説明

シートベルトのタング保持構造

【課題】樹脂ホルダの挿入口へのタングの挿入抵抗を低減できると共に、タング保持力を高めるシートベルトのタング保持構造を提供する。
【解決手段】このタング保持構造は、タング1のプレート部3の挿入口15を有し、車両内壁に取付けられる樹脂ホルダ10と、挿入口15内側に取付けられるクリップ30とを備え、クリップ30は、樹脂ホルダ10への固定部31と板バネ部50とを有し、板バネ部50は、固定部31からタング挿入方向に向け挿入経路に近づきながら入り込むように延出された傾斜部51と、挿入経路に対して離れる方向に向けて、傾斜部51の傾斜方向とは反対方向に屈曲され、プレート部3の開口部4の先端側内周縁に係合する第1係合部53と、挿入経路に対して近づく方向に向けて、第1係合部53とは反対方向に屈曲され、プレート部3の先端に係合する第2係合部55とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのバックルに装着されるシートベルトのタングを、車両の所定箇所に着脱可能に保持するための、シートベルトのタング保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートベルトの所定箇所にはタングが連結されており、このタングをシート近傍に配設されたバックルに挿入し係合させることにより、シートに着座した乗員がシートベルトにより拘束されるようになっている。このようなシートベルトとして、乗員の腰の左右2箇所を拘束する2点式シートベルトや、肩から腰にたすき掛けして肩部を拘束すると共に、乗員の腰の左右2箇所を拘束する3点式シートベルトが用いられている。
【0003】
後者の3点式シートベルトは、車両中央席用の場合、その基端部が車両の天井部内側のリトラクタ(巻き取り装置)に連結され、天井部に形成された開口から延出されており、所定箇所に前記タングが2つ取付けられた構造となっている。そして、天井部の開口からベルトを繰り出して、シート両側のバックルにタングをそれぞれ係合させることで、乗員の肩部及び腰の左右2箇所が拘束されるようになっている。前記タングは、シートベルトの非使用時には、車両の所定箇所(天井部)に着脱可能に保持されている。
【0004】
シートベルトのタングを保持する構造としては、様々な形態のものが開発されている。例えば、下記特許文献1には、ガーニッシュに設けられたポケットにタングを保持させるシートベルトハンガが開示されており、前記ガーニッシュに形成された差し込み口周縁からヒンジ部を介して延びるタング係止片と、前記ガーニッシュの裏面に設けられ前記タング片を係止する一対の爪とを備え、前記タング係止片には、タングのラッチ穴に係入する隆起部と、前記タングの先端部を侵入させるU字形部と、このU字形部の先端部から折り返された折り返し部とが形成されていることが記載されている。
【0005】
上記ハンガの樹脂成形後、ヒンジ部を介してタング係止片を折曲させて、折り返し部を一対の爪に係止させることにより、タング係止片の隆起部が、差し込み口から挿入されるタングの挿入経路の途中に配置され、ガーニッシュに斜め向きのポケットが形成されるようになっている。そして、ガーニッシュの差し込み口からタングを挿入すると、タング係止片の隆起部を弾性変形させつつ、タングのラッチ穴に隆起部が係入し、それと共にU字形部内にタング先端が挟持されて、ポケットにタングが保持されるようになっている。
【0006】
また、シートベルトハンガとしては、図9に示す構造のものも知られている。このシートベルトハンガは、車両の天井部に固着されるガーニッシュ6と、同ガーニッシュ6に装着されるクリップ7とを備えている。前記ガーニッシュ6は、タング挿入用の挿入口6aと、該挿入口6aの裏面側周縁から立設した壁部6bとを有している。前記クリップ7は、その一側部が前記壁部17に固定されていると共に、他側部にはタング1の開口部4に係合する係止片8が設けられている。この係止片8は、クリップ7の上端付近から斜め下方に向けて延出した基部8aと、該基部8aから垂下した中間部8bと、該中間部8bから基部8aとは反対方向に折曲された先端部8cとからなる。
【0007】
そして、図9(a)に示すように、挿入口6aからタング1を挿入していくと、先端部8cがタング先端に押圧されて係止片8が撓み、タング1の開口部4の先端が、係止片8の中間部8bの上端を通過すると、係止片8が弾性復帰する。すると、図9(b)に示すように、係止片8がタング1の開口部4内に入り込み、開口部4の先端側内周縁に係止片8の基部8aが係合すると共に、開口部4の基端側内周縁に係止片8の先端部8cが係合し、クリップ7を介してタング1が着脱可能に保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−309406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9に示す構造のシートベルトハンガでは、クリップ7の係止片8の形状を変更することで、タング1の保持力を高めることができる。すなわち、図9(b)の想像線に示すように、中間部8bに対して基部8a及び先端部8cをより大きく屈曲させることで、タング1の開口部4の先端側周縁に対する係止片8の基部8aの係合角度、及び、開口部4の基端側周縁に対する先端部8cの係合角度が急角度となるので、タング1の保持力を高めることが可能となる。その反面、図9(a)に示すように、挿入口6aからタング1を挿入するときに、先端部8cにクリップ7からの押し込み力が、係止片8を壁部6b側に撓ませる方向に作用しにくくなるので、タング挿入時の挿入抵抗が増大してしまうというデメリットが生じる。一方、中間部8bに対して先端部8cの傾斜角度を小さく設定すれば、挿入口6aからタング1を挿入するときに、係止片8が壁部6b側に撓みやすくなり、挿入抵抗を小さくすることができるが、この場合にはタング1の保持力が低下することとなる。
【0010】
したがって、本発明の目的は、樹脂ホルダの挿入口への、タングの挿入抵抗を低減することができると共に、タングの保持力を高めることができる、シートベルトのタング保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のシートベルトのタング保持構造は、シートベルトに連結される連結部、この連結部から延出されたプレート部、及びこのプレート部に形成された開口部を有するタングを、車両の所定箇所に着脱可能に保持するためのものであって、前記タングのプレート部の挿入口を有し、前記車両の内壁の所定箇所に取付けられる樹脂ホルダと、前記樹脂ホルダの前記挿入口の内側に取付けられるクリップとを備え、前記クリップは、前記樹脂ホルダへの固定部と、該固定部から前記タングのプレート部の挿入経路に入り込むように延出された板バネ部とを有し、前記板バネ部は、前記固定部から前記タングの挿入方向に向けて、前記挿入経路に近づきながら入り込むように延出された傾斜部と、この傾斜部の先端から前記挿入経路に対して離れる方向に向けて、前記傾斜部の傾斜方向とは反対方向に屈曲され、前記プレート部の開口部の先端側内周縁に係合する第1係合部と、この第1係合部の先端から更に延出されて、前記挿入経路に対して近づく方向に向けて、前記第1係合部とは反対方向に屈曲され、前記プレート部の先端に係合する第2係合部とを有していることを特徴とする。
【0012】
本発明のシートベルトのタング保持構造においては、前記プレート部の挿入方向に対する前記傾斜部の傾斜角度θ1が、前記プレート部の挿入方向に対する前記第2係合部の傾斜角度θ2よりも小さくなるように設定されていることが好ましい。
【0013】
本発明のシートベルトのタング保持構造においては、前記第2係合部の先端部は、前記プレート部の挿入方向に沿って伸びるか、同挿入方向に対して前記挿入経路から離れる方向に折曲されていることが好ましい。
【0014】
本発明のシートベルトのタング保持構造においては、前記樹脂ホルダは、前記挿入口の背面側の周縁に、前記挿入方向に向けて伸びる壁部を有しており、前記クリップの固定部は、この壁部の内外面を弾性的に挟持するように屈曲部を介して連結された外板部と内板部とを有し、前記外板部には、前記壁部の外面に係合する係合爪が形成され、前記内板部は、前記板バネ部の基部が連結された先端縁部と、この先端縁部の両側から延出されて、前記屈曲部を介して前記外板部に連結された両側縁部とを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タングのプレート部を樹脂ホルダの挿入口から挿入すると、プレート部の先端により、板バネ部の傾斜部が押圧されて撓みつつ、プレート部が挿入され、プレート部の開口部に第1係合部が至ると、前記板バネ部が弾性復帰して、プレート部の開口部に第1係合部が入り込んで、開口部の先端側内周縁に第1係合部が係合すると共に、同プレート部先端に第2係合部が係合するので、第1係合部と第2係合部との間でプレート部を保持することができ、プレート部のガタ付きを抑えた状態で、プレート部を抜け止め保持することができる。
【0016】
また、プレート部の挿入口への挿入方向(以下、「プレート部挿入方向」)に対して、第1係合部や第2係合部の角度を大きくすることで、プレート部開口の先端側内周縁に対する第1係合部の係合角度や、プレート部先端に対する第2係合部の係合角度が急角度となって、プレート部の保持力を高めることができる。
【0017】
このとき、挿入口へのプレート部挿入時に、プレート部に押圧されて撓み、挿入抵抗となる傾斜部は、第1係合部や第2係合部とは別に形成されていて、プレート部挿入方向に対する角度を独自に設定することができる。
【0018】
したがって、第1係合部や第2係合部のプレート部挿入方向に対する角度を大きくとって、プレート部の保持力を高めながら、傾斜部のプレート部挿入方向に対する角度を小さくすることにより、挿入抵抗を低減することできる。
【0019】
また、クリップにプレート部が保持された状態で、連結部又はそれに連結されたシートベルトを把持して引っ張ることで、プレート部の開口部の先端側内周縁に第1係合部が押圧されて、板バネ部が挿入経路に対して離れる方向に撓み、プレート部の開口部から第1係合部が抜き出され、第2係合部もプレート部先端から外れるので、樹脂ホルダの挿入口からプレート部を引き抜くことができ、同プレート部をシートのバックルに装着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るシートベルトのタング保持構造の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同タング保持構造を構成する樹脂ホルダの斜視図である。
【図3】同タング保持構造において、クリップを壁部に取付けた状態を示す斜視図である。
【図4】同タング保持構造を構成するクリップの側面図である。
【図5】同タング保持構造において、タングのプレート部を樹脂ホルダの挿入口から挿入する状態を示す斜視図である。
【図6】同タング保持構造の使用状態を示しており、(a)はプレート部を挿入する際の断面図、(b)はクリップにプレート部が保持された状態での断面図である。
【図7】同タング保持構造において、クリップによりプレート部を保持した状態の斜視図である。
【図8】同タング保持構造において、プレート部を所定位置よりも押し込み過ぎたときの、板バネ部の状態を示す断面図である。
【図9】従来の保持構造の使用状態を示しており、(a)はプレート部を挿入する際の断面図、(b)はクリップにプレート部が保持された状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜8を参照して、本発明に係るシートベルトのタング保持構造(以下、「タング保持構造」という)の一実施形態について説明する。
【0022】
このタング保持構造は、図1,2に示すように、タング1を車両の所定箇所に着脱可能に保持するものである。この実施形態では、3点式のシートベルト5に設けられた2つのタング1を保持するようになっているが、2点式のシートベルトのタングを保持するようにしてもよく、保持すべきタングの個数は特に限定されない。
【0023】
図1に示すように、この実施形態のタング1は、シートベルト5に連結される樹脂製の連結部2と、この連結部2の先端から延出された金属製のプレート部3と、このプレート部3の中央に形成された横長長方形状の開口部4とを有している。前記プレート部3の先端部中央には、切欠き部3aが形成されている。なお、タング1は、連結部2及びプレート部3が金属で一体形成されたものであってもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
そして、タング保持構造は、タング1のプレート部3の挿入口15を有し、車両の内壁の所定箇所に取付けられる樹脂ホルダ10(図2参照)と、この樹脂ホルダ10の前記挿入口15の内側に取付けられるクリップ30とを備えている。
【0025】
図2に示すように、この実施形態の樹脂ホルダ10は、車両の天井部Cに取付けられるもので、底壁11と、この底壁11の周縁から立設した周壁12とを有している。前記底壁11には凹部13が設けられており、この凹部13の底面に長孔状の挿入口15が2つ所定間隔を空けて並列して形成されている。この挿入口15の表面側から前記タング1のプレート部3が挿入され、挿入口15の裏面から挿出されるようになっている(図2中、矢印A参照)。以下の説明では、矢印Aに示すプレート部3の挿入口15への挿入方向を、「プレート部挿入方向」とする。図1に示すように、挿入口15の裏面側周縁からは、プレート部挿入方向に向けて、挿入口15周縁を囲む長枠状の壁部17が延出している。この壁部17の長さ方向に沿った一側壁に、前記クリップ30が取付けられるようになっている。なお、樹脂ホルダ10は、車両のピラー等に取付けるようにしてもよく、取付箇所は特に限定されない。また、図1,3,5,7に示すように、長枠状の壁部17の、長さ方向に沿った一側壁の内面からは、前記クリップ30の両側に位置する間隔を設けて、一対のリブ18,18が突設しており、同壁部17の長さ方向に沿った他側壁の内面からも、一対のリブ18,18が突設している。
【0026】
上記樹脂ホルダ10の挿入口15の内側に取付けられるクリップ30について、図1及び図3〜8を参照して説明する。この実施形態におけるクリップ30は、所定の金属板材から屈曲形成され、樹脂ホルダ10への固定部31と、該固定部31の挿入口15の内周に配置された部分から、プレート部3の挿入経路R(図4及び図6(a)参照))に入り込むように延出された板バネ部50とを有している。
【0027】
前記固定部31は、前記樹脂ホルダ10の壁部17の内外面を弾性的に挟持するように、U字状に屈曲した一対の屈曲部33,33を介して連結された外板部35と内板部40とを有している。外板部35は壁部17の外面側に配置され、内板部40は壁部17の内面側に配置されるようになっている。図4に示すように、外板部35は、その先端側が内板部40に近接するように斜め内方に向けて屈曲して、外板部35と内板部40との間隔が狭まっており、樹脂ホルダ10の壁部17を弾性的に挟持可能となっている。
【0028】
また、図3に示すように、外板部35の幅方向両側には、スリット36aを介して係合爪36,36がそれぞれ形成されている。各係合爪36は、内板部40側に向けて内方に折曲されていると共に、基部側が幅広で先端側に向けて次第に幅狭となる三角板状をなしており、これが前記壁部17の外面に食い込むように係合するようになっている(図6参照)。更に、外板部35の先端部37は、内板部40から離れるように斜め外方に向けて折り返されており、外板部35及び内板部40の間に壁部17を差し込み可能としている。
【0029】
一方、内板部40は、その内側に長さ方向に沿った空隙41が形成されていると共に、長さ方向先端側に位置する先端縁部43が、内板部40のそれ以外の部分に対して、外側に向けてほぼ直交するように折曲されている。この先端縁部43の幅方向中央であって、空隙41側の端縁部に、前記板バネ部50の基部が連結されている。また、先端縁部43の幅方向両側からは、板バネ部50の両側に沿って、帯状をなした一対の両側縁部45,45が延出しており、これらが前記U字状の屈曲部33,33を介して外板部35の幅方向両側に連結されている。
【0030】
図1,3,5に示すように、前記板バネ部50は、内板部40の空隙41の部分を切起こして、内側に撓み可能に形成されており、内板部40の先端縁部43から伸びる傾斜部51と、第1係合部53と、第2係合部55とを有している。
【0031】
図4及び図6を併せて参照して各部について説明すると、傾斜部51は、前記固定部31の内板部40の先端縁部43から、プレート部挿入方向Aに向けて、プレート部3の挿入経路Rに近づきながら入り込むように、斜め外方(内板部40から離れる方向)に延出されており、プレート部3の挿入時に、プレート部3の先端部に押圧されて、板バネ部50を内方に撓ませる部分となっている。
【0032】
一方、第1係合部53は、前記傾斜部51の先端から、前記挿入経路Rに対して離れる方向に向けて、前記傾斜部51の傾斜方向とは反対方向に、斜め内方(内板部40に近づく方向)に屈曲されて形成されており、プレート部3の開口部4の先端側内周縁に係合するようになっている。なお、以下の説明において、「外方」とは内板部40から離れる方向を意味し、「内方」とは内板部40に近づく方向を意味する。
【0033】
そして、第2係合部55は、前記第1係合部53の先端から更に延出されて、前記挿入経路Rに対して近づく方向に向けて、前記第1係合部53とは反対方向に屈曲されて形成されており、前記プレート部3の先端に係合するようになっている。この実施形態の第2係合部55は、前記第1係合部53の先端から、挿入経路Rに沿って平行に伸びる基部56と、この基部56の先端から挿入経路Rに対して近づく方向に向けて斜め外方に屈曲すると共に、基部56よりも若干幅狭(図3参照)に形成された中間部57と、この中間部57の先端から、プレート部挿入方向Aに沿って平行に、中間部57と同一幅で伸びる先端部58とから構成されている。図6(b)及び図7に示すように、第2係合部55の中間部57が、プレート部3の先端の切欠き部3aに係合する部分となっている。なお、前記先端部58は、中間部57の先端から、プレート部3の挿入経路Rより離れる方向となるように、斜め内方に向けて折曲させてもよい。
【0034】
また、この実施形態では、図4に示すように、プレート部挿入方向Aに対する傾斜部51の傾斜角度θ1が、同プレート部挿入方向Aに対する第2係合部55の中間部57の傾斜角度θ2よりも小さくなるように設定されている。前記傾斜角度θ1は、15〜30°が好ましく、20〜25°がより好ましい。また、前記傾斜角度θ2は、45〜90°が好ましい。
【0035】
次に、上記構造からなるタング保持構造の作用効果について説明する。
【0036】
まず、クリップ30を樹脂ホルダ10に取付ける。すなわち、図1に示すように、リブ18,18の間にクリップ30を整合させると共に、樹脂ホルダ10の壁部17の外面側に外板部35を配置し、同壁部17の内面側に内板部40を配置して、クリップ30を壁部17に向けて押し込んで、両板部35,40を弾性的に広げつつ、両板部35,40の間に壁部17を挿入する。このとき、クリップ30は、外板部35の先端部37が外方に折曲されている共に、内板部40の先端縁部43も外方に折曲されているので、両板部35,40の間に壁部17をスムーズに挿入することができる。
【0037】
そして、内板部40の先端縁部43が樹脂ホルダ10の凹部13の底面に突き当たるまで、クリップ30を押し込むと、先端縁部43が樹脂ホルダ10の凹部13の底面に当接して位置決めされると共に、外板部35両側の係合爪36,36が、壁部17の外面に食い込むように係合して、クリップ30を樹脂ホルダ10の挿入口15の内側に取付けることができる(図3,5,6参照)。また、壁部17の長さ方向に沿った一側壁の内面から突出したリブ18,18が、クリップ30の両側に配置されるようになっているので、クリップ30が位置ずれしないように、壁部17の所定位置にクリップ30をしっかりと位置決めして保持することができる(図5参照)。
【0038】
上記のように、この実施形態のクリップ30は、固定部31の外板部35及び内板部40の間で、樹脂ホルダ10の壁部17を挟持させることで、係合爪36が壁部17の外面に係合するので、クリップ30を壁部17に対して押し込んで、外板部35及び内板部40の間に樹脂ホルダ10の壁部17を挿入するだけの簡単な作業で、クリップ30を樹脂ホルダ10に取付けることができ、クリップ30の取付け作業性を向上させることができる。また、内板部40の先端縁部43が、板バネ部50の基部に連結され、両側縁部45,45が板バネ部50の両側に配置されているので(図5参照)、板バネ部50と固定部31との干渉を防止しつつ、樹脂ホルダ10の壁部17に対して固定部31を安定して固定することができる。
【0039】
上記のように天井部Cに取付けられた樹脂ホルダ10の挿入口15の表面側から、タング1のプレート部3をプレート部挿入方向Aに沿って挿入していく(図2参照)。そして、図6(a)に示すように、挿入口15の裏面側から挿出されたプレート部3は、長枠状の壁部17の長さ方向に沿った両側壁の内面から突設したリブ18により、両側面がガイドされつつ、挿入経路Rに沿って挿入されていき、プレート部3の先端が傾斜部51に当接すると、板バネ部50の傾斜部51が押圧されて、図6(a)の矢印Bに示すように、内板部40に近づく方向に向けて撓んでいく。そして、プレート部3の開口部4に、第1係合部53が至ると、板バネ部50が弾性復帰して、開口部4内に第1係合部53が入り込み、同開口部4の先端側内周縁に第1係合部53が係合すると共に、プレート部3の先端の切欠き部3aに第2係合部55の中間部57が係合して、クリップ30を介してタング1が保持される(図6(b)及び図7参照)。このように、この実施形態におけるタング保持構造では、第1係合部53と第2係合部55の中間部57との間で、プレート部3を保持することができるので、プレート部3のガタ付きを抑えた状態で、プレート部3を抜け止め保持することができる。
【0040】
また、図4に示すように、プレート部挿入方向Aに対する第1係合部53の傾斜角度θ3を大きくすることで、プレート部3の開口部4の先端側内周縁に対する係合角度が急角度となるので、プレート部3の保持力を高めることができる。同様に、プレート部挿入方向Aに対する第2係合部55の中間部57の傾斜角度θ2を大きくすることで、プレート部3の先端の切欠き部3aに対する係合角度を急角度にして、プレート部3の保持力を高めることができる。
【0041】
そして、挿入口15へのプレート部3の挿入時に、プレート部先端に押圧されて撓み、挿入抵抗となる傾斜部51は、上記の第1係合部53及び第2係合部55とは別に形成されているので、プレート部挿入方向Aに対する傾斜角度θ1(図4参照)を独自に設定することができる。
【0042】
したがって、プレート部挿入方向Aに対する第1係合部53の傾斜角度θ3や、第2係合部55の中間部57の傾斜角度θ2を最大限大きくとって、プレート部3の保持力を高めながら、プレート部挿入方向Aに対する傾斜部51の傾斜角度θ1を小さくすることにより、プレート部3の挿入抵抗を低減することでき、低い挿入抵抗と高いプレート保持力とを併せ持つ、使い勝手のよいタング保持構造を提供することができる。
【0043】
この実施形態では、プレート部挿入方向Aに対する傾斜部51の傾斜角度θ1が、プレート部挿入方向Aに対する第2係合部55の中間部57の傾斜角度θ2よりも小さくなるように設定されている。すなわち、挿入抵抗の要因となる傾斜部51の、プレート部挿入方向Aに対する傾斜角度θ1を小さくして、挿入抵抗をできるだけ低減しつつ、プレート部3の保持力向上の要因である第2係合部55の中間部57の、プレート部挿入方向Aに対する傾斜角度θ2を大きくして、プレート部3の保持力を高めることができ、より使い勝手のよいタング保持構造を提供することができる。
【0044】
そして、シートベルト5を用いて、乗員の身体を拘束するときには、図6(b)に示すように、プレート部3が抜け止め保持された状態で、タング1の連結部2を把持して、プレート部挿入方向Aとは反対方向にプレート部3を引張る。すると、プレート部3の開口部4の先端側内周縁に、第1係合部53が押圧されて、板バネ部50が挿入経路Rに対して離れる方向に撓み、開口部4から第1係合部53が抜け出ると共に、プレート部3の先端の切欠き部3aからも第2係合部55の中間部57が外れて、プレート部3の保持が解除される。その状態でプレート部3を更に引張ることで、挿入口15からプレート部3を引き抜くことできる。その後、シート近傍のバックルにプレート部3を差し込むことで、乗員を拘束することができる。このように、このタング保持構造では、プレート部3を引張るだけの簡単な操作で、プレート部3を樹脂ホルダ10から取外すことができ、シートベルト5の装着作業を容易に行うことができる。
【0045】
ところで、上記のようにプレート部3を挿入口15から所定深さ挿入すると、プレート部3の開口部4の先端側内周縁に第1係合部53が係合し、プレート部3の先端の切欠き部3aに第2係合部55の中間部57が係合して、プレート部3が保持されるようになっているが、プレート部3が所定位置で停止せず、過度に深く挿入されてしまう場合がある。
【0046】
この場合、プレート部3の先端に第2係合部55の中間部57が押圧されて、図8に示すように、プレート部3の先端側面に第2係合部55が乗り上がることとなるが、ここでは、第2係合部55の先端部58が、プレート部挿入方向Aに沿って平行に伸びているので、第2係合部55の先端部端縁58aがプレート部3の側面に接触することを防止することができ、プレート部3に傷が付きにくくなる。なお、第2係合部55の先端部58が、プレート部3の挿入経路Rから離れる方向に折曲した形態となっている場合には、図8の想像線で示すように、主として基部56及び中間部57間の屈曲部分がプレート部3の側面に当接するので、この場合も、第2係合部55の先端部端縁58aによるプレート部3の損傷が防止される。そして、この状態で、シートベルト5をやや引張ると、プレート部3の側面に乗り上がり撓んだ板バネ部50が弾性復帰して、プレート部3の開口部4の先端側内周縁に第1係合部53が係合し、プレート部3の先端の切欠き部3aに第2係合部55の中間部57が係合して、プレート部3が抜け止め保持される。
【0047】
また、シートベルト5で乗員の身体を拘束すべく、樹脂ホルダ10に保持されたタング1のプレート部3を、挿入口15から引き抜くときも、第2係合部55の先端部端縁58aがプレート部3の側面に接触することが防止されるので、プレート部3が傷付けきにくくなると共に、第2係合部55の先端部端縁58aがプレート部3に接触することによる摩擦抵抗がないため、スムーズにプレート部3を引き抜くことができる。
【0048】
なお、第2係合部55の中間部57を、長く伸ばすことによっても、プレート部3の損傷を防止することができる。すなわち、第2係合部55の中間部57が長く伸びていることにより、挿入口15からプレート部3を余ほど深く挿入しない限り、プレート部3の側面に第2係合部55が乗り上がることがないので、プレート部3の損傷が防止される。
【符号の説明】
【0049】
1 タング
2 連結部
3 プレート部
4 開口部
5 シートベルト
10 樹脂ホルダ
15 挿入口
17 壁部
30 クリップ
31 固定部
33 屈曲部
35 外板部
36 係合爪
40 内板部
43 先端縁部
45 両側縁部
50 板バネ部
51 傾斜部
53 第1係合部
55 第2係合部
58 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトに連結される連結部、この連結部から延出されたプレート部、及びこのプレート部に形成された開口部を有するタングを、車両の所定箇所に着脱可能に保持するための、シートベルトのタング保持構造であって、
前記タングのプレート部の挿入口を有し、前記車両の内壁の所定箇所に取付けられる樹脂ホルダと、前記樹脂ホルダの前記挿入口の内側に取付けられるクリップとを備え、
前記クリップは、前記樹脂ホルダへの固定部と、該固定部から前記タングのプレート部の挿入経路に入り込むように延出された板バネ部とを有し、
前記板バネ部は、前記固定部から前記タングの挿入方向に向けて、前記挿入経路に近づきながら入り込むように延出された傾斜部と、この傾斜部の先端から前記挿入経路に対して離れる方向に向けて、前記傾斜部の傾斜方向とは反対方向に屈曲され、前記プレート部の開口部の先端側内周縁に係合する第1係合部と、この第1係合部の先端から更に延出されて、前記挿入経路に対して近づく方向に向けて、前記第1係合部とは反対方向に屈曲され、前記プレート部の先端に係合する第2係合部とを有していることを特徴とするシートベルトのタング保持構造。
【請求項2】
前記プレート部の挿入方向に対する前記傾斜部の傾斜角度θ1が、前記プレート部の挿入方向に対する前記第2係合部の傾斜角度θ2よりも小さくなるように設定されている請求項1記載のシートベルトのタング保持構造。
【請求項3】
前記第2係合部の先端部は、前記プレート部の挿入方向に沿って伸びるか、同挿入方向に対して前記挿入経路から離れる方向に折曲されている請求項1又は2記載のシートベルトのタング保持構造。
【請求項4】
前記樹脂ホルダは、前記挿入口の背面側の周縁に、前記挿入方向に向けて伸びる壁部を有しており、前記クリップの固定部は、この壁部の内外面を弾性的に挟持するように屈曲部を介して連結された外板部と内板部とを有し、前記外板部には、前記壁部の外面に係合する係合爪が形成され、前記内板部は、前記板バネ部の基部が連結された先端縁部と、この先端縁部の両側から延出されて、前記屈曲部を介して前記外板部に連結された両側縁部とを有している請求項1〜3のいずれか1つに記載のシートベルトのタング保持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−91712(P2012−91712A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241696(P2010−241696)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】