説明

シートの製造装置及びシートの製造方法

【課題】製造効率の低下を抑制し、かつ管理指標の変更等を必要とせず、所望の厚みを有するシートを製造することができるシートの製造装置及びシートの製造方法を提供すること。
【解決手段】溶融樹脂をシート状に吐出するもので、溶融樹脂の吐出間隙21を調整する複数の厚み調整手段22を有するダイ20と、ダイ20より吐出された樹脂から形成されたシートの厚みをその幅方向に沿ってスキャンしながら測定する厚み測定器50と、厚み測定器50による測定結果から厚みプロファイルを作成し、作成した厚みプロファイルに基づいて、シートの幅方向の厚みが目標値となるよう複数の厚み調整手段22の操作量を制御する制御手段60とを備え、厚み測定器50は、複数の異なるスキャン速度によってシートの幅方向の厚みを測定するものであり、制御手段60は、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を用いて厚みプロファイルを作成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルム等のシートの製造装置及びシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばフィルム等のシートを製造する装置は、ダイと、延伸機と、巻取機と、厚み測定器と、制御手段とを備えて構成されているのが一般的である。ダイは、押出機より押し出された溶融樹脂をシート状に吐出するものである。このようなダイには、吐出間隙を調整する複数の厚み調整手段が配設されている。延伸機は、ダイより吐出されたシート状の樹脂を、その搬送方向(以下、MD(Machine Direction)方向ともいう)及びその幅方向(以下、TD(Transversal Direction)方向ともいう)に延伸してシートを形成するものである。巻取機は、延伸機により形成されたシートをロール状に巻き取るものである。
【0003】
厚み測定器は、ダイと延伸機との間、及び/又は延伸機と巻取機との間に配設されるのが一般的であり、センサをシートの幅方向に沿って予め決められた一定速度で往復移動させることで該シートの厚みをTD方向の分布として測定するものである。制御手段は、厚み測定器での測定結果より厚みプロファイルを作成し、この作成した厚みプロファイルと予め設定された所望の厚みプロファイルとを用いてシートの幅方向の厚みが目標値となるよう複数の厚み調整手段の操作量を例えばPID制御により制御するものである。
【0004】
このようなシートの制御装置においては、厚み測定器での測定結果をフィードバックして厚み調整手段の操作量を制御することで、所望の厚みを有するシートを製造することが可能になる。
【0005】
しかしながら、ダイから吐出する溶融樹脂の吐出ムラや、延伸機によるMD方向の延伸ムラや、ダイとこのダイの吐出間隙近傍に設けられた冷却ドラムとの間の膜振動等に起因して、実際にはシートのMD方向にも厚み分布が存在している。そのため、上記厚み測定器での測定結果には、TD方向の厚み分布以外にMD方向の厚み分布も含まれている。よって、かかる測定結果をそのままフィードバックして厚み調整手段の操作量を制御すると、かえって厚みムラを作り出してしまい、所望の厚みを有するシートを製造することができない虞れがあった。
【0006】
そこで、MD方向の厚み分布成分を取り除いてTD方向の厚み分布のみを厚み測定器が測定できるよう、センサを往復させるスキャン速度を、当該製造プロセスでの条件より事前に求められた所定の速度よりも遅くする製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−291204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述した特許文献1に提案されている製造装置では、センサのスキャン速度を、当該製造プロセスでの条件から事前に求められた所定の速度よりも遅くしているためにセンサのスキャン速度が従来よりも遅くなる。一般に、厚み調整手段の調整量の制御は、センサがスキャン端部に到達するタイミングで実施するため、厚み調整手段の操作量の制御を実施する時間間隔が長くなってしまい、結果的にシートの製造効率の低下を招来する。
【0009】
また、特許文献1に提案されている製造装置では、従来よりもセンサのスキャン速度を遅くすることでMD方向の厚み分布成分を除いているため、厚み測定器が作成する厚みプロファイルへのMD方向の厚み分布成分の影響が異なる。この厚みプロファイルは、一般に厚み管理にも用いられるため、シートの製造に伴う種々の管理指標を変更しなければならなくなる。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造効率の低下を抑制し、かつ管理指標の変更等を必要とせず、所望の厚みを有するシートを製造することができるシートの製造装置及びシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るシートの製造装置は、溶融した樹脂をシート状に吐出するものであり、溶融樹脂の吐出間隙を調整する複数の厚み調整手段を有するダイと、前記ダイより吐出されたシート状の樹脂から形成されたシートの厚みをその幅方向に沿ってスキャンしながら測定する厚み測定手段と、前記厚み測定手段による測定結果から厚みプロファイルを作成し、作成した厚みプロファイルに基づいて、前記シートの幅方向の厚みが目標値となるよう前記複数の厚み調整手段の操作量を制御する制御手段とを備え、所望の厚みを有するシートを製造する装置において、前記厚み測定手段は、複数の異なるスキャン速度によって前記シートの幅方向の厚みを測定するものであり、前記制御手段は、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を用いて前記厚みプロファイルを作成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係るシートの製造装置は、上述した請求項1において、前記制御手段は、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を積算処理して前記厚みプロファイルを作成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係るシートの製造装置は、上述した請求項1又は請求項2において、前記厚み測定手段は、往路のスキャン速度と復路のスキャン速度とが異なる態様で前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に係るシートの製造装置は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、前記厚み測定手段は、前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定するものであり、往路内及び/又は復路内においてシート幅方向の位置によってスキャン速度が変化することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5に係るシートの製造方法は、複数の厚み調整手段を有するダイから吐出された樹脂より形成されたシートの厚みを、該シートの幅方向に沿ってスキャンする厚み測定手段によって測定する厚み測定工程と、前記厚み測定工程の測定結果から厚みプロファイルを作成する厚みプロファイル作成工程と、前記厚みプロファイル作成工程で作成された厚みプロファイルに基づいて前記シートの厚みが目標値となるよう前記複数の厚み調整手段の操作量を算出する算出工程とを備え、所望の厚みを有するシートを製造する方法において、前記厚み測定工程は、前記厚み測定手段を通じて複数の異なるスキャン速度によって前記シートの幅方向の厚みを測定するものであり、前記厚みプロファイル作成工程は、前記厚みプロファイル作成手段を通じて、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を用いて前記厚みプロファイルを作成することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項6に係るシートの製造方法は、上述した請求項5において、前記厚みプロファイル作成工程は、前記厚みプロファイル作成手段を通じて、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を積算処理して前記厚みプロファイルを作成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項7に係るシートの製造方法は、上述した請求項5又は請求項6において、前記厚み測定工程は、往路のスキャン速度と復路のスキャン速度とが異なる態様で前記厚み測定手段が前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項8に係るシートの製造方法は、上述した請求項5〜7のいずれか一つにおいて、前記厚み測定工程は、前記厚み測定手段が前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定するものであり、往路内及び/又は復路内においてシート幅方向の位置によってスキャン速度が変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシートの製造装置によれば、厚み測定手段が複数の異なるスキャン速度によってシートの幅方向の厚みを測定するものであるので、シートの搬送方向の厚みムラ成分の位相を、設定したズレを生じさせながら、データとして取得することが可能になる。また、制御手段が複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を用いて厚みプロファイルを作成するので、位相がずれているシートの搬送方向の厚みムラ成分を加算することになり、位相のズレ様を設定することで、シートの搬送方向の厚みムラ影響を低減させることができる。これにより、シートの搬送方向の厚みムラ影響を低減させて幅方向の厚みムラのデータを取得することができ、かかる幅方向の厚みムラのデータを用いて、シートの幅方向の厚みが目標値となるよう複数の厚み調整手段の操作量を制御するので、所望の厚みを有するシートを製造することができる。しかも、厚み測定手段による測定を異なるスキャン速度によって行うだけなので、厚み測定手段による測定時間は、所望の範囲を確保することが可能になり、従来のようにスキャン速度が遅くなることによる製造効率の低下を招来する虞れがない。また、設定するスキャン速度の一つを従来と同じ速度にすれば、そのときの厚みプロファイルを用いることで従来と同様の厚み管理を実現することができる。従って、製造効率の低下を抑制し、かつ管理指標の変更等を必要とせず、所望の厚みを有するシートを製造することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明のシートの製造方法によれば、厚み測定工程が、厚み測定手段を通じて複数の異なるスキャン速度によってシートの幅方向の厚みを測定するものであるので、シートの搬送方向の厚みムラ成分の位相を、設定したズレを生じさせながら、データとして取得することが可能になる。また、厚みプロファイル作成工程が、厚みプロファイル作成手段を通じて、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を用いて厚みプロファイルを作成するので、位相がずれているシートの搬送方向の厚みムラ成分を加算することになり、位相のズレ様を設定することで、シートの搬送方向の厚みムラ影響を低減させることができる。これにより、シートの搬送方向の厚みムラ影響を低減させて幅方向の厚みムラのデータを取得することができ、かかる幅方向の厚みムラのデータを用いて、シートの幅方向の厚みが目標値となるよう複数の厚み調整手段の操作量を制御するので、所望の厚みを有するシートを製造することができる。しかも、厚み測定手段による測定を異なるスキャン速度によって行うだけなので、厚み測定工程における測定時間は、所望の範囲を確保することが可能になり、従来のようにスキャン速度が遅くなることによる製造効率の低下を招来する虞れがない。また、設定するスキャン速度の一つを従来と同じ速度にすれば、そのときの厚みプロファイルを用いることで従来と同様の厚み管理を実現することができる。従って、製造効率の低下を抑制し、かつ管理指標の変更等を必要とせず、所望の厚みを有するシートを製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるシートの製造装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示したシートの製造装置を構成するダイを示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示したシートの製造装置の特徴的な制御系を模式的に示す模式図である。
【図4】図4は、図1及び図3に示した制御手段が実施する厚み調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るシートの製造装置及びシートの製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態であるシートの製造装置の概略構成図である。ここで例示するシートの製造装置1は、押出機10、ダイ20、延伸機30、巻取機40、厚み測定器(厚み測定手段)50及び制御手段60を備えて構成してある。押出機10は、シートの原料となる樹脂(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート))を加熱溶融した状態で押し出すものである。
【0024】
図2は、図1に示したシートの製造装置1を構成するダイ20を示す斜視図である。この図2に示すように、ダイ20は、スリット状の吐出間隙21を有しており、押出機10より押し出された溶融樹脂を、該吐出間隙21からシート状に吐出するものである。この吐出間隙21からシート状に吐出された樹脂は、冷却ドラム2に冷却されて凝固することになる。
【0025】
また、ダイ20には、複数の厚み調整手段22が設けてある。これら厚み調整手段22は、吐出間隙21の長手方向に沿って並ぶ態様で等間隔に設けてあり、吐出間隙21の大きさを調整するものである。ここで本実施の形態である厚み調整手段22としては、カートリッジヒータを内蔵したボルトを熱的に膨張収縮させて吐出間隙21の大きさを調整するヒートボルト方式を採用している。
【0026】
延伸機30は、冷却ドラム2で冷却され、かつ搬送ローラ3を介して搬送されたシート状樹脂を、その搬送方向(MD方向)及びその幅方向(TD方向)に延伸してシートを形成するものである。
【0027】
巻取機40は、延伸機30により形成され、かつ搬送ローラ3を介して搬送されたシートをロール状に巻き取るものである。
【0028】
厚み測定器50は、延伸機30と巻取機40との間に配設してあり、センサ51(図3参照)をシートのTD方向に沿って往復移動させることで該シートの厚みを、所定の個所(すなわち、各厚み調整手段22の操作点に対応した調整可能領域)毎に計測してTD方向の分布として測定するものである。
【0029】
このような厚み測定器50としては、β線、赤外線、紫外線、X線等の吸収率を利用したもの、光の干渉現象を利用したもの等、任意のものを採用することができ、本実施の形態における厚み測定器50としては、β線の吸収現象を用いたものを採用している。
【0030】
また、厚み測定器50においては、センサ51の往路のスキャン速度と復路のスキャン速度とが異なるようにしてある。より具体的には、シートの幅方向の長さが3500mmで、かつ厚み測定器50が厚みを測定する個所におけるシートの搬送速度が100m/分である場合、センサ51の往路のスキャン時間を例えば40秒間(従来と同じスキャン速度)とし、復路のスキャン時間を例えば35秒間として、往路のスキャン速度と復路のスキャン速度とを異なるものにしている。
【0031】
厚み測定器50におけるセンサ51の往復移動のスキャン速度は次のようにして設定されている。尚、以下に例示するものは一例であり、これに限定されないことはいうまでもない。
【0032】
厚み測定器50のセンサ51をシートのTD方向中央に固定配置し、該シートのMD方向に沿った厚みを測定して、その測定結果をフーリエ変換してスペクトルを調べることで、該シートがMD方向に例えば0.5Hz付近をピークとする厚みムラを有することが判明したとする。続いて、上記センサ51をシートのTD方向に沿って往復移動させるスキャン速度を考える。この際、センサ51の往路のスキャン時間を例えば従来と同じ40秒間に固定し、復路のスキャン時間をシミュレーションによって決定する。このシミュレーションでは実測したMD方向の厚みムラを用い、MD方向の厚みムラの影響を最も低減する復路のスキャン時間を決定する。具体的には、センサ51の復路のスキャン速度を変化させ、それぞれのスキャン速度において、シートの各幅方向位置で測定するMD方向の厚みムラを算出する。そして、シート全幅に亘り、各TD位置において連続した複数回の厚みムラ測定値を加算する。シート全幅に亘る厚みムラ測定値の加算値の最大値と最小値との差が最も小さくなる復路のスキャン時間を求め、これに基づいて算出したスキャン速度を、センサ51の往復移動の復路のスキャン速度に設定する。ここでは、10回分の厚みムラ測定値を加算した。
【0033】
図3は、図1に示したシートの製造装置1の特徴的な制御系を模式的に示す模式図である。この図3に示すように、制御手段60は、制御処理部61を備えている。制御処理部61は、メモリ62に格納されたデータやプログラムに従って複数の厚み調整手段22の操作量を制御するものであり、入力処理部611、厚みプロファイル作成処理部612、操作量算出処理部613及び出力処理部614を主たる構成要素として備えている。
【0034】
入力処理部611は、厚み測定器50を構成するセンサ51がシートの厚みを測定した場合に、該センサ51よりその測定結果である測定信号を入力するものである。この入力処理部611によって入力された測定結果は、適宜メモリ62に格納される。
【0035】
厚みプロファイル作成処理部612は、入力処理部611を通じて入力された測定結果と、メモリ62に格納してある直近の所定回数分(例えば9回分)の測定結果とを積算処理して、つまり最近の例えば10回分の測定結果を積算処理して、シートのTD方向における各厚み調整手段22の操作点に対応した個所毎の厚みプロファイルを作成するものである。このように厚みプロファイル作成処理部612は、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を積算処理して厚みプロファイルを作成するものである。
【0036】
操作量算出処理部613は、厚みプロファイル作成処理部612を通じて作成された厚みプロファイルと、メモリ62に予め格納してある目標厚みプロファイルとの偏差を求め、かかる偏差に基づいてPID演算を行って各厚み調整手段22の操作量を算出するものである。
【0037】
出力処理部614は、操作量算出処理部613を通じて算出された操作量を図示せぬパワーユニットを介して各厚み調整手段22に出力するものである。
【0038】
図4は、図1及び図3に示した制御手段60が実施する厚み調整処理の処理内容を示すフローチャートである。この厚み調整処理は、厚み測定器50がシートの厚みを1回測定する毎、つまりシートの幅方向に沿って往復移動する場合の片道(往路若しくは復路)の移動が終了する毎に実施されるものである。
【0039】
この厚み調整処理において制御手段60は、入力処理部611を通じて厚み測定器50を構成するセンサ51から測定結果を入力した場合(ステップS101:Yes)、厚みプロファイル作成処理部612を通じて厚みプロファイルを作成する(ステップS102)。
【0040】
かかるステップS102においては、制御手段60は、入力処理部611を通じて入力された測定結果と、メモリ62に格納してある直近の所定回数分(例えば9回分)の測定結果とを積算処理して、シートのTD方向における各厚み調整手段22の操作点に対応した個所毎に厚みプロファイルを作成する。
【0041】
厚みプロファイルを作成した制御手段60は、操作量算出処理部613を通じて、該厚みプロファイルと、メモリ62から読み出した目標厚みプロファイルとの偏差を求め、かかる偏差に基づいてPID演算を行って各厚み調整手段22の操作量を算出する(ステップS103)。
【0042】
そして、制御手段60は、算出した操作量を各厚み調整手段22に出力処理部614を通じて出力し(ステップS104)、その後に手順をリターンして今回の処理を終了する。但し、このステップS104だけは、厚み測定器50が、予め設定した回数だけ、シート厚みを測定する毎に実施するようにしてもよい。
【0043】
このように制御手段60は、厚み測定器50による測定結果から厚みプロファイルを作成し、作成した厚みプロファイルに基づいて、シートのTD方向の厚みが目標値となるよう複数の厚み調整手段22の操作量を制御するものである。
【0044】
本実施の形態であるシートの製造装置1においては、厚み測定器50が往路のスキャン速度と復路のスキャン速度とが異なる態様でシートのTD方向に沿って往復移動することで該シートの厚みを測定するので、シートのMD方向の厚みムラ(例えば0.5Hz)成分を、設定した位相ズレを持たせた状態でデータとして取得することが可能になる。そして、制御手段60が複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を積算処理して厚みプロファイルを作成するので、位相がずれた状態のデータ同士を積層することになり、結果としてシートのMD方向の厚みムラ影響を低減することができる。これにより、シートのMD方向の厚みムラ影響を最小化してTD方向の厚みムラのデータを取得することができ、かかるTD方向の厚みムラのデータを用いて、シートのTD方向の厚みが目標値となるよう複数の厚み調整手段22の操作量を制御するので、所望の厚みを有するシートを製造することができる。
【0045】
しかも、厚み測定器50によるスキャン速度を往路と復路とで異なるようにしているだけなので、往復移動に要するスキャン時間は、所望の範囲を確保することが可能になり、従来のようにスキャン速度が遅くなることによる製造効率の低下を招来する虞れがない。
【0046】
よって、本発明の実施の形態であるシートの製造装置1によれば、製造効率の低下を抑制しつつ、所望の厚みを有するシートを製造することができる。
【0047】
上記シートの製造装置1によれば、厚み測定器50によるスキャン速度を往路と復路とで異なるようにしているだけなので、例えば往路を従来と同じスキャン速度にして、そのスキャン速度で測定した厚みプロファイルによる厚み管理を実施すれば、従来と同様の管理指標を用いることが可能になる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0049】
上述した実施の形態では、制御手段60の厚みプロファイル作成処理部612が複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を積算処理して厚みプロファイルを作成していたが、本発明においては、測定結果を積算処理するだけでなく、重み付け等を行って積算処理してもよいし、積算処理以外の方法を用いて厚みプロファイルを作成してもよい。
【0050】
上述した実施の形態では、厚み測定器50によるスキャン速度を往路と復路とで変更していたが、本発明においては、厚み測定手段が複数のセンサを有し、かつこれら複数のセンサが互いに異なるスキャン速度でシートの幅方向の厚みを測定するものであってもよい。これによっても、設定した位相ズレを持たせた状態のデータ同士を取得し、これらのデータを積層することでシートの搬送方向の厚みムラ影響を低減することができる。
【0051】
上述した実施の形態では、厚み測定器50によるスキャン速度を往路と復路とで変更していたが、本発明においては、スキャン速度を周期的に変化させるようにしてもよい。これによっても、設定した位相ズレを持たせた状態のデータ同士を取得し、これらのデータを積層することでシートの搬送方向の厚みムラ影響を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明に係るシートの製造装置及びシートの製造方法は、所定の厚みを有するフィルム等のシートを製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 シートの製造装置
10 押出機
20 ダイ
21 吐出間隙
22 厚み調整手段
30 延伸機
40 巻取機
50 厚み測定器
51 センサ
60 制御手段
61 制御処理部
611 入力処理部
612 厚みプロファイル作成処理部
613 操作量算出処理部
614 出力処理部
62 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した樹脂をシート状に吐出するものであり、溶融樹脂の吐出間隙を調整する複数の厚み調整手段を有するダイと、
前記ダイより吐出されたシート状の樹脂から形成されたシートの厚みをその幅方向に沿ってスキャンしながら測定する厚み測定手段と、
前記厚み測定手段による測定結果から厚みプロファイルを作成し、作成した厚みプロファイルに基づいて、前記シートの幅方向の厚みが目標値となるよう前記複数の厚み調整手段の操作量を制御する制御手段と
を備え、所望の厚みを有するシートを製造する装置において、
前記厚み測定手段は、複数の異なるスキャン速度によって前記シートの幅方向の厚みを測定するものであり、
前記制御手段は、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を用いて前記厚みプロファイルを作成することを特徴とするシートの製造装置。
【請求項2】
前記制御手段は、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を積算処理して前記厚みプロファイルを作成することを特徴とする請求項1に記載のシートの製造装置。
【請求項3】
前記厚み測定手段は、往路のスキャン速度と復路のスキャン速度とが異なる態様で前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシートの製造装置。
【請求項4】
前記厚み測定手段は、前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定するものであり、往路内及び/又は復路内においてシート幅方向の位置によってスキャン速度が変化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のシートの製造装置。
【請求項5】
複数の厚み調整手段を有するダイから吐出された樹脂より形成されたシートの厚みを、該シートの幅方向に沿ってスキャンする厚み測定手段によって測定する厚み測定工程と、
前記厚み測定工程の測定結果から厚みプロファイルを作成する厚みプロファイル作成工程と、
前記厚みプロファイル作成工程で作成された厚みプロファイルに基づいて前記シートの厚みが目標値となるよう前記複数の厚み調整手段の操作量を算出する算出工程と
を備え、所望の厚みを有するシートを製造する方法において、
前記厚み測定工程は、前記厚み測定手段を通じて複数の異なるスキャン速度によって前記シートの幅方向の厚みを測定するものであり、
前記厚みプロファイル作成工程は、前記厚みプロファイル作成手段を通じて、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を用いて前記厚みプロファイルを作成することを特徴とするシートの製造方法。
【請求項6】
前記厚みプロファイル作成工程は、前記厚みプロファイル作成手段を通じて、複数の異なるスキャン速度によって測定された測定結果を積算処理して前記厚みプロファイルを作成することを特徴とする請求項5に記載のシートの製造方法。
【請求項7】
前記厚み測定工程は、往路のスキャン速度と復路のスキャン速度とが異なる態様で前記厚み測定手段が前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のシートの製造方法。
【請求項8】
前記厚み測定工程は、前記厚み測定手段が前記シートの幅方向に沿って往復移動することで前記シートの厚みを測定するものであり、往路内及び/又は復路内においてシート幅方向の位置によってスキャン速度が変化することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載のシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−39677(P2013−39677A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176002(P2011−176002)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】