説明

シートバック装置

【課題】乗員の上半身を車体後方に良好に移動させてヘッドレストで乗員の頭部を好適に支えることができるシートバック装置を提供する。
【解決手段】シートバック装置10は、シートバックフレーム21に備えた左右一対の側部フレーム25,26間に面状弾性体22が弾性支持されている。このシートバック装置10は、左右一対の側部フレームの上部と、面状弾性体の上部とを連結した左右一対の第1スプリング81,82と、左右一対の側部フレームの下部と、面状弾性体の下部とを連結した左右一対の第2スプリング84,85とを備えている。さらに、面状弾性体に後方荷重が作用した際に、面状弾性体の下部を、面状弾性体の上部よりも大きく変位させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックフレームに左右一対の側部フレームを備え、左右一対の側部フレーム間に面状弾性体を弾性支持したシートバック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に用いるシートバック装置のなかには、シートバックフレームに左右の側部フレームを備え、左右の側部フレーム間にクッション材を支える面状弾性体が配置され、面状弾性体の左側部が左側部フレームに複数の左コイルスプリングで連結され、面状弾性体の右側部が右側部フレームに複数の右コイルスプリングで連結されることで、面状弾性体が左右の側部フレームに左右のコイルスプリングで支えられたものが知られている。
【0003】
面状弾性体を左右のコイルスプリングで支えることで、左右のコイルスプリングを弾性変形させて面状弾性体を乗員の背中に合わせることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−37212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、シートバックの頂部にはヘッドレストが設けられている。このヘッドレストは、通常の運転状態において乗員の頭部から比較的離れている。
このため、車両の後部に相手車両が衝突(後面衝突)した場合に、ヘッドレストで乗員の頭部を良好に支えることは難しい。
【0006】
この対策として、例えば、特許文献1のシートバックのように、面状弾性体を左右のコイルスプリングで支えることで、乗員の上半身を車体後方に移動させて頭部をヘッドレストで支えることが考えられる。
すなわち、車両の後部に相手車両が衝突(後面衝突)した場合に、左右のコイルスプリングを伸ばして乗員の上半身を面状弾性体とともに車体後方に移動させ、頭部をヘッドレストで支えることが考えられる。
【0007】
しかし、特許文献1のシートバック装置は、左右のコイルスプリングがその軸線を車幅方向に向けて設けられている。
このため、乗員の上半身を車体後方に良好に移動させることが難しく、乗員の頭部をヘッドレストで好適に支えることは難しい。
【0008】
本発明は、乗員の上半身を車体後方に良好に移動させてヘッドレストで乗員の頭部を好適に支えることができるシートバック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、シートバックフレームに左右一対の側部フレームを備え、前記左右一対の側部フレーム間に面状弾性体を弾性支持するシートバック装置において、前記左右一対の側部フレームの上部と、前記面状弾性体の上部とを連結した左右一対の第1スプリングと、前記左右一対の側部フレームの下部と、前記面状弾性体の下部とを連結した左右一対の第2スプリングと、を備え、前記面状弾性体に後方荷重が作用した際に、前記面状弾性体の下部を、前記面状弾性体の上部よりも大きく変位させることを特徴とする。
【0010】
請求項2は、前記左右一対の第2スプリングが、前記左右一対の側部フレームにおける前記左右一対の第1スプリングとの連結点よりも前記面状弾性体に対して前方位置に連結されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3は、前記面状弾性体の下部から前方に向けて延びる左右一対の延出部を設け、前記第2スプリングが前記左右一対の延出部の前端部に連結されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4は、前記左右一対の側部フレームが、シートの幅方向の内方に向けて開口した断面略コ字状に形成され、前記側部フレームのうち上部の断面の内側にパイプフレームが設けられ、前記左右一対の第1スプリングが前記パイプフレームに連結され、前記左右一対の第2スプリングが前記側部フレームの前部に連結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、車体後方に向けた荷重(以下、「後方荷重」という)が面状弾性体に作用した際に、面状弾性体の下部を面状弾性体の上部よりも大きく変位させるようにした。
ところで、後面衝突の場合には乗員がシートバックに相対的に押し込まれる。このため、面状弾性体に後方荷重が作用し、シートバックフレームが支持軸を支点にして車体後方に僅かに傾く。
このため、乗員の上部(胸部)に比して下部(腰部)を車体後方に大きく移動させないと、乗員の頭部をヘッドレスト(シートバックの頂部に設けられている)まで移動させることは難しい。
【0014】
そこで、前述したように、後方荷重が面状弾性体に作用した際に、面状弾性体の下部を面状弾性体の上部よりも大きく変位させるようにした。
これにより、乗員の上半身を通常の運転姿勢の状態を保ちながら車体後方に良好に移動させるとともに、乗員の頭部をヘッドレストまで良好に移動させてヘッドレストで頭部を好適に支えることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、左右一対の第2スプリングが、左右一対の側部フレームにおける左右一対の第1スプリングとの連結点よりも面状弾性体に対して前方位置に連結されている。
【0016】
請求項3に係る発明では、面状弾性体の下部から前方に向けて延びる左右一対の延出部を設け、第2スプリングを左右一対の延出部の前端部に連結した。
【0017】
よって、左右の延出部の長さを変えることで、左右の第2スプリングの向き(反力方向)を調節することができる。
このように、左右の第2スプリングの向き(反力方向)を調節することで、左右の第2スプリングのばね力(すなわち、反力特性)を一層良好に調節して、第2スプリングのたわみ量を一層容易に設定できる。
【0018】
請求項4に係る発明では、左右一対の側部フレームが、シートの幅方向の内方に向けて開口した断面略コ字状に形成され、側部フレームのうち上部の断面の内側にパイプフレームが設けられている。
さらに、左右一対の第1スプリングがパイプフレームに連結され、左右一対の第2スプリングが側部フレームの前部に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るシートバック装置を前方側から見た状態を示す斜視図である。
【図2】図1のシートバック装置を後方側から見た状態を示す斜視図である。
【図3】図1の3部拡大図である。
【図4】図3のシートバック装置を示す分解斜視図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図2の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係るシートバック装置に後方荷重が作用する例を説明する図である。
【図8】本発明に係るシートバック装置の面状弾性体が後方に変位する例を説明する図である。
【図9】本発明に係るシートバック装置で乗員の頭部を支える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0021】
実施例に係るシートバック装置10について説明する。
図1、図2に示すように、シートバック装置10は、シートフレーム12の後端部に支持されたシートバックフレームユニット14と、シートバックフレームユニット14に設けられたヘッドレスト15とを備えている。
【0022】
シートフレーム12は、乗員が着座するシートクッションの骨格を構成するフレームである。
シートバックフレームユニット14は、乗員の上半身を凭れさせるシートバックの骨格などを構成するユニットである。
【0023】
このシートバックフレームユニット14は、シートフレーム12の後端部に支持されたシートバックフレーム21と、シートバックフレーム21内に配置された面状弾性体22と、面状弾性体22をシートバックフレーム21に連結するスプリングユニット23とを備えている。
【0024】
シートバックフレーム21は、シートフレーム12の左後端部12aに支持軸28で前後方向に回動自在に設けられた左側部フレーム25と、シートフレーム12の右後端部12bに支持軸28で前後方向に回動自在に設けられた右側部フレーム26と、左右一対の側部フレーム25,26を連結する連結フレーム27とを備えている。
【0025】
図3、図4に示すように、左側部フレーム25は、前壁部31と、後壁部32と、前壁部31および後壁部32の各外側端部同士を連結する側壁部33とで幅方向の内方に向けて開口した断面形状に形成されている(図5、図6も参照)。
また、左側部フレーム25の上半部25aは、前壁部31、後壁部32および側壁部33で幅方向の内方に向けて開口した断面略コ字状に形成されている(図5も参照)。
【0026】
左側部フレーム25の上半部25aを断面略コ字状に形成することで、連結フレーム27の左脚パイプ41を収容する空間35(図5も参照)が形成されている。
そして、前壁部31の下部31aに前連結孔37が形成されている。この前連結孔37には、左第2スプリング84の前フック(前端)84bが連結されている。
【0027】
図1、図2に示す右側部フレーム26は、左側部フレーム25と左右対称のフレームであり、各構成部材に左側部フレーム25と同じ符号を付して説明を省略する。
【0028】
図1、図2に示すように、連結フレーム27は、左脚パイプ41と、右脚パイプ42と、左脚パイプ41の上端および右脚パイプ42の上端を連結する連結パイプ43で正面視において略コ字状に形成されている。
この連結フレーム27は、左側部フレーム25の上半部25aに左脚パイプ41が設けられ、右側部フレーム26の上半部26aに右脚パイプ42が設けられている。
【0029】
図3、図4に示す左脚パイプ41は、左側部フレーム25の上半部25aに形成された空間35(図5も参照)に収容され、上半部25aの前壁部31、後壁部32および側壁部33に接合されている。
左脚パイプ41に左連結ブラケット46が設けられ、左連結ブラケット46に左外連結孔51が形成されている。
左外連結孔51には左第1スプリング81の外フック81bが連結されている。
【0030】
図1、図2に示す右脚パイプ42は、左脚パイプ41と左右対称のパイプであり、右側部フレーム26の上半部26aに形成された空間35に収容され、上半部26aの前壁部31、後壁部32および側壁部33に接合されている。
右脚パイプ42に右連結ブラケット47が設けられている。
右連結ブラケット47は、左連結ブラケット46と左右対称のブラケットであり、右外連結孔52(図5参照)が形成されている。
連結孔52には右第1スプリング82の外フック82b(図5参照)が連結されている。
【0031】
連結パイプ43は、左脚パイプ41の上端および右脚パイプ42の上端に渡って略水平に形成され、一対の支持ブラケット54が設けられている。
一対の支持ブラケット54にヘッドレスト15の脚部55が設けられている。
【0032】
左右一対の側部フレーム25,26間に面状弾性体22が配置されている。
面状弾性体22は、左右一対の側部フレーム25,26間にスプリングユニット23で弾性支持され、シートバック13のクッション材17(図7参照)を支持する部材である。
この面状弾性体22は、略矩形状に形成された面状プレート61と、面状プレート61の裏面61a上部に設けられた上連結ワイヤ62と、面状プレート61の裏面61a下部に設けられた下連結ワイヤ63とを備えている。
【0033】
面状プレート61は、乗員の背面(具体的には、背面に相当する部位のクッション材)を支えるために略矩形状に形成された樹脂製のプレートであり、左右一対の側部フレーム25,26間に配置されている。
【0034】
上連結ワイヤ62は、一例として、ばね鋼で形成された弾性変形可能なロッドで、面状プレート61の上中央係止爪65に中央部が係止され、面状プレート61の上左係止爪66に左端部が係止され、面状プレート61の上右係止爪67に右端部が係止されている。
これにより、上連結ワイヤ62が面状プレート61の裏面61aに取り付けられている。
【0035】
この状態で、上連結ワイヤ62は、面状プレート61の左側上部61bから左内連結部62aが僅かに突出され(図3も参照)、面状プレート61の右側上部61cから右内連結部62bが僅かに突出されている。
ここで、左内連結部62aは、面状弾性体22の左側上部を構成する部位である。また、右内連結部62bは、面状弾性体22の右側上部を構成する部位である。
【0036】
図3、図4に示すように、左内連結部62aは、上連結ワイヤ62の左端部が折り曲げられて連結孔が形成されている。左内連結部62aの連結孔は、左第1スプリング81の内フック81aが連結される孔である。
すなわち、左内連結部62aに左第1スプリング81の内フック81aが連結されている。
【0037】
また、図5に示すように、右内連結部62bは、上連結ワイヤ62の右端部が折り曲げられて連結孔が形成されている。右内連結部62bの連結孔は、右第1スプリング82の内フック82aが連結される孔である。
すなわち、右内連結部62bに右第1スプリング82の内フック82aが連結されている。
【0038】
図1、図2に示すように、下連結ワイヤ63は、一例として、ばね鋼で形成された弾性変形可能なロッドで、面状プレート61の下中央係止爪71に中央部が係止され、面状プレート61の下左係止爪72に左端部が係止され、面状プレート61の下右係止爪73に右端部が係止されている。
これにより、下連結ワイヤ63が面状プレート61の裏面61aに取り付けられている。
【0039】
下連結ワイヤ63は、面状プレート61の左側下部61dから左側部フレーム25側に延出された左延出部76(図3,4も参照)と、面状プレート61の右側下部61eから右側部フレーム26側に延出された右延出部77(図6も参照)とを備えている。
【0040】
図3、図4に示すように、左延出部76は、車体前方に向けて傾斜状に延出され、先端部に左内連結部76aが設けられている(図6も参照)。
左延出部76の左内連結部76aは、左延出部76の先端部が折り曲げられて連結孔が形成されている。左内連結部76aの連結孔は、左第2スプリング84の後フック(後端)84aが連結される孔である。
すなわち、左延出部76の左内連結部76aに左第2スプリング84の後フック84aが連結されている。
【0041】
図6に示すように、右延出部77は、左延出部76と左右対称の部位であり、車体前方に向けて傾斜状に延出され、先端部に右内連結部77aが設けられている。
右延出部77の右内連結部77aは、右延出部77の先端部が折り曲げられて連結孔が形成されている。右内連結部77aの連結孔は、右第2スプリング85の後フック(後端)85aが連結される孔である。
すなわち、右延出部77の右内連結部77aに右第2スプリング85の後フック85aが連結されている。
ここで、左右の延出部76,77の面状プレート61からの突出量は、上連結ワイヤ62(図5参照)の面状プレート61からの突出量よりも大きい。
【0042】
図1、図2に示すように、スプリングユニット23は、シートバックフレーム21に面状弾性体22を連結する左右一対の第1スプリング81,82および左右一対の第2スプリング84,85を備えている。
【0043】
図5に示すように、左第1スプリング81は、左内連結部62aの連結孔に内フック81aが連結されるとともに、左連結ブラケット46の左外連結孔51に外フック81bが連結されたコイルスプリングである。
ここで、左内連結部62aは、面状プレート61の左側上部61bから僅かに突出され、面状弾性体22の左側上部を構成する部位である。
【0044】
また、左連結ブラケット46は左脚パイプ41を介して左側部フレーム25の上半部25aに設けられている。
よって、面状弾性体22の左側上部(すなわち、左内連結部62a)が左側部フレーム25に左第1スプリング81で連結されている。
この状態で、左第1スプリング81は、軸線91が略車体幅方向に向けて設けられている。
よって、車体後方に向けた荷重F(以下、「後方荷重」という)は、左第1スプリング81の軸線91方向に交差(略直交)して作用する。
【0045】
右第1スプリング82は、右内連結部62bの連結孔に内フック82aが連結されるとともに、右連結ブラケット47の右外連結孔52に外フック82bが連結されたコイルスプリングである。
ここで、右内連結部62bは、面状プレート61の右側上部61cから僅かに突出され、面状弾性体22の右側上部を構成する部位である。
【0046】
また、右連結ブラケット47は右脚パイプ42を介して右側部フレーム26の上半部26aに設けられている。
よって、面状弾性体22の右側上部(すなわち、右内連結部62b)が右側部フレーム26に右第1スプリング82で連結されている。
この状態で、右第1スプリング82は、軸線92が略車体幅方向に向けて設けられている。
よって、後方荷重Fは、右第1スプリング82の軸線92方向に交差(略直交)して作用する。
【0047】
以上説明したように、左右一対の側部フレーム25,26に面状弾性体22の左右側の上部(すなわち、左右の内連結部62a,62b)を左右一対の第1スプリング81,82でそれぞれ連結した。
よって、図1、図2に示すように、左右一対の第1スプリング81,82で面状弾性体22を吊り下げることができ、かつ、左右一対の第1スプリング81,82で面状弾性体22を位置決めすることができる。
すなわち、左右一対の第1スプリング81,82は位置決め機能を備えている。
【0048】
図6に示すように、左第2スプリング84は、左延出部76の左内連結部76a(具体的には、連結孔)に後フック84aが連結されるとともに、左側部フレーム25の前壁部31(具体的には、前連結孔37)に前フック84bが連結されたコイルスプリングである。
【0049】
ここで、左延出部76の左内連結部76aは、面状プレート61の左側下部61dから左側部フレーム25側に突出され、面状弾性体22の左側下部を構成する部位である。
すなわち、左第2スプリング84で、面状弾性体22の左側下部(すなわち、左内連結部76a)が左側部フレーム25に連結されている。
【0050】
ところで、左延出部76の左内連結部76a(具体的には、連結孔)は、左側部フレーム25の後壁部32よりも幅方向内側の位置P1に配置されている。
この状態で、左第2スプリング84は、軸線93が車体前後方向に対して傾斜角θで斜めに向けて設けられている。
【0051】
すなわち、左第2スプリング84は、左第1スプリング81に比してその軸線93がシートバックフレーム21の前方側に向けられている。
左第2スプリング84の軸線93を車体前後方向に対して斜めに設けることで、面状弾性体22の左側下部(すなわち、左内連結部76a)を左第1スプリング81に比してシートバックフレーム21の車体前方に向けて引張ることができる。
【0052】
右第2スプリング85は、右延出部77の右内連結部77a(具体的には、連結孔)に後フック85aが連結されるとともに、右側部フレーム26の前壁部31(具体的には、前連結孔37)に前フック(前端)85bが連結されたコイルスプリングである。
【0053】
ここで、右延出部77の右内連結部77aは、面状プレート61の右側下部61eから右側部フレーム26側に突出され、面状弾性体22の右側下部を構成する部位である。
すなわち、右第2スプリング85で、面状弾性体22の右側下部(すなわち、右内連結部77a)が右側部フレーム26に連結されている。
【0054】
ところで、右延出部77の右内連結部77a(具体的には、連結孔)は、右側部フレーム26の後壁部32よりも幅方向内側の位置P2に配置されている。
この状態で、右第2スプリング85は、軸線94が車体前後方向に対して傾斜角θで斜めに向けて設けられている。
【0055】
すなわち、右第2スプリング85は、右第1スプリング82に比してその軸線94がシートバックフレーム21の前方側に向けられている。
右第2スプリング85を車体前後方向に対して斜めに設けることで、面状弾性体22の右側下部61eを右第1スプリング82に比してシートバックフレーム21の車体前方に向けて引張ることができる。
【0056】
以上説明したように、左右一対の側部フレーム25,26に左右一対の第2スプリング84,85で面状弾性体22の左右側の下部(すなわち、左右の内連結部76a,77a)をそれぞれ連結した。
そして、面状弾性体22の左右側の下部(左右の内連結部76a,77a)を左右一対の第2スプリング84,85でシートバックフレーム21の前方側(車体前方側)に引張るようにした。
よって、左右一対の第2スプリング84,85を略車体前後方向に向けた状態に配置できる。
【0057】
これにより、後方荷重Fが面状弾性体22に作用した際に、後方荷重Fを左第2スプリング84の軸線93に対して傾斜角θで作用させるとともに、後方荷重Fを右第2スプリング85の軸線94に対して傾斜角θで作用させることができる。
すなわち、後方荷重Fを左第2スプリング84の軸線93方向に近づけて作用させるとともに、後方荷重Fを右第2スプリング85の軸線94方向に近づけて作用させることができる。
【0058】
したがって、後方荷重Fに対応させて左右一対の第2スプリング84,85を良好に弾性変形させることができる。
すなわち、左右一対の第2スプリング84,85に反力特性の調節機能を備えることができる。
【0059】
このように、左右一対の第2スプリング84,85に反力特性の調節機能のみをもたせることで、左右一対の第2スプリング84,85のばね力(すなわち、反力特性)を調節(設定)するだけで、左右一対の第2スプリング84,85のたわみ量(伸び量)を容易に設定できる。
【0060】
換言すれば、左右一対の第1スプリング81,82にシートバックフレーム21に対する面状弾性体22の位置決め機能をもたせ、左右一対の第2スプリング84,85に反力特性の調節機能をもたせることにより、各スプリング81,82,84,85の役割を分担させ、左右一対の第2スプリング84,85の反力特性を調節するだけで、後面衝突のときの乗員および面状弾性体22の後方移動量を容易に設定することができる。
【0061】
さらに、左第2スプリング84の後フック84aを、左側部フレーム25の後壁部32よりも幅方向内側の位置P1で面状弾性体22に連結した。
同様に、右第2スプリング85の後フック85aを、右側部フレーム26の後壁部32よりも幅方向内側の位置P2で面状弾性体22にそれぞれ連結した。
【0062】
よって、左右一対の第2スプリング84,85が伸張した際に、左第2スプリング84が左側部フレーム25の後壁部32に干渉することを防止でき、かつ、右第2スプリング85が右側部フレーム26の後壁部32に干渉することを防止できる。
これにより、面状弾性体22が車体後方へ移動することを左右一対の側部フレーム25,26の後壁部32で妨げないようにでき、面状弾性体22の後方への移動量(沈込み量、変位量)を良好に確保することができる。
【0063】
また、面状プレート61の左右側の下部61d,61eから左右の延出部76,77をそれぞれ延出した。そして、左延出部76を左第2スプリング84で左側部フレーム25に連結するとともに、右延出部77を右第2スプリング85で右側部フレーム26に連結した。
【0064】
よって、左右の延出部76,77の長さを変えることで、左右一対の第2スプリング84,85の向き(反力方向)を調節することができる。
このように、左右一対の第2スプリング84,85の向き(反力方向)を調節することで、左右一対の第2スプリング84,85のばね力(すなわち、反力特性)を一層良好に調節して、左右一対の第2スプリング84,85のたわみ量(伸び量)をさらに容易に設定できる。
【0065】
つぎに、シートバック装置10で乗員を支える例を図7〜図9に基づいて説明する。なお、シートバック装置10は左右対称の部材なので、以下左側の部材のみについて説明して右側の部材の説明を省略する。
図7に示すように、車両の後部に相手車両が衝突(後面衝突)した場合に、乗員97の上半身98がシートバック13に相対的に押し込まれる。
よって、シートバック13の面状弾性体22に車体後方に向けた後方荷重Fが作用する。
【0066】
図8(a)に示すように、面状弾性体22に後方荷重Fが作用することで、左第2スプリング84が伸びる。
ここで、左第2スプリング84の軸線93に対して後方荷重Fが傾斜角θで作用する。
よって、後方荷重Fを左第2スプリング84の軸線93方向に近づけて作用させることができる。
【0067】
後方荷重Fを左第2スプリング84の軸線93方向に近づけて作用させることで、後方荷重Fに対応させて左第2スプリング84を良好に弾性変形させることができる。
これにより、左第2スプリング84を良好に伸ばして、面状弾性体22の下部22aを車体後方に変位量S2と大きく変位させることができる。
【0068】
図8(b)に示すように、面状弾性体22に後方荷重Fが作用することで、左第1スプリング81が伸びる。
ここで、左第1スプリング81は軸線91が車体幅方向に向けて設けられている。
よって、後方荷重Fは、左第1スプリング81の軸線91方向に交差(略直交)して作用する。
【0069】
後方荷重Fのうち、左第1スプリング81の軸線91方向に作用する力が小さくなる。
これにより、左第1スプリング81の伸び量を小さく抑えることで、面状弾性体22の上部22bを車体後方に変位量S1だけ小さく変位させる。
【0070】
図9に示すように、後面衝突により乗員97の上半身98がシートバック13に相対的に押し込まれる際に、シートバック13に作用する後方荷重Fでシートバック13が支持軸111を支点にして車体後方に矢印Aの如く僅かに傾く。
このため、乗員97の下部(腰部)98aを上部(胸部)98bに比して車体後方に大きく移動させないと、乗員97の頭部99をヘッドレスト15まで良好に移動させることは難しい。
【0071】
そこで、図8で説明したように、面状弾性体22の下部22aを車体後方に変位量S2と大きく変位させるとともに、面状弾性体22の上部22bを車体後方に変位量S1だけ小さく変位させた。
これにより、乗員97の上半身98を通常の運転姿勢の状態を保ちながら車体後方に良好に移動させるとともに、乗員97の頭部99をヘッドレスト15まで良好に移動させてヘッドレスト15で頭部99を好適に支えることができる。
【0072】
なお、本発明に係るシートバック装置10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、下連結ワイヤ63の左右の延出部76,77を面状プレート61の左右側の下部61d,61eから延出し、左右の延出部76,77の内連結部76a,77aを面状弾性体22の左右側の下部とした例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、面状プレート61の左右側の下部61d,61eを左右側にそれぞれ延出させ、延出した部位を面状弾性体22の左右側の下部とすることも可能である。
【0073】
また、前記実施例では、面状プレート61の左右側の上部61b,61cから左右の内連結部62a,62bを僅かに突出させ、左右の内連結部62a,62bを面状弾性体22の左右側の上部とした例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、面状プレート61の左右側の上部61b,61cを左右側にそれぞれ突出させ、突出した部位を面状弾性体22の左右側の上部とすることも可能である。
【0074】
さらに、前記実施例では、上下の連結ワイヤ62,63として弾性変形可能なロッドを例示したが、これに限らないで、上下の連結ワイヤ62,63を弾性変形しないロッドとすることも可能である。
【0075】
また、前記実施例で示した左右の第2スプリング84,85の傾斜角θは任意に設定することが可能である。
【0076】
さらに、前記実施例では、左右の延出部76,77を車体前方に向けて傾斜状に延出した例について説明したが、これに限らないで、左右の延出部76,77を車体幅方向に沿わせて延出することも可能である。
【0077】
また、前記実施例では、左右の脚パイプ41,42に左右の連結ブラケット46,47を設け、左右の連結ブラケット46,47に左右一対の第1スプリング81,82を連結した例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、左右一対の側部フレーム25,26に左右一対の第1スプリング81,82を直接連結することも可能である。
【0078】
さらに、前記実施例では、本発明を、後方荷重Fで車体後方に僅かに傾くシートバック13を備えたシートバック装置に適用する例について説明したが、これに限らないで、後方荷重Fで車体後方に僅かに傾かないシートバックを備えたシートバック装置に適用することも可能である。
【0079】
また、前記実施例で示したシートバックフレーム21、面状弾性体22、左右一対の側部フレーム25,26、左右一対の側部フレームの上半部25a,26a、左右一対の側部フレームの前壁部31、左右一対の側部フレームの下部31a、左右の脚パイプ41,42、左右の外連結孔51,52、上連結ワイヤの左右の内連結部62a,62b、左右一対の延出部76,77、左右一対の延出部の内連結部76a,77a、左右一対の第1スプリング81,82および左右一対の第2スプリング84,85などの形状は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、シートバックフレームに左右の側部フレームを備え、左右の側部フレーム間に面状弾性体を弾性支持したシートバック装置を備えた車両への適用に好適である。
【符号の説明】
【0081】
10…シートバック装置、21…シートバックフレーム、22…面状弾性体、25,26…左右一対の側部フレーム、25a,26a…左右の側部フレームの上半部(上部)、31…左右一対の側部フレームの前壁部(前部)、31a…左右一対の側部フレームの下部、41,42…左右の脚パイプ(パイプフレーム)、51,52…左右の外連結孔(連結点)、62a,62b…上連結ワイヤの左右の内連結部(面状弾性体の上部)、76,77…左右一対の延出部、76a,77a…左右一対の延出部の内連結部(前端部、面状弾性体の下部)、81,82…左右一対の第1スプリング、84,85…左右一対の第2スプリング、F…後方荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックフレームに左右一対の側部フレームを備え、前記左右一対の側部フレーム間に面状弾性体を弾性支持するシートバック装置において、
前記左右一対の側部フレームの上部と、前記面状弾性体の上部とを連結した左右一対の第1スプリングと、
前記左右一対の側部フレームの下部と、前記面状弾性体の下部とを連結した左右一対の第2スプリングと、を備え、
前記面状弾性体に後方荷重が作用した際に、前記面状弾性体の下部を、前記面状弾性体の上部よりも大きく変位させることを特徴とするシートバック装置。
【請求項2】
前記左右一対の第2スプリングが、前記左右一対の側部フレームにおける前記左右一対の第1スプリングとの連結点よりも前記面状弾性体に対して前方位置に連結されたことを特徴とする請求項1記載のシートバック装置。
【請求項3】
前記面状弾性体の下部から前方に向けて延びる左右一対の延出部を設け、前記第2スプリングが前記左右一対の延出部の前端部に連結されたことを特徴とする請求項1記載のシートバック装置。
【請求項4】
前記左右一対の側部フレームが、シートの幅方向の内方に向けて開口した断面略コ字状に形成され、前記側部フレームのうち上部の断面の内側にパイプフレームが設けられ、前記左右一対の第1スプリングが前記パイプフレームに連結され、前記左右一対の第2スプリングが前記側部フレームの前部に連結されたことを特徴とする請求項1記載のシートバック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−232747(P2012−232747A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194854(P2012−194854)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2009−106452(P2009−106452)の分割
【原出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】