説明

シャワーホース

【課題】 耐久性に優れ、不快音の発生を抑えることができ、しかも使い勝手も良好なシャワーホースを提供する。
【解決手段】フレキシブル管21内に、ポリエチレン製のチューブを通す。チューブ内に水蒸気を入れて加熱及び加圧すると、ポリエチレン製のチューブが膨張し、これによりフレキシブル管21の内周面41にポリエチレン製のチューブが密着し、樹脂コーティング25ができ上がる。樹脂コーティング25を、フレキシブル管21の内周面の螺旋溝39内に大きく突出しないように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台等の水回り設備に構成されるシャワー装置の引き出し自在なシャワーホースに関する。
【背景技術】
【0002】
最近は、シャワー装置が設けられた洗面台等の水回り設備が普及している。このようなシャワー装置としては、開閉栓を有する水栓本体と、後端側が水回り設備のキャビネット内に収容され、先端側が水栓本体に通されて、この水栓本体から外側に引き出し自在となるように設けられたシャワーホースと、このシャワーホースの先端部に取り付けられたシャワーヘッドと、を有するように構成されたものが一般的である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このように構成されたシャワー装置では、不使用時に邪魔にならないように、シャワーホースを水栓本体内に収容しておくことができ、使用の際にはシャワーヘッドを持ち、シャワーホースを引き出して使用することができるので、洗髪やシンクの掃除等を楽に行うことができる。
【0003】
そして、このシャワー装置で用いられるシャワーホースは通常、金属製のフレキシブル管にゴム製の通水管を通した二重管構造になっている。フレキシブル管は、両側部に係合部を有する帯材を螺旋巻きして、帯材の隣り合う係合部同士を係合させていくことによって得られ、係合部個所が螺旋状に延びる外側に突出した突条を形成して、管全体が可撓性を有するように螺旋状又は蛇腹状に構成されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3149482号公報
【特許文献2】特開2003−64739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなシャワーホースでは、シャワー装置の開閉栓を開放して水を導き入れると、水はゴム製の通水管内を通過するので、フレキシブル管の係合個所から水が漏れるといったことはないが、通水管は通水時の水圧で膨らみ、フレキシブル管の内周面に押し付けられることとなる。ところが、フレキシブル管の係合部個所は、外側に突出した螺旋状に延びる突条を形成しているので、フレキシブル管の内周面に押し付けられた通水管は、この突条(螺旋溝)内に突出するように膨張変形してしまう。そうすると、通水管が螺旋溝の開口端縁と強く接触して擦れ、裂けてしまうといったこともまれではなく、シャワーホースの寿命が短くなるおそれがある。
【0006】
また、シャワーヘッドを持ってシャワーホースを引き出すとき及び引き出したシャワーホースを収納するときには、シャワーホースが通されている水栓本体のホース用開口部の縁部とフレキシブル管の外周部とが擦れることが多く、この場合には、フレキシブル管が振動して耳障りな接触音が連続して発生することとなる。したがって、利用者はシャワー装置の使用のたびに不快に感じてしまい、シャワー装置の商品価値が低下するおそれすらある。
【0007】
これに対して、通水管の外周部に発泡スポンジ製のシール層を形成しておき、このシール層がフレキシブル管の内周面に密着するように、通水管をフレキシブル管に挿通させて構成したシャワーホース(特許文献1参照)や、通水管とフレキシブル管との間の隙間全体を樹脂で埋めてしまう構成のシャワーホース(特許文献2参照)なども開示されている。このような構成のシャワーホースを用いれば、結果的には、通水管がフレキシブル管の内周面の螺旋溝内に突出するといったことはなく、また、シール層や樹脂層がフレキシブル管に発生した振動を減衰させるので、不快な擦れ音の発生も防止できる。
【0008】
しかしながら、フレキシブル管と通水管との間にシール層や樹脂層を充填して構成したシャワーホースでは、フレキシブル管、シール層等及び通水管が一体的な構造となるために、シャワーホースに要求される可撓性が阻害され、使い勝手が低下する場合も多い。
【0009】
そこで、本発明は、耐久性に優れ、不快音の発生を抑えることができ、しかも使い勝手も良好なシャワーホースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するための本発明のシャワーホースは、蛇腹状に形成されて可撓性を備えた金属製のフレキシブル管と、このフレキシブル管内に通されたゴム製又は樹脂製の通水管と、を有するシャワーホースであって、前記フレキシブル管の内周面には、例えば全長にわたって、筒状の樹脂コーティングが施され、前記通水管が通水時に膨張して前記樹脂コーティングに押し付けられるように構成されているものである。樹脂コーティングは、例えばフレキシブル管の内周面全体に施されることにより筒状に形成される。樹脂コーティングはまた、例えばフィルム状の樹脂チューブをフレキシブル管の内周面に密着させることにより形成される。樹脂コーティングはさらに、例えば均一の又はほぼ均一の径を有するように形成され、あるいは、例えばフレキシブル管の内周面に設けられた溝部(例えば螺旋溝)に蓋をするように、又は溝部(例えば螺旋溝)内に大きく突出しないように形成される。本発明では、樹脂コーティングに、可撓性、耐久性及び加工性に優れたポリエチレン(PE)を用いることができる。
【0011】
通水管には、水道水に含まれる塩素に対する耐性を有する熱可塑性エラストマー(TPE)を用いることができる。TPEとしては、スチレンブタジエン系(TPS)、オレフィン系(TPO)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)を選択することができ、さらには、塩化ビニル系(TPVC)、ポリアミド系(TPEA)を使用することもできる。あるいは、通水管にはフッ素ゴムを用いることもできる。オレフィン系熱可塑性エラストマーは水道水に含まれる塩素に対する高い耐性を有し、かつ、フッ素ゴムに比べて安価である。通水管は、通水時に膨張して樹脂コーティングに押し付けられるように構成されている。したがって、内部流体により加圧されていない通常の状態では、樹脂コーティングの内径よりも小さな外径になっていて、通水管と樹脂コーティングの間には隙間があいている。
【0012】
本発明のシャワーホースは、例えば次の方法により製造できる。
蛇腹状に形成されて可撓性を備えた金属製のフレキシブル管と、このフレキシブル管内に通されたゴム製又は樹脂製の通水管と、を有するシャワーホースの製造方法であって、
前記フレキシブル管の内側にフィルム状の樹脂チューブを配置し、
前記樹脂チューブの内側に加圧加熱流体を供給し、全長にわたって均一の又はほぼ均一の径を有するように、この樹脂チューブを前記フレキシブル管の内周面に押し付け、
前記フレキシブル管の内周面に前記樹脂チューブが押し付けられてから、前記樹脂チューブを冷却し、
その後、前記樹脂チューブの内側に通水管を配置する、シャワーホースの製造方法。
樹脂チューブの冷却によりフレキシブル管の内周面に筒状の樹脂コーティングが形成される。樹脂コーティングにより不快音は抑えられ、通水管の溝部(例えば螺旋溝)内への突出あるいは溝部(例えば螺旋溝)の開口端縁又は開口端部との直接接触が防止される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のシャワーホースは、十分な可撓性を有するとともに、通水管が簡単に傷付くといったことがなく、しかも良好な使用感を確保できる構造を備えたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明に係るシャワーホースを備えたシャワー装置を示す一部破断側面図、図2はシャワーホースの構成を説明するための断面図である。
【0016】
洗面台1には、本発明に係るシャワーホース3を備えたシャワー装置5が設置されている。このシャワー装置5は、洗面台1のシンク(図示せず)上部の台部7に設けられた水栓本体9と、後端側が洗面台1の下側に配置されたキャビネット(図示せず)内に収容され、先端側が水栓本体9の放水ブランチ11内に通されて、この放水ブランチ11のホース用開口部13より外側に引き出すことができるように配置されたシャワーホース3と、このシャワーホース3の先端部に取り付けられ、放水ブランチ11のホース用開口部13の外周に嵌められて保持されたシャワーヘッド15と、を有していて、シャワーヘッド15を持ってシャワーホース3の先端側を外側に引き出したり、外側に引き出したシャワーホース3を、水栓本体9内に押し込むことにより収容したりできるように構成されている。
【0017】
また、水栓本体9の外端部には、一端が洗面台1のキャビネット内に配管された水道管(図示せず)に接続され、水栓本体9内を通り、水栓本体9の外端部で折り返してキャビネット内に戻り、そして他端がシャワーホース3の後端部に接続された給水管17を開閉するレバー型の開閉栓19が設けられている。
【0018】
この給水管17に接続される、水栓本体9内に配置されているシャワーホース3は、ステンレス製のフレキシブル管21と、このフレキシブル管21内に通されて配置された樹脂製の通水管23と、を有して構成されていて、フレキシブル管21の内周面には、長さ方向全長に亘って、PE製の樹脂コーティング25が施されている。樹脂コーティング25は、全長にわたり、均一な又はほぼ均一な径を有している。より詳しくは、樹脂コーティング又は樹脂コーティング層25は、フレキシブル管21の第1のプレート部33の内周面のみに密着していて、第2のプレート部37の内周面には密着していないので、樹脂コーティング層25が傷付くといったことがない(図2参照)。
【0019】
フレキシブル管21は、両側部に係合部27、29が設けられた断面略S字状の帯材31を、隣り合う係合部27、29同士を順次係合させて螺旋巻きすることによって形成されている。帯材31はSUS304製であり、第1のプレート部33と、この第1のプレート部33の幅方向一端から多少幅方向一方側に傾斜して立ち上がる立ち上がり部35と、この立ち上がり部35の外端(上端)から、第1のプレート部33に平行で幅方向一方側に広がる第2のプレート部37と、を一体的に有するように折り曲げ加工されていて、係合部27は、第2のプレート部37の幅方向一端から、立ち上がり部35に平行で倒れ込むように一体的に形成され、係合部29は、第1のプレート部33の幅方向他端から、断面半円形状に湾曲して外側に突出するように一体的に形成されている。そして、隣り合う係合部27、29の係合は、係合部29が係合部27の内側に入り込むようにして行われる。したがって、フレキシブル管21は、第2のプレート部37個所で山となり、第1のプレート部33個所で谷となる螺旋型の蛇腹形状を有している。そして、立ち上がり部35と係合部29との軸方向の間隔は、通常状態において、立ち上がり部35と係合部27との軸方向の間隔のほぼ半分となっている。したがって、フレキシブル管21には、第2のプレート部37の幅方向他方側の内側で螺旋溝39が形成されている。なお、フレキシブル管21の外径φ(第2のプレート部37箇所の外径)は13.8mmに設定され、内径φ(第1のプレート部33箇所の内径)は11.2mmに設定されている。また、フレキシブル管21を形成するのに、一枚の帯材31を用いることができ、あるいは例えば、2枚又は複数枚の帯材31を軸方向に並べて使用することもできる。
【0020】
通水管23は、非加圧時で、内径φが8.0mm、外径φが9.3mm、肉厚0.65mmに設定されていて、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)であるサントプレーン(登録商標:エーイーエス・ジャパン社製)を用いて形成されているが、その他のTPO、またはTPS、TPEE、TPU、TPVC及びTPEAなどの他のTPE、あるいは、フッ素ゴムを用いることもできる。
【0021】
筒状の樹脂コーティング25は、フィルム状のPE製チューブを、フレキシブル管21の内周面41の全長にわたって圧接させることにより形成されていて、全体的に内周面41の内径11.2mmとほぼ同一の外径φを有するように設けられているが、螺旋溝39位置では、螺旋溝39内に多少入り込むように変形している(溝突起42参照)。すなわち、溝突起42が、螺旋溝39の両開口端部又は両開口端縁45よりも径方向外側に若干突出している。PE製チューブを強固に圧接させると、フレキシブル管21の柔軟性に支障をきたす場合があるが、螺旋溝39内に多少入り込むようにPE製チューブが変形している程度であれば、フレキシブル管21の柔軟性は失われず、しかも、樹脂コーティング25が、例えば軸方向にずれてしまうといったことが防止されるという利点が得られる。樹脂コーティング25の肉厚は0.5mmに設定されているので、樹脂コーティング25も含めたフレキシブル管21の内径φは、通水管23の外径よりも若干大きな10.6mmとなっている。
【0022】
図3はフレキシブル管21に樹脂コーティング25を形成する工程を説明するための図である。
【0023】
このような構成のシャワーホース3は、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、フレキシブル管21内に、このフレキシブル管21の内径よりも若干小さい外径の、かつ、フレキシブル管21よりも長く形成されたPE製チューブ43を通し(図3a参照)、このチューブ43の長さ方向両端部がそれぞれ、フレキシブル管21の長さ方向両端部よりも外側に突出するように配置する。
【0024】
次に、チューブ43の一端部を閉塞し、他端部からチューブ43内に水蒸気を供給する。そうすると、チューブ43は、水蒸気によって加熱されて軟化し、かつ、加圧されて膨張し(図3b参照)、フレキシブル管21の第1のプレート部33の内面に押し付けられた状態となる(図3c参照)。なお、このとき、チューブ21が螺旋溝39内に大きく入り込むことがないように、水蒸気圧を適切に調整する。
【0025】
このようにしてチューブ43を膨張させて、フレキシブル管21の内周面41に押し付けたら、水蒸気の供給を止め、ファン等を用いてチューブ43を冷却し、フキシブル管21の内周面に樹脂コーティング25を形成する。樹脂コーティング25は螺旋溝39の両開口端部又は両開口端縁45、45間(図2参照)に被さって螺旋溝39又は螺旋溝39の開口部を塞いでいる。
【0026】
その後、フレキシブル管21よりも外側に突出しているチューブ43の両端部分を、フレキシブル管21に合わせて切除し、所定の長さ寸法で形成された通水管23を、形成された樹脂コーティング25内に配置する。通水管23の外径は、樹脂コーティング25が形成されたフレキシブル管21の内径よりも若干小さいので、通水管23の配置は比較的簡単に行える。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のシャワーホースを用いれば、快適な使用感の、かつ、寿命が長い一般家庭用のシャワー装置などを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るシャワーホースを備えたシャワー装置を示す一部破断側面図である。
【図2】シャワーホースの構成を説明するための断面図である。
【図3】フレキシブル管に樹脂コーティングを形成する工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
3 シャワーホース
15 シャワーヘッド
21 フレキシブル管
23 通水管
25 樹脂コーティング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹状に形成されて可撓性を備えた金属製のフレキシブル管と、このフレキシブル管内に通されたゴム製又は樹脂製の通水管と、を有するシャワーホースであって、
前記フレキシブル管の内周面には、筒状の樹脂コーティングが施され、
前記通水管が通水時に膨張して前記樹脂コーティングに押し付けられるように構成されている、ことを特徴とするシャワーホース。
【請求項2】
前記樹脂コーティングはポリエチレン製である、ことを特徴とする請求項1記載のシャワーホース。
【請求項3】
前記通水管は熱可塑性エラストマー製である、ことを特徴とする請求項1又は2記載のシャワーホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−176952(P2006−176952A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368085(P2004−368085)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】