説明

シリコーン剥離剤組成物及び剥離紙

【解決手段】(A)(R12SiO1/22+a(R2SiO)n(RSiO3/2a
(R1はアルケニル基、Rは一価炭化水素基であり、30≦n≦250、aは0又は1。)で示されるオルガノポリシロキサン、
(B)(HR2SiO1/22(R2SiO)m
(Rは一価炭化水素基であり、2≦m≦20。)で示されるジオルガノポリシロキサン、
(C)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)触媒量の白金族金属系触媒
を必須成分とし、25℃における粘度が50〜600mPa・sの範囲内であり、有機溶剤を含有しないことを硬化性シリコーン剥離剤組成物。
【効果】本発明のシリコーン剥離剤組成物は、薄膜塗工性、硬化性、密着性に優れるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜塗工性、硬化性に優れている上、剥離力の剥離速度依存性の高い剥離性シリコーン硬化皮膜を与える付加反応型無溶剤タイプのシリコーン剥離剤組成物及びこの組成物の硬化皮膜が形成された剥離紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙やプラスチックフィルムなどの基材と粘着性物質との間の接着又は固着を防止することを目的として、基材面にシリコーン組成物の硬化皮膜を形成させて剥離性を付与することが行われている。
【0003】
この場合、基材表面にシリコーン皮膜を形成する方法としては、
(1)白金系化合物を触媒として、脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて剥離性皮膜を形成する方法、
(2)有機錫化合物などの有機酸金属塩触媒を使用し、オルガノポリシロキサンを縮合反応させて剥離性皮膜を形成する方法、
(3)アクリル基を含有するオルガノポリシロキサンと光反応開始剤とを紫外線を照射して剥離性皮膜を形成する方法、
(4)アクリル基を含有するオルガノポリシロキサンを電子線により硬化させる方法
などが知られている。
【0004】
また、性状としてはトルエン等の有機溶剤に溶解したタイプ、これらをエマルジョン化したエマルジョンタイプ、シリコーンのみからなる無溶剤タイプに分類される。
【0005】
これらシリコーン皮膜の中で、硬化性に優れ、低速剥離及び高速剥離での種々の剥離特性の要求に対して対応可能な(1)の付加反応型が広く用いられており、近年では安全,衛生等の面から溶剤タイプから無溶剤タイプヘの転換が進んでいる。また、生産性の面より高速での塗工が求められており、レベリング性、ミスト発生防止の観点より、より低粘度の無溶剤タイプが要求されている。
【0006】
しかしながら、無溶剤タイプのアルケニル基を有するベースポリマーの分子量は、溶剤タイプのそれに比べて圧倒的に小さく、架橋密度が高く硬い硬化皮膜となるため、溶剤タイプに比べ高速剥離での剥離抵抗は小さくなる傾向となる。更に、分子量が小さいほど、即ち粘度が低くなるほど、この傾向は顕著となり、高速剥離での剥離抵抗は小さく、低速剥離での剥離抵抗は大きく、剥離力の剥離速度依存性は低くなり、目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性は得られなくなる。無溶剤タイプのベースポリマーの粘度を高くすればレベリング性が低下し、高速塗工時における塗工ロール間から発生するミストによる作業者への安全,衛生の問題、オーブンヘの吸引によるシリカダストの問題、更に塗工への付着による塗工面状態低下の問題が生じる。
【0007】
また、シリコーンレジンを使用する手法をとる場合は、高速剥離での剥離抵抗は大きくなるものの、低速剥離での剥離抵抗も大きくなり、やはり目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性は得られない。
なお、本発明に関連する公知文献としては、下記のものが挙げられる。
【特許文献1】特開昭50−141591号公報
【特許文献2】特開昭50−015838号公報
【特許文献3】特開平06−228501号公報
【特許文献4】特開平05−156167号公報
【特許文献5】特開2001−335747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、薄膜塗工性、硬化性に優れ、かつ高速剥離での剥離抵抗の大きい付加反応溶剤型の剥離特性に近い剥離性シリコーン硬化皮膜を与える付加反応型無溶剤タイプのシリコーン剥離剤組成物及び剥離紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成するため、主成分となるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応するオルガノハイドロジェンポリシロキサンについて鋭意検討を行った結果、分子鎖両末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサン及び1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することにより、硬化皮膜の架橋密度を下げ、しかも硬化性、基材との密着性を低下させることなく高速剥離で剥離抵抗を大きくでき、目標とする付加反応溶剤タイプの剥離特性が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(A)下記式(1)
(R12SiO1/22+a(R2SiO)n(RSiO3/2a (1)
(式中、R1はアルケニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、30≦n≦250、aは0又は1である。)
で示され、25℃における粘度が50〜1,000mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部
(B)下記式(2)
(HR2SiO1/22(R2SiO)m (2)
(式中、Hは水素原子、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、2≦m≦20である。)
で示され、25℃における粘度が2〜30mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサン 0.5〜15.0重量部
(但し、(A)のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.3〜0.8の範囲である。)
(C)下記式(3)
2bcSiO(4-b-c)/2 (3)
(式中、R2は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、b,cはb+c≦3を満たす正数である。)
で示される1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.3〜10.0重量部
(但し、(A)のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.4〜3.0の範囲である。)
(D)触媒量の白金族金属系触媒
を必須成分とし、25℃における粘度が50〜600mPa・sの範囲内であり、有機溶剤を含有しないことを特徴とする硬化性シリコーン剥離剤組成物及びこの組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙を提供する。
この場合、(A)成分が、式(1)においてa=0のものであり、(C)成分が、(CH3)HSiO2/2単位及び(CH33SiO1/2単位からなる25℃における粘度が5〜500mPa・sの1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(CH3)HSiO2/2単位、(CH32SiO2/2単位及び(CH33SiO1/2単位からなる25℃における粘度が5〜500mPa・sの1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを併用したものである硬化性シリコーン剥離剤組成物、及び(A)成分が、式(1)においてa=1のものであり、(C)成分が、(CH3)HSiO2/2単位及び(CH33SiO1/2単位からなる25℃における粘度が5〜500mPa・sの1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである硬化性シリコーン剥離剤組成物が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリコーン剥離剤組成物は、薄膜塗工性、硬化性、密着性に優れるものであり、(B),(C)成分のSiH基はいずれも(A)成分のアルケニル基と反応するものであるが、反応性の高い末端のみにSiH基を有する(B)成分と(A)成分が先ず反応して鎖長延長し、残余のアルケニル基と(C)成分のSiH基が反応するため、硬化皮膜の硬度を低下でき、目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性が得られ、溶剤タイプから無溶剤タイプヘの転換がスムーズに行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳しく説明すると、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記式(1)
(R12SiO1/22+a(R2SiO)n(RSiO3/2a (1)
(式中、R1はアルケニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、30≦n≦250、aは0又は1である。)
で示され、硬化性及び硬化後の皮膜の硬度を抑えるため分子鎖末端にのみケイ素原子に結合したアルケニル基を有する。
【0013】
ここで、R1のアルケニル基としては、炭素数2〜8のものが好ましく、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基等が例示される。
【0014】
Rで示される一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜8のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられるが、硬化性、剥離性向上の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0015】
aは0又は1であり、即ち直鎖状及び分岐状でも構わないが、aが1を超えると本発明の手法を用いても高速剥離での剥離抵抗を大きくできなくなる。
【0016】
更に、25℃における粘度は、50〜1,000mPa・sであり、50mPa・sより低いと基材への染み込みが多くなるという不具合が生じ、1,000mPa・sより高い場合は塗工性が低下し、高速塗工におけるミスト発生の問題や剥離が生じるため、重合度:nは30〜250、好ましくは35〜250の範囲とされる。
【0017】
(B)成分のジオルガノポリシロキサンは、下記式(2)
(HR2SiO1/22(R2SiO)m (2)
(式中、Hは水素原子、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、2≦m≦20である。)
で示されるもので、これは分子鎖両末端にケイ素原子に結合した水素原子をそれぞれ1個有し、このSiH基と(A)成分中のアルケニル基とが付加反応して鎖長延長の効果を出すものである。
【0018】
Rで示される一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜8のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられるが、硬化性、剥離性向上の点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0019】
また、mは2〜20であり、mが2より小さいと沸点が低くなり、加熱硬化時に揮発してしまうという不利が発生する。一方、mが20より大きい場合、基材との密着が低下するため、25℃における粘度は2〜30mPa・sの範囲とされる。
【0020】
また、(B)成分の配合量は、(A)成分100部(重量部、以下同じ)に対して0.5〜15.0部とされるが、(A)成分のアルケニル基量とSiH基量によって調整されるものであり、モル比で0.3〜0.8、特に0.35〜0.75の範囲とされる。モル比で0.3より小さいと目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性は得られなく、モル比で0.8より大きいと基材との密着が低下する。
【0021】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個以上有し、このSiH基と(A)成分中のビニル基とが付加反応して硬化皮膜が形成されるものであり、下記式(3)
2bcSiO(4-b-c)/2 (3)
(ここで、R2は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、b,cはb+c≦3を満たす正数であり、好ましくは1.02≦b≦2.01、0.11≦c≦1.02、1.75≦b+c≦2.20である。)
で示されるものが好ましい。
【0022】
なお、R2の一価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、Rで例示したものと同様、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられるが、付加反応速度の向上の点からメチル基であることが好ましい。
【0023】
この種のポリシロキサンとしては、(CH3)HSiO2/2単位、HSiO3/2単位、(CH32SiO2/2単位、(CH32HSiO1/2単位、(CH3)SiO3/2単位、(CH33SiO1/2単位からなるポリマー又はコポリマーが例示されるが、これは直鎖状、環状のいずれであってもよく、25℃における粘度が5〜500mPa・sのものとすればよい。
【0024】
また、(C)成分の配合量は、(A)成分100部に対して0.3〜10.0部とされるが、(A)成分のアルケニル基量とSiH基量によって調整されるものであり、モル比で0.4〜3.0、特に0.6〜2.5の範囲とされる。モル比で0.4より小さいと硬化性が低下し、3.0より大きいと低速、高速とも剥離抵抗が大きくなり実用的な剥離特性が得られない。
【0025】
(B),(C)成分のSiH基は、いずれも(A)成分のアルケニル基と反応するものであるが、反応性の高い末端のみにSiH基を有する(B)成分と(A)成分が先ず反応し、鎖長延長し、残余のアルケニル基と(C)成分のSiH基が反応するので、硬化皮膜の硬度が低下して、目標とする溶剤タイプの剥離力の剥離速度依存性が得られる。
【0026】
(D)成分の白金族金属系触媒は、(A)成分と(B),(C)成分との付加反応を促進するための触媒であり、付加反応触媒として公知のものが使用できる。このような白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系などの触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましい。このような白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液やアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体などが挙げられる。
【0027】
これら白金族金属系触媒の添加量は触媒量であるが、良好な硬化皮膜を得ると共に経済的な見地から、(A)成分100部に対して白金族金属量として1〜1,000ppmの範囲とすることが好ましい。
【0028】
本発明の組成物は、上記(A)〜(D)成分の所定量を配合することによって得られるが、以上の各成分の他に任意成分、例えば白金族金属系触媒の触媒活性を抑制する目的で、各種有機窒素化合物、有機りん化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などの活性抑制剤、剥離力、硬化皮膜の摩擦抵抗を制御する目的で末端にケイ素原子に結合した水酸基を有するジオルガノポリシロキサン、シリコーンレジン又はケイ素原子に結合した水素原子やビニル基を有さないジオルガノポリシロキサンなどを必要に応じて添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0029】
本発明のシリコーン剥離剤組成物の調製に際しては、(A)〜(C)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(D)成分を添加することが好ましく、各成分は単一で使用しても2種以上併用してもよい。但し、組成物全体としての25℃における粘度は50〜600mPa・s、特に100〜600mPa・sの範囲内とされ、600mPa・sを超えると塗工時における塗工ロール間から発生するミストのため高速塗工できず、生産性が低下するため実用上の使用困難となる。
【0030】
このようにして調製されたシリコーン組成物は、例えば紙、プラスチックフィルムなどの基材に塗布した後、常法によって加熱硬化される。本発明の組成物の硬化皮膜が形成された基材は剥離紙などとして好適に使用される。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、各例中の部はいずれも重量部であり、粘度は25℃における値である。
また、シリコーン組成物の硬化性、剥離力、残留接着率は下記の方法により測定した。
硬化性
シリコーン組成物を薄膜状フィルム又はシート状の基材表面に所定量塗布し、所定温度の熱風式乾燥機中で加熱して形成される硬化皮膜を指で数回こすり、くもり及び脱落のない状態になるまでの時間を測定した。
剥離力
シリコーン組成物を薄膜状フィルム又はシート状の基材表面に所定量塗布し、所定温度の熱風式乾燥機中で加熱して硬化皮膜を形成した後、25℃で1日セパレーターエージング後、この硬化皮膜表面にアクリル系溶剤型粘着剤・オリバインBPS−5127(東洋インキ製造株式会社製)をWetで130μm塗布して100℃で3分間加熱処理した。次に、この処理面に坪量64g/m2の上質紙を貼り合わせ、25℃で20時間エージングさせた後、試料を50mm幅に切断し、引張り試験機を用いて180度の角度で剥離速度0.3m/分、60m/分で貼り合わせ紙を引張り、剥離するのに要する力(N)を測定した。なお、0.3m/分の剥離速度には株式会社島津製作所製DSC−500型を、60m/分の剥離速度にはテスター産業株式会社製TE−702型試験機を用いて測定した。
残留接着率
剥離力測定の場合と同様にして基材表面に形成されたシリコーン組成物の硬化皮膜の表面にポリエステルテープ(商品名:No.31テープ、日東電工株式会社製)を貼り合わせ、1.96MPaの荷重を載せて70℃で20時間エージングした後、テープを剥がしてステンレン板に貼り付けた。次に、このテープをステンレス板から180度の角度で剥離速度0.3m/分で剥がし、剥離するのに要する力:A(N)を測定した。また、ブランクとしてポリエステルテープをポリテトラフルオロエチレン板に貼り合わせ、同様に処理したテープをステンレス板から剥離するのに要する力:B(N)を測定し、(A/B)×100により、残留接着率(%)とした。
【0032】
[実施例1]
(A)成分として、式(1)において、Rをメチル基、R1をビニル基、a=0、n=146とした粘度が390mPa・sである分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100部、(B)成分として、式(2)において、Rをメチル基、m=8である粘度が5mPa・sである分子鎖両末端がジメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン3.3部(SiH/SiCH=CH2:0.5)、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度が20mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.5部(SiH/SiCH=CH2:1.3)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3部を加え、均一になるまで撹拌した後、(D)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記ジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が320mPa・sであるシリコーン組成物を調製した。
【0033】
次に、得られたシリコーン組成物をポリエチレンラミネート紙(坪量100g/m2)に0.6〜0.7g/m2塗布し、キュアー性試験用としては120℃で硬化するまでの時間(秒)を求めた。また剥離力、残留接着率用サンプルとしては、140℃で30秒間加熱処理して硬化皮膜を形成させた。これらの測定結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1]
実施例1中で、(B)成分は使用せず、(C)成分の量を2.2部(SiH/SiCH=CH2:1.8)とした以外は実施例1と同様にして粘度が360mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0035】
[実施例2]
(A)成分として、式(1)において、Rをメチル基、R1をビニル基、a=0、n=146とした粘度が390mPa・sである分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン65部、Rをメチル基、R1をビニル基、a=0、n=68とした粘度が97mPa・sである分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン35部、(B)成分として、式(2)において、Rをメチル基、m=8である粘度が5mPa・sである分子鎖両末端がジメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン4.6部(SiH/SiCH=CH2:0.5)、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度が20mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.2部(SiH/SiCH=CH2:0.7)、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン単位を27モル%含有した粘度が40mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.2部(SiH/SiCH=CH2:0.5)、更に任意成分として分子鎖両末端がジメチルハイドロキシシロキシ基で封鎖された粘度が99,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン7.9部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3部、1,1−ジメチル−2−プロペニルオキシトリメチルシラン0.5部を加え、均一になるまで撹拌した後、(D)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記ジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が380mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0036】
[比較例2]
実施例2中で、(B)成分は使用せず、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度が20mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.6部(SiH/SiCH=CH2:0.85)、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン単位を27モル%含有した粘度が40mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン1.8部(SiH/SiCH=CH2:0.85)とした以外は実施例2と同様にして、粘度が450mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0037】
[実施例3]
(A)成分として、式(1)において、Rをメチル基、R1をビニル基、a=1、n=157とした粘度が260mPa・sである分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100部、(B)成分として、式(2)において、Rをメチル基、m=8である粘度が5mPa・sである分子鎖両末端がジメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン6.1部(SiH/SiCH=CH2:0.6)、(C)成分として分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された粘度が20mPa・sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン2.2部(SiH/SiCH=CH2:1.2)、更に任意成分として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3部を加え、均一になるまで撹拌した後、(D)成分として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記ジメチルポリシロキサンに対して白金換算で100ppmになるように添加し、粘度が195mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0038】
[比較例3]
実施例3中で、(B)成分は使用せず、(C)成分の量を3.3部(SiH/SiCH=CH2:1.8)とした以外は実施例3と同様にして粘度が250mPa・sであるシリコーン組成物を調製し、実施例1と同様の物性試験を行った。結果を表1に併記する。
【0039】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)
(R12SiO1/22+a(R2SiO)n(RSiO3/2a (1)
(式中、R1はアルケニル基、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、30≦n≦250、aは0又は1である。)
で示され、25℃における粘度が50〜1,000mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部
(B)下記式(2)
(HR2SiO1/22(R2SiO)m (2)
(式中、Hは水素原子、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、2≦m≦20である。)
で示され、25℃における粘度が2〜30mPa・sである分子鎖末端にケイ素原子に結合した水素原子を有するジオルガノポリシロキサン 0.5〜15.0重量部
(但し、(A)のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.3〜0.8の範囲である。)
(C)下記式(3)
2bcSiO(4-b-c)/2 (3)
(式中、R2は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、b,cはb+c≦3を満たす正数である。)
で示される1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.3〜10.0重量部
(但し、(A)のアルケニル基量に対する水素原子の量がモル比で0.4〜3.0の範囲である。)
(D)触媒量の白金族金属系触媒
を必須成分とし、25℃における粘度が50〜600mPa・sの範囲内であり、有機溶剤を含有しないことを特徴とする硬化性シリコーン剥離剤組成物。
【請求項2】
(A)成分が、式(1)においてa=0のものであり、(C)成分が、(CH3)HSiO2/2単位及び(CH33SiO1/2単位からなる25℃における粘度が5〜500mPa・sの1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(CH3)HSiO2/2単位、(CH32SiO2/2単位及び(CH33SiO1/2単位からなる25℃における粘度が5〜500mPa・sの1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを併用したものである請求項1記載の硬化性シリコーン剥離剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、式(1)においてa=1のものであり、(C)成分が、(CH3)HSiO2/2単位及び(CH33SiO1/2単位からなる25℃における粘度が5〜500mPa・sの1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1記載の硬化性シリコーン剥離剤組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の組成物の硬化皮膜が形成されてなる剥離紙。

【公開番号】特開2007−284685(P2007−284685A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146617(P2007−146617)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【分割の表示】特願2000−360956(P2000−360956)の分割
【原出願日】平成12年11月28日(2000.11.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】