説明

シリコーンエマルジョンの製造方法

【課題】シリコーンエマルジョンで適切な鎖長を調整、ひいては適切なオイル粘度とともに最適なエマルジョン特性を調整することである。
【解決手段】(1)ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン100質量部、及び(2)粘度が少なくとも55mm2/sのトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン0.01質量部を、(3)酸触媒、及び(4)乳化剤の存在下、水性媒体中で所望の分子量に達するまで重合させることを含む、オルガノポリシロキサン(O)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン及びトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサンを重合させることによる、オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルジョン重合によるオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造は、以前より確立されている手法である。これはとりわけ、環状化合物のエマルジョン重合に適用される。US 2,891,920は例えば、オイル粘度(oil viscosity)が低いオルガノポリシロキサンを、オクタメチルシクロテトラシロキサンから、強塩基又は強い鉱酸の存在下で製造することを記載している。
【0003】
DE1495512は、スルホン酸及びその塩を乳化剤及び触媒として、環状ジメチルシロキサンのエマルジョン重合のために異なる温度で同時に使用することを記載している。しかしながら、得られる生成物の環状化合物含分は、一般的に10%超である。
【0004】
より安定的なエマルジョン、又は所望のオイル粘度のエマルジョンの獲得を目的とした様々な触媒/乳化剤/安定剤は、多くの特許文献、例えばDE1495512に記載されている。この中でとりわけ安定的なエマルジョンはとりわけ、プリエマルジョンを形成することにより得られる。
【0005】
トリメチルシリル末端モノマーの存在下でのオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造は、JP2002-37888、及びJP2000-95661に記載されている。同様にUS 2,891,920は既にこの方法で最終的にトリメチルシリル末端のジメチルシロキサンを得ることを記載している;ここでは環状ジメチルシロキサンが、ヘキサメチルジシロキサンと一緒に99:1のモル比でエマルジョン重合される。
【0006】
オルガノポリシロキサンエマルジョンを、ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン及び環状オルガノポリシロキサンから、水性媒体中で短鎖のトリアルキルシリル末端ジオルガノポリシロキサンの存在下で製造することは、JP2006-117868に記載されているが、その粘度は50mm2/s以下である必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 2,891,920
【特許文献2】DE1495512
【特許文献3】JP2002-37888
【特許文献4】JP2000-95661
【特許文献5】US 2,891,920
【特許文献6】JP2006-117868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらを概観すると、エマルジョン重合によるオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造は非常に複雑であり、適切な鎖長の調整、ひいては適切なオイル粘度とともに最適なエマルジョン特性、例えば剪断安定性や貯蔵安定性を調整することは、困難であることがわかる。これは主に、エマルジョン重合のメカニズムでは、連鎖移動と連鎖中断が並行して起こるからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が提供するのは、
(1)ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン100質量部、及び
(2)粘度が少なくとも55mm2/sのトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン少なくとも0.01質量部
を、
(3)酸触媒、及び
(4)乳化剤
の存在下、水性媒体中で所望の分子サイズに達するまで重合させることを含む、オルガノポリシロキサン(O)エマルジョンの製造方法である。
【0010】
本方法の利点はまず、トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)を用いることにより、オルガノポリシロキサン(O)の所望の重合度について、一般的に公知の方法のようにヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)又は環状ジメチルシロキサンを単独で用いた場合よりも高い再現性が得られることである。トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)は、鎖端停止剤として作用する。
【0011】
本発明による方法の第二の利点は、オイル粘度がより高いオルガノポリシロキサン(O)エマルジョンに加えて、よりオイル粘度が低いものも、高い再現性で非常に適切に得られることである。
【0012】
意外なことに、JP2002-37888に記載のモノマー、又はJP2006-117868の低粘度ポリマーを用いた場合とは逆に、粘度が少なくとも55mm2/sのトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)は、効果的に使用可能なだけではなく、より正確に供給して所望の重合度を調整することによって、所望の分子量の調整が著しく容易になることが確認された。
【0013】
さらに所定の温度及び24時間未満での稼働は、経済的に特に魅力的であり、また環状ジメチルシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン又はデカメチルシクロペンタシロキサンの形成が非常に少ないことに対して有利に働く。
【0014】
本発明により得られるエマルジョンはさらに、その高い貯蔵安定性(上昇された温度であっても)、及び剪断に対する高い安定性である。
【0015】
本方法はオルガノポリシロキサン(O)を、二度ヒドロキシ末端化されたオルガノポリシロキサン、二度トリアルキルシリル末端化されたオルガノポリシロキサン、及びヒドロキシ/トリアルキルシリル混合末端化されたオルガノポリシロキサンの混合物の形でもたらす。
【0016】
本発明による方法は好ましくは、ヒドロキシ末端オルガノポリシロキサン(1)として、一般式1
【化1】

[式中、
Rは1〜200個、好ましくは1〜36個、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和の一価のヒドロカルビル基、特にアルキル、及び好ましくはメチル又はエチルであり、この基は非置換であるか、又はN、P、S、O、Si、H、及びハロゲンから選択される元素を含む置換基を有しており、
nはヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)の粘度が、25℃で5〜80,000mm2/sの範囲にあるように選択される]
のポリマーを用いる。
トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)は好ましくは、一般式2
【化2】

[式中、
Rは上記意味を有し、
1は1〜18個の炭素原子を有するアルキル基であり、このアルキル基は酸素原子により、好ましくはメチル又はエチルによって中断されていてよく、
zはトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)の粘度が、25℃で55〜50,000mm2/sの範囲にあるように選択される]
のポリマーである。
【0017】
ヒドロカルビル基Rの例は、アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、1−n−プロピル、1−n−ブチル、2−n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル;オクチル基、例えばn−オクチル、及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル;ノニル基、例えばn−ノニル;デシル基、例えばn−デシル;ドデシル基、例えばn−ドデシル;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びメチルシクロヘキシル;アルケニル基、例えばビニル、5−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1−プロペニル、アリル、3−ブテニル、及び4−ペンテニル;アリール基、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル;アルカリール基、例えばo−トルイル、m−トルイル、p−トルイル;キシリル基、及びエチルフェニル基;及びアラルキル基、例えばベンジル、[α]−フェニルエチル、及び[β]−フェニルエチルである。
【0018】
基Rとして好ましくはメチル、エチル、オクチル、及びフェニルを、特に好ましくはメチル、及びエチルを使用する。
【0019】
ハロゲン化された基Rの例は、ハロアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、及びハロアリール基、例えばo−クロロフェニル、m−クロロフェニル、及びp−クロロフェニルである。
【0020】
基R1の例は、Rとの関連で先に挙げたアルキル基である。
【0021】
ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)の例は、市販で手に入るシラノール末端基のポリジメチルシロキサンである。
【0022】
これらの化合物は市販で大量に製造され、非常に安価に手に入るので、本発明による方法の経済性にとって、特に魅力的である。
【0023】
本発明による方法では、1種のヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)、又は様々な種類のヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)が使用できる。
【0024】
本発明による方法で使用されるヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)は好ましくは、全て25℃で粘度が少なくとも10mm2/s、より好ましくは少なくとも20mm2/s、及びとりわけ少なくとも50mm2/sであり、最大60,000mm2/s、より好ましくは最大10,000mm2/s、及びとりわけ最大1,000mm2/sである。
【0025】
トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)は、市販で大量に製造され、非常に安価に手に入るので、本発明による方法の経済性にとって、特に魅力的である。
【0026】
本発明による方法では、1種のトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)、又は様々な種類のトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)が使用できる。
【0027】
本発明による方法で使用されるトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)は好ましくは、全て25℃で粘度が少なくとも60mm2/s、より好ましくは少なくとも70mm2/s、及びとりわけ少なくとも90mm2/sであり、最大20,000mm2/s、より好ましくは最大5,000mm2/s、及びとりわけ最大2,000mm2/sである。
【0028】
本発明による方法では好ましくは、トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)を、ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)100質量部に対して少なくとも0.02質量部、より好ましくは少なくとも0.05質量部、及び最大80質量部、より好ましくは最大25質量部、とりわけ最大15質量部の量で使用する。
【0029】
本発明によるオルガノポリシロキサン(O)エマルジョンの製造は、ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)を水性媒体中でトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)、表面活性の酸触媒(3)、及び乳化剤(4)、並びに任意のさらなる物質(5)とともに、激しく混合することによって行う。安定なエマルジョンが形成される。この結果、製造されたオルガノポリシロキサン(O)は、微粉砕された形で存在する。
【0030】
この方法は、バッチ法として、又は連続法として行うことができる。
【0031】
オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造技術は、公知である。激しい混合と分散は、ローター−ステーター撹拌装置、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、マイクロチャンネル、膜、ジェットノズルなどで、又は超音波によって行うことができる。均質化装置と方法は、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, CD-ROM版 2003, Wiley-VCH Verlag, "Emulsions"の項に記載されている。
【0032】
本発明によるエマルジョン製造に必要な成分の混合法はあまり重要ではなく、様々な順序で行うことができる。しかしながら成分(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)次第で好ましい順序があり得るので、場合に応じて検討するのが望ましい。
【0033】
例えば成分(1)と(2)は、表面活性の酸触媒(3)及び乳化剤を添加する前に相互に予備混合することができ、そしてそれから分散剤と任意のさらなる物質(5)を入れる。また、成分(1)〜(3)、又は(1)〜(4)、又は(1)〜(5)を、順番に乳化装置に供給することもできる。多くの場合、成分(3)及び/又は成分(4)、又は成分(3)の一部及び/又は成分(4)を、分散剤の一部とともに乳化装置に装入し、そして残りの成分(1)〜(5)を得られた混合物に供給することが有利であると判明している。特別な場合、例えばシロキサンの粘度又は反応性が原因で、トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)をヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)と混合し、それから他のヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)を入れること、或いは、成分加工のためにより良好なレオロジー特性が得られるかによって、その逆にすることが有利であり得る。
【0034】
本発明の方法では、分散剤として水を、エマルジョンの全成分の全質量に対して好ましくは少なくとも1質量%、より好ましくは少なくとも5質量%、とりわけ少なくとも10質量%の量で、及び最大99質量%、より好ましくは最大95質量%、及びとりわけ最大90質量%の量で使用する。
【0035】
酸触媒(3)の例は、ブレンステッド酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、クロロスルホン酸、リン酸、例えばオルトリン酸、メタリン酸、及びポリリン酸、ホウ酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及びカルボン酸、例えばクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、アクリル酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、クロトン酸、蟻酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、タンニン酸、イタコン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フタル酸、及びコハク酸、酸性イオン交換体、酸性ゼオライト、酸活性フラー土、及び酸活性カーボンブラックである。
【0036】
表面活性の酸重合触媒(3)を使用するのが好ましい。と言うのも、この触媒によりとりわけ再現性高く、特定のオイル粘度調整ができるからである。
【0037】
本発明による方法で表面活性の酸重合触媒(3)として使用可能なのは、多数のスルホン酸、硫酸水素塩、及び/又はリン酸のモノエステル又はジエステル(及び/又は混合物)であり、これらは水溶性であるだけでなく、油溶性でもある。
【0038】
有用なスルホン酸の例は、脂肪族置換ナフタリンスルホン酸、脂肪族置換フェニルスルホン酸、脂肪族スルホン酸、シリルアルキルスルホン酸、及び脂肪族置換ジフェニルエーテルスルホン酸である。このための脂肪族置換基は、少なくとも6個、好ましくは少なくとも8個、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子を、かつ好ましくは18個以下の炭素原子を有する。このような脂肪族置換基は、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、セチル基、ミリシル基、ノネニル基、フチル(phtyl)基、及びペンタジエニル基である。
【0039】
有用な硫酸水素塩の例は、少なくとも8個、とりわけ10〜18個の炭素原子を有する分枝状又は非分枝状のアルキル基を有する硫酸水素アルキルであり、前記アルキル基は例えばヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、セチル基、ステアリル基、ミリシル基、オレイル基、及びオクチニル基である。
【0040】
有用なリン酸エステルの例は、有機基を有するモノアルキル及び/又はジアルキル(及び/又は混合物)のリン酸エステルであり、前記有機基は例えば、4〜30個の炭素原子を有する分枝状又は非分枝状のアルキル基、例えばブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソノニル基、ドデシル基、及びイソトリデシル基、不飽和脂肪族基、例えばオレイル基、芳香族基、例えばフェニル基、トロイル基、キシリル基、ノニルフェニル基、ナフチル基、アントラシル基、トリスチリルフェニル基、又はベンジル基である。有用なリン酸エステルの酸価は、有機基数の平均値a(ただし1 a 2)により決定され、モル質量は通常、リン酸エステル1gを中和するのに必要なKOHの量によって示される。この酸価は好ましくは、10〜500の範囲、より好ましくは200〜400の範囲、及びとりわけ250〜350の範囲である。
【0041】
表面活性の酸重合触媒(3)は、それぞれの化合物のみならず、2つ又はそれより多い異なる種類の上記化合物を含むことができる。一般的に実際には混合物が使用される。と言うのもこれらの酸はその分子量が大きいため、純粋な形で得ることが困難だからである。
【0042】
本発明による方法では好ましくは、酸触媒(3)を少なくとも0.1質量部、より好ましくは少なくとも0.4質量部、及びとりわけ少なくとも0.8質量部の量で、かつ最大50質量部、より好ましくは最大40質量部、とりわけ最大30質量部の量で用いる。
【0043】
乳化剤としても作用する表面活性の酸重合触媒(3)を用いる際には、別個の乳化剤(4)は添加しなくてよい。この場合、成分(3)と(4)は同一である。
【0044】
本発明による方法で乳化剤(4)は、あらゆる公知のイオン性又は非イオン性の乳化剤であってよく、単独で使用されるだけではなく、従来オルガノポリシロキサンの水性分散液、とりわけ水性エマルジョンを製造できた様々な乳化剤の混合物として使用できる。同様によく知られているように、乳化剤(4)として無機固体が使用できる。その例はEP 1017745 A又はDE 19742759 Aに記載されているように、シリカ又はベントナイトである。
【0045】
アニオン性乳化剤の例は:
1.アルキルスルフェート、とりわけ8〜18個の炭素原子鎖長を有するもの、疎水性基に8〜18個の炭素原子、及び1〜40個のエチレンオキシド(EO)単位若しくはプロピレンオキシド(PO)単位を有する、アルキルエーテルスルフェート及びアルカリールエーテルスルフェート。
【0046】
2.スルホネート、とりわけ8〜18個の炭素原子を有するアルキルスルホネート、8〜18個の炭素原子を有するアルキルアリールスルホネート、タウライド、スルホコハク酸と一価のアルコール若しくは4〜15個の炭素原子を有するアルキルフェノールとのエステルとモノエステル;これらのアルコール又はアルキルフェノールは任意で、1〜40個のEO単位でエトキシ化されていてもよい。
【0047】
3.アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はアラルキル基中に8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ金属塩とアンモニウム塩。
【0048】
4.リン酸モノエステルとジエステル、及びそのアルカリ金属塩とアンモニウム塩、とりわけ有機基中に8〜20個の炭素原子を有するアルキルホスフェートとアルカリールホスフェート、アルキル基又はアルカリール基中に8〜20個の炭素原子、及び1〜40個のEO単位を有するアルキルエーテルホスフェートとアルカリールエーテルホスフェート。
【0049】
非イオン性の乳化剤の例は:
5.なお5〜50%、好ましくは8〜20個の酢酸ビニル単位を有する重合度が500〜3000の範囲のポリビニルアルコール。
【0050】
6.アルキルポリグリコールエーテル、好ましくは3〜40個のEO単位、及び8〜20個の炭素原子を有するアルキル基を有するもの。
【0051】
7.アルキルアリールポリグリコールエーテル、好ましくは5〜40個のEO単位、及び8〜20個の炭素原子をアルキル基及びアリール基中に有するもの。
【0052】
8.エチレンオキシドプロピレンオキシド(EO−PO)ブロックコポリマー、好ましくは8〜40個のEO及び/又はPO単位を有するもの。
【0053】
9.エチレンオキシド又はプロピレンオキシドによる、炭素原子が8〜22個のアルキル基を有するアルキルアミンの付加生成物。
【0054】
10.6〜24個の炭素原子を有する脂肪酸。
【0055】
11.一般式R*−O−ZOのアルキルポリグリコシド、前記式中、R*は平均で8〜24個の炭素原子を有する線状または分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル基であり、ZOは平均でo=1〜10のヘキソース単位若しくはペントース単位、又はこれらの混合物を有するオリゴグリコシド基である。
【0056】
12.天然物質及びその誘導体、例えばレシチン、ラノリン、サポニン、セルロース;セルロースアルキルエーテル、及びカルボキシアルキルセルロース、これらのアルキル基はそれぞれ最大4個の炭素原子を有するものである。
【0057】
13.極性基、とりわけ元素のO、N、C、S、P、Si含有極性基を有する、線状のオルガノ(ポリ)シロキサン、とりわけ最大24個の炭素原子及び/又は最大40個のEO及び/又はPO基を有するアルコキシ基を有する線状のオルガノ(ポリ)シロキサン。
【0058】
14.8〜24個の炭素原子を有する第一級、第二級、及び第三級脂肪族アミンと、酢酸、硫酸、塩化水素酸、及びリン酸との塩。
【0059】
15.第四級アルキルアンモニウム塩、及びアルキルベンゼンアンモニウム塩、とりわけアルキル基が6〜24個の炭素原子を有するもの、とりわけハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩。
【0060】
16.アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩、及びアルキルオキサゾリニウム塩、とりわけそのアルキル鎖が最大18個の炭素原子を有するもの、特にハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩。
【0061】
以下のものはとりわけ、両性乳化剤としての使用に適している:
17.長鎖の置換基を有するアミノ酸、例えばN−アルキルジ(アミノエチル)グリシン、又はN−アルキル−2−アミノプロピオン酸塩。
【0062】
18.ベタイン、例えばC8〜C18アシル基を有するN−(3−アシルアミドプロピル)−N,N−ジメチルアンモニウム塩、並びにアルキルイミダゾリウムベタイン。
【0063】
乳化剤としての使用に好ましいのは、非イオン性乳化剤であり、とりわけ上記6で言及したアルキルポリグリコールエーテルである。成分(4)は上記乳化剤のうちの1つから成っているか、又は上記乳化剤のうち2つ又はそれより多くの混合物から成っていてよく、純粋な形で、又は水若しくは有機溶媒への1つ又はそれより多い乳化剤の溶液として使用できる。
【0064】
本発明の工程では好ましくは、乳化剤(4)を少なくとも0.1質量部、より好ましくは少なくとも0.4質量部、及びとりわけ少なくとも0.8質量部の量で、かつ最大80質量部、より好ましくは最大60質量部、とりわけ30質量部の量で使用する。
【0065】
さらなる物質(5)として有用な水溶性固体の例は、例えば無機塩、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、亜硫酸水素塩、例えば塩化ナトリウム、硫酸カリウム、臭化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、又はC1〜C8カルボン酸の塩、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、例えば酢酸ナトリウムである。
【0066】
さらなる物質(5)として有用な水不溶性固体の例は、補強性又は非補強性の充填材である。補強性充填材、つまりBET比表面積が少なくとも50m2/gの充填材の例は、BET比表面積が50m2/g以上の熱分解法シリカ、沈降シリカ、又はケイ素−アルミニウム混合酸化物である。これらの上記シリカは、疎水化状態であってよい。非補強性充填材、つまりBET比表面積が50m2/g未満の充填材の例は、石英粉末、白亜、クリストバライト、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、モンモリロナイト、例えばベントナイト、分子ふるいを含むゼオライト、例えばアルミノケイ酸ナトリウム、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム若しくは酸化亜鉛、及び/又はこれらの混合酸化物、又は二酸化チタン、金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末、炭素粉末、及びプラスチック粉末、並びに中空ガラス及びプラスチックビーズである。
【0067】
本方法で用いられるエマルジョンを製造するための乳化工程は好ましくは、少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも15℃の温度、最大80℃、より好ましくは最大70℃の温度で行う。
【0068】
この高められた温度は好ましくは、乳化工程に必要な機械的剪断エネルギーを導入した結果として生じる。高められた温度は、化学プロセスを加速させるために必要ではない。本発明による方法はさらに好ましくは、周辺雰囲気圧力で行うが、より高い、又はより低い圧力で行うことができる。
【0069】
エマルジョン中で光散乱法により測定される平均粒径は好ましくは、少なくとも0.001μm、より好ましくは少なくとも0.002μmであり、かつ最大100μm、より好ましくは最大10μmである。
【0070】
乳化工程に後続する本発明によるオルガノポリシロキサン(O)エマルジョンの製造を可能にする重合方法は、好ましくは少なくとも1℃、より好ましくは少なくとも15℃の温度で、かつ最大40℃、より好ましくは最大35℃の温度で行う。エマルジョンは好ましくは当該温度にしばらく、理想的には24時間未満、所望の重合度に到達するまで保つ。ここで時折、又は一定の混合が有利でありえ、この混合は所望のあらゆる技術的予備手段、例えば迅速な機械撹拌、又は超音波の使用によって達成される。
【0071】
所望の時間後、エマルジョンを所望のアルカリ試薬で中和し、連鎖移動と、並行的に進行している鎖末端反応とを停止させる。アルカリ試薬は撹拌しながら、pH約7に達するまで添加する。
【0072】
エマルジョン中和のための有用なアルカリ試薬に含まれるのは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アルカリ金属炭酸塩、又はアルカリ土類金属アルカリ塩、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、又はアンモニウム塩、例えば水酸化アンモニウム、又はこれらの水溶液、又は有機アミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、又はこれらの水溶液である。
【0073】
重合終了後にオルガノポリシロキサン(O)は、あらゆる所望のやり方でエマルジョンを解消する(break)ことにより、例えば水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンの添加、又は塩、例えば塩化ナトリウムの添加によって、又は水の除去によって、ほとんど触媒不含の状態に戻すことができる。
【0074】
上記式中のあらゆる記号は、それぞれ相互に独立してその意味を有する。ケイ素原子はあらゆる式中で四価である。質量部は常にヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)の100質量部に対するものである。
【0075】
以下の実施例では、特に記載のない限り、全ての量とパーセンテージは質量に対するものであり、全ての圧力は0.10MPa(絶対圧)であり、全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0076】
実施例1:
乳化装置(PC-Laborsystem社製)を用いて、水中で濃度80%のイソトリデシルデカエトキシレート(Lutensol(登録商標)TO 108 (BASF社製)という名称で市販で入手可)5.20質量%、4−C10−C13−sec−アルキルベンゼンスルホン酸(Marlon AS 3 (Sasol社製)という名称で市販で入手可)4.16質量%、及び脱イオン水5.20質量%を1まとめにして乳化剤混合物にし、これにPDMS1a(末端OH基含分が0.765質量%で、粘度が70〜100mm2/sのポリジメチルシロキサンジオール)を49.48質量%、及びPDMS2a(粘度が90〜110mm2/sのトリメチルシリル末端のポリジメチルシロキサン)を1.40質量%(シリコーン含分に対して2.75質量%)、少しずつ添加する。それから全部で完全脱イオン水31.69質量%を少しずつ加え、乳白色のエマルジョンが得られるまで希釈する。25℃で20時間の重合後、水酸化ナトリウム水溶液(濃度25質量%)を中和及び保存のために添加する。生成する安定なエマルジョンは平均粒径が133nmであり、その固体含分は59.9質量%である。エマルジョンの一部にあるシロキサンポリマーは沈殿させ、アセトンで洗浄する。乾燥されたポリシロキサンは、粘度が114,000mm2/sである。(25℃)。
【0077】
実施例2
必要な変更を加えて実施例1を繰り返すのだが、その相違点は、以下の開始材料を使用したことである:水中で濃度80%のイソトリデシルデカエトキシレート3.74質量%、4−C10−C13−sec−アルキルベンゼンスルホン酸2.99質量%、PDMS1a 35.66%、及びPDMS2a 3.00質量%(シリコーン含分に対して3.76質量%)。25℃で20時間の重合及び中和後、安定なエマルジョンが得られ、その平均粒径は130nmであり、その固体含分は45.3質量%である。実施例1のように沈殿させたポリシロキサンは、粘度が17,900mm2/sである(25℃)。
【0078】
実施例3
必要な変更を加えて実施例1を繰り返すのだが、その相違点は、以下の開始材料を使用したことである:水中で濃度80%のイソトリデシルデカエトキシレート3.74質量%、4−C10−C13−sec−アルキルベンゼンスルホン酸2.99質量%、PDMS1b(末端OH基含分が0.418質量%で、粘度が250〜280mm2/sのポリジメチルシロキサンジオール) 35.66%、及びPDMS2a 1.50質量%(シリコーン含分に対して4.04質量%)。25℃で20時間の重合及び中和後、安定なエマルジョンが得られ、その平均粒径は125nmである。実施例1のように沈殿させたポリシロキサンは、粘度が59,400mm2/sである(25℃)。
【0079】
実施例4
必要な変更を加えて実施例1を繰り返すのだが、その相違点は、以下の開始材料を使用したことである:水中で濃度80%のイソトリデシルデカエトキシレート3.74質量%、4−C10−C13−sec−アルキルベンゼンスルホン酸2.99質量%、PDMS1a 35.66%、及び、PDMS2b(粘度が330〜370mm2/sのトリメチルシリル末端のポリジメチルシロキサン) 3.00質量%(シリコーン含分に対して7.76質量%)。25℃で20時間の重合及び中和後、安定なエマルジョンが得られ、その平均粒径は126nmである。実施例1のように沈殿させたポリシロキサンは、粘度が63,700mm2/sである(25℃)。
【0080】
実施例5〜8
以下の実施例は実施例1又は2に従って必要な変更を加えて準備したのだが、エマルジョン重合及びPDMS2aの使用により得られるポリシロキサンの粘度について、高い再現性を示した。トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサン2aの量が少し違っても、所望の粘度が大きく変わることはない:
【表1】

【0081】
比較例9〜13(本発明によらないもの):
必要な変更を加えて実施例1を繰り返すのだが、その相違点は、以下の開始材料を使用したことである:水中で濃度80%のイソトリデシルデカエトキシレート3.74質量%、4−C10−C13−sec−アルキルベンゼンスルホン酸2.99質量%、PDMS1a 35.66%、及びPDMS2c(粘度が9〜11mm2/sのトリメチルシリル末端のポリジメチルシロキサン) 0.23質量%(シリコーン含分に対して0.64質量%)。20℃で15時間の重合及び中和後、安定なエマルジョンが得られ、その平均粒径は109nmであり、その固体含分は42.0質量%である。
【0082】
実施例1のように沈殿させたポリシロキサンの粘度は、56,700mm2/sである(25℃)。
【0083】
実施例を繰り返し、実施例1のように沈殿させたポリシロキサンが、以下のような粘度で得られる(下記表2参照)。
【0084】
得られる粘度の変化幅は、明らかにより広い;規定の粘度範囲のポリシロキサンを有するエマルジョンは、適切に製造できない。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサン(O)エマルジョンの製造方法であって、
(1)ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン100質量部、及び
(2)粘度が少なくとも55mm2/sのトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン少なくとも0.01質量部を、
(3)酸触媒、及び
(4)乳化剤
の存在下、水性媒体中で所望の分子サイズに達するまで重合させることを含む、前記製造方法。
【請求項2】
ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)が、一般式I
【化1】

[式中、
Rは1〜36個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和の一価のヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビル基は非置換であるか、又はN、P、S、O、Si、H、及びハロゲンから選択される元素を含む置換基を有しており、
nはヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)の粘度が、25℃で5〜80,000mm2/sの範囲にあるように選択される]
のポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)が、一般式(2)
【化2】

[式中、
Rは請求項2に記載の意味を有し、
1は1〜18個の炭素原子を有するアルキル基であり、このアルキル基は酸素原子によって中断されていてよく、
zはトリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)の粘度が、25℃で55〜50,000mm2/sの範囲にあるように選択される]
のポリマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ヒドロキシ末端のオルガノポリシロキサン(1)の粘度が、25℃で20mm2/s〜10,000mm2/sである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
トリアルキルシリル末端のオルガノポリシロキサン(2)の粘度が、それぞれ25℃で60mm2/s〜20,000mm2/sである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
表面活性の酸重合触媒(3)を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
表面活性の酸重合触媒(3)が、スルホン酸、硫酸水素塩、及びリン酸のモノエステルとジエステルから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
非イオン性乳化剤(4)を使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2011−236421(P2011−236421A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−103864(P2011−103864)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】