説明

シリコーンアクリレートおよびポリエステルワックスを含む化粧料組成物

本発明は、生理学的に許容される媒体中に、(a)40℃と90℃の間の融点を有し、また結晶化度が95%未満である少なくとも1種のポリエステルワックスを、組成物の全重量に対して0.6から20重量%、および(b)少なくとも1種のアクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーを、組成物の全重量に対して1から25%、含む、スキンメイクアップまたはスキンケアのための化粧料組成物に関する。本発明はまた、前記組成物を皮膚に局所適用することを含む、スキンケアまたはスキンメイクアップのための化粧方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキンケアまたはスキンメイクアップを意図する化粧料組成物、例えば、ファンデーション、リップスティックまたはアイシャドウに関する。本発明はまた、この組成物を皮膚に局所適用することを含む、スキンケアまたはスキンメイクアップのための化粧方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
Dow Corningは、アクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーなどの、シリコーンデンドリマーがグラフトされた新規アクリレートコポリマーを提案している。Dow Corningは、満足のいく光沢レベルを得ると同時に、色の保持、移行(transfer)の無さおよび耐水性を向上させるために、それを、リップスティック、マスカラ、マニキュアおよびファンデーションに含有させることを提案した(EP0963751)。このシリコーンアクリレートコポリマーは、付け易いという感触および心地良さが持続するという感触を低下させることなく、皮膚での組成物の保持レベルを向上させることを可能にする。しかし、その付け方に適合するコンシステンシーを化粧料組成物に付与するためには、それを、構造付与剤と組み合わせることが必要である。
【0003】
化粧品において知られている構造付与剤の中には、ワックス、ペースト状コンパウンドおよびゲル化剤がある。構造を付与するために組成物にワックスを含有させることによって組成物の光沢を低下させることは、化粧品を配合する当業者に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、前記シリコーンアクリレートコポリマーを含む組成物を構造化して良好な保持力のフィルム、すなわち、1)付けることができ、且つ、2)コポリマーによってもたらされる弾性の利点を保持できないほど硬すぎることなく、組成物が最初に皮膚に載った部分から離れて移動しないための十分なコンシステンシーを有するフィルムが得られることを見出した。
【0005】
本願出願人は、特定のポリエステルワックスの添加によって、シリコーンアクリレートコポリマーを含む組成物に、柔軟性、弾性、および心地良さ(引っ張られる感触がない)を付与できることを見出した。それは、浮く(fluffing)というリスクを最小限にすることも可能にする。本発明において用いられるポリエステルワックスは、有利には、シリコーンアクリレートと相溶性があり、特定の結晶化度を有するが、組成物は安定である(流体化粧料組成物の場合に相分離しない)。皮膚における組成物の保持、より具体的には、その非移行性に影響を及ぼすことなく、該組成物は、驚くべきことに、良好な光沢レベルを保持することを可能にする。
ポリエステルワックスは、特定の分岐状炭化水素を含むオイル状メイクアップ製品のためのゲル化剤として、特に、出願US 2006/0008489にすでに記載されているが、出願人の知る限りでは、これまでにシリコーンアクリレートと組み合わせて用いられたことはない。
【0006】
したがって、本発明の一つの主題は、生理学的に許容される媒体中に、
(a)40℃と90℃の間の融点、および95%未満の結晶化度を有する少なくとも1種のポリエステルワックス、および
(b)少なくとも1種のアクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマー
を含む、スキンメイクアップまたはスキンケアのための化粧料組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の実施形態によれば、前記組成物は、
(a)40℃と90℃の間の融点を有し、また結晶化度が95%未満である少なくとも1種のポリエステルワックスを、前記組成物の全重量に対して0.6から20重量%、および
(b)少なくとも1種のアクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーを、前記組成物の全重量に対して1から25%
含む。
【0008】
第2の実施形態によれば、前記組成物は、
−その平均弾性係数G’が、0.1Paと120000Paの間であり、また
−その平均粘性係数G”が、30Paと30000Paの間である、
レオロジー特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
したがって、本発明の1つの主題は、生理学的に許容される媒体中に、
(a)40℃と90℃の間の融点、および95%未満の結晶化度を有する少なくとも1種のポリエステルワックス、および
(b)少なくとも1種のアクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマー
を含む、スキンメイクアップまたはスキンケアのための化粧料組成物であり、
前記ワックスおよび前記コポリマーは、前記組成物が、雰囲気大気中において20℃で、
−0.1Paと120000Paの間の平均弾性係数G’、および
−30Paと30000Paの間の平均粘性係数G”
を有するような量で存在する。
【0010】
レオロジー的評価
本発明による組成物の粘弾性挙動は、雰囲気大気中において20℃で、GEMINIレオメータで評価でき、この装置は、1000μmの間隙を有するアクリルプレート−プレート構成を装備して、設定歪(1%)で、動的モードで用いられる。1Hzの振動で、0.01Paから1000Paの応力掃引σで、上側のプレートを、その軸の周りの振動運動によって駆動した。
【0011】
本発明の意味における平均係数G’は、曲線G’(σ)の直線領域における弾性係数である。本発明の組成物について測定された係数G’は、好ましくは0.1Paと120000Paの間、好ましくは100Paと50000Paの間、より好ましくは700Paと35000Paの間である。本発明の意味における平均係数G”は、曲線G”(σ)の直線領域における粘性係数である。本発明の組成物について測定された係数G”は、好ましくは30Paと30000Paの間、好ましくは100Paと10000Paの間、より好ましくは300Paと5000Paの間である。
【0012】
アクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマー
アクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーは、ビニル骨格にグラフトされたカルボシロキサンデンドリマー構造を含む。表現「カルボシロキサンデンドリマー構造」は、主鎖から始まり放射状の向きに高い規則性で分岐した高分子量の基を備える分岐状構造を意味する。これらの構造は、日本特許出願公開9−171154号に記載されている。
【0013】
アクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーは、次の一般式によって表されるカルボシロキサンデンドリマー:
【0014】
【化1】


を含むビニルポリマーとして、より一般的に定義され得る。式中、Rは、アリール基、または1から10個の炭素原子を含むアルキル基を表し、Xは、次の式によって表されるシリルアルキル基を表す。
【0015】
【化2】


式中、
は、上で定義されており、
は、2から10個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、
は、1から10個の炭素原子を含むアルキル基を表し;
i+1は、水素原子、1から10個の炭素原子を含むアルキル基、アリール、またはi=i+1として上で定義されるシリルアルキル基を表し;
iは、1から10の整数であり、これは前記シリルアルキル基の繰返しを表し;
Yは、(メタ)アクリル基または(メタ)アクリルアミド基であり得る有機基を表し、これは、好ましくは、次の式:
【0016】
【化3】


および
【0017】
【化4】


によって表され、式中、Rは、水素原子またはアルキル基、例えばメチル基を表し、Rは、1から10個の炭素原子を含むアルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはブチレン基、またはスチリル基を含む有機基を表し、この基は次の式:
【0018】
【化5】


によって表され、式中、Rは、水素原子またはアルキル基、例えばメチル基を表し、Rは、1から10個の炭素原子を含むアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルもしくはブチル基を表し、Rは、1から10個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、bは、0と4の間の整数であり、また、cは、0または1であり、cが0である場合、−(R−は、結合を表す。
【0019】
は、アリール基、または1から10個の炭素原子を含むアルキル基を表し、ここで、このアルキル基は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチル、シクロペンチルもしくはシクロヘキシル基によって代表され、この中で、メチル基が最も好ましい。
【0020】
カルボシロキサンデンドリマー構造を含むコポリマーは、
(A)0から99.9重量部のビニルモノマー、および
(B)次の一般式の基:
【0021】
【化6】


(ここで、Y、XおよびRは前記のとおりである)
を含む、100から0.1重量部のカルボシロキサンデンドリマー
の重合生成物であり得る。
【0022】
ビニルモノマーは、次のモノマーから選択され得る:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、メタクリル酸、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ビニルピロリドン、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、または少なくとも1つのカルボン酸基を含む他のビニルモノマー。
【0023】
カルボシロキサンデンドリマーは、特願平9−171154に記載の製造方法に従って製造され得る。
【0024】
前記コポリマーは、成分(A)と(B)との共重合によって、または成分(B)それ自体の重合によって得ることができる。重合は、50℃から150℃の範囲の温度で、ラジカル開始剤の存在下で、3から20時間にわたって、溶液中で実施され得る。この目的に適する溶媒は、ヘキサン、トルエンまたは酢酸エチルである。
【0025】
前記コポリマーは、好ましくは、線状もしくは環状のシリコーンオイル(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン)中、または有機オイル(液体パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン)中に供給される。
【0026】
一実施形態によれば、前記コポリマーは、特許出願EP 0 963 751号の実施例に、または、特許出願WO 03/045337号の実施例に記載のポリマーの1つである。
【0027】
本発明に関連して使用できるコポリマーは、DOW CORNING FA 4002 ID、またはDOW CORNING FA 4001 CMの参照名で市販されており、これらは、それぞれ、INCI名:
−イソドデカン&(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー、および
−シクロペンタシロキサン & (アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー、
の成分に対応する。
【0028】
有利には、コポリマーは、組成物の全重量に対して、3重量%から85重量%の範囲、好ましくは5重量%から25重量%の範囲の含量で、それがグロスである場合、好ましくは5重量%から10重量%の範囲の含量で、または、それがアイシャドウである場合、10から15重量%の範囲の含量で存在する。
【0029】
ポリエステルワックス
本発明による組成物は、少なくとも1種のポリエステルワックスを含む。用語「ワックス」は、本発明の趣旨の範囲内で、可逆的な固体/液体の状態変化をし、100℃までの範囲であり得る25℃以上の融点を有し、固体状態で異方性結晶組織を有する、親油性化合物を意味すると理解されている。有利には、ポリエステルワックスは、35℃と95℃の間、特に、40℃と90℃の間の融点を有する。本発明の趣旨の範囲内で、融点は、ISO標準11357−3(1999年)に記載の熱分析(DSC)で観察される最大吸熱ピークの温度に相当する。ワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)、例えば、MettlerによってDSC822の名称で販売されている(STAR SW 8.10測定処理ソフトウェアを装備した)熱量計を用いて測定できる。測定プロトコルは、以下のとおりである。
ルツボに入れた10から15mgのワックス試料に、5℃/分の加熱速度で0℃から100℃まで上げる第1昇温を行い、100℃に5分間保ち、次いで、5℃/分の冷却速度で100℃から0℃まで冷却し、次に、0℃に5分間保ち、最後に、5℃/分の加熱速度で0℃から100℃まで上げる第2昇温を行う。昇温の間、同じ温度プログラムに従うワックス試料と基準(空のルツボ)との間の熱流(単位時間当たりに吸収される熱)の差を測定する。ポリエステルワックスの25℃での結晶化度は、200J/gに基づいて、25℃の温度で存在する結晶の全量の割合に等しい。
【0030】
本発明に関連して用いられるポリエステルワックスの結晶化度は、好ましくは、45%を超え、より好ましくは60%を超える。結晶化度は、好ましくは、95%未満、より好ましくは90%未満、さらには75%未満、例えば、60と75%の間である。
【0031】
好ましくは、ポリエステルワックスは、少なくとも1種のポリオールと、8から30個の炭素原子を有する、少なくとも1種の飽和または不飽和の線状または分岐状の脂肪族モノカルボン酸とのポリエステルである。前記酸は、好ましくは12から30個の炭素原子、より好ましくは16から20個の炭素原子を含み、それは、任意選択で、ヒドロキシル化されていてもよい。この脂肪族モノカルボン酸は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、およびベヘン酸、ならびにこれらの混合物から選択される。好ましくは、ポリエステルワックスは、少なくとも1種のポリオールと、8から30個の炭素原子、好ましくは12から30個の炭素原子、より好ましくは16から20個の炭素原子を互いに独立に有する、少なくとも2種、またはさらには少なくとも3種の、同じかまたは異なる、飽和または不飽和の線状または分岐状の脂肪族モノカルボン酸とのポリエステルである。ポリオールは、好ましくは、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つのヒドロキシル基を含む。ポリオールは、グリセロールまたはグリセロール縮合物から選択され得る。ポリオールはまた、単糖、または1から10個の糖単位、好ましくは1から4個、より好ましくは1もしくは2個の糖単位を含む多糖からも選択され得る。ポリオールは、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、グルコース、およびスクロースから選択され得る。
【0032】
本発明の一変形形態によれば、ポリエステルワックスは、ステアリン酸と、酢酸とのスクロースエステル、好ましくは、トリ酢酸テトラステアリン酸スクロースのINCI名によって表されるもの(特に、SISTERNAによって市場に出され、SISTERNA A 10E−C(登録商標)の参照名で販売されているもの)などのスクロースエステルである。
【0033】
一実施形態によれば、ポリエステルワックスは、グリセロールと、8から30個、好ましくは12から30個の炭素原子、より好ましくは16から20個の炭素原子を有する、飽和または不飽和の線状または分岐状の脂肪酸またはヒドロキシ酸とのエステルである。
グリセリルエステルは、好ましくは、ステアリン酸またはイソステアリン酸のエステルから選択される。ポリエステルは、前記脂肪族モノカルボン酸、グリセロール、および12から36個の炭素原子を有する線状または分岐状の二酸の反応によって得ることもできる。二酸は、好ましくは、エイコサ二酸、エチルオクタデカン二酸、およびドデカン二酸、ならびにこれらの混合物から選択される。一実施形態によれば、ポリエステルワックスは、グリセロール、ベヘン酸およびエイコサ二酸のエステルから選択される。別の実施形態によれば、ポリエステルワックスは、グリセロール、ベヘン酸、イソステアリン酸、およびエイコサ二酸のエステルから選択される。
【0034】
ポリエステルワックスは、特に、(i)8から30個、好ましくは12から22個の炭素原子を有する、飽和または不飽和の線状または分岐状の脂肪酸またはヒドロキシ酸、(ii)12から36個、好ましくは12から20個の炭素原子を有する、線状または分岐状の二酸、および(iii)グリセロール、スクロースまたはグリセリー縮合物から得られるエステルであることができる。本発明に用いられるのに好ましいこのタイプのグリセリルエステルの1つは、エイコサン二酸と、ベヘン酸によってエステル化されたグリセロールとのジエステルである。この化合物は、式:RO−CH−CH(OR)−CH−O−CO−(CH18−CO−O−CH−CH(OR)−CH−OR(ここで、R基は、少なくとも1つのR基がH以外であるという条件で、独立に、−CO−(CH20−CH基またはHを表す)のエステル、あるいはこのようなエステルの混合物である。それは、特に、NOMCORT(登録商標)HK−Gの商用名でNISSHIN OILLIOから入手可能である。本発明に用いられるのに好ましいこのタイプのグリセリルエステルの1つは、エイコサン二酸と、ベヘン酸およびイソステアリン酸によってエステル化されたグリセロールとのジエステルである。この化合物は、式:RO−CH−CH(OR)−CH−O−CO−(CH18−CO−O−CH−CH(OR)−CH−OR(ここで、R基は、少なくとも1つのR基がH以外であるという条件で、独立に、−CO−(CH20−CH基、−CO−C1735基またはHを表す)のエステル、あるいはこのようなエステルの混合物である。それは、特に、NOMCORT(登録商標)SGの商用名でNISSHIN OILLIOから入手可能である。
【0035】
本発明に関連して用いることができるミツロウの誘導体は、シリコーン誘導体、例えば、Koster Keunenによって製造される参照名Siliconyl Beeswax(登録商標)である。このポリエステルは、ミツロウのエステル化によって得られ、INCI名:ビス−PEG−12ジメチコンミツロウを有する。
【0036】
ポリエステルワックスとして、i)イソステアリン酸の二酸ダイマーと、ii)脂肪族アルコールとの反応によって得られるポリエステルを用いることもまた可能である。このようなワックスは、特に、KOSTER KEUNENによって、KESTER WAX K 82 P(登録商標)、およびKESTER WAX K 80 P(登録商標)の名称で販売されている。例えば、(ヒドロキシステアロイルオキシ)ステアリン酸アルキル、特に、次の式(I)の12−(12−ヒドロキシステアロイルオキシ)ステアリン酸(C20〜C40)アルキル:
【0037】
【化7】


を挙げることができ、式中、nは、16から40の範囲の整数である。
【0038】
ポリエステルワックスは、組成物の全重量に対して、0.1から15重量%、好ましくは0.6から15重量%、より好ましくは1から10重量%、より一層好ましくは1.5から8重量%、さらにより好ましくは2から8重量%を占め得る。本組成物は、有利には、全量が10%以下である(1種または複数の)ワックスを含む。
【0039】
ポリエステルワックスは、好ましくは、次の製品から選択される(商用名は括弧内に示されている):
−ミツロウ誘導体、例えば、INCI名が合成ミツロウ(Kester wax K82P(登録商標))、およびBis−PEG−12ジメチコンミツロウ(Siliconyl beeswax(登録商標))のワックス、
−INCI名がトリ酢酸テトラステアリン酸スクロースの製品(Sisterna A10 CE(登録商標))、
−INCI名がトリベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸グリセリル(Nomcort SG(登録商標))、およびトリベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(Nomcort HKG(登録商標))
−ならびにこれらの混合物。
【0040】
次の表は、本発明により使用され得る適切なワックスの技術的特徴を例示する。
【0041】
【表1】

【0042】
アクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーとポリエステルワックスとの重量比は、有利には、10/1と1/1の間、好ましくは5/1と1/1の間である。
【0043】
揮発性オイル
本発明の組成物は、有利には、少なくとも1種の揮発性オイルを含む。本発明の趣旨の範囲内で、用語「オイル」は、雰囲気温度(25℃)で液体であり、また、それが25℃で水に少なくとも1重量%の量で導入された時に、水に全く溶けないか、または、水に導入されたオイルの重量に対して10重量%未満まで溶ける化合物を意味すると理解されている。
【0044】
雰囲気温度で揮発性である化粧料用オイルは、特に、雰囲気温度および大気圧で測定して、10−3mmHgから300mmHg(0.266Paから40 000Pa)、好ましくは、0.02mmHgから300mmHg(2.66Paから40 000Pa)、より一層良好には、0.1mmHgから90mmHg(13Paから12 000Pa)の範囲の蒸気圧を有する。揮発性オイルは、これらを実際に用い易くすることを考慮して、引火点を有さないオイル、40℃から100℃の範囲の引火点を有するオイル、およびこれらの混合物から選択され得る。さらに、有利には、それらは、大気圧で、220℃未満、より一層良好には210℃未満、特に110から210℃の範囲の沸点を有する。好ましくは、これらの揮発性オイルは、少なくとも7個の炭素原子を有する1価アルコールではない。本発明において用いることができる揮発性オイルとして、雰囲気温度で8cSt未満の粘度を有し、また特に2から7個のケイ素原子を有する、線状または環状のシリコーンオイルを挙げることができ、これらのシリコーンは、1から10個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコキシ基を任意選択で含む。本発明において用いることができる揮発性シリコーンオイルとして、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、およびこれらの混合物を挙げることができる。本発明において用いることができる別の揮発性オイルとして、8から16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素系オイルおよびこれらの混合物、特に、C〜C16イソアルカン(イソパラフィンとも呼ばれる)などの分岐状C〜C16アルカン、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、および、例えば、Isopar(登録商標)またはPermetyl(登録商標)の商用名で販売されているオイル、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、イソドデカン(Permetyls 99A)、C〜C16イソパラフィン、例えば、Isopar L、E、GまたはH、これらの混合物が、デカメチルテトラシロキサンまたはシクロペンタシロキサンと任意選択で組み合わせて用いられる。これらの揮発性オイルは、特に、組成物の全重量の0.1から80%、より一層良好には、10から75%、好ましくは、組成物の全重量の20と50%の間、例えば、30から40%、好ましくは、組成物の全重量の約35%を占める。
【0045】
非揮発性オイル
本発明による組成物は、組成物の全重量に対して、1から60重量%、特に5から20%の少なくとも1種の非揮発性オイルを含み得る。
【0046】
本発明による組成物に用いることができる前記オイルは、炭化水素系オイル;合成(ポリ)エステルおよび(ポリ)エーテル、特に、有利には分岐状である、C〜C20の酸とC〜C20のアルコールとの(ポリ)エステル、例えば、イソノナン酸イソノニル;植物オイル;分岐状および/または不飽和の脂肪酸;分岐状および/または不飽和の脂肪アルコール、例えばオクチルドデカノール;シリコーンオイル、例えば、任意選択でフェニル化された、線状もしくは環状のポリジメチルシロキサン;フルオロシリコーンオイル;フッ素化オイル ;ならびにこれらの混合物から選択され得る。
【0047】
特に650から10 000g/mol、好ましくは750から7500g/molの範囲のモル質量を有する少なくとも1種のオイルを、本発明の組成物に組み入れることが好ましい。このようなオイルは、光沢のあるオイル(shiny oil)として適切であり得る。650から10 000g/molの範囲のモル質量を有するオイルは、次のものから選択され得る:
−ポリブチレン、例えば、AMOCOによって販売または製造される、INDOPOL H−100(登録商標)(モル質量すなわちMM=965g/mol)、INDOPOL H−300(登録商標)(MM=1340g/mol)、INDOPOL H−1500(登録商標)(MM=2160g/mol)、水添ポリイソブチレン、例えば、AMOCOによって販売または製造される、PANALANE H−300E(登録商標)(MM=1340g/mol)、SYNTEALによって販売または製造される、VISEAL 20000(登録商標)(MM=6000g/mol)、WITCOによって販売または製造される、REWOPAL PIB 1000(登録商標)(MM=1000g/mol)、
−ポリデセンおよび水添ポリデセン、例えば:MOBIL CHEMICALSによって販売または製造される、PURESYN 10(登録商標)(MM=723g/mol)、PURESYN 150(登録商標)(MM=9200g/mol)、
−ビニルピロリドンコポリマー、例えば:ビニルピロリドン/1−ヘキサデセンのコポリマー、ISPによって販売または製造される、ANTARON V−216(登録商標)(MM=7300g/mol)、
−フェニル化シリコーンなどのシリコーンオイル、例えば、WACKERによるBELSIL PDM 1000(登録商標)(MM=9000g/mol)、フェニル化シリコーンオイルなどのINCI名「フェニルトリメチコン」によって特定されるもの(この一例は、RHODIAからMIRASIL(登録商標)PTMの商用名で入手可能なシリコーンからなる)、INCI名「フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸(phenylpropyldimethylsiloxysilicate)」によって特定されるもの(この一例は、GENERAL ELECTRICからSILSHINE(登録商標)151の商用名で入手可能なシリコーンからなる、および、INCI名「トリメチルペンタフェニルトリシロキサン」によって特定されるもの(この一例は、DOW CORNINGからDC PH(登録商標)1555HRIの商用名で入手可能なシリコーンからなる)、
−ならびにこれらの混合物。
【0048】
光沢のあるオイルとして、パーフルオロノニルジメチコンのINCI名によって特定されるフルオロシリコーンもまた挙げることができ、それらの一例は、PHOENIXからPECOSIL(登録商標)FS(FSU、FSL...)の商用名で入手できるシリコーンからなり、別の例は、BIOSIL TECHNOLOGIESからBiosil Basics(登録商標)(Fluorosil LF、14...)の商用名で入手できるシリコーンからなる。
【0049】
光沢のあるオイルの他の例は、天然オイル、特に、ひまし油;脂肪酸および/または脂肪アルコール(これらの脂肪鎖は6から20個の炭素原子を含む)のモノエステルおよびポリエステル、特に、ヒドロキシ酸と脂肪アルコールとのモノエステルおよびポリエステル、例えば、リンゴ酸ジイソステアリル、安息香酸と脂肪アルコールとのエステル、例えば、安息香酸C12〜C15アルキル、ポリオールのポリエステル、特に、(ジ)ペンタエリスリチルのポリエステル、例えば、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ペンタイソノナン酸ジペンタエリスリチル、およびジペンタエリスリチルのC〜Cエステル、またはポリグリセロールのポリエステル、例えば、INCI名「ビス−ジグリセリルポリアシルアジペート−1」で知られており、SASOLによってSOFTISAN(登録商標)645の商用名で販売されているもの、またはトリメチロールプロパンのポリエステル、例えば、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(これは特に、KOKYU ALCOHOL KOGYOによってKAK(登録商標)TTOの商用名で販売されている)、またはプロピレングリコールのポリエステル、例えば、ジ安息香酸プロピレングリコール(これは特に、INOLEXによってLEXFEEL SHINE(登録商標)の商用名で販売されている)、ならびにステアロイルステアリン酸イソセチル;ならびに、水添ひまし油のポリエステル、例えば、KOKYU ALCOHOL KOGYOによってRISOCAST(登録商標)DA−HおよびRISOCAST(登録商標)DA−Lの商用名で販売されているエステルである。
【0050】
特定の実施形態によれば、本組成物は、非揮発性オイルとして、ポリブチレンまたはリンゴ酸ジイソステアリルを含む。
【0051】
有利には、本発明による組成物は、特に650から10000g/molの範囲のモル質量を有する少なくとも1種のオイルを、組成物の全重量に対して、5から50重量%、特に10から40重量%、好ましくは15から35重量%含む。
【0052】
ゲル化剤
本発明による組成物は、有利には、ゲル化剤を含む。使用され得るゲル化剤の中には、スチレンと、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエンおよびイソプレン(この列挙は限定的ではない)から選択され得る少なくとも1種のオレフィンとを含むブロックコポリマーがある。したがって、それは、SHELLによってKRATON(登録商標)の商用名で販売されているコポリマーであり得るが、これは、特に、エチレン/プロピレン/スチレン、またはブチレン/エチレン/スチレンのコポリマー、またはこれらの混合物であり得る。
【0053】
通常、これらのコポリマーは、例えば、揮発性または非揮発性の炭化水素、例えば、ミネラルオイル、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、イソヘキサデカンもしくはイソドデカン;または脂肪酸エステル、例えば、パルミチン酸イソプロピルもしくはイソノナン酸イソノニル;または安息香酸エステルから選択される少なくとも1種のオイル中の分散体として販売されている。本発明によれば、スチレン/オレフィンのコポリマーは、水添ポリイソブテン中に含まれることが好ましい。
【0054】
本発明により使用され得るゲル化剤の別の例は、JAN DEKKERによって販売されているDEKAGEL(登録商標)コンパウンド、特に、DEKAGEL(登録商標)HV2004からなる。
【0055】
本発明において用いられる好ましいゲル化剤は、PENRECOによって、VERSAGEL(登録商標)M、ME、ML、MP、MC、MD、およびMNの商用名で販売されているものである。ME商品系列からのものが、特に好ましい。これらのコポリマーは、有利には、50 000から260 000の範囲の重量平均分子量を有する。さらに、これらを含む無水ゲルは、雰囲気温度に静置して3日間状態調整した後、ブルックフィールド粘度計でT−Cスピンドルを用い、5rpmで測定して、25℃で、180000cPsを超え、好ましくは200000cPsを超え、より好ましくは220000cPsを超え、より一層良好には240000cPsを超える粘度、例えば、約250000cPsの粘度を有する。PENRECOによってVERSAGEL(登録商標)ME 2000の商用名で販売されているコポリマーを用いることが、特に好ましい。
【0056】
ゲル化剤の例は、特に、シリコーンポリマー、より具体的には、オルガノポリシロキサンエラストマーである。このようなエラストマーの例は、特に、SHIN ETSUによって、KSG−6、KSG−16、KSG−31、KSG−32、KSG−41、KSG−42、KSG−43、KSG−44、KSG−21、およびKSG−210の商用名で、DOW CORNINGによって、DC 9040、およびDC 9041の商用名で、また、GRANT INDUSTRIESによってGransil(登録商標)の商用名で販売されている。別のゲル化剤は、エポキシおよびヒドロシリル基によって官能化されたオルガノポリシロキサンの、触媒の存在下での自己重合によって得られるシリコーンポリマーからなり、これは、GENERAL ELECTRICからVELVESIL(登録商標)125の商用名で市販されている。別のゲル化剤は、環状ビニルジメチコン/ジメチコンのコポリマー、例えば、JEENによってJEESILC(登録商標)PS(PS−VH、PS−VHLV、PS−CM、PS−CMLV、およびPS−DMが含まれる)の商用名で販売されているものからなる。別のタイプのゲル化剤は、ポリアミド、例えば、ポリアミド−3のINCI名によって特定されるもの、特に、ARIZONA CHEMICALから入手できるポリマーであるSYLVACLEAR(登録商標)AF 1900V、およびPA 1200V、さらに、INCI名「ビスジアルキル(C14−18)アミド(エチレンジアミン/水添ダイマージリノール酸)コポリマー(Ethylenediamine/Hydrogenated Dimer Dilinoleate Copolymer Bis−Di−C14−18 Alkyl Amide)」によって特定され、例えば、ARIZONA CHEMICALから、SYLVACLEAR(登録商標)A200V、またはSYLVACLEAR(登録商標)A2614Vの商用名で入手できるものからなる。別のゲル化剤は、イソ酪酸と酢酸とのスクロースエステル、例えば、Sustane SAIB MCT(登録商標)の参照名で販売されている製品(INCI名は、イソ酪酸酢酸スクロース)である。別のゲル化剤として、任意選択で変性されたクレー、例えば、塩化C10〜C22脂肪酸アンモニウムによって変性されたヘクトライト、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムによって変性されたヘクトライト、例えば、ELEMENTISによってBentone 38V(登録商標)の名称で販売されているものを挙げることができる。任意選択で疎水性表面処理されたヒュームドシリカ(その粒径は1μm未満である)もまた挙げることができる。特に、シリカの表面に存在するシラノール基の数の減少を生じる化学反応によって、シリカの表面を化学的に変性することが可能である。特に、シラノール基を、疎水性基により置換することが可能であり、したがって、疎水性シリカが得られる。疎水性基は、以下の基であってよい。
トリメチルシロキシ基、これは、特に、ヘキサメチルジシラザンの存在下で、ヒュームドシリカを処理することによって得られる。こうして処理されたシリカは、CTFAに従って「シリル化シリカ(silica silylate)」として知られている。それらは、例えば、DEGUSSAによってAerosil R812(登録商標)、CABOTによってCab−O−Sil TS−530(登録商標)の参照名で販売されている、
ジメチルシリルオキシルまたはポリジメチルシロキサン基、これらは、特に、ヒュームドシリカを、ポリジメチルシロキサンまたはジメチルジクロロシランの存在下で処理することによって得られる。こうして処理されたシリカは、「ジメチルシリル化シリカ」として知られている。それらは、例えば、DEGUSSAによってAerosil R972(登録商標)、およびAerosil R974(登録商標)、CABOTによってCab−O−Sil TS−610(登録商標)、およびCab−O−Sil TS−720(登録商標)の参照名で販売されている。疎水性ヒュームドシリカは、特に、ナノメートルからマイクロメートルのスケール、例えば、約5から200nmの範囲であり得る粒径を有する。
【0057】
本組成物は、また、組成物によって与えられるメイクアップに、保持および/もしくは無移行特性、ならびに/または光沢を導入できる少なくとも1種のフィルム形成性ポリマーも含み得る。それは、特に、ウレタンまたはフッ素またはアクリレートによって任意選択で変性されたシリコーンポリマー、例えば、SHIN−ETSUによって、KP−545(登録商標)、KP−561(登録商標)、およびKP−562(登録商標)の商用名で販売されている(メタ)アクリレートシリコーンであり得る。フィルム形成性ポリマーの他の例は、シリコーン樹脂、特に、MQ樹脂、例えば、トリメチルシロキシケイ酸(trimethylsiloxysilicate)、ならびにMT樹脂、例えば、シルセスキオキサン誘導体、殊に、SHIN−ETSUによって販売されているポリメチルシルセスキオキサン、さらに、DOW CORNINGによってDC 670(登録商標)の商用名で販売されているポリプロピルシルセスキオキサン、またはWACKERによってBELSIL SPR45VP(登録商標)の商用名で販売されているフェニルプロピルポリシルセスキオキサンである。別の例は、INCI名「トリフルオロプロピルジメチルシロキシトリエチルシロキシケイ酸(Trifluoropropyldimethylsiloxy Triethylsiloxysilicate)」によって特定されるフルオロシリコーンポリマー、例えば、General Electricによって、XS66−B8226(登録商標)の商用名で販売されているものからなる。フィルム形成性ポリマーとして、例えば、ヘプタンなどの溶媒中でジメチコノールとMQケイ酸樹脂との重縮合によって得られる生体接着性ポリマーもまた用いることができ、これらは、特に、DOW CORNINGによってDC 7−4405 low tack(登録商標)、およびDC 7−4505 high tack(登録商標)の商用名で販売されている。フィルム形成性ポリマーの他の例は、ポリ(環状オレフィン)、例えば、特にKOBOによってKOBOGUARD 5400の商用名で販売されている、ポリシクロペンタジエン、でなければポリジシクロペンタジエンである。フィルム形成性ポリマーのさらに他の例は、ビニルピロリドン(VP)および/または線状オレフィンのコポリマー、例えば、VP/ヘキサデセンおよびVP/エイコセンのコポリマー(ISPによるANTARON V216(登録商標)およびANTARON V220(登録商標)が含まれる)、でなければ、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、例えば、BAERLOCHERによるAC 400からなる。ポリエーテル、例えば、特にPHOENIXによってGIOVAREZ(登録商標)1800の商用名で販売されているポリ(ビニルステアリルエーテル)もまた挙げることができる。本発明に使用できる他のフィルム形成性ポリマーは、ポリアクリレート、例えば、特にCREATIONS COULEURSによってCREASIL 7 ID(登録商標)の商用名で販売されている、ポリ(エチルアクリレート)である。
【0058】
本発明による組成物は、5重量%未満、好ましくは3重量%未満の水を含むことが好ましい。
【0059】
本発明により用いられる組成物は、少なくとも1種のフィラーをさらに含み得る。用語「フィラー」は、組成物中で不溶である、任意の形状(特に、球状または薄板状)の任意の無機または有機粒子を意味すると理解されている。フィラーの例は、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、窒化ホウ素、デンプン、無水オクテニルコハク酸により変性されたデンプン、ポリアミド、シリコーン樹脂、シリコーンエラストマーの粉末、およびアクリルポリマー、特にポリ(メチルメタクリレート)の粉末である。フィラーは、特に、異なる化学的性質および/または異なる物理的形態のいくつかの層からなっていてもよく、特に、球状フィラーにより被覆された薄板の形態であり得る。それらは、様々な表面処理を用いて変性され得る。表面処理されたフィラーの例は、エチレン/メタクリレートコポリマーによって変性されたシリカ(KOBOによってDSPCS(登録商標)20N−I2、3H−I2およびI2の商用名で販売されている)から構成される。
【0060】
本発明の組成物は、また、水溶性または脂溶性の染料、組成物を着色および/または不透明化する、また/あるいは唇を着色する効果を有するフィラー(例えば、顔料、真珠光沢剤、レーキ(不活性無機担体上に吸着された水溶性染料))、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の着色剤を含み得る。これらの着色剤は、疎水性作用剤、例えば、シラン、シリコーン、脂肪酸石鹸、C〜C15フルオロアルキルホスフェート、アクリレート/ジメチコンコポリマー、混合C〜C15フルオロアルキルホスフェート/シリコーンコポリマー、レシチン、カルナウバワックス、ポリエチレン、キトサン、および任意選択でアシル化されたアミノ酸(例えばラウロイルリシン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウムおよびアシルグルタミン酸アルミニウム)により、任意選択で表面処理されていてもよい。顔料は、無機または有機、天然または合成であり得る。顔料の例は、特に、酸化鉄、酸化チタン、または酸化亜鉛、さらに、複合顔料、および色彩角度依存性(goniochromatic)、真珠光沢、干渉、フォトクロミックもしくはサーモクロミック顔料である(この列挙は限定的ではない)。本発明による組成物に使用され得る顔料の例は、架橋されたポリ(メタクリル酸)メチルエステルと有機染料とから製造される半球形の複合顔料である。このような複合顔料は、特に、DAITO KASEIによって販売されている。真珠光沢剤は、メイクアップ製品に通常含まれるもの、例えば、マイカ/二酸化チタン製品から選択され得る。変形形態として、それらは、マイカ/シリカ/二酸化チタン系、合成フルオロフロゴパイト(fluorphlogopite)/二酸化チタン系(MAPRECOSによるSUNSHINE(登録商標))、ホウケイ酸カルシウムナトリウム/二酸化チタン系(ENGELHARDによるREFLECKS(登録商標))、またはホウケイ酸カルシウムアルミニウム/シリカ/二酸化チタン系(MERCKによるRONASTAR(登録商標))の真珠光沢剤であり得る。
【0061】
有利には、本発明による組成物が1種または複数の顔料を含む場合、これは、ブチレングリコールココエート、またはリンゴ酸ジイソステアリルなどの少なくとも1種の分散剤をさらに含む。
【0062】
本発明による組成物は、また1つまたは複数の、甘味料、例えば、ソルビトール、スクロース、キシリトール、アセスルファムKおよびサッカリンナトリウム;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸および/またはそのアルキルもしくはホスホリルエステル、でなければトコフェロールおよびそのエステル;金属イオン遮閉剤、例えば、EDTA塩;pH調整剤;保存剤;ならびに芳香剤を含み得る。
【0063】
それは、さらに、有機および無機の遮蔽剤ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種のUV遮蔽剤を含み得る。有機遮蔽剤として、特に、ジベンゾイルメタン誘導体(ブチルメトキシジベンゾイルメタンが含まれる)、ケイ皮酸誘導体(メトキシケイ皮酸エチルヘキシルが含まれる)、サリシレート、パラ−アミノ安息香酸、β,β’−ジフェニルアクリレート、ベンゾフェノン、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンゾイミダゾール、トリアジン、フェニルベンゾトリアゾール、およびアントラニル酸誘導体を挙げることができる。無機遮蔽剤として、特に、顔料またはナノ顔料の形態の無機酸化物系遮蔽剤(これらは、被覆されていることも、されていないこともある)、特に二酸化チタン系または酸化亜鉛系の遮蔽剤を挙げることができる。
【0064】
このような補助剤の例は、特に、CTFAによる辞書(「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」、The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association刊、第12版、2008年)に挙げられている。
【0065】
好ましくは、本発明により用いられる組成物は、皮膚(唇を含めて)をケアまたはメイクアップするための製品として、例えば、リップグロスとして、リップスティック、コンシーラーまたはアイシャドウとして用いられる。
【0066】
それゆえに、本発明の別の主題は、すでに記載された組成物を皮膚に局所適用することを含む、唇をケアまたはメイクアップするための化粧方法である。
【0067】
本発明は、以下の非限定的実施例によって、これから例示される。
【実施例1】
【0068】
アイシャドウ
【0069】
【表2】

結晶性ポリエステルは、次のポリエステルの一つである。
【0070】
【表3】

【実施例2】
【0071】
グロス
【0072】
【表4】

【0073】
組成物のレオロジー的特徴を、上に記載した条件下で測定した。実施例2の曲線G’(σ)の線形領域における平均弾性係数G’は、1072±75Paであり、本発明の組成物について測定した曲線G”(σ)の線形領域における平均粘性係数G”は、306±139Paであった。
【0074】
同じ組成物を、商標Kester wax K82P(登録商標)(融点は79〜84℃に等しく、結晶化度は65.8%に等しい)の結晶性ポリエステルに代えて、商標Cerabeil blanche(登録商標)(融点は61〜65℃に等しく、結晶化度は99.5%に等しい)の白蝋(Cera Alba beeswax)を、同じ重量で用いて製造した。
【0075】
実施例2の組成物、および前記白蝋を含む比較実施例を、唇の半分に付けた。付けた後、5分間乾燥し、手の甲に移行させると、白蝋を含む配合物は、より多く移行し、唇に残るフィルムは、より不均一であった。さらに、移行した部分は「穴」となって残った。
【実施例3】
【0076】
グロス
【0077】
【表5】

【実施例4】
【0078】
グロス
【0079】
【表6】

【0080】
組成物のレオロジー的特徴を、上に記載した条件下で測定した。実施例2の曲線G’(σ)の線形領域における平均弾性係数G’は、30 711±2850Paであり、本発明の組成物について測定した曲線G”(σ)の線形領域における平均粘性係数G”は、4894±539Paであった。
【実施例5】
【0081】
グロス
【0082】
【表7】

【実施例6】
【0083】
グロス
【0084】
【表8】

【実施例7】
【0085】
ロングラスティンググロス
【0086】
【表9】

【0087】
同じ組成物を、商標NOMCORT HK−G(登録商標)(融点は65℃に等しく、結晶化度は71.8%に等しい)の結晶性ポリエステルに代えて、商標Cerabeil blanche(登録商標)(融点は61〜65℃に等しく、結晶化度は99.5%に等しい)の白蝋を、同じ重量で用いて製造した。
【0088】
白蝋を含む比較実施例の組成物は、安定ではなかった(相分離する傾向)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒体中に、
(a)40℃と90℃の間の融点、および95%未満の結晶化度を有する少なくとも1種のポリエステルワックスを、組成物の全重量に対して0.6から20重量%、および
(b)少なくとも1種のアクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーを、組成物の全重量に対して1から25%
含む、スキンメイクアップまたはスキンケアのための化粧料組成物。
【請求項2】
生理学的に許容される媒体中に、
(a)40℃と90℃の間の融点、および95%未満の結晶化度を有する少なくとも1種のポリエステルワックス、および
(b)少なくとも1種のアクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマー
を含み、
該組成物が、周囲雰囲気中において20℃で、
−0.1Paと120000Paの間の平均弾性係数G’、および
−30Paと30000Paの間の平均粘性係数G”
を有するような量で、前記ワックスおよび前記コポリマーが存在する、
スキンメイクアップまたはスキンケアのための化粧料組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルワックスが、少なくとも1種のポリオールと、8から30個の炭素原子を有する、少なくとも1種の飽和または不飽和の線状または分岐状の脂肪族モノカルボン酸とのポリエステルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルワックスが、少なくとも1種のポリオールと、8から30個の炭素原子を互いに独立に有する、少なくとも2種、またはさらには少なくとも3種の、同じかまたは異なる、飽和または不飽和の線状または分岐状の脂肪族モノカルボン酸とのポリエステルであることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルワックスが、(i)前記脂肪族モノカルボン酸、(ii)12から36個の炭素原子を有する、線状または分岐状の二酸、および(iii)グリセロールから得られることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪族モノカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、およびベヘン酸、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項3、4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記二酸(ii)が、エイコサ二酸、エチルオクタデカン二酸、およびドデカン二酸、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルワックスが、エイコサ二酸と、ベヘン酸によって、また任意選択でイソステアリン酸によってエステル化されたグリセロールとのジエステルであることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリエステルワックスが、合成ミツロウ、ビス−PEG−12ジメチコンミツロウのINCI名を有するワックスなどのミツロウ誘導体、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリエステルワックスが、ステアリン酸および酢酸のスクロースエステルであることを特徴とする、前記請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリエステルワックスの結晶化度が、45%を超え、90%未満、好ましくは75%未満であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリエステルワックスが、組成物の重量の0.6から15重量%、好ましくは1から10重量%、より好ましくは2から8重量%を占めることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記アクリレート/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシコポリマーと前記ポリエステルワックスとの重量比が、5/1と1/1の間であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物の重量に対して、0.1から80重量%の少なくとも1種の揮発性オイルを含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記揮発性オイルが、イソドデカンまたはシクロペンタジシロキサンであることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
650g/molを超える分子量を有する少なくとも1種の非揮発性オイルを含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
5重量%未満の水を含むことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
その平均弾性係数G’が、0.1Paと120000Paの間、好ましくは100Paと50000Paの間、より好ましくは700Paと35000Paの間であることを特徴とする、請求項1から17の一項に記載の組成物。
【請求項19】
その平均粘性係数G”が、30Paと30000Paの間、好ましくは100Paと10000Paの間、より好ましくは300Paと5000Paの間であることを特徴とする、請求項1から18の一項に記載の組成物。
【請求項20】
アイシャドウ、リップグロス、リップスティック、アイライナー、またはフェイスパウダーの形態であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に局所適用することを含む、スキンケアまたはスキンメイクアップのための化粧方法。

【公表番号】特表2011−525520(P2011−525520A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515342(P2011−515342)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057768
【国際公開番号】WO2009/156375
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(508283406)シャネル パフュームズ ビューテ (23)
【Fターム(参考)】