説明

シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよびシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法

【課題】新規なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよびシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法を提供する
【解決手段】水和された際に、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、該レンズの少なくとも一方の表面上に多数の窪みを持つ。これらの窪みは、1μm未満、または100nm未満の深さを持つ。該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、プラズマにより処理には付されていない。該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法も、ここに開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズおよびシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ等のコンタクトレンズの製造方法およびシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、視力補正、矯正における重要な道具となっている。親水性表面を持つシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するために、多数の技術が使用されている。例えば、幾つかのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、プラズマによって表面処理されており、幾つかのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するために使用されている重合性組成物中に、親水性ポリマー系湿潤剤を含んでおり、また幾つかのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、極性樹脂製のコンタクトレンズ用金型内で流込み成形されている。
【0003】
Sharma等の米国特許出願公開第2008/0143956号は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを開示しており、そこで、該レンズの表面には、皺が形成されており、また該レンズ表面は、そこから上方に伸びた高い隆起部を含んでいる。該レンズの後部表面上に与えられた該皺の寄った表面は、該レンズとレンズ着用者の目の角膜との間の流体交換を容易にすると言われている。該レンズは、流込み成形されたレンズであり、これは、上記皺のある表面が該レンズに与えられる前に形成される。該成型された、即ち流込み成形されたレンズは、初めに改質された表面層、例えばシリケート表面層を備えており、またその後この改質された表面は、前記皺のある表面となる。例えば、該表面は、プラズマまたは他のエネルギーでこれを処理することにより改質し得る。該改質された表面を形成した後、該レンズを、重合性膨潤剤、例えばエチレン性不飽和を含む膨潤剤で膨潤させるが、該膨潤剤は、ラジカル重合により重合し得るものである。膨潤の程度に応じて、該シリケート層等の該改質表面層には、種々の程度に皺が形成される。該重合性膨潤剤の重合は、該皺のある改質された表面層を安定化するのに役立つ。この多段法、特にレンズ形成後の表面改質および安定化処理は、比較的複雑であり、かつ制御困難であり、しかもシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造コストを更に高める。
【0004】
所望の特性、例えば表面濡れ性を持つ新規なコンタクトレンズ、および例えばコスト的に有効な、上記の如き望ましい特性を持つ、コンタクトレンズの新規製法に対する、絶えることのない要求がある。
【発明の概要】
【0005】
新規なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよびシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法が、今や開発された。本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、新規な表面特性を持つ表面を備えたコンタクトレンズ本体を有する。中でも特に、該本体の前部表面および後部表面は、該レンズ本体を製造した後に、これをプラズマ処理および/または重合性膨潤剤による処理に付されていなくとも、親水性である。本発明の方法は、率直に言って、該レンズ本体を製造した後に、これをプラズマ処理および/または重合性膨潤剤による処理に付すことなしに、本発明のコンタクトレンズを製造する。
【0006】
一つの広い局面において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの一例は、前部表面および後部表面を含む、シリコーンヒドロゲルレンズ本体を包含し、ここで水または水性溶液中での水和処理後、湿潤した際の該レンズ本体の該前部表面および該後部表面の少なくとも一方は、約150nmから1,500nm未満までの範囲の平均径を持つ多数の窪みを含み、かつ該レンズ本体は、所定態様のプラズマ処理に付されておらず、該レンズ本体は、その製造後に重合性膨潤剤で処理されておらず、あるいは該レンズ本体は、該プラズマ処理および該膨潤剤での処理両者に付されていない。
【0007】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの付随的な一例は、前部表面および後部表面を含む、プラズマ処理されていない、シリコーンヒドロゲルレンズ本体を含有し、該表面の少なくとも一方は多数の窪みを含み、該窪みの密度は、900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲にある。
【0008】
一態様において、前記多数の窪みは、約130nmから約630nm未満なる範囲の平均径を持ち、あるいは該多数の窪みは、約150nmから約550nm未満なる範囲の平均径を持つ。
【0009】
前記多数の窪みは、約4nmまたは約15nm乃至約30nmまたは約60nmまたは約100nmなる範囲の平均深さを持つことができる。例えば、該多数の窪みは、約4nm〜約65nmなる範囲、約4nm〜約40nmなる範囲、約4nm〜約20nmなる範囲、約8nm〜約20nmなる範囲、または約15nm〜約90nmなる範囲の平均深さを持つことができる。
【0010】
一態様において、該レンズ本体の前部表面および後部表面の少なくとも一つは、約5nmRMSまたは約7nmRMSまたは約10nmRMS乃至約20nmRMSまたは約25nmRMSまたは約30nmRMSなる範囲の平均表面粗さを持つ。即ち、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約5nmRMS〜約30nmRMSなる範囲、約7nmRMS〜約25nmRMSなる範囲あるいは約10nmRMS〜約20nmRMSなる範囲の平均表面粗さを持つことができる。
【0011】
一態様において、該レンズ本体の少なくとも一つの前部表面および後部表面上の、表面900μm2当たりの窪みの平均数を意味する、該窪みの平均密度は、表面900μm2当たり約5または約80または約100または約200個の窪み乃至表面900μm2当たり約1,000または約1,200または約1,500個の窪みなる範囲にある。即ち、本発明のコンタクトレンズの、該レンズ本体の少なくとも一つの前部表面および後部表面上の窪みの該平均密度は、表面900μm2当たり約5個の窪み〜表面900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲、表面900μm2当たり約80個の窪み〜表面900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲、表面900μm2当たり約100個の窪み〜表面900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲または表面900μm2当たり約200個の窪み〜表面900μm2当たり約1,000個の窪みなる範囲であり得る。
【0012】
該多数の窪みは、例えばその他の実質的に平滑な該レンズ本体の該前部表面および/または後部表面から、該レンズ本体の内部に伸びている。即ち、該多数の窪み、並びに該レンズ本体の、その他の平滑な前部表面および/または後部表面は、隆起突出部ではなく、またそのように合理的に考えることはできない。簡単に言えば、該レンズ本体は、隆起突出部を持つことはできない。更に、上記の如く、該レンズ本体の該前部表面、該後部表面、またはこれら両者上の該多数の窪みは、本発明のコンタクトレンズの他の表面特徴と共に、ある程度の表面粗さを与えることができる。しかし、このような表面粗さが、該レンズの着用者の快適性に、実質上の悪影響を及ぼすことはないことが分かった。更に、該レンズ本体表面上に存在する該窪みは、他の対向する表面にまで、該レンズ本体の全厚みを介して伸びてはおらず、従って該窪みは、該レンズ本体を貫通して伸びている孔ではないことを理解すべきである。
【0013】
所定の期間、例えば水和処理後の少なくとも12時間なる期間に渡り、本発明のコンタクトレンズが、その前進接触角およびウォーターブレークアップ時間(water breakup times)を実質的に維持する能力は、本発明のコンタクトレンズの該レンズ本体の有益な表面濡れ特性が、該水和後またはそれに伴う短期間においてのみ起る現象であるというよりも、実質的な期間に渡り維持され、あるいは実質的に長期間に渡り、あるいは実質上永久的に持続することを示す。本発明のコンタクトレンズの上記濡れ特性は、このようなレンズを、長期間、例えば少なくとも約1日または約5日あるいは約10日あるいは約30日間に渡る継続的着用期間に及び着用する、レンズの着用者にとって有用なことであり得る。
【0014】
一態様において、該レンズ本体は水膨潤性であり、例えば少なくとも約20%なる膨潤ファクタ(swell factor)を有している。該レンズ本体の平衡含水率(EWC)は、少なくとも約25%または少なくとも約30%または少なくとも約35%または少なくとも約40%または少なくとも約50%またはそれ以上であり得る。
【0015】
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの該レンズ本体は、少なくとも1種のシリコーン-含有モノマー、少なくとも1種のシリコーン-含有マクロマー、少なくとも1種のシリコーン-含有プレポリマー、またはこれらの組合せからなる単位を含む。該レンズ本体は、親水性のシリコーン-含有ポリマー材料を含むことができる。
【0016】
幾つかの態様において、本発明のコンタクトレンズの該レンズ本体は、該レンズ本体のポリマーマトリックス内で物理的に絡み合っている親水性ポリマー系内部湿潤剤を含まない。例えば、如何なる親水性ポリマー系内部湿潤剤も、硬化されて該レンズ本体を形成する上記重合性組成物中に含められることはない。
【0017】
一態様において、本発明のコンタクトレンズの該レンズ本体は、完全にまたは部分的に硬化されており、一方で非-極性材料を含むコンタクトレンズ用金型と直接接触した状態にある。例えば、制限なしに、該非-極性材料は、ポリプロピレン、同様な非-極性材料、およびこれらの混合物を含むことができる。幾つかの態様において、本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、以下のような諸特性を持つ、有核熱可塑性ポリプロピレン樹脂で作成されたコンタクトレンズ金型アセンブリー内で、流込み成形される:
(i) 約15g/10分〜約40g/10分なる範囲の溶融流量;
(ii) 約0.900g/cm3なる密度;
(iii) 約0.010〜約0.020インチ/インチなる範囲の、線流れ成型収縮;
(iv) 約38.6MPa(5600psi)なる引張強さ;
(v) 約8.0%なる降伏点引張伸び;
(vi) 約1378MPa〜約1998MPa(約200,000〜約290,000psi)なる範囲の曲げ弾性率;および
(vii) 約110なるロックウエル硬さ;または
2またはそれ以上の上記特性の組合せ。
【0018】
本発明のコンタクトレンズは、レンズ本体を含み、該レンズ本体は、反応性成分を含有する重合性組成物の反応生成物を含む。該反応性成分は、(1) シリコーン-含有モノマー、シリコーン-含有マクロマー、シリコーン-含有プレポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分;(2) 少なくとも1種の親水性モノマー;および(3) 重合中に該反応性成分を架橋してポリマー製レンズ本体を形成する、少なくとも1種の架橋剤を含む。一態様において、該レンズ本体は、希釈剤の不在下における、重合性成分の重合を含む方法により製造される。換言すれば、該重合性組成物は、希釈剤を含まない重合性組成物である。
【0019】
上記本発明の重合性組成物において有用なシリコーン-含有モノマーは、700ダルトン未満の分子量を持つことができる。本発明の重合性組成物において有用なシリコーン-含有マクロマーは、700ダルトン〜約2,000ダルトンなる範囲の分子量を持つことができる。本発明の重合性組成物において有用なシリコーン-含有プレポリマーは、2,000ダルトンを越える分子量を持つことができる。該分子量は、当業者には理解されているように、数平均分子量または重量平均分子量何れであってもよい。
【0020】
一態様において、本発明のコンタクトレンズの上記レンズ本体は、流込み成形されたレンズ本体であって、該本体は、前部表面および後部表面を含み、これら表面各々は、プラズマ処理された表面を含まない。換言すれば、該前部表面および後部表面を含むこれらのレンズ本体は、単一の流込み成形工程で製造され、また該表面を所定の態様のプラズマ処理に掛けることなしに製造される。もう一つの態様において、本発明のコンタクトレンズの上記レンズ本体は、一表面を含み、該表面は、該レンズ本体の残りの表面とは異なる組成を持ち、例えば該レンズ本体は、水または水性溶液に該レンズ本体を暴露することにより形成された表面層を含む。
【0021】
幾つかの態様において、本発明のコンタクトレンズの上記レンズ本体は、該水または水性溶液内で該レンズ本体を水和処理する前に、有機溶媒または有機溶媒成分を含む水性溶液による抽出処理に付されることはない。本発明のコンタクトレンズは、有機溶媒、例えば、制限されるものではないが、揮発性アルコール、または有機溶媒を含有する水性溶液による抽出処理なしに、効果的にまたは十分に濡れ性の表面を持つことができる。このような眼科的に許容される、または生体適合性のコンタクトレンズは、1回の水によるフラッシングまたは洗浄、もしくは複数回に及ぶ水によるフラッシングまたは洗浄によって得ることができる。本発明のコンタクトレンズは、レンズ本体を含み、該本体は、水を含有し、揮発性アルコールを含まない、単一の洗浄液または複数の洗浄液で洗浄されているものであると理解することができる。これらのレンズは、1回またはそれ以上の回数に渡り、このような揮発性アルコールを含まない液体で洗浄することができ、また該洗浄は、最終的なコンタクトレンズの包装内で、あるいは1またはそれ以上の他の洗浄容器内で行うこともできる。
【0022】
本発明のコンタクトレンズの上記レンズ本体は、包装用の液体中に入れる前に、液体としての水または水性媒体と接触状態に置かれていてもよい。該水性媒体は、界面活性剤成分を含むことができる。一態様において、このような水または水性媒体は、有機溶媒または揮発性のアルコールを含まない。
【0023】
本発明のもう一つの広義の局面においては、コンタクトレンズの製造方法が提供される。本発明の方法は、前部表面および後部表面を持つコンタクトレンズ本体を製造する工程を含み、ここで、水または水性溶液中での水和処理の後に、湿潤した際に、該レンズ本体の該前部表面および後部表面の少なくとも一つは、約50nm乃至1,500nm未満なる範囲の平均径を持つ多数の窪みを含み、かつ(A) 該レンズ本体は所定の態様のプラズマ処理に付されておらず、(B) 該レンズ本体は、該本体が製造された後に、重合性膨潤剤により処理されておらず、あるいは該レンズ本体は、上記処理(A)および(B)両者に掛けられていないことを特徴とする。
【0024】
前記レンズ本体の製造段階は、反応性成分を含有する重合性組成物を重合する工程を含むことができる。該反応性成分は、(1) シリコーン-含有モノマー、シリコーン-含有マクロマー、シリコーン-含有プレポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分;(2) 少なくとも1種の親水性モノマー;および(3) 上記重合段階中に、該反応性成分を架橋するのに有効な、少なくとも1種の架橋剤を含む。
【0025】
本発明の方法に従って製造された、該コンタクトレンズおよびレンズ本体は、本明細書の他の部分において記載されているコンタクトレンズおよびレンズ本体であり得る。
【0026】
本発明の方法は、非-極性材料、例えば本明細書の他の部分において記載されているような非-極性材料を含む、コンタクトレンズ用金型を使用して行うことができる。
【0027】
本発明の様々な態様は、以下の詳細な説明および付随的な開示において詳しく説明される。本明細書において記載するあらゆる特徴およびその組合せは、本発明の範囲内に含まれるが、任意のかかる組合せに含まれる該諸特徴は、本発明の内容、本明細書および当業者の知見から明らかな如く、相互に相反するものではない。更に、任意の特徴およびこれらの組合せは、本発明の任意の態様から特定的に排除できる。本発明の追加の態様は、以下の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明らかであり、これらの内容は、本特許出願の欠くことのできない部分である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、一連の16個のテスト用コンタクトレンズおよび一連の市販品として入手できるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの原子間力顕微鏡(AFM)実験により決定した、窪みの平均径(nm)を示す図である。
【図2】図2は、一連の16個のテスト用コンタクトレンズおよび一連の市販品として入手できるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのAFM実験により決定した、窪みの平均深さ(nm)を示す図である。
【図3】図3は、一連の16個のテスト用コンタクトレンズおよび一連の市販品として入手できるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのAFM実験により決定した、表面窪み密度を示す図である。
【図4】図4は、一連の16個のテスト用コンタクトレンズおよび一連の市販品として入手できるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのAFM実験により決定した、平均のRMS表面粗さ(nm)を示す図である。
【図5】図5は、水和処理後の、テスト用コンタクトレンズ、即ちレンズ処方物1〜3の、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図6】図6は、水和処理後の、テスト用コンタクトレンズ、即ちレンズ処方物4〜6の、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図7】図7は、水和処理後の、テスト用コンタクトレンズ、即ちレンズ処方物7〜9の、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す、写真である。
【図8】図8は、水和処理後の、テスト用コンタクトレンズ、即ちレンズ処方物10〜12の、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図9】図9は、水和処理後の、テスト用コンタクトレンズ、即ちレンズ処方物13および14の、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図10】図10は、水和処理後の、テスト用コンタクトレンズ、即ちレンズ処方物15および16の、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図11】図11は、水和処理後の、市販品として入手できる3種のレンズの、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図12】図12は、水和処理後の、市販品として入手できる3種のレンズの、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図13】図13は、水和処理後の、市販品として入手できる3種のレンズの、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図14】図14は、水和処理後の、市販品として入手できる2種のレンズの、AFM実験により決定した、該レンズ表面の形態を示す写真である。
【図15】図15は、テスト用コンタクトレンズ、即ち湿潤または水和状態および乾燥状態両者におけるレンズ処方物1の、写真を示すものである。
【図16】図16は、テスト用コンタクトレンズ、即ち湿潤または水和状態および乾燥状態両者におけるレンズ処方物5の、写真を示すものである。
【図17】図17は、テスト用コンタクトレンズ、即ち湿潤または水和状態および乾燥状態両者におけるレンズ処方物15の、写真を示すものである。
【図18】図18は、市販品として入手できる1種のレンズの、湿潤または水和状態および乾燥状態両者における写真を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義:本欄の説明、追加の説明、特許請求の範囲および添付物の内容において、以下の用語は、以下の定義に従って使用されているものである。
【0030】
ここにおいて使用する用語「ヒドロゲル」とは、水により膨潤することのできる、または水で膨潤する、ポリマー材料、典型的にはポリマー鎖の網状構造またはマトリックスを意味する。ヒドロゲルは、また平衡状態で水を保持する材料として理解することもできる。該網状構造またはマトリックスは、架橋されていても架橋されていなくてもよい。ヒドロゲルは、水膨潤性または水により膨潤される、コンタクトレンズを含むポリマー材料を意味する。即ち、ヒドロゲルは、(i) 水和されていない、および水膨潤性;または(ii) 部分的に水和および水で膨潤された;または(iii) 完全に水和および水で膨潤されたものであり得る。該ヒドロゲルは、シリコーンヒドロゲル、シリコーンを含まないヒドロゲル、または本質的にシリコーンを含まないヒドロゲルであり得る。
【0031】
上記用語「シリコーンヒドロゲル」または「シリコーンヒドロゲル材料」とは、ケイ素(Si)-含有成分またはシリコーン(SiO)-含有成分を含む、特定のヒドロゲルを意味する。例えば、シリコーンヒドロゲルは、典型的にはケイ素含有材料と従来の親水性ヒドロゲルプリカーサとを結合することにより製造される。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、視力補正、矯正コンタクトレンズを包含するコンタクトレンズであり、これは、シリコーンヒドロゲル材料を含んでいる。
【0032】
「シリコーン-含有」成分は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマーにおいて、少なくとも一つの[-Si-O-Si-]結合を含む成分であり、ここで各ケイ素原子は、場合により幾つかの様式で、例えば場合により化学的に、例えば共有結合により結合したものであり得る、1またはそれ以上の、同一または異なっていてもよい、有機ラジカル置換基(R1、R2)または置換された有機ラジカル置換基、例えば-SiR1R2O-を持つことができる。
【0033】
本明細書に記載されるポリマーに関連する「分子質量」とは、ポリマーの呼称平均分子質量を意味し、典型的にはサイズ排除クロマトグラフィー、光散乱技術、または1,2,4-トリクロロベンゼン中での極限粘度測定によって測定される。ポリマーに関連する分子量は、数平均分子量または重量平均分子量の何れかで表すことができ、また販売業者により供給された材料の場合には、その供給元に依存するであろう。典型的には、あらゆるこのような分子量測定の基本は、その包装材料に与えられていない場合にも、該供給元から容易に得ることができる。典型的に、モノマー、マクロマー、プレポリマーまたはポリマーの分子量に関するここでの言及は、重量平均分子量を意味する。数平均および重量平均分子量両者の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィーまたはその他の液体クロマトグラフィー技術を利用して行うことができる。分子量の値を測定するためのその他の方法、例えば末端基解析または束一性(例えば、凝固点降下、沸点上昇、または浸透圧)の測定を利用して、数平均分子量を求め、あるいは光散乱技術、超遠心分離法または粘度測定法を利用して、重量平均分子量を決定することも可能である。
【0034】
親水性ポリマーの「網状構造」または「マトリックス」とは、典型的には、共有結合または物理的結合、例えば水素結合によって、ポリマー鎖間に架橋結合が形成されていることを意味する。網状構造は、2またはそれ以上の成分を含むことができ、また相互貫入ポリマー網状構造(IPN)を含むことができ、ここでは、相互貫入ポリマー網状構造が存在する場合には、それらの間に幾分かの共有結合があるが、該ポリマーは該網状構造を破壊することなしに相互に分離することのできないように、一種のポリマーが第二のポリマーと物理的に絡み合っている。
【0035】
「親水性」物質とは、水を好む、または水に対するアフィニティーを持つ物質である。親水性化合物は、水に対してアフィニティーを持ち、また通常帯電しており、あるいは極性部分あるいは水を引付ける基を有する。
【0036】
ここで使用する「親水性ポリマー」とは、水に対するアフィニティーを持ち、また水を吸収することのできるポリマーとして定義される。親水性ポリマーは、必ずしも水に対して溶解性ではない。親水性ポリマーは、水に対して可溶性であるか、または水に対して不溶性、例えば実質的に不溶性であり得る。
【0037】
「親水性成分」とは、ポリマーであってもまたはポリマーでなくてもよい親水性物質である。親水性成分は、残りの反応性成分と結合した場合には、少なくとも約20%(w/w)、例えば少なくとも約25%(w/w)なる含水率を、得られる水和されたレンズに与えることのできる成分を含む。親水性成分は、親水性モノマー、親水性マクロマー、親水性プレポリマー、親水性ポリマーまたはこれらの組合せを含むことができる。親水性マクロマー、親水性プレポリマー、および親水性ポリマーは、また親水性部分と疎水性部分とを持つものであると理解することもできる。典型的には、該親水性部分および該疎水性部分は、該マクロマー、プレポリマーまたはポリマーが、親水性となるような相対的量で存在する。
【0038】
「モノマー」とは、重合性の比較的分子量の低い化合物、例えば700ダルトン未満の平均分子量を持つ化合物を意味する。一例において、モノマーは、他の分子と結合して、ポリマーを生成すべく重合可能な、1またはそれ以上の官能基を含む分子からなる単一の単位を含むことができ、ここで該他の分子は、モノマーと同一の構造または異なる構造を持つものである。
【0039】
「マクロマー」とは、中程度または高い分子量を持つ化合物またはポリマーを意味し、これは、重合性のまたは更に重合することのできる、1またはそれ以上の官能基を含むことができる。例えば、マクロマーは、約700ダルトン〜約2,000ダルトンなる範囲の平均分子量を持つ化合物またはポリマーであり得る。
【0040】
「プレポリマー」とは、重合性または架橋可能なより高分子量の化合物を意味する。ここで使用するプレポリマーは、1またはそれ以上の官能基を含むことができる。一態様において、プレポリマーは、全体としての分子が、重合性または架橋性を維持しているような、一緒に結合された一連のモノマーまたはマクロマーであり得る。例えば、プレポリマーは、約2,000ダルトンを越える平均分子量を持つ化合物であり得る。
【0041】
「ポリマー」とは、1種またはそれ以上のモノマー、マクロマー、プレポリマーまたはこれらの混合物を重合することによって生成される物質を意味する。ここで使用するようなポリマーとは、重合不可能であるが、他のポリマー、例えば重合性組成物中に存在する他のポリマーと架橋反応し得る、あるいはモノマー、マクロマーおよび/またはプレポリマーの反応により、重合性組成物中の他のポリマーを生成する際に、架橋することのできる分子を意味するものと理解される。
【0042】
「相互貫入ポリマー網状構造」または「IPN」とは、網状構造を持つ形状にある、2またはそれ以上の異なるポリマーの組合せを意味し、該複数のポリマーの少なくとも一つは、他方のポリマーの存在下で、これらの間に如何なる共有結合もなしに、あるいは実質的に共有結合なしに、合成および/または架橋される。IPNは、2種の別々の網状構造を形成するが、並置または相互貫入状態にある、2種の鎖で構成されるものであり得る。IPNの例は、周期的IPN、併発IPN、半-IPNまたはホモ-IPNを含む。
【0043】
「擬似IPN」とは、該異なるポリマーの少なくとも一つが架橋されており、一方で少なくとも一つの他のポリマーが、架橋されていない(例えば、線状のまたは分岐した)重合反応生成物を意味し、ここで該架橋されていないポリマーは、該非-架橋ポリマーを、該網状構造から実質的に抜出すことができないように、分子的スケールで、該架橋ポリマー中に分配され、かつ保持されている。
【0044】
「ポリマー混合物」とは、ポリマー反応生成物を意味し、ここで種々のポリマーは、実質的に架橋なしに、線状または分岐状態にあり、またここで得られる該ポリマーブレンドは、分子的スケールでポリマー混合物の状態にある。
【0045】
「グラフトポリマー」とは、主鎖のものとは異なる、ホモポリマーまたはコポリマーを含む側鎖を持つ分岐ポリマーを意味する。
【0046】
「付着」とは、特に述べない限り、電荷結合、グラフト結合、錯体、結合(化学的結合または水素結合)、または接着の何れかを意味する。
【0047】
本明細書で使用する用語「眼科学的に許容されるレンズ形成成分」とは、該レンズの着用者が、眼球に対する刺激などを包含する、実質的な不快感を経験または報告することのない、ヒドロゲルコンタクトレンズに配合することのできるレンズ形成成分を意味する。眼科学的に許容されるヒドロゲルコンタクトレンズは、眼科学的に許容される表面の濡れ性を有し、また典型的には著しい角膜の膨潤、角膜の脱水(「ドライアイ」)、上部-上皮アーク状損傷(superior-epithelial arcuate lesions:「SEALs」)またはその他の有意な不快感を引起すことがなく、あるいはこれらと関連性を持つことはない。
【0048】
上記用語「有機溶媒」とは、溶媒和能を持つ、あるいは前に抽出処理に付されていない、コンタクトレンズ本体内に存在する、少なくとも一つの物質、例えば未反応物質、希釈剤等(これらに限定されない)を溶解する有機物質を意味する。一例において、該物質は、水または水性溶液に対して溶解性ではなく、あるいはこれらに溶解しない物質を意味する。もう一つの例において、該物質は、水または水性溶液に対してさほど溶解性ではなく、あるいはこれらにそれほど溶解しない物質を意味する。即ち、該物質は、水または水性溶液に比較して、有機溶媒に対して高い溶媒和性を持つ。従って、このような抽出処理されていないコンタクトレンズ本体と接触状態にある該有機溶媒は、該レンズ本体中に存在する少なくとも1種の物質を溶媒和しまたは溶解するのに有効であり、あるいはより高い程度まで、該レンズ本体中に存在する少なくとも1種の物質の溶媒和または溶解性を高めて、該少なくとも1種の物質の該レンズ本体中の濃度を減じ、あるいは水または水性溶液によって処理されたレンズ本体に比して、該レンズ本体中の該少なくとも1種の物質の濃度を減じるのに効果的である。該有機溶媒は、希釈することなしに、即ち100%有機溶媒として使用することができ、あるいは100%に満たない有機溶媒を含む組成物、例えば有機溶媒を含む水性溶液(これらに限定されない)中で使用することができる。一般的に、有機溶媒は、例えば少なくとも1種の物質に対して作用、例えば直接作用して、該少なくとも1種の物質を溶媒和または溶解する。有機溶媒の例は、アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール等のアルカノール、クロロホルム、ブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等、およびこれらの混合物含むがこれらに限定されない。
【0049】
前記用語「界面活性剤」または「界面活性剤成分」とは、水の表面張力を低下する能力を持つ物質、例えば水または該物質が存在する水性溶液の表面張力を低下する能力を持つ物質を意味する。該水の表面張力を低下することにより、該界面活性剤または該界面活性剤成分は、該界面活性剤または該界面活性剤成分を含有する該水が、以前に有機溶媒による抽出処理に付されていないコンタクトレンズ本体と接触状態にある際に、該水が、より一層密に該レンズ本体と接触し、および/または該界面活性剤または界面活性剤成分を含まない水に対して、該レンズ本体から、その中に存在する少なくとも1種の物質をより効果的に洗流し、あるいはこれを除去することを容易にする。一般的に、界面活性剤または界面活性剤成分は、該少なくとも1種の物質に直接作用して、これを溶媒和または溶解することはない。界面活性剤または界面活性剤成分の例は、制限なしに、ベタイン型のものを含む両性イオン性界面活性剤、ポリソルベート80等のポリソルベート型、ポロキサマーまたはポロキサミン型のものを含むノニオン性界面活性剤、フッ素化界面活性剤等、およびこれらの混合物を含む。
【0050】
追加の定義は、以下の章においても見出すことができる。
【0051】
レンズ処方物
ヒドロゲルは、本発明のコンタクトレンズに対して使用される一群の材料を表す。ヒドロゲルは、平衡状態で水を含む、水和され、架橋されたポリマー系を含む。従って、ヒドロゲルは、1種またはそれ以上の反応性成分から製造されたコポリマーである。該反応性成分は、架橋剤により架橋することができる。
【0052】
親水性モノマー
この親水性モノマーは、例えば親水性部分を含むシリコーン-含有モノマー、親水性シリコーンを含まないモノマー、またはこれらの組合せであり得る。該親水性モノマーは、疎水性モノマーとの組合せで使用することができる。該親水性モノマーは、親水性および疎水性部分または成分両者を持つモノマーであり得る。本発明の重合性レンズ組成物において使用される親水性モノマーの型およびその量は、使用される他のレンズ-形成モノマーの型に応じて変えることができる。シリコーンヒドロゲルにおいて使用するための親水性モノマーに関する、非-限定的な例が、ここに与えられている。
【0053】
架橋剤
該ヒドロゲルを製造する上で使用する、該モノマー、マクロマーまたはプレポリマーに対する架橋剤は、当分野において公知のものを含むことができ、また該架橋剤の例も、ここに与えられる。適当な架橋剤は、例えばジアクリレート-(またはジビニルエーテル-)で官能化されたエチレンオキサイドオリゴマーまたはモノマー、例えばトリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(TEGDVE)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、およびトリメチレングリコールジメタクリレート(TMGDMA)を包含する。典型的には、該架橋剤は、該重合性組成物において、比較的少ない総量で、該重合性シリコーンヒドロゲル組成物中に存在し、例えば該重合性組成物の質量を基準として、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)なる範囲、あるいは約0.5%(w/w)〜約5%(w/w)なる範囲、あるいは約0.75%(w/w)〜約1.5%(w/w)なる範囲の量で、該ゲル組成物中に存在する。
【0054】
シリコーンヒドロゲルレンズ処方物
シリコーンヒドロゲルレンズ処方物は、少なくとも1種のシリコーン-含有成分、少なくとも1種の相溶性親水性モノマー、および少なくとも1種の相溶性架橋剤を含む。本明細書において論じるような重合性レンズ処方物に関連して、「相溶性」成分とは、重合前に重合性組成物中に存在した場合に、該組成物から、重合されたレンズ本体の製造を可能とするのに十分な期間に渡り安定な、単一の相を形成する成分を意味する。幾つかの成分に対して、ある範囲の濃度が適していることを理解することができる。更に、「相溶性」成分は、重合して、重合されたレンズ本体を形成した場合に、コンタクトレンズとして使用するのに十分な物理的諸特性(例えば、満足な透明性、モジュラス、引張強さ等)を持つレンズを製造する成分である。
【0055】
シリコーン-含有成分
該シリコーン-含有成分のSiおよび結合したO部分(Si-O部分)は、該シリコーン-含有成分中に、該シリコーン-含有成分の全分子量の、20%(w/w)を越える量、例えば30%(w/w)を越える量で存在し得る。有用なシリコーン-含有成分は、重合性官能基、例えばビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、およびスチリル官能基を含む。本発明のコンタクトレンズを得ることのできる、該シリコーン-含有成分は、例えば重合によって得ることができ、1種またはそれ以上のシリコーン-含有モノマー、1種またはそれ以上のシリコーン-含有マクロマー、1種またはそれ以上のシリコーン-含有プレポリマー、またはこれらの混合物を含む。本明細書に記載のようにして製造されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーン-含有モノマーおよび/またはシリコーンを主成分とするマクロマーおよび/またはシリコーンを主成分とするプレポリマーおよび親水性モノマーまたはコモノマー、および架橋剤を主成分とするものであり得る。ここに記載した他のシリコーン-含有化合物に加えて、本発明のレンズにおいて有用であり得る、更なるシリコーン-含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,139,513号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,496,871号、同第5,959,117号、同第5,959,117号、同第5,998,498号、および同第5,981,675並びに米国特許出願第2007/0066706 A1号、同第2007/0296914 A1号、および同第2008/0048350 A1号に見出すことができる。これら特許並びに特許出願の開示事項全てを、参考としてここに組入れる。該シリコーン-含有成分は、シリコーン-含有モノマー、シリコーン-含有マクロマーまたはシリコーン-含有プレポリマーであり得る。
シリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、例えば以下の一般式(I)で示される構造を持つことができる:
【0056】
【化1】

(I)
【0057】
ここで、R5はHまたはCH3であり、XはOまたはNR55(ここで、R55はHまたは炭素原子数1〜4の一価のアルキル基である)であり、aは0または1であり、Lは1〜20個の炭素原子または2〜10個の炭素原子を含み、更に場合によりエーテルおよび/またはヒドロキシ基を含むことのできる二価の結合基、例えばポリエチレングリコール鎖であり、pは1〜10なる範囲、または2〜5なる範囲の値であり得、R1、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、夫々独立に、1〜約12個の炭素原子を持つ炭化水素基(例えば、メチル基)、1またはそれ以上のフッ素原子で置換されている炭化水素基、シロキサニル基、およびシロキサン鎖-含有部分から選択される基であり、ここで該基R1、R2およびR3の少なくとも一つは、少なくとも一つのシロキサン単位(-OSi)を含む。例えば、該基R1、R2およびR3の少なくとも一つは、-OSi(CH3)3および/または-OSi(R52R53R54)を含むことができ、ここでR52、R53およびR54は、夫々独立に、エチル、メチル、ベンジル、フェニル、または1〜約100個なる範囲、または約1〜約50個なる範囲、または約1〜約20個なる範囲のSi-O繰返し単位を含む一価のシロキサン鎖である。
【0058】
R1、R2およびR3の一つ、2つまたは3つ全ては、また他のシロキサニル基またはシロキサン鎖-含有部分を含むこともできる。上記構造(I)のシリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマー中に存在する、-X-L-で表される該組合せ結合基は、OまたはNである、ヘテロ原子を1またはそれ以上含むことができる。該組合せ結合基は、直鎖または分岐鎖であり得、ここでその炭素鎖セグメントは、直鎖であり得る。該-X-L-で表される組合せ結合基は、場合により、例えばカルボキシル基、アミド基、カルバメート基、およびカーボネート基等から選択される、1またはそれ以上の官能基を含むことができる。このような組合せ結合基の例は、例えば米国特許第5,998,498号および米国特許出願公開第2007/0066706 A1号、同第2007/0296914 A1号および同第2008/0048350号に与えられている。これらの特許および特許出願の全開示事項を、参考としてここに組入れる。本発明に従って使用される該シリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、上記構造式(I)において示されているように、単一のアクリロイル基を含むことができ、あるいは場合により2つのアクリロイル基を、即ち該モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの各末端に一つずつ、含むことができる。場合により、2つの型の該シリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの組合せを、本発明にとって有用な重合性組成物において使用することができる。
【0059】
本発明にとって有用なシリコーン-含有成分の例は、例えばポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリル酸系モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むが、これらに限定されず、同様に制限なしに、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、およびメチル-ジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシランを包含する。
有用なシリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの具体的な例は、例えば3-[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロプリメタクリレート(米国、PA州、モーリスビルのゲレスト(Gelest)社から入手できる「トリス(Tris)」)、およびモノメタクリルオキシプロピル末端を持つポリジメチルシロキサン(米国、PA州、モーリスビルのゲレスト(Gelest)社から入手できる「MCS-M11」)であり得る。幾つかのシリコーン-含有モノマーの例は、米国特許出願公開第2008/0269429号に開示されている。これらのシリコーン-含有モノマーは、二価の結合基としてアルキレン基(例えば、-(CH2)p-)を持つことができ、かつ上記構造(I)に関して「a」は0であり得、また少なくとも2つのシロキサニル基を持つことも可能である。これらのシリコーン-含有成分は、ここでは、構造(A)群のシリコーン-含有モノマーとして示されている。これらのシリコーン-含有モノマーの非-限定的な構造の例は、以下の2つの式で示される:
【0060】
【化2】

【0061】
【化3】

【0062】
本発明において有用なシリコーン-含有成分の他の具体例は、例えば3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(米国、PA州、モーリスビルのゲレスト(Gelest)社から入手できる「(SiGMA)」)およびメチル-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレート(「SiGEMA」)であり得る。これらのシリコーン-含有成分は、少なくとも一つのヒドロキシル基および上記構造(I)で示される二価の結合基Lにおける少なくとも一つのエーテル基、および少なくとも2つのシロキサニル基を含む。これらのシリコーン-含有成分は、ここでは構造(B)群のシリコーン-含有成分として表示される。この群のシリコーン-含有成分に関する更なる詳細は、例えば米国特許第4,139,513号において与えられている。この米国特許の内容全体を、参考としてここに組入れる。例えば、SiGMAは、以下の例示的な非-限定的構造によって表すことができる。
【0063】
【化4】

【0064】
上記構造(A)および(B)のシリコーン-含有成分は、夫々単独でまたは任意の組合せで、本発明において有用な重合性組成物中で使用することができる。該構造(A)および/または(B)のシリコーン-含有成分は、更に少なくとも1種のシリコーンを含まない親水性モノマー、例えば本明細書において記載したようなモノマーとの組合せとして使用することもできる。組合せて使用する場合には、例えば該構造(A)を持つシリコーン-含有成分の量は、例えば約10%(w/w)〜約40%(w/w)なる範囲、または約15%(w/w)〜約35%(w/w)なる範囲、または約18%(w/w)〜約30%(w/w)なる範囲であり得る。該構造(B)を持つシリコーン-含有成分の量は、例えば約10%(w/w)〜約45%(w/w)なる範囲、または約15%(w/w)〜約40%(w/w)なる範囲、または約20%(w/w)〜約35%(w/w)なる範囲であり得る。
【0065】
現時点において有用な該重合性組成物は、1種またはそれ以上の非-シリコーン-含有疎水性モノマーを含むことができる。このような疎水性モノマーの例は、制限なしに、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらの誘導体を包含する。非-シリコーン-含有疎水性モノマーの一例は、制限なしに、メチルメタクリレートを含む。2種またはそれ以上の疎水性モノマーの組合せを使用することも可能である。
本発明において有用な、シリコーン-含有成分の他の具体例は、以下の式で表される化学製品、または日本国特許出願公開第2008-202060A号(この特許出願の内容全体を、参考としてここに組入れる)に記載されている化学物質、例えば以下に列挙するものであり得る:
【0066】
【化5】


X-22-1625
Mw = 9,000 or 18,000



FMM, Mw = 1,500



X-22-1622, Mw = 582



DMS-R18, Mw = 4500 〜 5500



MCR-M07, Mw = 1132
【0067】
本発明において有用なシリコーン-含有成分の更に別の具体例は、以下の式で表される化学製品、または米国特許出願公開第2009/0234089号(その内容全体を、参考としてここに組入れる)に記載されている化学製品であり得る。一例において、該シリコーン-含有成分は、以下の一般式(II)で表される、1またはそれ以上の親水性ポリシロキサン成分を含むことができる:
【0068】
【化6】

【0069】
ここで、R1は、水素原子またはメチル基から選択され;R2は、水素原子またはC1-4炭化水素基から選択され;mは0〜10なる範囲内の整数を表し;nは、4〜100なる範囲内の整数を表し;aおよびbは、1またはそれ以上の整数を表し;a+bは20-500に等しく;b/(a+b)は0.01-0.22に等しく;またシロキサン単位の構成は、ランダムな構成を含む。このようなシリコーン-含有成分は、第7頁の実施例2を含む、米国特許出願公開第2009/0234089号の実施例に記載されている。
【0070】
その他のシリコーン-含有成分を使用することも可能である。例えば、他の適当な型の該成分は、ポリ(オルガノシロキサン)モノマー、マクロマーまたはプレポリマー、例えばα,ω-ビスメタクリルオキシ-プロピルポリジメチルシロキサンを含むことができる。もう一つの例は、mPDMS(モノメタクリルオキシプロピル末端を持つ、モノ-n-ブチル末端を持つポリジメチルシロキサン)である。他の有用なシリコーン-含有成分は、シリコーン-含有ビニルカーボネートまたはビニルカルバメートモノマー、マクロマーまたはプレポリマー、例えば制限なしに1,3-ビス[4-(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブチ-1-イル]テトラメチルシロキサン、3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシシラン]、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリル カルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート; トリメチルシリルエチルビニルカルバメート、およびトリメチルシリルメチルビニルカルバメートを含む。1またはそれ以上のこれらシリコーン-含有成分の例は、例えば米国特許第5,998,498号および米国特許出願公開第2007/0066706 A1号、同第2007/0296914 A1号、および同第2008/0048350号に与えられているものであり得る。これら特許および公開特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
【0071】
本発明に従って使用し得る、シリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの幾つかは、単一の個々のモノマー、マクロマーまたはプレポリマーとして使用でき、あるいは2またはそれ以上の、別々のモノマー、マクロマーまたはプレポリマーの混合物として使用することもできる。例えば、MCR-M07は、しばしば分子量の広い分布を持つ複数のシリコーン-含有化合物の混合物として与えられる。あるいはまた、本発明に従って使用し得る、該モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの幾つかは、別々の分子量を持つ、2またはそれ以上のモノマー、マクロマーまたはプレポリマーとして与えられる。例えば、X-22-1625は、約9,000ダルトンなる低分子量を持つ低分子量種、および約18,000ダルトンなる高分子量を持つ高分子量種として入手できる。
【0072】
シリコーンを含まないモノマー
親水性のシリコーンを含まないモノマーは、本発明のコンタクトレンズを製造するために使用される、上記重合性組成物中に含めることができる。該シリコーンを含まないモノマーは、1またはそれ以上のケイ素原子を含む親水性化合物を含まない。親水性のシリコーンを含まないモノマーは、シリコーンヒドロゲルを製造するための該重合性組成物において、シリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーとの組合せで使用することができる。親水性のシリコーンを含まないモノマーは、ケイ素を含まないヒドロゲルを製造するための該重合性組成物中に、シリコーンを含まない親水性のモノマーおよびシリコーンを含まない疎水性のモノマーを包含する、他のシリコーンを含まないモノマーとの組合せで使用することができる。シリコーンヒドロゲルにおいて、親水性のシリコーンを含まないモノマー成分は、他の重合性組成物の成分と併合した場合に、得られる水和レンズに、少なくとも約10%(w/w)または更には少なくとも約25%(w/w)の含水率を与えることのできるモノマー成分を含む。シリコーンヒドロゲルに関しては、全体としての該シリコーンを含まないモノマー成分は、該重合性組成物の、約25%(w/w)〜約75%(w/w)なる範囲、または約35%(w/w)〜約65%(w/w)なる範囲あるいは約40%(w/w)〜約60%(w/w)なる範囲の量であり得る。
【0073】
該シリコーンを含まないモノマーとして含めることのできるモノマーは、典型的に、少なくとも一つの重合性二重結合、少なくとも一つの親水性官能基、またはこれら両者を持つ。重合性二重結合の例は、例えばビニル系、アクリル系、メタクリル系、アクリルアミド系、メタクリルアミド系、フマール系、マレイン系、スチリル系、イソプロピルフェニル系、O-ビニルカーボネート系、O-ビニルカルバメート系、アリル系、O-ビニルアセチル系、およびN-ビニルラクタム系、およびN-ビニルアミド系二重結合を含む。一例において、該親水性モノマーは、ビニル-含有モノマー(例えば、アクリル-含有モノマーまたは非-アクリル系ビニル-含有モノマー)である。このような親水性モノマーは、それ自体、架橋剤として使用することができる。
【0074】
このような親水性のシリコーンを含まないモノマーは、架橋剤であっても、また必ずしも架橋剤でなくてもよい。上記のようなアクリロイル部分の小集団として考察すると、「アクリル系」または「アクリル-含有」またはアクリレート-含有モノマーは、アクリル基(CR'H=CRCOX)を含むモノマーであり、これらは容易に重合するものであることも知られている。該一般式において、RはHまたはCH3であり、R'はH、アルキル基、またはカルボニル基であり、またXはOまたはNである。
【0075】
シリコーンヒドロゲルに関連して、該親水性のシリコーンを含まない成分は、アクリル系モノマー(例えば、α-炭素位置におけるビニル基とカルボン酸末端を持つモノマー、α-炭素位置におけるビニル基とアミド末端とを持つモノマー等)を含む、非-シリコン含有モノマー成分および親水性ビニル-含有(CH2=CH-)モノマー(即ち、アクリル基の一部ではないビニル基を含むモノマー)を含むことができる。
【0076】
例示的なアクリル系モノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸、アクリル酸、メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、およびこれらの任意の混合物を包含する。一例において、全アクリル系モノマー含有量は、シリコーンヒドロゲルレンズ製品を製造するのに使用する該重合性組成物の、約5%(w/w)〜約50%(w/w)なる範囲にあり、また該モノマーの量は、該重合性組成物の、約10%(w/w)〜約40%(w/w)なる範囲または約15%(w/w)〜約30%(w/w)なる範囲にある。
【0077】
上記の如く、該シリコーンを含まないモノマーは、また親水性ビニル-含有モノマーをも含むことができる。本発明のレンズ材料に配合することのできる親水性ビニル-含有モノマーは、制限なしに、以下に列挙するものを含む:N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン(NVP))、N-ビニル-N-メチルアセタミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセタミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N-カルボキシ-β-アラニン、N-ビニルエステル等およびこれらの混合物。ビニル-含有モノマーの一例は、N-ビニル-N-メチルアセタミド(VMA)である。VMAの構造は、CH3C(O)N(CH3)-CH=CH2に相当する。一例において、該重合性組成物の全体としての該ビニル-含有モノマーの含有量は、本発明のシリコーンヒドロゲルレンズ製品を製造するために使用する、該重合性組成物の、約0%〜約50%(w/w)なる範囲、例えば約50%(w/w)までの量であり、また該モノマーは、該重合性組成物の、約20%(w/w)〜約45%(w/w)なる範囲、または約28%(w/w)〜約40%(w/w)なる範囲の量で存在し得る。当分野において公知のシリコーンを含まないレンズ-形成親水性モノマーも、適したものであり得る。
【0078】
本発明のコンタクトレンズ、例えば本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する際に有用な架橋剤は、制限なしに、上記した架橋剤を含む。架橋剤において使用するためのアクリレート-官能化エチレンオキサイドオリゴマーの例は、オリゴ-エチレンオキサイドジメタクリレートを含むことができる。該架橋剤は、TEGDMA、TEGDVE、EGDMA、TMGDMA、またはこれらの任意の組合せであり得る。典型的に、該架橋剤は、該重合性組成物中に比較的少ない全量で、例えば該重合性組成物の質量を基準として、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)なる範囲、または約0.5%(w/w)〜約5%(w/w)なる範囲、または約0.75%(w/w)〜約1.5%(w/w)なる範囲の量で、該重合性シリコーンヒドロゲル組成物中に存在する。
【0079】
追加のヒドロゲル成分
ここに記載されるシリコーンヒドロゲルレンズ用重合性祖瀬尾物は、また追加の成分、例えば1種またはそれ以上の開始剤、例えば1種またはそれ以上の熱開始剤、1種またはそれ以上の紫外線(UV)開始剤、可視光開始剤、これらの組合せ等、1種またはそれ以上のUV吸収剤またはUV吸収性化合物、またはUV輻射またはエネルギー吸収剤、着色剤、顔料、離型剤、抗菌性化合物、および/またはその他の添加剤をも含むことができる。本特許出願に関連する用語「添加剤」とは、本発明のヒドロゲルコンタクトレンズ用の重合し組成物または該重合されたヒドロゲルコンタクトレンズ製品に供給されるが、ヒドロゲルコンタクトレンズの製造にとって必須ではない、化合物または任意の化学試薬を意味する。
【0080】
本発明の重合性組成物は、1種またはそれ以上の開始剤化合物、即ち重合性組成物の重合を開始することのできる化合物を含むことができる。熱開始剤、即ち「分解開始」温度を持つ開始剤を使用することができる。例えば、本発明の重合性組成物において使用される熱開始剤の一例は、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO-64(登録商標))である。VAZO-64(登録商標)は、約62℃なる分解開始温度を有し、該分解開始温度は、該重合性組成物中の反応性成分が、重合を開始するであろう温度である。もう一つの熱開始剤は、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)(VAZO-52(登録商標))であり、これは約50℃なる分解開始温度を持つ。本発明の重合性組成物において使用する更なる熱開始剤は、アゾビス-イソブチロニトリル(VAZO-88(登録商標))であり、これは約90℃なる分解開始温度を持つ。ここに記載されるこれらVAZO熱開始剤全ては、デュポン(DuPont)社(米国、デラウエア州、ウイルミントン)から入手することができる。付随的な熱開始剤は、ニトリル類、例えば1,1'-アゾビス (シクロヘキサンカルボニトリル)および2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)並びに他の型の開始剤、例えばシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手できるものを含む。眼科学的に相溶性のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約0.05% (w/w)〜約0.8%(w/w)なる範囲、約0.1%(w/w)〜約0.6%(w/w)なる範囲のVAZO-64(登録商標)またはその他の熱開始剤を含む、重合性組成物から得ることができる。
【0081】
UV吸収剤は、例えば約320-380nmなる範囲のUV-A領域において比較的高い吸収値を示すが、約380nm以上において相対的に透明である、強力なUV吸収剤であり得る。その例は、光重合性ヒドロキシベンゾフェノンおよび光重合性ベンゾトリアゾール、例えば米国、NJ州ウエストパターソンのサイテックインダストリーズ(Cytec Industries)社からCYASORB UV416として市販品として入手できる2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシ)プロポキシベンゾフェノン、および米国GA州アテナイの、ノラムコ(Noramco)社からノルブロック(NORBLOC(登録商標)) 7966の下に市販品として入手できる、光重合性ベンゾトリアゾールを含む。本発明に従って使用するのに適した他の光重合性UV吸収剤は、重合性のエチレン性不飽和トリアジン、サリチレート、アリール-置換アクリレートおよびこれらの混合物を包含する。一般的に言えば、UV吸収剤が存在する場合には、これは、該重合性組成物の約0.5質量%〜該組成物の約1.5質量%なる範囲に相当する量で与えられる。例えば、該組成物は、約0.6%(w/w)〜約1.0%(w/w)なる範囲の量の、1またはそれ以上のUV吸収剤を含むことができる。
【0082】
本発明において有用な該重合性組成物は、また着色剤を含むことができるが、本発明では、着色されたおよび純粋、透明なレンズ製品両者を意図している。一例において、該着色剤は、得られるレンズ製品に色彩を与えるのに有効な、反応性の染料または顔料である。着色剤は、例えばバットブルー(VAT Blue) 6(7,16-ジクロロ-6,15-ジヒドロアントラジン-5,9,14,18-テトロン)、1-アミノ-4-[3-(β-スルファトエチルスルホニル)アニリノ]-2-アンスラキノンスルホン酸(C.I.リアクティブブルー(Reactive Blue)19、RB-19)、リアクティブブルー19とヒドロキシエチルメタクリレートとのコポリマー(RB-19 HEMA)、1,4-ビス[4-[(2-メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ]アンスラキノン(リアクティブブルー246、RB-246、アイルランド、アスロンの、アランケミカル社(Arran Chemical Company)から入手できる)、1,4-ビス[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-9,10-アンスラセンジオンビス(2-プロピオン酸)エステル(RB-247)、リアクティブブルー4、RB-4、またはリアクティブブルー4とヒドロキシエチルメタクリレートとのコポリマー(RB-4 HEMAまたは「ブルーヘマ(Blue HEMA)」)を含むことができる。他の例示的な着色剤は、例えば米国特許出願公開第2008/0048350号に記載されている。この公開特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。本発明に従って使用するのに適した他の着色剤は、フタロシアニン顔料、例えばフタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーン、クロム-アルミナ-コバルト酸化物、酸化クロム、および赤色、黄色、褐色および黒色用の様々な鉄酸化物である。二酸化チタン等の乳白剤も配合することができる。幾つかの用途に対しては、着色剤混合物を使用することもできる。着色剤を使用する場合、該着色剤は、約0.1%(w/w)〜約15%(w/w)なる範囲または約1%(w/w)〜約10%(w/w)なる範囲または約4%(w/w)〜約8%(w/w)なる範囲の量で存在し得る。
【0083】
本発明の重合性組成物は、また離型助剤、即ち硬化されたコンタクトレンズの、金型からの取出しをより一層容易にする上で効果的な、1種またはそれ以上の成分を含むこともできる。例示的な離型助剤は、親水性シリコーン、ポリアルキレンオキサイド、およびこれらの組合せを含む。本発明の重合性組成物は、付随的にヘキサノール、エトキシエタノール、イソプロパノール(IPA)、プロパノール、デカノールおよびこれらの組合せからなる群から選択される希釈剤を含むことができる。希釈剤を使用する場合、これは、典型的には約10%(w/w)〜約30%(w/w)なる範囲の量で存在する。比較的高濃度で希釈剤を含む組成物は、低いイオノフラックス(ionoflux)値、低いモジュラス、および高い伸び、並びに20秒を越えるウォーターブレークアップ時間(water break up times)(WBUTs)を持つ傾向にあるが、必ずしもそのような傾向を持つ訳ではない。ヒドロゲルコンタクトレンズの製造において使用するのに適した追加の材料は、米国特許第6,867,245号に記載されている。この米国特許の内容全体を、参考としてここに組入れる。しかし、幾つかの態様において、本発明の重合性組成物は、希釈剤を含まない。
【0084】
レンズの製法
コンタクトレンズの製造において、重合性組成物を硬化するための様々な方法が公知であり、これらは、スピン注型法および静止注型法を含む。スピン注型法は、金型に該重合性組成物を充填し、制御された様式で該金型を回転させ、一方で該重合性組成物をUV光に暴露する工程を含む。静止注型法は、一方の金型部分が前部レンズ表面を形成するような形状とされており、かつ他方の金型部分が、後部レンズ表面を形成するような形状とされている、2つの金型部分間に、該重合性組成物を供給する工程および該重合性組成物をUV光、熱、可視光、またはその他の輻射線に暴露することにより、これを硬化する工程を含む。コンタクトレンズを製造するための付随的な詳細および方法は、例えば米国特許出願公開第2007/0296914号および同第2008/0048350号に見出すことができる。これら公開特許出願の内容全体を、参考としてここに組入れる。
【0085】
該反応混合物を硬化した後、得られるポリマーを該金型から取出す。静止注型におけるような幾つかの状況においては、該金型から該ポリマーを分離する前に、先ず上記2つの金型部分を分離する。
【0086】
また、得られる該ポリマーを、水、水性溶液、有機溶媒、および有機溶媒を含む水性溶液を含むが、これらに限定されない、洗浄用液体で処理することができる。該洗浄処理は、希釈剤(使用した場合)、未反応の成分、副生成物等を除去し、また該ポリマーを水和して、水-膨潤ヒドロゲルを製造するのに使用し得る。上記の現時点において有用な重合性処方物または組成物を使用して作成したレンズは、水和処理及び包装に先立って、有機溶媒または有機溶媒を含む水性溶液で抽出処理する必要がない。有機溶媒による抽出処理に付されていない該レンズは、水または水性溶液、例えば生理塩水または界面活性剤または界面活性成分を含む水性溶液で洗浄することができる。存在する場合の該希釈剤、および残留する重合されていないモノマーの溶解度特性に応じて、最初に使用する上記溶媒は、有機液体、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、これらの混合物等、あるいは1またはそれ以上の有機液体と水との混合物であり得、引続き純水(または生理塩水または界面活性剤溶液)により抽出処理することにより、水で膨潤したポリマーを含有する本発明のシリコーンヒドロゲルを製造する。一態様においては、如何なる希釈剤も、該重合性組成物中に、またはこれと共に存在することはない。何れにしても、該洗浄中またはその後に、該レンズは、水または水性溶液、例えば包装用溶液中で水和される。ここに記載した如く、レンズを水性溶液で洗浄する場合、該レンズは少なくとも部分的に水和されることが理解されよう。上記洗浄/抽出工程、上記水和工程、または洗浄/抽出および水和工程両者は、加熱された液体、加圧された液体、または減圧条件下にある液体を用いて行うことができる。水和処理後の該シリコーンヒドロゲルは、該ヒドロゲルの全質量の、20%(w/w)〜80%(w/w)なる範囲の水、例えば30%(w/w)〜70%(w/w)なる範囲の水、または 40%(w/w)〜60%(w/w)なる範囲の水を含むことができる。
例示的な重合性組成物
現時点において有用な本発明の重合性組成物の上記モノマーは、単独で重合し、または他のモノマーと共に共重合して、コンタクトレンズ製品を与えることができる。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
コポリマーは、1種またはそれ以上のシリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマー、例えば第一および第二のシリコーン-含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマー、例えば構造(A)および(B)のモノマー、マクロマーまたはプレポリマーを、1種またはそれ以上のシリコーンを含まないモノマー、例えば表2に記載のモノマーおよび架橋剤、例えば表3に記載の架橋剤を組合せることにより製造できる。重合開始剤、例えば表4に記載の重合開始剤を、この混合物に添加する。
【0092】
該コポリマーは、適当なレンズ成型用金型、例えば非-極性材料、例えば有核熱可塑性ポリプロピレン樹脂製の金型を用いて、コンタクトレンズ形状で、あるいは先ず表1に掲載した成分を併合することにより、テフロン(登録商標)(Teflon)ライニングしたガラススライド間で製造したフィルム形状で調製される。該モノマー混合物を、金型またはスライドキャビティに分配し、次いで該開始剤を、例えば適当な分解開始温度まで加熱することにより、「分解開始」させる。成型の完了後、該金型を開放し、また該ポリマーを該金型から分離する。次いで、これらのレンズを、本明細書の他の部分で論じた如く、水または水性溶液と接触させて、該レンズを洗浄する。これらのレンズは、本明細書の他の部分で論じた如く、水または水性溶液で水和させることが可能である。次いで、これらのレンズを、ブリスターまたはブリスターパック、例えばPBS溶液を使用したブリスター内に包装することができる。本発明のコンタクトレンズ本体は、該レンズ本体を製造した後に、所定態様のプラズマ処理に付されておらず、および/または重合性膨潤剤で処理されていない。
【0093】
本発明のコンタクトレンズは、その様々な特性、例えば前進接触角、ウォーターブレークアップ時間(WBUT)、湿潤溶液の取込み、およびその他の技術によって示されるように、許容し得る濡れ性を持つことができる。
【0094】
該コンタクトレンズは、湿潤された際に、約150nm〜1,500nm未満なる範囲の平均径を持つ多数の窪み、または約130nm〜約630nm未満なる範囲の平均径を持つ多数の窪み、または約150nm〜約550nm未満なる範囲の平均径を持つ多数の窪みを含む、該レンズ本体の少なくとも一つの前部表面および後部表面を持つことができる。
【0095】
該多数の窪みは、約4nm〜約100nmなる範囲の平均深さを持つことができ、あるいは該多数の窪みは、約4nm〜約4nmなる範囲、約4nm〜約40nmなる範囲の平均深さを持つことができ、あるいは該多数の窪みは、約4nm〜約20nmなる範囲の平均深さを持つことができる。一態様において、該多数の窪みは、約8nm〜約20nmなる範囲の平均深さを持つことができ、あるいは該多数の窪みは、約15nm〜約90nmなる範囲の平均深さを持つことができる。
【0096】
本発明による該コンタクトレンズは、約5nm二乗平均(RMS)〜約30nmRMSなる範囲の平均表面粗さを持つことができ、また該平均表面粗さは、約7nmRMS〜約25nmRMSなる範囲であり得、あるいは該平均表面粗さは約10nmRMS〜約20nmRMSなる範囲であり得る。
【0097】
前記の多数の窪みは、表面積900μm2当たりの窪みの数、または表面積900μm2当たりの窪みの平均の数を意味する、表面積900μm2当たり約5個の窪み〜表面積900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲の密度または平均密度を持つことができ、あるいは該多数の窪みは、表面積900μm2当たり約80個の窪み〜表面積900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲の平均密度を持つことができ、あるいは該多数の窪みは、表面積900μm2当たり約200個の窪み〜表面積900μm2当たり約1,000個の窪みなる範囲の平均密度を持つことができる。一態様において、該多数の窪みは、表面積900μm2当たり約100個の窪み〜表面積900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲の平均密度を持つことができる。
【0098】
水または水性溶液による水和処理直後の、本発明のコンタクトレンズでは、そのレンズ本体の上記前部表面および後部表面の少なくとも一方は、100゜未満の前進接触角および5秒を越えるウォーターブレークアップ時間(WBUT)を持つことができる。本発明のコンタクトレンズでは、水または水性溶液による水和処理の少なくとも12時間後において、そのレンズ本体の該前部表面および後部表面の少なくとも一方は、100゜未満の前進接触角および5秒を越えるウォーターブレークアップ時間を持つことができる。一態様において、前記水または水性溶液による水和処理直後に、該レンズ本体の該前部表面および後部表面の少なくとも一方は、100゜未満の前進接触角および5秒を越えるウォーターブレークアップ時間を持ち、また該水または水性溶液による水和処理の12時間後において、該レンズ本体の該前部表面および後部表面の少なくとも一方は、100゜未満の前進接触角および5秒を越えるウォーターブレークアップ時間を持つ。
【0099】
本発明による該コンタクトレンズでは、前記水または水性溶液による水和処理直後に、該レンズ本体の該前部表面および後部表面の少なくとも一方は、水または水性溶液による水和処理の少なくとも12時間後における、該レンズ本体の該前部表面または後部表面の第二の前進接触角とは、僅かに30゜程度だけ異なっている、第一の前進接触角を持つことができ、あるいは該水または水性溶液による水和処理の少なくとも12時間後における、該レンズ本体の該前部表面または後部表面の第二の前進接触角とは、僅かに20゜程度だけ異なっている、第一の接触角を持つことができ、あるいは該水または水性溶液による水和処理の少なくとも12時間後における、該レンズ本体の該前部表面または後部表面の第二の前進接触角とは、僅かに10゜程度だけ異なっている、第一の接触角を持つことができる。
【0100】
本発明のコンタクトレンズでは、水または水性溶液による水和処理直後に、該レンズ本体の該前部表面または後部表面は、該水または水性溶液による水和処理の少なくとも12時間後における、該レンズ本体の該前部表面または後部表面の第二のウォーターブレークアップ時間とは、僅かに15秒程度だけ異なっている、第一のウォーターブレークアップ時間を持つことができ、あるいは該水または水性溶液による水和処理の少なくとも12時間後における、該レンズ本体の該前部表面または後部表面の第二のウォーターブレークアップ時間とは、僅かに10秒程度だけ異なっている、第一のウォーターブレークアップ時間を持つことができ、あるいは該水または水性溶液による水和処理の少なくとも12時間後における、該レンズ本体の該前部表面または後部表面の第二のウォーターブレークアップ時間とは、僅かに5秒程度だけ異なっている、第一のウォーターブレークアップ時間を持つことができる。
【0101】
コンタクトレンズの包装
コンタクトレンズ本体、例えば上記の如きもの、および包装用溶液を含む、コンタクトレンズの包装を提供する。該包装用溶液は、湿潤剤またはブリスターパッケージに対する該レンズの接着を防止し、またはこれを排除するのを助ける薬剤、例えば界面活性剤または親水性ポリマーを含むことができる。該界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80、ポロキサマー、ポロキサミン、またはサッカライドであり得る。該親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、またはこれらの組合せの形状にあるものであり得る。
【0102】
該コンタクトレンズの包装に関連して、該包装は、更に該コンタクトレンズ本体および該包装用溶液を保持するように付形されたキャビティを持つ基本部材、および該コンタクトレンズの保存寿命と等価な期間に渡り、該コンタクトレンズ本体および該包装用溶液を無菌状態に維持するように形成された、該基本部材に取付けられた封止手段をも含むことができる。
【実施例】
【0103】
以下の非-限定的な実施例は、本発明の幾つかの局面を例証するものである。
以下の略号および対応する化合物および構造を、以下の実施例において使用する。
MCR-M07:前に例示されたような、モノメタクリロキシプロピル末端を持つポリジメチルシロキサン(米国、PA州、モーリスビルのゲレスト(Gelest)社);
MCS-M11:モノメタクリロキシプロピル末端を持つポリジメチルシロキサン(米国、PA州、モーリスビルのゲレスト社)。その構造は以下の通りである:
【0104】
【化7】

【0105】
FMM:前に例示されたような、シリコーン-含有成分(米国、OH州、アクロンの、シン-エツシリコーンアメリカ(Shin-Etsu Silicones of America)社);
M5A:米国特許出願公開第2009/0234089号(日本国、カナガワ、アサヒカセイアイム株式会社)の実施例2に記載されている、親水性ポリシロキサンマクロモノマーと同一または構造において類似する、シリコーン-含有成分;
X22-1622:前に例示されたような、シリコーン-含有成分(米国、OH州、アクロンの、シン-エツシリコーンアメリカ社);
X22-1625:前に例示されたような、シリコーン-含有成分(米国、OH州、アクロンの、シン-エツシリコーンアメリカ社);
SiGMA:(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン。その構造は以下の通りである:
【0106】
【化8】

【0107】
Tris:3-[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピルメタクリレート。このものの構造は、以下の通りである:
【0108】
【化9】

【0109】
DMS-R18:前に例示されたような、メタクリロイルプロピル末端を持つポリジメチルシロキサン(米国、PA州、モーリスビルのゲレスト社);
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド;
VMA:N-ビニル-N-メチルアセタミド;
MMA:メチルメタクリレート;
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート;
EGMA:エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート;
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート;
TEGDMA:トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート;
TEGDVE:トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル;
VAZO 64(登録商標):2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル);
PBS:リン酸緩衝塩水(20mM、pH=7.3)
MPC:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(ヘマ(HEMA)-PC、リピデュア(LIPIDURE(登録商標))、日本国、東京のNOF社製);
VB6:バットブルー(VAT Blue) 6(7,16-ジクロロ-6,15-ジヒドロアントラジン-5,9, 14,18-テトロン);
EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート;
IBM:イソボルニルメタクリレート;
AE:アロキシエタノール。
【0110】
コンタクトレンズの製造
〔表5〕)の幾つかにより示されるような、原料および成分の様々な組合せを混合することにより製造した。該レンズ処方物は、以下のような一般的な方法で成型してレンズとした。
【0111】
コンタクトレンズ用の金型は、従来の射出成型技術および装置を用いて、非-極性ポリプロピレン樹脂から射出成型された。各コンタクトレンズ用金型は、該コンタクトレンズの前部表面を形成するための、凹形光学特性表面を含む雌型部材および該コンタクトレンズの後部表面を形成するための、凸形光学特性表面を含む雄型部材を含んでいた。該雌型部材は、前部表面用金型であると考えることができ、また該雄型部材は、後部表面用金型であると考えることができる。
【0112】
一定量の(約60μl)の本発明の重合性組成物を、上記金型の雌型凹部表面上に配置した。上記雄型を、該雌型の凹部表面と該雄型の凸表面との間に形成されるコンタクトレンズ型キャビティ内に、該重合性レンズ組成物が配置されるように、該雌型との接触状態に置いた。該雄型を、該雌型および該雄型の周辺領域間の絞り締めにより、所定位置に維持した。
【0113】
次いで、該重合性レンズ組成物を含む該コンタクトレンズ用金型を、オーブンに入れ、そこで該重合性レンズ組成物を、約100℃にて約30分間硬化させた。該硬化の後、該コンタクトレンズ用金型は、該コンタクトレンズ型のキャビティ内に重合されたコンタクトレンズ製品を含んでいた。
【0114】
該コンタクトレンズ用金型を、該オーブンから取出し、室温(約20℃)まで冷却させた。該コンタクトレンズ用金型を、機械的に、該雄型と雌型とを相互に分離するために、解除した。該重合されたコンタクトレンズ製品は、依然として該雄型に付着したままであった。
【0115】
次いで、該コンタクトレンズ製品を該雄型から分離するために、該重合されたコンタクトレンズ製品を、該雄型金型から取出した。
【0116】
該分離されたコンタクトレンズ製品を、次に水で洗浄し、PBS中で水和させ、また様々なテスト手順に付して、該水和コンタクトレンズ製品の特徴付けを行った。幾つかの例において、該コンタクトレンズ製品は、乾燥状態で、即ち乾燥状態にある該コンタクトレンズ製品について、例えば洗浄、抽出または水和処理前に、あるいは残存する水または溶媒を除去すべく乾燥した後に、テストされた。
【0117】
レンズ製品を特徴付けする方法
該コンタクトレンズ製品、特にこのような製品のコンタクトレンズ本体の該前部表面および後部表面のトポグラフィーを、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて分析した。使用したこの装置は、米国CA州サンタバーバラのビーコインスツルメント社(Veeco Instrument, Inc.)により市販されている、ビーコモデル(Veeco Model) CP II原子間力顕微鏡であった。この装置は、0.5Hzなる走査速度および10x10μm、20x20μm、30x30μm、および40x40μmなる走査領域を用いて、タッピングモードでの操作を利用した。得られたデータは、以下のようなソフトウエアを用いて解析した:ビーコインスツルメント社により提供された、画像解析バージョン2.1。
【0118】
以下の手順に従った:
タッピングモードで操作される該ビーコモデルCP II原子間力顕微鏡を使用して、該乾燥および湿潤レンズの画像を撮影した。テストされた該湿潤レンズは、PBS溶液内に維持した。特定の型のレンズに対して、3個のレンズをテストして、その原子間力顕微鏡(AFM)像を撮影した。1レンズサンプル上の少なくとも3か所の異なる領域を走査して、該AFMデータを集めた。湿潤レンズサンプルを、バイアルまたはブリスター包装から取出し、PBS溶液中に沈められたポリプロピレン金型の上部に据えた。その後、表面トポグラフィー像を、0.5Hzなる走査速度を用いて、様々な走査領域(10μmx10μm、20μmx20μm、30μmx30μm、および40μmx40μm)にて、液体環境中で撮影した。乾燥レンズサンプルを、両面炭素テープを用いて清浄なステンレススチールウエハ上に固定し、様々な走査領域(10μmx10μm、20μmx20μm、30μmx30μm、および40μmx40μm)にて、乾燥状態でテストした。更に、該レンズ表面の窪みを、画像解析バージョン2.1(ビーコインスツルメント社)を用いて解析した。該表面の窪みの分布または周期数を、30μmx30μm領域におけるAFM像から計数した。更に、50個の表面窪みを解析して、該AFM像における該窪みの平均径および平均深さを得た。更に、二乗平均(RMS)表面粗さを、様々な型のレンズについて、上記と同様なソフトウエアを用いて算出した。
【0119】
ウォーターブレークアップ時間(Water Break Up Time (WBUT))
テスト前に、レンズを、少なくとも24時間に渡り、3mLの新鮮なPBS中に浸漬する。テストの直前に、該レンズを振とうして、過剰量のPBSを除去し、該水膜が該レンズ表面から退くのに掛かる、秒単位での時間の長さを測定する(例えば、ウォーターブレークアップ時間(水BUTまたはWBUT))。
【0120】
前進接触角
この前進接触角は、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、ここに与えられるコンタクトレンズの該前進接触角は、キャプティブバブル法を利用して測定することができる。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの前進接触角は、クルス(Kruss) DSA 100装置[ハンブルグのクルス(Kruss) GmbH社]を用い、D.A. Brandreth:「動的接触角および接触角ヒステリシス(Dynamic contact angles and contact angle hysteresis)」, Journal of Colloid and Interface Science, vol. 62, 1977, pp. 205-212およびR. Knapikowski, M. Kudra:コンタクトビンケルメッスンゲンナッハデムビルヘルミー-プリンジップ-アインスタティスティッシャーアンザッツツールフェイヤーブールテイルング(Kontaktwinkelmessungen nach dem Wilhelmy-Prinzip-Ein statistischer Ansatz zur Fehierbeurteilung), Chem. Technik, vol. 45, 1993, pp. 179-185および米国特許第6,436,481号に記載のようにして測定することができる。これら文献の内容全体を、参考としてここに組入れる。
【0121】
一例として、該前進接触角は、リン酸緩衝塩水(PBS; pH=7.2)を用いて、キャプティブバブル法を利用して測定することができる。テストに先立って、該レンズを、pH7.2のPBS溶液中に、少なくとも30分間または一夜に渡り浸漬する。該レンズを、石英表面上で平坦な状態にし、テスト前に、PBSで10分間再度水和させる。自動シリンジ装置を用いて、気泡をレンズ表面上に配置する。該気泡のサイズを増減することにより、後退接触角(該バブルのサイズを増大した際に得られるプラトー部分)および前進接触角(該バブルのサイズを減じた際に得られるプラトー部分)を得ることができる。
【0122】
静止接触角
静止接触角は、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、該静止接触角は、キャプティブバブル法、またはDSA 100液滴形状解析装置[ドイツ国、ハンブルグのクルス(Kruss)社]を利用して測定することができる。テスト前に、該レンズを、pH7.2のPBS溶液中に、少なくとも30分間または一夜に渡り浸漬する。
【0123】
モジュラス
レンズ本体のモジュラスは、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、幅約4mmのコンタクトレンズ片を、レンズの中心部分から切取り、モジュラス(単位は、MPa)を、インストロン(Instron) 3342(米国、MA州、ノルウッド(Norwood)の、インストロン社(Instron Corporation))を用いて、25℃にて、少なくとも75%なる湿度条件下で、空気中で10mm/分なる速度での引張テストによって得た応力-歪曲線の初期勾配から決定することができる。
【0124】
イオノフラックス(Ionoflux)
本発明によるレンズのレンズ本体のイオノフラックスは、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、コンタクトレンズまたはレンズ本体のイオノフラックスは、米国特許第5,849,811号に記載されている「イオノフラックステクニック(Ionoflux Technique)」に実質的に類似する技術を用いて測定することができる。例えば、測定すべきレンズを、レンズ-保持デバイスの雄および雌部分間に配置することができる。該雄および雌部分は、フレキシブルシールリングを含み、該シールリングは、該レンズとそれぞれの該雄または雌部分との間に配置される。該レンズ-保持デバイスに該レンズを配置した後、該レンズ-保持デバイスを、ネジ付きのリッド内に入れる。該リッドを、ガラスチューブにネジ止めし、ドナーチャンバーを画成する。該ドナーチャンバーは、16mLの0.1モルNaCl溶液で満たすことができる。受入チャンバーを、80mLの脱イオン水で満たすことができる。導電率計のリードを、該受入チャンバーの脱イオン水中に浸漬し、攪拌バーを、該受入チャンバーに加える。該受入チャンバーは、温度調節機内に入れ、その温度を約35℃に維持する。最後に、該ドナーチャンバーを、該受入チャンバー内に浸漬する。導電率の測定は、該ドナーチャンバーの該受入チャンバーへの浸漬の10分後に開始し、2分毎に約20分間行うことができる。該導電率対時間のデータは、実質的に直線であるべきである。
【0125】
引張強さ
レンズ本体の引張強さは、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、幅約4mmのコンタクトレンズ片を、レンズの中心部分から切取り、引張強さ(単位は、MPa)を、インストロン(Instron) 3342(米国、MA州、ノルウッドの、インストロン社(Instron Corporation))を用いたテストから決定することができる。
【0126】
伸び
レンズ本体の伸びは、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、伸び(%)は、インストロン(Instron) 3342(米国、MA州、ノルウッドの、インストロン社(Instron Corporation))を用いて決定することができる。
【0127】
酸素透過率(Dk)
本発明のレンズのDk値は、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、DK値は、超等価性ソフトコンタクトレンズに関する酸素透過率(Dk)の単一-レンズポーラログラフィー測定(A single-lens polarographic measurement of oxygen permeability (Dk) for hypertransmissible soft contact lenses)と題する、M. Chhabra等の、Biomaterials 28 (2007) 4331-4342に掲載された文献に記載されているような、改良ポーラログラフィー法を用いて測定することができる。
【0128】
平衡含水率(EWC)
本発明のレンズの平衡含水率は、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、水和させたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを水性溶液から取出し、拭って過剰量の表面上の水を除去し、次いで質量を測定することができる。次いで、秤量されたレンズを、減圧下に80℃にて、オーブン内で乾燥し、次にこの乾燥されたレンズを、秤量することができる。質量差を、該水和レンズの質量から該乾燥レンズの質量を差引くことにより決定する。該含水率(%)は、(質量差/水和質量)×100である。
【0129】
レンズ中心部の厚み(CT)
このCTは、当業者には公知の日常的な方法を利用して測定することができる。例えば、該CTは、レーダー(Rehder) ETゲージ(米国、CA州、カストロバレーのレーダーディベロップメント社(Rehder Development Company))を用いて測定できる。
一連の16個のコンタクトレンズを製造し、上記の如くテストした。これら16個のレンズ 〔表5〕(表AB)に列挙されている重合性組成物から、ポリプロピレン(有核)製の金型内で成形した。
【0130】
【表5】

【0131】
また、一連の市販品として入手できるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、AFMを用いてテストして、トポグラフィーを解析した。これらのレンズは、その製造工程の一部として、所定態様のプラズマ処理に付されていない、市販品として入手できるレンズ、即ちアベイラ(AVAIRA(登録商標))レンズおよびビオフィ二ティー(BIOFINITY(登録商標))レンズ (CA州、プレザントンのクーパービジョン (CooperVision)社)、クラリティ(CLARITI(登録商標))レンズ(英国、ツイッケンハムのソフロン(Sauflon)社)およびアクビューオアシス(ACUVUE(登録商標) OASYS(登録商標))レンズ、アクビューアドバンス(ACUVUE(登録商標) ADVANCE(登録商標))レンズ、およびアクビュートゥルーアイ(ACUVUE(登録商標) TRUEYE(登録商標))レンズ(米国、FL州、ジャクソンビルのジョンソン&ジョンソンビジョンケア社(Johnson & Johnson Vision Care, Inc.))をも包含する。これらのレンズは、またその製造工程の一部として、所定態様のプラズマ処理に付されている、市販品として入手できるレンズ、即ちピュアビジョン(PUREVISION(登録商標))レンズ(米国、NY州、ロチェスターのボッシュ&ローム(Bausch & Lomb)社)、プレミオ(PREMIOTM)レンズ(日本国のメニコン(Menicon)社)、およびナイト&デイ(NIGHT & DAY(登録商標))レンズ、O2オプティクス(O2OPTIX(登録商標))レンズ、およびエアーオプティクス(AIR OPTIX(登録商標))レンズ (米国、GA州、ドゥルスのシバビジョン(Ciba Vision)社)を含む。
【0132】
これらAFMテストの幾つかの結果を、図1〜4および表AC(表6)に示す。更に、図5〜18は、これらレンズ表面の写真を示すものである。
【0133】
これらテストレンズ各々の前部/後部表面窪みのサイズ、深さおよび密度、並びにRMS表面粗さは、実質的に同一の値を維持していた。例えば、該AFM解析を水和処理直後または水和処理の12時間後または水和処理の24時間後の何れにおいて実施したかによらず、これらの値は±10%〜15%なる範囲内にあった。
【0134】
表AC(表6)および図1に示した如く、処方物1-14および16から製造したコンタクトレンズにおける表面窪みの平均径は、175.7nm〜615.8nmなる範囲にある。本発明の該処方物の幾つかは、例えば約150nm〜約1500nmなる範囲、約130nm〜約630nmなる範囲、約150nm〜約1500nmなる範囲、約170nm〜約570nmなる範囲、約180nm〜約380nmなる範囲、または約250nm〜約390nmなる範囲の、表面窪みの平均径を持つ。処方物15から製造したコンタクトレンズは、1174.6nmなる平均窪み径を持つ。テストされた市販品として入手できるレンズの中で、所定態様のプラズマ処理に付されていないレンズ、(即ち、アベイラ(AVAIRA(登録商標))レンズ、ビオフィ二ティー(BIOFINITY(登録商標))レンズ、クラリティ(CLARITI(登録商標))レンズおよびアクビュー(ACUVUE(登録商標))レンズ)は、検出し得る表面窪みを持たないか、あるいは処方物1-14および16から製造したレンズよりも大きな平均径を有する表面窪みを持つ。所定態様のプラズマ処理に付されているレンズ (即ち、上記のピュアビジョン(PUREVISION(登録商標))レンズ、プレミオ(PREMIO(登録商標))レンズ、ナイト&デイ(NIGHT & DAY(登録商標))レンズ、O2オプティクス(O2OPTIX(登録商標))レンズ、およびエアーオプティクス(AIR OPTIX(登録商標))レンズ)は、表面窪みを持たないか、あるいは幾分大きな、例えば約400nm〜約800nmなる範囲の平均径を有する表面窪みを持つ。
【0135】
【表6】

【0136】
表AC(表6)および図2に示した如く、処方物1-14および16から製造したコンタクトレンズにおける表面窪みの平均深さは、5.1nm〜48.1nmなる範囲にある。処方物15から製造したコンタクトレンズは、61.6nmなる表面窪みの平均深さを持つ。本発明の処方物の幾つかは、例えば約4nm〜約60nmなる範囲、約4nm〜約20nmなる範囲、約8nm〜約40nmなる範囲、約8nm〜約20nmなる範囲、約15nm〜約90nmなる範囲、または約15nm〜約30nmなる範囲の表面窪みの平均深さを持つ。
【0137】
表AC(表6)および図3に示した如く、処方物1-14および16から製造したコンタクトレンズにおける表面窪みの分布または密度は、900μm2当たり135〜1062なる範囲にある。処方物15から得たコンタクトレンズは、900μm2当たり5個の窪みなる密度を持つ。本発明の処方物の幾つかは、900μm2当たり約5個の窪み〜900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲、900μm2当たり約80個の窪み〜900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲、900μm2当たり約200個の窪み〜900μm2当たり約1,000個の窪みなる範囲、900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲、900μm2当たり2個の窪み〜900μm2当たり700個の窪みなる範囲、または900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約600個の窪みなる範囲の密度を持つ。所定態様のプラズマ処理に付されていない、テストされた市販品として入手できるレンズは、表面の窪みを全く持たないか、あるいは処方物1-14および16から製造したコンタクトレンズよりも実質的に低い表面窪み密度を持つ。
【0138】
表AC(表6)および図4に示した如く、処方物1-16から製造したコンタクトレンズの平均RMS表面粗さは、6.9〜19.7なる範囲にある。本発明の処方物の幾つかは、約5nm〜約30nmなる範囲、約5nm〜約20nmなる範囲、約5nm〜約15nmなる範囲、約7nm〜約25nmなる範囲、約10nm〜約30nmなる範囲、約15nm〜約30nmなる範囲、または約15nm〜約20nmなる範囲の平均RMS表面粗さを持つ。所定態様のプラズマ処理に付されていない、テストされた市販品として入手できるレンズは、幾分低い、例えば約5nm〜約10nmなる範囲の値となる傾向を示す、平均RMS表面粗さを有していた。
更に、以下の表AD(表7)は、本発明の処方物を用いて作成したレンズの特性特徴付けテストの結果を含む。
【0139】
【表7】

【0140】
図5-18は、タッピングモードを使用して、原子間力顕微鏡(AFM)により決定したようなレンズの表面形態を示す、一群の写真を含む。図5-10は、PBS中で水和させた後の、処方物1-16から製造したレンズを示す。図11-14は、PBS中でレンズを水和させた後に、タッピングモードのAFMを利用して決定したような、様々な市販品として入手できるレンズ、即ちアベイラ(AVAIRA(登録商標))レンズ、ビオフィ二ティー(BIOFINITY(登録商標))レンズ、クラリティ(CLARITI(登録商標))レンズ、プレミオ(PREMIO(登録商標))レンズ、ピュアビジョン(PUREVISION(登録商標))レンズ、アクビューオアシス(ACUVUE OASYS(登録商標))レンズ、アクビューアドバンス(ACUVUE ADVANCE(登録商標))レンズ、アクビュートゥルーアイ(ACUVUE TRUEYE(登録商標))レンズ、ナイト&デイ(NIGHT & DAY (登録商標))レンズ、O2オプティクス(O2OPTIX(登録商標))レンズ、およびエアーオプティクス(AIR OPTIX(登録商標))レンズの形態に関する写真を示すものである。
【0141】
図16-18におけるタッピングモードのAFMの結果は、湿潤または水和(PBS中で水和)された状態にある、および乾燥状態にある、テストされた、処方物1、5および16から作成したコンタクトレンズおよび市販品として入手できるアベイラ(AVAIRA(登録商標))レンズに関して示されたものである。これらの結果は、該表面窪みが、該湿潤レンズおよび乾燥レンズ両者において存在することを示している。即ち、該表面窪みは、該レンズの水和によって得られるものではなく、例えば該レンズの単なる水和によって得られるものではない。
【0142】
多数の刊行物、特許および特許出願を、上記部分において引用した。これらの引用された刊行物、特許および特許出願各々の内容全体を、参考としてここに組入れる。
【0143】
以上、本発明を、様々な特定の実施例および態様を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの限定されるものではなく、本発明は、添付した特許請求の範囲に記載の範囲内で、様々に実施できるものであると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部表面および後部表面を含む、シリコーンヒドロゲルレンズ本体を包含し、ここで水または水性溶液中で水和させた後、湿潤した際の該レンズ本体の該前部表面および該後部表面の少なくとも一方が、約150nmから1,500nm未満までの範囲の平均径を持つ多数の窪みを含み、かつ該レンズ本体が、所定の態様のプラズマ処理に付されておらず、該レンズ本体が、その製造後に重合性膨潤剤で処理されておらず、あるいは該レンズ本体が、該プラズマ処理および該膨潤剤での処理両者に付されていない、ことを特徴とする、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項2】
前部表面および後部表面を含む、プラズマ処理されていない、シリコーンヒドロゲルレンズ本体を含有し、該表面の少なくとも一方が、900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲の平均密度で、多数の窪みを含むことを特徴とする、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記多数の窪みが、約130nmから約630nm未満なる範囲の平均径を持つ、請求項1または2記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記多数の窪みが、約150nmから約550nm未満なる範囲の平均径を持つ、請求項1〜3の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記多数の窪みが、約4nm〜約100nmなる範囲の平均深さを持つ、請求項1〜4の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記多数の窪みが、約4nm〜約65nmなる範囲の平均深さを持つ、請求項1〜5の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記多数の窪みが、約15nm〜約40nmなる範囲の平均深さを持つ、請求項1〜6の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記多数の窪みが、900μm2当たり約5個の窪み〜900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲の平均密度を持つ、請求項1および3〜7の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記多数の窪みが、900μm2当たり約80個の窪み〜900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲の平均密度を持つ、請求項1および3〜8の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記多数の窪みが、900μm2当たり約200個の窪み〜900μm2当たり約1,000個の窪みなる範囲の平均密度を持つ、請求項1〜9の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記レンズ本体の前記前部表面および前記後部表面の少なくとも一方が、約5nmRMS〜約30nmRMSなる範囲の平均表面粗さを持つ、請求項1〜10の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記レンズ本体の前記前部表面および前記後部表面の少なくとも一方が、約7nmRMS〜約25nmRMSなる範囲の平均表面粗さを持つ、請求項1〜11の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記レンズ本体の前記前部表面および前記後部表面の少なくとも一方が、約10nmRMS〜約20nmRMSなる範囲の平均表面粗さを持つ、請求項1〜12の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記水または前記水性溶液中での水和処理の少なくとも12時間後に、前記レンズ本体の前記前部表面および前記後部表面の少なくとも一方が、100°未満の前進接触角および5秒を越えるウォーターブレークアップ時間を持つ、請求項1〜13の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記レンズ本体が、少なくとも20%なる膨潤ファクタを持つ、請求項1〜14の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記レンズ本体が、親水性シリコーン-含有ポリマー材料を含む、請求項1〜15の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記レンズ本体が、非-親水性ポリマー系内部湿潤剤を含む、請求項1〜16の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記レンズ本体が、完全にまたは部分的に硬化され、かつ非-極性材料を含むコンタクトレンズ用金型と直接接触状態にある、請求項1〜17の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記非-極性材料が、ポリプロピレンを含む、請求項18記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記非-極性材料が、有核熱可塑性ポリプロピレン樹脂である、請求項18記載のコンタクトレンズ。
【請求項21】
前記レンズ本体が、以下の成分:
少なくとも1種のシリコーン-含有モノマー、少なくとも1種のシリコーン-含有マクロマー、少なくとも1種のシリコーン-含有プレポリマー、またはこれらの混合物を含む反応性成分;
少なくとも1種の親水性モノマー;および
重合中に前記反応性成分を架橋して、ポリマーを生成する、少なくとも1種の架橋剤、
を含有する重合性組成物の反応生成物を含む、請求項1〜20の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項22】
前記反応性成分が、700ダルトン未満の分子量を持つシリコーン-含有モノマーを含む、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項23】
前記反応性成分が、約700ダルトン〜約2,000ダルトンなる範囲の分子量を持つ、シリコーン-含有マクロマーを含む、請求項21または22記載のコンタクトレンズ。
【請求項24】
前記反応性成分が、2,000ダルトンを越える分子量を持つ、シリコーン-含有プレポリマーを含む、請求項21〜23の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項25】
前記レンズ本体が、希釈剤の不在下での、重合性組成物の重合工程を含む方法によって製造される、請求項1〜24の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項26】
前記重合性組成物が、親水性ポリマー系の内部湿潤剤を含まない、請求項21〜25の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項27】
前記レンズ本体の前記表面が、シリケート層を含まない、請求項1〜26の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項28】
前記レンズ本体が、表面処理されていないレンズ本体と対比して、表面の濡れ性を高めるための表面処理に掛けられていない、請求項1〜27の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項29】
前記レンズ本体が、前記水または水性溶液中で水和処理される前に、有機溶媒または有機溶媒成分を含む水性溶液による抽出処理に付されていない、請求項1〜28の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項30】
前記レンズ本体が、該レンズ本体とは異なる組成を持つ表面被膜を含まない、請求項1〜29の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項31】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、以下の諸工程:
前部表面および後部表面を持つ、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する工程、ここで水または水性溶液中での水和処理後、湿潤した際の該レンズ本体の該前部表面および該後部表面の少なくとも一方が、約150nmから1,500nm未満までの範囲の平均径および900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲の平均密度を持つ多数の窪みを含み、かつ該レンズ本体が、所定の態様のプラズマ処理に付されておらず、該レンズ本体が、その製造後に重合性膨潤剤で処理されておらず、あるいは該レンズ本体が、該プラズマ処理および該膨潤剤での処理両者に付されていない、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項32】
前記レンズ本体の製造段階が、以下の成分:少なくとも1種のシリコーン-含有モノマー、少なくとも1種のシリコーン-含有マクロマー、少なくとも1種のシリコーン-含有プレポリマー、またはこれらの混合物;少なくとも1種の親水性モノマー;および該反応性成分を架橋するのに有効な少なくとも1種の架橋剤、
を含有する反応性成分を重合する工程を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記レンズ本体が、ポリマー系内部湿潤剤を含まない、請求項31または32記載の方法。
【請求項34】
前記レンズ本体が、シリケート層を含まない、請求項31〜33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記重合段階が、少なくとも部分的に、非-極性材料を含むコンタクトレンズ用金型内で起る、請求項31〜34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記非-極性材料が、ポリプロピレンを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記非-極性材料が、有核熱可塑性ポリプロピレン樹脂である、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記反応性成分が、700ダルトン未満の分子量を持つシリコーン-含有モノマーを含む、請求項31〜37の何れか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記反応性成分が、約700ダルトン〜約2,000ダルトンなる範囲の分子量を持つシリコーン-含有マクロマーを含む、請求項31〜38の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記反応性成分が、2,000ダルトンを越える分子量を持つシリコーン-含有プレポリマーを含む、請求項31〜39の何れか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記コンタクトレンズ本体が、請求項1〜30の何れか1項に記載のものである、請求項31〜40の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、以下の成分:
前部表面および後部表面を含む、シリコーンヒドロゲルレンズ本体、ここで水または水性溶液中での水和処理後、湿潤した際の該レンズ本体の該前部表面および該後部表面の少なくとも一方が、約150nmから1,500nm未満までの範囲の平均径および900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲の平均密度を持つ多数の窪みを含み、かつ該レンズ本体が、所定の態様のプラズマ処理に付されておらず、該レンズ本体が、その製造後に重合性膨潤剤で処理されておらず、あるいは該レンズ本体が、該プラズマ処理および該膨潤剤での処理両者に付されていない、
を含むことを特徴とする、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項43】
前記多数の窪みが、900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲の平均密度を持ち、かつ前記レンズ本体が、所定の態様のプラズマ処理に付されていない、請求項42記載のコンタクトレンズ。
【請求項44】
前記多数の窪みが、約150nm乃至1,500nm未満なる範囲の平均径を持つ、請求項42〜43の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項45】
前記多数の窪みが、約130nm乃至630nm未満なる範囲の平均径を持つ、請求項42〜44の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項46】
前記多数の窪みが、約170nm乃至570nm未満なる範囲の平均径を持つ、請求項42〜45の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項47】
前記多数の窪みが、900μm2当たり約5個の窪み〜900μm2当たり約1,500個の窪みなる範囲の平均密度を持つ、請求項42および44〜46の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項48】
前記多数の窪みが、900μm2当たり約200個の窪み〜900μm2当たり約1,000個の窪みなる範囲の平均密度を持つ、請求項42〜47の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項49】
前記レンズ本体の前記前部表面および前記後部表面の少なくとも一方が、約5nmRMS〜約30nmRMSなる範囲の平均表面粗さを持つ、請求項42〜48の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項50】
前記水または前記水性溶液中での前記水和処理の少なくとも12時間後に、前記レンズ本体の前記前部表面および前記後部表面の少なくとも一方が、100°未満の前進接触角および5秒を越えるウォーターブレークアップ時間を持つ、請求項42〜49の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項51】
前記レンズ本体が、少なくとも20%なる膨潤ファクタを持つ、請求項42〜50の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項52】
前記レンズ本体が、親水性ポリマー系内部湿潤剤を含まない、請求項42〜51の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項53】
前記レンズ本体が、完全にまたは部分的に硬化され、一方で非-極性材料を含むコンタクトレンズ用金型と直接接触状態にある、請求項42〜52の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項54】
前記レンズ本体が、以下の成分を含む重合性組成物の反応生成物:
少なくとも1種のシリコーン-含有モノマー、少なくとも1種のシリコーン-含有マクロマー、少なくとも1種のシリコーン-含有プレポリマー、またはこれらの混合物を含む反応性成分;
少なくとも1種の親水性モノマー;および
重合中に前記反応性成分を架橋して、ポリマーを生成する、少なくとも1種の架橋剤、
を含む、請求項42〜53の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項55】
前記レンズ本体が、希釈剤の不在下で、重合性組成物を重合する工程を含む方法により製造される、請求項42〜54の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項56】
前記レンズ本体の前記表面が、シリケート層を含まない、請求項42〜55の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項57】
前記レンズ本体が、前記水または水性溶液中で水和処理される前に、有機溶媒または有機溶媒成分を含む水性溶液による抽出処理に付されていない、請求項42〜56の何れか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項58】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法であって、以下の工程:
前部表面および後部表面を持つ、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する工程、ここで水または水性溶液中での水和処理後、湿潤した際の該レンズ本体の該前部表面および該後部表面の少なくとも一方は、約150nmから1,500nm未満までの範囲の平均径および900μm2当たり約100個の窪み〜900μm2当たり約1,200個の窪みなる範囲の平均密度なる2つの条件の少なくとも一つを持つ多数の窪みを含み、かつ該レンズ本体は、所定の態様のプラズマ処理に付されておらず、該レンズ本体は、その製造後に重合性膨潤剤で処理されておらず、あるいは該レンズ本体は、該プラズマ処理および該膨潤剤での処理両者に付されていない、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項59】
前記レンズ本体の製造段階が、以下の成分を含有する反応性成分を含む重合性組成物を重合する工程:少なくとも1種のシリコーン-含有モノマー、少なくとも1種のシリコーン-含有マクロマー、少なくとも1種のシリコーン-含有プレポリマー、またはこれらの混合物;少なくとも1種の親水性モノマー;および該反応性成分を架橋するのに有効な少なくとも1種の架橋剤、
を含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記重合段階が、少なくとも部分的に、非-極性材料を含むコンタクトレンズ用金型内で起る、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記コンタクトレンズ本体が、請求項42〜57の何れか1項に記載のものである、請求項58〜60の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2013−506875(P2013−506875A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532311(P2012−532311)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/050879
【国際公開番号】WO2011/041523
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508316416)クーパーヴィジョン インターナショナル ホウルディング カンパニー リミテッド パートナーシップ (13)
【Fターム(参考)】