説明

ショウガオール類縁化合物

【課題】 食品、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野等で有用な新規ショウガオール類縁化合物を提供する。
【解決手段】 下記一般式[A]で示されるショウガオール類縁化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、又は医薬部外品に有用な、転写因子NF-E2 related factor 2依存遺伝子の転写を活性化するショウガオール類縁化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞抗酸化システムなどの生体防御機構において、核内転写因子(NF-E2 related factor 2:以下、Nrf2と略記する)が重要な役割を果たしていることが示されている。Nrf2は、非ストレス条件下ではKeap1(Kelch-like ECH-associated protein 1)と複合体を形成した状態で細胞質に局在する。細胞質に、親電子性物質、活性酸素、重金属などが存在すると、Nrf2とKeap1との結合が解除され、遊離したNrf2はキナーゼによるリン酸化を受け核内へ移行する。核内移行したNrf2はsmall Mafとヘテロ二量体を形成し、DNA上の抗酸化剤応答配列(Antioxidant Response Element;ARE)に結合し、該DNAにおける転写を活性化して、一連の抗酸化酵素や異物代謝系第二相酵素などの発現を誘導する(非特許文献1)。
【0003】
フリーラジカルや活性酸素は、生体内の構成成分である脂質、タンパク質、DNAなどと容易に反応するため、その障害が種々の疾病を誘起すると言われている。Nrf2依存遺伝子は、活性酸素に応答して、抗酸化酵素の転写を活性化する。活性酸素を消去する抗酸化酵素群は生体の防御機能として非常に重要である。活性酸素が関与している疾病としては、癌、炎症、動脈硬化、高血圧症、肝機能障害、糖尿病、虚血再潅流障害、潰瘍、シミ・シワなどが挙げられる(非特許文献2及び3)。
【0004】
また、Nrf2の活性は、加齢とともに低下することが動物実験で示されている。加齢とともに生体の抗酸化システムが低下するのは、Nrf2の活性低下が関与していることを示唆している。例えば、還元型グルタチオン量(GSH/GSSG)とNrf2の活性には強い相関性があることがわかっている(非特許文献4)。
【0005】
薬剤や環境化学物質などの生体にとって異物となる化学物質は、暴露された後吸収され、異物代謝系酵素群による代謝を受けた後排泄される。この異物代謝系は、転写因子AhRによって制御される第一相酵素群と、Nrf2によって制御される第二酵素群による反応から構成されている。一般的に、生体内に取込まれた化学物質は、上記異物代謝系の第一相酵素群でオキソ中間体に変換され、引き続いて第二相酵素群でより水溶性の高い誘導体に変換され、尿中から排泄される。
環境化学物質の中には、第一相反応後のオキソ中間体がより強い毒性物質である場合がある。また第二相反応が阻害されると、第一相反応で生成したオキソ中間体が蓄積され、発癌や他の疾病に繋がる。例えば、発ガン性物質として知られるベンゾ[a]ピレンやアフラトキシンB1は、第一相反応により、それぞれ癌原性の高いオキソ中間体に変換されるが、なんらかの原因でNrf2による転写の活性化が起こらないと、第二相酵素が発現しないため、オキソ中間体が蓄積し発癌につながる(非特許文献5)。
【0006】
Nrf2/ARE系により発現が誘導される抗酸化酵素や異物代謝系第二相酵素としては、glutamate-cysteine ligase(GCLM)、heme oxygenase-1(HO−1)、thioredoxin reductase-1(TXNRD1)、thioredoxin、ferritin、superoxide dismutase(SOD)、catalase、glutathione reductase、gulutathione S-transferase(GST)、NAD(P)H:quinone oxidoreductase(NQO1)、UDP-glycosyltransferase 1A6などが知られている(非特許文献6〜9等)。
【0007】
上記のように、転写因子Nrf2により制御される遺伝子群は、内在性及び外来性の環境ストレスに対する防御機能として非常に重要な役割を果たしている。従って生体に対して安全性の高い薬剤をもって、Nrf2やこの転写因子に依存する遺伝子の発現を活性化することは、活性酸素や化学物質が原因の疾病を予防・治療するのに非常に有用である。
【0008】
抗酸化剤として使用されるブチルヒドロキシトルエンや、わさび、キャベツに含まれるスルフォランなどのイソチアネート系化合物は、異物代謝第二相酵素の発現を活性化することが知られている(非特許文献10及び11)。
【0009】
一方、ショウガオールは、ジンゲロールと並び生姜抽出物の主要成分であり、例えば、血行促進作用(特許文献1)、体臭抑制効果(特許文献2)、抗酸化効果(非特許文献12)、保湿効果(非特許文献13)等を有することが知られている。また、ショウガオール及びジンゲロールの生体内での代謝経路も研究されており、代謝産物の構造が報告されている(非特許文献14及び15)。
本発明者らは、ショウガオールを大量生産する製造方法について報告している(特許文献3)。またショウガオールと類似構造の化合物について、チロシナーゼ活性阻害作用及び抗酸化作用も見出している(特許文献4)。
【0010】
【特許文献1】特開平6−183959号公報(発明の詳細な説明)
【特許文献2】米国特許6264928号(発明を実施するための最良の形態)
【特許文献3】特開2003−327574(発明の詳細な説明)
【特許文献4】特願2003−086818(発明の詳細な説明)
【非特許文献1】Dinova,A.T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,99,11908-11913(2002)
【非特許文献2】吉川敏一ら、季刊化学総説「活性酸素種の化学」、No.7、p.163−175(1990)
【非特許文献3】福沢健治、「フリーラジカル防御の薬理学と薬物開発の展望」、46巻、10号、日本臨床、p.2269−2276(1988)
【非特許文献4】Suh,J.H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,101,3381-3386(2004)
【非特許文献5】Chausseaud,L.F.,Adv.Can.Res.29,175-274(1979)
【非特許文献6】Chen,X.L.et al.,Curr.Pharm.Des.,10,879-891(2004)
【非特許文献7】Lee,J.M.et al.,J.Bio.Chem.,278,12029-12038(2003)
【非特許文献8】Itoh,K.et al.,Free Rad.Biol.Med.,36,1208-1213(2004)
【非特許文献9】Wakabayashi N.et al.,Nat.Genetic.,35,238-245(2003)
【非特許文献10】Butler,T.M.et al.,Toxicol.Appl.Pharmacol.,135,45-47(1995)
【非特許文献11】Talalay P.et al.,J.Med.Chem.37,170-176(1994)
【非特許文献12】Kikuzaki,H.et al.,J.Food Sci.,58,6,1407-1410(1993)
【非特許文献13】鈴木正人 監修、「新しい化粧品機能素材300 上巻」、311−312頁、シーエムシー出版(2002)
【非特許文献14】Takahashi,H.et al.,Phytochemistry,34,1497-1500(1993)
【非特許文献15】Lee,S.S.,Arch.Pharm.Res.,18,136-137(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、食品、医薬品、又は医薬部外品等に用いることができる、ショウガオール類縁化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記のような課題に対して鋭意研究を行った結果、新規なショウガオール類縁化合物を見出し本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明のショウガオール類縁化合物は、転写因子Nrf2依存遺伝子の転写活性を有する。転写因子Nrf2により制御される遺伝子群が環境ストレスに対する防御機能として寄与することから、これに関連する活性酸素や化学物質が原因の疾病を予防・治療するのに非常に有用な、食品、医薬品、又は医薬部外品等に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
すなわち、本発明は、下記一般式[A]で示されるショウガオール類縁化合物である。
【化1】

【0015】
本明細書において、「Nrf2依存遺伝子」とは、転写因子Nrf2によって転写活性化などの影響を受けるか、又は制御される遺伝子を示す。その具体例としては、HO−1(decycling)、GCLM、GCLC、TXNRD1、ferritin、NQO1、GST、UDP-glycosyltransferase 1A6、Aldehyde dehydrogenase、solute carrier family、sequestsome 1などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の一般式[A]で表わされるショウガオール類縁化合物(以下、化合物[A]ともいう)は、例えば、化学合成及び/又は天然由来のものを原料として製造することができる。
【0017】
化合物[A]の製造法について説明する。
化合物[A]は、後記する式[B]で表わされる化合物(以下、化合物[B]ともいう、その他の式で表わされる化合物についても同様に略記する。)から、必要により水酸基上の置換基の除去及び/又はエステルの加水分解をすることで合成することができる。
【0018】
【化2】

【0019】
式[B]中のR、R11及びR12は水素原子である。式[B]中のR及びR10は共に水素原子、もしくは共にメトキシ基である。式[B]中のR13は水素原子、低級アルコキシ基、炭素数1〜15のアシロキシ基、または、COOR14(但し、COOR14中のR14は、炭素数1〜8までの直鎖または分枝鎖アルキル基を示す。)を示す。nは1〜20の整数を示す。
【0020】
本発明において、低級アルコキシ基は、炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキルが酸素原子に結合した基を示し、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、及び−OCHOCH基などを挙げることができ、好適にはメトキシ、エトキシ、又は−OCHOCH基である。
【0021】
本発明において、炭素数1〜15のアシロキシ基は、炭素数1〜15の直鎖または分枝鎖アシル基が酸素原子に結合した基を示す。炭素数1〜15の直鎖または分枝鎖アシル基は、たとえばアセチル、ベンゾイル、ブチロイル、イソブチロイル、及びピヴァロイル基などを挙げることができ、好適にはアセチル基である。
【0022】
本発明において、炭素数1〜8までの直鎖または分枝鎖アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、およびn−オクチル基などを挙げることができ、好適にはメチル、又はエチル基である。
【0023】
水酸基上の置換基の除去及び/又はエステルの加水分解が必要である場合、その方法は一般に有機合成化学の分野において周知の方法、例えばT.W.Greene.,「Protective Groups in Organic Synthesis」,John Wiley&Sonsに記載の方法に準じて行うことができる。
【0024】
化合物[B]は、下記化合物[C]からHXを脱離させることで製造することができる。
【0025】
【化3】

【0026】
式[C]中のR、R、R10、R11、R12、R13、およびnは化合物[B]で定義したとおりである。Xはベンゼンスルホニル基またはトルエンスルホニル基を示す。
【0027】
本発明における化合物[B]は、π−アリル錯体を形成する金属触媒の存在下で、化合物[C]と塩基性化合物を作用させることにより合成することができる。
【0028】
π−アリル錯体を形成する金属触媒としては、パラジウム錯体を好適に使用することができ、具体的には、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物、塩化パラジウム(II)/トリフェニルホスフィン混合物、酢酸パラジウム(II)/トリフェニルホスフィン混合物、および酢酸パラジウム(II)/トリブチルホスフィン混合物等が例示される。当該金属触媒の使用量は、化合物[C]1molに対して0.0001〜1molが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.1molである。
【0029】
上記塩基性化合物としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、およびN−メチルイミダゾール、ピリジン等の第三級アミン類が好適であり、使用量は、化合物[C]1molに対して0.9mol以上であり、1.0molから10molの範囲が好適である。なお、かかる塩基性化合物を溶媒として使用しても良い。
【0030】
上記反応は溶媒の存在下で実施することが好ましく、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、N,N−ジメチルプロピレンウレア、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリンおよびこれらの混合溶媒等を使用することができ、中でも、1,2−ジクロロエタンとアルコール類との混合溶媒が好適である。
【0031】
この反応温度は室温から150℃、好ましくは、50℃から120℃の範囲が好適である。
この反応時間としては数時間から数10時間が適当である。
この反応終了後は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により、化合物[B]を得ることができる。
【0032】
前述の化合物[C]は、化合物[D]と化合物[E]から合成できる。
【0033】
【化4】

【0034】
式[D]中のR13、nは化合物[B]で定義したとおりである。Xは化合物[C]で定義した通りである。
【0035】
【化5】

【0036】
式[E]中のR、R、R10、R11、および、R12は化合物[B]で定義したとおりである。
【0037】
化合物[C]は、化合物[D]とアルキル金属化合物とを反応させ、引き続いて化合物[E]を反応させることにより製造できる。
【0038】
このアルキル金属化合物としては、t−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、またはリチウムビス(トリメチルシリル)アミドが好ましく使用できる。
このアルキル金属化合物の使用量は、基本的には化合物[D]に対し、0.7から1.3化学当量が好ましく、さらに好ましくは、0.9から1.1化学当量である。
【0039】
上記反応は、非プロトン性の溶媒中で行うことが好ましく、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、N,N−ジメチルプロピレンウレアおよびこれらの混合溶媒等を好適に使用することができる。
化合物[D]とアルキル金属化合物との反応温度は、−80℃から25℃が好ましく、より好ましくは−50℃から0℃である。反応時間通常数分から数時間である。
【0040】
上述のごとく化合物[D]とアルキル金属化合物とを反応させたものに、引き続いて、化合物[E]を反応させることにより、化合物[C]を製造できる。
化合物[E]を前記反応物に加える際の反応系の温度は、−100℃から25℃が好ましく、−80℃から0℃が好適である。反応時間は通常数分から数時間が適当である。
この反応終了後は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により、化合物[C]を単離精製することができる。
【0041】
化合物[D]は、化合物[F]のX基の転位反応を行うことにより製造することができる。
【0042】
【化6】

【0043】
式[F]中のR13、nは化合物[B]で定義したとおりである。Xは化合物[C]で定義した通りである。
【0044】
化合物[F]中のX基を転位させることにより、化合物[D]を得ることができる。
この転位反応の好ましい触媒としては、パラジウム触媒を例示することができ、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物、塩化パラジウム(II)/トリフェニルホスフィン混合物、酢酸パラジウム(II)/トリフェニルホスフィン混合物、酢酸パラジウム(II)/トリブチルホスフィン混合物等が好適に使用される。当該金属触媒の使用量は、化合物[F]1molに対して0.0001〜1molが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.1molである。当該金属触媒の使用量が少なすぎる場合は反応の進行が遅く、使用量が多すぎる場合は触媒の除去に労力を要することとなる。
【0045】
本転位反応は溶媒の存在下で実施することが好ましく、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、トルエン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、N,N−ジメチルプロピレンウレア、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリンおよびこれらの混合溶媒等を使用することができ、中でも、テトラヒドロフランとメタノールとの混合溶媒が好適である。
【0046】
本転位反応の反応温度は0℃から120℃、好ましくは、20℃から100℃の範囲が好適である。この反応時間は条件により異なるが、通常、数時間から数10時間である。
反応終了後は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により、化合物[D]を得ることができる。
【0047】
化合物[F]は、化合物[G]にアルキル金属化合物を反応させた後、下記化合物[H]を反応させることで調整できる。
【0048】
【化7】

式[G]中のXは化合物[C]で定義したとおりである。
【0049】
【化8】

式[H]中のR13、およびnは式[B]で定義した通りである。
【0050】
化合物[G]とアルキル金属化合物の反応においては、化合物[G]に対して、アルキル金属化合物の割合が、0.7から1.3化学当量であることが好ましく、さらに好ましくは、0.9から1.1化学当量である。
上記反応の温度は、−100℃から0℃が好ましく、より好ましくは−80℃から−20℃である。この反応温度が低すぎる場合は温度維持にコストがかかり、また、反応温度が高すぎる場合は副反応が進行する場合がある。
化合物[G]とアルキル金属化合物との反応は、非プロトン性の溶媒中で行うことが好ましく、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、N,N−ジメチルプロピレンウレア及びこれらの混合溶媒等を好適に使用することができる。
反応時間は条件により異なるが、通常、数分から数10分である。
【0051】
アルキル金属化合物としては、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム等のアルキルリチウム化合物、n−ブチルマグネシウムクロリド、s−ブチルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド、s−ブチルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムブロミド等のグリニャール化合物を例示することができ、n−ブチルリチウム、n−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミドを好適に使用することができる。またアルキル金属化合物に代えて金属リチウム、金属ナトリウム等のアルカリ金属類を使用してもよい。
【0052】
上述のごとく化合物[G]とアルキル金属化合物とを反応させたものに、引き続いて、上記化合物[H]を反応させることにより、化合物[F]が得られる。
化合物[H]を前記反応物に加える際の反応系の温度は、−100℃から0℃が好ましく、−80℃から−20℃が好適である。この反応温度が低すぎる場合は温度維持にコストがかかり、また、反応温度が高すぎる場合は副反応が進行する場合がある。
反応時間は条件により異なるが、通常、数分から数10分である。
反応終了後は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により、化合物[F]を単離精製することができる。
【0053】
化合物[E]は、G.Solladie,et al.,J.Org.Chem.,58,2181(1993)等の文献に記載の方法により合成することができる。
【0054】
本発明の化合物[A]は、Nrf2依存遺伝子の転写を活性化することから、Nrf2依存遺伝子の欠損が原因の疾病の治療剤、症状改善剤、および抑制剤等として有用である。また活性酸素や生体異物が原因となる疾病の治療剤、症状改善剤、および抑制剤等としても有用である。
【0055】
医薬品として用いる場合は、本発明の化合物を単独か或いは製薬上受け入れられる賦形剤又は担体や他の添加剤と共に各種の製剤形態に調合され使用される。その割合および性質は選ばれる化合物の溶解度及び化学的性質、選ばれた投与経路、及び標準の製剤学的慣用法によって決定される。賦形剤又は担体は固体、半固体、又は液体物質であることができ、これらは活性成分のビヒクル又は担体としての役目をすることができる。適当な賦形剤又は担体は製剤学の分野で一般的なものである。製剤組成物は経口又は非経口の使用のために適合化することができ、錠剤、カプセル、座薬、溶液、懸濁液などの形態で患者に投与することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、Tsはp−トルエンスルホニル基を示す。
【0057】
(合成例1)
本発明の化合物[A]を合成するための原料として、化合物1を出発物質とし、化合物2、化合物3を経由して、化合物5を調製した。
【0058】
はじめに、6−ブロモヘキサン酸エチルの6−ヨードヘキサン酸エチルへの変換反応を行った。
すなわち、アセトン250mlに、6−ブロモヘキサン酸エチル39.1g(175mmol)を溶解し、ヨウ化カリウム29.1g(175mmol)を加えて、20時間にわたって加熱還流した。つぎに、反応溶液を室温まで放冷した後、溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルエステル150mlで抽出した。得られた有機層を蒸留水50mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、減圧乾燥することにより、47.4gの粗生成物を得た。H−NMR分析を行った結果、本粗生成物はモル分率で90%の6−ヨードヘキサン酸エチルを含有することがわかった。本粗生成物をそのまま次工程に使用した。
【0059】
・化合物1の構造式
【化9】

【0060】
つぎに、テトラヒドロフラン450mlに、化合物1の30.5g(155mmol)を溶かした溶液を、ドライアイス/アセトンで−78℃に冷却した。この溶液に、1.56Mのn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液100ml(156mmol)を滴下した。そして同温度で45分間攪拌後、上述のごとく調製した6−ヨードヘキサン酸エチルの粗生成物をテトラヒドロフラン50mlに溶かした溶液を滴下した。滴下後、同温度で10分間攪拌後、徐々に昇温した。反応溶液の温度が−10℃になったところで、5%クエン酸水溶液50mlを加えて反応を停止させた。この反応混合物に、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液100ml、飽和食塩水150mlおよび酢酸エチルエステル50mlを加えて分配した。有機層を分取し、水層を酢酸エチルエステル50mlで抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の低粘度液状の化合物49.5g(収率94%)を得た。
【0061】
本品の重クロロホルム中で測定したH−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.20-1.70(9H,m)、2.03-2.15(2H,m)、2.23-2.35(2H,m)、2.44(3H,s)、3.43-3.55(1H,m)、4.11(2H,q)、5.04(1H,d)、5.25-5.35(1H,m)、5.53-5.68(1H,m)、7.32(2H,d)、7.70(2H,d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930,2860,1730,1600,1300,1290,1180,1140,940,670であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素64.09%、水素7.87%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物2であることを確認した。
【0062】
・化合物2の構造式
【化10】

【0063】
つぎに、化合物2から化合物3への変換を行った。
化合物2の49.5g(146mmol)をテトラヒドロフラン360mlおよびメタノール120mlに溶かし、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム3.38g(2.92mmol)を加えた。この反応溶液を16時間にわたって加熱還流した。つぎに、反応溶液を室温まで放冷した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡褐色の低粘度液状の化合物47.1g(95%)を得た。下記に示したH−NMR分析、赤外線吸収スペクトル分析、および、元素分析の結果、本品は、モル分率で73%の化合物3を含有し、残りの27%は化合物3中の炭素−炭素二重結合がシス型に配置した幾何異性体であることを確認した。
【0064】
化合物3の重クロロホルム中で測定したH−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.20-1.33(7H,m)、1.50-1.60(2H,m)、1.99(2H,t)、2.20-2.30(2H,m)、2.45(3H,s)、3.73(2H,d)、4.08-4.15(2H,q)、5.35-5.55(2H,m)、7.34(2H,d)、7.72(2H,d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930,2860,1730,1600,1320,1150,1090,1030,820,740であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素64.03%、水素7.57%であった。
【0065】
・化合物3の構造式
【化11】

【0066】
(合成例2)
化合物[A]を得るための原料として、化合物3および3−フェニルプロパナールを原料とし、化合物4を調製した。
すなわち、化合物3の15.0g(44.3mmol)およびトリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン2.20ml(6.88mmol)をテトラヒドロフラン100mlに溶解した溶液に、−78℃で1.0Mのリチウムヘキサメチルジシラザン/テトラヒドロフラン溶液46.0mlを滴下した。同温で60分間攪拌後、3−フェニルプルパナール5.80ml(44.0mmol)を加えた。同温で5分間攪拌後、徐々に昇温した。−10℃で、20%クエン酸水溶液50mlを加えて反応を停止した。飽和食塩水100mlを加え、分配後、有機層を分取した。水層を酢酸エチル50mlで抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、淡黄色中粘度液状の化合物14.2g(収率68%)を得た。
【0067】
本品の重クロロホルム中で測定したH−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.25-1.30(7H,m),1.40-1.72(4H,m),1.78-2.03(2H,m),2.17-2.29(2H,m), 2.44(3H,s),2.58-2.99(2H,m),3.35-3.80(1H,m),4.12(2H,q),4.23-4.48(1H,m), 5.00-5.77(1H,m),7.10-7.35(7H,m),7.66(2H,d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3520,2940,1730,1600,1450,1290,1140,1090,700,670,580であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素68.61%、水素7.68%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物4であることを確認した。
【0068】
・化合物4の構造式
【化12】

【0069】
<実施例1>
合成例2で得た化合物4を原料として、本発明の化合物5を調製した。
すなわち、化合物4の13.8g(29.2mmol)を1,2−ジクロロエタン300g、イソプロピルアルコール100g、及びグリセリン100gに溶解した溶液に、トリエチルアミン6.20ml(44.5mmol)、及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.69g(1.46mmol)を加えて、バス温100℃で8時間攪拌した。放冷後、蒸留水400ml、および酢酸エチル200mlを加えて分配し、有機層を回収した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、淡黄色中粘度液状の化合物3.83g(41%)を得た。
【0070】
本品の重クロロホルム中で測定したH−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.20-1.48(9H,m),1.58-1.68(2H,m),2.19(2H,q),2.27(2H,t),2.82-2.98(4H,m),4.11(2H,q),6.08(1H,d),6.80(1H,dt),7.15-7.21(3H,m),7.25-7.30(2H,m)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930,2860,1730,1700,1670,1630,1450,1370,1180,1030,700であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素75.91%、水素8.92%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物5であることを確認した。
【0071】
○化合物5の構造式
【化13】

【0072】
<実施例2>
実施例1で得た化合物5を原料として、本発明の化合物6を調製した。
すなわち、化合物5の1.06g(3.35mmol)を、1,4−ジオキサン12mlに溶解した溶液に、2N塩酸1.8mlを加え、55℃で攪拌した。16時間後、放冷し、濃縮残渣をシリカゲルカラケクロマトグラフィーに供し、淡黄色の中粘度液状の化合物761mg(79%)を得た。
【0073】
本品の重クロロホルム中で測定したH−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.30-1.48(6H,m),1.60-1.68(2H,m),2.19(2H.q),2.34(2H,t),2.84-2.98 (4H,m),6.09(1H,d),6.80(1H,dt),7.16-7.21(3H.m),7.25-7.30(1H,m)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3450,2930,2850,1710,1630,1410,1290,1230,1200,750,700であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素74.97%、水素8.39%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物6であることを確認した。
【0074】
○化合物6の構造式
【化14】

【0075】
(合成例3)
化合物[A]を得るための原料として、化合物3および化合物7を原料とし、化合物8を調製した。
すなわち、化合物3の17.3g(51.1mmol)およびトリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン1.70ml(5.31mmol)をテトラヒドロフラン150mlに溶解した溶液に、−78℃で1.0Mのリチウムヘキサメチルジシラザン/テトラヒドロフラン溶液52.0mlを滴下した。同温で60分間攪拌後、10.0g(51.5mmol)の化合物7を30mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液を加えた。同温で5分間攪拌後、徐々に昇温した。−10℃で、20%クエン酸水溶液50mlを加えて反応を停止した。
【0076】
・化合物7の構造式
【化15】

【0077】
その後、残渣に飽和食塩水200mlを加え、分配後、有機層を分取した。水層を酢酸エチル50mlで抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、淡黄色中粘度液状の化合物19.4g(収率71%)を得た。
【0078】
本品の重クロロホルム中で測定したH−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.17-1.30(7H,m),1.40-1.98(6H,m),2.18-2.28(2H,m),2.45(3H,s),2.55-2.95(2H,m),3.32-3.60(1H,m),3.86(6H,s),4.12(2H,q),4.21-4.58(1H,m),5.05-5.78(2H,m),6.67-6.80(3H,m),7.33(2H,d),7.66(2H,d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2940,1730,1590,1520,1470,1260,1240,1140,1030,670であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素65.39%、水素7.57%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物8であることを確認した。
【0079】
・化合物8の構造式
【化16】

【0080】
<実施例3>
合成例3で得た化合物8を原料として、本発明の化合物9を調製した。
すなわち、化合物8の19.0g(35.7mmol)を1,2−ジクロロエタン400g、イソプロピルアルコール50g、及びグリセリン50gに溶解した溶液に、トリエチルアミン10.0ml(71.7mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム2.06g(1.78mmol)を加えて、バス温100℃で8時間攪拌した。放冷後、蒸留水400mlを加えて分配し、有機層を回収した。水層をクロロホルム100mlで2回抽出し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、淡黄色中粘度液状の化合物 3.20g(24%)を得た。
【0081】
本品の重クロロホルム中で測定したH−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.50(11H,m),1.58-1.68(2H, m),2.18-2.33(4H,m),2.81-2,95(4H,m), 3.85(3H,s),3.87(3H,s),4.12(2H,q),6.09(1H,d),6.70-6.88(4H,m)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2930,1730,1670,1630,1520,1260,1160,1030,810,760であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素70.18%、水素8.57%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物9であることを確認した。
【0082】
○化合物9の構造式
【化17】

【0083】
以下に、本発明のショウガオール類縁化合物について、その用途の一例として、転写因子Nrf2依存遺伝子の転写に対する影響を参考例として示す。
【0084】
<参考例1>
〇Nrf2依存遺伝子の転写に対する化合物5及び化合物9の影響
化合物5及び化合物9を処理した場合としていない場合のNrf2依存遺伝子の転写量を調べるために、RT−PCRを使ってNrf2依存遺伝子の発現量を定量した。測定した遺伝子は、Nrf2により転写が制御されている、HO−1、GCLM、NQO1、ferritin、SLC7A11、sequestsome 1である。
【0085】
[RNA回収方法]
ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVECs;クロネチックス社製) を2% Fetal Bovine Serum(FBS;クロネチックス社製) 入りEndothelial cell growth factor containing medium-2(EGM−2;クロネチックス社製) 中で培養した。10cmディッシュに5×10細胞を培養し、37℃、5%COの条件下で48時間インキュベートした。
コンフルエント後、2%FBS入りEndothelial cell basal medium-2(EBM−2;クロネチックス社製)に培地を交換した。2時間後にエタノールに溶解した本発明の化合物をEBM−2に最終濃度5μMになるように調製し、細胞に添加した。
試薬添加してから6時間後に、全RNAをISOGEN(和光純薬社製)を用いて抽出した。
コントロールとして、エタノールを使い同様の操作を行った。
【0086】
[RT−PCR解析]
上記方法で抽出した全RNA1μgを、RNA PCR Core kit(アプライドバイオシステムス社製)を製造者の指示に従い使用して逆転写反応を行った。RT−PCR条件は95℃で3分、及び95℃で15秒、60℃で60秒の40サイクルであった。PCR産物はABI PRISM 7900HTシークエンス検出システム(アプライドバイオシステムス社製)により、解析を行った。各サンプルに対する相対的なRNA当量をGAPDHレベルに規格化することによって得た。
【0087】
なお前述のPCR反応において、HO−1のRT−PCRのプライマーには、フォワードプライマー;5‘−CGGGCCAGCAACAAAGTG(配列番号1)、及びリバースプライマー;5’−ACTGTCGCCACCAGAAACT(配列番号2)を使用し、GCLMのRT−PCRのプライマーには、フォワードプライマー;5‘−CAGCCGAGGAGCTTCATGATTG(配列番号3)、及びリバースプライマー;5’−TGCATTCCAAGACATCTGGAAA(配列番号4)を使用し、NQO1のRT−PCRのプライマーには、フォワードプライマー;5'-CCTGGAAGGATGGAAGAAACG(配列番号5)、及びリバースプライマー;5'-AGAATCCTGCCTGGAAGTTTAGG(配列番号6)を使用し、ferritinのRT−PCRのプライマーには、フォワードプライマー;5'-ACTGCACAAACTGGCCACTGA(配列番号7)、及びリバースプライマー;5'-CACCCAATTCTTTGATGGCTTT(配列番号8)を使用し、SLC7A11のRT−PCRのプライマーには、フォワードプライマー;5'-ACGGTGGTGTGTTTGCTGTCT(配列番号9)、及びリバースtライマー;5'-AGGAGTGTGCTTGCGGACAT(配列番号10)を使用し、sequestsome 1のRT−PCRのプライマーには、フォワードプライマー;5'-CTGGGCCTCTGGTTCTGACA(配列番号11)、及びリバースプライマー;5'-AGGTGGAAGGCATTTATTTGCTT(配列番号12)を使用した。
【0088】
図1は、化合物5及び化合物9を適用したときの、各種Nrf2依存遺伝子(HO−1遺伝子、GCLM遺伝子、NQO1遺伝子、ferritin遺伝子、SLC7A11遺伝子及びsequestsome 1遺伝子)の発現を示すグラフである。各mRNAの発現量は、コントロール(エタノール)での値を1として、相対値を示した。
図1に見られる様に、化合物5及び化合物9で処理した場合には、コントロールに比べて、HO−1、GCLM、NQO1、ferritin、SLC7A11、およびsequestsome 1の発現が亢進されることがわかった。
【0089】
<参考例2>
〇Nrf2依存遺伝子の転写に対する化合物6の影響
参考例1の方法に従って、化合物6を処理した場合としていない場合のNrf2依存遺伝子の転写量を調べた。コントロールとしてエタノールを用いた。化合物6の最終濃度は5μMになるように調整した。
【0090】
図2は、化合物6を適用したときの、各種Nrf2依存遺伝子(HO−1遺伝子、GCLM遺伝子、NQO1遺伝子、ferritin遺伝子、SLC7A11遺伝子及びsequestsome 1遺伝子)の発現を示すグラフである。各mRNAの発現量は、コントロール(エタノール)での値を1として、相対値を示した。
図2に見られるように、化合物6で処理した場合には、コントロールに比べて、HO−1、GCLM、NQO1、ferritin、SLC7A11、およびsequestsome 1の発現が亢進されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のショウガオール類縁化合物は、転写因子Nrf2依存遺伝子の転写活性を有し、食品、医薬品、医薬部外品等の分野に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、化合物5及び化合物9の、各種Nrf2依存遺伝子(HO−1遺伝子、GCLM遺伝子、NQO1遺伝子、ferritin遺伝子、SLC7A11遺伝子及びsequestsome 1遺伝子)の発現に関する影響を示した図面である。
【図2】図2は、化合物6の各種Nrf2依存遺伝子(HO−1遺伝子、GCLM遺伝子、NQO1遺伝子、ferritin遺伝子、SLC7A11遺伝子及びsequestsome 1遺伝子)の発現に関する影響を示した図面である。
【配列表フリーテキスト】
【0093】
配列番号1 HO−1に対するRT−PCR用のフォワードプライマー
配列番号2 HO−1に対するRT−PCR用のリバースプライマー
配列番号3 GCLMに対するRT−PCR用のフォワードプライマー
配列番号4 GCLMに対するRT−PCR用のリバースプライマー
配列番号5 NQO1に対するRT−PCR用のフォワードプライマー
配列番号6 NQO1に対するRT−PCR用のリバースプライマー
配列番号7 ferritinに対するRT−PCR用のフォワードプライマー
配列番号8 ferritinに対するRT−PCR用のリバースプライマー
配列番号9 SLC7A11に対するRT−PCR用のフォワードプライマー
配列番号10 SLC7A11に対するRT−PCR用のリバースプライマー
配列番号11 sequestsome 1に対するRT−PCR用のフォワードプライマー
配列番号12 sequestsome 1に対するRT−PCR用のリバースプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[A]で示されるショウガオール類縁化合物。
【化1】



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−188444(P2006−188444A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300(P2005−300)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】