説明

シリコンをベースにした光学チップを有する光ファイバジャイロスコープ

【課題】光ファイバジャイロスコープを提供すること。
【解決手段】基板は、絶縁層の上に形成されたシリコン層を有し、導波路が、シリコン層の中に形成され、主光チャネル、この主光チャネルの両端に結合された第1および第2のスプリッタ、第1のスプリッタに結合された第1および第2のセグメント、ならびに第2のスプリッタに結合された第3および第4のセグメントを有している。光ファイバコイルは、導波路の第3のセグメントに結合された第1の端部、および導波路の第4のセグメントに結合された第2の端部を有する。光源は、導波路の中に光を放射するように導波路の第1のセグメントに結合されている。光検出器は、光の少なくともいくらかを取り込みかつその間の干渉を検出するように、導波路の第2のセグメントに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ジャイロスコープシステムに関し、より詳細には、光ファイバジャイロスコープで使用する光学チップおよびこの光学チップを組み込んだ光ファイバジャイロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、干渉方式光ファイバジャイロスコープ(IFOG)は、宇宙船などの様々な物体の回転および角度方向を感知するためにいくつかの技術で広く使用されている。IFOGは、一般に、回転(すなわち、感知すべき回転)軸のまわりにコイル状に巻かれたしばしば長さ数キロメートルの光ファイバを含む。光は、互いに反対方向にコイルに入射され、光検出器に向けられる。コイルが軸のまわりを回転すると、コイルの中を一方の方向に進む光に対して実効光路長は増すが、一方で、反対方向に進む光に対しては光路長が減少する。この光路長の差によって、互いに反対方向に進む光波間に、サニャック効果として知られている位相シフトが生じる。その結果として、干渉パターンが光検出器によって検出され、これはIFOGが回転していることを示している。
【0003】
大抵の用途、特により高い性能を要求する用途では、IFOGは、「最小相反構成(minimum reciprocal configuration)」として知られているものを使用しなければならない。最小相反構成は、互いに逆に伝播する光の部分が、回転速度によって生じた差を除けば、検出器で取り込まれる前に同じ光路長を進むことを保証する。最小相反構成は、一般に、2つの光学フィルタの間の偏光子および空間フィルタだけでなく2つの光スプリッタによって実現される。空間フィルタは、一般に、光を所望の空間部分または所望のモードで誘導し、この光を他の空間分布すなわち不要なモードの光から空間的に分離することによって動作する。
【0004】
近年、ニオブ酸リチウム(LiNbO)光学チップは、1つの光スプリッタおよび位相変調器を収納して、IFOGの感度を高め、かつ光がチップを通過するときにその固有の特性によって光を偏光させるように使用されている。しかし、ニオブ酸リチウムは、そのような基板の導波路が比較的短く、かつ不要な光が基板中を搬送されることがあるので、空間フィルタとして十分に機能しない。この不要な光は、導波路の光とほぼ同一直線上で進み再びこの光と一緒になることがあり、または、検出されてジャイロ出力に大きな誤差をもたらすことがある。ニオブ酸リチウムの導波路は急角度で曲げることができないので、不要なモードまたは基板光を、信号光を搬送する主導波路から空間的に分離するのは困難であり、誘導信号光が不要な光から離れた方向に誘導されるように誘導信号光の向きを急角度で変えることができない。一般に、そこに形成された導波路は、3から5度などの非常に小さな角度だけ光の方向を変える(すなわち、湾曲させるか、曲げる)ことができるだけである。その結果として、第2のスプリッタだけでなく空間フィルタも、ニオブ酸リチウム基板の外に含まれなければならず、このことで、サイズが大きくなりニオブ酸リチウム基板を利用したIFOGの製造にかかるコストが増すことがある。その上、ニオブ酸リチウムの処理および材料特性の制限のために、一般に、光検出器などの様々な他の部品および電子回路を導波路と同じ基板に集積化することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、単一基板に集積化される部品数の増加した光ファイバジャイロスコープを提供することが望ましい。さらに、本発明の他の望ましい特徴および特性は、添付の図面および前記の技術分野および背景と併せ読めば、次の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光ファイバジャイロスコープが提供される。基板は、絶縁層の上に形成されたシリコン層を有する。導波路は、シリコン層の中に形成され、主光チャネル、この主光チャネルの両端の第1および第2のスプリッタ、第1のスプリッタに結合された第1および第2のセグメント、および第2のスプリッタに結合された第3および第4のセグメントを有している。光ファイバコイルは、導波路の第3のセグメントに結合された第1の端部、および導波路の第4のセグメントに結合された第2の端部を有する。光源は、第1の方向で導波路の中に光を放射するように導波路の第1のセグメントに結合されている。導波路は、光が第1のセグメント、第1のスプリッタ、および主光チャネルを通って伝播し、かつ光が第2のスプリッタによって第1および第2の部分に分割されるように構成されている。第1および第2の部分は、導波路の第3および第4のセグメントを通って、光ファイバコイルを回って、さらに前記第3および第4のセグメントおよび第2のスプリッタを通ってそれぞれ伝播し、主光チャネル中で結合されて信号光になる。信号光は、次に、第2の方向に主光チャネルを通って伝播し、信号光の少なくともいくらかが第2のセグメントの端部から放射されるように、第1のスプリッタで分割される。光検出器は、信号光の少なくともいくらかを取り込み、かつ第1と第2の光の部分間の干渉を検出するように、導波路の第2のセグメントに結合されている。
【0007】
以降、本発明は、添付の図面と共に説明され、図面では、同様な符号は同様な要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、本質的に単に例示に過ぎず、本発明または本発明の応用および使用を限定する意図でない。さらに、前に記述した技術分野、背景、概要、または以下の詳細な説明に表されたいかなる明示または暗示された理論によっても拘束されるものではない。また、留意すべきことであるが、図1〜8は、単に説明的なものに過ぎず、原寸に比例して描かれていないことがある。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に従った光ファイバ・ジャイロスコープ・システム(すなわち、干渉方式光ファイバジャイロスコープ(IFOG))10を示す。システム10は、集積光学チップ(IOC)12、ファイバ感知ループ(すなわち、光ファイバコイル)14、光源16、および光ファイバ18を含む。
【0010】
IOC12は、基板20を含み、この基板20上に、導波路22、光検出器24、位相変調器26、およびコントローラ28が形成されている。さらに図1を参照すると、図示の実施形態では、基板20は、形が実質的に正方形または長方形であり、例えば3cm未満、または約5mmから約1.5cmの辺の長さ32を有している。先の図3を見ると、基板20は、第1の(すなわち、下部)シリコン(Si)層34、絶縁層36、および第2の(すなわち、上部)シリコン層39を含む。また、基板は、第2の絶縁層38を含んでもよい。基板20の全厚さは、約0.254mm(10ミリインチ)であり、これの大部分は、第1のシリコン層34の厚さのためである。絶縁層36および38は、二酸化珪素(SiO)などの絶縁材料から作られ、第1のシリコン層34および第2のシリコン層39の上に形成することができる。絶縁層36および38および間の第2のシリコン層39の厚さは、例えば、約400から約700ミクロンである。したがって、基板20は、一般に理解されているようなシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板の形であってもよい。層39と周囲絶縁層36および38の間の屈折率差(シリコンの方が大きい)のために、光は、第2のシリコン層39の中に閉じ込められる。基板20、および/または図3に示されるような基板の中の様々な層は、一般に理解されているように、例えば、化学気相成長(CVD)、結合、および熱成長のプロセス、またはこれらを組合せた方法を使用して形成してもよい。絶縁層の代わりに空気が第2のシリコン層39の上にある場合でも、第2のシリコン層39への縦モード閉じ込めは起こるので、いくつかの設計では、第2の絶縁層38を省略することが可能なことがある。
【0011】
再び、図1を参照して、基板20は、また、基板20の中に、または基板20の上に配置された偏光エレメント41(すなわち、偏光子)を含むことがあり、これによって、最小相反構成の要求条件が確実に満たされる。これは、偏光子41の領域の導波路22の近くの光誘導領域にごく接近して金属層などの追加層を加えることによって、行われてもよい。もしくは、偏光子41はトレンチを含むことがあり、このトレンチで、導波路22が中断され微小光学偏光子すなわち偏光結晶が挿入される。しかし、導波路22から出ていき、微小光学偏光子を横切った後で導波路22に再び入るビームを平行にするために、レンズが必要である場合がある。基板20は、単体として示されているが、基板20は、例えば、約150、200、300ミリメートルの直径の半導体ウェーハの一部であってもよいことは、理解されるべきである。その上、当技術分野で一般に理解されているように、基板20は、ウェーハが分割された複数のダイの1つ、すなわち「小立方体」を構成することがある。
【0012】
図2および3を参照すると、基板20は、また、光子結晶構造または光子バンドギャップ周期構造を形成する、層38、39および36を貫通する複数の穴40を含む。これらの穴40は、一般に理解されているように、例えば、フッ化炭化水素放電に基づいたドライエッチングプロセスを使用して形成されてもよい。領域または区域42では、基板20は穴40で占有されていない。空いた区域42は、以下でより詳細に説明されるように、導波路22を画定する。留意すべきことであるが、図3に示された導波路22では、縦方向の屈折率差(すなわち、屈折率誘導)によって、さらに水平方向の光子バンドギャップ効果によって、光は、単一空間モードに閉じ込められる。他の実施形態では、横方向で単一緊密導波モード(single tightly guided mode)に光を閉じ込めるために従来のリッジ導波路構造が使用されることがある。というのは、シリコンでは、シリコンと二酸化シリコンの屈折率の差が大きいからである。この実施形態では、光を導くために使用される横方向の薄い角リッジを除いて、第2のシリコン層は、例えばエッチングによって除去される。光を閉じ込めるために、再び、二酸化珪素が、導波路領域の上面、および側面に堆積されてもよい。
【0013】
図1に示されるように、導波路22は、主チャネル46、第1のスプリッタ48、第2のスプリッタ50、および第1、第2、第3、および第4のセグメント52、54、56、および58を含む。図示された実施形態では、主チャネル46は、チャネルの端が、基板20のデバイス側部60の方へ実質的に垂直に向けられように、「ひじ形部」および/または「S字湾曲部」を有している。主チャネル46は、例えば、約5ミクロンから約0.5cmの曲率半径62を有してもよい。第1および第2のスプリッタ(または、Yスプリッタ)48と50は、主チャネル46の両端に結合され、主チャネル46と同様に、図1に特に示されていない前述の空いた区域42によって、または前述のリッジ導波路によって画定されている。第1および第2のセグメント52および54は、第1のスプリッタ48に接続されて、第1のセグメント52はデバイス側部の中心部分に至り、第2の部分54は基板20の角領域に至っている。第3および第4のセグメント56および58は、第2のスプリッタ50に接続され、基板20のデバイス側部60の外側部分に至っている。導波路22の他の部分のように、セグメント52、54、56、および58は、第2のシリコン層39の前述の空いた区域42によって、または従来のリッジ導波路によって画定されている。
【0014】
光検出器24は、導波路22の第2のセグメント54の端部に隣接している。詳細に示されていないが、好ましい実施形態では、光検出器24は、第2のシリコン層39の中に形成されたゲルマニウム添加領域を中に含むフォトダイオードを含む。光検出器24は、また、ゲルマニウムまたはインジウムガリウム砒素燐(InGaAsP)から作られた個別光検出器チップであってもよい。位相変調器26は、基板20上に形成され、図示の実施形態では、4つの電極62を含んでいる。詳細に図示されていないが、電極62の各々は、導波路22の近くの基板20の中に形成された導電線、パッド、またはトレースを含むことがある。電気信号が導波路区域へのキャリアの注入を変えてその部分の屈折率を調節することができるようにするために、これらの電極62は、銅、アルミニウム、または金などの任意の適切な導電性材料であってもよい。電極62の位置は、信号が生じた(アクセスするための)場所および導波路22の正確な幾何学的配置に依存する。電極62は、対で配列されることがあり、各対は導波路の第3および第4のセグメント56および58にそれぞれごく接近している。
【0015】
コントローラ28(すなわち、処理サブシステム)は、一実施形態では、基板20上に、または基板20の中に形成され、さらに、当業者は理解するように、用途特定集積回路(ASIC)および/または、コンピューティングシステムによって実行され、以下で説明される方法およびプロセスを実施するコンピュータ可読媒体に格納された指示、などの様々な回路および集積回路を含んだ電子部品を含んでもよい。具体的に示されていないが、コントローラ28は、アナログデジタル変換器(ADC)、マイクロプロセッサまたはデジタル・ゲート・アレイ、デジタルアナログ変換器(DAC)、およびいくつかの増幅器を含んでもよい。第1の増幅器は、光検出器24の出力に接続されて、適切な信号バッファを実現し、さらに光検出器24から受け取られた出力信号の全体的な利得を増加または減少させることがある。ADCは、含まれていれば第1の増幅器か、光検知器24かのどちらかから受け取られたアナログ信号を、そのアナログ信号を表すデジタルデータに変換し、このデジタルデータをマイクロプロセッサまたはデジタル・ゲート・アレイに供給する。DACおよび、含まれていれば、第2の増幅器は、マイクロプロセッサの出力に連続的に接続されている。一般に知られているように、DACは、マイクロプロセッサから供給されたデジタルデータを、そのデジタルデータを表すアナログ信号に変換する。含まれていれば第2の増幅器の出力は、セグメント56および58の範囲内の位相変調器に接続される。マイクロプロセッサまたはデジタル・ゲート・アレイは、ADCとDACの間に結合される。図示のように、コントローラ28は、光源16、光検出器24、および位相変調器62と動作可能に連絡している。
【0016】
光源16は、ファイバ光源(Fiber Light Sourse、FLS)組立品などの光ファイバジャイロスコープで一般に使用される任意の光源である。一実施形態では、光源は、980nm半導体ポンプレーザダイオードと、約10nmから35nmのおおよその帯域幅を有するほぼ1532nmの波長の光を発生させることができるエルビウム添加ファイバ(EDF)とを含む。半導体ポンプレーザダイオードは、広帯域光を放射するようにエルビウム添加ファイバを光励起するために使用される。
【0017】
基板20は、また、デバイス側部60に沿って形成された複数のv字溝66を含んでもよい。各v字溝66は、導波路22のそれぞれのセグメントと、光ファイバコイル14の端部の1つおよび光ファイバ18の端部とを相互接続する。図4および5は、導波路22の第1のセグメント52と光ファイバ18を相互接続するv字溝66を示す。図4に示されるように、v字溝66は、例えば、約100から約2000ミクロンの長さ68である。図5を参照して、光ファイバ18が導波路22の第1のセグメント52と一直線に並ぶように光ファイバ18(または、光ファイバコイル14の端部)を支持する大きさにv字溝66が作られるように、v字溝66は、幅70および深さ72を有している。v字溝66の深さ72は、v字溝66が絶縁層36の中に延びるように第2のシリコン層39の厚さよりも大きくてもよい。
【0018】
再び図1を参照すると、光ファイバコイル14は、回転軸(図示されない)のまわりに位置付けされた、例えば約1kmから約6kmの長さを有する光ファイバケーブルの巻線である。光ファイバコイル14の第1および第2の端部は、基板20に接続され、したがって、図4および5に示されるような光ファイバ18と同様なやり方で、導波路22の第3および第4のセグメント56および58と一直線に並べられている。
【0019】
動作時に、コントローラ28は、光源16を起動し、光源16は、光ファイバ18を通して、導波路22の第1のセグメント52の中に光を放射する。この光は、第1のセグメント52を通り抜け、第1のスプリッタ48を通り過ぎ、さらに主光チャネル22の中に進み、そこで第2のスプリッタ50の方へ向けられる。光が第2のスプリッタ50を通過するときに、この光は第1の部分と第2の部分に分割される。第1の部分は、導波路22の第3のセグメント56を通って光ファイバコイル14に伝播し、時計方向でコイル14を横切る。第2の部分は、第4のセグメント58を通って光ファイバ14の方へ伝播し、反時計方向でコイル14を横切る。第1および第2の光の部分が位相変調器26を通過するときに、コントローラ28は、例えば、当技術分野で一般に理解されているような方形波バイアス変調技法を実施して、IFOG10の感度を高める。変調の深さは、特定の用途に依存して様々な位相点で選ばれてもよい。例には、±π/2、±3π/4、±7π/8、および±15π/16がある。
【0020】
図6は、動作中の基板20の下の方の部分を示す。第1および第2の光の部分が光ファイバコイル14から第2のスプリッタ50に戻るときに、第1および第2の光の部分の大部分は、導波路22の中にとどまり(すなわち、信号光74)、主チャネル46に沿って伝播する。しかし、第1および第2の光の部分のいくらかは、図1に示されるように、導波路22から横方向に第2のシリコン層38の中に進むことがあり(すなわち、透過光76)、または、絶縁層の中に漏れ、信号光74と同一線上でまたはほぼ同一線上で伝播することがある。信号光74は、導波路22の主チャネル46の経路に従い、したがって、基板20の上の方の部分の方へ曲げられる。当業者は理解するように、偏光子41は、導波路22の光の1つの可能な偏光を大きく減衰させて、相反性条件を保証する。透過光76は、基板20全体にわたって広がり続け、好ましくは、導波路22に再び入らないように、および/または検出器24で検出されないようにされる。
【0021】
図7は、動作中の基板20の上の方の部分を示す。図示のように、信号光74は、第1のスプリッタ48まで導波路22に従い続ける。第1のスプリッタ48は、一部が光検出器24に伝播し他の部分が光ファイバ18に伝播するように、信号光74を分割する。図7と組み合わせて図6を参照すると、導波路22の湾曲形状、特に導波路22の主チャネル46の湾曲形状によって、信号光74は、透過光76からフィルタされる、すなわち分離されるようになる。一実施形態では、信号光74の方向が、コイル14から光検出器24までの伝播の間に90度を超えて変えられる(すなわち、曲げられる)ように、導波路22は形作られる。これによって、導波路22に結合して入る、すなわち光検出器24に到達する透過光76の能力が大きく弱められる。当業者は理解するように、導波路22の形状によって行われるフィルタ処理(すなわち、空間フィルタ処理)は、所望の信号光のただ1つの空間モードの光だけが光検出器24に伝播されることを保証する。
【0022】
したがって、信号光74の少なくともいくらか(すなわち、信号光74の第1および第2の部分の少なくともいくらか)は、光検出器24で取り込まれる。しかし、図示のように、光検出器24の方へ伝播する透過光76(例えば第1および第2のスプリッタ48および50から生じた)の成分は、非常に少なくなる。導波路22の向きおよび光検出器24の能動エレメントの向きのために、光検出器24の方へ伝播するいかなる透過光76も、取り込まれることなく光検出器24を通り過ぎる。したがって、透過光のうちで光検出器24によって取り込まれるものは実質的になく、信号光74の少なくともいくらかは光検出器24で取り込まれる。
【0023】
図1、6および7で特に興味深いことは、信号光74が第2のスプリッタ50および第1のスプリッタ48を通過するときに、信号光74が導波路の中で偏光子41によって偏光され、導波路22の形状のために空間的にフィルタされることである。したがって、IFOG10は、当技術分野で一般に理解されるように「最小相反構成」になっていると考えられる。その結果として、光検出器で取り込まれる第1と第2の光の部分が進む光路長の差は、コイル14の回転軸のまわりのIFOG10の回転だけによっている。すなわち、IFOG10が全く回転していないとき、第1および第2の光の部分が進む光路長は同一である。
【0024】
光検出器24は、導波路の第2のセグメント54から信号光74の一部分を受け取り、一般に理解されるように、光ファイバコイル14の軸のまわりのIFOG12の回転による信号光74の第1の部分と第2の部分の間の任意の干渉パターンを表す信号を生成する。コントローラ28は、光検出器24からの信号を処理し、それからIFOG10の回転速度を計算する。
【0025】
上述の本システムの1つの有利点は、導波路、光検出器、位相変調器、およびコントローラが単一基板(超小型電子技術ダイすなわち半導体チップ)に集積化されることである。したがって、IFOGの全体的な大きさおよび製造コストは最小限になる。他の有利点は、基板がシリコンから作られているので、基板上の様々な構成を標準的な半導体処理技術を使用して形成できる場合がある、それによって、IFOGの製造コストがさらに減少することである。さらに他の有利点は、光子結晶構造の場合に強調される厳密な半径にシリコン導波路が対応することができるので、IFOGが適切に機能するために必要とされるような高効率空間フィルタ処理を実現するように導波路の曲率半径を最小限にすることができることである。その結果として、基板の大きさは、さらにいっそう最小限にすることができる。
【0026】
図8は、本発明の他の実施形態に従ったIFOG10に使用される基板78を示す。基板78は、第1の(すなわち、下部)シリコン層80、第1の絶縁層82、第2の(すなわち、上部)シリコン層84、および第2の絶縁層86を含む。基板78は、同じ材料を使用して上述の基板20と同様なやり方で形成されてもよい。しかし、第2のシリコン層84は、光子セルを含まなくてもよく、導波路90は、第2のシリコン層84と、第2の絶縁層86に加えて第1の絶縁層82との屈折率の差のために形成されてもよい。導波路90は、「リッジ導波路」と呼ばれることがあり、図示されていないが、位相変調器26の近く、および/または導波路22の第3および第4のセグメント56および58内などの図1に示された基板20の様々な部分で利用されてもよい。
【0027】
他の実施形態は、S字形またはL字形の様々な組合せなどの導波路の異なる形状を利用することがある。したがって、光源などのIFOGの様々な部品は、他の部品に対して再位置決めされてもよい。例えば、光源は、光ファイバコイルに向い合う側部などの基板のどの側部に結合されてもよい。また、光源は、基板に取り付けられ導波路に結合された広帯域超放射ダイオード(SRD)の形であってもよい。
【0028】
少なくとも1つの例示の実施形態が上記の詳細な説明で示されたが、多数の変形物が存在することは理解されるべきである。また、理解されるべきことであるが、例示の1つまたは複数の実施形態は、ただ実施例に過ぎず、いずれにせよ本発明の範囲、適用性、または構成を限定するものではない。むしろ、上記の詳細な説明は、例示の1つまたは複数の実施形態を実施するために好都合なロードマップを当業者に提供する。理解されるべきことであるが、添付の特許請求の範囲に示されるような本発明の範囲およびそれの法律上の同等物から逸脱することなく、要素の機能および配置に様々な変更が加えられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に従った基板を含んだ光ファイバ・ジャイロスコープ・システムを示す模式図である。
【図2】細部Aについて描かれた図1の基板の一部を示す上面図である。
【図3】線3‐3に沿って描かれた図2の基板の一部を示す断面側面図である。
【図4】細部Bについて描かれた図1の基板の一部を示す上面図である。
【図5】線5‐5に沿って描かれた図4の基板の一部を示す断面側面図である。
【図6】動作を示す、図1の基板の下の方の部分の上面図である。
【図7】動作を示す、図1の基板の上の方の部分の上面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に従った基板を示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 干渉方式光ファイバジャイロスコープ(IFOG)
12 集積光学チップ(IOC)
14 光ファイバコイル(ファイバ感知ループ)
16 光源
18 光ファイバ
20 基板
22 導波路
24 光検出器
26 位相変調器
28 コントローラ
34 第1のシリコン層
36 絶縁層
39 第2のシリコン層
41 偏光子
46 主チャネル
48 第1のスプリッタ
50 第2のスプリッタ
52 第1のセグメント
54 第2のセグメント
56 第3のセグメント
58 第4のセグメント
66 v字溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバジャイロスコープであって、
絶縁層(36)の上に形成されたシリコン層(39)を有する基板(20)と、
前記シリコン層(39)の中に形成された導波路(22)とを有し、前記導波路(22)は、主光チャネル(46)、前記主光チャネル(46)の両端に位置する第1および第2のスプリッタ(48、50)、前記第1のスプリッタ(48)に結合された第1および第2のセグメント(52、54)、ならびに前記第2のスプリッタ(50)に結合された第3および第4のセグメント(56、58)を有し、
前記光ファイバジャイロスコープはさらに光ファイバコイル(14)を有し、前記光ファイバコイル(14)は、前記導波路(22)の前記第3のセグメント(56)に結合された第1の端部、および前記導波路(22)の前記第4のセグメント(58)に結合された第2の端部を有し、
前記光ファイバジャイロスコープはさらに、第1の方向で前記導波路(22)の中に光を放射するように前記導波路(22)の前記第1のセグメント(52)に結合された光源(16)を有し、前記導波路(22)は、前記光が前記第1のセグメント(52)、前記第1のスプリッタ(48)、および前記主光チャネル(46)を通って伝播し、前記光が前記第2のスプリッタ(50)によって第1および第2の部分に分割されるように構成され、かつ前記導波路(22)は、前記第1および第2の部分がそれぞれ前記導波路(22)の前記第3および第4のセグメント(56、58)を通って、前記光ファイバコイル(14)を回って、さらに前記第3および第4のセグメント(56、58)および前記第2のスプリッタ(50)を通ってそれぞれ伝播し、前記第1および第2の部分が前記主光チャネル(46)中で結合されて信号光になるように構成され、前記信号光は、第2の方向に前記主光チャネル(46)を通って伝播し、前記信号光の少なくともいくらかが前記第2のセグメント(54)の端部から放射されるように前記第1のスプリッタ(48)によって分割され、
前記光ファイバジャイロスコープはさらに、前記信号光を取り込みかつ前記第1と第2の光の部分との間の干渉を検出するように、前記導波路(22)の前記第2のセグメント(54)に結合された光検出器(24)を備えることを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記第1の光の部分および前記第2の光の部分が、前記第2のスプリッタ(50)による前記分割と前記光検出器(24)による前記信号光の前記取り込みとの間で、実質的に等しい光路長を進むことを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項3】
請求項2に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記信号光が、前記第1のスプリッタ(48)と前記第2のスプリッタ(50)との間の前記伝播中にただ1つの偏光状態で進むように、前記基板(20)に結合された偏光子(41)をさらに備えることを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項4】
請求項3に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記導波路(22)が、さらに、前記光ファイバコイル(14)から前記光検出器(24)までの前記伝播の間に前記信号光の方向を少なくとも90度変えるように構成されることを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項5】
請求項4に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記基板(20)が、3cm未満の少なくとも1つの寸法を有している、光ファイバジャイロスコープ。
【請求項6】
請求項5に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記光検出器(24)が、前記基板(20)上に形成されることを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記光検出器(24)が、前記基板(20)上に形成されたゲルマニウム添加領域を備えることを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項8】
請求項7に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記光源(16)と前記導波路(22)の前記第1のセグメント(52)とを相互接続する光ファイバ(18)をさらに備えることを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項9】
請求項8に記載の光ファイバジャイロスコープであって、前記基板(20)が、多角形であり、前記光ファイバコイル(14)の前記第1および第2の端部が、前記基板(20)の第1の側部に挿入され、前記光ファイバ(18)が、前記基板(20)の第2の側部に挿入され、さらに、前記導波路(22)の前記第1、第3、および第4のセグメント(52、54、56、58)が、前記基板(20)の前記第1および第2の側部のうちの一方に向かって実質的に延びていることを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。
【請求項10】
光ファイバジャイロスコープであって、
絶縁層(36)の上に形成されたシリコン層(39)を有する基板(20)と、
前記シリコン層(39)の中に形成された導波路(22)とを有し、前記導波路(22)は、主光チャネル(46)、前記主光チャネル(46)の両端に位置する第1および第2のスプリッタ(48、50)、前記第1のスプリッタ(48)に結合された第1および第2のセグメント(52、54)、ならびに前記第2のスプリッタ(50)に結合された第3および第4のセグメント(56、58)を有し、前記主光チャネル(46)が少なくとも90度の湾曲部を有し、
前記光ファイバジャイロスコープはさらに、光ファイバコイル(14)を有し、前記光ファイバコイル(14)は、前記導波路(22)の第3のセグメント(56)に結合された第1の端部、および前記導波路(22)の前記第4のセグメント(58)に結合された第2の端部を有し、
前記光ファイバジャイロスコープはさらに、第1の方向で前記導波路(22)の中に光を放射するように前記導波路(22)の前記第1のセグメント(52)に結合された光源(16)を有し、前記導波路(22)は、前記光が前記第1のセグメント(52)、前記第1のスプリッタ(48)、および前記主光チャネル(46)を通って伝播し、前記光が前記第2のスプリッタ(50)によって第1および第2の部分に分割されるように構成され、かつ前記導波路(22)は、前記第1および第2の部分がそれぞれ前記導波路(22)の前記第3および第4のセグメント(56、58)を通って、前記光ファイバコイル(14)を回って、さらに前記第3および第4のセグメント(56、58)および前記第2のスプリッタ(50)を通ってそれぞれ伝播し、前記第1および第2の部分が前記主光チャネル(46)中で結合されて信号光になるように構成され、前記信号光は、第2の方向に前記主光チャネル(46)を通って伝播し、前記信号光の少なくともいくらかが前記第2のセグメント(54)の端部から放射されるように前記第1のスプリッタ(48)によって分割され、
前記光ファイバジャイロスコープはさらに、前記信号光が、前記第1のスプリッタ(48)と前記第2のスプリッタ(50)の間の前記伝播中にただ1つの偏光状態で進むように、前記基板(20)に結合された偏光子(41)を有し、
前記光ファイバジャイロスコープはさらに、前記基板(20)上に形成され、前記導波路(20)の前記第2のセグメント(54)に結合された光検知器(24)を有し、前記光検知器(24)は、前記信号光を取り込み、かつ前記第1の光の部分と前記第2の光の部分との間の干渉を検出し、前記光ファイバコイル(14)が回転していないとき、前記第1の光の部分および前記第2の光の部分が、前記第2のスプリッタ(50)による前記分割と前記光検出器(24)による前記取り込みとの間で実質的に等しい光路長を進むことを特徴とする光ファイバジャイロスコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−32725(P2008−32725A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−199425(P2007−199425)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】