シンバスタチン及び中間体の製造方法
本発明は、シンバスタチン及び種々の中間体を製造する、化学的合成方法及び酵素化学的合成方法を提供する。ある特徴では、ヒドロラーゼのような酵素、例えばエステラーゼが本発明の方法で用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成化学及び薬剤化学の分野に関する。ある特徴では、本発明は、シンバスタチン及び種々の中間体並びに関連化合物を製造する化学的合成方法及び酵素化学的合成方法を提供する。ある特徴では、ヒドロラーゼのような酵素、例えばエステラーゼが本発明の方法で用いられる。
【背景技術】
【0002】
シンバスタチン(Simvastatin)は強力な抗高コレステロール血症剤である。前記はゾコール(ZOCOR(商標)(Merck))の名称で市販されている。シンバスタチン、メバスタチン(Mevastatin)、ロバスタチン(Lovastatin)及びプラバスタチン(Pravastatin)は、酵素HMG-CoAレダクターゼ(人体におけるコレステロール生成のための生合成経路における速度制御酵素)の阻害剤として用いられるヘキサヒドロナフタレン誘導体である。経口的に摂取された後、不活性なラクトンであるシンバスタチンは加水分解されて、対応するβ-ヒドロキシ酸の形態になる。シンバスタチンは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼの阻害物質である。この酵素は、コレステロールの生合成における初期の律速段階である、HMG-CoAのメバロネートへの変換を触媒する。
メバスタチン、ロバスタチン及びプラバスタチンは天然の発酵生成物であり、ヘキサヒドロナフタレン環系のC-8に2-メチルブチレート側鎖を有する。シンバスタチンは、アスペルギルス・テルレウス(Aspergillus terreus)の発酵生成物から合成的に得ることができる。
C-8に2,2-ジメチルブチレート側鎖を有する化合物(シンバスタチンを含む)は、それらの2-メチルブチレート対応物(counterparts)よりも優れたHMG-CoAレダクターゼの阻害物質であり得る。したがって、2,2-ジメチルブチレート誘導体は、アテローム性硬化症、高脂血症、家族性高コレステロール血症及び同様な疾患の治療により有望であろう。しかしながら、シンバスタチンを含むこれらの誘導体は天然に存在せず、合成的に産生する必要がある。結果として、より強力なHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるシンバスタチンの市場への導入は、シンバスタチン製造のための効率的かつ高収率の方法に対する要望を高めた。
【発明の開示】
【0003】
(発明の概要)
1の観点では、本発明は、以下のことを含む新規な方法を提供する:(i)本発明の酵素(例えば例示的には配列番号4に示す配列を有する酵素(配列番号3によってコードされる))を用いて、穏やかな条件下でロバスタチンの側鎖を除去すること、(ii)同じ酵素を用いて、最終工程でエステル保護基を選択的に除去すること、及び(iii)シンバスタチンの側鎖を導入するために新規な条件を適用すること。
本発明は、以下の工程を含む、シンバスタチン製造を目的とする新規な四工程の方法を提供する:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素で加水分解して(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;(b)化学的及び/又は酵素的なラクトン化及びアシル化によって一工程で4-アシルラクトンを生成する工程(ラクトン環の4位(4'-OH)をアシル化することを含み、この場合、前記ラクトン環は下記に記載するようにR-基でアシル化される);(c)化学的及び/又は酵素的アシル化によって4-アセチルラクトンの8位(8'-OH)をアシル化し、4-アシルシンバスタチンを生成する工程;及び(d)化学的及び/又は酵素的加水分解によって(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)4'位のアシル基を選択的に除去し、それによってシンバスタチンを製造する工程。
ある観点では、本発明のシンバスタチン製造のための四工程法は図5に示すスキームを含む。したがって、ある観点では、本発明は、図5に概略するように四工程で実施される、ロバスタチンからシンバスタチンへの酵素化学的変換を提供する。
【0004】
また別の観点では、本発明の四工程シンバスタチン製造方法(例えば図5に概略する方法)は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%若しくは90%又はそれ以上のロバスタチンからシンバスタチンへの全体的収率を提供する。例示的プロトコルや、どこで収率低下が生じるか、またどこで方法の改良が影響を与えうるかを特定する研究は、例えば下記の実施例5、6、7及び8で検討される。
ある観点では、本発明は、図5に示すように、ロバスタチンからシンバスタチンを合成するための四工程経路を提供し、その合成スキームは以下の工程を含む:
工程1:ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素(例えば本明細書に記載するヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼ)を用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸及び/又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程。例えば、(S)-2-メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解で用いることができる例示的なヒドロラーゼ酵素は、配列番号4のエステラーゼ酵素(配列番号3によってコードされる)、配列番号6のエステラーゼ酵素(配列番号5によってコードされる)及び配列番号2のエステラーゼ酵素(配列番号1によってコードされる)、配列番号4のエステラーゼ酵素(配列番号3によってコードされる)である。
工程2:前記トリオール酸をアシル化剤の存在下で攪拌し、4-アシルラクトンを生成する工程。
工程3:8位のヒドロキシルのアシル化工程;化学的に実施することができ、又は本明細書に記載するヒドロラーゼ若しくは市販のヒドロラーゼを用いて酵素的に実施することができる。
工程4:化学的又は酵素的に(本明細書に記載のヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)又は市販のヒドロラーゼを用いる酵素的加水分解)、4'位のアシル保護基を選択的に除去してシンバスタチンを得る工程(例えば図6の工程5を参照されたい。また別の観点では、メチル(Me)基は任意のアルキル又は同等なR-基でもよいことに留意されたい)。ある観点では、配列番号4のエステラーゼ(例えば配列番号3によってコードされる)を用いて、ラクトンの4'位のアシル基の選択的加水分解が触媒される。所望する場合又は必要な場合には、ある観点では、この工程はまたシンバスタチンのアンモニウム塩の生成、及びシンバスタチンの再結晶化、それに続く再ラクトン化を含む。これによって所望の純度をもつシンバスタチンが提供される。
【0005】
あるいは、工程2は、酵素(例えばヒドロラーゼ又はエステラーゼ)及び適切なアシル化剤の存在下でトリオール酸を攪拌することによって実施できる。
ある観点では、本発明は、図6Aに示す方法を含む、シンバスタチンの製造方法を提供する。本発明は、図15A又は図16Aに示す方法を含む、ロバスタチンからトリオール酸を製造する方法を提供する。本発明は、図16Aに示す方法を含む、ロバスタチンからロバスタチン酸を製造する方法を提供する。本発明は、図16Aに示す方法を含む、ロバスタチン酸からトリオール酸を製造する方法を提供する。本発明は、図8又は図16Bに示す方法を含む、トリオール酸からジオールラクトンを製造する方法を提供する。本発明は、図16Cに示す方法を含む、ジオールラクトンからアシルラクトンを酵素的に製造する方法を提供する。本発明は、図16Dに示す方法を含む、トリオールラクトンからアシルラクトンを製造する方法を提供する。本発明は、図9Aに示す方法を含む、トリオール酸から4-アセチルラクトンを製造する方法を提供する。本発明は、図16Eに示す方法を含む、アシルラクトンからアシルシンバスタチンを製造する方法を提供する。本発明は、図9Bに示す方法を含む、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを製造する方法を提供する。ある観点では、本発明は、三フッ化ホウ素を触媒として用い、例えば図9Bに示す条件又はその変型を用いて、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを製造する化学的方法を提供する。
本発明は、図9C又は図11に示す方法を含む、4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンを製造する方法を提供する。本発明は、図16Fに示す方法を含む、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩を製造する方法を提供する。本発明は、図16Fに示す方法を含む、シンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを製造する方法を提供する。本発明は、図38に示す、ホモジアシル化経路を介してロバスタチンからシンバスタチンを製造する方法を提供する。
【0006】
これらの工程の1つ、いくつか、又は全ての酵素的加水分解で用いることができる例示的酵素には、配列番号4の酵素(例えば配列番号3によってコードされる)、配列番号6の酵素(例えば配列番号5によってコードされる)及び配列番号2の酵素(例えば配列番号1によってコードされる)、配列番号4の酵素(例えば配列番号3によってコードされる)、又は配列番号2、配列番号4若しくは配列番号6と50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を有する酵素が含まれる。
本発明は、以下の工程を有する五工程のヘテロジアシル化法を含むシンバスタチン製造方法を提供する:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素により加水分解して(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)、トリオール酸を生成する工程;(b)トリオール酸を加熱して又は酸の存在下で攪拌して、ジオールラクトンを生成する工程;(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位のヒドロキシル(4'-OH)を、前記4'-OHの酵素による位置選択的(regioselective)アシル化によって保護して4-アシルラクトンを生成する工程;(d)前記4-アシルラクトンの8位のヒドロキシル(8'-OH)を、前記8位の化学的及び/又は酵素的な位置選択的アシル化によってアシル化して、4-アシルシンバスタチンを生成する工程;及び(e)前記4'位の前記アシル保護基を選択的に化学的又は酵素的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
また別の観点では、本発明の方法は、少なくとも2つの容器で、すなわち二段階(2-pot)、三段階(3-pot)などのプロセスで実施することができる。本発明の方法は、任意の形態の容器、例えばキャピラリーアレイ(例えばギガマトリックス(GIGAMATRIX(商標)、Diversa Corporation, San Diego, CA)で実施することができる。
【0007】
本発明は、以下の工程を有する方法を含む、シンバスタチン製造のためのホモジアシル化プロセスを提供する:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;(b)前記トリオール酸からラクトン化によってジオールラクトンを生成する工程;(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位(4'-OH)及び8位(8'-OH)を化学的又は酵素的アシル化によってアシル化して、4,8-ジアシルラクトンを生成する工程;及び(d)前記4'位のアシル基を酵素的加水分解によって選択的に除去し、それによってシンバスタチンを製造する。
本発明の他の観点では、別の保護基を4位及び8位につけることによって、他の合成物をジオールラクトンから合成することができる。例えば、この場合、前記R-基は以下の(i)〜(v)から成る群から選択される:(i)-H、ホルミル誘導体;(ii))直鎖又は分枝鎖のC1-nアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど(ある観点ではnは1から20の間の整数である);(iii)置換アルキル基、例えばクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェニルアセチル、4-オキソペンチル(レブリネート);(iv)フェニル及び置換フェニル、例えばフェニル、p-ニトロフェニル;及び(v)R'O-基(カーボネート保護基を形成する)、例示すればtBuOCO、PhOCO、PhCH2OCOであるが、ただしこれらに限定されず、ある観点では、R'O-基はR'が(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のいずれかの基であるカーボネート保護基を形成する。本発明のこれらの選択的な合成反応では、保護基(R-基)が位置選択的に化学的又は酵素的に除去され、所望の最終生成物が製造される。これらのR-基又は同等なR-基は、本発明のいずれかの方法のいずれかの工程で“保護基”として用いることができる。例えば、これらのR-基又は同等なR-基は、図5、図6A、図9、図10、図11、図16C、図16D、図16E又は図16Fで示した本発明の例示的プロセス又は本発明の等価なプロセスにおいて、R-基として用いられる。
【0008】
ある観点では、本発明は、図6に示すように、ロバスタチンからシンバスタチンを合成する五工程経路を提供し、その合成スキームは以下の工程を含む:
工程1:ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素(例えば本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼ)を用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸及び/又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程。例えば、(S)-2-メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解で用いることができる例示的なヒドロラーゼ酵素は、配列番号4のエステラーゼ酵素(配列番号3によってコードされる)、配列番号6のエステラーゼ酵素(配列番号5によってコードされる)及び配列番号2のエステラーゼ酵素(配列番号1によってコードされる)である。
工程2:前記トリオール酸を加熱するか、又は酸の存在下で攪拌して、ジオールラクトンを生成する工程。
工程3:本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用い、酵素による位置選択的アシル化によって、ラクトン環の4'-OHを保護する工程。例えば、図6の工程3を参照されたい。また別の観点では、メチル(Me)基は任意のアルキル又は同等なR-基(例えばメトキシ、アルコキシ、フェニルなど)でもよいことに留意されたい。
工程4:8位のヒドロキシルをアシル化する工程(化学的に、又は本明細書記載のヒドロラーゼ若しくは市販のヒドロラーゼを用いて酵素的に実施することができる)。
工程5:4'位のアシル保護基の選択的な除去を、化学的又は酵素的(本明細書記載のヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)又は市販のヒドロラーゼを用いる酵素的加水分解)に行って、シンバスタチンを得る工程(例えば図6の工程5を参照されたい。また別の観点では、メチル(Me)基は任意のアルキル又は同等なR-基でもよいことに留意されたい)。ある観点では、配列番号4のエステラーゼ(例えば配列番号3によってコードされる)を用いて、ラクトンの4'位のアシル基の選択的加水分解を触媒する。所望される場合、又は必要な場合には、ある観点では、この工程は、シンバスタチンのアンモニウム塩の生成、シンバスタチンの再結晶化、それに続く再ラクトン化も含む。
【0009】
本発明はまた、ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素、例えば本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いて、ロバスタチンからロバスタチン酸を生成する方法を提供する(下記実施例6の工程1を参照されたい)。本発明はまた、ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素、例えば本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸及び/又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程を含む、トリオール酸の生成方法を提供する。本発明は、本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いることによって、ラクトンのヒドロキシル、例えばラクトン環の(例えば図6に示すジオールラクトンの)4'-OHを位置選択的アシル化によって保護する方法を提供する。本発明は、4-アシルラクトンの8位のヒドロキシルを(図6に示すように)アシル化する方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いて、化学的及び/又は酵素的に実施することができる。本発明は、ラクトンのアシル基、例えばラクトンの保護アシル基(例えば図6に示すラクトンの4'位の保護アシル基)を、化学的又は酵素的に選択的に除去する方法を提供する。本発明はまた、これらの方法の2つ又は3つ以上、又は全てを含む方法、例えば酵素化学的にロバスタチン、トリオール酸、ジオールラクトン、4-アセチルラクトン又は4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンを製造する方法を提供する。これらの方法を実施するための本発明の例示的なプロトコルについては、例えば下記の実施例5、6、7及び8を参照されたい。
ある観点では、ジオールラクトンは、ジメチル酪酸の誘導体及びルイス酸触媒を用いて8位で位置選択的にアシル化される。
【0010】
ある観点では、本発明の方法は、いくつかの状況ではシンバスタチンからロバスタチンの分離は非効率的である場合があり、1%未満のロバスタチンを含むシンバスタチンを生じ得る。また別の観点では、本発明の方法は、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%若しくはそれ以上又はそれよりも高いか又は前記と等しい(=)全収率で、シンバスタチンを産生する。ある観点では、本発明の方法は、ロバスタチンの最初の酵素的加水分解が約20%(w/v)で行われて、シンバスタチンを産生する。
ある観点では、本発明は、シンバスタチン合成のためのヘテロジアシル化経路である、図5に示すスキーム(“スキーム1”)又はその変型を含むシンバスタチンの生成方法を提供する。スキーム1(図5)のまた別の観点では、工程1は化学的又は酵素的加水分解を含むことができ、工程2は化学的又は酵素的なラクトン化及びアシル化を含むことができ、工程3は化学的又は酵素的アシル化を含むことができ、工程4は化学的又は酵素的加水分解又はそれらの任意の組合せを含むことができる。ある観点では、これら加水分解反応の少なくとも1つは位置選択的である。
本発明のいずれかの方法のまた別の観点では、少なくとも1つの工程は1つの反応容器で実施される。本発明のいずれかの方法のまた別の観点では、少なくとも1つの工程は細胞抽出物を用いて実施される。本発明のいずれかの方法のまた別の観点では、少なくとも1つの工程は全細胞(whole cell)で実施される。そのような細胞はいずれかの供給源由来のもの、例えば植物細胞、細菌細胞、菌類細胞、哺乳動物細胞又は酵母細胞であり得る。
【0011】
本発明のいずれかの方法のある観点では、シンバスタチンのアンモニウム塩が生成される。ある観点では、本方法はさらにシンバスタチンの再結晶化を含む。ある観点では、前記方法は、所望の純度を有するシンバスタチンを提供するために再ラクトン化を含む。
本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号1と少なくとも55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ又はリパーゼ)又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号3と少なくとも53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号5と少なくとも56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼまたは酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。
【0012】
本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有するヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)または酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。
本発明は、本発明の方法を実施するための試薬類とヒドロラーゼ酵素とを含むキットを提供する。ある観点では、前記キットは、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有する少なくとも1つのヒドロラーゼ又は酵素的に活性なそのフラグメントを含む。ある観点では、前記キットは本発明の方法の実施のための説明書を含む。
本発明の1つ又は2つ以上の実施態様の詳細は以下の記載及び添付の図面で説明される。本発明の他の特徴、目的及び利点は下記の記載及び図面、並びに請求の範囲から明白であろう。
本明細書で引用される全ての刊行物、特許、特許出願、GenBank配列及びATCC寄託物は参照により本明細書に含まれる。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、シンバスタチン(例えばZOCOR(商標))及びその中間体を製造する、新規な化学的及び生化学的合成プロセスを提供する。これらの方法は、効率が高く、また対費用効果が高い。
本発明の種々の観点では、本方法は、種々の酵素(ヒドロラーゼ、例えばアシラーゼ及びエステラーゼを含む)を用いて生体触媒的に反応を触媒する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、ロバスタチンをロバスタチン酸へ酵素的に加水分解する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ロバスタチン酸又はその塩をトリオール酸又はその塩へ酵素的に加水分解する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、ジオールラクトンをアシルラクトンへ酵素的にアシル化する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、アシルラクトンをアシルシンバスタチンへ酵素的にアシル化する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、ラクトン環を加水分解する方法を提供する。
本発明は、in vitro又はin vivo技術(例えば全細胞プロトコル、例えば発酵又は他の生体触媒的プロセス)を介して、シンバスタチン及び種々の中間体を製造する方法を含む。
また別の観点では、本発明は、図5又は図6A及び6Bに示したように、ロバスタチンをシンバスタチンへ変換する新規な方法を提供する。
ある観点では、加水分解を介してロバスタチンから生成されたジオールラクトンは、ジメチル酪酸誘導体及びルイス酸触媒を用いて、8位で位置選択的にアシル化される。ジオールラクトンは、本明細書に記載した酵素化学的プロセスを用いてロバスタチンから生成することができる。
【0014】
ある観点では、本発明は、図17Aに図示されたようにルイス酸を用いて、ジオールラクトンからシンバスタチン、4'-アシルシンバスタチン及びホモシンバスタチンを生成することを含むプロセスを提供する。本発明者らは、ルイス酸触媒の存在下でジオールラクトンをカルボン酸誘導体で処理することによって、優先的な8位のアシル化がもたらされることを見出した。過剰量の酢酸ビニルが金属トリフレートの存在下で用いられる場合、8-アセチル誘導体がほぼ例外なく低変換率で生成される。今日までの結果から、室温にてジオールラクトンをジメチル酪酸無水物とジクロロメタン中のBi(OTf)3又はCu(OTF)2との混合物で処理することによって急激な反応が生じることが示されており、前記反応ではシンバスタチン:4'-アシルラクトン比が>4:1である。
ある観点では、シンバスタチンの単離及び精製は結晶化による。ある観点では、本発明は、ルイス酸触媒及び/又はアシル化薬剤をスクリーニングして、シンバスタチンの収率を最大にし副生成物を最小限にするための別の反応条件を提供する方法を提供する。シンバスタチンの収率を最大にし、副生成物を最小限にすることは、結晶化プロトコルで有用である。シンバスタチンの単離/精製に結晶化を用いることによって、ロバスタチンからシンバスタチンを得る例示的二工程プロセスがもたらされる。
ある観点では、本発明は、図17Bに図示されたように酵素的加水分解によって、シンバスタチン、4'-アシルラクトンシンバスタチン及びホモシンバスタチンからシンバスタチン及びジオールラクトンを生成することを含むプロセスを提供する。
【0015】
ある観点では、イソシンバスタチン及びホモシンバスタチンを結晶化によって取り除くことができるレベルまで減少させることができない場合、最終的な酵素的加水分解工程を用いて生成物の回収が促進される。ある観点では、シンバスタチン、イソシンバスタチン及びホモシンバスタチンの混合物をエステラーゼ(例えば配列番号4に示す配列を有する酵素(配列番号3によってコードされる))で処理することによって、4'-位のアシル基の位置選択的加水分解がもたらされ、シンバスタチンとジオールラクトンの混合物が得られる。ある観点では、シンバスタチンは結晶化によって分離される。
あるいは、過剰量の酸無水物の使用によって、反応をシンバスタチン及びホモシンバスタチンの生成へ向かって押し進めることができる。これによってイソシンバスタチンの量を最小限にすることができる。それらのような混合物の酵素的加水分解によって、シンバスタチンの生成及び容易な単離がもたらされる。
ルイス酸の存在下でジオールラクトンを位置選択的にアシル化することによってシンバスタチンを製造するある局面では、ジオールラクトンは、触媒としての5mol%のCu(OTf)2の存在下で、クロロメタン中のジメチル酪酸無水物(0.5当量(eq))で室温にて処理される。HPLC分析は、ジオールラクトンが10分以内に50%変換されることを示した。シンバスタチン(8位のアシル化):イソシンバスタチン(4位のアシル化)の比は4:1であり、約4%のホモシンバスタチンも生成された。
【0016】
ある観点では、本発明は、図5の新規な四工程プロセス、又は図6Aの五工程プロセスに示される工程、又はそれらの組合せを含む方法を提供する。また別の観点では、本発明は、以下の工程の少なくとも1つの工程、数工程、又は全工程を含む方法を提供する:
工程1:ヒドロラーゼ酵素、例えば本明細書に記載の酵素(例えば配列番号4の酵素(配列番号3によってコードされる))又は市販のヒドロラーゼを用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する。
工程2:トリオール酸を、例えば図5の工程2のように一工程で又は図6Aの工程2及び3のように二工程で、4-アセチルラクトンに変換する(ある観点では、トリオール酸は加熱されるか、又は酸の存在下において攪拌されて、ジオールラクトンを生成する)。
工程3:ジオールラクトンのラクトン環の4'-OHを、例えば本明細書に記載の酵素又は市販のヒドロラーゼを用い、位置選択的な酵素的アシル化によって保護して、4-アセチルラクトンを生成する。
工程4:8位のヒドロキシルをアシル化する(化学的に又は酵素的に、例えば本明細書記載の酵素若しくは市販のヒドロラーゼを用いて、実施することができる)。
工程5:4'位のアシル保護基を、化学的又は酵素的に選択的に除去して、シンバスタチンを得る。必要な場合には、シンバスタチンのアンモニウム塩を生成し、さらにシンバスタチンを再結晶化し、続いて再ラクトン化することによって、所望の純度をもつシンバスタチンが提供される。
ある観点では、上述の工程1に関して、本発明は、図16Aに図示されたように酵素的又は化学的な加水分解によってロバスタチンからロバスタチン酸を生成することを含む方法を提供する。本発明は、図16Aに図示されたように酵素的又は化学的な加水分解によってロバスタチン酸からトリオール酸又はトリオールの塩を生成することを含む方法を提供する。
ロバスタチンとシンバスタチンの分離が困難なこと、及びシンバスタチンAPI中の許容され得るロバスタチンレベルが低いことから、メチルブチレート側鎖の完全な又は実質的に完全な(また別の観点では>99%、>98%、>97%又は>96%)除去がプロセスに必須であろう。報告されているロバスタチンの加水分解のための手法は、完全な反応のために高温及び長い反応時間を用いることを要求する。
【0017】
ある観点では、ロバスタチンは、ヒドロラーゼ酵素(例えば配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示される配列を有する酵素(それぞれ、配列番号1、配列番号3又は配列番号5によってコードされる))を用いて穏やかな条件下で加水分解される。これにより、ラクトン環の加水分解及び8位の側鎖の完全な除去がもたらされる。配列番号1、配列番号3及び配列番号5に示す配列を有する酵素(配列番号2、配列番号4、配列番号6)は、メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解に特に有効であることが示された。配列番号4に示された配列を有する酵素がサブクローニングされ、大腸菌(E. coli)などの宿主で発現された。
ロバスタチンは、酵素活性に必要な水性条件下で難溶性を示し得る。したがって、また別の観点では、ロバスタチンの懸濁水のpHを12より高くして、ラクトン環の迅速な加水分解を実施する。これによって、より溶解性の高いロバスタチン酸の塩がin situ生成される。ある観点では、次に、その反応混合物のpHを酵素反応に適した範囲まで下方に再調整して、酵素を添加する。
酵素による加水分解の条件はまた、発酵ブロスから直接抽出されたロバスタチン及びロバスタチン酸の混合物に用いることもできる。あるいは、酵素を発酵ブロス及び単離したトリオール酸に直接添加してもよい。
ある観点では、加水分解の後、反応混合物が酸性化される。トリオール酸は抽出及び/又はろ過によって単離され、次の工程で直接使用することができる。あるいは、トリオール酸は、適切な結晶化/沈殿工程の後で固体として単離される。
ある観点では、上述の工程2に関して、本発明は図16Bに図示される工程を含む方法を提供する。ある観点では、トリオール酸を適切な溶媒中で加熱し、通常の手段によって水を除去することによりラクトン形態へ平衡を移動させることによって再ラクトン化される。あるいは、適切な酸の存在下で攪拌することによってラクトン環が閉じられる。
【0018】
ある観点では、上述の工程3に関して、本発明は、所望の活性及び選択性を有する酵素、例えば、エステラーゼなどのヒドロラーゼを用いて、4'-位のヒドロキシル基を酵素的にアシル化することを含む方法を提供する。ある観点では、ヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)を用いてジオールラクトンがアシル化される。アシル基の性質を変化させて適切な特性を付与することができる(例えば除去を容易にするアセテート、結晶性を強化するベンゾエート、水溶性を強化するホルメート)。
【0019】
本明細書に記載した例示的方法(例えば図5及び6A、図38)のまた別の観点では、工程3(上記)、工程4及び5(下記)に示す反応および試薬類を含み、アシルは任意の適切なR-基で置換することができる(すなわち“保護”基は任意のR-基でよい)。ここで、“R”は以下のものでもよい:(i)-H、ホルミル誘導体;(ii)直鎖又は分枝鎖のC1-nアルキル;(iii)置換アルキル基、例えばクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェニルアセチル、4-オキソペンチル(レブリネート);(iv)フェニル及び置換フェニル、例えばフェニル、p-ニトロフェニル;及び(v)カーボネート保護基を形成するR'O-基、例示すればtBuOCO、PhOCO、PhCH2OCOであるが、ただしこれらに限定されない。
ある観点では、R'O-基はカーボネート保護基を形成し、さらにR'は(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のいずれかの基である。ある観点では、Rが長鎖アルキル基であるときは、長鎖アルキルエステルに対して反応性が強化された酵素が用いられる。Rが長鎖アルキル基であるときは、可溶性が問題となり得る。ある観点では、Rが(i)導入の容易さ、(ii)加水分解のための良好な酵素活性、(iii)可溶性、(iv)試薬類のコストの理由で有利であり得る、アセテートである。
【0020】
ある観点では、上述の工程4に関して、本発明は、選択的な実施態様において、図16Eに図示されるような工程及び試薬類を含む方法を提供する。ある観点では、ジメチル酪酸誘導体と適切なアシル化触媒との組合せを用いて(酵素的アシル化及び化学的アシル化により)、所望のシンバスタチン側鎖が導入される。ジメチル酪酸無水物/ルイス酸(例えばBi(トリフレート)3、Cu(トリフレート)2)の組合せが、室温(RT)での迅速な反応をもたらす。
ある観点では、本発明は、適切なルイス酸及び反応条件(温度、溶媒などを含む)をスクリーニングする方法を提供する。アシル化にとって最適な種々のプロトコル又は試薬類に関する条件は、慣例的なスクリーニングを用いて決定できる。
ある観点では、酵素が触媒するアシルラクトンのアシル化を用いて、非常に穏やかな条件下で(例えばある観点ではRT(例えば約40℃)で有機溶媒を使用)、副生成物を生じることなく8位にジメチルブチレート基が導入される。
本発明は、本発明の方法で所望の活性を示す種々の酵素をスクリーニングする方法を提供する。酵素は、本発明の多様なプロトコルにおける有効性について、慣例的な方法を用いてスクリーニングすることができる。
ある観点では、上述の工程5に関して、本発明は、選択的な実施態様において、図16Fに図示される工程及び試薬類を含む方法を提供する。
ある観点では、最終工程は4'-位のアシル基の選択的除去を必要とする。4'-位のアシル基は、たとえわずかな塩基性の条件下であっても、塩基が触媒する脱離に対して非常に感受性であり得る。結果として、酵素的加水分解が、前記アシル基の位置選択的脱離にもっとも都合のよい方法であった。ロバスタチンを加水分解する同じ酵素(上記の工程1の配列番号4の酵素(配列番号3によってコードされる))はまた、ラクトンの4'-位のアシル基の選択的加水分解のための効果的な触媒であることが示された。pH7で実施される場合、前記酵素による加水分解によって実質的に無傷のラクトン環をもつシンバスタチンが得られる。
【0021】
<一般的方法>
本発明は、シンバスタチン及び種々の中間体を製造する新規な生化学的方法を提供する。本発明の方法で用いられる出発化合物及び中間化合物は多様な工程及び方法論を用いて合成できることは、当業者には理解されよう。前記工程及び方法論は学術文献及び特許文献、例えば以下に詳細に記載されている:Organic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY; Venuti (1989) Pharm Res. 6:867-873。本発明は、当技術分野で公知の任意の方法又はプロトコル(前記は学術文献及び特許文献に詳細に記載されている)と併用して実施することができる。
本明細書に提供される一般的方法の検討は単に例示を目的とするものである。他の種々の方法及び実施態様が本開示から当業者には明白であろう。
【0022】
(酵素)
本発明のいずれかの方法におけるある観点では、少なくとも1つの酵素反応がヒドロラーゼ活性(例えばエステラーゼ活性)を有するポリペプチドによって達成される。前記ポリペプチドは、例えば、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有するヒドロラーゼ、又はその酵素的に活性なフラグメントである。ヒドロラーゼ活性を有する前記ポリペプチドは、触媒部位を含むペプチド、触媒性抗体などであってもよい。
配列番号4に示す配列を有するポリペプチドは、β-ラクタマーゼとの相同性を有するファミリーVIIのエステラーゼであり、SXXKモチーフを共有する。したがって、本発明の方法の1つの工程、数工程又は全工程で用いることができる酵素は、エステラーゼ活性を有し、配列番号4及びSXXKモチーフと少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有することができる。
配列番号2又は配列番号6に示す配列を有するポリペプチドはフェルロイルエステラーゼである。したがって、本発明の方法の1つの工程、数工程又は全工程で用いることができる酵素は、フェルロイルエステラーゼ活性を有することができる。
【0023】
本発明の方法で用いられる酵素は、任意の合成方法又は遺伝子組換え方法によって産生することができるが、天然の供給源から単離されたものか、又はそれらの組合せでもよい。本発明の方法を実施するために用いられる酵素をコードする核酸は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、ベクター、ウイルス又はそれらのハイブリッドのいずれであってもよく、種々の供給源から単離して、遺伝子工学的な操作、増幅及び/又は発現/組換え生成することができる。これらの核酸から生成された組換えポリペプチドを、個々に単離するか又はクローニングして、所望の活性について試験することができる。いずれの組換え体発現系(細菌、哺乳動物、酵母、昆虫又は植物細胞発現系を含む)も用いることができる。本発明の方法を実施するために用いられる核酸は、増幅法を用いて生成することができる。前記方法もまた周知であり、例えば次のものが挙げられる:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば以下を参照されたい:PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, ed. Innis, Academic Press, NY (1990); PCR Strategies (1995) ed. Innis, Academic Press, Inc., NY)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば以下を参照されたい:Wu (1989) Genomics 4:560; Landegren (1988) Science 241:1077; Barringer (1990) Gene 89:117)、転写増幅(例えば以下を参照されたい:Kwoh (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173)、及び自己持続性配列複製(self-sustained sequence replication)(例えば以下を参照されたい:Guatelli (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)、Qβレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば以下を参照されたい:Burg (1996) Mol. Cell. Probes 10:257-271)、自動Qβレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば以下を参照されたい:Burg (1996) Mol. Cell. Probes 10:257-271)、及び他のRNAポリメラーゼ仲介技術(例えば以下を参照されたい:NASBA, Cangene, Mississauga, Ontario)。
【0024】
あるいは、これら核酸は周知の化学的合成技術によってin vitroで合成することができる。前記技術は例えば以下に記載されている:Adams (1983) J. Am. Chem. Soc. 105:661; Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444; Frenkel (1995) Free Radic. Biol. Med. 19:373-380; Blommers (1994) Biochemistry 33:7886-7896; Narang (1979) Meth. Enzymol. 68:90; Brown (1979) Meth. Enzymol. 68:109; Beaucage (1981) Tetra. Lett. 22:1859; US Patent No. 4,458,066。
核酸操作のための技術、例えばサブクローニング、プローブの標識(例えば、Klenowポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅を用いるランダムプライマー標識)、配列決定、ハイブリダイゼーションなどについては、学術文献および特許文献に詳細に記載されている。例えば以下を参照されたい:Sambrook, ed., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol1-3, Cold Spring Harbor Laboratory (1989); Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997); Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization with Nucleic Acids Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)。本発明の方法の実施に用いられる核酸を入手および操作するために有用なまた別の手段は、ゲノムサンプルからのクローニング、および所望の場合には、例えばゲノムクローン若しくはcDNAクローンから単離または増幅した挿入物のスクリーニングおよび再クローニングである。本発明の方法で用いられる核酸の供給源には、例えば哺乳動物人工染色体(MAC)(例えば米国特許5,721,118号、同6,025,155号を参照されたい)、ヒト人工染色体(Rosenfeld (1997) Nat. Genet. 15:333-335)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、P1人工染色体(Woon (1998) Genomics 50:306-316)、P1誘導ベクター(PAC)(Kern (1997) Biotechniques 23:120-124)、コスミド、リコンビナントウイルス、ファージ又はプラスミドに収納されているゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーが含まれる。
【0025】
本発明の核酸及びポリペプチドは、当業者に周知の多数くの方法のいずれかによって検出、確認及び定量することができる。核酸及びそれに対応するタンパク質の両者を検出する一般的な方法には、生化学的分析方法(例えば分光光度法、ラジオグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィーなど)、及び多様な免疫学的方法(例えば液体若しくはゲル沈澱反応、(シングル又はダブル)免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイなど)が含まれる。核酸及びポリペプチドの検出は、周知の方法、例えばサザン分析、ノーザン分析、ゲル電気泳動、PCR、放射能標識、シンチレーション計数、及びアフィニティークロマトグラフィーによって実施できる。
本発明の例示的方法の種々の工程では、エステラーゼ活性を有するポリペプチド(例えばエステラーゼ)が用いられる。いずれかのエステラーゼ、又は酵素(例えばヒドロラーゼ)又は同様な活性を有する他のポリペプチド(例えば触媒性抗体又は活性部位を含むペプチド)を用いることができる。
本発明の方法で使用する酵素(例えばロバスタチン、ロバスタチン酸、4-アセチルシンバスタチン又はシンバスタチンを加水分解する酵素)をスクリーニングするため、任意の方法を用いることができる。これらの方法は本技術分野で周知である。例えば、ある実施態様では、本発明の方法で用いることができる酵素を決定するために用いられるスクリーニング条件の一つの例示的なセットは、以下のものの使用を含む:2.5mMの基質、100mMのリン酸緩衝液/共溶媒(pH7からpH8)(30℃で48時間)、とともに以下の組成物:(i)MTBE/緩衝液中のロバスタチン又はシンバスタチン、(ii)トルエン/緩衝液中のロバスタチン又はシンバスタチン、(iii)10%メタノール/緩衝液中のロバスタチン酸又はシンバスタチン酸。スクリーニングの結果は1mMの基質で確認した。
【0026】
この例示的アッセイを用いて、配列番号2、配列番号4及び配列番号6に示す配列を有する3つの酵素はロバスタチン又はロバスタチン酸の加水分解のために活性を有することが決定された。配列番号4に示す配列を有する酵素のみがシンバスタチンの加水分解に対して活性を示した。配列番号4及び配列番号2を、10%MeOH/緩衝液(pH9)中の25mM、50mM及び100mMのロバスタチン酸でさらに判定した(便宜上より溶解性の高いロバスタチン酸を基質として用いた)。配列番号4は数多くの事例で高い基質変換率を示し、溶液収率は12〜60%のトリオール酸であった。
配列番号4、配列番号2、配列番号6に示す配列を有する酵素(例えば、それぞれ配列番号3、配列番号1及び配列番号5によってコードされる)をコードする配列を含むゲノムクローンを、標準条件下(同じ総タンパク質濃度、又は蛍光基質(メチルウンベリフェリルブチレート、MUB)に対して正規化した同じ酵素活性)でロバスタチン酸の加水分解について比較した。配列番号4を含む配列を有する酵素が、前記反応条件下で最良の活性を示した。
配列番号4及び配列番号2に示す配列を有する酵素(例えば、それぞれ例示的な配列番号3及び配列番号1によってコードされる)をコードする配列を含むゲノムクローンをサブクローニングした。配列番号2は、分泌/局在化に必要であると考えられるリーダー配列を有し、リーダー配列無しで又はリーダー配列とともにサブクローニングした。これらのサブクローンをMUB及びロバスタチン酸に対してアッセイした。リーダー配列を有する配列番号2をコードするサブクローンだけがMUBに対して活性を示した。さらにまた、これらサブクローンのいずれも、ロバスタチン酸に対しては活性を示さなかった。
配列番号4をコードする核酸を含むゲノムクローンを用いたトランスポゾン挿入実験によって、ロバスタチンエステラーゼ活性に必要な遺伝子を同定した。この遺伝子は予想された43kDの分子量を有するエステラーゼをコードしており、さらにその43kDのバンドを未変性ゲルから単離してロバスタチン酸に対する活性を確認すること及びMS分析によって、その物質の実体(identity)を確認した。配列番号4をコードする核酸を含む大腸菌(E. coli)構築物はロバスタチンを加水分解することができ、350mM基質で35℃、21時間でトリオール酸への変換率93〜98%を示した。
【0027】
<キャピラリーアレイ>
本発明の方法、及び/又は本発明の方法で用いることができる酵素を決定するために用いられるスクリーニングプロトコルは、全体として、又は部分的にキャピラリーアレイ、例えばGIGAMATRIX(登録商標)(Diversa Corporation, San Diego, CA)によって実施することができる(例えばWO0138583を参照されたい)。試薬類又はポリペプチド(例えば酵素)をアレイ(キャピラリーアレイを含む)に固定化又は適用(apply)することができる。キャピラリーアレイは、試薬、触媒(例えば酵素)及び生成物の保持及びスクリーニングのためのまた別の系を提供する。そのような装置はさらに、アレイの隣接するキャピラリー間に配置される間隙材(interstitial material)、及び間質材の内部に形成される1つ又は2つ以上の基準となる特徴(reference indicia)を含むことができる。高処理スクリーニング装置もまた応用することができ、本発明の方法の実施に用いることができる(例えば米国特許出願20020001809号を参照されたい)。
【0028】
<全細胞に基づく方法>
本発明の方法は、全細胞環境で全体的に又は部分的に実施することができる。本発明はまた1の細胞の全細胞進化又は全細胞操作を提供して、本発明の方法で用いることができる新規な表現型を有する新規な細胞株、例えば本発明の方法で使用する1つ、いくつか又は全ての酵素を含む細胞株を開発することもできる。このようなことは、細胞の遺伝的構成を改変することによって実施することができる。この場合、遺伝的構成は、例えば本発明の方法で用いられる酵素のコード配列といった核酸を細胞に添加することによって改変され得る(例えばWO0229032;WO0196551を参照されたい)。
“全細胞プロセス”のための宿主細胞は、当業者に公知のいずれかの細胞でよい。そのような細胞には原核細胞、真核細胞、例えば細菌細胞、菌類細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は植物細胞が含まれる。
本発明の方法の中間体若しくは生成物又は新規な表現型の生成を検出するために、細胞(又は遺伝的に改変された細胞)の少なくとも1つの代謝パラメーターを、“リアルタイム”又は“オンライン”時間枠でメタボリックフラックス分析(MFA)によってモニターする。ある観点では、複数の細胞、例えば細胞培養を“リアルタイム”又は“オンライン”でモニターする。ある観点では、複数の代謝パラメーターを“リアルタイム”又は“オンライン”でモニターする。
代謝フラックス分析(MFA)は公知の生化学的枠組みに基づいている。線形独立代謝行列は、細胞内代謝物について質量保存の法則及び擬似定常状態仮説(pseudo-steady state hypothesis、PSSH)に基づいて構築される。本発明の方法の実施では、以下を含む代謝ネットワークが確立される:
・全ての経路(パスウェイ)の基質、生成物および中間代謝物の実体;
・前記経路の代謝物を変換する全ての化学反応の実体、前記経路の反応の化学量論;
・前記反応を触媒する全ての酵素の実体、前記酵素反応のカイネティクス;
・経路の成分間の調節的相互反応、例えばアロステリック相互反応、酵素-酵素相互反応など;
・酵素の細胞内区画局在性または前記酵素の分子レベルを超えるその他の一切の機構;及び
・代謝物、酵素若しくはエフェクター分子の何らかの濃度勾配の存在、又はそれらの移動に対する拡散障壁。
ある株について前記代謝ネットワークがいったん確立されたら、行列概念による数学的提示を導入し、オンラインメタボロームデータが利用可能ならば細胞内代謝フラックスを概算することができる。代謝表現型は細胞内の全代謝ネットワークの変化に依存する。代謝表現型は、環境条件、遺伝的調節、発育状態および遺伝子型などに対応する経路利用の変化にも依存する。本発明の方法のある観点では、オンラインMFA計算の後で、細胞の動的挙動、表現型及びその他の特性が経路利用を調査することによって解析される。
細胞培養物の生理的状態の制御は、前記経路解析の後で可能になるであろう。本発明の方法は、基質供給、温度、誘導物質の使用などをどのように変化させるかを決定することによって発酵をどのように操作するかを決定することに役立ち、細胞の生理的状態を所望の方向に進ませるように制御することができる。本発明の方法の実施に際して、MFAの結果はまた、トランスクリプトームデータおよびプロテオームデータと比較して、代謝エンジニアリングまたは遺伝子シャッフリングなどのための実験およびプロトコルを設計することができる。代謝または増殖のいずれの局面もモニターすることができる。
【0029】
(mRNA転写物発現のモニタリング)
本発明のある観点では、表現型の操作は、細胞内でのmRNA転写物の発現の増加若しくは減少、又は新規転写物の生成を含む。この発現の増加又は低下は、蛍光ポリペプチド、例えば本発明の方法で用いられる酵素を含むキメラタンパク質の使用によって追跡することができる。mRNA転写物(または伝達信号(message))もまた、本技術分野で公知の任意の方法(ノーザンブロット、定量的増幅反応、アレイへのハイブリダイゼーションなどなどを含む)によって検出および定量することができる。定量的増幅反応は、例えば定量的PCR(例えば定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、すなわちRT-PCRを含む);定量的リアルタイムRT-PCR、すなわち“リアルタイムカイネティックRT-PCR”を含む(例えば以下を参照されたい:Kreuzer (2000) Br. J. Haematol. 114:313-318; Xia (2001) Transplantation 72:907-914)。
本発明のある観点では、操作表現型は、相同遺伝子の発現をノックアウトすることによって作出される。前記遺伝子のコード配列又は1つ若しくは2つ以上の転写制御エレメント(例えばプロモータまたはエンハンサー)をノックアウトすることができる。したがって転写物の発現は完全に除去されるか、または単に減少させることができる。
本発明のある観点では、操作表現型は、相同遺伝子の発現の増加を含む。これは、負の制御エレメント(cis-またはtrans-で作用する転写調節エレメントを含む)のノックアウト、または正の制御エレメントの変異誘導によって実施できる。細胞の1若しくは2以上又は全ての転写物を、その細胞の転写物を含むサンプル又は細胞の転写物を表す核酸若しくは細胞の転写物と相補的な核酸を含むサンプルのハイブリダイゼーションによって、例えば、アレイ上に固定された核酸とのハイブリダイゼーションによって、測定することができる。
【0030】
(ポリペプチド、ペプチドおよびアミノ酸の発現のモニタリング)
本発明のある観点では、操作表現型は、細胞内でのポリペプチドの発現の増加若しくは減少、又は新規なポリペプチドの生成を含む。この発現の増加または減少は、蛍光ポリペプチド(例えば本発明の方法で用いられる酵素を含むキメラタンパク質)を使用することによって追跡することができる。ポリペプチド、試薬及び最終生成物(例えばシンバスタチン)はまた、本技術分野で公知の任意の方法(例えば核磁気共鳴(NMR)、分光光度法、ラジオグラフィー(タンパク質放射能標識)、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速性能クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィー、多様な免疫学的方法、例えば免疫沈澱、免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ゲル電気泳動(例えばSDS-PAGE)、抗体による染色、蛍光活性化セルソーター(FACS)、熱分解質量分析法、フーリエ変換赤外線分光分析、ラマン分光分析、GC−MS、並びにLC-エレクトロスプレー質量分析及びcap-LC-タンデム-エレクトロスプレー質量分析などを含む)によって検出および定量することができる。新規な生物活性はまた、米国特許第6,057,103号に記載された方法またはその変法を用いてスクリーニングすることもできる。細胞のポリペプチドはタンパク質アレイを用いて測定することができる。
【0031】
<配列同一性の程度の決定>
本発明のいずれかの方法のある観点では、プロセスの少なくとも1つの工程が、配列番号1、配列番号3及び/又は配列番号5と少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ又はアシラーゼ)又は酵素的に活性なそのフラグメント(あるいは市販のヒドロラーゼ酵素)によって実施される。本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応が、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有するヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ又はアシラーゼ)、又はその酵素的に活性なフラグメント(あるいは市販のヒドロラーゼ酵素)によって実施される。
酵素活性は、公知のプロトコルを用いる慣例的なスクリーニング、又は本明細書に記載した本発明の方法によって決定することができる。例えば酵素的活性は、本明細書に記載したように、ポリペプチド又はペプチドがラクトン環を加水分解することができるか否か、又はジオールラクトンを酵素的にアシル化することができるか否かを試験することによって決定することができる。
【0032】
タンパク質および/または核酸配列の相同性は、本技術分野で公知の多様な配列比較アルゴリズムおよびプログラムのいずれかを用いて評価することができる。そのようなアルゴリズムおよびプログラムには、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALWが含まれるが、ただしこれらに限定されない(例えば以下を参照されたい:Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(8):2444-2448, 1988; Altschul et al., J. Mol. Biol. 215(3):403-410, 1990; Thompson et al., Nucleic Acids Res. 22(2):4673-4680, 1994; Higgins et al., Methods Enzymol. 266:383-402, 1996; Altschul et al., J. Mol. Biol. 215(3):403-410, 1990; Altschul et al., Nature Genetics 3:266-272, 1993)。
相同性または同一性は、しばしば配列分析ソフト(例えばジネティクスコンピュータグループ(Universty of Wisconsin Bitechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705)の配列分析ソフトウェアパッケージ)を用いて測定される。そのようなソフトは、種々の欠失、置換および他の改変に対して相同性の範囲を割り当てることによって適合する類似の配列を見つける。2つまたは3つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関して“相同性”および“同一性”という用語は、比較ウィンドウまたは指定の領域上で、任意の数の配列比較アルゴリズムを使用するかまたは手動アラインメント及び目視精査による測定にしたがって最大一致を求めて比較およびアラインメントを実施したとき、同じであるかまたは特定のパーセンテージのアミノ酸残基またはヌクレオチドが同じである2つまたは3つ以上の配列を指す。
配列比較の場合、典型的には一方の配列が参照配列として機能し、前記に対してテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いるとき、テスト配列および参照配列はコンピュータに入力され、部分配列同格物が必要な場合に指定され、さらに配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。規定値プログラムパラメーターを用いることができるが、また別のパラメーターを指定することもできる。続いて配列比較アルゴリズムは、前記のプログラムパラメーターを基に参照配列に対するテスト配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0033】
本明細書で用いられる“比較ウィンドウ”は、任意数の連続残基セグメントに対する参照を含む。例えば本発明のまた別の観点では、本発明の例示的なポリペプチドまたは核酸配列の20から完全長の間のいずれかの範囲の連続残基が、同じ数の連続した箇所をもつ参照配列と前記2つの配列を最適にアラインメントした後で比較される。参照配列が本発明の例示的なポリペプチドまたは核酸配列と必要な配列同一性を有するならば、例えば50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号6に対して有するならば、さらに前記配列がヒドロラーゼであるか又はヒドロラーゼをコードするならば、前記配列は本発明の方法少なくとも1つの工程で用いることができる。また別の実施態様では、約20から600、約50から200、および約100から150の範囲の部分配列が、同じ数の連続した箇所をもつ参照配列と前記2つの配列を最適にアラインメントした後で比較される。
比較のために配列をアラインメントする方法は本技術分野では周知である。配列比較の最適アラインメントは、例えばSmith & Watermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482 (1981))によって、Needleman & Wunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443 (1970))によって、Pearson & Lipmanの類似性検索方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988))によって、前記アルゴリズムのコンピュータによる実施によって(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、または手動アラインメントと目視精査によって実施できる。相同性または同一性決定のための他のアルゴリズムには、例えば、BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information)の他に、ALIGN、AMAS(Analysis of Multiply Aligned Sequences)、AMPS(Protein Multiple Sequence Alignment)、ASSET(Aligned Segment Statistical Evaluation Tool)、BANDS、BESTSCOR、BIOSCAN(Biological Sequence Comparative Analysis Node)、BLIMPS(BLocks IMProved Searcher)、FASTA、Intervals & Points、BMB、CLUSTALV、CLUSTALW、CONSENSUS、LCONSENSUS、WCONSENSUS、Smith-Watermanアルゴリズム、DARWIN、ラスベガスアルゴリズム、FNAT(Forced Nucleotide Alignment Tool)、フレームアライン、フレームサーチ、DYNAMIC、FILTER、FSAP(Fristensky Sequence Analysis Package)、GAP(Global Alignment Program)、GENAL、GIBBS、GenQuest、ISSC(Sensitive Sequence Comparison)、LALIGN(Local Sequence Alignment)、LCP(Local Content Program)、MACAW(Multiple Alignment Construction & Analysis Workbench)、MAP(Multiple Alignment Program)、MBLKP、MBLKN、PIMA(Pattern-Induced Multi-Sequence Alignment)、SAGA(Sequence Alignment by Genetic Algorithm)およびWHAT-IFが含まれる。前記のようなアラインメントプログラムはまたゲノムデータベースのスクリーニングに用いられ、実質的に同一の配列をもつポリヌクレオチド配列を同定することができる。いくつかの機能的情報の注釈をもつゲノム情報を含むデータベースが種々の機関で維持されており、インターネットでアクセスすることができる。
【0034】
BLAST、BLAST2.0及びBLAST2.2.2アルゴリズムもまた本発明の実施に用いられる。前記アルゴリズムは例えば以下に記載されている:Altschul (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402; Altschul (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410。BLAST分析を実施するソフトは、National Center for Biotechnology Informationから公開されている。このアルゴリズムは、クエリー配列内の長さがWの短いワードを特定することによって高スコアをもつ配列対(HSP)をまず初めに特定することを必要とする。前記は、データベース配列中の同じ長さを持つワードとアラインメントを実施したとき、一致するかまたは何らかの正の値をもつ閾値スコアTの条件を満たす。Tは近傍ワードスコア閾値と称される(Altschul (1990)上掲書)。これらの最初の近傍ワードヒットはそれらを含むより長いHSPを見つけるための検索開始のシードとして機能する。前記ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加する限り各配列の両方向に沿って伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列についてはパラメーターM(一致残基対のための報酬(reawrd)スコア、常に>0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアが計算される。各方向のワードヒットの伸長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ下降したとき;累積スコアが、1つまたは2つ以上の負のスコアを与える残基アラインメントの累積のために0またはそれ以下になったとき;またはどちらかの配列の末端に達したとき。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは前記アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、規定値として11のワード長、10の期待値(E)、M=5、N=-4および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、3のワード長および10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を用いる。BLASTアルゴリズムはまた2つの配列間の類似性の統計的分析を実施する(例えば以下を参照されたい:Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性測定の1つは最小合計確率(P(N))であり、前記は2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然によって生じる確率を示す。例えば、テスト核酸と参照核酸の比較で最小合計確率が約0.2未満、好ましくは約0.01未満、もっとも好ましくは約0.001未満であるならば、前記核酸は参照配列と類似であると考えられる。ある観点では、タンパク質および核酸配列相同性はベーシック=ローカル=アラインメント=サーチ=ツール(Basic Local Alignment Search Tool, “BLAST”)を用いて評価される。例えば、5つの特別なBLASTプログラムを用いて以下のタスクを実施することができる:(1)BLASTPおよびBLAST3はアミノ酸の審査配列をタンパク質配列データベースと比較する;(2)BLASTNはヌクレオチドの審査配列をヌクレオチド配列データベースと比較する;(3)BLASTXは審査ヌクレオチド配列(その両方の鎖)の概念的6フレーム翻訳生成物をタンパク質配列データベースと比較する;(4)TBLASTNは審査タンパク質配列(両方の鎖)を全ての6つの読み枠で翻訳されるヌクレオチド配列データベースと比較する;さらに(5)TBLASTXはヌクレオチド審査配列の6枠翻訳をヌクレオチド配列データベースの6枠翻訳と比較する。BLASTプログラムは類似のセグメントを特定することによって相同な配列を特定する。前記セグメントは本明細書では審査アミノ酸または核酸配列とテスト配列間の“高スコアセグメントペア”と称され、好ましくはタンパク質または核酸配列データベースから得られる。高スコアセグメントペアは好ましくは、スコアリングマトリックス(その多くは本技術分野で公知である)によって特定される(すなわちアラインメントが実施される)。好ましくは、使用されるスコアリングマトリックスはBLOSUM62マトリックスである(Gonnet et al., Science 256:1443-1445 (1992); Henikoff and Henikoff, Proteins 17:49-61 (1993))。好ましさは劣るが、PAMまたはPAM250もまた用いることができる(例えば以下を参照されたい:Schwartz and Dayhoff, eds., 1978, Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation)。
【0035】
本発明のある観点では、NCBI BLAST 2.2.2プログラムが用いられ、デフォルトオプションはblastpである。BLAST 2.2.2プログラムには約38の設定オプションがある。本発明のこの例示的な観点では、デフォルトのフィルタリング設定を除いて、全てのデフォルト値が用いられ(すなわち全てのパラメーターは、OFFに設定されているフィルタリングを除いてデフォルトに設定され)、フィルタリングを無効にする“-FF”設定が用いられる。デフォルトのフィルタリングはしばしば、配列の長さが短いためにKarlin-Altschulバイオレーション(violation)を生じる。
本発明のこの例示的な観点で用いられるデフォルト値には以下が含まれる:
“低複雑度用フィルター:ON
ワードサイズ:3
マトリックス:Blosum62
ギャップコスト:有り:11
エクステンション:1”
他のデフォルト値は以下のとおりである:低複雑度用フィルターはOFF、タンパク質のためのワードサイズは3、BLOSUM62マトリックス、ギャップ存在のペナルティーは-11、及びギャップ伸長のペナルティーは-1。例示的なNCBI BLAST2.2.2プログラム設定は、デフォルトで0に設定する“-W”オプションを有する。これは、もし設定されなければ、タンパク質で3、ヌクレオチドで11のワードサイズがデフォルトであることを意味する。
本発明を以下の実施例を参照にしてさらに詳述するが、このような実施例は本発明を制限するものではないことは理解されよう。
【実施例1】
【0036】
実施例1:シンバスタチンの酵素化学的製造
以下の実施例は、本発明の例示的プロトコル、例えばシンバスタチンの酵素化学的製造について述べる。
ロバスタチンの酵素による加水分解:配列番号4(配列番号3によってコードされる)に示す配列を有する酵素を、7〜10%MeOH/緩衝液中の0.1から0.5Mの濃度のロバスタチン又はロバスタチン酸で評価した(前記反応は塩基の自動的添加によってpH9〜9.5に維持された)。例えば、配列番号4の酵素の凍結乾燥調製物(溶解細胞の遠心上清)を用いる500mLスケールの0.5Mロバスタチン(14mg/mLの総タンパク質を含む)では、48時間後に完全な基質の変換が観察された。
前記反応混合物を酸性化し(pH2)、沈殿物を遠心によって収集し、乾燥させた。ろ液をiPrOAcで抽出し有機抽出物を乾燥させたフィルターケーキに添加した。得られた懸濁液をラクトン化が完了するまで、ディーン-スターク装置で加熱して還流させた。生成溶液をセライトパッドでろ過し、ろ液を飽和NaHCO3で洗浄した。生成iPrOAc溶液を濃縮し(x0.5)、ヘキサンで希釈して0℃に冷却した。沈殿固体をろ過し、風乾してジオールラクトンを得た(63g、単離収率79.5%;さらに10.3gの生成物が種々の洗浄液及び母液から同定された)。生成物は1%未満のロバスタチンを含んでいた。
ジオールラクトンの酵素的アシル化:ジオールラクトン(25mM)、酢酸ビニル(250mM)及びカンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)リパーゼB(33mg)のTBME(1mL)中の混合物をRTで振盪した。44時間後にHPLCによって60%の変換率を有するモノアセテートの生成が示された。
アセチルシンバスタチンの製造:4-アセチルラクトンを真空下一晩室温で乾燥させ、窒素中に保存し、続いて窒素下において室温で無水塩化メチレンに溶解した(1g:2.5〜3mL比)。一方、Cu(OTf)2(5mol%)を最小量のアセトニトリルに室温で溶解し、続いて1.05〜1.2当量の無水ジメチル酪酸を前記溶液に添加し、室温で30分から1時間攪拌した。このCu(OTf)2/無水物溶液を窒素下において室温で攪拌しながら、4-アセチルラクトン溶液にシリンジで移した。反応が完了したとき(HPLCでモニターして)、水を添加して反応を停止させ、飽和NaHCO3で洗浄した。単離した有機層をNa2SO4上で乾燥させた。ろ過し蒸発させて粗4-アセチルシンバスタチンを得た(>99%)。
アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解:3.22gのアセチルシンバスタチン(最終濃度350mM)、2mLのMeOH、100μLの4Mトリス、9.9mLの水、8mLのエステラーゼ(配列番号4(配列番号3によってコードされる))、水に125mg/mLの凍結乾燥溶解物。上からの撹拌及びマグネチックスターラーバーを用いて反応を25mL容器で実施した。定常pH条件をDasGip Stirrer-PRO(商標)システムによって維持した。pH7は10%NH4OHの添加によって維持した。変換率が約75%に達したとき、4mLのトルエンを添加して材料を可溶化した。反応を一晩進行させ、この時点で溶媒(トルエン又は塩化メチレン)をさらに添加し、全ての不溶性材料が溶解されることを確認した。最終反応組成物:シンバスタチン酸4.7%、シンバスタチン90.9%、アセチルシンバスタチン0.9%、シンバスタチンの仮定的脱離生成物3.5%。最終変換率95.6%。
【実施例2】
【0037】
実施例2:ロバスタチンエステラーゼアッセイ
ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼ酵素、例えば本発明の酵素(例えば配列番号4(配列番号3によってコードされる))を用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程を含む方法を提供する。ある観点では、本発明は、ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してシンバスタチンを生成する工程を含む方法を提供する。
以下の実施例は、本発明の方法の実施に用いることができる、例示的なロバスタチンエステラーゼアッセイについて述べる。例えば、前記例示的アッセイは、ヒドロラーゼ酵素(例えばエステラーゼ)が本発明の方法の実施に用いることができるか否かを決定するために用いることができる。
(a)細胞溶解(アッセイスケール):
氷冷溶解溶液(9サンプルにとって充分量)をB-PER(4.5μL)(Pierce, #78248)、リゾチーム(200μL)、(Sigma, L-6876;ストック溶液10mg/mL)及びDNアーゼ I(40μL)(Sigma, DN-25;ストック溶液)から調製した。
一方、50μL培養を950μLの水にボルテックス攪拌で再懸濁し、16,000×gで15分、4℃で遠心した。得られた細胞ペレットをピペットで500μLの溶解溶液に再懸濁した。活性の分析を進める前に、サンプルを氷上で45分インキュベートした。
(b)総タンパク質の定量:
タンパク質の定量は、ブラッドフォード法を用い任意のクーマシー色素によるアッセイで実施することができる。この事例で用いられたキットはクーマシー・プラス・プロテインアッセイキット(Pierce, #23236)であった。前記は製造元のガイドライン(Pierceから入手できる、Doc#0229)にしたがって用いた。
対象とするタンパク質溶液を、同時に測定する既知のタンパク質濃度をもつ標準物(アルブミン)の直線範囲内に希釈した。いったんタンパク質濃度が判明したら、0.1mgの総タンパク質を合理的にピペット操作することができるように(すなわち2〜20μLの範囲内)、適切な希釈を計算した。
(c)酵素活性:メチルウンベリフェリルブチレート(MUB)加水分解:
0.1μgの総タンパク質のために必要な容積を、96ウェルプレートの50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)(緩衝液の種類/pHは融通がきく)、25μLに加えた。一方、4mMのMUBストック(10mLのDMSO中に9.8mg)を作製し、400μLのアリコットに小分けし、−20℃に保存した。前記ストックを200μMの作業濃度に希釈した(7.6mL(10mM)のHEPES緩衝液(pH7.0)中に400μL)。25μLのサンプルに25μLの作業MUB溶液を、蛍光プレート読取装置(SPECTRAMAX GEMINI XS:?ex=360nm;?em=465nm)で300秒間カイネティクスを読み取る直前に添加した。作業溶液は、分解が起きるまで数日間4℃で保存できる。各アッセイ前にDMSOストックのアリコットを融解して新鮮な作業溶液を作製するのが好ましい。
配列番号4によるロバスタチンの加水分解(100gスケール):
ロバスタチンのトリオール酸への酵素的加水分解の工程を含む本発明の例示的反応は図18Eに例示されている。
1.ロバスタチン(10x10g、0.25mol)及び水(13x10mL)をゆっくりと一部分ずつ交互に、急速に攪拌されているオーバーヘッドパドルスターラーを取り付けた1Lの3つ口フラスコ内のMeOH(35mL、最終容積7%)及び6MのNaOH(43mL、0.26mol)の混合物に添加した。
2.均質な混合物が得られたとき、前記混合物を35℃でpHが8に低下するまで(約2時間)攪拌した。この状態で、ロバスタチンはロバスタチン酸に変換されていた。
3.一方、凍結乾燥酵素(22.64g)に水を加えて再構成した(最終体積180mL)。4Mトリス(4mL)及び再構成した酵素溶液を前記ロバスタチン酸溶液に添加した。pH制御を開始する前に、水(108mL)を添加して体積を50mLにした。
4.NH4OH(30%)を用い、DASGIP AG-PRO(商標)バイオリアクターで反応を制御し、 pHを9.5に維持した。反応物を48時間攪拌し(下記注記1)、さらに35℃に維持し、アリコット(10μLをMeOHの990μL中で反応を停止)を定期的に採取し、反応の進行をHPLCでモニターした(下記注記2)。
5.反応は、4Lビーカーに移して水(1L)で希釈することによって、停止させた。混合物のpHは6MのHClで調整した。pH約4.4で、混合物は、白色の沈殿固体として非常に粘稠になり、攪拌速度を高めて混合物の“ゲル化”を防いだ。合計120mLの6MのHClを用いて混合物のpHを2.5に調整し、さらに0.5時間攪拌した。
6.得られたスラリーを21cmのブッフナー漏斗上のワットマン#1ろ紙でろ過し、湿ったフィルターケーキを水(0.5L)で洗浄した。前記湿ったフィルターケーキを1時間風乾し、続いて4x600mL凍結乾燥フラスコに移し、凍結乾燥装置で48時間乾燥させて灰色の粉末(98.6g)を得た(下記注記3)。
7.ろ液を三等分し、それらを1回分(500mL)のEtOAcで抽出した。第一の抽出では分離は容易であったが、第二及び第三の抽出分は乳濁液を生成し、前記は飽和食塩(100mL)で処理した後でさえも明瞭には分離されなかった。EtOAc抽出物を飽和NaCl(100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)ろ過した。ろ液をN2下で攪拌し、さらにEtOAc(5mL)中のMeSO3Hの溶液(0.2mL、3.1mol;最終濃度約7mM)を、約5分かけて滴下した。4.5時間後に、反応溶液を飽和NaHCO3(200mL)、水(100mL)及び飽和NaCl(100mL)で洗浄した。EtOAc層を約50mLまで回転蒸発装置で濃縮し、ヘキサン(200mL)を滴々とゆっくり添加することによりジオールラクトンを沈殿させた。沈殿した固体をろ過により収集し、乾燥させた(3.36g、純度81.3%)。母液にはさらに0.26gが残留していた。
8.総収率は94.9%であることが決定した(下記注記4参照)。
注記:
1.HPLCによって、100gスケールの反応は22時間後にほぼ97%完了したが、完全な加水分解を担保するためにしばしばもっと長い攪拌が許容されることが示された。
2.サンプルは、DADを備えたWaters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.1%H3PO4イソクラチック;1mL/分;30℃;238nm)を用いて分析した。
3.この段階でのフィルターケーキは粗トリオール酸及び沈殿タンパク質から成る。
4.生成物の総収率は下記の表に示すように算出した:
#内部標準のトルイル酸に対して1H NMRにより分析
*標準試薬に対してHPLCにより分析
【0038】
配列番号4によるロバスタチンの加水分解(150gスケール)
1.ロバスタチン(150g、0.37mol)及び水(300mL)をゆっくりと一部ずつ交互に、急速に攪拌されている、オーバーヘッドパドルスターラーを取り付けた1Lの3つ口フラスコ内のMeOH(52.5mL)及び50%w/wのNaOH(30mL、0.57mol)の混合物に添加した。反応物を室温で一晩攪拌し、その透明な混合物を続いて濃塩酸(ほぼ25mL)を用いてpH約7〜8に酸性化した(下記注記1)。
2.配列番号4(17g)を水(50mL)で再構成し、前記反応物に添加した。水(300mL)をさらに追加し反応物の体積を合計750mLとした。
3.30%のNH4OHを用い、DASGIP AG FEDBATCH-pro(商標)バイオリアクターで反応を制御し、 pHを9.5に維持した。反応物を攪拌して35℃に維持し、アリコット(10μLをMeOHの990μL中で反応を停止)を定期的に採取し、反応の進行をHPLCでモニターした(下記注記2)。
4.86.3時間後に、HPLCはほぼ1%のロバスタチン酸の残留を示し、反応を終了した。反応混合物を4Lビーカーに移し、水(1L)で希釈し、激しく攪拌した。6MのHCl(160mL)で混合物をpH2.5まで酸性化し、さらに室温で1.5時間攪拌した。
5.スラリーを19cmのブッフナーロート上のワットマン#1ろ紙でろ過し、湿ったフィルターケーキを水(0.5L)で洗浄した。混合物は容易にろ過されてクリーム色のフィルターケーキ及び黄金色のろ液を生じた。湿ったフィルターケーキをほぼ1時間風乾し、続いて4x600mL凍結乾燥フラスコに移し、凍結乾燥装置で乾燥させて灰色の粉末(154.8g)を得た(下記注記3)。
6.ろ液を三等分し、それらを1回分(600mL)のEtOAcで抽出した。EtOAc抽出物を飽和NaCl(100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)ろ過し、約250mLに濃縮した。ろ液をN2下で攪拌し、EtOAc(4mL)中のMeSO3Hの溶液(0.2mL、3.1mol;最終濃度約15mM)を、約5分かけて滴下して加えた。70分後に、反応溶液を飽和NaHCO3(200mL)及び飽和NaCl(50mL)で洗浄した。EtOAc溶液を一晩静置し、デカントし、約120mLまで回転蒸発装置で濃縮した。ヘキサン(200mL)をゆっくり滴下しながら添加することによりジオールラクトンを沈殿させた。沈殿した固体をろ過し乾燥させた(3.22g、純度92.3%)。母液にはさらに0.47gが残留していた。
7.総収率は98.9%であると決定された(下記注記4参照)。
生成物の総収率は下記の表に示すように算出した:
#内部標準のトルイル酸に対して1H NMRにより分析
*標準試薬に対してHPLCにより分析
【実施例3】
【0039】
実施例3:4-アセチルジオールラクトンの合成
本発明は、図18Aに例示するように、4-アセチルジオールラクトンの合成方法を提供する。
A.トリオール酸の直接アシル化(20gスケール)
1.粗トリオール酸(25.82g、59.1mmol)(下記注記1)を乾燥した500mLの丸底フラスコにN2下で加え、続いて乾燥CH2Cl2(200mL)を添加した。スラリー混合物をN2下の室温で磁石により攪拌した。DMAP(1.08g、8.8mmol;15mol%)を添加し、続いてシリンジポンプで無水酢酸(15.8mL、総量2.8当量)を8.5時間かけてゆっくりと添加した。更に新たなDMAP(0.36g、2.9mmol)を7.75時間で添加した(下記注記2)。
2.反応の進行はHPLCで詳細にモニターした(下記注記3)。
3.水(5mL)を11時間後に添加して反応を停止させ、混合物を処理まで−20℃で保存した。混合物をセライトパッドでろ過して不溶物を除去し、セライトパッドをCH2Cl2で洗浄した。続いて、ろ液を5%塩酸(100mL)、H2O(50mL)、飽和NaHCO3(3x100mL)及び飽和NaCl(100mL)で洗浄し、乾燥させて(NaHCO3)、ろ過した。ろ液を続いて濃縮し(約150mLを除去した)、EtOAc(100mL)を添加し、さらに約60mLまで濃縮した。
4.速く攪拌しながら、ヘキサン(420mL)を5分間かけて添加した。沈殿生成物をろ過して収集し、ヘキサン(100mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて白色固体(17.4g、81.2%)を得た(下記注記4、5)。
【0040】
注記
1.内部標準としてトルイル酸を用いる1H NMRにより、トリオール酸は77.5%の純度であると決定した。残りの物質は沈殿タンパク質/凍結乾燥物質である。
2.無水酢酸及びDMAPの添加速度は下記の表に示す:
DMAP及び無水酢酸の添加の流れ
3.サンプルは、Waters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB(商標)-フェニルカラム(4.6x75mm)(40%MeCN/0.5%AcOHグラジエント;1mL/分;RT;238nm)を用いて分析した。グラジエント及び溶出順序は以下のとおりであった:
図18Bは、4-アセチルラクトンの構造、その対応するジアセテート構造及び脱離生成物を示している。
4.さらに2.20g(10.3%)のアセチルラクトンが母液に残留ており、総収率は91.5%となった。
5.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.8%;4-アセチルラクトン、98.5%;4,8-ジアセテート、0.2%;脱離物質、0.6%。
【0041】
B.トリオール酸の直接アセチル化(37gスケール)
反応は、粗トリオール酸(48.43g、111mmol)(純度77.45%)(下記注記1)及び無水CH2Cl2(375mL)中のDMAP(2.30g、18.8mmol;15mol%)を用いて上述のように実施した。反応スラリーをN2下の室温で磁石により攪拌し、無水酢酸(34.6mL、3.3当量)を注入ポンプでゆっくりと添加した(下記注記2)。
2.N2下で1Lの乾燥フラスコにトリオール酸(2287-40、48.43g、77.45%)を連続して加えた。
3.反応は、水(5mL)を添加することによって8時間後に停止させ、10分間攪拌し、混合物は処理まで−20℃で保存した。混合物をセライトパッドでろ過して不要物を除去し、前記セライトパッドをCH2Cl2で洗浄した。続いて、ろ液を5%のHCl(175mL)、水(50mL)、飽和NaHCO3(2x175mL、100mL)及び飽和NaCl(175mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)ろ過した。ろ液を濃縮し(300mLを除去)、EtOAc(200mL)を添加し、さらにほぼ110mLまで濃縮した。
4.速く攪拌しながら、ヘキサン(450mL)を、約5分かけて加えた。沈殿生成物をろ過により収集し、ヘキサン(50mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて白色固体を得た(3.1.5g、78.4%)(下記注記3、4)。
注記
1.内部標準としてトルイル酸を用いる1H NMRにより、トリオール酸は77.5%の純度であると判定した。残りの物質は沈殿タンパク質/凍結乾燥物質である。
2.無水酢酸及びDMAPの添加速度は下記の表に示す:
DMAP及び無水酢酸の添加の流れ
3.さらに3.4g(8.5%)のアセチル-ラクトンが母液に残留しており、総収率は86.9%となった。
4.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、1.4%;4-アセチルラクトン、97.4%;4,8-ジアセテート、0.3%;脱離物質、0.6%。
【0042】
C.トリオール酸の直接アセチル化(150gスケール)
1.反応は、粗トリオール酸(154g)(下記注記1)及び無水CH2Cl2(1L)中のDMAP(6.8g、55.7mmol;15mol%)を用いて上述のように実施した。反応スラリーをN2下で機械的に攪拌し、無水酢酸を注入ポンプでゆっくりと添加した(下記注記2)。反応は最初の1.5時間は15℃で維持し、続いて室温で攪拌した。
2.反応は、水(200mL)を添加することによって9.25時間後に停止させ、室温で20分間攪拌し、続いて一晩静置した。
3.反応混合物をセライトパッドでろ過し、前記セライトパッドをCH2Cl2(2x250mL)で洗浄した。一緒にしたろ液を、連続的に5%のHCl(500mL)及び水(500mL)で洗浄し、続いて、ろ液を濃縮した(1.2LのCH2Cl2を除去)。EtOAc(500mL)を残留物に添加し、さらに400mLの溶媒を除去した。残留溶液を飽和NaHCO3(500mL)で洗浄し、続いてNaHCO3/H2O混合物(500mLの飽和NaHCO3、500mLのH2Oに数回に分けて167.2gのNaHCO3の粉末を添加)とともに攪拌した。
4.静置して二層をゆっくり分離させ、有機層をNaCl(250mL)で洗浄した。前記有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、ほぼ500mLに濃縮した。
5.急激に攪拌しながら、ヘキサン(3.5L)を、約45分かけて前記残留物に加えた。沈殿した固体をろ過し、乾燥させて白色固体を得た(95g、70.7%)(下記注記4、5)。
注記
1.粗トリオール酸は150gのロバスタチンの加水分解から単離された物質であり、この物質で以降の実験を進めた。
2.無水酢酸の添加速度は下記の表に示す:
表:無水酢酸添加の流れ
3.酢酸及び2-メチル酪酸はその後のアシル化反応でそれらが再度導入されるのを防止するために除去されるべきである。
4.さらに10.1g(7.5%)のアセチル-ラクトンが母液に残留し、これが水性洗浄液へ失われた約0.16%の生成物と一緒にされて、ロバスタチンから得られる総収率78.4%を表す。
5.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.9%;4-アセチルラクトン、98.7%;4,8-ジアセテート、0.2%;脱離物質、0.1%。
6.1HMR(CDCl3)d 0.90 (d, J=6.94 Hz, 3H), 1.19 (d,J=7.57Hz, 3H), 1.27-1.41 (m, 1H), 1.45-1.60 (m, 2H), 1.76-1.85 (m,6H), 2.09 (s, 3H), 2.10-2.13 (m, 1H), 2.14-2.20 (m, 1H), 2.32-2.41 (m, 1H), 2.41-2.50 (m, 1H), 2.67-2.75 (m, 1H), 2.75-2.82 (m, 1H), 4.23 (br s, 1H), 4.54-4.63 (m, 1H), 5.22-5.28 (m, 1H), 5.53-5.58 (m, 1H), 5.77-5.83 (m, 1H), 5.99 (d, J=9.46Hz, 1H); 13CNMR (CDCl3) d13.98, 21.07, 23.82, 24.19, 27.40, 30.82, 32.95, 33.39, 35.40, 35.83, 36.50, 38.77, 65.34, 65.61, 76.51, 128.51, 130.14, 131.29, 133.60, 168.90, 170.02。
【0043】
D.トリオール酸の直接アセチル化(150gスケール)
a.粗トリオール酸(150gのロバスタチンから151.21g)を2Lの乾燥フラスコに添加し、続いてCH2Cl2(1L)を添加した。スラリーをオーバーヘッド機械攪拌装置で激しく攪拌し、周囲温度で一晩放置した。
b.DMAP(6.8g、150gロバスタチンを基準に15mol%)を一回で添加し、続いて無水酢酸(157.6mL、4.5当量)を20分かけて添加した。反応はHPLCでモニターした。
c.反応は、水(100mL)を添加することによって3.5時間後に停止させ、さらに周囲温度で3時間攪拌した。続いて一晩静置した。反応混合物をワットマンの#1ろ紙でろ過し、フィルターケーキをCH2Cl2(2x250mL)で洗浄した。一緒にしたろ液を、連続的に5%のHCl(500mL)及び水(500mL)で洗浄した。
d.続いて、前記のCH2Cl2を5%のHCl(500mL)及び水(500mL)で洗浄し、さらに有機層を400mLに濃縮し、EtOAc(500mL)で希釈した。この溶液を飽和NaHCO3(500mL)でとともに攪拌し、さらに追加のNaHCO3(60g)を添加して酢酸を中和した。有機層を飽和NaCl(500mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過した。ろ液をほぼ100mLに濃縮した。攪拌しながら、ヘキサン(500mL)を前記残留物に急激に添加した。沈殿した固体をろ過し、乾燥させて白色固体を得た(112.6g、83.4%)(下記注記1、2)。
注記
1.さらに7.6g(5.7%)の4-アセチルラクトンが母液に残留しており、ロバスタチンから得られた総収率は89.1となった。
2.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.9%;4-アセチルラクトン、99.0%;4,8-ジアセテート、0.45%;脱離物質、0.53%。
【0044】
E.トリオール酸の直接アセチル化(150gスケール)
1.粗トリオール酸(150gのロバスタチンから158.4g)を2Lの乾燥フラスコに添加し、続いてCH2Cl2(625mL)を添加した。スラリーをオーバーヘッド機械攪拌装置で激しく攪拌し、周囲温度で一晩放置した。
2.DMAP(6.8g、150gロバスタチンを基準に15mol%)を一回で添加し、続いて無水酢酸(122.6mL、3.5当量)を17分かけて添加した。反応はHPLCでモニターした。さらにもう一度無水酢酸(35mL、1.5当量)を2.5時間後に、続いてEt3N(25.8mL、0.5当量)を3.5時間後に添加した(下記注記1)。
3.反応を6.3時間後に停止させ、上記と同じ抽出処理に付した。このときヘキサンの添加は大きな塊として生成物を沈殿させた。前記固体をCH2Cl2(300mL)及びEtOAc(300mL)に再度溶解し、ほぼ130mLに濃縮した。ヘキサン(650mL)の添加によって生成物が沈殿した。前記生成物を集め、乾燥させて白色固体を得た(107.24g、79.8%)(下記注記2、3)。
注記
1.反応は約60%の変換率で停止し、Et3Nはアセチル化促進のために添加した。
2.さらに10.7g(8.0%)の4-アセチルラクトンが母液に残留しており、ロバスタチンから得られた総収率は87.8となった。
3.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.6 %;4-アセチルラクトン、97.9%;4,8-ジアセテート、0.6%;脱離物質、0.9%。
図18Bは、4-アセチルラクトンの構造、それに対応するジアセテートの構造及び脱離生成物を図示する。
【実施例4】
【0045】
実施例4:4-アセチルシンバスタチンの合成
以下の実施例は、図18Cに図示する、本発明の例示的プロトコル、例えば4-アセチルシンバスタチンの合成のためのプロトコルについて述べる。
A.三フッ化ホウ素エテレート触媒
1.4-アセチルラクトン(110g、0.3mol)を2Lの2首フラスコで一晩、真空下で(0.1torr)乾燥させた(注記1)。
2.前記乾燥させた出発物質をN2下で無水CH2Cl2(875mL)に室温で溶解した。
3.触媒は以下のように調製した。グラブバッグにN2下で、無水2,2-ジメチル酪酸(7.1mL、30.3mmol)を無水アセトニトリル(125mL)に添加し、続いて新しく開封したBF3.OEt2(3.1mL、24.3mmol;8mol%)を添加した(注記2、3)。
4.無水2,2-ジメチル酪酸(78mL、0.33mol;1.1当量)を4-アセチルラクトンの溶液に添加し、前記混合物を40℃で10分加熱した(注記4)。続いて、BF3.OEt2のMeCN溶液をカニューレで添加した(注記5)。反応は遮光して、40℃で攪拌し、HPLCでモニターした。
5.5.5時間後に反応は完了したと判定し、前記反応物を氷浴中で5℃に冷却した。飽和NaHCO3(250mL)を激しく攪拌しながら添加した。水層を分離し、CH2Cl2(200mL)で抽出した。
6.有機抽出物を一緒にし、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、減圧下で濃縮した。MeOH(200mL)を前記濃縮物に添加し(注記6)、更なるMeOHの除去によって4-アセチルシンバスタチンの沈殿が生じた。灰色の固体をろ過し、冷MeOH(100mL)で前記を洗浄して真空下で乾燥させた(92.8g)。
7.母液を約半分の体積まで濃縮し、一晩−10℃で冷却した。生成物(17.2g)をろ過によって集め、乾燥させて、第二の収集物とした(注記7)。
8.HPLCプロフィールは表に示す。
注記
1.出発物質はすり潰して粉末にし、酢酸の除去を促進するべきである(酢酸は大きな塊の中に吸い込まれる可能性がある)。残留酢酸は4,8-ジアセテートの生成をもたらすであろう。真空下、高温での乾燥は分解を生じる可能性がある。4-アセチルラクトンは、真空下40℃で乾燥させたとき黄色になった。
2.この反応は水分の存在に鋭敏であるので、先ず初めに過剰量の酸無水物をアセトニトリルに添加し、一切の残留水を除去した。酸無水物及びアセチル-ラクトンを予熱することによって、反応容器から水が除去される。
3.新しく開封したBF3.OEt2を反応に用いるべきである。以前に開封された試薬は遅い反応をもたらすか、又は反応すら生じないことがある。
4.触媒添加中には溶液は冷却されねばならない。そうでなければ芳香族副生成物が形成される。
5.CH2Cl2/MeCN比は7:1であった。典型的には前記の比は6:1から9:1の間であった。MeCN中でのほうが反応は速いが、望ましくない純度プロフィールをもつ生成物が生じる。
6.MeOHは粗生成物が固化する前に添加されるべきである。そうでなければMeOHに再溶解させることが困難である。固体生成物を熱MeOHに溶解したため分解を引き起こし、したがって収率が低下した。
7.総固体生成物は110g(78.7%)であった。最後の母液を乾燥するまで蒸発させ、残留物を標準試薬に対してアッセイし、さらに9.02g(6.8%)の生成物が含まれることが示された。さらにほぼ2%の生成物が水相に残っていた。図18Cを参照されたい。
【0046】
B.4-アセチルシンバスタチンの合成
上述のように調製した。
4-アセチルラクトン(111.6g;91%)
1回目の収集:86.2g
2回目の収集:11.6g
合計:97.8g、75.8%
アッセイ:
1H-NMR 99.8%(内部標準としてのトルイル酸に対して)
HPLC 98.1%(4-アセチルシンバスタチンの標準試薬に対して)
水性洗浄液はほぼ1.9%を含み、さらにほぼ7%が残留物に残り、総収率は84.7%であった。
HPLCプロフィールは下記の表に示す。
【0047】
C.4-アセチルシンバスタチンの合成
上述のように調製した。
4-アセチルラクトン(107g;96%)
1回目の収集:90.4g
2回目の収集:12.7g
合計:97.8g、79.3%
アッセイ:
1H-NMR 99.2%(内部標準としてのトルイル酸に対して)
HPLC 96.8%(4-アセチルシンバスタチンの標準試薬に対して)
水性洗浄液はほぼ1.8%を含み、さらにほぼ7%が残留物に残り、総収率は88.1%であった。
HPLCプロフィールは下記の表に示す。
【0048】
D.ピリジン/DMAP法
1.4-アセチルラクトン(2.6g、7.2mmol)を真空下一晩室温で乾燥させ、続いて無水ピリジン(6.0mL)に窒素下で攪拌しながら室温で溶解させた。1.5mLの無水ピリジン中のDMAPの溶液を添加し、混合物を氷浴中で冷却した。
2.2,2-ジメチルブチリルクロリド(7.72g、8当量)を、注入ポンプを用いて15分かけて滴下した。前記混合物を0℃で約1時間、続いて室温で1時間攪拌した。
3.反応混合物を窒素下40℃で加熱し、反応をHPLCでモニターした。4-アセチルラクトンが消費された後(2日)、ピリジンを回転蒸発装置で除去した。残留物をEtOAc(20mL)と飽和NaCl(20mL)との間で分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、蒸発させて、粗生成物を得た(96.5%)。
E.Cu(OTf)2/無水物法
1.4-アセチルラクトン(10.0g、27.6mmol)を真空下で1時間室温で乾燥させ、無水CH2Cl2(60mL)に溶解し、窒素下で攪拌した。
2.一方、無水MeCN(7.0mL)中のCu(OTf)2(0.5g、5mol%)及び2,2-ジメチル酪酸無水物(7.15mL、30.5mmol)の溶液を調製し、封をしたフラスコ内にて室温で攪拌した。
3.前記ラクトン溶液を15℃に冷却した。Cu(OTf)2及び2,2-ジメチルブチリル無水物の溶液を、注入ポンプを用いて滴下した。反応をHPLCでモニターして、反応の完了が3.0時間以内に判定された。
4.反応は水(20mL)で停止し、CH2Cl2(100mL)と飽和NaCl(100mL)とで分配した。次にその有機層を、1Mのリンゴ酸(50mL)及び飽和NaCl(50mL)の混合物とともに10分間撹拌し、続いて飽和NaCl(100mL)と10分間攪拌した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、蒸発させて、粗生成物を得た(12.8g>100%収率(重量による))(注記3、4)。
注記:
1.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(79.5%)、脱離生成物(12%)、ビスシンバスタチン(2%)、未同定不純物(6.5%)。
2.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィーの後には43%で単離された。4-アセチルシンバスタチンはSiO2クロマトグラフィーに対して安定性が限られていると考えられる。
3.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(92.5%)、脱離生成物(2.7%)、ビスシンバスタチン(1.7%)、未同定不純物(3.1%)。
4.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィーの後に61%で単離された。
【0049】
配列番号4の酵素による4-アセチルシンバスタチンの加水分解
本発明はまた、例えば図18Dに図示するように、ヒドロラーゼによる4-アセチルシンバスタチン加水分解を含む方法を提供する。
1.MeOH(2mL)中の4-アセチルシンバスタチン(3.68g、8mmol)の溶液を、25mLの3つ口フラスコ中の4Mトリス緩衝液(0.1mL)と水(9.9mL)との混合物に添加した。このスラリーを激しく攪拌し(磁気攪拌及びオーバーヘッド攪拌の両方により)、50℃に加熱した。
2.配列番号4の酵素(1gの凍結乾燥物質)を水(8mL)に溶解し、前記反応混合物に添加した。
3.DASGIP FEDBATCH-PRO(商標)システムを用い、10%のアンモニア水の添加によりpHを6.75に維持し、加温水浴を用いて反応温度を50℃に維持した。
4.反応がいったん75%の変換率に達したら、トルエン(4mL)を変換して生成物及び残存する出発物質を溶解させた。
5.アリコット(20μLアリコットを980μLのMeOH中で反応停止させた)を定期的に採取し、HPLCによって反応の進行をモニターした(下記注記1)。
反応が完了したと判定したら、反応混合物を遠心(45000xg、4℃、25分)によって清澄にし、最上部のトルエン層、透明な水層及び圧縮された固体ペレットが得られた。透明な水性遠心分離物のpHをHClで2.5に調整した。羊毛状の沈殿物が観察された。この混合物を遠心(45000xg、4℃、25分)によって清澄にし、もう1つの小ペレットが得られた。
6.各画分をHPLCで調べたとき、シンバスタチンは有機層及びペレット化物質に濃縮されていた。ペレットをジクロロメタン(100mL)で抽出し、得られた乳濁液を遠心(45000xg、4℃、25分)によって分離した。CH2Cl2層を一緒にし、乾燥させ(Na2SO4)、さらに蒸発させて黄色の油(3.05g、91%)が得られた(下記注記2)。
注記:
1.サンプルは、Waters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.1%H3PO4グラジエント;1mL/分;RT;238nm)を用いて分析した。グラジエント及び溶出順序は以下のとおりであった:
【0050】
配列番号4による4-アセチルシンバスタチンの加水分解
本発明はまた、エステラーゼ(例えば配列番号4のエステラーゼ)による4-アセチルシンバスタチンの加水分解を含む方法を提供する。図18Dを参照されたい。
1.4-アセチルシンバスタチン(96.6g、0.21mol)及び配列番号4(20g)の混合物を、磁石の攪拌棒及びオーバーヘッド攪拌装置を備えた2Lの丸底フラスコ中の10%MeOH(1L)に懸濁した。前記混合物を激しく攪拌し、加温水浴で60℃に維持した。
2.DASGIP FEDBATCH-pro(商標)システムを用い、10%のアンモニア水の添加によりpHを7.5に維持した。反応はHPLCでモニターした。
3.24時間後に、反応混合物を4本の250mLの遠心管に移し、10,000rpmで4℃15分遠心した。上清をデカントして廃棄した。ペレットを水(4x250mL)に再懸濁し、前のように遠心した。再度上清をデカントし廃棄した。
4.遠心ペレットを焼結ガラス漏斗に移し、過剰な水を除去した。遠心管をアセトン(2x150mL)で洗浄し、このアセトンを漏斗に移した。セライト(10g)を漏斗に添加し、混合物をすり潰し、続いて吸引で乾燥させた。
5.漏斗上の残留物をCH2Cl2(5x200mL)で洗浄し、各200mLの後で残留物をすり潰し、必要に応じてさらにセライトを添加した。
6.一緒にした洗浄液を飽和NaCl(100mL)で洗浄し、水層を廃棄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、溶媒をトルエン(200mL)に置換した。
7.攪拌しながら、前記トルエン溶液にヘキサン(600mL)を添加した。ほぼ300mLを添加した後で、沈殿が開始した。沈殿生成物をろ過し、乾燥させて、白色固体を得た(69.9g、79.7%)。
母液を一晩−20℃に冷却し、シンバスタチンの第二の収集物を得た(3.5g、4.0%)。
【実施例5】
【0051】
実施例5:本発明の例示的合成スキーム
以下の実施例は本発明の例示的なプロトコル、例えばロバスタチンからシンバスタチンを合成するためのスキームについて述べる。
工程1:ロバスタチンの加水分解
本発明はまた、図15Aに図示したようにロバスタチンからトリオール酸を生成する工程を含む方法を提供する。
新規なロバスタチンエステラーゼ(配列番号4に示す配列及び二次的サブクローン)を同定したので、見積り可能な酵素的加水分解プロセスを実現させることに努力を集中した。提唱されるシンバスタチン生成プロセスに必要なパラメーターの中ではとりわけ、酵素反応は高基質装荷(高基質添加:high substance loading)で実施されねばならないということであった。最初のスクリーニング及び確認的反応は、その高い水溶性のためにロバスタチン酸を用いて実施した。ロバスタチンは特に低pH(7〜8)及び高基質装荷で水に難溶であるために、ロバスタチンを用いる反応は非常に遅かった。
可溶性の欠如は、最初にラクトン環をin situで化学的に開環することによって克服された。したがって、MeOH/水(最終反応濃度は7〜10%MeOH)中のロバスタチンの懸濁液を1当量のNaOHで処理し、前記混合物を、ロバスタチンがより溶解性のロバスタチン酸に変換されるまで数時間攪拌した。開環が完了したとき、酵素の添加に先立って、反応混合物のpHをpH9.5に調整した。しかしながら、開環が進行するにつれpHが許容可能な値まで下降するので、多くの事例でpHの調整は不要であった。
酵素反応は、再構成させた酵素溶液の添加によって開始した。続いて前記混合物を35〜40℃で攪拌し、pHは、10〜30%のNH4OHの自動的添加によってpH9.5で一定に維持された。このような条件下で、ロバスタチンからトリオール酸への98%を超える変換率は概して48時間で得られた。完了に近づくにつれ反応は顕著に遅くなる。一連の大規模での加水分解の結果は下記の表1に集められている。
表1:ロバスタチンの加水分解
実験2及び3は、異常に長い反応時間を示した。これら2つの事例では、ロバスタチンラクトンの開環は大過剰のNaOHを用いて実施され、酵素反応に適したpHに戻すためにHClの添加を必要とした。高塩濃度は酵素による加水分解に有害な影響を与えることは以前に観察された。
さらにまた、その時点での入手性に限界があったために、最初の酵素注入(11%w/w)は以前に用いたものより少なく、更なる追加酵素が添加され、最終酵素注入は17%w/wになった。
水で反応混合物を希釈することによって反応を停止させ、続いて混合物のpHをほぼ2に酸性化させた。このような条件下では、トリオール酸、変性タンパク質及び他の培養液/細胞成分は溶液から沈殿した。
最初の小規模の希薄な反応の場合、この混合物を還流iPrOAcにより連続的液体抽出に付した。このような条件下では、トリオール酸のラクトン化が生じ、ジオールラクトンは、濃縮iPrOAc抽出物から沈殿によって容易に得ることができた。
大規模な反応の場合、沈殿したトリオール酸/変性タンパク質混合物はろ過によって単離され、一方、なお湿った状態のフィルターケーキをiPrOAcに懸濁し、共沸蒸留に付してラクトン化を実施した。不溶の変性タンパク質/細胞成分をろ過によって除去し、ジオールラクトンを濃縮及び沈殿によって単離した。この方法は、10〜30gのスケールで良好に進行してトリオール酸の精製を必要とせずにジオールラクトンを生じた。しかしながら反応スケールが増すにつれ(50〜100g)、ラクトン化を達成するために、より濃縮された溶液では共沸蒸留により長い還流時間が要求された。このような条件下で単離されたジオールラクトンの収率は減少し、生成物は、おそらくトリオール酸又はジオールラクトンの重合によって生じた、夾雑物の黄色の油の量が増加した。
実験室の100gを超えるスケールでは、もっとも便利な処理は酵素反応混合物を希釈し酸性化することであった。不溶性物質をろ過によって収集し、この湿ったフィルターケーキを乾燥させた。最初に凍結乾燥を乾燥に用いたが、さらに追加された実験のために、フィルターケーキは真空オーブンで30〜40℃で乾燥させた。粗生成物のアッセイ(内部標準の存在下での1H NMR)によって、粗生成物はほぼ78%のトリオール酸を含み、残りの物質は変性タンパク質、細胞および培養液成分であることが示された。
ろ過後に、ろ液をEtOAcで抽出してさらにほぼ2%の生成物を回収することができた。この物質はトリオール酸として単離されるか、又はラクトン化して(7mMのMeSO3H)ジオールラクトンとして単離して次の工程に加えることができた。
【0052】
工程2:アセチル化
本発明はまた、図9Aに図示されるように、トリオール酸から4-アセチルラクトンを生成する工程を含む方法を提供する。
このプロセスに対するその後の変更、すなわち(i)トリオール酸から4-アセチルラクトンへ直接アシル化、及び(ii)ジメチルブチレート側鎖の導入のための改善条件はこのプロセスを改善した。
ロバスタチンの加水分解工程から得られた粗生成物はトリオール酸及び変性タンパク質並びに細胞/培養液成分を含んでいる。この粗物質をCH2Cl2に懸濁し(10〜15%w/v)、DMAP(0.15当量)の存在下で無水酢酸(3当量)と処理した。実験によって、4-アセチルラクトンの8位のアセチル化は穏やかで、合理的に制御することができることが示された。この反応をHPLCでモニターし、典型的には2%未満のジオールラクトンが残存するときに(すなわちこの時点では2%未満のジアセテートが生成される)反応を停止させた。いくらかの脱離生成物が、特に反応物が甚だしく長時間にわたって攪拌される場合、形成され得る。
完了後に、水を添加して反応を停止させ、不溶性物質をセライトパッドからろ過することによって除去した。このパッドをCH2Cl2で洗浄し、一緒にしたろ液を希薄な酸(DMAPを除去するため)及び飽和NaHCO3(酢酸を除去するため)で洗浄した。大規模の場合には、酸洗浄後にEtOAcの溶媒交換を実施して塩基によるその後の洗浄を促進するのがより都合がよいことが見出された。
塩基抽出後、溶液を乾燥させ、ろ過して濃縮した。続いてヘキサンの添加によって4-アセチルラクトンが白色固体として沈殿した。いくつかの更に大規模な実験の収率及び生成物プロフィールは下記表2にまとめられている。
表2:トリオール酸から4-アセチルラクトンの直接アセチル化
1括弧内の値は母液中の未回収生成物を含む
2括弧内の値は回収された第二の生成物収集を含む
3さらにまた0.24%の4-アセチルロバスタチン、及び4.0分の既知の不純物0.5%を含む。
【0053】
工程3:アシル化
本発明はまた、図9Bに図示されるように、(例えば2,2-ジメチル酪酸無水物を用いて)4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを生成する工程を含む方法を提供する。
触媒の同定:
シンバスタチン側鎖の導入のために報告された条件は、プロセスのスケールアップには適切ではなかった。この反応は、(i)純粋なピリジンで実施され、(ii)8当量までの2,2-ジメチルブチリルクロリドを使用し、さらに(iii)高い温度で数日を必要とする。我々が実施したところ、そのような反応条件から単離された生成物は、低収率であり、品質が劣っていた(2-アセトキシ基の脱離が主要な問題であった)。また別の溶媒/塩基を選択しても反応は改善されなかった。
顕著な改善は、アシル化剤として無水ジメチル酪酸を用いるルイス酸触媒反応へ切り替えることによって達成された。ビスマストリフレート(Bi(OTf)3)を調べた(Bi(OTf)3はアルコールのピバロイル化に有効な触媒として報告されている)。この反応はピリジン経路よりはるかに清浄であった。しかしながら、Bi(OTf)3は市販されておらず、ビスマス残留物は生成物から除去することが困難であった。市販されている銅トリフレート(Cu(OTf)3)もまた良好な性能を有し、わずか10%の触媒装荷及び室温での1.05当量の無水ジメチル酪酸で、良好な生成物収率をもたらした。この場合には同の塩の除去が問題であった。
この時点で、我々は既に、ジオールラクトンの8位での位置選択的アシル化を触媒して、直接シンバスタチンを生成する能力について、一連のルイス酸を調査していた。調査した20を超えるルイス酸に関して、活性は、ビスマス、銅、スカンジウム、インジウム、アルミニウムのトリフレート塩、並びにTMSOTf及びBF3.OEt2で観察された。Li、Mg、Zn、La、Pr、Sm、Ybのトリフレート塩は同じ条件下では活性を示さず、ピリジニウム又はイミダゾリウムトリフレートも同様で、さらにBi、In又はSrの酢酸塩も活性を示さなかった。
BF3.OEt2は、安価に入手できるので、4-アセチルラクトンのアシル化のために優れた触媒であった。三フッ化ホウ素の他の種々の付加体をアシル化触媒としてテストした。BF3のTHF付加体もジメチルアミン付加体も適切なルイス酸触媒ではなかった。活性は、他の市販されているBF3.溶媒和物でも観察されたが、それらはBF3.OEt2を超える利点を提供しなかったので、更なる最適化は前記のエテレートで実施した。
【0054】
条件の最適化:
図1に示したように、4-アセチルラクトンのトリフレート及びBF3エテレート触媒アシル化の両者について、ある範囲の溶媒及び条件をテストした。最良の結果は、CH2Cl2、MeCN、ジクロロエタン又はそれらの混合物で得られた。いくつかのBF3.OEt2触媒アシル化の結果は表3に集められ、図2に示されている。
存在するMeCNの比が高ければ反応は速いが、収率は低下した(実験1、3参照)より良好な結果は新しいBF3.OEt2を用いて観察されたが(実験1、2、6参照)、以前に開封したビン(実験2)及び前もって小分けしたMeCN中のBF3.OEt2のストック溶液(実験6)の結果は不良であった。最小限の触媒濃度が必要であった。すなわち、4mol%の触媒は不完全な反応をもたらした(実験4)。
全ての反応で、ある範囲の微量の不純物が観察された。不純物のいくつか、例えばジアセテート又は4-アセチルロバスタチンは、出発物質の4-アセチルラクトンに存在していたか、又は出発物質中の不純物の直接的な結果物であった(例えばビスシンバスタチンはジオールラクトンから生成される)。これら大半の不純物のレベルは、粗生成物をメタノール水溶液から沈殿させることによって顕著に減少させることができた。表4は、図3に示すように、12gのアシル化反応の生成物についての沈殿の前後における不純物プロフィールを示す。20〜100gスケールでの一連の反応の収率は表5に示されている。単離収率が、残留生成物の存在場所及び概算量と同様に示されている。
表5:4-アセチルラクトンのアシル化:結果
1条件:4-アセチルラクトン10%w/v;BF3.OEt2 8mol%;40℃;DCM/MeCN 5-9:1
2MeOH/水又はMeOH単独から沈殿させた後
3水性洗浄液中の物質、標準試薬に対してHPLCアッセイで測定
4濃縮後に母液に残留したもの、標準試薬に対してHPLCアッセイで測定
【0055】
工程4:酵素的脱アセチル化
本発明はまた、図9Cに示されているように、アセチルシンバスタチンからシンバスタチンへの変換を含む方法を提供する。
4-アセチシンバスタチンの酵素的脱アセチル化には、克服しなければならない2つの重要なハードルが存在する:
(i)出発物質、4-アセチルシンバスタチン及び生成物、シンバスタチンの両者の水溶液での不溶性、
(ii)4-アセチル基の鋭敏性(7より高いpHで急速に脱離する)。
ロバスタチンの加水分解反応とは異なり、4-アセチルシンバスタチンの加水分解はpH7近くで実施されねばならない(pH7ではラクトン環の開環による可溶性の増加は不可能である)。
4-アセチルシンバスタチンの加水分解のために、配列番号4の酵素(例えば、大腸菌でクローニングされたエステラーゼ遺伝子である配列番号3によってコードされる)は、10mMの基質を迅速に加水分解した。前記に続く200mMでの反応は、46時間で91〜93%の変換率を示した。4-クロロアセチル誘導体は同等な変換率を示し、一方、4-ホルミル誘導体は24時間で完全に反応した。4-ホルミル誘導体が、その可溶性及び反応性に関して魅力的な基質であったが、4-ホルミル誘導体の効率的な合成を開発することができなかった。反応をMTBE二相系で実施したとき、同様な結果が3誘導体の全てについて得られた。
多数の反応パラメーターについて、配列番号4の酵素を用いて調べた。pH8で加水分解を開始することによって、許容不能レベルの脱離生成物が生じ、一方、補助溶媒として5%のジオキサン又は界面活性剤(0.1%トリトンX-100又はトゥイーン-20)を用いても不良な結果が得られた。反応速度は50℃で顕著に強化されたが、反応混合物の粘稠性が増加したために、概して全ての反応はほぼ90%の変換率で停止した。
50mMの基質での二相系反応のために、補助溶媒としてのMTBE、ジブチルエーテル又はトルエンの使用はこのような条件下で良好に機能したが、塩素化溶媒の使用はほとんど活性をもたらさなかった。
【0056】
加水分解を10%MeOHの存在下でpH7、50℃で開始するならば、300〜400mMまでの濃度で反応を実施することが可能であった。5〜6時間後に、反応物が非常に粘稠になったとき、等体積のトルエンを反応に添加した。このような条件下では、ほぼ完全な変換が最小限の脱離で観察された。
この段階まで全ての酵素反応は、シンバスタチンから調製した4-アセチル-シンバスタチンを用いて実施した。容易に入手できるシンバスタチンから基質を調製することによって、我々は最後の酵素的加水分解の最初の実験を実施し、一方で合成の他の工程を開発することができた。
残念なことに、ロバスタチンから最初に調製した基質は、使用したルイス酸触媒及び精製の度合いに左右されて品質が変動した。これらの材料は結果の顕著な変動性をもたらし、酵素による脱アセチル化の最初の良好な結果を再現することができなかった。
4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンへの加水分解の特定の反応セットの結果は表6に集められている。この事例では、全ての反応は、10%MeOH及び同じバッチの酵素(配列番号4-2)を用いて実施された。図20は、4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンへの加水分解を対応する脱離生成物及び酸とともに示している。
【0057】
表6:4-アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解
*酵素は4回に分けて24時間かけて添加した。
【0058】
表6の最初の2つの実験は、ロバスタチンから調製した4-アセチルシンバスタチンの加水分解(実験1)をシンバスタチンから調製したもの(実験2)とのそれを比較している。200mMでは、基質2719-93は明らかに劣っている。前記は92%の変換率に達するために79時間を要し、シンバスタチンから調製した基質(実験2)では43時間であった。他方、基質2719-95(実験4)は、200mMでは合成基質(実験3)の79時間に対して45時間で98%の変換率に達した。基質2719-93は純度が低いことが示され、残留2,2-ジメチル酪酸が夾雑し、極めて不良な結果を生じた。一方、低変換率においては2,2-ジメチル酪酸の存在下で阻害作用は観察されなかったので、前記は高変換率において加水分解速度の顕著な低下を招き得る可能性がある。
シンバスタチンから調製された4-アセチルシンバスタチンは、20gスケールでは性能が低かった(実験2、3参照)。この結果は、大規模反応物の攪拌における問題を反映しているかもしれないが、この材料は基質2719-95(実験4)よりもはるかに反応が遅かった。一方、脱離生成物は、そのMichael受容体としての潜在能力のためにおそらく不可逆的阻害物質として作用することができるが、反応が脱離生成物の存在下で実施されるときは低変換率では阻害作用は観察されなかった。
【0059】
基質2719-95を用いた場合は、定常的な結果を示した。反応は100及び200mM(実験5、6)では同様な結果を与え、この事実は反応混合物における出発物質の定常的な低溶解性を反映しているかもしれない。pH7では、40〜45℃よりも50℃でより高い変換率が観察された(実験7〜9)。実験10〜12は、反応はいくぶんpH依存性であることを示し、より高い変換率がpH7(85%)に比してpH7.5〜8.0で観察される。繰り返せば、これはより塩基性の条件下では基質の溶解性は高いことを反映しているのかもしれない。しかしながら、変換率における増加はより高いpHでのシンバスタチンレベルのわずかな増加によって達成される。一方、より高いpHは反応速度を増加させるが、それはpH8までは脱離量を顕著には増加させなかった。実際に、実験2、3を例外として全ての反応が2%未満の脱離生成物面積を示した。実験2、3の出発4-アセチルシンバスタチンには既にほぼ3.5%の脱離生成物が夾雑していた。
更なる酵素反応実験は、反応温度及びpHを変化させることによって反応時間短縮の試みに焦点をあてた。表7のデータは、より高温で操作することによって反応時間を短縮できることを示しているが、前記データは、種々のスケールの反応物を攪拌することによる影響によって複雑化されている可能性がある(実験13〜16)。しかしながら、温度の上昇及び/又は酸の増加は、生成されるシンバスタチンの量の増加をもたらすが、一般的には脱離の顕著な増加を生じなかった(最高量は60℃及びpH8で観察された(実験20))。この実験室スケールの処理下では、本シンバスタチン酸は水流中に失われる。しかしながら、酸性処理を必要とする処理条件は、この物質のいくらかの捕捉によりシンバスタチンを再ラクトン化するかもしれない。
【0060】
表7:4-アセチルシンバスタチンの加水分解:温度とpHの影響
表7では全ての反応は200mMで実施された。
*バッチ毎に酵素を添加
**デュープリケート
【0061】
100gスケールのもっとも新しい実験(実験21)は、60℃及びpH7.5で、磁気撹拌及びオーバーヘッド攪拌を組合せて実施し、反応フラスコの内容物を効率的に攪拌した。このような条件下では、出発物質のほぼ98%の変換が24時間後に観察された。
酵素触媒による加水分解の試案は実験室レベルでの課題を提示した。反応混合物のろ過は、おそらく沈殿タンパク質によるフィルターの目詰まりのため、非常に遅かった。それに代わって、遠心沈殿は、沈殿したシンバスタチンを上清水溶液から分離するために便利な方法であった。続いて、湿り気のある遠心ペレットをCH2Cl2により2回消化し、上清を各回でデカントした。一緒にした有機上清(シンバスタチン生成物塊を含んでいた)を乾燥させ、ろ過して溶媒をトルエンと交換した。このトルエン溶液にヘキサンを添加し、冷却によってシンバスタチンの沈殿が得られた。
CH2Cl2によるダイジェストの後でさえ、遠心ペレットはなお顕著な量の前記生成物を含んでいた。おそらくCH2Cl2は、前記湿り気のある遠心ペレットに効率的に近づくことができず、含有されている生成物を抽出することができないのであろう。
ある例示的改変(実験4;表8)では、遠心ペレットはアセトン及びセライトで処理され、続いてろ過された。続いて前記セライトパッドはCH2Cl2で容易に抽出することができた。一緒にした水性アセトン及びCH2Cl2洗浄液を続いて乾燥させ、溶媒をトルエンに交換した。ヘキサンの添加によってシンバスタチンは即座に沈殿し、これをろ過し乾燥させた。母液を−20℃に冷却することによって第二の収集物が単離された。表8(図4)の収量データは第1回目及び2回目の収集物を合わせたものである。
【0062】
本発明は、ロバスタチンから出発してシンバスタチンを生成する新規な実施経路を提供する。本発明のまた別の観点では、本経路の顕著な特徴は以下を含む:
i.新規なロバスタチンエステラーゼを使用する。前記は、0.5Mの基質装荷、35℃及びpH9.5で、2-メチルブチレート側鎖をほぼ48時間で99%の変換率で除去することができる。反応温度を上昇させることによって反応速度を顕著に増加させることの可能性が存在する。粗トリオール酸から4-アセチルラクトンへ変換する1段階ラクトン化/アセチル化が示される。ロバスタチンからの80%の全体的収率が日常的に得られ、さらに母液中に残存する8〜10%の潜在的生成物が存在する。
ii.無水ジメチル酪酸によるBF3.OEt2触媒アシル化を用いる、シンバスタチン側鎖の導入のための新規で穏やかな条件が発見された。この反応は、ほぼ100gスケールで10%基質装荷で定常的に実施され、4-アセチルシンバスタチンをほぼ80%の収率で提供する。さらに8〜10%の潜在的生成物が反応残留物に残存する。
iii.最終工程は、最初の工程で鋭敏なアセチル基を除去するために用いたように、同じロバスタチンエステラーゼを用いてシンバスタチンを生成する。この反応は、20〜100gスケール、9%w/vの基質装荷で実施され、24〜48時間で98%の変換率を示す。
【実施例6】
【0063】
実施例6:本発明の例示的プロセス
以下の実施例は、ロバスタチンからシンバスタチンを合成するためのスキームを含む、本発明の例示的プロトコルについて述べる。
本発明は、図16A又は“工程1”に図示されるように、ロバスタチンからロバスタチン酸、及びロバスタチン酸からトリオール酸を生成する方法を提供する。この特徴では、このプロトコルは、メチルブチレート側鎖の完全な(>99%)除去を達成する。ロバスタチンとシンバスタチンとの分離の困難さ、及びシンバスタチンAPI中の許容されるロバスタチンレベルの低さのために、このことは重要である(ロバスタチン加水分解のためのいくつかの方法は、完全な(>99%)反応のために高温及び長い反応速度を要求した)。
ロバスタチンは、ヒドロラーゼ酵素(例えば本明細書に記載されているようなもの)を用い穏やかな条件下で加水分解され、ラクトン環の加水分解及び8位の側鎖の完全な除去がもたらされる。メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解で用いることができる3つの例示的ヒドロラーゼ酵素は以下のエステラーゼ酵素である:配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)、配列番号6(例えば配列番号5によってコードされる)、及び配列番号2(例えば配列番号1によってコードされる)、配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)。各々はサブクローニングされ、種々の宿主で発現され、種々のスケール(200リットルスケールを含む)で発酵生産された。
ロバスタチンは、酵素活性に必要な水性条件下で難溶性を示す。また別に、ある特徴では、ロバスタチンの懸濁水のpHを>12に高めてラクトン環の急速な加水分解を達成し、より溶解性の高いロバスタチン酸の塩のin situ生成がもたらされる。実際には、水/MeOH中のロバスタチンの懸濁物が水に1モル当量のNaOH溶液で処理され、完全に溶解するまで攪拌される。続いて、反応混合物のpHを酵素反応に適切な範囲に調整し、酵素が添加される。
【0064】
また別の特徴では、酵素的加水分解の条件は、発酵ブロスから直接抽出したロバスタチン及び/又はロバスタチン酸の混合物に適用することができ、又は前記酵素は発酵ブロス及び直接単離したトリオール酸に添加してもよい。
加水分解の後、反応混合物を注意深く酸性化し、トリオール酸は抽出及び/又はろ過によって単離される。ある特徴では、前記は次の工程で直接用いられるか、又は前記は適切な結晶化/沈殿工程の後で固体として単離される。
本発明は、図16B又は“工程2”に図示されたように、トリオール酸からジオールラクトンを生成する方法を提供する。ある特徴では、トリオール酸は、適切な溶媒中で加熱し、通常の手段により水を除去して平衡をラクトン形に移動させることによって再ラクトン化される。あるいは、ある特徴では、トリオール酸は適切な酸の存在下で攪拌することによって再ラクトン化される。前記はまたラクトン環の閉鎖を達成するであろう。ジオールラクトンは、この段階で適切な溶媒から結晶化/沈殿させることによって精製することができる。
本発明はまた、図16C又は“工程3”に図示されたように、ジオールラクトンからアシルラクトンを生成する方法を提供する。ある特徴では、4'-位のヒドロキシル基の位置選択的アシル化は、所望の活性及び選択性を有する酵素を用いて酵素的に実施される。アシル基の性質は、適切な特性を付与するために、例えば容易な除去のためにアセテート、結晶性の強化のためにベンゾエート、水溶性の強化のためにホルメートのように変動させることができる。
また別の特徴では、図16D(上記工程2及び3も併せて)に図示したように、本発明のこのプロトコルの“短縮変型(telescoped variation)”では、ラクトン化及びラクトン4-位のアシル化は単一容器で実施される。塩基(例えばDMAP)の存在下で、2当量の無水物で処理されるとき、トリオール酸は先ず初めにラクトン化され、続いてラクトンの4-OHで位置選択的にアシル化されて4-アシルラクトンが生成される。続いて前記生成物を適切な溶媒から結晶化/沈殿させることにより単離及び精製する。
【0065】
本発明は、図16E又は“工程4”に図示したように、例えば化学的又は酵素的アシル化によってアシルラクトンからアシルシンバスタチンを生成する方法を提供する。ジメチル酪酸誘導体と適切なアシル化触媒との組合せを用いて、所望の側鎖、例えばシンバスタチン側鎖を付加することができる。ジメチルブチリルクロリド/ジメチルアミノピリジンの組合せが記載されたが、反応時間は極めて長く、条件化は過酷で許容不能なレベルの副生成物が生じる。対照的に、本発明の組合せの、無水ジメチル酪酸/ルイス酸(例えばBi(トリフレート)3、Cu(トリフレート)2)、BF3.Et2Oは、室温での迅速な反応をもたらす。適切なルイス酸及び反応条件(温度、溶媒など)のスクリーニングによってこのアシル化の最適条件を特定することができる。
ある特徴では、アシルラクトンの酵素触媒アシル化を用いて、非常に穏やかな条件(室温から40℃、有機溶媒)下で、副生成物を形成することなく8位にジメチルブチレート基が付加される。
本発明は、図16F又は“工程5”に図示したように、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩、さらにシンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを生成する方法を提供する。最終工程は4'-位のアシル基の選択的除去を必要とする。4'-位のアシル基は、ほんのわずかな塩基性条件下であっても塩基触媒による脱離に非常に鋭敏である。結果として、酵素的加水分解が、このアシル基の位置選択的除去にはもっとも都合のよい方法であった。工程1(上記)でロバスタチンを加水分解するエステラーゼ(配列番号4、例えば配列番号3によってコードされる)もまた、ラクトンの4'-位のアシル基の選択的加水分解を効率的に触媒できることが示された。pH7で実施したとき、この酵素的加水分解によって実質的に無傷のラクトン環を有するシンバスタチンが得られた。
当分野で公知の任意のアッセイをスクリーニング、性状決定などに用いることができる。例えば、酵素のスクリーニングでは任意の標準的なHPLC及びTLC分析を用いることができる。前記の多くは当業者には公知である。
【0066】
以下では別の例示的プロトコル及び本発明の実施のための種々の条件について述べる。
ロバスタチンからトリオール酸への酵素的加水分解(工程1):
配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)を、7〜10%のMeOH/緩衝液中で0.1〜0.5Mの濃度のロバスタチン又はロバスタチン酸で評価した。反応は塩基の自動添加によってpH9〜9.5に維持された。最良の結果は、14mg/mLの相タンパク質を含む、配列番号4(配列番号3によってコードされる)の酵素の凍結乾燥調製物(溶解細胞の遠心上清)を用いて0.5Mのロバスタチンで500mLスケールにおいて得られた。基質の完全な変換は8時間後に観察された。
トリオール酸からジオールラクトンへのラクトン化(工程2):
反応混合物を酸性化し(pH2)、沈殿物を遠心によって収集し乾燥させた。ろ液をiPrOAcで抽出し、有機抽出物を乾燥させたフィルターケーキに加えた。得られた懸濁物を、ディーン-スターク装置でラクトン化が完了するまで還流加熱した。生成溶液をセライトパッドでろ過し、ろ液を飽和NaHCO3で洗浄した。得られたiPrOAc溶液を(x0.5)まで濃縮し、ヘキサンで希釈し0℃に冷却した。沈殿した固体をろ過し風乾してジオールラクトンを得た(63g、単離収率79.5%;さらに10.3gの生成物が種々の洗浄液及び母液で同定された)。生成物は1%未満のロバスタチンを含んでいた。
ジオールラクトンの酵素的アシル化(工程3):
ジオールラクトン(25mM)、酢酸ビニル(250mM)及びTBME(1mL)中のカンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)リパーゼB(33mg)の混合物を室温で振盪した。44時間後に、HPLCによって60%の変換率でモノアセテートの生成が示された。
アセチルシンバスタチンの製造(工程4):
4-アセチルラクトンを真空下で一晩室温で乾燥させ、窒素下で保存し、続いて窒素下の室温で無水メチレンクロリドに溶解した(1g/2.5-3mL比)。一方、Cu(OTf)2(5mol%)を最小量のアセトニトリルに室温で溶解し、続いて1.05〜1.2当量の無水ジメチル酪酸を前記溶液に添加し、室温で30分から1時間攪拌した。このCu(OTf)2/無水物溶液を室温で攪拌しながら窒素下で4-アセチルラクトン溶液に注射筒を介して移した。完了したら(HPLCによりモニター)反応を水の添加によって停止し、飽和NaHCO3で洗浄した。単離した有機層をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し蒸発させて粗4-アセチルシンバスタチン(>99%)を得た。
アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解(工程5):
アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解のためのこの例示的プロトコルでは以下が用いられる:3.22gのアセチルシンバスタチン(最終濃度350mM);2mLのMeOH;100μLの4Mトリス;9.9mLの水;8mLの配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)(水に凍結乾燥溶解物、125mg/mL)。
反応は、オーバーヘッド攪拌及び磁気撹拌棒を用いて25mL容器で実施される。pH定常状態は、DasGip Stirrer-PRO(商標)システムによって維持され、pH7は10%NH4OHの添加によって維持される。変換率がほぼ75%に達したとき、4mLのトルエンを添加して材料を可溶化する。反応を一晩進行させ、この時点でさらに溶媒(トルエン又はメチレンクロリド)を添加して、全ての不溶性物質が溶解されていることを担保する。図7に示したようにHPLCでサンプルを分析する。
反応の最終組成物:シンバスタチン酸4.7%、シンバスタチン90.9%、アセチルシンバスタチン0.9%、シンバスタチンの仮定的脱離生成物3.5%、最終変換率95.6%
【実施例7】
【0067】
実施例7:本発明の例示的プロトコル
以下の実施例は、ロバスタチンからシンバスタチンを合成するためのスキーム(例えば図5に概略したプロセスの全体的収率を増加させるためのスキーム、シンバスタチンへのヘテロジアシル化合成経路)を含む、本発明の例示的プロトコルについて述べる。本実施例は、ロバスタチンからシンバスタチンへの全体的収率を少なくとも60%に増加させるスキーム、及び収率低下がどこで発生するか、どこのプロセスの改善が実行できるかを特定するスキームについて述べる。
工程1:ロバスタチン加水分解:
図15Aは、本発明の例示的反応、エステラーゼを用いるロバスタチンからトリオール酸への加水分解を示す。ある特徴では、この工程は、ラクトン環を先ず初めに化学的に開環して(1当量のNaOHを用いる)、水溶性のロバスタチン酸を生成することを必要とする。pH及び体積を調整した後、酵素スラリーを反応に添加し、続いて前記を、ロバスタチン酸の99.5%変換率が得られるまでpH9.5で40℃に維持した。また別の例示的条件は、10%w/vの基質(0.25M)装荷及び10%w/wの粗酵素/基質装荷を用いる。
以前には実験室で100gを超えるスケールの場合、もっとも都合のよい処理は酵素反応混合物を希釈し酸性化することであった。不溶性物質はろ過で収集され、この湿ったフィルターケーキを真空中で30℃から40℃で乾燥させた。粗生成物のアッセイ(内部標準の存在下での1H NMR)によって、粗生成物はほぼ78%のトリオール酸を含み、物質の残りの部分はおそらく変性タンパク質、細胞成分及び培養液成分であろうということが示された。
実験は、許容不能な収率低下はこの最初の工程で生じるのか否かに関する問いに答えるために行った。比較的高い酵素装荷が以下の結果を生じるのではないかと考えられた:
(i)沈殿したタンパク質への生成物の不可逆的な吸収、
(ii)特に沈殿酵素が工程2(ラクトン化/アセチル化)へ送られた場合の、副反応による収率低下、
(iii)この段階又は後続段階で生成物と反応し得る他の成分を粗酵素調製物が含む。
以下によって前記の状況を改善する試みが実施された:
(i)酵素装荷を減らす、
(ii)使用前の単純な予備処理により酵素調製物の純度を高める、
(iii)限外ろ過によりトリオール酸生成物を使用済み酵素から分離する。
【0068】
酵素装荷の減少:最初に工程1を20%w/v基質(0.5M)で、20%w/w酵素/基質装荷で実施した。このような条件下では、反応は40℃で概して24〜36時間で完了した。続いてこの反応物を酸性化及び生成物の沈殿前に希釈した(0.5Mでの酸性化は常に濃厚なスラリーを生じ、前記は攪拌が困難であった)。例えば、配列番号4のエステラーゼによるロバスタチンの酵素的加水分解のための予備的実験を、図23に示すように15%から20%の装荷で0.35から0.5Mの基質で実施した。これらの実験は、高い基質装荷は達成できるが、変換速度は最適化を必要としていることを示した。
この反応は処理中に既に希釈を必要としたので、基質濃度の0.25M(10%w/v)への減少及び粗酵素注入の10%への減少はこのプロセスの容量効率に影響を与えないであろう。このような条件下では、酵素的加水分解は、24〜36時間でロバスタチン酸からトリオールへの99.5%変換率を提供した。
酵素の予備処理:熱処理は、所望の酵素と他の夾雑タンパク質との間に種々の熱安定性が存在するときは、粗酵素の純度を高める便利な方法としてしばしば用いられてきた。ロバスタチンエステラーゼは良好な熱安定性を示したので(工程1及び4は40〜50℃で実施される)、前記酵素は60℃で30分処理され、続いて遠心し、上清を加水分解に用いた。加熱予備処理酵素と未処理酵素との間に活性の相違はなかった。
限外ろ過:限外ろ過は、使用済み酵素及び他の高分子量不純物(前記はこの工程または後続の工程で吸収又は副反応により収率を低下させる可能性がある)からトリオール酸生成物を分離するための方法として考慮された。
ロバスタチンの加水分解が完了した後、可溶性トリオール酸塩を含む反応混合物を中空線維膜アッセンブリー(ポリスルホン微小孔メンブレンを有する中空線維モジュール;カットオフ10k;表面積1050cm2(Spectrum Labs MINIPROS(商標))に通した。流出液を収集し、残存する残留物を水で希釈し、前記アッセンブリーを通過させた。続いて一緒にした溶離液を酸性化し、沈殿したトリオール酸を収集した。4-アセチルシンバスタチン加水分解工程とは異なり、1つの例外を除き、生成物の主要な停滞は保持残留物中に観察されなかった。以下の表はいくつかの実験結果を示す。
1標準試薬に対する粗トリオール酸のHPLCアッセイ
2 HPLC純度を基準にした単離トリオール酸の収率
3単離された物質及び洗浄液、ろ液、残留物中の生成物(トリオール酸及びジオールラクトンの両者)を含む総収率
4反応混合物の酸性化及び沈殿トリオール酸と使用済み酵素のろ過
5沈殿前に反応混合物は中空線維の束を通過させた。
工程2:アセチル化:
図8及び図9はスキーム2、本発明の例示的ラクトン化/アセチル化反応及びその生成物を示す。ロバスタチン加水分解工程から得られる粗生成物は、トリオール酸及び変性タンパク質及び細胞/培養液成分を含む。以前にはこの粗生成物は、一工程/一容器プロセスではCH2Cl2(10〜15%w/v)に懸濁され、DMAP(0.15当量)の存在下で無水酢酸(3当量)で処理された。この反応はHPLCでモニターされ、典型的には2%未満のジオールラクトンが残存するときに反応は停止され、この時点で2%未満のジアセテートが生成された。特に反応が過剰に長時間攪拌されたときに、いくらかの脱離生成物が形成された。完了後に、反応を水の添加によって停止させ、不溶性物質をセライトパッドを介してろ過することによって除去した。このパッドをCH2Cl2で洗浄し、一緒にしたろ液を希薄酸(DMAP除去のため)及び飽和NaHCO3(酢酸除去のため)で洗浄した。塩基抽出の後、溶液を乾燥させ、ろ過して濃縮した。続いてヘキサンの添加によって白色固体として4-アセチルラクトンが生じた。
以前には、このような条件下で最初の排他的ラクトン化が生じ、続いて4-ヒドロキシルでアセチル化が生じ、長時間反応でのみビスアセチル化及び脱離が顕著になると考えられていた。
いくらかのデータによって、測定可能な量のアセチル化が先ず初めに開環された鎖型の3及び/又は5-ヒドロキシルで生じ、4-ヒドロキシルのアセチル化とそれに続くラクトン化によって所望の生成物が生成されるが、5-ヒドロキシルのアセチル化は最終的にビスアセチル酸型を生成することを示唆している(図8に示されたスキームを参照されたい)。この不純物は以前には脱離生成物と誤解されていた(両者は同様なHPLC保持時間を有する)。
図14の表のデータは、ジオールラクトン(ジアセチル酸副生成物を生成することができない)又はトリオール酸のどちらかを用いる、一工程ラクトン化/アセチル化条件の比較を提供する。
概して、トリオール酸は、材料の5〜8%がジアセチル酸副生成物に転換されるのでより低収率の4-アセチルラクトンを生じた。
この不純物を回避する1つの方法は、酸触媒ラクトン化を実施して、排他的にジオールラクトンを生成し、続いてアセチル化することである。この連続工程をジオールラクトンを単離することなく同じ容器で実施することができる(一容器/一工程プロセス)。以下の表に要約したように、2つのプロセスの直接比較を50gスケールで実施した。2つのプロセスは類似し、二工程アセチル化プロセスの全体収率が3〜4%高かった。
1トリオール酸及び酵素の酸沈殿
2反応混合物は酸沈殿の前に中空線維の束でろ過した。
3無水酢酸のみ
4酸触媒ラクトン化とそれに続くアセチル化
5単離物質及び母液中の物質を含む
この表のデータは、アセチル化工程は良好な質量バランスを示すことを明らかにしたので、収率低下の大半は工程1、ロバスタチンの加水分解及び単離で生じる。
【0069】
工程3:アシル化:
ラクトンの8位の化学的アシル化のための例示的プロトコルは図10に図示されている。以前の条件は、シンバスタチン側鎖の導入のためのアシル化剤として無水2,2-ジメチル酪酸を用いた。前記無水物は市販されておらず、さらにその調製で多量の酸塩化物を使用することは全体的なプロセスに対して化学薬剤のコストを非常に高いものにする。
実験では、遊離酸の捕捉のためにピリジン(2当量)とともにアシル化触媒としてLiBrの存在下で市販のジメチルブチリルクロリド(2当量)を用いた。処理の後、生成物溶液を乾燥するまで蒸発させ、得られた固体をiPrOHとともにすり潰し、スラリーをろ過して許容可能な品質の4-アセチルシンバスタチンを得た(全体的収率86〜89%;純度95%)。
工程4:酵素的脱アセチル化:
図11は、本発明の例示的反応、4-アセチルシンバスタチンの酵素的脱アセチル化を示す。4-アセチル化シンバスタチンの酵素的脱アセチル化には克服しなければならない、以下の2つの重大なハードルが存在する:
・出発物質(4-アセチルシンバスタチン)及び生成物(シンバスタチン)の両者の水溶液における不溶性;
・4-アセチル基の鋭敏性、前記は7より高いpHで急速に脱離する。
ロバスタチンの加水分解反応と異なり、4-アセチルシンバスタチンの加水分解はpH7近くで実施されねばならない(この場合ラクトン環の開環によって溶解性を高めることができない)。この工程を改善するために、以下のように、ロバスタチンの加水分解の場合と同じ方法が開発された:
(i)酵素装荷を減らす
(ii)使用前の単純な予備処理により酵素調製物の純度を高める、
(iii)限外ろ過により生成物を使用済み酵素から分離する、
(iv)基質の溶解性を高めるために界面活性剤を使用する。
(i)改めて、10%w/v(0.25M)の基質濃度を用い、かつ10%w/wに対する粗酵素装荷を減少させることにより、48時間で95%を超える変換率を示す反応が得られた。
(ii)また別の例示的加水分解反応を加熱予備処理酵素の上清を用いて実施した。
(iii)生成物の精製のために限外ろ過を使用することにより処理が複雑になった。シンバスタチンは水に不溶である(0.03mg/mL)。しかしながら、変換が完了したとき、反応混合物のpHは1当量のNaOHの変換によって上昇し、ラクトン環の開環及び生成物の溶解がもたらされる。続いて反応混合物を中空線維膜アッセンブリーでろ過して使用済み酵素を分離した。ロバスタチンの加水分解と異なり、シンバスタチン酸及び使用済み酵素を含む反応溶液の限外ろ過によって、顕著な量の生成物が前記膜アッセンブリー内に保持された。
溶離液を酸性化したが、シンバスタチン酸は沈殿せず、これを抽出して、そのアンモニウム塩として沈殿させた。この連続工程の全体的回収率は低かった。
(iv)5種の界面活性剤(トリトンX-100、トゥイーン80、トウィーン20、AOT及びCTAB)を、基質溶解性の増加により加水分解反応を強化するそれらの能力について調べた。トリトンX-100は0.05%w/vで小規模(1g)での反応速度を高めた。しかしながら、その効果は反応規模が増加するにつれて顕著ではなくなった。
最終反応条件では、5%MeOHが“湿潤剤”として用いられた。そうしなければ、不溶性の出発物質は、フラスコ壁に張り付いて上昇してきた。完了(>95%変換率)したと思われるとき、反応混合物をろ過し、フィルターケーキを真空下で乾燥させた。乾燥したフィルターケーキをCH2Cl2に懸濁し、ゲル様物質を含む褐色/灰色の粘稠溶液を得た。これをセライトパッドでろ過し、前記セライトパッドをトルエンで洗浄した。ろ液からCH2Cl2を除去し、ヘキサンを添加することによってシンバスタチンが88〜89%の全体的収率で沈殿した(標準物に対して純度97.5%)。さらに別の粗シンバスタチンバッチは全て、単一精製法としてトルエン/ヘキサンから結晶化させた。
【0070】
工程1−4:全工程収率:
全体的収率:以下の表(“全工程の収率概要”)は、2通りの50gスケール演習実験の全工程結果を示している。
全工程の収率概要
1%全体的収率は単離収率+母液/洗浄液などの生成物である。
2ロバスタチンの50g注入を基準にしたシンバスタチンの%収率である。
3トリオール酸及び酵素の酸沈殿。
4トリオール酸単離前に中空線維膜で反応物をろ過。
5同時ラクトン化/アセチル化、又はラクトン化の後でアセチル化
シンバスタチンの全体的収率は、51〜58%及び母液(トルエン/ヘキサン)に残存する5〜8%の物質であった。この物質の成分分析を実施し、HPLCアッセイに付したとき、市販等級のシンバスタチン標準物に対して純度は97.4〜97.5%であった。
不純物プロフィール:図12は、本発明のこの例示的プロトコルを用いて精製されたシンバスタチンの2つのバッチについてのHPLCトレースを示す。両サンプルが98%面積を有するシンバスタチンを示している。トルエン/ヘキサンから再結晶化することによって、大半の不純物のレベルを粗物質と比較して少なくとも50%減少させた。例えば未反応4-アセチルシンバスタチンは1.7〜1.8%から0.3〜0.5%に減少し、脱離生成物はさらに大きく1〜2%から0.2%に減少した。ジオールラクトン及び4-アセチルラクトンのレベルは0.5%から0.1〜0.2%に減少した。
図13はHPLC分析の説明図であり、50gスケール演習実験から単離したシンバスタチンサンプルの不純物プロフィールを示している。
要約:
・シンバスタチンは本発明の例示的な四工程酵素化学的プロセスを用いてロバスタチンから調製された。
・2つの50gスケールの演習実験で、シンバスタチンは51%及び58%の全体的収率で単離された。各工程の単離物質収率は以下のとおりであった:工程1〜2、82〜85%;工程3、83〜89%;工程4、74〜82%。工程3及び4では、さらに6〜14%の生成物が母液に残存していた。
・酵素装荷を10%粗酵素/基質に減少させ、さらに加熱予備処理と遠心上清の使用によってこの系の負荷となるデブリの量が減少した。反応混合物の限外ろ過は、使用済み酵素から生成物を単離することに対して明瞭な利点を提供しなかった。
プロセスを完了させるために必要とされる試薬:
工程1:ロバスタチン(kg);ロバスタチンエステラーゼ;トリス緩衝液(L);MeOH(L);EtOAc(L);ヘキサン(L)。
工程2:ジオールラクトン(kg);無水酢酸(kg);ジメチルアミノピリジン(kg);ジクロロメタン(L);EtOAc(L);ヘキサン(L);4-アセチルラクトン
工程3:4-アセチルラクトン(kg);ジメチルブチリルクロリド(kg);ジクロロメタン(L);EtOAc(L);MeOH(L);ヘキサン(L);4-アセチルシンバスタチン
工程4:4-アセチルシンバスタチン(kg);ロバスタチンエステラーゼ;トリス緩衝液(L);EtOAc(L);ヘキサン(L);トルエン(L);シンバスタチン
【実施例8】
【0071】
実施例8:ロバスタチンの酵素的加水分解
以下の実施例は、ロバスタチンの加水分解を含む本発明の例示的プロトコルを提供する。
工程1:酵素的加水分解:
・50g及び2x150gスケールのロバスタチン加水分解を実施した。反応は0.5M基質、pH9.5、40℃で実施し、pHは10%のNH4OHの添加により一定に維持した。
・3種の全ての反応は同様な性能を示し、ほぼ24時間で99%を超える変換率を達成した(基準化HPLCピーク面積による)。
・反応混合物はpH約2.5に酸性化した。反応の規模、攪拌の効率/強度及び希釈の程度に応じて、反応混合物はこの操作の間に“固化”することがあり、更なる希釈が必要であった。
・沈殿生成物は容易にろ過され、湿ったフィルターケーキは、真空オーブンでほぼ40℃で乾燥させた。
・静置により、さらに多くのトリオール酸及びジオールラクトンが酸性水性ろ液から沈殿した(1〜4%)。
考察:反応は0.5M(20w/v)基質で実施されるが、反応混合物は等容積までの水で希釈し、処理中に反応混合物が固化するのを防止する必要がある。容量効率は、反応を開始から0.5Mで実施することによって改善することができる。50g反応は、水性ろ液中に異常に大量のトリオール酸を示し(12%と概算される)、次工程でのより低い全体的収率をもたらした。
工程2:ラクトン化/アセチル化:
・3種の反応を50g及び150gの反応から得られた乾燥フィルターケーキ(トリオール酸/沈殿タンパク質)を用いて実施した。反応は標準的条件(4当量Ac2O、15%DMAP)下で予想通りに進行した。
・生成物はEtOAc/ヘキサンから沈殿させた。
・4-アセチルラクトンは2つの工程にわたって66〜78%収率(1回目の収集物)で単離され、母液にはほぼ7%が残存した。
工程3:アシル化:
・26g及び98gスケールで2つの反応を通常の条件下で実施した。
・小規模の方の反応は、2回の収集で4-アセチルシンバスタチンを79.8%収率で提供した。生成物はMeOH(2x)から単離された(水を添加することによってMeOHから生成物を沈殿させる試みは成功しなかった)。
・98g反応は処理後2つのプロセスストリームに分割した。一方の部分(材料のほぼ25%)は直接最後の酵素的加水分解工程に向けた。残りの材料はMeOH(2x)から沈殿させて、2回の収集で74%の収率を提供した。さらに12%の生成物が残留物に残っていた。
工程3:酵素的加水分解:
・27gスケールの反応(10%w/v基質)はpH7.5及び55℃(外部温度)で実施した。20時間で4−アセチルシンバスタチンの98%変換率が観察された。単離された粗物質のアッセイによって、シンバスタチンの91%収率が示された。物質を単離し、トルエン/ヘキサンから沈殿させて、2回の収集において88%収率でシンバスタチンが提供された。前記はロバスタチンからの全体的収率46%を表す。不純物プロフィール及びHPLCアッセイの結果は下記の表に示されている。
・ある事例では、粗アセチルシンバスタチンは最後の酵素的工程に精製することなく送られた。MeOH中のプロセスストリームは真空蒸留によって濃縮され、水で希釈したとき正確な濃度を提供した。しかしながら、基質は反応混合物から不溶性の柔らかい球体として沈殿し、前記は互いに融合した。トルエンを前記混合物に変換して基質を可溶化させた。酵素の添加により非常に穏やかな反応がもたらされた。92時間後、主要な生成物はシンバスタチン酸であり、ほぼ20%の脱離生成物が含まれていた。
・最後の69gスケール反応はpH7.5/50℃で穏やかであり、適切な変換率のために4日を要した。その間、ほぼ10%のシンバスタチン酸が生成された。生成物は60%収率で単離された。
考察:乾燥したフィルターケーキからのシンバスタチンの単離では、抽出効率は変動した。いくつかの実験はより長い反応時間を示したが、これは基質の品質を反映しているのかもしれない。図21に示されている表は、選択したシンバスタチンサンプルについての不純物プロフィール、HPLCアッセイ及び元素分析の結果を示している。
粗ロバスタチンの加水分解:
・粗ロバスタチンの加水分解(91%)を、2ロットの酵素(配列番号4、例えば配列番号3によってコードされる)を用いて4x10gスケールでpH9.5/40℃で実施した。この酵素による反応では99.5%の変換率がもたらされた(1つのロットは27時間後に96%の変換率を示し、別のロットは20%装荷で18.75時間で99.4%の変換率を示した)。
・3反応を一緒にし、ここに記載したように処理した。アッセイによって、粗フィルターケーキとしてトリオール酸の89.4%収率が示され、おおよそ5%が水性ろ液へ失われた。
・粗トリオール酸はここに記載した条件下でラクトン化/アセチル化された。
【実施例9】
【0072】
実施例9:ロバスタチンの酵素的加水分解
以下の実施例は、ロバスタチンの酵素的加水分解を含む本発明の例示的プロトコルを提供する。
工程1:ロバスタチンの酵素的加水分解:
A.使用済み酵素のトリオール酸からの分離
熱処理:
・酵素的加水分解が完了した後、4x10g反応を80〜85℃に1時間加熱した。変性タンパク質の明瞭な沈殿はなかった。反応物は白濁した緑色/黒色を維持した。室温へ冷却しても反応混合物の色又は粘度に明白な変化は生じなかった。
pH操作:
・10%メタノール/水(pH10.5)中に酵素粉末10gの溶液は、セライト(CELITE(商標))珪藻土(3g)で処理したとき容易にはろ過されない。
・pH6に調整することによって濃厚な沈殿が生じ、この沈殿は、等重量のセライト珪藻土と長時間攪拌した後でも容易にはろ過されなかった。
・pH6に調整し遠心した後、上清はなお、pHをさらに下げたときに沈殿する物質を含んでいる。
・トリオール酸はほぼ0.2MでpH9.5〜3.5の範囲で可溶性である。
ミクロフィルトレーション:
・遠心して少量の不溶物を除去した後、4x10g反応の一緒にした酵素加水分解物をスペクトラムラブ(Spectrum Labs)のポリスルホン中空線維束(10K MWカットオフ;1050cm2)でろ過した。これは、トリオール酸の沈殿前に高分子量物質を反応混合物から除去するための便利な方法である。溶液は合理的な速度(ほぼ1L溶液についてほぼ3〜4時間)でろ過される。
・ミクロフィルトレーションの後で、流出液のpHの低下はpHがほぼ4になるまで沈殿をもたらさない。沈殿したトリオール酸は容易にろ過され真空下で乾燥される。
B.酵素バッチの性能
・4ロットのロバスタチンエステラーゼを用いた。
・0.5M/20%酵素装荷及び0.25M/10%酵素装荷で4ロットの酵素を比較することによって、全てのロットが23時間で99%の変換率及び23〜40.5時間で99.5%を超える変換率を有し、類似する性能を持つことが示された。
・2つの酵素使用テスト(4x10g及び5x10g)をミクロフィルトレーション処理に付した。両テストで、単離トリオール酸は、トリオール酸の標準試薬に対してアッセイしたとき、純度はほんの82.7%及び83.8%であった。残留物をアッセイしたときでも物質の83〜86%のみがトリオール酸であった。
【0073】
工程2:ラクトン化/アセチル化:
本発明は、図22に示すように、トリオール酸から対応するジオールラクトン、3-ジアセチルトリオール酸及び5-ジアセチルトリオール酸への変換、並びに前記に続く3,5-ジアセチルトリオール酸、4-アセチルラクトン及び脱離生成物への変換を含む方法を提供する。
・多量のトリオール酸及びジオールラクトンが化学的加水分解(KOH/MeOH)及び共沸ラクトン化(iPrOAc)によって製造された。標準試薬と比較して、トリオール酸は純度99.4%であり、一方、ジオールラクトンの純度は94.5%であった。
・両化合物を標準条件下でラクトン化及び/又はアセチル化に付した(Ac2O、15%DMAP;CH2Cl2中で10%w/v)。
・反応はHPLCでモニターし、水で急冷して停止させ、酸及びNaHCO3で洗浄した。CH2Cl2は既知の体積に希釈し、4-アセチルラクトンの標準試薬に対してアッセイした。全ての水性洗浄液及び残留物もまたアッセイした。
・トリオールの2つのラクトン化/アセチル化反応は、アッセイ溶液に78.9%及び87.4%の収率を与えた。生成物中の不純物には以下が含まれていた(HPLC面積%):0.4%ジオールラクトン、5.6%脱離物、1.5%4,8-ビスアセチルラクトン、0.5%未知物質。
・ジオールラクトンの2つのアセチル化反応は、アッセイ溶液に88.5%及び94.7%の収率を与えた。生成物中の不純物プロフィールはトリオール酸反応の場合よりも純粋であった。
・より希薄な条件下の0℃でのCH2Cl2中の以前の反応は、HPLCにジオールラクトンよりも長い保持時間をもつ2つの新規なピークが存在することを示した。これらのピークは反応が進行するにつれて減少した。アセチル化が進行するにつれて、アセチルラクトンピークの直前のピークが増加する。このピークは以前に脱離ラクトン生成物に割り当てられた。LC-MSデータは、このピークは実際には脱離生成物と3,5-ジアセチルトリオール酸の複合物であることを示唆している。これらの反応及び対応する生成物の説明のためには図22を参照されたい(トリオール酸の対応するジオールラクトン、3-ジアセチルトリオール酸及び5-ジアセチルトリオール酸への変換、並びに後続の3,5-ジアセチルトリオール酸、4-アセチルラクトン及び脱離生成物への変換)。
前もって生成されたジオールラクトンのアセチル化は、トリオール酸のラクトン化/アセチル化よりも高い収率及びより純粋な生成物を提供した。
【0074】
工程3:アシル化:
4-アセチル基を除去するための本発明のまた別の方法は以下のとおりである:
・酵素触媒アルコーリシス:MeOH(32当量)の存在下でトルエン中の5つの酵素を用いても反応は惹起されない;これらの反応に水(0.6%v/v)を添加しても加水分解は全く生じなかった。
・水分を含む、水に混和性の溶媒(9溶媒)中での酵素的加水分解:酵素(配列番号4、例えば配列番号3によってコードされる)のあるロットを用いた43時間後に生成物の存在徴候は全くなく、種々の程度の脱離が観察された。
・酵素触媒アミノリシス:トルエン又はMTBE中のBuNH2を用い7つの酵素で実施;バックグラウンドの脱離物質が主要生成物である。
・H2O2/NaHCO3:MeOH、THF又はアセトン中の50%H2O2の量を増加させながら過剰な固体NaHCO3の存在下;アセテート除去の徴候無し。
・酸触媒メタノリシス;30%HCl/MeOH中の0.1Mアセチルシンバスタチンは一晩でシンバスタチンとシンバスタチンメチルエステルの混合物を生成する。
【実施例10】
【0075】
実施例10:ロバスタチンの酵素的加水分解の小部分要素設計
反応の最適化のために、ロバスタチンの酵素的加水分解を小部分要素設計(fractional factorial design)に付した。小部分要素設計は、0.35Mロバスタチン酸、Na塩によりデザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いて実施した。結果は図24に示されている。図24の注釈は以下のとおりである:
1酵素活性はメチルウンベリフェリルブチレートで測定し、0.1μgの総タンパク質に対して得られる勾配として表した。
23時間までのトリオール酸生成速度
345.5時間で生成されるトリオール酸(%)
4つの要素がロバスタチン酸の加水分解に影響を与える。すなわち図25に示されるように、生成されるトリオール酸(%)、酵素濃度、緩衝液濃度及びMeOHである。ここで、全ての反応を、配列番号4を含む清澄化大腸菌溶解物を用いて実施した。反応は定常pH条件下でDasGIP FEDBATCH-PRO(商標)システムで実施した。
レスポンスサーフェスアナリシス(RSA)を、デザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いて0.35Mのロバスタチンの加水分解について、セントラルコンポジットデザインを用いて実施した。結果は図26に示されている。図26の注釈は以下のとおりである:
1酵素活性はメチルウンベリフェリルブチレートで測定し、0.1μgの総タンパク質に対して得られる勾配(RFU/s)として表した。
23時間までのトリオール酸生成速度
345.5時間で生成されるトリオール酸(%)
ロバスタチンの配列番号4によるin situ加水分解は些少のNaClが生成されるように最適化された。すなわち、MeOH中の0.85gのロバスタチン及び等モルのNaOHが変換された。配列番号4を含む清澄化した大腸菌溶解物をロバスタチン酸に添加した。重要な要素は以下のとおりであった。すなわち、メタノール濃度([MeOH])、酵素濃度([酵素])は極めて重要で、緩衝液濃度([緩衝液])は低い[酵素]でわずかに影響を有した。これらの結果の要旨の図解については図27を参照されたい。
レスポンスサーフェスアナリシス(RSA)の結果をロバスタチンの大規模加水分解に、例えば図28に示すプロトコル(下記)を用いて応用することができる:
*反応は100gスケール(0.5M)で連続的に実施した;
*27時間で97.5%変換率
*生産性:xg/gエステラーゼ/時間
*比活性:0.084μmol/mgエステラーゼ/分。
配列番号4の基質特異性を調べた。すなわち、図29に示すように、シンバスタチンの多くの4-アシル誘導体は配列番号4によって活発に加水分解される。アセチルシンバスタチンの化学的加水分解は、ラクトン環の脱水をもたらす。
【実施例11】
【0076】
実施例11:例示的加水分解プロトコル
本実施例は、例えば図5及び6のような、シンバスタチン及び中間体を製造するための工業的スケールアッププロセスを含む、本発明の例示的プロトコルについて述べる。配列番号4を用いる、ロバスタチンのトリオール酸への酵素的加水分解のためのプロトコル(例えば図5の工程1参照)が達成された。図30は、この例示的ロバスタチン加水分解プロトコルの結果を示している。配列番号4の酵素供給源はミニ発酵装置から得た溶解物であった。本プロトコルは、10Lの発酵(214g)から得られた凍結乾燥物による12gスケール(0.5M)において39時間で99%変換率(24時間で90%)をもたらした。本実験に用いたパラメーターの要旨は以下のとおりである:
触媒装荷 変換率 時間
56%w/w 100% 約4時間
33%w/w 97% 約24時間
22%w/w 97% 約24時間
22%w/w凍結乾燥物装荷で、10L発酵液を使用することにより1kgのロバスタチンが加水分解される。
ロバスタチンからロバスタチン酸、トリオール酸への大規模の酵素的加水分解を、図31に示されているように、DASGIP AG-PRO(商標)バイオリアクターで、定常pH9、500mM基質、7%MeOH、40℃で実施した。ロバスタチンからジオールラクトンの酵素的加水分解のスケールアップした例示的プロトコル(前記は工業的スケールの例示的プロセスであり得る)は、図32の模式図に示されている。この反応は、図33に反応パラメーター(反応スケール、処理、理論的収率、生成物(g)、%収率)の要旨とともに図33に示されている。(a)50gの反応のデータは、図34A(ラクトン化及び濃縮後)及び34B(粗生成物)に要約され、さらに(b)100gの反応のデータは図35A(トリオール酸)及び35B(ラクトン化後)に要約されている。
メチル(Me)4-アセチルシンバスタチンは、図6の工程5に示した反応を用いて酵素によりシンバスタチンに加水分解した。この反応の結果及び結論は以下のとおりである:
*7を超えるpHでの活発な脱離(pH8で13%);
*酵素的加水分解は容易に生じるが可溶性によって制限される;
*ホルメート>アセテート〜クロロアセテート>メトキシアセテート;
*100mM(5%w/v)はpH7で一晩で加水分解される;
*200mMは50℃、10%MeOH中で20時間で84%の変換率;
*200mMは50%w/vの凍結乾燥物で7時間で89%の変換率;
*400mMはトルエンを用いた場合二相性を示す;
*反応は80〜90%まで進行し続いて停止する;
*不溶性シンバスタチンは未反応基質を捕捉する。
これらの反応(300mM(14%w/v)基質、全反応でオーバーヘッド攪拌及び下方では攪拌棒を使用、10%NH4OHによりpH7、50℃)及び最終的変換率を要約すれば:
*270mMアセチルシンバスタチン、13mMホモシンバスタチン、等容積トルエンとして溶媒を使用、最終変換率は88.2%。
*300mMアセチルシンバスタチン、10%メタノール(MeOH)として溶媒を使用、最終変換率は91.3%。
*300mMアセチルシンバスタチン、10%メタノール(MeOH)として溶媒を使用、6時間でトルエンを添加、最終変換率は96.1%。
【実施例12】
【0077】
実施例12:シンバスタチンへのホモジアシル化経路
本実施例は、図38及び図39に示すように、本発明の例示的プロトコル、シンバスタチンの製造のためのホモジアシル化プロセスについて述べる。ある特徴では、本ホモジアシル化プロセスは以下の工程を有する方法を含む:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程;(b)前記トリオール酸からジオールラクトンをラクトン化によって生成する工程;(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位(4'-OH)及び8位(8'-OH)を化学的アシル化によってアシル化して4,8-ジアセチルラクトンを生成する工程;及び(d)前記4'位のアシル基を酵素的加水分解によって選択的に除去し、それによってシンバスタチンを製造する工程。
本発明のホモジアシル化プロセスを用いる利点は以下であろう:
*四工程合成;
*同じ場所でのロバスタチンの酵素的加水分解;
*ただ1つのアシル化剤−位置選択性なし。
本発明のホモジアシル化プロセスをいつ用いるべきかを決定する際に考慮すべき事柄:
*過剰なジメチルブチリルクロリドを使用しなければならない可能性がある;
*過酷な条件−おそらく許容不能なレベルの脱離が発生し得る;
*酵素的加水分解に困難が存在し得る;
*アシル化のための穏やかな条件を使用し得る;
*4'-ジメチルブチレートの除去に問題がある可能性がある。
ある特徴では、本発明のホモジアシル化プロセスは図39に示すように実施される。加水分解は配列番号4を1mMスケールで用いて実施し、シンバスタチン及びシンバスタチン酸が生成された。100mMバイオリアクターを用いた。主としてトリオール酸が生成され、微量のシンバスタチンが存在していた。可溶性に注意する必要があるかもしれない。種々の基質濃度での小規模反応を実施した。2日後の変換率は以下のとおりであった:
図40A及び40Bは、それぞれ1mMホモシンバスタチン及び10mMホモシンバスタチンの反応条件での、配列番号4によるホモシンバスタチンの加水分解、及び生じた反応生成物を示すグラフである。
【実施例13】
【0078】
実施例13:シンバスタチン製造の例示的プロセス
本実施例は、シンバスタチン、シンバスタチン中間体又は等価の化合物を製造する本発明の例示的プロセスについて述べる。この本発明の例示的プロセスは、(i)ロバスタチンエステラーゼによるロバスタチンの加水分解及び後続の“一容器/一工程”ラクトン化/アセチル化(工程1及び2として)、(ii)BF3(Et2O) (A)触媒又はCu(OTf)2(B)触媒を用いる無水ジメチル酪酸による4-アセチルラクとのアシル化(工程3として)、(iii)ロバスタチンエステラーゼによるアセチルシンバスタチンの加水分解(工程4として)を含む。無水ジメチル酪酸/ピリジン/DMAP(C)によるアシル化を比較に含め、この方法の利点を示した。
4-アセチルラクトン(50gスケール):
図19に示すように、4-アセチルラクトンを製造する例示的プロセスは以下を含む:
1.ロバスタチン(50.05g、124mmol)を、磁気撹拌棒及びN2注入口を備えた1Lの3首フラスコに秤量して入れた。2MのNaOH(65mL、130mmol)を添加し、このスラリーを攪拌した。MeOH(10mL)及びBHT(0.25g)を加え、そのスラリーを50℃の水浴中で1時間攪拌した。この時までに、全てのロバスタチンを溶解し粘稠でわずかに黄色の溶液が生じた。この溶液を水(175mL)で希釈し、温度を40℃に調整した。
2.一方、ロバスタチンエステラーゼ(凍結乾燥粗酵素5.0g)を秤量してポリプロピレン遠心ビンに入れ、水(100mL)に懸濁させ室温で30分攪拌した。続いてこの混合物を4℃で15分、10,000rpmで遠心した。上清をロバスタチン酸反応混合物に加えた。遠心ビンをさらに新たな水(150mL)で水洗し、前記を反応混合物に添加した(下記注記1参照)。
3.反応物のpHをpH9.5に調整し、40℃及びpH9.5に、DASGIP AG-PRO(商標)バイオリアクターで、10%のNH4OHの自動添加により維持した。
4.反応混合物のアリコット(25μL)を定期的に取り出し、MeOHで希釈してHPLCによって調べた(下記注記2参照)。26.5時間後には0.5%の未反応ロバスタチン酸が残存していた。反応は43時間後に停止させた。
5.反応混合物を1Lビーカーで800mLに希釈し、+12℃に冷却した。激しく攪拌しながら、pHを6MのHClでpH2.5に下げた。沈殿した固体をN2下でろ過し、水(300mL)で洗浄し、湿ったフィルターケーキを真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(下記注記3参照)。
6.粗トリオール酸フィルターケーキを1Lの3首フラスコ中のCH2Cl2(500mL)に懸濁せせた。前記フラスコは、温度計、添加用漏斗、磁気撹拌棒及びN2注入口を備えていた。このスラリーを氷浴で冷却し、N2下で攪拌した。
7.ジメチルアミノピリジン(2.24g、18.3mmol;0.15当量)を反応混合物に添加した。無水酢酸(35mL、0.37mol;3当量)を前記添加用漏斗に置き、12分かけて反応混合物に滴々と加え、温度は8.5〜9.2℃に維持した。
8.反応混合物のアリコット(25μL)を30分毎に取り出し、MeOHで希釈してHPLCで調べた(下記注記4参照)。
9.30分後、冷却浴を取り除き、反応物を室温で攪拌した(下記注記5参照)。反応はAc2Oの添加後6.5時間で停止させた(下記注記6参照)。反応混合物をセライトパッドでろ過し、前記パッドをCH2Cl2(2x100mL)で洗浄した。一緒にしたろ液を水(200mL)、1.2MのHCl(200mL)及び水(100mL)で洗浄した。
10.有機層をロトヴァップ(rotovap)で濃縮し(250mL除去)、EtOAc(300mL)で希釈した。水(400mL)及び固体のNaHCO3(53g)を前記有機溶液に添加し、混合物を30分攪拌した。有機層を分離させた。水相を水(400mL)で希釈し、EtOAc(150mL)で抽出した。EtOAc抽出物を一緒にし、水(100mL)及び飽和NaCl(50mL)の混合物で洗浄し、続いて飽和NaCl(100mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過して濃縮した(600mLの体積から420mLを除去)。
11.青黄色の濃縮溶液をオーバーヘッド攪拌装置で攪拌し、ヘキサン(200mL)を迅速に添加して濃厚な白色沈殿を生成した。ヘキサンのさらに新たな部分(300mL)を添加し、混合物を氷浴で1時間冷却した。
12.沈殿固体をろ過し、20%冷EtOAc/ヘキサン(80mL)で洗浄し、0.5時間風乾し、続いて真空オーブンで一晩40℃で乾燥させた。
13.母液を乾燥するまで蒸発させた。得られた黄色の油をEtOAc(25mL)に再溶解し、ヘキサン(175mL)を滴下して加えることにより第二の収集を沈殿させた。沈殿させた固体をろ過により収集し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(下記注記7参照)。
【0079】
注記:
1.反応物の全体積は500mLで、0.25Mの基質濃度(10%w/v基質)及び10%w/vの粗酵素装荷に対応する。
2.サンプルは、DADを備えたWaters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.5%AcOHイソクラチック;1mL/分;30℃;238nm)を用いて分析した。溶出の順序は以下のとおりであった:トリオール酸1.4分;ジオールラクトン、1.9分;ロバスタチン酸、3.8分;ロバスタチン、7.3分。
3.この段階でのフィルターケーキ(43.61g)は粗トリオール酸及び沈殿タンパク質から成る。トリオール酸の標準試薬に対するHPLC分析によって、水性ろ液は0.69gのトリオール酸(1.6%)及び0.69gのジオールラクトン(1.8%)を含むことが示された。
4.サンプルは、DADを備えたWaters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.5%AcOHイソクラチック;1mL/分;30℃;238nm)を用いて分析した。溶出の順序は以下のとおりであった:トリオール酸1.4分;ジオールラクトン、1.9分;ジアセテート酸/脱離物、3.6分;4-アセチルラクトン、4.1分;ジアセテート、7.6分。
5.反応混合物は、初めは塊状であったが、激しい攪拌によって数個の主要な塊に分解した。2時間後に反応混合物を超音波処理し、いくつかのより小さな塊に分散し、それははそのまま持続した。粗トリオール酸のフィルターケーキは、溶媒に懸濁する前にすり潰すことが推奨される。最終的な反応混合物はミルク状の白色懸濁液であった。
6.反応停止前のHPLCによって、1.1%のジオールラクトン、3.9%のジアセテート酸/脱離物、及び1.2%のジアセテートの存在が示された。
7.生成物の総収率は下記の表に示されるように算出された:
【0080】
4-アセチルシンバスタチンの合成:
図18Cに示すように、4-アセチルシンバスタチンの製造のための例示的プロセスは以下を含む:
A.三フッ化ホウ素エテレート触媒
1.4-アセチルラクトン(110g、0.3mol)を2Lの2首フラスコ中で一晩真空(0.1torr)下で乾燥させた(下記注記1参照)
2.この反応は湿気の存在に鋭敏であるので、初めに過剰の無水物をアセトニトリルに添加し、一切の残留水を除去した。
3.新しく開封したBF3OEt2を用いるべきである。以前に開封された試薬は穏やかな反応をもたらすか、又は反応すら生じないことがある。
4.CH2Cl2/MeCN比は7:1であった。典型的には前記の比は6:1から9:1の間であった。反応はMeCN中ではより速いが、望ましくない純度プロフィールをもつ生成物が生じる。
5.MeOHは粗生成物が固化する前に添加されるべきである。そうでなければMeOHに再溶解させることが困難である。熱MeOHに固体生成物を溶解すれば分解が発生し、したがって収率が低下した。
6.総固体生成物は110g(78.7%)であった。最後の母液を乾燥するまで蒸発させ、残留物を標準試薬に対してアッセイし、さらに9.02g(6.8%)の生成物が含まれることが示された。さらにほぼ2%の生成物が水性洗浄液に残っていた。
B.Cu(OTf)2/無水物法
1.10.0gの4-アセチルラクトン(10.0g、27.6mmol)を真空下で1時間室温で乾燥させ、続いて無水CH2Cl2(60mL)に溶解し、窒素下で攪拌した。
2.一方、無水MeCN(7.0mL)中のCu(OTf)2(0.5g、5mol%)及び無水2,2-ジメチル酪酸(7.15mL、3.05mmol)の溶液を調製し、封入フラスコ内にて室温で攪拌した。
3.ラクトン溶液を15℃に冷却した。Cu(OTf)2(0.5g、5mol%)及び2,2-ジメチルブチル無水物(7.15mL、3.05mmol)の溶液を注入ポンプを用いて滴々と加えた。反応をHPLCでモニターし、3.0時間内に完了と判定した。
4.反応を水(20mL)で停止し、CH2Cl2(100mL)と飽和NaCl(100mL)で分配した。続いて有機層を、1Mリンゴ酸(50mL)及び飽和NaCl(50mL)の混合物で、その後飽和NaCl(100mL)で10分間攪拌した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し蒸発させて粗生成物を得た(12.8g>100%収量(重量))(下記注記1、2参照)
注記:
1.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(92.5%)、脱離生成物(2.7%)、ビスシンバスタチン(1.7%)、未同定不純物(3.1%)。
2.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィー後に61%で単離された。
C.ピリジン/DMAP法
1.4-アセチルラクトン(2.6g、7.2mmol)を室温で一晩真空下で乾燥させ、続いて無水ピリジン(6.0mL)に窒素下で攪拌しながら室温で溶解させた。1.5mLの無水ピリジン中のDMAP(176mg、0.2当量)の溶液を添加し、この混合物を氷浴中で冷却した。
2.2,2-ジメチルブチリルクロリド(7.72g、8当量)を、注入ポンプを用いて15分にわたって滴下した。この混合物を0℃で約1時間攪拌し、続いて室温で1時間攪拌した。
3.前記反応混合物を質素下で40℃で加熱し、反応をHPLCでモニターした。4-アセチルラクトンが消費された後(2日間)、回転蒸発装置でピリジンを除去した。残留物をEtOAc(20mL)と飽和NaCl(20mL)とで分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し蒸発させて粗生成物を得た(96.5%)(下記注記1、2参照)。
注記:
1.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(79.5%)、脱離生成物(12%)、ビスシンバスタチン(2%)、未同定不純物(6.5%)。
2.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィー後に43%で単離された。4-アセチルシンバスタチンはSiO2クロマトグラフィーに対して限定的安定性を有すると考えられる。
【0081】
4-アセチルシンバスタチンのロバスタチンエステラーゼによる加水分解
図18Dに示されるように、4-アセチルシンバスタチンを製造する例示的プロセスは以下を含む:
1.4-アセチルシンバスタチン(39.69g、86.2mmol)を秤量し、攪拌棒及びpH電極を備えた500mLの3首丸底フラスコに加えた(下記注記1参照)。水(295mL)、MeOH(20mL)及びBHT(0.24g)を添加した。水浴中で50℃で攪拌し、0.5MのNaOHでpH7〜8に調整した。
2.ロバスタチンエステラーゼ(7g)を遠心ビンに秤り入れ、水(150mL)に懸濁した。混合物を60℃で30分攪拌し、続いて氷上で冷却した。続いて混合物を10,000rpmで4℃で125分遠心した。上清の一部(92mL)を反応混合物に添加した。
3.反応物を50℃で攪拌し、DASGIP FEDBATCH-PRO(商標)システムを用い、10%のNH4OHの自動添加によりpH7.5を維持した。
4.反応混合物のアリコット(25μL)を定期的に取り出し、MeOHで希釈してHPLCで調べた(下記注記2参照)。42時間後に変換率は96.8%であった(出発物質に対する生成物のピーク面積の比)。反応は64時間後に停止させた。
5.反応混合物は、ワットマン(Whatman)#1ろ紙を備えた13cmブッフナー漏斗でろ過し、フィルターケーキを水(100mL)で洗浄した。湿ったフィルターケーキを真空オーブンにおいて40℃で一晩乾燥させた(下記注記3参照)。
6.乾燥させたシンバスタチンのフィルターケーキをCH2Cl2(200mL)に懸濁した。この混合物を室温で攪拌して、ゲル様物質を含む粘稠な褐色溶液を得た。セライト(1g)を前記混合物に添加し、攪拌を継続した。続いて混合物を、目の粗い焼結ガラス漏斗上のセライトパッド(10g)でろ過した(注記4)。セライトパッドをトルエン(100mL)で洗浄した。
7.ろ液をロトヴァップ上で濃縮してCH2Cl2を除去した(浴温度20℃)。残留物をトルエン(150mL)で希釈し、室温で攪拌した。ヘキサン(50mL)をゆっくりと滴下して加えた。沈殿は添加が完了する前に開始した。このスラリーを一晩室温で攪拌した。続いて前記スラリーを氷浴で冷却し、さらに新たなヘキサン(50mL)を滴下した。続いて冷スラリーをろ過し、フィルターケーキを25%冷トルエン/ヘキサン(50mL)で洗浄した。フィルターケーキを簡単に風乾し、続いてほぼ30℃で真空下で乾燥させた。
8.第二の反応を同じ規模で同様な条件下で実施した(40.68g、88.3mmol)。これら2つの実験の結果は注記5で表にされている。
【0082】
注記:
1.出発物質及び生成物は両者とも不溶性であるので、効率的な攪拌が必要である。材料はフラスコの壁に付着する傾向があり、反応の程度の分析で潜在的な誤差をもたらす。出発物質をすり潰して粒子サイズを減少させ、さらに湿潤剤の使用が推奨される。
2.サンプルは、Waters1100シリーズHPLCで、Zorbax SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(60〜90%MeCN/0.5%AcOHグラジエント;1mL/分;RT;238nm)を用いて分析した。グラジエント及び溶出順序は以下のとおりであった:
3.この段階でフィルターケーキ(35.28g)は、粗シンバスタチン及びいくらかの酵素関連物質から成っている。シンバスタチンの標準試薬に対するHPLC分析によって、水性ろ液は0.30gのシンバスタチン(1.0%)を含んでいることが示された。
4.可溶性ゲル様物質はセライトパッドの最上部にスラッジを形成することができ、前記はろ液を汚す。
5.上述の2つの実験の結果は以下のとおりである:
【0083】
本発明の多数の実施態様を述べてきた。にもかかわらず、多様な改変が本発明の範囲から外れることなく実施できることは理解されよう。したがって、他の実施態様も以下の請求の範囲内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】下記実施例5で詳細に検討される、4-アセチルラクトンのトリフレート及びBF3エテレート触媒アシル化のための例示的プロトコルの説明図である。
【図2】下記実施例5で詳細に検討される、表3として示した、いくつかのBF3・OEt2触媒アシル化の結果の説明図である。
【図3】下記実施例5で詳細に検討される、12gのアシル化反応の生成物についての沈殿前後の不純度プロフィールを示す、表4による説明である。
【図4】下記実施例5で詳細に検討される、シンバスタチン単離についてのデータを示す、表8による説明である。
【図5】本発明の例示的方法、ロバスタチンからシンバスタチンを合成する四工程ヘテロジアシル化を示す。
【図6】図6A及び6Bは、本発明の例示的方法、ロバスタチンからシンバスタチンを合成する五工程経路(図6A)、及びロバスタチンからシンバスタチンへの変換の要旨(図6B)を示す。
【図7】下記実施例6で詳細に検討される、アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解の例示的プロトコルの結果のHPLC分析を示す。
【図8】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的ラクトン化/アセチル化及びその生成物を示す。
【図9】図9Aは、下記実施例7で詳細に検討される、トリオール酸から4-アセチルラクトンを生成することを含む、本発明の例示的ラクトン化/アセチル化プロトコルを示す。図9Bは、下記実施例5で詳細に検討される、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを生成することを含む、本発明の例示的方法を示す。図9Cは、下記実施例5で詳細に検討される、4-アセチルシンバスタチンのシンバスタチンへの変換を含む、本発明の例示的方法を示す。
【図10】下記実施例7で詳細に検討される、8位の化学的アシル化のための例示的プロトコルを示す。
【図11】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的反応、4-アセチルシンバスタチンの酵素的脱アセチル化を示す。
【図12】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的プロトコルを用いて生成されるシンバスタチンの2つのバッチについてのHPLCトレースを示す。
【図13】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的プロトコルを用いて生成されるシンバスタチンサンプルのための不純度プロフィールを示すHPLC分析を示す。
【図14】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的プロトコル、出発物質としてトリオール酸を用いる一工程ラクトン化/アセチル化の比較を示す表である。
【図15】下記実施例5及び7で詳細に検討される、エステラーゼを用いてロバスタチンをトリオール酸に加水分解することを含む、本発明の例示的反応を示す。
【図16】図16Aは、下記実施例6で詳細に検討される、ロバスタチンからロバスタチン酸を、及びロバスタチンからトリオール酸を製造する例示的方法を示す。図16Bは、下記実施例6で詳細に検討される、トリオール酸からジオールラクトンを製造する例示的方法を示す。図16Cは、下記実施例6で詳細に検討される、ジオールラクトンからアシルラクトンを製造する例示的方法を示す。図16Dは、下記実施例6で詳細に検討される、ラクトン化及びラクトン4位でのアシル化を含む本発明の例示的プロトコルを示す。図16Eは、下記実施例6で詳細に検討される、アシルラクトンからアシルシンバスタチンを製造することを含む本発明の例示的プロトコルを示す。図16Fは、下記実施例6で詳細に検討される、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩及びシンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを製造することを含む本発明の例示的プロトコルを示す。
【図17】図17Aは、下記で詳細に検討される、ルイス酸を用いて、ジオールラクトンからシンバスタチン、4'-アシルラクトン(イソシンバスタチンとも称される)及びホモシンバスタチン(ビスシンバスタチンとも称される)を製造する方法を含む本発明の例示的反応を示す。図17Bは、下記に詳細に検討される、酵素的加水分解によって、シンバスタチン、4'-アシルラクトン(イソシンバスタチンとも称される)及びホモシンバスタチン(ビスシンバスタチンとも称される)からシンバスタチン及びジオールラクトンを製造することを含む本発明の例示的反応を示す。
【図18】図18Aは、下記実施例3で詳細に検討される、4-アセチルジオールラクトンの合成のための方法を含む本発明の例示的反応を示す。図18Bは、下記実施例3で詳細に検討される、4-アセチルラクトンの構造、対応するジアセテートの構造及び脱離生成物を示す。図18Cは、下記実施例4で詳細に検討される、4-アセチル-シンバスタチンの合成を含む本発明の例示的反応を示す。図18Dは、下記実施例4で詳細に検討される、ヒドロラーゼによる4-アセチルシンバスタチンの加水分解を含む本発明の例示的反応を示す。図18Eは、下記実施例2で詳細に検討される、ロバスタチンからトリオール酸への酵素的加水分解を含む本発明の例示的反応を示す。
【図19】下記実施例13で詳細に検討される、4-アセチルラクトンを製造するための例示的方法を示す。
【図20】下記実施例5で詳細に検討される、対応する脱離生成物とともに酸による4-アセチルシンバスタチンのシンバスタチンへの加水分解を示す。
【図21】下記実施例8で詳細に検討される、選択したシンバスタチンサンプルについての不純度プロフィールデータ、HPLCアッセイデータ及び元素分析の結果を示す表である。
【図22】下記実施例9で詳細に検討される、本発明の例示的反応、例えばトリオール酸の対応するジオールラクトン、3-アセチルトリオール酸及び5-アセチルトリオール酸への変換、並びにその後の3,5-ジアセチルトリオール酸、4-アセチルラクトン及び脱離生成物への変換の説明図である。
【図23】下記実施例7で詳細に検討される、配列番号4のエステラーゼによるロバスタチンの酵素的加水分解のための実験の説明図である。
【図24】下記実施例10で詳細に検討される、デザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いたフラクショナル・ファクトリアル・デザインによるロバスタチンの酵素的加水分解の最適化の説明図である。
【図25】下記実施例10で詳細に検討される、ロバスタチン酸の加水分解に影響を与える4つの因子を要約した説明図である。
【図26】下記実施例10で詳細に検討される、デザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いたロバスタチンの加水分解について中心的複合デザインを用いて実施したレスポンス・サーフェス・アナリシス(RSA)の結果を示す。
【図27】下記実施例10で詳細に検討される、配列番号4によるロバスタチンのin situ加水分解の最適化の結果を示す。
【図28】下記実施例10で詳細に検討される、本発明の例示的反応、大規模ロバスタチン加水分解プロトコルを示す。
【図29】下記実施例10で詳細に検討される、配列番号4によって加水分解されたシンバスタチンの4-アシル誘導体を示す。
【図30】下記実施例11で詳細に検討される、配列番号4を用いた本発明の例示的ロバスタチン加水分解プロトコルの結果を示す。
【図31】下記実施例11で詳細に検討される、スケールアッププロトコルにおける、ロバスタチンからトリオール酸への例示的な酵素的加水分解を示す。
【図32】下記実施例11で詳細に検討される、ロバスタチンからジオールラクトンへの酵素的加水分解のスケールアッププロトコルを示す。
【図33】下記実施例11で詳細に検討される、スケールアッププロトコルで用いられるロバスタチンからジオールラクトンの例示的な酵素的加水分解を、反応パラメーターの要旨とともに示す。
【図34】50gの反応のラクトン化及び濃縮後(図34A)及び粗生成物(図34B)のデータの要旨をグラフで示す。
【図35】100gの反応のトリオール酸(図35A)及びラクトン化後(図35B)のデータの要旨をグラフで示す。
【図36】下記実施例11で詳細に検討されるように、4-アセチルラクトンが4-アセチルシンバスタチンにアシル化される、酵素的加水分解反応の10gスケールアップから得られたデータの要旨をグラフで示す。
【図37】下記実施例11で詳細に検討される、本発明の方法で用いられる例示的な化学的アシル化、アシルトリフレートを用いるルイス酸触媒アシル化を示す。
【図38】下記実施例12で詳細に検討される、ホモジアシル化経路によるロバスタチンからシンバスタチンを製造するための例示的方法及び条件を示す。
【図39】下記実施例12で詳細に検討される、ホモジアシル化経路によるロバスタチンからシンバスタチンを製造するための例示的方法及び条件を示す。
【図40】図40A及び40Bは、下記実施例11で詳細に検討されるように、本発明の方法を用い、1mMのホモシンバスタチン及び10mMのホモシンバスタチンの反応条件における、配列番号4によるホモシンバスタチンの加水分解、及び得られた反応生成物をグラフで示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は合成化学及び薬剤化学の分野に関する。ある特徴では、本発明は、シンバスタチン及び種々の中間体並びに関連化合物を製造する化学的合成方法及び酵素化学的合成方法を提供する。ある特徴では、ヒドロラーゼのような酵素、例えばエステラーゼが本発明の方法で用いられる。
【背景技術】
【0002】
シンバスタチン(Simvastatin)は強力な抗高コレステロール血症剤である。前記はゾコール(ZOCOR(商標)(Merck))の名称で市販されている。シンバスタチン、メバスタチン(Mevastatin)、ロバスタチン(Lovastatin)及びプラバスタチン(Pravastatin)は、酵素HMG-CoAレダクターゼ(人体におけるコレステロール生成のための生合成経路における速度制御酵素)の阻害剤として用いられるヘキサヒドロナフタレン誘導体である。経口的に摂取された後、不活性なラクトンであるシンバスタチンは加水分解されて、対応するβ-ヒドロキシ酸の形態になる。シンバスタチンは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼの阻害物質である。この酵素は、コレステロールの生合成における初期の律速段階である、HMG-CoAのメバロネートへの変換を触媒する。
メバスタチン、ロバスタチン及びプラバスタチンは天然の発酵生成物であり、ヘキサヒドロナフタレン環系のC-8に2-メチルブチレート側鎖を有する。シンバスタチンは、アスペルギルス・テルレウス(Aspergillus terreus)の発酵生成物から合成的に得ることができる。
C-8に2,2-ジメチルブチレート側鎖を有する化合物(シンバスタチンを含む)は、それらの2-メチルブチレート対応物(counterparts)よりも優れたHMG-CoAレダクターゼの阻害物質であり得る。したがって、2,2-ジメチルブチレート誘導体は、アテローム性硬化症、高脂血症、家族性高コレステロール血症及び同様な疾患の治療により有望であろう。しかしながら、シンバスタチンを含むこれらの誘導体は天然に存在せず、合成的に産生する必要がある。結果として、より強力なHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるシンバスタチンの市場への導入は、シンバスタチン製造のための効率的かつ高収率の方法に対する要望を高めた。
【発明の開示】
【0003】
(発明の概要)
1の観点では、本発明は、以下のことを含む新規な方法を提供する:(i)本発明の酵素(例えば例示的には配列番号4に示す配列を有する酵素(配列番号3によってコードされる))を用いて、穏やかな条件下でロバスタチンの側鎖を除去すること、(ii)同じ酵素を用いて、最終工程でエステル保護基を選択的に除去すること、及び(iii)シンバスタチンの側鎖を導入するために新規な条件を適用すること。
本発明は、以下の工程を含む、シンバスタチン製造を目的とする新規な四工程の方法を提供する:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素で加水分解して(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;(b)化学的及び/又は酵素的なラクトン化及びアシル化によって一工程で4-アシルラクトンを生成する工程(ラクトン環の4位(4'-OH)をアシル化することを含み、この場合、前記ラクトン環は下記に記載するようにR-基でアシル化される);(c)化学的及び/又は酵素的アシル化によって4-アセチルラクトンの8位(8'-OH)をアシル化し、4-アシルシンバスタチンを生成する工程;及び(d)化学的及び/又は酵素的加水分解によって(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)4'位のアシル基を選択的に除去し、それによってシンバスタチンを製造する工程。
ある観点では、本発明のシンバスタチン製造のための四工程法は図5に示すスキームを含む。したがって、ある観点では、本発明は、図5に概略するように四工程で実施される、ロバスタチンからシンバスタチンへの酵素化学的変換を提供する。
【0004】
また別の観点では、本発明の四工程シンバスタチン製造方法(例えば図5に概略する方法)は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%若しくは90%又はそれ以上のロバスタチンからシンバスタチンへの全体的収率を提供する。例示的プロトコルや、どこで収率低下が生じるか、またどこで方法の改良が影響を与えうるかを特定する研究は、例えば下記の実施例5、6、7及び8で検討される。
ある観点では、本発明は、図5に示すように、ロバスタチンからシンバスタチンを合成するための四工程経路を提供し、その合成スキームは以下の工程を含む:
工程1:ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素(例えば本明細書に記載するヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼ)を用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸及び/又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程。例えば、(S)-2-メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解で用いることができる例示的なヒドロラーゼ酵素は、配列番号4のエステラーゼ酵素(配列番号3によってコードされる)、配列番号6のエステラーゼ酵素(配列番号5によってコードされる)及び配列番号2のエステラーゼ酵素(配列番号1によってコードされる)、配列番号4のエステラーゼ酵素(配列番号3によってコードされる)である。
工程2:前記トリオール酸をアシル化剤の存在下で攪拌し、4-アシルラクトンを生成する工程。
工程3:8位のヒドロキシルのアシル化工程;化学的に実施することができ、又は本明細書に記載するヒドロラーゼ若しくは市販のヒドロラーゼを用いて酵素的に実施することができる。
工程4:化学的又は酵素的に(本明細書に記載のヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)又は市販のヒドロラーゼを用いる酵素的加水分解)、4'位のアシル保護基を選択的に除去してシンバスタチンを得る工程(例えば図6の工程5を参照されたい。また別の観点では、メチル(Me)基は任意のアルキル又は同等なR-基でもよいことに留意されたい)。ある観点では、配列番号4のエステラーゼ(例えば配列番号3によってコードされる)を用いて、ラクトンの4'位のアシル基の選択的加水分解が触媒される。所望する場合又は必要な場合には、ある観点では、この工程はまたシンバスタチンのアンモニウム塩の生成、及びシンバスタチンの再結晶化、それに続く再ラクトン化を含む。これによって所望の純度をもつシンバスタチンが提供される。
【0005】
あるいは、工程2は、酵素(例えばヒドロラーゼ又はエステラーゼ)及び適切なアシル化剤の存在下でトリオール酸を攪拌することによって実施できる。
ある観点では、本発明は、図6Aに示す方法を含む、シンバスタチンの製造方法を提供する。本発明は、図15A又は図16Aに示す方法を含む、ロバスタチンからトリオール酸を製造する方法を提供する。本発明は、図16Aに示す方法を含む、ロバスタチンからロバスタチン酸を製造する方法を提供する。本発明は、図16Aに示す方法を含む、ロバスタチン酸からトリオール酸を製造する方法を提供する。本発明は、図8又は図16Bに示す方法を含む、トリオール酸からジオールラクトンを製造する方法を提供する。本発明は、図16Cに示す方法を含む、ジオールラクトンからアシルラクトンを酵素的に製造する方法を提供する。本発明は、図16Dに示す方法を含む、トリオールラクトンからアシルラクトンを製造する方法を提供する。本発明は、図9Aに示す方法を含む、トリオール酸から4-アセチルラクトンを製造する方法を提供する。本発明は、図16Eに示す方法を含む、アシルラクトンからアシルシンバスタチンを製造する方法を提供する。本発明は、図9Bに示す方法を含む、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを製造する方法を提供する。ある観点では、本発明は、三フッ化ホウ素を触媒として用い、例えば図9Bに示す条件又はその変型を用いて、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを製造する化学的方法を提供する。
本発明は、図9C又は図11に示す方法を含む、4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンを製造する方法を提供する。本発明は、図16Fに示す方法を含む、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩を製造する方法を提供する。本発明は、図16Fに示す方法を含む、シンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを製造する方法を提供する。本発明は、図38に示す、ホモジアシル化経路を介してロバスタチンからシンバスタチンを製造する方法を提供する。
【0006】
これらの工程の1つ、いくつか、又は全ての酵素的加水分解で用いることができる例示的酵素には、配列番号4の酵素(例えば配列番号3によってコードされる)、配列番号6の酵素(例えば配列番号5によってコードされる)及び配列番号2の酵素(例えば配列番号1によってコードされる)、配列番号4の酵素(例えば配列番号3によってコードされる)、又は配列番号2、配列番号4若しくは配列番号6と50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を有する酵素が含まれる。
本発明は、以下の工程を有する五工程のヘテロジアシル化法を含むシンバスタチン製造方法を提供する:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素により加水分解して(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)、トリオール酸を生成する工程;(b)トリオール酸を加熱して又は酸の存在下で攪拌して、ジオールラクトンを生成する工程;(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位のヒドロキシル(4'-OH)を、前記4'-OHの酵素による位置選択的(regioselective)アシル化によって保護して4-アシルラクトンを生成する工程;(d)前記4-アシルラクトンの8位のヒドロキシル(8'-OH)を、前記8位の化学的及び/又は酵素的な位置選択的アシル化によってアシル化して、4-アシルシンバスタチンを生成する工程;及び(e)前記4'位の前記アシル保護基を選択的に化学的又は酵素的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
また別の観点では、本発明の方法は、少なくとも2つの容器で、すなわち二段階(2-pot)、三段階(3-pot)などのプロセスで実施することができる。本発明の方法は、任意の形態の容器、例えばキャピラリーアレイ(例えばギガマトリックス(GIGAMATRIX(商標)、Diversa Corporation, San Diego, CA)で実施することができる。
【0007】
本発明は、以下の工程を有する方法を含む、シンバスタチン製造のためのホモジアシル化プロセスを提供する:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して(例えばエステラーゼ活性を有するポリペプチドを用いて)、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;(b)前記トリオール酸からラクトン化によってジオールラクトンを生成する工程;(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位(4'-OH)及び8位(8'-OH)を化学的又は酵素的アシル化によってアシル化して、4,8-ジアシルラクトンを生成する工程;及び(d)前記4'位のアシル基を酵素的加水分解によって選択的に除去し、それによってシンバスタチンを製造する。
本発明の他の観点では、別の保護基を4位及び8位につけることによって、他の合成物をジオールラクトンから合成することができる。例えば、この場合、前記R-基は以下の(i)〜(v)から成る群から選択される:(i)-H、ホルミル誘導体;(ii))直鎖又は分枝鎖のC1-nアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど(ある観点ではnは1から20の間の整数である);(iii)置換アルキル基、例えばクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェニルアセチル、4-オキソペンチル(レブリネート);(iv)フェニル及び置換フェニル、例えばフェニル、p-ニトロフェニル;及び(v)R'O-基(カーボネート保護基を形成する)、例示すればtBuOCO、PhOCO、PhCH2OCOであるが、ただしこれらに限定されず、ある観点では、R'O-基はR'が(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のいずれかの基であるカーボネート保護基を形成する。本発明のこれらの選択的な合成反応では、保護基(R-基)が位置選択的に化学的又は酵素的に除去され、所望の最終生成物が製造される。これらのR-基又は同等なR-基は、本発明のいずれかの方法のいずれかの工程で“保護基”として用いることができる。例えば、これらのR-基又は同等なR-基は、図5、図6A、図9、図10、図11、図16C、図16D、図16E又は図16Fで示した本発明の例示的プロセス又は本発明の等価なプロセスにおいて、R-基として用いられる。
【0008】
ある観点では、本発明は、図6に示すように、ロバスタチンからシンバスタチンを合成する五工程経路を提供し、その合成スキームは以下の工程を含む:
工程1:ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素(例えば本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼ)を用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸及び/又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程。例えば、(S)-2-メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解で用いることができる例示的なヒドロラーゼ酵素は、配列番号4のエステラーゼ酵素(配列番号3によってコードされる)、配列番号6のエステラーゼ酵素(配列番号5によってコードされる)及び配列番号2のエステラーゼ酵素(配列番号1によってコードされる)である。
工程2:前記トリオール酸を加熱するか、又は酸の存在下で攪拌して、ジオールラクトンを生成する工程。
工程3:本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用い、酵素による位置選択的アシル化によって、ラクトン環の4'-OHを保護する工程。例えば、図6の工程3を参照されたい。また別の観点では、メチル(Me)基は任意のアルキル又は同等なR-基(例えばメトキシ、アルコキシ、フェニルなど)でもよいことに留意されたい。
工程4:8位のヒドロキシルをアシル化する工程(化学的に、又は本明細書記載のヒドロラーゼ若しくは市販のヒドロラーゼを用いて酵素的に実施することができる)。
工程5:4'位のアシル保護基の選択的な除去を、化学的又は酵素的(本明細書記載のヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)又は市販のヒドロラーゼを用いる酵素的加水分解)に行って、シンバスタチンを得る工程(例えば図6の工程5を参照されたい。また別の観点では、メチル(Me)基は任意のアルキル又は同等なR-基でもよいことに留意されたい)。ある観点では、配列番号4のエステラーゼ(例えば配列番号3によってコードされる)を用いて、ラクトンの4'位のアシル基の選択的加水分解を触媒する。所望される場合、又は必要な場合には、ある観点では、この工程は、シンバスタチンのアンモニウム塩の生成、シンバスタチンの再結晶化、それに続く再ラクトン化も含む。
【0009】
本発明はまた、ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素、例えば本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いて、ロバスタチンからロバスタチン酸を生成する方法を提供する(下記実施例6の工程1を参照されたい)。本発明はまた、ロバスタチン酸の加水分解を触媒することができる酵素、例えば本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸及び/又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程を含む、トリオール酸の生成方法を提供する。本発明は、本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いることによって、ラクトンのヒドロキシル、例えばラクトン環の(例えば図6に示すジオールラクトンの)4'-OHを位置選択的アシル化によって保護する方法を提供する。本発明は、4-アシルラクトンの8位のヒドロキシルを(図6に示すように)アシル化する方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載のヒドロラーゼ又は市販のヒドロラーゼを用いて、化学的及び/又は酵素的に実施することができる。本発明は、ラクトンのアシル基、例えばラクトンの保護アシル基(例えば図6に示すラクトンの4'位の保護アシル基)を、化学的又は酵素的に選択的に除去する方法を提供する。本発明はまた、これらの方法の2つ又は3つ以上、又は全てを含む方法、例えば酵素化学的にロバスタチン、トリオール酸、ジオールラクトン、4-アセチルラクトン又は4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンを製造する方法を提供する。これらの方法を実施するための本発明の例示的なプロトコルについては、例えば下記の実施例5、6、7及び8を参照されたい。
ある観点では、ジオールラクトンは、ジメチル酪酸の誘導体及びルイス酸触媒を用いて8位で位置選択的にアシル化される。
【0010】
ある観点では、本発明の方法は、いくつかの状況ではシンバスタチンからロバスタチンの分離は非効率的である場合があり、1%未満のロバスタチンを含むシンバスタチンを生じ得る。また別の観点では、本発明の方法は、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%若しくはそれ以上又はそれよりも高いか又は前記と等しい(=)全収率で、シンバスタチンを産生する。ある観点では、本発明の方法は、ロバスタチンの最初の酵素的加水分解が約20%(w/v)で行われて、シンバスタチンを産生する。
ある観点では、本発明は、シンバスタチン合成のためのヘテロジアシル化経路である、図5に示すスキーム(“スキーム1”)又はその変型を含むシンバスタチンの生成方法を提供する。スキーム1(図5)のまた別の観点では、工程1は化学的又は酵素的加水分解を含むことができ、工程2は化学的又は酵素的なラクトン化及びアシル化を含むことができ、工程3は化学的又は酵素的アシル化を含むことができ、工程4は化学的又は酵素的加水分解又はそれらの任意の組合せを含むことができる。ある観点では、これら加水分解反応の少なくとも1つは位置選択的である。
本発明のいずれかの方法のまた別の観点では、少なくとも1つの工程は1つの反応容器で実施される。本発明のいずれかの方法のまた別の観点では、少なくとも1つの工程は細胞抽出物を用いて実施される。本発明のいずれかの方法のまた別の観点では、少なくとも1つの工程は全細胞(whole cell)で実施される。そのような細胞はいずれかの供給源由来のもの、例えば植物細胞、細菌細胞、菌類細胞、哺乳動物細胞又は酵母細胞であり得る。
【0011】
本発明のいずれかの方法のある観点では、シンバスタチンのアンモニウム塩が生成される。ある観点では、本方法はさらにシンバスタチンの再結晶化を含む。ある観点では、前記方法は、所望の純度を有するシンバスタチンを提供するために再ラクトン化を含む。
本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号1と少なくとも55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ又はリパーゼ)又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号3と少なくとも53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号5と少なくとも56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼまたは酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。
【0012】
本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応は、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有するヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)または酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される。
本発明は、本発明の方法を実施するための試薬類とヒドロラーゼ酵素とを含むキットを提供する。ある観点では、前記キットは、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有する少なくとも1つのヒドロラーゼ又は酵素的に活性なそのフラグメントを含む。ある観点では、前記キットは本発明の方法の実施のための説明書を含む。
本発明の1つ又は2つ以上の実施態様の詳細は以下の記載及び添付の図面で説明される。本発明の他の特徴、目的及び利点は下記の記載及び図面、並びに請求の範囲から明白であろう。
本明細書で引用される全ての刊行物、特許、特許出願、GenBank配列及びATCC寄託物は参照により本明細書に含まれる。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、シンバスタチン(例えばZOCOR(商標))及びその中間体を製造する、新規な化学的及び生化学的合成プロセスを提供する。これらの方法は、効率が高く、また対費用効果が高い。
本発明の種々の観点では、本方法は、種々の酵素(ヒドロラーゼ、例えばアシラーゼ及びエステラーゼを含む)を用いて生体触媒的に反応を触媒する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、ロバスタチンをロバスタチン酸へ酵素的に加水分解する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ロバスタチン酸又はその塩をトリオール酸又はその塩へ酵素的に加水分解する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、ジオールラクトンをアシルラクトンへ酵素的にアシル化する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、アシルラクトンをアシルシンバスタチンへ酵素的にアシル化する方法を提供する。ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼを用いて、ラクトン環を加水分解する方法を提供する。
本発明は、in vitro又はin vivo技術(例えば全細胞プロトコル、例えば発酵又は他の生体触媒的プロセス)を介して、シンバスタチン及び種々の中間体を製造する方法を含む。
また別の観点では、本発明は、図5又は図6A及び6Bに示したように、ロバスタチンをシンバスタチンへ変換する新規な方法を提供する。
ある観点では、加水分解を介してロバスタチンから生成されたジオールラクトンは、ジメチル酪酸誘導体及びルイス酸触媒を用いて、8位で位置選択的にアシル化される。ジオールラクトンは、本明細書に記載した酵素化学的プロセスを用いてロバスタチンから生成することができる。
【0014】
ある観点では、本発明は、図17Aに図示されたようにルイス酸を用いて、ジオールラクトンからシンバスタチン、4'-アシルシンバスタチン及びホモシンバスタチンを生成することを含むプロセスを提供する。本発明者らは、ルイス酸触媒の存在下でジオールラクトンをカルボン酸誘導体で処理することによって、優先的な8位のアシル化がもたらされることを見出した。過剰量の酢酸ビニルが金属トリフレートの存在下で用いられる場合、8-アセチル誘導体がほぼ例外なく低変換率で生成される。今日までの結果から、室温にてジオールラクトンをジメチル酪酸無水物とジクロロメタン中のBi(OTf)3又はCu(OTF)2との混合物で処理することによって急激な反応が生じることが示されており、前記反応ではシンバスタチン:4'-アシルラクトン比が>4:1である。
ある観点では、シンバスタチンの単離及び精製は結晶化による。ある観点では、本発明は、ルイス酸触媒及び/又はアシル化薬剤をスクリーニングして、シンバスタチンの収率を最大にし副生成物を最小限にするための別の反応条件を提供する方法を提供する。シンバスタチンの収率を最大にし、副生成物を最小限にすることは、結晶化プロトコルで有用である。シンバスタチンの単離/精製に結晶化を用いることによって、ロバスタチンからシンバスタチンを得る例示的二工程プロセスがもたらされる。
ある観点では、本発明は、図17Bに図示されたように酵素的加水分解によって、シンバスタチン、4'-アシルラクトンシンバスタチン及びホモシンバスタチンからシンバスタチン及びジオールラクトンを生成することを含むプロセスを提供する。
【0015】
ある観点では、イソシンバスタチン及びホモシンバスタチンを結晶化によって取り除くことができるレベルまで減少させることができない場合、最終的な酵素的加水分解工程を用いて生成物の回収が促進される。ある観点では、シンバスタチン、イソシンバスタチン及びホモシンバスタチンの混合物をエステラーゼ(例えば配列番号4に示す配列を有する酵素(配列番号3によってコードされる))で処理することによって、4'-位のアシル基の位置選択的加水分解がもたらされ、シンバスタチンとジオールラクトンの混合物が得られる。ある観点では、シンバスタチンは結晶化によって分離される。
あるいは、過剰量の酸無水物の使用によって、反応をシンバスタチン及びホモシンバスタチンの生成へ向かって押し進めることができる。これによってイソシンバスタチンの量を最小限にすることができる。それらのような混合物の酵素的加水分解によって、シンバスタチンの生成及び容易な単離がもたらされる。
ルイス酸の存在下でジオールラクトンを位置選択的にアシル化することによってシンバスタチンを製造するある局面では、ジオールラクトンは、触媒としての5mol%のCu(OTf)2の存在下で、クロロメタン中のジメチル酪酸無水物(0.5当量(eq))で室温にて処理される。HPLC分析は、ジオールラクトンが10分以内に50%変換されることを示した。シンバスタチン(8位のアシル化):イソシンバスタチン(4位のアシル化)の比は4:1であり、約4%のホモシンバスタチンも生成された。
【0016】
ある観点では、本発明は、図5の新規な四工程プロセス、又は図6Aの五工程プロセスに示される工程、又はそれらの組合せを含む方法を提供する。また別の観点では、本発明は、以下の工程の少なくとも1つの工程、数工程、又は全工程を含む方法を提供する:
工程1:ヒドロラーゼ酵素、例えば本明細書に記載の酵素(例えば配列番号4の酵素(配列番号3によってコードされる))又は市販のヒドロラーゼを用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する。
工程2:トリオール酸を、例えば図5の工程2のように一工程で又は図6Aの工程2及び3のように二工程で、4-アセチルラクトンに変換する(ある観点では、トリオール酸は加熱されるか、又は酸の存在下において攪拌されて、ジオールラクトンを生成する)。
工程3:ジオールラクトンのラクトン環の4'-OHを、例えば本明細書に記載の酵素又は市販のヒドロラーゼを用い、位置選択的な酵素的アシル化によって保護して、4-アセチルラクトンを生成する。
工程4:8位のヒドロキシルをアシル化する(化学的に又は酵素的に、例えば本明細書記載の酵素若しくは市販のヒドロラーゼを用いて、実施することができる)。
工程5:4'位のアシル保護基を、化学的又は酵素的に選択的に除去して、シンバスタチンを得る。必要な場合には、シンバスタチンのアンモニウム塩を生成し、さらにシンバスタチンを再結晶化し、続いて再ラクトン化することによって、所望の純度をもつシンバスタチンが提供される。
ある観点では、上述の工程1に関して、本発明は、図16Aに図示されたように酵素的又は化学的な加水分解によってロバスタチンからロバスタチン酸を生成することを含む方法を提供する。本発明は、図16Aに図示されたように酵素的又は化学的な加水分解によってロバスタチン酸からトリオール酸又はトリオールの塩を生成することを含む方法を提供する。
ロバスタチンとシンバスタチンの分離が困難なこと、及びシンバスタチンAPI中の許容され得るロバスタチンレベルが低いことから、メチルブチレート側鎖の完全な又は実質的に完全な(また別の観点では>99%、>98%、>97%又は>96%)除去がプロセスに必須であろう。報告されているロバスタチンの加水分解のための手法は、完全な反応のために高温及び長い反応時間を用いることを要求する。
【0017】
ある観点では、ロバスタチンは、ヒドロラーゼ酵素(例えば配列番号2、配列番号4又は配列番号6に示される配列を有する酵素(それぞれ、配列番号1、配列番号3又は配列番号5によってコードされる))を用いて穏やかな条件下で加水分解される。これにより、ラクトン環の加水分解及び8位の側鎖の完全な除去がもたらされる。配列番号1、配列番号3及び配列番号5に示す配列を有する酵素(配列番号2、配列番号4、配列番号6)は、メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解に特に有効であることが示された。配列番号4に示された配列を有する酵素がサブクローニングされ、大腸菌(E. coli)などの宿主で発現された。
ロバスタチンは、酵素活性に必要な水性条件下で難溶性を示し得る。したがって、また別の観点では、ロバスタチンの懸濁水のpHを12より高くして、ラクトン環の迅速な加水分解を実施する。これによって、より溶解性の高いロバスタチン酸の塩がin situ生成される。ある観点では、次に、その反応混合物のpHを酵素反応に適した範囲まで下方に再調整して、酵素を添加する。
酵素による加水分解の条件はまた、発酵ブロスから直接抽出されたロバスタチン及びロバスタチン酸の混合物に用いることもできる。あるいは、酵素を発酵ブロス及び単離したトリオール酸に直接添加してもよい。
ある観点では、加水分解の後、反応混合物が酸性化される。トリオール酸は抽出及び/又はろ過によって単離され、次の工程で直接使用することができる。あるいは、トリオール酸は、適切な結晶化/沈殿工程の後で固体として単離される。
ある観点では、上述の工程2に関して、本発明は図16Bに図示される工程を含む方法を提供する。ある観点では、トリオール酸を適切な溶媒中で加熱し、通常の手段によって水を除去することによりラクトン形態へ平衡を移動させることによって再ラクトン化される。あるいは、適切な酸の存在下で攪拌することによってラクトン環が閉じられる。
【0018】
ある観点では、上述の工程3に関して、本発明は、所望の活性及び選択性を有する酵素、例えば、エステラーゼなどのヒドロラーゼを用いて、4'-位のヒドロキシル基を酵素的にアシル化することを含む方法を提供する。ある観点では、ヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ)を用いてジオールラクトンがアシル化される。アシル基の性質を変化させて適切な特性を付与することができる(例えば除去を容易にするアセテート、結晶性を強化するベンゾエート、水溶性を強化するホルメート)。
【0019】
本明細書に記載した例示的方法(例えば図5及び6A、図38)のまた別の観点では、工程3(上記)、工程4及び5(下記)に示す反応および試薬類を含み、アシルは任意の適切なR-基で置換することができる(すなわち“保護”基は任意のR-基でよい)。ここで、“R”は以下のものでもよい:(i)-H、ホルミル誘導体;(ii)直鎖又は分枝鎖のC1-nアルキル;(iii)置換アルキル基、例えばクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェニルアセチル、4-オキソペンチル(レブリネート);(iv)フェニル及び置換フェニル、例えばフェニル、p-ニトロフェニル;及び(v)カーボネート保護基を形成するR'O-基、例示すればtBuOCO、PhOCO、PhCH2OCOであるが、ただしこれらに限定されない。
ある観点では、R'O-基はカーボネート保護基を形成し、さらにR'は(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のいずれかの基である。ある観点では、Rが長鎖アルキル基であるときは、長鎖アルキルエステルに対して反応性が強化された酵素が用いられる。Rが長鎖アルキル基であるときは、可溶性が問題となり得る。ある観点では、Rが(i)導入の容易さ、(ii)加水分解のための良好な酵素活性、(iii)可溶性、(iv)試薬類のコストの理由で有利であり得る、アセテートである。
【0020】
ある観点では、上述の工程4に関して、本発明は、選択的な実施態様において、図16Eに図示されるような工程及び試薬類を含む方法を提供する。ある観点では、ジメチル酪酸誘導体と適切なアシル化触媒との組合せを用いて(酵素的アシル化及び化学的アシル化により)、所望のシンバスタチン側鎖が導入される。ジメチル酪酸無水物/ルイス酸(例えばBi(トリフレート)3、Cu(トリフレート)2)の組合せが、室温(RT)での迅速な反応をもたらす。
ある観点では、本発明は、適切なルイス酸及び反応条件(温度、溶媒などを含む)をスクリーニングする方法を提供する。アシル化にとって最適な種々のプロトコル又は試薬類に関する条件は、慣例的なスクリーニングを用いて決定できる。
ある観点では、酵素が触媒するアシルラクトンのアシル化を用いて、非常に穏やかな条件下で(例えばある観点ではRT(例えば約40℃)で有機溶媒を使用)、副生成物を生じることなく8位にジメチルブチレート基が導入される。
本発明は、本発明の方法で所望の活性を示す種々の酵素をスクリーニングする方法を提供する。酵素は、本発明の多様なプロトコルにおける有効性について、慣例的な方法を用いてスクリーニングすることができる。
ある観点では、上述の工程5に関して、本発明は、選択的な実施態様において、図16Fに図示される工程及び試薬類を含む方法を提供する。
ある観点では、最終工程は4'-位のアシル基の選択的除去を必要とする。4'-位のアシル基は、たとえわずかな塩基性の条件下であっても、塩基が触媒する脱離に対して非常に感受性であり得る。結果として、酵素的加水分解が、前記アシル基の位置選択的脱離にもっとも都合のよい方法であった。ロバスタチンを加水分解する同じ酵素(上記の工程1の配列番号4の酵素(配列番号3によってコードされる))はまた、ラクトンの4'-位のアシル基の選択的加水分解のための効果的な触媒であることが示された。pH7で実施される場合、前記酵素による加水分解によって実質的に無傷のラクトン環をもつシンバスタチンが得られる。
【0021】
<一般的方法>
本発明は、シンバスタチン及び種々の中間体を製造する新規な生化学的方法を提供する。本発明の方法で用いられる出発化合物及び中間化合物は多様な工程及び方法論を用いて合成できることは、当業者には理解されよう。前記工程及び方法論は学術文献及び特許文献、例えば以下に詳細に記載されている:Organic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY; Venuti (1989) Pharm Res. 6:867-873。本発明は、当技術分野で公知の任意の方法又はプロトコル(前記は学術文献及び特許文献に詳細に記載されている)と併用して実施することができる。
本明細書に提供される一般的方法の検討は単に例示を目的とするものである。他の種々の方法及び実施態様が本開示から当業者には明白であろう。
【0022】
(酵素)
本発明のいずれかの方法におけるある観点では、少なくとも1つの酵素反応がヒドロラーゼ活性(例えばエステラーゼ活性)を有するポリペプチドによって達成される。前記ポリペプチドは、例えば、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有するヒドロラーゼ、又はその酵素的に活性なフラグメントである。ヒドロラーゼ活性を有する前記ポリペプチドは、触媒部位を含むペプチド、触媒性抗体などであってもよい。
配列番号4に示す配列を有するポリペプチドは、β-ラクタマーゼとの相同性を有するファミリーVIIのエステラーゼであり、SXXKモチーフを共有する。したがって、本発明の方法の1つの工程、数工程又は全工程で用いることができる酵素は、エステラーゼ活性を有し、配列番号4及びSXXKモチーフと少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有することができる。
配列番号2又は配列番号6に示す配列を有するポリペプチドはフェルロイルエステラーゼである。したがって、本発明の方法の1つの工程、数工程又は全工程で用いることができる酵素は、フェルロイルエステラーゼ活性を有することができる。
【0023】
本発明の方法で用いられる酵素は、任意の合成方法又は遺伝子組換え方法によって産生することができるが、天然の供給源から単離されたものか、又はそれらの組合せでもよい。本発明の方法を実施するために用いられる酵素をコードする核酸は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、ベクター、ウイルス又はそれらのハイブリッドのいずれであってもよく、種々の供給源から単離して、遺伝子工学的な操作、増幅及び/又は発現/組換え生成することができる。これらの核酸から生成された組換えポリペプチドを、個々に単離するか又はクローニングして、所望の活性について試験することができる。いずれの組換え体発現系(細菌、哺乳動物、酵母、昆虫又は植物細胞発現系を含む)も用いることができる。本発明の方法を実施するために用いられる核酸は、増幅法を用いて生成することができる。前記方法もまた周知であり、例えば次のものが挙げられる:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば以下を参照されたい:PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, ed. Innis, Academic Press, NY (1990); PCR Strategies (1995) ed. Innis, Academic Press, Inc., NY)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば以下を参照されたい:Wu (1989) Genomics 4:560; Landegren (1988) Science 241:1077; Barringer (1990) Gene 89:117)、転写増幅(例えば以下を参照されたい:Kwoh (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173)、及び自己持続性配列複製(self-sustained sequence replication)(例えば以下を参照されたい:Guatelli (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874)、Qβレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば以下を参照されたい:Burg (1996) Mol. Cell. Probes 10:257-271)、自動Qβレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば以下を参照されたい:Burg (1996) Mol. Cell. Probes 10:257-271)、及び他のRNAポリメラーゼ仲介技術(例えば以下を参照されたい:NASBA, Cangene, Mississauga, Ontario)。
【0024】
あるいは、これら核酸は周知の化学的合成技術によってin vitroで合成することができる。前記技術は例えば以下に記載されている:Adams (1983) J. Am. Chem. Soc. 105:661; Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444; Frenkel (1995) Free Radic. Biol. Med. 19:373-380; Blommers (1994) Biochemistry 33:7886-7896; Narang (1979) Meth. Enzymol. 68:90; Brown (1979) Meth. Enzymol. 68:109; Beaucage (1981) Tetra. Lett. 22:1859; US Patent No. 4,458,066。
核酸操作のための技術、例えばサブクローニング、プローブの標識(例えば、Klenowポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅を用いるランダムプライマー標識)、配列決定、ハイブリダイゼーションなどについては、学術文献および特許文献に詳細に記載されている。例えば以下を参照されたい:Sambrook, ed., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol1-3, Cold Spring Harbor Laboratory (1989); Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997); Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization with Nucleic Acids Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)。本発明の方法の実施に用いられる核酸を入手および操作するために有用なまた別の手段は、ゲノムサンプルからのクローニング、および所望の場合には、例えばゲノムクローン若しくはcDNAクローンから単離または増幅した挿入物のスクリーニングおよび再クローニングである。本発明の方法で用いられる核酸の供給源には、例えば哺乳動物人工染色体(MAC)(例えば米国特許5,721,118号、同6,025,155号を参照されたい)、ヒト人工染色体(Rosenfeld (1997) Nat. Genet. 15:333-335)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、P1人工染色体(Woon (1998) Genomics 50:306-316)、P1誘導ベクター(PAC)(Kern (1997) Biotechniques 23:120-124)、コスミド、リコンビナントウイルス、ファージ又はプラスミドに収納されているゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーが含まれる。
【0025】
本発明の核酸及びポリペプチドは、当業者に周知の多数くの方法のいずれかによって検出、確認及び定量することができる。核酸及びそれに対応するタンパク質の両者を検出する一般的な方法には、生化学的分析方法(例えば分光光度法、ラジオグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィーなど)、及び多様な免疫学的方法(例えば液体若しくはゲル沈澱反応、(シングル又はダブル)免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイなど)が含まれる。核酸及びポリペプチドの検出は、周知の方法、例えばサザン分析、ノーザン分析、ゲル電気泳動、PCR、放射能標識、シンチレーション計数、及びアフィニティークロマトグラフィーによって実施できる。
本発明の例示的方法の種々の工程では、エステラーゼ活性を有するポリペプチド(例えばエステラーゼ)が用いられる。いずれかのエステラーゼ、又は酵素(例えばヒドロラーゼ)又は同様な活性を有する他のポリペプチド(例えば触媒性抗体又は活性部位を含むペプチド)を用いることができる。
本発明の方法で使用する酵素(例えばロバスタチン、ロバスタチン酸、4-アセチルシンバスタチン又はシンバスタチンを加水分解する酵素)をスクリーニングするため、任意の方法を用いることができる。これらの方法は本技術分野で周知である。例えば、ある実施態様では、本発明の方法で用いることができる酵素を決定するために用いられるスクリーニング条件の一つの例示的なセットは、以下のものの使用を含む:2.5mMの基質、100mMのリン酸緩衝液/共溶媒(pH7からpH8)(30℃で48時間)、とともに以下の組成物:(i)MTBE/緩衝液中のロバスタチン又はシンバスタチン、(ii)トルエン/緩衝液中のロバスタチン又はシンバスタチン、(iii)10%メタノール/緩衝液中のロバスタチン酸又はシンバスタチン酸。スクリーニングの結果は1mMの基質で確認した。
【0026】
この例示的アッセイを用いて、配列番号2、配列番号4及び配列番号6に示す配列を有する3つの酵素はロバスタチン又はロバスタチン酸の加水分解のために活性を有することが決定された。配列番号4に示す配列を有する酵素のみがシンバスタチンの加水分解に対して活性を示した。配列番号4及び配列番号2を、10%MeOH/緩衝液(pH9)中の25mM、50mM及び100mMのロバスタチン酸でさらに判定した(便宜上より溶解性の高いロバスタチン酸を基質として用いた)。配列番号4は数多くの事例で高い基質変換率を示し、溶液収率は12〜60%のトリオール酸であった。
配列番号4、配列番号2、配列番号6に示す配列を有する酵素(例えば、それぞれ配列番号3、配列番号1及び配列番号5によってコードされる)をコードする配列を含むゲノムクローンを、標準条件下(同じ総タンパク質濃度、又は蛍光基質(メチルウンベリフェリルブチレート、MUB)に対して正規化した同じ酵素活性)でロバスタチン酸の加水分解について比較した。配列番号4を含む配列を有する酵素が、前記反応条件下で最良の活性を示した。
配列番号4及び配列番号2に示す配列を有する酵素(例えば、それぞれ例示的な配列番号3及び配列番号1によってコードされる)をコードする配列を含むゲノムクローンをサブクローニングした。配列番号2は、分泌/局在化に必要であると考えられるリーダー配列を有し、リーダー配列無しで又はリーダー配列とともにサブクローニングした。これらのサブクローンをMUB及びロバスタチン酸に対してアッセイした。リーダー配列を有する配列番号2をコードするサブクローンだけがMUBに対して活性を示した。さらにまた、これらサブクローンのいずれも、ロバスタチン酸に対しては活性を示さなかった。
配列番号4をコードする核酸を含むゲノムクローンを用いたトランスポゾン挿入実験によって、ロバスタチンエステラーゼ活性に必要な遺伝子を同定した。この遺伝子は予想された43kDの分子量を有するエステラーゼをコードしており、さらにその43kDのバンドを未変性ゲルから単離してロバスタチン酸に対する活性を確認すること及びMS分析によって、その物質の実体(identity)を確認した。配列番号4をコードする核酸を含む大腸菌(E. coli)構築物はロバスタチンを加水分解することができ、350mM基質で35℃、21時間でトリオール酸への変換率93〜98%を示した。
【0027】
<キャピラリーアレイ>
本発明の方法、及び/又は本発明の方法で用いることができる酵素を決定するために用いられるスクリーニングプロトコルは、全体として、又は部分的にキャピラリーアレイ、例えばGIGAMATRIX(登録商標)(Diversa Corporation, San Diego, CA)によって実施することができる(例えばWO0138583を参照されたい)。試薬類又はポリペプチド(例えば酵素)をアレイ(キャピラリーアレイを含む)に固定化又は適用(apply)することができる。キャピラリーアレイは、試薬、触媒(例えば酵素)及び生成物の保持及びスクリーニングのためのまた別の系を提供する。そのような装置はさらに、アレイの隣接するキャピラリー間に配置される間隙材(interstitial material)、及び間質材の内部に形成される1つ又は2つ以上の基準となる特徴(reference indicia)を含むことができる。高処理スクリーニング装置もまた応用することができ、本発明の方法の実施に用いることができる(例えば米国特許出願20020001809号を参照されたい)。
【0028】
<全細胞に基づく方法>
本発明の方法は、全細胞環境で全体的に又は部分的に実施することができる。本発明はまた1の細胞の全細胞進化又は全細胞操作を提供して、本発明の方法で用いることができる新規な表現型を有する新規な細胞株、例えば本発明の方法で使用する1つ、いくつか又は全ての酵素を含む細胞株を開発することもできる。このようなことは、細胞の遺伝的構成を改変することによって実施することができる。この場合、遺伝的構成は、例えば本発明の方法で用いられる酵素のコード配列といった核酸を細胞に添加することによって改変され得る(例えばWO0229032;WO0196551を参照されたい)。
“全細胞プロセス”のための宿主細胞は、当業者に公知のいずれかの細胞でよい。そのような細胞には原核細胞、真核細胞、例えば細菌細胞、菌類細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は植物細胞が含まれる。
本発明の方法の中間体若しくは生成物又は新規な表現型の生成を検出するために、細胞(又は遺伝的に改変された細胞)の少なくとも1つの代謝パラメーターを、“リアルタイム”又は“オンライン”時間枠でメタボリックフラックス分析(MFA)によってモニターする。ある観点では、複数の細胞、例えば細胞培養を“リアルタイム”又は“オンライン”でモニターする。ある観点では、複数の代謝パラメーターを“リアルタイム”又は“オンライン”でモニターする。
代謝フラックス分析(MFA)は公知の生化学的枠組みに基づいている。線形独立代謝行列は、細胞内代謝物について質量保存の法則及び擬似定常状態仮説(pseudo-steady state hypothesis、PSSH)に基づいて構築される。本発明の方法の実施では、以下を含む代謝ネットワークが確立される:
・全ての経路(パスウェイ)の基質、生成物および中間代謝物の実体;
・前記経路の代謝物を変換する全ての化学反応の実体、前記経路の反応の化学量論;
・前記反応を触媒する全ての酵素の実体、前記酵素反応のカイネティクス;
・経路の成分間の調節的相互反応、例えばアロステリック相互反応、酵素-酵素相互反応など;
・酵素の細胞内区画局在性または前記酵素の分子レベルを超えるその他の一切の機構;及び
・代謝物、酵素若しくはエフェクター分子の何らかの濃度勾配の存在、又はそれらの移動に対する拡散障壁。
ある株について前記代謝ネットワークがいったん確立されたら、行列概念による数学的提示を導入し、オンラインメタボロームデータが利用可能ならば細胞内代謝フラックスを概算することができる。代謝表現型は細胞内の全代謝ネットワークの変化に依存する。代謝表現型は、環境条件、遺伝的調節、発育状態および遺伝子型などに対応する経路利用の変化にも依存する。本発明の方法のある観点では、オンラインMFA計算の後で、細胞の動的挙動、表現型及びその他の特性が経路利用を調査することによって解析される。
細胞培養物の生理的状態の制御は、前記経路解析の後で可能になるであろう。本発明の方法は、基質供給、温度、誘導物質の使用などをどのように変化させるかを決定することによって発酵をどのように操作するかを決定することに役立ち、細胞の生理的状態を所望の方向に進ませるように制御することができる。本発明の方法の実施に際して、MFAの結果はまた、トランスクリプトームデータおよびプロテオームデータと比較して、代謝エンジニアリングまたは遺伝子シャッフリングなどのための実験およびプロトコルを設計することができる。代謝または増殖のいずれの局面もモニターすることができる。
【0029】
(mRNA転写物発現のモニタリング)
本発明のある観点では、表現型の操作は、細胞内でのmRNA転写物の発現の増加若しくは減少、又は新規転写物の生成を含む。この発現の増加又は低下は、蛍光ポリペプチド、例えば本発明の方法で用いられる酵素を含むキメラタンパク質の使用によって追跡することができる。mRNA転写物(または伝達信号(message))もまた、本技術分野で公知の任意の方法(ノーザンブロット、定量的増幅反応、アレイへのハイブリダイゼーションなどなどを含む)によって検出および定量することができる。定量的増幅反応は、例えば定量的PCR(例えば定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、すなわちRT-PCRを含む);定量的リアルタイムRT-PCR、すなわち“リアルタイムカイネティックRT-PCR”を含む(例えば以下を参照されたい:Kreuzer (2000) Br. J. Haematol. 114:313-318; Xia (2001) Transplantation 72:907-914)。
本発明のある観点では、操作表現型は、相同遺伝子の発現をノックアウトすることによって作出される。前記遺伝子のコード配列又は1つ若しくは2つ以上の転写制御エレメント(例えばプロモータまたはエンハンサー)をノックアウトすることができる。したがって転写物の発現は完全に除去されるか、または単に減少させることができる。
本発明のある観点では、操作表現型は、相同遺伝子の発現の増加を含む。これは、負の制御エレメント(cis-またはtrans-で作用する転写調節エレメントを含む)のノックアウト、または正の制御エレメントの変異誘導によって実施できる。細胞の1若しくは2以上又は全ての転写物を、その細胞の転写物を含むサンプル又は細胞の転写物を表す核酸若しくは細胞の転写物と相補的な核酸を含むサンプルのハイブリダイゼーションによって、例えば、アレイ上に固定された核酸とのハイブリダイゼーションによって、測定することができる。
【0030】
(ポリペプチド、ペプチドおよびアミノ酸の発現のモニタリング)
本発明のある観点では、操作表現型は、細胞内でのポリペプチドの発現の増加若しくは減少、又は新規なポリペプチドの生成を含む。この発現の増加または減少は、蛍光ポリペプチド(例えば本発明の方法で用いられる酵素を含むキメラタンパク質)を使用することによって追跡することができる。ポリペプチド、試薬及び最終生成物(例えばシンバスタチン)はまた、本技術分野で公知の任意の方法(例えば核磁気共鳴(NMR)、分光光度法、ラジオグラフィー(タンパク質放射能標識)、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速性能クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィー、多様な免疫学的方法、例えば免疫沈澱、免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ゲル電気泳動(例えばSDS-PAGE)、抗体による染色、蛍光活性化セルソーター(FACS)、熱分解質量分析法、フーリエ変換赤外線分光分析、ラマン分光分析、GC−MS、並びにLC-エレクトロスプレー質量分析及びcap-LC-タンデム-エレクトロスプレー質量分析などを含む)によって検出および定量することができる。新規な生物活性はまた、米国特許第6,057,103号に記載された方法またはその変法を用いてスクリーニングすることもできる。細胞のポリペプチドはタンパク質アレイを用いて測定することができる。
【0031】
<配列同一性の程度の決定>
本発明のいずれかの方法のある観点では、プロセスの少なくとも1つの工程が、配列番号1、配列番号3及び/又は配列番号5と少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ又はアシラーゼ)又は酵素的に活性なそのフラグメント(あるいは市販のヒドロラーゼ酵素)によって実施される。本発明のいずれかの方法のある観点では、少なくとも1つの酵素反応が、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有するヒドロラーゼ(例えばエステラーゼ又はアシラーゼ)、又はその酵素的に活性なフラグメント(あるいは市販のヒドロラーゼ酵素)によって実施される。
酵素活性は、公知のプロトコルを用いる慣例的なスクリーニング、又は本明細書に記載した本発明の方法によって決定することができる。例えば酵素的活性は、本明細書に記載したように、ポリペプチド又はペプチドがラクトン環を加水分解することができるか否か、又はジオールラクトンを酵素的にアシル化することができるか否かを試験することによって決定することができる。
【0032】
タンパク質および/または核酸配列の相同性は、本技術分野で公知の多様な配列比較アルゴリズムおよびプログラムのいずれかを用いて評価することができる。そのようなアルゴリズムおよびプログラムには、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALWが含まれるが、ただしこれらに限定されない(例えば以下を参照されたい:Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(8):2444-2448, 1988; Altschul et al., J. Mol. Biol. 215(3):403-410, 1990; Thompson et al., Nucleic Acids Res. 22(2):4673-4680, 1994; Higgins et al., Methods Enzymol. 266:383-402, 1996; Altschul et al., J. Mol. Biol. 215(3):403-410, 1990; Altschul et al., Nature Genetics 3:266-272, 1993)。
相同性または同一性は、しばしば配列分析ソフト(例えばジネティクスコンピュータグループ(Universty of Wisconsin Bitechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705)の配列分析ソフトウェアパッケージ)を用いて測定される。そのようなソフトは、種々の欠失、置換および他の改変に対して相同性の範囲を割り当てることによって適合する類似の配列を見つける。2つまたは3つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関して“相同性”および“同一性”という用語は、比較ウィンドウまたは指定の領域上で、任意の数の配列比較アルゴリズムを使用するかまたは手動アラインメント及び目視精査による測定にしたがって最大一致を求めて比較およびアラインメントを実施したとき、同じであるかまたは特定のパーセンテージのアミノ酸残基またはヌクレオチドが同じである2つまたは3つ以上の配列を指す。
配列比較の場合、典型的には一方の配列が参照配列として機能し、前記に対してテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いるとき、テスト配列および参照配列はコンピュータに入力され、部分配列同格物が必要な場合に指定され、さらに配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。規定値プログラムパラメーターを用いることができるが、また別のパラメーターを指定することもできる。続いて配列比較アルゴリズムは、前記のプログラムパラメーターを基に参照配列に対するテスト配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0033】
本明細書で用いられる“比較ウィンドウ”は、任意数の連続残基セグメントに対する参照を含む。例えば本発明のまた別の観点では、本発明の例示的なポリペプチドまたは核酸配列の20から完全長の間のいずれかの範囲の連続残基が、同じ数の連続した箇所をもつ参照配列と前記2つの配列を最適にアラインメントした後で比較される。参照配列が本発明の例示的なポリペプチドまたは核酸配列と必要な配列同一性を有するならば、例えば50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号6に対して有するならば、さらに前記配列がヒドロラーゼであるか又はヒドロラーゼをコードするならば、前記配列は本発明の方法少なくとも1つの工程で用いることができる。また別の実施態様では、約20から600、約50から200、および約100から150の範囲の部分配列が、同じ数の連続した箇所をもつ参照配列と前記2つの配列を最適にアラインメントした後で比較される。
比較のために配列をアラインメントする方法は本技術分野では周知である。配列比較の最適アラインメントは、例えばSmith & Watermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482 (1981))によって、Needleman & Wunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443 (1970))によって、Pearson & Lipmanの類似性検索方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988))によって、前記アルゴリズムのコンピュータによる実施によって(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、または手動アラインメントと目視精査によって実施できる。相同性または同一性決定のための他のアルゴリズムには、例えば、BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information)の他に、ALIGN、AMAS(Analysis of Multiply Aligned Sequences)、AMPS(Protein Multiple Sequence Alignment)、ASSET(Aligned Segment Statistical Evaluation Tool)、BANDS、BESTSCOR、BIOSCAN(Biological Sequence Comparative Analysis Node)、BLIMPS(BLocks IMProved Searcher)、FASTA、Intervals & Points、BMB、CLUSTALV、CLUSTALW、CONSENSUS、LCONSENSUS、WCONSENSUS、Smith-Watermanアルゴリズム、DARWIN、ラスベガスアルゴリズム、FNAT(Forced Nucleotide Alignment Tool)、フレームアライン、フレームサーチ、DYNAMIC、FILTER、FSAP(Fristensky Sequence Analysis Package)、GAP(Global Alignment Program)、GENAL、GIBBS、GenQuest、ISSC(Sensitive Sequence Comparison)、LALIGN(Local Sequence Alignment)、LCP(Local Content Program)、MACAW(Multiple Alignment Construction & Analysis Workbench)、MAP(Multiple Alignment Program)、MBLKP、MBLKN、PIMA(Pattern-Induced Multi-Sequence Alignment)、SAGA(Sequence Alignment by Genetic Algorithm)およびWHAT-IFが含まれる。前記のようなアラインメントプログラムはまたゲノムデータベースのスクリーニングに用いられ、実質的に同一の配列をもつポリヌクレオチド配列を同定することができる。いくつかの機能的情報の注釈をもつゲノム情報を含むデータベースが種々の機関で維持されており、インターネットでアクセスすることができる。
【0034】
BLAST、BLAST2.0及びBLAST2.2.2アルゴリズムもまた本発明の実施に用いられる。前記アルゴリズムは例えば以下に記載されている:Altschul (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402; Altschul (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410。BLAST分析を実施するソフトは、National Center for Biotechnology Informationから公開されている。このアルゴリズムは、クエリー配列内の長さがWの短いワードを特定することによって高スコアをもつ配列対(HSP)をまず初めに特定することを必要とする。前記は、データベース配列中の同じ長さを持つワードとアラインメントを実施したとき、一致するかまたは何らかの正の値をもつ閾値スコアTの条件を満たす。Tは近傍ワードスコア閾値と称される(Altschul (1990)上掲書)。これらの最初の近傍ワードヒットはそれらを含むより長いHSPを見つけるための検索開始のシードとして機能する。前記ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加する限り各配列の両方向に沿って伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列についてはパラメーターM(一致残基対のための報酬(reawrd)スコア、常に>0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアが計算される。各方向のワードヒットの伸長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ下降したとき;累積スコアが、1つまたは2つ以上の負のスコアを与える残基アラインメントの累積のために0またはそれ以下になったとき;またはどちらかの配列の末端に達したとき。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは前記アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、規定値として11のワード長、10の期待値(E)、M=5、N=-4および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、3のワード長および10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を用いる。BLASTアルゴリズムはまた2つの配列間の類似性の統計的分析を実施する(例えば以下を参照されたい:Karlin & Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性測定の1つは最小合計確率(P(N))であり、前記は2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然によって生じる確率を示す。例えば、テスト核酸と参照核酸の比較で最小合計確率が約0.2未満、好ましくは約0.01未満、もっとも好ましくは約0.001未満であるならば、前記核酸は参照配列と類似であると考えられる。ある観点では、タンパク質および核酸配列相同性はベーシック=ローカル=アラインメント=サーチ=ツール(Basic Local Alignment Search Tool, “BLAST”)を用いて評価される。例えば、5つの特別なBLASTプログラムを用いて以下のタスクを実施することができる:(1)BLASTPおよびBLAST3はアミノ酸の審査配列をタンパク質配列データベースと比較する;(2)BLASTNはヌクレオチドの審査配列をヌクレオチド配列データベースと比較する;(3)BLASTXは審査ヌクレオチド配列(その両方の鎖)の概念的6フレーム翻訳生成物をタンパク質配列データベースと比較する;(4)TBLASTNは審査タンパク質配列(両方の鎖)を全ての6つの読み枠で翻訳されるヌクレオチド配列データベースと比較する;さらに(5)TBLASTXはヌクレオチド審査配列の6枠翻訳をヌクレオチド配列データベースの6枠翻訳と比較する。BLASTプログラムは類似のセグメントを特定することによって相同な配列を特定する。前記セグメントは本明細書では審査アミノ酸または核酸配列とテスト配列間の“高スコアセグメントペア”と称され、好ましくはタンパク質または核酸配列データベースから得られる。高スコアセグメントペアは好ましくは、スコアリングマトリックス(その多くは本技術分野で公知である)によって特定される(すなわちアラインメントが実施される)。好ましくは、使用されるスコアリングマトリックスはBLOSUM62マトリックスである(Gonnet et al., Science 256:1443-1445 (1992); Henikoff and Henikoff, Proteins 17:49-61 (1993))。好ましさは劣るが、PAMまたはPAM250もまた用いることができる(例えば以下を参照されたい:Schwartz and Dayhoff, eds., 1978, Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation)。
【0035】
本発明のある観点では、NCBI BLAST 2.2.2プログラムが用いられ、デフォルトオプションはblastpである。BLAST 2.2.2プログラムには約38の設定オプションがある。本発明のこの例示的な観点では、デフォルトのフィルタリング設定を除いて、全てのデフォルト値が用いられ(すなわち全てのパラメーターは、OFFに設定されているフィルタリングを除いてデフォルトに設定され)、フィルタリングを無効にする“-FF”設定が用いられる。デフォルトのフィルタリングはしばしば、配列の長さが短いためにKarlin-Altschulバイオレーション(violation)を生じる。
本発明のこの例示的な観点で用いられるデフォルト値には以下が含まれる:
“低複雑度用フィルター:ON
ワードサイズ:3
マトリックス:Blosum62
ギャップコスト:有り:11
エクステンション:1”
他のデフォルト値は以下のとおりである:低複雑度用フィルターはOFF、タンパク質のためのワードサイズは3、BLOSUM62マトリックス、ギャップ存在のペナルティーは-11、及びギャップ伸長のペナルティーは-1。例示的なNCBI BLAST2.2.2プログラム設定は、デフォルトで0に設定する“-W”オプションを有する。これは、もし設定されなければ、タンパク質で3、ヌクレオチドで11のワードサイズがデフォルトであることを意味する。
本発明を以下の実施例を参照にしてさらに詳述するが、このような実施例は本発明を制限するものではないことは理解されよう。
【実施例1】
【0036】
実施例1:シンバスタチンの酵素化学的製造
以下の実施例は、本発明の例示的プロトコル、例えばシンバスタチンの酵素化学的製造について述べる。
ロバスタチンの酵素による加水分解:配列番号4(配列番号3によってコードされる)に示す配列を有する酵素を、7〜10%MeOH/緩衝液中の0.1から0.5Mの濃度のロバスタチン又はロバスタチン酸で評価した(前記反応は塩基の自動的添加によってpH9〜9.5に維持された)。例えば、配列番号4の酵素の凍結乾燥調製物(溶解細胞の遠心上清)を用いる500mLスケールの0.5Mロバスタチン(14mg/mLの総タンパク質を含む)では、48時間後に完全な基質の変換が観察された。
前記反応混合物を酸性化し(pH2)、沈殿物を遠心によって収集し、乾燥させた。ろ液をiPrOAcで抽出し有機抽出物を乾燥させたフィルターケーキに添加した。得られた懸濁液をラクトン化が完了するまで、ディーン-スターク装置で加熱して還流させた。生成溶液をセライトパッドでろ過し、ろ液を飽和NaHCO3で洗浄した。生成iPrOAc溶液を濃縮し(x0.5)、ヘキサンで希釈して0℃に冷却した。沈殿固体をろ過し、風乾してジオールラクトンを得た(63g、単離収率79.5%;さらに10.3gの生成物が種々の洗浄液及び母液から同定された)。生成物は1%未満のロバスタチンを含んでいた。
ジオールラクトンの酵素的アシル化:ジオールラクトン(25mM)、酢酸ビニル(250mM)及びカンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)リパーゼB(33mg)のTBME(1mL)中の混合物をRTで振盪した。44時間後にHPLCによって60%の変換率を有するモノアセテートの生成が示された。
アセチルシンバスタチンの製造:4-アセチルラクトンを真空下一晩室温で乾燥させ、窒素中に保存し、続いて窒素下において室温で無水塩化メチレンに溶解した(1g:2.5〜3mL比)。一方、Cu(OTf)2(5mol%)を最小量のアセトニトリルに室温で溶解し、続いて1.05〜1.2当量の無水ジメチル酪酸を前記溶液に添加し、室温で30分から1時間攪拌した。このCu(OTf)2/無水物溶液を窒素下において室温で攪拌しながら、4-アセチルラクトン溶液にシリンジで移した。反応が完了したとき(HPLCでモニターして)、水を添加して反応を停止させ、飽和NaHCO3で洗浄した。単離した有機層をNa2SO4上で乾燥させた。ろ過し蒸発させて粗4-アセチルシンバスタチンを得た(>99%)。
アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解:3.22gのアセチルシンバスタチン(最終濃度350mM)、2mLのMeOH、100μLの4Mトリス、9.9mLの水、8mLのエステラーゼ(配列番号4(配列番号3によってコードされる))、水に125mg/mLの凍結乾燥溶解物。上からの撹拌及びマグネチックスターラーバーを用いて反応を25mL容器で実施した。定常pH条件をDasGip Stirrer-PRO(商標)システムによって維持した。pH7は10%NH4OHの添加によって維持した。変換率が約75%に達したとき、4mLのトルエンを添加して材料を可溶化した。反応を一晩進行させ、この時点で溶媒(トルエン又は塩化メチレン)をさらに添加し、全ての不溶性材料が溶解されることを確認した。最終反応組成物:シンバスタチン酸4.7%、シンバスタチン90.9%、アセチルシンバスタチン0.9%、シンバスタチンの仮定的脱離生成物3.5%。最終変換率95.6%。
【実施例2】
【0037】
実施例2:ロバスタチンエステラーゼアッセイ
ある観点では、本発明は、ヒドロラーゼ酵素、例えば本発明の酵素(例えば配列番号4(配列番号3によってコードされる))を用いて、ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程を含む方法を提供する。ある観点では、本発明は、ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してシンバスタチンを生成する工程を含む方法を提供する。
以下の実施例は、本発明の方法の実施に用いることができる、例示的なロバスタチンエステラーゼアッセイについて述べる。例えば、前記例示的アッセイは、ヒドロラーゼ酵素(例えばエステラーゼ)が本発明の方法の実施に用いることができるか否かを決定するために用いることができる。
(a)細胞溶解(アッセイスケール):
氷冷溶解溶液(9サンプルにとって充分量)をB-PER(4.5μL)(Pierce, #78248)、リゾチーム(200μL)、(Sigma, L-6876;ストック溶液10mg/mL)及びDNアーゼ I(40μL)(Sigma, DN-25;ストック溶液)から調製した。
一方、50μL培養を950μLの水にボルテックス攪拌で再懸濁し、16,000×gで15分、4℃で遠心した。得られた細胞ペレットをピペットで500μLの溶解溶液に再懸濁した。活性の分析を進める前に、サンプルを氷上で45分インキュベートした。
(b)総タンパク質の定量:
タンパク質の定量は、ブラッドフォード法を用い任意のクーマシー色素によるアッセイで実施することができる。この事例で用いられたキットはクーマシー・プラス・プロテインアッセイキット(Pierce, #23236)であった。前記は製造元のガイドライン(Pierceから入手できる、Doc#0229)にしたがって用いた。
対象とするタンパク質溶液を、同時に測定する既知のタンパク質濃度をもつ標準物(アルブミン)の直線範囲内に希釈した。いったんタンパク質濃度が判明したら、0.1mgの総タンパク質を合理的にピペット操作することができるように(すなわち2〜20μLの範囲内)、適切な希釈を計算した。
(c)酵素活性:メチルウンベリフェリルブチレート(MUB)加水分解:
0.1μgの総タンパク質のために必要な容積を、96ウェルプレートの50mMトリス塩酸緩衝液(pH9)(緩衝液の種類/pHは融通がきく)、25μLに加えた。一方、4mMのMUBストック(10mLのDMSO中に9.8mg)を作製し、400μLのアリコットに小分けし、−20℃に保存した。前記ストックを200μMの作業濃度に希釈した(7.6mL(10mM)のHEPES緩衝液(pH7.0)中に400μL)。25μLのサンプルに25μLの作業MUB溶液を、蛍光プレート読取装置(SPECTRAMAX GEMINI XS:?ex=360nm;?em=465nm)で300秒間カイネティクスを読み取る直前に添加した。作業溶液は、分解が起きるまで数日間4℃で保存できる。各アッセイ前にDMSOストックのアリコットを融解して新鮮な作業溶液を作製するのが好ましい。
配列番号4によるロバスタチンの加水分解(100gスケール):
ロバスタチンのトリオール酸への酵素的加水分解の工程を含む本発明の例示的反応は図18Eに例示されている。
1.ロバスタチン(10x10g、0.25mol)及び水(13x10mL)をゆっくりと一部分ずつ交互に、急速に攪拌されているオーバーヘッドパドルスターラーを取り付けた1Lの3つ口フラスコ内のMeOH(35mL、最終容積7%)及び6MのNaOH(43mL、0.26mol)の混合物に添加した。
2.均質な混合物が得られたとき、前記混合物を35℃でpHが8に低下するまで(約2時間)攪拌した。この状態で、ロバスタチンはロバスタチン酸に変換されていた。
3.一方、凍結乾燥酵素(22.64g)に水を加えて再構成した(最終体積180mL)。4Mトリス(4mL)及び再構成した酵素溶液を前記ロバスタチン酸溶液に添加した。pH制御を開始する前に、水(108mL)を添加して体積を50mLにした。
4.NH4OH(30%)を用い、DASGIP AG-PRO(商標)バイオリアクターで反応を制御し、 pHを9.5に維持した。反応物を48時間攪拌し(下記注記1)、さらに35℃に維持し、アリコット(10μLをMeOHの990μL中で反応を停止)を定期的に採取し、反応の進行をHPLCでモニターした(下記注記2)。
5.反応は、4Lビーカーに移して水(1L)で希釈することによって、停止させた。混合物のpHは6MのHClで調整した。pH約4.4で、混合物は、白色の沈殿固体として非常に粘稠になり、攪拌速度を高めて混合物の“ゲル化”を防いだ。合計120mLの6MのHClを用いて混合物のpHを2.5に調整し、さらに0.5時間攪拌した。
6.得られたスラリーを21cmのブッフナー漏斗上のワットマン#1ろ紙でろ過し、湿ったフィルターケーキを水(0.5L)で洗浄した。前記湿ったフィルターケーキを1時間風乾し、続いて4x600mL凍結乾燥フラスコに移し、凍結乾燥装置で48時間乾燥させて灰色の粉末(98.6g)を得た(下記注記3)。
7.ろ液を三等分し、それらを1回分(500mL)のEtOAcで抽出した。第一の抽出では分離は容易であったが、第二及び第三の抽出分は乳濁液を生成し、前記は飽和食塩(100mL)で処理した後でさえも明瞭には分離されなかった。EtOAc抽出物を飽和NaCl(100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)ろ過した。ろ液をN2下で攪拌し、さらにEtOAc(5mL)中のMeSO3Hの溶液(0.2mL、3.1mol;最終濃度約7mM)を、約5分かけて滴下した。4.5時間後に、反応溶液を飽和NaHCO3(200mL)、水(100mL)及び飽和NaCl(100mL)で洗浄した。EtOAc層を約50mLまで回転蒸発装置で濃縮し、ヘキサン(200mL)を滴々とゆっくり添加することによりジオールラクトンを沈殿させた。沈殿した固体をろ過により収集し、乾燥させた(3.36g、純度81.3%)。母液にはさらに0.26gが残留していた。
8.総収率は94.9%であることが決定した(下記注記4参照)。
注記:
1.HPLCによって、100gスケールの反応は22時間後にほぼ97%完了したが、完全な加水分解を担保するためにしばしばもっと長い攪拌が許容されることが示された。
2.サンプルは、DADを備えたWaters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.1%H3PO4イソクラチック;1mL/分;30℃;238nm)を用いて分析した。
3.この段階でのフィルターケーキは粗トリオール酸及び沈殿タンパク質から成る。
4.生成物の総収率は下記の表に示すように算出した:
#内部標準のトルイル酸に対して1H NMRにより分析
*標準試薬に対してHPLCにより分析
【0038】
配列番号4によるロバスタチンの加水分解(150gスケール)
1.ロバスタチン(150g、0.37mol)及び水(300mL)をゆっくりと一部ずつ交互に、急速に攪拌されている、オーバーヘッドパドルスターラーを取り付けた1Lの3つ口フラスコ内のMeOH(52.5mL)及び50%w/wのNaOH(30mL、0.57mol)の混合物に添加した。反応物を室温で一晩攪拌し、その透明な混合物を続いて濃塩酸(ほぼ25mL)を用いてpH約7〜8に酸性化した(下記注記1)。
2.配列番号4(17g)を水(50mL)で再構成し、前記反応物に添加した。水(300mL)をさらに追加し反応物の体積を合計750mLとした。
3.30%のNH4OHを用い、DASGIP AG FEDBATCH-pro(商標)バイオリアクターで反応を制御し、 pHを9.5に維持した。反応物を攪拌して35℃に維持し、アリコット(10μLをMeOHの990μL中で反応を停止)を定期的に採取し、反応の進行をHPLCでモニターした(下記注記2)。
4.86.3時間後に、HPLCはほぼ1%のロバスタチン酸の残留を示し、反応を終了した。反応混合物を4Lビーカーに移し、水(1L)で希釈し、激しく攪拌した。6MのHCl(160mL)で混合物をpH2.5まで酸性化し、さらに室温で1.5時間攪拌した。
5.スラリーを19cmのブッフナーロート上のワットマン#1ろ紙でろ過し、湿ったフィルターケーキを水(0.5L)で洗浄した。混合物は容易にろ過されてクリーム色のフィルターケーキ及び黄金色のろ液を生じた。湿ったフィルターケーキをほぼ1時間風乾し、続いて4x600mL凍結乾燥フラスコに移し、凍結乾燥装置で乾燥させて灰色の粉末(154.8g)を得た(下記注記3)。
6.ろ液を三等分し、それらを1回分(600mL)のEtOAcで抽出した。EtOAc抽出物を飽和NaCl(100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)ろ過し、約250mLに濃縮した。ろ液をN2下で攪拌し、EtOAc(4mL)中のMeSO3Hの溶液(0.2mL、3.1mol;最終濃度約15mM)を、約5分かけて滴下して加えた。70分後に、反応溶液を飽和NaHCO3(200mL)及び飽和NaCl(50mL)で洗浄した。EtOAc溶液を一晩静置し、デカントし、約120mLまで回転蒸発装置で濃縮した。ヘキサン(200mL)をゆっくり滴下しながら添加することによりジオールラクトンを沈殿させた。沈殿した固体をろ過し乾燥させた(3.22g、純度92.3%)。母液にはさらに0.47gが残留していた。
7.総収率は98.9%であると決定された(下記注記4参照)。
生成物の総収率は下記の表に示すように算出した:
#内部標準のトルイル酸に対して1H NMRにより分析
*標準試薬に対してHPLCにより分析
【実施例3】
【0039】
実施例3:4-アセチルジオールラクトンの合成
本発明は、図18Aに例示するように、4-アセチルジオールラクトンの合成方法を提供する。
A.トリオール酸の直接アシル化(20gスケール)
1.粗トリオール酸(25.82g、59.1mmol)(下記注記1)を乾燥した500mLの丸底フラスコにN2下で加え、続いて乾燥CH2Cl2(200mL)を添加した。スラリー混合物をN2下の室温で磁石により攪拌した。DMAP(1.08g、8.8mmol;15mol%)を添加し、続いてシリンジポンプで無水酢酸(15.8mL、総量2.8当量)を8.5時間かけてゆっくりと添加した。更に新たなDMAP(0.36g、2.9mmol)を7.75時間で添加した(下記注記2)。
2.反応の進行はHPLCで詳細にモニターした(下記注記3)。
3.水(5mL)を11時間後に添加して反応を停止させ、混合物を処理まで−20℃で保存した。混合物をセライトパッドでろ過して不溶物を除去し、セライトパッドをCH2Cl2で洗浄した。続いて、ろ液を5%塩酸(100mL)、H2O(50mL)、飽和NaHCO3(3x100mL)及び飽和NaCl(100mL)で洗浄し、乾燥させて(NaHCO3)、ろ過した。ろ液を続いて濃縮し(約150mLを除去した)、EtOAc(100mL)を添加し、さらに約60mLまで濃縮した。
4.速く攪拌しながら、ヘキサン(420mL)を5分間かけて添加した。沈殿生成物をろ過して収集し、ヘキサン(100mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて白色固体(17.4g、81.2%)を得た(下記注記4、5)。
【0040】
注記
1.内部標準としてトルイル酸を用いる1H NMRにより、トリオール酸は77.5%の純度であると決定した。残りの物質は沈殿タンパク質/凍結乾燥物質である。
2.無水酢酸及びDMAPの添加速度は下記の表に示す:
DMAP及び無水酢酸の添加の流れ
3.サンプルは、Waters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB(商標)-フェニルカラム(4.6x75mm)(40%MeCN/0.5%AcOHグラジエント;1mL/分;RT;238nm)を用いて分析した。グラジエント及び溶出順序は以下のとおりであった:
図18Bは、4-アセチルラクトンの構造、その対応するジアセテート構造及び脱離生成物を示している。
4.さらに2.20g(10.3%)のアセチルラクトンが母液に残留ており、総収率は91.5%となった。
5.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.8%;4-アセチルラクトン、98.5%;4,8-ジアセテート、0.2%;脱離物質、0.6%。
【0041】
B.トリオール酸の直接アセチル化(37gスケール)
反応は、粗トリオール酸(48.43g、111mmol)(純度77.45%)(下記注記1)及び無水CH2Cl2(375mL)中のDMAP(2.30g、18.8mmol;15mol%)を用いて上述のように実施した。反応スラリーをN2下の室温で磁石により攪拌し、無水酢酸(34.6mL、3.3当量)を注入ポンプでゆっくりと添加した(下記注記2)。
2.N2下で1Lの乾燥フラスコにトリオール酸(2287-40、48.43g、77.45%)を連続して加えた。
3.反応は、水(5mL)を添加することによって8時間後に停止させ、10分間攪拌し、混合物は処理まで−20℃で保存した。混合物をセライトパッドでろ過して不要物を除去し、前記セライトパッドをCH2Cl2で洗浄した。続いて、ろ液を5%のHCl(175mL)、水(50mL)、飽和NaHCO3(2x175mL、100mL)及び飽和NaCl(175mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)ろ過した。ろ液を濃縮し(300mLを除去)、EtOAc(200mL)を添加し、さらにほぼ110mLまで濃縮した。
4.速く攪拌しながら、ヘキサン(450mL)を、約5分かけて加えた。沈殿生成物をろ過により収集し、ヘキサン(50mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて白色固体を得た(3.1.5g、78.4%)(下記注記3、4)。
注記
1.内部標準としてトルイル酸を用いる1H NMRにより、トリオール酸は77.5%の純度であると判定した。残りの物質は沈殿タンパク質/凍結乾燥物質である。
2.無水酢酸及びDMAPの添加速度は下記の表に示す:
DMAP及び無水酢酸の添加の流れ
3.さらに3.4g(8.5%)のアセチル-ラクトンが母液に残留しており、総収率は86.9%となった。
4.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、1.4%;4-アセチルラクトン、97.4%;4,8-ジアセテート、0.3%;脱離物質、0.6%。
【0042】
C.トリオール酸の直接アセチル化(150gスケール)
1.反応は、粗トリオール酸(154g)(下記注記1)及び無水CH2Cl2(1L)中のDMAP(6.8g、55.7mmol;15mol%)を用いて上述のように実施した。反応スラリーをN2下で機械的に攪拌し、無水酢酸を注入ポンプでゆっくりと添加した(下記注記2)。反応は最初の1.5時間は15℃で維持し、続いて室温で攪拌した。
2.反応は、水(200mL)を添加することによって9.25時間後に停止させ、室温で20分間攪拌し、続いて一晩静置した。
3.反応混合物をセライトパッドでろ過し、前記セライトパッドをCH2Cl2(2x250mL)で洗浄した。一緒にしたろ液を、連続的に5%のHCl(500mL)及び水(500mL)で洗浄し、続いて、ろ液を濃縮した(1.2LのCH2Cl2を除去)。EtOAc(500mL)を残留物に添加し、さらに400mLの溶媒を除去した。残留溶液を飽和NaHCO3(500mL)で洗浄し、続いてNaHCO3/H2O混合物(500mLの飽和NaHCO3、500mLのH2Oに数回に分けて167.2gのNaHCO3の粉末を添加)とともに攪拌した。
4.静置して二層をゆっくり分離させ、有機層をNaCl(250mL)で洗浄した。前記有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、ほぼ500mLに濃縮した。
5.急激に攪拌しながら、ヘキサン(3.5L)を、約45分かけて前記残留物に加えた。沈殿した固体をろ過し、乾燥させて白色固体を得た(95g、70.7%)(下記注記4、5)。
注記
1.粗トリオール酸は150gのロバスタチンの加水分解から単離された物質であり、この物質で以降の実験を進めた。
2.無水酢酸の添加速度は下記の表に示す:
表:無水酢酸添加の流れ
3.酢酸及び2-メチル酪酸はその後のアシル化反応でそれらが再度導入されるのを防止するために除去されるべきである。
4.さらに10.1g(7.5%)のアセチル-ラクトンが母液に残留し、これが水性洗浄液へ失われた約0.16%の生成物と一緒にされて、ロバスタチンから得られる総収率78.4%を表す。
5.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.9%;4-アセチルラクトン、98.7%;4,8-ジアセテート、0.2%;脱離物質、0.1%。
6.1HMR(CDCl3)d 0.90 (d, J=6.94 Hz, 3H), 1.19 (d,J=7.57Hz, 3H), 1.27-1.41 (m, 1H), 1.45-1.60 (m, 2H), 1.76-1.85 (m,6H), 2.09 (s, 3H), 2.10-2.13 (m, 1H), 2.14-2.20 (m, 1H), 2.32-2.41 (m, 1H), 2.41-2.50 (m, 1H), 2.67-2.75 (m, 1H), 2.75-2.82 (m, 1H), 4.23 (br s, 1H), 4.54-4.63 (m, 1H), 5.22-5.28 (m, 1H), 5.53-5.58 (m, 1H), 5.77-5.83 (m, 1H), 5.99 (d, J=9.46Hz, 1H); 13CNMR (CDCl3) d13.98, 21.07, 23.82, 24.19, 27.40, 30.82, 32.95, 33.39, 35.40, 35.83, 36.50, 38.77, 65.34, 65.61, 76.51, 128.51, 130.14, 131.29, 133.60, 168.90, 170.02。
【0043】
D.トリオール酸の直接アセチル化(150gスケール)
a.粗トリオール酸(150gのロバスタチンから151.21g)を2Lの乾燥フラスコに添加し、続いてCH2Cl2(1L)を添加した。スラリーをオーバーヘッド機械攪拌装置で激しく攪拌し、周囲温度で一晩放置した。
b.DMAP(6.8g、150gロバスタチンを基準に15mol%)を一回で添加し、続いて無水酢酸(157.6mL、4.5当量)を20分かけて添加した。反応はHPLCでモニターした。
c.反応は、水(100mL)を添加することによって3.5時間後に停止させ、さらに周囲温度で3時間攪拌した。続いて一晩静置した。反応混合物をワットマンの#1ろ紙でろ過し、フィルターケーキをCH2Cl2(2x250mL)で洗浄した。一緒にしたろ液を、連続的に5%のHCl(500mL)及び水(500mL)で洗浄した。
d.続いて、前記のCH2Cl2を5%のHCl(500mL)及び水(500mL)で洗浄し、さらに有機層を400mLに濃縮し、EtOAc(500mL)で希釈した。この溶液を飽和NaHCO3(500mL)でとともに攪拌し、さらに追加のNaHCO3(60g)を添加して酢酸を中和した。有機層を飽和NaCl(500mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過した。ろ液をほぼ100mLに濃縮した。攪拌しながら、ヘキサン(500mL)を前記残留物に急激に添加した。沈殿した固体をろ過し、乾燥させて白色固体を得た(112.6g、83.4%)(下記注記1、2)。
注記
1.さらに7.6g(5.7%)の4-アセチルラクトンが母液に残留しており、ロバスタチンから得られた総収率は89.1となった。
2.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.9%;4-アセチルラクトン、99.0%;4,8-ジアセテート、0.45%;脱離物質、0.53%。
【0044】
E.トリオール酸の直接アセチル化(150gスケール)
1.粗トリオール酸(150gのロバスタチンから158.4g)を2Lの乾燥フラスコに添加し、続いてCH2Cl2(625mL)を添加した。スラリーをオーバーヘッド機械攪拌装置で激しく攪拌し、周囲温度で一晩放置した。
2.DMAP(6.8g、150gロバスタチンを基準に15mol%)を一回で添加し、続いて無水酢酸(122.6mL、3.5当量)を17分かけて添加した。反応はHPLCでモニターした。さらにもう一度無水酢酸(35mL、1.5当量)を2.5時間後に、続いてEt3N(25.8mL、0.5当量)を3.5時間後に添加した(下記注記1)。
3.反応を6.3時間後に停止させ、上記と同じ抽出処理に付した。このときヘキサンの添加は大きな塊として生成物を沈殿させた。前記固体をCH2Cl2(300mL)及びEtOAc(300mL)に再度溶解し、ほぼ130mLに濃縮した。ヘキサン(650mL)の添加によって生成物が沈殿した。前記生成物を集め、乾燥させて白色固体を得た(107.24g、79.8%)(下記注記2、3)。
注記
1.反応は約60%の変換率で停止し、Et3Nはアセチル化促進のために添加した。
2.さらに10.7g(8.0%)の4-アセチルラクトンが母液に残留しており、ロバスタチンから得られた総収率は87.8となった。
3.HPLC面積%は以下を示した:ジオールラクトン、0.6 %;4-アセチルラクトン、97.9%;4,8-ジアセテート、0.6%;脱離物質、0.9%。
図18Bは、4-アセチルラクトンの構造、それに対応するジアセテートの構造及び脱離生成物を図示する。
【実施例4】
【0045】
実施例4:4-アセチルシンバスタチンの合成
以下の実施例は、図18Cに図示する、本発明の例示的プロトコル、例えば4-アセチルシンバスタチンの合成のためのプロトコルについて述べる。
A.三フッ化ホウ素エテレート触媒
1.4-アセチルラクトン(110g、0.3mol)を2Lの2首フラスコで一晩、真空下で(0.1torr)乾燥させた(注記1)。
2.前記乾燥させた出発物質をN2下で無水CH2Cl2(875mL)に室温で溶解した。
3.触媒は以下のように調製した。グラブバッグにN2下で、無水2,2-ジメチル酪酸(7.1mL、30.3mmol)を無水アセトニトリル(125mL)に添加し、続いて新しく開封したBF3.OEt2(3.1mL、24.3mmol;8mol%)を添加した(注記2、3)。
4.無水2,2-ジメチル酪酸(78mL、0.33mol;1.1当量)を4-アセチルラクトンの溶液に添加し、前記混合物を40℃で10分加熱した(注記4)。続いて、BF3.OEt2のMeCN溶液をカニューレで添加した(注記5)。反応は遮光して、40℃で攪拌し、HPLCでモニターした。
5.5.5時間後に反応は完了したと判定し、前記反応物を氷浴中で5℃に冷却した。飽和NaHCO3(250mL)を激しく攪拌しながら添加した。水層を分離し、CH2Cl2(200mL)で抽出した。
6.有機抽出物を一緒にし、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、減圧下で濃縮した。MeOH(200mL)を前記濃縮物に添加し(注記6)、更なるMeOHの除去によって4-アセチルシンバスタチンの沈殿が生じた。灰色の固体をろ過し、冷MeOH(100mL)で前記を洗浄して真空下で乾燥させた(92.8g)。
7.母液を約半分の体積まで濃縮し、一晩−10℃で冷却した。生成物(17.2g)をろ過によって集め、乾燥させて、第二の収集物とした(注記7)。
8.HPLCプロフィールは表に示す。
注記
1.出発物質はすり潰して粉末にし、酢酸の除去を促進するべきである(酢酸は大きな塊の中に吸い込まれる可能性がある)。残留酢酸は4,8-ジアセテートの生成をもたらすであろう。真空下、高温での乾燥は分解を生じる可能性がある。4-アセチルラクトンは、真空下40℃で乾燥させたとき黄色になった。
2.この反応は水分の存在に鋭敏であるので、先ず初めに過剰量の酸無水物をアセトニトリルに添加し、一切の残留水を除去した。酸無水物及びアセチル-ラクトンを予熱することによって、反応容器から水が除去される。
3.新しく開封したBF3.OEt2を反応に用いるべきである。以前に開封された試薬は遅い反応をもたらすか、又は反応すら生じないことがある。
4.触媒添加中には溶液は冷却されねばならない。そうでなければ芳香族副生成物が形成される。
5.CH2Cl2/MeCN比は7:1であった。典型的には前記の比は6:1から9:1の間であった。MeCN中でのほうが反応は速いが、望ましくない純度プロフィールをもつ生成物が生じる。
6.MeOHは粗生成物が固化する前に添加されるべきである。そうでなければMeOHに再溶解させることが困難である。固体生成物を熱MeOHに溶解したため分解を引き起こし、したがって収率が低下した。
7.総固体生成物は110g(78.7%)であった。最後の母液を乾燥するまで蒸発させ、残留物を標準試薬に対してアッセイし、さらに9.02g(6.8%)の生成物が含まれることが示された。さらにほぼ2%の生成物が水相に残っていた。図18Cを参照されたい。
【0046】
B.4-アセチルシンバスタチンの合成
上述のように調製した。
4-アセチルラクトン(111.6g;91%)
1回目の収集:86.2g
2回目の収集:11.6g
合計:97.8g、75.8%
アッセイ:
1H-NMR 99.8%(内部標準としてのトルイル酸に対して)
HPLC 98.1%(4-アセチルシンバスタチンの標準試薬に対して)
水性洗浄液はほぼ1.9%を含み、さらにほぼ7%が残留物に残り、総収率は84.7%であった。
HPLCプロフィールは下記の表に示す。
【0047】
C.4-アセチルシンバスタチンの合成
上述のように調製した。
4-アセチルラクトン(107g;96%)
1回目の収集:90.4g
2回目の収集:12.7g
合計:97.8g、79.3%
アッセイ:
1H-NMR 99.2%(内部標準としてのトルイル酸に対して)
HPLC 96.8%(4-アセチルシンバスタチンの標準試薬に対して)
水性洗浄液はほぼ1.8%を含み、さらにほぼ7%が残留物に残り、総収率は88.1%であった。
HPLCプロフィールは下記の表に示す。
【0048】
D.ピリジン/DMAP法
1.4-アセチルラクトン(2.6g、7.2mmol)を真空下一晩室温で乾燥させ、続いて無水ピリジン(6.0mL)に窒素下で攪拌しながら室温で溶解させた。1.5mLの無水ピリジン中のDMAPの溶液を添加し、混合物を氷浴中で冷却した。
2.2,2-ジメチルブチリルクロリド(7.72g、8当量)を、注入ポンプを用いて15分かけて滴下した。前記混合物を0℃で約1時間、続いて室温で1時間攪拌した。
3.反応混合物を窒素下40℃で加熱し、反応をHPLCでモニターした。4-アセチルラクトンが消費された後(2日)、ピリジンを回転蒸発装置で除去した。残留物をEtOAc(20mL)と飽和NaCl(20mL)との間で分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、蒸発させて、粗生成物を得た(96.5%)。
E.Cu(OTf)2/無水物法
1.4-アセチルラクトン(10.0g、27.6mmol)を真空下で1時間室温で乾燥させ、無水CH2Cl2(60mL)に溶解し、窒素下で攪拌した。
2.一方、無水MeCN(7.0mL)中のCu(OTf)2(0.5g、5mol%)及び2,2-ジメチル酪酸無水物(7.15mL、30.5mmol)の溶液を調製し、封をしたフラスコ内にて室温で攪拌した。
3.前記ラクトン溶液を15℃に冷却した。Cu(OTf)2及び2,2-ジメチルブチリル無水物の溶液を、注入ポンプを用いて滴下した。反応をHPLCでモニターして、反応の完了が3.0時間以内に判定された。
4.反応は水(20mL)で停止し、CH2Cl2(100mL)と飽和NaCl(100mL)とで分配した。次にその有機層を、1Mのリンゴ酸(50mL)及び飽和NaCl(50mL)の混合物とともに10分間撹拌し、続いて飽和NaCl(100mL)と10分間攪拌した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、蒸発させて、粗生成物を得た(12.8g>100%収率(重量による))(注記3、4)。
注記:
1.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(79.5%)、脱離生成物(12%)、ビスシンバスタチン(2%)、未同定不純物(6.5%)。
2.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィーの後には43%で単離された。4-アセチルシンバスタチンはSiO2クロマトグラフィーに対して安定性が限られていると考えられる。
3.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(92.5%)、脱離生成物(2.7%)、ビスシンバスタチン(1.7%)、未同定不純物(3.1%)。
4.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィーの後に61%で単離された。
【0049】
配列番号4の酵素による4-アセチルシンバスタチンの加水分解
本発明はまた、例えば図18Dに図示するように、ヒドロラーゼによる4-アセチルシンバスタチン加水分解を含む方法を提供する。
1.MeOH(2mL)中の4-アセチルシンバスタチン(3.68g、8mmol)の溶液を、25mLの3つ口フラスコ中の4Mトリス緩衝液(0.1mL)と水(9.9mL)との混合物に添加した。このスラリーを激しく攪拌し(磁気攪拌及びオーバーヘッド攪拌の両方により)、50℃に加熱した。
2.配列番号4の酵素(1gの凍結乾燥物質)を水(8mL)に溶解し、前記反応混合物に添加した。
3.DASGIP FEDBATCH-PRO(商標)システムを用い、10%のアンモニア水の添加によりpHを6.75に維持し、加温水浴を用いて反応温度を50℃に維持した。
4.反応がいったん75%の変換率に達したら、トルエン(4mL)を変換して生成物及び残存する出発物質を溶解させた。
5.アリコット(20μLアリコットを980μLのMeOH中で反応停止させた)を定期的に採取し、HPLCによって反応の進行をモニターした(下記注記1)。
反応が完了したと判定したら、反応混合物を遠心(45000xg、4℃、25分)によって清澄にし、最上部のトルエン層、透明な水層及び圧縮された固体ペレットが得られた。透明な水性遠心分離物のpHをHClで2.5に調整した。羊毛状の沈殿物が観察された。この混合物を遠心(45000xg、4℃、25分)によって清澄にし、もう1つの小ペレットが得られた。
6.各画分をHPLCで調べたとき、シンバスタチンは有機層及びペレット化物質に濃縮されていた。ペレットをジクロロメタン(100mL)で抽出し、得られた乳濁液を遠心(45000xg、4℃、25分)によって分離した。CH2Cl2層を一緒にし、乾燥させ(Na2SO4)、さらに蒸発させて黄色の油(3.05g、91%)が得られた(下記注記2)。
注記:
1.サンプルは、Waters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.1%H3PO4グラジエント;1mL/分;RT;238nm)を用いて分析した。グラジエント及び溶出順序は以下のとおりであった:
【0050】
配列番号4による4-アセチルシンバスタチンの加水分解
本発明はまた、エステラーゼ(例えば配列番号4のエステラーゼ)による4-アセチルシンバスタチンの加水分解を含む方法を提供する。図18Dを参照されたい。
1.4-アセチルシンバスタチン(96.6g、0.21mol)及び配列番号4(20g)の混合物を、磁石の攪拌棒及びオーバーヘッド攪拌装置を備えた2Lの丸底フラスコ中の10%MeOH(1L)に懸濁した。前記混合物を激しく攪拌し、加温水浴で60℃に維持した。
2.DASGIP FEDBATCH-pro(商標)システムを用い、10%のアンモニア水の添加によりpHを7.5に維持した。反応はHPLCでモニターした。
3.24時間後に、反応混合物を4本の250mLの遠心管に移し、10,000rpmで4℃15分遠心した。上清をデカントして廃棄した。ペレットを水(4x250mL)に再懸濁し、前のように遠心した。再度上清をデカントし廃棄した。
4.遠心ペレットを焼結ガラス漏斗に移し、過剰な水を除去した。遠心管をアセトン(2x150mL)で洗浄し、このアセトンを漏斗に移した。セライト(10g)を漏斗に添加し、混合物をすり潰し、続いて吸引で乾燥させた。
5.漏斗上の残留物をCH2Cl2(5x200mL)で洗浄し、各200mLの後で残留物をすり潰し、必要に応じてさらにセライトを添加した。
6.一緒にした洗浄液を飽和NaCl(100mL)で洗浄し、水層を廃棄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、溶媒をトルエン(200mL)に置換した。
7.攪拌しながら、前記トルエン溶液にヘキサン(600mL)を添加した。ほぼ300mLを添加した後で、沈殿が開始した。沈殿生成物をろ過し、乾燥させて、白色固体を得た(69.9g、79.7%)。
母液を一晩−20℃に冷却し、シンバスタチンの第二の収集物を得た(3.5g、4.0%)。
【実施例5】
【0051】
実施例5:本発明の例示的合成スキーム
以下の実施例は本発明の例示的なプロトコル、例えばロバスタチンからシンバスタチンを合成するためのスキームについて述べる。
工程1:ロバスタチンの加水分解
本発明はまた、図15Aに図示したようにロバスタチンからトリオール酸を生成する工程を含む方法を提供する。
新規なロバスタチンエステラーゼ(配列番号4に示す配列及び二次的サブクローン)を同定したので、見積り可能な酵素的加水分解プロセスを実現させることに努力を集中した。提唱されるシンバスタチン生成プロセスに必要なパラメーターの中ではとりわけ、酵素反応は高基質装荷(高基質添加:high substance loading)で実施されねばならないということであった。最初のスクリーニング及び確認的反応は、その高い水溶性のためにロバスタチン酸を用いて実施した。ロバスタチンは特に低pH(7〜8)及び高基質装荷で水に難溶であるために、ロバスタチンを用いる反応は非常に遅かった。
可溶性の欠如は、最初にラクトン環をin situで化学的に開環することによって克服された。したがって、MeOH/水(最終反応濃度は7〜10%MeOH)中のロバスタチンの懸濁液を1当量のNaOHで処理し、前記混合物を、ロバスタチンがより溶解性のロバスタチン酸に変換されるまで数時間攪拌した。開環が完了したとき、酵素の添加に先立って、反応混合物のpHをpH9.5に調整した。しかしながら、開環が進行するにつれpHが許容可能な値まで下降するので、多くの事例でpHの調整は不要であった。
酵素反応は、再構成させた酵素溶液の添加によって開始した。続いて前記混合物を35〜40℃で攪拌し、pHは、10〜30%のNH4OHの自動的添加によってpH9.5で一定に維持された。このような条件下で、ロバスタチンからトリオール酸への98%を超える変換率は概して48時間で得られた。完了に近づくにつれ反応は顕著に遅くなる。一連の大規模での加水分解の結果は下記の表1に集められている。
表1:ロバスタチンの加水分解
実験2及び3は、異常に長い反応時間を示した。これら2つの事例では、ロバスタチンラクトンの開環は大過剰のNaOHを用いて実施され、酵素反応に適したpHに戻すためにHClの添加を必要とした。高塩濃度は酵素による加水分解に有害な影響を与えることは以前に観察された。
さらにまた、その時点での入手性に限界があったために、最初の酵素注入(11%w/w)は以前に用いたものより少なく、更なる追加酵素が添加され、最終酵素注入は17%w/wになった。
水で反応混合物を希釈することによって反応を停止させ、続いて混合物のpHをほぼ2に酸性化させた。このような条件下では、トリオール酸、変性タンパク質及び他の培養液/細胞成分は溶液から沈殿した。
最初の小規模の希薄な反応の場合、この混合物を還流iPrOAcにより連続的液体抽出に付した。このような条件下では、トリオール酸のラクトン化が生じ、ジオールラクトンは、濃縮iPrOAc抽出物から沈殿によって容易に得ることができた。
大規模な反応の場合、沈殿したトリオール酸/変性タンパク質混合物はろ過によって単離され、一方、なお湿った状態のフィルターケーキをiPrOAcに懸濁し、共沸蒸留に付してラクトン化を実施した。不溶の変性タンパク質/細胞成分をろ過によって除去し、ジオールラクトンを濃縮及び沈殿によって単離した。この方法は、10〜30gのスケールで良好に進行してトリオール酸の精製を必要とせずにジオールラクトンを生じた。しかしながら反応スケールが増すにつれ(50〜100g)、ラクトン化を達成するために、より濃縮された溶液では共沸蒸留により長い還流時間が要求された。このような条件下で単離されたジオールラクトンの収率は減少し、生成物は、おそらくトリオール酸又はジオールラクトンの重合によって生じた、夾雑物の黄色の油の量が増加した。
実験室の100gを超えるスケールでは、もっとも便利な処理は酵素反応混合物を希釈し酸性化することであった。不溶性物質をろ過によって収集し、この湿ったフィルターケーキを乾燥させた。最初に凍結乾燥を乾燥に用いたが、さらに追加された実験のために、フィルターケーキは真空オーブンで30〜40℃で乾燥させた。粗生成物のアッセイ(内部標準の存在下での1H NMR)によって、粗生成物はほぼ78%のトリオール酸を含み、残りの物質は変性タンパク質、細胞および培養液成分であることが示された。
ろ過後に、ろ液をEtOAcで抽出してさらにほぼ2%の生成物を回収することができた。この物質はトリオール酸として単離されるか、又はラクトン化して(7mMのMeSO3H)ジオールラクトンとして単離して次の工程に加えることができた。
【0052】
工程2:アセチル化
本発明はまた、図9Aに図示されるように、トリオール酸から4-アセチルラクトンを生成する工程を含む方法を提供する。
このプロセスに対するその後の変更、すなわち(i)トリオール酸から4-アセチルラクトンへ直接アシル化、及び(ii)ジメチルブチレート側鎖の導入のための改善条件はこのプロセスを改善した。
ロバスタチンの加水分解工程から得られた粗生成物はトリオール酸及び変性タンパク質並びに細胞/培養液成分を含んでいる。この粗物質をCH2Cl2に懸濁し(10〜15%w/v)、DMAP(0.15当量)の存在下で無水酢酸(3当量)と処理した。実験によって、4-アセチルラクトンの8位のアセチル化は穏やかで、合理的に制御することができることが示された。この反応をHPLCでモニターし、典型的には2%未満のジオールラクトンが残存するときに(すなわちこの時点では2%未満のジアセテートが生成される)反応を停止させた。いくらかの脱離生成物が、特に反応物が甚だしく長時間にわたって攪拌される場合、形成され得る。
完了後に、水を添加して反応を停止させ、不溶性物質をセライトパッドからろ過することによって除去した。このパッドをCH2Cl2で洗浄し、一緒にしたろ液を希薄な酸(DMAPを除去するため)及び飽和NaHCO3(酢酸を除去するため)で洗浄した。大規模の場合には、酸洗浄後にEtOAcの溶媒交換を実施して塩基によるその後の洗浄を促進するのがより都合がよいことが見出された。
塩基抽出後、溶液を乾燥させ、ろ過して濃縮した。続いてヘキサンの添加によって4-アセチルラクトンが白色固体として沈殿した。いくつかの更に大規模な実験の収率及び生成物プロフィールは下記表2にまとめられている。
表2:トリオール酸から4-アセチルラクトンの直接アセチル化
1括弧内の値は母液中の未回収生成物を含む
2括弧内の値は回収された第二の生成物収集を含む
3さらにまた0.24%の4-アセチルロバスタチン、及び4.0分の既知の不純物0.5%を含む。
【0053】
工程3:アシル化
本発明はまた、図9Bに図示されるように、(例えば2,2-ジメチル酪酸無水物を用いて)4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを生成する工程を含む方法を提供する。
触媒の同定:
シンバスタチン側鎖の導入のために報告された条件は、プロセスのスケールアップには適切ではなかった。この反応は、(i)純粋なピリジンで実施され、(ii)8当量までの2,2-ジメチルブチリルクロリドを使用し、さらに(iii)高い温度で数日を必要とする。我々が実施したところ、そのような反応条件から単離された生成物は、低収率であり、品質が劣っていた(2-アセトキシ基の脱離が主要な問題であった)。また別の溶媒/塩基を選択しても反応は改善されなかった。
顕著な改善は、アシル化剤として無水ジメチル酪酸を用いるルイス酸触媒反応へ切り替えることによって達成された。ビスマストリフレート(Bi(OTf)3)を調べた(Bi(OTf)3はアルコールのピバロイル化に有効な触媒として報告されている)。この反応はピリジン経路よりはるかに清浄であった。しかしながら、Bi(OTf)3は市販されておらず、ビスマス残留物は生成物から除去することが困難であった。市販されている銅トリフレート(Cu(OTf)3)もまた良好な性能を有し、わずか10%の触媒装荷及び室温での1.05当量の無水ジメチル酪酸で、良好な生成物収率をもたらした。この場合には同の塩の除去が問題であった。
この時点で、我々は既に、ジオールラクトンの8位での位置選択的アシル化を触媒して、直接シンバスタチンを生成する能力について、一連のルイス酸を調査していた。調査した20を超えるルイス酸に関して、活性は、ビスマス、銅、スカンジウム、インジウム、アルミニウムのトリフレート塩、並びにTMSOTf及びBF3.OEt2で観察された。Li、Mg、Zn、La、Pr、Sm、Ybのトリフレート塩は同じ条件下では活性を示さず、ピリジニウム又はイミダゾリウムトリフレートも同様で、さらにBi、In又はSrの酢酸塩も活性を示さなかった。
BF3.OEt2は、安価に入手できるので、4-アセチルラクトンのアシル化のために優れた触媒であった。三フッ化ホウ素の他の種々の付加体をアシル化触媒としてテストした。BF3のTHF付加体もジメチルアミン付加体も適切なルイス酸触媒ではなかった。活性は、他の市販されているBF3.溶媒和物でも観察されたが、それらはBF3.OEt2を超える利点を提供しなかったので、更なる最適化は前記のエテレートで実施した。
【0054】
条件の最適化:
図1に示したように、4-アセチルラクトンのトリフレート及びBF3エテレート触媒アシル化の両者について、ある範囲の溶媒及び条件をテストした。最良の結果は、CH2Cl2、MeCN、ジクロロエタン又はそれらの混合物で得られた。いくつかのBF3.OEt2触媒アシル化の結果は表3に集められ、図2に示されている。
存在するMeCNの比が高ければ反応は速いが、収率は低下した(実験1、3参照)より良好な結果は新しいBF3.OEt2を用いて観察されたが(実験1、2、6参照)、以前に開封したビン(実験2)及び前もって小分けしたMeCN中のBF3.OEt2のストック溶液(実験6)の結果は不良であった。最小限の触媒濃度が必要であった。すなわち、4mol%の触媒は不完全な反応をもたらした(実験4)。
全ての反応で、ある範囲の微量の不純物が観察された。不純物のいくつか、例えばジアセテート又は4-アセチルロバスタチンは、出発物質の4-アセチルラクトンに存在していたか、又は出発物質中の不純物の直接的な結果物であった(例えばビスシンバスタチンはジオールラクトンから生成される)。これら大半の不純物のレベルは、粗生成物をメタノール水溶液から沈殿させることによって顕著に減少させることができた。表4は、図3に示すように、12gのアシル化反応の生成物についての沈殿の前後における不純物プロフィールを示す。20〜100gスケールでの一連の反応の収率は表5に示されている。単離収率が、残留生成物の存在場所及び概算量と同様に示されている。
表5:4-アセチルラクトンのアシル化:結果
1条件:4-アセチルラクトン10%w/v;BF3.OEt2 8mol%;40℃;DCM/MeCN 5-9:1
2MeOH/水又はMeOH単独から沈殿させた後
3水性洗浄液中の物質、標準試薬に対してHPLCアッセイで測定
4濃縮後に母液に残留したもの、標準試薬に対してHPLCアッセイで測定
【0055】
工程4:酵素的脱アセチル化
本発明はまた、図9Cに示されているように、アセチルシンバスタチンからシンバスタチンへの変換を含む方法を提供する。
4-アセチシンバスタチンの酵素的脱アセチル化には、克服しなければならない2つの重要なハードルが存在する:
(i)出発物質、4-アセチルシンバスタチン及び生成物、シンバスタチンの両者の水溶液での不溶性、
(ii)4-アセチル基の鋭敏性(7より高いpHで急速に脱離する)。
ロバスタチンの加水分解反応とは異なり、4-アセチルシンバスタチンの加水分解はpH7近くで実施されねばならない(pH7ではラクトン環の開環による可溶性の増加は不可能である)。
4-アセチルシンバスタチンの加水分解のために、配列番号4の酵素(例えば、大腸菌でクローニングされたエステラーゼ遺伝子である配列番号3によってコードされる)は、10mMの基質を迅速に加水分解した。前記に続く200mMでの反応は、46時間で91〜93%の変換率を示した。4-クロロアセチル誘導体は同等な変換率を示し、一方、4-ホルミル誘導体は24時間で完全に反応した。4-ホルミル誘導体が、その可溶性及び反応性に関して魅力的な基質であったが、4-ホルミル誘導体の効率的な合成を開発することができなかった。反応をMTBE二相系で実施したとき、同様な結果が3誘導体の全てについて得られた。
多数の反応パラメーターについて、配列番号4の酵素を用いて調べた。pH8で加水分解を開始することによって、許容不能レベルの脱離生成物が生じ、一方、補助溶媒として5%のジオキサン又は界面活性剤(0.1%トリトンX-100又はトゥイーン-20)を用いても不良な結果が得られた。反応速度は50℃で顕著に強化されたが、反応混合物の粘稠性が増加したために、概して全ての反応はほぼ90%の変換率で停止した。
50mMの基質での二相系反応のために、補助溶媒としてのMTBE、ジブチルエーテル又はトルエンの使用はこのような条件下で良好に機能したが、塩素化溶媒の使用はほとんど活性をもたらさなかった。
【0056】
加水分解を10%MeOHの存在下でpH7、50℃で開始するならば、300〜400mMまでの濃度で反応を実施することが可能であった。5〜6時間後に、反応物が非常に粘稠になったとき、等体積のトルエンを反応に添加した。このような条件下では、ほぼ完全な変換が最小限の脱離で観察された。
この段階まで全ての酵素反応は、シンバスタチンから調製した4-アセチル-シンバスタチンを用いて実施した。容易に入手できるシンバスタチンから基質を調製することによって、我々は最後の酵素的加水分解の最初の実験を実施し、一方で合成の他の工程を開発することができた。
残念なことに、ロバスタチンから最初に調製した基質は、使用したルイス酸触媒及び精製の度合いに左右されて品質が変動した。これらの材料は結果の顕著な変動性をもたらし、酵素による脱アセチル化の最初の良好な結果を再現することができなかった。
4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンへの加水分解の特定の反応セットの結果は表6に集められている。この事例では、全ての反応は、10%MeOH及び同じバッチの酵素(配列番号4-2)を用いて実施された。図20は、4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンへの加水分解を対応する脱離生成物及び酸とともに示している。
【0057】
表6:4-アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解
*酵素は4回に分けて24時間かけて添加した。
【0058】
表6の最初の2つの実験は、ロバスタチンから調製した4-アセチルシンバスタチンの加水分解(実験1)をシンバスタチンから調製したもの(実験2)とのそれを比較している。200mMでは、基質2719-93は明らかに劣っている。前記は92%の変換率に達するために79時間を要し、シンバスタチンから調製した基質(実験2)では43時間であった。他方、基質2719-95(実験4)は、200mMでは合成基質(実験3)の79時間に対して45時間で98%の変換率に達した。基質2719-93は純度が低いことが示され、残留2,2-ジメチル酪酸が夾雑し、極めて不良な結果を生じた。一方、低変換率においては2,2-ジメチル酪酸の存在下で阻害作用は観察されなかったので、前記は高変換率において加水分解速度の顕著な低下を招き得る可能性がある。
シンバスタチンから調製された4-アセチルシンバスタチンは、20gスケールでは性能が低かった(実験2、3参照)。この結果は、大規模反応物の攪拌における問題を反映しているかもしれないが、この材料は基質2719-95(実験4)よりもはるかに反応が遅かった。一方、脱離生成物は、そのMichael受容体としての潜在能力のためにおそらく不可逆的阻害物質として作用することができるが、反応が脱離生成物の存在下で実施されるときは低変換率では阻害作用は観察されなかった。
【0059】
基質2719-95を用いた場合は、定常的な結果を示した。反応は100及び200mM(実験5、6)では同様な結果を与え、この事実は反応混合物における出発物質の定常的な低溶解性を反映しているかもしれない。pH7では、40〜45℃よりも50℃でより高い変換率が観察された(実験7〜9)。実験10〜12は、反応はいくぶんpH依存性であることを示し、より高い変換率がpH7(85%)に比してpH7.5〜8.0で観察される。繰り返せば、これはより塩基性の条件下では基質の溶解性は高いことを反映しているのかもしれない。しかしながら、変換率における増加はより高いpHでのシンバスタチンレベルのわずかな増加によって達成される。一方、より高いpHは反応速度を増加させるが、それはpH8までは脱離量を顕著には増加させなかった。実際に、実験2、3を例外として全ての反応が2%未満の脱離生成物面積を示した。実験2、3の出発4-アセチルシンバスタチンには既にほぼ3.5%の脱離生成物が夾雑していた。
更なる酵素反応実験は、反応温度及びpHを変化させることによって反応時間短縮の試みに焦点をあてた。表7のデータは、より高温で操作することによって反応時間を短縮できることを示しているが、前記データは、種々のスケールの反応物を攪拌することによる影響によって複雑化されている可能性がある(実験13〜16)。しかしながら、温度の上昇及び/又は酸の増加は、生成されるシンバスタチンの量の増加をもたらすが、一般的には脱離の顕著な増加を生じなかった(最高量は60℃及びpH8で観察された(実験20))。この実験室スケールの処理下では、本シンバスタチン酸は水流中に失われる。しかしながら、酸性処理を必要とする処理条件は、この物質のいくらかの捕捉によりシンバスタチンを再ラクトン化するかもしれない。
【0060】
表7:4-アセチルシンバスタチンの加水分解:温度とpHの影響
表7では全ての反応は200mMで実施された。
*バッチ毎に酵素を添加
**デュープリケート
【0061】
100gスケールのもっとも新しい実験(実験21)は、60℃及びpH7.5で、磁気撹拌及びオーバーヘッド攪拌を組合せて実施し、反応フラスコの内容物を効率的に攪拌した。このような条件下では、出発物質のほぼ98%の変換が24時間後に観察された。
酵素触媒による加水分解の試案は実験室レベルでの課題を提示した。反応混合物のろ過は、おそらく沈殿タンパク質によるフィルターの目詰まりのため、非常に遅かった。それに代わって、遠心沈殿は、沈殿したシンバスタチンを上清水溶液から分離するために便利な方法であった。続いて、湿り気のある遠心ペレットをCH2Cl2により2回消化し、上清を各回でデカントした。一緒にした有機上清(シンバスタチン生成物塊を含んでいた)を乾燥させ、ろ過して溶媒をトルエンと交換した。このトルエン溶液にヘキサンを添加し、冷却によってシンバスタチンの沈殿が得られた。
CH2Cl2によるダイジェストの後でさえ、遠心ペレットはなお顕著な量の前記生成物を含んでいた。おそらくCH2Cl2は、前記湿り気のある遠心ペレットに効率的に近づくことができず、含有されている生成物を抽出することができないのであろう。
ある例示的改変(実験4;表8)では、遠心ペレットはアセトン及びセライトで処理され、続いてろ過された。続いて前記セライトパッドはCH2Cl2で容易に抽出することができた。一緒にした水性アセトン及びCH2Cl2洗浄液を続いて乾燥させ、溶媒をトルエンに交換した。ヘキサンの添加によってシンバスタチンは即座に沈殿し、これをろ過し乾燥させた。母液を−20℃に冷却することによって第二の収集物が単離された。表8(図4)の収量データは第1回目及び2回目の収集物を合わせたものである。
【0062】
本発明は、ロバスタチンから出発してシンバスタチンを生成する新規な実施経路を提供する。本発明のまた別の観点では、本経路の顕著な特徴は以下を含む:
i.新規なロバスタチンエステラーゼを使用する。前記は、0.5Mの基質装荷、35℃及びpH9.5で、2-メチルブチレート側鎖をほぼ48時間で99%の変換率で除去することができる。反応温度を上昇させることによって反応速度を顕著に増加させることの可能性が存在する。粗トリオール酸から4-アセチルラクトンへ変換する1段階ラクトン化/アセチル化が示される。ロバスタチンからの80%の全体的収率が日常的に得られ、さらに母液中に残存する8〜10%の潜在的生成物が存在する。
ii.無水ジメチル酪酸によるBF3.OEt2触媒アシル化を用いる、シンバスタチン側鎖の導入のための新規で穏やかな条件が発見された。この反応は、ほぼ100gスケールで10%基質装荷で定常的に実施され、4-アセチルシンバスタチンをほぼ80%の収率で提供する。さらに8〜10%の潜在的生成物が反応残留物に残存する。
iii.最終工程は、最初の工程で鋭敏なアセチル基を除去するために用いたように、同じロバスタチンエステラーゼを用いてシンバスタチンを生成する。この反応は、20〜100gスケール、9%w/vの基質装荷で実施され、24〜48時間で98%の変換率を示す。
【実施例6】
【0063】
実施例6:本発明の例示的プロセス
以下の実施例は、ロバスタチンからシンバスタチンを合成するためのスキームを含む、本発明の例示的プロトコルについて述べる。
本発明は、図16A又は“工程1”に図示されるように、ロバスタチンからロバスタチン酸、及びロバスタチン酸からトリオール酸を生成する方法を提供する。この特徴では、このプロトコルは、メチルブチレート側鎖の完全な(>99%)除去を達成する。ロバスタチンとシンバスタチンとの分離の困難さ、及びシンバスタチンAPI中の許容されるロバスタチンレベルの低さのために、このことは重要である(ロバスタチン加水分解のためのいくつかの方法は、完全な(>99%)反応のために高温及び長い反応速度を要求した)。
ロバスタチンは、ヒドロラーゼ酵素(例えば本明細書に記載されているようなもの)を用い穏やかな条件下で加水分解され、ラクトン環の加水分解及び8位の側鎖の完全な除去がもたらされる。メチルブチレート側鎖の酵素的加水分解で用いることができる3つの例示的ヒドロラーゼ酵素は以下のエステラーゼ酵素である:配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)、配列番号6(例えば配列番号5によってコードされる)、及び配列番号2(例えば配列番号1によってコードされる)、配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)。各々はサブクローニングされ、種々の宿主で発現され、種々のスケール(200リットルスケールを含む)で発酵生産された。
ロバスタチンは、酵素活性に必要な水性条件下で難溶性を示す。また別に、ある特徴では、ロバスタチンの懸濁水のpHを>12に高めてラクトン環の急速な加水分解を達成し、より溶解性の高いロバスタチン酸の塩のin situ生成がもたらされる。実際には、水/MeOH中のロバスタチンの懸濁物が水に1モル当量のNaOH溶液で処理され、完全に溶解するまで攪拌される。続いて、反応混合物のpHを酵素反応に適切な範囲に調整し、酵素が添加される。
【0064】
また別の特徴では、酵素的加水分解の条件は、発酵ブロスから直接抽出したロバスタチン及び/又はロバスタチン酸の混合物に適用することができ、又は前記酵素は発酵ブロス及び直接単離したトリオール酸に添加してもよい。
加水分解の後、反応混合物を注意深く酸性化し、トリオール酸は抽出及び/又はろ過によって単離される。ある特徴では、前記は次の工程で直接用いられるか、又は前記は適切な結晶化/沈殿工程の後で固体として単離される。
本発明は、図16B又は“工程2”に図示されたように、トリオール酸からジオールラクトンを生成する方法を提供する。ある特徴では、トリオール酸は、適切な溶媒中で加熱し、通常の手段により水を除去して平衡をラクトン形に移動させることによって再ラクトン化される。あるいは、ある特徴では、トリオール酸は適切な酸の存在下で攪拌することによって再ラクトン化される。前記はまたラクトン環の閉鎖を達成するであろう。ジオールラクトンは、この段階で適切な溶媒から結晶化/沈殿させることによって精製することができる。
本発明はまた、図16C又は“工程3”に図示されたように、ジオールラクトンからアシルラクトンを生成する方法を提供する。ある特徴では、4'-位のヒドロキシル基の位置選択的アシル化は、所望の活性及び選択性を有する酵素を用いて酵素的に実施される。アシル基の性質は、適切な特性を付与するために、例えば容易な除去のためにアセテート、結晶性の強化のためにベンゾエート、水溶性の強化のためにホルメートのように変動させることができる。
また別の特徴では、図16D(上記工程2及び3も併せて)に図示したように、本発明のこのプロトコルの“短縮変型(telescoped variation)”では、ラクトン化及びラクトン4-位のアシル化は単一容器で実施される。塩基(例えばDMAP)の存在下で、2当量の無水物で処理されるとき、トリオール酸は先ず初めにラクトン化され、続いてラクトンの4-OHで位置選択的にアシル化されて4-アシルラクトンが生成される。続いて前記生成物を適切な溶媒から結晶化/沈殿させることにより単離及び精製する。
【0065】
本発明は、図16E又は“工程4”に図示したように、例えば化学的又は酵素的アシル化によってアシルラクトンからアシルシンバスタチンを生成する方法を提供する。ジメチル酪酸誘導体と適切なアシル化触媒との組合せを用いて、所望の側鎖、例えばシンバスタチン側鎖を付加することができる。ジメチルブチリルクロリド/ジメチルアミノピリジンの組合せが記載されたが、反応時間は極めて長く、条件化は過酷で許容不能なレベルの副生成物が生じる。対照的に、本発明の組合せの、無水ジメチル酪酸/ルイス酸(例えばBi(トリフレート)3、Cu(トリフレート)2)、BF3.Et2Oは、室温での迅速な反応をもたらす。適切なルイス酸及び反応条件(温度、溶媒など)のスクリーニングによってこのアシル化の最適条件を特定することができる。
ある特徴では、アシルラクトンの酵素触媒アシル化を用いて、非常に穏やかな条件(室温から40℃、有機溶媒)下で、副生成物を形成することなく8位にジメチルブチレート基が付加される。
本発明は、図16F又は“工程5”に図示したように、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩、さらにシンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを生成する方法を提供する。最終工程は4'-位のアシル基の選択的除去を必要とする。4'-位のアシル基は、ほんのわずかな塩基性条件下であっても塩基触媒による脱離に非常に鋭敏である。結果として、酵素的加水分解が、このアシル基の位置選択的除去にはもっとも都合のよい方法であった。工程1(上記)でロバスタチンを加水分解するエステラーゼ(配列番号4、例えば配列番号3によってコードされる)もまた、ラクトンの4'-位のアシル基の選択的加水分解を効率的に触媒できることが示された。pH7で実施したとき、この酵素的加水分解によって実質的に無傷のラクトン環を有するシンバスタチンが得られた。
当分野で公知の任意のアッセイをスクリーニング、性状決定などに用いることができる。例えば、酵素のスクリーニングでは任意の標準的なHPLC及びTLC分析を用いることができる。前記の多くは当業者には公知である。
【0066】
以下では別の例示的プロトコル及び本発明の実施のための種々の条件について述べる。
ロバスタチンからトリオール酸への酵素的加水分解(工程1):
配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)を、7〜10%のMeOH/緩衝液中で0.1〜0.5Mの濃度のロバスタチン又はロバスタチン酸で評価した。反応は塩基の自動添加によってpH9〜9.5に維持された。最良の結果は、14mg/mLの相タンパク質を含む、配列番号4(配列番号3によってコードされる)の酵素の凍結乾燥調製物(溶解細胞の遠心上清)を用いて0.5Mのロバスタチンで500mLスケールにおいて得られた。基質の完全な変換は8時間後に観察された。
トリオール酸からジオールラクトンへのラクトン化(工程2):
反応混合物を酸性化し(pH2)、沈殿物を遠心によって収集し乾燥させた。ろ液をiPrOAcで抽出し、有機抽出物を乾燥させたフィルターケーキに加えた。得られた懸濁物を、ディーン-スターク装置でラクトン化が完了するまで還流加熱した。生成溶液をセライトパッドでろ過し、ろ液を飽和NaHCO3で洗浄した。得られたiPrOAc溶液を(x0.5)まで濃縮し、ヘキサンで希釈し0℃に冷却した。沈殿した固体をろ過し風乾してジオールラクトンを得た(63g、単離収率79.5%;さらに10.3gの生成物が種々の洗浄液及び母液で同定された)。生成物は1%未満のロバスタチンを含んでいた。
ジオールラクトンの酵素的アシル化(工程3):
ジオールラクトン(25mM)、酢酸ビニル(250mM)及びTBME(1mL)中のカンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)リパーゼB(33mg)の混合物を室温で振盪した。44時間後に、HPLCによって60%の変換率でモノアセテートの生成が示された。
アセチルシンバスタチンの製造(工程4):
4-アセチルラクトンを真空下で一晩室温で乾燥させ、窒素下で保存し、続いて窒素下の室温で無水メチレンクロリドに溶解した(1g/2.5-3mL比)。一方、Cu(OTf)2(5mol%)を最小量のアセトニトリルに室温で溶解し、続いて1.05〜1.2当量の無水ジメチル酪酸を前記溶液に添加し、室温で30分から1時間攪拌した。このCu(OTf)2/無水物溶液を室温で攪拌しながら窒素下で4-アセチルラクトン溶液に注射筒を介して移した。完了したら(HPLCによりモニター)反応を水の添加によって停止し、飽和NaHCO3で洗浄した。単離した有機層をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し蒸発させて粗4-アセチルシンバスタチン(>99%)を得た。
アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解(工程5):
アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解のためのこの例示的プロトコルでは以下が用いられる:3.22gのアセチルシンバスタチン(最終濃度350mM);2mLのMeOH;100μLの4Mトリス;9.9mLの水;8mLの配列番号4(例えば配列番号3によってコードされる)(水に凍結乾燥溶解物、125mg/mL)。
反応は、オーバーヘッド攪拌及び磁気撹拌棒を用いて25mL容器で実施される。pH定常状態は、DasGip Stirrer-PRO(商標)システムによって維持され、pH7は10%NH4OHの添加によって維持される。変換率がほぼ75%に達したとき、4mLのトルエンを添加して材料を可溶化する。反応を一晩進行させ、この時点でさらに溶媒(トルエン又はメチレンクロリド)を添加して、全ての不溶性物質が溶解されていることを担保する。図7に示したようにHPLCでサンプルを分析する。
反応の最終組成物:シンバスタチン酸4.7%、シンバスタチン90.9%、アセチルシンバスタチン0.9%、シンバスタチンの仮定的脱離生成物3.5%、最終変換率95.6%
【実施例7】
【0067】
実施例7:本発明の例示的プロトコル
以下の実施例は、ロバスタチンからシンバスタチンを合成するためのスキーム(例えば図5に概略したプロセスの全体的収率を増加させるためのスキーム、シンバスタチンへのヘテロジアシル化合成経路)を含む、本発明の例示的プロトコルについて述べる。本実施例は、ロバスタチンからシンバスタチンへの全体的収率を少なくとも60%に増加させるスキーム、及び収率低下がどこで発生するか、どこのプロセスの改善が実行できるかを特定するスキームについて述べる。
工程1:ロバスタチン加水分解:
図15Aは、本発明の例示的反応、エステラーゼを用いるロバスタチンからトリオール酸への加水分解を示す。ある特徴では、この工程は、ラクトン環を先ず初めに化学的に開環して(1当量のNaOHを用いる)、水溶性のロバスタチン酸を生成することを必要とする。pH及び体積を調整した後、酵素スラリーを反応に添加し、続いて前記を、ロバスタチン酸の99.5%変換率が得られるまでpH9.5で40℃に維持した。また別の例示的条件は、10%w/vの基質(0.25M)装荷及び10%w/wの粗酵素/基質装荷を用いる。
以前には実験室で100gを超えるスケールの場合、もっとも都合のよい処理は酵素反応混合物を希釈し酸性化することであった。不溶性物質はろ過で収集され、この湿ったフィルターケーキを真空中で30℃から40℃で乾燥させた。粗生成物のアッセイ(内部標準の存在下での1H NMR)によって、粗生成物はほぼ78%のトリオール酸を含み、物質の残りの部分はおそらく変性タンパク質、細胞成分及び培養液成分であろうということが示された。
実験は、許容不能な収率低下はこの最初の工程で生じるのか否かに関する問いに答えるために行った。比較的高い酵素装荷が以下の結果を生じるのではないかと考えられた:
(i)沈殿したタンパク質への生成物の不可逆的な吸収、
(ii)特に沈殿酵素が工程2(ラクトン化/アセチル化)へ送られた場合の、副反応による収率低下、
(iii)この段階又は後続段階で生成物と反応し得る他の成分を粗酵素調製物が含む。
以下によって前記の状況を改善する試みが実施された:
(i)酵素装荷を減らす、
(ii)使用前の単純な予備処理により酵素調製物の純度を高める、
(iii)限外ろ過によりトリオール酸生成物を使用済み酵素から分離する。
【0068】
酵素装荷の減少:最初に工程1を20%w/v基質(0.5M)で、20%w/w酵素/基質装荷で実施した。このような条件下では、反応は40℃で概して24〜36時間で完了した。続いてこの反応物を酸性化及び生成物の沈殿前に希釈した(0.5Mでの酸性化は常に濃厚なスラリーを生じ、前記は攪拌が困難であった)。例えば、配列番号4のエステラーゼによるロバスタチンの酵素的加水分解のための予備的実験を、図23に示すように15%から20%の装荷で0.35から0.5Mの基質で実施した。これらの実験は、高い基質装荷は達成できるが、変換速度は最適化を必要としていることを示した。
この反応は処理中に既に希釈を必要としたので、基質濃度の0.25M(10%w/v)への減少及び粗酵素注入の10%への減少はこのプロセスの容量効率に影響を与えないであろう。このような条件下では、酵素的加水分解は、24〜36時間でロバスタチン酸からトリオールへの99.5%変換率を提供した。
酵素の予備処理:熱処理は、所望の酵素と他の夾雑タンパク質との間に種々の熱安定性が存在するときは、粗酵素の純度を高める便利な方法としてしばしば用いられてきた。ロバスタチンエステラーゼは良好な熱安定性を示したので(工程1及び4は40〜50℃で実施される)、前記酵素は60℃で30分処理され、続いて遠心し、上清を加水分解に用いた。加熱予備処理酵素と未処理酵素との間に活性の相違はなかった。
限外ろ過:限外ろ過は、使用済み酵素及び他の高分子量不純物(前記はこの工程または後続の工程で吸収又は副反応により収率を低下させる可能性がある)からトリオール酸生成物を分離するための方法として考慮された。
ロバスタチンの加水分解が完了した後、可溶性トリオール酸塩を含む反応混合物を中空線維膜アッセンブリー(ポリスルホン微小孔メンブレンを有する中空線維モジュール;カットオフ10k;表面積1050cm2(Spectrum Labs MINIPROS(商標))に通した。流出液を収集し、残存する残留物を水で希釈し、前記アッセンブリーを通過させた。続いて一緒にした溶離液を酸性化し、沈殿したトリオール酸を収集した。4-アセチルシンバスタチン加水分解工程とは異なり、1つの例外を除き、生成物の主要な停滞は保持残留物中に観察されなかった。以下の表はいくつかの実験結果を示す。
1標準試薬に対する粗トリオール酸のHPLCアッセイ
2 HPLC純度を基準にした単離トリオール酸の収率
3単離された物質及び洗浄液、ろ液、残留物中の生成物(トリオール酸及びジオールラクトンの両者)を含む総収率
4反応混合物の酸性化及び沈殿トリオール酸と使用済み酵素のろ過
5沈殿前に反応混合物は中空線維の束を通過させた。
工程2:アセチル化:
図8及び図9はスキーム2、本発明の例示的ラクトン化/アセチル化反応及びその生成物を示す。ロバスタチン加水分解工程から得られる粗生成物は、トリオール酸及び変性タンパク質及び細胞/培養液成分を含む。以前にはこの粗生成物は、一工程/一容器プロセスではCH2Cl2(10〜15%w/v)に懸濁され、DMAP(0.15当量)の存在下で無水酢酸(3当量)で処理された。この反応はHPLCでモニターされ、典型的には2%未満のジオールラクトンが残存するときに反応は停止され、この時点で2%未満のジアセテートが生成された。特に反応が過剰に長時間攪拌されたときに、いくらかの脱離生成物が形成された。完了後に、反応を水の添加によって停止させ、不溶性物質をセライトパッドを介してろ過することによって除去した。このパッドをCH2Cl2で洗浄し、一緒にしたろ液を希薄酸(DMAP除去のため)及び飽和NaHCO3(酢酸除去のため)で洗浄した。塩基抽出の後、溶液を乾燥させ、ろ過して濃縮した。続いてヘキサンの添加によって白色固体として4-アセチルラクトンが生じた。
以前には、このような条件下で最初の排他的ラクトン化が生じ、続いて4-ヒドロキシルでアセチル化が生じ、長時間反応でのみビスアセチル化及び脱離が顕著になると考えられていた。
いくらかのデータによって、測定可能な量のアセチル化が先ず初めに開環された鎖型の3及び/又は5-ヒドロキシルで生じ、4-ヒドロキシルのアセチル化とそれに続くラクトン化によって所望の生成物が生成されるが、5-ヒドロキシルのアセチル化は最終的にビスアセチル酸型を生成することを示唆している(図8に示されたスキームを参照されたい)。この不純物は以前には脱離生成物と誤解されていた(両者は同様なHPLC保持時間を有する)。
図14の表のデータは、ジオールラクトン(ジアセチル酸副生成物を生成することができない)又はトリオール酸のどちらかを用いる、一工程ラクトン化/アセチル化条件の比較を提供する。
概して、トリオール酸は、材料の5〜8%がジアセチル酸副生成物に転換されるのでより低収率の4-アセチルラクトンを生じた。
この不純物を回避する1つの方法は、酸触媒ラクトン化を実施して、排他的にジオールラクトンを生成し、続いてアセチル化することである。この連続工程をジオールラクトンを単離することなく同じ容器で実施することができる(一容器/一工程プロセス)。以下の表に要約したように、2つのプロセスの直接比較を50gスケールで実施した。2つのプロセスは類似し、二工程アセチル化プロセスの全体収率が3〜4%高かった。
1トリオール酸及び酵素の酸沈殿
2反応混合物は酸沈殿の前に中空線維の束でろ過した。
3無水酢酸のみ
4酸触媒ラクトン化とそれに続くアセチル化
5単離物質及び母液中の物質を含む
この表のデータは、アセチル化工程は良好な質量バランスを示すことを明らかにしたので、収率低下の大半は工程1、ロバスタチンの加水分解及び単離で生じる。
【0069】
工程3:アシル化:
ラクトンの8位の化学的アシル化のための例示的プロトコルは図10に図示されている。以前の条件は、シンバスタチン側鎖の導入のためのアシル化剤として無水2,2-ジメチル酪酸を用いた。前記無水物は市販されておらず、さらにその調製で多量の酸塩化物を使用することは全体的なプロセスに対して化学薬剤のコストを非常に高いものにする。
実験では、遊離酸の捕捉のためにピリジン(2当量)とともにアシル化触媒としてLiBrの存在下で市販のジメチルブチリルクロリド(2当量)を用いた。処理の後、生成物溶液を乾燥するまで蒸発させ、得られた固体をiPrOHとともにすり潰し、スラリーをろ過して許容可能な品質の4-アセチルシンバスタチンを得た(全体的収率86〜89%;純度95%)。
工程4:酵素的脱アセチル化:
図11は、本発明の例示的反応、4-アセチルシンバスタチンの酵素的脱アセチル化を示す。4-アセチル化シンバスタチンの酵素的脱アセチル化には克服しなければならない、以下の2つの重大なハードルが存在する:
・出発物質(4-アセチルシンバスタチン)及び生成物(シンバスタチン)の両者の水溶液における不溶性;
・4-アセチル基の鋭敏性、前記は7より高いpHで急速に脱離する。
ロバスタチンの加水分解反応と異なり、4-アセチルシンバスタチンの加水分解はpH7近くで実施されねばならない(この場合ラクトン環の開環によって溶解性を高めることができない)。この工程を改善するために、以下のように、ロバスタチンの加水分解の場合と同じ方法が開発された:
(i)酵素装荷を減らす
(ii)使用前の単純な予備処理により酵素調製物の純度を高める、
(iii)限外ろ過により生成物を使用済み酵素から分離する、
(iv)基質の溶解性を高めるために界面活性剤を使用する。
(i)改めて、10%w/v(0.25M)の基質濃度を用い、かつ10%w/wに対する粗酵素装荷を減少させることにより、48時間で95%を超える変換率を示す反応が得られた。
(ii)また別の例示的加水分解反応を加熱予備処理酵素の上清を用いて実施した。
(iii)生成物の精製のために限外ろ過を使用することにより処理が複雑になった。シンバスタチンは水に不溶である(0.03mg/mL)。しかしながら、変換が完了したとき、反応混合物のpHは1当量のNaOHの変換によって上昇し、ラクトン環の開環及び生成物の溶解がもたらされる。続いて反応混合物を中空線維膜アッセンブリーでろ過して使用済み酵素を分離した。ロバスタチンの加水分解と異なり、シンバスタチン酸及び使用済み酵素を含む反応溶液の限外ろ過によって、顕著な量の生成物が前記膜アッセンブリー内に保持された。
溶離液を酸性化したが、シンバスタチン酸は沈殿せず、これを抽出して、そのアンモニウム塩として沈殿させた。この連続工程の全体的回収率は低かった。
(iv)5種の界面活性剤(トリトンX-100、トゥイーン80、トウィーン20、AOT及びCTAB)を、基質溶解性の増加により加水分解反応を強化するそれらの能力について調べた。トリトンX-100は0.05%w/vで小規模(1g)での反応速度を高めた。しかしながら、その効果は反応規模が増加するにつれて顕著ではなくなった。
最終反応条件では、5%MeOHが“湿潤剤”として用いられた。そうしなければ、不溶性の出発物質は、フラスコ壁に張り付いて上昇してきた。完了(>95%変換率)したと思われるとき、反応混合物をろ過し、フィルターケーキを真空下で乾燥させた。乾燥したフィルターケーキをCH2Cl2に懸濁し、ゲル様物質を含む褐色/灰色の粘稠溶液を得た。これをセライトパッドでろ過し、前記セライトパッドをトルエンで洗浄した。ろ液からCH2Cl2を除去し、ヘキサンを添加することによってシンバスタチンが88〜89%の全体的収率で沈殿した(標準物に対して純度97.5%)。さらに別の粗シンバスタチンバッチは全て、単一精製法としてトルエン/ヘキサンから結晶化させた。
【0070】
工程1−4:全工程収率:
全体的収率:以下の表(“全工程の収率概要”)は、2通りの50gスケール演習実験の全工程結果を示している。
全工程の収率概要
1%全体的収率は単離収率+母液/洗浄液などの生成物である。
2ロバスタチンの50g注入を基準にしたシンバスタチンの%収率である。
3トリオール酸及び酵素の酸沈殿。
4トリオール酸単離前に中空線維膜で反応物をろ過。
5同時ラクトン化/アセチル化、又はラクトン化の後でアセチル化
シンバスタチンの全体的収率は、51〜58%及び母液(トルエン/ヘキサン)に残存する5〜8%の物質であった。この物質の成分分析を実施し、HPLCアッセイに付したとき、市販等級のシンバスタチン標準物に対して純度は97.4〜97.5%であった。
不純物プロフィール:図12は、本発明のこの例示的プロトコルを用いて精製されたシンバスタチンの2つのバッチについてのHPLCトレースを示す。両サンプルが98%面積を有するシンバスタチンを示している。トルエン/ヘキサンから再結晶化することによって、大半の不純物のレベルを粗物質と比較して少なくとも50%減少させた。例えば未反応4-アセチルシンバスタチンは1.7〜1.8%から0.3〜0.5%に減少し、脱離生成物はさらに大きく1〜2%から0.2%に減少した。ジオールラクトン及び4-アセチルラクトンのレベルは0.5%から0.1〜0.2%に減少した。
図13はHPLC分析の説明図であり、50gスケール演習実験から単離したシンバスタチンサンプルの不純物プロフィールを示している。
要約:
・シンバスタチンは本発明の例示的な四工程酵素化学的プロセスを用いてロバスタチンから調製された。
・2つの50gスケールの演習実験で、シンバスタチンは51%及び58%の全体的収率で単離された。各工程の単離物質収率は以下のとおりであった:工程1〜2、82〜85%;工程3、83〜89%;工程4、74〜82%。工程3及び4では、さらに6〜14%の生成物が母液に残存していた。
・酵素装荷を10%粗酵素/基質に減少させ、さらに加熱予備処理と遠心上清の使用によってこの系の負荷となるデブリの量が減少した。反応混合物の限外ろ過は、使用済み酵素から生成物を単離することに対して明瞭な利点を提供しなかった。
プロセスを完了させるために必要とされる試薬:
工程1:ロバスタチン(kg);ロバスタチンエステラーゼ;トリス緩衝液(L);MeOH(L);EtOAc(L);ヘキサン(L)。
工程2:ジオールラクトン(kg);無水酢酸(kg);ジメチルアミノピリジン(kg);ジクロロメタン(L);EtOAc(L);ヘキサン(L);4-アセチルラクトン
工程3:4-アセチルラクトン(kg);ジメチルブチリルクロリド(kg);ジクロロメタン(L);EtOAc(L);MeOH(L);ヘキサン(L);4-アセチルシンバスタチン
工程4:4-アセチルシンバスタチン(kg);ロバスタチンエステラーゼ;トリス緩衝液(L);EtOAc(L);ヘキサン(L);トルエン(L);シンバスタチン
【実施例8】
【0071】
実施例8:ロバスタチンの酵素的加水分解
以下の実施例は、ロバスタチンの加水分解を含む本発明の例示的プロトコルを提供する。
工程1:酵素的加水分解:
・50g及び2x150gスケールのロバスタチン加水分解を実施した。反応は0.5M基質、pH9.5、40℃で実施し、pHは10%のNH4OHの添加により一定に維持した。
・3種の全ての反応は同様な性能を示し、ほぼ24時間で99%を超える変換率を達成した(基準化HPLCピーク面積による)。
・反応混合物はpH約2.5に酸性化した。反応の規模、攪拌の効率/強度及び希釈の程度に応じて、反応混合物はこの操作の間に“固化”することがあり、更なる希釈が必要であった。
・沈殿生成物は容易にろ過され、湿ったフィルターケーキは、真空オーブンでほぼ40℃で乾燥させた。
・静置により、さらに多くのトリオール酸及びジオールラクトンが酸性水性ろ液から沈殿した(1〜4%)。
考察:反応は0.5M(20w/v)基質で実施されるが、反応混合物は等容積までの水で希釈し、処理中に反応混合物が固化するのを防止する必要がある。容量効率は、反応を開始から0.5Mで実施することによって改善することができる。50g反応は、水性ろ液中に異常に大量のトリオール酸を示し(12%と概算される)、次工程でのより低い全体的収率をもたらした。
工程2:ラクトン化/アセチル化:
・3種の反応を50g及び150gの反応から得られた乾燥フィルターケーキ(トリオール酸/沈殿タンパク質)を用いて実施した。反応は標準的条件(4当量Ac2O、15%DMAP)下で予想通りに進行した。
・生成物はEtOAc/ヘキサンから沈殿させた。
・4-アセチルラクトンは2つの工程にわたって66〜78%収率(1回目の収集物)で単離され、母液にはほぼ7%が残存した。
工程3:アシル化:
・26g及び98gスケールで2つの反応を通常の条件下で実施した。
・小規模の方の反応は、2回の収集で4-アセチルシンバスタチンを79.8%収率で提供した。生成物はMeOH(2x)から単離された(水を添加することによってMeOHから生成物を沈殿させる試みは成功しなかった)。
・98g反応は処理後2つのプロセスストリームに分割した。一方の部分(材料のほぼ25%)は直接最後の酵素的加水分解工程に向けた。残りの材料はMeOH(2x)から沈殿させて、2回の収集で74%の収率を提供した。さらに12%の生成物が残留物に残っていた。
工程3:酵素的加水分解:
・27gスケールの反応(10%w/v基質)はpH7.5及び55℃(外部温度)で実施した。20時間で4−アセチルシンバスタチンの98%変換率が観察された。単離された粗物質のアッセイによって、シンバスタチンの91%収率が示された。物質を単離し、トルエン/ヘキサンから沈殿させて、2回の収集において88%収率でシンバスタチンが提供された。前記はロバスタチンからの全体的収率46%を表す。不純物プロフィール及びHPLCアッセイの結果は下記の表に示されている。
・ある事例では、粗アセチルシンバスタチンは最後の酵素的工程に精製することなく送られた。MeOH中のプロセスストリームは真空蒸留によって濃縮され、水で希釈したとき正確な濃度を提供した。しかしながら、基質は反応混合物から不溶性の柔らかい球体として沈殿し、前記は互いに融合した。トルエンを前記混合物に変換して基質を可溶化させた。酵素の添加により非常に穏やかな反応がもたらされた。92時間後、主要な生成物はシンバスタチン酸であり、ほぼ20%の脱離生成物が含まれていた。
・最後の69gスケール反応はpH7.5/50℃で穏やかであり、適切な変換率のために4日を要した。その間、ほぼ10%のシンバスタチン酸が生成された。生成物は60%収率で単離された。
考察:乾燥したフィルターケーキからのシンバスタチンの単離では、抽出効率は変動した。いくつかの実験はより長い反応時間を示したが、これは基質の品質を反映しているのかもしれない。図21に示されている表は、選択したシンバスタチンサンプルについての不純物プロフィール、HPLCアッセイ及び元素分析の結果を示している。
粗ロバスタチンの加水分解:
・粗ロバスタチンの加水分解(91%)を、2ロットの酵素(配列番号4、例えば配列番号3によってコードされる)を用いて4x10gスケールでpH9.5/40℃で実施した。この酵素による反応では99.5%の変換率がもたらされた(1つのロットは27時間後に96%の変換率を示し、別のロットは20%装荷で18.75時間で99.4%の変換率を示した)。
・3反応を一緒にし、ここに記載したように処理した。アッセイによって、粗フィルターケーキとしてトリオール酸の89.4%収率が示され、おおよそ5%が水性ろ液へ失われた。
・粗トリオール酸はここに記載した条件下でラクトン化/アセチル化された。
【実施例9】
【0072】
実施例9:ロバスタチンの酵素的加水分解
以下の実施例は、ロバスタチンの酵素的加水分解を含む本発明の例示的プロトコルを提供する。
工程1:ロバスタチンの酵素的加水分解:
A.使用済み酵素のトリオール酸からの分離
熱処理:
・酵素的加水分解が完了した後、4x10g反応を80〜85℃に1時間加熱した。変性タンパク質の明瞭な沈殿はなかった。反応物は白濁した緑色/黒色を維持した。室温へ冷却しても反応混合物の色又は粘度に明白な変化は生じなかった。
pH操作:
・10%メタノール/水(pH10.5)中に酵素粉末10gの溶液は、セライト(CELITE(商標))珪藻土(3g)で処理したとき容易にはろ過されない。
・pH6に調整することによって濃厚な沈殿が生じ、この沈殿は、等重量のセライト珪藻土と長時間攪拌した後でも容易にはろ過されなかった。
・pH6に調整し遠心した後、上清はなお、pHをさらに下げたときに沈殿する物質を含んでいる。
・トリオール酸はほぼ0.2MでpH9.5〜3.5の範囲で可溶性である。
ミクロフィルトレーション:
・遠心して少量の不溶物を除去した後、4x10g反応の一緒にした酵素加水分解物をスペクトラムラブ(Spectrum Labs)のポリスルホン中空線維束(10K MWカットオフ;1050cm2)でろ過した。これは、トリオール酸の沈殿前に高分子量物質を反応混合物から除去するための便利な方法である。溶液は合理的な速度(ほぼ1L溶液についてほぼ3〜4時間)でろ過される。
・ミクロフィルトレーションの後で、流出液のpHの低下はpHがほぼ4になるまで沈殿をもたらさない。沈殿したトリオール酸は容易にろ過され真空下で乾燥される。
B.酵素バッチの性能
・4ロットのロバスタチンエステラーゼを用いた。
・0.5M/20%酵素装荷及び0.25M/10%酵素装荷で4ロットの酵素を比較することによって、全てのロットが23時間で99%の変換率及び23〜40.5時間で99.5%を超える変換率を有し、類似する性能を持つことが示された。
・2つの酵素使用テスト(4x10g及び5x10g)をミクロフィルトレーション処理に付した。両テストで、単離トリオール酸は、トリオール酸の標準試薬に対してアッセイしたとき、純度はほんの82.7%及び83.8%であった。残留物をアッセイしたときでも物質の83〜86%のみがトリオール酸であった。
【0073】
工程2:ラクトン化/アセチル化:
本発明は、図22に示すように、トリオール酸から対応するジオールラクトン、3-ジアセチルトリオール酸及び5-ジアセチルトリオール酸への変換、並びに前記に続く3,5-ジアセチルトリオール酸、4-アセチルラクトン及び脱離生成物への変換を含む方法を提供する。
・多量のトリオール酸及びジオールラクトンが化学的加水分解(KOH/MeOH)及び共沸ラクトン化(iPrOAc)によって製造された。標準試薬と比較して、トリオール酸は純度99.4%であり、一方、ジオールラクトンの純度は94.5%であった。
・両化合物を標準条件下でラクトン化及び/又はアセチル化に付した(Ac2O、15%DMAP;CH2Cl2中で10%w/v)。
・反応はHPLCでモニターし、水で急冷して停止させ、酸及びNaHCO3で洗浄した。CH2Cl2は既知の体積に希釈し、4-アセチルラクトンの標準試薬に対してアッセイした。全ての水性洗浄液及び残留物もまたアッセイした。
・トリオールの2つのラクトン化/アセチル化反応は、アッセイ溶液に78.9%及び87.4%の収率を与えた。生成物中の不純物には以下が含まれていた(HPLC面積%):0.4%ジオールラクトン、5.6%脱離物、1.5%4,8-ビスアセチルラクトン、0.5%未知物質。
・ジオールラクトンの2つのアセチル化反応は、アッセイ溶液に88.5%及び94.7%の収率を与えた。生成物中の不純物プロフィールはトリオール酸反応の場合よりも純粋であった。
・より希薄な条件下の0℃でのCH2Cl2中の以前の反応は、HPLCにジオールラクトンよりも長い保持時間をもつ2つの新規なピークが存在することを示した。これらのピークは反応が進行するにつれて減少した。アセチル化が進行するにつれて、アセチルラクトンピークの直前のピークが増加する。このピークは以前に脱離ラクトン生成物に割り当てられた。LC-MSデータは、このピークは実際には脱離生成物と3,5-ジアセチルトリオール酸の複合物であることを示唆している。これらの反応及び対応する生成物の説明のためには図22を参照されたい(トリオール酸の対応するジオールラクトン、3-ジアセチルトリオール酸及び5-ジアセチルトリオール酸への変換、並びに後続の3,5-ジアセチルトリオール酸、4-アセチルラクトン及び脱離生成物への変換)。
前もって生成されたジオールラクトンのアセチル化は、トリオール酸のラクトン化/アセチル化よりも高い収率及びより純粋な生成物を提供した。
【0074】
工程3:アシル化:
4-アセチル基を除去するための本発明のまた別の方法は以下のとおりである:
・酵素触媒アルコーリシス:MeOH(32当量)の存在下でトルエン中の5つの酵素を用いても反応は惹起されない;これらの反応に水(0.6%v/v)を添加しても加水分解は全く生じなかった。
・水分を含む、水に混和性の溶媒(9溶媒)中での酵素的加水分解:酵素(配列番号4、例えば配列番号3によってコードされる)のあるロットを用いた43時間後に生成物の存在徴候は全くなく、種々の程度の脱離が観察された。
・酵素触媒アミノリシス:トルエン又はMTBE中のBuNH2を用い7つの酵素で実施;バックグラウンドの脱離物質が主要生成物である。
・H2O2/NaHCO3:MeOH、THF又はアセトン中の50%H2O2の量を増加させながら過剰な固体NaHCO3の存在下;アセテート除去の徴候無し。
・酸触媒メタノリシス;30%HCl/MeOH中の0.1Mアセチルシンバスタチンは一晩でシンバスタチンとシンバスタチンメチルエステルの混合物を生成する。
【実施例10】
【0075】
実施例10:ロバスタチンの酵素的加水分解の小部分要素設計
反応の最適化のために、ロバスタチンの酵素的加水分解を小部分要素設計(fractional factorial design)に付した。小部分要素設計は、0.35Mロバスタチン酸、Na塩によりデザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いて実施した。結果は図24に示されている。図24の注釈は以下のとおりである:
1酵素活性はメチルウンベリフェリルブチレートで測定し、0.1μgの総タンパク質に対して得られる勾配として表した。
23時間までのトリオール酸生成速度
345.5時間で生成されるトリオール酸(%)
4つの要素がロバスタチン酸の加水分解に影響を与える。すなわち図25に示されるように、生成されるトリオール酸(%)、酵素濃度、緩衝液濃度及びMeOHである。ここで、全ての反応を、配列番号4を含む清澄化大腸菌溶解物を用いて実施した。反応は定常pH条件下でDasGIP FEDBATCH-PRO(商標)システムで実施した。
レスポンスサーフェスアナリシス(RSA)を、デザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いて0.35Mのロバスタチンの加水分解について、セントラルコンポジットデザインを用いて実施した。結果は図26に示されている。図26の注釈は以下のとおりである:
1酵素活性はメチルウンベリフェリルブチレートで測定し、0.1μgの総タンパク質に対して得られる勾配(RFU/s)として表した。
23時間までのトリオール酸生成速度
345.5時間で生成されるトリオール酸(%)
ロバスタチンの配列番号4によるin situ加水分解は些少のNaClが生成されるように最適化された。すなわち、MeOH中の0.85gのロバスタチン及び等モルのNaOHが変換された。配列番号4を含む清澄化した大腸菌溶解物をロバスタチン酸に添加した。重要な要素は以下のとおりであった。すなわち、メタノール濃度([MeOH])、酵素濃度([酵素])は極めて重要で、緩衝液濃度([緩衝液])は低い[酵素]でわずかに影響を有した。これらの結果の要旨の図解については図27を参照されたい。
レスポンスサーフェスアナリシス(RSA)の結果をロバスタチンの大規模加水分解に、例えば図28に示すプロトコル(下記)を用いて応用することができる:
*反応は100gスケール(0.5M)で連続的に実施した;
*27時間で97.5%変換率
*生産性:xg/gエステラーゼ/時間
*比活性:0.084μmol/mgエステラーゼ/分。
配列番号4の基質特異性を調べた。すなわち、図29に示すように、シンバスタチンの多くの4-アシル誘導体は配列番号4によって活発に加水分解される。アセチルシンバスタチンの化学的加水分解は、ラクトン環の脱水をもたらす。
【実施例11】
【0076】
実施例11:例示的加水分解プロトコル
本実施例は、例えば図5及び6のような、シンバスタチン及び中間体を製造するための工業的スケールアッププロセスを含む、本発明の例示的プロトコルについて述べる。配列番号4を用いる、ロバスタチンのトリオール酸への酵素的加水分解のためのプロトコル(例えば図5の工程1参照)が達成された。図30は、この例示的ロバスタチン加水分解プロトコルの結果を示している。配列番号4の酵素供給源はミニ発酵装置から得た溶解物であった。本プロトコルは、10Lの発酵(214g)から得られた凍結乾燥物による12gスケール(0.5M)において39時間で99%変換率(24時間で90%)をもたらした。本実験に用いたパラメーターの要旨は以下のとおりである:
触媒装荷 変換率 時間
56%w/w 100% 約4時間
33%w/w 97% 約24時間
22%w/w 97% 約24時間
22%w/w凍結乾燥物装荷で、10L発酵液を使用することにより1kgのロバスタチンが加水分解される。
ロバスタチンからロバスタチン酸、トリオール酸への大規模の酵素的加水分解を、図31に示されているように、DASGIP AG-PRO(商標)バイオリアクターで、定常pH9、500mM基質、7%MeOH、40℃で実施した。ロバスタチンからジオールラクトンの酵素的加水分解のスケールアップした例示的プロトコル(前記は工業的スケールの例示的プロセスであり得る)は、図32の模式図に示されている。この反応は、図33に反応パラメーター(反応スケール、処理、理論的収率、生成物(g)、%収率)の要旨とともに図33に示されている。(a)50gの反応のデータは、図34A(ラクトン化及び濃縮後)及び34B(粗生成物)に要約され、さらに(b)100gの反応のデータは図35A(トリオール酸)及び35B(ラクトン化後)に要約されている。
メチル(Me)4-アセチルシンバスタチンは、図6の工程5に示した反応を用いて酵素によりシンバスタチンに加水分解した。この反応の結果及び結論は以下のとおりである:
*7を超えるpHでの活発な脱離(pH8で13%);
*酵素的加水分解は容易に生じるが可溶性によって制限される;
*ホルメート>アセテート〜クロロアセテート>メトキシアセテート;
*100mM(5%w/v)はpH7で一晩で加水分解される;
*200mMは50℃、10%MeOH中で20時間で84%の変換率;
*200mMは50%w/vの凍結乾燥物で7時間で89%の変換率;
*400mMはトルエンを用いた場合二相性を示す;
*反応は80〜90%まで進行し続いて停止する;
*不溶性シンバスタチンは未反応基質を捕捉する。
これらの反応(300mM(14%w/v)基質、全反応でオーバーヘッド攪拌及び下方では攪拌棒を使用、10%NH4OHによりpH7、50℃)及び最終的変換率を要約すれば:
*270mMアセチルシンバスタチン、13mMホモシンバスタチン、等容積トルエンとして溶媒を使用、最終変換率は88.2%。
*300mMアセチルシンバスタチン、10%メタノール(MeOH)として溶媒を使用、最終変換率は91.3%。
*300mMアセチルシンバスタチン、10%メタノール(MeOH)として溶媒を使用、6時間でトルエンを添加、最終変換率は96.1%。
【実施例12】
【0077】
実施例12:シンバスタチンへのホモジアシル化経路
本実施例は、図38及び図39に示すように、本発明の例示的プロトコル、シンバスタチンの製造のためのホモジアシル化プロセスについて述べる。ある特徴では、本ホモジアシル化プロセスは以下の工程を有する方法を含む:(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解してトリオール酸を生成する工程;(b)前記トリオール酸からジオールラクトンをラクトン化によって生成する工程;(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位(4'-OH)及び8位(8'-OH)を化学的アシル化によってアシル化して4,8-ジアセチルラクトンを生成する工程;及び(d)前記4'位のアシル基を酵素的加水分解によって選択的に除去し、それによってシンバスタチンを製造する工程。
本発明のホモジアシル化プロセスを用いる利点は以下であろう:
*四工程合成;
*同じ場所でのロバスタチンの酵素的加水分解;
*ただ1つのアシル化剤−位置選択性なし。
本発明のホモジアシル化プロセスをいつ用いるべきかを決定する際に考慮すべき事柄:
*過剰なジメチルブチリルクロリドを使用しなければならない可能性がある;
*過酷な条件−おそらく許容不能なレベルの脱離が発生し得る;
*酵素的加水分解に困難が存在し得る;
*アシル化のための穏やかな条件を使用し得る;
*4'-ジメチルブチレートの除去に問題がある可能性がある。
ある特徴では、本発明のホモジアシル化プロセスは図39に示すように実施される。加水分解は配列番号4を1mMスケールで用いて実施し、シンバスタチン及びシンバスタチン酸が生成された。100mMバイオリアクターを用いた。主としてトリオール酸が生成され、微量のシンバスタチンが存在していた。可溶性に注意する必要があるかもしれない。種々の基質濃度での小規模反応を実施した。2日後の変換率は以下のとおりであった:
図40A及び40Bは、それぞれ1mMホモシンバスタチン及び10mMホモシンバスタチンの反応条件での、配列番号4によるホモシンバスタチンの加水分解、及び生じた反応生成物を示すグラフである。
【実施例13】
【0078】
実施例13:シンバスタチン製造の例示的プロセス
本実施例は、シンバスタチン、シンバスタチン中間体又は等価の化合物を製造する本発明の例示的プロセスについて述べる。この本発明の例示的プロセスは、(i)ロバスタチンエステラーゼによるロバスタチンの加水分解及び後続の“一容器/一工程”ラクトン化/アセチル化(工程1及び2として)、(ii)BF3(Et2O) (A)触媒又はCu(OTf)2(B)触媒を用いる無水ジメチル酪酸による4-アセチルラクとのアシル化(工程3として)、(iii)ロバスタチンエステラーゼによるアセチルシンバスタチンの加水分解(工程4として)を含む。無水ジメチル酪酸/ピリジン/DMAP(C)によるアシル化を比較に含め、この方法の利点を示した。
4-アセチルラクトン(50gスケール):
図19に示すように、4-アセチルラクトンを製造する例示的プロセスは以下を含む:
1.ロバスタチン(50.05g、124mmol)を、磁気撹拌棒及びN2注入口を備えた1Lの3首フラスコに秤量して入れた。2MのNaOH(65mL、130mmol)を添加し、このスラリーを攪拌した。MeOH(10mL)及びBHT(0.25g)を加え、そのスラリーを50℃の水浴中で1時間攪拌した。この時までに、全てのロバスタチンを溶解し粘稠でわずかに黄色の溶液が生じた。この溶液を水(175mL)で希釈し、温度を40℃に調整した。
2.一方、ロバスタチンエステラーゼ(凍結乾燥粗酵素5.0g)を秤量してポリプロピレン遠心ビンに入れ、水(100mL)に懸濁させ室温で30分攪拌した。続いてこの混合物を4℃で15分、10,000rpmで遠心した。上清をロバスタチン酸反応混合物に加えた。遠心ビンをさらに新たな水(150mL)で水洗し、前記を反応混合物に添加した(下記注記1参照)。
3.反応物のpHをpH9.5に調整し、40℃及びpH9.5に、DASGIP AG-PRO(商標)バイオリアクターで、10%のNH4OHの自動添加により維持した。
4.反応混合物のアリコット(25μL)を定期的に取り出し、MeOHで希釈してHPLCによって調べた(下記注記2参照)。26.5時間後には0.5%の未反応ロバスタチン酸が残存していた。反応は43時間後に停止させた。
5.反応混合物を1Lビーカーで800mLに希釈し、+12℃に冷却した。激しく攪拌しながら、pHを6MのHClでpH2.5に下げた。沈殿した固体をN2下でろ過し、水(300mL)で洗浄し、湿ったフィルターケーキを真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(下記注記3参照)。
6.粗トリオール酸フィルターケーキを1Lの3首フラスコ中のCH2Cl2(500mL)に懸濁せせた。前記フラスコは、温度計、添加用漏斗、磁気撹拌棒及びN2注入口を備えていた。このスラリーを氷浴で冷却し、N2下で攪拌した。
7.ジメチルアミノピリジン(2.24g、18.3mmol;0.15当量)を反応混合物に添加した。無水酢酸(35mL、0.37mol;3当量)を前記添加用漏斗に置き、12分かけて反応混合物に滴々と加え、温度は8.5〜9.2℃に維持した。
8.反応混合物のアリコット(25μL)を30分毎に取り出し、MeOHで希釈してHPLCで調べた(下記注記4参照)。
9.30分後、冷却浴を取り除き、反応物を室温で攪拌した(下記注記5参照)。反応はAc2Oの添加後6.5時間で停止させた(下記注記6参照)。反応混合物をセライトパッドでろ過し、前記パッドをCH2Cl2(2x100mL)で洗浄した。一緒にしたろ液を水(200mL)、1.2MのHCl(200mL)及び水(100mL)で洗浄した。
10.有機層をロトヴァップ(rotovap)で濃縮し(250mL除去)、EtOAc(300mL)で希釈した。水(400mL)及び固体のNaHCO3(53g)を前記有機溶液に添加し、混合物を30分攪拌した。有機層を分離させた。水相を水(400mL)で希釈し、EtOAc(150mL)で抽出した。EtOAc抽出物を一緒にし、水(100mL)及び飽和NaCl(50mL)の混合物で洗浄し、続いて飽和NaCl(100mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過して濃縮した(600mLの体積から420mLを除去)。
11.青黄色の濃縮溶液をオーバーヘッド攪拌装置で攪拌し、ヘキサン(200mL)を迅速に添加して濃厚な白色沈殿を生成した。ヘキサンのさらに新たな部分(300mL)を添加し、混合物を氷浴で1時間冷却した。
12.沈殿固体をろ過し、20%冷EtOAc/ヘキサン(80mL)で洗浄し、0.5時間風乾し、続いて真空オーブンで一晩40℃で乾燥させた。
13.母液を乾燥するまで蒸発させた。得られた黄色の油をEtOAc(25mL)に再溶解し、ヘキサン(175mL)を滴下して加えることにより第二の収集を沈殿させた。沈殿させた固体をろ過により収集し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させた(下記注記7参照)。
【0079】
注記:
1.反応物の全体積は500mLで、0.25Mの基質濃度(10%w/v基質)及び10%w/vの粗酵素装荷に対応する。
2.サンプルは、DADを備えたWaters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.5%AcOHイソクラチック;1mL/分;30℃;238nm)を用いて分析した。溶出の順序は以下のとおりであった:トリオール酸1.4分;ジオールラクトン、1.9分;ロバスタチン酸、3.8分;ロバスタチン、7.3分。
3.この段階でのフィルターケーキ(43.61g)は粗トリオール酸及び沈殿タンパク質から成る。トリオール酸の標準試薬に対するHPLC分析によって、水性ろ液は0.69gのトリオール酸(1.6%)及び0.69gのジオールラクトン(1.8%)を含むことが示された。
4.サンプルは、DADを備えたWaters1100シリーズHPLCで、ZORBAX SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(45%MeCN/0.5%AcOHイソクラチック;1mL/分;30℃;238nm)を用いて分析した。溶出の順序は以下のとおりであった:トリオール酸1.4分;ジオールラクトン、1.9分;ジアセテート酸/脱離物、3.6分;4-アセチルラクトン、4.1分;ジアセテート、7.6分。
5.反応混合物は、初めは塊状であったが、激しい攪拌によって数個の主要な塊に分解した。2時間後に反応混合物を超音波処理し、いくつかのより小さな塊に分散し、それははそのまま持続した。粗トリオール酸のフィルターケーキは、溶媒に懸濁する前にすり潰すことが推奨される。最終的な反応混合物はミルク状の白色懸濁液であった。
6.反応停止前のHPLCによって、1.1%のジオールラクトン、3.9%のジアセテート酸/脱離物、及び1.2%のジアセテートの存在が示された。
7.生成物の総収率は下記の表に示されるように算出された:
【0080】
4-アセチルシンバスタチンの合成:
図18Cに示すように、4-アセチルシンバスタチンの製造のための例示的プロセスは以下を含む:
A.三フッ化ホウ素エテレート触媒
1.4-アセチルラクトン(110g、0.3mol)を2Lの2首フラスコ中で一晩真空(0.1torr)下で乾燥させた(下記注記1参照)
2.この反応は湿気の存在に鋭敏であるので、初めに過剰の無水物をアセトニトリルに添加し、一切の残留水を除去した。
3.新しく開封したBF3OEt2を用いるべきである。以前に開封された試薬は穏やかな反応をもたらすか、又は反応すら生じないことがある。
4.CH2Cl2/MeCN比は7:1であった。典型的には前記の比は6:1から9:1の間であった。反応はMeCN中ではより速いが、望ましくない純度プロフィールをもつ生成物が生じる。
5.MeOHは粗生成物が固化する前に添加されるべきである。そうでなければMeOHに再溶解させることが困難である。熱MeOHに固体生成物を溶解すれば分解が発生し、したがって収率が低下した。
6.総固体生成物は110g(78.7%)であった。最後の母液を乾燥するまで蒸発させ、残留物を標準試薬に対してアッセイし、さらに9.02g(6.8%)の生成物が含まれることが示された。さらにほぼ2%の生成物が水性洗浄液に残っていた。
B.Cu(OTf)2/無水物法
1.10.0gの4-アセチルラクトン(10.0g、27.6mmol)を真空下で1時間室温で乾燥させ、続いて無水CH2Cl2(60mL)に溶解し、窒素下で攪拌した。
2.一方、無水MeCN(7.0mL)中のCu(OTf)2(0.5g、5mol%)及び無水2,2-ジメチル酪酸(7.15mL、3.05mmol)の溶液を調製し、封入フラスコ内にて室温で攪拌した。
3.ラクトン溶液を15℃に冷却した。Cu(OTf)2(0.5g、5mol%)及び2,2-ジメチルブチル無水物(7.15mL、3.05mmol)の溶液を注入ポンプを用いて滴々と加えた。反応をHPLCでモニターし、3.0時間内に完了と判定した。
4.反応を水(20mL)で停止し、CH2Cl2(100mL)と飽和NaCl(100mL)で分配した。続いて有機層を、1Mリンゴ酸(50mL)及び飽和NaCl(50mL)の混合物で、その後飽和NaCl(100mL)で10分間攪拌した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し蒸発させて粗生成物を得た(12.8g>100%収量(重量))(下記注記1、2参照)
注記:
1.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(92.5%)、脱離生成物(2.7%)、ビスシンバスタチン(1.7%)、未同定不純物(3.1%)。
2.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィー後に61%で単離された。
C.ピリジン/DMAP法
1.4-アセチルラクトン(2.6g、7.2mmol)を室温で一晩真空下で乾燥させ、続いて無水ピリジン(6.0mL)に窒素下で攪拌しながら室温で溶解させた。1.5mLの無水ピリジン中のDMAP(176mg、0.2当量)の溶液を添加し、この混合物を氷浴中で冷却した。
2.2,2-ジメチルブチリルクロリド(7.72g、8当量)を、注入ポンプを用いて15分にわたって滴下した。この混合物を0℃で約1時間攪拌し、続いて室温で1時間攪拌した。
3.前記反応混合物を質素下で40℃で加熱し、反応をHPLCでモニターした。4-アセチルラクトンが消費された後(2日間)、回転蒸発装置でピリジンを除去した。残留物をEtOAc(20mL)と飽和NaCl(20mL)とで分配した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し蒸発させて粗生成物を得た(96.5%)(下記注記1、2参照)。
注記:
1.HPLC面積%による生成物の分布は以下のとおりであった:4-アセチルシンバスタチン(79.5%)、脱離生成物(12%)、ビスシンバスタチン(2%)、未同定不純物(6.5%)。
2.4-アセチルシンバスタチンはカラムクロマトグラフィー後に43%で単離された。4-アセチルシンバスタチンはSiO2クロマトグラフィーに対して限定的安定性を有すると考えられる。
【0081】
4-アセチルシンバスタチンのロバスタチンエステラーゼによる加水分解
図18Dに示されるように、4-アセチルシンバスタチンを製造する例示的プロセスは以下を含む:
1.4-アセチルシンバスタチン(39.69g、86.2mmol)を秤量し、攪拌棒及びpH電極を備えた500mLの3首丸底フラスコに加えた(下記注記1参照)。水(295mL)、MeOH(20mL)及びBHT(0.24g)を添加した。水浴中で50℃で攪拌し、0.5MのNaOHでpH7〜8に調整した。
2.ロバスタチンエステラーゼ(7g)を遠心ビンに秤り入れ、水(150mL)に懸濁した。混合物を60℃で30分攪拌し、続いて氷上で冷却した。続いて混合物を10,000rpmで4℃で125分遠心した。上清の一部(92mL)を反応混合物に添加した。
3.反応物を50℃で攪拌し、DASGIP FEDBATCH-PRO(商標)システムを用い、10%のNH4OHの自動添加によりpH7.5を維持した。
4.反応混合物のアリコット(25μL)を定期的に取り出し、MeOHで希釈してHPLCで調べた(下記注記2参照)。42時間後に変換率は96.8%であった(出発物質に対する生成物のピーク面積の比)。反応は64時間後に停止させた。
5.反応混合物は、ワットマン(Whatman)#1ろ紙を備えた13cmブッフナー漏斗でろ過し、フィルターケーキを水(100mL)で洗浄した。湿ったフィルターケーキを真空オーブンにおいて40℃で一晩乾燥させた(下記注記3参照)。
6.乾燥させたシンバスタチンのフィルターケーキをCH2Cl2(200mL)に懸濁した。この混合物を室温で攪拌して、ゲル様物質を含む粘稠な褐色溶液を得た。セライト(1g)を前記混合物に添加し、攪拌を継続した。続いて混合物を、目の粗い焼結ガラス漏斗上のセライトパッド(10g)でろ過した(注記4)。セライトパッドをトルエン(100mL)で洗浄した。
7.ろ液をロトヴァップ上で濃縮してCH2Cl2を除去した(浴温度20℃)。残留物をトルエン(150mL)で希釈し、室温で攪拌した。ヘキサン(50mL)をゆっくりと滴下して加えた。沈殿は添加が完了する前に開始した。このスラリーを一晩室温で攪拌した。続いて前記スラリーを氷浴で冷却し、さらに新たなヘキサン(50mL)を滴下した。続いて冷スラリーをろ過し、フィルターケーキを25%冷トルエン/ヘキサン(50mL)で洗浄した。フィルターケーキを簡単に風乾し、続いてほぼ30℃で真空下で乾燥させた。
8.第二の反応を同じ規模で同様な条件下で実施した(40.68g、88.3mmol)。これら2つの実験の結果は注記5で表にされている。
【0082】
注記:
1.出発物質及び生成物は両者とも不溶性であるので、効率的な攪拌が必要である。材料はフラスコの壁に付着する傾向があり、反応の程度の分析で潜在的な誤差をもたらす。出発物質をすり潰して粒子サイズを減少させ、さらに湿潤剤の使用が推奨される。
2.サンプルは、Waters1100シリーズHPLCで、Zorbax SB-フェニルカラム(4.6x75mm)(60〜90%MeCN/0.5%AcOHグラジエント;1mL/分;RT;238nm)を用いて分析した。グラジエント及び溶出順序は以下のとおりであった:
3.この段階でフィルターケーキ(35.28g)は、粗シンバスタチン及びいくらかの酵素関連物質から成っている。シンバスタチンの標準試薬に対するHPLC分析によって、水性ろ液は0.30gのシンバスタチン(1.0%)を含んでいることが示された。
4.可溶性ゲル様物質はセライトパッドの最上部にスラッジを形成することができ、前記はろ液を汚す。
5.上述の2つの実験の結果は以下のとおりである:
【0083】
本発明の多数の実施態様を述べてきた。にもかかわらず、多様な改変が本発明の範囲から外れることなく実施できることは理解されよう。したがって、他の実施態様も以下の請求の範囲内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】下記実施例5で詳細に検討される、4-アセチルラクトンのトリフレート及びBF3エテレート触媒アシル化のための例示的プロトコルの説明図である。
【図2】下記実施例5で詳細に検討される、表3として示した、いくつかのBF3・OEt2触媒アシル化の結果の説明図である。
【図3】下記実施例5で詳細に検討される、12gのアシル化反応の生成物についての沈殿前後の不純度プロフィールを示す、表4による説明である。
【図4】下記実施例5で詳細に検討される、シンバスタチン単離についてのデータを示す、表8による説明である。
【図5】本発明の例示的方法、ロバスタチンからシンバスタチンを合成する四工程ヘテロジアシル化を示す。
【図6】図6A及び6Bは、本発明の例示的方法、ロバスタチンからシンバスタチンを合成する五工程経路(図6A)、及びロバスタチンからシンバスタチンへの変換の要旨(図6B)を示す。
【図7】下記実施例6で詳細に検討される、アセチルシンバスタチンの酵素的加水分解の例示的プロトコルの結果のHPLC分析を示す。
【図8】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的ラクトン化/アセチル化及びその生成物を示す。
【図9】図9Aは、下記実施例7で詳細に検討される、トリオール酸から4-アセチルラクトンを生成することを含む、本発明の例示的ラクトン化/アセチル化プロトコルを示す。図9Bは、下記実施例5で詳細に検討される、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを生成することを含む、本発明の例示的方法を示す。図9Cは、下記実施例5で詳細に検討される、4-アセチルシンバスタチンのシンバスタチンへの変換を含む、本発明の例示的方法を示す。
【図10】下記実施例7で詳細に検討される、8位の化学的アシル化のための例示的プロトコルを示す。
【図11】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的反応、4-アセチルシンバスタチンの酵素的脱アセチル化を示す。
【図12】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的プロトコルを用いて生成されるシンバスタチンの2つのバッチについてのHPLCトレースを示す。
【図13】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的プロトコルを用いて生成されるシンバスタチンサンプルのための不純度プロフィールを示すHPLC分析を示す。
【図14】下記実施例7で詳細に検討される、本発明の例示的プロトコル、出発物質としてトリオール酸を用いる一工程ラクトン化/アセチル化の比較を示す表である。
【図15】下記実施例5及び7で詳細に検討される、エステラーゼを用いてロバスタチンをトリオール酸に加水分解することを含む、本発明の例示的反応を示す。
【図16】図16Aは、下記実施例6で詳細に検討される、ロバスタチンからロバスタチン酸を、及びロバスタチンからトリオール酸を製造する例示的方法を示す。図16Bは、下記実施例6で詳細に検討される、トリオール酸からジオールラクトンを製造する例示的方法を示す。図16Cは、下記実施例6で詳細に検討される、ジオールラクトンからアシルラクトンを製造する例示的方法を示す。図16Dは、下記実施例6で詳細に検討される、ラクトン化及びラクトン4位でのアシル化を含む本発明の例示的プロトコルを示す。図16Eは、下記実施例6で詳細に検討される、アシルラクトンからアシルシンバスタチンを製造することを含む本発明の例示的プロトコルを示す。図16Fは、下記実施例6で詳細に検討される、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩及びシンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを製造することを含む本発明の例示的プロトコルを示す。
【図17】図17Aは、下記で詳細に検討される、ルイス酸を用いて、ジオールラクトンからシンバスタチン、4'-アシルラクトン(イソシンバスタチンとも称される)及びホモシンバスタチン(ビスシンバスタチンとも称される)を製造する方法を含む本発明の例示的反応を示す。図17Bは、下記に詳細に検討される、酵素的加水分解によって、シンバスタチン、4'-アシルラクトン(イソシンバスタチンとも称される)及びホモシンバスタチン(ビスシンバスタチンとも称される)からシンバスタチン及びジオールラクトンを製造することを含む本発明の例示的反応を示す。
【図18】図18Aは、下記実施例3で詳細に検討される、4-アセチルジオールラクトンの合成のための方法を含む本発明の例示的反応を示す。図18Bは、下記実施例3で詳細に検討される、4-アセチルラクトンの構造、対応するジアセテートの構造及び脱離生成物を示す。図18Cは、下記実施例4で詳細に検討される、4-アセチル-シンバスタチンの合成を含む本発明の例示的反応を示す。図18Dは、下記実施例4で詳細に検討される、ヒドロラーゼによる4-アセチルシンバスタチンの加水分解を含む本発明の例示的反応を示す。図18Eは、下記実施例2で詳細に検討される、ロバスタチンからトリオール酸への酵素的加水分解を含む本発明の例示的反応を示す。
【図19】下記実施例13で詳細に検討される、4-アセチルラクトンを製造するための例示的方法を示す。
【図20】下記実施例5で詳細に検討される、対応する脱離生成物とともに酸による4-アセチルシンバスタチンのシンバスタチンへの加水分解を示す。
【図21】下記実施例8で詳細に検討される、選択したシンバスタチンサンプルについての不純度プロフィールデータ、HPLCアッセイデータ及び元素分析の結果を示す表である。
【図22】下記実施例9で詳細に検討される、本発明の例示的反応、例えばトリオール酸の対応するジオールラクトン、3-アセチルトリオール酸及び5-アセチルトリオール酸への変換、並びにその後の3,5-ジアセチルトリオール酸、4-アセチルラクトン及び脱離生成物への変換の説明図である。
【図23】下記実施例7で詳細に検討される、配列番号4のエステラーゼによるロバスタチンの酵素的加水分解のための実験の説明図である。
【図24】下記実施例10で詳細に検討される、デザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いたフラクショナル・ファクトリアル・デザインによるロバスタチンの酵素的加水分解の最適化の説明図である。
【図25】下記実施例10で詳細に検討される、ロバスタチン酸の加水分解に影響を与える4つの因子を要約した説明図である。
【図26】下記実施例10で詳細に検討される、デザインエキスパート(DESIGN EXPERT(商標))ソフトを用いたロバスタチンの加水分解について中心的複合デザインを用いて実施したレスポンス・サーフェス・アナリシス(RSA)の結果を示す。
【図27】下記実施例10で詳細に検討される、配列番号4によるロバスタチンのin situ加水分解の最適化の結果を示す。
【図28】下記実施例10で詳細に検討される、本発明の例示的反応、大規模ロバスタチン加水分解プロトコルを示す。
【図29】下記実施例10で詳細に検討される、配列番号4によって加水分解されたシンバスタチンの4-アシル誘導体を示す。
【図30】下記実施例11で詳細に検討される、配列番号4を用いた本発明の例示的ロバスタチン加水分解プロトコルの結果を示す。
【図31】下記実施例11で詳細に検討される、スケールアッププロトコルにおける、ロバスタチンからトリオール酸への例示的な酵素的加水分解を示す。
【図32】下記実施例11で詳細に検討される、ロバスタチンからジオールラクトンへの酵素的加水分解のスケールアッププロトコルを示す。
【図33】下記実施例11で詳細に検討される、スケールアッププロトコルで用いられるロバスタチンからジオールラクトンの例示的な酵素的加水分解を、反応パラメーターの要旨とともに示す。
【図34】50gの反応のラクトン化及び濃縮後(図34A)及び粗生成物(図34B)のデータの要旨をグラフで示す。
【図35】100gの反応のトリオール酸(図35A)及びラクトン化後(図35B)のデータの要旨をグラフで示す。
【図36】下記実施例11で詳細に検討されるように、4-アセチルラクトンが4-アセチルシンバスタチンにアシル化される、酵素的加水分解反応の10gスケールアップから得られたデータの要旨をグラフで示す。
【図37】下記実施例11で詳細に検討される、本発明の方法で用いられる例示的な化学的アシル化、アシルトリフレートを用いるルイス酸触媒アシル化を示す。
【図38】下記実施例12で詳細に検討される、ホモジアシル化経路によるロバスタチンからシンバスタチンを製造するための例示的方法及び条件を示す。
【図39】下記実施例12で詳細に検討される、ホモジアシル化経路によるロバスタチンからシンバスタチンを製造するための例示的方法及び条件を示す。
【図40】図40A及び40Bは、下記実施例11で詳細に検討されるように、本発明の方法を用い、1mMのホモシンバスタチン及び10mMのホモシンバスタチンの反応条件における、配列番号4によるホモシンバスタチンの加水分解、及び得られた反応生成物をグラフで示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図5、図6A又は図38に示す方法を含む、シンバスタチンの製造方法。
【請求項2】
以下の工程を有する方法を含む、シンバスタチンの製造方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;
(b)前記トリオール酸をラクトン化及びアシル化して、4-アセチルラクトンを生成する工程、ここで前記アシル化は、ラクトン環の4位ヒドロキシル(4'-OH)を4'-OHの位置選択的アシル化によって保護することを含み;
(c)4-アセチルラクトンの8位ヒドロキシル(8'-OH)を酵素的にアシル化して、4-アセチルシンバスタチンを生成する工程;及び
(d)4'位のアシル保護基を化学的又は酵素的に選択的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
【請求項3】
工程(b)のアシル化が、ラクトン環の4位のヒドロキシル(4'-OH)を、酵素により位置選択的にアシル化することによって保護することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(c)における4-アセチルラクトンの8位ヒドロキシル(8'-OH)の酵素的アシル化を、酵素による8位の位置選択的アシル化によって実施して、4-アセチルシンバスタチンを生成する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
以下の工程を有する方法を含む、シンバスタチンを製造するためのホモジアシル化方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して、トリオール酸を生成する工程;
(b)ラクトン化によって前記トリオール酸からジオールラクトンを生成する工程;
(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位(4'-OH)及び8位(8'-OH)を化学的アシル化によってアシル化して、4,8-ジアセチルラクトンを生成する工程;及び
(d)前記4'位のアシル基を酵素的加水分解によって選択的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
【請求項6】
少なくとも1つの工程が別個の反応容器中で実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの工程が別個の反応容器中で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの工程が細胞抽出物を用いて実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの工程が全細胞で実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項10】
さらにシンバスタチンの結晶化を含む、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項11】
さらにシンバスタチンの再結晶化を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
さらに再ラクトン化して、所望の純度を有するシンバスタチンを提供することを含む、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号1と少なくとも55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号3と少なくとも53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号5と少なくとも56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有するヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項17】
ロバスタチンを酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成し、続いて前記トリオール酸をラクトン化し、そのラクトン環の4位(4'-OH)を酵素的にアシル化して4-アシルラクトンを生成し、続いて前記4-アシルラクトンを酵素的にアシル化して4-アセチル-シンバスタチンを生成し、続いて前記4-アセチル-シンバスタチンを位置選択的に酵素的に加水分解してシンバスタチンを生成することを含む、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項18】
ロバスタチンを酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成し、続いて前記トリオール酸をラクトン化してジオールラクトンを生成し、続いて前記ジオールラクトンをラクトン環の4位(4'-OH)で位置選択的に酵素的にアシル化して4-アセチルラクトンを生成することを含む、4-アセチルラクトンを製造する方法。
【請求項19】
ロバスタチンを酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成し、続いて前記トリオール酸をラクトン化しジオールラクトンを生成し、続いて前記ジオールラクトンをラクトン環の4位(4'-OH)で位置選択的に酵素的にアシル化して4-アセチルラクトンを生成し、続いて前記4-アセチルラクトンをラクトン環の8位(8'-OH)で位置選択的に酵素的にアシル化して4-アセチル-シンバスタチンを生成することを含む、4-アセチルシンバスタチンを製造する方法。
【請求項20】
以下の工程を含む、ロバスタチンからトリオール酸又はトリオール酸の塩を製造する方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン又はロバスタチンの塩及びエステラーゼ酵素を提供する工程;
(b)エステラーゼがロバスタチンのトリオール酸又はトリオール酸の塩への加水分解を触媒する条件下で、ロバスタチン、ロバスタチン又はロバスタチンの塩をエステラーゼと接触させる工程。
【請求項21】
エステラーゼが、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性の配列を有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
図15A、図16A、図18E又は図19に示す方法を含む、ロバスタチンからトリオール酸又はトリオール酸の塩を製造する方法。
【請求項23】
図16Aに示す方法を含む、ロバスタチン酸からトリオール酸を製造する方法。
【請求項24】
図16Aに示す方法を含む、ロバスタチンからロバスタチン酸を製造する方法。
【請求項25】
図8に示す方法を含む、トリオール酸からジオールラクトンを製造する方法。
【請求項26】
図16Cに示す方法を含む、ジオールラクトンからアシルラクトンを製造する方法。
【請求項27】
図16Dに示す方法を含む、トリオール酸からアシルラクトンを製造する方法。
【請求項28】
図9Aに示す方法を含む、トリオール酸から4-アセチルラクトンを製造する方法。
【請求項29】
図16Eに示す方法を含む、アシルラクトンからアシルシンバスタチンを製造する方法。
【請求項30】
図9Bに示す方法を含む、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを製造する方法。
【請求項31】
図9C又は図11に示す方法を含む、4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンを製造する方法。
【請求項32】
図16Fに示す方法を含む、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩を製造する方法。
【請求項33】
図16Fに示す方法を含む、シンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを製造する方法。
【請求項34】
図5、図6A又は図38に示す方法を含む、ロバスタチン、トリオール酸、4-アシルラクトン又は4-アシルシンバスタチンからシンバスタチン又はその関連化合物を製造する方法であって、
本方法において工程3で加えられる4位の保護基が下記の(i)〜(v)から成る群より選択されるR-基である、前記製造方法:
(i)-H、-メチル又はホルミル誘導体;
(ii)直鎖及び分枝鎖のC1-nアルキル、ここでnは1から20の間の整数である;
(iii)置換アルキル基;
(iv)フェニル及び置換フェニル(例えばフェニル、p-ニトロフェニル);及び
(v)カーボネート保護基を形成するR'O-基、ここでR'は(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のいずれかの基である。
【請求項35】
置換アルキル基が、クロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェニルアセチル、4-オキソペンチル(レブリネート)又はそれらの等価物を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
カーボネート保護基が、tBuOCO、PhOCO、PhCH2OCO又はそれらの等価物を含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
請求項1、2又は5記載の方法を実施するための試薬類及び少なくとも1つのヒドロラーゼ酵素を含むキット。
【請求項38】
少なくとも1つのヒドロラーゼ酵素が、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有する、請求項37記載のキット。
【請求項39】
以下の工程(a)〜(e)を有する五工程ヘテロジアシル化プロセスを含む、シンバスタチンの製造方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;
(b)前記トリオール酸をラクトン化してジオールラクトンを生成する工程;
(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位のヒドロキシル(4'-OH)を、酵素による前記4'-OHの位置選択的アシル化によって保護して、4-アシルラクトンを生成する工程;
(d)前記4-アシルラクトンの8位のヒドロキシル(8'-OH)を、酵素による前記8位の位置選択的アシル化によってアシル化して、4-アシルシンバスタチンを生成する工程;及び
(e)前記4'位のアシル保護基を選択的に化学的又は酵素的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
【請求項40】
トリオール酸をラクトン化してジオールラクトンを生成する工程(b)が、トリオール酸を加熱して又は酸の存在下で攪拌してジオールラクトンを生成することを含む、請求項39記載の方法。
【請求項1】
図5、図6A又は図38に示す方法を含む、シンバスタチンの製造方法。
【請求項2】
以下の工程を有する方法を含む、シンバスタチンの製造方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;
(b)前記トリオール酸をラクトン化及びアシル化して、4-アセチルラクトンを生成する工程、ここで前記アシル化は、ラクトン環の4位ヒドロキシル(4'-OH)を4'-OHの位置選択的アシル化によって保護することを含み;
(c)4-アセチルラクトンの8位ヒドロキシル(8'-OH)を酵素的にアシル化して、4-アセチルシンバスタチンを生成する工程;及び
(d)4'位のアシル保護基を化学的又は酵素的に選択的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
【請求項3】
工程(b)のアシル化が、ラクトン環の4位のヒドロキシル(4'-OH)を、酵素により位置選択的にアシル化することによって保護することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(c)における4-アセチルラクトンの8位ヒドロキシル(8'-OH)の酵素的アシル化を、酵素による8位の位置選択的アシル化によって実施して、4-アセチルシンバスタチンを生成する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
以下の工程を有する方法を含む、シンバスタチンを製造するためのホモジアシル化方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して、トリオール酸を生成する工程;
(b)ラクトン化によって前記トリオール酸からジオールラクトンを生成する工程;
(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位(4'-OH)及び8位(8'-OH)を化学的アシル化によってアシル化して、4,8-ジアセチルラクトンを生成する工程;及び
(d)前記4'位のアシル基を酵素的加水分解によって選択的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
【請求項6】
少なくとも1つの工程が別個の反応容器中で実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの工程が別個の反応容器中で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの工程が細胞抽出物を用いて実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの工程が全細胞で実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項10】
さらにシンバスタチンの結晶化を含む、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項11】
さらにシンバスタチンの再結晶化を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
さらに再ラクトン化して、所望の純度を有するシンバスタチンを提供することを含む、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号1と少なくとも55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号3と少なくとも53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号5と少なくとも56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸によってコードされるヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの酵素反応が、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性を有するヒドロラーゼ、又は酵素的に活性なそのフラグメントによって実施される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項17】
ロバスタチンを酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成し、続いて前記トリオール酸をラクトン化し、そのラクトン環の4位(4'-OH)を酵素的にアシル化して4-アシルラクトンを生成し、続いて前記4-アシルラクトンを酵素的にアシル化して4-アセチル-シンバスタチンを生成し、続いて前記4-アセチル-シンバスタチンを位置選択的に酵素的に加水分解してシンバスタチンを生成することを含む、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項18】
ロバスタチンを酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成し、続いて前記トリオール酸をラクトン化してジオールラクトンを生成し、続いて前記ジオールラクトンをラクトン環の4位(4'-OH)で位置選択的に酵素的にアシル化して4-アセチルラクトンを生成することを含む、4-アセチルラクトンを製造する方法。
【請求項19】
ロバスタチンを酵素的に加水分解してトリオール酸又はトリオール酸の塩を生成し、続いて前記トリオール酸をラクトン化しジオールラクトンを生成し、続いて前記ジオールラクトンをラクトン環の4位(4'-OH)で位置選択的に酵素的にアシル化して4-アセチルラクトンを生成し、続いて前記4-アセチルラクトンをラクトン環の8位(8'-OH)で位置選択的に酵素的にアシル化して4-アセチル-シンバスタチンを生成することを含む、4-アセチルシンバスタチンを製造する方法。
【請求項20】
以下の工程を含む、ロバスタチンからトリオール酸又はトリオール酸の塩を製造する方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン又はロバスタチンの塩及びエステラーゼ酵素を提供する工程;
(b)エステラーゼがロバスタチンのトリオール酸又はトリオール酸の塩への加水分解を触媒する条件下で、ロバスタチン、ロバスタチン又はロバスタチンの塩をエステラーゼと接触させる工程。
【請求項21】
エステラーゼが、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくはそれ以上の又は完全な(100%)配列同一性の配列を有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
図15A、図16A、図18E又は図19に示す方法を含む、ロバスタチンからトリオール酸又はトリオール酸の塩を製造する方法。
【請求項23】
図16Aに示す方法を含む、ロバスタチン酸からトリオール酸を製造する方法。
【請求項24】
図16Aに示す方法を含む、ロバスタチンからロバスタチン酸を製造する方法。
【請求項25】
図8に示す方法を含む、トリオール酸からジオールラクトンを製造する方法。
【請求項26】
図16Cに示す方法を含む、ジオールラクトンからアシルラクトンを製造する方法。
【請求項27】
図16Dに示す方法を含む、トリオール酸からアシルラクトンを製造する方法。
【請求項28】
図9Aに示す方法を含む、トリオール酸から4-アセチルラクトンを製造する方法。
【請求項29】
図16Eに示す方法を含む、アシルラクトンからアシルシンバスタチンを製造する方法。
【請求項30】
図9Bに示す方法を含む、4-アセチルラクトンから4-アセチルシンバスタチンを製造する方法。
【請求項31】
図9C又は図11に示す方法を含む、4-アセチルシンバスタチンからシンバスタチンを製造する方法。
【請求項32】
図16Fに示す方法を含む、アシルシンバスタチンからシンバスタチンアンモニウム塩を製造する方法。
【請求項33】
図16Fに示す方法を含む、シンバスタチンアンモニウム塩からシンバスタチンを製造する方法。
【請求項34】
図5、図6A又は図38に示す方法を含む、ロバスタチン、トリオール酸、4-アシルラクトン又は4-アシルシンバスタチンからシンバスタチン又はその関連化合物を製造する方法であって、
本方法において工程3で加えられる4位の保護基が下記の(i)〜(v)から成る群より選択されるR-基である、前記製造方法:
(i)-H、-メチル又はホルミル誘導体;
(ii)直鎖及び分枝鎖のC1-nアルキル、ここでnは1から20の間の整数である;
(iii)置換アルキル基;
(iv)フェニル及び置換フェニル(例えばフェニル、p-ニトロフェニル);及び
(v)カーボネート保護基を形成するR'O-基、ここでR'は(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のいずれかの基である。
【請求項35】
置換アルキル基が、クロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェニルアセチル、4-オキソペンチル(レブリネート)又はそれらの等価物を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
カーボネート保護基が、tBuOCO、PhOCO、PhCH2OCO又はそれらの等価物を含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
請求項1、2又は5記載の方法を実施するための試薬類及び少なくとも1つのヒドロラーゼ酵素を含むキット。
【請求項38】
少なくとも1つのヒドロラーゼ酵素が、配列番号2、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の、又は完全な(100%)配列同一性の配列を有する、請求項37記載のキット。
【請求項39】
以下の工程(a)〜(e)を有する五工程ヘテロジアシル化プロセスを含む、シンバスタチンの製造方法:
(a)ロバスタチン、ロバスタチン酸又はロバスタチン酸の塩を酵素的に加水分解して、トリオール酸又はトリオール酸の塩を生成する工程;
(b)前記トリオール酸をラクトン化してジオールラクトンを生成する工程;
(c)前記ジオールラクトンのラクトン環の4位のヒドロキシル(4'-OH)を、酵素による前記4'-OHの位置選択的アシル化によって保護して、4-アシルラクトンを生成する工程;
(d)前記4-アシルラクトンの8位のヒドロキシル(8'-OH)を、酵素による前記8位の位置選択的アシル化によってアシル化して、4-アシルシンバスタチンを生成する工程;及び
(e)前記4'位のアシル保護基を選択的に化学的又は酵素的に除去し、それによってシンバスタチンを得る工程。
【請求項40】
トリオール酸をラクトン化してジオールラクトンを生成する工程(b)が、トリオール酸を加熱して又は酸の存在下で攪拌してジオールラクトンを生成することを含む、請求項39記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【図18−3】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図17】
【図18−1】
【図18−2】
【図18−3】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公表番号】特表2007−519396(P2007−519396A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536794(P2006−536794)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/034913
【国際公開番号】WO2005/040107
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(503089489)ダイヴァーサ コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/034913
【国際公開番号】WO2005/040107
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(503089489)ダイヴァーサ コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】
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