説明

シリカ

少ない研磨性と実効的な洗浄特性をもち、口腔用組成物内に使用されるものであり、シリカを粉砕し分類して粒子の油吸収値が150cm/100gになるように製造し、重量平均粒度d50が3μm未満であり、重量比で90%の粒子がd90の値より小さい粒度を持つとしたときのd90が6μm以下である、無定形沈降シリカ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シリカ
本発明は、例えば、口腔用組成物中の研磨剤として有用な、沈降無定形シリカに関連する。本発明は研磨剤の調合方法と、象牙質またはエナメル質を過度に研磨することなく歯を洗浄する、例えば練り歯磨きのような、口腔用組成物にも関連する。
【0002】
例えば練り歯磨きのような口腔用組成物の特徴はその名称から明らかであり、多くの組成物が特許明細書および他の文献に開示されている。これらは歯の表面から食べかす、しみ、および細菌膜を除去するために使用される。研磨剤は主たる洗浄剤として練り歯磨きに調合される。一般的に使用されている研磨剤は、アルミナ、炭酸カルシウム、およびリン酸カルシウムである。近年、合成シリカが採用されているが、これは、その効率的な洗浄性、他の成分との親和性、および、例えば屈折率などの物理的特性のためである。
【0003】
洗浄性を達成するためには、研磨剤は一定程度、歯の表面を研磨することが必要であると一般に考えられている。歯の表面、特に象牙質が、毎日繰り返すブラッシングによって恒久的に損傷しない様に、この研磨性を十分に低いレベルに維持しなければならない。エナメル質の除去速度は、ミネラル補給による自然補充速度を超えてはならない。
【0004】
研磨洗浄システム、特に練り歯磨きの研磨剤における主たる問題は、洗浄と摩耗のバランスのとれた関係である。組成物中の研磨剤の性質または量を変化させることによって洗浄性を高めれば、通常は洗浄されるべき表面に摩損も高まると一般に考えられている。その表面が歯の表面である場合には、この問題はとりわけ好ましくない。当然の結果として、洗浄用組成物の研磨性を減少させれば、洗浄特性の低下をもたらす事も、一般に受け入れられている。従って、モートン・ペイダーによる教科書「Oral Hygiene Products and Practice」(Cosmetic Science and Technology Series 第6巻、1987年、248−249頁)において、歯摩剤の研磨性が増えると、清潔な歯の上の着色した薄膜の形成量が減少し、すでに着色した歯の着色した薄膜の除去量が増加する、と記述されている。洗浄力と研磨システムにおける研磨性(RDA値として表される−Radioactive Dentine Abrasion試験値)の値のこの相関関係は、口腔用組成物の洗浄力の観測する際に許容可能なRDAの基準として使用された。
【0005】
合成によって作られた無定形シリカは口腔用組成物の研磨剤成分としてしばしば好んで使用され、口腔用組成物に使用するのに適切な予め決められた研磨性と他の物理的特性を持つように、製造プロセスの過程で調整することができる。沈降シリカは研磨剤成分として特に有用である。
【0006】
歯肉組織または歯の表面に対する損摩および侵食は、例えば熱または冷たさに対する過敏、または虫歯のような問題を引き起こしかねないのであるから、洗浄と研磨の間の前記の相関関係を破り、特に歯を洗浄するための口腔用組成物中で使用するために適合的な研磨剤を提供することが、大いに望まれる。同時に、沈降シリカを製造する化学プロセスに変更を加える必要がなく、シリカ由来の歯磨きの洗浄性を損なわすに、既存のシリカの研磨性を減少させることが、大いに望まれる。
【0007】
国際公開第2005/067876(A1)号および国際公開第2005/065634号では、高いRDA値、典型的には100から220の、吸油値が50から130cm/100gである、洗浄ブースターとして使用される沈降シリカを媒質と供に公開している。前記シリカは、マルバーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)(商標)を用いて計測して、重量平均粒度が好ましくは少なくとも2μmであり、より一般的には少なくとも3μmである。前記シリカの望ましい粒度を得るために、前記シリカに対して微粉化粉砕ステップを行う。口腔用組成物を研磨性が低く洗浄性を高めるために、ある粒度より大きい粒子の量を制限してシリカの粒度分布を調整することについて、前記文献には記述がない。
【0008】
本発明の第1の態様として、吸油値が150cm/100g以下、重量平均粒度d50が3μm未満、d90(重量比で90%の粒子がd90の値より小さい直径をもつ)の値が6μm以下である、無定形沈降シリカ粒子を提供する。
【0009】
好ましくは、前記無定形沈降シリカ粒子は中間の構造、低い構造または極めて低い構造である。洗浄用の本発明の最も好ましい沈降シリカの構造は極めて低い構造である。沈降シリカの構造は凝集した粒子の充填に関連し、吸油法および水銀侵入空隙率計測法を含む様々な手法によって計測することができる。これは、S.K.ウエイソン(S.K.Wason)著「Cosmetic properties and structure of fine-particle synthetic precipitated silicas」(J. Soc. Cosmet. Chem, 29, 497-521, 1978年8月)で論じられている。
【0010】
本発明のシリカ粒子は、特に例えば練り歯磨きのような口腔用組成物において、優れた洗浄性能に加えて低い低損摩性を兼ね備える、特性の新たな範囲を備えている。
【0011】
沈降シリカ研磨剤とその調合方法は周知技術である。アルカリ金属シリケート溶液を酸に混ぜ、場合によっては電解液の存在下で、攪拌し、沈降シリカをろ過する。続いて、得られた沈降ろ過ケーキを洗浄し、乾燥させ、希望する大きさまで粉砕する。沈降シリカの調合方法は、例えば、1995年9月5日にアルドクロフト(Aldcroft)他に対して許可された米国特許第5,447,704号、および1989年3月22日に公開されたアルドクロフト他の欧州特許第0 308 165(A1)号に記載されている一般的な方法に従う。これらをここに参照して援用する。
【0012】
米国特許第5,447,704号は、練り歯磨きの研磨剤として使用するのに適した無定形沈降シリカを調合する方法を開示している。この無定形沈降シリカは
(1)表面積が約10から約450m/gの範囲内にあり、
(2)重量平均粒度が約3から20ミクロンの範囲内にあり、
(3)パースペックス(perspex)研磨値は約23から約35の範囲内にあり、
そして場合によっては、
(4)吸油量が約60から110cm/100gの範囲内にある。
その製造方法は、シリカ:NaO比が1.8:1から3.5:1の範囲内にある珪酸ナトリウムを鉱酸と反応させ、ここで反応物質の濃度と量を調整して反応がpH10から10.5の範囲で生じるようにし、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される陽イオンと、臭化物、炭酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩および硫酸塩からなる群から選択された関連した陰イオンを含む水溶性電解質を存在させ、電解質:シリカの重量比を約0.1:1から2:1とし、沈降反応は温度が約95℃から約100℃の範囲で行わせる。場合により、最後の酸添付ステップにおいて反応系を熱水的熟成に付し、より少ない表面積を持つシリカを得ることもできる。
【0013】
欧州特許第0 308 165号には、練り歯磨き用研磨剤として使用するのに適した、無定形シリカ、特に沈降シリカの製造方法が含まれている。そこでは、シリカは
(1)BET表面積が約420から550m/gの範囲内にあり、
(2)重量平均粒度が約5から20ミクロンの範囲内にあり、
(3)パースペックス研磨値が約15から28の範囲内にあり、
(4)平均孔径が約3.0から約8.0nmの範囲内にあり、
(5)屈折率1.444から1.460の範囲内における透過率が少なくとも約70%であるものが使用される。
前記シリカの製造方法は、シリカ:NaOの比が3.2:1から3.4:1の範囲にあるケイ酸ナトリウムと鉱酸とを反応させ、その場合、これら反応体の濃度と量を制御してpH範囲を約10から約10.5とし、ナトリウムおよびカリウムより選ばれるカチオンと、塩化物および硫酸塩より選ばれるアニオンとを含む水溶性電解質を存在させ、更に電解質:シリカの重量比を約0.4:1から約1.2:1として反応を行い、この沈降反応は約45℃から55℃の温度範囲で行い、ついで鉱酸を加えて反応系のpHを酸性とし、生成シリカを分離、洗浄することが含まれる。場合により、最後の酸添付ステップにおいて反応系を熱水的熟成に付し、より少ない表面積を持つシリカを得ることもできる。
【0014】
伝統的には、例えばハンマーミルのような機械式ミルを用いて、洗浄、乾燥後の沈降シリカを粉砕する。この製粉方法では、通常は、重量平均粒度は20から7μmのものを得ることができる。本発明の沈降シリカに必要なより小さな粒度を得るためには、大幅にエネルギーを集約する粉砕方法が必要である。本発明の沈降無定形シリカ粒子を得る適切な方法は、対向ジェット式超微粉砕機含む、ジェット式またはパンケーキ式超微粉砕機または流動床超微粉砕機を使用することである。場合によっては、前記工程のいずれの段階においても、材料を分類し、選別し、篩い分けして、工程を最適化し、過度に大きな粒子を除去することによって、本発明のシリカ粒子の好ましい粒度分布を得ることができる。
【0015】
シリカ粒子を微粉化して必要な重量平均粒度をえる好ましい工程は、統合空気分級機を用いた流体エネルギー製粉機または超微粉砕機を使用することである。流体エネルギーは通常は空気であるが、特により高いエネルギー入力が必要な場合は過熱蒸気であってもよい。
【0016】
シリカ粒子の重量平均粒度を、300RFレンズ(測定範囲0.05−3480μm)、マルバーンマスターサイザーソフトウェアv2.18、DIF2012分光ユニットの、マルバーンマスターサイザーModel Sを用いてレーザー回折によって決定する。この装置はウスターシャー(Worcestershire)マルバーンのマルバーンインスツルメント(Malvern Instrument)社製で、Mie理論を用いて粒度分布を計算する。Mie理論は、球形の粒子によってどのように光が散乱するかを予測するものであって、その際に粒子の屈折率を使用する。使用される実際のシリカの屈折率は1.4564であって、水の分散剤の屈折率が1.33の時に、粒子の仮想屈折率(光の吸収)は0.1である。
【0017】
測定前に、サンプルを50%の出力設定で超音波によって水中に2.5分間分散させ、水性懸濁液を作る。ポンプ速度、即ち分散試料が装置を通過する速度を50%(1250+/―20r.p.m.)に設定する。撹拌速度、すなわち分散装置内でシリカ粒子が分散される速度を50%(530+/−5r.p.m.)に設定する。2−5mWの低出力He/Neレーザー光(波長632.6nm)を、脱イオン水中に分散した粒子を含む流体セルに照射する。散乱光の光量を角度の関数として計測し、このデータを使用して見かけ上の粒度分布を計算する。量とそれに基づく重量平均粒度(d50)または50パーセンタイル、および量とそれに基づく特定の大きさ以下の(例えばd90やd99)資料の重量割合は、粒子が一定の密度であることを前提として、この装置から得られたデータを使用して簡単に得ることができる。本明細書を通じて、粒子の密度が一定であることを前提として重量を基準とした粒度を単位として用いるが、場合によっては密度に対する想定を行わずに体積を基準として表現することもある。
【0018】
適切には、本発明の粒子の重量平均粒度d50は3μm以下であり、好ましくは2.8μm以下であり、より好ましくは2.5μm以下である。平均粒度とは平均粒度より小さい粒子の重量と平均粒度より大きい粒子の重量が等しい場合の直径である(ここに詳述する光散乱測定法によって決定される)。
【0019】
本発明の無定形沈降シリカ粒子は粒度の大きいシリカ粒子が比較的少ない。というのも、大きな粒度のものは、研磨剤を例えば練り歯磨き粉のような口腔用組成物中に使用した場合、傷、研磨、悪い舌触りを増やすからである。従って、前記シリカ粒子のd90値(d90値とは粒子の重量比で90%がd90値の直径より小さい粒度を有している場合の粒度である)は6μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4.5μm以下である。同様に、前記シリカ粒子のd99値(d99値とは粒子の重量の99%がd99値の直径より小さい粒度を有している場合の粒度である)は12μm以下であれば好ましく、より好ましくは10μm以下であり、さらにより好ましくは9μm以下であり、最も好ましくは7μm以下である。
【0020】
適切には、本発明の無定形沈降シリカ粒子のd50値は0.5μm以上であり、好ましくは1μm以上である。適切には、本発明の無定形沈降シリカ粒子のd90値は2μm以上である。適切には、本発明の無定形沈降シリカ粒子のd99値は3μm以上である。値が低くなれば洗浄力の低下をもたらすことがある。
【0021】
本発明の無定形沈降シリカ粒子は比較的乾燥した状態であるために、無菌状態で保存問題の生じない自由流動性のある粉末である。適切には、前記粒子の物理的な含水率は重量比で25%以下であり、好ましくは重量比で15%以下であり、より好ましくは重量比で5%以下である。適切には、素材を粉砕するまえに乾燥する。
【0022】
物理的な含水率は、105℃に設定された電気オーブン中でシリカ粒子の重さが一定になるまで乾燥させて、そのときの重さの減少量から決定する。
【0023】
本発明の適切な無定形沈降シリカ粒子はパースペックス研磨値が20未満であり、好ましくは16未満であり、より好ましくは15未満であり、更に好ましくは10未満である。パースペックス(登録商標)研磨値テスト(PAV)は、練り歯磨きに使用される研磨粒子の研磨性を計測するために使用される。このテストは、ソルビトール/グリセロール混合物にシリカを懸濁させたものを塗布したパースペックス(登録商標)プレートを、歯ブラシのヘッドでブラシすることによって行うことを基本原理とする。パースペックス(登録商標)は象牙質と同様の硬度を有しており、パースペックス(登録商標)上に傷を生成させる研磨システムは、象牙質に対しても同様の効果を及ぼすと考えられる。前記のスラリー組成物は以下の通りである。
シリカ、2.5グラム
グリセロール、10.0グラム
ソルビトールシロップ、23.0グラム(シロップは重量比で70%のソルビトールと30%の水を含む)
【0024】
スラリーの全ての成分をビーカーに秤量し、簡単な攪拌器を用いて1500rpmで2分間分散させる。試験にはルーサイトインターナショナルUK社(Lucite International UK Ltd.)製の標準透明アクリルパースペックス(登録商標)、グレード000の110mm×55mm×3mmのシートを用いる。
【0025】
試験にはシーンインスツルメンツ社(Sheen Instruments)のウエット・ペイント・スクラブ・テスター(Wet Paint Scrub Tester)を改造して用いる。改造点は、ペイントブラシに代えて歯ブラシを使用できるようにホルダーを改造したことである。加えて、400gの重りをブラシアセンブリーに取り付けて、ブラシをパースペックス(登録商標)シートに145gの重さで加重するようにする。歯ブラシは、例えばよく知られたプロフェッショナルメンタデント(登録商標)ガムヘルスデザイン(Professional Mentadent P gum health design)かそれと同様の歯ブラシのような、マルチタフト式で、平らに刈りそろえられたナイロンヘッドを有し、球状の端部を有するフィラメントと、平均的なきめを有する物である。
【0026】
45プラスペック・グロス・ヘッド・ディテクター(45 Plaspec gloss head detector)及び標準反射板(50%グロス)を用いて、検流計を較正する。かかる条件下で、検流径の読みを50に調整する。ついで、同じ反射鏡の設定下で新しいパースペックス板に対する読みを求める。
【0027】
ついで新しいパースペックス板をホルダーに取り付ける。ブラシがけを行うのに十分な量である2mlの分散シリカを前記板の上におき、ブラシの頭部を前記板上まで下げる。機械のスイッチをいれ、加重してあるブラシ頭部によって300ストローク、板をこする。板をホルダーからはずし、懸濁物を全て洗いさる。ついで、板を乾燥しそのグロス値を再測定する。板の研磨値は、研磨前後のグロス値の差である。
【0028】
この試験操作を、以下に記す重量平均粒度の公知の研磨剤に適用した結果、以下の値が得られた。
炭酸カルシウム(15μm)−32
シリカキセロゲル(10μm)(UK1264292法で作成したもの)−25
アルミナ三水和物(ギブス石)(15μm)−16
ピロリン酸カルシウム(10μm)−14
リン酸二カルシウム二水和物(15μm)−7
【0029】
適切な本発明の沈降シリカ粒子のシリカ粉末の放射性象牙質研磨(RDA)(Radioactive Dentine Abrasion)値は250未満であり、好ましくは200未満であり、より好ましくは150未満であり、さらにより好ましくは130未満である。
【0030】
放射性象牙質研磨テスト(RDA)もまた練り歯磨き中に使用される研磨システムの研磨性を観測するために使用される。この方法によって、シリカ研磨粉末またはシリカ研磨粉末を含む口腔用組成物の測定ができる。
【0031】
試験操作は米国歯科協会推薦の歯磨き研磨性評価法(Journal of Dental Research 55(4)563,1976)に従う。この操作法では、抜いた人間の歯に中性子束を照射し、標準ブラシがけプログラムに付す。歯根象牙質から得られた放射性リン32を試験歯磨き試料の研磨指数として用いる。カルボキシメチルセルロースナトリウムの0.5%水溶液15ml中にピロリン酸カルシウム10gを含む標準スラリーについても測定を行い、このスラリーのRDA値を便宜的に100とする。試験用沈降シリカを、ピロリン酸カルシウムと同じ温度にて懸濁物を作成し、同じブラシがけプログラムに付す。このことによって前記シリカ研磨粉末のRDA値を得ることができる。
【0032】
本発明または比較例のシリカを含む歯摩剤組成物のRDA値を計測するために、25gの歯摩剤組成物と40cmの水から試験スラリーを調合し、このスラリーを同じブラシ方式に付する。
【0033】
適切な本発明の沈降シリカ粒子のアインレーナー(Einlehner)研磨値は10mg/100,000回転未満であり、好ましくは8mg/100,000回転未満であり、より好ましくは7mg/100,000回転未満であり、より好ましくは6.5mg/100,000回転未満であり、もっとも好ましくは6mg/100,000回転未満である。
【0034】
アインレーナー法は、粒子の研磨性を測定するのに使われる別の方法である。アインレーナー(E)研磨値は、ハンス・アインレーナー(ドイツ キッシング D−86438 インドゥストリーシュトラッセ 3a プルフマシネンバウ)(Prufmaschinenbau, Industriestrasse 3a, D-86438 Kissing, Germany)製作のアインレーナーAT−1000を使用することによって計測する。このテストでは、リン青銅のスクリーンを10%水性シリカ懸濁液の作用の下に荷重をかけて晒し、規定回数回転させる。その後、100,000回転あたりのリン青銅のスクリーンから失われた青銅をミリグラム単位で決定する。リン青銅のスクリーンは縦糸としてcmあたり28本、横糸としてcmあたり24本の細かさを有する、長く波打つ種類のものである。リン青銅(成分:Cu 91.5%、Sn 8.5%)製の縦糸の直径は0.21mmであり、トムバック(光輝焼き鈍しされたもの 成分:Cu80%、Sn8.5%)の直径は0.23mmである。構造体の厚みは0.49mmである。標準試験スクリーンは50mmの直径の円形の形状である。端部はちぎられていなければならない。
【0035】
具体的には、リン青銅スクリーンを石けんが含まれる熱水による超音波浴によって5分間あらかじめ洗浄し、続いて水道水ですすぎ、超音波浴装置に設置された150mlの水が入っているビーカー中で再びすすぐ。スクリーンを再び水道水ですすぎ、105℃に設定されたオーブン中で20分間乾燥させ、デシケーター中で冷却し、化学天秤を使用して0.1mgの精度で秤量する。標準試験スクリーンを秤量前に素手でさわってはならない。アインレーナー試験シリンダーに耐摩耗プレートと秤量したスクリーンを取付け、研磨面を上向きに(スクリーン下面には線が示されている)所定の位置に固定する。耐研磨プレートは約25回のテストか、あるいは激しく摩耗するまで使用することができるが、加重されたスクリーンの再使用はできない。
【0036】
100gのシリカと900gの脱イオン水によって調合された10%シリカスラリーを、アインレーナー試験シリンダーに注入する。アインレーナーPVC管系を撹拌シャフトの方に向けて設置する。PVC管系には5の番号の振られた位置がある。試験ごとに、PVC管系の位置を増やしていき、5回使用されれば廃棄される。アインレーナー研磨装置を再組み立てし、装置を174,000回転するように設定する。
【0037】
サイクル終了後に、スクリーンを取り出して水道水ですすぎ、水がはいっているビーカーにいれて超音波浴装置に2分間セットし、脱イオン水ですすぎ、105℃に設定されたオーブンで20分間乾燥させる。乾燥したスクリーンをデシケーターで冷却し、同じ精度で同じ注意点を守って再秤量する。サンプルごとに試験を二回行い、結果を平均して100,000回転ごとの損失をmgで表現する。10%スラリーに対して100,000回転ごとの損失をmg単位で計測した結果を、10%アインレーナー(E)研磨値とする。
【0038】
適切には、本発明の沈降シリカ粒子のBET法で計測した表面積は少なくとも10m/gであり、好ましくは少なくとも50m/gである。適切には、BET法で計測した表面積は多くとも900m/gであり、好ましくは多くとも600m/gであり、より好ましくは多くとも550m/gである。特に好ましい表面積の範囲は10から550m/gである。
【0039】
表面積は、ブルナウアー・エメットおよびテラー(Brunauer, Emmett and Teller)(BET)の標準窒素吸着法(J.Amer. Chem. Soc. 60,309(1938))を用いて、イタリアのカルロ・エルバ社(Carlo Erba company)より供給されたソープティー(Sorpty)1750装置を用いて一点法によって決定される。サンプルは計測前に270℃の真空下で1時間ガス抜きを行う。
【0040】
本発明の沈降シリカ粒子の油吸収値は150cm/100g未満であり、好ましくは130cm/100g未満であり、更により好ましくは110cm/100g未満であり、もっとも好ましくは100cm/100g未満である。更に少ない値、例えば85cm/100g未満は好ましく、より好ましくは75cm/100g未満であり、さらにより好ましくは70cm/100g未満である。
【0041】
本発明の沈降シリカ粒子の油吸収値は、少なくとも20cm/100gであり、好ましくは少なくとも30cm/100gであり、さらにより好ましくは少なくとも40cm/100gである。
【0042】
油吸収性(O/A)は、ASTMのへら練り合わせ法(American Society of Test Material Standards D281)で決定される。
【0043】
試験の原理は、亜麻仁油とシリカをなめらかな表面上でへらを用いてこすって混合し、へらで切っても破断または分離しない硬いパテ様ペーストが形成されるまで混合をおこなうものである。用いた油の量を次式に入れる。
【0044】
油吸収性=(cm単位の油吸収量×100)/(グラム単位のシリカ重量)
油吸収値はcm/100gで表す。
【0045】
本発明の第2の態様は、ここにすでに記述した本発明の無定形沈降シリカ粒子を含む、口腔用組成物、好ましくは練り歯磨きを提供する。
【0046】
本発明のシリカ粒子を使用して口腔用組成物を調合するとき、口腔用組成物に混ぜ込む前は、粒子は、通常、実質的には乾燥して自由流動性のある粒子状の物質の形態である。
【0047】
口腔用組成物は、以下に記述するように、1または複数の付加的な成分を含んでもよい。
【0048】
本発明の口腔用組成物は、好ましくは陰イオン性の、非イオン性の、両性の、および両性イオン性の界面活性剤およびそれらの混合物(これらはすべて歯または/および口腔用の用途として適合的である)から選択される、1または複数の界面活性剤を好ましくは含む。
【0049】
適切な陰イオン界面活性剤は、石けん、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルカノイルイセチオン酸、アルカノイルタウリン酸塩、アルキルコハク酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、N−アルキルサルコシン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、およびアルファ−オレフィンスルホン酸塩を含み、特にそれらのナトリウム塩、アンモニウムマグネシウム、およびモノ−、ジ−、トリエタノールアミン塩を含む。アルキル及びアシルのグループは通常8から18の炭素原子を含み、不飽和状態であってもよい。アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、およびアルキルエーテルカルボン酸塩は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを1分子あたり1から10ユニット含んでもよいし、好ましくは、エチレンオキシドを1分子あたり2から3ユニット含む。
【0050】
好ましい陰イオン性界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、およびココナツモノグリセドスルホン酸ナトリウムを含んでもよい。
【0051】
本発明の成分として使用するのに適切な非イオン性の界面活性剤は、脂肪酸のソルビタンおよびポリグリセリンエステル、さらにエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックのコポリマーを含んでもよい。
【0052】
本発明の成分として使用するのに適切な両性の界面活性剤は、例えば、コカミドプロピルベタインのようなベタインや、スルホベタインを含む。
【0053】
界面活性剤または界面活性剤の混合物は、口腔用組成物中に全量として0.1から3重量%適切に存在する。
【0054】
水は本発明の口腔用組成物の今ひとつの好ましい成分であり、その量は1から90重量%存在してもよく、好ましくは10から50%である。
【0055】
本発明の練り歯磨きおよびクリームは保湿剤をも含んでもよい。例えば、保湿剤はグリセロール、ソルビトールシロップ、ポリエチレングリコール、ラクチトール、キシリトール、および水素添加されたコーンシロップのような、ポリオールである。もし保湿剤が存在するとすれば、その総量は、例えば、組成物の10から85重量%の範囲であってもよい。
【0056】
本発明の口腔用組成物においては、1または複数の増粘剤および/または懸濁化剤を含むことが特に好ましく、これによって組成物は好ましい物理的特性を得る(例えば、ペースト状にするか、クリーム状にするか、液体状にするかということである)。
【0057】
本発明の口腔用組成物の粘度をあげる特に好ましい方法は、一般的な増粘作用のある物質を投入することである。前記物質は、例えば、イネオスシリカ社(Ineos Silicas Ltd.)製の油吸収性が250cm/100g以上の高構造シリカソルビトールTC15(商標)のような増粘シリカである。
【0058】
その他の適切な懸濁化剤/増粘剤は当業者にとって周知であり、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸のコポリマーおよび架橋ポリマー、疎水性モノマーを伴うアクリル酸のコポリマー、カルボン酸を含むモノマーとアクリル酸エステルのコポリマー、アクリル酸とアクリレートエステルの架橋コポリマー、エチレングリコールのエステルまたはポリエチレングリコールのエステル(例えばそれらの脂肪酸エステル)、ヘテロ多糖類ガム、グアーガム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体を含む。
【0059】
増粘剤および/または懸濁化剤(これは単独で使用されても、そのような物質を2またはそれ以上混合して使用してもよい)の前記組成物中で、総量がで0.1から50重量%であってもよく、好ましくはシリカ増粘剤が5から15%であり、好ましくはポリマー懸濁化剤が0.1から5%である。
【0060】
本発明の沈降無定形シリカを含む口腔用組成物は、バクテリア(虫歯)および/または食事による酸性の成分(侵食)から保護するため、フッ化物イオン源も含んでもよい。
【0061】
フッ化物イオン源は、これらの目的のために練り歯磨きの中に一般的に使用されるいかなる成分から提供されてもよい。前記成分は、例えば、フッ化ナトリウム、アルカリ金属モノフルオロホスフェート、フッ化第一スズ、アミンフッ化物およびその類似物であり、例えばモノフルオロホスフェートナトリウムのようなアルカリ金属モノフルオロホスフェートが伴うことが好ましい。フッ化物イオン源は虫歯保護に対してよく知られた態様で働く。好ましくは、フッ化物イオン源は、安全であるが、抗虫歯および抗侵食機能を提供するのに有効な量が使用される。例えば、前記の量は、フッ化物イオンとして25ppmから3500ppmであり、好ましくは1100ppmである。たとえば、その配合は0.1から0.5重量%のフッ化ナトリウムのようなアルカリ金属フッ化物イオンを含んでもよい。
【0062】
前記口腔用組成物は、口腔用組成物に一般的に使用される他の1または複数の成分を含んでもよい。適切で付加的な成分は以下のものを含んでもよい:例えばペパーミント、スペアミントのような香味物質;人工甘味料;香料または息をさわやかにする物質;真珠様の輝きをもたらす薬剤;例えば過酸化水素または過酢酸のような歯のホワイトニング剤および過酸化基による漂白剤;例えばジピコリン酸またはスズ酸ナトリウムのような過酸化基を含む漂白剤の分解防止剤;乳白剤;顔料および着色剤;防腐剤;保湿剤;虫歯防止剤;プラーク防止剤;例えば尿素、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ストロンチウムポリアクリレートのようなプラークバッファー;例えばアルカリ金属ピロホスフート、次亜リン酸塩含有ポリマー、有機ホスホン酸塩、ホスホクエン酸等のような歯石防止剤;例えばトリクロサン(Triclosan)(チバガイギー(Ciba Geigy)製)、クロルヘキシジンおよび塩化セチルピリジニウム、無水マレイン酸とポリビニルメチルエーテルのコポリマーを例とする抗菌剤のような有効成分のデリバリを増進する高分子化合物およびDE−A−3,942,643(コルゲート)に記載されているような他の同様なデリバリ増進作用のあるポリマーのような抗菌剤;クエン酸亜鉛、クエン酸亜鉛ナトリウムおよびピロリン酸第一スズ、サンギナリンエキス、メトロニダゾールを例とする、銅、亜鉛、第一スズの塩のような治療薬;硝酸カリウムまたは塩化ストロンチウムを例とするカリウムまたはストロンチウムの塩のような歯の減感作剤;イブプロフェン、フルルビプロフェン、アスピリン、インドメタシンなどのような抗炎症剤;タンパク質;ビタミンCのようなビタミン;バクテリオシン、抗体、酵素のような機能性生体分子;植物エキス;塩;pH調整剤等である。
【0063】
他の含みうる任意的な成分として、例えば漂白剤、例えばEP−A−0,545,594に記載されているもの、重炭酸ナトリウム/クエン酸系のような発泡剤系、変色剤系、などがある。
【0064】
本発明のシリカ粒子を入れた口腔用組成物のpHは、好ましくは6から10.5である。
【0065】
本発明のシリカ粒子を、口腔用組成物を製造するために口腔受容キャリアに入れこともできる。「口腔受容キャリア」という用語は、結果として得られた口腔用組成物を安全で効果的な態様で口腔に塗布するために使用される適切な媒介物を意味する。シリカ粒子は洗浄機能を有効に発揮できる量で入れられる。
【0066】
本発明の練り歯磨きのような口腔用組成物は、単独の製剤の形で製剤することができ、また、複数の区画に仕切られた容器に異なった製剤の形で製剤され、例えば縞模様のある製剤を製造することもできる。
【0067】
例えば本発明の練り歯磨きのような口腔用組成物は、適切にはすでにここに記述したように本発明のシリカ粒子が0.5から50重量%で含まれ、好ましくは1から25%であり、より好ましくは1から15%であり、最も好ましくは1から10%である。
【0068】
本発明のシリカ粒子は口腔用組成物または練り歯磨き中の唯一のあるいは実質的に唯一の研磨性洗浄剤とすることができる。このことは、口腔用組成物または練り歯磨きの洗浄または研磨能力を実質的に変更するレベル(例えば、本発明の粒子のみを含む組成物と比較して、本明細書で記載の方法で計測して、洗浄能力または研磨能力が10%であるまたはそれ以上の変化がある場合)で他の研磨性粒子が含まれる事がないか、または洗浄能力を改善するために他の研磨剤とともに本発明のシリカ粒子を使用したとしても、他の研磨剤に由来する研磨性を超える過剰な研磨性が加わらないことを意味する。驚くべき事に、本発明の粒子は、練り歯磨きのような口腔用組成物中に比較的低いレベルの投入量であっても、他の研磨性洗浄粒子を投入せずに、過剰な研磨性を有することなく優れた洗浄能力を持つ。本発明のシリカ粒子を他の歯のための研磨性粒子とともに洗浄ブースターとして使用する場合、本発明のシリカ粒子は口腔用組成物の研磨粒子のうち1重量%より多く、好ましくは4%より多く、より好ましくは5%より多く、さらにより好ましくは8%より多く、最も好ましくは10%より多い。適切には、口腔用組成物中の本発明のシリカ粒子は、口腔用組成物の研磨性粒子うち、90重量%より少なく、好ましくは60%より少なく、より好ましくは60%より少なく、さらにより好ましくは50%より少なく、最も好ましくは40%より少ない。特に好ましい範囲は、研磨剤の重量比で8から40%である。
【0069】
本発明の粒子を含む本発明の練り歯磨きと比較例の歯磨き粉の特性を、以下に記述するFT洗浄試験によって評価する。
【0070】
FT洗浄試験
この試験は、「Dental stain prevention by abrasive toothpastes: A new in vitro test and its correlation with clinical observations」(P.L.Dawson他 J.Cosmet.Sci. 49, 275-283(1989))に完全に記載されている。この試験は完全な練り歯磨き系に対して実行できるが、研磨剤スラリーに対して実行することもでき、これによって異なる研磨剤の型の洗浄能力を比較することができる。後者のケースとして、本発明の沈降無定形シリカ粒子の基準シリカに対する洗浄能力を比較することができる。
性能上の優位点の立証として、基準シリカを含む練り歯磨きに比べて洗浄性が優れていることを示すため本発明のシリカを含む練り歯磨きをも製剤した。
【0071】
基盤
高度に研磨し、17mmで、焼結した純粋なハイドロキシアパタイト(HAP)の基盤ディスクを用意する。ディスクをビューラー(Buehler)ロータリーグラインダーおよびP600のウエットペーパーで研磨し、P1200のラッピングペーパーで鏡面上になるまで仕上げ、エナメル質の歯の表面をシミュレートする。洗浄前のディスクの白色度(CIE 1976 L*a*b*系を用いる)L*(Clean)をミノルタクロマメーターCR200(標準較正タイルによって較正されている)を使用して計測する。
【0072】
染色
0.5重量%のタンニン酸の溶液50gと0.5重量%の硫酸アンモニウム鉄を混合して、暗色の未使用のコロイド鉄(III)タンニン酸錯体(「フェッリクタンネート」)を調合する。未使用の混合物をHAP上に最高級のリス毛ブラシを用いて塗布し、暖かいヘアドライヤーを用いてゆっくりと乾燥させる。ミノルタクロマメーターCR200を用いて黒さの計測値がL*=50+/−5となるまで、染色溶液の塗布を繰り返す。この値を指定L*(soiled)とする。
【0073】
練り歯磨きスラリーの調合:
希釈剤を調合する。これは以下のものからなる:
重量%
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 0.5
(SMCC 7M)
グリセロール 5.0
ホルマリン 0.1
脱塩水 94.4
まず水とグリセロールを加え、次いでホルマリンとSMCCをハイドルフ(Heidolph)攪拌機を用いて穏やかに撹拌する。この過程でSMCCを完全に水和しなければならない。試験対象の練り歯磨きを秤量してプラスチックビーカー(直径4.5cm×高さ10cm)に入れ、希釈剤と脱塩水を次の割合に従って練り歯磨きスラリーサンプルの重さが100gになるように混ぜ:
練り歯磨き 33.3%;希釈剤 33.3%;水33.3%
4,000r.p.m.で高剪断ハイドルフミキサーを用いて1分間かき混ぜて100gの練り歯磨きスラリー調合液を作る。練り歯磨きは希釈剤全体に均等に分散していなければならない。研磨性粒子がスラリーから沈殿するのを避けるために、練り歯磨きスラリーは試験を実施する直前に調合しなければならない。
【0074】
シリカスラリーの調合
希釈剤を調合する。これは以下のものからなる:
重量%
キサンタンガム 0.35
ケルザン(Kelzan)M(Kelco)
ラウリル硫酸ナトリウム 0.50
(Empicol 045,Albright&Wilson)
脱塩水 99.15
ケルザンを、ハイドルフミキサーを用いてゆっくりと水に混ぜ、完全に水和させる。次いでラウリル硫酸ナトリウム(SLS)泡立たないようにゆっくりと加える。
【0075】
この試験で使用されるシリカの総量は練り歯磨き中の想定された充填量によって決定され、通常1%または3.3%または6%で計測される。これは、それぞれ練り歯磨きの充填量の3%、9,9%、18%に対応する。すなわち、それぞれが前記シリカの試験充填の3倍である。性能上の優位性を識別しやすくするためには、より効率のよいシリカでより低い充填量で評価しなければならない。
【0076】
試験対象のシリカの重さを量ってプラスチックビーカー(直径4.5cm×高さ10cm)に入れる。重量は選択されたシリカ充填量に左右され、全シリカスラリー調合100gを調合することに基づく。希釈剤を最大100gまで加える。強く剪断する状態(4000r.p.m.)のハイドルフミキサーで1分間ともにかき混ぜる。シリカは希釈剤全体にわたって均等に分散していなければならない。研磨性粒子がスラリーから沈殿するのを避けるために、練り歯磨きスラリーは試験を実施する直前に調合しなければならない。
【0077】
ブラシがけ:
ついで、着色されたHAPディスクを試験計測中の練り歯磨きスラリーまたはシリカスラリーを含む容器の底部に水平に取付け、263gの加重をしたメンタデント(登録商標)(Mentadent)Pプロフェッショナルソフトナイロンフラットトリム歯ブラシのヘッドを、機械的にこすりつける装置(改造されたマーチンデール(Martindale)研磨試験器)を用いて、ディスク表面上で振動させる。振動速度は1分間当たり150回を用いる。歯ブラシのヘッドは34タフト・フラット−トリム・0.2mmブリスル・ナイロン(34 tuft flat-trim 0.2mm bristle nylon)のヘッドであり、直線状のボールベアリング内に取り付けられた垂直軸上に搭載されたおもりによって加重される。50回、100回、および150回振動した後の汚れの除去の様子を観測し、それぞれFT50、FT100,FT150とする。
【0078】
除去試験は個別に行う。洗浄後のHAPディスクの白さ、L(cleaned)を、ミノルタクロマメーターCR200を使用して計測する。すでに述べた試験の中で詳述したとおり、研磨能力を比較する便利で単純な式は100回振動時の綺麗なまたは除去された割合であると考えられている。FT100を%FT100Removalとして定義しここで:

%FT100Removal=(L*(cleaned)-L*(soiled)) ×100
(L*(clean)-L*(soiled))
【0079】
練り歯磨きの凝集力
練り歯磨きの凝集力は、練り歯磨きが歯磨き粉チューブから歯ブラシの上に押し出されたときに、リボンが「立ち上がる」特性をみるのによい指標である。凝集力の値が高くなれば練り歯磨きのリボンがより堅くなることを意味し、その一方で粘度が低くなれば凝集力の値が低くなり練り歯磨きは構造を維持しづらくなって、歯ブラシの房の中に素早く落ち込んでしまう。落ち込まず堅くなり過ぎずによい品質の押し出されたリボンをもたらすのは、練り歯磨きの凝集力が150から430gの範囲にある場合である。
【0080】
この試験の基本的な原理は、2枚の平行に置かれた平板の間にサンドイッチされた練り歯磨きの特定の層を設け、その2枚の平板を引きはがすのに必要な加重をグラム単位で計測するのである。この試験専用の装置は以下のものからなる:
(1)バネが0−430gで100mmの長さ延びるバネばかり。バネは10gごとに0から430gまでの目盛りを有し、試験開始時に0に調整することができる。
(2)底部平板に取り付けられ、1分間当たり5cmで底部平板を、一定に、均一に、なめらかに、垂直方向に引くために使用するモーター駆動ラチェット。
(3)バネばかりを取り付けることができるフックを上部面に有する、直径64mmの研磨済みクロム上部円形プレート。研磨済みプレートは、平板の不可欠な一部分として、平板の下面に研磨済みクロム製の3つの同一のスペーサー部品を有している。これらは4mm突き出ていて、試験実行にあたって装置をくみ立てるときに練り歯磨きフィルムの厚さを決定する。
(4)モーター駆動ラチェットに下面で取り付けられた、直径76mmの下部の研磨済みクロム円形平板。2つの短い杭が平板の上部にあって、上部平板と下部平板の中心軸を同軸になるように位置づけることができる。
(5)上部プレートを下部プレート上に同心上に配置させ、下部プレートがおおよそ水平となるように調整できる(装置の下部のレベリングフィートを使用することによって達成できる)、金属製骨組み。
【0081】
15−20gの練り歯磨きを上部プレートの下面に均等に塗布し、そのプレートを下部プレートの上部に慎重に設置する。その際、2の短いペグを上部プレートの端部に位置決めする。上部プレートを下部プレートに向かってしっかりと押しつけ、3つのスペーサーが下部プレートと接触するようにする。2枚のプレートの間から押し出されてきた余分な練り歯磨きをへらによって除去し、上部プレートの直径を超えて練り歯磨きが存在しないようにする。その後、上部プレートをバネばかりに取付け、目盛りを0グラムに調整する。装置の電源を入れモーター駆動ラチェットに底部プレートを下向きに引かせる。バネが徐々に延びてゆき、練り歯磨きをサンドイッチした2のプレートが最終的に分離するときの、観測されたなかで最も高い荷重を記録する。これがグラム単位で記録された練り歯磨きの凝集力である。
【0082】
本発明のさらに別の態様は、本発明の無定形シリカ粒子を口腔用組成物、特に練り歯磨きの中で研磨製洗浄剤として使用することである。
【0083】
本発明のもう一つの態様は、口腔用中で使用するための無定形シリカの研磨性を減少させる方法である。この方法は、無定形シリカを粉砕するステップと分類するステップを含み、その結果、無定形シリカ粒子の重量平均粒度d50が3μm未満、d90値(すなわち粒子の90重量%がd90値未満の直径を有している場合)が6μm以下となる。本発明の第一の態様の沈降無定形シリカ粒子の好ましい性質は、本発明のこの態様にも適用される。
【0084】
本発明をこれよりさらに説明するが、以下の例に限定するものではない。
【実施例】
【0085】
例1
以下にまとめた軽微な変更点を除き、EP0318165の例3の詳細に従ってシリカを調合した。
ケイ酸塩/酸反応には加熱され攪拌された反応槽を使用した。
本プロセスで使用した溶液はつぎに示す通りであった。
(1)SiO:NaOの重量比が3.3:1であってSiO濃度が16.6.%重量/重量である珪酸ナトリウム溶液。
(2)比重が1.12(水に17.1%重量/重量溶解)である硫酸溶液。
(3)水に25%重量/重量NaClの電解質溶液。
【0086】
325リットルの容器に、34.7リットルの電解質溶液と1.0リットルの珪酸ナトリウム溶液とともに、109リットルの水を入れた。ついで、この混合物を攪拌して50℃に加熱した。さらに100.3リットルの珪酸ナトリウム溶液と硫酸(39リットル)を20分間にわたって同時に、攪拌しながら50℃の温度を保ったまま加えた。追加した時間全体にわたってケイ酸塩と酸溶液の流量を均一に保って、容器中のpHを一定に保った。さらに硫酸溶液の攪拌を続けながら10分間加え、液体のpHを3.0から3.5の範囲に下げた。この酸の追加を行っている間、温度を一定に保った。ついで、得られたスラリーをろ過して、水で洗浄して過剰な電解質を除去し、残留電解質が乾燥重量を基準として2%未満とした。
【0087】
洗浄後、ろ過ケーキを水分の物理的な含有率が4.5%になるまでフラッシュ乾燥して、次に示すさまざまな粒度の範囲になるまで粉砕した。
【0088】
比較試料1Aは全く製粉しなかった。その重量平均粒度は、d50が15.6μm、d90値が32.5μmであった。
【0089】
比較試料1Bは分類機を組み込んだサイクロプレックス(Cicroplex)ハンマーミルを用いて製粉した。その重量平均粒度は、d50が7.8μm、d90値が17.3μmであった。
【0090】
比較試料1Cは分類機内蔵の流動床空気ジェットミルを用いて微粉化した。その重量平均粒度は、d50が3.5μm、d90値が6.7μmであった。
【0091】
本発明の試料1Dは分類機内蔵のパンケーキ空気微粉機を用いて微粉化した。その重量平均粒度は、d50が2.4μm、d90値が4.3μmであった。
【0092】
本発明の試料1Eは分類機内蔵のパンケーキ空気微粉機を用いて微粉化した。その重量平均粒度は、d50が2.0μm、d90値が3.6μmであった。
【0093】
例2
イネオスシリカ社が製造したソルボシル(Sorbosil)AC35(商標)に対して分類機内蔵のハンマーミルを使用したサンプル(比較試料2A)の重量平均粒度は、d50が10.4μm、d90値が37.9μmであった。
【0094】
この物質を、パンケーキ空気微粉機を用いて重量平均粒度はd50が2.1μm、d90値が4.9μmになるまで微粉化し、本発明の例2Bとした。
【0095】
例3
イネオスシリカ社が製造したソルボシル(Sorbosil)AC77(商標)に対して分類機内蔵のハンマーミルを使用したサンプル(比較試料3A)の重量平均粒度は、d50が8.1μm、d90値が20.2μmであった。
【0096】
この物質を、パンケーキ空気微粉機を用いて重量平均粒度はd50が2.9μm、d90値が6.2μmになるまで微粉化し、本発明の例3Bとした。
【0097】
また、この物質を、パンケーキ空気微粉機を用いて重量平均粒度はd50が1.9μm、d90値が4.2μmになるまで微粉化し、本発明の例3Cとした。
【0098】
例4
米国特許番号5,447,704Aの例2の詳細に従ってシリカを調合した。水分含有率が5%になるまで乾燥させたあと、次に示すさまざまな粒度の範囲になるまで粉砕した。
【0099】
比較試料4Aは分類機内蔵の流動床空気ジェットミルを用いて微粉化したものである。その重量平均粒度は、d50が4.6μm、d90値が9.9μmであった。
【0100】
比較試料4Bは分類機内蔵のパンケーキ空気微粉機を用いて微粉化したものである。その重量平均粒度は、d50が3.3μm、d90値が6.6μmであった。
【0101】
本発明の試料4Cは分類機内蔵のパンケーキ空気微粉機を用いて微粉化したものである。その重量平均粒度は、d50が2.6μm、d90値が5.0μmであった。
【0102】
本発明の試料4Dは分類機内蔵のパンケーキ空気微粉機を用いて微粉化したものである。その重量平均粒度は、d50が1.9μm、d90値が4.1μmであった。
【0103】
表1は例1から4で作られたシリカの重要な物理的特性を列挙しており、同じ一般構造をもつが本発明のシリカ粒子の粒度分布には対応しないシリカの物理的特性と比較するものである。
【0104】
表2はシリカスラリー中にシリカを1%充填した試験における例1および4のFT洗浄試験のデータを表している。
【0105】
表3はシリカスラリー中にシリカを3.3%充填した試験における例2および3のFT洗浄試験のデータを表している。
【表1】

【表2】

【表3】

【0106】
この表の結果から読み取れることは、それぞれの沈降シリカのd50粒度を3μm未満としd90粒度を6μm以下とすることによって、PAV、RDAおよびアインレーラーで観測されたように、より大きな粒度のシリカと比較して研磨製が減少し、その一方で、驚くべきことに、洗浄効率は同じであるか、または、FT100値で観測されたように改善されていることがわかる。
【0107】
例5
例1(比較例1Cと本発明の実施例1E)の2のシリカを表4の口腔用組成物製剤に個別に入れた。
【表4】

【0108】
イネオスシリカ社製のソルボシルAC35(商標)(比較例2Aでもある)の重量平均粒度は10.4μmである。
ソルボシルTC15(商標)は高度に構造化された沈降シリカであって、油吸収値は250cm/100gより大きい。
PEG1500はポリエチレングリコールであって、平均分子量は1500である。
SCMCはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
比較例5Aは比較例1Cを含有する練り歯磨きである。
比較例5Bは本発明のシリカ1Eを含有する練り歯磨きである。
この2種の練り歯磨きのすでにここで説明したRDAを計測し、FT洗浄試験によって評価した。結果を表5に示す。
【表5】

【0109】
表5から分かることは、本発明のシリカを含有する例5Bは、同じシリカを含有するが粒度分布が本発明の範囲からはずれる例5Aに比べて、RDAで計測したように、よりよい洗浄能力と低い研磨製を有することである。
【0110】
例6
例1(比較例1Cと本発明の例1D)の2のシリカを表6の透明な口腔用組成物製剤に個別に入れた。
【表6】

【0111】
比較例6Aは比較例1Cを含有する練り歯磨きである。
比較例6Bは本発明のシリカ1Dを含有する練り歯磨きである。
この2種の練り歯磨きのすでにここで説明したRDAを計測し、FT洗浄試験によって評価した。結果を表7に示す。
【表7】

【0112】
表7から分かることは、本発明のシリカを含有する例6Bは、同じシリカを含有するが粒度分布が本発明の範囲からはずれる例6Aに比べて、RDAで計測したように、よりよい洗浄能力と低い研磨製を有することである。
【0113】
この表の結果から読み取れることは、例1の沈降シリカのd50粒度を3μm未満としd90粒度を6μm以下とすることによって、FT100値で観測されたように洗浄効率は改善され、PAV、RDAおよびアインレーラーで観測されたように、研磨性が減少していることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無定形沈降シリカ粒子であって、油吸収値が150cm/100g以下であり、重量平均粒度d50が3μm未満であり、d90値(ここで、90重量%の粒子の粒度がd90値未満である)が6μm以下であり、前記粒子の放射性象牙質研磨(Radioactive Dentine Abrasion)値が130未満である、無定形沈降シリカ粒子。
【請求項2】
無定形沈降シリカ粒子であって、前記粒子のd99値(ここで、99重量%の粒子の粒度がd99値未満である)が12μm以下である、請求項1に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項3】
前記重量平均粒度d50が2.5μm未満である、請求項1または2に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項4】
前記d90値が5μm以下である、請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項5】
前記d99値が10μm以下である、請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項6】
前記d50値が0.5μm以上であり、前記d90値が2m以上である、請求項1ないし請求項5のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項7】
無定形沈降シリカ粒子であって、前記粒子のパースペックス(Perspex)研磨値が20未満であり、好ましくは16未満であり、より好ましくは15未満であり、さらにより好ましくは10未満である、請求項1ないし請求項6のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項8】
無定形沈降シリカ粒子であって、前記粒子のアインレーナー(Einlehner)研磨値が10未満であり、好ましくは7未満であり、より好ましくは6.5未満であり、さらにより好ましくは6mg/100,000回転未満である、請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項9】
無定形沈降シリカ粒子であって、前記粒子のBET表面積が10以上900m/g以下の、請求項1ないし請求項8のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項10】
無定形沈降シリカ粒子であって、前記粒子の油吸収値が20以上100cm/100g以下である、請求項1ないし請求項9のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子。
【請求項11】
口腔受容キャリアと、効果的な洗浄力を有する量の請求項1ないし請求項10のうちいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子と、を含む口腔用組成物。
【請求項12】
0.5重量%以上50重量%以下の前記無定形沈降シリカ粒子を含む、請求項11に記載の口腔用組成物。
【請求項13】
口腔用組成物であって、前記無定形沈降シリカ粒子が実質的に唯一の研磨剤として前駆口腔用組成物内に存在する、請求項11または12に記載の口腔用組成物。
【請求項14】
口腔用組成物であって、研磨剤粒子を含み、前記口腔用組成物の前記研磨剤粒子に1重量%以上90重量%以下前記無定形沈降シリカ粒子存在する、請求項11または12のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項15】
練り歯磨きである、請求項11ないし14のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項16】
放射性象牙質研磨値が150未満であり、好ましくは100未満である、請求項15に記載の練り歯磨き。
【請求項17】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子を、口腔用組成物中の研磨性洗浄剤としての使用方法。
【請求項18】
前記口腔用組成物が練り歯磨きである、請求項17に記載の使用方法。
【請求項19】
口腔用組成物中で使用するために無定形沈降シリカの研磨性を減少させる方法であって、ジェット、対向ジェット、パンケーキまたは流動床超微粉砕機を用いて粉砕する工程と、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の無定形沈降シリカ粒子を作るために前記シリカを分類する工程とを含む方法。

【公表番号】特表2009−519199(P2009−519199A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545084(P2008−545084)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004649
【国際公開番号】WO2007/068916
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(506235867)イネオス・シリカス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】