説明

シミュレーションプログラムおよびシミュレーション装置

【課題】遊技球の到達位置を任意に設定可能なシミュレーションプログラムおよびシミュレーション装置を提供する。
【解決手段】操作入力装置20が指示する遊技盤オブジェクト上の特定位置を検出する位置検出部101、遊技盤オブジェクトの所定の射出位置から射出される遊技球オブジェクトを特定位置に到達させるための遊技球オブジェクトの初速を演算する初速演算部102、および演算された初速で射出された遊技球オブジェクトの移動位置をシミュレーションするシミュレーション実行部103を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の動作をゲーム機等の別装置でシミュレーションするためのシミュレーションプログラムに係り、特に、パチンコ機の遊技球の到達位置を制御するための発明に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲーム機といわれる分野のエンターテイメント装置は、任意のソフトウェアプログラムを提供して実行させることができるように構成されている。シミュレーションプログラムといわれるソフトウェアプログラムは、現実の遊技機(以下「実機」という。)の動作を忠実にシミュレーションするものである。エンターテイメント装置は、このようなシミュレーションプログラムを実行することにより、エンターテイメント装置をシミュレーション装置として機能させることが可能となっている。
【0003】
従来のシミュレーションプログラムとして、例えば、特開2006−181278号公報には、遊技盤情報を変更可能にし、遊技盤および遊技要素の材質に関するパラメータを設定し、パラメータおよび遊技盤情報に基づいて、遊技盤に向けて打ち出される遊技球の遊技盤上における軌道を計算し、計算された遊技球の軌道を遊技盤上に表示するように機能させるシミュレーションプログラムが開示されている(特許文献1、段落0007)。
このようなシミュレーションプログラムを用いることにより、実際のパチンコ遊技機に近い球軌道の計算が可能になっていた。
【特許文献1】特開2006−181278号公報(段落0008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遊技者の中には単にシミュレーション装置でパチンコゲームをプレイするだけでなく、賞球数を多く得るためにはどのように遊技球を打つのがよいかを研究する目的でシミュレーション装置を操作する者もいる。
【0005】
そのような目的を持つ遊技者にとって、上記公報記載のような忠実に実機を再現したというだけのシミュレーション装置では、実機でプレイする環境と同様の環境が提示されるに過ぎず、遊技球の打ち方については相変わらず実機と同様に試行錯誤をするしかなかった。特に、どの釘の位置に遊技球が到達するように打ったら入賞しやすいかといった微妙なシミュレーションは、従来のシミュレーション装置では難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、遊技球の到達位置を任意に設定可能なシミュレーションプログラムおよびシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のシミュレーションプログラムは、遊技機における遊技球の動作をシミュレーションするためのシミュレーションプログラムであって、コンピュータに、
1)操作入力装置が指示する遊技盤オブジェクト上の特定位置を検出する機能と、
2)該遊技盤オブジェクトの所定の射出位置から射出される遊技球オブジェクトを該特定位置に到達させるための該遊技球オブジェクトの初速を演算する機能と、
3)演算された該初速で射出された該遊技球オブジェクトの移動位置をシミュレーションする機能と、
を実行させるためのシミュレーションプログラムである。
【0008】
また同様に、本発明のシミュレーション装置は、遊技機における遊技球の動作をシミュレーションするためのシミュレーション装置であって、
1)操作入力装置が指示する遊技盤オブジェクト上の特定位置を検出する位置検出部と、
2)該遊技盤オブジェクトの所定の射出位置から射出される遊技球オブジェクトを該特定位置に到達させるための該遊技球オブジェクトの初速を演算する初速演算部と、
3)演算された該初速で射出された該遊技球オブジェクトの移動位置をシミュレーションするシミュレーション実行部と、を備えている。
【0009】
係る構成によれば、操作入力装置によって指示された遊技盤オブジェクト上の特定位置を検出することとし、その特定位置に遊技球オブジェクトが到達するための軌道から打ち出し時の遊技球オブジェクトの初速が逆に演算され、その演算された初速で遊技球オブジェクトが打ち出されるようシミュレーションが実行されるので、ハンドル操作に相当する操作に腐心することなく、到達させたい位置への遊技球オブジェクトの打ち出しを繰り返し実行できる。
【0010】
ここで、シミュレーションプログラムにおいて、射出された前記遊技球オブジェクトが衝突要素と衝突するか否かを判定する機能と、前記遊技球オブジェクトが該衝突要素に衝突すると判定された場合に、前記遊技球オブジェクトの移動方向と移動速度とを変更する機能と、を備える。
【0011】
また同様に、シミュレーション装置において、射出された前記遊技球オブジェクトが衝突要素と衝突するか否かを判定する衝突判定部と、前記遊技球オブジェクトが該衝突要素に衝突すると判定された場合に、前記遊技球オブジェクトの移動方向と移動速度とを変更する遊技球移動制御部と、を備える。
【0012】
係る構成によれば、遊技球オブジェクトが衝突要素に当たりながら射出されるまでに内壁との摩擦係数や反発係数の影響を受けて速度が落ちていく過程をシミュレーションできるので、実機と同じ条件を忠実に再現可能である。
【0013】
ここで、シミュレーションプログラムにおいて、上記遊技球オブジェクトの初速を演算する機能は、前記遊技盤オブジェクトに配置された射出レーンオブジェクトの出口から射出される時の前記遊技球オブジェクトの移動速度が、前記射出位置から射出された時の初速から所定量減衰した速度になるという前提で前記初速を演算するものである。
【0014】
また同様に、シミュレーション装置において、上記初速演算部は、前記遊技盤オブジェクトに配置された射出レーンオブジェクトの出口から射出される時の前記遊技球オブジェクトの移動速度が、前記射出位置から射出された時の初速から所定量減衰した速度になるという前提で前記初速を演算するものである。
【0015】
係る構成によれば、射出レーンオブジェクト内で内壁との衝突で受ける摩擦や反発の影響を初速が演算されるので、実機と近似した条件で必要な初速をシミュレーション可能である。
【0016】
ここで、上記シミュレーションプログラムまたは装置において、特定位置として指定可能な領域は、前記遊技盤オブジェクトに設けられた射出レーンオブジェクト出口から射出された前記遊技球オブジェクトが障害要素に衝突することなしに到達しうる範囲内で設定される。
【0017】
すなわち、遊技盤オブジェクトに多数設けられた障害要素に衝突することのない領域がすなわち実機においても射出レーン出口から射出された遊技球が最初に到達する範囲となるので、その範囲で特定位置を指定可能すればよいのである。
【0018】
さらに上記シミュレーションプログラムまたは装置において、上記特定位置として指定可能な領域は格子状に区分されており、前記特定位置は該格子の一つの升目を指定することで指示される。
【0019】
係る構成によれば、遊技球オブジェクトが到達可能な領域が格子によって細分化されそれぞれの升目を特定することで遊技球オブジェクトが到達する特定位置を指定することが可能となる。このため到達位置の設定を、例えば升目の識別番号等で行うことにより簡単になる。
【0020】
ここで、シミュレーションプログラムにおいて、上記遊技球オブジェクトの初速を、ハンドルオブジェクトの操作量に反映させる機能をさらに備えることとすることができる。
【0021】
また同様に、シミュレーション装置において、遊技球オブジェクトの初速を、ハンドルオブジェクトの操作量に反映させるハンドル制御部をさらに備えることとすることができる。
【0022】
係る構成によれば、所定の遊技球オブジェクトの初速が演算された後、その初速で遊技球オブジェクトを打ち出すためのハンドル操作量が視覚的に表示されるので、シミュレーション装置において得られたハンドル操作の目安を実機に反映しやすくなる。
【0023】
ここで「遊技機」は、特に限定は無いが、遊技者が操作するハンドルを備えた遊技機であることを前提とする。例えば、ぱちんこ機(第一種ぱちんこ機、第二種ぱちんこ機を含む)がそれに相当し、ハンドルに相当する操作部が存在する限り他の遊技機に適用することも可能である。
【0024】
なお、本発明のシミュレーションプログラムは、記憶媒体に格納されて流通されるものである。このような記憶媒体としては、コンピュータに読み取り可能な媒体であり、各種ROM、フラッシュメモリを備えたUSBメモリ、USBメモリ、SDメモリ、メモリスティック、メモリカードや、FD、CD−ROM、±R/W、RAM、DVD−ROM、±R/W、RAM、等の物理的な記憶媒体を含む。また広義の記録媒体として、プログラムを伝送可能なインターネット等の伝送媒体をも含むものとする。伝送媒体を通して伝送されたプログラム(ダウンロード)されたプログラムは、そのままメモリに記憶されて、コンピュータに実行されるものだからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、操作入力装置によって指示された遊技盤オブジェクト上の特定位置に到達するための遊技球オブジェクトの初速が演算され、その演算された初速で遊技球オブジェクトが打ち出されるようシミュレーションされるので、ハンドル操作に相当する操作に腐心することなく、到達させたい位置への遊技球オブジェクトの打ち出しプレイを繰り返し実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態として、民生用のエンターテイメント装置に記録媒体から、本発明に係るシミュレーションプログラムを読み込むことにより、遊技場等に設置される遊技機(パチンコ機)の動作をシミュレーションする場合を例示する。ただし、以下の実施形態は本発明の適応例に過ぎず、本発明は実施形態に限定されず種々に変更して適用することが可能である。
(エンターテイメント装置の構成)
図1は、民生用エンターテイメント装置1の外観概略構成を示す図である。
図1に示すように、このエンターテイメント装置1は、大きく分けて、装置本体10、操作入力装置20、表示装置30から構成される。
【0027】
装置本体10は、電源のオン/オフを操作するための電源スイッチ兼電源ランプ11、この第1の外部記録媒体44aを後述の第1の外部記録媒体ドライブ44がデータ読み取り可能な位置にセットするためのディスクスロット部12、プログラムの経過情報(セーブデータ)を記録するSDカードなどの第2の外部記録媒体45aを後述の第2の外部記録媒体ドライブ45がデータ読み取り/書き込み可能な位置にセットするためのカードスロット13、記録媒体のイジェクトボタン14をフロントパネルに備え、外部入力のためのUSB端子、センサーバー接続端子、AVマルチ出力端子、ACアダプタ接続端子等を図示しない背面に備えている。また図示しない装置本体10の上面の蓋内には、メモリカードスロット、操作入力装置接続ポートを備える。
【0028】
装置本体10は、第1の外部記録媒体44aに記憶されたシミュレーションプログラムをメインメモリ43に転送して実行可能に構成されている。なお、本明細書では、エンターテイメント装置1がシミュレーションプログラムを実行することにより機能する装置を「シミュレーション装置」と称する。
【0029】
操作入力装置20は、本発明に係るものであり、操作者が各種ゲーム操作を行うためのAボタン21a、Bボタン21b、方向キー22、+(プラス)ボタン23a、−(マイナス)ボタン23b、ホームボタン23c、「1」ボタン24a、「2」ボタン24b、電源スイッチ25を備え、前面端部にはポインタ26を備えている。+ボタン23aと「1」ボタン24aとの間にはスピーカを備える。
【0030】
Aボタン21aおよびBボタン21bは、ゲームやシミュレーション中に何らかの動作が割り付けられている操作ボタンであり、Aボタン21aは、フロントパネル側に設けられているのに対し、Bボタン21bは、背面側に設けられている。特にBボタン21bは本発明の回転量入力を有効にする際に操作されるものである。
【0031】
当該操作入力装置20は、特にポインタ26がセンサーバー15におけるマーカ15Lおよび15Rからの赤外線を検出して、モニタ装置30の表示画面31に対するポインタの座標・捻り・距離を検出可能になっている。また、操作入力装置20は、内部に図示しないモーションセンサを備え、X軸、Y軸、Z軸周りの加速度や重力を検出可能になっている。検出された動き情報は、操作者によるボタン類の操作入力情報とともに、装置本体10に送信されるようになっている。動き情報には、ポインタ26が検出するポインタ変位情報およびモーションセンサが検出するG情報が含まれている。操作入力装置20の検出機能の詳細については、後述する。
【0032】
操作入力装置20は、所定の短距離無線により、操作入力情報や動き情報を装置本体10に通信可能に構成されている。この無線通信の規格に特に限定はないが、短距離無線通信規格であるBluetooth規格が好適である。Bluetoothは、免許なしで自由に使うことのできる2.45GHz帯の電波を利用する短距離無線通信規格であり、1Mbpsの速度で通信可能であるため、操作入力装置20の動きをリアルタイムに伝達するために十分な速度を備えているからである。
【0033】
表示装置(モニタ装置、TV装置)30は、装置本体10で生成された画像を表示するためのブラウン管型や液晶型等の表示画面31、およびム装置本体10で生成された演出音声を外部に出力するための左右のスピーカ32a,32bを備えている。表示画面31の辺部には、センサーバー15が配置され、装置本体10に接続されている。センサーバー15は、赤外線を発するマーカ15Lおよび15Rを予め定められた距離離間させて保持する。マーカ15Lおよび15Rは赤外線発光手段であり、操作入力装置20のポインタ26に検出可能なような赤外線を発生するようになっている。
【0034】
図2は、図1に示したエンターテイメント装置1の内部のハードウェア構成図である。
図2に示すように、装置本体10は、CPU41、ROM42、メインメモリ(RAM)43を含む制御系CNTL、第1、第2の外部記録媒体ドライブ44、45、画像処理部46、音声処理部47、および操作入力処理部48から構成される。
【0035】
CPU41は、エンターテイメント装置の制御動作の中枢となり、システムバスSBを介してI/Oアドレスを出力して特定の構成要素を選択し、データの入出力を行って装置全体を統括的に制御する。特にCPU41は、第1の外部記録媒体ドライブ44を介して第1の外部記録媒体44aのシミュレーションプログラムをメインメモリ43のゲームプログラム記録領域43aに転送し、そのシミュレーションプログラムを実行することにより、エンターテイメント装置が本発明のシミュレーション装置として機能するように動作する。またCPU41は、フレーム期間毎に画像の描画に必要な画像データやコマンドを生成し、これを画像処理部46に送信する。
【0036】
ROM42は、エンターテイメント装置の起動時に使用する起動用プログラムや装置を動かすための基本的なシステムプログラム等を格納する不揮発性メモリである。電源投入直後は、CPU41はこのROM42の起動用プログラムを実行し、第1の外部記録媒体44aがディスクホルダー部12に装着されていることを確認したらその外部記録媒体44aのデータをメインメモリ43に転送するように動作する。
【0037】
RAM43は、メインメモリであり、第1の外部記録媒体44aから転送されたシミュレーションプログラムや各種データ(演出画像情報、演出音声情報、テキスト情報等)の一部若しくは全部をゲームプログラム記録領域43aに一時記録保持するとともに、第2の外部記録媒体45aから読み出したセーブデータ或いはゲーム進行中の作業データをゲーム進行データ記録領域43bに一時記録保持する。
【0038】
なお、図中鎖線で示される制御系CNTLには、図示省略のDMACが含まれており、このDMACが、システムバスSBに接続されている周辺機器を対象として割り込み制御やダイレクトメモリアクセス(DMA)転送制御を行うことにより、CPU41を介さずに各種周辺機器とRAM43間でシステムバスSBを介して直接データのやりとりを行うことができ、これにより、CPU41のオーバーヘッドを伴わずに、高速・大容量のデータ転送を実現している。
【0039】
第1の外部記録媒体ドライブ44は、DVD−ROMなどの第1の外部記録媒体44aに記録されたシミュレーションプログラムや各種データを読み取る。第2の外部記録媒体ドライブ45は、メモリーカードやSDカードなどの第2の外部記録媒体45aに対するセーブデータの読み取りおよび書き込みを行う。
【0040】
画像処理部46は、表示画面31に表示するシミュレーション画像を構成する立体画像を生成処理するものであって、本実施形態では、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)のシミュレーション画像を生成するために、画像デコーダ46a、フレームバッファ(VRAM)46cを有するGPU46b、ディスプレイコントローラ46d等の半導体デバイスを備えている。
【0041】
ここで、画像デコーダ46aは、第1の外部記録媒体44aから読み出され、RAM4
3に格納された画像データがJPEG或いはMPEG方式等で圧縮符号化された画像データである場合に、その圧縮画像データを復号してフレームバッファ46cに記憶する処理を行う。
【0042】
GPU46bは、CPU41からのコマンドに応じて、3DCG画像データを生成するための所定の画像生成アルゴリズムを実行し、ジオメトリ処理やレンダリング処理等を行って生成した1フレーム分のビデオ画像を例えばビットマップ形式でフレームバッファ46cに描画する。
【0043】
ディスプレイコントローラ46dは、各フレーム時間にフレームバッファ46cに描画された画像データを、それぞれ次のフレーム時間に読み出し、該読み出した画像データに対応した輝度信号(明るさの情報)と色信号(色の情報)を含むコンポジット映像信号(またはRGB信号)を生成して表示装置30に出力する。
【0044】
音声処理部47は、表示装置30の左右のスピーカ32a,32bで出力する効果音やBGM等のゲーム音声を生成処理する半導体デバイスであって、具体的には、図示省略のサウンドバッファおよびSPU等を備え、SPUがサウンドバッファから読み出した音データを合成して音声信号を生成して表示装置30に出力する。
【0045】
操作入力処理部48は、無線受信アンテナ48aを備え、操作入力装置20から送信される操作入力情報および動き情報を受信し、システムバスSBを介してCPU41に送信可能に構成されている。受信した情報は、バイト毎に所定のI/Oアドレスで特定されるポートにラッチされる。
【0046】
マーカ出力部49は、操作入力装置20のポインタ26による動き検出のための赤外線を出力するセンサーバー15のマーカ15L・15Rに対し、赤外線を出力するための電気信号を出力するようになっている。特定の赤外線であることを判別するために、電気信号に所定の変調を加えるようにしてもよい。
【0047】
(シミュレーション概要とシミュレーション装置に係る構成)
図3は、シミュレーション装置の表示画面31に表示されるトップ画面50の画像表示例である。
図3に示すトップ画面50は、本発明に係るシミュレーションプログラムを実行することにより最初に表示される初期画面である。初期画面は、当該シミュレーションプログラムが格納された第1の外部記録媒体44aがディスクホルダー部12に挿入され、第1の外部記録媒体44aのプログラムが装置本体10に取り込まれ、プログラムが実行された場合に最初に表示される。初期画面50では、シミュレーションゲームの開始を指示するための「ゲームスタート」アイコン51、および、シミュレーションゲームを終了させるための「終了」アイコン52が表示される。遊技者が「ゲームスタート」アイコン51を操作入力装置20の方向キー22やポインタ26で選択し、Aボタン21a等を操作することで、シミュレーション動作が開始される。
【0048】
次に実機のパチンコ機とシミュレーション画面との関係を説明する。
図4(a)に、実機であるパチンコ機のフロントパネルイメージを示す。
図4(a)に示すように、遊技機であるパチンコ機50は、盤面51、多数の釘52、液晶53、射出レーン54、始動チャッカー55、大入賞口56、アウト穴57、ハンドルH等などを備えている。上記のような構成において、遊技者がハンドルHを時計回りに回動させるとその回転角に応じた初速で遊技球Bが打ち出される。遊技球Bは、盤面51上を釘52に当たりながら方向を代えて重力に従い落下していく。始動チャッカー55や大入賞口56に遊技球Bが入ると入賞し、所定の賞球が供給される。これらいずれにも入らないと、遊技球Bはアウト穴57まで落下して排出される。
【0049】
本実施形態におけるシミュレーション装置は、このパチンコ機50のフロントパネルに設けられた各パーツを三次元オブジェクトで忠実に再現して構成し、遊技球Bの物理的な運動をもシミュレーションするように構成されている。実機のパチンコ機50のうち表示画面31に表示させる領域がシミュレーション画面60で示されている。
【0050】
図4(b)は、シミュレーション画面60の表示例である。シミュレーション画面60は、上記実機のパチンコ機における各パーツを三次元オブジェクトで構成し、仮想三次元空間に配置して所定の視点から見たときの透視投影画像として座標変換し、レンダリングすることにより生成される。以下、シミュレーション装置において三次元オブジェクトにより再現されたパーツを「オブジェクト」と明示し、実機のパーツと区別する。
【0051】
図4(b)に示すように、シミュレーション画面60には、実機のパチンコ機50の各パーツに対応させて、盤面オブジェクト61、釘オブジェクト62、液晶ディスプレイオブジェクト63、射出レーンオブジェクト64、始動チャッカーオブジェクト65、大入賞口オブジェクト66、アウト穴オブジェクト67が表示されている。シミュレーションプログラムの実行により、遊技球オブジェクトBPが、様々な経路をもって盤面オブジェクト61上を移動していく様子が表示され、更に、遊技球オブジェクトBPが通過した軌跡には、軌跡オブジェクトRPが表示される。なお、図示のシミュレーション画面60では、パチンコ機50のハンドルHの部分が画格外となるため、対応するハンドルオブジェクトHPがウインドウW内に表示されている。
【0052】
パチンコ機オブジェクト50は、三次元(立体)の動画像であり、フレーム期間毎に1枚のフレーム画像が生成され、フレーム毎に更新される。例えば遊技球オブジェクトBPは、重力に従った新たな位置がフレーム時間毎に更新され、その過程で釘オブジェクト52等に衝突することとなる場合には釘オブジェクト52への衝突する遊技球オブジェクトBPの位置に応じた跳ね返り方向が演算され、跳ね返った後の位置が演算される。そして動画像としては、盤面オブジェクト51上を実機の遊技球Bと同様の動きをしながら移動するようになっている。
【0053】
図5に、CPU41が第1の外部記録媒体44aに記憶されたシミュレーションプログラムをメインメモリ43に転送して実行することにより実現されるシミュレーション装置の機能ブロックを示す。
【0054】
図5に示すように、本実施形態のシミュレーション装置は、操作入力装置20、位置検出部101、初速演算部102、シミュレーション実行部103、画像処理部46、およびメモリ106を備えて構成されている。シミュレーション実行部103は、衝突判定部70と遊技球移動制御部71とを含んでいる。これらのうち、位置検出部101、初速演算部102、シミュレーション実行部103は、CPU41がメインメモリ43に転送されたシミュレーションプログラムを実行することで実現される。画像処理部46は、CPU41の制御に基づいて画像デコーダ46a、CPU41の制御に基づいてGPU46bおよびディスプレイコントローラ46dが動作することにより実現される。メモリ106は画像処理部46内部のフレームバッファ46cが相当している。
【0055】
(操作入力装置20)
操作入力装置20は、上記したように、通常のゲーム装置の操作入力装置と同様の各種操作ボタン21〜25の他、操作入力装置20の動きを検出可能な機能を有している。
【0056】
操作入力装置20は、動き検出のためのポインタ26やモーションセンサの検出値を定期的に出力し、操作量検出部101はその検出値に基づいて、以下のように操作入力装置20のポインタ26の示す座標やX/Y/Z軸周りの回転量を演算・検出するようになっている。
【0057】
便宜上、図1のXYZ軸方向表示のように、操作入力装置20における座標軸方向を設定する。ポインタ26は、図1において操作入力装置20の上部端面方向(Y軸方向)を指示する。また、操作入力装置20を水平に保持した場合、重力方向がZ軸方向となる。当該、操作入力装置20における一方の動き検出機能はポインタ26に関するものであり、もう一方はモーションセンサに関するものである。
【0058】
ポインタ26は、所定の視野角内で入射する赤外線を受光する検出窓DWを備えている。具体的には、ポインタ26は、表示装置30に配置されるセンサーバー15の両端に設けられたマーカ15Lおよび15Rからの赤外線を検出して、表示装置30の表示画面31に対するポインタの座標・捻り・距離を検出可能になっている。センサーバー15は、赤外線を発するマーカ15Lおよび15Rを予め定められた距離離間させて保持するものである。
【0059】
図7に、ポインタ26で検出されるマーカの様子を示す。
センサーバー15は、表示装置30の表示画面31の枠に配置されるようになっている。例えば、センサーバー15を表示装置30の上部に配置した場合、ポインタ26により認識される検出窓DWに対して認識されるマーカ15L・15Rの位置および表示装置30の位置は、図7に示すようなものとなる。マーカ15L・15Rの位置が検出されれば、その位置を基準として表示画面31の位置が相対的に認識されるのである。
【0060】
図8に、ポインタ26の検出窓DW内に認識されるマーカ15L・15Rの各位置を示す。図8は、ポインタ26が光を検出する検出窓DWにマーカ15L・15Rの光がどのように検出されるかに応じて、どのようにポインタの方向が判定されるかを説明するものである。
【0061】
操作入力装置20は、マーカ15L・15Rの光を検出し、ポインタ26の検出窓DW中心からのセンサーバー15の中間点(マーカ15L・15Rの中間地点)のズレ量をX軸・Z軸それぞれについて相対値として出力する。Y座標は、表示画面31と操作入力装置20が一定距離にある場合を基準とした相対値で示すようになっている。
【0062】
例えば、位置検出部101は、DW0のように検出窓DW中心にセンサーバー15中心が一致している場合をY軸方向に垂直なX座標・Z座標がゼロであるものとし、センサーバー15の中心が検出窓DWの中心からのずれ量に応じてセンサーバー15の座標・捻り・距離を測定・出力する。
【0063】
操作入力装置20を左右上下に動かすことによって、ポインタ26の指すXZ座標平面での位置が変更される。例えば、DW1のように、マーカ15L・15Rからの光が検出窓DWの下方に移動した場合には、ポインタ26はセンサーバー15の上方を相対的に指示しており、逆にDW2のように、マーカ15L・15Rからの光が検出窓DWの上方に移動した場合には、ポインタ26はセンサーバー15の下方を相対的に指示していることを意味する。これらはX座標が変化する場合である。また、DW3のように、マーカ15L・15Rからの光が検出窓DWの左方に移動した場合には、ポインタ26はセンサーバー15の右側を相対的に指示しており、逆にDW4のように、マーカ15L・15Rからの光が検出窓DWの右方に移動した場合には、ポインタ26はセンサーバー15の左側を相対的に指示していることを意味する。これらはZ座標が変化する場合である。
【0064】
また操作入力装置20と表示装置30との距離(Y座標)や操作入力装置20の回転も検出可能になっている。図9(a)は、操作入力措置20をセンサーバー15から遠ざけた場合の検出窓DW10に対するマーカの位置変化を示している。図9(b)は、逆に操作入力装置20をセンサーバー15に近づけた場合の検出窓DW11に対するマーカの位置変化を示している。マーカ15L・15Rの間隙は固定値なので、マーカ15Lと15Rとの距離に応じて、センサーバー15、すなわち表示画面31と操作入力装置20との距離(Y座標)を測定することが可能である。
【0065】
図9(c)は、ポインタ26のX座標・Z座標を変更しないまま、操作入力装置20を回転させた場合の検出窓DW12に対するマーカの位置変化を示している。マーカ15L・15Rの回転はそのままポインタ26のY軸周りの回転に対応しているので、操作量検出部101は、Y軸周りの回転角を演算することが可能である。
【0066】
以上、センサーバー15と表示装置30の表示画面31の相対位置がある程度正しく設定されていれば、マーカ15Lおよび15Rの検出位置によって、ポインタ26が指し示している表示画面31の位置をほぼ正しく演算可能である。センサーバー15に対する表示画面31の相対位置(すなわち、センサーバー15が表示画面31の上方に配置されているのか下方に配置されているのか等)の設定は、管理メニュー等で設定可能になっている。
【0067】
操作入力装置20のもう一つの動き検出機能は、モーションセンサに関するものである。操作入力装置20は、内部に図示しないモーションセンサを備え、X軸、Y軸、Z軸周りの加速度や重力を検出可能になっている。それぞれの軸に対応して設けられたモーションセンサは、その軸における重力加速度(G)の相対値を出力するようになっている。操作量検出部101は、これら3軸の重力加速度の相対値に基づいて操作入力装置20の姿勢や遊技者が操作入力装置20に加えた加速度を演算・検出することが可能になっている。操作入力装置20を遊技者が把持していると、手ぶれが生じるため、好適にはリングバッファリングをして加速度の平均を演算・検出する。
【0068】
例えば、操作入力装置20を水平に保持した場合には、重力のみが作用しているので、X軸モーションセンサ・Y軸モーションセンサで検出される重力加速度はゼロであるのに対し、Z軸モーションセンサで検出される重力加速度は1Gとなる。同様に操作入力装置20を上方に向けて保持した場合には、Y軸モーションセンサで検出される重力加速度が−1Gに、右に90度傾けて保持した場合には、X軸モーションセンサで検出される重力加速度が1Gになる。ポインタ26により座標が検出できない場合でも、これら3軸のモーションセンサの検出する重力加速度の変化に基づいて、操作量検出部101は、操作入力装置20の向きや回転を検出可能である。精度のよい動き検出のためには、比較的精度のよいポインタ26による座標等の検出とモーションセンサによる動き検出とを合わせて、操作入力装置20の動きを判定することが好ましい。
【0069】
なお、操作入力装置20自体は、演算能力が無く、短距離無線通信により各センサの検出する相対値を含む動き情報を定期的に出力する。ポインタ26が検出した指示位置に関する相対値を出力する場合には、それがポインタ26に関する値であることを示す情報とともに、X軸座標、Y軸座標、Z軸座標等の定められた順番で定期的に、または、変化を生じた場合にそれら相対値を出力する。また、操作入力装置20は、モーションセンサが検出した加速度に関する相対値を出力する場合には、それがどのモーションセンサの値であるかを示す情報とともに、その相対値を出力するか、またはX軸周り、Y軸周り、Z軸周りのそれぞれの相対値を定められた順序で出力する。
【0070】
(位置検出部101)
装置本体10の操作量検出部101は、操作入力装置20から送信された動き情報に含まれるポインタに関する相対値に基づいてポインタ26の指示するX座標・Y座標・Z座標を演算するようになっている。X座標、Y座標、Z座標は、表示画面31の解像度に合わせた座標値で演算するようになっている。また、動き情報に含まれるモーションセンサに関する相対値に基づいて、X座標、Y座標、Z座標周りの回転量または加速度を検出するようになっている。
【0071】
特に本発明では、位置検出部101は、操作入力装置20が指示する遊技盤オブジェクト上の特定位置を検出する機能ブロックである。
ここにいう「特定位置」とは、本発明の目的達成のため、遊技者が操作入力装置20を用いて遊技盤オブジェクト61上で指定する位置をいう。この特定位置は、座標値により定義される場合もあれば、識別番号等の相対値で定義される場合もありうる。
【0072】
操作入力装置20はポインタ26を表示画面31に向けてマーカ15L・15Rが検出窓DWに検出可能である限りその座標の相対値を出力し続ける。ポインタ26が指示している位置をシミュレーション画面60に示すために、後に説明する画像処理部46は、位置検出部101が検出した指示位置をカーソルで遊技機オブジェクトに重ねて表示することが好ましい。遊技者が特定位置指定のためにポインタの指示位置を認識可能とするためである。
【0073】
そして遊技者が特定位置を指定する場合には、所定の操作ボタンを操作することを条件とすることが適当である。そこで本実施形態では、ポインタ26で指定したい位置を指示しながら、操作入力装置20のBボタン21bが押下された時にその指示位置を特定位置として認識するようになっている。
【0074】
図10に、遊技盤オブジェクト61において、特定位置として指定可能な領域を例示する。図10に示すように、指定可能領域Aは遊技盤オブジェクト61に設けられた射出レーンオブジェクト64の出口64bから射出された遊技球オブジェクトBPが障害要素に衝突することなしに到達しうる範囲内で設定される。
【0075】
ここで「障害要素」とは、遊技球オブジェクトBPが進行することにより衝突することとなるオブジェクトをいい、例えば、射出レーンオブジェクト64の内壁、釘オブジェクト62、風車オブジェクト68aや68b、装飾部品オブジェクト69等、実機では物理的に遊技球が衝突することにより遊技球が跳ね返るようなオブジェクトである。
【0076】
遊技球オブジェクトBPは、出口64bから所定の速度で打ち出された後、シミュレーション実行部103がシミュレートする遊技球の弾道に従って移動する。実機の射出レーンの出口には、押さえ板金が設けられており、遊技球は押さえ板金により遊技盤の側壁に強制的に押しつけられながら射出される。よって、このシミュレーション装置においては、遊技球オブジェクトBPの射出位置と射出方向は常に一定と仮定してよい。
【0077】
遊技球オブジェクトBPには、遊技盤オブジェクト61との摩擦による減速の他、重力加速度が大きな要素として加わるように設定されるので、図10のP1〜P4に示すように、遊技球オブジェクトBPは放物線を描いて遊技盤オブジェクト61の盤面上を移動するようシミュレートされる。本発明の特定位置の指定可能領域Aは、出口64bから打ち出された遊技球オブジェクト61が、最初に障害要素に衝突するまでに移動しうる範囲で設定されるので、図10の斜線で示すような範囲となる。図10では、位置P1〜P4に届く4つの弾道が破線で示されている。位置P1からP4にかけて、出口64bから打ち出される時の速度がこの順で上がっていく設定になっている。
【0078】
特定位置を座標値で指定する場合には、操作入力装置20により指定可能領域Aの範囲から所望の位置を指示しながら、Bボタン21bを押下する。これにより、一つの特定位置が指定される。
【0079】
なお、ポインタ26が指示している位置が指定可能領域Aであるか否かは判り難いため、例えば、ポインタの指示位置が指定可能領域Aに入っている場合と入っていない場合とで指示位置を示すカーソル形状を異ならせることとすることは好ましい。または、指定可能領域Aについての色濃度を変えたり、網掛けを付したりして、遊技者に領域Aをその他の領域から区別して視認可能としてもよい。
【0080】
(初速演算部102)
初速演算部102は、遊技盤オブジェクト61の所定の初期射出位置から射出される遊技球オブジェクトBPを特定位置に到達させるための遊技球オブジェクトBPの初速を演算する機能ブロックである。
【0081】
ここにいう「初期射出位置」とは、オブジェクトとして表示されるか否かとは無関係に、遊技球オブジェクトBPの軌道をシミュレーションするために定めた最初の打ち出し位置のことである。
【0082】
初速演算部102は、厳密な演算をする場合には、まず射出レーンオブジェクト64の出口64bから射出レーンの延在方向に打ち出された遊技球オブジェクトBPが上記特定位置に到達するために必要な出口射出速度を物理演算する。次いで射出レーンオブジェクト64の出口に達するまでに射出レーンの内壁に遊技球オブジェクトBPが衝突する回数を仮定し、衝突の度に一定の摩擦係数および反発係数に従って速度が減衰するという前提で、射出位置において必要とされる遊技球オブジェクトBPの初速を推定演算する。ここで演算した遊技球オブジェクトBPの速度や軌道を、そのままシミュレーション実行部103において再利用することが無駄を省く観点から妥当である。
【0083】
また演算量を少なくするためには、射出レーンにおける減衰量の平均値に基づいて出口64bで必要な射出速度から初速を逆算してもよい。射出レーンオブジェクト内における遊技球オブジェクトBPの減衰量は毎回ほぼ同じと考えられるからである。
【0084】
図11〜13を参照しながら、特定位置に到達するために遊技球オブジェクトBPに設定される軌道および速度について説明する。
図11は、到達点である特定位置に到達するまでの遊技球オブジェクトBPの軌道を示している。時刻tにおいて射出レーン64の出口における射出位置p(t)から射出速度v(t)で定まった方向に遊技球オブジェクトBPが射出されたものとする。上述したように、遊技球オブジェクトBPの軌道演算に際し、出口64bにおける遊技球オブジェクトBPの射出位置p(t)と射出方向は不変であるという仮定を用いる。
【0085】
射出された遊技球オブジェクトBPに対しては、遊技盤オブジェクト61との摩擦(摩擦係数kb)と重力加速度gが常に作用するものとして設定される。このため、遊技球オブジェクトBPは、放物運動を行い軌道Rは放物線を描く。すなわち、射出位置p(t)の座標を(X(t),Y(t))とし打ち上げの仰角をθとすると、時刻t+mにおけるX座標およびY座標は、式(1)(2)で表される。
【0086】
X(t+m)=X(t)+v(t)cosθ・(t+m)…(1)
Y(t+m)=Y(t)+v(t)sinθ・(t+m)−g(t+m)2/2…(2)
【0087】
特定位置に時刻t+Tに到達するものとし、特定位置の座標をX(t+T)、Y(t+T)とすると、射出位置p(t)と特定位置p(t+T)とが定まっていることから、上記式(1)(2)の連立方程式を解くことにより、射出位置p(t)における射出速度v(t)が演算できる。射出速度が定まったら、射出時からのフレーム期間毎の経過時間を式(1)(2)に代入して、各フレーム期間における遊技球オブジェクトBPの移動位置を定めることができる。
【0088】
図12に、射出レーンオブジェクト内における遊技球オブジェクトBPの移動の様子を示す。図12(a)は射出レーン内で3回衝突する場合、図12(b)は1回衝突する場合を示している。
【0089】
初期射出位置p(0)から初速v(0)で遊技球オブジェクトBPが射出されるものとする。衝突するたびに、遊技球オブジェクトBPは摩擦係数k0で規定される摩擦を受け、反発係数j0で規定される反発を受けるものとする。ここでは簡単のため、摩擦係数は進行方向の速度成分にのみ作用し、反発係数は進行方向とは垂直な方向の速度成分のみに作用するものとする。
【0090】
遊技球オブジェクトBPの衝突直前の速度をv(i)、衝突直後の速度をv(i+1)で表すと、衝突直後の遊技球オブジェクトBPの進行方向に平行な方向の速度成分v(i+1)pは式(3)で、進行方向に垂直な方向の速度成分v(i+1)vは式(4)で表される。
【0091】
v(i+1)p=k0・v(i)p (0<k0≦1) …(3)
v(i+1)v=−j0・v(i)v (0<j0≦1) …(4)
【0092】
遊技球オブジェクトBPは重力加速度gの影響も受けるので、初期射出位置からの打ち出し角度が一定であったとしても、初速v(0)の大きさによって射出レーンオブジェクト64の内壁64aに衝突する回数が変わってくる。例えば、図12(a)のように三回衝突したとすれば、三回衝突後の射出位置p(t)における進行方向に平行な速度成分v(t)pは、k03・v(0)となる。一方、図12(b)のように一回のみ衝突したとすれば、衝突後の射出位置p(t)における進行方向に平行な速度成分は、k0・v(0)となる。
【0093】
上記のように、厳密に解釈すれば、射出レーンオブジェクト内部での衝突回数が初速によって変わってくる。しかしながら、遊技のためのシミュレーション装置においてそこまで厳密な演算が必要とされないならば、衝突回数を固定化し、射出レーン内では重力加速度の影響や遊技盤オブジェクトからの摩擦を受けないものとしてもよい。例えば、所定回衝突してから射出位置に達するものとすれば、その所定回数の衝突分の減衰量を定めて、射出位置p(t)における射出速度から初速を逆算すればよい。また、衝突による減衰がないものと仮定すれば、初速v(0)イコール射出位置p(t)における射出速度v(t)ということになり、初速演算を簡略化することができる。
【0094】
なお、遊技球オブジェクトBPの動きについても、演算を簡略化できる。すなわちシミュレーション装置では、実機で遊技球を打ったときのような動きをそれらしく見せればよいため、厳密な物理演算をする必要はなく、影響の少ないパラメータは無視してしまっても構わない。例えば、遊技盤オブジェクト61との摩擦は、実機の遊技盤51が通常傾いていることを前提とした要素であるが、影響が少ない要素であるため、シミュレーション上、無視しても構わない。また、実機における物理的条件(摩擦係数や反発係数等)も実機と同一の値に設定する必要はなく、演算簡略化のために変更してもよい。例えば、摩擦はないものと仮定したり(摩擦係数k0=1)、全反射するものと仮定したり(反発係数j0=1)してもよい。
【0095】
(シミュレーション実行部103)
上記シミュレーション実行部103は、遊技球オブジェクトBPの動き制御を中心に、実機であるパチンコ機の動作全般をシミュレーションする機能ブロックである。特に、遊技球オブジェクトBPが衝突要素から受ける摩擦や反発を物理的演算により推測し、実際の移動位置と速度に反映させ、実機の動作をシミュレーション可能になっている点に特徴がある。
【0096】
図6に示すように、シミュレーション実行部103は、衝突判定部70、遊技球移動制御部71、回収検知部72、変動検知部73、抽選実行部74、抽選テーブル記録部74T、ゲーム情報管理部75、液晶ディスプレイ画像制御部76、特別遊技処理部77、表示設定部78、軌跡処理部79、視点設定部80を備えて構成されている。このなかで、特に本発明に関連するのは、衝突判定部70と遊技球移動制御部71である。
【0097】
衝突判定部70は、射出された遊技球オブジェクトBPが衝突要素と衝突するか否かを判定する。遊技球移動制御部71は、遊技球オブジェクトが衝突要素に衝突すると判定された場合に、遊技球オブジェクトBPの移動方向と移動速度とを変更する。特に遊技球移動制御部71は、初速演算部102で演算された初速で射出レーンオブジェクト64に向けて打ち出されるという前提で、新たに打ち出される遊技球オブジェクトBPの位置座標演算を実行するようになっている。
【0098】
例えば、初期射出位置p(0)から射出された遊技球オブジェクトBPは、射出レーンオブジェクト64の内部では、内壁との衝突が衝突判定部70によって判定される度に、遊技球移動制御部71は、上記式(3)(4)で説明したような摩擦係数や反発係数の影響を受けた移動速度の減衰を考慮し、遊技球オブジェクトBPの移動位置を演算する。また、射出レーン内での摩擦が無いという前提なら、遊技球オブジェクトBPの移動方向のみを変えるシミュレーションをする。
【0099】
図13に、射出レーンオブジェクト64の出口64bから射出された遊技球オブジェクトBPが、仮定的に設定された重力加速度gに従い「落下」し、釘オブジェクト62に衝突する場合を模式的に示す。
【0100】
ここでも射出レーンオブジェクト64内部と同様の衝突判定や遊技球移動制御が行われる。図13に示すように、釘オブジェクト62に対し、衝突直前の速度v1で衝突し、衝突直後に速度v2になったとする。釘オブジェクト62が全反射するものと仮定すれば、衝突前のおける衝突点の接線に対する入射角θと射出角θとは等しいことになる。速度v1は、衝突の接線方向に平行な速度成分v1pと垂直な速度成分v1vの合成となる。速度v2も、衝突の接線方向に平行な速度成分v2pと垂直な速度成分v2vの合成となる。衝突に際して、遊技球オブジェクトBPが釘オブジェクト62から受ける衝突の接線方向に平行な方向の摩擦係数をk0、垂直な方向の反発係数をj0で表すと、式(5)(6)のような関係になる。
【0101】
v2p=k0・v1p …(5)
【0102】
v2v=―j0・v1v …(6)
実機の摩擦や反発を厳密にシミュレートするなら、0<k0、j0<1の範囲で摩擦係数や反発係数を設定することになる。ゲームプレイを目的としたシミュレーション装置であってそこまでの厳密性が要求されないなら、全く摩擦を受けないものと仮定して、k0=1に設定し、全反射するものと仮定して、j0=1に設定して、演算を簡素化してもよい。
【0103】
上記のようにして、衝突判定部70は、新たな遊技球オブジェクトBPの移動位置において、遊技球オブジェクトBPが釘オブジェクト62や風車オブジェクト68a・68b、飾り部品オブジェクト69等の障害要素に衝突するか否かを判定し、遊技球移動制御部71は、遊技球オブジェクトBPが障害要素に衝突すると判定されるたびに、上記摩擦や反発を勘案して、新たな遊技球オブジェクトBPの速度と位置を演算するのである。
【0104】
回収検知部72は、実機のパチンコ機における始動チャッカー55、大入賞口56、アウト穴57等の回収機構に遊技球Bが到達した場合の動きをシミュレーションするものであり、始動チャッカーオブジェクト65、大入賞口オブジェクト66、アウト穴オブジェクト67等の回収オブジェクトが配置されている位置に遊技球オブジェクトBPが到達した場合にこれを検知し、当該遊技球オブジェクトBPについての回収信号を画像処理部46に送信するものである。また、遊技球オブジェクトBPが入賞した(入った)回収オブジェクトが始動チャッカーオブジェクト65、大入賞口オブジェクト66などの特定のオブジェクトである場合には、回収検知部72は所定の入賞信号をゲーム情報管理部75に送信する。
【0105】
変動検知部73は、シミュレーションゲームの進行中に所定の変動開始条件が成立したか否かを検知するものである。変動開始条件をどのような内容とするかは任意であるが、例えば、遊技球オブジェクトBPが始動チャッカーオブジェクト65の位置に到達するごとに変動検知部73が変動開始条件の成立を検知するようにすることができる。変動検知部73が変動開始条件の成立を検知した場合には、変動条件成立信号が抽選実行部74に送信される。
【0106】
抽選実行部74は、変動検知部73から変動条件成立信号を受信したタイミングにおいて各乱数生成器(大当たりの判定に使用する大当たり判定用乱数やリーチ演出の決定に使用するリーチ演出決定用乱数等の複数種類の乱数を生成するための複数の乱数生成器)から大当たり判定用乱数やリーチ演出決定用乱数を取得し、これを抽選テーブル記録部74Tの大当り判定用テーブルやリーチ演出決定用テーブルに照らし合わせることにより、当たり判定(大当たりの成立、不成立の判定)やリーチ演出の実行の有無、リーチ演出が実行される場合のリーチ演出の種類などの決定を行う。この抽選実行部74の動作は、実機のパチンコ機における抽選機能と基本的に同じものである。
【0107】
なお、抽選実行部74により判定又は決定された情報は、液晶ディスプレイ画像制御部76及び特別遊技処理部77に送信される。
【0108】
ゲーム情報管理部75は、射出レーンオブジェクト64から打ち出された遊技球オブジェクトBPの個数や回収検知部72からの入賞信号に基づいて、賞球数(出玉数)や投資金額、ゲームの得点などといったゲーム情報の更新管理を実行する。
【0109】
液晶ディスプレイ画像制御部76は、抽選実行部74による抽選の結果を告知するための動画や演出映像など、現実のパチンコ機における液晶モニタに表示される映像を再現する映像データを生成する。
【0110】
特別遊技処理部77は、抽選実行部74から大当たり成立の情報を受信した場合に動作し、実機において大当たりが成立した場合に発現する遊技者に有利な遊技状態と同様の状態を再現したボーナスゲームを実行する。
【0111】
表示設定部78は、操作者による操作入力装置20への操作に従って、シミュレーションゲーム実行中における各種表示条件の設定を受け付けるものである。
【0112】
軌跡処理部79は、射出レーンオブジェクト64を含む盤面オブジェクト61上を、遊技球オブジェクトBPが通過したときの軌跡上に軌跡オブジェクトRPを表示するためのデータを生成するものであり、軌跡設定管理部79a、基本オブジェクト記録部79b、玉位置記録部79c及び軌跡オブジェクト生成部79dを有している。
【0113】
軌跡設定管理部79aは、表示設定部78の設定に基づいて軌跡表示の有無や軌跡の色を設定管理する。基本オブジェクト記録部79bは、軌跡オブジェクトRPを構成する基本オブジェクトEの形状データを記録する。玉位置記録部79cは、遊技球移動制御部71により導出された各遊技球オブジェクトBPの位置座標を所定のフレーム時間に渡って記録するものである。軌跡オブジェクト生成部79dは、軌跡設定管理部79a、基本オブジェクト記録部79b及び玉位置記録部79cの各データに基づいて軌跡オブジェクトRPを生成する。
【0114】
視点設定部80は、操作者による操作入力装置20への操作に従って、シミュレーションゲーム実行中における仮想視点の位置移動の受け付けを行うものであり、いずれかの操作ボタンの操作に応答して仮想視点の仮想空間における位置座標を変化させる。なお、視点設定部80は、仮想視点の向き、画角、ズームなど、仮想視点からの画像生成のための他のパラメータの設定をも受け付けるものとすることができる。
【0115】
画像処理部46は、仮想空間に図4(b)に示すパチンコ機のオブジェクト60を構築するとともに、玉位置導出部71及び軌跡処理部79から送信されるデータに従って、フレーム時間毎に遊技球オブジェクトBP及び軌跡オブジェクトRPを配置又は移動する処理を実行する。
【0116】
画像処理部46は、視点設定部80から送信される信号で指定される位置に配置した仮想視点からの画像をレンダリングすることで図4(b)に示される態様のシミュレーション画面60を生成する。
【0117】
ここで、画像処理部46は、初速演算部102により設定された初速を実機のハンドルHの回転量に反映させたハンドルオブジェクトHPを生成し、シミュレーション画面60内のウィンドウW内に表示する。
【0118】
図14は、実機のパチンコ機におけるハンドルHの正面図である。
図14(a)に示すように、ハンドルHは、固定部90と回動部91とを備えており、遊技者は回動部91に指を掛けてハンドルを操作するように構成されている。特に回動部91は、ハンドル操作を有効にするためのトリガ機構を有しており、図の白抜き実線矢印の方向(時計回り)にある程度回すことによってロックが外れるようになっている。その後は、回動部91の回転量に対応して遊技球を打ち出す強さが変わるように、すなわち遊技球の初速が強くなるように構成されている。回動部91は、図の白抜き破線矢印の方向(反時計回り)に付勢されており、遊技者が手を放すと反時計回りに無操作位置にまで戻るように構成されている。
【0119】
また実機では、回動部91の時計周り方向への操作量に対応した大きさの初速が遊技球Bに与えられる。図14(b)には、回動部91を位置Pa1からPa2へと一定角度θaだけ回転させた様子が示されており、この操作量に対応して、例えば初速v(0)が与えられる。当該シミュレーション装置では、先に遊技球オブジェクトBPの初速が演算されるので、演算された初速に対応したハンドルオブジェクトHPの操作量(回転量)を逆に推測して画像化する。つまり画像処理部46は、初速演算部102が演算する最大の初速と実機のハンドルHの最大操作量とが対応するように回動部91の回転角を按分し、初速に対応した回転量だけ回動部91が回転したハンドルオブジェクトHPを生成し表示させるのである。
【0120】
(動作の説明)
次に、図15および16のフローチャートに基づいて、本実施形態のシミュレーション装置によるシミュレーション処理を説明する。
【0121】
図15は、シミュレーション装置において操作入力装置20が操作された場合のスイッチ取込ルーチンを示している。
操作入力装置20は、定期的に操作ボタンの操作状態をスキャンしており、いずれかが押下されると、その操作された操作ボタンを所定のスイッチコードとして取り込み、短距離無線で装置本体10の操作入力処理部48に送信する。また、操作入力装置20のポインタ26または何れかのモーションセンサにおける検出値に変化を生ずると、それぞれのセンサに対応する相対値を、操作ボタンと同様に操作入力処理部46に送信する。
【0122】
操作入力処理部46は、操作入力装置20から何からの有効な情報が送信されて来ると、それを所定の入力ポートにラッチして、CPU41に対して割り込み要求を掛ける。割り込み要求が出力されると、図15の送信情報取り込みルーチンが呼ばれることになる。
【0123】
図15のステップS10において、CPU41は、操作入力処理部48の入力ポートにラッチしている受信情報を内部バッファに取り込む。次いでステップS11に移行し、CPU41はその受信情報が動き情報であるか否かを判定する。操作入力装置20と装置本体10との通信コマンドが複数バイト形式になっている場合には、冒頭のバイトに、データの種類が操作ボタン情報であるか動き情報であるか、また動き情報がポインタの座標に係る相対値情報かモーションセンサの重力加速度に係る相対値情報かを示す判別バイトを含めることができる。
【0124】
ステップS11の判定の結果、動き情報であると判定された場合(YES)、ステップS12においてCPU41は、受信情報を動き情報のためのバッファに格納する。またステップS11の判定の結果、動き情報でないと判定された場合(NO)、操作ボタンに関する情報であると判定し、ステップS13においてCPU41は受信情報を操作入力バッファに格納する。以上の処理で、元の処理に復帰する。
【0125】
なお、操作入力バッファも動きバッファもリングバッファとして構成されており、CPU41は入力された順番に受信情報を書き込み、書き込まれた順番で受信情報を読み出していくことが可能になっている。
【0126】
図16は、図5に示す機能ブロックで実行される本実施形態のメイン制御ルーチンである。
まず、ステップS100において、有効判定部103は、操作入力バッファを読み取りに行き、ステップS101において、スイッチコードが入力されているか否かを判定する。スイッチコードが入力されていない場合(NO)、有効判定部103は引き続き操作入力を監視する(S100)。
【0127】
ステップS101においてスイッチコードが入力されていた場合(YES)、有効判定部103は、ステップS103に移行し、さらに入力されたスイッチコードがBボタン21bを示しているか否かを判定する。本実施形態では、遊技者がポインタ26で表示画面31を指示し、指示した位置を入力させるために意識的にBボタン21bを操作した場合にのみ、ポインタ座標を有効とすることにしている。上記処理は、動きバッファに入力されているポインタ位置情報が有効か無効かを判断するために実施する。
【0128】
入力されたスイッチコードがBボタン21bであることを示している場合には(YES)、ポインタ位置を反映させるべきと判断できるので、ステップS104に移行し、位置検出部101は、動きバッファに格納されている相対値情報を読み取る。
【0129】
次いでステップS105に移行し、位置検出部101は、動きバッファに記憶されているポインタの相対値情報に基づいて、ポインタの指示する表示画面31に対応した二次元表示空間における座標を検出する。上述したように、操作入力装置20から送信される相対値は、X軸・Z軸については、ポインタ26の示すY軸方向(検出窓DW中心点)と検出窓DWに検出されるセンサーバー15の中間点からのズレ量である。よって、ポインタの示す表示画面31の位置を、当該相対値から二次元表示空間の座標値に変換する。例えば、表示画面31の左上を基準点(0,0)とし、表示画面31の任意位置のx座標およびy座標(x,y)を画面右方向および画面下方向のピクセル数で示すのであれば、位置検出部101は相対値からこのx−y座標値をポインタ位置として算出する。
【0130】
次いでステップS106に移行し、位置検出部101は、特定位置設定情報記憶部100に記憶されている特定位置設定情報に基づき、ポインタ位置として示されている位置座標が、本発明の特定位置として指定可能な領域内のものか否かを判定する。すなわち図10に示すような指定可能領域Aの中でポインタ位置が指示されたものかを判定する。
【0131】
その結果、指定可能領域内で位置指定されたと判定されれば(YES)、有効な入力であるものと判断し、ステップS107において、初速演算部102は上述したような方法により遊技球オブジェクトBPの初速を演算する。すなわち位置指定された特定位置に遊技球オブジェクトBPを到達させるような打ち出し位置p(t)における射出速度v(t)を演算し、さらに初期射出位置p(0)における初速v(0)を演算する。次いでステップS108に移行し、シミュレーション実行部103の遊技球移動制御部71は演算された初速で打ち出された遊技球オブジェクトが、演算された軌道を移動するように移動位置をシミュレーション演算する。衝突判定部70が移動位置において遊技球オブジェクトが障害要素に衝突すると判定した場合には、設定した摩擦係数・反発係数で摩擦・反発が生ずるものとした弾道変更のシミュレーションを実行する。
【0132】
なお、ステップS106において、指定可能領域で位置指定されていないと判定されれば(NO)、無効なポインタ指示であることを知らせるべく、位置検出部101は、ステップS109において、所定のエラー告知(画像または音響)を実行する。
【0133】
また、ステップS103においてスイッチコードがBボタン以外の入力であった場合には(NO)、シミュレーション装置はステップS110において他の操作処理を実行する。
【0134】
シミュレーション実行後、画像処理部46は、決定された移動位置に遊技球オブジェクトBPを配置したシミュレーション画像60を生成する。また演算された初速に対応する操作量となっているハンドルオブジェクトHPをウィンドウWに表示する。
【0135】
(本実施形態1の利点)
本実施形態によれば、次のような利点がある。
(1)本実施形態によれば、位置検出部101が操作入力装置20のポインタ26によって指示された遊技盤オブジェクト61上の特定位置を検出し、初速演算部102がその特定位置に遊技球オブジェクトが到達するための軌道から打ち出し時の遊技球オブジェクトBPの初速を演算し、シミュレーション実行部103がその初速で遊技球オブジェクトBPが打ち出された場合のシミュレーションを実行するので、遊技球オブジェクトの打ち出しの強さを調整することに腐心することなく、到達させたい位置への遊技球オブジェクトの打ち出しを簡単に指定することができる。
【0136】
(2)本実施形態によれば、シミュレーション実行部103の衝突判定部70や遊技球移動制御部71が、遊技球オブジェクトBPが衝突要素に当たりながら摩擦係数や反発係数の影響を受けて速度が落ちていく過程をシミュレーションできるので、実機と同じ条件を忠実に再現可能である。
【0137】
(3)本実施形態によれば、射出レーンオブジェクト64で内壁等との衝突で受ける摩擦や反発の影響を初速が演算されるので、実機と近似した条件で必要な初速をシミュレーション可能である。
【0138】
(4)本実施形態によれば、指定可能範囲を予め設定しその範囲外の指定をエラー告知するので、最初に遊技球オブジェクトが到達する範囲を容易に認識可能である。
【0139】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、ポインタによる位置指定方法の変形例に関する。
図17に、本実施形態2において、特定位置として指定可能な領域の割り付けを例示する。図17に示すように、本実施形態の指定可能領域Bは、射出レーンオブジェクト64の出口64bから射出された遊技球オブジェクトBPが障害要素に衝突することなしに到達しうる範囲として上記実施形態1と同様の範囲に設定されるが、指定可能領域Bが格子状に区分されている点で、実施形態1と異なる。特定位置は格子のいずれか一つの升目を指定することで指示される。
【0140】
特定位置指定のためには複数の方法が考えられる。
第1の方法は、位置検出部101がポインタ26による指示位置を検出し、初速演算部102がその指示位置がいずれの升目に属しているかを検出し、検出された升目の中心(幾何学中心)に遊技球オブジェクトBPを到達させるための弾道および初速を演算するのである。この場合、画像処理部46は、ポインタ26で指定されている升目の色を変更することで遊技者に指示している位置を認識しやすく提示することが好ましい。そしてBボタン21b等が操作された時の升目を特定位置として認識し、さらに色を変更する等の処理をすることが好ましい。
【0141】
第2の方法は、図17に示すように升目に対して予め割り付けられた升目の識別番号を遊技者に認識可能に表示しておき、遊技者が操作入力装置20を操作して直接的に識別番号を指定可能とする方法である。識別番号により一つの升目が指定されれば、上記と同じようにその升目の中心に遊技球オブジェクトBPを到達させるための弾道および初速を演算するのである。操作入力装置20が直接的に数字等の文字情報を入力できない場合には、表示画面31に入力用のキーボードやテンキーを表示して文字情報の入力をポインタでさせることが適当である。
【0142】
なお、升目の色を変更しない場合には、ポインタ26が指示している位置が指定可能領域Bであるか否かは判り難いため、実施形態1と同様に、ポインタの指示位置が指定可能領域Bに入っている場合と入っていない場合とで指示位置を示すカーソル形状を異ならせたり、指定可能領域Bについての色濃度を変えたり、網掛けを付したりすることが好ましい。
【0143】
なお、本実施形態2では、升目の数が限定されそれらの位置が確定しているので、予め厳密な軌道と初速とを演算して記憶させておくことができる。升目の識別番号等に対応させて軌道情報・初速情報等をテーブル化して記憶することとなる。
【0144】
本実施形態2によれば、遊技球オブジェクトBPが到達可能な領域が格子によって細分化されそれぞれの升目を特定することで遊技球オブジェクトが到達する特定位置を指定することが可能となるので、特定位置の指定がより簡単になる。
【0145】
また、本実施形態2において、予め升目に対応させて軌道情報・初速情報を記憶させておく場合には、特定位置指定後の軌道や初速演算を省略することができ、しかも軌道が予め厳密に演算されているので、より忠実な実機のシミュレーションが可能である。
【0146】
(変形例)
本発明は、上記に限定されることなく種々に変形して実施することが可能である。
また、上記実施形態では、シミュレーション画面60を立体画像で構成する場合を例示したが、シミュレーション画面を二次元的な画像で構成しても無論よい。また実機を撮影したビデオ画像をシミュレーション画面に適用しても良い。
【0147】
また、上記実施形態では、シミュレーション対象としてパチンコ機を例示したが、これに限定されず、スロットマシンやその他、位置を指定してその位置に何らかの物を飛ばすことを目的とするようなシミュレーション装置・ゲーム装置に本発明を適用可能である。例えば、ゴルフゲームにおいて、カップ位置を特定位置に指定し、その特定位置に向けてのショットをシミュレーションすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の実施形態に係るエンターテイメント装置(シミュレーション装置)の構成図
【図2】本発明の実施形態に係るシミュレーション装置の電気的ブロック図
【図3】シミュレーション装置のトップ画面表示例
【図4】(a)は実機のパチンコ機のフロントパネル構成図、(b)は上記実機のフロントパネルのシミュレーション画面
【図5】本発明の実施形態に係る機能ブロック図
【図6】シミュレーション実行部の詳細な機能ブロック図
【図7】ポインタの操作窓DWとマーカ15L・15Rとの関係図
【図8】ポインタの操作窓DWに対するマーカ位置の各種態様の説明図
【図9】(a)は操作入力装置が遠ざかる場合、(b)は操作入力装置が近づく場合、(c)は操作入力装置を捻る場合
【図10】実施形態1における特定位置指定領域Aの範囲を示す図
【図11】射出レーンの出口の射出位置からの遊技球オブジェクトBPの軌道を説明する図
【図12】遊技球オブジェクトの衝突と反発の模式図であり、(a)は射出レーン内で3回衝突する場合、(b)は1回衝突する場合
【図13】障害要素である釘オブジェクト62における遊技球オブジェクトBPの摩擦と反発を説明する図
【図14】実機におけるハンドルの説明図であり、(a)は基準状態、(b)は操作状態であり、シミュレーション装置におけるハンドルオブジェクトHPの表示に対応した図
【図15】送信情報取り込み処理を示すフローチャート
【図16】シミュレーションに係るメイン制御処理を示すフローチャート
【図17】格子状の特定位置指定機能の説明図
【符号の説明】
【0149】
SM スロットマシン
1 エンターテイメント装置(シミュレーション装置)
10 装置本体
20 操作入力装置
30 表示装置
41 CPU
42 ROM
43 RAM
43a ゲームプログラム記録領域
43b ゲーム進行データ記録領域
44 第1の外部記録媒体ドライブ
44a 第1の外部記録媒体(DVD−ROM等)
45 第2の外部記録媒体ドライブ
45a 第2の外部記録媒体
46 画像処理部
46a 画像デコーダ
46b GPU
46c フレームバッファ
46d ディスプレイコントローラ
47 音声処理部
48 操作入力処理部
60 シミュレーション画面
70 衝突判定部
71 遊技球移動制御部
100 特定位置設定情報
101 位置検出部
102 初速演算部
103 シミュレーション実行部
106 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機における遊技球の動作をシミュレーションするためのシミュレーションプログラムであって、
コンピュータに、
操作入力装置が指示する遊技盤オブジェクト上の特定位置を検出する機能と、
該遊技盤オブジェクトの所定の射出位置から射出される遊技球オブジェクトを該特定位置に到達させるための該遊技球オブジェクトの初速を演算する機能と、
演算された該初速で射出された該遊技球オブジェクトの移動位置をシミュレーションする機能と、
を実行させるためのシミュレーションプログラム。
【請求項2】
前記シミュレーションする機能は、
射出された前記遊技球オブジェクトが衝突要素と衝突するか否かを判定する機能と、
前記遊技球オブジェクトが該衝突要素に衝突すると判定された場合に、前記遊技球オブジェクトの移動方向と移動速度とを変更する機能と、を備える、
請求項1に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項3】
前記遊技球オブジェクトの初速を演算する機能は、
前記遊技盤オブジェクトに配置された射出レーンオブジェクトの出口から射出される時の前記遊技球オブジェクトの移動速度が、前記射出位置から射出された時の初速から所定量減衰した速度になるという前提で前記初速を演算するものである、
請求項1に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項4】
前記特定位置として指定可能な領域は、前記遊技盤オブジェクトに設けられた射出レーンオブジェクト出口から射出された前記遊技球オブジェクトが障害要素に衝突することなしに到達しうる範囲内で設定される、
請求項1に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項5】
前記特定位置として指定可能な領域は格子状に区分されており、
前記特定位置は該格子の一つの升目を指定することで指示される、
請求項1に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項6】
前記遊技球オブジェクトの初速を、ハンドルオブジェクトの操作量に反映させる機能をさらに備える、
請求項1に記載のシミュレーションプログラム。
【請求項7】
遊技機における遊技球の動作をシミュレーションするためのシミュレーション装置であって、
操作入力装置が指示する遊技盤オブジェクト上の特定位置を検出する位置検出部と、
該遊技盤オブジェクトの所定の射出位置から射出される遊技球オブジェクトを該特定位置に到達させるための該遊技球オブジェクトの初速を演算する初速演算部と、
演算された該初速で射出された該遊技球オブジェクトの移動位置をシミュレーションするシミュレーション実行部と、を備えた
シミュレーション装置。
【請求項8】
前記シミュレーション実行部は、
射出された前記遊技球オブジェクトが衝突要素と衝突するか否かを判定する衝突判定部と、
前記遊技球オブジェクトが該衝突要素に衝突すると判定された場合に、前記遊技球オブジェクトの移動方向と移動速度とを変更する遊技球移動制御部と、を備える、
請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記初速演算部は、
前記遊技盤オブジェクトに配置された射出レーンオブジェクトの出口から射出される時の前記遊技球オブジェクトの移動速度が、前記射出位置から射出された時の初速から所定量減衰した速度になるという前提で前記初速を演算するものである、
請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
前記特定位置として指定可能な領域は、前記遊技盤オブジェクトに設けられた射出レーンオブジェクト出口から射出された前記遊技球オブジェクトが障害要素に衝突することなしに到達しうる範囲内で設定される、
請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
前記特定位置として指定可能な領域は格子状に区分されており、
前記特定位置は該格子の一つの升目を指定することで指示される、
請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項12】
前記遊技球オブジェクトの初速を、ハンドルオブジェクトの操作量に反映させるハンドル制御部をさらに備える、
請求項7に記載のシミュレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−237795(P2008−237795A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86281(P2007−86281)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(390031783)サミー株式会社 (5,279)
【Fターム(参考)】