説明

シャフトダンパー

本発明のシャフトダンパー(100)は、シャフトボア(40)内のゴム状弾性部材(20)と係合する慣性質量(30)を有するシャフトダンパーである。ゴム状弾性部材は、シャフトの内面(11)と慣性質量の外面(31)との間にある環状空間に含まれる。慣性質量の外面における湾曲断面形状は、ゴム状弾性部材に対する物理的接着を高める。ゴム状弾性部材および慣性質量は、シャフトの曲げ振動を減衰させるため、シャフト内のあらかじめ定められた所定場所に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャフトダンパーに関し、特に、シャフトのボア内の所定場所に設けられる弾性部材と慣性質量とを備えたシャフトダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常回転シャフトは、サービスの種類に従い、様々なモードで振動する。シャフトの振動はノイズを発生させる。シャフトの振動を減衰させるダンパーが知られている。
ダンパーは、動作中のノイズとともに、シャフトの早期磨耗や疲労によるシャフト破損を減少させる。
【0003】
ダンパーにおいては、ドライブシャフト内において柔軟性のあるライナー形状が採用される。ダンパーはまた、シャフト外面に固定された環状チャンバー内に慣性質量を含む捩じりダンパーを備える。
【0004】
従来技術の代表は、ズィマンスキー(Szymanski)等の米国特許第5749269号(1998年)であり、中心ハブを囲む環状チャンバーを有するビスカス式捩じり振動減衰装置が開示されている。慣性質量は環状チャンバー内に含まれている。
【0005】
また、従来技術の代表として、スターク(Stark)等の米国特許第4909361号(1990年)が存在し、自動車の中空ドライブシャフト用振動減衰装置が開示されており、ドライブシャフトのボアに嵌合したライナープレスと、弾力性、変形性、弾性のある高摩擦保持ストリップとを有する減衰装置は、ボアの表面を強力に支持し、ライナーをシャフト内に固定させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の減衰装置は、ドライブシャフトに適合するライナープレスを単に備えるか、あるいはシャフトの外面に結び付けられる慣性質量を備える。これらは、作動空間とともに減衰係数に関して問題がある。さらに、これら減衰装置は、シャフト長さに沿った曲げ振動の減衰に関して僅かな効果しかない捩じり減衰に対して主に向けられている。
【0007】
曲げ振動を減衰させるためのシャフトダンパーが要求される。シャフトのボア内のあらかじめ定められた場所にある弾性部材と係合する慣性質量を備えたシャフトダンパーが要求される。本発明はこれら要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主な目的は、曲げ振動を減衰するためのシャフトダンパーを提供することにある。本発明の他の側面は、シャフトのボア内のあらかじめ定められた場所にある弾性部材と係合する慣性質量を備えたシャフトダンパーを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、以下の記載および添付図面によって明らかにされる。
【0010】
本発明のシャフトダンパーは、シャフトボア内のゴム状弾性部材と係合する慣性質量を有するシャフトダンパーである。ゴム状弾性部材は、シャフトの内面と慣性質量の外面との間にある環状空間に含まれる。慣性質量の外面における湾曲断面形状は、ゴム状弾性部材に対する物理的接着を高める。ゴム状弾性部材および慣性質量は、シャフトの曲げ振動を減衰させるため、シャフト内のあらかじめ定められた所定場所に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本実施形態であるシャフトダンパーの断面側面図である。シャフトダンパー100は、シャフト本体10とボア40とを備える。シャフト10は、長さL、径Dを有する。ゴム状弾性部材20は、シャフト本体10とボア40内の慣性質量との間に埋め込まれている。ゴム状弾性部材20と慣性部材30は、シャフト10の端部50から距離L1離れた場所に配置されている。
【0012】
図2は、本実施形態であるシャフトダンパーの詳細図である。ゴム状弾性部材20は、シャフト本体内面11と慣性部材外面31との間に埋め込まれている。内面11は、表面での摩擦係数を高めるため、粗い表面であるのがよい。
【0013】
ゴム状弾性部材20は、内面11と外面31との間において、5%〜50%の範囲で圧縮されている。慣性部材30は、外面31において、物理的に慣性部材30をゴム状弾性部材20へ係合させるのに役立つレリーフ面(relief surface)32をさらに備える。これは、全体の剛性を増加させずにゴム状弾性部材を適切な位置に保持する(保持は、通常押し出しテスト(push out test)やトルク回転テスト(torque-to-turn)により測定される)。
【0014】
レリーフ面32は、ボア40内の慣性部材の位置を適切に固定するに要求される任意の適当な幾何学的形状であってもよい。弧状の形であるレリーフ面32が、図2に示されている。ボア40内の慣性部材の位置を固定するため、レリーフ面32の表面を摩擦係数を大きくするように粗くすればよい。
【0015】
ゴム状弾性部材20は、任意の天然ゴム、合成ゴム、これらゴムと等価なものの組み合わせを有する弾性材料、あるいは、シャフト作動中の温度に耐え得るその他の弾性材料を含む。リストを限定することを意図するものではないが、弾性部材の弾性エネルギー容量、静的せん断、動的せん断、体積弾性係数および曲げ疲労各々は、所望する減衰効果を提供するように選択すればよい。
【0016】
ゴム状弾性部材のエラストマー剛性は、曲線状であるレリーフ面32の断面形状を調整することによって調整される。この調整によって、特定の動作振動数(operational frequency)を減衰させるようにシャフトダンパーを設計することができる。シャフト長さLに沿ったダンパー100の位置L1は、あらかじめ決められたシャフトの振動モードを減衰させるように調整可能である。本実施形態では、図1に示すように、曲げ振動Bとともに捩じり振動Tを減衰させるように調整できる。これは、エラストマーの捩じりおよび曲げに対する剛性を調整することによって達成され、シャフトの捩じりおよび曲げ振動を減衰させる。さらに、選択されたシャフトの捩じりおよび曲げ振動モードを減衰させるため、2つ又はそれ以上のダンパーをシャフト内の異なる場所で使用してもよい。
【0017】
このようなダンパーの従来技術に対するアドバンテージは一目瞭然であり、なぜなら、1つあるいは複数のダンパーが、要求される減衰効果を提供するため、シャフトの長さに沿って任意の位置に配置可能であるためである。さらに、ダンパーがシャフト内に完全に納められており、これにより、作動中における機械的損傷や破損の可能性が取り除かれる。シャフトの曲げおよび捩じり振動を減少させることは、破損に関係する疲労を減少させ、シャフトの寿命を延ばす。
【0018】
さらに、レリーフ面32の形状、慣性部材30の質量、および慣性部材30の物理的寸法は、それぞれ変更可能であり、特定のシャフトの振動数および振動モードを減衰させる要求に適合させるように選択される。慣性部材は幅Wを有する。慣性部材30を通って延びる中心ボア34は、直径dを有する。
【0019】
もう一方の実施形態では、慣性部材30は、中心ボア34を有しておらず、中まで同一物質の本体を有する。これによってユーザは、振動パラメータに適応させるように慣性部材の質量を最大化することができる。
【0020】
ダンパーの慣性および振動数は、システム形態の質量(system modal mass)、シャフト本来の振動数、およびシリンダ内の燃焼によって生じるエンジンの振動に基いて計算される。慣性部材は、任意の金属性または非金属性の材料を含めればよく、あるいはエンジンの作動条件に適したこれら材料の均等物を含むようにするのがよい。
【0021】
エラストマー剛性は、ゴム状弾性部材の形状を変えることによって調整可能である。エラストマー剛性を変えることにより、ダンパーによって減衰される振動数を調整することが出来る。また、シャフトと慣性質量との間におけるエラストマー圧縮率を、非圧縮時の厚さに対しておよそ5%〜50%の範囲に内で変えることにより、振動数が調整可能である。
【0022】
本実施形態のシャフトダンパーのアッセンブリによれば、シャフト内の慣性部材に対しゴム状弾性部材が簡素に押される。
【0023】
図3は、溝付き慣性部材表面を示す詳細図である。その他の実施形態において、慣性質量は、シャフトの中心線SCL、すなわち慣性質量の中心線MCLに沿って平行に延びる溝33のある断面形状を有する。この溝は、慣性質量30とゴム状弾性部材20との間に物理的な固定を径方向に沿って生じさせる。
【0024】
当業者が認めるように、本発明は、従来のダンパーに比べ、慣性部材のシャフト内における配置場所に関してはるかに調整しやすく、長さ方向に関してより小型化される。また、設計および構成に関して非常に簡素化される。
【0025】
発明の態様がここに記載されているが、ここに記載された発明の意図および範囲から離れることなく構成および関連するパーツにおいてバリエーションが作り出されることは、当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態であるシャフトダンパーの断面側面図である。
【図2】本実施形態であるシャフトダンパーの詳細図である。
【図3】溝付き慣性部材表面を示す詳細図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボアを形成する内面を有する外部部材と、
前記ボア内部に配置され、外面を有する慣性部材と、
シャフトの振動を減衰させるため、前記外部部材の内面と前記慣性部材の外面との間で圧縮される弾性部材と
を備えたことを特徴とするシャフト。
【請求項2】
前記慣性部材の外面に形成される、物理的に前記弾性部材と係合させるためのレリーフをさらに有することを特徴とする請求項1に記載のシャフト。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記内面と前記外面との間において、非圧縮時の厚さの5%から50%の範囲で圧縮されていることを特徴とする請求項2に記載のシャフト。
【請求項4】
前記慣性部材が、曲げ振動を減衰させることを特徴とする請求項2に記載のシャフト。
【請求項5】
前記慣性部材が、シャフト中心線に沿って平行に延びる溝を有することを特徴とする請求項1に記載のシャフト。
【請求項6】
複数の弾性部材と係合する複数の慣性部材をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のシャフト。
【請求項7】
外面を有する慣性部材と、
前記外面と係合する弾性部材とを備え、
前記弾性部材が、シャフトボア表面と係合するための弾性部材外面を有することを特徴とするシャフトダンパー。
【請求項8】
前記慣性部材の外面において、前記弾性部材と物理的に係合するための断面形状が形成されることを特徴とする請求項7に記載のシャフトダンパー。
【請求項9】
前記慣性部材の断面形状が、慣性質量中心線に沿って平行に延びる溝を有することを特徴とする請求項7に記載のシャフトダンパー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−504048(P2006−504048A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−562499(P2003−562499)
【出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/001376
【国際公開番号】WO2003/062664
【国際公開日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】