説明

シンボルクロック再生装置、復調装置、ナイキスト点判別装置、ナイキスト点判別方法、シンボルクロック生成方法、及びシンボル再生方法。

【課題】多値変調された変調波についても、正確にナイキスト点を検出する。
【解決手段】4値FSKで変調された変調波に対し、検波部11は各シンボル毎にn回サンプリングしてアイパターン上で隣接する収束点との距離を示す距離データを生成する処理を、Nシンボルに対して行う。クロック再生部20は、Nシンボル期間についてそれぞれ第iのサンプリング点の距離データを累算加算した累算値を算出する。クロック再生部20は、n個の累算値間の傾きを求め、その傾きからナイキスト点を抽出し、ナイキスト点のタイミングでシンボルクロックを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンボルクロック再生装置、復調装置、ナイキスト点判別装置、ナイキスト点判別方法、シンボルクロック生成方法、及びシンボル再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FSK(Frequency Shift Keying)復号回路やPSK(Phase Shift Keying)復号回路のクロック再生装置は、受信したFSK変調信号やPSK変調信号から、ベースバンド信号の切り替わりタイミングを示すシンボルクロックを再生し、このシンボルクロックを用いてベースバンド信号を復号する。
シンボルクロックを再生する従来のクロック再生装置には、下記特許文献1〜4に示されたものがある。
【0003】
特許文献1のクロック再生装置は、変調波のアイパターンのゼロクロスポイントを求め、これに基づきシンボルクロックを再生している。
【0004】
図16は、変調波のアイパターンの一例を示す図であり、変調形式が2値のFSKである変調波のアイパターンを示している。
図17は、他の変調波のアイパターンを示す図であり、変調形式が4値FSKの変調波のアイパターンを示している。
【0005】
特許文献1のようにゼロクロスポイントを検出するクロック再生装置は、例えば図16のアイパターンを示す2値の変調形式には、ゼロクロスポイントが明確であるため、有効である。
しかしながら、ゼロクロスポイントを検出するクロック再生装置は、多値の変調形式では、不都合になることが多い。例えば、変調形式が4値FSKの場合、図17に示すようなアイパターンが得られ、ゼロクロスポイントに相当する場所(図17の+2,0,−2に対応する場所)の範囲が広い。例えば、1シンボルにおけるサンプリングポイントを0から10とすると、サンプリングポイントの1〜8まで、ゼロクロスが得られる。このため、ゼロクロスポイントを用いて再生したシンボルクロックが正確でなくなる危険性が高い。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献2及び3に開示されているように、ゼロクロスポイントを用いず、アイパターンの収束点の位置、つまりナイキスト点を求め、ナイキスト点に基づいて、シンボルクロックを再生する方式も提案されている。
【0007】
特許文献2に開示されているシンボルクロック再生装置は、多値変調波の各サンプル点のサンプル値の分散値を計算して、分散値が最小となる点を求め、その分散値の最小となる点に基づいてシンボルクロックを再生する。
【0008】
特許文献3に開示されているシンボルクロック再生装置は、サンプリングごとに収束点判定を行い、その結果を硬判定データとして記憶する。そして、硬判定データに対応する軟判定データと収束点との距離を求め、硬判定データの偏移に基づき、距離をクロック再生の位相情報とし、この位相情報に基づいてシンボルクロックを再生する。
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示されたシンボルクロック再生装置は、複数のサンプル値の平均値や分散値を計算して最小値を求めるため、データ処理の処理負担が重く実用的でなかった。また、特許文献3に開示されたシンボルクロック再生装置は、その時点の硬判定データばかりでなく、過去2回の硬判定データの比較判定を行う必要があるため、判定回数が多く、構成が複雑であるという問題があった。
【0010】
特許文献2,3のシンボルクロック再生装置の課題を解決するために、特許文献4のシンボルクロック再生装置では、変調信号の周波数を所定のサンプリング周期でサンプリングし、サンプリング値に、アイパターンにおける収束点毎に2進数の桁が上がるようなディジタルデータを割り当てて規格化し、規格化されたディジタルデータの各ビットと0x0FFFのアンドをとり、その結果で得られるデータから、Nシンボルの各サンプリング点でのサンプルデータの周波数と収束点との距離を累算し、その距離が最小となるサンプリング位置をナイキスト点として抽出する。そして、抽出したナイキスト点に基づいてシンボルクロックを再生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−333113号公報
【特許文献2】特開2001−177587号公報
【特許文献3】特開2004−48292号公報
【特許文献4】特開2007−6289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献4では、アイパターンの収束点とサンプルデータの周波数との距離に基づいてナイキスト点を抽出している。この場合、アイパターンが図17のようになる変調信号の場合は、ナイキスト点の近傍のサンプリング点での周波数と収束点との距離の分散が大きいので、ナイキスト点が正確に抽出できる。しかしながら、アイパターンが図18のようになる変調信号の場合、周波数と収束点との距離の累算値について、図19のようにナイキスト点の近傍のサンプリング点での分散が低く、ナイキスト点との差がほとんどなくなり、誤ったサンプリング点をナイキスト点として抽出する危険性が高くなる。
ナイキスト点を誤って検出すると、復調信号の信号劣化が起きると共に、図20のように誤りが大きいと、シンボルクロックのジッターのマージンが少なくなるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、ナイキスト点付近のサンプリングデータの分散が小さくても、誤ってナイキスト点を抽出することを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るシンボルクロック再生装置は、
搬送信号の所定のパラメータをベースバンド信号の値に応じて偏移させた変調信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングして、該パラメータの瞬時値を検出するパラメータ検出手段と、
各パラメータの瞬時値と、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点との間の距離を求める距離判別手段と、
前記距離判別手段で求めた各距離について、各1シンボル期間内で、相対的に等しいサンプリング点で求められた距離を累算する累算手段と、
前記累算手段で求められた累算値間の傾きを求め、傾きが最大となるサンプリング点と傾きが最小となるサンプリング点とを抽出し、抽出したサンプリング点に基づいてナイキスト点を推定し、推定したナイキスト点に基づくタイミングでシンボルクロックのパルスを発生するクロック発生手段と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
尚、前記クロック発生手段は、前記傾きが最大となるサンプリング点と前記傾きが最小となるサンプリング点との中点を前記ナイキスト点と推定してもよい。
【0016】
又、前記パラメータ検出手段は、前記ベースバンド信号の1シンボル期間に相当する時間内で、n回、パラメータの瞬時値を検出し、
前記累算手段は、複数のNシンボル期間について、それぞれ第iのサンプル点について求められた距離同士を加算することにより、N個の累算値を求めてもよい。
【0017】
又、前記距離判別手段は、
検出した瞬時値を、アイパターン上での隣接するシンボル閾値間の相対位置を示す位置情報に変換する第1の変換手段と、
前記第1の変換手段により得られたシンボル閾値を基準とする位置情報を、アイパターン上での収束点を基準とする相対位置を示す位置情報に変換する第2の変換手段と、
前記第2の変換手段により得られた収束点を基準とする位置情報から、収束点までの距離に変換する第3の変換手段とから構成されてもよい。
【0018】
又、前記第1の変換手段は、検出した瞬時値を示すデータと、該瞬時値を示すデータのうち、アイパターン上での隣接するシンボル閾値間の領域を特定する機能を有するデータ部分をマスクする手段から構成され、
前記第2の変換手段は、収束点に対応するデータが0となるように、第1の変換手段で変換されたデータから所定データを減算する手段から構成され、
前記第3の変換手段は、前記第2の変換手段で変換されたデータの絶対値をとる手段から構成されてもよい。
【0019】
又、前記距離判別手段は、
検出したパラメータの瞬時値を規格化する規格化手段と、
規格化した瞬時値に基づいて、距離を判別する手段と、を備えてもよい。
【0020】
又、前記規格化手段は、各瞬時値に対し、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点間の距離が等間隔で、各収束点から収束点間のシンボル閾値までの距離が等しく、且つ隣接する収束点を表すデータの桁数が1だけ異なり、隣接するシンボル閾値を表すデータの桁数が1だけ異なるディジタルデータに規格化する手段、から構成されてもよい。
【0021】
又、前記変調信号から、ベースバンド信号の先頭位置を示す同期語を検出する同期語検出手段と、
前記検出された同期語に基づいて前記パラメータ検出手段が検出した瞬時値を調整し、調整した瞬時値を前記距離判別手段に供給する調整手段とをさらに備えてもよい。
【0022】
又、前記変調信号は、多値FSK又はPSKで変調されており、前記パラメータは周波数又は位相であってもよい。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る復調装置は、
本発明の第1の観点に係るシンボルクロック再生装置と、
該シンボルクロック再生装置からのシンボルクロックに基づいて、前記変調信号からシンボルを復調する復調手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係るナイキスト点判別装置は、
搬送信号の所定のパラメータをベースバンド信号の値に応じて偏移させた変調信号を、所定のサンプリング周期で、サンプリングして該パラメータの瞬時値を検出するパラメータ検出手段と、
各パラメータの瞬時値と、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点との間の距離を求める距離判別手段と、
前記距離判別手段で求めた各距離について、各1シンボル期間内で、相対的に等しいサンプリング点で求められた距離を累算する累算手段と、
前記累算手段で求められた累算値間の傾きを求め、傾きが最大となるサンプリング点と傾きが最小となるサンプリング点とを抽出し、抽出したサンプリング点の中点をナイキスト点として判別するナイキスト点判別手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するために、本発明の第4の観点に係るナイキスト点判別方法は、
変調信号の変調パラメータを検出し、
検出した変調パラメータの各瞬時値と、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点との間の距離を求め、
各1シンボル期間内で、相対的に等しい位置で求められた前記距離の累算値を求め、
前記累算値間の傾きを求め、傾きが最大となる位置と傾きが最小となる位置の中点の位置をナイキスト点として判別することを特徴とする。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の第5の観点に係るシンボルクロック生成方法は、
本発明の第4の観点に係るナイキスト点判別方法で判別したナイキスト点に基づいたタイミングでシンボルクロックを生成することを特徴とする。
【0027】
上記目的を達成するために、本発明の第6の観点に係るシンボルクロック再生方法は、
本発明の第5の観点に係るシンボルクロック生成方法で生成したシンボルクロックを用いて変調信号に含まれているシンボルを再生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ナイキスト点付近のサンプリングデータの分散が小さくても、誤ってナイキスト点を抽出するリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る復調装置のブロック図である。
【図2】図1中の検波部の構成を示すブロック図である
【図3】図1中のクロック再生部の構成を示す構成ブロック図である
【図4】4値FSKのアイパターンとサンプリングタイミングを示す図である。
【図5】サンプル値(周波数の瞬時値)を規格化データに変換するためのテーブルの例を示す図である。
【図6】規格化データのビット構成の説明図である。
【図7】AND部の処理の説明図である。
【図8】減算部の処理の説明図である。
【図9】絶対値部の処理の説明図である。
【図10】ヒストグラム部とナイキスト点判別部とが実行する周期処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】ナイキスト点判別部の判別手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】累算値をグラフ化した図である。
【図13】図12の最大値点及び最小値点を示す図である。
【図14】他の累算値をグラフ化した図である。
【図15】他の累算値をグラフ化した図である。
【図16】変調波のアイパターンの一例を示す図である。
【図17】他の変調波のアイパターンを示す図である。
【図18】他の変調波のアイパターンを示す図である。
【図19】図17の累算値をグラフ化した図である。
【図20】ナイキスト点の誤検出の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る復調装置1は、図1に示すように、4値周波数変調(FSK; frequency shift keying)で変調された変調波を復調する回路であり、シンボルクロックを再生するクロック再生装置10と、シンボルクロックに基づいて、受信信号のシンボルを判定して復調するシンボル判定装置30とから構成されている。
【0031】
クロック再生装置10は、4値周波数変調(FSK; Frequency Shift Keying)で変調された変調波からシンボルクロックを再生する回路であり、4値FSKで変調された変調波が入力される検波部11と、同期語検出部12と、周波数調整部13と、変調度調整部14と、クロック再生部20と、から構成されている。
【0032】
検波部11は、所定のサンプリング周期で、変調波の瞬時的な周波数を検出し、検出した周波数を規格化する回路であり、図2に示すように、アナログ/ディジタル(A/D)変換回路111、周波数弁別回路112、振幅値規格化回路113及び記憶部114を備える。
【0033】
アナログ/ディジタル(A/D)変換回路111は、受信回路等から入力するFSK変調波をA/D変換して出力する。
【0034】
周波数弁別回路112は、FFT(Fast Fourier Transform ; 高速フーリエ変換)回路等から構成され、FSK変調波の周波数(瞬時値)を予め定められたサンプリング周期で判別する。本実施の形態では、周波数弁別回路112は、1シンボル期間(ベースバンド信号の1信号期間)に8回サンプリング(周波数弁別)を行う。
【0035】
振幅値規格化回路113は、周波数弁別回路112が判別した周波数(瞬時値)を規格化してディジタルデータ(規格化データ)に変換し、同期語検出部12とクロック再生部20とに出力する。
【0036】
記憶部114は、周波数弁別回路112が判別した周波数を規格化するための情報を格納する。
【0037】
ここで、振幅値規格化回路113と記憶部114とが協働で行う、振幅値規格化処理について説明する。
図4は、4値FSK信号のアイパターンと、周波数弁別回路112のサンプリングタイミングを例示する図である。
【0038】
ディジタルデータを4値FSKで変調した場合、変調波の周波数の偏移を重ね合わせてアイパターンを作成すると、図4に示すようになり、縦軸方向に周波数の偏移量及び変調度が表れる。そして、周波数の偏移が収束する収束点が、ナイキスト点上に表れる。4値FSKのアイパターンには、周波数の異なる収束点が4個(図4の+3、+1、−1、−3)出現し、収束点と収束点との間が開口部となる。開口部の中心値が、変調度のシンボル閾値となる(図4の+2、0、−2)。
【0039】
前述のように、周波数弁別回路112は、1シンボル期間に8サンプルとなるように、変調信号をサンプリングし、サンプリングごとに、変調波の瞬時的な周波数を検出し、その数値を出力する。
【0040】
記憶部114には、各収束点(図4に示す+3〜−3)とシンボル閾値(図4の+2、0、−2)について、システム設計上求められる各周波数とそれに対応付けられる規格化された数値とを例えばテーブル形式で記憶する。
【0041】
図5に記憶部114に記憶されるデータの一例を示す。なお、記憶部114に実際に格納される必要があるデータは、破線で囲まれた周波数と規格化されたディジタルデータとの対応関係のみである。
【0042】
収束点+3は、設計上、周波数f+3に相当し、その周波数に割り当てるディジタルデータは0x1800である。
サンプル閾値+2は、設計上、周波数f+2に相当し、その周波数に割り当てるディジタルデータは0x1000(=0x1800−0x800)である。
収束点+1は、設計上、周波数f+1に相当し、その周波数に割り当てるディジタルデータは0x0800(=0x1000−0x800)である。
サンプル閾値0は、設計上、周波数f0に相当し、その周波数に割り当てるディジタルデータは0x0000(=0x800−0x800)である。
収束点−1は、設計上、周波数f-1に相当し、その周波数に割り当てるディジタルデータは0xF800(=0x0000−0x800)である。
サンプル閾値−2は、設計上、周波数f-2に相当し、その周波数に割り当てるディジタルデータは0xF000(=0xF800−0x800)である。
収束点−3は、設計上、周波数f-3に相当し、その周波数に割り当てるディジタルデータは0xE800(=0xF000−0x800)である。
【0043】
これら7つのディジタルデータは、図6に示すように、実際に周波数を表す有効ビットと桁数を合わせるための予備ビットとからなる。
各ディジタルデータは、ビットb1からビットb16までの16ビットのデータである。16ビットのうちの下位側が周波数を実際に表す有効ビットであり、上位側が桁合わせ及び極性表示用の予備ビットである。
【0044】
例えば、図4の収束点+3に対応する規格化データ0x1800は、図6に示すような16ビットのデータであり、下位のビットb1〜b13が有効ビットであり、上位のビットb14〜b16が予備ビットである。図4のシンボル閾値+2に対応する規格化データ0x1000は、下位のビットb1〜b13が有効ビットであり、上位のビットb14〜b16が予備ビットである。収束点+1に対応する規格化データ0x0800は、下位のビットb1〜b12が有効ビットであり、上位のビットb13〜b16が予備ビットである。
【0045】
これらのデータの有効ビットにおいて、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点間の距離が等間隔で、各収束点から収束点間のシンボル閾値までの距離が等しく、且つ隣接する収束点を表す有効ビットの桁数が1だけ異なり、隣接するシンボル閾値を表す有効ビットの桁数も互いに1だけ異なるようなディジタルデータに規格化されている。そして、サンプリングされた周波数と直近のシンボル閾値からの距離がビットb1〜b12に現われる。
なお、図6で、収束点−1〜−3については、負の数であるため、上記の点がわかりにくいが、符号を無視して考えると、上記の関係が成立している。
【0046】
次に、図1に示す振幅値規格化回路113は、記憶部114に格納されている図5のテーブルを参照して、周波数弁別回路112が弁別した周波数を対応するディジタルデータに変換する。
【0047】
例えば、振幅値規格化回路113は、周波数弁別回路112が弁別した周波数の瞬時値がf+3であれば、これを0x1800に変換し、周波数の瞬時値がf0であれば、これを0x0000に変換し、周波数の瞬時値がf-2であれば、これを0xF000に変換する。
【0048】
振幅値規格化回路113は、周波数弁別回路112が弁別した周波数の瞬時値がf+3,f+2,f+1,f0,f-1,f-2,f-3以外の値を取った場合には、例えば、補完法を用いてディジタルデータを割り当てる。
【0049】
例えば、周波数弁別回路112が弁別した周波数の瞬時値fxが,f+2とf+1の間にある場合には、振幅値規格化回路113は、(f+2−fx):(fx−f+1)=(0x1000−D):(D−0x0800)が成立するように、fxに対応するディジタルデータを求めて出力する。
【0050】
同様に、例えば、周波数弁別回路112が弁別した周波数の瞬時値fxが,f0とf-1の間にある場合には、振幅値規格化回路113は、(f0−fx):(fx−f-1)=(0x0000−D):(D−0xF800)が成立するように、fxに対応するディジタルデータを求めて出力する。
【0051】
同期語検出部12は、検波部11が出力したディジタルデータから、ベースバンド信号(受信データ)の先頭位置を示す同期語を検出する。
この同期語の検出段階では、クロック再生部20でシンボルクロックの再生が開始されていない可能性がある。従って、同期語検出部12は、同期語の理論的な検波波形で同期語を検出する構成が望ましい。例えば、同期語検出部12は、検波部11から出力されるデータ列の変化と、同期語に関して出力されると期待されるデータ列(データ列の期待値)の変化のパターンマッチングを行い、同様の変化をしたときに同期語を検出したと判別するようにしてもよい。
或いは、同期語検出部12を従来の構成とし、周波数弁別回路112の出力信号を同期語検出部12に供給して、同期語を検出するようにしてもよい。
【0052】
同期語検出部12は、同期語を検出するまでは、検波部11から供給された規格化データをクロック再生部20に供給し、同期語を検出すると、検波部11から供給された規格化データを周波数調整部13に供給するという、一種のスイッチ回路として機能する。
【0053】
周波数調整部13は、同期語の情報に基づいて、検波部11で検出した周波数のオフセット分の補正に相当する修正を、検波部11の出力するディジタルデータに対して行う。
【0054】
より詳細に説明すると、同期語は既知であり、同期語に対応する周波数列も既知である。従って、同期語に対応する規格化データもシステムの設計上一義に定まる。一方、実際に伝送される信号の周波数は、フェージング等様々な要因により変動し、全体としてオフセット値が重畳することが多い。例えば、収束点及びシンボル閾値+3〜−3に対応する各周波数f+3〜f-3がΔfだけ上側或いは下側にシフトすることがある。周波数調整部13は、同期語に対応する規格ディジタルデータとその期待値との差から、周波数のオフセット分Δfに対応するディジタル値ΔDを求め、オフセット分Δfを相殺するように、このΔDを規格化データDから減算し又は加算する。
【0055】
変調度調整部14は、同期語の情報に基づき、検波部11で規格化する際の各収束点及び閾値に対応する周波数の補正を、周波数調整部13の出力するディジタルデータに対して行う。
【0056】
より詳細に説明すると、同期語は既知であり、同期語に対応する周波数列も既知である。従って、同期語に対応する規格化データもシステムの設計上一義に定まる。一方、実際に伝送される信号の周波数は、フェージング等様々な要因により変動し、オフセット値とは別に個々に変動することが多い。例えば、オフセットを除去した後の収束点+3に対応する各周波数f+3がΔf+3だけ上側或いは下側にシフトし、オフセットを除去した後のシンボル閾値+2に対応する各周波数f+2がΔf+2だけ上側或いは下側にシフトし、...と変化することがある。変調度調整部14は、同期語に対応する規格ディジタルデータとその期待値との差から、各収束点及びシンボル閾値に対応する各周波数f+3〜f-3の本来の周波数からの変位量を求める。そして、その変位量を相殺するように、各収束点及びシンボル閾値に対応する各周波数f+3〜f-3に対応する規格化データの補正量を求める。
【0057】
さらに、変調度調整部14は、求めた補正量から、周波数調整部13から供給される周波数調整済みの規格化データについて、補完法などを用いて、個別に補正量を求め、求めた補正量を用いて、供給された周波数調整済みの規格化データを補正し、クロック再生部20に供給する。
【0058】
なお、前述のように、周波数調整部13と変調度調整部14が機能するのは、同期語検出部12が同期語を検出した後である。
【0059】
クロック再生部20は、図3に示すように、AND部21と、減算部22と、絶対値部(ABS)23と、ヒストグラム作成部24と、ナイキスト点判別部25と、シンボルクロック出力部26とを備えている。
【0060】
AND部21には、同期語検出部12或いは変調度調整部14から供給された規格化データが入力される。AND部21は、規格化データ(16ビット)の各ビットと、0x0FFFのデータの各ビットとのAND(論理積)をそれぞれ計算する。このようにして、ビットごとのANDを取ることにより、図6を参照して説明した上位の不要ビット(桁合わせ用のビット)の値がマスクされる。これにより、図7に模式的に示すように、測定された各周波数(瞬時値)が、隣接するシンボル閾値間の範囲(f+4〜f+2=0x1FFF〜0x1000;f+2〜f0=0x0FFF〜0x0000;f0〜f-2=0x0000〜0xF001;f-2〜f-4=0xF000〜0xE001)のどの位置に存在するかを示すディジタルデータ(0x0FFF〜0x0000)が得られる。即ち、AND部21は、各周波数(瞬時値)を、隣接するシンボル閾値間内での相対的位置を示すデータに変換する。
【0061】
なお、図7で、シンボル閾値+4と−4とは、それぞれ、図5には示されていないが、図5のアイパターンの上限と下限に存在するシンボル閾値である。
【0062】
減算部22はAND部21に接続され、AND部21の出力するデータから0x0800を減算する。これは、図8に模式的に示すように、正の値で示されていた、弁別周波数の位置を、収束点である0x0000を中心とした0xF800〜0x07FFの正及び負の範囲で表すことに対応する。
【0063】
絶対値部(ABS)23は、減算部22に接続され、減算部22の出力するデータの絶対値を求める。減算部22で正又は負の値に振り分けられた規格化データの絶対値を求めることにより、その値が示す周波数の瞬時値と最も近い収束点(0x0000)との距離が得られる(図9参照)。
【0064】
ヒストグラム作成部24は、絶対値部23から供給される絶対値を記憶する記憶部として機能する。
また、ヒストグラム作成部24は、ナイキスト点判別部25と協働して、Nシンボル単位で、周期的に、絶対値部23から供給された絶対値のうち、その絶対値が得られたサンプリングタイミングの相対位置が等しいものを累算して、サンプルタイミング別の計8個の累算値を求める。この累算値は、例えば、図12に示すように分布する。
【0065】
ナイキスト点判別部25は、ヒストグラム作成部24と協働して、前述の絶対値の累算値を求め、求めた8個の累算値を用いてナイキスト点を判別する。
【0066】
より詳細に説明すると、ヒストグラム作成部24に格納されている累算値は、Nシンボルについての各サンプリング点でのサンプリング値の累算値であり、最小値がナイキスト点に対応すると推定される。しかし、ナイキスト点の付近の他のサンプリングデータのバラツキ(分散)が小さいときには、その累算値がナイキスト点よりも小さくなる可能性がある。そこで、本実施形態のナイキスト点判別部25は、累算値をサンプリングタイミングの順に並べたときの最小の傾斜をとる位置と最大の傾斜をとる位置の中点をナイキスト点と判別する。
なお、最大の傾斜をとる場合は、一つ先行するサンプリングデータから現在のサンプリングデータを引いた場合の値が正の値で最大となる場合であり、最小の傾斜をとる場合は、一つ先行するサンプリングデータから現在のサンプリングデータを引いた場合の値が負の値で最大となる場合である。
【0067】
シンボルクロック出力部26は、判別されたナイキスト点に対応するサンプリングタイミングで、以後、シンボルクロックを出力する。
【0068】
図1のシンボル判定装置30には、遅延回路31を介して受信回路より受信信号(変調信号)が供給される。なお、遅延回路31の遅延時間は、シンボルクロックの出力タイミングと変調信号をシンボル判定装置30に供給するタイミングとを一致させるために必要な時間である。
【0069】
シンボル判定装置30は、クロック再生部20から供給されるシンボルクロックに従って、シンボルを判定し、判定したシンボルを示すシンボルデータを後段の回路に出力する。
【0070】
なお、検波部11の出力する規格化データをシンボル判定装置30に供給してもよい。この場合、シンボル判定装置30は、規格化データを用いてシンボルを判別する。
【0071】
次に、上記構成の復調装置1の動作を説明する。
図示せぬ受信回路で受信された受信信号(FSK変調信号)は、検波部11に供給され、A/D変換回路111により、ディジタルデータに変換される。
【0072】
周波数弁別回路112は、1シンボル期間に8回の割合で、周波数を判別し、判別した周波数(瞬時値)を示すデータを順次出力する。この説明では、理解を容易にするため、周波数弁別回路112が、周波数ft0,ft1,ft2,ft3,...を順次判別したとする。
【0073】
振幅値規格化回路113は、周波数弁別回路112から順次供給される周波数ft0,ft1,ft2,ft3,......を示すデータを、記憶部114に記憶している図5に示す表に従い、規格化されたディジタルデータに変換して出力する。
【0074】
振幅値規格化回路113は、例えば、周波数ft0が収束点+3に対応する周波数f+3に等しければ、規格化されたディジタルデータDt0=0x1800を出力する。また、周波数ft1が収束点+3に対応する周波数f+3とシンボル閾値+2に対応する周波数f+2との間にある値であれば、(0x1800−Dt1):(Dt1−0x1000)=(f+3−ft1):(ft1−f+2)が成立するような、規格化されたディジタルデータDを出力する。同様に、周波数ft2がシンボル閾値+2に対応する周波数f+2と収束点+1に対応する周波数f+1との間にある値であれば、(0x1000−Dt2):(Dt2−0x0800)=(f+2−ft2):(ft2−f+1)が成立するような、規格化されたディジタルデータDt2を出力する。
【0075】
このようにして生成された規格化データ(周波数の瞬時値を示すデータ)Dt0,Dt1,Dt2,Dt3,...は、順次、同期語検出部12に供給される。
【0076】
同期語検出部12は、検波部11から規格化データが供給される度に、それ以前の所定数の一連の規格化データが、ベースバンド信号の先頭を示す固定の同期語に対して予定されている規格化データに対応(相当)するか否かを判別する。同期語検出部12は、シンボルクロックを利用しないタイプのものであり、例えば、順次供給される規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...の変化のパターンと、同期語に対して予定されている規格化データの変化パターンとをマッチングし、一致した時に同期語を検出できたと判別する。
【0077】
同期語検出部12は、同期語を検出するまでは、検波部11から供給された規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...を、そのままクロック再生部20に供給し、一旦同期語を検出すると、検波部11から供給された規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...を、周波数調整部13に供給する。
ここで、規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...が、同期語の規格化データに相当すると判別されたとすると、以後、これらのデータは、周波数調整部13に供給される。
【0078】
周波数調整部13は、供給された規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...と、同期語に対して予定されている規格化データIt0,It1,It2,It3,...との間の、全体的な差から、検波部11から供給された規格化データに含まれているオフセット成分ΔDを求めて記憶する。このオフセット成分ΔDは、例えば、(ΣDti−ΣIti)/m (mはサンプル数)で求めることができる。
【0079】
周波数調整部13は、以後、順次供給される規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...それぞれから、ΔDを減算して、オフセット分を除去するように規格化データDt0,Dt1,...を補正し、変調度調整部14に供給する。
【0080】
変調度調整部14は、周波数調整部13から供給される同期語に対応するオフセット補償済規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...と、同期語に対して予定されている規格化データIt0,It1,It2,It3,...との相関関係から、オフセット補償済の規格化データの各値について、それを本来取るべき値に補正するために必要な補正量(補正式)を求め、それを記憶する。変調度調整部14は、以後、求めた補正量をオフセット調整済規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...に適用し、変調度(振幅)を調整した規格化データを生成し、クロック再生部20に供給する。
【0081】
クロック再生部20のAND部21は、同期語検出部12から供給された(周波数調整や変調度調整を受けていない)規格化データに対しても変調度調整部14から供給された(周波数調整や変調度調整を行った)規格化データのいずれに対しても同様の処理を行う。
【0082】
即ち、AND部21は、供給された規格化データDt0,Dt1,Dt2,Dt3,...それぞれと、0x0FFFの論理積を取り、順次出力する。これにより、AND部21は、周波数弁別回路112で判別された周波数(瞬時値)ftに対応する規格化データDtを、隣接する2つのシンボル閾値間の相対位置を示す規格化データEtに変換し、減算部22に順次供給する。
【0083】
例えば、周波数弁別回路112で判別された周波数(瞬時値)ft0が収束点+3に対応する周波数f+3とシンボル閾値+2に対応する周波数f+2との間にあり、0x1000〜0x1800の範囲内の規格化データDt0が生成されたとすると、AND部21の処理により、規格化データDt0は、0x0000〜0x0800の範囲内の規格化データEt0に変換される。同様に、例えば、周波数弁別回路112で判別された周波数(瞬時値)ft1がシンボル閾値−2に対応する周波数f-2と収束点−3に対応する周波数f-3との間にあり、0xE800〜0xF000の範囲内の規格化データDt1が生成されたとすると、AND部21の処理により、規格化データDt1は、0x0800〜0x0FFFの範囲内の規格化データEt1に変換される。
【0084】
減算部22は、AND部21から供給された規格化データEt0,Et1,Et2,Et3,...からそれぞれ、0x0800を減算し、収束点(0x000)を基準とする位置(正負)と収束点までの距離を示すデータに修正し、規格化データFt0,Ft1,Ft2,Ft3,...を生成し、絶対値部23に供給する。
【0085】
絶対値部23は、減算部22から供給された規格化データFt0,Ft1,Ft2,Ft3,...の絶対値を取る。これにより、収束点(0x000)を基準とする位置(正負)を無視した収束点までの距離を示す規格化データGt0,Gt1,Gt2,Gt3,...を生成し、ヒストグラム作成部24に供給する。
【0086】
ヒストグラム作成部24は、絶対値部23から順次供給される規格化データGt0,Gt1,Gt2,Gt3,...が供給されると、これを順次記憶する。
【0087】
さらに、ヒストグラム作成部24とナイキスト点判別部25とは、Nシンボル期間毎に、図10及び図11に示す周期処理を実行する。
【0088】
この周期処理を、図10及び図11を参照して説明する。
ヒストグラム作成部24は、絶対値部23から順次供給される規格化データGt0,Gt1,Gt2,Gt3,...が供給されると、記憶していた累算値H0,H1,H2,H3,...,H7の対応するものに順次加算し、新たな、H0,H1,H2,H3,...,H7を生成する。
【0089】
従って、累算値H0は、この復調装置1が処理を開始してから現時点までの、1シンボル期間内の第0のサンプリングタイミングでサンプリングされた周波数(瞬時値)に対応する絶対値G8・i+0(i=自然数;G0,G8,G16,G24,...),の総和、即ち、この復調装置1が処理を開始してから現時点までの、1シンボル期間内の第0のサンプリングタイミングでサンプリングされた周波数(瞬時値)と直近の収束点までの距離の総和を示す値となる。
【0090】
また、累算値H1は、この復調装置1が処理を開始してから現時点までの、1シンボル期間内の第1のサンプリングタイミングでサンプリングされた周波数(瞬時値)に対応する絶対値G8・i+1(i=自然数;G1,G9,G17,G25,...),の総和、即ち、この復調装置1が処理を開始してから現時点までの、1シンボル期間内の第1のサンプリングタイミングでサンプリングされた周波数(瞬時値)と直近の収束点までの距離の総和を示す値となる。
【0091】
累算値H2〜H7も同様に、この復調装置1が処理を開始してから現時点までの、1シンボル期間内の第2〜7のサンプリングタイミングでサンプリングされた周波数(瞬時値)と直近の収束点までの距離の総和を示す値となる。
【0092】
ヒストグラム作成部24とナイキスト点判別部25は、サンプリングクロックに応答して、Nシンボル期間毎に(8・Nサンプリング期間)毎に図10の周期処理を開始する。
【0093】
まず、ヒストグラム作成部24上のワークエリアとしての累算値記憶部をクリアする(ステップS11)。
続いて、第0〜第7のサンプリングタイミングの累算値H0〜H7を0とする(ステップS12)。
【0094】
次に、絶対値部23から8個の絶対値Gt0〜Gt7を取り込み、それぞれ、ヒストグラム値H0〜H7に加算する(ステップS13)。即ち、H0=H0+Gt0,H1=H1+Gt1,...H7=H7+Gt7を順次求める。
【0095】
次に、Nシンボル分(8・Nサンプル)の処理が終了したか否かを判別し(ステップS14)、終了していなければ(ステップS14;NO)、ステップS13に戻って、次の絶対値列を求めて、累算値を更新する処理を繰り返す。即ち、H0=H0+Gt8,H1=H1+Gt9,...H7=H7+Gt15を順次求め、続いて、H0=H0+Gt16,H1=H1+Gt17,...H7=H7+Gt23,....,、H0=H0+Gt(N-1)0,H1=H1+Gt(N-1)1,...H7=H7+Gt(N-1)7を順次求める。
【0096】
Nシンボル分(8・Nサンプル)の処理が終了したと判別した場合(ステップS14;YES)、ナイキスト点判別部25は、求めた累算値H0〜H7を読み出し、累算値間の最大傾きと最小傾きを検出する。(ステップ15)。
【0097】
このヒストグラムの最大傾きと最小傾きを検出する処理では、最初に、累算値H0〜H7を、図12のように縦軸に大きさ、横軸にサンプリングタイミングの順に右方向に並べた場合の累算値H0〜H7の右側の傾きを計算する。即ち、H7−H6,H6−H5,H5−H4,...,H0−H7を計算する。
【0098】
ここで、各累算値H0,H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7にサンプリング位置を示す番号♯1,♯2,♯3,♯4,♯5,♯6,♯7,♯8を付けると、図12の場合は、図13のように番号♯2の右側の傾きが最小となり、番号♯7の右側の傾きが最大となる。
【0099】
傾きが最大となる番号を最大値点、傾きが最小となる番号を最小値点とすると、ナイキスト点判別部25は、(最大値点+最小値点)を加算し、さらに、最大値点と最小地点の中点を検出するために、(最大値点+最小値点)の加算結果に位置合わせのための1を加算する。即ち、(最大値点+最小値点+1)を計算する。図13の場合には、最大値点が♯7で最小値点が♯2なので、(最大値点+最小値点+1)は、(7+2+1)=10となる。
ナイキスト点判別部25は、(最大値点+最小値点+1)の計算結果を一時保持する。
【0100】
次に、ナイキスト点判別部25は、最大値点と最小値点の有効無効を判定する(ステップS16)。
この最大値点と最小値点の有効無効を判定する処理の内容を、図11のフローチャートに示す。
【0101】
ナイキスト点判別部25は、(最大値点−最小値点)を計算する(ステップS21)。
最大値点が最小値点よりも右側にある場合には、必ず正数となる。そこで、ナイキスト点判別部25は、(最大値点−最小値点)>0の場合、最大値点及び最小値点が有効であると判定し、(最大値点−最小値点)<0の場合、最大値点及び最小値点が無効であると判定する(ステップS22)。
【0102】
図13の場合には、(最大値点−最小値点)が(7−2)=5となり、最大値点及び最小値点が有効であると判別される。
図14のように最大値点が♯3、最小値点が6の場合、(最大値点−最小値点)が−3となり、最大値点及び最小値点が無効であると判別される。また、図15のように、最大値点が♯6で最小値点が♯8の場合も、(最大値点−最小値点)が−2となり、最大値点及び最小値点が無効であると判別される。
【0103】
最大値点及び最小値が有効であると判別した場合(ステップS22:YES)、ナイキスト点判別部25は処理を次の中点抽出処理に進める。最大値点及び最小値が無効であると判別した場合(ステップS22:NO)、再度傾きの取り込み処理を行なう。その際サンプリング処理を、例えば1つタイミングをシフトする等を行ない、同じタイミングでサンプリングを行なわないようにする。
【0104】
次に、最大値点及び最小値が有効であると判別した場合、ナイキスト点判別部25は一時保持していた(最大値点+最小値点+1)の計算結果を2で割り、小数点以下を切り捨てる演算を行う(ステップS17)。この演算により、最大値点と最小値点の中点がナイキスト点として抽出される。
【0105】
図13の場合、(最大値点+最小値点+1)/2=(7+2+1)/2=5となり、最高値点♯7と最低値点♯2の中点♯5が抽出される。尚、前述のように、(最大値点+最小値点)に対して位置合わせのための1を加算した値を2で割るので、中点が♯4として抽出されることはない。
ナイキスト点判別部25は、抽出された中点に対応するサンプリング点を特定する情報を、ナイキスト点を示す位置情報としてシンボルクロック出力部26へ出力する。(ステップS18)
【0106】
シンボルクロック出力部26は、ナイキスト点判別部25から出力された、ナイキスト点を特定する情報に基づいて、例えば、ナイキスト点に相当するタイミングでシンボルクロックのパルスを出力する。例えば、ヒストグラムH4がナイキスト点とされた場合には、以後のNシンボル期間の間、各第4サンプリングタイミングに、シンボルクロックを出力する。
【0107】
シンボル判定装置30には、遅延回路31により、シンボルパルスの遅延分とタイミングを合わせて受信信号(FSK変調信号)が供給されている。シンボル判定装置30は、シンボルクロックとそのときの受信信号(FSK変調信号)とに基づいて、シンボルデータを判別し、後段の回路に出力する。
【0108】
このようにして、上記実施の形態の復調装置1によれば、4値FSK変調信号のような多値FSK信号について、適切にナイキスト点を検出し、これに基づいて、シンボルクロックを出力し、このシンボルクロックを用いてシンボルを復調することができる。
【0109】
以上のような本実施形態の復調装置は、次のような利点を奏する。
(1) 検波部11が行う規格化で、各収束点+3,+1,−1,−3にディジタルデータの0x1800,0x0800,0xF800,0xE800を割当て、閾値+2,0,−2にディジタルデータの0x1000,0x0000,0xF000を割当てるので、クロック再生部20でANDをとる計算と、減算をする計算と、絶対値を求める計算を行うだけで、各周波数と直近の収束点との距離を求めることができ、単純な回路で実現できる。
また、処理が軽いので、簡単に理論的収束点と、実際の周波数との距離とを簡単に求めることができる。
【0110】
(2) ナイキスト点判別部25が、累算値を並べたときの傾きを求め、最大の傾きの位置と最小の傾きの位置とから、ナイキスト点を抽出するので、ナイキスト点の近傍の分散が小さい場合でもナイキスト点の検出が可能であり、ナイキスト点の誤検出のためにおこる信号劣化を防ぐことができる。また、ナイキスト点の誤検出のためにジッターマージンが低下することを防ぐこともできる。
【0111】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や応用が可能である。その変形例や応用例としては、次のようなものがある。
例えば、上記実施形態では、4値FSKで変調された信号を復調するものであるが、本発明は8値FSK等の他の多値FSKで変調された信号を復調する場合にも、適用できる。
【0112】
また、図3の各収束点+3,+1,−1,−3に相当するディジタルデータが0x1800,0x0800,0xF800,0xE800となり、閾値+2,0,−2に相当するディジタルデータが、0x1000,0x0000,0xF000となるように割り付けているが、これらは、収束点或いは閾値が増減するごとに2進数が桁上がりするよう設定したものである。例えば8値FSKの場合には、収束点として+5と閾値として+4が加わるが、収束点の+5に2進数で桁上がりしたときの値を0x2800,閾値の+4に2進数の桁上がりしたときの値の0x2000を割り当てることにより、8値FSKの場合も、上記実施形態と同様に、簡単な回路で且つ軽い処理でナイキスト点を抽出できる。
【0113】
なお、AND部21では、規格化されたディジタルデータに対して、正側の最小の閾値(+2:0x1000)から1を引いた値とのANDをとればよい。減算部22では、正側の最初の収束点+1の0x0800を引き算すればよい。
よって、上記の4値FSKの場合でも、例えば収束点+1を0x1000、閾値+2を0x2000とし、AND部21で0x1FFFとANDをとり、減算部22では0x1000で引き算するようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態では、周波数を変調パラメータとするFSKについて説明したが、位相を変調パラメータとするPSK(Phase Shift Keying)変調信号についても、検波部11が位相を検波して規格化データに変換する点以外は同様に適用可能である。
【0115】
また、上記実施の形態では、検出したナイキスト点に同期してシンボルクロックを出力したが、例えば、検出したナイキスト点に基づいて、例えば、ナイキスト点から一定時間遅延したタイミングでシンボルクロックを出力するようにしてもよい。
【0116】
その他、例示した数値、回路構成や、演算処理の手順、フローチャートなどは任意に変更可能である。例えば、1シンボル期間のサンプル数は8に限定されず、任意である。
【0117】
なお、図1の復調装置1又はクロック再生装置10を、MPU(Micro Processing Unit) やDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成することが可能である。この場合、各部は、プロセッサを構成するハードウエアとそれを制御するソフトウエアの機能として実現される。
【符号の説明】
【0118】
1 復調装置
10 クロック再生装置
11 検波部
12 同期語検出部
13 周波数調整部
14 変調度調整部
20 クロック再生部
21 AND部
22 減算部
23 絶対値部
24 ヒストグラム作成部
25 ナイキスト点判別部
26 シンボルクロック出力部
30 シンボル判定装置
111 A/D(アナログ−ディジタル)変換回路
112 周波数弁別回路
113 振幅値規格化回路
114 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送信号の所定のパラメータをベースバンド信号の値に応じて偏移させた変調信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングして、該パラメータの瞬時値を検出するパラメータ検出手段と、
各パラメータの瞬時値と、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点との間の距離を求める距離判別手段と、
前記距離判別手段で求めた各距離について、各1シンボル期間内で、相対的に等しいサンプリング点で求められた距離を累算する累算手段と、
前記累算手段で求められた累算値間の傾きを求め、傾きが最大となるサンプリング点と傾きが最小となるサンプリング点とを抽出し、抽出したサンプリング点に基づいてナイキスト点を推定し、推定したナイキスト点に基づくタイミングでシンボルクロックのパルスを発生するクロック発生手段と、
を備えることを特徴とするシンボルクロック再生装置。
【請求項2】
前記クロック発生手段は、前記傾きが最大となるサンプリング点と前記傾きが最小となるサンプリング点との中点を前記ナイキスト点と推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項3】
前記パラメータ検出手段は、前記ベースバンド信号の1シンボル期間に相当する時間内で、n回、パラメータの瞬時値を検出し、
前記累算手段は、複数のNシンボル期間について、それぞれ第iのサンプル点について求められた距離同士を加算することにより、N個の累算値を求める、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項4】
前記距離判別手段は、
検出した瞬時値を、アイパターン上での隣接するシンボル閾値間の相対位置を示す位置情報に変換する第1の変換手段と、
前記第1の変換手段により得られたシンボル閾値を基準とする位置情報を、アイパターン上での収束点を基準とする相対位置を示す位置情報に変換する第2の変換手段と、
前記第2の変換手段により得られた収束点を基準とする位置情報から、収束点までの距離に変換する第3の変換手段と、から構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項5】
前記第1の変換手段は、検出した瞬時値を示すデータと、該瞬時値を示すデータのうち、アイパターン上での隣接するシンボル閾値間の領域を特定する機能を有するデータ部分をマスクする手段から構成され、
前記第2の変換手段は、収束点に対応するデータが0となるように、第1の変換手段で変換されたデータから所定データを減算する手段から構成され、
前記第3の変換手段は、前記第2の変換手段で変換されたデータの絶対値をとる手段から構成される、
ことを特徴とする請求項4に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項6】
前記距離判別手段は、
検出したパラメータの瞬時値を規格化する規格化手段と、
規格化した瞬時値に基づいて、距離を判別する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項7】
前記規格化手段は、各瞬時値に対し、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点間の距離が等間隔で、各収束点から収束点間のシンボル閾値までの距離が等しく、且つ隣接する収束点を表すデータの桁数が1だけ異なり、隣接するシンボル閾値を表すデータの桁数が1だけ異なるディジタルデータに規格化する手段から構成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項8】
前記変調信号から、ベースバンド信号の先頭位置を示す同期語を検出する同期語検出手段と、
前記検出された同期語に基づいて前記パラメータ検出手段が検出した瞬時値を調整し、調整した瞬時値を前記距離判別手段に供給する調整手段と、
をさらに備えることを特徴する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項9】
前記変調信号は、多値FSK又はPSKで変調されており、前記パラメータは周波数又は位相である、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシンボルクロック再生装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシンボルクロック再生装置と、
該シンボルクロック再生装置からのシンボルクロックに基づいて、前記変調信号からシンボルを復調する復調手段と、
を備えることを特徴とする復調装置。
【請求項11】
搬送信号の所定のパラメータをベースバンド信号の値に応じて偏移させた変調信号を、所定のサンプリング周期で、サンプリングして該パラメータの瞬時値を検出するパラメータ検出手段と、
各パラメータの瞬時値と、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点との間の距離を求める距離判別手段と、
前記距離判別手段で求めた各距離について、各1シンボル期間内で、相対的に等しいサンプリング点で求められた距離を累算する累算手段と、
前記累算手段で求められた累算値間の傾きを求め、傾きが最大となるサンプリング点と傾きが最小となるサンプリング点とを抽出し、抽出したサンプリング点の中点をナイキスト点として判別するナイキスト点判別手段と、
を備えることを特徴とするナイキスト点判別装置。
【請求項12】
変調信号の変調パラメータを検出し、
検出した変調パラメータの各瞬時値と、アイパターンを作成した場合の隣接する収束点との間の距離を求め、
各1シンボル期間内で、相対的に等しい位置で求められた前記距離の累算値を求め、
前記累算値間の傾きを求め、傾きが最大となる位置と傾きが最小となる位置の中点の位置をナイキスト点として判別する、
ことを特徴とするナイキスト点判別方法。
【請求項13】
請求項12に記載のナイキスト点判別方法で判別したナイキスト点に基づいたタイミングでシンボルクロックを生成する、
ことを特徴とするシンボルクロック生成方法。
【請求項14】
請求項13に記載のシンボルクロック生成方法で生成したシンボルクロックを用いて変調信号に含まれているシンボルを再生するシンボル再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−233146(P2010−233146A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80934(P2009−80934)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】