久磁石24と対向しており、検知体23の回転を永久磁石24の磁束の変化として検出している。
【0086】
ここでは、ロッド10が、第1ニュートラルポジションN1あるいはDレンジ(ドライブポジション)にあるときは、Lowの信号を出力するように設定され、ロッド10が、ホームポジションHあるいはPレンジ(パーキングポジション)にあるときは、Midの信号を出力するように設定され、ロッド10が、第2ニュートラルポジションN2あるいはRレンジ(リバースポジション)にあるときは、Highの信号を出力するように設定されている。
【0087】
また、検知素子18C,18Dは、検知体23の軸線方向のスライド位置に応じたON/OFFを出力する。ここでは、スライドする前の位置では、図13(a)に示すように、検知素子18C,18Dが永久磁石24と対向しておらず、両方ともOFFの信号を出力し、スライドした後の位置では、図14(a)に示すように、検知素子18C,18Dが永久磁石24と対向することで、両方ともONの信号を出力するように設定されている。
【0088】
そして、これらLow、Mid、High、ON、OFFの信号の組み合わせにより、N1、H、N2、D、P、Rのポジションを判定するようになっている。
【0089】
次に作用を説明する。
【0090】
このシフト切替装置において、ロッド10は、スライド方向の基準位置(押ボタン2を押さない位置)にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、つまり、ロック板11の外周突起部11aが嵌合部材9のスライド溝9dに嵌まっていないことにより、自由に回転できる状態に保たれる。また、ロッド10は、回転方向の基準位置(ホームポジションH)にあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)にあるとき、ロッド規制手段による規制が働かないことにより、つまり、ロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9dの位置が合うことにより、スライド方向の基準位置からスライドできる状態に保たれる。
【0091】
それ以外の回転位置にロッド10があるとき、ロッド10は、ロッド規制手段の働きにより、つまり、嵌合部材9の先端面にロック板11の外周突起11aが干渉することにより、スライド動作を規制される。また、ロッド10は、回転方向の基準位置(ホームポジションH)または走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)に位置した状態で、スライド方向の基準位置からスライドさせられたとき、ロッド規制手段の働きにより、つまり、ロック板11の外周突起部11aが嵌合部材9のスライド溝9dに嵌まることにより、回転を規制される。
【0092】
従って、次のことが言える。
【0093】
まず、図1〜図5に示すように、回転ノブ1および押ボタン2によりロッド10に操作力を加えていない状態では、ロッド10は、回転方向の第1付勢手段(第1スプリング13および回転リング6、固定リング5)およびスライド方向の第2付勢手段(第2スプリング15)の働きにより、ホームポジション(H)に保持される。
【0094】
このホームポジションHにロッド10が位置している状態では、ロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d1の位置が合っており、押ボタン2の押し込み操作により、矢印Sのように、そのままロッド10をホームポジション(H)からスライドさせることができる。従って、ロッド10をスライドさせることにより、パーキングレンジ(Pレンジ)を選択することができる。また、パーキングレンジPの選択後、ロッド10をスライドさせている操作力を解除すると(押ボタン2から手を離すと)、ロッド10は、第2付勢手段の働きにより、再びホームポジション(H)に自動的に復帰する。
【0095】
また、図6〜図9に示すように、回転ノブ1により、ロッド10を、ホームポジション(H)から一方の走行レンジ切替可能位置(第2ニュートラルポジションN2)に回転させると、その回転した位置(N2)でロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d3の位置が合うことにより、ロッド10をスライドさせることができるようになる。従って、図10〜図12に示すように、押ボタン2を押し込んでロッド10をスライドさせることにより、Rレンジを選択することができる。
【0096】
この場合、図6に示すように、第2ニュートラルポジションN2の位置には、その範囲にロッド10の回転位置があるときにロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d1の位置が合う許容角度範囲αが設けられており、ロッド10を回転させた際に正確な第2ニュートラルポジションN2の位置を超えても、ロッド10をスライドさせることができるようになっている。
【0097】
また、図示しないが、回転ノブ1により、ロッド10を、ホームポジション(H)から他方の走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1)に回転させると、その回転した位置(N1)でロック板11の外周突起部11aと嵌合部材9のスライド溝9d2の位置が合うことにより、ロッド10をスライドさせることができるようになる。従って、押ボタン2を押し込んでロッド10をスライドさせることにより、Dレンジを選択することができる。この場合も前記と同様の許容角度範囲が設定されている。
【0098】
これらの走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択した場合にも、ロッド10をスライドさせる押ボタン2に対する操作力と、ロッド10を回転させる回転ノブ1に対する操作力を解除すると、ロッド10は、2つの付勢手段の働きにより、再びホームポジションHに復帰する。
【0099】
このように、ホームポジションHから走行レンジ(DレンジやRレンジ)を選択する際には、ロッド10を、ホームポジションHから一方あるいは他方へ回転させた上で、さらにスライドさせる必要があり、2つの異なる操作を連続して行う必要がある。つまり、異なる2つの動作(回転とスライド)を行って初めて、走行レンジ(DレンジまたはRレンジ)への切り替えができるようになっている。また、走行レンジを切り替える際には必ず、ニュートラルポジション(第1ニュートラルポジションN1または第2ニュートラルポジションN2)を経由するようになっている。なお、ロッド10を回転してニュートラルポジション(N1、またはN2)を選択後、押ボタン2を操作しないでロッド10をホームポジションHに戻した場合には、ニュートラルレンジ(Nレンジ)に切替えられる。従って、万一、誤って一方の操作手段が操作されてしまった場合でも、走行レンジに切換えられてしまうことがない。これにより、誤操作を起こしにくくすることができ、安全性を高めることができる。
【0100】
また、ロッド10をスライドさせて走行レンジを選択しているときには、ロッド規制手段によりロッド10を回転できない状態に保つことができるとともに、回転ノブ1によりロッド10を回転させる際に、ロッド10がホームポジションにあるとき、あるいは、走行レンジ切替可能位置(第1ニュートラルポジションN1あるいは第2ニュートラルポジションN2)にあるときでないと、ロッド10をスライドさせることができないので、間違ったシフト切替が行われる心配がない。
【0101】
また、このロッド手段は、内周面に回転方向の各ポジションの数に対応した数のスライド溝9dを円周方向に複数有する円筒状の嵌合部材9と、ロッド10と一体で回転またはスライドするロック板11に設けた複数の外周突起部とで構成しているので、シフトパターンに沿って移動するための案内構造を別に設ける必要がなく、このロッド規制手段を軸方向に対してコンパクトに配置できる。
【0102】
また、このシフト切替装置では、ロッド10に回転を与える第1操作手段を回転スイッチ形状の回転ノブ1とすることができるので、従来のシフトレバーのように車室内に大きく突出する部分を減らすことができ、突出部分を減らせることにより、事故時などの際の危険性を少なくして、安全性の向上を図ることができるし、車室内におけるレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0103】
また、このシフト切替装置は、ロッド10の回転とスライドを組み合わせてシフトポジションを選択するようにしているので、1つの平面上にシフトパターンを展開するのと違って、シフトパターンが複雑なものになっても、構造の単純化と省スペース化を図ることができる。しかも、構成部品を同軸上に配置することで組立できるので、組立の簡便化を図ることができる。従ってコストの低減が可能である。
【0104】
また、ロッドを回転させる第1操作手段として、円筒体1aを有する回転ノブ1を使用し、ロッド10をスライドさせる第2操作手段としての押ボタン2の少なくとも一部を前記円筒体1aの内部に収容するようにしたので、操作部を極力コンパクトな構造にすることができるとともに、操作性を向上しつつ、押ボタン2の誤操作を防止できる。
【0105】
また、ロッド10の回転範囲を規制する回転範囲規制手段を円筒部材3の端面に設けた突起部3hとストッパリング8に設けたストッパ突起8cで行なうため、軸方向にコンパクトな構造にすることができる。
【0106】
また、第1付勢手段により、回転ノブ1の回転動作に節度感を持たせることができるので、操作性が向上する。
【0107】
また、第1付勢手段を軸方向に配置した2つのリング5,6と、第1スプリング13とで構成しているので、軸方向にコンパクトな構造にすることができる。
【0108】
なお、上記実施形態では、押ボタン2の動作をロッド10を介して機械的にロック板11に伝える場合について述べたが、押ボタンを電気スイッチ(ON/OFF)に変更し、ロック板11の動作をソレノイドアクチュエータ等で行うようにすることも可能である。
【0109】
また、上記実施形態では、シフト切替装置を装備する場所については述べなかったが、本シフト切替装置は、図17に示すように、例えば、ステアリングホイール付近のコンビスイッチと同様の装備として車両に搭載することも可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 回転ノブ(第1操作手段)
1a 円筒体
2 押ボタン(第2操作手段)
3h 突起部(回転範囲規制手段)
4 ハウジング
10 ロッド
5 固定リング(回転方向の第1付勢手段)
5a カム斜面
5b 凹部
6 回転リング(回転方向の第1付勢手段)
6c ピン
7 カム機構
8c ストッパ突起(回転範囲規制手段)
9 嵌合部材(ロッド規制手段)
9d、9d1〜9d3 スライド溝(ロッド規制手段)
11 ロック板
11a 外周突起部(ロッド規制手段)
13 第1スプリング(回転方向の第1付勢手段)
15 第2スプリング(スライド方向の第2付勢手段)
20 検出器(シフトポジション検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒形状を有するハウジングと、
該ハウジング内に支持され、軸線まわりに回転可能とされると共に軸線方向にスライド可能とされた軸形状を有するロッドと、
該ロッドを回転させる第1操作手段と、
該ロッドをスライドさせる第2操作手段と、
該ハウジングに固定され、該ロッドの回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力するシフトポジション検出手段と、
該ロッドを回転方向の基準位置に付勢する第1付勢手段と、
該ロッドをスライド方向の基準位置に付勢する第2付勢手段と、
該ロッドが回転方向の基準位置と該基準位置から回転方向に離間した位置に設定された走行レンジ切替可能位置との間に位置した状態で、該ロッドのスライドを規制するとともに、
該ロッドが前記ロッドを前記スライド方向の基準位置からスライドした状態で、該ロッドの回転を禁止するロッド規制手段と、
を具備することを特徴とするシフト切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト切替装置であって、
前記第1操作手段が、前記ロッドと一体に回転する円筒部材の端部に結合された円筒体を有する回転ノブによって構成され、
前記第2操作手段が、該ロッドの端部に結合され且つ該円筒体の内部に少なくとも一部が収容された押ボタンによって構成されていることを特徴とするシフト切替装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシフト切替装置であって、
前記ロッドの回転動作とともに回転する前記円筒部材の端面に設けた突起部と、
前記ハウジングに回り止めされたストッパリングに突設されるストッパ突起とからなり、
該ロッドが回転した際に、該突起部と該ストッパ突起とが係合することで、該ロッドの回転範囲を規制する回転範囲規制手段を備えたことを特徴とするシフト切替装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、
前記第1付勢手段は、
前記ハウジング内に収容され、前記ロッドの外周に位置して該ロッドと一体に回転すると共に該ロッドに対して軸線方向スライド自在とされた回転リングと、
該回転リングと軸線方向に対向するように該ハウジングに固定された固定リングと、
該回転リングと該固定リングの軸線方向の対向面の一方に略V溝状に形成されたカム斜面と、
該対向面の他方に形成されて該カム斜面上を摺動するピンと、からなるカム機構と、
該回転リングと該固定リングとが近接する方向に付勢する第1スプリングと、
を備えたことを特徴とするシフト切替装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、
前記ロッド規制手段は、
前記ハウジングに設けられた円筒状の嵌合部材の内周面に、前記ロッドの軸線方向に沿って形成された複数のスライド溝と、
該ロッドと一体に回転およびスライド可能に設けられたロック板の外周面に形成された外周突起部とを備え、
該外周突起部は、
該ロッドが回転方向の基準位置、または走行レンジ切替位置に位置する状態で、該スライド溝と対向して該ロッドがスライド方向の基準位置からスライドするのを許容するとともに、該ロッドが基準位置からスライドした状態では、該スライド溝に係合してロッドの回転を禁止することを特徴とするシフト切替装置。
【請求項1】
略筒形状を有するハウジングと、
該ハウジング内に支持され、軸線まわりに回転可能とされると共に軸線方向にスライド可能とされた軸形状を有するロッドと、
該ロッドを回転させる第1操作手段と、
該ロッドをスライドさせる第2操作手段と、
該ハウジングに固定され、該ロッドの回転位置およびスライド位置に応じて設定されたポジション信号を出力するシフトポジション検出手段と、
該ロッドを回転方向の基準位置に付勢する第1付勢手段と、
該ロッドをスライド方向の基準位置に付勢する第2付勢手段と、
該ロッドが回転方向の基準位置と該基準位置から回転方向に離間した位置に設定された走行レンジ切替可能位置との間に位置した状態で、該ロッドのスライドを規制するとともに、
該ロッドが前記ロッドを前記スライド方向の基準位置からスライドした状態で、該ロッドの回転を禁止するロッド規制手段と、
を具備することを特徴とするシフト切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト切替装置であって、
前記第1操作手段が、前記ロッドと一体に回転する円筒部材の端部に結合された円筒体を有する回転ノブによって構成され、
前記第2操作手段が、該ロッドの端部に結合され且つ該円筒体の内部に少なくとも一部が収容された押ボタンによって構成されていることを特徴とするシフト切替装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシフト切替装置であって、
前記ロッドの回転動作とともに回転する前記円筒部材の端面に設けた突起部と、
前記ハウジングに回り止めされたストッパリングに突設されるストッパ突起とからなり、
該ロッドが回転した際に、該突起部と該ストッパ突起とが係合することで、該ロッドの回転範囲を規制する回転範囲規制手段を備えたことを特徴とするシフト切替装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、
前記第1付勢手段は、
前記ハウジング内に収容され、前記ロッドの外周に位置して該ロッドと一体に回転すると共に該ロッドに対して軸線方向スライド自在とされた回転リングと、
該回転リングと軸線方向に対向するように該ハウジングに固定された固定リングと、
該回転リングと該固定リングの軸線方向の対向面の一方に略V溝状に形成されたカム斜面と、
該対向面の他方に形成されて該カム斜面上を摺動するピンと、からなるカム機構と、
該回転リングと該固定リングとが近接する方向に付勢する第1スプリングと、
を備えたことを特徴とするシフト切替装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシフト切替装置であって、
前記ロッド規制手段は、
前記ハウジングに設けられた円筒状の嵌合部材の内周面に、前記ロッドの軸線方向に沿って形成された複数のスライド溝と、
該ロッドと一体に回転およびスライド可能に設けられたロック板の外周面に形成された外周突起部とを備え、
該外周突起部は、
該ロッドが回転方向の基準位置、または走行レンジ切替位置に位置する状態で、該スライド溝と対向して該ロッドがスライド方向の基準位置からスライドするのを許容するとともに、該ロッドが基準位置からスライドした状態では、該スライド溝に係合してロッドの回転を禁止することを特徴とするシフト切替装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−153315(P2012−153315A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16156(P2011−16156)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【Fターム(参考)】
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