シミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラム
【課題】各サブシステムの入出力特性を個別要素法に基づく粒子挙動解析により算出して、実験誤差や測定誤差の影響を受けずにモデル式にフィッティングする。
【解決手段】個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラ間の空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出する。また、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出する。
【解決手段】個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラ間の空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出する。また、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの現像、トナー像の転写などの各プロセスを含む電子写真プロセスにより形成される画像の品質を解析するシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合することによって正確な画像予測を行なうシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、現像や転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象を表現するモデル式に含まれる未知の係数をサブシステムの入出力特性に基づいて補間してシミュレーション計算を行なうシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、サブシステムの入出力特性を測定する際の誤差の要因を排除して、より精度の高いモデル式を用いてシミュレーション計算を行なうシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
電子写真プロセスを用いた複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置は、高速、高画質といった特徴を持ち、広範に普及している。また、オフィス業務の効率化やニーズの多様化により、最近でもなお電子写真プロセス技術の性能向上への要求は高い。
【0004】
また、情報技術の発展に伴い、電子写真プロセスの設計や開発においても、数値解析技術が盛んに採り入れられている。すなわち、電子写真プロセスをシミュレーション計算することで、現実に試作機を製作して画像形成実験を行なうことなく電子写真画像の数値的な再現すなわち出力画像を予測することができ、この予測画像を基に、画像形成装置全体の評価を行なったり、画質調整を高い精度で行なったりすることができる。
【0005】
電子写真プロセスは、電子写真感光体に対する帯電及びスキャンした原稿イメージの露光、感光体表面の静電潜像へのトナー重畳すなわち現像、転写体へのトナー転写、転写したトナーの定着など複数の工程からなる。このようなシステムのシミュレーションを単一のシミュレータで行なおうとすると、装置が巨大化して現実的でなくなる。そこで、例えば露光・帯電、現像、転写、定着などのサブシステム毎にシミュレーションをモジュール化し、各シミュレーション・モジュールからのシミュレーション結果を統合する手法が考えられている。
【0006】
電子写真プロセスの露光、潜像、現像、転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象はそれぞれモデル式で表現される。モデル式には、未知数となる係数が含まれるが、これらはサブシステムの入出力特性に基づいて補間すなわち決定することができる。
【0007】
例えば、露光、潜像、現像、転写などのサブシステム毎に入出力特性を実験により測定し、モデル式にフィッティングする手法が提案されている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。このシミュレーション手法によれば、簡易なモデル式を用いることができることから、計算時間が短いというメリットがある。
【0008】
現像プロセスにおいて感光体上の静電潜像に現像されるトナー量は、現像部電界Eに比例する。ソリッド画像(全面ベタ)を考えた場合、現像部電界Eは感光体上の画像部潜像電位Vimgと現像バイアス電位Vbiasの電位差に比例する。このときの現像トナー量DMAは次式で表される。
【0009】
DMA=A1(Vimg−Vbias)+A2
【0010】
上式において係数A1及びA2は、トナー濃度やトナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度によって決定される。これらの係数は、製作された画像形成装置(若しくは実験装置)上でそれぞれの条件を変化させて実験を行ない、画像部潜像電位を変化させたときの現像トナー量を測定することで求めることができる。すなわち、プロセスを表現するモデル式を、試作機などを用いて測定される実験データで補間した式で簡易に表すことで、シミュレーション計算を高速化することができる。
【0011】
図11には、現像剤のトナー濃度Tcを6%、8%、10%と変化させて、潜像電位に対する現像トナー量DMAを測定した実験結果の一例を示している。感光体上に付着したトナー量を測定する方法として、既知面積の静電潜像にトナーを現像させ、粘着性のあるテープにトナーを付着させて付着前後のテープ重量差から現像トナー量を測定する方法が挙げられる。ところが、この方法では、テープの帯電や吸湿が時間により変化することから、現像トナー量が少ない領域では測定時の誤差が大きくなる。図11に示した実験結果では、現像トナー量が多い領域ではトナー濃度Tcに応じた結果となっているが、現像トナー量が少ないときに測定誤差の影響からバラツキが大きくなっていることが判る。
【0012】
このように、実験によるトナー量測定値からプロセスのモデル式上の係数A1並びにA2を決める場合、このような測定誤差の影響を受けるため、モデル式の精度が低下する。特に現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きく、現像が開始される電位が大きくばらついてしまう。このようなモデル式を用いてカラー画像形成で重要なハーフトーン画像のハイライト部(低濃度部)の階調再現シミュレーションを行なうと、実際のプロセスと大きな差が生じてしまう問題がある。
【0013】
また、転写プロセスでは、トナー像の飛び散りを画像周波数伝達関数として取扱う手法が用いられている。画像周波数伝達関数MTFは、実際に画像周波数の異なるラダー画像の現像トナー像と転写トナー像を形成し、それぞれのコントラストを測定する実験を行ない、コントラストの比から画像周波数毎のコントラスト伝達量を決定し、周波数毎の点をスプラインなどの補間法により決定することにより求めることができる。
【0014】
図12には、画像周波数の異なるラダー画像の現像トナー像と転写トナー像を形成し、コントラストを測定し、コントラストの比から画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めた実験結果の一例を示している。この場合、感光体上に現像されたラダー画像のトナー像のラダー間に付着した逆極性のトナーによりコントラスト測定に誤差が発生するため、モデル式の精度が低下してしまう。特に、画像周波数が高いラダー画像ではラダー間の間隔が狭いため、このような測定誤差の影響が大きくなる。図12に示した例では、画像周波数伝達関数の高周波成分では、形状がばらつき易くなり、コントラストがはっきり出なくなる。このようなモデル式を用いてシミュレーションを行なうと、転写の状態が実際のプロセスと大きな差が生じて問題となる。
【0015】
【非特許文献1】房安、井上外著「デジタル複写機の電子写真プロセスシミュレーション」(電気学会静止器研究会資料(VOL.SA−99 NO.1−12,page65−69,1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合することによって正確な画像予測を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、現像や転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象を表現するモデル式に含まれる未知の係数をサブシステムの入出力特性に基づいて補間して、より正確なシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、サブシステムの入出力特性を測定する際の誤差の要因を排除して、より精度の高いモデル式を用いてシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するシミュレーション装置であって、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式中の係数を補間するモデル式形成手段と、モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手段を具備することを特徴とするシミュレーション装置である。
【0020】
本発明は、電子写真プロセスを始めとして、複数のサブシステムからなるプロセスの数値解析を行なうシミュレーション装置に関するが、具体的には、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合して最終的な画像予測を行なう。
【0021】
露光、潜像、現像、転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象はそれぞれモデル式で表現される。モデル式には、未知数となる係数が含まれるが、これらはサブシステムの入出力特性に基づいて補間すなわち決定することができ、簡易なモデル式を用いることができることから、計算時間が短いというメリットがある。
【0022】
例えば、露光、潜像、現像、転写などのサブシステム毎に入出力特性を実験により測定し、モデル式にフィッティングする手法があるが、この場合、試作機を製作する必要があることに加え、実験データの測定誤差の影響から、モデル式の精度が低下し、正確なシミュレーション結果を得られなくなるという問題がある。例えば、現像プロセスにおいて、潜像電位に対する現像トナー量を測定する際は現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きくなり、また、画像周波数に対するコントラスト伝達量を測定する際には高周波数の領域で測定誤差の影響が大きくなる。
【0023】
そこで、本発明に係るシミュレーション装置では、個別要素法を用いた粒子挙動解析を用いてサブシステムの入出力特性を算出して、この算出結果に基づいてモデル式中の未知の係数を補間するようにした。
【0024】
このような場合、実験誤差や測定誤差の影響を受けることなく、モデル式に未知の係数をフィッティングすることができる。また、サブシステムの入出力特性を測定するための試作機を製作する必要がないことから、開発コストを削減できるとともに、開発期間を短縮することができる。
【0025】
個別要素法は、すべての粒子に作用するさまざまな力(例えば、弾性力や粘性力などの接触による作用力、ファンデルワース力や鏡像力、液架橋力などの外力)を基に運動方程式を立てて、粒子毎の挙動を計算する粒子挙動解析法として既に知られている。個別要素法による粒子挙動解析は、無数の粒子からなる粉体の挙動をより現実に近い形で評価することができるというメリットがある反面、取り扱う粒子数が膨大になると計算量が増大するため、すべての粒子の計算を現実的な時間で行なうのは困難であるという問題がある。これに対し、本発明に係るシミュレーション装置では、個別要素法による粒子挙動解析は、サブシステムの入出力特性を測定する際にのみ適用し、その測定結果をモデル式にフィッティングした以降は通常の数値解析を行なうので、計算量の増大を抑制することができる。
【0026】
例えば、前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラ間の空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、前記モデル式形成手段は、前記入出力特性算出手段により算出された現像トナー像を用いて、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量に関するモデル式を補間し、前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成されたモデル式を用いて、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出することができる。
【0027】
このような場合、現像トナー量が少ない領域においても測定誤差の影響を受けないので、現像開始電位のばらつきは発生しなくなる。したがって、カラー画像の形成で重要となるハーフトーン画像のハイライト部(低濃度部)の階調再現シミュレーションを行なう際にも問題とならない。
【0028】
また、前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いてトナー像形成条件を変化させたときの現像トナー像及び転写トナー像を算出し、前記モデル式形成手段は、前記入出力特性算出手段により算出された現像トナー像と転写トナー像から、画像周波数毎のコントラスト伝達量及び画像周波数伝達関数を算出し、前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成された画像周波数伝達関数を用いて転写媒体へのトナー付着状態を算出することができる。すなわち、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を決定して、画像周波数伝達関数を算出することができる。
【0029】
このような場合、画像周波数の高い領域においても測定誤差の影響を受けないので、伝達関数の高周波成分における形状のバラツキが発生しない。
【0030】
また、本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面に係るシミュレーション方法を適用して画像形成パラメータを補正する画像形成装置であって、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手段と、画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手段を具備することを特徴とする画像形成装置である。
【0031】
また、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測してユーザに提示するようにしてもよい。そして、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、画像形成パラメータに基づいて出力画像を再度予測してユーザに提示するようにしてもよい。
【0032】
また、本発明の第3の側面は、本発明の第1の側面に係るシミュレーション方法を適用して故障解析を行なう画像形成装置であって、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手段と、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手段を備え、画像と現実に形成される画像を比較することによって故障解析を行なうことができる。
【0033】
また、本発明の第4の側面は、多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成手順と、モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手順を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0034】
また、本発明の第5の側面は、感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する際の画像形成パラメータを補正するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手順と、画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手順を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0035】
また、本発明の第6の側面は、感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置における故障解析を行なうための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手順と、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手順と、前記画像予測手順における予測画像と前記画像形成装置上で入力画像から現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析手順を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0036】
本発明の第4乃至第6の各側面に係るコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・システム上で所定の処理を実現するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムを定義したものである。換言すれば、本発明の第4乃至第6の各側面に係るコンピュータ・プログラムをコンピュータ・システムにインストールすることによって、コンピュータ・システム上では協働的作用が発揮され、本発明の第1乃至第3の各側面に係るシミュレーション装置又は画像形成装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合することによって正確な画像予測を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0038】
また、本発明によれば、現像や転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象を表現するモデル式に含まれる未知の係数をサブシステムの入出力特性に基づいて補間して、より正確なシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0039】
また、本発明によれば、サブシステムの入出力特性を測定する際の誤差の要因を排除して、より正確なモデル式を用いてシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0040】
本発明に係るシミュレーション装置は、電子写真プロセスの露光、潜像、現像、転写など各サブシステムの入出力特性を、個別要素法に基づく粒子挙動解析を用いて算出することで、実験誤差や測定誤差の影響を受けることなくモデル式にフィッティングすることができる。例えば、現像プロセスの現像トナー量モデル式フィッティングの際には現像トナー量が少ない領域における現像開始電位のばらつきが発生し、また、転写プロセスの画像周波数伝達関数のフィッティングの際には伝達関数の高周波成分における形状のばらつきの発生が課題となっていたが、本発明によれば、個別要素法に基づく粒子挙動解析により入出力特性を算出することで、これらのばらつきの要因がなくなり、モデル式を用いたシミュレーションの精度を高くすることができる。
【0041】
また、従来の手法では、各サブシステムの試作機上で入出力特性の測定を行なうため、実際の装置あるいは現像剤の試作前では実験を行なうことができなかったが、本発明によれば形状及び物性値など粒子挙動解析に必要となるパラメータを設定することができるので、試作前でも入出力特性を算出し、シミュレーション計算により性能を予測することができる。
【0042】
また、例えば現像プロセスにおいて、トナー濃度やトナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度といった多種の条件に対するモデル式を作成する場合、従来の手法では実験数が膨大になるため実験時間と人手が多く必要な上、現像剤の帯電状態が時間と位置により変動するための誤差が発生する。これに対し、本発明によれば個別要素法による解析モデルの計算条件を変更するだけで入出力特性を算出することができるので、現像剤の帯電状態も一定に設定できることから、変動による誤差の発生もない。
【0043】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスの数値解析を行なうシミュレーション装置に関する。まず、電子写真プロセスについて説明する。図13には、電子写真プロセスの機能的構成を模式的に示している。
【0045】
帯電手段では、感光体ドラムの表面を帯電器によって一様な表面電位に帯電させる。続く、露光手段では、原稿をスキャンして得た画像データに従って感光体表面にレーザ・ビームをスキャンすることによって、画像濃度に応じた光エネルギ潜像を生成する。感光体表面に光で描かれた画像は、感光体の光導電性により電荷の画像に変換され、静電潜像が形成される。
【0046】
一方、現像手段では、トナーが供給されキャリアと混合攪拌され、適正なトナー濃度を保ちながら、摩擦帯電により両者を静電吸着させる。そして、感光体表面の静電潜像は現像領域で電界分布を生じ、帯電したトナーは静電力によって飛翔して静電潜像上に転移し、トナー画像を生成する。
【0047】
その後、転写手段は外部から搬送されてきた印刷用紙上にトナー像を転写し、さらに定着手段により加熱溶融・圧着作用によりトナー像を印刷用紙上に定着してから、画像形成装置の外に排紙する。
【0048】
転写後の感光体表面は、残留トナーをクリーニング手段によって除去する。清掃後の感光面には残留電位が残っているが、初期電位を印加してから次の電子写真プロセスに利用される。
【0049】
図14には、現像手段を中心に装置構成を図解している。
【0050】
感光体13の回りには、回転方向bに沿って順に中間転写ベルト14、ブラシローラ34、帯電ローラ36、現像ユニットが設けられている。中間転写ベルト14、ブラシローラ34、帯電ローラ36はいずれも感光体13の感光面に当接している。また、帯電ローラ36と現像ユニットとの間には、感光面をライン露光するLEDアレイヘッド40が配置されている。
【0051】
現像ユニットは、感光体13に相対するように配設された現像ローラ38と、現像ローラ38の下方に位置し、現像ローラ38に2成分系現像剤を供給するスクリュー・フィーダ39A及び39Bと、現像ローラ38とスクリュー・フィーダ39A及び39Bとを収容する筐体37とを備える。2成分系現像剤は、トナーと磁性キャリア粒子とを主用成分として含有している。筐体37の感光体13に相対する部分には開口部37Aが設けられている。
【0052】
現像ローラ38は、感光体13の感光面との間に間隙即ち現像ギャップが形成されるように配設されている。現像ローラ38は、円柱状のマグネット・ロール38Bと、マグネット・ロール38Bに被せられたスリーブ38Aとを有する。マグネット・ロール38Bは、円柱状であって画像形成装置本体に対して固定され、スリーブ38Aは、マグネット・ロール38Bの軸線の回りを、感光体13の回転方向bと同じく紙面反時計回り方向、すなわち感光体13との対向部において感光体13に相対する方向に回転している。
【0053】
マグネット・ロール38Bは、フェライトや希土類磁石合金などの磁性材料の粉末を円柱状又は円筒状に成形したローラであり、N極とS極とが所定のパターンで配設されるように着磁しつつ燒結することにより形成される。その着磁パターンとして、感光体13に相対する部分が現像極S1であり、スリーブ38Aの回転方向に沿って現像極S1の隣にピックオフ極N1が位置し、その隣にピックアップ極N2、トリミング極S2、搬送極N3の順で磁極が配置されるパターンなどが挙げられる。なお、現像極S1とトリミング極S2はいずれもS極であり、ピックオフ極N1、ピックアップ極N2、搬送極N3はいずれもN極である。
【0054】
トリミング極S2の対向部には、トリミング極S2と協働してスリーブ38A上の磁気ブラシの高さを揃えるトリミングブレード41が現像ローラ38に向かって延びている。現像ローラ38には、マイナスの現像バイアス電圧が印加されている。
【0055】
現像モードにおいて、感光体13は一定速度で反時計回りに回転するので、その感光面は帯電ローラ36によってマイナスに帯電される。次いで、感光面の帯電面がLEDアレイヘッド40によって露光されることにより、帯電面の露光部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、現像ユニットにおいて、現像ローラ38によって、感光体13と同様にマイナス電圧に帯電されたトナーが感光面に形成された静電潜像すなわち帯電面の電位低下部に電気的に付着されて現像され、トナー画像が形成される。感光面上に付着したトナーは、トナーと逆極性のプラスの転写電圧が印加された転写ローラ32によって中間転写ベルト14に向かって電気的に引き寄せられる。これによって、感光面13A上のトナー像が、感光体13から中間転写ベルト14へと転写される。
【0056】
転写する度にトナーが消費されるが、スクリュー・フィーダ39Bには新たなトナーが供給され、キャリアと混合攪拌され、適正なトナー濃度を保ちながら、摩擦帯電により両者を静電吸着させる(図15を参照のこと)。
【0057】
スリーブ38Aが回転すると、スクリュー・フィーダ39A、39Bで筐体37内部に供給された現像剤は、ピックアップ極N2によってスリーブ38Aの表面に吸着される。ここで、スリーブ38Aの表面には、搬送極N3から現像極S1に向かう磁界、ピックオフ極N1から現像極S1に向かう磁界、ピックアップ極N2からトリミング極S2に向かう方向の磁界、及び搬送極N3からトリミング極S2に向かう磁界が形成され、しかも現像剤は、磁性キャリア粒子の表面にトナーが付着した構造を有している。したがって、図16に示すように、スリーブ38Aの表面に吸着された現像剤は、スリーブ38Aの表面において磁力線の方向に配列され、穂立ちして磁気ブラシを形成する。
【0058】
ピックアップ極N2の近傍においてスリーブ38Aの表面に形成された磁気ブラシは、図16中において矢印で示すように、スリーブ38Aが回転するのに伴い、トリミング極S2→搬送極N3→現像極S1→ピックオフ極N1へと紙面右から左に向かって搬送される。そして、トリミング極S2を通過するときに磁気ブラシの高さが整えられ、現像極S1近傍で磁気ブラシ上のトナーが感光体13に転移して、スリーブ38Aの表面にはほとんど磁性キャリアだけになった磁気ブラシが残る。ほとんど磁性キャリアだけになった磁気ブラシは、スリーブ38Aの回転に伴い、ピックオフ極N1でスリーブ38Aの表面から脱落して筐体37内に戻る。
【0059】
現像モードでは、このようにスリーブ38Aが回転することにより、ピックアップ極N2では常に新鮮な現像剤が補充されて現像極S1に搬送され、現像極S1にてトナーが感光体13に転移して感光面13の潜像が現像される。
【0060】
このような電子写真プロセスは、高速で高画質という特徴を持つが、さらなる性能向上が要求されている。最近では、電子写真プロセスの設計や開発においても、数値解析技術が盛んに採り入れられており、現実に画像形成実験を行なうことなく電子写真画像を数値的に予測し、プロセス全体の評価や画像調整をより高い精度で行なうようになっている。また、電子写真プロセス全体を単一のシステムでシミュレーションを行なおうとすると、システムが巨大化してしまうことから、例えば露光・帯電、現像、転写、定着などのサブシステム毎にシミュレーションをモジュール化し、各シミュレーション・モジュールからのシミュレーション結果を統合する手法が考えられている。
【0061】
電子写真プロセスの露光、潜像、現像、転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象はそれぞれモデル式で表現される。モデル式には、未知数となる係数が含まれるが、これらはサブシステムの入出力特性に基づいて補間すなわち決定することができ、簡易なモデル式を用いることができることから、計算時間が短いというメリットがある。
【0062】
例えば、露光、潜像、現像、転写などのサブシステム毎に入出力特性を実験により測定し、モデル式にフィッティングする手法があるが、この場合、試作機を製作する必要があることに加え、実験データの測定誤差の影響から、モデル式の精度が低下し、正確なシミュレーション結果を得られなくなるという問題がある。例えば、現像プロセスにおいて、潜像電位に対する現像トナー量を測定する際は現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きくなり、また、画像周波数に対するコントラスト伝達量を測定する際には高周波数の領域で測定誤差の影響が大きくなる。
【0063】
そこで、本実施形態では、個別要素法を用いた粒子挙動解析を用いてサブシステムの入出力特性を算出して、この算出結果に基づいてモデル式中の未知の係数を補間するようにした。個別要素法は、すべての粒子に作用するさまざまな力(例えば、弾性力や粘性力などの接触による作用力、ファンデルワース力や鏡像力、液架橋力などの外力)を基に運動方程式を立てて、粒子毎の挙動を計算する粒子挙動解析法である。
【0064】
この個別要素法を現像プロセス中のキャリアとトナー粒子に適用してトナー粒子が感光体上の潜像に飛翔してトナー像を形成する過程や、転写プロセス中のトナー粒子に適用して感光体上のトナー像が転写媒体に転写される過程を解析することによって、実験誤差や測定誤差の影響を受けることなく、モデル式に未知の係数をフィッティングして、電子写真プロセスを高精度にシミュレーションすることができる。また、サブシステムの入出力特性を測定するための試作機を製作する必要がないことから、開発コストを削減できるとともに、開発期間を短縮することができる。
【0065】
図1には、電子写真プロセスの各サブシステムにおけるトナー粒子の挙動を個別要素法により解析計算するシミュレーション装置の機能的構成を示している。図示の粒子挙動解析装置100は、制御部101と、データ入力部102と、モデル作成部103と、粒子運動計算部104と、データ出力部105と、特性評価部106で構成される。
【0066】
制御部101は、当該粒子挙動解析装置100内の処理全体を制御する。
【0067】
データ入力部102では、シミュレーション計算に必要となる情報を他の装置や別途設けた入力手段(いずれも図示しない)から受け取る部分であり、粒子特性入力部102Aと、領域データ入力部102Bと、計算パラメータ入力部102Cで構成される。
【0068】
粒子特性入力部102Aでは、計算対象となる、トナーやキャリアの物理特性(直径や堆積密度など)、機械特性(ヤング率やポアソン比など)、電磁気特性(誘電率や導電率、電荷量など)などが入力される。
【0069】
領域データ入力部102Bでは、粒子群が運動する領域の形状や物理特性、機械特性、電気特性などが入力される。
【0070】
計算パラメータ入力部102Cでは、上述した他に粒子運動のシミュレーション計算の実行に必要となる、計算ステップ数、時間増分、データ出力方法などに関する情報が与えられる。
【0071】
モデル作成部103は、粒子運動計算のための数値データを生成する部分であり、粒子データ生成部103Aと、境界データ生成部103Bで構成される。これらの機能モジュール103A及び103Bでは、データ入力部102で与えられた諸情報に基づいて、解析対象となる粒子や領域に設定される境界個々の特性を決定する。
【0072】
粒子運動計算部104は、モデル作成部103で生成した数値データを用い、個別要素法に基づいて、解析対象となる個々の粒子について領域内での運動を求める演算を行なう。
【0073】
個別要素法では、個々の粒子に対して以下に示す運動方程式を解いて粒子群の挙動を決定する。そのためまず右辺の外力fを評価する。外力としては、主に粒子間の接触力や重力、付着力、遠心力、空気抵抗力と、電磁界が作用している場合には電磁力が付加される。
【0074】
mα=f …(1)
【0075】
粒子に作用する接触力や作用力の和を基に外力fが決定すれば、あらかじめ与えられている質量mから、粒子の加速度αが求められる。次いで、所定の時間増分に対して、加速度を数値積分することで粒子の速度、変位並びに座標が求められる。このような計算を解析対象となる各粒子について所定の計算ステップ数分繰り返して行なうことによって、解析領域内の粒子群の挙動を求めることができる。
【0076】
図2には、個別要素法に基づくシミュレーション計算の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0077】
まず、所定の変数にデフォルト値を設定するなど初期化処理を行なう(ステップS1)。
【0078】
次いで、粒子間の接触判定を行ない、接触している粒子間で接触力の算出を行なう(ステップS2)。
【0079】
次いで、粒子に働く作用力の算出を行なう(ステップS3)。例えば現像プロセスのシミュレーションにおいては電界計算を行ない、解析対象粒子としてのトナーに働くクーロン力を得る。また、他の作用力として磁気力や重力なども算出する。
【0080】
そして、接触力と作用力の総和からなるすべての作用力を算出し、粒子についての運動方程式を立てて、当該粒子についての加速度、速度、変位を求める(ステップS4)。
【0081】
上述したステップS2〜S4の処理を、解析対象とする所定時間に到達するまでの間、所定のタイムステップ毎に繰り返し行なう。
【0082】
このように解析計算を各粒子について順次実行することにより、現実により忠実となるように粒子挙動を再現することができる。
【0083】
データ出力部105は、得られた粒子挙動の計算結果を必要に応じて他の装置へ伝送する処理を行なう機能モジュールである。粒子座標・速度出力部105Aでは、各粒子の座標、速度の時間変化情報を出力する。また、境界荷重出力部105Bでは、粒子の接触によって各境界に作用する荷重を出力する。出力先となる装置は、例えば粒子挙動解析結果を表示出力するディスプレイや、印刷出力するプリンタ、あるいは各計算結果のデータ・ファイルを蓄積するデータベースなどである。
【0084】
特性評価部106は、計算で求められた粒子や境界の状態から、画像形成装置としての性能に関連する諸特性を演算によって求める機能モジュールである。このような特性演算としては、例えば、所定の空間内にある粒子の個数から密度を求めたり、粒子の平均移動速度を求めて流動状態の指標としたり、トナー並びにキャリアそれぞれの個数から場所毎の混合比を求めたりする。
【0085】
粒子挙動解析装置100は、例えば、パーソナル・コンピュータなどの一般的な計算機システムで構成することができる。あるいは、ネットワーク接続される複数の計算機システムが協働的に動作するグリッド・コンピュータや並列化されたクラスタPCなどを適用して、数値計算部を構成することができる。
【0086】
個別要素法による粒子挙動解析は、無数の粒子からなる粉体の挙動をより現実に近い形で評価することができるメリットがある反面、取り扱う粒子数が膨大になると計算量が増大するため、すべての粒子の計算を現実的な時間で行なうのは困難であるという問題がある。これに対し、本実施形態は、個別要素法による粒子挙動解析は、各サブシステムの入出力特性を測定する際にのみ適用し、その測定結果をモデル式にフィッティングした以降は通常の数値解析を行なうので、計算量の増大を抑制することができる。
【0087】
図3には、個別要素法による現像及び転写プロセスの解析モデルを模式的に示している。そして、図示の解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度といった条件を変化させて、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出するシミュレーション計算を行なうことができる。
【0088】
図4には、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させながら、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出するシミュレーション計算を行なうための処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0089】
まず、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度などの現像条件を設定する(ステップS11)。
【0090】
次いで、感光体上に所定の潜像電位のソリッド画像パッチを形成する(ステップS12)。
【0091】
次いで、個別要素法に基づく粒子挙動計算により、図3に示した現像プロセス解析モデルを用いて、ソリッド画像パッチへのトナー現像過程を計算する(ステップS13)。
【0092】
そして、トナー現像過程の計算結果から、感光体上のソリッド画像パッチに現像された単位面積当たりの現像トナー量DMAを算出する(ステップS14)。
【0093】
上述したような現像トナー量の算出処理を、所望する潜像電位の範囲のすべてのサンプル点について完了するまで(ステップS15のNo)、潜像電位を変更しながら(ステップS16)、繰り返し実行する。
【0094】
図5には、条件としてトナー濃度Tcを変化させながら、図4に示した処理手順に従って、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出した結果を示している。現像及び転写プロセスの入出力特性を試作機上の実験による測定結果を用いてシミュレーション計算を行なった場合、現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きく、現像が開始される電位が大きくばらついてしまうため(図11を参照のこと)、カラー画像の形成で重要となるハーフトーン画像のハイライト部(低濃度部)の階調再現シミュレーションを行なう際に問題となる。これに対し、本実施形態では、図5からも分るように、現像トナー量が少ない領域においても測定誤差の影響を受けないので、現像開始電位のばらつきは発生しない。
【0095】
また、図6には、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めるというシミュレーション計算を行なうための処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0096】
まず、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度などの現像条件を設定する(ステップS21)。
【0097】
次いで、感光体上に所定の潜像電位で所定の画像周波数のラダー画像のパッチを形成する(ステップS22)。
【0098】
次いで、個別要素法に基づく粒子挙動解析により、図3に示した現像プロセス解析モデルを用いて、感光体上のラダー画像パッチへのトナー現像過程を計算する(ステップS23)。
【0099】
次いで、現像過程計算の結果から、感光体上に現像されたラダー画像パッチのトナー像プロファイルを算出し、プロファイルの最高値Pmaxと最低値Pminから、下式によりコントラストCdeveを求める(ステップS24)。
【0100】
Cdeve=(Pmax−Pmin)/(Pmax+Pmin)
【0101】
次いで、個別要素法に基づく粒子挙動解析により、図3に示した転写プロセス解析モデルを用いて、感光体上に形成されたラダー画像パッチ・トナー像の転写媒体への転写過程を計算する(ステップS25)。
【0102】
次いで、転写過程計算の結果から、転写媒体に転写されたラダー画像パッチのトナー像プロファイルを算出し、プロファイルの最高値Pmaxと最低値Pminから、下式によりコントラストCtransを求める(ステップS26)。
【0103】
Ctrans=(Pmax−Pmin)/(Pmax+Pmin)
【0104】
そして、現像過程で算出したコントラストCdeveと転写過程で算出したコントラストCtransの比から、コントラスト伝達量CTを求める(ステップS27)。
【0105】
上述したようなコントラスト伝達量CTの算出処理を、所望する画像周波数の範囲のすべてのサンプル点について完了するまで(ステップS28のNo)、画像周波数を変更しながら(ステップS29)、繰り返し実行する。
【0106】
図7には、図6に示した処理手順に従って画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出した結果を示している。現像及び転写プロセスの入出力特性を試作機上の実験による測定結果を用いてシミュレーション計算を行なった場合、特にラダー画像の間隔が狭くなる高周波数領域では逆極性のトナーによりコントラスト測定に誤差が発生して形状がばらつくという問題がある(図12を参照のこと)。これに対し、本実施形態では、図7からも分るように、画像周波数の高い領域においても測定誤差の影響を受けないので、伝達関数の高周波成分における形状のバラツキが発生しない。
【0107】
また、本実施形態に係る電子写真プロセスのシミュレーション方法を画像形成装置に適用することによって、画像予測を行ない、画像形成パラメータを補正するという応用例も考えられる。すなわち、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出し、この入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像予測を行なう。そして、画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータに補正を施し、より高品位な画像を転写媒体上に形成するようにする。
【0108】
例えば、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて出力濃度並びに階調性変動を予測して、画像形成装置が画像出力する際に用いる画像形成パラメータを補正することができる。
【0109】
図8には、この場合の画像形成装置の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0110】
まず、累積プリント枚数や温度、湿度などの現在の画像形成装置の状態を検出する(ステップS31)。
【0111】
次いで、画像形成装置の各状態に関して、個別要素法による現像モデルを用いて、あらかじめ算出している画像形成状態及び潜像電位に対する現像トナー量特性から、濃度・階調性検知用基準パターン画像の現像トナー量を算出する(ステップS32)。また、各状態の現在値に関して潜像電位に対する現像トナー量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0112】
次いで、算出した入力画像の現像トナー量と、各状態に関して個別要素法による転写モデルを用いてあらかじめ算出しているコントラスト伝達特性から、感光体上に形成された濃度・階調性検知用基準パターン画像の転写媒体への転写状態を算出する(ステップS33)。ここで、各状態の現在値に関してコントラスト伝達量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0113】
次いで、計算された濃度・階調性検知用基準パターン画像の転写後の状態から、出力濃度並びに階調を算出し、出力予測値とする(ステップS34)。
【0114】
そして、出力予測値と出力濃度、階調性の目標値を比較し、目標値に近づくように帯電電位、露光光量、トナー補給量などの画像形成パラメータの補正量を決定する(ステップS35)。
【0115】
また、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測してユーザに提示するようにしてもよい。そして、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、画像形成パラメータに基づいて出力画像を再度予測してユーザに提示する。
【0116】
図9には、この場合の画像形成装置の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0117】
まず、累積プリント枚数や温度、湿度といった、現在の画像形成装置の状態を検出する(ステップS41)。
【0118】
次いで、各状態に関して、個別要素法による現像モデルを用いてあらかじめ算出している潜像電位に対する現像トナー量特性から、入力画像に対する現像トナー量を算出する(ステップS42)。ここで、各状態に現在値に関して潜像電位に対する現像トナー量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0119】
次いで、算出した入力画像の現像トナー量と、各状態に関して個別要素法による転写モデルを用いてあらかじめ算出しているコントラスト伝達特性から、感光体上に形成された入力画像の転写媒体への転写状態を算出する(ステップS43)。ここで、各状態の現在値に関してコントラスト伝達量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0120】
次いで、計算された入力画像の転写後の状態を出力画像予測結果として、画像形成装置に接続されているモニタ・ディスプレイに表示出力する(ステップS44)。
【0121】
そして、ユーザが出力画像予測結果を参照し、画像シャープネスや色バランスなどの画質設定の変更を指示することができる(ステップ45)。
【0122】
ここで、画像設定の変更が指示されたときには(ステップS46のYes)、入力画像に対して設定された画質設定に相当する画像処理を施す(ステップS47)。
【0123】
また、本実施形態に係る電子写真プロセスのシミュレーション方法を画像形成装置に適用することによって、画像予測を行ない、予測画像と現実に形成される画像を比較することによって装置の故障解析を行なうという応用例も考えられる。
【0124】
図10には、この場合の画像形成装置の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0125】
画像形成のプロセス内で画像欠陥が発生するなど、故障が発生すると(ステップS51)、まず、ユーザが故障内容に最も近い分類を画像形成装置に入力する(ステップS52)。
【0126】
次いで、ユーザが選択した故障内容を検知できる故障検知用画像を画像形成装置から出力する(ステップS53)。ここで言う故障検知用画像とは、例えば、画像の色再現が異常という故障内容に対して、YMC各色の所定濃度パッチの重ね合わせ画像などである。
【0127】
次いで、ユーザが入力した故障内容に関連する画像形成パラメータを故障状態に設定し、個別要素法による現像モデルを用いてあらかじめ算出している潜像電位に対する現像トナー量特性から、故障検知用画像の現像トナー量を算出する(ステップS54)。
【0128】
次いで、ユーザが入力した故障内容に関連する画像形成パラメータを故障状態に設定し、個別要素法による転写モデルを用いてあらかじめ算出しているコントラスト伝達特性から、感光体上に形成された故障検知用画像の転写媒体への転写状態を算出する(ステップS55)。
【0129】
次いで、計算された故障検知用画像の転写後の状態を故障原因推定結果として、画像形成装置に備えられたディスプレイ装置に表示出力する(ステップS56)。
【0130】
次いで、ユーザが故障検知用画像と、故障原因予測結果を比較して、故障原因かどうかを判断する(ステップS57)。
【0131】
ここで、ユーザが故障原因でないと判断した場合には(ステップS58のNo)、故障内容に関連する画像形成パラメータ値あるいはパラメータの種類を変更して(ステップS59)、ステップS54に戻って、故障原因の推定を繰り返し行なう。
【0132】
また、ユーザが故障原因であると判断した場合には(ステップS58のYes)、画像形成装置で故障原因の修復が行なえる場合には修復処理を実施する。また、エンジニアなどによる修理が必要な場合は故障原因への対応方法をディスプレイ装置に表示出力する(ステップS60)。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0134】
本明細書では、電子写真プロセスに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するその他のシステムに対しても、同様に本発明を適用することができる。
【0135】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、電子写真プロセスの各サブシステムにおけるトナー粒子の挙動を個別要素法により解析計算するシミュレーション装置の機能的構成を示した図である。
【図2】図2は、個別要素法に基づくシミュレーション計算の処理手順を示したフローチャートである。
【図3】図3は、個別要素法による現像及び転写プロセスの解析モデルを模式的に示した図である。
【図4】図4は、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させながら、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出するシミュレーション計算を行なうための処理手順を示したフローチャートである。
【図5】図5は、条件としてトナー濃度を変化させながら、図4に示した処理手順に従って、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出した結果を示した図である。
【図6】図6は、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めるシミュレーション計算を行なうための処理手順を示したフローチャートである。
【図7】図7は、図6に示した処理手順に従って画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出した結果を示した図である。
【図8】図8は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて出力濃度並びに階調性変動を予測して、画像形成装置が画像出力する際に用いる画像形成パラメータを補正するための処理手順を示したフローチャートである。
【図9】図9は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測してユーザに提示する処理手順を示したフローチャートである。
【図10】図10は、画像予測を行ない、予測画像と現実に形成される画像を比較することによって故障解析を行なうための画像形成装置の処理手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、現像剤のトナー濃度Tcを6%、8%、10%と変化させて、潜像電位に対する現像トナー量DMAを測定した実験結果の一例を示した図である。
【図12】図12は、画像周波数の異なるラダー画像の現像トナー像と転写トナー像を形成し、コントラストを測定し、コントラストの比から画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めた実験結果の一例を示した図である。
【図13】図13は、電子写真プロセスの機能的構成を模式的に示した図である。
【図14】図14は、現像手段まわりの装置構成例を示した図である。
【図15】図15は、スクリュー・フィーダBにおいてトナーとキャリアを混合・攪拌しながら移送する様子を示した図である。
【図16】図16は、スリーブ38Aの表面において磁力線の方向に配列され、穂立ちして磁気ブラシを形成する様子を示した図である。
【符号の説明】
【0137】
13…感光体
14…中間転写ベルト
32…転写ローラ
34…ブラシローラ
36…帯電ローラ
37…筐体
38…現像ローラ
39…スクリュー・フィーダ
40…LEDアレイヘッド
41…トリミングブレード
100…粒子挙動解析装置
101…制御部
102…データ入力部
103…モデル作成部
104…粒子運動計算部
105…データ出力部
106…特性評価部
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの現像、トナー像の転写などの各プロセスを含む電子写真プロセスにより形成される画像の品質を解析するシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合することによって正確な画像予測を行なうシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、現像や転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象を表現するモデル式に含まれる未知の係数をサブシステムの入出力特性に基づいて補間してシミュレーション計算を行なうシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、サブシステムの入出力特性を測定する際の誤差の要因を排除して、より精度の高いモデル式を用いてシミュレーション計算を行なうシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
電子写真プロセスを用いた複写機やファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置は、高速、高画質といった特徴を持ち、広範に普及している。また、オフィス業務の効率化やニーズの多様化により、最近でもなお電子写真プロセス技術の性能向上への要求は高い。
【0004】
また、情報技術の発展に伴い、電子写真プロセスの設計や開発においても、数値解析技術が盛んに採り入れられている。すなわち、電子写真プロセスをシミュレーション計算することで、現実に試作機を製作して画像形成実験を行なうことなく電子写真画像の数値的な再現すなわち出力画像を予測することができ、この予測画像を基に、画像形成装置全体の評価を行なったり、画質調整を高い精度で行なったりすることができる。
【0005】
電子写真プロセスは、電子写真感光体に対する帯電及びスキャンした原稿イメージの露光、感光体表面の静電潜像へのトナー重畳すなわち現像、転写体へのトナー転写、転写したトナーの定着など複数の工程からなる。このようなシステムのシミュレーションを単一のシミュレータで行なおうとすると、装置が巨大化して現実的でなくなる。そこで、例えば露光・帯電、現像、転写、定着などのサブシステム毎にシミュレーションをモジュール化し、各シミュレーション・モジュールからのシミュレーション結果を統合する手法が考えられている。
【0006】
電子写真プロセスの露光、潜像、現像、転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象はそれぞれモデル式で表現される。モデル式には、未知数となる係数が含まれるが、これらはサブシステムの入出力特性に基づいて補間すなわち決定することができる。
【0007】
例えば、露光、潜像、現像、転写などのサブシステム毎に入出力特性を実験により測定し、モデル式にフィッティングする手法が提案されている(例えば、非特許文献1を参照のこと)。このシミュレーション手法によれば、簡易なモデル式を用いることができることから、計算時間が短いというメリットがある。
【0008】
現像プロセスにおいて感光体上の静電潜像に現像されるトナー量は、現像部電界Eに比例する。ソリッド画像(全面ベタ)を考えた場合、現像部電界Eは感光体上の画像部潜像電位Vimgと現像バイアス電位Vbiasの電位差に比例する。このときの現像トナー量DMAは次式で表される。
【0009】
DMA=A1(Vimg−Vbias)+A2
【0010】
上式において係数A1及びA2は、トナー濃度やトナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度によって決定される。これらの係数は、製作された画像形成装置(若しくは実験装置)上でそれぞれの条件を変化させて実験を行ない、画像部潜像電位を変化させたときの現像トナー量を測定することで求めることができる。すなわち、プロセスを表現するモデル式を、試作機などを用いて測定される実験データで補間した式で簡易に表すことで、シミュレーション計算を高速化することができる。
【0011】
図11には、現像剤のトナー濃度Tcを6%、8%、10%と変化させて、潜像電位に対する現像トナー量DMAを測定した実験結果の一例を示している。感光体上に付着したトナー量を測定する方法として、既知面積の静電潜像にトナーを現像させ、粘着性のあるテープにトナーを付着させて付着前後のテープ重量差から現像トナー量を測定する方法が挙げられる。ところが、この方法では、テープの帯電や吸湿が時間により変化することから、現像トナー量が少ない領域では測定時の誤差が大きくなる。図11に示した実験結果では、現像トナー量が多い領域ではトナー濃度Tcに応じた結果となっているが、現像トナー量が少ないときに測定誤差の影響からバラツキが大きくなっていることが判る。
【0012】
このように、実験によるトナー量測定値からプロセスのモデル式上の係数A1並びにA2を決める場合、このような測定誤差の影響を受けるため、モデル式の精度が低下する。特に現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きく、現像が開始される電位が大きくばらついてしまう。このようなモデル式を用いてカラー画像形成で重要なハーフトーン画像のハイライト部(低濃度部)の階調再現シミュレーションを行なうと、実際のプロセスと大きな差が生じてしまう問題がある。
【0013】
また、転写プロセスでは、トナー像の飛び散りを画像周波数伝達関数として取扱う手法が用いられている。画像周波数伝達関数MTFは、実際に画像周波数の異なるラダー画像の現像トナー像と転写トナー像を形成し、それぞれのコントラストを測定する実験を行ない、コントラストの比から画像周波数毎のコントラスト伝達量を決定し、周波数毎の点をスプラインなどの補間法により決定することにより求めることができる。
【0014】
図12には、画像周波数の異なるラダー画像の現像トナー像と転写トナー像を形成し、コントラストを測定し、コントラストの比から画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めた実験結果の一例を示している。この場合、感光体上に現像されたラダー画像のトナー像のラダー間に付着した逆極性のトナーによりコントラスト測定に誤差が発生するため、モデル式の精度が低下してしまう。特に、画像周波数が高いラダー画像ではラダー間の間隔が狭いため、このような測定誤差の影響が大きくなる。図12に示した例では、画像周波数伝達関数の高周波成分では、形状がばらつき易くなり、コントラストがはっきり出なくなる。このようなモデル式を用いてシミュレーションを行なうと、転写の状態が実際のプロセスと大きな差が生じて問題となる。
【0015】
【非特許文献1】房安、井上外著「デジタル複写機の電子写真プロセスシミュレーション」(電気学会静止器研究会資料(VOL.SA−99 NO.1−12,page65−69,1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合することによって正確な画像予測を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、現像や転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象を表現するモデル式に含まれる未知の係数をサブシステムの入出力特性に基づいて補間して、より正確なシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、サブシステムの入出力特性を測定する際の誤差の要因を排除して、より精度の高いモデル式を用いてシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するシミュレーション装置であって、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式中の係数を補間するモデル式形成手段と、モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手段を具備することを特徴とするシミュレーション装置である。
【0020】
本発明は、電子写真プロセスを始めとして、複数のサブシステムからなるプロセスの数値解析を行なうシミュレーション装置に関するが、具体的には、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合して最終的な画像予測を行なう。
【0021】
露光、潜像、現像、転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象はそれぞれモデル式で表現される。モデル式には、未知数となる係数が含まれるが、これらはサブシステムの入出力特性に基づいて補間すなわち決定することができ、簡易なモデル式を用いることができることから、計算時間が短いというメリットがある。
【0022】
例えば、露光、潜像、現像、転写などのサブシステム毎に入出力特性を実験により測定し、モデル式にフィッティングする手法があるが、この場合、試作機を製作する必要があることに加え、実験データの測定誤差の影響から、モデル式の精度が低下し、正確なシミュレーション結果を得られなくなるという問題がある。例えば、現像プロセスにおいて、潜像電位に対する現像トナー量を測定する際は現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きくなり、また、画像周波数に対するコントラスト伝達量を測定する際には高周波数の領域で測定誤差の影響が大きくなる。
【0023】
そこで、本発明に係るシミュレーション装置では、個別要素法を用いた粒子挙動解析を用いてサブシステムの入出力特性を算出して、この算出結果に基づいてモデル式中の未知の係数を補間するようにした。
【0024】
このような場合、実験誤差や測定誤差の影響を受けることなく、モデル式に未知の係数をフィッティングすることができる。また、サブシステムの入出力特性を測定するための試作機を製作する必要がないことから、開発コストを削減できるとともに、開発期間を短縮することができる。
【0025】
個別要素法は、すべての粒子に作用するさまざまな力(例えば、弾性力や粘性力などの接触による作用力、ファンデルワース力や鏡像力、液架橋力などの外力)を基に運動方程式を立てて、粒子毎の挙動を計算する粒子挙動解析法として既に知られている。個別要素法による粒子挙動解析は、無数の粒子からなる粉体の挙動をより現実に近い形で評価することができるというメリットがある反面、取り扱う粒子数が膨大になると計算量が増大するため、すべての粒子の計算を現実的な時間で行なうのは困難であるという問題がある。これに対し、本発明に係るシミュレーション装置では、個別要素法による粒子挙動解析は、サブシステムの入出力特性を測定する際にのみ適用し、その測定結果をモデル式にフィッティングした以降は通常の数値解析を行なうので、計算量の増大を抑制することができる。
【0026】
例えば、前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラ間の空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、前記モデル式形成手段は、前記入出力特性算出手段により算出された現像トナー像を用いて、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量に関するモデル式を補間し、前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成されたモデル式を用いて、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出することができる。
【0027】
このような場合、現像トナー量が少ない領域においても測定誤差の影響を受けないので、現像開始電位のばらつきは発生しなくなる。したがって、カラー画像の形成で重要となるハーフトーン画像のハイライト部(低濃度部)の階調再現シミュレーションを行なう際にも問題とならない。
【0028】
また、前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いてトナー像形成条件を変化させたときの現像トナー像及び転写トナー像を算出し、前記モデル式形成手段は、前記入出力特性算出手段により算出された現像トナー像と転写トナー像から、画像周波数毎のコントラスト伝達量及び画像周波数伝達関数を算出し、前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成された画像周波数伝達関数を用いて転写媒体へのトナー付着状態を算出することができる。すなわち、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を決定して、画像周波数伝達関数を算出することができる。
【0029】
このような場合、画像周波数の高い領域においても測定誤差の影響を受けないので、伝達関数の高周波成分における形状のバラツキが発生しない。
【0030】
また、本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面に係るシミュレーション方法を適用して画像形成パラメータを補正する画像形成装置であって、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手段と、画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手段を具備することを特徴とする画像形成装置である。
【0031】
また、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測してユーザに提示するようにしてもよい。そして、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、画像形成パラメータに基づいて出力画像を再度予測してユーザに提示するようにしてもよい。
【0032】
また、本発明の第3の側面は、本発明の第1の側面に係るシミュレーション方法を適用して故障解析を行なう画像形成装置であって、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手段と、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手段を備え、画像と現実に形成される画像を比較することによって故障解析を行なうことができる。
【0033】
また、本発明の第4の側面は、多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成手順と、モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手順を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0034】
また、本発明の第5の側面は、感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する際の画像形成パラメータを補正するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手順と、画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手順を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0035】
また、本発明の第6の側面は、感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置における故障解析を行なうための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手順と、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手順と、前記画像予測手順における予測画像と前記画像形成装置上で入力画像から現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析手順を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0036】
本発明の第4乃至第6の各側面に係るコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・システム上で所定の処理を実現するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムを定義したものである。換言すれば、本発明の第4乃至第6の各側面に係るコンピュータ・プログラムをコンピュータ・システムにインストールすることによって、コンピュータ・システム上では協働的作用が発揮され、本発明の第1乃至第3の各側面に係るシミュレーション装置又は画像形成装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、電子写真プロセスを複数のサブシステムに分けて、サブシステム毎にシミュレーション計算を行ない、各シミュレーション結果を統合することによって正確な画像予測を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0038】
また、本発明によれば、現像や転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象を表現するモデル式に含まれる未知の係数をサブシステムの入出力特性に基づいて補間して、より正確なシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0039】
また、本発明によれば、サブシステムの入出力特性を測定する際の誤差の要因を排除して、より正確なモデル式を用いてシミュレーション計算を行なうことができる、優れたシミュレーション装置及びシミュレーション方法、画像形成装置及び画像形成方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0040】
本発明に係るシミュレーション装置は、電子写真プロセスの露光、潜像、現像、転写など各サブシステムの入出力特性を、個別要素法に基づく粒子挙動解析を用いて算出することで、実験誤差や測定誤差の影響を受けることなくモデル式にフィッティングすることができる。例えば、現像プロセスの現像トナー量モデル式フィッティングの際には現像トナー量が少ない領域における現像開始電位のばらつきが発生し、また、転写プロセスの画像周波数伝達関数のフィッティングの際には伝達関数の高周波成分における形状のばらつきの発生が課題となっていたが、本発明によれば、個別要素法に基づく粒子挙動解析により入出力特性を算出することで、これらのばらつきの要因がなくなり、モデル式を用いたシミュレーションの精度を高くすることができる。
【0041】
また、従来の手法では、各サブシステムの試作機上で入出力特性の測定を行なうため、実際の装置あるいは現像剤の試作前では実験を行なうことができなかったが、本発明によれば形状及び物性値など粒子挙動解析に必要となるパラメータを設定することができるので、試作前でも入出力特性を算出し、シミュレーション計算により性能を予測することができる。
【0042】
また、例えば現像プロセスにおいて、トナー濃度やトナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度といった多種の条件に対するモデル式を作成する場合、従来の手法では実験数が膨大になるため実験時間と人手が多く必要な上、現像剤の帯電状態が時間と位置により変動するための誤差が発生する。これに対し、本発明によれば個別要素法による解析モデルの計算条件を変更するだけで入出力特性を算出することができるので、現像剤の帯電状態も一定に設定できることから、変動による誤差の発生もない。
【0043】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスの数値解析を行なうシミュレーション装置に関する。まず、電子写真プロセスについて説明する。図13には、電子写真プロセスの機能的構成を模式的に示している。
【0045】
帯電手段では、感光体ドラムの表面を帯電器によって一様な表面電位に帯電させる。続く、露光手段では、原稿をスキャンして得た画像データに従って感光体表面にレーザ・ビームをスキャンすることによって、画像濃度に応じた光エネルギ潜像を生成する。感光体表面に光で描かれた画像は、感光体の光導電性により電荷の画像に変換され、静電潜像が形成される。
【0046】
一方、現像手段では、トナーが供給されキャリアと混合攪拌され、適正なトナー濃度を保ちながら、摩擦帯電により両者を静電吸着させる。そして、感光体表面の静電潜像は現像領域で電界分布を生じ、帯電したトナーは静電力によって飛翔して静電潜像上に転移し、トナー画像を生成する。
【0047】
その後、転写手段は外部から搬送されてきた印刷用紙上にトナー像を転写し、さらに定着手段により加熱溶融・圧着作用によりトナー像を印刷用紙上に定着してから、画像形成装置の外に排紙する。
【0048】
転写後の感光体表面は、残留トナーをクリーニング手段によって除去する。清掃後の感光面には残留電位が残っているが、初期電位を印加してから次の電子写真プロセスに利用される。
【0049】
図14には、現像手段を中心に装置構成を図解している。
【0050】
感光体13の回りには、回転方向bに沿って順に中間転写ベルト14、ブラシローラ34、帯電ローラ36、現像ユニットが設けられている。中間転写ベルト14、ブラシローラ34、帯電ローラ36はいずれも感光体13の感光面に当接している。また、帯電ローラ36と現像ユニットとの間には、感光面をライン露光するLEDアレイヘッド40が配置されている。
【0051】
現像ユニットは、感光体13に相対するように配設された現像ローラ38と、現像ローラ38の下方に位置し、現像ローラ38に2成分系現像剤を供給するスクリュー・フィーダ39A及び39Bと、現像ローラ38とスクリュー・フィーダ39A及び39Bとを収容する筐体37とを備える。2成分系現像剤は、トナーと磁性キャリア粒子とを主用成分として含有している。筐体37の感光体13に相対する部分には開口部37Aが設けられている。
【0052】
現像ローラ38は、感光体13の感光面との間に間隙即ち現像ギャップが形成されるように配設されている。現像ローラ38は、円柱状のマグネット・ロール38Bと、マグネット・ロール38Bに被せられたスリーブ38Aとを有する。マグネット・ロール38Bは、円柱状であって画像形成装置本体に対して固定され、スリーブ38Aは、マグネット・ロール38Bの軸線の回りを、感光体13の回転方向bと同じく紙面反時計回り方向、すなわち感光体13との対向部において感光体13に相対する方向に回転している。
【0053】
マグネット・ロール38Bは、フェライトや希土類磁石合金などの磁性材料の粉末を円柱状又は円筒状に成形したローラであり、N極とS極とが所定のパターンで配設されるように着磁しつつ燒結することにより形成される。その着磁パターンとして、感光体13に相対する部分が現像極S1であり、スリーブ38Aの回転方向に沿って現像極S1の隣にピックオフ極N1が位置し、その隣にピックアップ極N2、トリミング極S2、搬送極N3の順で磁極が配置されるパターンなどが挙げられる。なお、現像極S1とトリミング極S2はいずれもS極であり、ピックオフ極N1、ピックアップ極N2、搬送極N3はいずれもN極である。
【0054】
トリミング極S2の対向部には、トリミング極S2と協働してスリーブ38A上の磁気ブラシの高さを揃えるトリミングブレード41が現像ローラ38に向かって延びている。現像ローラ38には、マイナスの現像バイアス電圧が印加されている。
【0055】
現像モードにおいて、感光体13は一定速度で反時計回りに回転するので、その感光面は帯電ローラ36によってマイナスに帯電される。次いで、感光面の帯電面がLEDアレイヘッド40によって露光されることにより、帯電面の露光部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、現像ユニットにおいて、現像ローラ38によって、感光体13と同様にマイナス電圧に帯電されたトナーが感光面に形成された静電潜像すなわち帯電面の電位低下部に電気的に付着されて現像され、トナー画像が形成される。感光面上に付着したトナーは、トナーと逆極性のプラスの転写電圧が印加された転写ローラ32によって中間転写ベルト14に向かって電気的に引き寄せられる。これによって、感光面13A上のトナー像が、感光体13から中間転写ベルト14へと転写される。
【0056】
転写する度にトナーが消費されるが、スクリュー・フィーダ39Bには新たなトナーが供給され、キャリアと混合攪拌され、適正なトナー濃度を保ちながら、摩擦帯電により両者を静電吸着させる(図15を参照のこと)。
【0057】
スリーブ38Aが回転すると、スクリュー・フィーダ39A、39Bで筐体37内部に供給された現像剤は、ピックアップ極N2によってスリーブ38Aの表面に吸着される。ここで、スリーブ38Aの表面には、搬送極N3から現像極S1に向かう磁界、ピックオフ極N1から現像極S1に向かう磁界、ピックアップ極N2からトリミング極S2に向かう方向の磁界、及び搬送極N3からトリミング極S2に向かう磁界が形成され、しかも現像剤は、磁性キャリア粒子の表面にトナーが付着した構造を有している。したがって、図16に示すように、スリーブ38Aの表面に吸着された現像剤は、スリーブ38Aの表面において磁力線の方向に配列され、穂立ちして磁気ブラシを形成する。
【0058】
ピックアップ極N2の近傍においてスリーブ38Aの表面に形成された磁気ブラシは、図16中において矢印で示すように、スリーブ38Aが回転するのに伴い、トリミング極S2→搬送極N3→現像極S1→ピックオフ極N1へと紙面右から左に向かって搬送される。そして、トリミング極S2を通過するときに磁気ブラシの高さが整えられ、現像極S1近傍で磁気ブラシ上のトナーが感光体13に転移して、スリーブ38Aの表面にはほとんど磁性キャリアだけになった磁気ブラシが残る。ほとんど磁性キャリアだけになった磁気ブラシは、スリーブ38Aの回転に伴い、ピックオフ極N1でスリーブ38Aの表面から脱落して筐体37内に戻る。
【0059】
現像モードでは、このようにスリーブ38Aが回転することにより、ピックアップ極N2では常に新鮮な現像剤が補充されて現像極S1に搬送され、現像極S1にてトナーが感光体13に転移して感光面13の潜像が現像される。
【0060】
このような電子写真プロセスは、高速で高画質という特徴を持つが、さらなる性能向上が要求されている。最近では、電子写真プロセスの設計や開発においても、数値解析技術が盛んに採り入れられており、現実に画像形成実験を行なうことなく電子写真画像を数値的に予測し、プロセス全体の評価や画像調整をより高い精度で行なうようになっている。また、電子写真プロセス全体を単一のシステムでシミュレーションを行なおうとすると、システムが巨大化してしまうことから、例えば露光・帯電、現像、転写、定着などのサブシステム毎にシミュレーションをモジュール化し、各シミュレーション・モジュールからのシミュレーション結果を統合する手法が考えられている。
【0061】
電子写真プロセスの露光、潜像、現像、転写などの各サブシステムで行なわれる処理若しくは現象はそれぞれモデル式で表現される。モデル式には、未知数となる係数が含まれるが、これらはサブシステムの入出力特性に基づいて補間すなわち決定することができ、簡易なモデル式を用いることができることから、計算時間が短いというメリットがある。
【0062】
例えば、露光、潜像、現像、転写などのサブシステム毎に入出力特性を実験により測定し、モデル式にフィッティングする手法があるが、この場合、試作機を製作する必要があることに加え、実験データの測定誤差の影響から、モデル式の精度が低下し、正確なシミュレーション結果を得られなくなるという問題がある。例えば、現像プロセスにおいて、潜像電位に対する現像トナー量を測定する際は現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きくなり、また、画像周波数に対するコントラスト伝達量を測定する際には高周波数の領域で測定誤差の影響が大きくなる。
【0063】
そこで、本実施形態では、個別要素法を用いた粒子挙動解析を用いてサブシステムの入出力特性を算出して、この算出結果に基づいてモデル式中の未知の係数を補間するようにした。個別要素法は、すべての粒子に作用するさまざまな力(例えば、弾性力や粘性力などの接触による作用力、ファンデルワース力や鏡像力、液架橋力などの外力)を基に運動方程式を立てて、粒子毎の挙動を計算する粒子挙動解析法である。
【0064】
この個別要素法を現像プロセス中のキャリアとトナー粒子に適用してトナー粒子が感光体上の潜像に飛翔してトナー像を形成する過程や、転写プロセス中のトナー粒子に適用して感光体上のトナー像が転写媒体に転写される過程を解析することによって、実験誤差や測定誤差の影響を受けることなく、モデル式に未知の係数をフィッティングして、電子写真プロセスを高精度にシミュレーションすることができる。また、サブシステムの入出力特性を測定するための試作機を製作する必要がないことから、開発コストを削減できるとともに、開発期間を短縮することができる。
【0065】
図1には、電子写真プロセスの各サブシステムにおけるトナー粒子の挙動を個別要素法により解析計算するシミュレーション装置の機能的構成を示している。図示の粒子挙動解析装置100は、制御部101と、データ入力部102と、モデル作成部103と、粒子運動計算部104と、データ出力部105と、特性評価部106で構成される。
【0066】
制御部101は、当該粒子挙動解析装置100内の処理全体を制御する。
【0067】
データ入力部102では、シミュレーション計算に必要となる情報を他の装置や別途設けた入力手段(いずれも図示しない)から受け取る部分であり、粒子特性入力部102Aと、領域データ入力部102Bと、計算パラメータ入力部102Cで構成される。
【0068】
粒子特性入力部102Aでは、計算対象となる、トナーやキャリアの物理特性(直径や堆積密度など)、機械特性(ヤング率やポアソン比など)、電磁気特性(誘電率や導電率、電荷量など)などが入力される。
【0069】
領域データ入力部102Bでは、粒子群が運動する領域の形状や物理特性、機械特性、電気特性などが入力される。
【0070】
計算パラメータ入力部102Cでは、上述した他に粒子運動のシミュレーション計算の実行に必要となる、計算ステップ数、時間増分、データ出力方法などに関する情報が与えられる。
【0071】
モデル作成部103は、粒子運動計算のための数値データを生成する部分であり、粒子データ生成部103Aと、境界データ生成部103Bで構成される。これらの機能モジュール103A及び103Bでは、データ入力部102で与えられた諸情報に基づいて、解析対象となる粒子や領域に設定される境界個々の特性を決定する。
【0072】
粒子運動計算部104は、モデル作成部103で生成した数値データを用い、個別要素法に基づいて、解析対象となる個々の粒子について領域内での運動を求める演算を行なう。
【0073】
個別要素法では、個々の粒子に対して以下に示す運動方程式を解いて粒子群の挙動を決定する。そのためまず右辺の外力fを評価する。外力としては、主に粒子間の接触力や重力、付着力、遠心力、空気抵抗力と、電磁界が作用している場合には電磁力が付加される。
【0074】
mα=f …(1)
【0075】
粒子に作用する接触力や作用力の和を基に外力fが決定すれば、あらかじめ与えられている質量mから、粒子の加速度αが求められる。次いで、所定の時間増分に対して、加速度を数値積分することで粒子の速度、変位並びに座標が求められる。このような計算を解析対象となる各粒子について所定の計算ステップ数分繰り返して行なうことによって、解析領域内の粒子群の挙動を求めることができる。
【0076】
図2には、個別要素法に基づくシミュレーション計算の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0077】
まず、所定の変数にデフォルト値を設定するなど初期化処理を行なう(ステップS1)。
【0078】
次いで、粒子間の接触判定を行ない、接触している粒子間で接触力の算出を行なう(ステップS2)。
【0079】
次いで、粒子に働く作用力の算出を行なう(ステップS3)。例えば現像プロセスのシミュレーションにおいては電界計算を行ない、解析対象粒子としてのトナーに働くクーロン力を得る。また、他の作用力として磁気力や重力なども算出する。
【0080】
そして、接触力と作用力の総和からなるすべての作用力を算出し、粒子についての運動方程式を立てて、当該粒子についての加速度、速度、変位を求める(ステップS4)。
【0081】
上述したステップS2〜S4の処理を、解析対象とする所定時間に到達するまでの間、所定のタイムステップ毎に繰り返し行なう。
【0082】
このように解析計算を各粒子について順次実行することにより、現実により忠実となるように粒子挙動を再現することができる。
【0083】
データ出力部105は、得られた粒子挙動の計算結果を必要に応じて他の装置へ伝送する処理を行なう機能モジュールである。粒子座標・速度出力部105Aでは、各粒子の座標、速度の時間変化情報を出力する。また、境界荷重出力部105Bでは、粒子の接触によって各境界に作用する荷重を出力する。出力先となる装置は、例えば粒子挙動解析結果を表示出力するディスプレイや、印刷出力するプリンタ、あるいは各計算結果のデータ・ファイルを蓄積するデータベースなどである。
【0084】
特性評価部106は、計算で求められた粒子や境界の状態から、画像形成装置としての性能に関連する諸特性を演算によって求める機能モジュールである。このような特性演算としては、例えば、所定の空間内にある粒子の個数から密度を求めたり、粒子の平均移動速度を求めて流動状態の指標としたり、トナー並びにキャリアそれぞれの個数から場所毎の混合比を求めたりする。
【0085】
粒子挙動解析装置100は、例えば、パーソナル・コンピュータなどの一般的な計算機システムで構成することができる。あるいは、ネットワーク接続される複数の計算機システムが協働的に動作するグリッド・コンピュータや並列化されたクラスタPCなどを適用して、数値計算部を構成することができる。
【0086】
個別要素法による粒子挙動解析は、無数の粒子からなる粉体の挙動をより現実に近い形で評価することができるメリットがある反面、取り扱う粒子数が膨大になると計算量が増大するため、すべての粒子の計算を現実的な時間で行なうのは困難であるという問題がある。これに対し、本実施形態は、個別要素法による粒子挙動解析は、各サブシステムの入出力特性を測定する際にのみ適用し、その測定結果をモデル式にフィッティングした以降は通常の数値解析を行なうので、計算量の増大を抑制することができる。
【0087】
図3には、個別要素法による現像及び転写プロセスの解析モデルを模式的に示している。そして、図示の解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度といった条件を変化させて、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出するシミュレーション計算を行なうことができる。
【0088】
図4には、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させながら、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出するシミュレーション計算を行なうための処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0089】
まず、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度などの現像条件を設定する(ステップS11)。
【0090】
次いで、感光体上に所定の潜像電位のソリッド画像パッチを形成する(ステップS12)。
【0091】
次いで、個別要素法に基づく粒子挙動計算により、図3に示した現像プロセス解析モデルを用いて、ソリッド画像パッチへのトナー現像過程を計算する(ステップS13)。
【0092】
そして、トナー現像過程の計算結果から、感光体上のソリッド画像パッチに現像された単位面積当たりの現像トナー量DMAを算出する(ステップS14)。
【0093】
上述したような現像トナー量の算出処理を、所望する潜像電位の範囲のすべてのサンプル点について完了するまで(ステップS15のNo)、潜像電位を変更しながら(ステップS16)、繰り返し実行する。
【0094】
図5には、条件としてトナー濃度Tcを変化させながら、図4に示した処理手順に従って、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出した結果を示している。現像及び転写プロセスの入出力特性を試作機上の実験による測定結果を用いてシミュレーション計算を行なった場合、現像トナー量が少ない領域では測定誤差の影響が大きく、現像が開始される電位が大きくばらついてしまうため(図11を参照のこと)、カラー画像の形成で重要となるハーフトーン画像のハイライト部(低濃度部)の階調再現シミュレーションを行なう際に問題となる。これに対し、本実施形態では、図5からも分るように、現像トナー量が少ない領域においても測定誤差の影響を受けないので、現像開始電位のばらつきは発生しない。
【0095】
また、図6には、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めるというシミュレーション計算を行なうための処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0096】
まず、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度などの現像条件を設定する(ステップS21)。
【0097】
次いで、感光体上に所定の潜像電位で所定の画像周波数のラダー画像のパッチを形成する(ステップS22)。
【0098】
次いで、個別要素法に基づく粒子挙動解析により、図3に示した現像プロセス解析モデルを用いて、感光体上のラダー画像パッチへのトナー現像過程を計算する(ステップS23)。
【0099】
次いで、現像過程計算の結果から、感光体上に現像されたラダー画像パッチのトナー像プロファイルを算出し、プロファイルの最高値Pmaxと最低値Pminから、下式によりコントラストCdeveを求める(ステップS24)。
【0100】
Cdeve=(Pmax−Pmin)/(Pmax+Pmin)
【0101】
次いで、個別要素法に基づく粒子挙動解析により、図3に示した転写プロセス解析モデルを用いて、感光体上に形成されたラダー画像パッチ・トナー像の転写媒体への転写過程を計算する(ステップS25)。
【0102】
次いで、転写過程計算の結果から、転写媒体に転写されたラダー画像パッチのトナー像プロファイルを算出し、プロファイルの最高値Pmaxと最低値Pminから、下式によりコントラストCtransを求める(ステップS26)。
【0103】
Ctrans=(Pmax−Pmin)/(Pmax+Pmin)
【0104】
そして、現像過程で算出したコントラストCdeveと転写過程で算出したコントラストCtransの比から、コントラスト伝達量CTを求める(ステップS27)。
【0105】
上述したようなコントラスト伝達量CTの算出処理を、所望する画像周波数の範囲のすべてのサンプル点について完了するまで(ステップS28のNo)、画像周波数を変更しながら(ステップS29)、繰り返し実行する。
【0106】
図7には、図6に示した処理手順に従って画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出した結果を示している。現像及び転写プロセスの入出力特性を試作機上の実験による測定結果を用いてシミュレーション計算を行なった場合、特にラダー画像の間隔が狭くなる高周波数領域では逆極性のトナーによりコントラスト測定に誤差が発生して形状がばらつくという問題がある(図12を参照のこと)。これに対し、本実施形態では、図7からも分るように、画像周波数の高い領域においても測定誤差の影響を受けないので、伝達関数の高周波成分における形状のバラツキが発生しない。
【0107】
また、本実施形態に係る電子写真プロセスのシミュレーション方法を画像形成装置に適用することによって、画像予測を行ない、画像形成パラメータを補正するという応用例も考えられる。すなわち、サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出し、この入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像予測を行なう。そして、画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータに補正を施し、より高品位な画像を転写媒体上に形成するようにする。
【0108】
例えば、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて出力濃度並びに階調性変動を予測して、画像形成装置が画像出力する際に用いる画像形成パラメータを補正することができる。
【0109】
図8には、この場合の画像形成装置の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0110】
まず、累積プリント枚数や温度、湿度などの現在の画像形成装置の状態を検出する(ステップS31)。
【0111】
次いで、画像形成装置の各状態に関して、個別要素法による現像モデルを用いて、あらかじめ算出している画像形成状態及び潜像電位に対する現像トナー量特性から、濃度・階調性検知用基準パターン画像の現像トナー量を算出する(ステップS32)。また、各状態の現在値に関して潜像電位に対する現像トナー量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0112】
次いで、算出した入力画像の現像トナー量と、各状態に関して個別要素法による転写モデルを用いてあらかじめ算出しているコントラスト伝達特性から、感光体上に形成された濃度・階調性検知用基準パターン画像の転写媒体への転写状態を算出する(ステップS33)。ここで、各状態の現在値に関してコントラスト伝達量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0113】
次いで、計算された濃度・階調性検知用基準パターン画像の転写後の状態から、出力濃度並びに階調を算出し、出力予測値とする(ステップS34)。
【0114】
そして、出力予測値と出力濃度、階調性の目標値を比較し、目標値に近づくように帯電電位、露光光量、トナー補給量などの画像形成パラメータの補正量を決定する(ステップS35)。
【0115】
また、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測してユーザに提示するようにしてもよい。そして、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、画像形成パラメータに基づいて出力画像を再度予測してユーザに提示する。
【0116】
図9には、この場合の画像形成装置の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0117】
まず、累積プリント枚数や温度、湿度といった、現在の画像形成装置の状態を検出する(ステップS41)。
【0118】
次いで、各状態に関して、個別要素法による現像モデルを用いてあらかじめ算出している潜像電位に対する現像トナー量特性から、入力画像に対する現像トナー量を算出する(ステップS42)。ここで、各状態に現在値に関して潜像電位に対する現像トナー量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0119】
次いで、算出した入力画像の現像トナー量と、各状態に関して個別要素法による転写モデルを用いてあらかじめ算出しているコントラスト伝達特性から、感光体上に形成された入力画像の転写媒体への転写状態を算出する(ステップS43)。ここで、各状態の現在値に関してコントラスト伝達量が算出されていない場合は、あらかじめ計算されている現在値に近い2つの計算結果から内挿あるいは外挿して算出する。
【0120】
次いで、計算された入力画像の転写後の状態を出力画像予測結果として、画像形成装置に接続されているモニタ・ディスプレイに表示出力する(ステップS44)。
【0121】
そして、ユーザが出力画像予測結果を参照し、画像シャープネスや色バランスなどの画質設定の変更を指示することができる(ステップ45)。
【0122】
ここで、画像設定の変更が指示されたときには(ステップS46のYes)、入力画像に対して設定された画質設定に相当する画像処理を施す(ステップS47)。
【0123】
また、本実施形態に係る電子写真プロセスのシミュレーション方法を画像形成装置に適用することによって、画像予測を行ない、予測画像と現実に形成される画像を比較することによって装置の故障解析を行なうという応用例も考えられる。
【0124】
図10には、この場合の画像形成装置の処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0125】
画像形成のプロセス内で画像欠陥が発生するなど、故障が発生すると(ステップS51)、まず、ユーザが故障内容に最も近い分類を画像形成装置に入力する(ステップS52)。
【0126】
次いで、ユーザが選択した故障内容を検知できる故障検知用画像を画像形成装置から出力する(ステップS53)。ここで言う故障検知用画像とは、例えば、画像の色再現が異常という故障内容に対して、YMC各色の所定濃度パッチの重ね合わせ画像などである。
【0127】
次いで、ユーザが入力した故障内容に関連する画像形成パラメータを故障状態に設定し、個別要素法による現像モデルを用いてあらかじめ算出している潜像電位に対する現像トナー量特性から、故障検知用画像の現像トナー量を算出する(ステップS54)。
【0128】
次いで、ユーザが入力した故障内容に関連する画像形成パラメータを故障状態に設定し、個別要素法による転写モデルを用いてあらかじめ算出しているコントラスト伝達特性から、感光体上に形成された故障検知用画像の転写媒体への転写状態を算出する(ステップS55)。
【0129】
次いで、計算された故障検知用画像の転写後の状態を故障原因推定結果として、画像形成装置に備えられたディスプレイ装置に表示出力する(ステップS56)。
【0130】
次いで、ユーザが故障検知用画像と、故障原因予測結果を比較して、故障原因かどうかを判断する(ステップS57)。
【0131】
ここで、ユーザが故障原因でないと判断した場合には(ステップS58のNo)、故障内容に関連する画像形成パラメータ値あるいはパラメータの種類を変更して(ステップS59)、ステップS54に戻って、故障原因の推定を繰り返し行なう。
【0132】
また、ユーザが故障原因であると判断した場合には(ステップS58のYes)、画像形成装置で故障原因の修復が行なえる場合には修復処理を実施する。また、エンジニアなどによる修理が必要な場合は故障原因への対応方法をディスプレイ装置に表示出力する(ステップS60)。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0134】
本明細書では、電子写真プロセスに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するその他のシステムに対しても、同様に本発明を適用することができる。
【0135】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、電子写真プロセスの各サブシステムにおけるトナー粒子の挙動を個別要素法により解析計算するシミュレーション装置の機能的構成を示した図である。
【図2】図2は、個別要素法に基づくシミュレーション計算の処理手順を示したフローチャートである。
【図3】図3は、個別要素法による現像及び転写プロセスの解析モデルを模式的に示した図である。
【図4】図4は、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、トナー帯電量、感光体と現像ローラの空隙、現像ローラと感光体の回転速度を変化させながら、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出するシミュレーション計算を行なうための処理手順を示したフローチャートである。
【図5】図5は、条件としてトナー濃度を変化させながら、図4に示した処理手順に従って、感光体の潜像電位を変化させたときの現像トナー量を算出した結果を示した図である。
【図6】図6は、図3に示した個別要素法に基づく現像及び解析プロセス解析モデルを用いて、感光体上に画像周波数の異なるラダー画像のトナー像を形成して、転写媒体上に転写し、現像トナー像、転写トナー像のコントラストを算出して、画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めるシミュレーション計算を行なうための処理手順を示したフローチャートである。
【図7】図7は、図6に示した処理手順に従って画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出した結果を示した図である。
【図8】図8は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて出力濃度並びに階調性変動を予測して、画像形成装置が画像出力する際に用いる画像形成パラメータを補正するための処理手順を示したフローチャートである。
【図9】図9は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムの入出力特性のモデル式にフィッティングするともに、画像周波数伝達関数を算出し、これらモデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測してユーザに提示する処理手順を示したフローチャートである。
【図10】図10は、画像予測を行ない、予測画像と現実に形成される画像を比較することによって故障解析を行なうための画像形成装置の処理手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、現像剤のトナー濃度Tcを6%、8%、10%と変化させて、潜像電位に対する現像トナー量DMAを測定した実験結果の一例を示した図である。
【図12】図12は、画像周波数の異なるラダー画像の現像トナー像と転写トナー像を形成し、コントラストを測定し、コントラストの比から画像周波数毎のコントラスト伝達量を求めた実験結果の一例を示した図である。
【図13】図13は、電子写真プロセスの機能的構成を模式的に示した図である。
【図14】図14は、現像手段まわりの装置構成例を示した図である。
【図15】図15は、スクリュー・フィーダBにおいてトナーとキャリアを混合・攪拌しながら移送する様子を示した図である。
【図16】図16は、スリーブ38Aの表面において磁力線の方向に配列され、穂立ちして磁気ブラシを形成する様子を示した図である。
【符号の説明】
【0137】
13…感光体
14…中間転写ベルト
32…転写ローラ
34…ブラシローラ
36…帯電ローラ
37…筐体
38…現像ローラ
39…スクリュー・フィーダ
40…LEDアレイヘッド
41…トリミングブレード
100…粒子挙動解析装置
101…制御部
102…データ入力部
103…モデル作成部
104…粒子運動計算部
105…データ出力部
106…特性評価部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するシミュレーション装置であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、
算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成手段と、
モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手段と、
を具備することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
サブシステム毎の数値解析結果を統合して、プロセス全体についてのパフォーマンスを評価する統合評価手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスの数値解析を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、
前記モデル式形成手段は、前記入出力特性算出手段により算出された現像トナー像を用いて、トナー造形性手段と現像トナー量に関するモデル式を補間し、
前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成されたモデル式を用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー量を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー像及び転写トナー像を算出し、
前記モデル式形成手段は、前記入出力算出手段により算出された現像トナー像と転写トナー像から、画像周波数毎のコントラスト伝達量及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成された画像周波数伝達関数を用いて転写端遺体へのトナー付着状態を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、
入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手段と、
画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手段と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測手段は、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて予測画像における出力濃度並びに階調性変動を予測し、
前記画像補正手段は、出力濃度及び階調性変動に基づいて画像形成パラメータを補正する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測手段は、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測し、
予測画像をユーザに提示する予測画像提示手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成パラメータ補正手段は、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、
前記予測画像提示手段は、変更された画像形成パラメータに基づいて前記画像予測手段が再度予測した出力画像を提示する、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手段と、
該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手段と、
入力画像に対する出力画像を電子写真プロセスにより形成する画像形成手段と、
前記画像予測手段による予測画像と前記画像形成手段により現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析手段と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するシミュレーション方法であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出ステップと、
算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成ステップと、
モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析ステップと、
を具備することを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項12】
サブシステム毎の数値解析結果を統合して、プロセス全体についてのパフォーマンスを評価する統合評価ステップをさらに備える、
ことを特徴とする請求項11に記載のシミュレーション方法。
【請求項13】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスの数値解析を行なう
ことを特徴とする請求項11に記載のシミュレーション方法。
【請求項14】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、
前記モデル式形成ステップでは、前記入出力特性算出ステップにおいて算出された現像トナー像を用いて、トナー像形成条件と現像トナー像に関するモデル式を補間し、
前記数値解析手ステップでは、前記モデル式形成ステップにおいて作成されたモデル式を用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー量を算出する、
ことを特徴とする請求項13に記載のシミュレーション方法。
【請求項15】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー像及び転写トナー像を算出し、
前記モデル式形成ステップでは、前記入出力算出ステップにおいて算出された現像トナー像と転写トナー像から、画像周波数毎のコントラスト伝達量及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記数値解析ステップでは、前記モデル式形成ステップにおいて作成された画像周波数伝達関数を用いて画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出する、
ことを特徴とする請求項13に記載のシミュレーション方法。
【請求項16】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出ステップと、
入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測ステップと、
画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正ステップと、
を具備することを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測ステップでは、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて予測画像における出力濃度並びに階調性変動を予測し、
前記画像補正ステップでは、出力濃度及び階調性変動に基づいて画像形成パラメータを補正する、
ことを特徴とする請求項16に記載の画像形成方法。
【請求項18】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測ステップでは、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測し、
予測画像をユーザに提示する予測画像提示ステップをさらに備える、
ことを特徴とする請求項16に記載の画像形成方法。
【請求項19】
前記画像形成パラメータ補正ステップでは、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、
予測画像提示ステップでは、変更された画像形成パラメータに基づいて前記画像予測ステップにおいて再度予測した出力画像を提示する、
ことを特徴とする請求項18に記載の画像形成方法。
【請求項20】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出ステップと、
該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測ステップと、
入力画像に対する出力画像を電子写真プロセスにより形成する画像形成ステップと、
前記画像予測ステップにおける予測画像と前記画像形成ステップにおいて現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析ステップと、
を具備することを特徴とする画像形成方法。
【請求項21】
多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、
算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成手順と、
モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項22】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する際の画像形成パラメータを補正するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、
入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手順と、
画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項23】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置における故障解析を行なうための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手順と、
該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手順と、
前記画像予測手順における予測画像と前記画像形成装置上で入力画像から現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項1】
多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するシミュレーション装置であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、
算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成手段と、
モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手段と、
を具備することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
サブシステム毎の数値解析結果を統合して、プロセス全体についてのパフォーマンスを評価する統合評価手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスの数値解析を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、
前記モデル式形成手段は、前記入出力特性算出手段により算出された現像トナー像を用いて、トナー造形性手段と現像トナー量に関するモデル式を補間し、
前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成されたモデル式を用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー量を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー像及び転写トナー像を算出し、
前記モデル式形成手段は、前記入出力算出手段により算出された現像トナー像と転写トナー像から、画像周波数毎のコントラスト伝達量及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記数値解析手段は、前記モデル式形成手段により作成された画像周波数伝達関数を用いて転写端遺体へのトナー付着状態を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手段と、
入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手段と、
画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手段と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測手段は、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて予測画像における出力濃度並びに階調性変動を予測し、
前記画像補正手段は、出力濃度及び階調性変動に基づいて画像形成パラメータを補正する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記入出力特性算出手段は、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測手段は、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測し、
予測画像をユーザに提示する予測画像提示手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成パラメータ補正手段は、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、
前記予測画像提示手段は、変更された画像形成パラメータに基づいて前記画像予測手段が再度予測した出力画像を提示する、
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置であって、
個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手段と、
該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手段と、
入力画像に対する出力画像を電子写真プロセスにより形成する画像形成手段と、
前記画像予測手段による予測画像と前記画像形成手段により現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析手段と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するシミュレーション方法であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出ステップと、
算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成ステップと、
モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析ステップと、
を具備することを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項12】
サブシステム毎の数値解析結果を統合して、プロセス全体についてのパフォーマンスを評価する統合評価ステップをさらに備える、
ことを特徴とする請求項11に記載のシミュレーション方法。
【請求項13】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスの数値解析を行なう
ことを特徴とする請求項11に記載のシミュレーション方法。
【請求項14】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの感光体表面上の現像トナー像を算出し、
前記モデル式形成ステップでは、前記入出力特性算出ステップにおいて算出された現像トナー像を用いて、トナー像形成条件と現像トナー像に関するモデル式を補間し、
前記数値解析手ステップでは、前記モデル式形成ステップにおいて作成されたモデル式を用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー量を算出する、
ことを特徴とする請求項13に記載のシミュレーション方法。
【請求項15】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法による現像及び転写プロセス解析モデルを用いて、トナー像形成条件を変化させたときの現像トナー像及び転写トナー像を算出し、
前記モデル式形成ステップでは、前記入出力算出ステップにおいて算出された現像トナー像と転写トナー像から、画像周波数毎のコントラスト伝達量及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記数値解析ステップでは、前記モデル式形成ステップにおいて作成された画像周波数伝達関数を用いて画像周波数毎のコントラスト伝達量を算出する、
ことを特徴とする請求項13に記載のシミュレーション方法。
【請求項16】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出ステップと、
入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測ステップと、
画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正ステップと、
を具備することを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測ステップでは、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて予測画像における出力濃度並びに階調性変動を予測し、
前記画像補正ステップでは、出力濃度及び階調性変動に基づいて画像形成パラメータを補正する、
ことを特徴とする請求項16に記載の画像形成方法。
【請求項18】
前記入出力特性算出ステップでは、個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出し、
前記画像予測ステップでは、該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測し、
予測画像をユーザに提示する予測画像提示ステップをさらに備える、
ことを特徴とする請求項16に記載の画像形成方法。
【請求項19】
前記画像形成パラメータ補正ステップでは、予測画像を見たユーザから入力される画質設定の変更指示に基づいて画像形成パラメータを変更し、
予測画像提示ステップでは、変更された画像形成パラメータに基づいて前記画像予測ステップにおいて再度予測した出力画像を提示する、
ことを特徴とする請求項18に記載の画像形成方法。
【請求項20】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成方法であって、
個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出ステップと、
該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測ステップと、
入力画像に対する出力画像を電子写真プロセスにより形成する画像形成ステップと、
前記画像予測ステップにおける予測画像と前記画像形成ステップにおいて現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析ステップと、
を具備することを特徴とする画像形成方法。
【請求項21】
多数の粒子の挙動により実現する複数のサブシステムからなるプロセスを数値解析するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、
算出された入出力特性に基づいてサブシステムに関するモデル式を補間するモデル式形成手順と、
モデル式を用いてサブシステムにおける現象を数値解析する数値解析手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項22】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する際の画像形成パラメータを補正するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
サブシステムにおける入出力特性を、個別要素法を用いた粒子挙動解析により算出する入出力特性算出手順と、
入出力特性の算出結果をサブシステムに関するモデル式にフィッティングして、各サブシステムにおける現象を数値解析して画像を予測する画像予測手順と、
画像予測の結果に基づいて電子写真プロセスにおける画像形成パラメータを補正する画像形成パラメータ補正手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項23】
感光体への露光、静電潜像の形成、トナー像の現像、媒体へのトナー像の転写並びに定着を含む複数のサブシステムからなる電子写真プロセスにより転写媒体上に画像を形成する画像形成装置における故障解析を行なうための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・システムに対し、
個別要素法に基づく粒子挙動解析により各サブシステムにおける入出力特性のモデル式及び画像周波数伝達関数を算出する入出力特性算出手順と、
該モデル式及び画像周波数伝達関数を用いて入力画像に対する出力画像を予測する画像予測手順と、
前記画像予測手順における予測画像と前記画像形成装置上で入力画像から現実に形成される画像を比較して、故障解析を行なう故障解析手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−178830(P2007−178830A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378734(P2005−378734)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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