説明

シース接合構造

【課題】緊張材を挿通するシース管同士の接合を確実に行い、ひいては、セグメント同士の接合の工期短縮と経済性の向上を可能としたシース接合構造を提案する。
【解決手段】隣り合うセグメント2のシース管21同士を接合するシース接合構造1であって、一方のセグメント2に設けられたシース管21の端部に装着された外筒管11と、外筒管11に装着された回転シール管12と、回転シール管12の他方のセグメント2側の端部に設けられた押圧プレート13とを備え、外筒管11の外面には雄ネジ加工が施されており、回転シール管12の内面には外筒管11の雄ネジに螺合する雌ネジ加工が施されていて、回転シール管12は回転することでシース管21の軸方向に沿って移動し、押圧プレート13は、回転シール管12とともに他方のセグメント2の端面に向かって移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合うセグメントのシース管同士を接合するためのシース接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレキャスト製のセグメントを利用して構造物を構築する場合において、隣り合うセグメントに緊張材を挿通させて、この緊張材に導入したポストテンションによりセグメント同士を接合する場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、シース管が埋設されたセグメントを、桁軸方向に並設するとともに、シース管に緊張材を挿通し、この緊張材に緊張力を導入することで橋桁を形成している。
【0004】
セグメント同士の接合方式としては、ドライジョイント方式とウェットジョイント方式との2種類が採用されている。
【0005】
ドライジョイント方式は、セグメント同士の当接面に接着剤を塗布した状態で、セグメント同士を密着させるとともに、プレストレスを導入することで接合する方式である。
一方、ウェットジョイント方式は、隣接する他のセグメントと隙間をあけた状態でセグメントをセットするとともに、この隙間に充填材を充填し、充填材に所定の強度が発現した後、プレストレスを導入してセグメント同士を接合する方式である。
【0006】
ドライジョイント方式では、セグメント同士の当接面を隙間なく密着させる必要がある。そのため、セグメントの製作時には、先行して製作された他のセグメントの端面を型枠とするマッチキャストを採用するのが望ましい。
【0007】
ところが、マッチキャストでは、一方の端部から順番にセグメントを一つずつ製作する必要があるため、複数のセグメントを同時に製作することができず、製作工程の短縮が困難であった。
また、セグメント同士の接合やセグメントの製作にあたり大掛かりな架設設備が必要となるため、ドライジョイント方式の適用は、一般的に長スパン橋梁に限られていた。
【0008】
一方、ウェットジョイント方式は、複数のセグメントを同時に製作することが可能なため、製作工程の短縮化が可能である。また、セグメント同士を接合する際に特別な架設設備等を必要としないため、比較的小規模な橋梁であっても採用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−41271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ウェットジョイント方式では、セグメント同士の隙間に充填材を充填する際に、シース管の内部に充填材が入り込むことのないよう、隣り合うセグメントのシース管同士を予め接合する必要がある。
【0011】
従来、シース管同士の接合は、セグメントの接合端面からシース管を突設させておき、セグメントをセットした後に、シース管同士の突き合わせ部分を覆うようにカバーシートを巻きつけるとともに粘着テープを巻きつけることにより行っていた。
また、セグメントの製作精度によっては、シース管同士の突合せ部分が多少ずれることもあり得る。その際には、カバーシートとシース管との間に隙間ができるため、充填材の漏れを完全に回避することが困難であった。
【0012】
セグメント同士の隙間は、作業員が手を入れて作業できることが可能な幅(少なくとも20〜30cm)を確保する必要があるが、セグメント同士の隙間が大きくなると、必然的に充填材の量が多くなるため、充填作業および養生が工期短縮化の妨げとなる。
【0013】
手作業によることなくシース管同士を接合する方法としては、一方のセグメントの端面のシース管の周囲に可撓性のリングシールを貼り付けておき、セグメント同士を互いに押し付けることにより、押圧力によりリングシールを潰して、シース管同士を接合する場合がある。
この方法によれば、セグメント同士の隙間を小さくし、充填材を量の低減化、工期の短縮化を図ることができる。
【0014】
ところが、セグメントの製作精度が高くない場合や、リングシールの接合面に対する接触圧力が不十分な場合等には、リングシールのセグメントの端面への密着度が不十分となり、充填材がシース管内に入り込むおそれがあった。
また、充填材を充填した際の圧力により、可撓性のリングシールが変形するおそれもあった。
【0015】
本発明は、前記課題を解決するものであって、セグメント同士の隙間を最小限にした状態で、緊張材を挿通するシース管同士の接合を確実に行い、ひいては、セグメント同士の接合の工期短縮と経済性の向上を可能としたシース接合構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題を解決するために、第一の発明に係る接合構造は、隣り合うセグメントのシース管同士を接合するシース接合構造であって、一方のセグメントに設けられたシース管の端部に装着された外筒管と、前記外筒管に装着された回転シール管と、前記回転シール管の他方のセグメント側の端部に設けられた押圧プレートとを備え、前記外筒管の外面には雄ネジ加工が施されており、前記回転シール管の内面には前記外筒管の雄ネジに螺合する雌ネジ加工が施されていて、前記回転シール管は、回転することで前記シース管の軸方向に沿って移動し、前記押圧プレートは、前記回転シール管とともに前記他方のセグメントの端面に向かって移動することを特徴としている。
【0017】
また、第二の発明のシース接合構造は、隣り合うセグメントのシース管同士を接合するシース接合構造であって、一方のセグメントに設けられたシース管の端部に装着された回転シール管と、前記回転シール管の他方のセグメント側の端部に設けられた押圧プレートとを備え、前記シース管の外面には螺旋状の凹凸が形成されており、前記回転シール管の内面には前記シース管の外面に形成された凹凸に適合する凹凸が形成されていて、前記回転シール管は、回転することで前記シース管の軸方向に沿って移動し、前記押圧プレートは、前記回転シール管とともに前記他方のセグメントの端面に向かって移動することを特徴としている。
【0018】
かかるシース接合構造によれば、回転シール管を回転させて他方のセグメントに向けて移動させ、押圧プレートを他方のセグメントに当接させるだけで、シース管同士の接合部を回転シール管により覆うことができる。
セグメント同士の隙間は、回転シール管を回転させるための治具を挿入することが可能な幅であればよいため、従来よりも小さくすることができる。そのため、充填材の量を削減することが可能となり、ひいては、充填作業に要する手間や養生に要する時間を削減することができる。
【0019】
前記押圧プレートの端面に設置されたシール部材を備えていてもよいし、前記他方のセグメントの前記押圧プレートとの当接面に設置されたシール部材を備えていてもよい。
このとき、前記シール部材は、前記他方のセグメントに設けられたシース管の端部を囲むように設けるのが望ましい。
【0020】
かかるシース接合構造によれば、セグメントの端面の製作品質に関わらず、押圧プレートを他方のセグメントにシール部材を介して密着させることが可能となる。そのため、より確実にシース管同士の接合を行うことができる。
【0021】
前記押圧プレートが多角形状の部材あるいは外周面に複数の凹凸が形成された部材であれば、薄板状のレンチやリング締め付け治具を用いることが可能となるので、隙間が小さい場合であっても回転シール管を容易に回転させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシース接合構造によれば、緊張材を挿通するシース管同士の接合を確実に行い、ひいては、セグメント同士の接合の工期短縮と経済性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る橋桁を示す斜視図である。
【図2】図1に示す橋桁を構成するセグメントを示す図であって、(a)は横断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】第一の実施の形態に係るシース接合構造を示す断面図である。
【図4】(a)および(b)は、シース接合構造の一部を示す斜視図である。
【図5】(a)および(b)は、第一の実施の形態のシース接合構造による動作を示す断面図である。
【図6】第二の実施の形態に係るシース接合構造を示す断面図である。
【図7】第二の実施の形態のシース接合構造によるシース管の接合状況を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、シース接合構造の他の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第一の実施の形態>
本発明に係る第一の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、図1に示すように、複数のコンクリート製プレキャストセグメント(以下、単に「セグメント2」という)を用いて、プレストレストコンクリート橋梁を建設する場合を例示する。
【0025】
セグメント2は、桁軸方向に複数並設されるとともに、各セグメント2を貫通した緊張材3に緊張力を導入することで連結される。
本実施形態では、セグメント2として、いわゆる箱型断面のものを使用するが、セグメントの形状寸法等は限定されるものではなく、例えばI型断面であってもよい。
【0026】
セグメント2には、図2の(a)および(b)に示すように、複数のシース管21,21,…が配設されている。
【0027】
シース管21は、緊張材3を挿通するための管材であって、橋桁の桁軸方向に沿って配設されている。
【0028】
シース管21は、緊張材3の挿通が可能となるように、緊張材3の外径と同等以上の内径を有している。
シース管21の材質や形状は限定されるものではなく、例えば、薄帯鋼を螺旋状に巻いたスパイラルシースや、ポリエチレン製のスパイラルシースを用いてもよい。
【0029】
シース管21の両端は、セグメント2の端部(他のセグメント2と対向する面)において開口している。シース管21には、隣接する他のセグメント2のシース管21に挿通した緊張材3を挿通する。
セグメント2へのシース管21の設置方法は限定されるものではないが、例えば、コンクリートの打設、締め固めによってずれないように、型枠や鉄筋に固定するとよい。
【0030】
シース管21は、水平に対して傾斜していてもよい。また、曲げ応力が橋梁の下面側に集中する箇所に配設されるセグメント2では、シース管21がセグメントの下面側に集中して配置されていてもよい。
【0031】
本実施形態のシース接合構造1は、図3に示すように、隣り合うセグメント2のシース管21同士を接合するものであり、外筒管11と、回転シール管12と、押圧プレート13と、シール部材14とを備えている。
【0032】
外筒管11は、一方のセグメント2に設けられたシース管21の端部に装着された筒状部材である。
【0033】
外筒管11は、シース管21の端部の外周面に、エポキシ系接着剤やシリコンシール材等により固定されている。外筒管11の外面には雄ネジ加工が施されている。
【0034】
外筒管11を構成する材料は限定されるものではなく、金属、塩化ビニールやアクリル樹脂等の樹脂、木材等が使用可能である。
また、外筒管11の内面に、スパイラル管からなるシース管21の螺旋状の凹凸に対応する凹凸を形成しておき、外筒管11をシース管21に螺合させることで、外筒管11とシース管21との固定度を高めてもよい。
【0035】
回転シール管12は、外筒管11に装着された筒状部材である。
【0036】
回転シール管12は、隙間4よりも大きな長さを有しており、回転シール管12の一部は一方のセグメント2に入り込んでいる。回転シール管12の内面には外筒管11の雄ネジに螺合する雌ネジ加工が施されている。
回転シール管12は、隙間4の外側から挿入された治具5(図4の(a)参照)により回転させられることでシース管21の軸方向に沿って移動する。
【0037】
回転シール管12を構成する材料は限定されるものではなく、金属、塩化ビニールやアクリル樹脂等の樹脂、木材等が使用可能である。
【0038】
押圧プレート13は、回転シール管12の他方のセグメント2側の端部に設けた鍔状の板材である。押圧プレート13の厚みは、隙間4の寸法を考慮して決めるものとし、必要な剛性が確保できる範囲で、なるべく薄いものが望ましい。なお、押圧プレート13を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、金属、塩化ビニールやアクリル樹脂等の樹脂、木材等が使用可能である。
【0039】
押圧プレート13は、図4の(a)に示すように、六角形状の平板により構成されている。押圧プレート13の中央部には、貫通孔13aが形成されている。貫通孔13aには、緊張材が挿通される。
本実施形態では、押圧プレート13として、平板状の部材を回転シール管12の端部に固定するが、押圧プレート13の形成方法は限定されるものではない。例えば、鋳物により、予め回転シール管12と押圧プレート13とを一体に形成してもよい。
【0040】
押圧プレート13の形状は限定されるものではなく、その他の多角形状に形成されていてもよいし、図4の(b)に示すように、外周面に歯車状に複数の凹凸が形成された板材であってもよい。
【0041】
押圧プレート13を、隙間4から挿入された治具5を介して回転させると、回転シール管12も一体に回転する。回転シール管12は回転することでシース管21の軸方向に沿って移動するため、押圧プレート13もこれに伴って移動する。押圧プレート13は、回転シール管12とともに他方のセグメント2の端面に向かって移動することで、他方のセグメント2の端面に設置されたシール部材14に密着する(図5の(b)参照)。
【0042】
本実施形態では、治具5として、六角レンチを使用するが、治具5は限定されるものではなく、押圧プレート13に応じて適宜採用すればよい。例えば、図4の(b)に示すように、押圧プレート13が外周面に歯車状の凹凸が形成された板材である場合には、内面に歯車状の凹凸が形成されたΩ形状の治具(リング締め付け治具)5を使用する。この治具5は、グリップ5a,5aを狭めることで、押圧プレート13を把持し、回転シール管12を回転させることができる。なお、治具を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、鋼材や合成樹脂等により構成すればよい。
【0043】
シール部材14は、図3に示すように、他方のセグメント2の押圧プレート13との当接面に設置されている。
【0044】
シール部材14は、リング状の他方のセグメント2に設けられたシース管21の端部を囲むようにシース管21の外周囲に沿って設けられている。
シール部材14は、可撓性の部材であって、本体部14aと、本体部14aに突設されたリップ部14bとからなる。
【0045】
本体部14aは、シース管21の外周に接着されているとともに、セグメント2に埋設されている。
なお、シール部材14の設置方法は限定されるものではなく、例えば、本体部14aの一部が、セグメント2の端面から突出していてもよい。
【0046】
リップ部14bは、セグメント2の端面から突出している。リップ部14bは、本体部14aの外縁側から突出しており、先端(押圧プレート)に近づくに従って拡径するように傾斜していて、押圧プレート13の押圧力により外側に変形(傾倒)する。
【0047】
シール部材14を構成する材料は、設計した変形係数を有する材料であれば、限定されるものではないが、変形係数(硬度)を容易に設定することが可能なウレタン樹脂が望ましい。この他のシール部材14に望ましい材料としては、例えば、天然ゴム、ネオプレンゴム、加硫ゴム、発泡ゴム等がある。
【0048】
セグメント2は、一端に外筒管11、他端にシール部材14が固定されたシース管21を、型枠内にセットした状態で、コンクリートを打設することにより形成する。
このとき、外筒管11には、回転シール管12を螺合しておき、回転シール管12の外周面には、剥離材を塗布しておく。このようにすると、回転シール管12に付与した回転力により、回転シール管12がコンクリートから剥離し、他方のセグメント2に向けて移動できるようになる。なお、外筒管11の周囲に箱抜きする場合には、回転シール管12は、セグメント2が完成してからセットすればよい。
【0049】
シース接合構造1による、シース管21同士の接合は、まず、図5の(a)に示すように、セグメント2を、隣接する他のセグメント2との間に所定の隙間4をあけて配設する。
【0050】
次に、隙間4から六角レンチ(治具5)を挿入して、回転シール管12を回転させる。回転シール管12は、回転することで内面に形成された雄ネジが外筒管11の雌ネジを摺動し、他のセグメント2側に移動する。
【0051】
回転シール管12が他のセグメント2側に移動すると、押圧プレート13がシール部材14に当接する。さらに回転シール管12を回転させると、図5の(b)に示すように、押圧プレート13がシール部材14を押圧し、リップ部14bが外側に変形(傾倒)して、押圧プレート13とシール部材14とが隙間なく密着する。
【0052】
押圧プレート13とシール部材14とが密着することで、シース管21同士の隙間が密閉されて、シース管21同士が接合される。
これにより、セグメント2同士の隙間4に充填された充填材41が、シース管21内に入り込むことが防止される。
【0053】
シール部材14(リップ部14b)は、充填材41の圧力により内側(シール部材14の中心側)に変形しようとするが、リップ部14bに密着した押圧プレート13によりブロックされて、より確実にシールされる。
【0054】
本実施形態のシース接合構造1によれば、回転シール管12を回転させて、押圧プレート13を移動させるのみで押圧プレート13をシール部材14に密着させて、シース管21同士の接合部を回転シール管12により覆うことができる。
よって、セグメント2の端面の品質に限定されることなく、確実にシース管21同士の接合を行うことができる。
【0055】
また、セグメント2同士の隙間4は、回転シール管12を回転させるための治具5(六角レンチ)を挿入することが可能な幅を確保すればよいため、従来よりも小さく(例えば2〜3cm程度)することができる。そのため、充填材41の量を削減することが可能となり、ひいては、充填作業に要する手間や養生に要する時間を削減することができる。よって、工期短縮と経済性の向上が可能となる。
【0056】
また、セグメント2同士の隙間4の幅を小さくすることで、構造的な弱部が形成されることを抑制する。
【0057】
セグメント製作精度の低下により隙間4の幅にばらつきがあったとしても、回転シール管12のセグメント2の端面からの突出長を調節することで、シース管21同士の接合を確実に行うことができる。
【0058】
なお、充填材41による最大圧力に対して、回転シール管12の回転トルクがどの程度必要であるかのデータを予め準備しておけば、確実なシールを実施することができる。
【0059】
橋桁の桁高が大きくなると、充填材41の圧力も大きくなるが、この場合には、回転シール管12の剛性を高めておくことで、変形するリスクを抑えることができる。そのため、充填材41の圧力により変形して漏洩することが防止される。
【0060】
シース接合構造1を構成する材料等として、既製品を利用することが可能なため、狭い隙間4におけるシース管21同士の接合を経済的に行うことができる。
【0061】
<第二の実施の形態>
本発明に係る第二の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、第一の実施の形態と同様に、セグメント2を用いて、プレストレストコンクリート橋梁を建設する場合を例示する。
【0062】
本実施形態のセグメント2には、図6に示すように、回転シール管12の周囲に箱抜きによる空間22が形成されている。また、シース管21は、スパイラル管であり、シース管21の外面には螺旋状の凹凸が形成されている。
この他のセグメント2の構成は、第一の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0063】
本実施形態のシース接合構造1は、図6に示すように、回転シール管12と、押圧プレート13と、シール部材14とを備えている。
【0064】
回転シール管12は、一方のセグメント2に設けられたシース管21に装着された筒状部材である。なお、回転シース管12として、既製品のシースジョイントを使用してもよい。
【0065】
回転シール管12は、セグメント2同士の隙間4よりも大きな長さを有しており、その内面にはシース管21の外面の凹凸に適合する凹凸が形成されている。回転シール管12は、これを軸回りに回転することでシース管21の軸方向に沿って移動する。
【0066】
回転シール管12を構成する材料は限定されるものではなく、金属、塩化ビニールやアクリル樹脂等の樹脂、木材等が使用可能である。
【0067】
押圧プレート13は、回転シール管12の他方のセグメント2側の端部に設けられた板材であり、回転シール管12の端部に固定されている。なお、押圧プレート13を回転シール管12に固定する方法としては、例えば、溶接や接着剤による方法がある。
押圧プレート13の中央部には、貫通孔13aが形成されていて、緊張材の挿通が可能に構成されている。
【0068】
なお、押圧プレート13の形状は限定されるものではなく、例えば、多角形状に形成された板材(図4の(a)参照)であってもよいし、外周面に歯車状に複数の凹凸が形成された平板(図4の(b)参照)であってもよい。
【0069】
押圧プレート13は、回転シール管12とともにシース管21の軸方向に沿って移動する。押圧プレート13は、回転シール管12とともに他方のセグメント2の端面に向かって移動することで、他方のセグメント2の端面に密着する。
【0070】
シール部材14は、押圧プレート13の他方のセグメント2との当接面(端面)に設置されている。
【0071】
シール部材14は、可撓性のリング状部材であって、本体部14aと、本体部14aに突設されたリップ部14bとからなる。
シール部材14は、他方のセグメント2に当接した状態では、他方のセグメント2に設けられたシース管21の周囲を囲む。
【0072】
本体部14aは、押圧プレート13の端面に接着されている。リップ部14bは、本体部14aの外縁側から突出しており、先端(他方のセグメント2)に近づくに従って拡径するように傾斜していて、押圧プレート13の押圧力により外側に変形(傾倒)する。なお、シール部材14の断面形状は限定されるものではない。
【0073】
シール部材14を構成する材料は、限定されるものではないが、変形係数(硬度)を容易に設定することが可能なウレタン樹脂が望ましい。この他のシール部材14に望ましい材料としては、例えば、天然ゴム、ネオプレンゴム、加硫ゴム、発泡ゴム等がある。
【0074】
セグメント2は、シース管21を型枠内にセットした状態で、コンクリートを打設することにより形成する。
このとき、シース管21の一端側の周囲を箱抜きすることで、回転シール管12を設置する空間22を形成しておく。なお、回転シール管12は、外周面に剥離材を塗布した状態で、予めシース管21に設置しておいてもよい。
【0075】
シース接合構造1による、シース管21同士の接合は、まず、セグメント2を、隣接する他のセグメント2との間に所定の隙間4をあけて配設する。
【0076】
次に、隙間4から治具5(図4の(b)参照)を挿入して、回転シール管12を回転させる。回転シール管12は、回転することでシース管21の螺旋状の凹凸を摺動し、他のセグメント2側に移動する。
【0077】
回転シール管12が他のセグメント2側に移動すると、押圧プレート13に固定されたシール部材14が他のセグメント2の端面に当接する。さらに回転シール管12を回転させると、押圧プレート13がシール部材14を押圧し、リップ部14bが変形して、図7に示すように、シール部材14が他のセグメント2の端面に隙間なく密着する。
【0078】
シール部材14が密着することで、シース管21同士の隙間が密閉されて、シース管21同士が接合される。
これにより、セグメント2同士の隙間4に充填された充填材41が、シース管21内に入り込むことが防止させる。
【0079】
第二の実施の形態のシース接合構造1によれば、第一の実施の形態のシース接合構造1と同様の効果を得ることができる。
【0080】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0081】
例えば、本発明にかかるシース接合構造は、橋桁に限定されるものではなく、複数のセグメントにより構成される各種のプレストレストコンクリート構造物に適用可能である。
【0082】
シース管を挿通する緊張材3は限定されるものではなく、例えば、PC鋼棒、PC鋼線、PCより線等を使用すればよい。
【0083】
前記各実施形態では、押圧プレート13が平板の場合について説明したが、押圧プレート13はこれに限定されるものではなく、例えば、図8の(a)に示すように、リング状の突起13bが設けられていてもよい。この押圧プレート13によれば、突起13bをシール部材14に食い込ませることで、充填材41の漏洩(シース管21への滲入)が防止される。突起13bのシール部材14への食込みは、接触圧力が局所的に大きくなるために、充填材41による漏洩しようとする圧力が大きな場合にもシールすることができる。
【0084】
また、シール部材14の断面形状は限定されるものではなく、例えば、断面矩形状(図8の(a)参照)や断面円形(図8の(b)参照)であってもよい。
【0085】
図8の(b)に示すように、シール部材14として、Oリングを使用する場合には、他方のセグメント2の端面に形成されたリング状の溝にシール部材14を固定する。シール部材14に押圧プレート13を押し付けることで、Oリングの接触部の接触圧を高められてシールされる。
なお、Oリングからなるシール部材14は、図8の(c)に示すように、押圧プレート13に固定してもよい。
【0086】
前記各実施形態では、一方のセグメント2側から回転シール管12が伸長する場合について説明したが、隙間4を挟む両セグメント2,2から回転シール管12が伸長させてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 シース接合構造
11 外筒管
12 回転シール管
13 押圧プレート
14 シール部材
2 セグメント
21 シース管
3 緊張材
4 隙間
41 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うセグメントのシース管同士を接合するシース接合構造であって、
一方のセグメントに設けられたシース管の端部に装着された外筒管と、
前記外筒管に装着された回転シール管と、
前記回転シール管の他方のセグメント側の端部に設けられた押圧プレートと、を備え、
前記外筒管の外面には雄ネジ加工が施されており、
前記回転シール管の内面には前記外筒管の雄ネジに螺合する雌ネジ加工が施されていて、
前記回転シール管は、回転することで前記シース管の軸方向に沿って移動し、
前記押圧プレートは、前記回転シール管とともに前記他方のセグメントの端面に向かって移動することを特徴とするシース接合構造。
【請求項2】
隣り合うセグメントのシース管同士を接合するシース接合構造であって、
一方のセグメントに設けられたシース管の端部に装着された回転シール管と、
前記回転シール管の他方のセグメント側の端部に設けられた押圧プレートと、を備え、
前記シース管の外面には螺旋状の凹凸が形成されており、
前記回転シール管の内面には前記シース管の外面に形成された凹凸に適合する凹凸が形成されていて、
前記回転シール管は、回転することで前記シース管の軸方向に沿って移動し、
前記押圧プレートは、前記回転シール管とともに前記他方のセグメントの端面に向かって移動することを特徴とするシース接合構造。
【請求項3】
前記押圧プレートの端面に設置されたシール部材を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシース接合構造。
【請求項4】
前記他方のセグメントの前記押圧プレートとの当接面に設置されたシール部材を備えており、
前記シール部材は、前記他方のセグメントに設けられたシース管の端部を囲むように設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシース接合構造。
【請求項5】
前記押圧プレートが多角形状の部材あるいは外周面に複数の凹凸が形成された部材であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシース接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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