説明

シリコン微粒子とその製造方法およびそれらを用いた太陽電池とその製造方法

【課題】シリコンを用いながら、従来のアモルファス型太陽電池やシリコン結晶型太陽電池に比べ、大幅にコストダウンできる太陽電池とその製造方法及びそれに用いるシリコン微粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合しペースト化し、基材表面に塗布する工程と、表面を有機膜で被われたp型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合しペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、硬化させる工程とにより、表面に共有結合した有機薄膜で被われているn型シリコン微粒子層と表面に共有結合した有機薄膜で被われているp型シリコン微粒子層が積層形成されている太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、半導体性シリコン微粒子の表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与した微粒子を用いた太陽電池とその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明において、「シリコン微粒子」には、半導体性p型シリコン微粒子と半導体性n型シリコン微粒子が含まれる。
【背景技術】
【0003】
従来、シリコン太陽電池では、ガラス基板表面にプラズマCVD を用いて製膜したシリコンアモルファス型太陽電池や、シリコン結晶やポリシリコン結晶を切断して板状に加工した後不純物拡散したシリコン結晶型太陽電池が知られている。例えば、以下の特許が知られている。
【特許文献1】特開平10-247629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシリコンアモルファス型太陽電池では、高価な真空装置を用いるため、製造コストが高くなるという欠点があった。また、シリコン結晶型太陽電池では、高純度なシリコン結晶やポリシリコン結晶を多量に用いるため、製造コストが高くなるという欠点があった。
【0005】
本発明は、シリコンを用いながら、従来のアモルファス型太陽電池やシリコン結晶型太陽電池に比べ、大幅にコストダウンできる太陽電池とその製造方法及びそれに用いるシリコン微粒子とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として提供される第一の発明は、表面に共有結合した有機薄膜で被われていることを特徴とするシリコン微粒子である。
【0007】
第二の発明は、第一の発明において、表面に共有結合した有機薄膜が一端に機能性官能基を含み他端でSiを介してシリコン微粒子表面に共有結合する分子で構成されていることを特徴とするシリコン微粒子である。
【0008】
第三の発明は、第二の発明において、機能性官能基が反応性の官能基であることを特徴とするシリコン微粒子である。
【0009】
第四の発明は、第三の発明において、反応性の官能基が熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性の官能基であることを特徴とするシリコン微粒子である。
【0010】
第五の発明は、第三の発明において、反応性の官能基がエポキシ基やイミノ基、あるいはカルコン基であることを特徴とするシリコン微粒子である。
【0011】
第六の発明は、第一及び第二の発明において、表面に共有結合した有機薄膜が単分子膜で構成されていることを特徴とするシリコン微粒子である。
【0012】
第七の発明は、シリコン微粒子を少なくともアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物とシリコン微粒子表面を反応させる工程を含むことを特徴とするシリコン微粒子の製造方法である。
【0013】
第八の発明は、第七の発明において、シリコン微粒子を化学吸着液に分散させてアルコキシシラン化合物とシリコン微粒子表面を反応させる工程の後、シリコン微粒子表面を有機溶剤で洗浄してシリコン微粒子表面に共有結合した単分子膜を形成することを特徴とするシリコン微粒子の製造方法である。
【0014】
第九の発明は、第七の発明において、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とするシリコン微粒子の製造方法である。
【0015】
第十の発明は、第七の発明において、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とするシリコン微粒子の製造方法である。
【0016】
第十一の発明は、表面に共有結合した有機薄膜で被われているn型シリコン微粒子層と表面に共有結合した有機薄膜で被われているp型シリコン微粒子層が積層形成されていることを特徴とする太陽電池である。
【0017】
第十二の発明は、表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているn型シリコン微粒子層と、表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているp型シリコン微粒子層がガラス基板上に積層されていることを特徴とする太陽電池である。
【0018】
第十三の発明は、第十一及び第十二の発明において、表面に共有結合した有機薄膜が一端に反応性の官能基を含み他端でSiを介して半導体性シリコン微粒子表面に共有結合する分子で構成されていることを特徴とする太陽電池である。
【0019】
第十四の発明は、第十三の発明において、反応性の官能基が熱反応性あるいはイオン反応性の官能基であることを特徴とする太陽電池である。
【0020】
第十五の発明は、第十三の発明において、反応性の官能基がエポキシ基やイミノ基であることを特徴とする太陽電池である。
【0021】
第十六の発明は、第十一または第十二の発明において、表面に共有結合した有機薄膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする太陽電池である。
【0022】
第十七の発明は、第十一乃至第十六の発明において、表面に共有結合した有機薄膜で被われた基材表面と有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子層と有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子層が前記それぞれの有機薄膜を介して共有結合し、硬化成膜されていることを特徴とする太陽電池である。
【0023】
第十八の発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコンp型微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、硬化させる工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0024】
第十九の発明は、第十八の発明において、あらかじめ、塗布前の基材表面に、第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子、あるいは第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子の表面の第1または第2の反応性官能基と反応する官能基を含む有機薄膜を結合形成しておくことを特徴とする太陽電池の製造方法である。
以下、更に本願発明について要旨の説明を加える。
【0025】
本発明は、シリコン微粒子を少なくともアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物とシリコン微粒子表面を反応させる工程により、表面に共有結合した有機薄膜で被われたシリコン微粒子を提供することを要旨とする。
【0026】
このとき、シリコン微粒子を化学吸着液に分散させてアルコキシシラン化合物とシリコン微粒子表面を反応させる工程の後、シリコン微粒子表面を有機溶剤で洗浄してシリコン微粒子表面に共有結合した単分子膜を形成すると、相対的にシリコン含量の多いシリコン微粒子を提供できて好都合である。
また、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると反応時間を短縮できて都合がよい。
さらに、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いると反応時間をさらに短縮できて都合がよい。
【0027】
また、ここで、表面に共有結合した有機薄膜が一端に機能性官能基を含み他端でSiを介してシリコン微粒子表面に共有結合する分子で構成されているとシリコン微粒子に新たな機能を付与できて都合がよい。
また、機能性官能基が反応性の官能基であると、シリコン微粒子を製膜する上で都合がよい。
【0028】
さらに、反応性の官能基が熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性の官能基であると反応性を付与する上で都合がよい。
さらにまた、反応性の官能基がエポキシ基やイミノ基、あるいはカルコン基であると、強固な結合が生じて信頼性を高める上で都合がよい。
また、表面に共有結合した有機薄膜が単分子膜で構成されているとシリコン密度を向上する上で都合がよい。
【0029】
さらに、本発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたp型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、硬化させる工程とにより、少なくとも表面に共有結合した有機薄膜で被われているn型シリコン微粒子層と表面に共有結合した有機薄膜で被われているp型シリコン微粒子層が積層形成されている太陽電池を提供することを要旨とする。
【0030】
また、表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているn型シリコン微粒子層と、表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているp型シリコン微粒子層がガラス基板上に積層されている太陽電池を提供することを要旨とする。
【0031】
このとき、あらかじめ、塗布前の基材表面に、第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子、あるいは第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子の表面の第1または第2の反応性官能基と反応する官能基を含む有機薄膜を結合形成しておくと、シリコン微粒子を安定化し製膜する上で都合がよい。
【0032】
また、表面に共有結合した有機薄膜が一端に反応性の官能基を含み他端でSiを介して半導体性シリコン微粒子表面に共有結合する分子で構成しておくと、シリコン微粒子を安定化し製膜する上でさらに都合がよい。
さらに、反応性の官能基が熱反応性あるいはイオン反応性の官能基であると信頼性の高い被膜を形成できて都合がよい。
また、反応性の官能基がエポキシ基やイミノ基であるとより信頼性の高い被膜を形成できて都合がよい。また、表面に共有結合した有機薄膜が単分子膜で構成されていると、シリコン含量の高い被膜を形成できて都合がよい。
【0033】
さらにまた、表面に共有結合した有機薄膜で被われた基材表面と有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子層と有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子層が前記それぞれの有機薄膜を介して共有結合し、硬化成膜されていると変換効率が高く且つ信頼性の高い太陽電池を製造できて都合がよい。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したとおり、本発明によれば、シリコン微粒子本来の機能をほぼ保ったままで安定化させる機能や各種溶媒への分散性を向上させる機能、各種反応機能を付与したシリコン微粒子を提供できる効果がある。さらにまた、化学吸着した単分子膜で被うことにより、シリコン微粒子本来の形状と機能をほぼ完全に保ったままで安定化させる機能や分散性を向上する機能、各種化学反応機能を付与したシリコン微粒子を提供できる特別の効果がある。また、高効率のシリコン太陽電池を極めて低コストで製造提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、硬化させる工程とにより、少なくとも表面に共有結合した有機薄膜で被われているn型シリコン微粒子層と表面に共有結合した有機薄膜で被われているp型シリコン微粒子層が積層形成されている太陽電池を提供するものである。
【0036】
また、表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているn型シリコン微粒子層と、表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているp型シリコン微粒子層がガラス基板上に積層されている太陽電池を提供するものである。
【0037】
したがって、本発明には、シリコン微粒子本来の形状と機能をほぼ完全に保ったままで粒子そのものの表面を安定化する機能や分散性を向上する機能、各種化学反応機能を付与したシリコン微粒子を提供できる作用がある。また、高効率のシリコン太陽電池を極めて低コストで製造提供できる作用がある。
【0038】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
なお、本発明に関するシリコン微粒子には、半導体性のp型とn型シリコン微粒子があるが、まず代表例として、p型シリコン微粒子を取り上げて説明する。
【実施例1】
【0040】
まず、粒径が100〜10nm程度のp型シリコン微粒子1を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記式(化1)あるいは(化2)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、あるいは有機酸である酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーンとジメチルホルムアミドを同量混合した溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン50%とジメチルホルムアミド50%の溶液に1重量%程度の濃度(好ましい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0041】
【化1】

【0042】
【化2】

【0043】
この吸着液にp型シリコン微粒子1を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、p型シリコン微粒子1表面のダングリングボンドには水酸基2が多数結合しているの(図1a)で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒あるいは有機酸存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(化3)あるいは(化4)に示したような結合を形成し、シリコン微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3あるいはアミノ基を含む化学吸着膜4が約1ナノメートル程度の膜厚で形成された(図1b、1c)。
【0044】
なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒では沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等がある。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
その後、トリクレン等の塩素系溶媒を添加して撹拌洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp型シリコン微粒子を作製できた。
【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
ここで、処理部は、被膜がナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、粒子径を損なうことはなかった。また、この被膜は電圧が0.1V以下のため電気絶縁機能はほとんどなく、シリコンの酸化の進行を防止できる機能はあった。
【0048】
なお、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が粒子表面で空気中の水分と反応して、粒子表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成されたシリコン微粒子が得られた。
【0049】
また、この方法の特徴は、乾燥雰囲気を必要としないことであり、量産性に優れている。
【0050】
次に、前記エポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp型シリコン微粒子5,6をそれぞれ同量取りイソプロピルアルコール中で十分混合してペースト化し、ガラス基板等に塗布し50〜100度程度に加熱すると、下記式(化5)に示したような反応でエポキシ基とアミノ基が付加してシリコン微粒子は結合固化し、バインダーを含まなくてもp型シリコン微粒子の塗膜を形成できた。
【0051】
【化5】

【0052】
なお、上記実施例1では、反応性基を含む化学吸着剤として式(化1)あるいは(化2)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(16)に示した物質が利用できた。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N (CH2)Si(OCH)3
(12) H2N (CH2)Si(OCH)3
(13) H2N (CH2)Si(OCH)3
(14) H2N (CH2)Si(OC)3
(15) H2N (CH2)Si(OC)3
(16) H2N (CH2)Si(OC)3
【0053】
ここで、(CHOCH)−基は、下記式(化6)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、下記式(化7)で表される官能基を表す。
【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
さらに、光または電子線等のエネルギービーム反応性官能基を含む化学吸着剤として、下記(17)〜(22)に示した物質が利用できた。この場合は、硬化には、当然光や電子線等のエネルギービームを照射すればよい。
(17) CH≡C−C≡C−(CH2)15SiCl3
(18) CH≡C−C≡C−(CH2)2Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(19) CH≡C−C≡C−(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(20) (C) (CH)2CO(C)O(CH2)OSi(OCH)3
(21) (C) (CH)2CO(C)O(CH2)OSi(OC)3
(22) (C) CO(CH)2 (C)O(CH2)OSi(OCH)3
ここで、(C) CO(CH)2 (C)−はカルコニル基を表す。
【0057】
なお、実施例1に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0058】
また、膜形成溶液の溶媒としては、化学吸着剤がアルコキシシラン系、クロロシラン系、何れの場合も水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。
【0059】
具体的に使用可能なものは、有機塩素系溶媒、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0060】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0061】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を1/2〜2/3程度まで短縮できた。
【0062】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早く(30分程度まで)でき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0063】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0064】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0065】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0066】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0067】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0068】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【実施例2】
【0069】
実施例1と同様の方法で、n型シリコン微粒子11にそれぞれエポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜を形成し、エポキシ基で被われたn型シリコン微粒子12とアミノ基で被われたn型シリコン微粒子13をそれぞれ同量取りイソプロピルアルコール中で十分混合してペースト化した。
【0070】
次に、あらかじめガラス基板14表面に形成されたITO透明電極15の上に塗布し、50〜100度程度に加熱して硬化させて膜厚が1ミクロン程度のn型シリコン微粒子の塗膜16を形成した。
その後、さらに実施例1で得たエポキシ基あるいはアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp型シリコン微粒子5,6をそれぞれ同量取りイソプロピルアルコール中で十分混合して作成したペーストを、前記n型シリコン微粒子の塗膜16表面に塗布し、50〜100度程度に加熱して膜厚が1ミクロン程度のp型シリコン微粒子の塗膜17を形成した。最後に、裏面電極として、Al膜18を蒸着形成すると、ガラス基板側から入射する光19を受光する太陽電池を作成できた。
【0071】
なお、このとき、あらかじめ同様の方法でITO透明電極15表面にもエポキシ基あるいはアミノ基を持つ単分子膜20を形成しておくと、シリコン微粒子の表面の単分子膜は、ITO透明電極15表面の単分子膜とも反応して、耐剥離強度の高いシリコン太陽電池を製造できた。(図2)
【0072】
ここで、p型およびn型シリコン微粒子の表面の反応性の単分子膜は、シリコン微粒子を硬化製膜する働き、およびp型およびn型シリコン微粒子の空気中での酸化を防ぐ働きをする。なお、この反応性の単分子膜は、厚みが1nm程度であるため、シリコンの導電を妨げることはほとんどなかった。
また、ここでシリコン微粒子の粒径を100 nmから1nmの間で制御することで、吸収波長域を赤外光から可視光域まで制御できた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
また、上記2つの実施例では、シリコン微粒子を例として説明したが、本発明は、表面に水酸基の水素のような活性水素を含んだ半導体微粒子で有れば、どのような半導体微粒子にでも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施例におけるシリコン微粒子の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のシリコン微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図2】本発明の第2の実施例におけるシリコン微粒子を用いた太陽電池の断面概念図を示す。
【符号の説明】
【0075】
1 p型シリコン微粒子
2 水酸基
3 エポキシ基を含む化学吸着単分子膜
4 アミノ基を含む化学吸着膜
エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp型シリコン微粒子
アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたp型シリコン微粒子
11 n型シリコン微粒子
12 エポキシ基で被われたn型シリコン微粒子
13 アミノ基で被われたn型シリコン微粒子
14 ガラス基板
15 ITO透明電極
16 n型シリコン微粒子の塗膜
17 p型シリコン微粒子の塗膜
18 Al膜
19 入射する光
20 エポキシ基あるいはアミノ基を持つ単分子膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に共有結合した有機薄膜で被われていることを特徴とするシリコン微粒子。
【請求項2】
表面に共有結合した有機薄膜が一端に機能性官能基を含み他端でSiを介してシリコン微粒子表面に共有結合する分子で構成されていることを特徴とする請求項1記載のシリコン微粒子。
【請求項3】
機能性官能基が反応性の官能基であることを特徴とする請求項2記載のシリコン微粒子。
【請求項4】
反応性の官能基が熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性の官能基であることを特徴とする請求項3記載のシリコン微粒子。
【請求項5】
反応性の官能基がエポキシ基やイミノ基、あるいはカルコン基であることを特徴とする請求項3記載のシリコン微粒子。
【請求項6】
表面に共有結合した有機薄膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする請求項1および2記載のシリコン微粒子。
【請求項7】
シリコン微粒子を少なくともアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物とシリコン微粒子表面を反応させる工程を含むことを特徴とするシリコン微粒子の製造方法。
【請求項8】
シリコン微粒子を化学吸着液に分散させてアルコキシシラン化合物とシリコン微粒子表面を反応させる工程の後、シリコン微粒子表面を有機溶剤で洗浄してシリコン微粒子表面に共有結合した単分子膜を形成することを特徴とする請求項7記載のシリコン微粒子の製造方法。
【請求項9】
シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項7に記載のシリコン微粒子の製造方法。
【請求項10】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項7に記載のシリコン微粒子の製造方法。
【請求項11】
表面に共有結合した有機薄膜で被われているn型シリコン微粒子層と表面に共有結合した有機薄膜で被われているp型シリコン微粒子層が積層形成されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項12】
表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているn型シリコン微粒子層と、表面に共有結合した第1の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子が混合されて互いに前記有機薄膜を介して共有結合して硬化製膜されているp型シリコン微粒子層がガラス基板上に積層されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項13】
表面に共有結合した有機薄膜が一端に反応性の官能基を含み他端でSiを介して半導体性シリコン微粒子表面に共有結合する分子で構成されていることを特徴とする請求項11および12記載の太陽電池。
【請求項14】
反応性の官能基が熱反応性あるいはイオン反応性の官能基であることを特徴とする請求項13記載の太陽電池。
【請求項15】
反応性の官能基がエポキシ基やイミノ基であることを特徴とする請求項13記載の太陽電池。
【請求項16】
表面に共有結合した有機薄膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする請求項11および12記載の太陽電池。
【請求項17】
表面に共有結合した有機薄膜で被われた基材表面と有機薄膜で被われたn型シリコン微粒子層と有機薄膜で被われたp型シリコン微粒子層が前記それぞれの有機薄膜を介して共有結合し、硬化成膜されていることを特徴とする請求項11乃至16記載の太陽電池。
【請求項18】
表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたn型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、表面に共有結合した第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたp型シリコン微粒子と表面に共有結合した第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたp型シリコン微粒子を有機溶媒中で混合してペースト化する工程と、基材表面に塗布する工程と、硬化させる工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項19】
あらかじめ、塗布前の基材表面に、第1の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子、あるいは第2の反応性官能基を含む有機膜で被われたシリコン微粒子の表面の第1または第2の反応性官能基と反応する官能基を含む有機薄膜を結合形成しておくことを特徴とする請求項18記載の太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−173516(P2007−173516A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369132(P2005−369132)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】