説明

シリンダヘッドガスケット

【課題】シリンダライナ付きエンジンに用いられるシリンダヘッドガスケットにおいて、エンジン部材の振動に起因するガスケットの振動を吸収してフレティングを抑制できて、高いシール性能を維持でき、耐久性の高いガスケットを提供する。
【解決手段】シリンダボア用穴2の周囲に折り返し部11と第1ダンパビード12を有する第1の金属板10と、前記折り返し部11の内側に一部が挿入され、前記折り返し部11の端部11aよりも外周側に第2ダンパビード22を有する第2の金属板20と、シリンダライナ4とシリンダケース5の境界部分の段差6を跨いで、互いに凸部を内側にして対向している両ダンパビード12、22の間に配置される第3の金属板30とで構成し、前記第2ダンパビード22の内側の裾野部22aをV字形状に立ち上げて、前記折り返し部11に挿入して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダライナ付きエンジンのシリンダヘッドやシリンダブロック等の二つの部材の間に挟持してシールを行うシリンダヘッドガスケットに関し、より詳細には、シリンダヘッドとシリンダケースとの段差を吸収できるシリンダヘッドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドガスケットは、自動車のエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)等のエンジン部材の間に挟まれた状態で、ヘッドボルトにより締結され、燃焼ガス、オイル、冷却水等の流体をシールする役割を持っている。
【0003】
一方、最近、燃費向上や公害対策強化に伴い、自動車用エンジンの小型化・軽量化への移行が高まりつつある。この小型エンジンにおいては、低燃費化がエンジン開発の焦点になっているが、その中において、ピストンリングとシリンダの摩擦抵抗を減少させることにより、燃費向上が図られている。
【0004】
その対策の一つとして、シリンダボアの形状を有するシリンダライナを耐磨耗性、耐焼き付き性、耐熱性、強度に優れた特殊鋳鉄製とし、これをアルミ合金製のシリンダケースに嵌め込んでシリンダブロックを形成するシリンダライナ付きエンジンが使用されている。
【0005】
このシリンダライナには乾式ライナや湿式ライナがあるが、シリンダライナがウォータジャケットに接していない乾式ライナの場合には、シリンダライナの鍔上面とシリンダブロックデッキ面との間、即ち、シリンダライナとシリンダブロックとの境界部分に段差が生じる場合がある。
【0006】
この段差が生じた場合には、エンジン運転時の振動によってエンジン部材間の隙間が拡縮すると、この段差の角部が当接するガスケットの部分に局部的に大きな面圧が発生し、この面圧が隣接するウォータージャケットの水穴をシールするビードを有する部分の根本部分に繰り返し作用するので、水穴シール用ビードが振動して、繰り返しエンジン部材を叩くので、このエンジン部材の水穴シール用ビード接触面に穴が開く等の損傷が生じる。このフレッティングが発生すると、シール性能が低下すると共に、ウォータジャケットの周囲のシール部がへたり、耐久性が悪化する。
【0007】
このシリンダライナ付きエンジン用のシリンダヘッドガスケットに関係して、燃焼室孔部分の変形を少なくでき、ビードの疲労破壊を防止できると共に、シリンダライナの鍔上面とシリンダブロックデッキ面との境界部分に段差がある場合でも、ガスケットが追従でき、シールを良好に行えることを目的として、第1金属板と第2金属板のそれぞれに燃焼室孔の周囲にハーフビードで形成された内側ビードを、この内側ビードの外側にフルビードで形成された外側ビードを設け、これらのビードを内側に凸に形成し、第1金属板と第2金属板との間に、内側ビードと外側ビードとの間に相当する位置にストッパ効果が得られる段差部を有する副板を2枚設けた金属製ガスケットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
この金属製ガスケットでは、第1の内側ビードの先端の一次シールと、内側ビードと外側ビードの間の二次シールと、外側ビードの外側裾野部の三次シールとで三重のシールラインを形成して良好なシール性能が得られると共に、副板の段差部が二次シールのストッパ効果を発揮して、双方のビードの疲労破壊を防止するとしている。
【0009】
また、似たような構成の金属製ガスケットとして、第1金属板と第2金属板のそれぞれに燃焼室孔の周囲にフルビードを設け、これらのビードを内側に凸に形成し、第1金属板と第2金属板との間に、内側ビードと外側ビードとの間に副板を設けた金属製ガスケットが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
この金属製ガスケットでは、フルビードの裾野部の内側と外側の一次シールと二次シールとで二重のシールラインを形成している。
【0011】
そして、これらの二つの金属性ガスケットでは、シリンダライナの鍔とシリンダケースとの境界(段差)を跨いでビードを配置することにより、シリンダデッキ面に段差がある場合でもガスケットが追従できるため、シールを良好にでき、また、シリンダライナの変形も小さくすることができるとしている。
【0012】
しかしながら、上記の構成の金属製ガスケットにおいては、境界の段差を跨いでいても、ビードの外周側の裾野部にはエンジン部材の振動が加わるので、フレッティングの可能性が残る。その上、燃焼室に臨む部分においては、ガスケットの各構成板の端部が燃焼室に露呈しているため、燃焼室の燃焼ガスが第1の金属板と第2金属板との間に侵入するので、第1の金属板と第2金属板及び副板全部が高温の燃焼ガスに接触する。
【0013】
そのため、これらの各金属板間での燃焼ガスの漏れが発生する可能性があるという問題がある。また、これらの金属板全部を高温の燃焼ガスに対する耐熱性及び耐腐食性を有する金属で形成する必要があり、これに制約されて、幾つかの特性を有する金属板を組み合わせてそれぞれの特性を活かした金属製ガスケットを構成できないという問題がある。
【特許文献1】特開平10−267131号公報
【特許文献2】特開平11−241769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、シリンダライナ付きエンジンに用いられるシリンダヘッドガスケットにおいて、折り返し部より燃焼ガスを遮断して、折り返し部を有する金属板以外の金属板に燃焼ガスが接触しないようにして、幾つかの特性を持つ金属板を組み合わせることができてシール性能を向上させることができると共に、シリンダライナとシリンダケースとの境界部分の段差の段差を吸収し、また、エンジン部材の振動をダンパービードにより吸収してフレティングを抑制できて、高いシール性能を維持でき、耐久性の高いシリンダヘッドガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、シリンダライナ付きエンジンのシリンダボア用穴の周囲に折り返し部と第1ダンパビードを有する第1の金属板と、前記折り返し部の内側に一部が挿入され、前記折り返し部の折り返し先端部よりも外周側に第2ダンパビードを有する第2の金属板と、前記第1ダンパビードと前記第2ダンパビードの間に配置される第3の金属板とから構成されるシリンダヘッドガスケットであって、前記第1ダンパビードと前記第2ダンパビードをフルビードで互いに凸部を内側にして対向させて、シリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差を跨ぐ位置に形成すると共に、前記第2の金属板の前記第2ダンパビードの内側の裾野部をV字形状に立ち上げて、前記折り返し部に挿入したことを特徴とする。
【0016】
従って、この第1ダンパビードと第2ダンパビードは、フルビードで形成され、シール性能よりも、エンジン部材の振動エネルギーの吸収を主とするビードであるため、このビードの弾力性はシール性能よりも、振動エネルギーの吸収性を重視して形状、大きさ等が設定される。
【0017】
この構成によれば、第2ダンパビードの裾野部の内周側と外周側とが、シリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差、即ち、段差部分を跨いで配置されるので、シリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差における段差を、第1ダンパビードと第2ダンパビードで吸収できる。
【0018】
また、この第1ダンパービードと第2ダンパービードの裾野部がエンジン部材と接触し、エンジン部材の振動を受けるが、これらのダンパービードがダンパーとして機能し、振動エネルギーを吸収し、ガスケットの他の部分にこの振動が伝播しないようにする。
【0019】
つまり、シリンダライナとシリンダケースとの段差によりライナ隣接部の振動が大きくなり、この振動でボアや水穴のシールが、ビードのヘタリの増加やコーティングの磨滅等により損なわれるが、ダンパービードを設けることにより、自動車のサスペンションと同様なバネ機能により、この振動エネルギーを吸収して、この振動及びこの振動に起因するシールの劣化を低減する。
【0020】
更に、第2ダンパビードの内側の裾野部をV字形状に立ち上げ、V字形状に立ち上がる部分を折り返し部内に挟持しているため、折り返し部の弾力性を強化できる。また、V字形状に立ち上げることにより、第2ダンパビードの内側の裾野部と折り返し部の距離を小さくすることができるので、折り返し部内の第2の金属板の挿入長さを大きくできる。この構成により、シリンダライナの鍔部の幅が狭い場合でも、折り返し部内に第2の金属板の一部である挿入部を挿入でき、折り返し部の弾力性の向上及び亀裂発生防止を図ることができる。
【0021】
また、シリンダボアの主要シールは内部に第2の金属板の挿入部が挿入された折り返し部で形成されるが、第1ダンパビードと第2ダンパビードの裾野部の内周側と外周側とで補助シールを形成することができるので、シール性能を向上できる。
【0022】
そして、この構成によれば、折り返し部により、燃焼ガスが第2の金属板や第3の金属板に接触するのを防止できるので、第1の金属板と第3の金属板には耐熱性や耐腐食性に優れた材料を使用し、第2の金属板には弾力性に優れた材料を使用することができ、それぞれの材料の特性を活かした組み合わせでガスケットを構成できる。従って、シール性、耐熱性、耐腐食性、耐久性等の各種性能に優れたガスケットとすることができる。
【0023】
あるいは、上記の目的を達成するための本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、シリンダライナ付きエンジンのシリンダボア用穴の周囲に折り返し部と第1ダンパービードを有する第1の金属板と、前記折り返し部の内側に一部が挿入され、前記折り返し部の折り返し先端部よりも外周側に第2ダンパビードを有する第2の金属板と、前記第1ダンパビードと前記第2ダンパビードの間に配置される第3の金属板とから構成されるシリンダヘッドガスケットであって、前記第1ダンパビードをフルビードで、前記第2ダンパビードをハーフビードで形成し、前記第1ダンパービードをシリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差を跨ぐ位置に形成すると共に、前記第2ダンパビードの外周側を前記境界部分の外側の位置に形成し、前記第2の金属板の前記第2ダンパビードの内側を前記折り返し部に挿入したことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第2ダンパビードがフルビードではなくハーフビードで形成されるため、振動エネルギーの吸収効果がやや低減し、また、第2ダンパビードの内側の裾野部をV字形状に立ち上げる効果も奏することができないが、第2ダンパビードをハーフビードで形成しているため、第2ダンパビードの内側部分を折り返し部の内側に収めやすくなり、シリンダライナの鍔部の幅が狭い場合でも、折り返し部内に第2の金属板の一部を挿入できるので、折り返し部の弾力性の向上と挿入部のストッパ機能による亀裂発生防止を図ることができる。
【0025】
上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記第1の金属板と前記第2の金属板の水穴をシールする部分に互いに凸部を内側にして対向する第1ハーフビードと第2ハーフビードをそれぞれ設けて構成すると、水穴、特に、ウォータージャケットの水穴をこれらのハーフビードでシールでき、しかも、第1ダンパビードと第2ダンパビードが、シリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差を吸収する役割を果たすので、水穴部におけるフレッテングを抑制し、水穴シール部の耐久性を向上できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のシリンダヘッドガスケットによれば、第2ダンパビードが、シリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差を跨いで配置されるので、この段差を吸収でき、エンジン運転に起因する振動による水穴部のフレッティングを第1及び第2ダンパビードで振動エネルギーを吸収することで抑制し、水穴シール部の耐久性を確保できる。
【0027】
更に、第2ダンパビードの内側の裾野部をV字形状に立ち上げているので、シリンダライナの鍔部の幅が狭い場合でも、折り返し部内に第2の金属板の一部を挿入でき、折り返し部の弾力性の向上と亀裂発生防止を図ることができる。
【0028】
また、内部に第2の金属板が挿入された折り返し部で主要シールが形成され、第1ダンパビードと第2ダンパビードの裾野部の内周側と外周側とで補助シールを形成することができるので、高いシール性能でシールできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、図1及び図2を参照して本発明に係るシリンダヘッドガスケットの実施の形態について説明する。なお、図1及び図2は、模式的な説明図であり、構成をより理解し易いように、シリンダボア用穴の大きさ、シリンダライナ、水穴、ビードの大きさ、形等の寸法を実際のものとは異ならせて、誇張して示している。
【0030】
図1及び図2の第1及び第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1、1Aは、多気筒エンジン用のシリンダライナ付きエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)のエンジン部材の間に挟持されるメタルガスケットであって、シリンダボアの高温・高圧の燃焼ガス、及び、冷却水通路や冷却オイル通路等の冷却水やオイル等の流体をシールする。
【0031】
これらのシリンダヘッドガスケット1、1Aが用いられるシリンダライナ付きエンジンでは、シリンダボア用穴2が形成されているシリンダライナ4が、シリンダケース(シリンダケーシング)5に嵌め込まれている。また、このシリンダケース5には、ウォータージャケット等の水穴3が設けられている。なお、シリンダライナ4は、耐磨耗性、耐焼き付き性、耐熱性、強度に優れている特殊鋳鉄で形成され、シリンダケース5は、軽量性に優れているアルミ合金で形成される。
【0032】
最初に図1に示す第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1について説明する。このシリンダヘッドガスケット1は、第1〜第3の金属板(金属基板:金属構成板)10、20、30を有して構成される。この第1〜第3の金属板10、20、30は、軟鋼板、ステンレス焼鈍材(アニール材)、ステンレス調質材(バネ鋼板)等で形成される。第1の金属板10と第3の金属板30には特に耐熱性や耐腐食性に優れた材料であるアニール材を使用し、第2の金属板20には弾力性に優れた材料であるバネ材を使用する。
【0033】
また、これらの金属板10,20,30は、シリンダブロック等のエンジン部材の形状に合わせて製造されシリンダボア(燃焼室用穴)2、冷却水の循環のための水3、潤滑油の循環のためのオイル穴(図示しない)、締結ヘッドボルト用のヘッドボルト穴(図示しない)等が形成される。
【0034】
そして、第1の金属板10は、シリンダボア用穴2の周囲に形成された折り返し部11と、この折り返し部11の先端部11aよりも外周側にフルビードで形成された第1ダンパビード12と、水穴3の周囲に形成された第1ハーフビード13とを有して構成され、この折り返し部11の内側に、第2の金属板20の一部が挿入される。この第1ダンパビード12は折り返し部11側に凸部が設けられ、第1ハーフビード13は、折り返し部11側、即ち、折り返し部11の先端側11aがある側に突出して設けられる。
【0035】
なお、この第1ダンパビード12は、シール性能よりも、エンジン部材の振動エネルギーの吸収を主とするビードであるため、このビード12の形状、大きさ、弾力性等はシール性能よりも、振動エネルギーの吸収性を重視して設定される。
【0036】
また、第2の金属板20は、第1の金属板10の折り返し部11に挿入される挿入部11と、折り返し部11の先端部11aよりも外周側にフルビードで形成された第2ダンパビード22と、水穴3の周囲に形成された第2ハーフビード23とを有して構成される。この第2ダンパビード22は第1ダンパビード12に対向して互いにフルビードの凸部側が向き合うように設けられ、第2ハーフビード23は、第1ハーフビード13に対向して、第1ハーフビード13側に突出して設けられる。
【0037】
なお、この第2ダンパビード22は、シール性能よりも、エンジン部材の振動エネルギーの吸収を主とするビードであるため、このビード22の形状、大きさ、弾力性等はシール性能よりも、振動エネルギーの吸収性を重視して設定される。
【0038】
この第2の金属板20の第2ダンパビード22の内側の裾野部22aをV字形状に立ち上げて形成し、この立ち上がりの曲がり部分を持つ挿入部21を折り返し部11に挿入して構成する。
【0039】
そして、この第1ダンパビード12と第2ダンパビード22をシリンダライナ4とシリンダケース5の境界部分の段差6を跨ぐ位置に形成する。つまり、第2ダンパビード22の裾野部の内周側22aと外周側22bとが、シリンダライナ4とシリンダケース5の境界部分の段差の段差部分6を跨いで配置される。これらの第1ダンパビード12と第2ダンパビード22で、シリンダライナ4とシリンダケース5の境界部分の段差6を吸収できる。
【0040】
また、この第1ダンパービード12と第2ダンパービード22の裾野部がエンジン部材と接触し、エンジン部材の振動を受けるが、これらのダンパービード12,22がダンパーとして機能し、振動エネルギーを吸収し、ガスケットの他の部分にこの振動が伝播しないようにすることができる。
【0041】
また、第2ダンパビード22の内側の裾野部22aをV字形状に立ち上げてこの裾野部22aの弾力性を高めているので、この部分22aの補助シール性を向上させることができる。また、シリンダライナ5の鍔部の幅Bが狭い場合でも、折り返し部11内に第2の金属板20の一部21を挿入でき、折り返し部11の弾力性の向上と挿入部21のストッパ機能による亀裂発生防止を図ることができる。
【0042】
更に、V字状に立ち上がり曲がり部分を持つ挿入部21を折り返し部11内に把持しているため、折り返し部11の弾力性を挿入部21を平板で形成した場合よりも強化でき、折り返し部11で形成される主要シールのシール性能を向上できる。
【0043】
また、第3の金属板30は、第1ダンパビード12と第2ダンパビード22の間、及び、第1ハーフビード13と第2ハーフビード23との間に配置される。
【0044】
この構成によれば、シリンダボアの主要シールラインが、内部に第2の金属板が挿入された折り返し部で形成され、第1ダンパビード12と第2ダンパビード22の裾野部の内周側12a,22a,12b,22bと外周側とで補助シールラインを形成する。従って、主要シールラインの折り返し部11で高温の燃焼ガスをシールして燃焼ガスを遮断でき、外周側の補助シールラインで更にシール性能を向上できる。
【0045】
そして、この構成によれば、折り返し部11により、燃焼ガスが第2の金属板20や第3の金属板30に接触するのを防止できるので、それぞれの材料の特性を活かした組み合わせでガスケット1を構成できる。従って、シール性、耐熱性、耐腐食性、耐久性等の各種性能を優れたガスケットにすることができる。
【0046】
次に、図2に示す第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Aについて説明する。このシリンダヘッドガスケット1Aは、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同様に第1〜第3の金属板10、20A、30を有して構成されるが、第2ダンパビード22Aがフルビードではなくハーフビードで、第2ダンパビード22Aの外周側22Abを境界部分6の外側の位置になるように形成し、第2の金属板20Aの第2ダンパビード22Aの内側の挿入部21Aを折り返し部11に挿入して構成する。その他の構成は第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1と同じである。
【0047】
この構成によれば、第2ダンパビード22Aをフルビードでなくハーフビードで形成しているため、振動エネルギーの吸収効果がやや低減し、また、第2ダンパビード22の内側の裾野部をV字形状に立ち上げる効果も奏することができないが、第2ダンパビード22Aをハーフビードで形成しているため、第2ダンパビード22Aの内側部分21Aを折り返し部11の内側に収め易くなり、シリンダライナ4の鍔部の幅Bが狭い場合でも、折り返し部11内に第2の金属板20Aの一部21Aを挿入できるので、折り返し部11の弾力性の向上と挿入部のストッパ機能による亀裂発生防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分斜視図である。
【図2】本発明の第2実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1、1A シリンダヘッドガスケット
2 シリンダボア
3 水孔
4 シリンダライナ
5 シリンダケース
6 段差
10 第1の金属板
11 折り返し部
11a 折り返し部の先端部
12 第1ダンパビード
13 第1ハーフビード
20、20A 第2の金属板
21、21A 挿入部
22、22A 第2ダンパビード
23 第2ハーフビード
30 第3の金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダライナ付きエンジンのシリンダボア用穴の周囲に折り返し部と第1ダンパービードを有する第1の金属板と、前記折り返し部の内側に一部が挿入され、前記折り返し部の折り返し先端部よりも外周側に第2ダンパビードを有する第2の金属板と、前記第1ダンパビードと前記第2ダンパビードの間に配置される第3の金属板とから構成されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記第1ダンパビードと前記第2ダンパビードをフルビードで互いに凸部を内側にして対向させて、シリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差を跨ぐ位置に形成すると共に、
前記第2の金属板の前記第2ダンパビードの内側の裾野部をV字形状に立ち上げて、前記折り返し部に挿入したことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
シリンダライナ付きエンジンのシリンダボア用穴の周囲に折り返し部と第1ダンパービードを有する第1の金属板と、前記折り返し部の内側に一部が挿入され、前記折り返し部の折り返し先端部よりも外周側に第2ダンパビードを有する第2の金属板と、前記第1ダンパビードと前記第2ダンパビードの間に配置される第3の金属板とから構成されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記第1ダンパビードをフルビードで、前記第2ダンパビードをハーフビードで形成し、前記第1ダンパービードをシリンダライナとシリンダケースの境界部分の段差を跨ぐ位置に形成すると共に、前記第2ダンパビードの外周側を前記境界部分の外側の位置に形成し、
前記第2の金属板の前記第2ダンパビードの内側を前記折り返し部に挿入したことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
前記第1の金属板と前記第2の金属板の水穴をシールする部分に互いに凸部を内側にして対向する第1ハーフビードと第2ハーフビードをそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のシリンダヘッドガスケット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−147050(P2007−147050A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346229(P2005−346229)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000198237)石川ガスケット株式会社 (57)
【Fターム(参考)】