説明

シリンジポンプ

【課題】液高精度の微量吐出が確保できる小容量、小径のシリンジを提供する。
【解決手段】シリンジを小径部3と大径部2の2段に形成し、小径部端に吐出口17を設け、小径部端と吐出口17間に空気留め室20を形成する。吐出口17を閉止することなく吐出口17周辺に適宜な密室空間を形成するポケット18を設けノズル11外壁に密着さしてからプランジャー5を引き込む液補給手段であり、シリンジ内の液を全量吐出すると液の補給が必要であるが、液の補給時に空気が混入する、吐出口と液面を一致させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【01】
ガス、薬品、接着剤、ペースト、水銀、樹脂等の流体の分析、液送、塗布、滴下、注入等に於いて微量の吐出に使用するシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【02】
プランジャーを直動スライダ、リニアモーター等で駆動し、プランジャー断面積×押し込み量=吐出量とするシリンジポンプにおいて、液体の微量を吐出するには出来るだけ小容量、小径のシリンジを使用すると、高精度の微量吐出が確保できる。しかし小径のシリンジは頻繁に液補給を必要とし切換えバルブ、チエックバルブ等が使用されている。しかしこれらバルブ等の機構は洗浄性が悪い、隙間部での液の硬化、液の変質、高価等の問題がある。
【03】
シリンジを小径部と大径部との2段に形成し、小径部端に吐出口を設け、液の補給時に小径部内径と嵌合するプランジャー端を大径部側に引き上げ、大径部側の液を小径部側に流入さし、小径部側に液が充満したときプランジャー端で小径部開口部を閉止し、再びプランジャーを小径部に挿入して吐出口より液を吐出することを特徴としたシリンジポンプが提唱されている。
【特許文献1】特開2007−289655
【課題】
【04】
前記シリンジポンプに於いて、液補給時に吐出口より吸入した空気が気泡となって小径部内に混入し上方に浮き上がり、液補給を終了しても気泡の残留する不具合が発生することがある。或はプランジャーが小径部入口を閉止するタイミングが遅れると吐出口より液が流失し、タイミングが早いと吐出口より液面が引き込んでしまう。液補給終了時に吐出口と液面が一致し、小径部内に気泡が残らない事が最良である。これが解決できると、液補給終了後捨て打ちすることなく直ちに塗布、注入等の作業に入れ、液切れもよく、高精度な吐出が計れる。
【解決手段】
【05】
気泡が小径部に混入しない手段として、シリンジの小径部終端と吐出口の間に空気留め室を形成する。空気留め室は液の粘度、撥水性を考慮し、空気が浮き上がることが出来ない径とし、液補給時のプランジャーの吸入体積より大きく形成する。シリンジ小径部の直径が空気の浮き上がることが出来ない径の場合は空気留め室を省略できる。
【06】
液補給終了時に吐出口と液面を一致さす手段として、ノズル外壁に密着して吐出口を閉止することなく吐出口周辺に適宜な密室空間を形成するポケットを設置し、この密着の実行と解除をプランジャーの駆動と連動して制御する。ポケットの容積は液の粘度、蒸発性等を考慮して選定する。
【作用】
【07】
気泡が小径部に混入しない手段の作用は、プランジャーが吐出終了位置に達したら、逆方向にプランジャーを引き込む。プランジャーの引き込みにつれ吐出口より空気を吸い込み、その空気はプランジャー下端が大径部側に引き上げられるまで空気留め室に流入し、小径部には流入しない。空気留め室の内径を細く形成し、液の表面張力で空気の浮き上がりを防止する。プランジャーの引き上げ速度が速いと空気留め室内に於いても吸入空気が気泡になってしまう場合もあるが引き上げ速度を調整して気泡化を防止する。プランジャー端が大径部側に引き上げられると大径部と小径部が導通し(以後この導通位置を小径部入り口と記載)、大径部側の液は落差で小径部側に流入し、空気留め室に滞留していた空気を追い出しながら吐出口に達し、内部に空気を残さない。
【08】
吐出口と液面を一致さす手段の作用は、プランジャーが吐出終了位置に達したら、ポケットをノズル外壁に密着さしてプランジャーを引き込むと、吐出口よりポケット内の空気が空気留め室に吸い込まれ、小径部、空気留め室とポケット内は負圧になる。プランジャー下端が大径部側に引き込まれると小径部入り口が開き、この負圧作用で小径部内に液が吸い込まれ、液が空気留め室を通り吐出口に達するとポケット内の気圧は元に戻り、それ以上流失しようとするとポケット内は加圧状態になるので液は吐出口で停止し、吐出口と液面が一致する。プランジャー端で小径部入口を閉止して液補給の動作を終了し、ポケットとノズル外壁の密着を解除する。一連の連携動作をコントローラーにて制御する。高粘度液はポケットを小容積に形成し負圧を大きくして液の流入を早くし、溶剤等蒸発しやすい液はポケットを大容積に形成し負圧を小さくして蒸発を抑える。(液が蒸発気化するとポケット内の空気量が多くなり吐出口より凹んだ位置で液が停止する。但しその量だけプランジャーを押し込んで補正は可能である)
【利点】
【09】
液補給時に、気泡が混入する、吐出口から液が流失する、或は吐出口まで液が達しない等の現象を防止でき、液の捨て打ちを減らすことができる。
【10】
シリンジの小径部が細い場合は空気留め室と兼用とでき、更に構造が簡単になる。また、シリンジ、ノズル間をチューブで連結する場合にはノズル内、チューブ内を空気留め室として作用さすことができる。
【11】
接液部に於いてチェックバルブ等の機械的な可動部がないので、ゴミの発生が少なく、掃除が容易、小径部をかなり小径にでき、微小吐出、高圧吐出が計れる。小径部をかなり大径にすることも用意で大容量ポンプが提供できる。
【12】
シリンジポンプを使用しない時、一時停止等の時、ノズル外壁にポケットを密着さしておくと、液の乾燥防止になる。
【13】
多連シリンジポンプが容易に構成できる。
【14】
外付けのバルブ、配管、配線等を必要としないので、構造簡単、安価、小型化が計れ、部品点数が少ないので分解洗浄が容易である。嫌気性接着剤、瞬間接着剤等に適応できる。
【15】
市販品の大径部内を加圧し、プランジャーで小径部入口を開閉する時間を調整して吐出量を加減するポンプに比べ吐出精度がよく、液補給の容易な、洗浄の容易なプランジャーポンプを提供できる。
【16】
毛細管現象や重力落下、圧送圧力のみでなく負圧でも液の吸入を行うのでより高粘度液に適応できる。圧送圧力を不要とし液タンクの加圧が不要になることもある。
【17】
プランジャーの移動量を制御して、液面の補正、気泡発生の防止等が容易である。
【18】
少量の液補給が容易に行へプランジャーの移動量を小さくできるのでプランジャー駆動装置も小型化でき、省エネ効果があり、分解能の小さい微小高速移動の圧電素子移動装置等を適応でき、飛滴吐出装置が提供できる。
【実施例1】
図1。
【19】
滴下装置1は、大径部2と小径部3とで成る2段シリンジ4と、小径部3と嵌合するプランジャー5と、プランジャー駆動装置6と、2段シリンジ4とプランジャー駆動装置6を固設する上下台7と、上下台7を上下さす上下駆動装置8と、フレーム9およびベース10と、小径部3の外壁で形成するノズル11と、ノズル11の下部外壁12と密着係合できるポケット18を設置したチャンバー14と、プランジャー駆動装置6と上下駆動装置8を連携制御するコントローラー15とを主構成としている。チャンバー14はポケット18とその開口部19を刻設してノズル11の直下に設置する。ノズル11の吐出口17と小径部3の間に空気留め室20を貫通刻設している。
【作用】
【20】
2段シリンジ4内に液21を充満さし、吐出口17の直下に被塗布ワークを置き、プランジャー5を小径部3に挿入すると、プランジャー断面積×押し込み量=吐出量とする液が被塗布ワーク上に滴下する。プランジャー5が押し込み端にきたら被塗布ワークを除き上下台7を下降さすと、ノズル11の下部外壁12とチャンバー14の開口部19とは密着係合し、ポケット18を気密な密室に形成する。
【21】
プランジャー5をプランジャー駆動装置6で引き上げると空気留め室20の液は小径部3に吸い込まれ、ポケット18内の空気は空気留め室20に吸い込まれる。
ポケット18内は若干の負圧になり、プランジャー5がさらに引き上げられ大径部2に達し小径部入り口16が開くと大径部2内の液21は落差と負圧作用で小径部3と空気留め室20に流入し吐出口17に達する。ここでポケット18内の圧力は元に戻り吐出口17と液面は一致する。プランジャー5を下げ、小径部入り口16を閉止後、上下台7を上昇さしてノズル11の下部外壁12とチャンバー14の開口部19との密着係合を解除し液補給動作を終了する。一連の動作順序は制御装置15で制御する。
【利点】
【22】
液補給後吐出口と液面が一致するので捨て打ちすることなくすぐに次の塗布動作に入れる。液面に若干の誤差が生じる場合も少しの捨て打ち吐出等で修正ができる。
【23】
プランジャー駆動装置6と上下駆動装置8はもともと塗布装置として必要な装置であり、動きの追加制御のみで済み、安価に製造できる。またチャンバー14に上下駆動装置を付加する構成も容易である。
【24】
捨て打ち部はもともと塗布装置として必要な部分であり、チャンバー14を付加するのみで済み、安価に製造できる。
【25】
塗布待機中にノズル11の下部外壁12とポケット18の開口部19を密着係合しておくと吐出口17の乾燥とゴミの付着を防止できる。
【26】
ポケット18の体積を増減して、高粘度液は負圧を大きくして小径部入り口16からの流入を容易にし、蒸発し易い液は負圧を小さくする等の調整ができる。液には重力も作用し吐出口から流出することがあるが吐出口の撥水性を高めて吐出口の抵抗を増やし吐出口からの流出を防止することもできる。高粘度液の場合小径部入り口16からの流入を速めるのにポケット18に真空ポンプを連結して真空引きする方法も可能である。この場合液面をセンサで検知し、小径部入り口16を閉じる制御が必要となる。
【27】
ワークの入換え、待機位置への移動等の僅かな時間に液補給ができる。例えば1個のワークに0.1μLを、10個所合計1μLを塗布する場合、プランジャー径を2mmとするとストロークは0.33mmとなり1秒もあれば液補給が可能であり、小径部3の体積を小さく構成でき、滴下装置の小型化、高精度化、高圧化が図れ、飛滴塗布や高粘度液への適応が容易である。
【28】
シリンジ、チャンバーの構造が単純で、分解洗浄等の保守が容易。大径部、小径部、プランジャーは円形として説明しているが角、楕円等の形状が可能であり、特に大径部は箱型、管路型等の形状でも適応が容易で安価に提供できる。
【29】
外部にタンク、切換バルブ、配管等を必要としないので装置の小型化が図れる。
【30】
シリンジ大径部を一つの容器として形成し、配管等が無いので攪拌羽を挿入しての攪拌、液を循環さしての攪拌、容器外周にヒーターや冷却器を設置しての加熱、冷却、超音波等の加振装置を設置しての加振が簡単になり、ホットメルト、溶融半田、高粘度液、ペースト、塗料、染料、香料、薬液等のシリンジポンプに適応できる。
【実施例2】
図2、図3。
【31】
マルチノズルによる複数個所の一括注入、塗布用の滴下装置30を詳述する。
【32】
マルチ2段シリンジ31は大径部32を一つの容器とし、プランジャー33を複数個内蔵し下端は夫々同数の小径部34と嵌合し、上端はプランジャー駆動装置35にボルト55で固定している。小径部34下端にチューブ継ぎ手36を連接しチューブ43を挿入する。マルチ2段シリンジ31のプランジャー駆動装置35はフレーム37に固定設置する。
【33】
プランジャー33と同数のノズル40は下端外壁41を円柱に形成し、上端はチューブ43を挿入してチューブ継ぎ手36と連接する。ノズル40の内径を空気留め室42に形成する。
【34】
ノズル40はノズルプレート44の所定位置に垂直に保持され、ノズルプレート44はノズル上下装置45の上下台46に固定し、ノズル上下装置45は左右移動装置47に設置し、左右移動装置47はフレーム37の水平面に設置する。
【35】
フレーム37の上面に被塗布ワーク48を真空吸着して保持するテーブル49を設置する。テーブル49の左端に複数個の、ノズル40外径より若干小径のポケット51をノズル40の間隔に合わせて刻設したチャンバー50を設置する。ポケット51の開口部52はノズル40の下端外壁41と密着係合したとき吐出口53と接触することなくポケット51を密室に形成する。
【作用】
【36】
マルチ2段シリンジ31の大径部32に液54を適宜量充填し、プランジャー33の下端を大径部32内に引き上げると液54は小径部34、チューブ43、ノズル40を充満し吐出口53に達したらプランジャー33を下げ小径部34と嵌合さし液54の流入を止める。ノズル40を設置したノズルプレート44をノズル上下装置45で引き上げ、左右移動装置47で所要位置に移動さしたらノズル40を下降さしプランジャー33を所要量突入さすと被塗布ワーク48に液が滴下する。次々とノズル40を滴下位置に移動さし滴下する。
【37】
滴下終了するとノズル40をチャンバー50の真上に移動さしてから下降さすと、ノズル40の下端外壁41はポケット51の開口部52と密着係合しポケット51を密室に形成する。次にプランジャー33を引き上げるとポケット51内の空気は空気留め室42内に吸い込まれ、内部は若干の負圧になる。プランジャー33が大径部32に引き上げられると液54は小径部34、チューブ43、ノズル40を充満し吐出口53に達したらポケット51内の圧力は平衡する。プランジャー33を下げ小径部34と嵌合さし液54の流入を止め、ノズル40を引き上げ、液補給を終了し、次の塗布指令を待つ。
【利点】
【38】
シリンジ大径部を一つの容器として形成しているので、小径部は任意の位置に配置でき、多数のプランジャーをもつシリンジポンプが小型に構成できる。プランジャーを数百個以上配置することも容易で液晶塗布、マイクロプレートの薬液塗布、96プレートへの薬液注入、電池ケースへの液体注入、製薬滴下機、液状食品調味料の注入機、塗料染料香料注入機、LEDの樹脂封入機等多岐に適応できる。またシリンジ大径部を適宜に区分けし異種の液の同時注入も可能となる。
【39】
従来シリンジ1個毎に必要であった切換えバルブユニット、配管等がなく非常にコンパクトな滴下装置が提供できる。
【40】
ノズル内径部、チューブ内径部を空気留め室として作用さすことができる。この方法は気化蒸発し易い液の場合、液補給時の負圧を調整するのが容易になる。例えば1cc吸入が必要とすると、まずポケット51をノズル40と密着係合する前に0.5cc吸入し、その後、密着係合さして残りの0.5ccを吸入する。プランジャー33の下端を大径部32内に引き上げると液54はチューブ内径部に流入してくるが0.5cc部分で液面は停止する。プランジャー33の下端が小径部に達したらポケット51とノズル40との密着係合を解除し、残りの0.5cc分プランジャー33を押し込むと液面は吐出口53と一致する。この例は負圧を半分にしている。事前に吸入する量を増減することにより負圧の調整をすることが出来る。プランジャー33を下げ小径部34と嵌合さし液54の流入を止めるとき、確実に止めるにはプランジャー33を小径部34に若干押し込むが、吐出口53よりその量の液がでる。これを防止するのに前記のように事前に少し吸入し液面を凹ましてから同様に動作さすのが有効である。
【41】
プランジャー駆動装置35は複数のプランジャー33を同時駆動でき、滴下装置が簡潔に構成でき、安価に提供できる。
【実施例3】
図4。
【42】
実施例3は本発明のよりよい効果を発揮する種々の工夫の実施例としてプランジャーと小径部、ノズルとチャンバーについて詳述する。
【43】
プランジャー60はスリット61を下端外周縦方向に刻設している。プランジャー60を引き込んでスリット起点62が大径部63に突き出すと小径部64へ液の流入が始まる。プランジャー60は小径部64と嵌合したままでよいので再突入と芯合わせが容易となる。又、スリット起点62をテーパー状に形成し小径部入り口65の急激な開閉を防止して液の衝撃を緩和することが出来る。スリット61の数は円周を等分配置するのが好ましい。
【44】
小径部外壁66の下端に交換ノズル71を螺合さす。交換ノズル71はポケット67を、中央にノズル68を、内部に気泡留め室72を形成している。
ノズル68の吐出口69はポケット67の下端面70より若干内に位置決めしている。シリンジを下降さし下端面70を任意の平面に押し付けるとポケット67は密室を形成する。又、下端面70を塗布面に当てたとき、吐出口69と塗布面との距離は一定になり、塗布形状を一定にする等の効果がある。交換ノズル71はポケット67、気泡留め室72を適宜に形成し、交換が可能。又、高精度加工や摩擦に強い事を要求する小径部部材と、種々の寸法を要求するノズル部を分離できる。交換ノズル71の材質をフッ素樹脂にしたり、あるいは撥水処理したりして、気泡留め室72の撥水性能を高めると壁面が液を弾き、より高粘度の液に適応できる。
【実施例4】
図5。
【45】
複数個のプランジャーをもつポンプを安価に製作できる構成のシリンジポンプ80は、大径部を構成する容器81と、小径穴89を刻設するプレート82と、小径穴89と嵌合するプランジャー83と、小径穴89の上端にプランジャー83と係合する弾性シール90を装着し、小径穴89の下端に連結し内径部は気泡留め室91とするノズル84とを主たる構成とし、その他構成要素は前記実施例と同様としている。落し蓋92は容器81とプランジャー83と滑動自在にして液の蒸発防止とゴミの混入防止を計っている。
【46】
プランジャー83の先端をテーパー状に形成し、弾性シール90に挿入したとき,このテーパー部が弾性シール90上に乗り小径部入り口を閉止することになる。全数のプランジャー83をこの状態にしてプランジャー駆動装置88に順次ボルト95で固定すると全数のプランジャー83が同一位置で小径部入り口を閉止する。ここからプランジャー83を押し込むと全数のノズル84から同量の液が吐出する。
【利点】
【47】
精度の必要な加工部はプランジャー83の外周と、小径穴89とプランジャー駆動装置88との穴間隔加工のみとなり加工が容易で安価に製作できる。高粘度液で落し蓋92が必要な場合も加工が容易。
【48】
ノズル84内に空気留め室91を形成しているからノズル交換で空気留め室91を適宜の体積に変更できる。
【実施例5】
図6。
【49】
瞬間接着剤等嫌気性液体の吐出装置のシリンジとして、ピストンをシリンジ筒との接触部を算盤の玉状とし、尖った先端で接触さして硬化を防止するものが提唱されているが液補給に関しては切り替えバルブを設けたりして複雑な構造をしている。
【特許文献2】特開2009−12001
【50】
本発明実施例の瞬間接着剤等嫌気性液体用シリンジポンプの2段シリンジ100を詳述する。液補給の方法、作用は前記実施例と同じとする。
【51】
2段シリンジ100は大径部101と小径部102共に薄肉で形成し、小径部102は精密な円筒とし、算盤玉状のピストン104と係合する。小径部102の下端にノズル105を装着する。ノズル105は前記実施例4のノズル84と同じとする。
【52】
ピストン104を引き上げると小径部入り口103が開き、大径部101の液が小径部102に流入する。
【53】
切替えバルブを設けることもなく構造が簡潔で、嫌気性液体の硬化する隙間がない液補給機構が提供できる。しかも吐出口に接触する部材がなくノズル詰りが起こり難い。
【54】
2段シリンジ100は安価に製造でき、使い捨てにも適応できる。
【55】
ピストン104を円盤状に形成しOリングを装着することも可能である。ピストン104を2箇所設置し小径部102内での傾きを防止し、先端側の外周を一部切り欠け、他方が大径部101内に入っても同心を保てる。
【実施例6】
図7。
【56】
実施例4のシリンジポンプ80を用いて多数の被注入部材に一括注入する注入機110のシリンジポンプ111は、各被注入部材の注入位置に合わせてノズル112を配置している。ノズル112の直下にポケット113を有するチャンバー114を上下移動装置115に固定して設置する。またノズル112の直下にパレット116をスライドさすガイドレール117を設置する。容器119には液面表示窓120を設け液面下降を確認して液を補充する。
【57】
パレット116に被注入部材118を搭載し、シリンジポンプ111の直下に位置決めし、プランジャー駆動装置121を制御して液を注入する。注入が終了したらパレット116を取り出し位置に移動さし、チャンバー114を上下移動装置115で上昇さしてノズル112とポケット113を密着係合さし液補給動作を行う。液補給が終了したらチャンバー114を下降さし被注入部材118を入れ替えたパレット116をシリンジポンプ111の直下に位置決めし、次の注入を待つ。
【58】
従来品に見られるチュウブや切換えバルブ、別置きタンク等がなく構造簡単な一括注入装置が提供できる。
【59】
ノズル112のポケット113との密着係合部位を利用して被注入部材118の注入口とも密着係合出来るようにし液の飛び散りを防止し、減圧下注入等ができる。
【60】
液補給動作はパレット116の入れ替え時間程度の短時間で可能であるから搬送装置等他の機器との組み合わせが容易である。
【61】
パレット116に被注入部材118を多数搭載しているが多数の塗布箇所のある1枚のシートでもよい。例えばガラス板に液晶や試薬を塗布する、プラスチックシートに試薬や蛍光剤を塗布する等の適応がある。液晶の塗布の場合、1cmピッチで縦横10本ずつ合計100本のプランジャーを配置しても10cm角程度の投影面積ですむ。
この様に小ピッチで多数のプランジャーを配置できるから液晶画面を多数の小区画に区分けし、各々の小区画に液晶を注入するとスペーサーを必要としない工法が提供できる。
【62】
プランジャー駆動装置121を自在な速度制御方式とすると電池の電解液のようにゆっくりと注入しなければならない場合にも適応が可能な一括注入機が提供できる。
【63】
錠剤等の薬品を製造する場合、流動性のある素材に多少の気泡が存在しても小径部容積を小さくしておけば吐出口からの液だれが少なくて済む一括注入機が提供できる。
【実施例7】
図8、図9。
【64】
コンベア上を連続して流れてくる容器に液状食品、薬品等を注入するシリンジポンプ130は、ボデイ133に大径部131と小径部132と、小径部132に連通した管路134とを刻設し、大径部131に連通する継ぎ手135と、管路134に連通するノズル136を設置し、ボデイ133と大径部131を貫通し小径部132と嵌合するプランジャー137を挿入している。ノズル136の内部は空気留め室138を形成する。ノズル136の外側に吐出口142より少し上方に液面センサ139を設置し、検出位置での液の有無を判定しコントローラーに信号をおくる。プランジャー137はプランジャー駆動装置140に連結する。継ぎ手135は液タンク141に連通する。ボデイ133は断面長方形とする。
【65】
プランジャー137が吐出終了位置に達したら、逆方向にプランジャー137を引き込む。プランジャー137の引き込みにつれ吐出口142より空気を吸い込み、その空気はプランジャー端が大径部131側に引き込まれる寸前まで空気留め室138に流入し、小径部132までは流入しない。プランジャー端が大径部131側に引き込まれると大径部131内の液は落差又は液タンク141の圧力で小径部132、管路134、空気留め室138を流れてくる。液面センサ139に達したら検出位置と吐出口142間の管内容積分プランジャー137を押し込むと液面は吐出口142と一致する。空気留め室138の容積はプランジャー137の引き込み総容量より多い目に、且つ細く形成し、小径部132に空気を吸い込まない様に、気泡が浮き上がらない様に作用さしている。
【66】
連続して流れてくる容器に液を注入する場合、前記実施例の様にポケットを密着さす時間、構造物を設ける空間が無い場合、簡単に安価にシリンジポンプを提供できる。
【67】
ボデイ133を積み重ねると所要の連数のシリンジポンプが提供できる。このとき大径部を内部で連通さすと継ぎ手135は一箇所ですみ、複雑な配管が不要になる。
【実施例8】
図10。
【68】
空気留め室とポケットを兼用するシリンジポンプ150について詳述する。
【69】
シリンジポンプ150のシリンジ151は、小径部152に連通する空気留め室153とノズル154の間に開閉弁155を設置する。他の構成は前記実施例と同様とする。
【70】
プランジャー156が押し込み端に達すると、開閉弁155の位置から空気留め室153内に所要のポケット容積分の空間が出来るようにプランジャー156を引き込んでから開閉弁155を閉じる。即ち空気留め室153内に密室ポケットが形成される。更にプランジャー156を引き込み、小径部入り口157が開くと大径部158の液は小径部152内に流入し、密室ポケット位置にまで来て停止する。次に開閉弁155を開けてプランジャー156を初めの引き込み量分押し込むと液はノズル154に達する。
【71】
開閉弁155が必要となるが、外部にポケットを設置できない場合に有効な手段になる。開閉弁155はロータリーバルブ、ソレノイドバルブ、ピンチバルブ等適宜選択できる。実施例2の様にチューブ連結しているとき、開閉弁155を容易に設置できる。
【72】
従来の充填ポンプとしてプランジャーの直進と揺動回転で吐出、液補給を計るものはプランジャーとケーシングの磨耗が多かったがシリンジポンプ150では直進のみで済その分磨耗が少なくなる。
【実施例9】
図11。
【73】
加熱ヒーターを付加したシリンジポンプ170について詳述する。
【74】
シリンジポンプ170はシリンジ171の大径部172、小径部173、ノズル174の外周に加熱ヒーター175を装着し、シリンジ171の上端に断熱ブラケット176を装着し、小径部173と係合するプランジャー177を断熱ブラケット176上面より突き出し断熱カップリング178と連結し、プランジャー駆動装置179の駆動軸180は断熱カップリング178と連結し、ノズル174の中央部に空気留め室181を刻設し、断熱ブラケット176の側面に窓182を設けている。
【75】
窓182より樹脂ペレット等を大径部172内に投入し加熱ヒーター175で加熱すると溶融樹脂等183ができる。プランジャー177で押し出し、吐出口184より吐出する。シリンジ171の液補給の作用は実施例1と同じである。断熱ブラケット176、断熱カップリング178は精密機器であるプランジャー駆動装置179に熱を伝えない作用をする。加熱により発生するガスは滞留部がほとんどないので容易に浮き上がり排出できる。
【76】
シリンジポンプ170を樹脂の射出成形機に適応すると、スクリュウポンプ等の複雑な機構を必要としないので安価でコンパクトに構成できる。
【77】
ホットメルト接着剤、半田の吐出機等に適応すると微量で精密な吐出を計れる。
【実施例10】
図12
【78】
樹脂、ペースト等を充填しているディスポシリンジを用いたシリンジポンプ190について詳述する。ディスポシリンジ191は市販品の先端吐出口外周部をルアーロックテーパー192としたものとする。外部のポケット等他の構成は前記実施例と同様とする。
【79】
ディスポシリンジ191の吐出口193の内径より若干小径のプランジャー194を挿入し、ルアーロックテーパー192と係合するノズル195はプランジャー194の外径より若干太い内径の小径部196と、空気留め室197を形成する。プランジャー194の上端はプランジャー駆動装置198に連結する。
【80】
樹脂、ペースト等を充填しているディスポシリンジ191の上部よりプランジャー194を挿入しノズル195を装着する。ノズル195を強く押し込むと楔作用で吐出口193の内径が収縮しプランジャー194との隙間がなくなりシール作用をする。
【81】
プランジャー駆動装置198でプランジャー194をディスポシリンジ191内に引き込むと内部の樹脂、ペースト等は小径部196と、空気留め室197を通りノズル吐出口199に達したらプランジャー194を吐出口193と係合さし、その後所要量押し込むとノズル吐出口199より樹脂、ペースト等が吐出する。
【82】
樹脂、ペースト等を充填して市販されているものをそのまま使用でき取り扱いが簡便、安価。
【83】
プランジャー194とのシール作用をディスポシリンジ191の部材をそのまま使用しているので磨耗してもシリンジを交換すればよいので操作簡単、安価。
【84】
さらに細径のプランジャー194を要求する場合は吐出口193にシールを設置して対応が可能。
【85】
従来のシリンジポンプはプランジャーの引き込み時にバルブを介在さして液を吸入又は送り込んでいる。確実に液補給が行われるがバルブの存在が種々の欠点を生じさしている。本発明はバルブを設置することなく液補給が可能となりシリンジポンプの小型化、省エネルギー、高精度確保、高密度構成、新規技術の開発等に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の断面図
【図2】実施例2の断面図
【図3】実施例2のマルチ2段シリンジ31の側断面図
【図4】実施例3の断面図
【図5】実施例4の断面図
【図6】実施例5の2段シリンジ100の断面図
【図7】実施例6の見取図
【図8】実施例7の断面図
【図9】実施例7の側面図
【図10】実施例8の断面図
【図11】実施例9の断面図
【図12】実施例10の断面図
【符号の説明】
【86】
1、滴下装置 2、大径部 3、小径部 4、2段シリンジ 5、プランジャー 14、チャンバー 18、ポケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジを小径部と大径部との2段に形成し、小径部端に吐出口を設け、液の補給時に小径部内径と嵌合するプランジャー端を大径部側に引き上げ、大径部側の液を小径部側に流入さし、小径部側に液が充満したときプランジャー端で小径部開口部を閉止し、再びプランジャーを小径部に挿入して吐出口より液を吐出することを特徴としたシリンジポンプであって、小径部終端と吐出口の間に空気留め室を形成したことを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
シリンジを小径部と大径部との2段に形成し、小径部端に吐出口を設け、液の補給時に小径部内径と嵌合するプランジャー端を大径部側に引き上げ、大径部側の液を小径部側に流入さし、小径部側に液が充満したときプランジャー端で小径部開口部を閉止し、再びプランジャーを小径部に挿入して吐出口より液を吐出することを特徴としたシリンジポンプであって、ノズルの外壁と密着したとき吐出口を閉止することなくノズル周辺に適宜な密室空間を形成するポケットを設けたチャンバーとで構成することを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項3】
シリンジを小径部と大径部との2段に形成し、小径部端に吐出口を設け、液の補給時に小径部内径と嵌合するプランジャー端を大径部側に引き上げ、大径部側の液を小径部側に流入さし、小径部側に液が充満したときプランジャー端で小径部開口部を閉止し、再びプランジャーを小径部に挿入して吐出口より液を吐出することを特徴としたシリンジポンプであって、小径部終端と吐出口の間に空気留め室を形成すると共に、ノズルの外壁と密着したとき吐出口を閉止することなくノズル周辺に適宜な密室空間を形成するポケットを設けたチャンバーとで構成することを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項4】
シリンジの小径部との係合部を薄肉算盤玉状のピストンとしたことを特徴とする請求項1のシリンジポンプ。
【請求項5】
プランジャー下端外周にスリットを刻設したことを特徴とする請求項1のシリンジポンプ。
【請求項6】
複数のプランジャーを設置し、同数のノズルを被注入物の注入位置と一致さして配置したことを特徴とする請求項1のシリンジポンプと、被注入物を搭載するパレットを設置したことを特徴とする液体の一括注入機。
【請求項7】
液晶画面を多数の小区画に区分けし、各々の小区画に液晶を注入するノズルを配置した請求項1のシリンジポンプを設置したことを特徴とする液晶一括注入機。
【請求項8】
シリンジ小径部と着脱自在な連結部を形成し、内部に空気留め室を形成した請求項1のシリンジポンプ用のノズル。
【請求項9】
空気留め室とノズルとの間に開閉弁を設置した請求項1のシリンジポンプ。
【請求項10】
シリンジに加熱ヒーターを付加した請求項1のシリンジポンプ。
【請求項11】
大径部と小径部を分離した2段シリンジにおいて、大径部と小径部の連結をテーパー構造とした請求項1のシリンジポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−156338(P2011−156338A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102662(P2010−102662)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000212407)
【Fターム(参考)】