シリコン物体形成方法及び装置
【課題】従来のシリコンドット形成や結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、シリコン物体形成対象基体上に所望のシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン薄膜)を形成できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】シリコン物体形成対象基体Sを第1室1に配置し、第1室1に連設された第2室2にシリコンスパッタターゲットT1を設け、第2室2に水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させ、該プラズマにてシリコンスパッタターゲットT1をケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を生成させ、第2室2から第1室1へ到来する該シリコン物体形成寄与粒子により基体S上にシリコン物体を形成する。
【解決手段】シリコン物体形成対象基体Sを第1室1に配置し、第1室1に連設された第2室2にシリコンスパッタターゲットT1を設け、第2室2に水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させ、該プラズマにてシリコンスパッタターゲットT1をケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を生成させ、第2室2から第1室1へ到来する該シリコン物体形成寄与粒子により基体S上にシリコン物体を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基体上にシリコン物体を形成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで言う「シリコン物体」とは、シリコンドット、すなわち、微小サイズのシリコンのドット( 所謂シリコンナノ粒子) 、かかるシリコンドットの群れからなる膜(換言すれば、膜状に群れたシリコンドット)、結晶性シリコン薄膜などを指しているが、シリコンドットは、例えば、単一電子デバイス等のための電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる。
結晶性シリコン薄膜は、TFT(薄膜トランジスタ)スイッチの材料として、また、各種集積回路、太陽電池等の作製に採用されている。
【0003】
シリコンドットの形成方法としては、シリコンを不活性ガス中でエキシマレーザー等を用いて加熱、蒸発させて基体上にシリコンドットを形成する物理的手法が知られており、また、ガス中蒸発法も知られている(神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁参照) 。後者は、レーザーに代えて高周波誘導加熱やアーク放電によりシリコンを加熱蒸発させて基体上にシリコンドットを形成する手法である。
【0004】
また、CVDチャンバ内に材料ガスを導入し、加熱した基体上にシリコンナノ粒子を形成するCVD法も知られている(特開2004−179658号公報参照)。
この方法では、シリコンナノ粒子成長のための核を基体上に形成する工程を経て、該核からシリコンナノ粒子を成長させる。
【0005】
多結晶シリコン薄膜の形成については、被成膜基体の温度を800℃以上に維持して低圧下にプラズマCVD法等のCVD法やスパッタ蒸着法等のPVD法により形成する方法(例えば特開平5−234919号公報、特開平11−54432号公報参照)、各種CVD法やPVD法により比較的低温下にアモルファスシリコン薄膜を形成したのち、後処理として例えば1000℃程度の熱処理或いは600℃程度で長時間にわたる熱処理を該アモルファスシリコン薄膜に施して形成する方法(例えば特開平5−218368号公報参照)が知られている。さらに、アモルファスシリコン膜にレーザーアニール処理を施して該膜を結晶化させる方法も知られている(例えば特開平8−124852公報参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−179658号公報
【特許文献2】特開平5−234919号公報
【特許文献3】特開平11−54432号公報
【特許文献4】特開平5−218368号公報
【特許文献5】特開平8−124852号公報
【非特許文献1】神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリコンドットの形成については、シリコンをレーザー照射により加熱蒸発させる手法は、均一にエネルギー密度を制御してレーザーをシリコンに照射することが困難であり、シリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。
ガス中蒸発法においても、シリコンの不均一な加熱が起こり、そのためにシリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。
【0008】
また、特開2004−179658号公報に記載されているようなCVD法においては、核を基体上に形成するにあたり、基体を550℃程度以上に加熱しなければならず、耐熱温度の低い基体(例えば低融点ガラス基板)を採用できず、基体材料の選択可能範囲がそれだけ制限される。
【0009】
結晶性シリコン薄膜の形成については、既述の方法のうち、被成膜基体を高温にさらす方法では、膜形成する基体として高温に耐え得る高価な基体(例えば石英ガラス基板)を採用しなければならず、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板への結晶性シリコン薄膜の形成は困難である。そのため、結晶性シリコン薄膜の製造コストが基体コストの面から高くなってしまう。アモルファスシリコン膜を高温下に熱処理する場合も同様の問題がある。
【0010】
アモルファスシリコン膜をレーザーアニール処理する場合には、比較的低温下に結晶性シリコン膜を得ることができるが、レーザー照射工程を必要とすることや、非常に高いエネルギー密度のレーザー光を照射しなければならないこと等から、この場合も結晶性シリコン薄膜の製造コストが高くなってしまう。また、レーザー光を膜の各部に均一に照射することは難しく、さらにレーザー照射により水素脱離が生じて膜表面が荒れることもあり、これらにより良質の結晶性シリコン薄膜を得ることは困難である。
【0011】
そこで本発明は、上記従来のシリコンドット形成や結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、シリコン物体形成対象基体上に所望のシリコン物体を形成できる方法及び装置を提供することを課題とする。
【0012】
具体的には、例えば、従来のシリコンドット形成と比べると、比較的低温下で、基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成できる方法及び装置を提供することを課題とする。
また、例えば、従来の結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、基体上に良質の結晶性シリコン薄膜を形成できる方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者はかかる課題を解決するため研究を重ね、次のことを知見するに至った。
水素ガスをプラズマ化し、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)することで、比較的低温で(例えば500℃以下の温度で)、シリコン物体形成対象基体上に所望のシリコン物体を形成できる。
【0014】
例えば、水素ガスをプラズマ化し、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)することで、比較的低温でシリコン物体形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
【0015】
例えば、シリコンスパッタターゲットをプラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすれば、500℃以下の低温においても、粒径20nm以下、或いは粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成することが可能である。
【0016】
ここで、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、各シリコンドットの粒径がいずれも同じ又は略同じである場合のほか、シリコンドットの粒径にバラツキがあったとしても、シリコンドットの粒径が、実用上は、揃っているとみることができる場合も指す。例えば、シリコンドットの粒径が、所定の範囲(例えば20nm以下の範囲或いは10nm以下の範囲)内に揃っている、或いは概ね揃っているとみても実用上差し支えない場合や、シリコンドットの粒径が例えば5nm〜6nmの範囲と8nm〜11nmの範囲に分布しているが、全体としては、シリコンドットの粒径が所定の範囲(例えば10nm以下の範囲)内に概ね揃っているとみることができ、実用上差し支えない場合等も含まれる。要するに、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、実用上の観点から、全体として、実質上揃っている、と言える場合を指す。
【0017】
また、例えば、シリコンスパッタターゲットを、プラズマ発光における波長656nmにピークを示す水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3のプラズマでケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、スパッタリングされた原子と水素プラズマによる励起効果及びシリコン物体形成対象基体の堆積膜表面と水素ラジカルの反応などにより該基体上に膜を堆積形成すれば、結晶性を示し、表面粗度の小さい、良質の結晶性シリコン膜が形成される。
【0018】
しかも、比較的低温下に膜形成でき、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板への結晶性シリコン薄膜の形成も可能であり、それだけ安価に基体上に結晶性シリコン薄膜を形成できる。
【0019】
また、シリコンドット、結晶性シリコン薄膜等のいずれの形成の場合でも、シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするにあたっては、シリコン物体形成対象基体を配置する、換言すればシリコン物体を形成するための室(第1室)にシリコンスパッタターゲットを配置し、該室において水素ガスからケミカルスパッタリングたのためのプラズマを生成させるのではなく、第1室に第2室を連通形成し、該第2室にシリコンスパッタターゲットを配置し、該第2室においてケミカルスパッタリング用プラズマを生成させ、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングさせて、SiH3 ラジカルのような水素化シリコン励起種などの、目的とするシリコン物体の形成に寄与する粒子を形成し、該第2室から第1室へ到来してくる該シリコン物体形成寄与粒子により基体上にシリコンドット、結晶性シリコン薄膜などのシリコン物体を形成することが可能である。
【0020】
そうすることで、第1室の形状等に左右されることなくシリコンスパッタターゲットを選択できる幅が広がる。例えば、第1室の形状に左右されない単純形状のシリコンスパッタターゲットの採用が可能になる。このようにシリコンスパッタターゲットにつき、その形状等の選択の自由度が大きくなる。
【0021】
さらに、シリコン物体を形成するための第1室に左右されることなく、シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングさせるための第2室を含む部分の構造等(例えばプラズマ生成のための放電方式とそのための構造)につき選択できる幅が広がるとともに、これら部分のメイテナンスも容易になる。
【0022】
〔1〕シリコン物体形成方法
かかる知見に基づき、本発明は、
シリコン物体形成対象基体を第1室に配置する工程と、
前記第1室に連通形成された第2室に1又は2以上のシリコンスパッタターゲットを設ける工程と、
前記第2室に水素ガスを導入し、該導入された水素ガスからスパッタリング用プラズマ生成装置にてケミカルスパッタリング用プラズマを生成させる工程と、
前記第2室に生成させた前記ケミカルスパッタリング用プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を発生させ、該第2室から前記第1室へ到来する該シリコン物体形成寄与粒子により該第1室内に配置された前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成する工程と
を含むシリコン物体形成方法を提供する。
ここで「シリコン物体形成寄与粒子」とは、シリコン励起種(例えば、SiH3 等の水素化シリコン励起種)などの、目的とするシリコン物体の形成に寄与する粒子である。
【0023】
かかるシリコン物体形成方法によると、低温で(例えば500℃以下の低温で)シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成することができる。
例えば、シリコン物体として、基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドット(「シリコンドットの群れからなる膜」、換言すれば、「膜状に群れとなったシリコンドット」である場合も含む)を均一な密度分布で形成することが可能である。結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0024】
ここで「シリコンドット」とは、一般に「シリコンナノ粒子」等と称されている、粒径サイズが100ナノメートル(100nm)未満の微小なシリコンドット、例えば、粒径サイズが数nm〜数十nmの微小シリコンドットである。なお、シリコンドットのサイズの下限については、それには限定されないが、形成の難易の点から、一般的には概ね1nm程度となろう。
【0025】
シリコンスパッタターゲットは、市場で入手できるシリコンスパッタターゲット等の予め準備されたものを前記第2室に後付け設置して用いてもよいが、前記シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つは、前記第2室内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスをシリコン膜形成用プラズマ生成装置にてプラズマ化し、該プラズマにより該第2室の内壁に形成したシリコン膜からなるシリコンスパッタターゲットであってもよい。
【0026】
この場合、第2室の内壁にシリコンスパッタターゲットとなるシリコン膜を形成するので、市販のシリコンスパッタターゲットを第2室に後付け配置する場合よりも大面積のシリコンスパッタターゲットを容易に得ることができ、それだけ、シリコン励起種等のシリコン物体形成寄与粒子を豊富に発生させて、基体の広い面積にわたり、均一にシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン薄膜)を形成し易くなる。
【0027】
なお、ここでの「第2室の内壁」は、第2室を形成している室壁の内面そのものであってもよいし、かかる室壁の内側に設けた内壁であってもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0028】
また、シリコンスパッタターゲットがこのように第2室の内壁のシリコン膜であると、シリコンスパッタターゲットを外気に触れさせないでおけるので、それだけ、予定されない不純物の混入が抑制されたシリコン物体を形成できる。例えば、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)、基体上に、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。また、例えば、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)、基体上に、良質の結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0029】
前記シリコンスパッタターゲットは、既述のとおり、予め準備されたシリコンスパッタターゲット(例えば市販のシリコンスパッタターゲット)を、前記第2室内に後付け設置したものであってもよい。
さらに言えば、シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つ(換言すればシリコンスパッタターゲットの全部又は一部)は、予め準備されたシリコンスパッタターゲット(例えば市販のシリコンスパッタターゲット)を、前記第2室内に後付け設置したものであってもよい。
【0030】
かかる予め準備されたシリコンスパッタターゲットは、シリコンを主体とするターゲットであり、例えば単結晶シリコンからなるもの、多結晶シリコンからなるもの、微結晶シリコンからなるもの、アモルファスシリコンからなるもの、これらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0031】
また、シリコンスパッタターゲットは、不純物が含まれていないもの、含まれていてもその含有量ができるだけ少ないもの、適度量の不純物含有により所定の比抵抗を示すものなど、形成するシリコン物体の用途に応じて適宜選択できる。
【0032】
不純物が含まれていないシリコンスパッタターゲット及び不純物が含まれていてもその含有量ができるだけ少ないシリコンスパッタターゲットの例として、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲットを挙げることができる。
【0033】
所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲットとして、比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲットを例示できる。
【0034】
前記シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリング用ガスには既述のとおり水素ガスを用いるのであるが、この場合、該水素ガスは、希ガス〔ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)、クリプトンガス(Kr)及びキセノンガス(Xe)から選ばれた少なくとも1種のガス)〕と混合されたものでもよい。
【0035】
本発明に係るシリコン物体形成方法においては、前記第2室にスパッタリング用プラズマ生成のためのガスとして水素ガスを導入し、該水素ガスからスパッタリング用プラズマ生成装置によりプラズマを生成させ、該プラズマのもとでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を発生させる。このシリコン物体形成寄与粒子は第2室から、予めシリコン物体形成対象基体を配置した前記第1室へ移行する。かくして、第1室において、該シリコン物体形成寄与粒子により基体上にシリコン物体が形成される。
【0036】
例えば、そのとき、500℃以下の低温で(換言すれば、基体温度を500℃以下の低温として)、基体上に直接、粒径が20nm以下、或いは粒径10nm以下のシリコンドットを形成することが可能である。また、例えば、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)、基体上に、結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0037】
前記第2室で、水素ガスからシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリング用プラズマを発生させる場合、該ケミカルスパッタリング用プラズマは、電子密度が1010/cm3 (1010cm-3)以上のプラズマであることが好ましい。
【0038】
ケミカルスパッタリング用プラズマ中の電子密度が1010/cm3 より小さくなってくると、シリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン)の結晶化度が低下したり、シリコン物体形成速度が低下したりしてくる。しかし、かかる電子密度があまり大きくなりすぎると、かえって形成されるシリコン物体がダメージを受けたり、基体がダメージを受けたりするようになってくる。そこで、ケミカルスパッタリング用プラズマ中の電子密度の上限としては、1012/cm3 (1012cm-3)程度を挙げることができる。
【0039】
かかる電子密度は、スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えば、それにより水素ガスへ印加されるプラズマ化用電力(電力の大きさや、周波数等)〕、第1室及び第2室内の圧力等のうち少なくとも一つを制御することで調整できる。電子密度は、例えば、ラングミューアプローブ法により確認できる。
【0040】
(1−1)シリコンドットを形成する場合
以上説明したシリコン物体形成方法によりシリコンドットを形成する場合において、シリコンスパッタターゲットとなるシリコン膜形成のための前記シラン系ガス及び水素ガス由来のプラズマを形成するときには、該プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマとすることが望ましく、3.0以下であるプラズマとすることがより好ましい。0.5以下であるプラズマとしてもよい。
【0041】
シリコン膜形成のためのプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定すると、500℃以下の低温でシリコン物体形成対象基体上にシリンコンドットを形成するに適した良質のシリコン膜(シリコンスパッタターゲット)が第2室の内壁に円滑に形成される。
なお、シリコン物体として結晶性シリコン膜を形成する場合においても、シリコンスパッタターゲットとなるシリコン膜を第2室の内壁に形成するときには、結晶性シリコン薄膜を形成するに適した良質のシリコン膜(シリコンスパッタターゲット)を得るうえで、シリコン膜形成のためのプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定してもよい。
【0042】
本発明に係るシリコン物体形成方法において、シリコンドットを形成する場合には、シリコンスパッタターゲットをスパッタリングするための水素ガス由来のスパッタリング用プラズマ形成においても、該プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマとすることが望ましく、3.0以下であるプラズマとすることがより好ましい。0.5以下であるプラズマとしてもよい。
【0043】
このようにプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に設定する場合、それはプラズマ中の水素原子ラジカルが豊富であることを示す。
シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定することで、500℃以下の低温で(換言すれば、基体温度を500℃以下の低温として)、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0044】
かかる発光強度比が10.0より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。よって発光強度比は10.0以下がよい。粒径の小さいシリコンドットを形成するうえで、発光強度比は3.0以下がより好ましい。0.5以下としてもよい。
【0045】
しかし、発光強度比の値があまり小さすぎると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、ドットの成長よりエッチング効果の方が大きくなり、結晶粒が成長しなくなる。発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕は、他の種々の条件等にもよるが、概ね0.1以上とすればよい。
【0046】
発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の値は、例えば各種ラジカルの発光スペクトルをプラズマ発光分光計測装置により測定し、その測定結果に基づいて得ることができる。また、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の制御は、スパッタリング用プラズマ生成装置(例えば、それにより水素ガスへ印加される電力(例えば周波数や電力の大きさ))、シリコンドット形成時の第1及び第2室内のガス圧、第2室内へ導入する水素ガスの量等の制御により行える。
【0047】
前記のようにスパッタリング用ガスとして水素ガスを採用する場合、シリコンスパッタターゲットを発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすることで基体上に結晶核の形成が促進され、該核からシリコンドットを成長させることが可能である。
【0048】
このように結晶核形成が促進され、シリコンドットが成長するため、予めシリコン物体形成対象基体上にダングリングボンドやステップなどの核となり得るものが存在しなくても、シリコンドットが成長するための核を比較的容易に高密度に形成することができる。また、水素ラジカルや水素イオンがシリコンラジカルやシリコンイオンより豊富であり、核密度の過剰に大きい部分については、励起された水素原子や水素分子とシリコン原子との化学反応によりシリコンの脱離が進み、これによりシリコンドットの核密度は基体上で高密度となりつつも均一化される。
【0049】
またプラズマにより分解励起されたシリコン原子やシリコンラジカルは核に吸着し、化学反応によりシリコンドットへと成長するが、この成長の際も水素ラジカルが多いことから吸着脱離の化学反応が促進され、核は結晶方位と粒径のよく揃ったシリコンドットへと成長する。以上より、基体上に結晶方位と粒径サイズの揃ったシリコンドットを高密度且つ均一分布で形成することが可能である。
【0050】
以上説明したシリコン物体形成方法によるシリコンドットの形成では、シリコン物体形成対象基体上に微小粒径のシリコンドット、例えば、粒径が20nm以下、より好ましくは粒径が10nm以下のシリコンドットを形成しようとするものであるが、実際には極端に小さい粒径のシリコンドットを形成することは困難であり、それには限定されないが粒径1nm程度以上のものになるであろう。例えば3nm〜15nm程度のもの、より好ましくは3nm〜10nm程度のものを例示できる。
【0051】
かかるシリコン物体形成方法によるシリコンドットの形成では、500℃以下の低温下で(換言すれば、基体温度を500℃以下の低温として)、条件次第では400℃以下の低温下で(換言すれば条件次第では、基体温度を400℃以下として)、基体上にシリコンドットを形成できるので、基体材料の選択範囲がそれだけ広くなる。例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板へのシリコンドット形成が可能となる。
【0052】
このように、低温下でシリコンドットを形成できるが、シリコン物体形成対象基体温度が低すぎると、シリコンの結晶化が困難となるので、他の諸条件にもよるが、概ね200℃以上の温度で(換言すれば、基体温度を概ね200℃以上として)シリコンドットを形成することが望ましい。
【0053】
前記いずれのシリコンドット形成においても、スパッタリング用プラズマ形成時の第1室及び第2室の内圧(換言すればシリコンドット形成時の第1、第2室の内圧)としては、0.1Pa〜10.0Pa程度を例示できる。
0.1Paより低くなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに低くなってくると、結晶粒が成長しなくなる。10.0Paより高くなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
【0054】
シリコンスパッタターゲットとして予め準備された、例えば市販のシリコンスパッタターゲットを利用するシリコン物体形成方法のように、シリコンスパッタリングターゲットを第2室内に後付け配置する場合、該ターゲットの該第2室内における配置としては、これがスパッタリング用プラズマによりケミカルスパッタリングされる配置であればよいが、例えば、第2室内壁面の全部又は一部に沿って配置する場合を挙げることができる。第2室内に独立して配置してもよい。第2室の内壁に沿って配置されるものと、独立的に配置されるものを併用してもよい。
この点は、後述する結晶性シリコン薄膜の場合も同様である。
【0055】
第2室の内壁にシリコン膜を形成してこれをシリコンスパッタターゲットとしたり、シリコンスパッタターゲットを第2室の内壁面に沿って配置すると、第2室を加熱することでシリコンスパッタターゲットを加熱することができ、ターゲットを加熱すると、ターゲットが室温である場合よりもスパッタされやすくなり、それだけ高密度にシリコンドットを形成し易くなる。第2室を例えばバンドヒータ、加熱ジャケット等で加熱してシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱する例を挙げることができる。加熱温度の上限については、経済的観点等から概ね300℃程度を例示できる。オーリング等を使用している場合はそれらの耐熱性に応じて300℃よりも低い温度にしなければならないこともある。
結晶性シリコン薄膜を形成するときにも、同様に、シリコンスパッタターゲットを加熱してもよい。
【0056】
(1−2)結晶性シリコン薄膜を形成する場合
本発明に係るシリコン物体形成方法により結晶性シリコン薄膜を形成する場合、前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3のプラズマとすることが望ましい。
【0057】
シリコンスパッタターゲットをHα/SiH* が0.3〜1.3であるプラズマでケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、これによりスパッタリングされた原子と水素プラズマによる励起効果及び被成膜物品の堆積膜表面と水素ラジカルの反応などにより被成膜物品上に膜を堆積形成すれば、結晶性を示し、表面粗度の小さい、良質の結晶性シリコン膜が形成される。
しかも、比較的低温下に膜形成でき、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板への結晶性シリコン薄膜の形成も可能であり、それだけ安価に基体上に結晶性シリコン薄膜を形成できる。
【0058】
ここでSiH* は、第2室内に導入される水素ガスがスパッタリング用プラズマ生成装置によりプラズマ化されて生成される水素ガスプラズマによるシリコンスパッタターゲットのスパッタリングにより発生してプラズマ中に存在するシランラジカルの発光スペクトル強度(波長414nm)であり、Hαはプラズマ発光分光により波長656nmにピークを示す水素原子ラジカルの発光スペクトル強度である。
【0059】
Hα/SiH* はプラズマ中の水素ラジカルの豊富さを示しており、この値が0.3より小さくなってくると、形成される膜の結晶性が低下し、1.3より大きくなってくると、かえって膜形成が困難になってくる。
【0060】
Hα/SiH* の値は各種ラジカルの発光スペクトルをプラズマ発光分光計測装置により測定し、その測定結果に基づいて得ることができる。また、Hα/SiH* の制御は、スパッタリング用プラズマ生成装置(例えば、それにより水素ガスへ印加される電力(例えば周波数や電力の大きさ))、結晶性シリコン薄膜形成時の第1及び第2室内のガス圧、第2室内へ導入する水素ガスの量等の制御により行える。
【0061】
結晶性シリコン薄膜の形成においては、ケミカルスパッタリング用プラズマのポテンシャルは15eV〜45eV程度であることが好ましく、電子密度は1010cm-3〜1012cm-3程度であることが好ましい。また、第1及び第2室内の圧力(成膜圧力)は、0.6Pa〜13.4Pa(約5mTorr〜約100mTorr)程度であることが好ましい。
【0062】
結晶性シリコン薄膜形成におけるプラズマポテンシャルが15evより低くなってくると、結晶性が低下してくるし、45eVより高くなってきても結晶化が阻害されやすくなる。
また、プラズマ中の電子密度が1010cm-3より小さくなってくると、結晶化度が低下したり、膜形成速度が低下したりし、1012cm-3より大きくなってくると、膜及び被成膜基体がダメージを受けやすくなる。
【0063】
結晶性シリコン薄膜形成における室内圧力が0.6Pa(約5mTorr)より低くなってくると、膜形成速度が低下してくる。13.4Pa(約100mTorr)より高くなってくると、プラズマが不安定になったり、膜の結晶性が低下したりする。
かかるプラズマポテンシャルやプラズマの電子密度は、スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えば、それによる水素ガスへの印加電力(電力の大きさ及び(又は)周波数等)、成膜圧等のうち少なくとも一つを制御することで調整できる。
【0064】
(1−3)スパッタリング用プラズマ生成装置
前記スパッタリング用プラズマ生成装置としては、前記第2室に導入されるケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
【0065】
高周波放電方式を採用するプラズマ生成装置を例にとると、第2室内へ導入される水素ガスへの高周波電力の印加は、電極を用いて行う。その場合、誘導結合型電極、容量結合型電極のいずれも採用することができる。誘導結合型プラズマを発生させるために誘導結合型電極(高周波アンテナ)を採用するとき、それは第2室内に配置することも、第2室外に配置することもできる。
【0066】
誘導結合型電極(高周波アンテナ)を採用すると、容量結合型電極を採用する場合より、高密度で均一なプラズマを得やすい。また、誘導結合型アンテナは、室外部に配置するよりも内部に配置する方が、投入される高周波電力の利用効率が向上する。
【0067】
第2室内に配置する電極については、シリコンを含む電気絶縁性膜、アルミニウムを含む電気絶縁性膜のような電気絶縁物(例えばシリコン膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、アルミナ膜、石英ガラス等)で被覆して、高密度プラズマの維持、自己バイアスによる電極表面のスパッタリングによるシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン膜)への不純物の混入抑制等を図ってもよい。
【0068】
第2室に対し高周波放電電極からの放電を誘導結合方式で行う場合、第2室内部は水素ラジカル及び水素イオンに富んだ状態となる。
本発明者は、誘導結合方式により水素ガスをプラズマ化し、プラズマ発光分光することで、該プラズマにおいてHα(656nm)及びHβ(486nm)が支配的となることを観測している。HαやHβが豊富であることは水素ラジカル濃度が高いことを意味している。この点は、HαやHβが乏しくなる容量結合方式によるプラズマ生成の場合と大きく異なっている。
【0069】
誘導結合方式による高周波電力印加により形成されたプラズマのプラズマポテンシャルは、条件にもよるが、例えば約20eV程度であり、いずれにしてもかなり低いので、通常の物理的なスパッタリングは起こり難い。しかし、本発明者はプラズマ発光分光によりSi(288nm)の存在を観測している。これはシリコンスパッタターゲット表面における、水素ラジカル及び水素イオンによるケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)によるものである。
【0070】
いずれにしてもプラズマ形成のための高周波電力の周波数としては、比較的安価に済む13MHz程度から100MHz程度の範囲のものを例示できる。100MHzより高周波数になってくると、電源コストが高くなってくるし、高周波電力印加時のマッチングがとり難くなってくる。
【0071】
(1−4)シリコン膜形成用プラズマ生成装置
前記シリコン膜形成用プラズマ生成装置についても、前記第2室に導入されるシリコン膜形成のための水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
【0072】
〔2〕シリコン物体形成装置
以上、シリコン物体形成方法について説明してきたが、本発明は、次の第1、第2のシリコン物体形成装置も提供する。
(1)第1のシリコン物体形成装置
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に設けられるシリコンスパッタターゲットと、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記水素ガス供給装置から前記第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室において生成させる前記ケミカルスパッタリング用プラズマによる前記シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できるシリコン物体形成装置。
【0073】
(2)第2のシリコン物体形成装置
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記第2室にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
前記第2室に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスから該第2室の内壁にシリコン膜を形成するためのプラズマを生成させるシリコン膜形成用プラズマ生成装置と、
前記第2室内壁へのシリコン膜形成後に前記水素ガス供給装置から該第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室の内壁に形成される前記シリコン膜をシリコンスパッタターゲットとして該ターゲットを該第2室に生成されるケミカルスパッタリング用プラズマにてケミカルスパッタリングさせ、該ケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できるシリコン物体形成装置。
【0074】
かかるスパッタリング用プラズマ生成装置としては、前記第2室に導入される前記ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
【0075】
シリコン膜形成用プラズマ生成装置についても、前記第2室に導入される前記シリコン膜形成用の水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
第2のシリコン物体形成装置におけるシリコン膜形成用プラズマ生成装置とスパッタリング用プラズマ生成装置とは、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
【0076】
いずれのシリコン物体形成装置においても、水素ガス供給装置から供給される水素ガスは例えば希ガスが混合されたものでもよい。
【0077】
いずれのシリコンドット形成装置によっても、低温で(例えば500℃以下の低温で)シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成することができる。
例えば、シリコン物体として、基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドット(「シリコンドットの群れからなる膜」、換言すれば、「膜状に群れとなったシリコンドット」である場合も含む)を均一な密度分布で形成することが可能である。結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0078】
第1、第2のいずれのシリコン物体形成装置においても、シリコンドットを形成するものでは、前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置を含んでいてもよい。
【0079】
この場合、該プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記第2室内の前記ケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えばこれにより水素ガスに印加されるプラズマ化用電力(電力の大きさ及び(又は)周波数等)〕、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
【0080】
かかるプラズマ発光分光計測装置の例として、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する第1検出部と、プラズマ発光における波長484nmでの水素原子の発光強度Hβを検出する第2検出部と、該第1検出部で検出される発光強度Si(288nm) と該第2検出部で検出される発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部とを備えているものを挙げることができる。
【0081】
第1、第2のいずれのシリコン物体形成装置においても、結晶性シリコン薄膜を形成するものでは、前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との発光強度比(Hα/SiH* )を求めるプラズマ発光分光計測装置をさらに含んでいてもよい。
【0082】
この場合、前記発光分光計測装置で求められる発光強度比(Hα/SiH* )と0.3以上1.3以下の範囲から定められた基準値とを比較して、前記第2室内でのケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比(Hα/SiH* )が該基準値に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えばこれにより水素ガスに印加されるプラズマ化用電力(電力の大きさ及び(又は)周波数等)〕、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
【0083】
かかるプラズマ発光分光計測装置の例として、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαを検出する第1検出部と、プラズマ発光における波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* を検出する第2検出部と、該第1検出部で検出される発光スペクトル強度Hαと該第2検出部で検出される発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )を求める演算部とを備えているものを挙げることができる。
【0084】
本発明に係るシリコン物体形成方法及び装置においては、シリコン物体形成対象基体を配置する第1室に対し、シリコンスパッタターゲットを配置し、これをケミカルスパッタリングするための第2室を採用しているので、第1室の形状等に左右されることなくシリコンスパッタターゲットを選択できる幅が広がる。例えば、第1室の形状に左右されない単純形状のシリコンスパッタターゲットの採用が可能になる。このようにシリコンスパッタターゲットにつき、その形状等の選択の自由度が大きくなる。
【0085】
また、シリコン物体を形成するための第1室に左右されずに、シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングさせるための第2室を含む部分の構造等(例えばプラズマ生成のための放電方式とそのための構造)につき選択できる幅が広がるとともに、これら部分のメイテナンスも容易になる。
【発明の効果】
【0086】
以上説明したように本発明によると、従来のシリコンドット形成や結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、シリコン物体形成対象基体上に所望のシリコン物体を形成できる方法及び装置を提供することができる。
【0087】
具体的には、例えば、従来のシリコンドット形成と比べると、比較的低温下で、基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成できる方法及び装置を提供することができる。
また、例えば、従来の結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、基体上に良質の結晶性シリコン薄膜を形成できる方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
以下図面を参照してシリコン物体形成装置の例とそれによるシリコン物体形成方法等について説明する。
〔1〕シリコン物体形成装置(装置A)と装置Aによるシリコンドット形成
<シリコン物体形成装置(装置A)について>
図1はシリコン物体形成装置の1例の概略構成を示している。
図1に示す装置Aは、板状のシリコン物体形成対象基体Sにシリコンドットを形成するもので、第1室1及び第1室に左右一対に連通形成された第2室2を含んでいる。室1と各室2間の開口は、必要に応じ、或いはそうした方が望ましい場合に、開閉可能のシャッタ11で閉じることができる。第1室1内には基板ホルダ3が設置されている。ホルダ3には該ホルダ上に設置される基板Sを加熱するヒータ31を有している。また、第1室1には排気装置EXが接続されている。
【0089】
各第2室2は、第1室1に向け開口している。各第2室2内には、上下に設置された放電用電極41、42があり、一方の電極41はマッチングボックス43を介して放電用高周波電源44に接続されている。他方の電極42は接地電極である。電極41、42は絶縁性部材21を介して室壁に保持されている。
【0090】
各第2室2は、それらに共通の水素ガス供給装置5に接続されている。
前記の電極41、42、マッチングボックス43、電源44等は、水素ガス供給装置5から供給される水素ガスに高周波電力を印加して該ガスをプラズマ化させるプラズマ生成装置4を構成している。
【0091】
また、各第2室2内にはシリコンスパッタターゲットT1が設置されている。シリコンスパッタターゲットT1は、本例では電極41、42のそれぞれの表面に貼り付けられている。なお、シリコンスパッタターゲットT1の配置位置はこれに限定されるものではない。後述する該ターゲットのケミカルスパッタリングが可能な位置であればよい。
【0092】
さらに、一方の第2室2には、第2室内に形成されるプラズマの状態を計測するためのプラズマ発光分光計測装置6も付設されている。
【0093】
シリコンスパッタターゲットは、形成しようとするシリコンドットの用途等に応じて、例えば、市場で入手可能な次の(1) 〜(3) に記載のシリコンスパッタターゲットから選択したものを採用できる。
(1) 単結晶シリコンからなるターゲット、多結晶シリコンからなるターゲット、微結晶シリコンからなるターゲット、アモルファスシリコンからなるターゲット、これらの2以上の組み合わせからなるターゲットのうちのいずれかのターゲット、
(2) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲット、
(3) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲット(例えば比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲット)。
【0094】
前記プラズマ生成装置4における各高周波電源44は、出力可変の電源であり、例えば周波数60MHzの高周波電力を供給できる。なお、周波数は60MHzに限らず、例えば13、56MHz程度から100MHz程度の範囲のもの、或いはそれ以上のものを採用することもできる。
第1及び第2の室1、2、基板ホルダ3はいずれも接地されている。
【0095】
前記の水素ガス供給装置5は水素ガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでおり、各第2室2に実質上同じ供給量で水素ガスを供給できる。
排気装置EXは排気ポンプの他、排気流量調整を行うコンダクタンスバルブ等を含んでいる。
【0096】
発光分光計測装置6は、ガス分解による生成物の発光分光スペクトルを検出することができるもので、その検出結果に基づいて、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めることができる。発光分光計測装置6は一方の(図1例では左側の)第2室2に対してのみ設けられている。しかし、水素ガス供給装置5は各室2に同じ供給量で水素ガスを供給すること、各プラズマ生成装置4の電源44は同じ電力を電極41に印加すること等から、一方の室2で計測したプラズマ状態は、他方の室2におけるプラズマ状態でもあるとみなすことができる。
【0097】
かかる発光分光計測装置6の具体例として、図2(A)に示すように、第2室2内のプラズマ発光から波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する分光器61と、該プラズマ発光から波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβを検出する分光器62と、分光器61、62で検出される発光強度Si(288nm) と発光強度Hβとから両者の比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部63とを含んでいるものを挙げることができる。なお、分光器61、62に代えて、フィルター付きの光センサを採用することも可能である。
【0098】
<装置Aによるシリコンドット形成>
次に、シリコン物体形成装置Aによる基板Sへのシコンドット形成例について説明する。
シリコンドット形成は、室1、2内の圧力を0.1Pa〜10.0Paの範囲のものに維持して行う。これら室内圧力は、図示を省略しているが、例えば該室1又は室2に接続した圧力センサで知ることができる。室1、2内の圧力は厳密には異なってくる場合があるが、両室は連通しているので、例えば第2室2内の圧力をもって室1、2内の圧力とみなしても、実用上差し支えない。
【0099】
先ず、シリコンドット形成に先立って、室1、2から排気装置EXにて排気を開始する。排気装置EXにおけるコンダクタンスバルブ(図示省略)は室1、2内の前記シリコンドット形成時の圧力0.1Pa〜10.0Paを考慮した排気量に調整しておく。
排気装置EXの運転により室1、2内圧力が予め定めておいた圧力或いはそれより低下してくると、水素ガス供給装置5から第2室2内へ水素ガスの導入を開始するとともに電源44から電極41に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0100】
かくて発生したガスプラズマから、発光分光計測装置6において発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を算出し、その値が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における予め定めた値(基準発光強度比)に向かうように、高周波電力の大きさ、水素ガス導入量、室内圧力等を決定する。
【0101】
高周波電力の大きさについては、電極41に印加する高周波電力の電力密度〔印加電力(W:ワット)/第2室容積(L:リットル)〕が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/L程度に納まるように決定することが望ましい。
なお、第1室1の容積は、第2室2の容積に対し、10倍〜100倍程度を例示できるが、さらに大きくてもよい。場合によっては(例えば、放電方式、第2室の数等によっては)、例えば400倍〜500倍程度も考えられる。
このようにしてシリコンドット形成条件を決定したあとは、その条件に従ってシリコンドットの形成を行う。
【0102】
シリコンドット形成においては、室1内の基板ホルダ3にシリコンドット形成対象基板Sを設置し、該基板Sをヒータ31にて500℃以下の温度、例えば400℃に加熱する。また、排気装置EXの運転にて室1、2内をシリコンドット形成のための圧力に維持しつつ各室2内にガス供給装置5から水素ガスを導入し、電源44から放電電極41に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0103】
かくして、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における前記基準発光強度比或いは実質上該基準発光強度比のプラズマを発生させる。そして、該プラズマにてシリコンスパッタターゲットT1をケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)する。
【0104】
かかるシリコンスパッタターゲットT1のケミカルスパッタリングにより、シリコン励起種(例えばSiH3 等の水素化シリコン励起種)などの、シリコンドット形成寄与粒子pが発生し、かかるシリコンドット形成寄与粒子pが室2から室1へ飛来する。かくして、室1内へ到来したシリコンドット形成寄与粒子のもとで、基板S表面に結晶性を示す微小粒径(例えば粒径20nm以下)のシリコンドットが形成される。
【0105】
<シリコンスパッタターゲットの他の例>
以上説明したシリコンドット形成においては、シリコンスパッタターゲットとして、市場で入手できるターゲットを室2内に後付け配置した。しかし、次の、外気に曝されないシリコンスパッタターゲットを採用することで、予定されていない不純物混入が一層抑制されたシリコンドットを形成することが可能である。
【0106】
すなわち、図3に示すように、前記の装置Aにおいて、当初は、第1室1内に基板Sを未だ配置せずに(或いは、基板Sが配置されているときはシャッタ11を閉じて)、第2室2内へ、水素ガス供給装置5から水素ガスを、シラン系ガス供給装置7からシラン系ガスを導入し、これらガスに電源44から高周波電力を印加してプラズマ化し、該プラズマにより第2室2の内壁(室2の室壁そのものでよく、室壁の内側に設けた内壁でもよく、それらの組み合わせでもよい)にシリコン膜を形成し、これをシリコンスパッタターゲットとして用いるのである。
【0107】
前記シラン系ガスとしてはモノシラン(SiH4 )の他、ジシラン(SiH2 )、四フッ化ケイ素(SiF4 )、四塩化ケイ素(SiCl4 )、ジクロルシラン(SiH2 Cl2 )などのガスも使用できる。
【0108】
シラン系ガス供給装置7は、ここではモノシラン(SiH4 )ガス等のシラン系ガスを供給できるもので、SiH4 等のガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
【0109】
図3では、かくして形成されるシリコン膜の一部をターゲットT2として示してある。 かかるシリコン膜形成においては、室2のシリコン膜形成対象内壁を外部ヒータで加熱してもよい。
【0110】
このようにして室2内にシリコンスパッタターゲットT2を形成したのち、該ターゲットを、既述のように、水素ガス由来のプラズマでケミカルスパッタリングして基板S上にシリコンドットを形成する。
【0111】
かかる、シリコンスパッタターゲットとして用いるシリコン膜の形成においても、良質なシリコン膜を形成するために、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲に維持して形成することが望ましい。
【0112】
<発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕制御の他の例>
以上説明したシリコンドット形成においては、出力可変電源44の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置7によるシラン系ガス供給量)、排気装置EXによる排気量等の制御は、発光分光計測装置6で求められる発光分光強度比を参照しつつマニュアル操作で行われた。
【0113】
しかし、図2(B)に示すように、発光分光計測装置6の演算部63で求められた発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を制御部6Cに入力してもよい。そして、かかる制御部6Cとして、演算部63から入力された発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が予め定めた基準発光強度比か否かを判断し、基準発光強度比から外れていると、基準発光強度比に向けて、前記の出力可変電源44の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(或いはさらにシラン系ガス供給装置7によるシラン系ガス供給量)及び排気装置EXによる排気量のうち少なくとも一つを制御することができるように構成されたものを採用してもよい。
【0114】
かかる制御部6Cの具体例として、排気装置EXのコンダクタンスバルブを制御することで該装置EXによる排気量を制御し、それにより室内ガス圧を、前記基準発光強度比達成に向けて制御するものを挙げることができる。
【0115】
この場合、出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)及び排気装置EXによる排気量について、基準発光強度比或いはそれに近い値が得られる、予め実験等で求めた電源出力、水素ガス供給量(又は水素ガス供給量及びシラン系ガス供給量)及び排気量を初期値として採用すればよい。
かかる初期値決定に際しても、排気装置EXによる排気量は、室1、2内の圧力が0.1Pa〜10.0Paの範囲に納まるように決定する。
【0116】
電源4の出力は、電極41に印加する高周波電力の電力密度が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定する(Lは室2の容積〔リットル〕)。
【0117】
さらに、水素ガス及びシラン系ガスの双方をプラズマ形成のためのガスとして採用する場合は、それらガスの室2内への導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。例えば、シラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccmとし、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/室2の容積(リットル)〕を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。
【0118】
そして、電源44の出力及び水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置7によるシラン系ガス供給量)については、それらの初期値をその後も維持し、排気装置EXによる排気量を、基準発光強度比達成に向けて、制御部6Cに制御させればよい。
【0119】
<プラズマ生成装置の他の例>
以上説明したシリコン物体形成装置Aでは、電極として平板形状の容量結合型電極を採用しているが、誘導結合型電極を採用することもできる。誘電結合型電極の場合、それは棒状、コイル状等の各種形状のものを採用できる。採用個数等についても任意である。
【0120】
誘導結合型電極を採用する場合においてシリコンスパッタターゲットを採用する場合、該電極が室内に配置される場合であれ、室外に配置される場合であれ、該シリコンスパッタターゲットは室内壁面の全部又は一部に沿って配置したり、チャンバ内に独立して配置したり、それら両方の配置を採用したりできる。また、電極を室内に配置する場合、少なくとも一部のシリコンスパッタターゲットを該室内電極に臨ませて配置することもできる。
【0121】
また、装置Aでは、室2を加熱する手段(バンドヒータ、熱媒を通す加熱ジャケット等)の図示が省略されているが、シリコンスパッタターゲットのスパッタリングを促進させるために、かかる加熱手段にて室2を加熱することでシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱してもよい。
【0122】
<実験例>
次に幾つかのシリコンドット形成の実験例について説明する。
(1) 実験例1
図1に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、水素ガスとシリコンスパッタターゲットを用いて、基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は以下のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:単結晶シリコンスパッタターゲット
各室2内ターゲット総面積:0.08m2 基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウェハ
第1室容量:200リットル
各第2室容量:2リットル
プラズマ生成装置高周波電源:60MHz、80W
各第2室での電力密度:40W/L
第1、第2の室内圧:0.6Pa
各第2室水素導入量:100sccm
Si(288nm) /Hβ:0.2
プラズマ電子密度:5×1010/cm3 基板温度:400℃
ドット形成時間:40秒
【0123】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、5nmであり、20nm以下、さらに言えば10nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約2.0×1012個/cm2 であった。
【0124】
(2) 実験例2
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、シャッタ11を閉じて第2室2の内壁にシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。シリコン膜形成条件及びドット形成条件は以下のとおりであった。 シリコン膜形成条件
各第2室の膜形成内壁面積:約0.035m2
各第2室容量:0.5リットル
プラズマ生成装置高周波電源:13.56MHz、10W
各第2室電力密度:20W/L
各第2室内壁温度:200℃(室内部に設置の図示省略ヒータで室加熱) 各第2室内圧:0.67Pa
各第2室モノシラン導入量:100sccm
各第2室水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:2.0
【0125】
ドット形成条件
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウェハ
第1室容量:200リットル
プラズマ生成装置高周波電源:13.56MHz、25W
各第2室電力密度:50W/L
各第2室内壁温度:200℃(室内部に設置の図示省略ヒータで室加熱) 第1、第2の室内圧:0.67Pa
各第2室水素導入量:100sccm
プラズマ電子密度:5×1010/cm3
Si(288nm) /Hβ:1.5
基板温度:430℃
ドット形成時間:40秒
【0126】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。小さいドットでは5nm〜6nm、大きいドットでは9nm〜11nmであった。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、8nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.3×1011個/cm2 であった。
【0127】
(3) 実験例3
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、第2室内壁に実験例2におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、第1、第2の室内圧力を1.34Paとし、Si(288nm) /Hβを2.5とした以外は実験例2と同じとした。
【0128】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、10nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.0×1011個/cm2 であった。
【0129】
(4) 実験例4
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、第2室内壁に実験例2におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を2.68Paとし、Si(288nm) /Hβを4.6とした以外は実験例2と同じとした。
【0130】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、13nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.5×1011個/cm2 であった。
【0131】
(5) 実験例5
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、第2室内壁に実験例2におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を6.70Paとし、Si(288nm) /Hβを8.2とした以外は実験例2と同じとした。
【0132】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、16nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.1×1011個/cm2 であった。
【0133】
(6) 実験例6
図1に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、実験例1と同様にして、しかしドット形成時間を60秒と長くしてシリコンドットを形成した。
かくして、図10に模式的に示す、シリコンドットSiDが膜状に群れて形成された基板Sを得た。
【0134】
〔2〕シリコン物体形成装置の他の例(装置B)と装置Bによる結晶性シリコン薄膜形成<シリコン物体形成装置Bについて>
図4は本発明に係るシリコン物体形成装置の他の例の概略構成を示している。
図4に示す装置Bは板状のシリコン物体形成対象基体S上に結晶性シリコン薄膜を形成するもので、図1に示す装置Aにおいて、容量結合型プラズマを形成するプラズマ生成装置4に代えて、誘導結合型プラズマを形成するためのプラズマ生成装置40を採用したものである。
【0135】
各シリコンスパッタターゲットは、バッキングプレート22及び絶縁性部材21を介して室壁に保持されている。
プラズマ生成装置40は、室2内に配置した高周波放電アンテナ400を含んでいる。該アンテナは、石英ガラスからなる絶縁材で被覆されており、該アンテナの両端部は、室2壁に対し絶縁状態で室2外まで出ており、一方の端部はマッチングボックス403を介して放電用高周波電源404に接続されている。他方の端部は接地されている。
【0136】
電源404は出力可変電源であり、例えば、周波数13、56MHzの高周波電力を供給できる。なお、電源周波数は13.56MHzに限定されるものではなく、例えば60MHz程度からから数100MHzの範囲のものも採用できる。
【0137】
また、装置Aにおけるプラズマ発光分光計測装置6に代えて、プラズマの状態を計測するための発光分光計測装置60を採用している。
その他の点は、装置Aと実質上同構造である。装置Aと実質上同じ部分、部品には装置Aと同じ参照符号を付してある。
【0138】
ここでの発光分光計測装置60は、図5(A)に示すように、室2内に形成されるプラズマにおけるシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* (波長414nm)を検出する分光器601、水素の発光スペクトル強度Hα(波長656nm)及びHβ(波長484nm)を検出する分光器602、604を含むものである。分光器601、602で検出された発光強度SiH* 及びHαは演算部603に入力され、ここで、発光強度比(Hα/SiH* )が求められる。なお、分光器に代えて、フィルター付きの光センサを採用することも可能である。
【0139】
<装置Bによる結晶性シリコン薄膜の形成>
次に、以上説明した装置Bによる基板S上への結晶性シリコン膜の形成例について説明する。
この膜形成においては、室1、2における成膜ガス圧を0.6Pa〜13.4Paの範囲のものに維持して行う。
これら室内圧力は、図示を省略しているが、例えば該室1又は室2に接続した圧力センサで知ることができる。室1、2内の圧力は厳密には異なってくる場合があるが、両室は連通しているので、例えば第2室2内の圧力をもって室1、2内の圧力とみなしても、実用上差し支えない。
【0140】
先ず、膜形成に先立って、室1、2から排気装置EXにて排気を開始する。排気装置EXにおけるコンダクタンスバルブ(図示省略)は室1、2内の前記膜形成時の圧力0.6Pa〜13.4Paを考慮した排気量に調整しておく。
排気装置EXの運転により室1、2内圧力が予め定めておいた圧力或いはそれより低下してくると、水素ガス供給装置5から第2室2内へ水素ガスの導入を開始するとともに電源404から高周波アンテナ400に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0141】
かくして発生したガスプラズマからの、発光分光計測装置60による検出情報から該プラズマにおけるHα(656nm )及びHβ(484nm)を計測する。
そして、電極(高周波ナンテナ)400へ印加する高周波電力、室2への水素ガス導入量、成膜ガス圧等のうち少なくとも一つを制御することで、プラズマにおけるHα(656nm )及びHβ(484nm)の発光強度が十分大くなる高周波電力、水素ガス導入量等の条件を決定する。
【0142】
また、プラズマにおけるHα/SiH* が0.3〜1.3となり、プラズマのポテンシャルが15eV〜45eVとなり、プラズマにおける電子密度が、1010cm-3〜1012cm-3となる高周波電力、水素ガス導入量等の条件を決定する。
これらを勘案して最終的な高周波電力、水素ガス導入量、成膜ガス圧等の条件を決定する。
プラズマポテンシャル、電子密度は、例えば室2内へ挿入したラングミューアプローブを用いラングミューアプローブ法により確認すればよい。
このようにして成膜条件を決定したあとは、該条件に従って膜形成を行う。
【0143】
膜形成においては、ホルダ3にて支持する基板Sの温度を500℃以下の比較的低温、例えば400℃程度に加熱できるようにヒータ31を設定し、該ホルダ3に基板Sを搭載する。次いで排気装置EXにて室1、2内を排気し、ひき続き水素ガス供給装置5から室2内へ所定量の水素ガスを導入するとともにアンテナ400に電源404から高周波電力を印加することで、アンテナ400からの放電を誘導結合方式にて行わせ、これによりプラズマを発生させる。
【0144】
すると、シリコンスパッタターゲットT1をプラズマがケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、それにより、シリコン励起種(例えばSiH3 等の水素化シリコン励起種)などの結晶性シリコン薄膜形成寄与粒子pが発生し、かかる粒子が室2から室1へ飛来する。かくして、室1内へ到来した結晶性シリコン薄膜形成寄与粒子pのもとで、基板S表面にシリコン薄膜が形成される。
【0145】
この膜は、結晶性を示すシリコン薄膜である。
基板温度は低すぎると、シリコンの結晶化が困難になるので、他の条件にもよるが概ね200℃以上が望ましい。
【0146】
<シリコンスパッタターゲットの他の例>
以上説明した結晶性シリコン薄膜の形成においては、シリコンスパッタターゲットとして、市場で入手できるターゲットを室2内に後付け配置した。しかし、シリコンドット形成において説明したように、膜形成に先立って、室2内へ水素ガスとシラン系ガスを導入し、これをプラズマ化し、該プラズマのもとで室2の内壁にシリコン膜を形成し、これをシリコンスパッタターゲットとして利用してもよい。
また、シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングにあたっては、室2壁を加熱する等してシリコンスパッタターゲットを加熱してもよい。
【0147】
<発光強度比(Hα/SiH* )制御の他の例>
以上説明したシリコン薄膜形成においては、出力可変電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量、排気装置EXによる排気量等の制御はマニュアル的になされた。
【0148】
しかし、図5(B)に示すように、発光分光計測装置60の演算部603で求められた発光強度比Hα/SiH* を制御部60Cに入力してもよい。そして、かかる制御部60Cとして、演算部603から入力された発光強度比Hα/SiH* が予め定めた基準発光強度比(基準値)か否かを判断し、基準発光強度比から外れていると、基準発光強度比に向けて、前記の出力可変電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量、及び排気装置EXによる排気量のうち少なくとも一つを制御することができるように構成されたものを採用してもよい。
【0149】
かかる制御部60Cの具体例として、排気装置EXのコンダクタンスバルブを制御することで該装置EXによる排気量を制御し、それにより室1、2の内圧を、前記基準発光強度比達成に向けて制御するものを挙げることができる。
この場合、出力可変電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及び排気装置EXによる排気量等について、基準発光強度比或いはそれに近い値が得られる、予め実験等で求めた電源出力、水素ガス供給量及び排気量等を初期値として採用すればよい。
【0150】
かかる初期値決定に際しても、排気装置EXによる排気量は、室1、2の内圧が0.6Pa〜13.4Paの範囲に納まるように決定する。また、プラズマのポテンシャルが15eV〜45eVの範囲に、プラズマにおける電子密度が1010cm-3〜1012cm-3の範囲に納まるように決定する。
そして、電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量については、それらの初期値をその後も維持し、排気装置EXによる排気量を、基準発光強度比達成に向けて、制御部60Cに制御させればよい。
【0151】
<実験例>
次に結晶性シリコン薄膜形成の実験例について説明する。
条件等は以下のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:単結晶シリコンスパッタターゲット
各室2内ターゲット総面積:0.48m2 基板:無アルカリガラス基板
第1室容量:200リットル
各第2室容量:2リットル
プラズマ生成装置高周波電源:13.56MHz、100W
第1、第2の室内圧:13Pa
各第2室水素導入量:100sccm
Hα/SiH* :1.0
プラズマ電子密度:1011cm-3
プラズマポテンシャル:30eV
基板温度:400℃
膜厚:約500Å
【0152】
このようにして、図10に模式的に示すガラス基板S上の薄膜Fが得られた。この薄膜の結晶性をレーザラマン分光分析により評価したところ、ラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが出現し、結晶性が確認された。
【0153】
〔3〕シリコン物体形成装置のさらに他の例(図6の装置C、図7の装置D、図8の装置E>
<図6の装置C>
図6に示すシリコン物体形成装置Cは、シリコン物体形成対象基体Sを支持する基体ホルダ3を設けた第1室1及び第1室に連通形成された第2室20を含んでいる。室1と室20間の開口は、必要に応じ、或いはそうした方が望ましい場合に、図示省略の開閉可能のシャッタで閉じることができる。基板ホルダ3は該ホルダ上に設置される基板Sを加熱するヒータ31を有している。また、第1室1には排気装置EXが接続されている。
【0154】
室20は、第1室1に向け開口している。室20には、水素ガス供給装置5(或いはさらにシラン系ガス供給装置7)が接続されている。室20内には、絶縁性部材202を介して室壁にシリコンスパッタターゲットT3が設けられている。シリコンスパッタターゲットT3は予め準備された、例えば市販のターゲットを後付けしたもの、或いは、ガス供給装置5、7から供給される水素ガス及びシラン系ガスを後述するプラズマ生成装置8にてプラズマ化し、該プラズマのもとで形成されるシリコン膜である。
【0155】
プラズマ生成装置8は、図示省略のマイクロ波発生装置からマイクロ波透過窓201を介して室20内へ照射されるマイクロ波と、室20の周囲に設けたマグネットMGとで、室20内に電子サイクロトロン共鳴放電を起こして室20内のガスをプラズマ化するものである。
【0156】
このシリコン物体形成装置Cによると、室20内に水素ガス供給装置5から導入した水素ガスをプラズマ生成装置8でプラズマ化させ、シリコンスパッタターゲットT3をケミカルスパッタリングして基板S上にシリコンドット或いは結晶性シリコン膜を形成できる。
【0157】
<図7の装置D>
図7に示すシリコン物体形成装置Dは、シリコン物体形成対象基体Sを支持する基体ホルダ3を設けた第1室1及び第1室内に設けた第2室200を含んでいる。
室1内の室200の下方には基板ホルダ3を設けてあり、ホルダ3は該ホルダ上に設置される基板Sを加熱するヒータ31を有している。また、第1室1には排気装置EXが接続されている。
【0158】
第2室200内には上下に対向する平行平板型電極91、92が設けられており、これらは絶縁性部材を介して室壁に保持されている。上側の電極91にはマッチングボックス43を介して高周波電源44が接続されており、下側の電極92は接地されている。
また、電極91にはシリコンスパッタターゲットT4が貼り付けられており、電極92にもシリコンスパッタターゲットT4’が貼り付けられている。
【0159】
第2室200内には、上側の室壁、絶縁性部材、電極91及びシリコンスパッタターゲットT4を貫通する導管により水素ガス供給装置5から水素ガスを供給できる。下側のシリコンスパッタターゲットT4’、電極92、絶縁性部材及び室壁には複数の貫通孔(粒子通過孔)200hが形成されており、これにより室200と室1は相互に連通している。
【0160】
装置Dによると、第2室200内にガス供給装置5から所定量の水素ガスを導入し、該ガスに電源44から電極91、92にて電力を印加してプラズマを発生させ、該プラズマでシリコンスパッタターゲットT4、T4’をケミカルスパッタングしてシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン薄膜)形成に寄与する粒子pを発生させ、これを貫通孔200hから室1内へ移行させ、基体S上にシリコン物体を形成することができる。
【0161】
<図8の装置E>
図8に示す装置Eは、ホローカソード放電方式を利用した装置であり、図1に示す装置Aにおいて、第2室2に代えて円筒形状の室2’(例えば外径16mm、肉厚1.5mm、長さ200mm程度)を採用したものである。そして、室2’の内壁に絶縁部材21’を介して円筒形放電電極41’を保持させ、さらに該電極の内面にシリコンスパッタターゲットT1’を貼り付け、電極41’にマッチングボックス43’を介して高周波電源44’を接続するとともに室2’を接地してプラズマ生成装置4’を構成したものである。その他の点は装置Aと同様であり、装置Aにおける部品等と同じ部品等には装置Aにおける符号と同じ符号を付してある。
【0162】
装置Eによると、各室2’内にガス供給装置5から所定量の水素ガスを導入し、該ガスに電源44’から電極41’にて電力を印加してホローカソード条件下にプラズマを発生させ、該プラズマでシリコンスパッタターゲットT1’をケミカルスパッタングしてシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン薄膜)形成に寄与する粒子pを発生させ、これを室1内へ移行させ、基体S上にシリコン物体を形成することができる。
かかる室2’等は図示のように室1の左右一対だけではなく、より多く設けてもよい。
【0163】
以上説明した他、ガスプラズマ化のための放電方式としては、直流放電、パルス放電等も採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、例えば、単一電子デバイス等のための電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる、シリコンドット、すなわち、微小サイズのシリコンのドット( 所謂シリコンナノ粒子) を提供することに利用できる。また、結晶性シリコン薄膜を利用したTFT(薄膜トランジスタ)スイッチ等の各種半導体部品、半導体装置等の形成のために該結晶性シリコン薄膜を形成する場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明に係るシリコン物体形成装置の1例を示す図である。
【図2】図2(A)は図1に示す装置におけるプラズマ発光分光計測装置例を示すブロック図であり、図2(B)は排気装置による排気量(室内圧)の制御等を行う回路例のブロック図である。
【図3】シリコン物体形成装置の他の例を示す図である。
【図4】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図5】図5(A)は図4に示す装置におけるプラズマ発光分光計測装置例を示すブロック図であり、図5(B)は排気装置による排気量(室内圧)の制御等を行う回路例のブロック図である。
【図6】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図7】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図8】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図9】シリコンドット形成基板の例を模式的に示す図である。
【図10】膜状に群れたシリコンドット形成基板の例を模式的に示す図である。
【図11】結晶性シリコン薄膜形成基板の例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0166】
A シリコン物体形成装置
1 第1室
2 第2室
21 絶縁性部材
3 基体ホルダ
31 ヒータ
4 プラズマ生成装置
41、42 電極
43 マッチングボックス
44 高周波電源
5 水素ガス供給装置
6 プラズマ発光分光計測装置
61、62 分光器
63 演算部
6C 制御部
7 シラン系ガス供給装置
T1、T2 シリコンスパッタターゲット
p シリコン物体形成寄与粒子
B シリコン物体形成装置
40 プラズマ生成装置
400 高周波アンテナ
403 マッチングボックス
404 高周波電源
60 発光分光計測装置
601、602、603 分光器
603 演算部
60C 制御部
C シリコン物体形成装置
20 第2室
8 プラズマ生成装置
201 マイクロ波透過窓
202 絶縁性部材
MG マグネット
T3 シリコンスパッタターゲット
D シリコン物体形成装置
200 第2室
200h 粒子通過孔
91、92 電極
T4、T4’シリコンスパッタターゲット
E シリコン物体形成装置
2’ プラズマ発生室(第1室の1例)
21’ 電気絶縁性部材
4’ プラズマ生成装置
41’ 電極
43’ マッチングボックス
44’ 高周波電源
T1’ シリコンスパッタターゲット
S シリコン物体形成対象基体
SiD シリコンドット
F シリコン膜
【技術分野】
【0001】
本発明は基体上にシリコン物体を形成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで言う「シリコン物体」とは、シリコンドット、すなわち、微小サイズのシリコンのドット( 所謂シリコンナノ粒子) 、かかるシリコンドットの群れからなる膜(換言すれば、膜状に群れたシリコンドット)、結晶性シリコン薄膜などを指しているが、シリコンドットは、例えば、単一電子デバイス等のための電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる。
結晶性シリコン薄膜は、TFT(薄膜トランジスタ)スイッチの材料として、また、各種集積回路、太陽電池等の作製に採用されている。
【0003】
シリコンドットの形成方法としては、シリコンを不活性ガス中でエキシマレーザー等を用いて加熱、蒸発させて基体上にシリコンドットを形成する物理的手法が知られており、また、ガス中蒸発法も知られている(神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁参照) 。後者は、レーザーに代えて高周波誘導加熱やアーク放電によりシリコンを加熱蒸発させて基体上にシリコンドットを形成する手法である。
【0004】
また、CVDチャンバ内に材料ガスを導入し、加熱した基体上にシリコンナノ粒子を形成するCVD法も知られている(特開2004−179658号公報参照)。
この方法では、シリコンナノ粒子成長のための核を基体上に形成する工程を経て、該核からシリコンナノ粒子を成長させる。
【0005】
多結晶シリコン薄膜の形成については、被成膜基体の温度を800℃以上に維持して低圧下にプラズマCVD法等のCVD法やスパッタ蒸着法等のPVD法により形成する方法(例えば特開平5−234919号公報、特開平11−54432号公報参照)、各種CVD法やPVD法により比較的低温下にアモルファスシリコン薄膜を形成したのち、後処理として例えば1000℃程度の熱処理或いは600℃程度で長時間にわたる熱処理を該アモルファスシリコン薄膜に施して形成する方法(例えば特開平5−218368号公報参照)が知られている。さらに、アモルファスシリコン膜にレーザーアニール処理を施して該膜を結晶化させる方法も知られている(例えば特開平8−124852公報参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−179658号公報
【特許文献2】特開平5−234919号公報
【特許文献3】特開平11−54432号公報
【特許文献4】特開平5−218368号公報
【特許文献5】特開平8−124852号公報
【非特許文献1】神奈川県産業技術総合研究所研究報告No.9/2003 77〜78頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリコンドットの形成については、シリコンをレーザー照射により加熱蒸発させる手法は、均一にエネルギー密度を制御してレーザーをシリコンに照射することが困難であり、シリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。
ガス中蒸発法においても、シリコンの不均一な加熱が起こり、そのためにシリコンドットの粒径や密度分布を揃えることが困難である。
【0008】
また、特開2004−179658号公報に記載されているようなCVD法においては、核を基体上に形成するにあたり、基体を550℃程度以上に加熱しなければならず、耐熱温度の低い基体(例えば低融点ガラス基板)を採用できず、基体材料の選択可能範囲がそれだけ制限される。
【0009】
結晶性シリコン薄膜の形成については、既述の方法のうち、被成膜基体を高温にさらす方法では、膜形成する基体として高温に耐え得る高価な基体(例えば石英ガラス基板)を採用しなければならず、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板への結晶性シリコン薄膜の形成は困難である。そのため、結晶性シリコン薄膜の製造コストが基体コストの面から高くなってしまう。アモルファスシリコン膜を高温下に熱処理する場合も同様の問題がある。
【0010】
アモルファスシリコン膜をレーザーアニール処理する場合には、比較的低温下に結晶性シリコン膜を得ることができるが、レーザー照射工程を必要とすることや、非常に高いエネルギー密度のレーザー光を照射しなければならないこと等から、この場合も結晶性シリコン薄膜の製造コストが高くなってしまう。また、レーザー光を膜の各部に均一に照射することは難しく、さらにレーザー照射により水素脱離が生じて膜表面が荒れることもあり、これらにより良質の結晶性シリコン薄膜を得ることは困難である。
【0011】
そこで本発明は、上記従来のシリコンドット形成や結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、シリコン物体形成対象基体上に所望のシリコン物体を形成できる方法及び装置を提供することを課題とする。
【0012】
具体的には、例えば、従来のシリコンドット形成と比べると、比較的低温下で、基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成できる方法及び装置を提供することを課題とする。
また、例えば、従来の結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、基体上に良質の結晶性シリコン薄膜を形成できる方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者はかかる課題を解決するため研究を重ね、次のことを知見するに至った。
水素ガスをプラズマ化し、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)することで、比較的低温で(例えば500℃以下の温度で)、シリコン物体形成対象基体上に所望のシリコン物体を形成できる。
【0014】
例えば、水素ガスをプラズマ化し、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)することで、比較的低温でシリコン物体形成対象基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。
【0015】
例えば、シリコンスパッタターゲットをプラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすれば、500℃以下の低温においても、粒径20nm以下、或いは粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成することが可能である。
【0016】
ここで、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、各シリコンドットの粒径がいずれも同じ又は略同じである場合のほか、シリコンドットの粒径にバラツキがあったとしても、シリコンドットの粒径が、実用上は、揃っているとみることができる場合も指す。例えば、シリコンドットの粒径が、所定の範囲(例えば20nm以下の範囲或いは10nm以下の範囲)内に揃っている、或いは概ね揃っているとみても実用上差し支えない場合や、シリコンドットの粒径が例えば5nm〜6nmの範囲と8nm〜11nmの範囲に分布しているが、全体としては、シリコンドットの粒径が所定の範囲(例えば10nm以下の範囲)内に概ね揃っているとみることができ、実用上差し支えない場合等も含まれる。要するに、シリコンドットの「粒径が揃っている」とは、実用上の観点から、全体として、実質上揃っている、と言える場合を指す。
【0017】
また、例えば、シリコンスパッタターゲットを、プラズマ発光における波長656nmにピークを示す水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3のプラズマでケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、スパッタリングされた原子と水素プラズマによる励起効果及びシリコン物体形成対象基体の堆積膜表面と水素ラジカルの反応などにより該基体上に膜を堆積形成すれば、結晶性を示し、表面粗度の小さい、良質の結晶性シリコン膜が形成される。
【0018】
しかも、比較的低温下に膜形成でき、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板への結晶性シリコン薄膜の形成も可能であり、それだけ安価に基体上に結晶性シリコン薄膜を形成できる。
【0019】
また、シリコンドット、結晶性シリコン薄膜等のいずれの形成の場合でも、シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングするにあたっては、シリコン物体形成対象基体を配置する、換言すればシリコン物体を形成するための室(第1室)にシリコンスパッタターゲットを配置し、該室において水素ガスからケミカルスパッタリングたのためのプラズマを生成させるのではなく、第1室に第2室を連通形成し、該第2室にシリコンスパッタターゲットを配置し、該第2室においてケミカルスパッタリング用プラズマを生成させ、該プラズマでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングさせて、SiH3 ラジカルのような水素化シリコン励起種などの、目的とするシリコン物体の形成に寄与する粒子を形成し、該第2室から第1室へ到来してくる該シリコン物体形成寄与粒子により基体上にシリコンドット、結晶性シリコン薄膜などのシリコン物体を形成することが可能である。
【0020】
そうすることで、第1室の形状等に左右されることなくシリコンスパッタターゲットを選択できる幅が広がる。例えば、第1室の形状に左右されない単純形状のシリコンスパッタターゲットの採用が可能になる。このようにシリコンスパッタターゲットにつき、その形状等の選択の自由度が大きくなる。
【0021】
さらに、シリコン物体を形成するための第1室に左右されることなく、シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングさせるための第2室を含む部分の構造等(例えばプラズマ生成のための放電方式とそのための構造)につき選択できる幅が広がるとともに、これら部分のメイテナンスも容易になる。
【0022】
〔1〕シリコン物体形成方法
かかる知見に基づき、本発明は、
シリコン物体形成対象基体を第1室に配置する工程と、
前記第1室に連通形成された第2室に1又は2以上のシリコンスパッタターゲットを設ける工程と、
前記第2室に水素ガスを導入し、該導入された水素ガスからスパッタリング用プラズマ生成装置にてケミカルスパッタリング用プラズマを生成させる工程と、
前記第2室に生成させた前記ケミカルスパッタリング用プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を発生させ、該第2室から前記第1室へ到来する該シリコン物体形成寄与粒子により該第1室内に配置された前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成する工程と
を含むシリコン物体形成方法を提供する。
ここで「シリコン物体形成寄与粒子」とは、シリコン励起種(例えば、SiH3 等の水素化シリコン励起種)などの、目的とするシリコン物体の形成に寄与する粒子である。
【0023】
かかるシリコン物体形成方法によると、低温で(例えば500℃以下の低温で)シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成することができる。
例えば、シリコン物体として、基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドット(「シリコンドットの群れからなる膜」、換言すれば、「膜状に群れとなったシリコンドット」である場合も含む)を均一な密度分布で形成することが可能である。結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0024】
ここで「シリコンドット」とは、一般に「シリコンナノ粒子」等と称されている、粒径サイズが100ナノメートル(100nm)未満の微小なシリコンドット、例えば、粒径サイズが数nm〜数十nmの微小シリコンドットである。なお、シリコンドットのサイズの下限については、それには限定されないが、形成の難易の点から、一般的には概ね1nm程度となろう。
【0025】
シリコンスパッタターゲットは、市場で入手できるシリコンスパッタターゲット等の予め準備されたものを前記第2室に後付け設置して用いてもよいが、前記シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つは、前記第2室内にシラン系ガス及び水素ガスを導入し、これらガスをシリコン膜形成用プラズマ生成装置にてプラズマ化し、該プラズマにより該第2室の内壁に形成したシリコン膜からなるシリコンスパッタターゲットであってもよい。
【0026】
この場合、第2室の内壁にシリコンスパッタターゲットとなるシリコン膜を形成するので、市販のシリコンスパッタターゲットを第2室に後付け配置する場合よりも大面積のシリコンスパッタターゲットを容易に得ることができ、それだけ、シリコン励起種等のシリコン物体形成寄与粒子を豊富に発生させて、基体の広い面積にわたり、均一にシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン薄膜)を形成し易くなる。
【0027】
なお、ここでの「第2室の内壁」は、第2室を形成している室壁の内面そのものであってもよいし、かかる室壁の内側に設けた内壁であってもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0028】
また、シリコンスパッタターゲットがこのように第2室の内壁のシリコン膜であると、シリコンスパッタターゲットを外気に触れさせないでおけるので、それだけ、予定されない不純物の混入が抑制されたシリコン物体を形成できる。例えば、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)、基体上に、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で形成することが可能である。また、例えば、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)、基体上に、良質の結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0029】
前記シリコンスパッタターゲットは、既述のとおり、予め準備されたシリコンスパッタターゲット(例えば市販のシリコンスパッタターゲット)を、前記第2室内に後付け設置したものであってもよい。
さらに言えば、シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つ(換言すればシリコンスパッタターゲットの全部又は一部)は、予め準備されたシリコンスパッタターゲット(例えば市販のシリコンスパッタターゲット)を、前記第2室内に後付け設置したものであってもよい。
【0030】
かかる予め準備されたシリコンスパッタターゲットは、シリコンを主体とするターゲットであり、例えば単結晶シリコンからなるもの、多結晶シリコンからなるもの、微結晶シリコンからなるもの、アモルファスシリコンからなるもの、これらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0031】
また、シリコンスパッタターゲットは、不純物が含まれていないもの、含まれていてもその含有量ができるだけ少ないもの、適度量の不純物含有により所定の比抵抗を示すものなど、形成するシリコン物体の用途に応じて適宜選択できる。
【0032】
不純物が含まれていないシリコンスパッタターゲット及び不純物が含まれていてもその含有量ができるだけ少ないシリコンスパッタターゲットの例として、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲットを挙げることができる。
【0033】
所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲットとして、比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲットを例示できる。
【0034】
前記シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリング用ガスには既述のとおり水素ガスを用いるのであるが、この場合、該水素ガスは、希ガス〔ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)、クリプトンガス(Kr)及びキセノンガス(Xe)から選ばれた少なくとも1種のガス)〕と混合されたものでもよい。
【0035】
本発明に係るシリコン物体形成方法においては、前記第2室にスパッタリング用プラズマ生成のためのガスとして水素ガスを導入し、該水素ガスからスパッタリング用プラズマ生成装置によりプラズマを生成させ、該プラズマのもとでシリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を発生させる。このシリコン物体形成寄与粒子は第2室から、予めシリコン物体形成対象基体を配置した前記第1室へ移行する。かくして、第1室において、該シリコン物体形成寄与粒子により基体上にシリコン物体が形成される。
【0036】
例えば、そのとき、500℃以下の低温で(換言すれば、基体温度を500℃以下の低温として)、基体上に直接、粒径が20nm以下、或いは粒径10nm以下のシリコンドットを形成することが可能である。また、例えば、低温で(例えば基体温度が500℃以下の低温で)、基体上に、結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0037】
前記第2室で、水素ガスからシリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリング用プラズマを発生させる場合、該ケミカルスパッタリング用プラズマは、電子密度が1010/cm3 (1010cm-3)以上のプラズマであることが好ましい。
【0038】
ケミカルスパッタリング用プラズマ中の電子密度が1010/cm3 より小さくなってくると、シリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン)の結晶化度が低下したり、シリコン物体形成速度が低下したりしてくる。しかし、かかる電子密度があまり大きくなりすぎると、かえって形成されるシリコン物体がダメージを受けたり、基体がダメージを受けたりするようになってくる。そこで、ケミカルスパッタリング用プラズマ中の電子密度の上限としては、1012/cm3 (1012cm-3)程度を挙げることができる。
【0039】
かかる電子密度は、スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えば、それにより水素ガスへ印加されるプラズマ化用電力(電力の大きさや、周波数等)〕、第1室及び第2室内の圧力等のうち少なくとも一つを制御することで調整できる。電子密度は、例えば、ラングミューアプローブ法により確認できる。
【0040】
(1−1)シリコンドットを形成する場合
以上説明したシリコン物体形成方法によりシリコンドットを形成する場合において、シリコンスパッタターゲットとなるシリコン膜形成のための前記シラン系ガス及び水素ガス由来のプラズマを形成するときには、該プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマとすることが望ましく、3.0以下であるプラズマとすることがより好ましい。0.5以下であるプラズマとしてもよい。
【0041】
シリコン膜形成のためのプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定すると、500℃以下の低温でシリコン物体形成対象基体上にシリンコンドットを形成するに適した良質のシリコン膜(シリコンスパッタターゲット)が第2室の内壁に円滑に形成される。
なお、シリコン物体として結晶性シリコン膜を形成する場合においても、シリコンスパッタターゲットとなるシリコン膜を第2室の内壁に形成するときには、結晶性シリコン薄膜を形成するに適した良質のシリコン膜(シリコンスパッタターゲット)を得るうえで、シリコン膜形成のためのプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定してもよい。
【0042】
本発明に係るシリコン物体形成方法において、シリコンドットを形成する場合には、シリコンスパッタターゲットをスパッタリングするための水素ガス由来のスパッタリング用プラズマ形成においても、該プラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下であるプラズマとすることが望ましく、3.0以下であるプラズマとすることがより好ましい。0.5以下であるプラズマとしてもよい。
【0043】
このようにプラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に設定する場合、それはプラズマ中の水素原子ラジカルが豊富であることを示す。
シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を10.0以下に、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下に設定することで、500℃以下の低温で(換言すれば、基体温度を500℃以下の低温として)、粒径20nm以下、さらには粒径10nm以下の範囲で、粒径の揃った結晶性のシリコンドットを均一な密度分布で基体上に形成できる。
【0044】
かかる発光強度比が10.0より大きくなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。よって発光強度比は10.0以下がよい。粒径の小さいシリコンドットを形成するうえで、発光強度比は3.0以下がより好ましい。0.5以下としてもよい。
【0045】
しかし、発光強度比の値があまり小さすぎると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに小さくなってくると、ドットの成長よりエッチング効果の方が大きくなり、結晶粒が成長しなくなる。発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕は、他の種々の条件等にもよるが、概ね0.1以上とすればよい。
【0046】
発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の値は、例えば各種ラジカルの発光スペクトルをプラズマ発光分光計測装置により測定し、その測定結果に基づいて得ることができる。また、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕の制御は、スパッタリング用プラズマ生成装置(例えば、それにより水素ガスへ印加される電力(例えば周波数や電力の大きさ))、シリコンドット形成時の第1及び第2室内のガス圧、第2室内へ導入する水素ガスの量等の制御により行える。
【0047】
前記のようにスパッタリング用ガスとして水素ガスを採用する場合、シリコンスパッタターゲットを発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下、より好ましくは3.0以下、或いは0.5以下であるプラズマでケミカルスパッタリングすることで基体上に結晶核の形成が促進され、該核からシリコンドットを成長させることが可能である。
【0048】
このように結晶核形成が促進され、シリコンドットが成長するため、予めシリコン物体形成対象基体上にダングリングボンドやステップなどの核となり得るものが存在しなくても、シリコンドットが成長するための核を比較的容易に高密度に形成することができる。また、水素ラジカルや水素イオンがシリコンラジカルやシリコンイオンより豊富であり、核密度の過剰に大きい部分については、励起された水素原子や水素分子とシリコン原子との化学反応によりシリコンの脱離が進み、これによりシリコンドットの核密度は基体上で高密度となりつつも均一化される。
【0049】
またプラズマにより分解励起されたシリコン原子やシリコンラジカルは核に吸着し、化学反応によりシリコンドットへと成長するが、この成長の際も水素ラジカルが多いことから吸着脱離の化学反応が促進され、核は結晶方位と粒径のよく揃ったシリコンドットへと成長する。以上より、基体上に結晶方位と粒径サイズの揃ったシリコンドットを高密度且つ均一分布で形成することが可能である。
【0050】
以上説明したシリコン物体形成方法によるシリコンドットの形成では、シリコン物体形成対象基体上に微小粒径のシリコンドット、例えば、粒径が20nm以下、より好ましくは粒径が10nm以下のシリコンドットを形成しようとするものであるが、実際には極端に小さい粒径のシリコンドットを形成することは困難であり、それには限定されないが粒径1nm程度以上のものになるであろう。例えば3nm〜15nm程度のもの、より好ましくは3nm〜10nm程度のものを例示できる。
【0051】
かかるシリコン物体形成方法によるシリコンドットの形成では、500℃以下の低温下で(換言すれば、基体温度を500℃以下の低温として)、条件次第では400℃以下の低温下で(換言すれば条件次第では、基体温度を400℃以下として)、基体上にシリコンドットを形成できるので、基体材料の選択範囲がそれだけ広くなる。例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板へのシリコンドット形成が可能となる。
【0052】
このように、低温下でシリコンドットを形成できるが、シリコン物体形成対象基体温度が低すぎると、シリコンの結晶化が困難となるので、他の諸条件にもよるが、概ね200℃以上の温度で(換言すれば、基体温度を概ね200℃以上として)シリコンドットを形成することが望ましい。
【0053】
前記いずれのシリコンドット形成においても、スパッタリング用プラズマ形成時の第1室及び第2室の内圧(換言すればシリコンドット形成時の第1、第2室の内圧)としては、0.1Pa〜10.0Pa程度を例示できる。
0.1Paより低くなってくると、結晶粒(ドット)の成長が遅くなり、要求されるドット粒径を得るのに時間がかかる。さらに低くなってくると、結晶粒が成長しなくなる。10.0Paより高くなってくると、結晶粒(ドット)が成長し難くなり、基体上にはアモルファスシリコンが多くできるようになる。
【0054】
シリコンスパッタターゲットとして予め準備された、例えば市販のシリコンスパッタターゲットを利用するシリコン物体形成方法のように、シリコンスパッタリングターゲットを第2室内に後付け配置する場合、該ターゲットの該第2室内における配置としては、これがスパッタリング用プラズマによりケミカルスパッタリングされる配置であればよいが、例えば、第2室内壁面の全部又は一部に沿って配置する場合を挙げることができる。第2室内に独立して配置してもよい。第2室の内壁に沿って配置されるものと、独立的に配置されるものを併用してもよい。
この点は、後述する結晶性シリコン薄膜の場合も同様である。
【0055】
第2室の内壁にシリコン膜を形成してこれをシリコンスパッタターゲットとしたり、シリコンスパッタターゲットを第2室の内壁面に沿って配置すると、第2室を加熱することでシリコンスパッタターゲットを加熱することができ、ターゲットを加熱すると、ターゲットが室温である場合よりもスパッタされやすくなり、それだけ高密度にシリコンドットを形成し易くなる。第2室を例えばバンドヒータ、加熱ジャケット等で加熱してシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱する例を挙げることができる。加熱温度の上限については、経済的観点等から概ね300℃程度を例示できる。オーリング等を使用している場合はそれらの耐熱性に応じて300℃よりも低い温度にしなければならないこともある。
結晶性シリコン薄膜を形成するときにも、同様に、シリコンスパッタターゲットを加熱してもよい。
【0056】
(1−2)結晶性シリコン薄膜を形成する場合
本発明に係るシリコン物体形成方法により結晶性シリコン薄膜を形成する場合、前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3のプラズマとすることが望ましい。
【0057】
シリコンスパッタターゲットをHα/SiH* が0.3〜1.3であるプラズマでケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、これによりスパッタリングされた原子と水素プラズマによる励起効果及び被成膜物品の堆積膜表面と水素ラジカルの反応などにより被成膜物品上に膜を堆積形成すれば、結晶性を示し、表面粗度の小さい、良質の結晶性シリコン膜が形成される。
しかも、比較的低温下に膜形成でき、例えば耐熱温度500℃以下の安価な低融点ガラス基板への結晶性シリコン薄膜の形成も可能であり、それだけ安価に基体上に結晶性シリコン薄膜を形成できる。
【0058】
ここでSiH* は、第2室内に導入される水素ガスがスパッタリング用プラズマ生成装置によりプラズマ化されて生成される水素ガスプラズマによるシリコンスパッタターゲットのスパッタリングにより発生してプラズマ中に存在するシランラジカルの発光スペクトル強度(波長414nm)であり、Hαはプラズマ発光分光により波長656nmにピークを示す水素原子ラジカルの発光スペクトル強度である。
【0059】
Hα/SiH* はプラズマ中の水素ラジカルの豊富さを示しており、この値が0.3より小さくなってくると、形成される膜の結晶性が低下し、1.3より大きくなってくると、かえって膜形成が困難になってくる。
【0060】
Hα/SiH* の値は各種ラジカルの発光スペクトルをプラズマ発光分光計測装置により測定し、その測定結果に基づいて得ることができる。また、Hα/SiH* の制御は、スパッタリング用プラズマ生成装置(例えば、それにより水素ガスへ印加される電力(例えば周波数や電力の大きさ))、結晶性シリコン薄膜形成時の第1及び第2室内のガス圧、第2室内へ導入する水素ガスの量等の制御により行える。
【0061】
結晶性シリコン薄膜の形成においては、ケミカルスパッタリング用プラズマのポテンシャルは15eV〜45eV程度であることが好ましく、電子密度は1010cm-3〜1012cm-3程度であることが好ましい。また、第1及び第2室内の圧力(成膜圧力)は、0.6Pa〜13.4Pa(約5mTorr〜約100mTorr)程度であることが好ましい。
【0062】
結晶性シリコン薄膜形成におけるプラズマポテンシャルが15evより低くなってくると、結晶性が低下してくるし、45eVより高くなってきても結晶化が阻害されやすくなる。
また、プラズマ中の電子密度が1010cm-3より小さくなってくると、結晶化度が低下したり、膜形成速度が低下したりし、1012cm-3より大きくなってくると、膜及び被成膜基体がダメージを受けやすくなる。
【0063】
結晶性シリコン薄膜形成における室内圧力が0.6Pa(約5mTorr)より低くなってくると、膜形成速度が低下してくる。13.4Pa(約100mTorr)より高くなってくると、プラズマが不安定になったり、膜の結晶性が低下したりする。
かかるプラズマポテンシャルやプラズマの電子密度は、スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えば、それによる水素ガスへの印加電力(電力の大きさ及び(又は)周波数等)、成膜圧等のうち少なくとも一つを制御することで調整できる。
【0064】
(1−3)スパッタリング用プラズマ生成装置
前記スパッタリング用プラズマ生成装置としては、前記第2室に導入されるケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
【0065】
高周波放電方式を採用するプラズマ生成装置を例にとると、第2室内へ導入される水素ガスへの高周波電力の印加は、電極を用いて行う。その場合、誘導結合型電極、容量結合型電極のいずれも採用することができる。誘導結合型プラズマを発生させるために誘導結合型電極(高周波アンテナ)を採用するとき、それは第2室内に配置することも、第2室外に配置することもできる。
【0066】
誘導結合型電極(高周波アンテナ)を採用すると、容量結合型電極を採用する場合より、高密度で均一なプラズマを得やすい。また、誘導結合型アンテナは、室外部に配置するよりも内部に配置する方が、投入される高周波電力の利用効率が向上する。
【0067】
第2室内に配置する電極については、シリコンを含む電気絶縁性膜、アルミニウムを含む電気絶縁性膜のような電気絶縁物(例えばシリコン膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、アルミナ膜、石英ガラス等)で被覆して、高密度プラズマの維持、自己バイアスによる電極表面のスパッタリングによるシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン膜)への不純物の混入抑制等を図ってもよい。
【0068】
第2室に対し高周波放電電極からの放電を誘導結合方式で行う場合、第2室内部は水素ラジカル及び水素イオンに富んだ状態となる。
本発明者は、誘導結合方式により水素ガスをプラズマ化し、プラズマ発光分光することで、該プラズマにおいてHα(656nm)及びHβ(486nm)が支配的となることを観測している。HαやHβが豊富であることは水素ラジカル濃度が高いことを意味している。この点は、HαやHβが乏しくなる容量結合方式によるプラズマ生成の場合と大きく異なっている。
【0069】
誘導結合方式による高周波電力印加により形成されたプラズマのプラズマポテンシャルは、条件にもよるが、例えば約20eV程度であり、いずれにしてもかなり低いので、通常の物理的なスパッタリングは起こり難い。しかし、本発明者はプラズマ発光分光によりSi(288nm)の存在を観測している。これはシリコンスパッタターゲット表面における、水素ラジカル及び水素イオンによるケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)によるものである。
【0070】
いずれにしてもプラズマ形成のための高周波電力の周波数としては、比較的安価に済む13MHz程度から100MHz程度の範囲のものを例示できる。100MHzより高周波数になってくると、電源コストが高くなってくるし、高周波電力印加時のマッチングがとり難くなってくる。
【0071】
(1−4)シリコン膜形成用プラズマ生成装置
前記シリコン膜形成用プラズマ生成装置についても、前記第2室に導入されるシリコン膜形成のための水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
【0072】
〔2〕シリコン物体形成装置
以上、シリコン物体形成方法について説明してきたが、本発明は、次の第1、第2のシリコン物体形成装置も提供する。
(1)第1のシリコン物体形成装置
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に設けられるシリコンスパッタターゲットと、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記水素ガス供給装置から前記第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室において生成させる前記ケミカルスパッタリング用プラズマによる前記シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できるシリコン物体形成装置。
【0073】
(2)第2のシリコン物体形成装置
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記第2室にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
前記第2室に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスから該第2室の内壁にシリコン膜を形成するためのプラズマを生成させるシリコン膜形成用プラズマ生成装置と、
前記第2室内壁へのシリコン膜形成後に前記水素ガス供給装置から該第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室の内壁に形成される前記シリコン膜をシリコンスパッタターゲットとして該ターゲットを該第2室に生成されるケミカルスパッタリング用プラズマにてケミカルスパッタリングさせ、該ケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できるシリコン物体形成装置。
【0074】
かかるスパッタリング用プラズマ生成装置としては、前記第2室に導入される前記ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
【0075】
シリコン膜形成用プラズマ生成装置についても、前記第2室に導入される前記シリコン膜形成用の水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電(電子サイクロトロン共鳴放電)、直流放電、パルス放電、ホローカソード放電等の放電方式を用いるプラズマ生成装置を例示できる。
第2のシリコン物体形成装置におけるシリコン膜形成用プラズマ生成装置とスパッタリング用プラズマ生成装置とは、互いに一部又は全部が共通であってもよい。
【0076】
いずれのシリコン物体形成装置においても、水素ガス供給装置から供給される水素ガスは例えば希ガスが混合されたものでもよい。
【0077】
いずれのシリコンドット形成装置によっても、低温で(例えば500℃以下の低温で)シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成することができる。
例えば、シリコン物体として、基体上に直接、粒径の揃った結晶性のシリコンドット(「シリコンドットの群れからなる膜」、換言すれば、「膜状に群れとなったシリコンドット」である場合も含む)を均一な密度分布で形成することが可能である。結晶性シリコン薄膜を形成することも可能である。
【0078】
第1、第2のいずれのシリコン物体形成装置においても、シリコンドットを形成するものでは、前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置を含んでいてもよい。
【0079】
この場合、該プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記第2室内の前記ケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えばこれにより水素ガスに印加されるプラズマ化用電力(電力の大きさ及び(又は)周波数等)〕、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
基準発光強度比は、3.0以下、或いは0.5以下の範囲から定めてもよい。
【0080】
かかるプラズマ発光分光計測装置の例として、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する第1検出部と、プラズマ発光における波長484nmでの水素原子の発光強度Hβを検出する第2検出部と、該第1検出部で検出される発光強度Si(288nm) と該第2検出部で検出される発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部とを備えているものを挙げることができる。
【0081】
第1、第2のいずれのシリコン物体形成装置においても、結晶性シリコン薄膜を形成するものでは、前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との発光強度比(Hα/SiH* )を求めるプラズマ発光分光計測装置をさらに含んでいてもよい。
【0082】
この場合、前記発光分光計測装置で求められる発光強度比(Hα/SiH* )と0.3以上1.3以下の範囲から定められた基準値とを比較して、前記第2室内でのケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比(Hα/SiH* )が該基準値に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置〔例えばこれにより水素ガスに印加されるプラズマ化用電力(電力の大きさ及び(又は)周波数等)〕、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有していてもよい。
【0083】
かかるプラズマ発光分光計測装置の例として、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαを検出する第1検出部と、プラズマ発光における波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* を検出する第2検出部と、該第1検出部で検出される発光スペクトル強度Hαと該第2検出部で検出される発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )を求める演算部とを備えているものを挙げることができる。
【0084】
本発明に係るシリコン物体形成方法及び装置においては、シリコン物体形成対象基体を配置する第1室に対し、シリコンスパッタターゲットを配置し、これをケミカルスパッタリングするための第2室を採用しているので、第1室の形状等に左右されることなくシリコンスパッタターゲットを選択できる幅が広がる。例えば、第1室の形状に左右されない単純形状のシリコンスパッタターゲットの採用が可能になる。このようにシリコンスパッタターゲットにつき、その形状等の選択の自由度が大きくなる。
【0085】
また、シリコン物体を形成するための第1室に左右されずに、シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングさせるための第2室を含む部分の構造等(例えばプラズマ生成のための放電方式とそのための構造)につき選択できる幅が広がるとともに、これら部分のメイテナンスも容易になる。
【発明の効果】
【0086】
以上説明したように本発明によると、従来のシリコンドット形成や結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、シリコン物体形成対象基体上に所望のシリコン物体を形成できる方法及び装置を提供することができる。
【0087】
具体的には、例えば、従来のシリコンドット形成と比べると、比較的低温下で、基体上に直接、粒径の揃ったシリコンドットを均一な密度分布で形成できる方法及び装置を提供することができる。
また、例えば、従来の結晶性シリコン薄膜形成と比べると、比較的低温下で、基体上に良質の結晶性シリコン薄膜を形成できる方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
以下図面を参照してシリコン物体形成装置の例とそれによるシリコン物体形成方法等について説明する。
〔1〕シリコン物体形成装置(装置A)と装置Aによるシリコンドット形成
<シリコン物体形成装置(装置A)について>
図1はシリコン物体形成装置の1例の概略構成を示している。
図1に示す装置Aは、板状のシリコン物体形成対象基体Sにシリコンドットを形成するもので、第1室1及び第1室に左右一対に連通形成された第2室2を含んでいる。室1と各室2間の開口は、必要に応じ、或いはそうした方が望ましい場合に、開閉可能のシャッタ11で閉じることができる。第1室1内には基板ホルダ3が設置されている。ホルダ3には該ホルダ上に設置される基板Sを加熱するヒータ31を有している。また、第1室1には排気装置EXが接続されている。
【0089】
各第2室2は、第1室1に向け開口している。各第2室2内には、上下に設置された放電用電極41、42があり、一方の電極41はマッチングボックス43を介して放電用高周波電源44に接続されている。他方の電極42は接地電極である。電極41、42は絶縁性部材21を介して室壁に保持されている。
【0090】
各第2室2は、それらに共通の水素ガス供給装置5に接続されている。
前記の電極41、42、マッチングボックス43、電源44等は、水素ガス供給装置5から供給される水素ガスに高周波電力を印加して該ガスをプラズマ化させるプラズマ生成装置4を構成している。
【0091】
また、各第2室2内にはシリコンスパッタターゲットT1が設置されている。シリコンスパッタターゲットT1は、本例では電極41、42のそれぞれの表面に貼り付けられている。なお、シリコンスパッタターゲットT1の配置位置はこれに限定されるものではない。後述する該ターゲットのケミカルスパッタリングが可能な位置であればよい。
【0092】
さらに、一方の第2室2には、第2室内に形成されるプラズマの状態を計測するためのプラズマ発光分光計測装置6も付設されている。
【0093】
シリコンスパッタターゲットは、形成しようとするシリコンドットの用途等に応じて、例えば、市場で入手可能な次の(1) 〜(3) に記載のシリコンスパッタターゲットから選択したものを採用できる。
(1) 単結晶シリコンからなるターゲット、多結晶シリコンからなるターゲット、微結晶シリコンからなるターゲット、アモルファスシリコンからなるターゲット、これらの2以上の組み合わせからなるターゲットのうちのいずれかのターゲット、
(2) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、燐(P)、ホウ素(B)及びゲルマニウム(Ge)のそれぞれの含有量がいずれも10ppm未満に抑えられたシリコンスパッタターゲット、
(3) 前記(1) 記載のいずれかのターゲットであって、所定の比抵抗を示すシリコンスパッタターゲット(例えば比抵抗が0.001Ω・cm〜50Ω・cmであるシリコンスパッタターゲット)。
【0094】
前記プラズマ生成装置4における各高周波電源44は、出力可変の電源であり、例えば周波数60MHzの高周波電力を供給できる。なお、周波数は60MHzに限らず、例えば13、56MHz程度から100MHz程度の範囲のもの、或いはそれ以上のものを採用することもできる。
第1及び第2の室1、2、基板ホルダ3はいずれも接地されている。
【0095】
前記の水素ガス供給装置5は水素ガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでおり、各第2室2に実質上同じ供給量で水素ガスを供給できる。
排気装置EXは排気ポンプの他、排気流量調整を行うコンダクタンスバルブ等を含んでいる。
【0096】
発光分光計測装置6は、ガス分解による生成物の発光分光スペクトルを検出することができるもので、その検出結果に基づいて、発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めることができる。発光分光計測装置6は一方の(図1例では左側の)第2室2に対してのみ設けられている。しかし、水素ガス供給装置5は各室2に同じ供給量で水素ガスを供給すること、各プラズマ生成装置4の電源44は同じ電力を電極41に印加すること等から、一方の室2で計測したプラズマ状態は、他方の室2におけるプラズマ状態でもあるとみなすことができる。
【0097】
かかる発光分光計測装置6の具体例として、図2(A)に示すように、第2室2内のプラズマ発光から波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) を検出する分光器61と、該プラズマ発光から波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβを検出する分光器62と、分光器61、62で検出される発光強度Si(288nm) と発光強度Hβとから両者の比〔Si(288nm) /Hβ〕を求める演算部63とを含んでいるものを挙げることができる。なお、分光器61、62に代えて、フィルター付きの光センサを採用することも可能である。
【0098】
<装置Aによるシリコンドット形成>
次に、シリコン物体形成装置Aによる基板Sへのシコンドット形成例について説明する。
シリコンドット形成は、室1、2内の圧力を0.1Pa〜10.0Paの範囲のものに維持して行う。これら室内圧力は、図示を省略しているが、例えば該室1又は室2に接続した圧力センサで知ることができる。室1、2内の圧力は厳密には異なってくる場合があるが、両室は連通しているので、例えば第2室2内の圧力をもって室1、2内の圧力とみなしても、実用上差し支えない。
【0099】
先ず、シリコンドット形成に先立って、室1、2から排気装置EXにて排気を開始する。排気装置EXにおけるコンダクタンスバルブ(図示省略)は室1、2内の前記シリコンドット形成時の圧力0.1Pa〜10.0Paを考慮した排気量に調整しておく。
排気装置EXの運転により室1、2内圧力が予め定めておいた圧力或いはそれより低下してくると、水素ガス供給装置5から第2室2内へ水素ガスの導入を開始するとともに電源44から電極41に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0100】
かくて発生したガスプラズマから、発光分光計測装置6において発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を算出し、その値が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における予め定めた値(基準発光強度比)に向かうように、高周波電力の大きさ、水素ガス導入量、室内圧力等を決定する。
【0101】
高周波電力の大きさについては、電極41に印加する高周波電力の電力密度〔印加電力(W:ワット)/第2室容積(L:リットル)〕が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/L程度に納まるように決定することが望ましい。
なお、第1室1の容積は、第2室2の容積に対し、10倍〜100倍程度を例示できるが、さらに大きくてもよい。場合によっては(例えば、放電方式、第2室の数等によっては)、例えば400倍〜500倍程度も考えられる。
このようにしてシリコンドット形成条件を決定したあとは、その条件に従ってシリコンドットの形成を行う。
【0102】
シリコンドット形成においては、室1内の基板ホルダ3にシリコンドット形成対象基板Sを設置し、該基板Sをヒータ31にて500℃以下の温度、例えば400℃に加熱する。また、排気装置EXの運転にて室1、2内をシリコンドット形成のための圧力に維持しつつ各室2内にガス供給装置5から水素ガスを導入し、電源44から放電電極41に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0103】
かくして、プラズマ発光における波長288nmでのシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmでの水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲における前記基準発光強度比或いは実質上該基準発光強度比のプラズマを発生させる。そして、該プラズマにてシリコンスパッタターゲットT1をケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)する。
【0104】
かかるシリコンスパッタターゲットT1のケミカルスパッタリングにより、シリコン励起種(例えばSiH3 等の水素化シリコン励起種)などの、シリコンドット形成寄与粒子pが発生し、かかるシリコンドット形成寄与粒子pが室2から室1へ飛来する。かくして、室1内へ到来したシリコンドット形成寄与粒子のもとで、基板S表面に結晶性を示す微小粒径(例えば粒径20nm以下)のシリコンドットが形成される。
【0105】
<シリコンスパッタターゲットの他の例>
以上説明したシリコンドット形成においては、シリコンスパッタターゲットとして、市場で入手できるターゲットを室2内に後付け配置した。しかし、次の、外気に曝されないシリコンスパッタターゲットを採用することで、予定されていない不純物混入が一層抑制されたシリコンドットを形成することが可能である。
【0106】
すなわち、図3に示すように、前記の装置Aにおいて、当初は、第1室1内に基板Sを未だ配置せずに(或いは、基板Sが配置されているときはシャッタ11を閉じて)、第2室2内へ、水素ガス供給装置5から水素ガスを、シラン系ガス供給装置7からシラン系ガスを導入し、これらガスに電源44から高周波電力を印加してプラズマ化し、該プラズマにより第2室2の内壁(室2の室壁そのものでよく、室壁の内側に設けた内壁でもよく、それらの組み合わせでもよい)にシリコン膜を形成し、これをシリコンスパッタターゲットとして用いるのである。
【0107】
前記シラン系ガスとしてはモノシラン(SiH4 )の他、ジシラン(SiH2 )、四フッ化ケイ素(SiF4 )、四塩化ケイ素(SiCl4 )、ジクロルシラン(SiH2 Cl2 )などのガスも使用できる。
【0108】
シラン系ガス供給装置7は、ここではモノシラン(SiH4 )ガス等のシラン系ガスを供給できるもので、SiH4 等のガス源の他、図示を省略した弁、流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
【0109】
図3では、かくして形成されるシリコン膜の一部をターゲットT2として示してある。 かかるシリコン膜形成においては、室2のシリコン膜形成対象内壁を外部ヒータで加熱してもよい。
【0110】
このようにして室2内にシリコンスパッタターゲットT2を形成したのち、該ターゲットを、既述のように、水素ガス由来のプラズマでケミカルスパッタリングして基板S上にシリコンドットを形成する。
【0111】
かかる、シリコンスパッタターゲットとして用いるシリコン膜の形成においても、良質なシリコン膜を形成するために、プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を0.1以上10.0以下の範囲、より好ましくは0.1以上3.0以下、或いは0.1以上0.5以下の範囲に維持して形成することが望ましい。
【0112】
<発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕制御の他の例>
以上説明したシリコンドット形成においては、出力可変電源44の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置7によるシラン系ガス供給量)、排気装置EXによる排気量等の制御は、発光分光計測装置6で求められる発光分光強度比を参照しつつマニュアル操作で行われた。
【0113】
しかし、図2(B)に示すように、発光分光計測装置6の演算部63で求められた発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕を制御部6Cに入力してもよい。そして、かかる制御部6Cとして、演算部63から入力された発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が予め定めた基準発光強度比か否かを判断し、基準発光強度比から外れていると、基準発光強度比に向けて、前記の出力可変電源44の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(或いはさらにシラン系ガス供給装置7によるシラン系ガス供給量)及び排気装置EXによる排気量のうち少なくとも一つを制御することができるように構成されたものを採用してもよい。
【0114】
かかる制御部6Cの具体例として、排気装置EXのコンダクタンスバルブを制御することで該装置EXによる排気量を制御し、それにより室内ガス圧を、前記基準発光強度比達成に向けて制御するものを挙げることができる。
【0115】
この場合、出力可変電源4の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置6によるシラン系ガス供給量)及び排気装置EXによる排気量について、基準発光強度比或いはそれに近い値が得られる、予め実験等で求めた電源出力、水素ガス供給量(又は水素ガス供給量及びシラン系ガス供給量)及び排気量を初期値として採用すればよい。
かかる初期値決定に際しても、排気装置EXによる排気量は、室1、2内の圧力が0.1Pa〜10.0Paの範囲に納まるように決定する。
【0116】
電源4の出力は、電極41に印加する高周波電力の電力密度が5W/L〜100W/Lに、或いは5W/L〜50W/Lに納まるように決定する(Lは室2の容積〔リットル〕)。
【0117】
さらに、水素ガス及びシラン系ガスの双方をプラズマ形成のためのガスとして採用する場合は、それらガスの室2内への導入流量比(シラン系ガス流量/水素ガス流量)を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。例えば、シラン系ガスの導入流量を1sccm〜5sccmとし、〔シラン系ガスの導入流量(sccm)/室2の容積(リットル)〕を1/200〜1/30の範囲のものに決定する。
【0118】
そして、電源44の出力及び水素ガス供給装置5による水素ガス供給量(又は水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及びシラン系ガス供給装置7によるシラン系ガス供給量)については、それらの初期値をその後も維持し、排気装置EXによる排気量を、基準発光強度比達成に向けて、制御部6Cに制御させればよい。
【0119】
<プラズマ生成装置の他の例>
以上説明したシリコン物体形成装置Aでは、電極として平板形状の容量結合型電極を採用しているが、誘導結合型電極を採用することもできる。誘電結合型電極の場合、それは棒状、コイル状等の各種形状のものを採用できる。採用個数等についても任意である。
【0120】
誘導結合型電極を採用する場合においてシリコンスパッタターゲットを採用する場合、該電極が室内に配置される場合であれ、室外に配置される場合であれ、該シリコンスパッタターゲットは室内壁面の全部又は一部に沿って配置したり、チャンバ内に独立して配置したり、それら両方の配置を採用したりできる。また、電極を室内に配置する場合、少なくとも一部のシリコンスパッタターゲットを該室内電極に臨ませて配置することもできる。
【0121】
また、装置Aでは、室2を加熱する手段(バンドヒータ、熱媒を通す加熱ジャケット等)の図示が省略されているが、シリコンスパッタターゲットのスパッタリングを促進させるために、かかる加熱手段にて室2を加熱することでシリコンスパッタターゲットを80℃以上に加熱してもよい。
【0122】
<実験例>
次に幾つかのシリコンドット形成の実験例について説明する。
(1) 実験例1
図1に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、水素ガスとシリコンスパッタターゲットを用いて、基板上に直接シリコンドットを形成した。ドット形成条件は以下のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:単結晶シリコンスパッタターゲット
各室2内ターゲット総面積:0.08m2 基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウェハ
第1室容量:200リットル
各第2室容量:2リットル
プラズマ生成装置高周波電源:60MHz、80W
各第2室での電力密度:40W/L
第1、第2の室内圧:0.6Pa
各第2室水素導入量:100sccm
Si(288nm) /Hβ:0.2
プラズマ電子密度:5×1010/cm3 基板温度:400℃
ドット形成時間:40秒
【0123】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒径を測定し、その平均値を求めたところ、5nmであり、20nm以下、さらに言えば10nm以下の粒径のシリコンドットが形成されていることが確認された。ドット密度は約2.0×1012個/cm2 であった。
【0124】
(2) 実験例2
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、シャッタ11を閉じて第2室2の内壁にシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。シリコン膜形成条件及びドット形成条件は以下のとおりであった。 シリコン膜形成条件
各第2室の膜形成内壁面積:約0.035m2
各第2室容量:0.5リットル
プラズマ生成装置高周波電源:13.56MHz、10W
各第2室電力密度:20W/L
各第2室内壁温度:200℃(室内部に設置の図示省略ヒータで室加熱) 各第2室内圧:0.67Pa
各第2室モノシラン導入量:100sccm
各第2室水素導入量:150sccm
Si(288nm) /Hβ:2.0
【0125】
ドット形成条件
基板:酸化膜(SiO2 )で被覆されたシリコンウェハ
第1室容量:200リットル
プラズマ生成装置高周波電源:13.56MHz、25W
各第2室電力密度:50W/L
各第2室内壁温度:200℃(室内部に設置の図示省略ヒータで室加熱) 第1、第2の室内圧:0.67Pa
各第2室水素導入量:100sccm
プラズマ電子密度:5×1010/cm3
Si(288nm) /Hβ:1.5
基板温度:430℃
ドット形成時間:40秒
【0126】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。小さいドットでは5nm〜6nm、大きいドットでは9nm〜11nmであった。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、8nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.3×1011個/cm2 であった。
【0127】
(3) 実験例3
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、第2室内壁に実験例2におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、第1、第2の室内圧力を1.34Paとし、Si(288nm) /Hβを2.5とした以外は実験例2と同じとした。
【0128】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、10nmであり、10nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約7.0×1011個/cm2 であった。
【0129】
(4) 実験例4
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、第2室内壁に実験例2におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を2.68Paとし、Si(288nm) /Hβを4.6とした以外は実験例2と同じとした。
【0130】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、13nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.5×1011個/cm2 であった。
【0131】
(5) 実験例5
図3に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、先ず、第2室内壁に実験例2におけるシリコン膜形成条件でシリコン膜を形成し、次いで該シリコン膜をスパッタターゲットとしてシリコンドットを形成した。ドット形成条件は、チャンバ内圧力を6.70Paとし、Si(288nm) /Hβを8.2とした以外は実験例2と同じとした。
【0132】
このようにして、図9に模式的に示す、シリコンドットSiDが形成された基板Sを得た。
このシリコンドットSiDを有する基板Sの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観測したところ、それぞれ独立的に形成され、また、均一分布で高密度な状態に形成された、粒径の揃ったシリコンドットを確認できた。TEM像から50個のシリコンドットの粒粒を測定し、その平均値を求めたところ、16nmであり、20nm以下の粒径のシリコンドットが実質的に形成されていることが確認された。ドット密度は約6.1×1011個/cm2 であった。
【0133】
(6) 実験例6
図1に示すタイプのシリコン物体形成装置を用い、実験例1と同様にして、しかしドット形成時間を60秒と長くしてシリコンドットを形成した。
かくして、図10に模式的に示す、シリコンドットSiDが膜状に群れて形成された基板Sを得た。
【0134】
〔2〕シリコン物体形成装置の他の例(装置B)と装置Bによる結晶性シリコン薄膜形成<シリコン物体形成装置Bについて>
図4は本発明に係るシリコン物体形成装置の他の例の概略構成を示している。
図4に示す装置Bは板状のシリコン物体形成対象基体S上に結晶性シリコン薄膜を形成するもので、図1に示す装置Aにおいて、容量結合型プラズマを形成するプラズマ生成装置4に代えて、誘導結合型プラズマを形成するためのプラズマ生成装置40を採用したものである。
【0135】
各シリコンスパッタターゲットは、バッキングプレート22及び絶縁性部材21を介して室壁に保持されている。
プラズマ生成装置40は、室2内に配置した高周波放電アンテナ400を含んでいる。該アンテナは、石英ガラスからなる絶縁材で被覆されており、該アンテナの両端部は、室2壁に対し絶縁状態で室2外まで出ており、一方の端部はマッチングボックス403を介して放電用高周波電源404に接続されている。他方の端部は接地されている。
【0136】
電源404は出力可変電源であり、例えば、周波数13、56MHzの高周波電力を供給できる。なお、電源周波数は13.56MHzに限定されるものではなく、例えば60MHz程度からから数100MHzの範囲のものも採用できる。
【0137】
また、装置Aにおけるプラズマ発光分光計測装置6に代えて、プラズマの状態を計測するための発光分光計測装置60を採用している。
その他の点は、装置Aと実質上同構造である。装置Aと実質上同じ部分、部品には装置Aと同じ参照符号を付してある。
【0138】
ここでの発光分光計測装置60は、図5(A)に示すように、室2内に形成されるプラズマにおけるシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* (波長414nm)を検出する分光器601、水素の発光スペクトル強度Hα(波長656nm)及びHβ(波長484nm)を検出する分光器602、604を含むものである。分光器601、602で検出された発光強度SiH* 及びHαは演算部603に入力され、ここで、発光強度比(Hα/SiH* )が求められる。なお、分光器に代えて、フィルター付きの光センサを採用することも可能である。
【0139】
<装置Bによる結晶性シリコン薄膜の形成>
次に、以上説明した装置Bによる基板S上への結晶性シリコン膜の形成例について説明する。
この膜形成においては、室1、2における成膜ガス圧を0.6Pa〜13.4Paの範囲のものに維持して行う。
これら室内圧力は、図示を省略しているが、例えば該室1又は室2に接続した圧力センサで知ることができる。室1、2内の圧力は厳密には異なってくる場合があるが、両室は連通しているので、例えば第2室2内の圧力をもって室1、2内の圧力とみなしても、実用上差し支えない。
【0140】
先ず、膜形成に先立って、室1、2から排気装置EXにて排気を開始する。排気装置EXにおけるコンダクタンスバルブ(図示省略)は室1、2内の前記膜形成時の圧力0.6Pa〜13.4Paを考慮した排気量に調整しておく。
排気装置EXの運転により室1、2内圧力が予め定めておいた圧力或いはそれより低下してくると、水素ガス供給装置5から第2室2内へ水素ガスの導入を開始するとともに電源404から高周波アンテナ400に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0141】
かくして発生したガスプラズマからの、発光分光計測装置60による検出情報から該プラズマにおけるHα(656nm )及びHβ(484nm)を計測する。
そして、電極(高周波ナンテナ)400へ印加する高周波電力、室2への水素ガス導入量、成膜ガス圧等のうち少なくとも一つを制御することで、プラズマにおけるHα(656nm )及びHβ(484nm)の発光強度が十分大くなる高周波電力、水素ガス導入量等の条件を決定する。
【0142】
また、プラズマにおけるHα/SiH* が0.3〜1.3となり、プラズマのポテンシャルが15eV〜45eVとなり、プラズマにおける電子密度が、1010cm-3〜1012cm-3となる高周波電力、水素ガス導入量等の条件を決定する。
これらを勘案して最終的な高周波電力、水素ガス導入量、成膜ガス圧等の条件を決定する。
プラズマポテンシャル、電子密度は、例えば室2内へ挿入したラングミューアプローブを用いラングミューアプローブ法により確認すればよい。
このようにして成膜条件を決定したあとは、該条件に従って膜形成を行う。
【0143】
膜形成においては、ホルダ3にて支持する基板Sの温度を500℃以下の比較的低温、例えば400℃程度に加熱できるようにヒータ31を設定し、該ホルダ3に基板Sを搭載する。次いで排気装置EXにて室1、2内を排気し、ひき続き水素ガス供給装置5から室2内へ所定量の水素ガスを導入するとともにアンテナ400に電源404から高周波電力を印加することで、アンテナ400からの放電を誘導結合方式にて行わせ、これによりプラズマを発生させる。
【0144】
すると、シリコンスパッタターゲットT1をプラズマがケミカルスパッタリング(反応性スパッタリング)し、それにより、シリコン励起種(例えばSiH3 等の水素化シリコン励起種)などの結晶性シリコン薄膜形成寄与粒子pが発生し、かかる粒子が室2から室1へ飛来する。かくして、室1内へ到来した結晶性シリコン薄膜形成寄与粒子pのもとで、基板S表面にシリコン薄膜が形成される。
【0145】
この膜は、結晶性を示すシリコン薄膜である。
基板温度は低すぎると、シリコンの結晶化が困難になるので、他の条件にもよるが概ね200℃以上が望ましい。
【0146】
<シリコンスパッタターゲットの他の例>
以上説明した結晶性シリコン薄膜の形成においては、シリコンスパッタターゲットとして、市場で入手できるターゲットを室2内に後付け配置した。しかし、シリコンドット形成において説明したように、膜形成に先立って、室2内へ水素ガスとシラン系ガスを導入し、これをプラズマ化し、該プラズマのもとで室2の内壁にシリコン膜を形成し、これをシリコンスパッタターゲットとして利用してもよい。
また、シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングにあたっては、室2壁を加熱する等してシリコンスパッタターゲットを加熱してもよい。
【0147】
<発光強度比(Hα/SiH* )制御の他の例>
以上説明したシリコン薄膜形成においては、出力可変電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量、排気装置EXによる排気量等の制御はマニュアル的になされた。
【0148】
しかし、図5(B)に示すように、発光分光計測装置60の演算部603で求められた発光強度比Hα/SiH* を制御部60Cに入力してもよい。そして、かかる制御部60Cとして、演算部603から入力された発光強度比Hα/SiH* が予め定めた基準発光強度比(基準値)か否かを判断し、基準発光強度比から外れていると、基準発光強度比に向けて、前記の出力可変電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量、及び排気装置EXによる排気量のうち少なくとも一つを制御することができるように構成されたものを採用してもよい。
【0149】
かかる制御部60Cの具体例として、排気装置EXのコンダクタンスバルブを制御することで該装置EXによる排気量を制御し、それにより室1、2の内圧を、前記基準発光強度比達成に向けて制御するものを挙げることができる。
この場合、出力可変電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量及び排気装置EXによる排気量等について、基準発光強度比或いはそれに近い値が得られる、予め実験等で求めた電源出力、水素ガス供給量及び排気量等を初期値として採用すればよい。
【0150】
かかる初期値決定に際しても、排気装置EXによる排気量は、室1、2の内圧が0.6Pa〜13.4Paの範囲に納まるように決定する。また、プラズマのポテンシャルが15eV〜45eVの範囲に、プラズマにおける電子密度が1010cm-3〜1012cm-3の範囲に納まるように決定する。
そして、電源404の出力、水素ガス供給装置5による水素ガス供給量については、それらの初期値をその後も維持し、排気装置EXによる排気量を、基準発光強度比達成に向けて、制御部60Cに制御させればよい。
【0151】
<実験例>
次に結晶性シリコン薄膜形成の実験例について説明する。
条件等は以下のとおりであった。
シリコンスパッタターゲット:単結晶シリコンスパッタターゲット
各室2内ターゲット総面積:0.48m2 基板:無アルカリガラス基板
第1室容量:200リットル
各第2室容量:2リットル
プラズマ生成装置高周波電源:13.56MHz、100W
第1、第2の室内圧:13Pa
各第2室水素導入量:100sccm
Hα/SiH* :1.0
プラズマ電子密度:1011cm-3
プラズマポテンシャル:30eV
基板温度:400℃
膜厚:約500Å
【0152】
このようにして、図10に模式的に示すガラス基板S上の薄膜Fが得られた。この薄膜の結晶性をレーザラマン分光分析により評価したところ、ラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが出現し、結晶性が確認された。
【0153】
〔3〕シリコン物体形成装置のさらに他の例(図6の装置C、図7の装置D、図8の装置E>
<図6の装置C>
図6に示すシリコン物体形成装置Cは、シリコン物体形成対象基体Sを支持する基体ホルダ3を設けた第1室1及び第1室に連通形成された第2室20を含んでいる。室1と室20間の開口は、必要に応じ、或いはそうした方が望ましい場合に、図示省略の開閉可能のシャッタで閉じることができる。基板ホルダ3は該ホルダ上に設置される基板Sを加熱するヒータ31を有している。また、第1室1には排気装置EXが接続されている。
【0154】
室20は、第1室1に向け開口している。室20には、水素ガス供給装置5(或いはさらにシラン系ガス供給装置7)が接続されている。室20内には、絶縁性部材202を介して室壁にシリコンスパッタターゲットT3が設けられている。シリコンスパッタターゲットT3は予め準備された、例えば市販のターゲットを後付けしたもの、或いは、ガス供給装置5、7から供給される水素ガス及びシラン系ガスを後述するプラズマ生成装置8にてプラズマ化し、該プラズマのもとで形成されるシリコン膜である。
【0155】
プラズマ生成装置8は、図示省略のマイクロ波発生装置からマイクロ波透過窓201を介して室20内へ照射されるマイクロ波と、室20の周囲に設けたマグネットMGとで、室20内に電子サイクロトロン共鳴放電を起こして室20内のガスをプラズマ化するものである。
【0156】
このシリコン物体形成装置Cによると、室20内に水素ガス供給装置5から導入した水素ガスをプラズマ生成装置8でプラズマ化させ、シリコンスパッタターゲットT3をケミカルスパッタリングして基板S上にシリコンドット或いは結晶性シリコン膜を形成できる。
【0157】
<図7の装置D>
図7に示すシリコン物体形成装置Dは、シリコン物体形成対象基体Sを支持する基体ホルダ3を設けた第1室1及び第1室内に設けた第2室200を含んでいる。
室1内の室200の下方には基板ホルダ3を設けてあり、ホルダ3は該ホルダ上に設置される基板Sを加熱するヒータ31を有している。また、第1室1には排気装置EXが接続されている。
【0158】
第2室200内には上下に対向する平行平板型電極91、92が設けられており、これらは絶縁性部材を介して室壁に保持されている。上側の電極91にはマッチングボックス43を介して高周波電源44が接続されており、下側の電極92は接地されている。
また、電極91にはシリコンスパッタターゲットT4が貼り付けられており、電極92にもシリコンスパッタターゲットT4’が貼り付けられている。
【0159】
第2室200内には、上側の室壁、絶縁性部材、電極91及びシリコンスパッタターゲットT4を貫通する導管により水素ガス供給装置5から水素ガスを供給できる。下側のシリコンスパッタターゲットT4’、電極92、絶縁性部材及び室壁には複数の貫通孔(粒子通過孔)200hが形成されており、これにより室200と室1は相互に連通している。
【0160】
装置Dによると、第2室200内にガス供給装置5から所定量の水素ガスを導入し、該ガスに電源44から電極91、92にて電力を印加してプラズマを発生させ、該プラズマでシリコンスパッタターゲットT4、T4’をケミカルスパッタングしてシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン薄膜)形成に寄与する粒子pを発生させ、これを貫通孔200hから室1内へ移行させ、基体S上にシリコン物体を形成することができる。
【0161】
<図8の装置E>
図8に示す装置Eは、ホローカソード放電方式を利用した装置であり、図1に示す装置Aにおいて、第2室2に代えて円筒形状の室2’(例えば外径16mm、肉厚1.5mm、長さ200mm程度)を採用したものである。そして、室2’の内壁に絶縁部材21’を介して円筒形放電電極41’を保持させ、さらに該電極の内面にシリコンスパッタターゲットT1’を貼り付け、電極41’にマッチングボックス43’を介して高周波電源44’を接続するとともに室2’を接地してプラズマ生成装置4’を構成したものである。その他の点は装置Aと同様であり、装置Aにおける部品等と同じ部品等には装置Aにおける符号と同じ符号を付してある。
【0162】
装置Eによると、各室2’内にガス供給装置5から所定量の水素ガスを導入し、該ガスに電源44’から電極41’にて電力を印加してホローカソード条件下にプラズマを発生させ、該プラズマでシリコンスパッタターゲットT1’をケミカルスパッタングしてシリコン物体(シリコンドットや結晶性シリコン薄膜)形成に寄与する粒子pを発生させ、これを室1内へ移行させ、基体S上にシリコン物体を形成することができる。
かかる室2’等は図示のように室1の左右一対だけではなく、より多く設けてもよい。
【0163】
以上説明した他、ガスプラズマ化のための放電方式としては、直流放電、パルス放電等も採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、例えば、単一電子デバイス等のための電子デバイス材料や発光材料などとして用いられる、シリコンドット、すなわち、微小サイズのシリコンのドット( 所謂シリコンナノ粒子) を提供することに利用できる。また、結晶性シリコン薄膜を利用したTFT(薄膜トランジスタ)スイッチ等の各種半導体部品、半導体装置等の形成のために該結晶性シリコン薄膜を形成する場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明に係るシリコン物体形成装置の1例を示す図である。
【図2】図2(A)は図1に示す装置におけるプラズマ発光分光計測装置例を示すブロック図であり、図2(B)は排気装置による排気量(室内圧)の制御等を行う回路例のブロック図である。
【図3】シリコン物体形成装置の他の例を示す図である。
【図4】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図5】図5(A)は図4に示す装置におけるプラズマ発光分光計測装置例を示すブロック図であり、図5(B)は排気装置による排気量(室内圧)の制御等を行う回路例のブロック図である。
【図6】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図7】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図8】シリコン物体形成装置のさらに他の例を示す図である。
【図9】シリコンドット形成基板の例を模式的に示す図である。
【図10】膜状に群れたシリコンドット形成基板の例を模式的に示す図である。
【図11】結晶性シリコン薄膜形成基板の例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0166】
A シリコン物体形成装置
1 第1室
2 第2室
21 絶縁性部材
3 基体ホルダ
31 ヒータ
4 プラズマ生成装置
41、42 電極
43 マッチングボックス
44 高周波電源
5 水素ガス供給装置
6 プラズマ発光分光計測装置
61、62 分光器
63 演算部
6C 制御部
7 シラン系ガス供給装置
T1、T2 シリコンスパッタターゲット
p シリコン物体形成寄与粒子
B シリコン物体形成装置
40 プラズマ生成装置
400 高周波アンテナ
403 マッチングボックス
404 高周波電源
60 発光分光計測装置
601、602、603 分光器
603 演算部
60C 制御部
C シリコン物体形成装置
20 第2室
8 プラズマ生成装置
201 マイクロ波透過窓
202 絶縁性部材
MG マグネット
T3 シリコンスパッタターゲット
D シリコン物体形成装置
200 第2室
200h 粒子通過孔
91、92 電極
T4、T4’シリコンスパッタターゲット
E シリコン物体形成装置
2’ プラズマ発生室(第1室の1例)
21’ 電気絶縁性部材
4’ プラズマ生成装置
41’ 電極
43’ マッチングボックス
44’ 高周波電源
T1’ シリコンスパッタターゲット
S シリコン物体形成対象基体
SiD シリコンドット
F シリコン膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン物体形成対象基体を第1室に配置する工程と、
前記第1室に連通形成された第2室に1又は2以上のシリコンスパッタターゲットを設ける工程と、
前記第2室に水素ガスを導入し、該導入された水素ガスからスパッタリング用プラズマ生成装置にてケミカルスパッタリング用プラズマを生成させる工程と、
前記第2室に生成させた前記ケミカルスパッタリング用プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を発生させ、該第2室から前記第1室へ到来する該シリコン物体形成寄与粒子により該第1室内に配置された前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成する工程と
を含むことを特徴とするシリコン物体形成方法。
【請求項2】
前記シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つは、前記第2室に水素ガス及びシラン系ガスを導入し、該導入された水素ガス及びシラン系ガスをシリコン膜形成用プラズマ生成装置にてプラズマ化し、該プラズマにて該第2室の内壁に形成したシリコン膜からなるシリコンスパッタターゲットである請求項1記載のシリコン物体形成方法。
【請求項3】
前記シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つは、予め準備されたシリコンスパッタターゲットを前記第2室内に後付け設置したものである請求項1記載のシリコン物体形成方法。
【請求項4】
前記シリコン膜形成用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入される前記シリコン膜形成用の水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項2記載のシリコン物体形成方法。
【請求項5】
前記スパッタリング用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入されるケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項1から4のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項6】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、電子密度が1010cm-3〜1012cm-3のプラズマである請求項1から5のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項7】
前記シリコン物体はシリコンドット又は結晶性シリコン薄膜である請求項1から6のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項8】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下のプラズマであり、前記シリコン物体はシリコンドットである請求項1から6のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項9】
前記発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が3.0以下である請求項8記載のシリコン物体形成方法。
【請求項10】
前記シリコンドット形成における前記第1室及び第2室内圧力は0.1Pa〜10.0Paである請求項8又は9記載のシリコン物体形成方法。
【請求項11】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3のプラズマであり、前記シリコン物体は結晶性シリコン薄膜である請求項1から6のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項12】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマのポテンシャルは15eV〜45eVである請求項11記載のシリコン物体形成方法。
【請求項13】
前記結晶性シリコン薄膜形成における前記第1室及び第2室内圧力は0.6Pa〜13.4Paである請求項11又は12記載のシリコン物体形成方法。
【請求項14】
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に設けられるシリコンスパッタターゲットと、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記水素ガス供給装置から前記第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室において生成させる前記ケミカルスパッタリング用プラズマによる前記シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できることを特徴とするシリコン物体形成装置。
【請求項15】
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記第2室にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
前記第2室に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスから該第2室の内壁にシリコン膜を形成するためのプラズマを生成させるシリコン膜形成用プラズマ生成装置と、
前記第2室内壁へのシリコン膜形成後に前記水素ガス供給装置から該第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室の内壁に形成される前記シリコン膜をシリコンスパッタターゲットとして該ターゲットを該第2室に生成されるケミカルスパッタリング用プラズマにてケミカルスパッタリングさせ、該ケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できることを特徴とするシリコン物体形成装置。
【請求項16】
前記シリコン膜形成用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入される前記シリコン膜形成用の水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項15記載のシリコン物体形成装置。
【請求項17】
前記スパッタリング用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入される前記ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項14、15又は16記載のシリコン物体形成装置。
【請求項18】
前記シリコン物体はシリコンドット又は結晶性シリコン薄膜である請求項14から17のいずれかに記載のシリコン物体形成装置。
【請求項19】
前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置を含んでおり、前記シリコン物体としてシリコンドットを形成できる請求項14から17のいずれかに記載のシリコン物体形成装置。
【請求項20】
前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記第2室内の前記ケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有している請求項19記載のシリコン物体形成装置。
【請求項21】
前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との発光強度比(Hα/SiH* )を求めるプラズマ発光分光計測装置をさらに含んでおり、前記シリコン物体として結晶性シリコン薄膜を形成できる請求項14から17のいずれかに記載のシリコン物体形成装置。
【請求項22】
前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比(Hα/SiH* )と0.3以上1.3以下の範囲から定められた基準値とを比較して、前記第2室内でのケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比(Hα/SiH* )が該基準値に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有している請求項21記載のシリコン物体形成装置。
【請求項1】
シリコン物体形成対象基体を第1室に配置する工程と、
前記第1室に連通形成された第2室に1又は2以上のシリコンスパッタターゲットを設ける工程と、
前記第2室に水素ガスを導入し、該導入された水素ガスからスパッタリング用プラズマ生成装置にてケミカルスパッタリング用プラズマを生成させる工程と、
前記第2室に生成させた前記ケミカルスパッタリング用プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをケミカルスパッタリングしてシリコン物体形成寄与粒子を発生させ、該第2室から前記第1室へ到来する該シリコン物体形成寄与粒子により該第1室内に配置された前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成する工程と
を含むことを特徴とするシリコン物体形成方法。
【請求項2】
前記シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つは、前記第2室に水素ガス及びシラン系ガスを導入し、該導入された水素ガス及びシラン系ガスをシリコン膜形成用プラズマ生成装置にてプラズマ化し、該プラズマにて該第2室の内壁に形成したシリコン膜からなるシリコンスパッタターゲットである請求項1記載のシリコン物体形成方法。
【請求項3】
前記シリコンスパッタターゲットのうち少なくとも一つは、予め準備されたシリコンスパッタターゲットを前記第2室内に後付け設置したものである請求項1記載のシリコン物体形成方法。
【請求項4】
前記シリコン膜形成用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入される前記シリコン膜形成用の水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項2記載のシリコン物体形成方法。
【請求項5】
前記スパッタリング用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入されるケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項1から4のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項6】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、電子密度が1010cm-3〜1012cm-3のプラズマである請求項1から5のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項7】
前記シリコン物体はシリコンドット又は結晶性シリコン薄膜である請求項1から6のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項8】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、プラズマ発光において波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕が10.0以下のプラズマであり、前記シリコン物体はシリコンドットである請求項1から6のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項9】
前記発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が3.0以下である請求項8記載のシリコン物体形成方法。
【請求項10】
前記シリコンドット形成における前記第1室及び第2室内圧力は0.1Pa〜10.0Paである請求項8又は9記載のシリコン物体形成方法。
【請求項11】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマは、プラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との比(Hα/SiH* )が0.3〜1.3のプラズマであり、前記シリコン物体は結晶性シリコン薄膜である請求項1から6のいずれかに記載のシリコン物体形成方法。
【請求項12】
前記ケミカルスパッタリング用のプラズマのポテンシャルは15eV〜45eVである請求項11記載のシリコン物体形成方法。
【請求項13】
前記結晶性シリコン薄膜形成における前記第1室及び第2室内圧力は0.6Pa〜13.4Paである請求項11又は12記載のシリコン物体形成方法。
【請求項14】
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に設けられるシリコンスパッタターゲットと、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記水素ガス供給装置から前記第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室において生成させる前記ケミカルスパッタリング用プラズマによる前記シリコンスパッタターゲットのケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できることを特徴とするシリコン物体形成装置。
【請求項15】
シリコン物体形成対象基体を支持する基体ホルダを有する第1室と、
前記第1室に連通形成された第2室と、
前記第1室及び第2室から排気する排気装置と、
前記第2室に水素ガスを供給する水素ガス供給装置と、
前記第2室にシラン系ガスを供給するシラン系ガス供給装置と、
前記第2室に前記水素ガス供給装置から供給される水素ガス及び前記シラン系ガス供給装置から供給されるシラン系ガスから該第2室の内壁にシリコン膜を形成するためのプラズマを生成させるシリコン膜形成用プラズマ生成装置と、
前記第2室内壁へのシリコン膜形成後に前記水素ガス供給装置から該第2室に供給される水素ガスからケミカルスパッタリング用プラズマを生成させるスパッタリング用プラズマ生成装置とを備え、
前記第2室の内壁に形成される前記シリコン膜をシリコンスパッタターゲットとして該ターゲットを該第2室に生成されるケミカルスパッタリング用プラズマにてケミカルスパッタリングさせ、該ケミカルスパッタリングにより形成されて前記第1室へ到来するシリコン物体形成寄与粒子により前記基体ホルダに支持される前記シリコン物体形成対象基体上にシリコン物体を形成できることを特徴とするシリコン物体形成装置。
【請求項16】
前記シリコン膜形成用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入される前記シリコン膜形成用の水素ガス及びシラン系ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項15記載のシリコン物体形成装置。
【請求項17】
前記スパッタリング用プラズマ生成装置は、前記第2室に導入される前記ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための水素ガスにプラズマ化用電力を印加するための放電方式として、高周波放電、マイクロ波放電、直流放電、パルス放電及びホローカソード放電のうちから選ばれた放電方式を用いるプラズマ生成装置である請求項14、15又は16記載のシリコン物体形成装置。
【請求項18】
前記シリコン物体はシリコンドット又は結晶性シリコン薄膜である請求項14から17のいずれかに記載のシリコン物体形成装置。
【請求項19】
前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長288nmにおけるシリコン原子の発光強度Si(288nm) と波長484nmにおける水素原子の発光強度Hβとの比〔Si(288nm) /Hβ〕を求めるプラズマ発光分光計測装置を含んでおり、前記シリコン物体としてシリコンドットを形成できる請求項14から17のいずれかに記載のシリコン物体形成装置。
【請求項20】
前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕と10.0以下の範囲から定めた基準発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕とを比較して、前記第2室内の前記ケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比〔Si(288nm) /Hβ〕が該基準発光強度比に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有している請求項19記載のシリコン物体形成装置。
【請求項21】
前記第2室内での前記ケミカルスパッタリング用プラズマのプラズマ発光における波長656nmでの水素原子ラジカルの発光スペクトル強度Hαと波長414nmでのシランラジカルの発光スペクトル強度SiH* との発光強度比(Hα/SiH* )を求めるプラズマ発光分光計測装置をさらに含んでおり、前記シリコン物体として結晶性シリコン薄膜を形成できる請求項14から17のいずれかに記載のシリコン物体形成装置。
【請求項22】
前記プラズマ発光分光計測装置で求められる発光強度比(Hα/SiH* )と0.3以上1.3以下の範囲から定められた基準値とを比較して、前記第2室内でのケミカルスパッタリング用プラズマにおける発光強度比(Hα/SiH* )が該基準値に向かうように、前記スパッタリング用プラズマ生成装置、該ケミカルスパッタリング用プラズマ生成のための、前記水素ガス供給装置から前記第2室内へ供給される水素ガスの供給量及び前記排気装置による排気量のうち少なくとも一つを制御する制御部をさらに有している請求項21記載のシリコン物体形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−88317(P2007−88317A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277079(P2005−277079)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
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