説明

シラン−改質フェノール樹脂、及びその応用

【課題】なし
【解決手段】フェノールノボラック樹脂を製造するように、フェノール化合物(例えば、レゾルシノール)と、アルデヒドとを反応させることにより、シラン-改質フェノール樹脂を製造する。さらに、該フェノールノボラック樹脂を、少なくとも1のシラン化合物を反応させ、該シラン-改質フェノール樹脂を製造する。通常、該反応は、酸、又は塩基触媒の存在下で行われる。該得られる樹脂は、低い軟化点を有し、かつ加硫性ゴム組成物のメチレンアクセプター化合物として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、シラン-改質フェノール樹脂、その合成方法、及びその応用、特に補強ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
タイヤ、ベルト、及びホースのようなゴム製品には、通常、繊維、コード、又は織物の形態であるスチール、ポリエステル、ナイロン、アラミド、及びレーヨンなどの補強材を使用する。ラジアルタイヤ製品の場合、大抵、スチールコードを補強材として使用する。一般に、タイヤ用スチールコードは、該スチールコードとゴムコンパウンドとの間の接着を促進するために、黄銅層でコーティングされている。該コンパウンドの配合において、ゴムとスチールコードとの間の接着を改善するために、ナフテン酸コバルトのようなコバルト塩、及び/又はメチレンアクセプターとメチレンドナーとを含むフェノール系接着剤組成物の使用が、現在の慣習となっている。黄銅コーティング層に含まれる該銅、及び亜鉛は、硫黄と反応し、該スチールコードとゴムとの間に、銅、及び亜鉛のスルフィドを含む結合層を形成する。該結合部分での前記スルフィド層の形成は、黄銅めっきされたスチール、及びゴムの初期の未劣化接着に関与する。コバルト塩の使用は、銅スルフィド、及び亜鉛スルフィド層の形成、及び組成を調節する。ゴムコンパウンド中に、フェノールメチレンアクセプターとして、レゾルシノール、又はレゾルシノールノボラック樹脂、及びメチレンドナーとして、ヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)、又はペンタメトキシメチルメラミン(PMMM)を使用して、該スチールコードの接着を改善することが、一般的となっている。硬化時に、フェノールメチレンアクセプター、及びドナーの反応生成物は、該結合層を覆う保護性耐湿性樹脂を形成し、かつ老朽化による接着の損失を保護する。
【0003】
タイヤの長期耐久性にとって、ゴムコンパウンドとスチールコードとの高水準の接着を実現し、かつ熱、湿気、及び塩類条件などの様々な環境条件下で、その接着を維持することが重要である。未劣化状件の場合、ゴム-黄銅接着が、該ゴム引裂強さに勝り、かつ従って銅スルフィドとゴム界面とでの結合失敗がなくなる。しかし、湿気、及び塩水条件下では、浸食のために、スチールコードの接着は失敗する。該コバルト塩は、塩水、及び蒸気で劣化する接着に対して有効であるが、HMMMと共にレゾルシノール、又はレゾルシノールノボラック樹脂を使用することが、これらの条件下での最高水準の接着性を提供する。
スチールコードの浸食は、熱、及び湿気条件下での蒸気の攻撃によるものである。これを防いだ場合、次にスチールワイヤーの浸食を避けることができる。その結果、該タイヤにおける全ての劣化条件下で、該接着水準を維持することができる。この方法において、該タイヤの有効寿命を延ばすことができる。
【0004】
該スチールタイヤコード浸食を避ける、又は最小にするために、該ゴムコンパウンド配合だけではなく、スチールコードの処置においても、幾つかのアプローチ、又は方法が使用された。
1つの方法において、最初にスチールワイヤーを洗浄し、かつ次いでアミノ-シランプライマーでコーティングした。次いで、該シランコーティングワイヤーを、該ゴムコンパウンドに組込み、かつ硬化する前に、再び、フェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス溶液でコーティングした。この方法により、該スチールとゴムとの間の結合の加水分解安定性が改善される。
他の方法において、該コードを、メタノール溶液で希釈した酢酸中に浸漬し、次にH2Sガスで処置することにより、黄銅めっきスチールコードのゴムに対する該湿気劣化接着を改善した。次いで、該コードを加硫性ゴムコンパウンドと組合せ、かつ硬化した。
【0005】
フェノール-ホルムアルデヒドレゾールとレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック溶液との混合により調製した該接着剤組成物に浸漬したブライトスチールワイヤー(Bright steel wires)は、湿気劣化後の該接着保持力において、該黄銅めっきワイヤーよりも劇的な改善を示した。該ブライトスチールをコーティングした該レゾール、及びノボラックから形成された、高度に架橋されたフェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドの網目は、該耐湿性に関与し、該湿気劣化接着を改善する。
最初に該ブライトスチールワイヤーをアミノシランのアルコール溶液に浸漬し、かつ次いでフェノールノボラック樹脂を含むゴムと架橋した場合に、ゴムコンパウンドとブライトスチールとの間の改善された湿気劣化接着が実現された。黄銅めっきスチールコードと比べて、該シラン処置したブライトスチールワイヤーは、湿気劣化後に、高い接着値を保持する。
【0006】
ステンレススチール、亜鉛めっきスチール、スズ、亜鉛、又は黄銅めっきスチールのような補強タイヤコードの表面上に、シラン、及び加水分解シランを塗布することにより、これらの金属の浸食が防止されることは公知である。加水分解時に、これらのシランは、シラノール基を生じ、該基は、ヒドロキシル、又はオキシド基に対して活性を有する。該シラノール基は、それ自身を反応し、金属表面上にSi-O-Si結合を生成し、かつ、これらは安定であり、かつ疎水性である。これにより、蒸気、及び浸食攻撃に対して優れた耐性を示す、シラン-処置化金属表面が形成される。この方法は、スチールコードの浸食を防ぐための溶液を提供するものであるが、これらのシラン類を溶解するために非常に可燃性である溶媒の使用、これらの金属表面上へのこれらの塗布、及びその操作方法は、環境災害となり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、該ゴムコンパウンド配合において、比較的安全に操作でき、かつ使用することができ、かつ、その間において、ゴムコンパウンドに対して黄銅めっきスチールコードの未劣化、熱-、及び湿気-劣化接着を改善することができる新しいフェノール樹脂が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(本発明の要旨)
前記必要性を、本発明の様々な態様により実現する。1つの態様において、本発明は、フェノールノボラック樹脂と、シラン、又はシラン化合物の混合物とを反応させることを含む方法により製造されるシラン-改質フェノール樹脂に関するものである。前記シラン化合物は、式(C)、(D)、又は(E)により表される:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R6、R7、及びR8は、独立に、炭素原子1〜4個のアルキル基、炭素原子1〜8個のアルコキシ基、フェニル基、又はシクロアルキル基であり;R9は、炭素原子1〜12個を有する、二価の飽和、又は不飽和の脂肪族直鎖、又は分岐炭化水素基であり;Xは、チオール、イソシアナト、尿素、又はグリシジルエーテル基であり;Zは、Sx、又はNH基であり、ここで、xは、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり;かつR10は、ビニル基、又はアルコキシ基である。)。幾つかの実施態様において、該シラン-改質フェノール樹脂を製造する反応の間に、相当量のシロキサンポリマーを形成していない。他の実施態様において、該シラン改質フェノール樹脂は、実質的に架橋されていない。いくつかの実施態様において、該フェノールノボラック樹脂におけるフェノールのヒドロキシル基の当量数に対する、該シラン化合物におけるアルコキシ基の当量数の割合が、1未満、0.1未満、又は0.01未満である。他の実施態様において、該シラン-改質フェノール樹脂は、さらに加水分解されていない。
該フェノールノボラック樹脂は、式(A)により表される1以上のフェノール化合物と、1以上のアルデヒド、又はケトン化合物とを反応させることにより得られる:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立に、水素原子、ヒドロキシル、炭素原子1〜15個を有するアルキル、炭素原子8〜12個を有するアラルキル、ハロゲン、又はアミノ基から選択された有機基を表す。)。例えば、該フェノール化合物を、フェノール、アルキル置換フェノール、アラルキル置換フェノール、若しくはフェノールと、アルキル又はアリール置換フェノールとの混合物とすることができる。また、該フェノール化合物を、レゾルシノール、又はアルキル置換レゾルシノール、若しくはアラルキル置換レゾルシノールとすることができる。該アルデヒドの例を挙げると、制限はないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソ-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、桂皮アルデヒド、又はこれらの混合物がある。
【0013】
該フェノールノボラック樹脂の例を挙げると、制限はないが、次のものがある:フェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-アルキルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-アラルキルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、高度にオルト位のフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルフェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アラルキルフェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルレゾルシノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アラルキルレゾルシノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、及びこれらの混合物である。
【0014】
適切なシランの例には、制限はないが、次のものがある:3-(アミノプロピル)-トリエトキシシラン、3-(イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノエチル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシエチル)-トリエトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3-(アミノエチル)-トリメトキシシラン、3-(アミノブチル)トリエトキシシラン、3-(アミノエチル)トリメトキシシラン、3-(アミノ-プロピル)メチルジエトキシシラン、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2'-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3'-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-シリルアミノシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルエトキシシラン、又はこれらの混合物である。
【0015】
他の態様において、本発明は、本明細書中に記載した該シラン-改質フェノール樹脂を基礎としたゴム配合剤に関するものである。従って、下記成分を含む加硫性ゴム組成物を製造することができる:(a)ゴム成分、(b)加熱によりホルムアルデヒドを生じるメチレンドナー化合物;及び(c)フェノールノボラック樹脂と、式(C)、(D)、又は(E)により表されたシラン、又はシラン化合物の混合物とを反応させることを含む方法により得られるシラン-改質フェノール樹脂を含む、メチレンアクセプターである。幾つかの実施態様において、該シラン-改質フェノール樹脂は、該ゴム組成物を加硫する前には、実質的に架橋されていない、他の実施態様において、該シラン-改質フェノール樹脂を製造する反応の間に、相当量のシロキサンポリマーを形成していない。幾つかの実施態様において、該ゴム成分は、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、又はこれらの混合物から選択されたものである。他の実施態様において、該加硫性ゴム組成物は、さらに、スチール、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ガラス繊維、又はこれらの組合せから選択された補強材を含む。さらに、該補強材を、黄銅、亜鉛、又は青銅でコーティングされたスチールコードとすることができる。該加硫性ゴム組成物を含む加工製品を製造することができる。例えば、該加工製品には、タイヤ、パワーベルト、コンベヤーベルト、印刷用ロール、ゴムヒール、ゴム靴底、自動車のフロアマット、トラックの泥除けフラップ、又はボールミルライナー(ball mill liner)がある。
【0016】
また、他の態様において、本発明は、加工ゴム製品の製造方法に関するものである。該方法は、(1)架橋剤と混合された、前述の加硫性ゴム組成物を得ること;(2)該加硫性ゴム組成物に補強材を埋め込むこと;及び(3)該ゴム組成物に架橋を生じさせることを含む。該補強材は、該架橋前に該ゴム組成物に埋め込まれ、かつ該埋め込み前には、実質的にシランコーティングされていないものである。該補強材を、例えば、スチール、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ガラス繊維、及びこれらの組合せとし、かつワイヤー、又はコードの形態にすることができる。
本発明の様々な実施態様により提供される、本発明のさらなる態様、及び利点、及び特性は、下記説明で明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明の実施態様の説明)
下記説明において、ここに記載した、すべての数は、該単語"約(about)"、又は"約(approximate)"を、組合わせて使用するかどうかにかかわらず、近似値である。これらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、又はある時は、10〜20パーセント変わり得る。下限RL、及び上限RUを有する数値域が開示されている場合、本質的に、該範囲内に含まれる、すべての数が開示されている。特に、本質的に、該範囲内の下記数値を開示する:R=RL+k*(RU-RL)、ここで、kは、1パーセント区切りで可変である、1パーセント〜100パーセントの範囲であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、...、50パーセント、51パーセント、52パーセント、...、95パーセント、96 パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、又は100パーセントである。さらに、また、上記で規定したように、本質的に、2つのRの数により規定された、すべての数値域を開示している。
【0018】
本発明の実施態様は、ゴム配合剤、及び多くの他の応用に使用するためのシラン-改質フェノール樹脂を提供する。該シラン-改質フェノール樹脂を、フェノールノボラック樹脂と、シラン、又はシラン化合物の混合物とを反応させることにより製造することができる。幾つかの実施態様において、該得られるシラン-改質フェノール樹脂は、該反応後、実質的に架橋されていない。"実質的に架橋されていない"とは、架橋の程度が、10%未満、好ましくは約5%未満、約3%未満、又は約1%未満であることを意味する。架橋の程度は、樹脂中のゲル(すなわち、選択された溶媒に不溶性な部分)の重量百分率のことである。他の実施態様において、該シラン-改質フェノール樹脂は、該反応後、実質的に全てのシロキサンポリマーが存在していないものである。換言すると、該反応の間に、相当量のシロキサンポリマーを形成していない。
【0019】
フェノールノボラック樹脂は、高分子物質であり、かつ多くの場合、酸触媒(シュウ酸、又は硫酸)の存在下で、フェノール化合物を加熱することにより、アルデヒド、又はケトンの欠損で製造される。通常、フェノールノボラック樹脂は、架橋されていない。従って、アルデヒド/フェノール化合物のモル比は、1未満であることが所望され、そうでなければ、架橋、及びゲル化が、製造の間に生じるであろう。一般的に、フェノールノボラック樹脂は、メチロール基を含まず、約125〜約5000の範囲内の分子量を有し、かつ約45℃〜約100℃の範囲のガラス転移温度を示す。フェノールノボラック樹脂は、追加のアルデヒド、又は他の反応性物質、すなわちヘキサメチレンテトラミンのようなホルムアルデヒドドナーを加えるまで、それ自身により、さらに縮合されることはない。
フェノールノボラック樹脂の製造に使用することができる、適切なフェノール化合物は、下記式(A)により表されるものである:
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立に、水素原子、ヒドロキシル、炭素原子1〜15個を有するアルキル、炭素原子8〜12個を有するアラルキル、ハロゲン、又はアミノ基から選択された有機基を表す。)。式(A)において、R1、R2、R3、R4、及びR5は、"R1-5"と表している。しかし、R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立に、上記で規定したものと同一か、又は異なるものとなり得ることが理解されるべきである。適切なフェノール化合物には、制限はないが、フェノール、置換フェノール、レゾルシノール、又は置換レゾルシノールがある。従って、"フェノールノボラック樹脂"は、フェノール(置換、及び非置換の両方)を基礎としたノボラック樹脂だけではなく、レゾルシノール(置換、及び非置換の両方)を基礎としたノボラック樹脂も含む。
【0022】
式(A)に従って、フェノールノボラック樹脂の製造に適切な該フェノール化合物には、制限はないが、少なくとも1つのヒドロキシ基が結合した芳香核を有する、単環式フェノールがある。該単環式フェノールの例を挙げると、制限はないが、下記のものがある:フェノール自身、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3-エチルフェノール、3,5-ジエチルフェノール、p-ブチルフェノール、3,5-ジブチルフェノール、p-アミルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、スチリルフェノール、3,5-ジシクロヘキシルフェノール、p-クロチルフェノール、3,5-ジメトキシフェノール、3,4,5-トリメトキシフェノール、p-エトキシフェノール、p-ブトキシ-フェノール、3-メチル-4-メトキシフェノール、アミノフェノール、及びp-フェノキシフェノールのような、フェノールの相同体である。また、適切なフェノール化合物には、制限はないが、さらにレゾルシノール、フロログルシノール、ピロガロール、5-メチル-レゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、及び4-プロピルレゾルシノールのような、ジヒドロキシベンゼン、及びポリヒドロキシベンゼンの誘導体がある。適切な置換レゾルシノール化合物には、制限はないが、アルキル置換レゾルシノール、アラルキル置換レゾルシノール、又はこれらの組合せがある。適切なレゾルシノール誘導体の例は、米国特許第4,892,908号;4,605,696号;4,889,891号;及び5,021,522号に記載されており、これらの文献は、全体として本明細書中に、引用により取り込まれている。さらに、コールタール分取物、及びカシューナッツシェル液から得られるような、混合クレゾール異性体、キシレノール、及びフェノールブレンドなどのアルデヒド-反応性フェノールの混合物を、該フェノール化合物の全て、又は一部として使用することができる。ビスフェノール-A種のような複数環のフェノールも、適切である。
【0023】
幾つかの実施態様において、少なくとも2つのフェノール化合物を使用する。例えば、第一のフェノール化合物を、フェノール、又は置換フェノールとすることができ;第二のフェノール化合物を、レゾルシノール、又は置換レゾルシノールとすることができる。幾つかの例において、該第一、及び第二のフェノール化合物は、フェノール、又は置換フェノールであるが、但し、該2つの化合物は、異なるものである。他の例において、該第一、及び第二のフェノール化合物は、レゾルシノール、又は置換レゾルシノールであるが、但し、該2つの化合物は、異なるものである。前記組合せの例を挙げると、制限はないが、フェノール/t-オクチルフェノール;フェノール/レゾルシノール;フェノール/クレゾール;p-ブチルフェノール/フェノール;クレゾール/レゾルシノールなどがある。
【0024】
フェノール化合物と反応させる適切なアルデヒドは、このような反応をすることができる、全てのアルデヒドを含む。前記アルデヒドの種類は、式R-CH=Oで表されるものであり、式中のRは、1つの基につき、炭素原子1〜20個を有するアルキル、アリール、又はアラルキルである。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ベンジルなどであり得る。前記アルデヒドの例を挙げると、制限はないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソ-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、桂皮アルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、フルフラール、フェニルアセトアルデヒド、クロラール、クロロアセトアルデヒド、ジクロロアセトアルデヒド ラウリルアルデヒド、パルミチルアルデヒド、ステアリルアルデヒド、及びこれらの混合物がある。ホルムアルデヒドに加えて、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、及びテトラオキサンも使用することができる。アルデヒドが好ましいが、代わりにケトンを使用することができる。適切なケトンの例は、アセトンである。
【0025】
常に必要ということはないが、該フェノールノボラック樹脂を、酸、塩基、又はオルト-配向性触媒の存在下で、効率的に合成することができる。適切な酸触媒の例を挙げると、制限はないが、硫酸、塩酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びこれらの混合物などのような酸がある。適切な塩基触媒の例を挙げると、制限はないが、水酸化アルカリ又はアルカリ土類金属、及び炭酸塩がある。オルト置換フェノールノボラック樹脂の合成に使用するための適切な触媒は、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ストロンチウム、カドミウム、鉛、及び/又はバリウムのような二価金属イオンの弱有機酸塩であり得る。
【0026】
シラン改質樹脂の合成に適切な該フェノールノボラック樹脂は、制限はされないが、フェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-アルキルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-アラルキルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、高度にオルト位のフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルフェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アラルキルフェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルレゾルシノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アラルキルレゾルシノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、及びこれらの混合物である。
【0027】
幾つかの実施態様において、改質フェノール樹脂を、該シラン改質樹脂製造の開始剤として使用する。該改質フェノール樹脂は、フェノール化合物と、アルデヒド又はケトンと、オレフィン不飽和化合物とを、同時に、又は順次に反応させることにより得られる。適切なオレフィン不飽和化合物は、制限されないが、一般的に、下記式で表されるビニル芳香族である:
R'-CH=CH2
(式中、R'は、フェニル、置換されたフェニル、又は他の芳香族基である。)。適切なオレフィン不飽和化合物の例を挙げると、制限はないが、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニル-ナフタレン、インデン、及びビニルトルエンがある。幾つかの反応において、スチレンを、オレフィン不飽和化合物として使用する。該得られた樹脂は、スチレン化フェノール樹脂である。通常、該フェノール樹脂対該オレフィン不飽和化合物のモル比は、約1:0.4〜約1:1の間である。幾つかの実施態様において、該モル比は、約1:0.5〜約1:0.9、約1:0.55〜約1:0.8、約1:0.6〜1:0.7である。他の実施態様において、該モル比は、約1:0.60〜約1:0.65である。さらなる反応条件は、米国特許第5,021,522号、及び第5,049,641号に記載されており、これらの文献は、全体として本明細書中に、引用により取り込まれている。
【0028】
先に記載したように、シラン改質フェノールノボラック樹脂を、フェノール樹脂又はブレンドと、式(C)、(D)、又は(E)で表される化学構造を有する1以上のシランとを、中性条件下で反応させることにより製造することができる:
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、R6、R7、及びR8は、独立に、炭素原子1〜4個のアルキル基、炭素原子1〜8個のアルコキシ基、フェニル基、又はシクロアルキル基であり;R9は、炭素原子1〜12個を有する、二価の飽和、又は不飽和の脂肪族直鎖、又は分岐炭化水素基であり;Xは、チオール(-SH)、イソシアナト(-NCO)、尿素(-NH-(C=O)-NH2)、又はグリシジルエーテル(エポキシ)基であり;Zは、Sx(x=1〜8)、又はNH基であり;かつR10は、ビニル基(-CH=CH2)、又はアルコキシ基である。)。
【0031】
式Cの適切なシランの例を挙げると、制限はないが、下記のものがある:3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、3-(イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノエチル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシエチル)トリエトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3-(アミノエチル)トリメトキシシラン、3-(アミノブチル)トリエトキシシラン、3-(アミノエチル)トリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)メチル-ジエトキシシラン、及びN-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素などである。
【0032】
式Dの適切なシランの例を挙げると、制限はないが、下記のものがある:3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2'-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3'-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、及びビス-シリルアミノシランなどを含むビス-シリルポリ硫黄シランである。
【0033】
式Eの適切なシランの例を挙げると、制限はないが、下記のものがある:ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、及びビニルジメチルエトキシシランなどである。
【0034】
該シラン-改質フェノール樹脂は、例えば、フェノール樹脂とシランとを混合し、該混合物を加熱して、脱アルコール化縮合反応により形成されるアルコールを除去することにより調製される。該反応温度は、約70℃〜約150℃であり、好ましくは約80℃〜約110℃である。全反応時間は、約0.5時間〜約15時間を変動することができる。好ましくは、該シラン自身の縮合反応を防ぐように、該反応を、実質的に無水条件下で行う。該反応の実行に適した、さらなる反応条件は、米国特許第4,022,753号;第 5,177,157号;第5,736,619号;及び第6,441,106号に記載されており、これらの文献は、全体として本明細書中に引用により取り込まれている。
【0035】
該脱アルコール化反応において、該反応を促進するように、触媒を使用してもよい。該触媒の例を挙げると、制限はないが、酢酸、p-トルエンスルホン酸、安息香酸、プロピオン酸、及び類似の有機酸類;リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドニウム、マンガン、及び類似の金属類;酸化物類、有機酸塩類、ハロゲン化物類、アルコキシド類、及びこれらの金属類の類似物がある。これらのうち、特に、有機酸類、有機スズ、スズオルガノエート(tin organoate)が好ましい。さらに、酢酸、ジブチルスズジラウレート(dibutyltin dilaurate)、スズオクトエート(tin octoate)なども好ましい。
【0036】
上記反応を、溶媒下、又は無溶媒下で行うことができる。該溶媒は、該フェノール樹脂とシランとを溶解することができる範囲で、特に制限されない。前記溶媒の例を挙げると、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンがある。脱アルコール化反応の素早い進行が所望される場合、好ましくは、該反応を無溶媒下で行う。しかし、該反応系の粘度が過度に増加する場合、溶媒を使用した方が好ましい。
【0037】
上記反応において、所望のフェノールのヒドロキシル当量、及び粘度を有する該シラン-改質フェノール樹脂を得るために、該フェノール樹脂とシランとの間の該脱アルコール化反応を、該反応の間に停止してもよい。該反応の停止のために、幾つかの方法を使用することができる。例えば、有効な方法は、所望量のアルコール溶出物を得る時に、冷却、触媒の非活性化、又は該反応系にアルコールを添加することである。
【0038】
このようにして得られるシラン-改質フェノール樹脂は、主成分として、シランで改質された、フェノールのヒドロキシル基を少なくとも1つ有するフェノール樹脂を含む。該樹脂は、未反応のフェノール樹脂、及びシランを含んでいてもよく、これらは、必要に応じて分離される。
【0039】
シラン改質フェノールノボラック樹脂の製造において、該シラン対ノボラック樹脂の重量比は、1:99〜99:1に変動することができる。シラン類の高いコストのために、約0.5:100〜約20:100、又は約0.5:100〜約5:100のシラン対ノボラック樹脂の重量比でシランを使用する。幾つかの実施態様において、該フェノールノボラック樹脂におけるフェノールのヒドロキシル基の当量数に対する、該シランにおけるアルコキシ基の当量数の割合は、1未満であり、好ましくは約0.5未満、約0.01未満、0.009未満、約0.008未満であり;約0.007未満、約0.006未満、約0.005未満、又は約0.0001未満である。
【0040】
先に記載したように、加硫性ゴム組成物を、該メチレンアクセプターとして該シラン-改質フェノール樹脂を使用することにより製造することができる。該加硫性ゴム組成物は:(I)ゴム成分(天然、又は合成ゴムとすることができる。);及び(II)加熱によりホルムアルデヒドを生じるメチレンドナー化合物;及び(III)本明細書中に記載したシラン-改質フェノール樹脂を基礎とした、該メチレンアクセプターを含む。任意に、該ゴム組成物は、(IV)硫黄のような加硫剤;及び(V)1以上のゴム添加剤を含んでもよい。幾つかの実施態様において、該加硫性ゴム組成物は、シランで改質されていないフェノール樹脂を基礎としたメチレンアクセプターを用いて配合される。前記フェノール樹脂は上述した。例えば、そのような樹脂の1つは、フェノール/t-オクチルフェノール/ホルムアルデヒドノボラックである。
【0041】
該ゴム成分を、全ての天然ゴム、合成ゴム、又はこれらの組合せとすることができる。合成ゴムの具体例を挙げると、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレートのようなモノマーを有する1,3-ブタジエン、又はイソプレンのコポリマー、並びにエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)、及び特にエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンのターポリマーがある。
【0042】
該メチレンドナー成分を、該加硫の間に、加熱時にホルムアルデヒドを生じる化合物とすることができ、かつ該ゴムコンパウンドの配合に使用される該メチレンアクセプターと反応することができる。適切なメチレンドナーの例を挙げると、制限はないが、ヘキサメチレンテトラミン (HEXA、又はHMT)、及びヘキサメトキシメチルメラミン (HMMM)がある。他の適切なメチレンドナーは、米国特許第3,751,331号に記載されており、この文献は、全体として本明細書中に取り込まれている。通常、該メチレンドナーは、ゴム100部に対して、約0.5〜15部、好ましくはゴム100部に対して、約0.5〜10部の濃度で存在する。メチレンドナー対メチレンアクセプターの重量比を変更してもよい。しかし、一般的に、該重量比は、1:10〜10:1の範囲であろう。好ましくは、メチレンドナー対メチレンアクセプターの重量比は、1:3〜3:1の範囲である。
【0043】
該加硫性ゴム組成物は、硫黄のような加硫剤を含んでもよい。適切な硫黄加硫剤の例を挙げると、硫黄元素、又は硫黄供与性加硫剤(sulfur donating vulcanizing agent)がある。好ましくは、該硫黄加硫剤は、硫黄元素である。また、他の架橋剤を使用してもよい。
また、該加硫性ゴム組成物は、ゴム組成物に使用される添加剤を1以上含んでもよい。該ゴム素材に一般に使用される該添加剤は、カーボンブラック、コバルト塩、ステアリン酸、シリカ、酸化亜鉛、充填剤、可塑剤、ワックス、プロセスオイル、遅延剤、及びオゾン亀裂防止剤などがある。
【0044】
また、促進剤を使用し、該加硫に必要な時間、及び/又は温度を制御し、かつ該加硫特性を改善する。適切な促進剤は、制限はないが、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチカルボネート、及びザンサーテ(zanthate)がある。好ましくは、該主要な促進剤は、スルフェンアミドである。
【0045】
また、本発明の実施態様は、ゴムと補強材との接着を改善する方法を提供し、従って、ゴムと補強材との間の改善された接着の結果、加工ゴム製品の製造方法を提供する。該方法は、(i)架橋剤と、上記の本発明の実施態様に従って製造された加硫性ゴム組成物とを混合すること;(ii)該ゴム組成物を架橋する前に、該加硫性ゴム組成物中に補強材を埋め込むこと;及び(iii)該ゴム組成物を架橋させることを含む。好ましくは、該補強材は、該埋め込み前には、シラン成分でコーティングされていない。換言すると、該補強材は、該埋め込み前には、実質的にシランコーティングされていない。該用語"埋め込み"は、該補強材を、積層、圧延、混合などのような、ある適切な方法で、ゴム組成物と組み合わせることを意味する。該ゴム組成物の母材に密接に取囲まれる該補強材を有することが好ましいが、この場合、それは必要ない。該シラン-改質フェノール樹脂は、ゴム組成物に使用される前には、実質的に架橋されていないが、該ゴム組成物が加硫された場合に、架橋されると理解されるべきである。
【0046】
該補強材は、コード、ワイヤー、繊維、フィラメント、織物などの形態にすることができる。適切な補強材の例を挙げると、制限はないが、スチール (黄銅、亜鉛、又は青銅でコーティングされ得る。)、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ガラス繊維、及び他の有機又は無機成分がある。
【0047】
必須ではないが、該補強材を、未硬化ゴム組成物と組合わせる前に、接着性成分でコーティングすることができる。該補強材と該硬化ゴム成分との間の接着を増強する、全ての接着性成分を使用することができる。例えば、ゴムと補強材との間の接着を増強するための、特定の適切な接着性成分は、下記米国特許に記載されている:第6,416,869号;第6,261,638号;第5,789,080号;第5,126,501号;第4,588,645号;第4,441,946号;第4,236,564号;第4,051,281号;第4,052,524号;及び第4,333,787号である。これらの文献は、全体として、本明細書中に引用により取り込まれている。これらの接着性成分を、変更の有無にかかわらず、これらの文献に示されている方法に従って使用することができる。しかし、該補強材をコーティングする該接着性成分は、式(C)、(D)、及び(E)により表されるシランを含まない。
【0048】
上記樹脂を基盤としたゴム組成物を、タイヤ、パワーベルト、コンベヤーベルト、印刷用ロール、ゴムヒール、ゴム靴底、自動車のフロアマット、トラックの泥除けフラップ、又はボールミルライナーなどのような複合製品の製造に使用してもよい。また、本明細書中に記載したゴム組成物を、タイヤに使用するために、ワイヤーコート、又はビーズコートとして使用してもよい。ゴムと金属との接着を促進することが知られているコバルト化合物の幾つかの形態を使用してもよい。適切なコバルト塩は、制限されないが、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、及びリノール酸などのような脂肪酸のコバルト塩;炭素原子6〜30個を有する、脂肪族、又は脂環式カルボン酸のコバルト塩;塩化コバルト、ナフテン酸コバルト、コバルトネオデコノエート、及びOM Group社、Cleveland、Ohioから、商品名モノボンド680C(Monobond 680C)に基づき商業的に入手することができる、有機-コバルト-ホウ素錯体がある。
【0049】
下記実施例は、本発明の実施態様を例証する。すべての数値は、近似値である。数値域が定められている場合、該規定範囲外の実施態様も、本発明の範囲内に含むことができると理解されるであろう。各実施例に記載した、具体的な詳細は、本発明に必須の特徴として記載されているものではない。
【0050】
硬化性を、ASTM D-5289に従い、150EC、0.5°arc、及び1.67Hzで、アルファテクノロジーズMDRレオメーター(Alpha Technologies MDR Rheometer)を用いて測定した。各試験コンパウンドに対して、ワイヤー移動接着性(Wire pullout adhesion)を、63.7%の銅めっきが、該ゴムパッド内に19mm組込まれた黄銅めっきスチールコードを用いて、ASTM D-2229-02により測定した。
該樹脂の軟化点を、最新版ASTM E 28、及びASTM D 3104(これらは、全体として本明細書中に、引用により取り込まれている。)を参照して、下記方法に従い測定した。
【0051】
装置:カップ-0.257"開口部に、穴を開けたピッチ型(F drill);440ステンレススチールボール(直径0.2500"であり、かつカップを通ることができる);(1)制御装置モデルFP-90、又は同等物、(2)炉モデルFP-83、又は同等物、及び(3)カートリッジ集成装置を含む、メトラー軟化点装置;タイマー;磁器蒸発皿(直径約3");及びホットプレート。該メトラー装置の較正は、ASTM D 3104を参照されたい(本明細書中に、引用により取り込まれている。)。
【0052】
手順:磁器、又はアルミニウム蒸発皿中の樹脂15グラムを溶融する。ホットプレートの表面温度316〜343℃(600〜650°F)で、溶融時間は、約4分である。過熱は避けるべきである。該樹脂を溶融し、少なくとも該溶融樹脂の温度に予熱したカップに注ぐ。該カップに注いだ多量の樹脂を凝固し、その後、過剰量を、過熱したスパチュラ、又はパテナイフで除去することができる。該カップの側面、及び下部に、支持体形成用の穴を開けたアルミニウムプレートを使用することができ、又はこれらを、過剰の樹脂を除去する場合に、ピンセットでつかむことができる。該試料を、デシケーター内で室温に冷やし、該ボールが、該樹脂の表面上に静止するように、該カートリッジを組立てる。該組立てたカートリッジを、前もって85℃、又は予測される軟化点より10〜15℃低い温度に設定されている炉の中に置く。該加熱速度を、1℃/分に設定する。該カートリッジを、位置が固定されるまで回し、かつ30秒、放置する。次に、軟化点測定装置の操作を開始する。該表示器上の軟化点を読む。再現測定は、1.0℃を超えて、違いがあってはならない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
3-(アミノプロピル)トリエトキシシランで改質したレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、レゾルシノールを143.1グラム(1.3モル)加え、かつ120〜130℃に加熱した。該温度に達した後、63.4グラム(0.79)モルの37.6%ホルムアルデヒドを、還流条件下、90〜120分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒドの添加終了後に、該反応を、さらに30〜60分間還流させた。該反応温度を上げ、大気圧下、及び減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。3-(アミノプロピル)トリエトキシシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点107.7℃であり、遊離レゾルシノールの含有量は、ガスクロマトグラフィー/液体クロマトグラフィー("GC/LC")分析により、17重量パーセントであった。炭素-13、及びプロトンNMR分析は、レゾルシノール/ホルムアルデヒドと遊離レゾルシノールとの混合物に特有の化学シフトを示した。NMRスペクトルの形跡は、該アミノ基が、レゾルシノールのヒドロキシル基と反応し、アリール-NH-CH2CH2CH2-Si構造を形成していることを示している。未反応の-CH2NH2構造がないことを観察した。
【0054】
(実施例2)
トリエトキシビニルシランで改質したレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、レゾルシノールを143.1グラム(1.3モル)加え、かつ120〜130℃に加熱した。該温度に達した後、63.4グラム(0.79モル)の37.6%ホルムアルデヒドを、還流条件下、90〜120分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒドの添加終了後に、該反応を、さらに30〜60分間還流させた。95〜105℃に冷却後、該反応にシュウ酸を1.7グラム加え、かつ15〜30分間、還流条件下を持続させた。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。トリエトキシビニルシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点105.4℃であり、遊離レゾルシノールの含有量は、ガスクロマトグラフィー/液体クロマトグラフィー("GC/LC")分析により、17重量パーセントであった。炭素-13、及びプロトンNMR分析は、レゾルシノール/ホルムアルデヒドと遊離レゾルシノールとの混合物に特有の化学シフトを示した。さらに、エトキシシランシラン構造(Si-O-CH2CH3)がないこと、又は未反応ビニル構造が検出された。
【0055】
(実施例3)
トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランで改質した、フェノール、及びレゾルシノールのノボラック樹脂ブレンドの合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、ディーンスターク(Dean Stark)、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、フェノールを128.3グラム(1.35モル)、t-オクチルフェノールを21.3グラム(0.1モル)、p-トルエンスルホン酸を1.0グラム、及びトルエンを50〜70グラム加え、かつ還流するように加熱した。該還流温度に達した後、83.9グラム(1.05)モルの37.6%ホルムアルデヒドを、還流条件下、3〜5時間かけて、滴下して加えた。該添加の間に、該ホルムアルデヒド溶液から水を回収し、かつディーンスタークから排出した。該ホルムアルデヒドの添加終了後に、該反応を、さらに30〜60分間還流させた。90〜95℃に冷却した後、50%水酸化ナトリウムを0.5グラム加え、該酸触媒を中和した。該反応温度を110〜120℃に上げ、次にレゾルシノール/ホルムアルデヒド樹脂であるペナコライト(Penacolite)(登録商標)R-50の165.0グラムを、還流条件下、20〜60分かけて滴下して加えた。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点105.0℃であった。GC/LC分析は、遊離フェノール含有量が1.5重量パーセント、遊離t-オクチルフェノール含有量が1.7重量パーセント、及び遊離レゾルシノール含有量が6.0重量パーセントであることを示した。
【0056】
IR分析は、該イソシアネート構造とヒドロキシル基との反応由来であるカルバメート構造[-O-C(=O)-NH-]を低水準含むフェノール/レゾルシノール/ホルムアルデヒド樹脂に特有の吸収ピークを示した。未反応-N=C=O構造は、あったとしても、わずかであることが検出された。
【0057】
(実施例4)
ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンで改質したt-オクチルフェノール-ホルムアルデヒド-レゾルシノール ノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、t-オクチルフェノールを106.3グラム(0.5モル)、パラホルムアルデヒド(95%、未処置)を25.3グラム(0.80モル)、37.6%ホルムアルデヒドを19.2グラム(0.24モル)、及びキシレンを43.2グラム加え、かつ75〜80℃に加熱した。該温度に達した後、6.4グラム(0.04モル)の25%水酸化ナトリウムを、20〜30分の時間をかけて、滴下して加えた。該反応を85〜90℃に加熱し、かつ3〜5時間、持続させた。該反応を60〜65℃に冷却し、かつレゾルシノールを15〜20分かけて加えた。該レゾルシノールを加えた後、該反応を100〜110℃に加熱し、かつ60〜90分間、持続させた。該反応を85〜90℃に冷却後、50%硫酸の7.8グラム(0.04モル)を、5〜10分かけて、ゆっくりと加えた。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(BTPA)を、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点116.5℃であった。GC/LC分析は、遊離レゾルシノール含有量が8.6重量パーセント、遊離フェノール含有量が0.14重量パーセント、及び遊離t-オクチルフェノール含有量が2.7重量パーセントであることを示した。
【0058】
(実施例5)
トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシランで改質したレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、レゾルシノールを143.1グラム(1.3モル)加え、かつ120〜130℃に加熱した。該温度に達した後、63.4グラム(0.79)モルの37.6%ホルムアルデヒドを、還流条件下、90〜120分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒドの添加終了時に、該反応を、さらに30〜60分間還流させた。95〜105℃に冷却後、該反応にシュウ酸を1.7グラム加え、かつ15〜30分間、還流条件下を持続させた。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点106.6℃であり、遊離レゾルシノールの含有量は、GC/LC分析により、17重量パーセントであった。炭素-13、及びプロトンNMR分析は、レゾルシノール/ホルムアルデヒドと遊離レゾルシノールとの混合物に特有の化学シフトを示した。また、2-エトキシシランシランがないこと、又は未反応ビニル構造が検出された。メトキシエトキシシラン構造(Si-OCH2CH2OCH3)がないことは、該レゾルシノール樹脂に存在するヒドロキシル基と可能な反応により、SiOH基に加水分解されたことを示している。
【0059】
(実施例6)
トリメトキシビニルシランで改質したレゾルシノール-スチレン-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、レゾルシノールを110.1グラム(1.0モル)、及びp-トルエンスルホン酸を0.35グラム加え、かつ120〜130℃に加熱した。該温度に達した後、73.6グラム(0.70モル)のスチレンを、125〜130℃で、30〜60分の時間をかけて、滴下して加えた。該スチレンを加えた後、該反応を15〜30分間、125〜135℃に保った。次に、該温度を150〜155℃に上げ、かつ15〜30分間維持した。130〜140℃に冷却後、さらに6.0グラム(0.055モル)のレゾルシノールを、ゆっくりと加えた。二回目のレゾルシノールを加えた後、37.7%ホルムアルデヒドの51.8グラム(0.65)モルを、還流条件下、30〜60分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒド添加終了後、該反応を90〜100℃に冷却した。90〜100℃に冷却後、変性アルコール3.6グラムを、該反応に加えた。次に、50%水酸化ナトリウムを0.2グラム加え、該触媒を中和した。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。トリメトキシビニルシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点104.3℃であり、遊離レゾルシノールの含有量は、0.83重量パーセントであった。プロトンNMR分析は、該樹脂中に未反応ビニルシランがないことを示し、また該改質樹脂中にアリール-CH(CH3)-Si、及びSi-O-CH3基の存在を示した。アリール-CH(CH3)-Si基の存在は、該樹脂生成物に存在する、該レゾルシノール、又はレゾルシノール樹脂とビニルシランとの反応を示している。
【0060】
(実施例7)
(N-(3-トリエトキシシリル)プロピル)尿素で改質したレゾルシノール-スチレン-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、レゾルシノールを110.1グラム(1.0モル)、及びp-トルエンスルホン酸を0.35グラム加え、かつ120〜130℃に加熱した。該温度に達した後、73.6グラム(0.70モル)のスチレンを、125〜130℃で、30〜60分の時間をかけて、滴下して加えた。該スチレンを加えた後、該反応を15〜30分間、125〜135℃に保った。次に、該温度を150〜155℃に上げ、かつ15〜30分間維持した。130〜140℃に冷却後、さらに6.0グラム(0.055モル)のレゾルシノールを、ゆっくりと加えた。二回目のレゾルシノールを加えた後、37.7%ホルムアルデヒドの51.8グラム(0.65)モルを、還流条件下、30〜60分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒド添加終了後、該反応を90〜100℃に冷却した。90〜100℃に冷却後、変性アルコール3.6グラムを、該反応に加えた。次に、50%水酸化ナトリウムを0.2グラム加え、該触媒を中和した。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。N-(3-トリエトキシシリル)プロピル)尿素溶液(メタノール中に50%)を、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点98.2℃であり、遊離レゾルシノールの含有量は、0.77重量パーセントであった。プロトンNMR分析は、該樹脂構造中にアリール-NH-CH(=O)-NHCH2-、及びSi-O-CH2CH3基の存在を示しており、該添加したシランと該レゾルシノール、又はレゾルシノール樹脂との反応を示している。
【0061】
(実施例8)
3-(アミノプロピル)トリエトキシシランで改質したレゾルシノール-スチレン-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、レゾルシノールを110.1グラム(1.0モル)、及びp-トルエンスルホン酸を0.35グラム加え、かつ120〜130℃に加熱した。該温度に達した後、73.6グラム(0.70モル)のスチレンを、125〜130℃で、30〜60分かけて、滴下して加えた。該スチレンを加えた後、該反応を15〜30分間、125〜135℃に保った。次に、該温度を150〜155℃に上げ、かつ15〜30分間維持した。130〜140℃に冷却後、さらに6.0グラム(0.055モル)のレゾルシノールを、ゆっくりと加えた。二回目のレゾルシノールを加えた後、37.7%ホルムアルデヒドの51.8グラム(0.65)モルを、還流条件下、30〜60分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒド添加終了後、該反応を90〜100℃に冷却した。90〜100℃に冷却後、変性アルコール3.6グラムを、該反応に加えた。次に、50%水酸化ナトリウムを0.2グラム加え、該触媒を中和した。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。3-(アミノプロピル)トリエトキシシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終生成物は、軟化点110.4℃であり、遊離レゾルシノールの含有量は、0.76重量パーセントであった。プロトンNMR分析は、アリール-N(H)-CH2CH2CH2-Si、及びSi-O-CH2CH3基の存在、及び未反応Si-CH2CH2CH2-NH2基が存在していないことを示した。該樹脂構造中のアリール-N(H)-CH2CH2CH2-Si基の存在は、該添加したシランと該レゾルシノール、又はレゾルシノール樹脂との反応を示している。
【0062】
(実施例9)
(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシランで改質したレゾルシノール-スチレン-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、レゾルシノールを110.1グラム(1.0モル)、及びp-トルエンスルホン酸を0.35グラム加え、かつ120〜130℃に加熱した。該温度に達した後、73.6グラム(0.70モル)のスチレンを、125〜130℃で、30〜60分の時間をかけて、滴下して加えた。該スチレンを加えた後、該反応を15〜30分間、125〜135℃に保った。次に、該温度を150〜155℃に上げ、かつ15〜30分間維持した。130〜140℃に冷却後、さらに6.0グラム(0.055モル)のレゾルシノールを、ゆっくりと加えた。二回目のレゾルシノールを加えた後、37.7%ホルムアルデヒドの51.8グラム(0.65)モルを、還流条件下、30〜60分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒド添加終了後、該反応を90〜100℃に冷却した。90〜100℃に冷却後、変性アルコール3.6グラムを、該反応に加えた。次に、50%水酸化ナトリウムを0.2グラム加え、該触媒を中和した。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終シラン-改質生成物は、軟化点110.4℃であり、遊離レゾルシノールの含有量は、0.82重量パーセントであった。
【0063】
(実施例10)
3-(イソシアナトプロピル)トリエトキシシランで改質したフェノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、フェノールを137.8グラム(1.45モル)、及びp-トルエンスルホン酸を1.0グラム加え、かつ90〜95℃に加熱した。該温度に達した後、37.6%ホルムアルデヒドの83.9グラム(1.05)モルを、95〜100℃で、60〜120分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒドの添加終了後、該反応を還流するように加熱した。該反応を2〜4時間、還流条件下で持続させた。還流後、50%水酸化ナトリウムを0.5グラム加え、該酸触媒を中和した。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。トリエトキシ(3-イソシアナトプロピル)シランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終シラン-改質生成物は、軟化点96.5℃であり、遊離フェノールの含有量は、GC/LC分析から2.6重量パーセントであった。IR分析は、低水準のカルバメート構造[-O-C(=O)-N(-H)-]を含むフェノール/ホルムアルデヒド樹脂に特有の吸収ピークを示した。該カルバメート構造は、-N=C=O構造とアリール-OH基との反応の結果である。未反応-N=C=O構造は、あったとしても、わずかであることが検出された。プロトンNMR分析は、アリール-O-C(=O)NH-CH2CH2CH2-Si-、及びSi-OCH2CH3基の存在を示し、該シランと該フェノール樹脂との反応を確認した。
【0064】
(実施例11)
(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシランで改質したフェノール-t-オクチルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、フェノールを128.3グラム(1.35モル)、t-オクチルフェノールを21.3グラム(0.1モル)、及びp-トルエンスルホン酸を1.0グラム加え、かつ90〜95℃に加熱した。該温度に達した後、37.6%ホルムアルデヒドの83.9グラム(1.05)モルを、95〜100℃で、60〜120分の時間をかけて、滴下して加えた。該ホルムアルデヒドの添加終了後、該反応を還流するように加熱した。該反応を2〜4時間、還流条件下で持続させた。還流後、50%水酸化ナトリウムを0.5グラム加え、該酸触媒を中和した。該反応温度を上げ、大気圧下、及び次いで減圧下で水留出物を除去した。蒸留終了後に、該反応温度を120〜140℃に調節した。(3-メルカプトプロピル)-トリエトキシシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合させた。該最終シラン-改質生成物は、軟化点93.7℃であり、GC/LC分析から、遊離フェノールの含有量は0.98重量パーセント、及び遊離t-オクチルフェノールの含有量は3.7重量パーセントであった。
【0065】
(実施例12)
トリエトキシビニルシランで改質したフェノールノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、フェノールを128.3グラム(1.35モル)、t-オクチルフェノールを21.3グラム(0.1モル)、及び酢酸亜鉛を1.0グラム加え、かつ45〜55℃に加熱した。該温度に達した後、37.6%ホルムアルデヒドの59.9グラム(0.75モル)を、5〜10分の時間をかけて、流して加えた。該ホルムアルデヒドの添加終了後、該反応を還流するように加熱し、かつ1〜2時間、持続させた。該反応を85〜95℃に冷却し、別の37.6%ホルムアルデヒドの24.0グラム(0.3モル)を、85〜95℃で、15〜30分かけて滴下して加えた。該添加終了後、該反応を還流するように加熱し、かつ、さらに1〜2時間、持続させた。該反応温度を上げ、大気圧下で水留出物を除去した。該留出物を125〜130℃に収集した。1度目の蒸留終了後、該反応を再び還流のために設定した。該反応を、さらに1〜2時間、還流を持続させた。該反応温度を上げ、2度目の大気圧下で水留出物を除去した。該留出物を、150〜155℃に収集し、次いで155〜160℃に減圧条件下で蒸留した。蒸留終了後、該反応温度を120〜140℃に調節した。トリエトキシビニルシランを、該樹脂収率の約3重量%の水準で、滴下して加え、かつ15〜30分間混合した。該最終生成物は、軟化点100.9℃であり、GC/LC分析から、遊離フェノールの含有量は2.0重量パーセント、遊離t-オクチルフェノールの含有量は1.4重量パーセント、及び遊離トリエトキシビニルシランの含有量は1.2重量パーセントであった。
【0066】
(実施例13)
シラン改質していないフェノールノボラック樹脂の合成
スターラー、温度計、還流コンデンサー、及び添加漏斗を備えた、500 mLの反応がまに、フェノールを128.3グラム(1.35モル)、t-オクチルフェノールを21.3グラム(0.1モル)、及び酢酸亜鉛を1.0グラム加え、かつ45〜55℃に加熱した。該温度に達した後、37.6%ホルムアルデヒドの59.9グラム(0.75モル)を、5〜10分かけて、流して加えた。該ホルムアルデヒドの添加終了後、該反応を還流するように加熱し、かつ1〜2時間、持続させた。該反応を85〜95℃に冷却し、別の37.6%ホルムアルデヒドの24.0グラム(0.3モル)を、85〜95℃で、15〜30分かけて滴下して加えた。該添加後、該反応を還流するように加熱し、かつ、さらに1〜2時間、持続させた。該反応温度を上げ、大気圧下で水留出物を除去した。該留出物を125〜130℃に収集した。1度目の蒸留終了後、該反応を、再び還流のために設定した。該反応を、さらに1〜2時間、還流下を持続させた。該反応温度を上げ、2度目の大気圧下で水留出物を除去した。該留出物を、150〜155℃に収集し、次いで155〜160℃に減圧下で蒸留した。該反応器から得られた樹脂は、軟化点108.7℃であり、GC/LC分析から、遊離フェノールの含有量は2.6重量パーセント、及び遊離t-オクチルフェノールの含有量は1.3重量パーセントであった。
【0067】
(実施例14)
ゴム配合、及び試験
実施例12、及び13に従って製造されたメチレンアクセプター樹脂を、黒天然ゴムコンパウンド(black natural rubber compound)において評価し、改善されたスチール-ワイヤー接着特性に対して、過熱下、及び湿気-劣化条件下で、これらの性能を評価した。表1に示した配合を有する黒天然ゴム組成物を、3段階の混合手順で調製した。次に、これらのゴム組成物を用いて、メチレンアクセプターの該化合物と、該メチレンドナーのヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)とを組合わせて、該接着効果を評価した。該メチレンドナー/アクセプターの比は、該ゴムコンパウンドの5重量部の組合せ荷重を有する該メチレンアクセプターに対して、2:3を維持した。
【0068】
【表1】

【0069】
第一段階において、該ゴムマスターバッチを混合し、約150℃のバンバリーミキサーに混合した。第二段階において、本発明の方法に従って調製したメチレンアクセプター、及びコバルト塩を、約121℃で、二本ロール機上の、適当量のマスターバッチに混合した。第三段階において、表1に示した該不溶性硫黄、促進剤、及び適当量のHMMMを、95℃で混合した。該試験コンパウンドを、約23℃、相対湿度50%の一定温度の部屋で、一晩調製した。次に、該化合物を、レオメーターキュア(Rheometer cure)に対して試験し、かつワイヤー接着性(wire adhesion)、及び機械的性質を評価するために、150℃で形成し、かつ最適に硬化させた。
【0070】
硬化性を、ASTM D-5289に従い、150EC、0.5E arc、及び1.67Hzで、アルファテクノロジーズMDRレオメーター(Alpha Technologies MDR Rheometer)を用いて測定した。各試験コンパウンドに対して、ワイヤー移動接着性(Wire pullout adhesion)を、63.7%の銅めっきが該ゴムパッド内に19 mm組込まれた黄銅めっきスチールコードを用いて、ASTM D-2229-02により測定した。表2に、実施例12、及び13のメチレンアクセプター樹脂に対する、硬化ゴムコンパウンドの該硬化様式、ワイヤー接着、物理、及び機械的特性を示した。
【0071】
【表2】

【0072】
表2の結果から、改善された性能を示す該シラン-改質フェノール樹脂に対して、該スチールワイヤーは、熱-、及び湿気劣化接着特性が劣化しないことは明らかである。湿気劣化条件下で、該スチールワイヤーのゴム適用範囲は、該シラン-改質フェノール樹脂に対して90%を示した。このデータは、該ゴムコンパウンドにシラン-改質フェノールノボラック樹脂を使用することで、該ゴムコンパウンドとの該スチールワイヤー接着が増強されるようであることを示している。該湿気劣化接着増強は、該スチールワイヤーとゴム界面での、水-、又は蒸気-耐性フェノールとシロキサンとの架橋網目構造の存在により、スチールワイヤーを浸食から保護するためにしてもよい。
【0073】
上述したように、本発明の実施態様は、ゴム配合に使用するためのシラン-改質フェノール樹脂を提供する。該シラン-改質フェノール樹脂は、低い軟化点を有し、該樹脂を取込む未硬化ゴム組成物の加工性を向上させるであろう。しかし、該改善された加工性は、他の性能特性を損なわない。例えば、該未硬化ゴム組成物の該接着特性、及び引裂特性は、現存するフェノール樹脂と同程度以上である。従って、ゴム配合において、該シラン-改質フェノール樹脂を使用することは、より良いゴム製品を生産するであろう。
【0074】
本発明は、限定された数の実施態様について記載しているが、1つの実施態様の特定の特徴を、本発明の他の実施態様に帰するべきではない。1つの実施態様は、本発明のすべての態様の代表ではない。幾つかの実施態様において、該組成物、又は方法は、本明細書中に記載のなかった、多くの化合物、又はステップを含んでいてもよい。他の実施態様において、該組成物、又はステップは、本明細書中に列挙しなかった、どの化合物、又はステップも含まない、若しくは、どの化合物、又はステップも実質的に存在しないものである。記載した実施態様からの変更、及び改質が存在する。該樹脂の製造方法は、多くの行為、又はステップを含むものとして記載される。これらのステップ、又は行為を、他に示さない限り連続して、又は順番に実施することができる。最後に、ここに開示した、すべての数は、該単語"約(about)"、又は"約(approximate)"が、該数の記載に使用されているかどうかにかかわらず、近似値を意味するものと解釈されるべきである。該添付のクレームは、本発明の範囲内の減少として、すべての改質、及び変更がカバーされることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールノボラック樹脂と、式(C)、(D)、又は(E)により表されるシラン、又はシラン化合物とを反応させることを含む方法により得られる、シラン-改質フェノール樹脂であって:
【化1】

(式中、R6、R7、及びR8は、独立に、炭素原子1〜4個のアルキル基、炭素原子1〜8個のアルコキシ基、フェニル基、又はシクロアルキル基であり;R9は、炭素原子1〜12個を有する、二価の飽和、又は不飽和の脂肪族直鎖、又は分岐炭化水素基であり;Xは、チオール、イソシアナト、尿素、又はグリシジルエーテル基であり;Zは、Sx、又はNH基であり、ここで、xは、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり;かつR10は、ビニル基、又はアルコキシ基である。)、かつ実質的に架橋されていない前記シラン改質フェノール樹脂。
【請求項2】
該シランが、式(C)により表されたものである、請求項1記載のシラン-改質フェノール樹脂:
【化2】

(式中、R6、R7、及びR8は、独立に、炭素原子1〜4個のアルキル基、炭素原子1〜8個のアルコキシ基、フェニル基、又はシクロアルキル基であり;R9は、炭素原子1〜12個を有する、二価の飽和、又は不飽和脂肪族の直鎖、又は分岐炭化水素基であり;Xは、チオール、イソシアナト、尿素、又はグリシジルエーテル基である。)。
【請求項3】
該シランが、式(D)により表されたものである、請求項1記載のシラン-改質フェノール樹脂:
【化3】

(式中、R6、R7、及びR8は、独立に、炭素原子1〜4個のアルキル基、炭素原子1〜8個のアルコキシ基、フェニル基、又はシクロアルキル基であり;R9は、炭素原子1〜12個を有する、二価の飽和、又は不飽和脂肪族の直鎖、又は分岐炭化水素基であり;Xは、チオール、イソシアナト、尿素、又はグリシジルエーテル基であり;Zは、Sx、又はNH基であり、ここで、xは、1、2、3、4、5、6、7、又は8である。)。
【請求項4】
該シランが、式(E)により表されたものである、請求項1記載のシラン-改質フェノール樹脂:
【化4】

(式中、R6、R7、及びR8は、独立に、炭素原子1〜4個のアルキル基、炭素原子1〜8個のアルコキシ基、フェニル基、又はシクロアルキル基であり、かつR10は、ビニル基、又はアルコキシ基である。)。
【請求項5】
該フェノールノボラック樹脂が、下記から選択されたものである、請求項1、2、3、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂:フェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-アルキル-フェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-アラルキルフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、高度にオルト位のフェノール-ホルムアルデヒドノボラック、フェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルフェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アラルキルフェノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキルレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アルキル-レゾルシノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、アラルキルレゾルシノール-レゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック、又はこれらの混合物。
【請求項6】
該シラン-改質フェノール樹脂を製造する反応の間に、相当量のシロキサンポリマーを形成していない、請求項1、2、3、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項7】
該フェノールノボラック樹脂が、式(A)により表される1以上のフェノール化合物と、1以上のアルデヒド、又はケトン化合物とを反応させることにより得られたものである、請求項1、2、3、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂:
【化5】

(式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立に、水素原子、ヒドロキシル、炭素原子1〜15個を有するアルキル、炭素原子8〜12個を有するアラルキル、ハロゲン、又はアミノ基から選択された有機基を表す。)。
【請求項8】
該フェノール化合物が、フェノール、アルキル置換フェノール、又はアラルキル置換フェノールである、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項9】
該フェノール化合物が、フェノールと、アルキル又はアリール置換フェノールとの混合物である、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項10】
該フェノール化合物が、レゾルシノール、又はアルキル置換レゾルシノール、又はアラルキル置換レゾルシノールである、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項11】
該フェノール化合物が、レゾルシノールと、アルキル又はアリール置換レゾルシノールとの混合物である、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項12】
該フェノール化合物が、2種の化合物の混合物であり、第1化合物が、フェノール、又はアルキル置換フェノールから選択され;第2化合物が、レゾルシノール、又はアルキル置換レゾルシノール、又はアラルキル置換レゾルシノールから選択された、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項13】
該フェノール化合物が、下記のものである、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂:フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3-エチルフェノール、3,5-ジエチルフェノール、p-ブチルフェノール、3,5-ジブチルフェノール、p-アミルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、スチリルフェノール、3,5-ジシクロヘキシル-フェノール、p-クロチルフェノール、3,5-ジメトキシフェノール、3,4,5-トリメトキシフェノール、p-エトキシ-フェノール、p-ブトキシフェノール、3-メチル-4-メトキシフェノール、p-フェノキシフェノール、アミノフェノール、又はこれらの混合物。
【請求項14】
該フェノール化合物が、レゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、2-メチル-レゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、4-プロピルレゾルシノール、スチリルレゾルシノール、又はこれらの混合物である、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項15】
該フェノール化合物が、フロログルシノール、ピロガロール、カシューナッツシェル液、又はこれらの混合物である、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項16】
該アルデヒドが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソ-ブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、桂皮アルデヒド、又はこれらの混合物である、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項17】
該シランが、下記のものである、請求項1、又は2記載のシラン-改質フェノール樹脂:3-(アミノプロピル)-トリエトキシシラン、3-(イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノエチル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシエチル)-トリエトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3-(アミノエチル)-トリメトキシシラン、3-(アミノブチル)トリエトキシシラン、3-(アミノエチル)トリメトキシシラン、3-(アミノ-プロピル)メチル-ジエトキシシラン、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素、又はこれらの混合物。
【請求項18】
該シランが、ビス-シリルポリ硫黄シランである、請求項1、又は3記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項19】
該ビス-シリルポリ硫黄シランが、下記のものである、請求項18記載のシラン-改質フェノール樹脂:3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2'-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3'-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-シリルアミノシラン類、又はこれらの混合物。
【請求項20】
該シランが、下記のものである、請求項1、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂:ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルエトキシシラン、又はこれらの混合物。
【請求項21】
さらに、該フェノールノボラック樹脂を製造する反応が、ビニル芳香族化合物を含む、請求項7記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項22】
該ビニル芳香族化合物が、R11-CH=CH2により表され、ここでR11は、フェニル、又は置換フェニルである、請求項21記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項23】
該ビニル芳香族化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニル-ナフタレン、インデン、又はビニルトルエンである、請求項21記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項24】
さらに、加水分解されていない、請求項1、2、3、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項25】
該フェノールノボラック樹脂におけるフェノールのヒドロキシル基の当量数に対する、該シラン化合物におけるアルコキシ基の当量数の割合が、1未満である、請求項1、2、3、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項26】
該フェノールノボラック樹脂におけるフェノールのヒドロキシル基の当量数に対する、該シラン化合物におけるアルコキシ基の当量数の割合が、0.1未満である、請求項1、2、3、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項27】
該フェノールノボラック樹脂におけるフェノールのヒドロキシル基の当量数に対する、該シラン化合物におけるアルコキシ基の当量数の割合が、0.01未満である、請求項1、2、3、又は4記載のシラン-改質フェノール樹脂。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項記載の該シラン-改質フェノール樹脂を含む、ゴム配合剤。
【請求項29】
(a)ゴム成分、(b)加熱によりホルムアルデヒドを生じるメチレンドナー化合物;及び(c)フェノールノボラック樹脂と、式(C)、(D)、又は(E)により表されたシラン、又はシラン化合物の混合物とを反応させることを含む方法により得られたシラン-改質フェノール樹脂を含む、メチレンアクセプターを含む加硫性ゴム組成物:
【化6】

(式中、R6、R7、及びR8は、独立に、炭素原子1〜4個のアルキル基、炭素原子1〜8個のアルコキシ基、フェニル基、又はシクロアルキル基であり;R9は、炭素原子1〜12個を有する、二価の飽和、又は不飽和の脂肪族直鎖、又は分岐炭化水素基であり;Xは、チオール、イソシアナト、尿素、又はグリシジルエーテル基であり;Zは、Sx、又はNH基であり、ここで、xは、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり;かつR10は、ビニル基、又はアルコキシ基である。)。
【請求項30】
該ゴム組成物を加硫する前に、該シラン-改質フェノール樹脂は、実質的に架橋されていないものである、請求項29記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項31】
該シラン-改質フェノール樹脂を製造する反応の間に、相当量のシロキサンポリマーを形成していない、請求項29記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項32】
該ゴム成分が、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、又はこれらの混合物から選択されたものである、請求項29記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項33】
さらに、スチール、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ガラス繊維、又はこれらの組合せから選択された補強材を含む、請求項29記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項34】
該補強材が、黄銅、亜鉛、又は青銅でコーティングされたスチールコードである、請求項33記載の加硫性ゴム組成物。
【請求項35】
請求項29記載の加硫性ゴム組成物を含む、加工製品。
【請求項36】
該加工製品が、タイヤ、パワーベルト、コンベヤーベルト、印刷用ロール、ゴムヒール、ゴム靴底、自動車のフロアマット、トラックの泥除けフラップ、又はボールミルライナーである、請求項35記載の加工製品。
【請求項37】
架橋剤と混合された、請求項29記載の加硫性ゴム組成物を得ること;該加硫性ゴム組成物に補強材を埋め込むこと;及び該ゴム組成物を架橋させることを含む、加工ゴム製品の製造方法であって:該補強材は、該架橋前に該ゴム組成物に埋め込まれ、かつ該埋め込み前には、実質的にシランコーティングされていないものである、前記方法。
【請求項38】
該補強材が、スチール、ポリエステル、ナイロン、アラミド、ガラス繊維、又はこれらの組合せから選択されたものである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
該補強材が、ワイヤー、又はコードの形態である、請求項37記載の方法。

【公表番号】特表2007−502356(P2007−502356A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532476(P2006−532476)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/012976
【国際公開番号】WO2004/106427
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505193069)インドスペク ケミカル コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】