説明

シュードモナス・スピーシーズ6−19由来のPHA合成酵素変異体及びそれを用いたラクテート重合体または共重合体の製造方法

本発明は、ラクチル−CoAを基質として利用して、ラクテート重合体及び/又は共重合体を合成しうるシュードモナス・スピーシーズ6−19(Pseudomonas sp.6-19, KCTC 11027BP)由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素(PHA synthase)の変異体に関するものである。また、本発明はこのような合成酵素変異体を利用することを特徴とするラクテート重合体及び/又は共重合体の製造方法に関するものである。本発明に係るシュードモナス・スピーシーズ6−19由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体は、従来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が基質として使用するのに困難であったラクチル−CoAを基質として使用して、ラクテート重合体及び/又は共重合体を高効率で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクチル−CoAを基質として用いて、ラクテート重合体(lactate polymer)及び/又はラクテート共重合体(lactate copolymer)を合成しうる、シュードモナス・スピーシーズ6−19(Pseudomonas sp.6−19)由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体に関する。また、本発明は、このようなポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体を利用することを特徴とするラクテート重合体及び/又は共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリラクテート(PLA)は、ラクテート(lactate)から由来した代表的な生分解性重合体であり、汎用高分子あるいは医療用高分子としての応用性が大きい。現在、PLAは微生物発酵により生産されたラクテートを重合して製造されているが、ラクテートの直接重合によっては低分子量(1,000〜5,000ダルトン)のPLAのみが生成される。高分子量(>100,000ダルトン)のPLAを合成するためには、連鎖カップリング剤(chain coupling agent)を利用して、ラクテートの直接重合で得られた低分子量のPLAを重合する方法を利用することができる。しかし、有機溶剤や連鎖カップリング剤の添加によって高分子量のPLAを得る工程が複雑になり、またこれらを除去することが容易ではないという短所がある。現在、商用化されている高分子量PLA生産工程は、ラクテートをラクチド(lactide)に転換した後、ラクチド環の開環縮合反応を通してPLAを合成する方法が使われている。
化学合成により、ラクテートを用いてPLAを合成する場合、PLA重合体(homopolymer)は容易に収得することができる。しかし、様々なモノマー単位(unit)を有するPLA共重合体の合成は難しく、商業的に効用性が非常に劣るという短所がある。
一方、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は過度の炭素源が存在しながら、リン、窒素、マグネシウム、酸素などの他の栄養分が不足する時、微生物がエネルギーや炭素源貯蔵化合物としてその内部に蓄積するポリエステルである。PHAは、既存の石油に由来した合成高分子に似た物性を有しながら、完全な生分解性を示すため、既存の合成プラスチックに代わる物質として認識されている。
微生物でPHAを生産するためには、微生物の代謝産物をPHA単量体に転換する酵素と、PHA単量体を利用してPHA重合体を合成するPHA合成酵素が必須的である。微生物を利用してPLA及びラクテート共重合体を合成する時も、同様のシステムが必要とされるので、元来のPHA合成酵素の基質であるヒドロキシアシル−CoAを提供しうる酵素以外に、さらにラクチル−CoAを提供しうる酵素が必要とされる。
【0003】
そこで、本発明者らはラクチル−CoAを提供するために、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼを使用するシステムを利用して、PLA及びラクテート共重合体の合成に成功した(特許文献1)。しかし、2位においてヒドロキシル化(hydroxylation)されたヒドロキシアルカノエートに対するPHA合成酵素の反応性は非常に低かった。in vitro活性測定を通してPHA合成酵素のラクチル−CoAに対する反応性を分析した報告はあったが、上述した問題点のようにラクチル−CoAに対するPHA合成酵素の反応性は非常に微弱であると知られていた(非特許文献1、2、3)。従って、ラクチル−CoAを効率的に利用できないPHA合成酵素を利用してPLA及びラクテート共重合体を合成する時には合成効率が非常に低くならざるを得ない。即ち、2位の炭素位置がヒドロキシル化されたヒドロキシアルカノエートであるラクテートはPHA合成酵素の基質特異性に適しないために、効率的にPLA及びラクテート共重合体を合成するためには、ラクチル−CoAを効率的に利用できるPHA合成酵素が非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許出願公開第10−2006−0121555号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zhang et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 56:131, 2001
【非特許文献2】Valentin and Steinbuchel, Appl. Microbiol. Biotechnol., 40:699, 1994
【非特許文献3】Yuan et al. Arch Biochem Biophys. 394:87, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の主な目的は、ラクチル−CoAを基質として効率的に利用できるPHA合成酵素を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記ラクチル−CoAを基質として利用できるPHA合成酵素及びプロピオニル−CoAトランスフェラーゼの遺伝子を含有する植物または細胞を利用して、PLA及びラクテート共重合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、配列番号10のアミノ酸配列で481位のアミノ酸であるグルタミンが変異されたことを特徴とするラクチル−CoAを基質として利用してラクテート重合体またはラクテート共重合体を合成しうるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体を提供する。
【0008】
好ましくは、本発明は、上記変異体が130位のアミノ酸であるグルタミン酸、325位のアミノ酸であるセリン及び477位のアミノ酸であるセリンよりなる群から選択された一つ以上のアミノ酸がさらに変異されたことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体を提供する。
【0009】
より好ましくは、本発明は、配列番号10のアミノ酸配列で、下記変異:
a)S325T及びQ481M;
b)E130D及びQ481K;
c)S325T及びQ481K;
d)E130D及びQ481M;
e)E130D及びQ481R;
f)E130D、S325T及びQ481M;
g)E130D、S325T及びQ481K;
h)E130D、S477R及びQ481K;
i)E130D、S477R及びQ481M;
j)E130D、S477R及びQ481R;
k)E130D、S477H及びQ481K;
l)E130D、S477H及びQ481M;
m)E130D、S477H及びQ481R;
n)E130D、S477F及びQ481K;
o)E130D、S477F及びQ481M;
p)E130D、S477F及びQ481R;
q)E130D、S477Y及びQ481K;
r)E130D、S477Y及びQ481M;
s)E130D、S477Y及びQ481R;
t)E130D、S325T、S477R及びQ481M;
u)E130D、S325T、S477R及びQ481K;
v)E130D、S325T、S477F及びQ481M;
w)E130D、S325T、S477G及びQ481M;又は
x)E130D、S325T、S477F及びQ481K
を有するアミノ酸配列を有することを特徴とするラクチル−CoAを基質として利用して、ラクテート重合体またはラクテート共重合体を合成しうるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体を提供する。
【0010】
本発明者らは、シュードモナス・スピーシーズ6−19(Pseudomonas sp.6-19)のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の変異体を使用する場合、ラクチル−CoAを基質として使用してラクテート重合体及び/又は共重合体を高効率で製造できることを確認し、本発明を完成した。
【0011】
また、本発明は、上記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体をコードする遺伝子を提供する。
さらに、本発明は、上記遺伝子を含有するラクテート重合体または共重合体合成用組換えベクターを提供する。
より好ましくは、本発明は、上記組換えベクターがプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(pct)をさらに含有することを特徴とする組換えベクターを提供する。
【0012】
また、本発明は、上記組換えベクターで形質転換された細胞または植物を提供する。
さらに、本発明は、プロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子を有しない細胞または植物を上記組換えベクターで形質転換して得られることを特徴とする細胞または植物を提供する。
さらにまた、本発明は、上記細胞または植物を培養または栽培することを特徴とするラクテート重合体または共重合体の製造方法を提供する。
より好ましくは、本発明は、上記培養または栽培が、3−ヒドロキシブチレート(3−HB)を含有する環境で遂行され、製造された共重合体が3−ヒドロキシブチレート単量体単位及びラクテート単量体単位を含む共重合体であることを特徴とする製造方法を提供する。
【0013】
本発明において、上記共重合体は、単量体の種類が2個の二重合体、単量体の種類が3個の三重合体、単量体の種類が4個の四重合体などを含む意味である。
本発明において、上記ヒドロキシアルカノエートは、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシブチレート、炭素数が6〜14の中鎖長の(D)−3−ヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、4−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシデカン酸、5−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシ−4−ペンテン酸、3−ヒドロキシ−4−trans−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−4−cis−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−5−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−6−trans−オクテン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−オクテン酸、3−ヒドロキシ−7−オクテン酸、3−ヒドロキシ−8−ノネン酸、3−ヒドロキシ−9−デセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−7−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−5,8−cis−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸、3−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−8−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−9−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−7−メチル−6−オクテン酸、リンゴ酸、3−ヒドロキシコハク酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアジピン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアゼライン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシピメリン酸−プロピルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−ベンジルエステル、3−ヒドロキシ−8−アセトキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−9−アセトキシノナン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシブチレート、フェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸、フェノキシ−3−ヒドロキシヘプタン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシオクタン酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシブチレート、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、para−ニトロフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸、3−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルブチレート、3,12−ジヒドロキシドデカン酸、3,8−ジヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4,5−エポキシデカン酸、3−ヒドロキシ−6,7−エポキシドデカン酸、3−ヒドロキシ−8,9−エポキシ−5,6−cis−テトラデカン酸、7−シアノ−3−ヒドロキシヘプタン酸、9−シアノ−3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシ−7−フルオロヘプタン酸、3−ヒドロキシ−9−フルオロノナン酸、3−ヒドロキシ−6−クロロヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−クロロオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−ブロモヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸、3−ヒドロキシ−11−ブロモウンデカン酸、3−ヒドロキシ−2−ブテン酸、6−ヒドロキシ−3−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−2−メチルブチレート、3−ヒドロキシ−2−メチル吉草酸及び3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−5−ヘプテン酸からなる群から選択された一つ以上である。
【0014】
また、本発明は上記細胞または植物を培養または培養することを特徴とするラクテート重合体またはラクテート共重合体の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のシュードモナス・スピーシーズ6−19由来ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素遺伝子を含む組換え発現ベクターを作製する過程を示す図である。
【図2】phaC1Ps6-19合成酵素とSCL変異体(phaC1Ps6−19200及びphaC1Ps6−19300)を含む組換えベクター(pPs619C1−ReAB、pPs619C1200−ReAB及びpPs619C1300−ReAB)で形質転換された大腸菌をPHBが合成される条件で培養した後、FACS(Florescence Activated Cell Sorting)分析した結果である。
【図3】PHA合成酵素とCP−PCTが同時に発現される恒常的発現ベクターを示す簡単な図である。
【図4】本発明のシュードモナス・スピーシーズ6−19由来PHA合成酵素遺伝子と、SCL変異体遺伝子と、CP−PCT遺伝子とを含む組換え発現ベクターを作製する過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、ベクターとは、適した宿主内でDNAを発現させることができる、適した調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含有するDNAコンストラクトを意味する。ベクターはプラスミド、バクテリオファージ、または単純なゲノム挿入物であってもよい。適当な宿主に形質転換されれば、ベクターは宿主ゲノムにかかわりなく複製して機能するか、または場合によっては、ゲノムそれ自体に統合され得る。プラスミドが現在ベクターの最も通例的に使われる形態であるから、本発明でプラスミドとベクターは同じ意味で使われる。しかし、本発明は当業者に既に知られた、または知られることになる、同等の機能を有するベクターの別の形態も含む。
【0017】
発現調節配列とは、特定の宿主生物で作動可能に連結されたコード配列の発現に必須的なDNA配列を意味する。この調節配列は転写を実施するためのプロモーター、その転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を調節する配列を含む。例えば、原核生物に適した調節配列はプロモーター、任意のオペレーター配列及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーがこれに含まれる。プラスミドで遺伝子の発現量に最も影響を及ぼす因子はプロモーターである。高発現用のプロモーターとしてSRαプロモーターとサイトメガロウイルス(cytomegalovirus)由来プロモーターなどが好ましく使われる。
【0018】
本発明のDNA配列を発現させるために非常に多様な発現調節配列の中のどのようなものでもベクターに使われることができる。有用な発現調節配列の例には、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期及び後期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、T3及びT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコードタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセラートキナーゼまたは他の解糖酵素に対するプロモーター、上記ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母α−交配システムのプロモーター及び原核生物または真核生物またはこれらのウイルスの遺伝子の発現を調節すると知らされたコンストラクト配列及びこれらの種々の組み合わせが含まれる。
【0019】
核酸は別の核酸配列と機能的関係に配置される時、“作動可能に連結(operably linked )”される。これは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が、調節配列に結合される時、遺伝子発現を可能にする方式で連結された遺伝子及び調節配列であってもよい。例えば、プレ配列(pre-sequence)または分泌リーダー(leader)に対するDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結され;またはリボソーム結合部位は配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結され;またはリボソーム結合部位は翻訳を容易にするように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、“作動可能に連結された”とは、連結されたDNA配列が接触し、また分泌リーダーの場合、接触し、リーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサー(enhancer)は接触する必要がない。これらの配列の連結は、便利な制限酵素部位でライゲーションにより遂行される。そのような部位が存在しない場合、常法による合成オリゴヌクレオチドアダプター(oligonucleotide adaptor)またはリンカー(linker)を使用する。
【0020】
本願発明で使われた用語、“発現ベクター”とは通常異種のDNAの断片が挿入された組換えキャリア(recombinant carrier)として一般的に二本鎖のDNAの断片を意味する。ここで、異種DNAは宿主細胞から天然的に見つからないDNAであるヘテロ型DNAを意味する。発現ベクターは、一旦宿主細胞内にあれば、宿主染色体DNAに関係なく複製することができ、ベクターの数個のコピー及びその挿入された(異種)DNAが生成され得る。
【0021】
当業者において公知であるように、宿主細胞で形質転換された遺伝子の発現水準を高めるためには、該当遺伝子が選択された発現宿主内で機能を発揮する転写及び翻訳発現調節配列に、作動可能に連結されなければならない。好ましくは、発現調節配列及び該当遺伝子は、細菌選択マーカー及び複製起点(replication origin)を共に含んでいる一つの発現ベクター内に含まれる。発現宿主が真核細胞の場合には、発現ベクターは真核発現宿主内で有用な発現マーカーをさらに含まなければならない。
【0022】
本発明において、組換えベクターとしてはプラスミドベクター、バクテリオファージベクター、コスミドベクター、YAC(酵母人工染色体、Yeast Artificial Chromosome)ベクターを含む様々なベクターを導入することができる。本発明の目的上、プラスミドベクターを利用するのが好ましい。そのような目的のために用いられる典型的なプラスミドベクターは、(a)宿主細胞当たり数百個のプラスミドベクターを含むように、複製が効率的に行われるようにする複製起点、(b)プラスミドベクターで形質転換された宿主細胞を選択できるようにする抗生剤耐性遺伝子及び(c)外来DNA断片を挿入できる制限酵素切断部位を含む構造;を有している。適切な制限酵素切断部位が存在しなくても常法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを使用すれば、ベクターと外来DNAを容易にライゲーションすることができる。
【0023】
本発明に係る組換えベクターは、常法によって適切な宿主細胞に形質転換することができる。本発明でより好ましい宿主細胞は、バクテリア、酵母及び黴などが可能であるが、これらに制限されるものではない。本発明で好ましい宿主細胞は原核細胞であり、大腸菌がより好ましい。適した大腸菌は、E.coli菌株DH5a、E.coli菌株JM101、E.coli K12菌株294、E.coli菌株W3110、E.coli菌株X1776、E.coli XL1−Blue(Stratagene社製)、E.coli Bなどを含む。しかし、FMB101、NM522、NM538及びNM539のようなE.coli菌株及び他の原核生物の種(speices)及び属(genera)などもまた使用できる。上述したE.coliの他にも、アグロバクテリウムA4のようなアグロバクテリウム属の菌株、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)のようなバシリ属(bacilli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)のようなさらに別の腸内細菌及び様々なシュードモナス(Pseudomonas)属の菌株が宿主細胞として利用でき、本発明は上記記載した例に制限されるものではない。
また、原核細胞の形質転換はSambrook et al., supraの1.82セクションに記載されたカルシウムクロリド方法を用いて容易に達成できる。また、選択的にエレクトロポレーション法(Neumann et al., EMBO J., 1: 841(1982))もこのような細胞を形質転換するのに用いることができる。
【0024】
本発明の転換酵素の遺伝子及び合成酵素の遺伝子を含有する植物体を製造するための植物体の形質感染は、アグロバクテリウムやウイルスベクターなどを用いた常法によって達成できる。例えば、本発明に係る遺伝子を含有する組換えベクターでアグロバクテリウム属の微生物を形質転換させた後、上記形質転換されたアグロバクテリウム属の微生物を対象植物の組織などに感染させ、形質感染された植物を得ることができる。より具体的に、(a)対象植物の外植片(explant)を前培養(pre-culture)した後、これを上記形質転換されたアグロバクテリウムと共培養して形質感染させる工程;(b)形質感染された外植片をカルス誘導培地で培養してカルスを収得する工程;及び(c)得られたカルスを切断し、これをシュート誘導培地で培養してシュートを形成させる工程;を経て形質感染された植物を製造できる。
本発明で、“外植片(explant)”とは、植物体から切断した組織の切片を意味するもので、子葉(cotyledon)または胚軸(hypocotyl)を含む。本発明の方法に使われる植物の外植片には、子葉または胚軸を使用することができ、植物の種子を消毒して洗浄した後、MS培地で発芽させて得た子葉を使用することがさらに好ましい。
本発明で利用可能な形質感染対象植物としてはタバコ、トマト、唐辛子、豆、稲、トウモロコシなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。また、形質転換に使われる植物が有性繁殖植物であっても、組織培養などにより無性的に繰返生殖させることができることは当業者にとって自明である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためだけであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
特に、以下実施例では、PHA合成酵素変異体を用いてラクテート共重合体を合成するのに、3−ヒドロキシブチレート(3−HB)を添加し、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)(P(3HB−co−LA))を合成することだけが記載されているが、3−HB以外のヒドロキシアルカノエートを添加し、上記ヒドロキシアルカノエートとラクテートの共重合体を製造することができることは当業者にとって自明なことである。
【0026】
<実施例1>シュードモナス・スピーシーズ6−19由来のPHA合成酵素遺伝子のクローニング及び発現ベクターの作製
本発明に使われたシュードモナス属(KCTC 11027BP)由来PHA合成酵素(phaC1Ps6−19)遺伝子を分離するために、Pseudomonas sp.6−19の全体DNAを抽出し、phaC1Ps6−19遺伝子配列(Ae-jin Song, Master's Thesis, Department of Chemical and Biomolecular Engineering, KAIST, 2004)に基づいた配列番号1及び2の塩基配列を有するプライマーを作製し、PCRを遂行してphaC1Ps6−19遺伝子を得た。
配列番号1:5- GAG AGA CAA TCA AAT CAT GAG TAA CAA GAG TAA CG -3
配列番号2:5- CAC TCA TGC AAG CGT CAC CGT TCG TGC ACG TAC -3
PCR反応物をアガロースゲル電気泳動してphaC1Ps6−19遺伝子に該当する1.7kbpサイズの遺伝子断片を確認した。phaC1Ps6−19合成酵素の発現のために単量体供給酵素と合成酵素が共に発現されるオペロン形態の恒常的発現システムを導入した(図1)。
pSYL105ベクター(Lee et al., Biotech. Bioeng., 1994, 44:1337-1347)からラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutrophus)H16由来のPHB生産オペロンが含有されたDNA切片をBamHI/EcoRIで切断し、pBluescript II(Stratagene社製)のBamHI/EcoRI認識部位に挿入することによって、pReCAB組換えベクターを製造した。
pReCABベクターはPHA合成酵素(phaCRE)と単量体供給酵素(phaARE及びphaBRE)がPHBオペロンプロモーターにより恒常的に発現され、大腸菌でもよく作動すると知られている(Lee et al., Biotech. Bioeng., 1994, 44:1337-1347)。pReCABベクターをBstBI/SbfIで切断し、R.eutrophus H16 PHA合成酵素(phaCRE)を除去した後、上記で得たphaC1Ps6−19遺伝子をBstBI/SbfI認識部位に挿入することによってpPs619C1−ReAB組換えベクターを製造した(図1)。
【0027】
BstBI/SbfI認識部位がそれぞれ両端に一つずつ含まれたphaC1Ps6−19合成酵素遺伝子切片を作るために、まず、内在しているBstBI位置をSDM(site directed mutagenesis)方法でアミノ酸の変換無しに除去しており、BstBI/SbfI認識部位を追加するために、配列番号3及び4、配列番号5及び6、配列番号7及び8の塩基配列を有するプライマーを用いてオーバーラップPCRを遂行した。
配列番号3:5- atg ccc gga gcc ggt tcg aa - 3
配列番号4:5- CGT TAC TCT TGT TAC TCA TGA TTT GAT TGT CTC TC - 3
配列番号5:5- GAG AGA CAA TCA AAT CAT GAG TAA CAA GAG TAA CG - 3
配列番号6:5- CAC TCA TGC AAG CGT CAC CGT TCG TGC ACG TAC - 3
配列番号7:5- GTA CGT GCA CGA ACG GTG ACG CTT GCA TGA GTG - 3
配列番号8:5- aac ggg agg gaa cct gca gg - 3
上記作製したpPs619C1−ReAB組換えベクターのphaC1Ps6−19遺伝子塩基配列はシークエンスによって確認し、その結果を配列番号9に示した。これによりコードされるアミノ酸配列を配列番号10に示した。
上記遺伝子塩基配列の類似性を分析した結果、Pseudomonas sp.strain 61−3(Matsusaki et al., J. Bacteriol., 180:6459, 1998)由来phaC1と塩基配列で84.3%の相同性を有し、アミノ酸配列相同性は88.9%と上記2合成酵素が非常に類似した酵素であることを確認した。これらの結果から、本発明で得たphaC1Ps6−19合成酵素はType II PHA合成酵素であることを確認した。
上記phaC1Ps6−19合成酵素がPHBを合成するか否かを確認するために、pPs619C1−ReAB組換えベクターをE.coli XL1−Blue(Stratagene社製)に形質転換させ、これをPHB検出培地(LB agar、グルコース20g/L、ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、PHB生成は観察されなかった。
【0028】
<実施例2>シュードモナス・スピーシーズ6−19由来PHA合成酵素の基質特異性変異体の作製
多様な種類のPHA合成酵素の中で、Type II PHA合成酵素は比較的炭素数の長い基質を重合させるMCL−PHA(medium-chain-length PHA)合成酵素として知られている。このMCL合成酵素はラクテート重合体生産に非常に有用となることが期待されている。本発明で獲得したphaC1Ps6−19合成酵素と非常に相同性の高いPseudomonas sp.61−3由来phaC1合成酵素は、Type II合成酵素であるが、比較的広い範囲の基質特異性を有することが報告(Matsusaki et al., J. Bacteriol., 180:6459, 1998)されており、SCL−PHA(short-chain-length PHA)生産に適した突然変異体に関する研究結果が報告(Takase et al., Biomacromolecules, 5:480, 2004)されれている。これらの結果に基づいて、本発明ではSCL活性に影響を及ぼすアミノ酸位置3個所を配列アライメント解析を通して探し出し、配列番号11〜配列番号14のプライマーを用いたSDM方法を利用して、下記表1のようなphaC1Ps6-19合成酵素変異体を作った。
【0029】
【表1】

【0030】
配列番号11:5- CTG ACC TTG CTG GTG ACC GTG CTT GAT ACC ACC- 3
配列番号12:5- GGT GGT ATC AAG CAC GGT CAC CAG CAA GGT CAG- 3
配列番号13:5- CGA GCA GCG GGC ATA TC A TGA GCA TCC TGA ACC CGC- 3
配列番号14:5- GCG GGT TCA GGA TGC TCA TGA TAT GCC CGC TGC TCG- 3
配列番号15:5- atc aac ctc atg acc gat gcg atg gcg ccg acc- 3
配列番号16:5- ggt cgg cgc cat cgc atc ggt cat gag gtt gat- 3
【0031】
これらの組換えベクターをE.coli XL1−Blueに形質転換させ、これをPHB検出培地(LB agar、グルコース20g/L、ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、pPs619C1200−ReABで形質転換されたE.coli XL1−Blueと、pPs619C1300−ReABで形質転換されたE.coli XL1−BlueとのいずれもPHB生成を確認することができた。即ち、単量体供給酵素であるphaAREとphaBREによりグルコースから3HB−CoAが生成され、これを基質としてphaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体(phaC1Ps6−19200及びphaC1Ps6−19300)がPHBを合成したものである。定量的な分析のために、形質転換された組換え大腸菌XL1−Blueをグルコース(20g/L)が含まれたLB培地で、37℃で4日間培養した。培養された組換え大腸菌にスクロースショック(sucrose shock)を与えた後、ナイルレッド染色を行い、これをFACS分析した(図2)。
【0032】
野生型合成酵素を含むベクターであるpPs619C1−ReABベクターで形質転換された大腸菌XL1−Blueはナイルレッドにより染色されない反面、pPs619C1200−ReABで形質転換された大腸菌とpPs619C1300−ReABで形質転換された大腸菌XL1−Blueは細胞内に蓄積されたPHBがナイルレッドにより染色され、高い蛍光度を示した。また、培養菌体を遠心分離により回収し、80℃の乾燥器で48時間乾燥した後、ガスクロマトグラフィー分析を行って細胞内の合成されたPHB含量を測定した結果、pPs619C1200−ReABで形質転換させた大腸菌とpPs619C1300−ReABで形質転換させた大腸菌はPHB含量が乾燥細胞重量に対してそれぞれ29.7%(w/w)及び43.1%(w/w)であり、pPs619C1−ReABの場合は検出されなかった。
【0033】
<実施例3>シュードモナス・スピーシーズ6−19由来PHA合成酵素とプロピオニル−CoAトランスフェラーゼの発現が可能な組換え大腸菌の作製及びそれを用いたPLAまたはラクテート共重合体の製造
本実施例では、PLA及びラクテート共重合体合成時に必要な単量体であるラクチル−CoAを提供するために、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ(CP−PCT)を使用した。図3のようにPHA合成酵素とCP−PCTが共に発現されるオペロン形態の恒常的発現システムを構築した。CP−PCTの場合、微生物に毒性を示すものと知られているが、一般的に組換えタンパク質発現に広く使われるtacプロモーターやT7プロモーターを使用したIPTGによる発現誘導システムでは誘導剤添加直後に組換え微生物が全て死滅する。このために弱く発現されるが、微生物増殖によって持続的に発現される恒常的発現システムを使用することが適していると判断した。cp−pctはクロストリジウム・プロピオニカムの染色体DNAを配列番号17及び配列番号18のプライマーを利用してPCRして得られた断片を使用した。この時、元来野生型CP−PCTに存在するNdeI siteをクローニングの容易性のためにSDM方法を利用して除去した(図4)。
配列番号17:5-ggaattcATGAGAAAGGTTCCCATTATTACCGCAGATGA
配列番号18:5-gc tctaga tta gga ctt cat ttc ctt cag acc cat taa gcc ttc tg
また、SbfI/NdeI認識部位を添加するために、配列番号19と配列番号20の塩基配列を有するプライマーを利用してオーバーラップPCRを遂行した。
配列番号19:5-agg cct gca ggc gga taa caa ttt cac aca gg- 3
配列番号20:5-gcc cat atg tct aga tta gga ctt cat ttc c- 3
【0034】
phaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体であるphaC1Ps6−19300を含有したpPs619C1300−ReABベクターをSbfI/NdeIで切断し、 ラルストニア・ ユートロファス(Ralstonia eutrophus)H16由来の単量体供給酵素(phaARE及びphaBRE)を除去した後、上記PCRクローニングしたCP−PCT遺伝子をSbfI/NdeI認識部位に挿入することによって、pPs619C1300−CPPCT組換えベクターを製造した(図4)。
【0035】
また、別のphaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体であるphaC1Ps6−19200を含有するpPs619C1200−CPPCT組換えベクター及び野生型phaC1Ps6−19合成酵素を含有するpPs619C1−CPPCT組換えベクターもやはり上記のような方法で作製した。CP−PCTによる単量体供給で重合体の合成可否を確認するために、pPs619C1200−CPPCTとpPs619C1300−CPPCT組換えベクターをE.coli XL1−Blueに形質転換させ、これをPHB検出培地(LB agar、グルコース20g/L、3HB 2g/L、ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、PHB生成を観察することができた。
上記作製されたpPs619C1300−CPPCT組換えベクターを利用して様々な条件でフラスコ培養を遂行し、PLA及びラクテート共重合体の生産を試みた。その結果を表2に示した。
【0036】
【表2】

【0037】
上記2段階培養の場合、培養液をMR培地に置換した後、嫌気的培養を試みてラクテートが細胞内で作られるように試みたものである。多様な条件で組換え大腸菌を培養した結果、PLA単独重合体は乾燥細胞重量に対して約1%程度合成されており、3HBを基質として添加し、ラクテート共重合体合成を試みた場合は、約6%程度得ることができた。本実施例で使用した組換え大腸菌の流加培養に使われたMR培地の組成は表3に示した。
【0038】
【表3】

【0039】
<実施例4>組換え大腸菌の流加培養を通じたP(3HB−co−LA)共重合体の製造
pPs619C1300−CPPCTベクターで形質転換された組換え大腸菌を20g/Lのグルコース、100mg/Lのアンピシリンなどが含まれた3mLのLB培地で37℃、撹拌速度200rpmで12時間培養した。この培養液を同一培地100mLに接種し、同一条件で6時間培養した。これを流加培養の種培養液(seed culture)として使用した。流加培養のための開始培地としてMR培地を使用した。MR培地2.4Lが含有された発酵槽に100mLの種培養液を接種して流加培養を解した。培養液の温度は37℃であり、pHは14%アンモニア水溶液を用いて6.8〜6.9になるように調節し、溶存酸素は空気供給及び撹拌速度調節を介して飽和空気の20%以上を維持した。この時、空気供給速度は1vvmであった。初期開始培地に含有されたグルコースが枯渇した時、グルコース20gと3−ヒドロキシブチレート(3HB)5gを供給し、同時に撹拌速度を200rpmに、そして空気供給速度を0.1vvmにそれぞれ低減させ、培養条件を好気条件から嫌気条件に転換した。培養期間の間、グルコースは5回供給した。この中の第1回目と第3回目の供給時には、5gの3HBを共に供給した。培養終了後、遠心分離により細胞を回収し、凍結乾燥した。
合成された重合体の分離精製のために、ソックスレー抽出器でクロロホルムを利用して凍結乾燥細胞から重合体を抽出した。クロロホルムに溶けている重合体抽出液から回転蒸発器を利用して、クロロホルムをほとんど除去し、そこにメタノールを添加して重合体を沈澱させた。沈澱された重合体をフィルタろ過を用いてろ過した後、真空乾燥器で12時間乾燥し、最終回収した。
【0040】
さらに、遠心分離によって回収された菌体の一部を80℃の乾燥器で48時間乾燥した後、ガスクロマトグラフィー分析を遂行して細胞内合成されたP(3HB−co−LA)共重合体の含量を測定した。3HV含量が重量比で12%のP(3HB−co−3HV)共重合体及びPLA単独重合体を標準物質として使用した。
分析結果、大腸菌内に合成されたP(3HB−co−LA)の含量は、乾燥細胞重量に対して約10%、共重合体の中のPLA含量は88mol%であった。
本実施例を通して最終回収された重合体のガスクロマトグラフィー分析を遂行した結果、回収された重合体はP(3HB−co−LA)共重合体であることを再確認しており、重合体の中のPLA含量また88mol%であることを再確認した。
【0041】
<実施例5>組換え大腸菌の流加培養を通じたPLA単独重合体の製造
実施例4と同様にして、pPs619C1300−CPPCTベクターで形質転換された組換え大腸菌の種培養を実施し、MR培地2.4Lが含有された発酵槽に100mLの種培養液を接種して流加培養を開始した。培養液の温度は37℃、pHは14%アンモニア水溶液を利用して6.8〜6.9になるように調節し、溶存酸素は空気供給及び撹拌速度調節を通して飽和空気の20%以上を維持した。この時、空気供給速度は1vvmであり、初期開始培地に含有されたグルコースが枯渇した時、グルコース20gを供給し、同時に撹拌速度を200rpmに、空気供給速度を0.1vvmにそれぞれ低減し、培養条件を好気条件から嫌気条件に転換させた。培養期間の間、グルコースを5回供給した。培養終了後、遠心分離により細胞を回収し、これを凍結乾燥した。重合体は実施例4と同様にして最終回収した。
さらに、遠心分離によって回収された菌体の一部を80℃の乾燥器で48時間乾燥した後、ガスクロマトグラフィー分析を遂行して細胞内合成されたPLA含量を測定した。3HV含量が重量比で12%のP(3HB−co−3HV)共重合体、メチル−4HB及びPLA単独重合体を標準物質として使用した。
分析結果、3HB及び4HBは全く検出されていなく、PLAだけが検出されたことを確認することができた。大腸菌内に合成されたPLAの含量は乾燥細胞重量に対して約10%であった。本実施例を通して最終回収された重合体のガスクロマトグラフィー分析を遂行した結果、回収された重合体はPLA含量が99.1mol%ポリラクテート重合体であった。
【0042】
<実施例6>様々な変異体の作製
上記実施例2と同様にして、下記プライマーを利用して様々なPHA合成酵素変異体を作製した。作製された変異体を下記表4、5、6及び7に総合して示した。
E130D
配列番号15:5’-atc aac ctc atg acc gat gcg atg gcg ccg acc- 3’
配列番号16:5' -ggt cgg cgc cat cgc atc ggt cat gag gtt gat- 3'
S325T
配列番号11:5'-CTG ACC TTG CTG GTG ACC GTG CTT GAT ACC ACC- 3'
配列番号12:5'- GGT GGT ATC AAG CAC GGT CAC CAG CAA GGT CAG- 3'
S477R
配列番号21:5'-gaa ttc gtg ctg tcg agc cgc ggg cat atc- 3'
配列番号22:5'-gat atg ccc gcg gct cga cag cac gaa ttc- 3'
S477H
配列番号23:5'-gaa ttc gtg ctg tcg agc cat ggg cat atc- 3'
配列番号24:5'-gat atg ccc atg gct cga cag cac gaa ttc- 3'
S477F
配列番号25:5'- gaa ttc gtg ctg tcg agc ttt ggg cat atc- 3'
配列番号26:5'- gat atg ccc aaa gct cga cag cac gaa ttc- 3'
S477Y
配列番号27:5'-gaa ttc gtg ctg tcg agc tat ggg cat atc- 3'
配列番号28:5'-gat atg ccc ata gct cga cag cac gaa ttc- 3'
S477G
配列番号29:5'-gaa ttc gtg ctg tcg agc ggc ggg cat atc- 3'
配列番号30:5'-gat atg ccc gcc gct cga cag cac gaa ttc- 3'
Q481K
配列番号31:5'-ggg cat atc aaa agc atc ctg aac ccg c- 3'
配列番号32:5'-gcg ggt tca gga tgc ttt tga tat gcc c- 3'
Q481M
配列番号33:5'-ggg cat atc atg agc atc ctg aac ccg c- 3'
配列番号34:5'-gcg ggt tca gga tgc tca tga tat gcc c- 3'
Q481R
配列番号35:5'-ggg cat atc cgc agc atc ctg aac ccg c- 3'
配列番号36:5'-gcg ggt tca gga tgc tgc gga tat gcc c- 3'
【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
<実施例7>様々な変異体を用いたP(3HB−co−LA)の合成
上記実施例3に記載された方法と同様にして、シュードモナス・スピーシーズ6−19由来PHA合成酵素変異体とプロピオニル−CoAトランスフェラーゼの発現が可能な組換え大腸菌を作製し、これを利用して実施例4と同様にしてP(3HB−co−LA)を作製した。その結果を下記表8、9及び10に示した。
【0048】
【表8】

【0049】
【表9】

【0050】
【表10】

【0051】
上記表8、9及び10に示されるように、本発明に係るPHA合成酵素変異体はラクチル−CoAを基質として使用してラクテート共重合体を高効率で製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上で示されるように、本発明に係るシュードモナス・スピーシーズ6−19由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体を使用すれば、従来ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が、基質として使用するのに困難であったラクチル−CoAを基質として使用してラクテート重合体及び/又は共重合体を高効率で製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号10のアミノ酸配列で481位のアミノ酸であるグルタミンが変異されたことを特徴とするラクチル−CoAを基質として利用して、ラクテート重合体またはラクテート共重合体を合成しうるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体。
【請求項2】
前記変異体は、130位のアミノ酸であるグルタミン酸、325位のアミノ酸であるセリン及び477位のアミノ酸であるセリンよりなる群から選択された一つ以上のアミノ酸が、さらに変異されたことを特徴とする請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体。
【請求項3】
前記変異体は配列番号10のアミノ酸配列で、
a)S325T及びQ481M;
b)E130D及びQ481K;
c)S325T及びQ481K;
d)E130D及びQ481M;
e)E130D及びQ481R;
f)E130D、S325T及びQ481M;
g)E130D、S325T及びQ481K;
h)E130D、S477R及びQ481K;
i)E130D、S477R及びQ481M;
j)E130D、S477R及びQ481R;
k)E130D、S477H及びQ481K;
l)E130D、S477H及びQ481M;
m)E130D、S477H及びQ481R;
n)E130D、S477F及びQ481K;
o)E130D、S477F及びQ481M;
p)E130D、S477F及びQ481R;
q)E130D、S477Y及びQ481K;
r)E130D、S477Y及びQ481M;
S)E130D、S477Y及びQ481R;
t)E130D、S325T、S477R及びQ481M;
u)E130D、S325T、S477R及びQ481K;
v)E130D、S325T、S477F及びQ481M;
w)E130D、S325T、S477G及びQ481M;又は
x)E130D、S325T、S477F及びQ481K;
が変異されたアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項2に記載のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体。
【請求項4】
請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素変異体をコードする遺伝子。
【請求項5】
請求項4に記載の遺伝子を含有するラクテート重合体またはラクテート共重合体合成用組換えベクター。
【請求項6】
前記組換えベクターは、プロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子(pct)をさらに含有することを特徴とする請求項5に記載の組換えベクター。
【請求項7】
請求項5に記載の組換えベクターで形質転換された細胞または植物。
【請求項8】
プロピオニル−CoAトランスフェラーゼ遺伝子を有しない細胞または植物を請求項6に記載の組換えベクターで形質転換して得られることを特徴とする細胞または植物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の細胞または植物を培養または栽培することを特徴とするラクテート重合体またはラクテート共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記培養または栽培はヒドロキシアルカノエートを含有する環境で遂行され、共重合体はヒドロキシアルカノエート単量体単位及びラクテート単量体単位を含有することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
上記ヒドロキシアルカノエートは、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシブチレート、炭素数が6〜14の中鎖長の(D)−3−ヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシテトラデカン酸、3−ヒドロキシヘキサデカン酸、4−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシデカン酸、5−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシ−4−ペンテン酸、3−ヒドロキシ−4−trans−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−4−cis−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−5−ヘキセン酸、3−ヒドロキシ−6−trans−オクテン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−オクテン酸、3−ヒドロキシ−7−オクテン酸、3−ヒドロキシ−8−ノネン酸、3−ヒドロキシ−9−デセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−6−cis−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−7−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−5,8−cis−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸、3−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、3−ヒドロキシ−4−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−5−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−8−メチルノナン酸、3−ヒドロキシ−7−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−9−メチルデカン酸、3−ヒドロキシ−7−メチル−6−オクテン酸、リンゴ酸、3−ヒドロキシコハク酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアジピン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシアゼライン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−メチルエステル、3−ヒドロキシスベリン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−エチルエステル、3−ヒドロキシピメリン酸−プロピルエステル、3−ヒドロキシセバシン酸−ベンジルエステル、3−ヒドロキシ−8−アセトキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−9−アセトキシノナン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシブチレート、フェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸、フェノキシ−3−ヒドロキシヘプタン酸、フェノキシ−3−ヒドロキシオクタン酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシブチレート、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、para−ニトロフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸、3−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルブチレート、3,12−ジヒドロキシドデカン酸、3,8−ジヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸、3−ヒドロキシ−4,5−エポキシデカン酸、3−ヒドロキシ−6,7−エポキシドデカン酸、3−ヒドロキシ−8,9−エポキシ−5,6−cis−テトラデカン酸、7−シアノ−3−ヒドロキシヘプタン酸、9−シアノ−3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシ−7−フルオロヘプタン酸、3−ヒドロキシ−9−フルオロノナン酸、3−ヒドロキシ−6−クロロヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−クロロオクタン酸、3−ヒドロキシ−6−ブロモヘキサン酸、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸、3−ヒドロキシ−11−ブロモウンデカン酸、3−ヒドロキシ−2−ブテン酸、6−ヒドロキシ−3−ドデセン酸、3−ヒドロキシ−2−メチルブチレート、3−ヒドロキシ−2−メチル吉草酸及び3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−5−ヘプテン酸からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−510775(P2010−510775A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538328(P2009−538328)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005858
【国際公開番号】WO2008/062999
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【出願人】(500192470)コリア・アドヴァンスド・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (12)
【Fターム(参考)】