説明

シリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボの製造方法

【課題】シリコン単結晶引き上げ中の高温下において沈み込みが抑制されたシリカガラスルツボの製造方法を提供する。
【解決手段】シリカガラスルツボの製造では、中空状のモールドを回転させながらモールド内にシリカ粉を供給してシリカ粉層を形成し、シリカ粉層を加熱溶融してシリカガラス層を形成する。シリカ粉層を形成する工程は、ルツボの上端から当該上端よりも下方の第1の中間位置までの範囲に属するルツボ上部に相当するモールド内の所定の位置に第1のシリカ粉を供給する工程と、第1の中間位置からルツボの下端までの範囲に属するルツボ下部に相当するモールド内の位置に第2のシリカ粉を供給する工程と、第1及び第2のシリカ粉に覆われたモールドの内面に第3のシリカ粉を供給する工程とを含み、第1のシリカ粉の粒度分布は第2のシリカ粉の粒度分布よりも広く且つより多くの微粉を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボ及びその製造方法に関し、特に、シリカガラスルツボの高さ方向の断面構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造にはシリカガラスルツボが使用される。チョクラルスキー法(CZ法)では、ポリシリコンをシリカガラスルツボに入れて加熱溶融し、このシリコン融液に種結晶を浸漬し、ルツボと種結晶とを互いに逆方向に回転させながら徐々に引き上げて単結晶を成長させる。半導体デバイス用の高純度なシリコン単結晶を製造するためには、シリカガラスルツボに含まれる不純物の溶出によってシリコン単結晶が汚染されないことが求められ、またルツボ内のシリコン融液の温度制御が容易となるよう十分な熱容量を有することも必要である。そのため、多数の微小な気泡を含む不透明な外層と、気泡含有率が0.1%以下であり、気泡の平均直径が100μm以下である透明な内層とを有する二層構造のシリカガラスルツボが好ましく使用されている(特許文献1参照)。また、ルツボの外層を天然シリカで形成して高温下でのルツボの強度を高める一方、シリコン融液に接触するルツボの内層を合成シリカで形成して不純物の混入を防止するようにした二層構造のシリカガラスルツボも使用されている(特許文献2参照)。
【0003】
近年、シリコンウェハーの大型化に伴って700mm以上の大口径のシリカガラスルツボが使用されており、溶融量の増大や100時間以上の長時間の引上げ、ルツボにあるヒーターから単結晶までの距離が遠くなり今までより強加熱になることなどによってシリカガラスルツボに対する熱負荷が大きくなり、引き上げ中の自重によりシリカガラスルツボ下部が変形してしまう沈み込みという現象が起きている。沈み込みを防止する方法として、ルツボの内表面や外表面を結晶化させて強化したシリカガラスルツボが知られている。例えば、特許文献3には、ルツボ外表面に結晶化促進剤を塗布し、引き上げ中にルツボを結晶化させて強化することが記載されている。また特許文献4には、ルツボ外表面に酸水素炎を吹き付けて結晶化ガラス層をルツボ外表面に形成することが記載されている。また、特許文献5には、ルツボ内表面全体をサンドブラスト等によって研磨し、この研磨面をさらに酸水素炎によって加熱処理して平滑化したシリカガラスルツボが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−197381号公報
【特許文献2】特開平1−261293号公報
【特許文献3】特開平09−110590号公報
【特許文献4】特開平10−203893号公報
【特許文献5】特開2001−328831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載された従来のルツボにおいて、ルツボの外表面に塗布される結晶化促進剤はシリコン単結晶にとって不純物であり、製造されたウエハーの電気的特性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、特許文献4に記載のルツボによれば、ルツボ外表面に酸水素炎を吹き付けて結晶化ガラス層をルツボ外表面に形成できるが、酸素雰囲気中でシリカガラスを軟化点(約1700℃)以上まで加熱すると、冷却過程でクリストバライト結晶が析出する。シリカガラスとクリストバライトでは熱膨張係数が大きく異なるので、この方法で形成されたクリストバライト層は剥離しやすく、実用化に適さない。さらに、特許文献5に記載された従来のルツボは、内表面が気泡を含まず、純度が高いので単結晶化率を向上できる利点が指摘されているが、ルツボの自重により特にシリカガラスルツボ下部が変形してしまう沈み込み現象の問題は解決されていない。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、シリコン単結晶引き上げ中の高温下において、ルツボの沈み込み現象が抑制されたシリカガラスルツボ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ルツボ上部の不透明シリカガラス層の比重をルツボ下部よりも小さくすることにより、シリコン単結晶引き上げ中の、シリカガラスルツボ外側にあるヒーターからの1,500℃以上の高熱負荷による沈み込みを防止することができ、このようなルツボは使用するシリカ粉の粒径を調整することにより容易に製造できることを見出した。本発明はこのような技術的知見に基づきなされたものであり、本発明は、側壁部、湾曲部及び底部を有するシリカガラスルツボであって、ルツボの外表面側に設けられた多数の気泡を含む不透明シリカガラス層と、ルツボの内表面側に設けられた透明シリカガラス層とを備え、不透明シリカガラス層は、ルツボの上端から当該上端よりも下方の第1の中間位置までの範囲に属するルツボ上部に設けられた第1の不透明シリカガラス部分と、前記第1の中間位置からルツボの下端までの範囲、又は第1の中間位置よりも下方の第2の中間位置からルツボの下端までの範囲に属するルツボ下部に設けられた第2の不透明シリカガラス部分とを有し、第1のシリカガラス部分の高さh1がルツボ全体の高さh0に対して0.1h0以上0.6h0以下であり、第2の不透明シリカガラス部分の比重は1.7以上2.1以下であり、第1の不透明シリカガラス部分の比重は1.4以上1.8以下であって第2の不透明シリカガラス部分の比重よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ルツボ上部の不透明シリカガラス層の比重が小さいので、ルツボ下部にかかる自重による負荷を低減することができ、ルツボの沈み込みを抑制することができる。また、ルツボ上部の不透明シリカガラス層がより多くの気泡を含むことから、ルツボ上部の保温性を高めることができ、例えば冷却速度3.0℃/minなどの急冷によるシリコン単結晶のクラックの発生を防止することができる。
【0009】
また、本発明は、側壁部、湾曲部及び底部を有するシリカガラスルツボの製造方法であって、シリカガラスルツボの外形に合わせた内面を有する中空状のモールドを回転させながらモールド内にシリカ粉を供給し、モールドの内面に沿ったシリカ粉層を形成する工程と、シリカ粉層を加熱してシリカ粉を溶融することによりシリカガラス層を形成する工程とを備え、シリカ粉層を形成する工程は、ルツボの上端から当該上端よりも下方の第1の中間位置までの範囲に属するルツボ上部に相当する位置に第1のシリカ粉を供給する工程と、前記第1の中間位置からルツボの下端までの範囲、又は前記第1の中間位置よりも下方の第2の中間位置からルツボの下端までの範囲に属するルツボ下部に相当する位置に第2のシリカ粉を供給する工程と、第1及び第2のシリカ粉に覆われたルツボの内面に第3のシリカ粉を供給する工程とを含み、第1のシリカ粉の粒度分布は、第2のシリカ粉よりも広く且つより多くの微粉を含むことを特徴とする。
【0010】
粒径の比較的小さなシリカ粉(微粉)の溶融速度は粒径の大きなシリカ粉(粗粉)よりも速く、雰囲気中から取り込まれた粒子間に存在する空気を、既にガラス化している部分が取り込む。すなわち、溶融シリカガラス中から空気が抜けにくく、気泡含有率が高くなる。したがって、ルツボ上部に使用するシリカ粉が微粉を多く含む場合には、ルツボ上部の比重が小さくなり、ルツボの沈み込みが緩和される。本発明によるこのような効果は、大型ルツボに対してより効果的である。
【0011】
本発明において、第1のシリカ粉は、粒径が50μm以上250μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であり、第2のシリカ粉は、粒径が150μm以上350μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であることが好ましい。この場合において、第1のシリカ粉の粒度分布は、50μm未満が5%〜20%、50μm以上250μm未満が60%〜80%、250μm以上が20%以下であり、第2のシリカ粉の粒度分布は、150μm未満が20%以下、150μm以上350μm未満が60%〜80%、350μm以上が10%〜20%であることが特に好ましい。第1及び第2の不透明シリカガラス部分の形成に使用するこれらのシリカ粉の粒径が上記条件を満たす場合には、ルツボ上部とルツボ下部を適切な比重とすることができ、大型ルツボにおいて問題となる沈み込みを確実に防止することができる。
【0012】
本発明において、第3のシリカ粉は、粒径が200μm以上400μm未満のものを50%以上含む合成シリカ粉であることが好ましい。ルツボの内表面側に設けられる透明シリカガラス層の形成に使用するシリカ粉が上記条件を満たす場合には、気泡含有率がそれほど高くならないので、実質的に気泡を含まない不透明シリカガラス層を容易に形成することができる。ここで、「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因で単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率及び気泡サイズであることを意味し、特に限定されるものではないが、気泡含有率が0.1%以下であり、気泡の平均直径が100μm以下であることをいう。
【0013】
本発明によるシリカガラスルツボの製造方法は、シリカ粉層を加熱してシリカ粉を溶融する際、モールドに設けられた通気孔から加熱中のシリカ粉を脱気することによりルツボの内表面側に透明シリカガラス層を形成する工程と、脱気ための減圧を弱め又は停止することによりルツボの外表面側に不透明シリカガラス層を形成する工程を含むことが好ましい。
【0014】
本発明によれば、ルツボの外表面側に設けられた多数の気泡を含む不透明シリカガラス層と、ルツボの内表面側に設けられた実質的に気泡を含まない透明シリカガラス層とを有し、ルツボ上部の不透明シリカガラス層の比重が比較的小さなシリカガラスルツボを確実に形成することができる。
【0015】
本発明は、口径812mm以上の大型のシリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボでより大きな効果を確認することが出来る。口径812mm以上の大型ルツボは、直径300mmのシリコンウェハー用インゴットの引き上げに用いられるものであり、大容量で重量も大きく、自重により特にシリカガラスルツボ下部が変形してしまう沈み込み現象が生じやすい。しかし、本発明によれば、口径812mm以上の大型ルツボにおいて沈み込みを防止することができ、シリコン単結晶の製造歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリコン単結晶の引き上げ中の高温下においてルツボの沈み込みが効果的に防止されたシリカガラスルツボを提供することができる。また、本発明によれば、そのようなシリカガラスルツボを容易に製造するための製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態によるシリカガラスルツボ10の構造を示す略断面図である。
【図2】シリカガラスルツボの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】シリカガラスルツボ10の製造方法を説明するための模式図である。
【図4】シリカガラスルツボ10の製造方法を説明するための模式図である。
【図5】第1及び第2のシリカ粉13a,13bの粒度分布を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態によるシリカガラスルツボ20の構造を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるシリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボの構造を示す略断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態によるシリカガラスルツボ10は二層構造であって、外層を構成する不透明シリカガラス層11と、内層を構成する透明シリカガラス層12とを備えている。
【0021】
不透明シリカガラス層11は、多数の微小な気泡を内包する非晶質シリカガラス層である。本明細書において「不透明」とは、シリカガラス中に多数の気泡が内在し、見かけ上、白濁した状態を意味する。不透明シリカガラス層11は、ルツボ外周に配置されたヒーターからの熱をシリカガラスルツボ中のシリコン融液に均一に伝達する役割を果たす。不透明シリカガラス層11は、透明シリカガラス層12に比べて保温性が高いことから、シリコン融液の温度を容易に一定に保つことができる。
【0022】
不透明シリカガラス層11は、ルツボ上部に位置する第1の不透明シリカガラス部分11aと、ルツボ下部に位置する第2の不透明シリカガラス部分11bとを有し、各々の気泡含有率及び比重は異なっている。ここで、「ルツボ上部」とは、ルツボの上端P0から中間位置P1までの範囲に属する部分をいい、「ルツボ下部」とは、「ルツボ上部」よりも下方であって、中間位置P1からルツボの下端P2までの範囲に属する部分をいう。ルツボ全高h0とするとき、第1の不透明シリカガラス部分11aの高さh1は0.1h0〜0.6h0であることが好ましい。h1が0.1h0未満の場合には第1の不透明シリカガラス部分11aを設けたことによる効果が得られず、h1が0.6h0を超える場合にはルツボの強度が低下してルツボの変形が生じやすくなるからである。
【0023】
第1の不透明シリカガラス部分11aは、第2の不透明シリカガラス部分11bに比べてより多くの気泡を含み、その比重は比較的小さい。具体的には、第1の不透明シリカガラス部分11aの比重は1.4〜1.8であり、第2の不透明シリカガラス部分11bの比重は1.7〜2.1であって第1の不透明シリカガラス部分11aよりも大きい。両者の比重差は0.1〜0.3であることが好ましく、0.2〜0.28であることが特に好ましい。このように、第1の不透明シリカガラス部分11aの比重が小さいことにより、ルツボ下部にかかる荷重を軽減することができ、ルツボの自重により特にシリカガラスルツボ下部が変形してしまう沈み込み現象を抑制することができる。また、ルツボ内部の上部空間の保温性を向上させることができ、引き上げられたシリコン単結晶が急冷されることによるクラックの発生を防止することができる。なお、不透明シリカガラスの比重の測定原理はアルキメデス法に従う。JISによる試験方法では、例えばJIS Z8807がある。
【0024】
不透明シリカガラス層11は天然シリカガラスからなることが好ましい。天然シリカガラスとは、天然水晶、ケイ石等の天然質原料を溶融して製造されたシリカガラスを意味する。一般に天然シリカは合成シリカに比べて金属不純物の濃度が高く、OH基の濃度が低いという特性を有している。例えば、天然シリカに含まれるAlの含有量は1ppm以上、アルカリ金属(Na,K及びLi)の含有量はそれぞれ0.1ppm以上、OH基の含有量は60ppm未満である。尚、天然シリカか否かは一つの要素に基づいて判断されるべきものではなく、複数の要素に基づいて総合的に判断されるべきものである。天然シリカは、合成シリカに比べて高温における粘性が高いことから、ルツボ全体の耐熱強度を高めることができる。また、天然質原料は合成シリカに比べて安価であり、コスト面でも有利である。
【0025】
透明シリカガラス層12は、実質的に気泡を含まない非晶質シリカガラス層である。透明シリカガラス層12によれば、ルツボ内表面から剥離するシリカ片の増加を防止することができ、シリコン単結晶化率を高めることができる。ここで、「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因で単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率及び気泡サイズであることを意味し、特に限定されるものではないが、気泡含有率が0.1%以下であり、気泡の平均直径が100μm以下であることをいう。不透明シリカガラス層11から透明シリカガラス層12への気泡含有率の変化は比較的急峻であり、透明シリカガラス層12の気泡含有率が増加し始めた位置からルツボの外表面側に向かって30μm程度進んだところでほぼ不透明シリカガラス層11の気泡含有率に達する。したがって、不透明シリカガラス層11と透明シリカガラス層12とは見かけ上明確に区別できる。
【0026】
透明シリカガラス層12の気泡含有率は、光学的検出手段を用いて非破壊的に測定することができる。光学的検出手段は、検査するシリカガラスルツボの内表面および内表面近傍の内部に照射した光の反射光を受ける受光装置を備える。照射光の発光手段は内蔵されたものでもよく、また外部の発光手段を利用するものでもよい。また、光学的検出手段は、シリカガラスルツボの内表面に沿って回動操作できるものが用いられる。照射光としては、可視光、紫外線および赤外線のほか、X線もしくはレーザー光などを利用でき、反射して気泡を検出できるものであれば何れも適用できる。受光装置は照射光の種類に応じて選択されるが、例えば受光レンズ及び撮像部を含む光学カメラを用いることができる。表面から一定深さに存在する気泡を検出するには、光学レンズの焦点を表面から深さ方向に走査すればよい。
【0027】
上記光学検出手段による測定結果は画像処理装置に取り込まれ、気泡含有率P(%)が算出される。詳細には、光学カメラを用いてルツボ内表面の画像を撮像し、ルツボ内表面を一定面積ごとに区分して基準面積S1とし、この基準面積S1ごとに気泡の占有面積S2を求め、P(%)=(S2/S1)×100により算出される。
【0028】
透明シリカガラス層12は合成シリカガラスからなることが好ましい。合成シリカガラスとは、例えばケイ素アルコキシドの加水分解により合成された原料を溶融して製造されたシリカガラスを意味する。一般に合成シリカは天然シリカに比べて金属不純物の濃度が低く、OH基の濃度が高いという特性を有している。例えば、合成シリカに含まれる各金属不純物の含有量は0.05ppm未満であり、OH基の含有量は30ppm以上である。ただし、Al等の金属不純物が添加された合成シリカも知られていることから、合成シリカか否かは一つの要素に基づいて判断されるべきものではなく、複数の要素に基づいて総合的に判断されるべきものである。このように、合成シリカガラスは天然シリカガラスと比べて不純物が少ないことから、ルツボからシリコン融液中へ溶出する不純物の増加を防止することができ、シリコン単結晶化率を高めることができる。
【0029】
不透明シリカガラス層11及び透明シリカガラス層12は共にルツボの側壁部10Aから底部10Bまでのルツボ全体に設けられている。ルツボの側壁部10Aは、ルツボの中心軸(Z軸)と平行な円筒状の部分であって、ルツボの開口から略真下に延びている。但し、側壁部10AはZ軸に対して完全に平行である必要はなく、開口に向かって徐々に広がるように傾斜していてもよい。また、側壁部10Aは直線的であってもよく、緩やかに湾曲していてもよい。特に限定されるものではないが、側壁部10Aは、Z軸と直交するXY平面に対するルツボ壁面の接線傾斜角が80度以上となる領域として定義することができる。
【0030】
ルツボの底部10Bは、ルツボのZ軸との交点を含む比較的平坦な部分であり、底部10Bと側壁部10Aとの間には湾曲部10Cが形成されている。底部10Bは、引き上げるシリコン単結晶の投影面をカバーすることが好ましい。ルツボ底部10Bの形状はいわゆる丸底であってもよく、平底であってもよい。また、湾曲部10Cの曲率や角度も任意に設定することができる。ルツボ底部10Bが丸底の場合には、底部10Bも適度な曲率を有するため、底部10Bと湾曲部10Cとの曲率差は平底に比べて非常に小さい。
ルツボ底部10Bが平底の場合には、底部10Bが平坦或いは極めて緩やかな湾曲面をなし、湾曲部10Cの曲率は非常に大きい。特に限定されるものではないが、平底の場合、底部10Bは、Z軸と直交するXY平面に対するルツボ壁面の接線傾斜角が30度以下となる領域として定義することができる。
【0031】
ルツボの肉厚は10mm以上であることが好ましく、13mm以上であることがより好ましい。通常、口径812mm(32インチ)以上の大型ルツボの肉厚は10mm以上、1016mm(40インチ)以上の大型ルツボの肉厚は13mm以上であり、これらの大型ルツボは大容量で長時間の引き上げに使用されるため沈み込みが生じやすく、本発明による効果が顕著だからである。ルツボの肉厚は側壁部10Aから底部10Bまで一定である必要はなく、例えば、湾曲部10Cの肉厚が最も厚く、側壁部10Aの上端や底部10Bの中心に向かうにつれて薄くなるように構成されていてもよい。
【0032】
透明シリカガラス層12の厚さは、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。透明シリカガラス層12が0.5mmよりも薄い場合には、シリコン単結晶の引き上げ中に透明シリカガラス層12が溶損し切って不透明シリカガラス層11が露出するおそれがあるからである。なお、透明シリカガラス層12の厚さは側壁部10Aから底部10Bまで一定である必要はなく、例えば、湾曲部10Cの透明シリカガラス層12の厚さが最も厚く、側壁部10Aの上端や底部10Bの中心に向かうにつれて薄くなるように構成されていてもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、ルツボ上部の第1の不透明シリカガラス部分11a比重がルツボ下部の第2の不透明シリカガラス部分11bよりも小さいので、ルツボの大型化に起因するルツボの沈み込みを抑制することができる。また、第1の不透明シリカガラス部分11aがより多くの気泡を含むことから、ルツボ上部の保温性を高めることができ、引き上げ途中のシリコン単結晶を保温することができ、急冷によるクラックの発生を防止することができる。
【0034】
次に、図2乃至図4を参照しながら、シリカガラスルツボ10の製造方法について詳細に説明する。
【0035】
図2は、シリカガラスルツボ10の製造工程を概略的に示すフローチャートである。また、図3及び図4は、シリカガラスルツボ10の製造方法を説明するための模式図である。
【0036】
シリカガラスルツボ10は回転モールド法によって製造することができる。回転モールド法では、図3に示すように、シリカガラスルツボ10の外形に合わせたキャビティを有するカーボンモールド14を用意し、モールド14を回転させながらシリカ粉を供給し、モールドの内面に沿ったシリカ粉層を形成する。このとき、ルツボ上部に相当するキャビティ上部に第1のシリカ粉13aを供給し、ルツボ下部に相当するキャビティ下部に第2のシリカ粉13bを供給する(ステップS11)。第1及び第2のシリカ粉13a,13bの供給の順番は特に問わない。カーボンモールド14は一定速度で回転しているので、供給されたシリカ粉は遠心力によって内面に張り付いたまま一定の位置に留まり、その形状が維持される。
【0037】
第1及び第2のシリカ粉13a,13bは共に不透明シリカガラス層11となるが、特に、第1のシリカ粉は第1の不透明シリカガラス部分11aとなり、第2のシリカ粉は第2の不透明シリカガラス部分となる。そのため、第1のシリカ粉13aは第2のシリカ粉13bに比べてより多くの微粉を含む。逆に、第2のシリカ粉13bは第1のシリカ粉13aよりも多孔質性が高く粒度も粗い。なお、本明細書において、「微粉」とは、粒径150μm以下の粒子からなる粉を意味する。従って、「より多くの微粉を含む」とは、後述する粒度分布において粒径150μm以下の粒子の割合がより大きいことを意味する。
【0038】
本実施形態において、第1のシリカ粉13aは、粒径が50μm以上250μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であることが好ましく、第1のシリカ粉13aの粒度分布は、50μm未満が5%〜20%、50μm以上250μm未満が60%〜80%、250μm以上が20%以下であることが好ましい。また、第2のシリカ粉13bは、粒径が150μm以上350μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であることが好ましく、第2のシリカ粉13bの粒度分布は、150μm未満が20%以下、150μm以上350μm未満が60%〜80%、350μm以上が10%〜20%であることが好ましい。
【0039】
次に、図4に示すように、不透明シリカガラス層11の原料となる第1及び第2のシリカ粉13a,13bの層が形成されたモールド14内に透明シリカガラス層12の原料となる第3のシリカ粉13cを供給し、シリカ粉層をさらに厚く形成する(ステップS12)。第3のシリカ粉13cは、モールド内全体に所定の厚さにて供給される。第3のシリカ粉13cは、粒径が200μm以上400μm未満のものを50%以上含む合成シリカ粉であることが好ましいが、天然シリカ粉であってもかまわない。なお、粒径および粒度分布の試験方法では、例えばJIS K8819−9−3がある。
【0040】
上記シリカ粉の粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒度測定装置を用いて求めた値である。この粒度分測定装置は、光学台と、試料供給部と、制御用コンピューターとを備え、波長が一定であるレーザー光を粒子に当ててその散乱光の強度パターンから体積基準の粒度分布をコンピューターで計算するものである。レーザー回折・散乱法の場合には、直径1μmの球と同じ回折・散乱光のパターンを示す被測定粒子の径は、その形状に関わらず直径1μmとして判別される。粒度分布測定装置によれば、試料の特性に合った試料供給部を選定することにより、乾式や湿式によらず試料を最適な状態で測定することが可能である。
【0041】
図5は、上記レーザー回折・散乱式粒度測定装置を用いて第1,第2のシリカ粉13a,13bの粒度分布を測定した結果を示すグラフである。図5において、横軸はシリカ粉の粒径(μm)、左縦軸は存在率(%)、右縦軸は存在率の累積値(%)をそれぞれ示している。また、棒グラフは粒径ごとの存在率を示しており、曲線グラフは存在率の累積値を示している。
【0042】
図5に示すように、第1のシリカ粉13aは、140μm付近で緩やかなピークを有し、粒度分布の範囲が広い。すなわち、第1のシリカ粉13aの粒度分布は、50μm未満が5%〜20%、50μm以上250μm未満が60%〜80%、250μm以上が20%以下となっている。一方、第2のシリカ粉13bは、約170μm付近で急峻なピークを有し、粒度分布の範囲が狭い。すなわち、第2のシリカ粉13bの粒度分布は、150μm未満が20%以下、150μm以上350μm未満が60%〜80%、350μm以上が10%〜20%となっている。なお、粒度分布の範囲とは、粒度分布における、累積値90%での粒径と累積値10%での粒径の差によって定義され、この差が大きいことを「粒度分布が広い」と表現する。
【0043】
その後、キャビティ内にアーク電極15を設置し、モールドの内側からアーク放電を行い、シリカ粉層全体を1720℃以上に加熱して溶融する。また、この加熱と同時にモールド側から減圧し、モールドに設けた通気孔を通じてシリカ内部の気体を外層側に吸引し、加熱中のシリカ粉を脱気することにより、ルツボ内表面の気泡を除去し、実質的に気泡を含まない透明シリカガラス層12を形成する(ステップS13)。ここで、「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因で単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率及び気泡サイズであることを意味し、特に限定されるものではないが、気泡含有率が0.1%以下であり、気泡の平均直径が100μm以下であることをいう。その後、加熱を続けながら脱気のための減圧を弱め又は停止し、気泡を残留させることにより、多数の微小な気泡を内包する不透明シリカガラス層11を形成する(ステップS14)。このとき、原料の違いから、第1の不透明シリカガラス部分11aの気泡含有率は第2の不透明シリカガラス部分11bよりも高くなり、1の不透明シリカガラス部分11aの比重は第2の不透明シリカガラス部分11bよりも小さくなる。以上により、本実施形態によるシリカガラスルツボが完成する。
【0044】
このように、本実施形態によるシリカガラスルツボの製造方法は、不透明シリカガラス層11の原料粉の粒度分布をルツボの上部と下部とで異ならせることにより、第1の不透明シリカガラス部分11aと第2の不透明シリカガラス部分11bとを作り分けているので、ルツボに対して部分的な加熱や吸引を行うことなく、ルツボ上部の不透明シリカガラス層の比重とルツボ下部の不透明シリカガラス層の比重とを極めて簡単に異ならせることができる。
【0045】
上記第1の実施形態においては、不透明シリカガラス層11の比重をルツボ上部とルツボ下部の2段階に分けて構成しているが、本発明は2段階に限定されるものではなく、3段階以上に分けて構成することも可能である。
【0046】
図6は、本発明の第2の実施の形態によるシリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボの構造を示す略断面図である。
【0047】
図6に示すように、本実施形態によるシリカガラスルツボ20は、ルツボ上部に位置する第1の不透明シリカガラス部分11aと、ルツボ下部に位置する第2の不透明シリカガラス部分11bと、ルツボ中間部に位置する第3の不透明シリカガラス部分11cとを有し、各部の気泡含有率及び比重が異なっていることを特徴としている。すなわち、不透明シリカガラス層11の比重の変化が高さ方向に3段階となっており、下方ほど比重が高いことを特徴としている。
【0048】
ここで、「ルツボ上部」とは、ルツボの上端P0から第1の中間位置P11までの範囲に属する部分をいい、「ルツボ下部」とは、「ルツボ上部」よりも下方であって、第1の中間位置P11よりも低い第2の中間位置P12からルツボの下端P2までの範囲に属する部分をいい、「ルツボ中間部」とは、第1の中間位置P11から第2の中間位置P12までの範囲に属する部分をいう。言い換えると、「ルツボ上部」と「ルツボ下部」以外の部分が「ルツボ中間部」であり、「ルツボ中間部」は、1段階(この場合、ルツボ中間部内で比重が変化しない。)であっても複数段階(この場合、ルツボ中間部内で比重が変化する。)であってもよい。そして、「ルツボ中間部」と「ルツボ下部」の境界位置が第2の中間位置P12である。具体的には、第1の不透明シリカガラス部分11aの高さh1を0.3h0、第2の不透明シリカガラス部分11aの高さを0.4h0、第3の不透明シリカガラス部分11cの高さは0.3h0に設定することができる。また、第1の不透明シリカガラス部分11aの高さh1を0.1h0、第2の不透明シリカガラス部分11aの高さを0.4h0、第3の不透明シリカガラス部分11cの高さを0.5h0に設定してもよい。これらの具体例はいずれも、第1の実施形態において示した第1の不透明シリカガラス部分11aの高さh1が0.1h0〜0.6h0であるという条件を満たすものである。
【0049】
第1,第2の不透明シリカガラス部分11a、11bの気泡含有率及び比重は、第1の実施形態によるシリカガラスルツボ10と同様である。つまり、第1の不透明シリカガラス部分11aの比重は1.4〜1.8であり、第2の不透明シリカガラス部分11bの比重は1.7〜2.1であって第1の不透明シリカガラス部分11aよりも大きい。第3の不透明シリカガラス部分11cの気泡含有率及び比重は、第1,第2の不透明シリカガラス部分11a、11bの中間値であり、第1の不透明シリカガラス部分11aの比重よりも大きく、第2の不透明シリカガラス部分11bの比重よりも小さい。
【0050】
第1の不透明シリカガラス部分11aの原料である第1のシリカ粉13aは、粒径が50μm以上250μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であることが好ましく、第1のシリカ粉13aの粒度分布は、50μm未満が5%〜20%、50μm以上250μm未満が60%〜80%、250μm以上が20%以下であることが好ましい。また、第2の不透明シリカガラス部分11bの原料である第2のシリカ粉13bは、粒径が150μm以上350μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であることが好ましく、第2のシリカ粉13bの粒度分布は、150μm未満が20%以下、150μm以上350μm未満が60%〜80%、350μm以上が10%〜20%であることが好ましい。
【0051】
さらに、第3の不透明シリカガラス部分11cの原料は、第1のシリカ粉13aと第2のシリカ粉13bとを所定の比率で混合したものを用いることが好ましい。このようにすれば、第1の不透明シリカガラス部分11aよりも大きく且つ第2の不透明シリカガラス部分11よりも小さな比重を有する第3の不透明シリカガラス部分11cを容易に形成することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によるシリカガラスルツボ20は、ルツボ上部とルツボ下部との間にルツボ中間部を設け、ルツボ中間部に位置する第3の不透明シリカガラス部分11cの比重をルツボ上部よりも大きく且つルツボ下部よりも小さくしているので、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることは言うまでもない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
口径812mmのシリカガラスルツボサンプルA1を用意した。シリカガラスルツボサンプルA1のサイズは、直径812mm、高さ500mmであった。また、ルツボの肉厚は側壁部で18mm、湾曲部で20mmm、底部で18mmであり、側壁部の透明シリカガラス層12の厚さは1.0mmとした。
【0055】
シリカガラスルツボサンプルA1は回転モールド法によって製造し、第1の不透明シリカガラス部分11aの原料には粒径が50μm以上250μm未満のものを60%含む天然シリカ粉を用い、第2の不透明シリカガラス部分11bの原料には粒径が150μm以上350μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉を用いた。さらに、透明シリカガラス層12の原料には粒径が200μm以上400μm未満のものを60%含む合成シリカ粉を用いた。なお、上記原料粉の粒度分布測定にはレーザー回折・散乱式粒度測定装置を用いた。この粒度分測定装置は、波長が一定であるレーザー光を粒子に当ててその散乱光の強度パターンから体積基準の粒度分布を算出するものである。
【0056】
このルツボサンプルA1と同一条件で製造した別のサンプルから第1及び第2の不透明シリカガラス部分11a,11bの比重を求めたところ、第1の不透明シリカガラス部分11aの比重は1.62であり、第2の不透明シリカガラス部分11bの比重は1.86であった。
【0057】
次に、このシリカガラスルツボに多結晶シリコン砕片300kgを供給した後、シリカガラスルツボを単結晶引き上げ装置に装填し、ルツボ内の多結晶シリコンを炉内で融解し、直径約300mmのシリコン単結晶インゴットの引き上げを行った。
【0058】
その後、使用後のルツボの変形を確認した。また、引き上げたシリコン単結晶の単結晶化率を求めた。その結果を表1に示す。単結晶化率は、シリコン原料に対する単結晶の重量比として定義される。ただし、ルツボ内のすべてのシリコン融液が使用されるわけではなく、またシリコン単結晶インゴットのトップ部とテール部を除いた直胴部のみが単結晶化率の計算の対象となることから、十分なシリコン単結晶が引き上げられたとしても単結晶化率は100%以下であり、80%以上であれば良好である。
【0059】
表1に示すように、実施例1によるシリカガラスルツボサンプルA1は、引き上げ使用後において、ルツボの沈み込みはほとんどなかった。また、このシリカガラスルツボサンプルA1を使用して引き上げたシリコンインゴットの単結晶化率は88%となり、良好な単結晶化率が得られた。
【0060】
(比較例1)
実施例1によるシリカガラスルツボサンプルA1と同一形状を有するサンプルB1を用意した。サンプルB1は回転モールド法によって製造したが、実施例1と異なり、第1の不透明シリカガラス部分11aの原料には粒径が100μm以上300μm未満のものを60%含む天然シリカ粉を用い、第2の不透明シリカガラス部分11bの原料には、粒径が200μm以上400μm未満のものを60%含む天然シリカ粉を用いた。さらに、透明シリカガラス層12の原料として、粒径が250μm以上450μm未満のものを60%含む合成シリカ粉を用いた。その後、このシリカガラスルツボA2を用いてシリコン単結晶インゴットの引き上げを行い、使用後のルツボの変形の確認及びシリコン単結晶化率を求めた。その結果を表1に示す。
【0061】
表1に示すように、比較例1によるシリカガラスルツボサンプルB1は、引き上げ使用後において沈み込みが40mm程度生じていた。また、このシリカガラスルツボサンプルB1を使用して引き上げたシリコンインゴットの単結晶化率は62%となり、単結晶化率は大幅に低下した。
【0062】
【表1】

【符号の説明】
【0063】
10 シリカガラスルツボ
10A ルツボの側壁部
10B ルツボの底部
10C ルツボの湾曲部
11 不透明シリカガラス層
11a 第1の不透明シリカガラス部分
11b 第2の不透明シリカガラス部分
11c 第3の不透明シリカガラス部分
12 透明シリカガラス層
13a 第1のシリカ粉
13b 第2のシリカ粉
13c 第3のシリカ粉
14 カーボンモールド
14a 通気孔
15 アーク電極
20 シリカガラスルツボ
h0 ルツボ全高
h1 ルツボ上部の高さ
h2 ルツボ下部の高さ
h3 ルツボ中間部の高さ
P0 ルツボの上端
P11 ルツボの第1の中間位置
P12 ルツボの第2の中間位置
P2 ルツボの下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部、湾曲部及び底部を有するシリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボの製造方法であって、
前記シリカガラスルツボの外形に合わせた内面を有する中空状のモールドを回転させながら前記モールド内にシリカ粉を供給し、前記モールドの内面に沿ったシリカ粉層を形成する工程と、
前記シリカ粉層を加熱して前記シリカ粉を溶融することによりシリカガラス層を形成する工程とを備え、
前記シリカ粉層を形成する工程は、
ルツボの上端から当該上端よりも下方の第1の中間位置までの範囲に属するルツボ上部に相当する前記モールド内の所定の位置に第1のシリカ粉を供給する工程と、
前記第1の中間位置からルツボの下端までの範囲、又は前記第1の中間位置よりも下方の第2の中間位置からルツボの下端までの範囲に属するルツボ下部に相当する前記モールド内の所定の位置に第2のシリカ粉を供給する工程と、
前記第1及び第2のシリカ粉に覆われた前記モールドの内面に第3のシリカ粉を供給する工程とを含み、
第1のシリカ粉の粒度分布は第2のシリカ粉の粒度分布よりも広く且つより多くの微粉を含むことを特徴とするシリカガラスルツボの製造方法。
【請求項2】
第1のシリカ粉は、粒径が50μm以上250μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であり、
第2のシリカ粉は、粒径が150μm以上350μm未満のものを60%以上含む天然シリカ粉であることを特徴とする請求項1に記載のシリカガラスルツボの製造方法。
【請求項3】
第1のシリカ粉の粒度分布は、50μm未満が5%〜20%、50μm以上250μm未満が60%〜80%、250μm以上が20%以下であり、
第2のシリカ粉の粒度分布は、150μm未満が20%以下、150μm以上350μm未満が60%〜80%、350μm以上が10%〜20%であることを特徴とする請求項2に記載のシリカガラスルツボの製造方法。
【請求項4】
前記第3のシリカ粉は、粒径が200μm以上400μm未満のものを50%以上含む合成シリカ粉であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリカガラスルツボの製造方法。
【請求項5】
前記シリカ粉層を加熱して前記シリカ粉を溶融する際、前記モールドに設けられた通気孔から加熱中のシリカ粉を脱気することによりルツボの内表面側に透明シリカガラス層を形成する工程と、
前記脱気ための減圧を弱め又は停止することによりルツボの外表面側に不透明シリカガラス層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシリカガラスルツボの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−176895(P2012−176895A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135814(P2012−135814)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2011−530794(P2011−530794)の分割
【原出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(592176044)ジャパンスーパークォーツ株式会社 (90)
【Fターム(参考)】