説明

シートヒータ及びシート

【課題】着座者が違和感を受けずに正確な温度制御が可能なシートヒータ及びシートを提供すること。
【解決手段】基材5と、該基材5上に配設されたヒータ素子3と、上記基材5から離れた位置に設置された温度検知素子7とを有するシートヒータ1。表皮カバー19とパット17とを有し、上記表皮カバー19と上記パット17との間に上記シートヒータ1が配置されたシート11において、上記温度検知素子7が、上記パット17におけるシート着座面に位置する箇所に埋め込まれていることを特徴とするシート11。上記温度検知素子7と上記ヒータ素子3との距離が、上記基材5の厚さより大きく、且つ、上記表皮カバー19の厚さと上記基材5の厚さを加えた厚さよりも小さいことを特徴とするシート11。上記温度検知素子7が、温度過昇防止用のサーモスタットであることを特徴とするシート11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用などに好適に使用可能なシートヒータとこのシートヒータが配置されたシートに係り、特に、着座者が違和感を受けずに正確な温度制御が可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シートに装着されシートヒータとして供されるヒータユニットとしては、例えば、基材上にヒータ素子として熱融着層を備えたコード状ヒータを蛇行配線し、加熱加圧による熱融着により基材と熱融着層を接着固定した構成のもの(例えば、特許文献1、2参照)、カレンダー加工を施して表面を硬化させた不織布を基材とし、基材の硬化させた表面上にヒータ素子としてコード状ヒータを縫合したもの(例えば、特許文献3)、硬度の異なる柔軟性を有する材料を溶着させることにより、異なる表面硬さを有する基材とし、この基材の表面硬さの硬い面にヒータ素子としてコード状ヒータを配設したもの(例えば、特許文献4)などがある。また、本発明に関連する技術として、例えば、特許文献5が挙げられる。
【0003】
このようなシートヒータの温度制御、特に、温度過昇防止は、主にサーモスタットによって行われる。具体的には、サーモスタットが所定の温度に加熱されることにより、サーモスタットがOFFとなり、ヒータ素子への通電が遮断されることになる。ヒータ素子への通電が遮断されることで加熱が止まるとサーモスタットの温度も徐々に低下していき、再びサーモスタットはONとなり、ヒータ素子への通電がなされるようになる。このような動作を繰り返すことで、シートヒータは所定の温度に制御されることになる。サーモスタットを配置したカーシートヒータとして、例えば、シートのパット中央部に凹部を設け、そこにサーモスタットを配置したもの(例えば、特許文献6)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−25916号公報:クラベ
【特許文献2】特許第4202071号公報:クラベ
【特許文献3】特開2007−200866公報:松下電器産業
【特許文献4】特開2007−280787公報:松下電器産業
【特許文献5】国際公開WO2007/18271:クラベ
【特許文献6】特開昭61−143012号公報:松下電器産業
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなサーモスタット、或いは、サーミスタなどの温度検知素子は、ヒータ素子の熱を検知するものであるため、ヒータ素子と同様、基材上に配置されていた。しかし温度検知素子は、可撓性のない塊状の物体であるため、シートヒータ中央部など、実際に着座者が着座する位置に配置されると、着座者が違和感を受けることになる。上記した特許文献6のように、パットに凹部を設け、そこに配置したとしても、基材上にサーモスタットを配置している以上、現実的にはこの課題は解決されていない。そのため、温度検知素子は、基材の端部のような着座者が違和感を受けない位置に配置されることになり、実際にシートを加熱するヒータ素子とは別の補助ヒータによって擬似的に加熱され、それに基づいて動作することになっていた。
【0006】
しかしながら、上記のような補助ヒータによって動作する態様の場合、例えば、ヒータが部分断線したり、シートの着座面に厚手の座布団等の断熱材が乗せられたりすることによって異常加熱が生じたとしても、補助ヒータは平常と変わらない加熱しかしない。そのため、温度検知素子が異常加熱を検知できず、ヒータ素子への通電が遮断されないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、着座者が違和感を受けずに正確な温度制御が可能なシートヒータ及びシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1によるシートヒータは、基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、上記基材から離れた位置に設置された温度検知素子とを有するものである。
又、請求項2記載のシートは、表皮カバーとパットとを有し、上記表皮カバーと上記パットとの間に上記のシートヒータが配置されたシートにおいて、上記温度検知素子が、上記パットにおけるシート着座面に位置する箇所に埋め込まれていることを特徴とするものである。
又、請求項3記載のシートは、上記温度検知素子と上記ヒータ素子との距離が、上記基材の厚さより大きく、且つ、上記表皮カバーの厚さと上記基材の厚さを加えた厚さよりも小さいことを特徴とするものである。
又、請求項4記載のシートは、上記温度検知素子が、温度過昇防止用のサーモスタットであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるシートヒータによれば、温度検知素子を任意の位置に設置できる。そのため、着座者が違和感を受けず、且つ、ヒータの温度を検知できるような位置に温度検知素子を設置することができる。このような位置の特に好適な例として、パットにおけるシート着座面に位置する箇所が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による実施の形態を示す図で、シートヒータの構成を示す平面図である。
【図2】本発明による実施の形態を示す図で、シートヒータが設置されたシートを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図3】本発明による実施の形態を示す図で、シートヒータが設置されたシートの概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜図3を参照して本発明の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は、本発明を車両用シートに適用することを想定した例を示すものである。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態で使用するシートヒータは構成される。不織布等からなる基材5の上に、ヒータ素子として銅合金線やNi−Cr線等の抵抗線を有するコード状ヒータ3が所定のパターン形状で配設される。コード状ヒータ3を基材5上に固定保持する方法としては、コード状ヒータ3の外周に形成された熱融着層により接着する方法、縫製による方法、接着性を有する基材5により挟持保持する方法など種々の方法が公知である。また、基材5におけるコード状ヒータ3を配設した側の面には接着層の形成、或いは、両面テープの貼り付けがなされている。これは、座席に取り付ける際、シートヒータ1をシートのパットに固定するためのものである。
【0013】
また、上記コード状ヒータ3と直列になるように、温度検知素子としてサーモスタット7がリード線を介して接続される。このサーモスタット7は、基材5に固定保持されない。
【0014】
上記のようにして、図1に示すようなシートヒータ1を得ることができる。尚、このシートヒータ1には、適宜、コード、コネクタ等が接続され、このコネクタを介して車両の電気系統に接続されることになる。
【0015】
そして、上記構成をなすシートヒータ1は、図2及び図3に示すような状態で、車両用のシート11内に埋め込まれて配置されることになる。即ち、シートヒータ1は、シート11の表皮カバー19とパット17との間に配置される。この際、サーモスタット7は、パット17の着座面側の表面に予め設けられた切込みの内部に埋め込まれることになる。これにより、サーモスタット7は、コード状ヒータの加熱による温度を検知することができ、且つ、着座者はサーモスタット7による違和感を受けることはない。この際、サーモスタット7とコード状ヒータ3との距離が、基材5の厚さより大きく、且つ、表皮カバー19の厚さと基材5の厚さを加えた厚さよりも小さいことが好ましい。これにより、サーモスタット7の温度と、シート11の着座面表面の温度がほぼ等しくなるため、より正確な温度検知が可能となる。例えば、サーモスタット7の温度が、シート11の着座面表面の温度より低くなる場合、シート11の着座面表面が高温になってもサーモスタット7が作動しないことになり得る。また、サーモスタット7の温度が、シートの着座面表面の温度より高い場合、シート11の着座面表面が充分に暖まっていないのにもかかわらずサーモスタット7が作動してしまい、充分な暖房効果が得られなくなり得る。上記した特許文献6においては、基材上にサーモスタットが配置されているように、サーモスタットとコード状ヒータとの距離が近すぎることになる。そのため、シート11の着座面表面が充分に暖まっていないのにもかかわらずサーモスタット7が作動してしまい、充分な暖房効果が得られないという懸念がある。但し、このような課題は、サーモスタット7の動作温度を適宜設定することでも解決し得る。なお、上記のサーモスタット7とコード状ヒータ3との距離、表皮カバー19の厚さ、及び、基材5の厚さは、着座者の荷重が掛かっていない状態で算出すればよい。上記実施の形態において、サーモスタット7とコード状ヒータ3との距離は10mm、表皮カバー19の厚さは10mm、基材5の厚さは1.5mmである。また、サーモスタット7の上方(表皮カバー19側)について、別の発泡部材等で封止しても良いし、封止せず空間として空けておいても良い。
【0016】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、ヒータ素子として、上記のコード状ヒータの他に、例えば、エッチングヒータ、カーボンヒータ、箔状ヒータ等、種々のヒータを使用することができる。
【0017】
基材としては、上記の不織布の他に、例えば、織布、発泡樹脂シート、発泡ゴムシート、ゴムシート、アルミ箔、樹脂フィルム等、種々のものを使用することができる。
【0018】
温度検知素子としては、上記のサーモスタットの他に、サーミスタ、熱電対など、種々のものを使用することができる。また、温度検知素子は複数用いても良い。例えば、従来のような補助ヒータによる加熱で作動するサーモスタットを温度制御用の温度検知素子とし、上記したパットに埋め込まれるサーモスタットを温度過昇防止用の温度検知素子とするように、複数の温度検知素子を使い分けることも考えられる。また、上記特許文献5に記載されたような、比較的小型な温度検知素子であるサーミスタを使用した場合、シートヒータ中央に設置してもそれほど着座者が違和感を受けることはない。そこで、サーミスタを温度制御用の温度検知素子としてシートヒータ中央部近傍に設置し、サーモスタットを温度過昇防止用の温度検知素子としてパットに埋め込むといった態様も考えられる。
【0019】
また、シートヒータは、座席の座面側に配置しても良いし、背面側に配置しても良いし、両方に配置しても良い。本発明で言う「シートの着座面」とは、着座者が通常に着座した際に接する側の面のことを示す。
【実施例】
【0020】
上記実施の形態に基づいて、シートヒータ1をシート11に配置し、実際の動作について検証試験を行った。なお、本実施例のシートヒータ1は、比較的小型な温度検知素子であるサーミスタをシートヒータ中央に設置し、このサーミスタからの信号に基づいてコード状ヒータ3への通電を制御する温度制御装置を用いるとともに、サーモスタット7を温度過昇防止用の温度検知素子としてパット17に埋め込んだものである。上記の通り、サーモスタット7とコード状ヒータ3との距離は10mm、表皮カバー19の厚さは10mm、基材5の厚さは1.5mmであり、サーモスタット7の上方(表皮カバー19側)について、別の発泡ウレタン樹脂の部材で封止している。
【0021】
このようなシートの着座面に毛布、薄手の座布団及び厚手の座布団をそれぞれ1枚ずつ乗せて断熱した状況を作り、コード状ヒータ3に通電して実際に発熱させ、シート11の着座面表面の温度を測定した。この場合は、サーミスタで検知した温度による温度制御のみが行われており、シート11の着座面表面が充分に暖まっていないのにもかかわらずサーモスタット7が作動してしまい、充分な暖房効果が得られないようなことは起こらなかった。次いで、上記温度制御装置について、常にコード状ヒータ3に通電されるよう故障したものを用い、同様に着座面表面の温度を測定した。この場合は、サーミスタで検知した温度による温度制御がなされないかわりに、サーモスタット7が作動することで温度制御がなされ、コード状ヒータ3が異常加熱することはなかった。
【0022】
一方、比較例として、サーモスタット7について、従来のように、基材5の端部に配置し、実際にシート11を加熱するコード状ヒータ3とは別の補助ヒータによって擬似的に加熱するシートヒータ1を用い、上記実施例と同様に検証試験を行った。温度制御装置が故障していない場合は、上記実施例と同様に、サーミスタで検知した温度による温度制御が行われ、コード状ヒータ3が異常加熱することはなかった。しかしながら、故障した温度制御装置を用いた場合もサーモスタットが作動することはなく、コード状ヒータ3は危険な温度に達することとなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上詳述したように本発明によれば、着座者が違和感を受けずに正確な温度制御が可能なシートヒータ及びシートを得ることができる。このシートヒータは、例えば、自動車,自動二輪車,鉄道車両等の車両用シート、船舶や航空機などのシート、遊園地の観覧車のシート、各種競技場の観覧用シート、劇場や映画館等の鑑賞用シート、家庭内やオフィスで使用されるソファー、理髪店のシート、各種医療機関で使用されている医療用シートなど、種々の用途で好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 シートヒータ
3 コード状ヒータ
5 基材
7 サーモスタット
11 シート
17 パット
19 表皮カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、上記基材から離れた位置に設置された温度検知素子とを有するシートヒータ。
【請求項2】
表皮カバーとパットとを有し、上記表皮カバーと上記パットとの間に請求項1記載のシートヒータが配置されたシートにおいて、
上記温度検知素子が、上記パットにおけるシート着座面に位置する箇所に埋め込まれていることを特徴とするシート。
【請求項3】
請求項2記載のシートにおいて、上記温度検知素子と上記ヒータ素子との距離が、上記基材の厚さより大きく、且つ、上記表皮カバーの厚さと上記基材の厚さを加えた厚さよりも小さいことを特徴とするシート。
【請求項4】
上記温度検知素子が、温度過昇防止用のサーモスタットであることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−11138(P2012−11138A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153356(P2010−153356)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】