説明

シリンダ装置

【課題】 シリンダ装置の改良に関し、コイルスプリングが圧縮されたときにコイル部がずれて生じる異音の発生を抑制する。
【解決手段】 シリンダ1と、シリンダ1の一端側に設けられる環状のロッドガイド2と、シリンダ1内周に外周を摺接させるピストン3と、シリンダ1内にピストン3を介して移動自在に挿入されロッドガイド2を貫通するピストンロッド4と、ロッドガイド2とピストン3との間に設けられて伸び切り時の衝撃を緩和するリバウンド部材5とを備えるシリンダ装置において、リバウンド部材5がピストンロッド4外周に配設されるコイルスプリング6と、その両端に形成される固定部61、62に嵌合しピストンロッド4が軸心孔7a、8aに挿通する上下一対のホルダ部材7、8とからなり、コイルスプリングの中央部60が固定部61、62よりも小径に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば油圧緩衝器またはガススプリング等に用いられるシリンダ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧緩衝器またはガススプリング等に用いられるシリンダ装置は、これまでに種々の提案がなされており、例えば、自動車の車体と車軸との間に介装されて車輪に入力される路面振動を吸収する。
【0003】
特許文献1には、従来のシリンダ装置の構成が開示されており、このシリンダ装置は、シリンダと、このシリンダの一端側に設けられる環状のロッドガイドと、上記シリンダ内周に外周を摺接させて上記シリンダ内を二つの作用室に区画するピストンと、上記シリンダ内に上記ピストンを介して移動自在に挿入され上記ロッドガイドを貫通するピストンロッドとを備える。
【0004】
また、上記シリンダ装置は、上記ロッドガイドと上記ピストンとの間に設けられて伸び切り時の衝撃を緩和するリバウンド部材を備えてなり、このリバウンド部材は、上記ピストンロッド外周に配設されるコイルスプリングと、その両端に形成される固定部に嵌合する上下一対のホルダ部材とからなる。
【0005】
そして、上側のホルダ部材は、ピストンロッド外周に摺動自在に設けられ、下側のボルダ部材は、ピストンロッド外周に圧入されピストンの直上部に固定される。
【0006】
上記構成を備えることにより、シリンダ装置が伸張するとき、ピストンロッドがシリンダ外に退出してピストンがロッドガイドに接近し、シリンダ装置の伸び切り時にコイルスプリングが圧縮されて伸び切り時の衝撃を緩和する。
【0007】
図4に示すように、上記コイルスプリング600は、コイル部600a、600b、600c、600dが軸方向に連なって形成される断面円形の線材であり、シリンダ装置の伸び切り時には、上下に隣り合うコイル部同士が密着して最圧縮状態となる。このとき、隣り合うコイル部同士が滑り、一部のコイル部600bが径方向にずれてf2で示す分移動し、異音を発生する虞があった。
【0008】
そこで、出願人は、特許文献2に示すように、コイルスプリングの断面形状を例えば四角形にしてコイル部同士が滑ることを防止した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−321969号公報
【特許文献2】特開2006−132620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2に記載のシリンダ装置においては、異音の発生を抑制することが可能となる点において有用であるが、コイルスプリングが高価となる不具合がある。
【0011】
そこで、本発明の課題は、コイルスプリングの断面形状を変更することなく異音の発生を抑制することが可能なシリンダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段は、シリンダと、このシリンダの一端側に設けられる環状のロッドガイドと、上記シリンダ内周に外周を摺接させるピストンと、上記シリンダ内に上記ピストンを介して移動自在に挿入され上記ロッドガイドを貫通するピストンロッドと、上記ロッドガイドと上記ピストンとの間に設けられて伸び切り時の衝撃を緩和するリバウンド部材とを備えるシリンダ装置において、上記リバウンド部材が上記ピストンロッド外周に配設されるコイルスプリングと、その両端に形成される固定部に嵌合し上記ピストンロッドが軸心孔に挿通する上下一対のホルダ部材とからなり、上記コイルスプリングの固定部の間に形成される中央部が上記固定部よりも小径に形成されることである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コイルスプリングの中央部を固定部よりも小径に形成することにより、中央部とピストンロッドとの距離が短くなる。したがって、コイル部の一部が径方向にずれたとき、従来よりも移動量が小さい段階でピストンロッドに当接するため、コイルスプリングの断面形状を変更することなく異音の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態を示すシリンダ装置の要部を部分的に切り欠いて示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すシリンダ装置の伸び切り時におけるコイルスプリングの中央部を示す半断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示すシリンダ装置におけるコイルスプリングの変形例を示す縦断面図である。
【図4】従来のシリンダ装置の伸び切り時におけるコイルスプリングの中央部を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本願発明の一実施の形態を示すシリンダ装置について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0016】
本実施の形態に係るシリンダ装置は、図1に示すように、シリンダ1と、このシリンダ1の一端側に設けられる環状のロッドガイド2と、上記シリンダ1内周に外周を摺接させるピストン3と、上記シリンダ1内に上記ピストン3を介して移動自在に挿入され上記ロッドガイド2を貫通するピストンロッド4と、上記ロッドガイド2と上記ピストン3との間に設けられて伸び切り時の衝撃を緩和するリバウンド部材5とを備える。
【0017】
そして、上記リバウンド部材5が上記ピストンロッド4外周に配設されるコイルスプリング6と、その両端に形成される固定部61、62に嵌合し上記ピストンロッド4が軸心孔7a、8aに挿通する上下一対のホルダ部材7、8とからなり、上記コイルスプリング6の固定部61、62の間に形成される中央部60が固定部61、62よりも小径に形成される。
【0018】
以下に詳細に説明すると、上記シリンダ装置は、自動車の車体と車軸との間に介装されて路面振動を緩和する油圧緩衝器であり、シリンダ1の外側に同芯に配置される外筒10を備え、複筒型緩衝器を構成する。
【0019】
シリンダ1の一端側(図中上側)に設けられるロッドガイド2は、シリンダ1の上端部及び外筒10の上部に嵌合する。ロッドガイド2の中央にはピストンロッド4を案内する案内孔2aが設けられ、この案内孔2a内に嵌合する環状の軸受20を介してピストンロッド4が摺動自在に軸支されている。
【0020】
また、ロッドガイド2の上面にはピストンロッド4との隙間をシールするシール部材21が設けられ、外筒10の上端部を加締めることにより、ロッドガイド2とシール部材21が外筒10とシリンダ1に固定される。
【0021】
シリンダ1は、ピストンロッド4の先端にナットNを介して固定されるピストン3によって内部を二つの作用室R1、R2に区画されてなり、ピストンロッド4側に伸側作用室R1が、ピストン3側に圧側作用室R2が形成され、各作用室R1、R2内には作動流体が充填される。
【0022】
ピストン3は、その外周に設けられるシール30を介してシリンダ1内周に摺接し、ピストン3には、伸側作用室R1と圧側作用室R2とを連通する伸側流路31と圧側流路(図示せず)とが穿設される。
【0023】
そして、ピストン3の圧側作用室R2側面には伸側流路31を開閉可能に閉塞する伸側バルブV1が設けられ、ピストン3の伸側作用室R1側面には圧側流路を開閉可能に閉塞する圧側バルブV2が設けられる。
【0024】
更に、ピストン3の直上部には、ピストンロッド4外周に溶接または圧入等によって固定される筒状のストッパ部材9が設けられ、このストッパ部材9は、外側に張り出す環状のフランジ部90を備える。
【0025】
そして、リバウンド部材5は、ストッパ部材9のフランジ部90とロッドガイド2との間に設けられ、コイルスプリング6と、その両端に形成される固定部61、62に嵌合する上下一対のホルダ部材7、8とからなる。
【0026】
各ホルダ部材7、8は、軸心部に穿設されてピストンロッド4が挿通する軸心孔7a、8aと、端部外周に張り出してコイルスプリング6の両端が当接するフランジ部70、80と、コイルスプリング6の固定部61、62内周に嵌合するガイド部71、81とを備えてなり、ガイド部71、81を対向させながら配置される。
【0027】
そして、各ガイド部71、81の先端部外周は、徐々に縮径されてテーパ状に形成されてなり、上側のホルダ部材7は、ロッド4外周に摺動自在に設けられ、下側のホルダ部材8は、ロッド4外周に圧入固定される。
【0028】
一方、コイルスプリング6は、コイル部6a、6b、6c、6dが軸方向に連なって形成される断面円形の線材であり(図2)、図1に示すように、両端に形成される固定部61、62と、この固定部61、62から徐々に縮径される縮径部63、64と、縮径部63、64の間に形成される小径の中央部60とからなる。
【0029】
そして、コイルスプリング6の縮径部63、64がテーパ状に形成されるガイド部71、81の先端部に接触しないよう設定される。
【0030】
上記構成を備えることにより、本実施の形態に係るシリンダ装置は、シリンダ装置の伸長時において、伸側作用室R1が加圧されて伸側作用室R1内の作動流体が伸側バルブV1を押し開いて伸側流路31を介して圧側作用室R2内に移動することにより減衰力を発生する。このとき、ピストンロッド4の退出に伴いリバウンド部材5がストッパ部材9で下支えされながら図中上方に移動すると共に、ピストン3とロッドガイド2が接近する。
【0031】
そして、シリンダ装置の伸び切り時付近において、上側のホルダ部材7がロッドガイド2の下面に当接し、シリンダ装置の伸び切り時にコイルスプリング6が最圧縮されて伸び切り時の衝撃を緩和する。
【0032】
また、上記したようにガイド部71、81が嵌合するコイルスプリング6の固定部61、62よりも中央部60が小径に形成されることにより、従来のコイルスプリング600とピストンロッド4との距離d2(図4)よりも中央部60とピストンロッド4との距離d1(図2)が短くなるため、コイル部の一部6bが径方向にずれたとしても、従来よりも移動量(ずれた量)が小さい段階でコイル部6bがピストンロッド4に当接する。
【0033】
したがって、従来のコイル部600bの移動量f2(図4)よりも移動量f1(図2)が小さくなり、コイルスプリング6の断面形状を変更することなく異音の発生を抑制することが可能となる。具体的には、上記移動量f1が1mmよりも小さくすることが好ましい。
【0034】
また、図1に示すように、コイルスプリング6の中央部60をホルダ部材7、8の間になるべく広範囲に亘り形成することが好ましく、当該構成を備えることにより異音の発生を確実に抑制することが可能となる。
【0035】
また、コイルスプリング6が縮径部63、64を有し、固定部61、62が大径に形成されることにより、ホルダ部材7、8のガイド部71、81を大径に形成し、その強度を増すことが可能となる。
【0036】
したがって、下側のホルダ部材8をロッド4外周に圧入するとき、フランジ部80とガイド部81とで圧入代を確保して、リバウンド部材5をコンパクトに形成することが可能となる。
【0037】
また、ホルダ部材7、8のガイド部71、81の先端部外周を徐々に縮径してテーパ状に形成し、縮径部63、64がテーパ状のガイド部71、81の先端部に接触しないよう設定され、シリンダ装置の最伸張時においても縮径部63、64とガイド部71、81とが接触しないよう設定されるため、中央部60の軸方向長さを長くすると共に、縮径部63、64とガイド部材7、8との干渉を回避することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0039】
例えば、コイルスプリング6の形状を図3に示すように、中央にかけて徐々に縮径されてなる固定部61A、62Aの間に小径の中央部60を形成するとしても良く、この場合には、ホルダ部材7、8のガイド部71、81の外周を徐々に縮径させる。
【0040】
この場合においても、一実施の形態と同様にコイルスプリング6の断面形状を変更することなく異音の発生を防止することが可能となり、中央部60の軸方向長さを長くすることが可能となる。
【0041】
また、上記実施の形態においては、シリンダ装置が複筒型緩衝器を構成するとしたが、単筒型緩衝器を構成するとしても、ガススプリングに用いるとしても良い。
【0042】
また、図中には、縮径部や固定部が直線的に傾斜した状態を示すが、縮径部や固定部が円弧状に傾斜するとしても良い。
【0043】
また、図中、上下のホルダ部材のガイド部の傾斜角度が同一であるが、ガイド部の傾斜角度を変えるとしても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダ
2 ロッドガイド
3 ピストン
4 ピストンロッド
5 リバウンド部材
6 コイルスプリング
7、8 ホルダ部材
9 ストッパ部材
10 外筒
60 中央部
61、62 固定部
63、64 縮径部
70、80 フランジ部
71、81 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、このシリンダの一端側に設けられる環状のロッドガイドと、上記シリンダ内周に外周を摺接させるピストンと、上記シリンダ内に上記ピストンを介して移動自在に挿入され上記ロッドガイドを貫通するピストンロッドと、上記ロッドガイドと上記ピストンとの間に設けられて伸び切り時の衝撃を緩和するリバウンド部材とを備えるシリンダ装置において、
上記リバウンド部材が上記ピストンロッド外周に配設されるコイルスプリングと、その両端に形成される固定部に嵌合し上記ピストンロッドが軸心孔に挿通する上下一対のホルダ部材とからなり、
上記コイルスプリングの固定部の間に形成される中央部が上記固定部よりも小径に形成されることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
上記コイルスプリングが上記固定部と、この固定部から徐々に縮径される縮径部と、この縮径部の間に形成される上記中央部とからなることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
上記コイルスプリングの上記固定部に嵌合するホルダ部材のガイド部の先端部外周が徐々に縮径されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
上記コイルスプリングの上記縮径部が上記ガイド部の先端部に接触しないよう設定されることを特徴とする請求項3に記載のシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193804(P2012−193804A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58741(P2011−58741)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【出願人】(508033074)知多鋼業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】